shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

21世紀の精神正常者たち / モルゴーア・クァルテット

2018-05-20 | Cover Songs
 最近はどこのサイトを覗いても色んな広告が出てきて鬱陶しいことこの上ない。私は気が短い方なのですぐにイラッときて×をクリックして次々と消していくのだが、先日たまたま画面に出てきたヤフオクの広告には思わず手が止まってしまった。そこに出ていたのは実写顔写真を使ったキング・クリムゾンの「宮殿」パロジャケで、パソコンの画面からすればほんの小さな広告だが、それでもあのグロテスクなジャケット・デザインは吸引力抜群。これを見て “何か面白そうやな...”と思わなければロック・ファンではない。
 とにかく「宮殿」大好き & パロジャケ大好きの私がこのジャケットを目にしてスルーできるワケがない。早速クリックしてみるとそれはモルゴーア・クァルテットというクラシックの弦楽奏者4人組のアルバムで、タイトルは「21世紀の精神正常者たち」となっている。アマゾンのカスタマーレビューには “キング・クリムゾンの不朽の名作を精神の異常な(笑)クラシック奏者が演奏したもの” と書いてあったが、まさに言い得て妙というべきだろう。
 クラシック奏者がロックを演奏するというコンセプトは1966カルテットのビートルズ・カヴァーを始めとして過去に何度も目にしてきたので特に驚かないが、素材にプログレを選んでいるところに興味を引かれ、YouTubeで試聴してみることにした。それがコレ↓だ。
モルゴーア・クァルテット - 21世紀のスキッツォイドマン


 う~ん、コレは中々面白い。コメントを読むとメンバーはみんな日本ではトップクラスの実力を誇る超一流の奏者らしいが、確かに原曲の持つ狂気を孕んだ曲想を実に巧く表現しており、緊張感漲る演奏が展開されている。これはメンバーの腕前ももちろんだが、それ以上に“プログレに対する深~い理解と限りなき愛情” の成せるワザといっていいだろう。運良くメルカリで800円で出ているのを見つけたので買ってみた。
 収録曲は10曲で、「21世紀の精神異常者」「クリムゾン・キングの宮殿」「スターレス」というクリムゾンの3曲を始め、フロイド2曲、ジェネシス2曲、ELP1曲、イエス1曲、そして何故かメタリカ1曲(笑)となっている。私的にはクリムゾン以外ではフロイドの「マネー」とELP、そして意外なことにメタリカのカヴァーが面白かったが、中でも ELPの「悪の教典#9 第1印象 パート1」のスピード感溢れる演奏はピカイチだ。プログレ・アーティストの中でもクラシック音楽との相性抜群なELP作品ならではの名カヴァーと言えるだろう。下のライヴ動画では27:17あたりから始まるので一度ご覧あれ。私のように “クラシックは退屈で眠くなるから嫌い” という人間でも問題なく楽しめるアグレッシヴな演奏に圧倒されるだろう。
 そしてラストの曲はメンバー曰く “私たちモルゴーア・クァルテットが一番得意とするというか、一番イッちゃう曲” である「21世紀の精神異常者」(37:30~)。メンバー全員のプログレ愛がビンビン伝わってくる名演だ。
モルゴーア・クァルテット プログレ名曲選


【おまけ】クリムゾンのカヴァーと言えば以前紹介した女性5人組のストリングス・ユニット、SEASONS による名演も忘れ難い。それにしてもクラシック奏者のクリムゾン好きは異常(笑) 私のようなド素人には計り知れないような高いレベルで、原曲の旋律に潜む何かが彼ら彼女らを惹きつけてやまないのかもしれない。
SEASONS@ 21世紀のスキツォイド・マン

ビートルズのイタリア盤特集④ ~珍盤迷盤掘り出し盤~

2018-05-12 | The Beatles
①「ザ・ビートルズ」(PMCQ 31502)
 イタリア盤のデビュー・アルバムは、ジャケットがUK2枚目の「ウィズ・ザ・ビートルズ」と同じモノクロのハーフ・シャドウ写真なのに中身はUK1枚目の「プリーズ・プリーズ・ミー」という紛らわしさで(→タイトルはシンプルに「The Beatles」)、しかも尋常ならざる高値で取り引きされているという、B4各国盤コレクター泣かせの1枚だ。私はこのレコードを「ガーデン・カヴァー」と同じセラーから €121で同時落札に成功(^o^)丿 ビートルズのイタリア盤の中でも最難関と思われる初期盤2枚をわずか3万円で手に入れることができてラッキーだった。
 横野さんのHPによるとこのレコードの初回版である赤色レーベルは細かく分けると1stプレスから9thプレスまでの9種類に分類されるとのことだが(→黒レーベルに切り替わるのが1965年の夏頃なので、約1年半の間に9回も変わるってある意味凄いな...)、私が手に入れたのは light red label で BIEMロゴと MECOLICOロゴあり、更に「ミズリー」のクレジットが “McCartner” とミススペルで表記されている 8thプレスらしい。まぁ大雑把な性格の私としては赤色レーベルでありさえすればどれでもいいのだが...(笑)
 このレコードは「I favolosi Beatles」と同じくドライで硬質な音作りが特徴で、もちろんUK金パロや黄パロの凄まじい爆裂サウンドには及ばないが、普通に初期ビートルズのロックンロールを楽しむ分にはこれで十分。オロナミンCのキャッチ・コピーじゃないが “元気ハツラツ!” という表現がピッタリの明るいサウンドだ。

