shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Their Greatest Hits 1971-1975 / Eagles

2009-03-31 | Rock & Pops (70's)
 世界で一番売れたアルバムとしてギネスブックに認定されているのはご存知マイケル・ジャクソンのスリラーだが、国別の売り上げとなると話は違ってくる。イギリス国内ではクイーンのグレイテスト・ヒッツが540万枚で、そしてアメリカ国内ではイーグルスのグレイテスト・ヒッツが2,900万枚でそれぞれ№1の売り上げを誇っている。どちらもその国の“国民的バンド”が1位というのが面白い。イーグルス初期のアルバム4枚からセレクトされたこの「イーグルス・グレイテスト・ヒッツ1971-1975」には当然ながら彼らの代表作であるあの「ホテル・カリフォルニア」からの楽曲は入っていない。しかもCD時代に入ってコンプリート・ベストのような盤が何種類か出ているにもかかわらず、この盤は今でもジワジワと売れ続けているという。彼らの音楽、特に初期のカントリー・ロック・スタイルがいかにアメリカで愛されているかがわかろうというものだ。
 イーグルスは元々リンダ・ロンシュタットのバック・バンドとして集められたミュージシャン達が結成したグループで、72年にグリン・ジョンズ(幻の「ゲット・バック」や「ゼッペリンⅠ」のエンジニアとして有名)のプロデュースで「イーグルス・ファースト」をロンドンで録音(←意外でしょ!)した。第1弾シングルの①「テイク・イット・イージー」はグレン・フライとジャクソン・ブラウンの共作で、これぞウエスト・コースト・ロックの極めつけ!といえるカッコ良いナンバー。バーニー・リードンのバンジョーが醸し出すカントリー色の濃いサウンドが疾走感溢れる曲想とベストのマッチングを見せ、そこに美しいコーラス・ハーモニーが加わって文句の付けようのない名曲名演に仕上がっている。その底抜けに楽天的な歌詞も含めて私がイーグルスで一番好きな曲がコレだ。ファースト・アルバムからの2枚目のシングル②「ウィッチー・ウーマン(魔女のささやき)」は “恋多き女” リンダ・ロンシュタットのことを歌ったもので、後の「呪われた夜」にも通じるミステリアスな雰囲気を持ったロック色の濃いナンバーだ。
 ①②の連続ヒットで幸先の良いスタートを切った彼らは翌73年にセカンド・アルバム「デスペラード(ならず者)」を発表、シングル・カットされた⑦「テキーラ・サンライズ」はペダル・スティール・ギターをフィーチャーしたアコースティック・サウンド主体の地味な曲でヒット・チャート上では全くの不発に終わったが、彼らの味わい深いコーラス・ハーモニーが堪能できる佳曲だと思う。アルバム・タイトル曲⑤「デスペラード」は哀愁舞い散るドン・ヘンリーのハスキーな歌声がたまらないイーグルス屈指の名バラッドで、リンロン姐さんやカーペンターズがカヴァーしており、今や押しも押されぬスタンダード・ソングになっている。74年のサード・アルバム「オン・ザ・ボーダー」ではドン・フェルダーの加入によって爽やか志向のカントリー・ロックからハードでより泥臭いロックへの転換が図られた。ファースト・シングル④「オールレディ・ダン(過ぎた事)」の①をハードにしたようなサウンドが、グループ内でハード派がカントリー派に対してイニシアティヴを握ったことを如実に物語っていた。
 75年リリースの全米№1アルバム「ワン・オブ・ジーズ・ナイツ(呪われた夜)」はハード&ファンキー路線を更に推し進めた大傑作。ファースト・シングルとなったタイトル曲⑥は、一体どこが呪われとるんじゃ!と思わずツッコミを入れたくなるぐらいの名曲名演で、ドン・ヘンリーの甘くセクシーなヴォーカル、ドン・フェルダーのエッジの効いたギター、ランディー・マイズナーの躍動感溢れるベース、ハイトーンのコーラス・ハーモニーと、「ホテル・カリフォルニア」前夜の充実した演奏が楽しめる。セカンド・シングル③「ライン・アイズ(いつわりの瞳)」は久々のカントリー・フレイヴァー溢れるナンバーで、その美しいコーラス・ハーモニーと親しみやすいメロディーは癒し効果抜群だ。ランディー・マイズナーのファルセット・ヴォイスによる熱唱に涙ちょちょぎれるサード・シングル⑧「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」も大ヒットし、イーグルスは名実ともにアメリカを代表するバンドにのし上がったのだ。

Eagles - Take it Easy - Letra and Lyric

Celebration / Alma Cogan

2009-03-30 | Oldies (50's & 60's)
 60年代のオールディーズ・ポップスの世界においてイギリス、つまりビートルズ登場以前のブリティッシュ・ミュージック・シーンというのは脆弱で、アメリカ勢にまったく太刀打ちできなかった。そんな中、孤軍奮闘していたのが“大英帝国の誇り”クリフ・リチャードであり、このアルマ・コーガンだった。
 アルマ・コーガンといえば何と言っても61年の「ポケット・トランジスター」である。“3分間ポップスの極み”と言ってもいいくらい小粋でポップなナンバーで、“わたしの持ってるちっちゃなポケット・トランジスタ、毎晩ヒッパレー聞くの~♪”という森山加代子のカヴァーでも有名だ。その前年にヒットした「恋の汽車ポッポ」(アネットとの競作で、これも加代ちゃんがカヴァー)と共に日本ではこの2曲の知名度が際立っているため “オールディーズの一発屋”的なイメージがあるかもしれないが、本国イギリスでは52年にEMI傘下のHMVレーベル(あのCDショップとは無関係)からデビューし、幾多のヒット曲を出している人気シンガーなのだ。私はオールディーズのオムニバスCDで「ポケット・トランジスター」を聴いていっぺんにその愛嬌のあるハスキー・ヴォイスのファンになり、それ以外の曲も聴きたくて彼女のLPやCDを買い漁った。それで分かったのは、ガーシュウィン、コール・ポーター、アーヴィング・バーリンらのアメリカン・スタンダード・ナンバーをジャジーに歌ったアルバム「アイ・ラヴ・トゥ・シング」を出したり、同じEMI傘下のコロムビア・レーベルに移籍してからも同趣向のアルバム「ウィズ・ユー・イン・マインド」を出したりと、初期の音源が結構ジャズジャズしていたことだ。これには正直驚いた。つまり彼女はジャズもポップスも両方こなせる“ホンモノ”のガール・シンガーだったのだ。あのジョン・レノンも彼女に夢中だったというからその実力は折り紙つきだ。やがて60年代に入ると上記のような明るく楽しいポップス路線にシフトしていくのだが、そういった流れといい、“the girl with the laughter in her voice” と言われるほどユニークで元気な歌声といい、まさに“イギリス版江利チエミ”といえるかもしれない。そんなアルマ・コーガンの3枚組ベストCDがこの「セレブレーション:ジ・アルティメット・コレクション」であり、それぞれ“50年代”“60年代”“スタンダード”とテーマ分けされていて非常にわかりやすい構成になっている。
 “50年代”編は江利チエミのカヴァーで有名な「裏町のおてんば娘」やフランキー・ライモンの「恋は曲者」、スインギーな「ブルー・スカイズ」etc実に楽しい曲が目白押しだ。
 “60年代”編ではエキサイターズのカヴァー「テル・ヒム」の日本語ヴァージョン「イッテ・クデス(?)」が必聴。斬新なアレンジの「テネシー・ワルツ」も楽しいし、軽快にスイングする「ジョリー・グッド・カンパニー」は絶対的オススメの隠れ名曲だ。
 “スタンダード”編は大半がジャズのスタンダード・ソングなのだが、大注目は冒頭の「ヘルプ!」「アイ・フィール・ファイン」「エイト・デイズ・ア・ウイーク」「涙の乗車券」というビートルズ・ナンバー4連発だ。そのどれもが実にユニークなアレンジを施されていてめちゃくちゃ面白い。例えば「エイト・デイズ・ア・ウイーク」なんか、意表を突いてスロー・バラッド風で始まり、後半に入ると一転テンポ・アップ、エンディングまで一気に駆け抜けるカッコ良さ(≧▽≦) この4曲は入手困難な音源なので、それだけでもこのCDを買った価値があるというものだ。
 まるで石膏像のような目鼻立ちの整った容姿で人気があったチャーミングな女性シンガー、アルマ・コーガン、彼女は美人薄命の言葉通り66年に癌のため34才の若さで急逝してしまったが、その魅力的な歌声は40年以上たった今でも世界中で愛されているのである。

