shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ビートルズのフィンランド盤シングル特集

2017-12-27 | The Beatles
 この前 eBayでビートルズのスウェーデン盤を検索していた時、関連アイテムとしてフィンランド盤のシングルが何枚か出ているのを見つけた。しかもその商品タイトルが “The Beatles I Saw Her Standing There Finland 45 Misspelt Lennen” となっている。「レノン」ではなく「レネン」??? これを見て面白そうやん...と簡単に釣られてしまうところがレコード・マニアの悲しい性だが(笑)、レーベル写真を見てみると確かに曲名の下には (Lennen – McCartney) とクレジットされている。
 そう言えば昔、「探偵!ナイトスクープ」で “フィンランド人の名字には最後に「ネン」が付くものが多いけれど、それならばソヤネン、チャウネン、ナンデヤネンという名字の人もいるのか?” というフィンランド人の名字ネタの回があって、調査の結果フィンランド人の80%ぐらいが “〇〇ネン” さんだと判明。手持ちの「ナイトスクープ DVD Vol.4」に入っていたので久々に見てみたが、“アシカイネン” さんとか “アホネン” さんとかいったオモロイ名前がフィンランドの電話帳にずら~っと並んでいる。わざわざ “パーヤネン” さんという人に国際電話をかけて「アホちゃいまんねんパーヤネン」と言わせていたのにも大爆笑だ(^.^)  フィンランド出身のレーシング・ドライバーもハッキネン、ライコネン、コバライネンと、確かにみんな “ネン” が付いとるな。
 話をビートルズのシングル盤に戻そう。そのオークションは $1スタートで送料も安かったので遊び半分で $8つけてみたのだが、落札額は驚きの $21で私は軽くアウトビッドされてしまった。こんなマニアックなレコードを狙ってるヤツが他にもそんなにようけおったんかとビックリしたが、ほんの思いつきで衝動入札しただけなのでそれ以降そのレコードのことはすっかり忘れていた。
 しかしそれから数週間後に私はこのレコードと再会した。ちょうど「ウィズ・ザ・ビートルズ」の黄パロ・スウェーデン盤を落札したのだが、そのセラーが上記の「オール・マイ・ラヴィング / アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」のシングル盤も出品していたのだ。せっかくなのでダメ元で前回と同じ$8つけてみたところ、今回はライバルが1人しか現れず $5.50で落札。あの$21は一体何やってん???と少し拍子抜けしたが、逆にこういうラッキーがあるからeBayは面白い。ついでに落札した「ミッシェル / ガール」(←こちらはちゃーんと「レノン」表記になっていた...)もLPと一緒に送ってもらったので送料はかからないし、前回獲り損ねたのは却ってラッキーだった。
 マトは「オール・マイ・ラヴィング」盤が“7XST-309-1 / 7XST-310-1” で「ミッシェル」盤が“7XST-373-1 / 7XST-374-1” というローカル・カット。前者の音は可もなく不可もなくという感じの平均的なモノラル・サウンドで、低音がどうとか高音がこうとかいった派手さはないが、普通に音楽を楽しむ分には全く問題はない。一方、後者の方は音圧が高めでベースの音も太く、ヴォーカルも生々しい。以前特集したニュージーランド盤の時もそうだったが、45回転シングル盤の音は実際に自分の耳で聴いてみないとわからない。
 それと、後で調べてみてわかったことだが、Lennen のミススペリング表記になっているのは全31枚のフィンランド盤シングルのうち5枚目にあたるこの「オール・マイ・ラヴィング」と6枚目の「キャント・バイ・ミー・ラヴ」だけで、それ以外はちゃーんと Lennon 表記になっていた。なんでやネン???
 ということでビートルズの各国盤に明け暮れた2017年の当ブログもこれにて終了。1年間お付き合いいただきどうもありがとうございました。それでは皆さん、またライネン(^o^)丿

