shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ロンリー・スターダスト・ダンス / エンジェルス

2012-09-30 | Wall Of Sound
 前回は音壁盤ハンティングの中でも最大の収穫の一つと言えるさいとうみわこの「ロンリー・スターダスト・ダンス」にめぐり逢えて大喜びしたところまで書いたが、この話にはまだ続きがあって、YouTube でこの曲を試聴していた時に偶然目にした解説に “エンジェルスのカヴァーでも知られている名曲中の名曲” とあった。エンジェルス??? 私の知る限り、エンジェルスと言えば1963年に「My Boyfriend's Back」で全米№1になったあのガールズ・グループしか思い浮かばないのだが、いくら何でもそれはちょっとあり得ない。
 興味を引かれてネットで調べてみると、 “1988年から1990年頃にかけて 60'sのオールディーズ・ポップスを日本語で歌っていた9人組女性ヴォーカル・グループ” だと判明。シングル7枚とアルバム1枚を出しただけで消滅してしまった典型的なB級、いやC級アイドル・ユニットだったようで、その7枚目にあたるラスト・シングルがさいとうみわこのカヴァー「ロンリー・スターダスト・ダンス」というワケだ。
 この曲はアルバム未収録というのが厄介で、マイナーなアーティストのあまり売れなかったであろうCD、それも20年以上も前の廃盤シングルを見つけるのは非常に難しいが、音壁コネクション(?)の一環としてそのエンジェルスとやらのカヴァー・ヴァージョンも聴いてみたくなった私はとりあえずアマゾンでチェック。しかし案の定と言うべきか、 “可”状態でレンタル落ちの分際でも “コレクター商品” 扱いで2,800円というボッタクリ価格が付いており、アホらしくてハナシにもならない。しゃあないのでヤフオクで網を張って待っていたところ、ラッキーなことにその数週間後に出品され(←やっぱりヤフオクって凄いよな...)、サンプル盤ということで敬遠されたのか(←私は全然気にならへんけど...)、無競争500円でゲットできた(^.^)
 届いたCDシングルのジャケットに写っていたのは4人だけだが、正直言ってみんな華が無いというか、アイドル・ユニットとしてのオーラのようなものは微塵も感じられない。しかし中身の音楽の方は文句ナシで、ちょうど一連のメグミン作品を想わせるようなオールディーズ風味の音壁ガールズ・ポップスになっている。
 アレンジを担当したのはさいとうみわこのリメイク・ヴァージョンの時と同じ大木雄司なのだが、まるでフィル・スペクターが憑依したかのようなジューシィ・フルーツ沖山優司によるオリジナル・ヴァージョンのエッセンスを上手く取り入れたサウンド・プロダクションが施されており、私のような音壁マニアでも十分満足のいくカヴァーに仕上がっている。歌の方は基本的にオリジナルのさいとうみわこ・ヴァージョンを忠実に模倣しているが、随所でメイン・ヴォーカルに寄り添う素朴そのもののバック・コーラスがめっちゃエエ味を出しており、ガール・グループとしての特性が巧く活かされている。
 数々の洋楽オールディーズ・ナンバーを日本語でカヴァーしてきたこのグループにとっての最後のシングルが和製ウォール・オブ・サウンドの隠れ名曲であるこの「ロンリー・スターダスト・ダンス」というのもよくよく考えてみれば実に興味深い選曲だ。やっぱりガールズ・ポップスと音壁アレンジの組み合わせは最高やなぁ...(^.^)
エンジェルス / ロンリー・スターダスト・ダンス

