①Gogliola Cinquetti
ジリオラ・チンクエッティーは60年代に活躍したフレンチ/イタリアン女性歌手の中でも屈指の歌唱力と美貌を併せ持つシンガーで、かくいう私も彼女の大ファンなのだが、そんな彼女が母語のイタリア語で歌い上げる「Quelli Erano I Giorni」には雑念を忘れて聴き入ってしまう吸引力がある。彼女の歌声はまさにザ・ワン・アンド・オンリーの素晴らしさだ。
「悲しき天使 QUELLI ERANO I GIORNI」ジリオラ・チンクエッティ GIGLIOLA CINQUETTI
②Vicky
ヴィッキーがフランス語で歌う「Le Temps des fleurs」はメリー・ホプキンの仏語ヴァージョンに比べるとより濃厚な味わいで好き嫌いが分かれそうだが、私は結構好き。哀愁舞い散るこの曲のメロディーと情感のこもった伸びやかなヴィッキーの歌声の相性はバッチリだが、さらにフランス語独特の響きも相まってインパクト抜群のカヴァー・ヴァージョンに仕上がっている。
「悲しき天使 Le Temps des fleurs」ヴィッキー Vicky Leandros
③Sandi Shaw
サンディー・ショーはチンクエッティ―やヴィッキーに比べると日本での知名度はイマイチ低いかもしれないが、本国イギリスではスウィンギング・ロンドン時代を代表する人気ポップ・シンガーであり、その落ち着いた歌いっぷりとキュートな歌声の微妙なバランスが独特な魅力を持っている。たまにはメリー・ホプキン以外の英語ヴァージョンを聴いてみたいというマニアにオススメの逸品だ。
Those Were The Days' - Sandie Shaw 1968
④Dalida
ダリダはイタリアで生まれエジプトのカイロで移民として育ったフランス人(←何じゃそりゃ?)シンガーで、日本ではあまり知られていないかもしれないが、フランスでは “国民的歌手” と言っても過言ではない絶大な人気を誇るレジェンドだ。そんな彼女によるこの仏語カヴァーは歌の上手さもさることながら、その圧倒的な存在感に魅了されること間違いなし。女性歌手でこれほどのオーラを纏っている人は中々いないと思う。
Dalida - Le temps des fleurs (Mary Hopkins - Those were the days)
ジェリー・リー・ルイスが亡くなった。チャック・ベリー、リトル・リチャードに続いて、50'sロックンロール・ブームを牽引したレジェンド最後の生き残りだったジェリー・リーまでもが逝ってしまい、改めてAll Things Must Passを痛感している。今日はそんなジェリー・リー・ルイスの追悼・シングル盤特集だ。
①Whole Lotta Shakin' Going On (SUN 267)
1956年末に出たデビュー・シングル「Crazy Arms」は不発に終わったものの、翌1957年3月にリリースされた2ndシングル「Whole Lotta Shakin' Going On」はジェリー・リーを一躍スターダムに押し上げる大ヒットとなり、全米3位、全英8位を記録した。彼の唯一無比と言ってもいい “バンピン・ピアノ・スタイル” が曲の良さを更に引き立ててごきげんなスウィング感を生み出している。実にカッコ良いロックンロール・クラシックスだ。
Jerry Lee Lewis -Whole Lotta Shakin Going On (Live 1964)
②Great Balls Of Fire (SUN:281)
“火の玉ロック” の邦題で知られる1957年11月リリースの3rdシングル「Great Balls Of Fire」は全米2位、全英1位に輝いた、ジェリー・リーの代名詞と言ってもいい最大のヒット曲。前作で打ち出したスタイルに磨きをかけて “クレイジー・バンピン・ピアノ・ロッカー” としての名声を決定づけた記念碑的なナンバーだ。わずか1分50秒という短さで聴く者にこれほどのインパクトを与える曲には滅多にお目にかかれない。ロックンロール史上に燦然と輝く金字塔と言える名曲名演だ。
Jerry Lee Lewis - Great Balls Of Fire (Shindig)
③Breathless (SUN:288)
超特大ヒット「Great Balls Of Fire」の後を受けて1958年2月にリリースされた4thシングル「Breathless」は全米7位、全英8位止まりと、チャート成績的には中ヒットといったところで前2曲には遠く及ばなかった。彼のピアノ・スタイルは良く言えばユニーク、裏を返せばワンパターンで、たたみかけるように疾走する曲想のナンバーでは向かうところ敵なしなのだが、イキそうでイカない(?)タイプのこういう曲では彼の持ち味が①②ほど活きていないように感じる。これはこれで私は結構好きなのだが...
Jerry Lee Lewis - Breathless (1958) - BETTER QUALITY
④High School Confidential (SUN:296)
1958年4月にリリースされた5thシングル「High School Confidential」は幼妻との二重婚スキャンダルのせいもあってか全米21位が精一杯で、この頃からそれまでの勢いに翳りが見え始めたように思うが、曲の出来としては①②に次ぐカッコ良いロックンロール。左手でベース・ラインを弾き、右手で三連を駆使する彼のブギウギ・スタイルにピッタリのアッパー・チューンだ。
Jerry Lee Lewis - sings High School Confidential
⑤The Return Of Jerry Lee (SUN:301)
6thシングル「The Return Of Jerry Lee」はナレーションと彼の過去のヒット曲の断片を組み合わせた摩訶不思議なシングル。曲というよりは自虐ネタを扱った短編ギャグ(?)という感じで、例えば “How do you feel about being back home?” というナレーションの問いかけに対して「Great Balls Of Fire」の一節 “Ooh it feels good” が流れるという、どこぞのラジオ番組の面白企画みたいなノリで、自らのスキャンダルをもネタにしているところが面白い。それにしてもこんなふざけたシングルをリリースしてしまうサン・レコードのオーナー、サム・フィリップスってある意味凄い人だと思った。
Jerry Lee Lewis - The Return of Jerry Lee
⑥I'm On Fire (Philips:BF1324)
ジェリー・リーは1962年にサンを離れてマーキュリー・レコード傘下のスマッシュ・レーベルに移籍し、徐々にカントリー色を強めていくのだが、1964年に出た移籍第2弾シングル「I'm On Fire」(→私の手持ちはフィリップスからリリースされたUK盤)ではまだまだ元気にロックンロールをブチかましている。私は映画「Great Ball Of Fire」(1989年)のサントラ盤でこの曲の再演ヴァージョンを聴いて好きになったのだが、オリジナルに勝るとも劣らないエネルギッシュなプレイに驚かされたのをよく覚えている。
Jerry Lee Lewis - I'm On Fire
【おまけ】2006年にジェリー・リーがアルバム「Last Man Standing」でジミー・ペイジを迎えてカバーしたのがこの「Rock 'n' Roll」だ。憧れのレジェンドとの共演で気合い十分のペイジがノリノリでプレイしているのが微笑ましい。
Jerry Lee Lewis "Rock 'n' Roll" (featuring Jimmy Page on guitar)
①Drive In Show (Liberty F-55087)