POCKET TRANSISTOR / ALMA COGAN

Cloud Nine / George Harrison

2009-03-29 | George・Ringo
 「ジョージ・ハリスンの代表作は?」と問われれば、よっぽどの天邪鬼でもない限り「オール・シングズ・マスト・パス」と答えるだろう。「マイ・スイート・ロード」の入った例の3枚組大作だ。しかしこの“代表作”という言葉が曲者で、この言葉の裏には“歴史的重要性”とか“エポックメイキングな大作”といったニュアンスが含まれているように思える。それはちょうどビートルズなら「サージェント・ペパーズ」や「アビー・ロード」を、ゼッペリンなら「Ⅱ」や「Ⅳ」を挙げる人が多いのと同じである。だから「それじゃあ一番よく聴くアルバムは?」と聞けば答えは分かれるのではないだろうか?愛聴盤というのは初めて聴いた時の衝撃度や個人的な嗜好・思い入れによって千差万別、十人十色だからである。私がよく聴くのはビートルズ的なものを意識的に避けてある意味“無理していた”ように聞こえる70年代前半のアップル期よりも、“ビートルズの封印を解いた”70年代後半以降のリラックスしたジョージである。そういう理由で私はこの「クラウド・ナイン」を愛聴している。
 この盤はビートルズの舎弟頭といえるジェフ・リンのプロデュースで、彼お得意の万華鏡のようなポップ・ワールドが展開されており、人によってはそこがオーバープロデューシングに思えるのかもしれないが、ビートルズを知り抜いたジェフ・リンだからこそ作り得たビートリィな音世界の中で、ジョージが肩の力を抜いて愉しみながら歌い演奏しているように私には聞こえる。76年の「33&1/3」や79年の「慈愛の輝き」あたりのアルバムに顕著な、彼の優しさが滲み出るような温かみのあるサウンドと、ジェフ・リンが後期ELOで実践していたアコースティック・ギター主体のカラフルでポップなサウンドが見事に融合して化学反応を起こし、ジョージをコンテンポラリー・ミュージック・シーンへとカムバックさせる大ヒットに繋がったのだと思う。
 個々の曲に関して言えば、ジョージにとって久々の全米№1となったファースト・シングル⑪「ゴット・マイ・マインド・セット・オン・ユー」が目立っているが、私はむしろ開き直って徹底的に“ビートルズ的なサウンド”を再現した⑥「ホエン・ウィー・ワズ・ファブ」が好きだ。まるで「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のセルフ・パロディーかと思ってしまうくらい見事に「マジカル・ミステリー・ツアー」あたりのサイケデリックなサウンド・プロダクションを施したキラー・チューンで、リンゴのドラムが「バスン!」と入ってきた瞬間、あたりの空気が一変し、それは完全にビートルズのサウンドと化す。私なんかこれだけでもう鳥肌が立つほどゾクゾクしてしまう。しかもこの懐かしさ全開のコーラス・ワーク、ストリングスの絶妙な使い方... これこそまさに“87年に蘇ったビートルズ・サウンド”そのものだ。しかもゴドレイ&クレーム製作のビデオ・クリップ、これがまた圧倒的に素晴らしい。リンゴはもちろんのこと、左利きでベースを弾くセイウチの着ぐるみまで登場(←ここんとこ、大好き!)、最後にはシタールが鳴り響く中、千手観音と化して空中浮遊(?)するシーンなど、細部にまで徹底的に拘ったその作りはビートルズ・ファンなら感心・感動・感激せずにはいられない。
 タイトル曲①「クラウド・ナイン」も上記2曲に負けず劣らず素晴らしい。左右のスピーカーに振り分けられたジョージとクラプトンのギターの絡みに涙ちょちょぎれる渋~いブルースで、ジョージの達観が伝わってくるようなめちゃくちゃカッコ良いナンバーだ。それ以外にもELO版「ハード・デイズ・ナイト」みたいなポップさが愉しい③「フィッシュ・オン・ザ・サンド」、もろELOサウンドの中、ジョージ至芸のスライド・ギターが冴え渡る⑤「ジス・イズ・ラヴ」、ビートルズが得意としていた風刺の効いた歌詞が面白い⑦「デヴィルズ・レディオ」etc聴き所満載だ。確かにジョージ本来の持ち味という点では「33&1/3」や「慈愛の輝き」に一歩譲るが、私は80年代に不死鳥のように蘇ったビートルズ・サウンドが聴けるこのアルバムの“吹っ切れた”ジョージが大好きだ。

George Harrison - When we was fab

Decade / Duran Duran

2009-03-28 | Rock & Pops (80's)
 80'sの第2期ブリティッシュ・インヴェイジョンの中心的存在と言えばワム、カルチャー・クラブ、そしてデュラン・デュランだろう。そしてこの御三家の中で私が最も好きだったのがデュラン・デュランである。彼らはデビュー当初、ビデオクリップを中心としたルックス重視のプロモーションのせいで“売れ線狙いのヴィジュアル系アイドル・バンド”というレッテルを貼られてしまったような印象が強い。そうしたイメージ、思い込みが先行するあまり、デュラン・デュランについて語られることといえば、やれMTVがどうの、ビデオクリップがスベッただのコロンだだのといった、この2点だけなのである。私はそれが悲しい。だいたい彼らの音楽を評して“売れ線狙い”“ヴィジュアル系アイドル”とはどういうことか。彼らの本質はデビッド・ボウイやロキシー・ミュージック流れをくむ官能的なニュー・ロマンティック路線と、ナイル・ロジャースやトニー・トンプソンといったシックの流れをくむダンサブルなホワイト・ファンク路線の危ういバランスの上で成り立っているポップ・ミュージックなのだ。このことは後にアーケディア派とパワーステーション派に分裂したことでも明白だ。単なるポップ・アイドルとはワケが違う。
 私が初めてデュラン・デュランを聞いたのはラジオのチャート番組で、①「プラネット・アース」が流れてきた時、その洗練されたキャッチーでダンサブルなサウンドに耳が吸いついた。それほど彼らの“音”は斬新に響いた。続く②「ガールズ・オン・フィルム」も歯切れの良いギター・サウンドとタイトなビートがが印象的な曲で、私の中では要注目新人バンドになった。82年発表のセカンド・アルバム「リオ」はデュラン・デュランの最高傑作といえる名曲満載の凄い1枚で、そこからシングル・カットされた③「ハングリー・ライク・ザ・ウルフ」はデュラン・デュランを、いや80年代を代表する1曲といえるダンサブルでカッコ良いロックンロール。チャート上ではマイケル・ジャクソンとカルチャー・クラブの厚い壁に阻まれて3週連続第3位に終わったが、記録以上に記憶に残るヒット曲だ。次のアルバムまでの繋ぎのシングル⑥「プリーズ・テル・ミー・ナウ」は芸のない長すぎる原題 (Is there something I should know) が玉にキズだが、曲そのものは爽快感に溢れるポップンロールでこれまた大ヒット。83年リリースのサード・アルバム「セヴン・アンド・ザ・ラギッド・タイガー」はキーボードが前面に出てギターがやや引っ込み気味の、どちらかというとアーケディア色の強いサウンドで、私個人としてはあまり好きにはなれなかったし、シングル⑦「ユニオン・オブ・ザ・スネイク」もやや作りすぎの感がして冗長に感じられた。⑧「ザ・リフレックス」はシングル・カットするにはアルバム・ヴァージョンではイマイチ弱いとの判断からナイル・ロジャースにリミックスを依頼、“チャラララ~♪”のフェイド・インで始まるキャッチーなイントロや強化されたビートの甲斐もあって、見事彼ら初の全米№1に輝いたノリの良いダンス・ナンバーだ。⑨「ワイルド・ボーイズ」は⑦の流れを汲む大仰な曲で発表当時は好きになれなかったが、その後ライブでギターが狂ったように唸りまくるヴァージョンを聴いて好きになった曰くつきの1曲だ。日本では“ミルコ・クロコップのテーマ”として有名だろう。「007美しき獲物たち」のテーマ曲⑩「ア・ヴュー・トゥ・ア・キル」は③と並んで私が大好きなデュラン・デュラン曲で、突き刺さるようなシンセの音がスリリング、絵に描いたようなメロディアスな展開もたまらない。⑪「ノトーリアス」はエッジの効いたギター・カッティングがカッコ良い尖鋭的なファンク・チューンで、一気にたたみかけるようなサビのメロディー展開が圧巻だ。このベスト・アルバム「ディケイド」はこれ1枚通して聴けば彼らがいかに音楽的に懐の深いバンドで高度なポップ・センスを持っていたかが分かるという超お徳用盤なのだ。