ロンリー・スターダスト・ダンス / さいとうみわこ

2012-09-25 | Wall Of Sound
 今日は久々に音壁ネタでいこう。「音壁JAPAN」を聴いて原メグミンが気に入った私が彼女のリーダー作「EVERLASTING LOVE」を試聴できるサイトを探していた時に偶然目にしたレビューに “さいとうみわこの名曲「ロンリー・スターダスト・ダンス」以来の衝撃” というのがあった。「ロンリー・スターダスト・ダンス」??? 知らんなぁ...(>_<)  そもそも “さいとうみわこ” って誰なん? しかし “○○以来の衝撃” という煽り文句(?)が音壁ファンの私としては気になって仕方がない。ということで、早速 YouTube で試聴してみるとこれがもう絵に描いたようなスペクター・サウンドで、そのキャッチーなメロディーといい、絶妙な音壁アレンジといい、看板に偽りナシの名曲名演である。こんなん全然知らんかったわ...(・o・)
 思わぬ拾い物に狂喜してアマゾンでこの曲が入っているアルバムを検索すると、「タイムミシン」と「Girl Meets Boy」という2枚がヒットした。貧乏コレクターの私は今回のようにアーティストに関する知識・情報が皆無に等しい時は安くてお買い得な方を買うことにしており、前者は1989年リリースの10曲入りで既に廃盤らしく中古盤が2400円から、後者は2006年リリースの18曲入りで中古盤が1300円から(←新品を2500円で買う気はサラサラない...)ということでコスパは圧倒的に後者が高いし、大好きな「ビキニスタイルのお嬢さん」のカヴァーまで入っている。しかもヤフオクでアマゾンの半値以下の500円という激安盤を発見... 私は迷わず「Girl Meets Boy」の方を購入した。
 数日後、届いた盤をCDプレイヤーにセットして、さぁこれから大音響で和製ウォール・オブ・サウンドに浸ってやるぞとワクワクしながらプレイボタンを押すと、出てきた音は予想に反してスッカスカの薄っぺらいサウンドで、YouTube で聴いたバリバリのスペクター・アレンジとは似ても似つかぬ地味なイントロにもビックリ(゜o゜)  私としては期待が大きかった分 “はぁ? 何これ???” 状態で、てっきり曲を間違えたのかと思いトラック・ナンバーを確認したが5曲目で間違いない。
 色々調べてみて分かったことだが、「ロンリー・スターダスト・ダンス」には2つのヴァージョンがあり、私が気に入ったスペクター・アレンジはオリジナルの方で、そっちは彼女が80年代前半にインディーズ・レーベルに吹き込んだ様々な音源を1枚にまとめたアルバム「タイムミシン」に収録されていたのだ。尚、インディーズ・ガール・ポップのコンピ盤「Amusement Park」に入っているのもこっちのオリジナル・ヴァージョンだ。
 私が買った「Girl Meets Boy」に入ってたのはあろうことか80年代後半にメジャー・デビュー用に再レコーディングされたリメイク・ヴァージョンで、プロデューサーが変わったからか一般受けを意識したからかは知らないがスペクター色が大きく減退しており、ありきたりなガールズポップに堕してしまっている。こればっかりは個人の好みの問題で、こっちの方が好きという人もいるかもしれないしオリジナルを知らなければこれはこれでエエと思えたかもしれないが、60年代スペクターの “あの音” が聴きたくてこの盤を買った私の耳には気の抜けた炭酸飲料みたいな平板なサウンドにしか聞こえない。再録やったら再録とちゃんと明記しといてもらわんと、何か詐欺にあったような後味の悪さが残ってしまう。まぁ自分の勉強不足を棚に上げて愚痴ってみてもしゃあないのだが、とにかく “同一アーティストによる再録リメイクにロクなモノなし” の法則は今回もやはり正しかったということだ。
 釈然としない気持ちを何とかしようとアルバム1曲目の「ビキニスタイルのお嬢さん」も聴いてみたのだが、こっちも不自然なぐらいぶりっ子してる声色と取って付けた様な歌い方でせっかくの名曲が台無しというトホホなカヴァーになっており、凹んだ気分がますます萎えていく... (>_<) 安物買いの銭失いとはよく言ったものだ。
 その後、滅多に見ない楽天オークションで偶然「タイムミシン」が出品されているのを発見、しかも700円というからアマゾンの 1/3 以下だ。当然ライバルもおらず無競争で首尾よくゲットできてめっちゃ嬉しかったのだが、紆余曲折を経て手に入れたこの盤を聞いた感想は “これこれ、やっぱりこれでっせ(^o^)丿” という感じ。スペクター信者の座右の銘である “Back To Mono” に徹底的にこだわったモノラル録音、お約束のカスタネット攻撃と轟きわたるハル・ブレイン・ライクなドラム、そして細部に至るまでフィル・スペクターの音世界を忠実に再現した器楽アレンジが一瞬にして “あの時代” へとタイムスリップさせてくれるのだ。
 作・編曲はジューシィ・フルーツのベーシスト沖山優司で、彼のマニアックなまでの拘りと優れた音楽的センスには唸ってしまう。和製ウォール・オブ・サウンドの金字塔と言えるこの「ロンリー・スターダスト・ダンス」は例の「音壁JAPAN」が気に入ったスペクターマニアにとっては必聴の1曲ではないだろうか?
さいとうみわこ / ロンリー・スターダスト・ダンス(オリジナル・ヴァージョン)