“独特のハスキーヴォイスで激しいシャウト”が売りのエディ・コクランだが、ちょっとユルめのこんな曲でも他のアーティストには真似できないような妙なるグルーヴを生み出しているところがレジェンドたる所以。軽妙洒脱な語り口がカッコエエなぁ... (≧▽≦) バックのウクレレが実にエエ味を出しとります。
1957 Eddie Cochran - Drive In Show
Somethin' Else (Live on Tasty Pop Sundae from BBC Sessions) (2016 Remaster)
⑥Hallelujah, I Love Her So (Liberty F-55217)
この曲との出会いはビートルズのスター・クラブのライヴ盤(←ただしこれはバック演奏のみで、ビートルズの歌入りはアンソロジーまで待たねばならなかった...)。オリジナルはもちろんレイ・チャールズで、コクランが歌っていると知ったのはそれから何年も経ってからだが、彼のヴォーカリストとしての懐の深さがよく分かる名唱になっている。尚、ペギー・リーがherをhimに変えて女性の視点から歌った「Hallelujah, I Love Him So」もキュートでオススメだ。
Eddie Cochran - Hallelujah I Love Her So ( 1960 )
The Beatles Live At The Star Club 19/29 - Hallelujah I Love Her So
ビートルズ狂の私は本家ビートルズだけでなく彼らが影響を受けた50年代のロックンロールのレコードも集めている。エルヴィスを始めとして、チャック・ベリー、リトル・リチャード、カール・パーキンス、ラリー・ウイリアムズ、ジーン・ヴィンセント、バディ・ホリーなど、若き日のジョンやポールが聴きまくったレコードをオリジナル盤の爆音で聴いて大コーフンしているのだが、そんな中で決して忘れてはならないのがエディ・コクランである。
そもそもエディ・コクランの曲をビートルズは公式にはカヴァーしていないが、ジョンとポールが初めてリヴァプールの教会で会った時にポールがコクランの「Twenty Flight Rock」を演奏し、そのプレイにジョンが感心してポールをクオリーメンに誘ったというのは有名な話で、そういう意味でもこの「Twenty Flight Rock」はビートルズ・ファンにとって非常に重要な曲なのだ。
Twenty flight rock - Paul McCartney
エディ・コクランのレコードはLPを2枚、シングル盤を7枚持っていて、そのどれもが数ドルから高くても20ドルぐらいで手に入れたものだが、何故か「Twenty Flight Rock」だけがシングル盤にもかかわらず目の飛び出るような高値で取り引きされていた。特にエグいのがリバティ・レコードのUSオリジナル盤シングルで(←ターコイズ・レーベル)eBayでは $150~$320 という凄い値段で落札されていく。貧乏コレクターの私はただただ指をくわえて見ているしかなかったので、US盤がダメならUK盤があるわい... ワシもジョンやポールが聴いてたのと同じUK盤を手に入れたるぞ... と意気込んで今度はロンドン・レコードのUK盤シングルを狙ってみたものの、やはり£75(≒$100)オーバーと、US盤ほどではないにせよ他のシングル盤の10倍近い出費を覚悟せねばならない。映画「The Girl Can't Help It」の中で歌ったことによって知名度は上がったものの、英米共にチャート・インすらしなかったことを考えると、このシングルはプレスされた枚数自体が極端に少ないのかもしれない。私は “見とれ... いつかそのうち安ぅ手に入れたるからな...” と思いながら一時撤退することにした。
それから何年か経って、BSで「ザ・ロニー・ウッド・ショー」にポールがゲスト出演した回の放送を観ていた時のこと、2人が楽しそうに「Twenty Flight Rock」を歌い演奏している姿を見て “せや、これまだ持ってなかったわ!” とこのレコードのことを思い出し、再びコレクター魂に火がついた私が番組を観終わってすぐに eBayをチェックしたところ、ラッキーなことに有象無象の再発盤の中で1枚だけロンドン・レコードのUK盤が出ているのを発見、私はすぐにそれをウォッチ・リストに入れてオークション最終日を待った。
Paul McCartney Live At The Ronnie Wood Show, London, UK (Monday 25th June 2012)
スタート価格は£49で盤質はVG、何とか1万円以内で手に入れたかった私は一応£65でスナイプしてみたのだが、驚いたことに誰ひとり来ずそのまま£49で落札\(^o^)/ 少し不安になった私はもう一度商品説明文を隅から隅まで読んでみたが特に大きな欠陥はなさそうだ。そこで気がついたのだが、このレコードは Shippingの項目に “Ships to United Kingdom”(イギリス国内しか送りません)とあるのをメールで頼み込んで了承を得てビッドしたものだったためライバルはイギリス人のみということになり、ちょうど新型コロナによるロックダウンやら何やらで現地の人達はレコード・オークションどころではなかったのかもしれない。送料はたったの£5ということで、結局7,500円ほどでオールディーズ・シングル蒐集のラスボス的存在(?)だった「Twenty Flight Rock」のオリジナル・シングル盤をついに手に入れることが出来た。
そして昨日の日曜日、まだ正月の三賀日だというのにレコードがドバーッと届いた。年賀状の配達で忙しい中、海外から届くレコードを後回しにせずに律儀に届けてくれた郵便屋さんにはホンマに感謝感謝なのだが、その中の1枚にこの「Twenty Flight Rock」があって大喜びしたというワケだヽ(^o^)丿 それにしても正月にレコードが届くなんて、こいつは新年早々縁起が良い。
盤質はセラーの説明通り見た目はVGだったが溝の状態がすこぶる良いのかほぼノイズレス。聴感上はバリバリの NM+である。あの値段でこんな凄い音が聴けるなんて、何だかめちゃくちゃ得した気分だ。それにしても何というこのウキウキワクワク感... ロックンロールって何でこんなに気持ちを高揚させるのだろう? 人間の快楽中枢をビンビン刺激するこの8ビートのリズム... 最高ではないか! そう、これこそまさに私を虜にしたビートルズのルーツ・ミュージックなのだ。ということで今日は一日中50年代の古~いロックンロールのシングル盤を取っ替え引っ替えしながらシェケナベイベーしていた。いやぁ、今年はホンマにエエ正月やわ(^.^)
Eddie Cochran - Twenty Flight Rock (1956)
【おまけ①】
ロカビリーと言えばこの人、ブライアン・セッツァー。ジェフ・ベックもノリノリでめっちゃ楽しそうwww
Jeff Beck & Brian Setzer-20 Flight Rock
【おまけ②】
“女コクラン”の異名を取るサヤカ・アレッサンドラも当然この曲をカヴァー。ノリの良さもハンパないし、この人の声ってロカビリーにピッタリやね。
Twenty Flight Rock (Eddie Cochran Tribute by Sayaka Alessandra)
【おまけ③】
やっぱり今年はコレでしょう! 早よ映画が見たいなぁ... (≧▽≦)
Twenty Flight Rock (Jan 23rd, 1969)
昨日の真夜中にヤフーニュースでリトル・リチャードの死を知った。3年前にチャック・ベリーが逝き、今度はリトル・リチャードとは... まさに50'sは遠くになりにけりである。自分がレコードで聴いて親しんでいるアーティスト達が一人また一人と亡くなっていくのは淋しいものだ。ということで、今日はリトル・リチャードのレコード蒐集の思い出を書き記してみたい。