ひばり ジャズを歌う / 美空ひばり

2009-03-27 | 昭和歌謡
 私の母親は美空ひばりの大ファンである。とにかくどんなに疲れていても、ひばりの歌声を聞くと元気になるようだ。恍惚状態で一心不乱に聴き入っているその姿は一ファンというよりはもう信仰に近いかもしれない。母にとっての美空ひばりはちょうど私にとってのビートルズみたいな絶対的存在なのだろう。
 私が子供の頃美空ひばりに対して抱いていた印象は“演歌歌手”、ただそれだけだった。母が特に「柔」をよく聴いていたせいもあってか、余計にそんなイメージが増幅されたのかもしれない。当時の私にとっては美空ひばりも都はるみも島倉千代子もみんな同じ“演歌のオバチャン”にすぎなかった。
 それから約30年が経ち、ジャズ・ヴォーカルを聴き始めた私はナット・キング・コール経由でひばりに辿り着いた。それがこの「ひばりジャズを歌う ナット・キング・コールをしのんで」である。演歌の歌手がジャズのスタンダード?と思いながらも好奇心旺盛な私は是非聴いてみたいと思った。しかし何処にも売っていない。当時このCDは廃盤になっており、その内容の素晴らしさゆえ手放す人が殆どいなかったため、中古市場にも滅多に出てこなかったのだ。足を棒にして京阪神の中古屋を探し回り、ついに梅田の名曲堂で見つけた時は手が震えるほどコーフンしたものだ。大急ぎで帰って聴いてみるとこれがもうめちゃくちゃ巧い。しかも演歌どころか完全にジャズのノリである。これには正直ビックリしてしまった(゜o゜) 子供の頃からずーっと抱いていた偏見・先入観が木っ端微塵に吹き飛んだというか、目からウロコというか、私は自分の不明を恥じた。
 日本人ジャズ・シンガーの場合、スタンダード・ソングを歌いながらも実際には曲に振り回されているように、あるいは必死に曲にしがみついているように聞こえることが多い。しかしひばりは違う。スタンダード・ソングの数々を自由自在にコントロールし、余裕で歌いこなしているのだ。偉大なるナット・キング・コールの唱法を下敷きにしながらも“ひばり流”ともいえる独特の節回しで、曲によっては黒人女性シンガーかと思うぐらいのグルーヴを生み出しているのが凄い。これは英語の発音がどうとか、歌唱力がこうとかいう次元の問題ではない。派手なスキャットやインプロヴィゼイションはなくとも、そのフィーリングはジャズそのものだった。
 ひばりが雄大な歌心で包み上げる①「スターダスト」、③「ファッシネーション」、⑤「トゥー・ヤング」、⑧「プリテンド」、⑩「慕情」、⑫「夕日に赤い帆」といったスロー・バラッドでは言葉の一つ一つに心がこもっているのがダイレクトに伝わってきて感動する。この説得力溢れる歌声は、英語で歌おうが日本語で歌おうが関係なしに私の心に染み入ってくるのだ。特に「スターダスト」はこの曲の五指に入る名唱だと思う。ナット・キング・コールの代名詞と言える②「ラヴ」でも臆することなく堂々と日本語で歌い切り、モノマネではない“ひばりの”「ラヴ」になっている。そこにはジャズと歌謡曲のフィーリングを融合させた“ひばりの世界”が屹立している。英語で歌う④「ウォーキング・マイ・ベイビー・バック・ホーム」や⑥「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」で聴ける豊かな歌心、抜群の表現力には言葉を失う。⑦「恋人よ我に帰れ」のとても日本人とは思えないスイング感や歯切れの良い歌いっぷりも圧巻だ。変幻自在のひばり節が楽しめる⑨「月光値千金」、哀しみが胸を刺すような⑪「ロンリー・ワン」と、大袈裟でなく全曲素晴らしい。
 彼女の歌を聴いていて他の凡百の歌手達と明らかに違う点は、まったく何の気負いも感じられないところ。それでいて凄くスイングするのだ。スイングの真髄がここにあると言ってもいいかもしれない。この人の歌には余計なものは何もないが、必要なものはすべてある。昭和が生んだ大歌手美空ひばり、母にとって神と言うべき演歌の女王は私にとって日本最高のジャズ・シンガーだったのだ。

It's Only A Peper Moon / Misora Hibari
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After Midnight / Nat King Cole

2009-03-26 | Jazz Vocal
 よく「インスト以前にヴォイスあり」といわれる。「声」こそが最高の楽器であり、「歌」とは突き詰めれば人間の声の魅力に尽きる、ということだろう。特にヴォーカルものに関しては当然声の鑑賞がメインになるので、声によって好きになったり嫌いになったりするケースが圧倒的に多い。いくらバックの演奏が良くっても「この声、イヤやなぁ...(>_<)」という歌手のレコードを聴きたいとは思わない。それともう一つ、その音楽ジャンルに対する向き不向きというのも重要なポイントだ。ジャズの男性ヴォーカルにおいて、その軽快なスイング感を表現するのに暑苦しいくどい歌い方はあまり向いていない。あっさり系の声の持ち主で洒脱な表現力を持ったシンガーこそがスタンダード・ソングを歌うに相応しい。そういったことを踏まえて考えれば、最高の男性ジャズ・ヴォーカリストはナット・キング・コールだと思う。
 彼は元々ピアノ・トリオのリーダー兼ピアニストとして40年代から活躍していたが、ある晩クラブに出演中に酔っ払った客からぜひ歌も唄ってくれとしつこくせがまれ、ピアノを弾きながら歌ってみたら大好評だったのでその後自分のトリオでも弾き語りスタイルを取り入れ、徐々にジャズ・ピアニストからポピュラー・シンガーへと変身していったという。やがて50年代に入り本格的にソロ・シンガーに転向して数多くのヒットを飛ばすのだが、やはりジャズへの思いは断ちがたかったのか、56年にウィリー・スミスやハリー・エディソン、スタッフ・スミスといったジャズ界の名うての名手たちを集めて録音されたのがこの「アフター・ミッドナイト」なのだ。彼は様々なフォーマットの録音を残しているが、やはりスモール・コンボで小気味よくスイングするスタイルが一番だ。だから往年のトリオ時代をも凌ぐ圧倒的なスイング感を誇るこのレコードこそが彼のベストなのだ。①「ジャスト・ユー・ジャスト・ミー」ではウキウキするようなリズムに乗ってピアノが、ギターが、アルトが、そしてヴォーカルが縦横無尽にスイングする。コールの歯切れの良いリズミカルなフレージングがめちゃくちゃカッコいい...(≧▽≦) ③「サムタイムズ・アイム・ハッピー」はコールの温か味のある歌声が心に染みる印象的なバラッドで、スタッフ・スミスのヴァイオリンが実にエエ味を出している。⑤「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」はまさにナット・キング・コール・トリオの魅力が凝縮されたような歌と演奏で、コンボが一体となって展開するスイング感溢れる粋なプレイはジャズ・ヴォーカルの理想形。これ以上の名演があったら教えてほしいものだ。⑥「ユーアー・ルッキング・アット・ミー」はウィリー・スミスのアルトが醸し出す退廃的な雰囲気の中、一言一言を噛み締めるように歌うコールの歌声に聴き入ってしまう。⑧「ドント・レット・イット・ゴートゥ・ユア・ヘッド」はミディアムでスイングするコールとピタッと寄り添うアルトのオブリガート、間奏のさりげないピアノに至るまでそのすべてがめっちゃジャジーでこういうのを肩肘張らない名演というのだろう。⑪「ホエン・アイ・グロウ・トゥー・オールド・トゥ・ドリーム」はスロー・テンポで歌いながらスイングさせてしまうというコールの秘奥義が堪能できる。このように自分の持ち味を最大限に活かせるような選曲のセンスも凄いと言わざるを得ない。⑫「ルート66」はボビー・トゥループのオリジナル曲だが、今では完全に「コールの代表曲」として定着した感がある。この声、この歌い回し、このスイング感...すべてが粋なジャズ・ヴォーカルの名演集だ。