さいとうみわこ / ロンリー・スターダスト・ダンス(再録ヴァージョン)
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ROCK or DIE / 相川七瀬 (Pt. 2)

2012-09-21 | J-Rock/Pop
 私がリアルタイムで聴いて盛り上がっていた相川七瀬ナンバーはこのベスト・アルバムで言うと前半に収められた①「夢見る少女じゃいられない」から⑦「Sweet Emotion」までで、⑧から後は聞いたことがあるようなないような、その程度のあやふやな印象しかない。改めて今の耳で聴いてみても、楽曲のクオリティーは 2ndアルバム「パラドックス」からの3枚のシングル⑤「恋心」⑥「トラブルメイカー」⑦「Sweet Emotion」でピークに達し、それ以降は下降線を辿っているように思えるのだ。要するにコンポーザー兼プロデューサーの織田哲郎がそれまでのようなヒット・ポテンシャルの高い曲を書けなくなったということなのだろう。
 そんなオダテツのネタ切れ初期症状を如実に示しているのが⑧~⑩あたりのシングル曲で、もう見境なく80'sの洋楽ロック/ポップスからの引用を連発しており、あれやこれやと策を弄するあまりスカッと突き抜けるような一気通貫の爽快さが損なわれてしまっている感は否めない。ただ、百戦錬磨のオダテツだけあって凡百の J-POPS に比べれば曲のフックはまだまだ健在だし、私は元ネタとなった80'sヒット曲も大好きなので別の意味で大いに楽しめているのだが...(笑)
 中でも一番笑えたのが⑧の「Bad Girls」で、思わずドナ・サマーを思い浮かべてしまいそうな紛らわしいタイトルの曲なのだが、この印象的なベースラインはどこをどう聴いても1987年にイギリスで大ヒットした M/A/R/R/S の「Pump Up The Volume」そのまんま。ブリティッシュ・ファンク色濃厚なハウス・サウンドが生み出す独特のグルーヴ感と相川七瀬のツンデレ・ヴォーカルの組み合わせが実に新鮮で面白い。こういう楽しみ方は邪道なのかもしれないが、何の脈絡もなしに唐突に飛び出してくる T.REX の「テレグラム・サム」そっくりなサウンドに目が点になる②「バイバイ。」(←初めて聞いた時はイスから転げ落ちそうになった...)と並ぶ、洋楽ファン必聴(?)の摩訶不思議なナンバーだ。
相川七瀬 Bad Girls

MARRS - Pump Up The Volume 1987 [HD Official Video]


 ⑨「彼女と私の事情」はプリミティヴなドラムのビートにアグレッシヴなイケイケ・ギター、粗削りでパワフルなシャウトといった “ジョーン・ジェットらしさ” を随所に散りばめた面白い曲で、シングル・マーケット向きとは言えないかもしれないが、ライヴでは大盛り上がりしそうなロックンロールだ。日本人でこの手の曲を歌わせたら七瀬の右に出る者はいないだろう。
Aikawa Nanase 彼女と私の事情(Kanojo to watashi no jijou) 9S(ra)


 ジュリーの「六番目のユウウツ」みたいなイントロのリフからフーターズを彷彿とさせるハッピーな80'sポップンロールへとなだれ込み、途中 My Little Lover の「めぐり逢う世界」に傾きそうになりながらもぐっと踏ん張り、最後には中森明菜の「DESIRE」みたいにビシッとキメて、涼しい顔で再びジュリーへと戻っていく(←あくまでもイメージです...笑)⑩「nostalgia」もめっちゃ好き。昔どこかで聞いたような懐かしいフレーズ/サウンドがてんこ盛りのこの曲を “ノスタルジア” と名付けたセンスが素晴らしい。
相川七瀬 Nostalgia