リトル・リチャードに関しては長い間CD黎明期に買ったベスト盤「Little Richard's Grooviest 17 Original Hits」1枚で満足していた。私は気に入ったアーティストはガンガン集める癖があるので他にも何枚か買った記憶があるのだが、それは彼の全盛期であるSpecialtyレーベル時代の50年代録音ではなく、60~70年代にVee JayやRepriseといった他レーベルから出したセルフ・カヴァーだったらしく、“何やコレ、詐欺やんけ!” とブチギレてすぐに売り飛ばしたのを覚えている。まだオリジナルと再レコーディング音源の違いすら分からない駆け出しの頃の話だ。
そういえばCD「Little Richard's Grooviest 17 Original Hits」の表ジャケに小さな文字で “Beware of Imitations:Even though I later re-recorded the hits in this album for other labels, these ORIGINAL HIT RECORDINGS are still the GREATEST!(まがい物に注意:私は他のレーベルでヒット曲を再レコーディングしたけれど、ここに入ってるオリジナル音源こそがやっぱり最高!” と書いてあったが、自分でレコーディングしておきながら “まがい物に注意” とは一体どの口が言うてるねん!と呆れたものだ。
それから20年ほど経ってロックのオリジナル盤LPを買い始めた2005年頃、昔の失敗から “リトル・リチャードはスペシャルティ・レーベルしかアカン” と肝に銘じて上記CDと同ジャケット同収録曲のアルバムをeBayで買ったのだが、いざレコードに針を落としてみると何とこれが迫力もクソも無い疑似ステレオ・サウンドでビックリ(・o・) 何が悲しゅーて50'sロックンロールをスッカスカの疑似ステで聴かにゃならんのか! スペシャルティ・レーベルということで安心してモノラルとステレオを確認せずに買ってしまった自分が悪いのだが時すでに遅し。頭に血が上った私はスペシャルティ・レーベルから出ているモノラルLPを探したが、数は少ないし盤質は悪いのばっかりやし値段は高いしですっかり心が折れてしまった。
その後、確か今から5年ほど前の事だったと思うが、アメリカのレコード店の通販でオールディーズのシングル盤をドカ買いしたことがあって、その時にリトル・リチャードのシングル盤を10枚ほどゲット。セット・プライスで確か1枚$5くらいだったと記憶しているが、これでやっとスペシャルティ・レーベル時代のオリジナル音源をアナログ・モノラルのド迫力サウンドで聴けるわいと大喜びしたものだ。
そして去年の冬、レコード棚の整理をしていた時に “リトル・リチャードはやっぱりLPも欲しいなぁ...” と思い、Discogs を調べていてふと閃いた。US盤がダメならUK盤があるではないか... しかも50年代ロックンロールの音源は確か音の良いロンドン・レコードから出ていたはず... 早速UK盤を調べてみると「Little Richard Vol.2」の盤質VG+というのが£18で出ており即決。続いてデビュー盤の「Here's Little Richard」を探すと、盤質VG+でジャケットに書き込み及びコーティングに少々難ありのレコードが£15で出ておりそいつもゲット。US盤で買ったら単品で軽く$100は超えそうなリトル・リチャードの最初期モノラルLPを2枚併せて£33で買えたのだから笑いが止まらない。
届いた盤は2枚とも商品説明通りの盤質で、50年代ロックンロールの骨太モノラル・サウンドが楽しめて言うことナシ。US盤シングルとも聴き比べてみたが、33回転と45回転の違いはあれど、UK盤だから音圧が低いとかいうこともなく、これならクソ高いUSオリジナルLPなんか要らんわいと満足している。
リトル・リチャードをカヴァーしたアーティストは思いつくだけでも、ビートルズ(「Long Tall Sally」「Hey Hey Hey」)、ジョン・レノン(「Slippin' And Slidin'」「Rip It Up」「Ready Teddy」「Send Me Some Lovin'」)、ポール・マッカートニー(「Lucille」はライヴでの十八番)、エルヴィス・プレスリー(「Tutti Frutti」)、レッド・ゼッペリン(「Good Golly Miss Molly」は「Rock And Roll」の元ネタ)と、超の付くスーパースター達の名前が並ぶ。改めてこの人はチャック・ベリーと並ぶレジェンド中のレジェンドやなぁと感じ入った次第。今夜は古き良き50年代に思いを馳せながらリトル・リチャードをモノラルの爆裂サウンドで聴きまくるとしよう。
Little Richard Long Tall Sally - Tutti Frutti
Little Richard - Lucille (1957) [Long Version, High Quality Sound]
昨日は侍ジャパンの練習試合を見るために休みの日にもかかわらず早起きしたのだが、試合の途中で中継が終了したのでそのままテレビをつけっ放しにして朝飯を食べていた。テレビでは豊洲がスベッたとか森友がコロンだとか相も変わらずクソしょーもないニュースを延々と垂れ流していたので鬱陶しくなり消そうとしたところ、“それでは次のニュースです。ロックンロールの神様と呼ばれるチャック・ベリーさんが亡くなりました。90歳でした。” というキャスターの言葉が耳に飛び込んできた。え~、チャック・ベリー死んだん??? これはエライコッチャの大ニュースである。練習試合なんか見てる場合ではない。
もう今から40年以上も前の話になるが、中学に入って「赤盤」でビートルズに入門した私は少ないお小遣いをやりくりして他のアルバムを1枚ずつ買っていくことにした。当時は毎月3,000円もらっていたのでちょうど月1枚のペースになる計算だが、LPレコードを買えるだけのお金が貯まるのが待ちきれなかった私は(←こういうとこは今も昔と全然変わってへんな...)「赤盤」に入っていなかった初期のロックンロール・ナンバーをシングル盤で何枚か買って渇きを癒そうと考えた。そんなこんなで最初に買ったのが「ロール・オーヴァー・ベートーベン」と「ロックンロール・ミュージック」の2枚だった。
もちろん当時の私はチャック・ベリーのチャの字も知らないド素人。オリジナルとカヴァーの違いすらよく分からず、数あるシングル盤の中からただただ本能の趣くままに一番気に入ったものを2枚選んだ結果がたまたまチャック・ベリーのカヴァーだったのだ。どちらも最初の数秒で心をわしづかみにされる “曲良し歌良し演奏良し” のスーパーウルトラ大名演でロックンロールにとって一番大切なカッコ良さに溢れているが、チャック・ベリーが原曲に封じ込めたロックンロール魂がビートルズにこんな凄い演奏をさせたのかもしれない。
The Beatles Roll Over,Beethoven[lyrics]
The Beatles - "Rock and Roll Music"
チャック・ベリーはビートルズに最も大きな影響を与えたアーティストである。もしも彼がいなければビートルズがあのような形で世界を変えることはなかったかもしれないし、それはすなわちロックの、いや現在のポピュラー・ミュージックそのものの形態が大きく変わってしまうことを意味している。
私は2年ほど前、シングル盤をガンガン買いまくっていた時にチャック・ベリーにハマってこのブログでも特集をやったが、USオリジナル・シングルで聴く彼の音楽は何十年もの時を超えて心にビンビン響いてくる。生きていることの喜びがダイレクトに伝わってくる。ロックンロールとは、その喜びの表現である。だから私は今もロックンロールが大好きなのだ。
偉大なるロックンロールの創始者、チャック・ベリー... ここに心より彼の冥福を祈りたいと思う。 R.I.P. Chuck Berry, your music will live on forever.