It's Onlly A Paper Moon/Nat King Cole

砂に消えた涙 / ミーナ

2009-03-25 | European Pops
 60年代のミュージック・シーンをリアルタイムで体験できなかった私のような者がオールディーズの音源を手に入れようとすれば、どうしてもオムニバスCDに頼らざるを得ない。当時はシングル盤中心にシーンが動いていたし、アルバムを作る前に消えてしまった一発屋も多いからだ。しかしどれもこれもアメリカン・ポップス中心の似たような選曲で、当時日本独自にヒットしたフランス、イタリアを中心とするヨーロピアン・ポップスがモノの見事に欠落している。オールディーズ・ポップス・ファンとしてはこの不条理を見過ごすわけにはいかない。
 60年代前半、フランスでは過去のシャンソンとは全く違う、アメリカのロックンロールの洗礼を受けた明るくて楽しいダンス音楽、すなわち“イエ・イエ”が大流行し、シルヴィ・バルタン、フランス・ギャル、シェイラ、ダニエル・ビダル、シャンタル・ゴヤといった可愛コチャン・タイプのアイドル系ポップスの波が日本にも押し寄せた。彼女らの愛くるしい歌声は、フランス語ということもあって歌詞の意味はサッパリ分からないが、アメリカン・ポップスにはない何かがあって胸キュン・ポップスの白眉といえた。一方イタリアからもサンレモ音楽祭の話題と共にカンツォーネのヒット曲が日本に紹介され、フレンチ・ポップスとは一味も二味も違うジリオラ・チンクエッティ、ウィルマ・ゴイク、リタ・パヴォーネらのエモーショナルな歌声が人気を博した。これらのヨーロピアン・ポップスは弘田三枝子やザ・ピーナッツらが日本語でカヴァーしたり、あるいは当の本人がつたない日本語で吹き込んだいわゆる「日本語盤」を出したりで、日本人にとってはより身近なヒット曲になったのだが、そういった「日本語盤」の中で圧倒的に強烈なインパクトを放ったのがイタリアの№1人気歌手ミーナの④「砂に消えた涙」である。桑田佳祐師匠が「世界で一番好きな曲!」と断言し、竹内まりや姉さんも名盤「ロングタイム・フェイヴァリッツ」で嬉々としてカヴァーしていたオールディーズ・ポップス屈指の名曲だ。漣健児氏による“青い月の光を浴びながら~♪”という歌詞が甘酸っぱさを醸し出すメロディーと見事に結びついて心の琴線を震わせまくる。このベスト盤に入っているのはイタリア語のオリジナル・ヴァージョンだが、ボーナス・トラックとして日本語ヴァージョンを入れるぐらいのことはしてほしかった。ホンマに日本のレコード会社はファンのニーズが分かっていない(>_<) 「砂消え」以外ではやはり日本語でスタンダード化した⑧「別離」が素晴らしい。哀愁漂う演奏をバックに切々と歌うミーナのヴォーカルは説得力抜群で、単なるポップスというよりも大人の歌という雰囲気の名唱だ。日本ではこれらのスローな④⑧が有名だが、彼女の本質は①「太陽はひとりぼっち」、⑤「月影のナポリ」、⑪「月影のレナート」(←何なんこのワンパターンな邦題...笑)といったアップテンポでパワフルな歌唱にあり、高音部で叫びを交えるなどしながら彼女お得意の煌びやかなヴォーカルが炸裂する。私が一番好きのは西田佐知子がカヴァーした⑨「コーヒー・ルンバ」やザ・ピーナッツの代名詞となった⑩「情熱の花」で聴ける“メロディアスなラテン路線”の彼女で、ハチャメチャ一歩手前で踏みとどまって聴かせるエキゾチックなヴォーカルがたまらない。
 このように日本のオールディーズ史に深く名を刻んだミーナだが、今現在入手可能な日本盤CDはコレ1枚きり(しかも解説等一切なし!)という情けなさ... チンクエッティの時にも書いたがベスト物1枚でお茶を濁さずに、せめて60年代のものだけでもいいからオリジナル盤をCD化してもらいたいものだ。つまらないJ-Popsを出す暇があったら是非この辺のものを出すべきだと勝手にポップス・ファンを代表させてもらってここに提言したい。