 後期の曲で断トツに気に入っているのがアン・ルイスのカヴァー⑭「六本木心中」だ。さすがは歌謡ロックの代名詞と言われるだけあって、メロディーラインが地味すぎてほとんど印象に残らない⑪「Lovin' You」以降の楽曲群の中にあって圧倒的な存在感を示しているのだ。オリジナルのアン・ルイスを圧倒的なパワーでグイグイ加速していく大排気量のアメ車とするならば、七瀬のヴォーカルはシャープなハンドリングでワインディングを軽快に駆け抜けていく国産スポーツカーといった感じで、そんな彼女の持ち味を巧く活かしたアレンジがめっちゃカッコいい(←取って付けた様なかったるいエンディングだけはどうしても好きになれないが...)。やっぱり相川七瀬はエッジの効いたギターが前面に出たアップテンポな歌謡ロックが最高ですな(^o^)丿
Aikawa Nanase 六本木心中(Roppongi shinjuu) 21S(RD)

ROCK or DIE / 相川七瀬 (Pt. 1)

2012-09-17 | J-Rock/Pop
 前回に引き続き、今日も相川七瀬だ。マーティが参加した「EVERYBODY GOES」をきっかけに再び彼女を聴いてみようと思った私は取りあえず手頃なベスト盤を探すことにした。1999年以降の曲はほとんど知らないし、それ以前のヒット曲もリマスターされた “良い音” で聴いてみたかったからだ。で、何種類かあるベスト盤の中から選んだのがこの「ROCK or DIE」で、 “ロックか死か” というストレートなタイトルや鮮やかな赤を基調としたジャケットが気に入って購入決定。DVD が付いてない通常盤は人気が無いらしくヤフオクで500円だった。
 彼女のヒット曲にはいくつかのパターンがあるが、中でも最も彼女に合っているのがポップに弾けまくる疾走系ロックンロール。私に言わせれば “疾走せずに何の相川七瀬か!” という感じなのだが、そんなハイスピード・ロック・チューンの中で特に気に入っているのが⑥「トラブルメイカー」だ。私が初めて聴いた相川七瀬がこの曲で、グングン加速しながら疾走する曲想と見事にシンクロした PV もめちゃくちゃカッコ良く(←けっこう動体視力を試される映像で目が疲れるのだが...)、今でもこれが彼女の最高傑作だと思っている。
相川七瀬 【PV】 トラブルメイカー


 相川七瀬はその “元ヤン・ツッパリ” のイメージから “和製ジョーン・ジェット” と言われることが多い。確かに皮ジャンが似合う不良っぽいイメージはジョーン・ジェットを想わせるものがあるが、骨の髄までロックンロールが染み込んだ筋金入りのロッカーであるジョーン・ジェットとは違い、この頃の彼女はプロデューサーの織田哲郎が80'sポップスのオイシイ所を随所に散りばめて仕上げたJ-POP を歌うガールズ・ポップ・シンガーという側面が強い。そういう意味ではジョーン・ジェットというよりもむしろパット・ベネターあたりに近いところもあり、アグレッシヴなギター・サウンドを前面に押し出したデビュー曲①「夢見る少女じゃいられない」もマイク・チャップマンがプロデュースした初期ベネター的な薫りがするし、隠し味的に使われているキーボードにも80'sアメリカン・ポップスの影響が強く感じられる。
相川七瀬 【PV】 夢見る少女じゃいられない


 彼女にとって最大のヒット曲である⑤「恋心」は昭和歌謡を想わせる日本人好みの切ないメロディーをビートの効いたロックの形態で演奏した、まさに絵に描いたような歌謡ロックであり、 J-POP バブル黄金期を象徴するかのようなキャッチーなナンバーだ。ドラマ仕立ての PV もハードボイルドな味付けで、七瀬の元ヤン・キャラ故か、機関銃をガンガン撃ちまくる強盗犯役がぴったりハマっているのが面白い。
相川七瀬 【PV】 恋心