ビートルズの「Greatest Hits」2種聴き比べ

2017-12-22 | The Beatles
 前回は60年代にリリースされたスウェーデン盤の「グレイテスト・ヒッツ」を取り上げたが、当然ながら他の国々でも様々なビートルズのベスト盤がリリースされており、各国盤を漁っていると “どんな音するんやろ?” と興味をそそられるような盤に出会うことがある。
 そもそも60年代にリアルタイムでリリースされたビートルズのオフィシャル・ベスト盤と言えばUKオリジナルの「オールディーズ」ということになるが、珠玉の名曲が16曲も入っているにもかかわらずファンの間ではほとんど話題にも上らない。かく言う私もあのアルバムは一応持ってはいるがこれまでターンテーブルに乗せたのは数回で、今ではすっかりタンスならぬレコード棚の肥やし状態だ。何よりもまずジャケット・デザインがダサすぎるし、曲の配列もメチャクチャでセンスのかけらもない。
 更に悪いことにこのレコードのUKオリジナル・モノラル盤は音がこもっていて聴くに耐えない。ステレオ盤の方はまだ少しはマシだが、それでもまだ平均点以下の音質で、UKオリジナル盤なら何でもかんでも高音質と思って購入すると(←10年前の私です...)盤をブチ割りたくなる衝動に駆られるくらいガッカリさせられる。よって選曲・音・ジャケットと何一つ良いところが無い「オールディーズ」は聴くに値しない、というのが私の結論だ。そういうワケで、今回は各国盤蒐集の中で私が購入した2枚を取り上げて 60年代ベスト盤対決をやってみたい。
 まず最初はドイツ盤の「ザ・ビートルズ・グレイテスト」(SMO 73 991)で、例のドイツ原盤の輸出仕様レコード(ZTOXシリーズ)を探していてこのレコードの存在を知ったのだが、まず気に入ったのがその選曲だ。A面が「I Want To Hold Your Hand」「Twist And Shout」「A Hard Day's Night」「Eight Days A Week」「I Should Have Known Better」「Long Tall Sally」「She Loves You」「Please Mister Postman」で、B面が「I Feel Fine」「Rock And Roll Music」「Ticket To Ride」「Please Please Me」「It Won't Be Long」「From Me To You」「Can't Buy Me Love」「All My Loving」の全16曲入りで、初期ビートルズ最大の魅力であるエネルギッシュなロックンロール・ナンバーが満載なのだ。中々ええセンスしとるやん... ながら聴きするのにちょうどエエなぁ... などと考えながら値段を見ると€20だったので、ホワイト/ゴールド・オデオン・レーベルにもかかわらず(←手持ちの白金ラベルは「ペパーズ」以外みんな音がショボい...)衝動買いしてしまった。
 実際に聴いてみるとやはり音圧がかなり低く、60年代中期のドイツ盤によくある脆弱なサウンドだ。まぁこの不満はアンプのヴォリュームを思いっ切り上げてやるか、あるいはいっそのことモノ針で聴いてやればそれなりに解消されるが、どんな手を使ってもダメなものはダメなのがB①「アイ・フィール・ファイン」の音だ。何じゃいこれは??? 何をトチ狂ったのか、アルバム中でこのトラックだけ、風呂場か教会で聴いているかのような過剰なエコーがかけられた例のUSミックス(←US盤「ビートルズ'65」に入ってるヤツ)が採用されており、B面に針を落としてすぐにあまりの気持ち悪さと腹立たしさで針を上げざるを得なかった。このエコーまみれのアホバカ・ミックスはビートルズへの冒涜であり、ミキシング・エンジニアは万死に値する。他の15曲は全然問題のないステレオ・ミックスなのだが、こいつが入っているせいでアルバム全体の印象が悪くなってしまうという“蟻の一穴”盤だった...(>_<)
 この失敗にめげずに次に手に入れたのがニュージーランド盤の「ザ・ビートルズ・グレイテスト・ヒッツ Vol.1」だ。ジャケットはUS盤の「ビートルズⅥ」と同じ写真が使われており、先のスウェーデン盤が「サムシング・ニュー」と、上記のドイツ盤が「アーリー・ビートルズ」と同じ写真をそれぞれ使っているというのが面白い。A面が「Please Please Me」「From Me To You」「She Loves You」「I'll Get You」「I Want To Hold Your Hand」「Love Me Do」「I Saw Her Standing There」、B面が「Twist And Shout」「Roll Over Beethoven」「All My Loving」「Hold Me Tight」「Can't Buy Me Love」「You Can't Do That」「Long Tall Sally」ということで先のドイツ盤に比べるとより初期寄りな選曲になっているが、音質に定評のあるNZ盤でしかもこちらはモノラルなのでエコーまみれということはないだろう。同一内容のオーストラリア盤もあったがステレオ盤ということでパス。結局Discogsに£20で1枚だけ出ていたのをゲットした。
 聴いてみた感想としては音圧十分で非の打ち所のないモノラル・サウンドで、腹一杯ビートルズを聴いた!という満足感に浸れること間違いナシ。やっぱりビートルズはこの音でなくっちゃ...(^.^)と思わず頬が緩んでしまう爆音盤だ。因みにこのレコードのVol.2 はNZ盤ではリリースされなかったようで市場に出回っているのがOZオレンジ・レーベルのステレオ盤ばかりなのがちょっと残念だが、これだけの高音質で初期のヒット曲の数々が聴けることを考えれば、このVol.1だけでも十分にコレクタブルな逸品だと思う。