Roll Over Beethoven - Chuck Berry LIVE
①Bring It On Home To Me (Sam Cooke) ~ Send Me Some Lovin' (Little Richard)
サム・クックの歌はソウルフルでありながら黒人特有の暑苦しさ、押しつけがましさを微塵も感じさせないところが凄い。「ワンダフル・ワールド」しかり、「ツイスティング・ザ・ナイト・アウェイ」しかりで、ゴスペル直系のソウル・フィーリングをその艶のある声で軽妙洒脱に表現する歌い回しはクールそのものだ。スローに歌い上げる時でも決して自己陶酔型にならないところが超一流の証であり、この「ブリング・イット・オン・ホーム・トゥ・ミー」においてもジワジワと聴き手の心に染みこんでくる説得力溢れるヴォーカルを聴かせてくれる。
ポールもカヴァー・アルバム「CHOBA B CCCP」で取り上げていたこの「ブリング・イット・オン・ホーム・トゥ・ミー」はサム・クックが1962年ヒットさせた曲で、ジョンやポール以外にも様々なアーティスト達によってカヴァーされているR&Bの大スタンダード・ナンバーだ。ビートルズ的な視点から言えば「ユー・リアリー・ガッタ・ホールド・オン・ミー」系に属するバラッドだが、この曲をリトル・リチャードの「センド・ミー・サム・ラヴィン」とメドレーで繋げようというジョンのアイデアも慧眼という他ない。前々回取り上げた「リップ・イット・アップ~レディ・テディ」といい、このトラックといい、ジョンのロックンロールに対する造詣の深さとセンスの良さを感じさせるメドレーだ。
サム・クック盤(RCA VICTOR 47-8036)はdog on top、つまりレーベル面で犬が上にいるのがオリジナルで、ミシガンのレコ屋からセット価格 $5.60でゲット。一方リトル・リチャード盤(Specialty 579)はデラウェアのレコ屋からセット価格 $5.25で入手した。
Sam Cooke Bring It Home To Me
①You Can't Catch Me / Chuck Berry
チャック・ベリーの「ユー・キャント・キャッチ・ミー」という曲は「カム・トゥゲザー」の元ネタとして有名になった曲である。ジョンが「ロックンロール」でカヴァーしたヴァージョンを聴いた時にはそのカム・トゥゲザーなアレンジ(笑)のせいか(←Aメロなんかそっくりやん...) “こりゃアウトやわ(>_<)” と思ったものだったが、その後かなり経ってからチャック・ベリーのオリジナル・ヴァージョンを聴いた時には、「マイ・スウィート・ロード」と「ヒーズ・ソー・ファイン」みたいな瓜二つのヴァージョンを想像していた私としては、確かに曲想が似ているところもあるにはあるがテンポの違いもあってか目くじら立てて騒ぐほど似ているとは思えなかった。
しかし尊敬するチャック・ベリーへのオマージュとしてジョンがアダプトした歌詞の一節 “Here comes old flat-top♪” が仇となり、裁判で敗色濃厚と悟ったジョンが「ロックンロール」にこの曲の版権を持っているモーリス・レヴィ絡みの曲を3曲入れることで示談にするハメになったという経緯は皆さんご存知の通り。 かように “パクリ” と “オマージュ” の線引きというのは難しい(>_<)
この曲はチャック・ベリーのデビュー曲「メイベリーン」から59年の「バック・イン・ザ・USA」までの21枚のシングルの内で全米ホット100にもR&Bチャートにもランク・インしなかった唯一の曲で(←もっとつまらん曲でもチャート・インしてるのに不思議やわ...)、あまり売れなかったせいか数あるチャック・ベリーのシングル盤の中で「カム・オン」(←ストーンズがデビュー・シングルでカヴァーした曲)に次いで入手が難しかったのがこのレコードだ。だから去年の秋に2ヶ月ほどeBayで網を張り、運良く BUY IT NOW で出品された直後にポチってピカピカ盤を$10.00でゲットできた時はめっちゃ嬉しかった。尚、この盤(Chess 1645)はオリジナルと同じくチェスの駒を描いたシルバートップのレーベル・デザインで再発されているのだが(←こーゆーの、ホンマに迷惑なんよね...)、オリジナル盤のB面は「ハバナ・ムーン」なのに対し再発盤のB面は「ダウンバウンド・トレイン」なのでコレクターの皆さんは騙されないように気を付けましょう。
Chuck Berry -"You Can't Catch Me" (From the 1956 film Rock, Rock, Rock!)