②「アイウート!」(PMCQ 31507)
 アルバム「ヘルプ!」のイタリア盤「アイウート!」は例の手旗信号ではないイタリア独自のジャケットで、しかもジャケ下部分がフィルムになっているという洒落たデザインだ。さすがはイタリア、ええセンスしてますな。ただ、ジャケットの作りがUK盤「ビートルズ・フォー・セール」と同じ見開き式で内側からレコードを出し入れするという不便な仕様になっているのが玉にキズだ。
 イタリアではこのレコードから “黒ラベル”(←何かビールみたいやね...)が初回版。どういうワケか市場での取り引き価格が €50~€250と大きく幅があって、私は最初 DiscogsでベルギーのセラーからEX盤を€78で買ったものの、B面に1ヶ所大きく針飛びする箇所があったので即返品。2度目はeBayで信頼できるセラーから €81で落札。今度はピッカピカのNM盤を手に入れることができて大満足だ。
 音の方は UKオリジナル盤を遥かに凌ぐ高音質。ハッキリ言って「ヘルプ!」史上最強ではないかと思えるほど音が良い。これほど良い音で鳴るとは予想していなかったので正直ビックリしたのだが、とにかく中域が分厚くてどっしりと腰の据わった生々しいサウンドがスピーカーから勢いよく飛び出してくるところが◎。特にB面の音の近さは特筆モノで、まるでビートルズが目の前で歌い演奏しているかのようなリアリティーを楽しむことができる。ビートルズ各国盤コレクターのみなさん、これは絶対に“買い”でっせ(^o^)丿

③「アビー・ロード」(PMCQ 31520)
 ビートルズのイタリア盤の中で比較的安値で買えるトップ3が「レット・イット・ビー」「ヘイ・ジュード」とこの「アビー・ロード」で、どれも€20~€30も出せばそこそこキレイな盤を手に入れることができる。私はDiscogsのセラーから €21でNM盤を購入、もちろん STEREO / MONO ダブル表記の1stプレス盤だ。
 レコードに針を落とし、“安かったけど、めっちゃごっつい音で鳴るやん...(^.^)” と思って聴いていると、「アイ・ウォント・ユー」後半部のリフレインが佳境を迎えたところでとんでもないことに... 何とA面ラスト「アイ・ウォント・ユー」がフェイド・アウトで終わるのだ。なんなん、これ??? このレコードの楽しみの一つは、A面ラストのリフレイン・パートで緊張感を極限にまで高めておいてそこから唐突に演奏をスパッとぶった切り、B面1曲目に置かれた「ヒア・カムズ・ザ・サン」の清々しいイントロへと繋げることによって “重厚”と“軽快”の落差から生み出される独特の安堵感(?)を味わうことにあると思うのだが、よりにもよって尻すぼみにフェイド・アウトさせるとは、イタリアEMIは一体何を考えとるんじゃ??? これはビートルズが意図したアルバムの流れをブチ壊す暴挙以外の何物でもない。音自体は迫力満点なだけにホンマにもったいない...
 とまぁこのようにとんでもない編集が施された「アビー・ロード」だが、この部分以外は特に大きな欠点もないので(←音に関しては良くもなく悪くもなく...という感じ)コスパを考えれば決して悪い買い物ではない。まぁ世界で唯一 “フェイド・アウトで終わる「アイ・ウォント・ユー」” が聴ける珍品レコードとして、ライブラリーの片隅に置いておくのもいいかもしれない。