ビートルズのスウェーデン盤特集⑤「The Beatles' Greatest Hits」

2017-12-15 | The Beatles
 各国盤蒐集に首を突っ込んでからというもの、CDandLP.com というサイトをよく利用するようになった。ここはオークションではなくセット・プライスでレコードを買うシステムで、eBayやDiscogsに比べると知名度がイマイチなのか商品の回転が鈍く新規出品率が低いこともあってこれまでは気が向いた時に覗く程度だったが、この半年ほどはかなり頻繁にチェックしている。その一番の理由は独自の検索方法にあって、「アーティスト」「タイトル」「フォーマット」以外に「レーベル」「プレス国」「売り手所在地」などで絞り込みが出来るので、特定の国でプレスされた盤を探すときにはこの機能がめちゃくちゃ重宝するのだ。本部がフランスにあるせいか、フランス盤の掘り出し物が見つかることが多く、「ウィズ・ザ・ビートルズ」や「ビートルズ・フォー・セール」の仏オリジナルといった入手困難盤もここで買うことが出来たし、ヘタをすれば$300オーバーは覚悟しなければならないブルーノートの超人気盤「ボサノヴァ・ソウル・サンバ」をフランスのセラーから€100で買えたのもこの CDandLP.com だ。
 当然スウェーデン盤探しにもココを利用しない手はない。早速検索してみる30枚ほど出てきてそのほとんどが有象無象の70年代プレス銀パロ盤だったが、1枚だけ60年代プレスのイエロー・パーロフォン盤が出品されていた。ジャケットにはUS盤「サムシング・ニュー」と同じ写真が使われておりタイトルは「The Beatles' Greatest Hits」となっている。“へぇ~、こんな盤初めてみたわ...” と思いながら選曲を見てみると去年私が買ったデンマーク盤の「The Beatles' Hottest Hits」、通称「エスキモー・カヴァー」と全く同じだ。つまり同じ北欧のデンマークとスウェーデンでそれぞれ違うジャケットとタイトルを付けてベスト盤をリリースしたということになる。
 普通ならパスするところだが、その時点でスウェーデン盤の黄パロはまだ1枚も持っていなかったし、デンマーク盤とスウェーデン盤の音質聴き比べをしてみたくなったこともあって、私は即買いを決めた。後で知ったのだがこのレコードは結構なレア盤らしく、eBayでは $600という目の玉が飛び出るような高値で取り引きされていたし、Discogsでも“Virtually impossible to find even here in Sweden! (スウェーデン国内でも見つけるのは非常に困難)” という説明付きで$200~$400で出品されていた。それがわずか $75で買えたのだからラッキーラララである。
 現物を手にしてまず思ったのは、ジャケット写真のフォーカスが甘くてUSオリジナル盤「サムシング・ニュー」(←US盤嫌いやけど一応持ってますねん...)のジャケ写と比べてみても2~3回複写を重ねたようなピンボケ具合なのだ。特にリンゴなんかほとんどノッペラボウ状態で、もーちょっとクリアな写真使えよ!と文句の一つも言いたくなってくる。盤の重さは137gで、エスキモー・カヴァー(←何と173gというスーパーヘビー級!!!)に比べると遥かに軽い。さて、この重量差が音質にどう影響してくるのか、聴き比べマニアの私としては興味津々だ。
 A面1曲目の「アイ・フィール・ファイン」に針を落とすとスピーカーから飛び出してきた音は高音域が強烈で、耳に突き刺さってくるような鋭利なサウンドだ。全体的な印象としては凄まじい凶暴性を秘めたエスキモー・カヴァーの爆裂サウンドに非常に近いモノがあるが、このスウェーデン盤の方は中低域がややスリムなせいか相対的に高音域がキツく聞こえるので、プリアンプのトレブルを2目盛りほど絞って聴くとちょうどいい感じ(^.^)  マトリクス№(XSTS 115 1 / XSTS 116 1)は字体までエスキモー・カヴァーと全く同じなので、この中低域の厚みの微妙な違いは盤の重量差からくるのかもしれないが、どちらにせよ初期ビートルズの火の出るようなロックンロールを楽しむにはうってつけのアグレッシヴな音作りだ。
 今回このスウェディッシュ黄パロ盤を聴いてみて一番驚いたのは“幽玄”とか“清潔”といった形容詞で表現される後期アルバムのスウェーデン・プレス盤の音作りとはかなり違っていたことで、カッティング・エンジニアが違うと言ってしまえばそれまでだが、それにしても同じ国でありながら数年違いでこれほどまでに音作りの方向性が異なるというのも面白い。しかしベスト盤にまで手を出してしまうとは、何かどんどん深みにハマっていってる気がするなぁ...