ミーナ 砂に消えた涙 Un buco nella sabbia Mina 日本語版

ナツメロ / 小泉今日子

2009-03-24 | 昭和歌謡
 キャンディーズが普通の女の子に戻り、太田裕美がテクノ歌謡へと路線変更してしまった80年代のJ-Popsは、MTV効果もあって百花繚乱の第2期黄金時代を迎えていた洋楽に比べると、もはや私にとって心して聴くに値しないモノとなっていた。その後数年間にわたって100%洋楽中心の生活を送っていた私にキョンキョンを教えてくれたのは当時の同僚で親友でもあるミヤピーだった。彼は私のような音楽ジャンキーとは違い、バランスの取れた人生を送っている常識人だが、そんな彼が好きだったキョンキョンの曲を一緒に聴く機会があり、私もすっかり気に入ってしまった。早速ベスト盤CDを買ってきて聴いてみるとこれがまぁ名曲のオンパレード(゜o゜) 初期の頃はどーってことない普通のJ-Popsだったものが「迷宮のアンドローラ」「ヤマトナデシコ七変化」「スターダスト・メモリー」の3連発あたりから楽曲のクオリティーが格段に向上、80年代のJ-Popsが忘れてしまった昭和歌謡直系のメロディアスな展開が心地良く、「なんてったってアイドル」の底抜けの楽しさや「夜明けのMEW」に潜む哀愁が私を他のキョンキョン盤探しへと駆り立てた。イラストのジャケットに惹かれて買った「Ballad Classics」の中の「スターダスト・メモリー(スロー・ヴァージョン)」は意表を突いたアレンジが絶品だったし、「Best Of Kyong King」の中の「木枯らしに抱かれて(コーラス・ヴァージョン)」なんかもう鳥肌モノで、その深いバラッド性は単なるJ-Popsにしておくのがもったいないほど圧倒的に、超越的に、芸術的に素晴らしかった。そして88年、驚異の全編カヴァー・アルバム「ナツメロ」がリリースされた。“カヴァーは選曲が命”“カヴァーはオリジナルの単なる模倣に終わっては意味がない”というのが私の持論なのだが、このアルバムは何よりもまずその選曲で私を驚かせた。ライナーによるとキョンキョン自身の思い出・思い入れの集大成とのことだが、それにしても思わず唸ってしまうようなラインナップだ。フィンガー5の①「学園天国」やピンクレディーの②「SOS」なんかはまだ誰でも思いつきそうなメジャーな曲だが、レイジーの④「赤頭巾ちゃん御用心」、アニメの挿入歌⑫「アクビ娘」、ずうとるびの⑬「みかん色の恋」となると話は別。このようなマイナーな隠れ名曲を発掘してきて本アルバムで取り上げたセンスの良さはもう凄いとしか言いようがない。キョンキョンのセルフ・プロデュースということなので、彼女自身もかなりの音楽マニアなのだろう。3曲ともオリジナルの良さを殺さずにキョンキョンらしさを上手く活かした楽しいヴァージョンに仕上がっており、聴く者を古き良き昭和の時代へと誘うキラー・チューンだ。③「お出かけコンセプト」、⑦「恋はベンチシート」とジューシィ・フルーツの曲が2曲取り上げられているのも目を引く。テクノ・ニュー・ウェイヴと言われながらも実は正統派ポップ・バンドだったジューシィ・フルーツは私も大好きで高校時代結構ハマッて聴いていたのだが、多分キョンキョンも大ファンだったのだろう。更に⑦のエンディングではデーモン小暮閣下が登場、キョンキョンとの「ベンチシートの車に買い換えてぇ~」「ダメだ!」「ねぇ~」「しょーがない、買ってやるか...」「やさしい悪魔(^.^)」という掛け合いに続いて間髪を要れずにキャンディーズの⑧「やさしい悪魔」になだれ込むベタな展開が大好きだ(^o^)丿 これ以外にもキャロルやツイストの曲をやっていたりとか、「木綿のハンカチーフ」風のイントロで始まる「SOS」のアレンジとか、とにかく選曲・演奏・アレンジの細部にまで気を配って昭和の雰囲気を再現したこのアルバム、よっちゃんこと野村義男をはじめとする製作陣の音楽愛に溢れたキョンキョンの最高傑作だ。

アクビ娘(Sound)-小泉今日子

Long Cold Winter / Cinderella

2009-03-23 | Hard Rock
 シンデレラはデビュー当時“ボン・ジョヴィの弟分”的なハードロック・バンドとして紹介された。全米だけで300万枚を売り上げたファースト・アルバム「ナイト・ソングス」は当時のハードロック系の新人バンドとしては異例の大成功と言えたが、ボン・ジョヴィのような時代性を反映した音作りでもなく、むしろ70年代の古き良きロックンロールを今日風に解釈した演奏が中心だったこのアルバムが大ヒットした背景には、まずファースト・シングル「シェイク・ミー」のビデオ・クリップのインパクトの大きさが挙げられる。バンド名と誰もが知ってる「シンデレラ」のストーリーをドッキングさせるという手法が大当たりしてMTVでのヘヴィー・ローテーションへとつながり、そこにボン・ジョヴィとのカップリング・ツアーの成功という追い風が吹いたというわけだ。
 デビュー・アルバムが大成功を収めると無意識のうちに冒険より守りの姿勢に入ってしまうアーティストが多いが、彼らは違った。プレッシャーに押しつぶされることなく、より自分たちのルーツに忠実なサウンド、つまりシブシブのブルース・ロック満載のセカンド・アルバム「ロング・コールド・ウインター」を作り上げたのだ。前作に近いハードでヘヴィーなサウンドを予想していた私はこの盤を初めて聴いた時、そのあまりにも渋くてカッコ良いサウンドにぶっ飛んでしまった。リード・ヴォーカルのトム・キーファーの搾り出すような唱法はエアロスミスのスティーヴン・タイラーに今は亡きブルースの女王ジャニス・ジョップリンが憑依したかのような凄まじさで、コテコテのブルースから古い感じのロックンロールまで、いたずらに時代に迎合するのではなく、自らのルーツに忠実でありながらその上で自己を表現するという作風を貫いたこのアルバムはシンデレラというバンドの、とりわけトム・キーファーという男の気骨を激しく描写していた。メロディーで何か心の内にあるものを表現したいと思った時、感情移入の美しさと哀しさを内包するブルース・ロックという音楽に行き着くのは彼らにとって自然な成り行きだったのだろう。
 ①「バッド・シームストレス・ブルース~フォーリン・アパート」でいきなりデルタ・ブルースの泥臭いサウンドが炸裂し、聴く者の度肝を抜く。ドブロ・ギターのイントロから一気にバンド・サウンドへと雪崩れ込むあたりは鳥肌モノだ。抑え気味のプロデュースでよりライブ感に溢れる音作りがメロディーをよりハッキリと前面に押し出している。②「ジプシー・ロード」は「シェイク・ミー」のリズム・メロディーに更に磨きをかけたようなノリノリのロックンロール。トムお得意のギター回しが目に浮かぶようだ。③「ドント・ノウ・ホワット・ユー・ゴット」はロッカーのバラッドかくあるべしと言えるナンバーで、トムのエモーショナルなヴォーカルに涙ちょちょぎれる。ブルージーな魂の叫びが圧巻だ。④「ラスト・マイル」は躍動感溢れるキャッチーなロックンロールで、サビの部分のコーラス・ワークの巧さにも唸ってしまう。⑤「セカンド・ウインド」はバンドが一体となって疾走する感じがたまらないヘヴィーなロックンロールだが、エンディングがややまとめ切れなかった感もある。
 ⑥「ロング・コールド・ウインター」はとても前作と同じ人間が書いたとは思えないコテコテのブルースで、まるでベテランのブルース・バンドの演奏を聴いているかのような錯覚に陥ってしまう。ハッキリ言ってコレ、大好きです(^o^)丿 ⑧「カミング・ホーム」は土の匂いのするカントリー調のナンバーで、長くて寒い冬が終わり春の訪れを予感させるようなのどかな雰囲気を醸し出している。⑩「テイク・ミー・バック」はシンプルでノリの良い軽快なロックンロール。こうやって見てみるとロックンロールとブルースが実にバランスよく配置されているのがわかる。シンデレラというバンド名からは想像もつかないような骨太でラウドなブルース・ロックが聴けるこのアルバム、88年度私的№1といえる超愛聴盤だ。

ベスト ヒット USA 1989 Star Of The Week Cinderella 【The Last Mile】
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Olivia Newton-John's Greatest Hits