 ハードでソリッドなギター・サウンドとポップ・ソングの親しみやすさを見事に両立させたのが⑦「Sweet Emotion」で、そのライヴ感溢れるキャッチーなロックンロールはまさに相川七瀬の真骨頂。曲想としてはジョーン・ジェットの「グッド・ミュージック」あたりが元ネタだと思うし、彼女が皮ジャン姿でオーディエンスを煽りまくる PV なんかもろにジョーン・ジェットのパロディーだが、 “それがどーした” の勢いで一気呵成に聴かせてしまうところはさすがの一言。オダテツ・マジックというべきか、時間差攻撃でメロディーを追いかけるストリングス・アレンジも効果抜群で、相川七瀬と織田哲郎のコラボがこの時期ピークにあったことが実感できる名曲名演だ。 (つづく)
(相川七瀬) Sweet Emotion


【おまけ】コレ↓めっちゃオモロイわ(^o^)丿
相川七瀬替え歌「夢見るアラフォーじゃいられない」本人です。さんまのからくりTV
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R.U.O.K?! / 相川七瀬

2012-09-13 | J-Rock/Pop
 今日もマーティ絡みのアルバムでいこう。私は80年代以降の邦楽、特に J-POP と呼ばれるジャンルの音楽は趣味に合わないのでほとんど聴かないが、そんな私で1996~1998年あたりの3年間だけは J-POP をよく聴いていた。ちょうどグランジ/オルタナ・ロックやヒップホップに汚染された洋楽と絶縁して何か面白い音楽はないもんかと探していた時にたまたま耳にした B'z やイエロー・モンキーに大感激して彼ら見たさにテレビの歌番組を見始め、そのついでに他のアーティストの音楽も耳にすることになった。その頃のヒット曲には何故か私の嗜好に合うものが多く、お気に入りのアーティストもできて怪しげな台湾盤(!)やブックオフの激安CDを買って楽しんでいたのだが、この相川七瀬も当時よく聴いたうちの一人だった。
 やがて2000年代に入って J-POP が急速につまらなくなり、それに比例するかのように彼女のシングル曲のクオリティーが低下したこともあって私の中ではすっかり “七瀬=懐メロ” と化していたのだが、そんな私が再び彼女の曲を聴くきっかけになったのが他でもないマーティ・フリードマンだった。彼の本「いーじゃん! J-POP」には八代亜紀や石川さゆりといった憧れの人と共演できて夢みたいだったとコーフン気味に書かれてあるのだが、日本に来たばかりの彼に最初に J-POP の仕事をくれたのは他でもない相川七瀬であり、彼女のバンドの一員として全国ツアーにも参加したというのだ。早速 YouTube で調べてみてマーティが彼女のバックでガンガン弾いてる映像を発見、それが2005年リリースのアルバム「R.U.O.K?!」からシングルカットされた⑦「EVERYBODY GOES」である。
 彼女はお世辞にも歌が上手いとは言えない。特にスローな曲は苦手なようで(←以前サッカーの試合前の国歌斉唱で聞かされた「君が代」は思わず脱力してしまうレベルやった...)、私の知る限りでは彼女が歌うバラッドで心に残るものはない。逆に彼女のスイートスポットであるアップテンポなポップ・ロック・チューンにハマった時はそのキュートでありながらパワフルな歌声と相まって他のシンガーには真似の出来ない名演が生まれるのだ。この⑦でもイントロからエンディングまで一気呵成に聴かせる吸引力は凄まじいものがあるし、マーティのメタル魂溢れるギター・ソロもめちゃくちゃカッコイイ(^o^)丿 ロックンロールの楽しさがビンビン伝わってくる PV もめっちゃエエ感じに仕上がっていて言うことナシだ。
Aikawa Nanase EVERYBODY GOES 27S(RD)


 このアルバムはマーティ以外にも “超豪華ミュージシャンがレコーディングに参加” とのことなのだが、日本のロックシーンには疎いので正直言ってよく分からない。しかしそんなバック・バンドのメンバーが一致団結して生み出すライヴ感溢れる骨太ロック・サウンドは快感そのもの。全盛期を彷彿とさせるその躍動感溢れる彼女の歌声も “相川七瀬、ココに完全復活!!!” と!を3つも付けたくなるようなノリの良さだ。⑦以外ではアルバム・タイトル曲の②「R.U.O.K?!」と③「FLY TO RAINBOW RAY」が特に気に入っているのだが、どちらもキャッチーなメロディーと心地良い疾走感がたまらないハイスピード・チューンだ。やっぱり相川七瀬はこうでなくっちゃ!
相川七瀬 - R.U.O.K?! [JAPAN TOUR 2006 R.U.O.K?!]