②Slippin' And Slidin' (Little Richard)
「スリッピン・アンド・スライディン」のオリジナルはリトル・リチャードだが、一般に広く知られるようになったのはジョンが名盤「ロックンロール」でカヴァーしてからだろう。私のこの曲との出会いはもちろんジョンのヴァージョンなのだが、アルバム「ロックンロール」のA面を聴き終えて盤を裏返し、B面1曲目に置かれたこの曲が始まった瞬間にスピーカーから迸り出る怒涛のロックンロールにブッ飛んだのを今でもよく覚えている。それにしても何とカッコ良い演奏だろう! ノリノリで猥雑でド迫力... まさにロックンロールを歌うために生まれてきたようなジョン・レノンという男の真骨頂といえる必殺の名カヴァーだ。シングル・カットしたわけでもないのにプロモーション・ビデオまで作るという熱の入れようからもジョンがこのカヴァー・ヴァージョンの出来に絶対的な自信を持っていたことが分かろうというものだ。
この「スリッピン・アンド・スライディン」はリトル・リチャードにとって「トゥッティ・フルッティ」に続くスペシャルティ・レーベルでの2枚目のシングル「ロング・トール・サリー」(Specialty 572)のB面に収められていた曲で、ビートルズは69年のゲット・バック・セッションでこの曲をジャムっており、彼らお気に入りのロックンロール・クラシックスの一つだったことが窺える。50年代スペシャルティ・レーベルで状態の良いシングル盤を見つけるのは難しいのだが、私はラッキーなことにVG++の盤を$7.00で買うことができた。
1956 HITS ARCHIVE: Slippin' And Slidin' - Little Richard (correct single version)
③Peggy Sue (Buddy Holly)
バディ・ホリーはチャック・ベリーやリトル・リチャードと並んでビートルズに多大な影響を与えたアーティストである。そもそもビートルズというバンド名からしてバディ・ホリーのクリケッツにインスパイアされたものだし、彼らの “3コードをベースに、立って楽器を弾くバンド”というスタイルの源流はバディ・ホリー&ザ・クリケッツだったとポール自身が語っている。しかもポールは76年にホリーの楽曲の版権を取得し、バディ・ホリー・ウイークというイベントまで開催しているのだ。一方ジョンはアルバム「ロックンロール」で「ペギー・スー」をカヴァーし、イントロの雷鳴の如きドラミングやパワー・コードによる圧倒的なドライヴ感、そしてホリーの専売特許であるヒーカップ唱法を見事に再現し、ポールに負けず劣らずの “バディ・ホリー・マニア” ぶりを発揮している。
このようにジョンやポールを夢中にさせたバディ・ホリーの一番の魅力はカントリーやR&Bのフレイバーを活かした軽快なロカビリー・サウンドにあり、時代の最先端を行くコンボ・スタイルでそのリズミックなポップ・フィーリングを表現した点に尽きると思う。そういう意味で、バディ・ホリー直系と言ってもいいエヴァリー・ブラザーズからもビートルズが多大な影響を受けたのは大いに頷ける話だ。
バディ・ホリーのレコードはアメリカでは「ザットル・ビー・ザ・デイ」や「イッツ・ソー・イージー」のようにザ・クリケッツ名義のものはブランズウィック・レーベルから、「ワーズ・オブ・ラヴ」やこの「ペギー・スー」のようにバディ・ホリー単独名義のものはコーラル・レーベルから(←どちらもデッカの傍系レーベル)リリースされている。「ペギー・スー」(Coral 9-61885)のファースト・プレスではコンポーザーのクレジットにバディ・ホリーの名前が入っておらず、60年代プレス以降の盤から入るようになったというからややこしい。私が買ったのはオレンジ・コーラルの初版で、NM状態の盤が$5.00だった。
Buddy Holly, Peggy Sue (with lyrics).wmv
①Stand By Me (Ben E. King)
多くのビートルズ・ファンも同じだと思うが、私が初めて聴いた「スタンド・バイ・ミー」は決定版とでもいうべきジョン・レノンのカヴァー・ヴァージョンであり、ベンEキングによるオリジナル・ヴァージョンを聴いたのはそれからかなり経ってからのことだった。例えるならフェラーリに乗った後に普通の国産スポーツカーに乗るようなモンで、その時は “へぇ~、これがオリジナルか...” ぐらいの印象しかなかった。決してオリジナル・ヴァージョンも悪くはないのだが、「ロックンロール・ミュージック」や「ツイスト・アンド・シャウト」の時にも書いたように、ジョン・レノンによってカヴァーされるということは要するにそういうことなのだ。いまいちインパクトに欠けると感じてしまうのは決してベンEキングのせいではない。
しかし何年か前にYouTubeで見つけたベンEキング・ヴァージョンとポリスの「エヴリ・ブレス・ユー・テイク」とのマッシュアップは大いに気に入った。私が一番物足りなく思っていたのはオリジナル・ヴァージョンのストリングス・アレンジがセンチメンタリズム過多に感じられるところだったが、マッシュアップによってポリスの名ドラマー、スチュワート・コープランドのパーカッシヴなドラミングが楽曲全体をピリリと引き締めて独特なグルーヴ感を生み出しており、これならベンEキングのヴォーカルでも悪ぅないなぁ...と感じ入った次第。アトランティック傍系のアトコ・レーベルから出たオリジナル・シングルはアメリカのレコ屋からの一括購入でNM盤が$3.75だった。
Ben E. King - Stand By Me (HQ Video Remastered In 1080p)
The Police vs Ben E King- MASH UP
②Rip It Up~Ready Teddy (Little Richard)
ビートルズでリトル・リチャード担当と言えばポールである。喉の張り裂けそうなハイトーンでシャウトする「ロング・トール・サリー」のインパクトは絶大だし「カンザス・シティ」や「ヘイ・ヘイ・ヘイ」、そしてソロになってからもカンボジア難民救済コンサートやプリンス・トラスト'86での「ルシール」など、ビートルズ・ファンにはポールのヴォーカルを通してリトル・リチャードを知ったという人が多いのではないかと思うし、私もその一人だった。だからジョンが「ロックンロール」の中でリトル・リチャードのナンバーをメドレーも含めて4曲も取り上げているというのは少し意外な感じがしないでもないが(←あのチャック・ベリーですら2曲やというのに...)、ジョンもポールに負けず劣らずのリトル・リチャード信者だったということか。
「リップ・イット・アップ」と「レディ・テディ」は元々スペシャルティ・レコードからリリースされたシングル(Specialty 579)のA面とB面だったもので、ジョンはその2曲を実に巧妙にメドレー化して歌っているのだが、ビートルズ時代の「カンザス・シティ~ヘイ・ヘイ・ヘイ」と同様に何の違和感もなく一気呵成に聴けてしまうところが凄い。この2曲は全盛期のプレスリーもカヴァーしているので三者を聴き比べてみるのも一興だろう。
リトル・リチャードのスペシャルティでのシングルはパッと見は同じようなレーベル・デザインで何度か再発されているらしいので識別が難しいが、私が調べた限りでは盤が分厚くて中央の太い黒並線内に黄色い細線が入っているのが50年代プレスの初回盤、盤は分厚いけれど黄色い細線が入ってないのが60年代初め頃の2ndプレス盤、そしてレーベル左側にFrom Specialty LP, "Little Richard's Grooviest 17 Original Hits" という文言が入っているのが80年代プレス再発盤のようだ。実際に聴いてみて1stプレスと2ndプレスの音質の違いは分からんかったので、コスパを考えるとリトル・リチャードのUSオリジナル・シングルは2ndプレス盤狙いがベストかもしれない。私が買ったのは1stプレスで、VG++盤が$5.25だった。
Little Richard And His Band - Rip It Up/Ready Teddy (Specialty 579) 45 rpm
①Back In The USA [Chess 1729]
この「バック・イン・ザ・USA」という曲は言わずと知れたビートルズの「バック・イン・ザ・USSR」のパロディー元ネタとして有名だ。原曲に出てくる “摩天楼” “ドライヴイン” “ハンバーガー” “ジュークボックス” を “ウクライナやモスクワの女の子” や “バラライカの音色” へと置き換え、“ジョージア”と“グルジア”を引っ掛けたポールの作詞センスはもう見事という他ないし、インドでの作曲時にインスピレーションを与えてくれたマイク・ラヴへのささやかなお返しといえるビーチ・ボーイズ風コーラスも最高だ(^.^) そう言えば “ビートルズはビーチ・ボーイズがチャック・ベリーのコピーをしていることのイミテーションをした” という趣旨の評論をどこかで読んだ覚えがあるが、言い得て妙だと思う。