2009-03-22 | Rock & Pops (70's)
 音楽を聴き始めた中学生の頃はまだ1枚2,500円のLPをガンガン買えるほどお金がなく、どうしても1枚500円のシングル盤をターゲットにせざるを得なかった。その頃はお昼のメシ代として毎日300円をもらっており、冷水器の水をたらふく飲んで空腹感を抑えながら昼飯抜きで我慢すれば2日でシングル盤が1枚買える計算で、毎週2~3枚のシングル盤を買ってきてはせっせと聴いていたものだ。当時の汗と涙と空腹の結晶であるそれらのシングル盤をターンテーブルに乗せることは今では殆んどないが、1枚1枚のジャケットに愛着やら思い出が染み付いているので大事に取ってある。今回70'sのオリビアについて書こうと思ってそれらのシングル盤を久々に聴いていると懐かしいあの頃の思い出までもが一緒に解凍されて蘇ってくるかのような錯覚を覚えてしまう。
 彼女の一番の魅力は何と言っても“クリスタル・ヴォイス”と呼ばれたその歌声にある。ごく自然にす~っと心に入ってきて気がついた時にはもうその虜になっている、そういう歌声である。そしてそんな可憐な歌声にピッタリ合った楽曲に恵まれたのも大きい。日本では馴染みの薄いカントリー風のサウンドも曲の中で巧く消化されてスパイスの役割を果たしている。私が最初に買ったオリビアのシングルは⑧「ジョリーン」だった。これはドリー・パートンのカヴァーで、「ジョリーン、ジョリーン、ジョリン ジョォリィィ~ン♪」というサビのフレーズから確か“床屋の歌”と呼ばれていた(←平和な時代やったのぉ...)ような記憶があるが、その耳に残るフレーズの執拗な繰り返しがノリの良い曲調と相まって大ヒット。それに続くシングル⑬「ドント・ストップ・ビリーヴィン(たそがれの恋)」はそのB面である①「カントリー・ロード」が「おはよう700」という朝の情報番組の主題歌に使われて大ヒットしためA面なのに非常に陰が薄くなってしまった不憫な曲だが、私は当時も今もどちらかというとA面の方が好きで、“信じることをやめなければ、辛い日々は過ぎ去っていくものよ”というポジティヴな歌詞が気に入っていた。⑧も①も日本独自のヒット曲で、日本でオリビアといえばこの2大ヒット曲ということになるだろう。
 そうそう、④「レット・ミー・ビー・ゼア」のシングル盤も買った。これはもうヒットしなけりゃおかしいといえるくらいキャッチーな大名曲でオリビアの声の魅力を最大限に活かした親しみやすいメロディーが大好きだったのだが、彼女に寄り添うような形で入ってるオッサンの低い声はキモチ悪くて(しかも所々オリビアよりも目立ってるし...)嫌だった。今聴いてもやっぱりダメ、生理的に受け付けない声だ。後年CD時代になってベスト盤「詩小説」がリリースされた時は速攻でゲットしたが、上記のヒット曲群以外にも②「イフ・ノット・フォー・ユー」、⑤「イフ・ユー・ラヴ・ミー(愛しい貴方)」、⑦「ハヴ・ユー・ネヴァー・ビーン・メロウ(そよ風の誘惑)」、⑩「サムシング・ベター・トゥ・ドゥ(秋風のバラード)」、⑪「レット・イット・シャイン」、⑫「カム・オン・オーヴァー(一人ぼっちの囁き)」といったリビー姫の初期名曲が一杯入っていて嬉しくてたまらなかった。
 ただ一つ残念なのは⑬に続いて日本のみでシングル・カットされた「Compassionate Man(恋する瞳)」が選曲から漏れていたこと。姫のファルセット・ヴォイスがたまらないオリビア屈指の隠れ名曲だ。彼女の場合、アバと同じようにこいうった“アルバムに埋もれがちな隠れ名曲”が多いので確かにベスト盤の選曲は難しい作業だろう。今ならデジタル・リマスターされた輸入盤CDが1,000円前後で買えるので、麗しのジャケットも一緒に手に入ることを考えればオリジナルで揃えて「70'sオリビア一気聴き」も楽しいかも...(^o^)丿 80年代に入って彼女は「フィジカル」で劇的なイメチェンを果たし10週連続全米№1というとてつもないウルトラ・メガ・ヒットを飛ばしたが、私にとっては70年代の可憐な歌姫時代の彼女こそがベストであり、かけがえのない存在なのだ。

olivia--let me be there

Raising Sand / Robert Plant & Alison Krauss

2009-03-21 | Led Zeppelin
 アメリカン・トップ40を欠かさず聴いていた80年代、毎年2~3月に発表されるアメリカン・ミュージック・アウォードやグラミー賞はいつも楽しみにしていた。正直言って誰が受賞するかは別にどーでもよかったのだが、色んなアーティストのパフォーマンスが見れたり、ウィットに富んだスピーチのコメントが楽しめたりで、マイケル・ジャクソンを始め、U2、メタリカといったビッグ・ネームたちの様々な名場面が今でも脳裏に焼きついている。とにかく凄い顔ぶれが一堂に会するこの全米音楽界の一大イベントは毎年ビデオに録画して何度も繰り返し見たものだった。しかし時代は流れ、メロディーの希薄なワケの分からん音楽が蔓延し始めた90年代、私はコンテンポラリーなヒット・チャートとは完全に絶縁し、メロディアスな60年代オールディーズやスインギーな50年代ジャズの世界へと入っていった。それ以降この十数年というもの、どんな曲が流行っているのかもどんなアーティストが活躍しているのかも全くといっていいほど知らなかったので、当然グラミー賞にもまったく関心がなくなっていた。
 しかしそんな私の目に飛び込んできたのが「ロバート・プラント&アリソン・クラウスがグラミー賞主要2部門(“レコード・オブ・ザ・イヤー”と“アルバム・オブ・ザ・イヤー”)を含む5部門受賞!」というネットのニュース速報だった。ブルーグラス界の歌姫、アリソン・クラウスは「ブルーグラス・ゴーズ・トゥ・タウン」というオムニバス盤に入っていたビートルズ・カヴァー「アイ・ウィル」の素晴らしさにKOされて以来の大ファンだし、ロバート・プラントは言わずと知れたレッド・ゼッペリンのヴォーカリストだった人である。一昨年の暮れだったか、この「レイジング・サンド」がリリースされた頃にたまたま見た⑤「ゴーン・ゴーン・ゴーン」のビデオ・クリップが結構面白く、何よりもエヴァリー・ブラザーズの隠れ名曲を斬新なサウンドで21世紀に蘇らせた抜群のリメイク・センスがめちゃくちゃ気に入ったので即USアマゾンでゲットしたのだ。
 ハードロックの象徴であるゼッペリンのヴォーカルとブルーグラス・ディーヴァとのデュエットというと一見摩訶不思議な組み合わせに思えるかもしれないが、ゼッペリンはサード・アルバムで顕著なように土の薫りのするトラッド/カントリーの要素を内包していたからハイトーンのシャウトなしのルーツ・ミュージックでも別に違和感はなかった。しかしそれよりも届いたCDを聴いて思ったのは、これは紛れもなく鬼才プロデューサー、Tボーン・バーネットのサウンドだということ。彼がセッティングした音世界の中でプラントやクラウスが気持ち良さそうに歌っているという感じなのだ。いきなりTボーン・バーネット色の濃い気だる~いサウンドが展開する①「リッチ・ウーマン」、くつろいだ雰囲気でカントリー・フレイバー溢れる②「キリング・ザ・ブルース」、アリソンにメリー・ホプキンが憑依したかのような③「シスター・ロゼッタ・ゴーズ・ビフォー・アス」、ペイジ&プラントのセルフ・カヴァー⑦「プリーズ・リード・ザ・レター」、プラントの枯れたヴォーカルが渋い⑨「フォーチュン・テラー」、皮鳴りの良いドラムのビートを基調にした軽快なサウンドがいかにもTBBしてる⑫「レット・ユア・ロス・ビー・ユア・レッスン」等、聴き所は多いが、やっぱり⑤がダントツに素晴らしいと思う。
 このTボーン・バーネットのギターのサウンドは麻薬のように病みつきになる。カントリー、ブルーグラス、フォーク、ブルース、ケイジャンといった様々な音楽を交雑し、そこにTボーン・バーネットが魔法をかけたようなリラクセイション溢れるそのサウンドにはゼッペリンのゼの字もないが、グラミー云々は抜きにして一度は聴いておきたい渋~いアルバムだ。

Gone Gone Gone (Done Moved On)