インド盤で聴くジョージとジョンのベスト盤

2017-12-08 | The Beatles
 今年も残すところあとわずか... 毎年この時期になると多くのビートルズ・ファンは亡くなってしまった2人のビートル、ジョージとジョンに思いを馳せる。私もその例にもれず、このブログでもカヴァー曲やシングル盤など、その時々で自分がハマっていた題材を元に色んな切り口で2人の特集をしてきた。私の2017年はビートルズの各国盤蒐集に明け暮れた1年だったので、今日は2人がそれぞれ70年代にリリースしたベスト・アルバムのインド盤を取り上げようと思う。

①Best Of George Harrison [PAS 10011]
 本家本元のビートルズとは違ってソロ・アルバムを各国盤で、というマニアはさすがにあまりいないのか、Discogs を探すとかなりの数が出品されている。しかも1枚の値段が数ドルというお買い得盤も少なくないのでありがたい。私が買ったこのジョージのベスト盤も NM でたったの €10。センター・レーベルは他の70年代中期インド盤と同じくイエロー・パーロフォン(←インドでは「赤盤」「青盤」の2ndプレスや「ロックンロール・ミュージック」の1stプレスが黄パロ)で、マトリクスは YEX 961-1 / YEX 962-1A だ。
 ご存じのようにこのレコードはA面がビートルズ時代の、そしてB面がソロになってからのヒット曲という中途半端な構成のためにリリース当時はあまりファンの話題に上らなかった記憶があるが、各国盤コレクターとなった今の私にとっては「ラバー・ソウル」以降のジョージの代表曲をインド盤独自の真空管カッティングの音で手軽に楽しめるという、安心ラクチン格安パックツアー的な1枚なのだ。
 音の方はたかがインド盤(失礼!)と侮っていると驚かされること請け合いの良い音で、真空管カッティングならではの温かみのある分厚いサウンドが楽しめる。中でも私が一番気に入ったのはフィル・スペクターの音壁プロデュースここに極まれりと言うべき「マイ・スウィート・ロード」と「ホワット・イズ・ライフ」で、スペクターのザ・ワン・アンド・オンリーなウォール・オブ・サウンドとインドならではの真空管カッティングの組み合わせの相乗効果なのか、音空間の広がり方がハンパなく、UK盤と聴き比べてみても明らかに違う雄大な音で鳴るのが面白い。コレは買って大正解だった(^.^)

②Shaved Fish [PCS 7173]
 このインド盤「シェイヴド・フィッシュ」の魅力(?)は何と言ってもそのユニークなジャケットに尽きるのではないか? 「ラバー・ソウル」ジャケットのジョンの顔を模したイラストがオレンジ色(!)の雲間に漂い、そのバックには巨大な日の丸が描かれているという非常にシュールなジャケット・デザインで、日本人の私からすれば想像の遥か斜め上を行くセンスだ。インドって色んな意味でやっぱり凄いわ(笑) 「アナログ・ミステリー・ツアー」で紹介されていたのを見て面白そうなので買ってみたが、手に取って見る実物は本で見るよりも遥かにインパクトが強い。
 マトリクスは YEX 949-1 / YEX 950-1 で、マトの字体から判断するとUK盤ともUS盤とも違うインド独自のローカル・カットのようだ。盤の重量は 162gで、UK盤(126g)やUS盤(121g)と比べても断トツに重い。しかし驚いたことに実際にこれら3枚を聴き比べてみたところ、音の良さは重量に反比例しており、US ≧ UK >>> IND ぐらいの差がある。一番分かりやすいのはA②「コールド・ターキー」で、麻薬の禁断症状の苦しさがビンビン伝わってくるUS盤に対し、インド盤の方は音が平板なためにジョンが意図した “のたうち回ってもがき苦しむような感じ” が上手く表現できていないように思った。
 とまぁこのようにこれら3枚を聴き比べた結果、私の重量盤信仰は木端微塵に打ち砕かれ、やはりアナログ・レコードの音を決めるのはカッティング・エンジニアの良し悪しなんだという厳然たる事実を再確認すると共に、ジョンのソロ作品はUS盤のサウンドが一番生々しくてエエなぁ... との思いを強くした。音に関する限り、私にとって先のジョージ盤は “当たり” でこちらのジョン盤は “イマイチ” だったワケだが、こういった当たり外れがあるからこそ各国盤蒐集は面白い。ジョンのインド盤はディフ・ジャケの珍盤として目で楽しむことにしよう。