The Beatles - "Back In The USSR" Mono
チャック・ベリーのオリジナルは1959年にリリースされたものの折からのロックンロール退潮期と重なったせいか全米チャートでは37位までしか上がらなかったが、曲自体の出来は素晴らしく、ニューヨークやロサンゼルス、デトロイト、シカゴといった地名がポンポン飛び出してくるアメリカ賛歌として大いに楽しめる。バックの演奏もノリノリで、特にジョニー・ジョンソンのグルーヴィーなピアノなんかもう最高だ。このレコードはeBayで$9.99(約1,200円)でゲット、VG+表記だったので少し心配だったがプレイ・グレードはNMクラスでめっちゃラッキーだった(^o^)丿
CHUCK BERRY back in the usa tv 1959
この曲のカヴァーは何と言ってもリンロン・ヴァージョンにトドメを指す。このノリ、このグルーヴ、最高ではないか! チャック・ベリーの黄金フレーズを見事に再現したダン・ダグモアのギター、コロコロと転がるようにスイングするドン・グロルニックのピアノ(←これホンマに凄いです!!!)、そしてパワフルな歌声を聞かせるリンロンと、まさに絵に描いたような名曲名演だ。
Linda Ronstadt - Back In The USA
リンロンは1986年にセントルイスで行われたチャック・ベリーの生誕60年コンサートの時もゲスト出演して御大と共演しており、バックに回ってギターとコーラスを担当するキース・リチャーズも含めゴージャスな顔ぶれに圧倒される。御大がダック・ウォークでリンロンの周りをまわったり、歌詞の一節 “Just to be at home back in ol' St. Louis♪” で大盛り上がりするオーディエンスの様子など、この曲は映画「ヘイル・ヘイル・ロックンロール」の中でも大好きなシーンの一つになっている。
CHUCK BERRY, KEITH RICHARDS, ROBERT CRAY - Back in the U S A
②Let It Rock [Chess 1747]
この曲を初めて聴いた時は一瞬「ジョニー・B・グッド」のセルフ・コピーか何かだと思った(笑) チャック・ベリーの曲には似通ったものが多く、例えば「メイベリーン」と「サーティー・デイズ」のバック・トラックなんてほとんど同じリズムだし、「スクール・デイズ」と「ノー・パティキュラー・プレイス・トゥ・ゴー」の2曲はまるで一卵性双生児と言ってもいいぐらいそっくりだ。前回取り上げた「リトル・クイニー」と「ラン・ルドルフ・ラン」に至っては歌詞が違うだけで全く同じ曲である。極論すれば、チャック・ベリーはいくつかのお気に入りフレーズを組み合わせて曲を紡ぎ出していくのだが、私は彼のフレーズが全部好きだから、出るたびに “あっ、また出た(^o^)丿” といって喜ぶのである。だからこの「レット・イット・ロック」も「ジョニー・B・グッド」のオルタネイト・ヴァージョンとして何も考えずに楽しんでいる。尚、このシングルはアメリカのレコ屋からの一括購入でVG++盤を$9.00(約1,100円)でゲットした。
Chuck Berry - Let It Rock (1960)
数ある「レット・イット・ロック」のカヴァーの中ではストーンズのヴァージョンが断トツに素晴らしい。これは71年のスティッキー・フィンガーズ・ツアー時のリーズ大学でのライヴ音源で、シングル「ブラウン・シュガー」のB面に収められていたものだが、バック・トゥ・ザ・ルーツを標榜していたこの時期のストーンズらしいストレートアヘッドな演奏がチョーサイコー(≧▽≦) 特に水を得た魚のようにチャック・ベリー・フレーズを弾きまくるキースのノリがハンパない。やっぱりストーンズはこうでなくっちゃ!
ROLLING STONES - Let It Rock (Mono Single Version)
ストーンズ以外ではヤードバーズのヴァージョンも好きだ。63年のライヴ音源でヴォーカルの弱さが玉にキズだが、バリバリ弾きまくるクラプトンのギターが聴けるだけでもこのレコードの価値がある。クラプトンは誰が何と言おうとラウドなギターをガンガン弾きまくっている時がベストなのだ。
Yardbirds- Let It Rock
①Sweet Little Rock And Roller [Chess 1709]
「スウィート・リトル...」とくれば “シックスティーン” で決まり、みたいな風潮があるが、この「スウィート・リトル・ロックンローラー」という曲ももっと広く認知されて然るべき隠れ名曲だ。私が初めて聴いたのはベスト盤CDだったが、チャック・ベリーが一生かけて歌い、弾き続けてきたメロディーやリフを一点に凝縮させたようなこの曲がめっちゃ気に入り、何度も何度も繰り返し聴いたものだった。例えるなら彼のヒット曲の断片が現れては消え、消えては現れるような、そんな感じで、チャック・ベリー節が大好きなファンにとってはたまらない1曲なのだ。
私が買ったのはとっても珍しいチェス・レコードの白レーベル盤(プロモ盤)で、ピカピカ盤だけあって$14.00(約1,740円)もしたが、再発盤やCDではとても味わえないゴリゴリした野太いサウンドが楽しめて、値段相応の価値はあったと思っている。尚、レーベル面の曲名表示は「Sweet Little Rock And Roll」になっているが、ロックンロールが大好きな9歳の女の子のことを歌ったこの曲のタイトルは当然 “可愛い小さなロックンローラー” が正しい。
Sweet Little Rock 'N' Roller by Chuck Berry 1958
この曲のカヴァーは非常に少なく、私の知る限りではビートルズもストーンズも録音を残していない。そんな数少ないカヴァー・ヴァージョンの中で私が気に入っているのがロッド・スチュワートのアルバム「スマイラー」(74年)に入っていたヴァージョンで、まだ豹柄パンツにハマる前の(笑)ロッドのストレートアヘッドなロックンロールが楽しめる。それと、レコードにはなっていないが、イギリスの「スーパーソニック」というTV番組でマーク・ボランがデイヴ・エドモンズやレイ・デイヴィスらとの共演で歌ったカヴァーが個人的には一番好きだ。それにしてもT.レックスの音楽ってホンマにチャック・ベリー直系やね(^.^)
Sweet Little Rock'n' Roller - Rod Stewart
Sweet Little Rock and Roller
②Little Queenie [Chess 1722]
この「リトル・クイニー」という曲は本来は「オールモスト・グローン」のB面であり、しかもわずか4ヶ月前にリリースされたばかりのクリスマス・シングル「ラン・ルドルフ・ラン」のメロディーはそのままに歌詞だけをオール・シーズン用(?)に変えただけという曰くつきのナンバーなのだが、その知名度の低さに反してビートルズやストーンズを始めとして様々なアーティスト達にカヴァーされているのが非常に興味深い。ひょっとするとロッカー達を駆り立てる何かが原曲のグルーヴに潜んでいるのかもしれない。
カヴァー以外でも、例えばクイーンは名盤「シアー・ハート・アタック」の冒頭を飾る痛快なロック曲「ナウ・アイム・ヒア」の後半部で “Go, go, go, little queenie♪” と歌って敬意を表しているし、T.レックスもあの大名曲「ゲット・イット・オン」のエンディング部分に“Meanwhile I'm still thinking...♪” とこの曲の歌詞をそのまんま引用している。というか、「ゲット・イット・オン」の曲想そのものがこの「リトル・クイニー」にインスパイアされていると言っても言い過ぎではないだろう。
このレコードは例のアメリカのレコ屋からの一括購入でNM盤を$6.75(約840円)でゲット。チェス・レーベルのオリジナル・シングルのキレイな盤ってオークションでも中々出てこないので、こういう古~いレコ屋のセット・リストから探した方が良いのかもしれない。それにしてもこの時代のアナログ・シングル盤ってホンマに凄い音しとるなぁ... (≧▽≦)
それと、下に貼り付けたのは映画「ゴー・ジョニー・ゴー」の中でこの曲を歌うチャック・ベリーの映像なのだが、バック・バンドとして出演しているメンツにご注目! 何とピアノがデイヴ・ブルーベックでベースがチャーリー・ヘイデンと、バリバリのジャズメンたちなのだ。もちろん音の方は彼のレギュラー・バンドなのだが、テーブル席で女の子たちと楽しむリッチー・ヴァレンスの姿も含め、見どころ満載の映像だ。
Chuck Berry - LITTLE QUEENIE - 1959 HQ!