Best Of The Big Band / Brian Setzer Orchestra

2009-03-20 | Cover Songs
 未知の盤の中から自分の趣味嗜好にピッタリ合ったものを探し出し、それが一生の愛聴盤になった時の悦びは格別である。私の場合、音楽雑誌の情報に頼っていた70年代、ラジオのヒット・チャートを欠かさず追い続けた80年代、週末になると大阪京都神戸のレコード屋を廻って足で情報を集めた90年代、ネットの導入で自宅にいながらオークションやオンライン試聴購入を行えるようになった2000年代、ということになるが、今にして思えば一番スリリングだったのはレコ屋巡りをしていた頃だった。エサ箱を漁っている時にたまたまかかった音楽に心を奪われていてもたってもいられなくなり、レジへ確認しにいって無事ゲットした時の満足感は、当ブログを読んで下さっているような筋金入りの音楽ファンならきっと分かっていただけるだろう。そんな思い出の1枚がこの「ベスト・オブ・ザ・ビッグ・バンド / ブライアン・セッツァー・オーケストラ」なのだ。
 ブライアン・セッツァーといえばネオ・ロカビリー・ブームの立役者として一世を風靡したストレイ・キャッツのギタリスト兼ヴォーカリストである。「ラナウェイ・ボーイズ」「ロック・ジス・タウン」「ストレイ・キャット・ストラット」「セクシー&セヴンティーン」といったヒット曲を連発し、グレッチのギターを弾きながら歌う姿はまさに80年代に蘇ったエディー・コクランという雰囲気だった。その後バンドは解散し、私も洋楽チャートと絶縁したこともあって彼の名前を聞くことはなくなっていたのだが、2002年夏の或る日のこと、今は無き日本橋のワルツ堂で輸入盤CDを漁っていると突然①「ゲッティン・イン・ザ・ムード」がかかった。松田優作ではないが、思わず「何じゃこりゃあー」と叫びたくなるようなカッコよさ(≧▽≦) もうノリノリである。あの古式ゆかしいグレン・ミラーの楽曲が実にゴージャスなサウンドで蘇り、ラップまで入ってもうじっとしていられないくらいウキウキした気分にしてくれるのだ。うねりまくるリズムに疾走するようなサウンドは圧巻で、清涼感溢れる女性コーラス隊が躍動感いっぱいの演奏に更にターボ・ブーストをかけ、スピード感に満ちた屈指の名演になっている。何よりもまず、ビッグ・バンドを従えてロカビリーを豪快に演奏するという斬新な発想が素晴らしい。
The Brian Setzer Orchestra - Gettin' In The Mood & Hawaii Five-O (Late Night)


 ⑤「セクシー、セクシー」は元々イチローの出ていたペプシのCMソング「ペッペッペプシ」の歌詞“イッチロー~ ナンバー51~♪”ってヤツを一部変えたもので、ダイナミックにジャンプするビッグ・バンドの躍動感がたまらない。ここでも女性コーラスの「セッセッセクシー~♪」が効いているし、ジーン・クルーパみたいなワイルドなドラミングもドライヴ感に溢れている。⑰「スキャットマン・ジャック」は文字通りブライアンのスキャットが聴ける弾むようなジャイヴ・ナンバーで、これがもう言葉にできないくらいカッコいい!女性コーラスとの掛け合いが生み出すグルーヴも快感の一言だ。
 マイナー調の⑮「アメリカーノ」やラテン全開で迫る⑯「エル・ディアブロ」はブライアンの作曲能力の高さがよく分かる名曲だと思うし、グレン・ミラー・ナンバー⑭「ペンシルヴェニア 6-500」におけるループ・サンプリングを駆使した温故知新サウンドやエリントンの⑬「キャラバン」で聴かれるノーキー・エドワーズ@ベンチャーズへのリスペクト溢れるプレイも聴き所。スティーヴィー・レイ・ヴォーンの⑱「ハウス・イズ・ロッキン」でのストレートなロックンロールにはブライアンがストレイ・キャッツ時代から貫いている音楽観が見事に現れている。「“音”を“楽”しんでこそ音楽だ」という彼の考え方が大好きだ。
 ビッグ・バンド・スウィングとロカビリーの出会いが生んだ最高にカッコいいこのアルバム、ぜひともアンプのヴォリュームを思いっ切り上げて全身でそのサウンドを浴びるように聴きたい1枚だ。
The Brian Setzer Orchestra - Sexy, Sexy

Scatman Jack Brian Setzer

Beatlegras 2

2009-03-19 | Beatles Tribute
 ブルーグラスというのはアメリカ南部でカントリー・ミュージックから派生した音楽の1ジャンルで、ギター、マンドリン、フィドル、ドブロ、バンジョー、ウッドベースといった楽器が主に使われるストリング・バンド・ミュージックのことである。文字通りブルーなグラス、つまり大草原が似合いそうな陽気で明るいアコースティック・サウンドで、ほぼ弦楽器オンリーでしかも楽器に通電しないのが大きな特徴だ。リズム・キーパーのドラムスがいないので、各楽器はその分自由なインプロヴィゼイション(アドリブ)が可能であり、ヴォーカルも含めて非常に高度なアンサンブルを聴かせてくれる。楽器の編成は大きく違うがそういった即興性の面から見ればジャズに相通ずるモノがあるだろう。たいていは高速で演奏され、バンジョーの速弾きなどがフィーチャーされることも多い。イメージとしては東京ディズニーランドのウエスタン・ランド(実際は西部の音楽じゃないけど...)で流れているような軽快な音楽と思えば分かりやすい。
 そんなブルーグラス・スタイルでビートルズの楽曲を演奏するバンドが現れた。人呼んで「ビートルグラス (Beatlegras)」。磐石のテクニックと豊かな音楽性を併せ持ったテキサス出身の3人組で、ビートルズの楽曲を見事なブルーグラス・アレンジで聴かせてくれる。一昨年の夏頃、iTunesの検索でこのバンドを偶然発見し、試聴してみるとこれが実にユニークなビートルズ・カヴァーだったので早速USアマゾンで購入した。この手のブルーグラス/カントリー・カヴァーとしては他に「ビートルズ・グラス」(こっちはgrassやけど紛らわしいっちゅーねん!)や「ピッキン・オン・ザ・ビートルズVol.1」「(同)Vol.2」などがあるが、それらはすべてインスト盤なので、ヴォーカル入りとなるとやはりこの「ビートルグラス」ということになるだろう。ブルーグラスにぴったりハマる「マザー・ネイチャーズ・サン」や「ブラックバード」、「イン・マイ・ライフ」も良かったが、何と言っても「バック・イン・ザ・USSR」のスリリングなプレイや「レディ・マドンナ」「ノーウェジアン・ウッド」の斬新な解釈が素晴らしかった。その後彼らのHPでセカンド・アルバムの存在を知り、出来るだけ安く買おうと色々調べたが今度は頼みの綱であるUSアマゾンでも何故か扱っておらず、仕方なしにHP経由の通販で購入したのだが、CD1枚で送料$12というアコギな商売で(スタンプは$2でした...)しかも送られてきたのはCD-R(゜o゜)、一瞬詐欺に遭ったのかと思った(この盤はCD-Rフォーマットでしか出回っていないらしいことが後になって判明)ぐらいだ。温厚な(?)私もこれにはさすがに腹が立ったが、肝心の中身の方はあのファースト・アルバムをも凌駕するカッコ良さで、ボッタクられた分も含めて十分お釣りが来る出来映えである。
 ややスローな曲が多かったファーストに比べ、ブルーグラスの魅力全開のアップ・テンポな演奏が目立つのが何よりも嬉しい。ビートルズに関係のないオリジナルが3曲入っているのが玉にキズだが、弾けるような①「プリーズ・プリーズ・ミー」、爽やかな②「グッド・デイ・サンシャイン」、軽快に突っ走る③「アナザー・ガール」、見事なコーラス・ワークが印象的な⑤「今日の誓い~アイル・ビー・バック」、曲の持つ哀愁をバッチリ表現した重厚なスイング感が絶品の⑥「エリナー・リグビー」、ブルーグラス特有のノリが曲想とピッタリ合った⑧「エイト・デイズ・ア・ウイーク」、カントリー色の濃かったオリジ・ヴァージョンを更に磨き上げたような⑨「ホワット・ゴーズ・オン」と、まさに一点の曇りもない。百聞は一聴にしかず、CD BABYのサイトで全曲試聴できるので興味のあるビートルズ・ファンはどうぞ(^o^)丿 久々に覗いてみたら待望のサード・アルバムが出ていたので早速注文した。早う来ぇへんかな...