相川七瀬 - FLY TO RAINBOW RAY [JAPAN TOUR 2006 R.U.O.K?!]


Tokyo Jukebox 2 / Marty Friedman

2012-09-09 | Cover Songs
 冬ミン、アッキーナと数少ない演歌ネタも尽きてしまったので、今日は彼女らのヒット曲をメタル化カヴァーしたマーティ・フリードマンの「Tokyo Jukebox 2」にしよう。このアルバムはタイトルからも明らかなように、 2009年に出した J-POP ・カヴァー・アルバム「Tokyo Jukebox」の続編であり、彼がこよなく愛する J-POP の素晴らしさを世界に向けて発信していきたいという彼のライフ・ワークの一環といえる1枚だ。このブログで「Tokyo Jukebox」を取り上げた時にも書いたが、私は今時の J-POP には何の興味関心も無い人間なので、マーティがそんな J-POP をどんな風に料理するかが最大の聴き所である。
 収録曲は①「Yeah! めっちゃホリディ」(松浦亜弥)、②「涙そうそう」(夏川りみ)、③「会いたかった」(AKB48)、④「雨の慕情~舟歌」(八代亜紀)、⑤「トイレの神様」(植村花菜)、⑥「Canon a la Koto」(ヨハン・バッヘルベル)、⑦「I LOVE YOU」(尾崎豊)、⑧「素直になれたら」(JUJU feat. Spontania)、⑨「Butterfly」(木村カエラ)、⑩「Beautiful Days」(嵐)、⑪「Little Braver」(Girls Dead Monster)、⑫「また君に恋してる」(坂本冬美)、⑬「上を向いて歩こう」(坂本九)の全13曲で、原曲を知っていたのは④⑫⑬の3曲のみ。それ以外の10曲はオリジナルを耳にしたこともないし、松浦、夏川、植村、ヨハン、木村、Girls... に至ってはその名前すら全く知らなかったというお寒い状況だ。
 選曲面では石川さゆりやサザン、竹内まりやにSMAPといった大物アーティスト達の名曲をメタル化した前作の方がクオリティーは上だと思うし私の好みにも合っているが、まぁその辺はリスナーそれぞれの嗜好の問題で、実際に聴いてみた印象として基本的な作風は前作とほとんど変わっていない。
 私がこのアルバム中で一番気に入ったのは八代亜紀の2大名曲をメドレーにした④「雨の慕情~舟歌」。前半の「雨の慕情」はマーティのアグレッシヴなプレイが炸裂するゴリゴリメタル・ヴァージョン、一転して後半の「舟歌」は重厚な泣きのギターが堪能できるという感じで、テレビ東京の「ヘビメタさん」でアッキーナと共演した時のアレンジをベースにしており、彼女のヴォーカル・ラインを鋼鉄のようなギター・サウンドで見事に表現したその歌心溢れるプレイはまさに鳥肌モノ(≧▽≦)  これをキラー・チューンと呼ばずして何と呼べばいいのだろう?
Ameno Bojo - Funauta


 ④に負けず劣らず素晴らしいのが冬ミンの⑫「また君に恋してる」だ。この曲は一聴しただけで “コレはもうメタルですよ! バリバリメタルですよ!” とマーティが力説する声が聞こえてきそうな(笑)ナンバーだが、まるでギターで歌っているかのようなそのエモーショナルなプレイはまさに圧巻の一言で、メガデス脱退後日本にやってきてひたすら “ヴォーカルの存在感をギターで表現する” プレイを追求してきたマーティのメタル魂が本懐を遂げたと言っても過言ではない大名演だ。
Matakimini Koisiteru


 未知の曲では②の「涙そうそう」と⑨の「Butterfly」が良かったが、私的にはやはり耳に馴染んだ古い歌謡曲の方がしっくりくる。そういう意味でもラストに置かれた⑬「上を向いて歩こう」は必聴だ。これは彼の友人である TOTOのスティーヴ・ルカサーとの短いジャム・セッションを収録したもので、ビブラートを始めとしてそれぞれの個性が際立つプレイにはもう唸るしかないし、二人が奏でるギターの優しい音色にも涙ちょちょぎれる。目も眩むような速弾きを楽々とこなす一方でこのように聴く者の魂を揺さぶるような歌心溢れるプレイも出来るところにこそ彼の真骨頂があるのだろう。やはりマーティには昨今の軽薄 J-POPではなく、情緒纏綿たる “オール演歌&昭和歌謡” のメタル化カヴァー・アルバムを作ってほしいものだ。
Sukiyaki