T. Rex - Get It On [Lyrics] [HD]
私にとってこの「リトル・クイニー」はビートルズの「スタークラブ・ライヴ」で初めて聞いて以来の愛聴曲で、A面の「オールモスト・グローン」や原曲「ラン・ルドルフ・ラン」なんかよりも遥かに馴染み深いナンバーだ。「スタークラブ・ライヴ」の音の悪さなど気にならないぐらい “ギター・バンド” としてのビートルズの魅力が爆発している。
一方ストーンズによるカヴァーは69年USツアーのライヴ盤「ゲット・ヤーヤ・ヤズ・アウト」に入っているが、若さ溢れるビートルズの演奏に対しこちらはテンポを落とし過ぎな感じで私としてはイマイチ(ー_ー) 来たるべき「イッツ・オンリー・ロックンロール」の予行演習(?)と考えればコレはコレでいいのかもしれないが、オリジナル・ヴァージョンの絶妙なテンポ設定が生み出すえもいわれぬグルーヴを考えればコレはやっぱり遅すぎるわ。
Little Queenie - Star Club tapes remaster
The Rolling Stones ? Little Queenie (Mule Version)?
①Johnny B. Goode [Chess 1691 → Quality K1727]
チャック・ベリーに名曲名演数あれど、彼の代表曲と言えばこの「ジョニー・B・グッド」を置いて他には考えられない。チャック・ベリーの、いや全てのロックンロール曲の中で世間的に最も広く知られている1曲がこの「ジョニー・B・グッド」と言っても過言ではないだろう。彼の登録商標と言える例のイントロから一気呵成に駆け抜ける必殺のキラー・チューンであり、ロックンロール・ファンにとってはまさに至福の2分30秒だ。
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の中で1955年にタイムスリップしたマイケル・J・フォックスがダンスパーティーのステージでこの曲を歌うシーンがあるが、バンドのメンバーがその場からチャック・ベリーに電話をかけ、当時新しいサウンドを探していたという彼に受話器越しにその演奏を聞かせるというタイム・パラドックス・ネタとして扱われており、その後調子に乗ってピート・タウンゼンドやエディ・ヴァン・ヘイレン、ジミ・ヘンドリックスといった未来のギタリスト達のハイテク奏法を次々と繰り出してしまい、呆れかえる聴衆に向かって “I guess you guys aren't ready for that yet. But your kids are gonna love it.(みんなにはまだちょっと早すぎたかな。でも君達の子供には流行ると思うよ。)” と呟くというオチも含め、ロック・ファンにとっては面白くてたまらないシーンなのだが、一般ピープル向けの超メジャーな映画の中でこのようにポピュラーなネタとして取り上げられるあたりにもアメリカにおけるチャック・ベリーの存在の大きさが窺える。
そう言えばNASAが1977年に打ち上げた宇宙探査機ヴォイジャーに地球の様々な音楽文化を紹介するレコード盤を搭載していたのだが、アメリカ音楽の代表として選ばれたのが他でもないこの「ジョニー・B・グッド」だった。その後、アメリカの人気コメディー番組「サタディ・ナイト・ライヴ」で “ヴォイジャーのレコードを聴いた異星人からのメッセージが届きました。そこには「チャック・ベリーをもっと送れ」と書いてありました。” というジョークのネタとして扱われたことを見てもチャック・ベリーの音楽が広~く愛されているということがよく分かる。宇宙空間の写真に “Send More Chuck Berry” というタイトルをあしらった偽TIME誌の表紙からはアメリカならではのユーモアのセンスが伝わってきてニヤリとさせられた(^.^)
Johnny B. Goode - Back to the Future (9/10) Movie CLIP (1985) HD
チェス・レコードの初期プレスのシングル盤で状態の良いブツを手に入れるのは至難のワザだが、中でも入手困難だったのがこの「ジョニー・B・グッド」だった。eBayに出ている 1stプレスのブルー/シルバー・レーベル盤で$20以下で買えるものはみんな盤質 G~G+(ダメージ有り)のジャリ盤ばかりという悲惨な状況だったので途方に暮れていたところ、チェス・レーベルのカナダ盤をリリースしている “クオリティ・レコード” のキレイな盤が $9.95(約1,240円)で出ているのを発見、“Plays great” という説明を信じて買ってみたところ、これがもうめちゃくちゃ良い音で大喜び\(^o^)/ 他のUSチェス盤と比べても遜色のない野太い音が楽しめてめっちゃ得した気分だ。カナダ盤って盲点やったけど、送料も安いしアナログ・マニアとしては結構狙い目かもしれない。
Chuck Berry - Johnny B. Goode
エルヴィスを始めとして「ジョニー・B・グッド」のカヴァーは星の数ほど存在するが、私の知る限りではビートルズの「BBCライヴ」に入っているこのヴァージョンこそが決定版だ。オリジナルよりも気持ち半分ぐらいテンポを落とした結果、演奏の重心が下がり、ジョンの “ザ・ワン・アンド・オンリー” なヴォーカルの魅力を最大限に活かしたヴァージョンになっている。極論すれば、初期のビートルズはジョンのヴォーカルさえあれば、後は演奏に集中するだけで良かったのではないかとすら思えてくる。それほどジョンの “声” は素晴らしい。0分52秒の “ア~♪” や1分32秒の “ウ~♪”、2分10秒の“ウェ~♪” といった感嘆詞の一つ一つまでもが音楽的必然として耳に響くところが凄いと思う。
The Beatles "Johnny B. Goode"
②Carol [Chess 1700]
この「キャロル」という曲を聴くと私はいつも映画「ヘイル・ヘイル・ロックンロール」の1シーンを思い出す。リハーサルでイントロのリフのスラーの入りについてキース・リチャーズがチャック・ベリーから何度もダメ出しを食らう場面があるのだが、まるで小姑のようキースをイビリ倒す御大と、憮然とした表情で何度も弾き直すキース、そしてそんな二人のやり取りに凍りつく現場の空気を見事に捉えた名シーンだ。そう言えばその映画の中でキースが “ミック・ジャガーより面倒な男だけど、どうしても彼を嫌いにはなれないな...” と語っていたのが印象的だった。