ビートルズのスウェーデン盤特集④「Abbey Road」

2017-12-03 | The Beatles
 ビートルズのスウェーデン盤を集めていて一番困るのは圧倒的に情報が少ないということである。元々プレス枚数が少ないために市場に出回るブツの数が限られているし、UK盤やUS盤と違ってマイナーな存在のためコレクターの蒐集対象になりにくくネット上を探してもビートルズのスウェーデン盤を系統立てて整理したサイトが見つからない。しかもオランダやイタリアといった他国マーケット向けのスウェーデン・プレスも少なからず存在していて状況をよりややこしくしているのだから始末が悪い。このようにある意味カオスな状況を呈しているスウェーデン盤だが、中でも最も厄介だったのが今日取り上げる「アビー・ロード」だ。
 私はこれまで各国盤を買う時はいつも例の横野氏のサイトの情報を頼りにしてきたが、さすがにスウェーデンなどというマイナーな国のレコードは載っていなかったので、残るはもう Discogs しかない。しかし困ったことにDiscogsにおけるスウェーデン盤の扱いは極めてぞんざいで、「アビー・ロード」のスウェーデン1stプレスに関しては表ジャケだけで肝心のセンター・レーベルの写真が載っておらず、“レーベルはダークグリーン・アップル”“レーベル面に Her Majesty 表記あり”“著作権管理クレジットはNCB”“マトはYEX749/750” という説明が申し訳程度に添えられているのみ。当然ながら1枚も出品されていない。一方、2ndプレスにあたる1978年リリースの再発盤は何から何まで事細かに説明してあって、当然レーベル写真や裏ジャケまで載っている。「アビー・ロード」のスウェーデン盤1stプレスってそんなにレアなのか???
 ここで一計を案じた私はpopsike で「アビー・ロード」のスウェーデン盤1stプレスを検索してみた。するとここ数年でたったの1枚だけしか売られておらず、しかも 1stプレスを謳ったその盤はセンター・レーベル写真からマトリクス№(YEZ 749-2 PCS 7088 A / YEX-750-2U PCS 7088 B)、マザー/スタンパー(3 MÅ/MÅ)までDiscogs掲載の2ndプレス盤と全く同じ。念のためeBayで検索してみたところ、市場に出ていた2枚はやはり同じマト番だった。一体どーなっとるんや?
 そこで最後の手段として、Discogsに「アビー・ロード」のスウェーデン盤を出品しているセラーたち全員にセンター・レーベルの写真を送ってくれるようメールして頼んだところ、送られてきた写真はすべて2ndプレス盤と同じものだったので、私はとりあえずその中から安くて盤質の良さそうなものを1枚オーダーすることにした。€12のNM盤だ。
 届いたレコードのジャケットはビニールコーティング仕様ではなく光沢ニス加工仕様。盤の重さも115gしかない。これはどこをどう見ても70年代中期以降の再発盤ですわ。やっぱりハズレやったか... と一瞬ガッカリしたがコレばっかりは仕方がない。“もう再発でも何でも構わんからどうかエエ音で鳴ってくれよ...” と祈るような気持ちでレコードに針を落とした。
 スピーカーから飛び出してきた音はこれまで聴いてきた他のスウェーデン盤と同傾向の “キメ細やかで尚且つ芯があるサウンド” で、嬉しいことにそれが「アビー・ロード」の音楽にドンピシャなんである。「カム・トゥゲザー」でのリンゴの切れ味鋭いドラミングも、「サムシング」におけるポールの驚異のベース・ラインも、「アイ・ウォント・ユー」後半のただならぬ緊張感も、「ヒア・カムズ・ザ・サン」の爽やかなギターの音色も、B面後半メドレーのめくるめくような展開も、「ジ・エンド」のギター・バトルのカッコ良さも、とにかくどこを切っても「アビー・ロード」の音楽性を上手く表現しているのだ。
 私は “再発盤のくせに結構やるやん!” と感心する一方で、もし69年に出た1stプレスが本当に存在するなら(←ビニール・コーティング・ジャケットで、盤は分厚くて150gぐらいあるはず...)是非この耳で聴いてみたい... との思いを強くした。まぁ気長に探してみるとしよう。