beatlegras Hello Goodbye-Back in the U.S.S.R

ウクレレ・ウルトラマン

2009-03-18 | Cover Songs
 「ウクレレ・ビートルズ」「同 Vol.2」を企画したウクレレ・フリーマガジン「ローリング・ココナッツ」誌はその後もこのウクレレ・オムニバス路線を推し進め、「ウクレレ・レノン」、「ウクレレ・ジブリ」、「ウクレレ・フォース(スター・ウォーズ・カヴァー)」、「ウクレレ・エルヴィス」といったユニークなCDを次々と世に送り出してきた。そのどれもが中々聴き応えのある内容で、ウクレレ大好き人間の私はすっかりこのシリーズのファンになり、毎回「次のテーマは何やろ?」と楽しみにするようになった。そして2006年に同シリーズ第7弾としてリリースされたのがこの「ウクレレ・ウルトラマン」なのだ。
 聞くところによると「ウルトラマン」放送開始40周年記念盤ということで、ウルトラマン世代の私としては懐かしさを禁じ得ない。ただ、いくら物好きな私でも懐かしさだけでCDを買うほどバカではない。ウルトラ・シリーズの名曲たちはスタンダードになれない凡百の“高尚なオリジナル曲”が束になっても敵わない“心に残るメロディー”の宝庫なのだ。40年という時の試練に耐えて多くの人々の記憶に深く刻みこまれ、愛されてきたこれらの楽曲のレベルの高さはハンパではない。たかが子供向けヒーローものの主題歌と侮ってはいけない。早速ネットで試聴してみるとこれがまた予想以上にエエ感じ。でも2,940円という値段設定はいくらなんでもチョットなぁ... ということで辛抱強くヤフオクとアマゾン・マーケットプレイスの二股で網を張った甲斐があってめでたく1,850円でゲットした(^o^)丿
 ①「ウルトラQメインテーマ」(ウクレレカフェカルテット)は「ジェームズ・ボンドのテーマ」と「トワイライト・ゾーン」を足して2で割ったようなエレキ・ギター主体のオリジナルをウクレレで忠実にカヴァー、つかみはOKという感じである。同じくウクレレカフェカルテットによる②「ウルトラマンの歌」はウクレレ本来の思わず和んでしまう癒し系サウンドに仕上がっており、スティール・ギターを大胆にフィーチャーして南国リゾート気分も満点だ。④「ウルトラセブンの歌」(栗コーダーカルテット)はリコーダーの醸し出すのどかな雰囲気の中、彼らお得意の超脱力系サウンドが炸裂、“セブンセブンセブン!”“ぽよぉ~ん♪”でイスから転げ落ちるかもしれない(>_<) と、ここまではまぁお約束の展開なのだがここからが凄い。まずは超キラー・チューン⑤「ULTRA SEVEN」(ラウラ)... “ワン トゥー スリフォ、ワン トゥー スリフォ♪”で始まる例の挿入歌がウクレレ独特のスイング感を得て更にグレードアップ、哀愁舞い散るアレンジに涙ちょちょぎれる実にカッコイイ演奏だ。この素晴らしさはもう実際に聴いて実感するしかない。
 ⑨「ウルトラマンエース」(キヨシ小林とウクレレスウィングギャング)も強烈だ。メロディーは確かにエースのそれなのに、ジプシー・スウィング仕込みのキヨシ小林氏の弦が切れそうなほどピーンと張り詰めたテンションの高い演奏が武骨きわまりない原曲を全く別の曲かと思うくらいカッコよくスイングさせ、見事なフォービート・ジャズに昇華させているのだ。もう恐れ入りましたと言う他ない。⑩「ウルトラマンタロウ」(IWAO)ではあの勇壮な原曲の面影は完全に消えうせ、品格滴り落ちるウクレレ独奏が曲の髄を見事に引き出し、曲の奥深くに封印されていた哀愁を呼び覚ます。3分2秒あたりからテンポ・アップして一気にクライマックスへもっていく怒涛の展開はまさに圧巻だ。とにかくこれら⑤⑨⑩は改めて原曲の良さを再認識させられる凄いカヴァーだと思う。「ウクレレ・ウルトラマン」、ナメてかかると大やけどをしそうな1枚だ。

ウクレレウルトラマン

The Best Of Sade

2009-03-17 | Rock & Pops (80's)
 私が本格的にジャズを聴き始めたのは90年代半ばからだが、それ以前にジャズという音楽に対して持っていたイメージとしては「ちょっと敷居が高い」「お年寄り向け」「歌のないインスト中心」「ポップスのような親しみやすさがない」「ロックのような迫力に欠ける」「でも何となくオシャレ」というもので、概してポジティヴなものではなかったが、最後の「オシャレなサウンド」には密かに憧れを抱いていた。全米チャートをひたすら追いかけていた私とジャズっぽいサウンドの接点はほぼ皆無だったといっていい。
 時は85年の5月、マドンナやブルース・スプリングスティーン、フィル・コリンズ、ワムといったポップ・アーティスト達の寡占状態だった全米チャートに突然シャーデーという女性ヴォーカル(後で知ったことだがシャーデーというのはリード・ヴォーカルであるシャーデー・アデューを含めたバンドの総称らしい)の③「スムーズ・オペレイター」が彗星のように登場、あれよあれよという間に5位にまで上がって来たのだ。洗練されたサックス・ソロといい、女性ヴォーカルの醸し出すジャジーな雰囲気といい、その神秘的なサウンドはとっても新鮮で、まさに私がジャズという音楽に対して抱いていた“オシャレ”なイメージそのものだった。ビデオ・クリップで初めて見た彼女はまさに“クール・ビューティー”そのもので、彼女を取り巻く神秘性にますます拍車をかけていた。因みにこの曲のタイトル、日本人にとっては「スムーズなオペレーター」という言葉の響きには何の違和感も無くむしろカッコ良く聞こえるが、英語で “Smooth Operator” というのは実は「女たらし」の意味で、つまりこれは「アイツはスケコマシ~♪」という歌なのだ。そういう目でビデオ・クリップを見ると余計に面白さが増すかもしれない。
 ビデオ・クリップといえばここにアップしたYouTubeの“フル・ヴァージョン”は8分近い長さだが、これはアルバム・ヴァージョンの音源に後半部をリミックスして引き伸ばしただけのようだ(←同期させて実験してみました...笑)。②「ハング・オン・トゥ・ユア・ラヴ」はベースの刻むタイトなリズムに乗ったシャーデーのハスキーなヴォーカルが楽しめるキラー・チューン。クラブやラウンジで大ウケしそうな音作りだ。⑤「ザ・スウィーテスト・タブー」や⑨「パラダイス」も基本的には②③の流れを汲むシャーデー・サウンドで、そこにはジャズ、ソウル、ファンクといった様々な要素が散りばめられている。
 スロー・テンポな⑧「ラヴ・イズ・ストロンガー・ザン・プライド」では彼女の包み込むようなヴォーカルとエキゾチックな演奏が渾然一体となって聴く者を恍惚の世界へと誘う。⑩「ナッシング・キャン・カム・ビトゥイーン・アス」は洗練された都会的なサウンドが楽しめる隠れ名曲。決して期待を裏切らないエレガントなシャーデー節も健在だ。⑬「キス・オブ・ライフ」は彼女の囁くようなヴォーカルが生音によって生み出される音数の少ないクールなサウンドと巧くマッチしており実に快適な空間を演出している。
 シャーデーのサウンドには今聴いてもまったく古臭さを感じさせない、時間の風化を寄せ付けない“ちから”が漲っている。これはシャーデー不変のクールでオシャレなサウンドが一杯詰まった宝石箱のようなアルバムだ。

Smooth Operator