ビートルズのイタリア盤特集③「White Album」T1盤 vs T2盤

2018-05-05 | The Beatles
 ビートルズのイタリア盤1stプレスは簡単に安く手に入る盤と、高価な入手困難盤の二極化が激しい。通常 €200~€300という超高額で取り引きされている「プリーズ・プリーズ・ミー」(←UK盤「ウィズ・ザ・ビートルズ」と同じモノクロのハーフ・シャドウ・ジャケットなので紛らわしい...)と「ウィズ・ザ・ビートルズ」(←前々回取り上げた、いわゆるひとつの「ガーデン・カヴァー」)、そしてイタリア独自編集の「ビートルズ・イン・イタリー」の3枚を別格とすると、それらに次いで高額&レアなのは多分「ホワイト・アルバム」だろう。
 イタリア盤蒐集に関してはDiscogsだけを頼りに全くの手探り状態でゼロからスタートしたので前回の「ヘイ・ジュード」のような試行錯誤を繰り返しながら1枚また1枚と集めていったのだが、「ホワイト・アルバム」に関してはセンター・レーベルにMONO 表記が入ってさえいれば初回版で間違いないと信じきっていた私はたまたまeBayで見つけた €40の盤を即落札。めっちゃ安ぅ買えてメデタシメデタシ... これで「ホワイト」は一丁上がり... と思い込んでいた。
 その時買った「ホワイト」のジャケットはUK 1st プレス盤と同じトップ・ローディング方式で、右下部に刻印されたシリアル・ナンバーは「0219346」。センターレーベル右側には2段重ねのブラケット内に STEREO / MONO のダブル表記があり、左側のBIEMロゴの下にYEX 708/T2 と書いてある。イタリア盤の特徴はデッドワックス(内周部)にカッティング年月日を彫り込んであることで、このレコードのA面にも “YEX-708-T2” というマトリクス№の後に “14-11-68” と刻まれており、それはすなわち1968年11月14日にカッティングを行ったということを示している。
 実際に聴いてみた感想としては、“悪くはないけれどちょっとお上品すぎてイタリア盤特有の武骨さが足りない” というのが正直なところで、どことなくこじんまりとまとまっておりガッツに欠けるのだ。例えるなら80年代に作られた旧規格CDを聴いているような感じで、やや高域寄りのフラットなサウンド。一般ピープルにはこれで聴きやすいのだろうが、私のような爆裂サウンド好きには物足りない。他のタイトルのイタリア盤はもっと元気な音がしていたので、“「ホワイト・アルバム」に関してはイタリア盤はイマイチやなぁ...” と考えながらもそういうものとして受け止めていた。
 そんなある日、ebay検索で偶然目にしたのが別の「ホワイト・アルバム」イタリア盤で、その説明の中に “Rare T1 1st Pressing” と書いてあるのを発見。それまではてっきり自分の持っている T2盤がファースト・プレスだと思い込んでいた私にとってこれは一大事である。私は俄然そのT1盤を聴いてみたくなり、入札に参戦してはみたものの、驚異の €150オーバー決着という激戦であえなく撃沈(>_<) その時は “UKオリジナルやあるまいし、たかがイタリア盤ごときに2万円も出せるかいな... イタリア盤「ホワイト」のファースト・プレスは諦めるしかないか...” と心が折れそうになったが、それから半年ほど経って別のセラーから出品された T1盤がどういうワケか不人気で(←こういう台風の目の中に入ったかのような無風状態オークションってたま~にあるんやけど一体何なんでしょーね...)、結局 €73で落札することが出来た。やっぱり “諦めない心” はレコード・コレクターに必須ですな(^.^)
 このレコードのシリアル・ナンバーは「0067541」という低い数字で、もちろんセンター・レーベルの表記もデッドワックスのマトリクス№末尾の刻印も T1 なのだが、注目すべきはカッティング年月日で、何と T2盤よりも3日早い “11-11-68” となっている。コレってつまりUK盤「ラバー・ソウル」(1/1)やゼップのUK盤「プレゼンス」(A1/B1)のようにカッティング・レベルが高すぎて一般のレコード・プレーヤーでは針飛びが頻発したために急遽リカットしたということなのか? それとも何か他の理由があって T2盤が作られたのか... と謎は深まるばかりだったが、百聞は一聴にしかずということでとにかく実際にレコードを聴いてみたところ、音が T2盤よりも1割増しぐらい大きくて(つまり音圧が高くて)、イタリア盤1stプレスらしいシャキシャキしたドライな音で鳴ったのだ。おぉ、これこれ、やっぱりビートルズはこうでなくっちゃ(^o^)丿
 この盤に関するもう一つの謎は「バースデイ」から始まるディスク2の方で、センター・レーベルの表記は表裏共に T1 なのにデッドワックスのマトリクス刻印は何故か T2になっていて、カッティング日時も“14-11-68” と刻まれているところ。何なん、これ? 試しにこの2枚を聴き比べてみたが私の耳ではディスク1のような違いは認められなかった(当たり前か...)。因みに盤の重さはT1盤が“ディスク1:161g, ディスク2:148g”で、T2盤が“ディスク1:166g, ディスク2:153g” と、どちらのディスクもT2盤の方が少しだけ重い。
 このT1盤は市場に出回っている数が少ないようで(←何せ3日後にリカットやもんね...)オークションで目にする機会は少ないが、ビートルズのイタリア盤完全制覇を目指すなら(←まぁそんな物好きな人は滅多におらんと思うけど... 笑)少々時間がかかってもこのT1盤をゲットする価値はあると思う。