雨の慕情 / 八代亜紀

2012-09-04 | 昭和歌謡・シングル盤
 調子に乗って今日も八代亜紀だ。彼女の盤で私が持っているのは前回取り上げたジャズ・ライヴのCDと、この「雨の慕情」のアナログ・シングルの2枚だけ。そもそも演歌というジャンルはクラシックなどと同様、自分には全く無縁な音楽だったので、その範疇に属する八代亜紀という歌手も好きとか嫌いとかいう対象にすらならず、時折嘉門達夫の “厚化粧ネタ” を聞いて思い出す程度の存在だった。
 そんな私が10年ほど前にジャズ・スタンダードを歌ったライヴ盤から彼女に入門した経緯は前回書いた通りだが、それはあくまでも “スタンダード・ナンバーを歌うハスキー・女性ヴォーカリストとしての八代亜紀” という認識であって、相も変わらず彼女の持ち歌はほとんど知らない状態が続いていた。
 そらから更に数年が経ち、ジャンルの垣根を越えた面白カヴァー盤にハマって色々と聴きまくっていた頃に偶然見つけたのが演歌をジャズ・アレンジでカヴァーした「ジャズ代官 ~演歌がジャズ! よいではないか、よいではないか~」という珍盤CDで、キワモノ臭がプンプンするタイトルとは裏腹に中身はしっかりしたジャズになっており、その中でも特に気に入った1曲が「雨の慕情」だった。
 1980年に大ヒットしたこの曲のオリジナルをちゃんと聞いたことがなかった私は、最初「雨の慕情」というタイトルを見ても誰の曲なのかサッパリわからなかったし Aメロを聞いてもいまいちピンとこなかったのだが、サビの “雨雨ふれふれ もっとふれ~♪” のパートを聞いて “あぁ、このフレーズどっかで聞いたことあるぞ!” となり、 YouTube で検索して初めて彼女のオリジナルを聴いたのだが(←遅い!!!)、演歌というよりは古き良き昭和歌謡の流れを汲むその哀愁舞い散る旋律と彼女の官能的な歌声の絶妙なマッチングに瞠目させられた。
 この「ジャズ代官」というCDは正統派の音楽ファンからは歯牙にもかけられないような邪道盤なのかもしれないが、演歌というジャンルへの偏見を取り除いてくれたという意味でもオリジナル・シンガーを知るきっかけになったという意味でも私にとってはかけがえのない1枚。もちろん演歌云々は横に置いといて、ストレートアヘッドなジャズ・アルバムとして聴いても結構楽しめる内容になっている。
雨の慕情

雨の慕情 八代亜紀


 それから1年もたたないうちに、今度はこのブログではお馴染みのマーティ・フリードマンとアッキーナのコラボを YouTube で発見、ガンガン弾きまくるマーティのロック・スピリット溢れるプレイを抜群のリズム感でガッチリ受け止めるアッキーナ姐さんのシンガーとしての懐の深さに驚かされたし、何と言ってもバリバリのロック・アレンジでカッコよく生まれ変わったこの曲は言葉に出来ないほど衝撃的だった。
Marty Friedman with Aki Yashiro


 そして去年の夏から秋にかけて昭和歌謡のシングル盤を買い漁っていた時にこのレコードを100円で見つけて迷わず購入、プレミアの付いていないシングル盤は大抵100円前後で買えるのが嬉しい。届いた盤はピッカピカで音質も文句ナシ。まさにラッキー・クッキー・八代亜紀である。この手のヴォーカル物はやっぱりアナログ独特の温か味のあるサウンドで聴くのが一番だ。ここ数日は陽が落ちると少し涼しくなってきたが、部屋の灯りを落とし窓を全開にして夜風に当たりながら小音量で聴く八代亜紀って結構エエと思う。昭和歌謡ファンはぜひお試しあれ。
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