CHUCK BERRY WITH KEITH RICHARDS
ビートルズが演奏する「キャロル」は「BBCライヴ」で聴くことが出来る。チャック・ベリーのカヴァーを歌うジョン・レノンに駄演ナシだが、ここでも貫禄すら感じさせるノリノリのヴォーカル(“アーゥ!”連発...笑)を聞かせてくれる。そしてそんなジョンを支えるバックの演奏も秀逸で、特にリンゴのソリッドなドラミングには耳が吸い付く。ジョージは手堅く纏めてる感じで、チャック・ベリーが拘っていたリフのスラーに関してはサラッと流しているところが面白い。
一方ストーンズ版「キャロル」は64年リリースのデビュー・アルバムと69年USツアーの模様を収めたライヴ盤「ゲット・ヤーヤーズ・アウト」で聴くことが出来るが、私的には後者のかったるい演奏(←ハイド・パーク公演といいコレといい、テンポ遅すぎると思いません???)よりも断然前者の生硬でアグレッシヴな演奏の方が好きだ。
The Beatles "Carol"
①Rock And Roll Music [Chess 1671]
ビートルズの凄さの一端はカヴァーでオリジナルを軽く超えてしまうところにある。オリジナル・アーティストが魂を宿した曲を換骨奪胎して曲の髄を引き出す能力はまさに神ワザで、その結果、カヴァー曲でもまるでビートルズのオリジナル曲であるかのような錯覚を抱かせるのだ。「ツイスト・アンド・シャウト」しかり、「プリーズ・ミスター・ポストマン」しかり、「ロング・トール・サリー」しかりだが、この「ロックンロール・ミュージック」という曲も私にとってはビートルズのインパクトが強すぎて、後になってオリジナルのチャック・ベリーを聴いた時はそのあまりに軽い歌い方に拍子抜けしてしまった。
しかし歌詞の意味を考えながら何度も聴くうちに、こういうノーテンキなヴァージョンもアリやなぁと思うようになった。これはモダンジャズやタンゴ、マンボといった古い音楽を俎上に上げながら新しい音楽であるロックンロールを称えるいわば “ロックンロール賛歌” なのであり、シンプルでタイトなリズム・セクションをバックにチャック・ベリーの軽妙洒脱なヴォーカルを楽しむというのが本来の聴き方なのだろう。
アナログ盤の話をすると、前回取り上げた2枚のシングル盤のレーベル・デザインはチェスの駒を描いた “チェス・ピース・レーベル” だったが、1957年リリースのこのレコードからはごく普通の “ブルー/シルバー・レーベル” になってしまったのが少し残念。この2ヶ月ほどで10枚近く買ったチャック・ベリーのシングル盤の中で最も簡単に手に入れることが出来たのがこのレコードで、アメリカのレコ屋からのシングル盤一括購入でゲット。NMで$7.00(約850円)なら御の字だろう。
Chuck Berry - Rock And Roll Music
ということでオリジナルのチャック・ベリーも悪くはないのだが、ジョン・レノンのスピード感溢れるハイ・テンションなヴォーカルを聴いてしまうとどうしてもユル~く聞こえてしまう。例えるならビートルズのヴァージョンが鈴鹿のS字を軽快に駆け抜けていくF1カーのイメージなのに対し、チャック・ベリーのオリジナル・ヴァージョンは公道をのんびりとクルージングするクラシックカーという感じ。それもこれもジョン・レノンの緊張感漲るヴォーカルの成せるワザなのだが、車にも音楽にもスリルとスピードを求める私にとって、この「ロックンロール・ミュージック」はたとえ天地が逆になろうとも “ビートルズの曲” なのだ。
ビートルズのヴァージョンはヴォーカルだけでなく演奏面も圧倒的に素晴らしい。ジョージ・マーティンがガンガン弾きまくるピアノが疾走感を更にアップさせ、トップ・シンバルを乱打するリンゴの爆裂ドラミングが跳ねるようなビートを生み出しており、イントロの “ジャジャジャジャ♪” からエンディングの “ジャジャジャン♪” まで一気呵成に駆け抜けるこの快感... まさにこれ以上は考えられない怒涛のロックンロールが炸裂する。私は13才の時にこの曲を聴いてビートルズに生涯の音楽を感じたのだが、その時に買った日本盤シングルは今でも私の宝物だ。とにかくこんな凄い演奏をたったのワン・テイクで完成させたビートルズ恐るべしである。「ヘイ・ジュード」や「レット・イット・ビー」にその座を奪われるまで、このレコードが日本におけるビートルズのシングル盤売り上げ1位だったというのも大いに頷けるスーパー・ウルトラ・キラー・チューンだ。これ以上の名演があったら教えを乞いたい。
The Beatles - Rock And Roll Music - Lyrics
②Sweet Little Sixteen [Chess 1683]
この曲を初めて聴いたのはビートルズのスター・クラブでのライヴ盤だった。若き日のビートルズの爆発的なエネルギーが充満しているレコードで、オフィシャル・リリースされていない曲がいっぱい聴けることもあって、音の悪さも気にせずに何度も何度も聴き込んだものだった。そんな超の付く愛聴盤「スター・クラブ・ライヴ」の中でも1・2を争うお気に入り曲がこの「スウィート・リトル・シックスティーン」だった。
大好きなチャック・ベリーのカヴァーということで俄然張り切る(?)ジョン・レノンのヤクザなヴォーカルの何とカッコ良いことよ... ジョージのドライヴ感満点のギターもたまらんたまらん(≧▽≦) BBCライヴの方が音も良いし演奏もカチッとまとまっているように思えるが、私的にはビートルズの野放図でワイルドな魅力が全開の、このスター・クラブ・ライヴが最高なのだ。
Sweet Little Sixteen/ The Beatles Live At The Star Club
“ロックンロール” という言葉を聞いて真っ先に頭に浮かぶアーティストは?と聞かれたら、私なら迷うことなくチャック・ベリーの名前を挙げる。たとえビル・ヘイリーが “ロックンロールの元祖” であっても、エルヴィス・プレスリーが “ロックンロール界のスター” であっても、それでもやはり私にとってはチャック・ベリーこそが “ロックンロール” を体現するアーティストなんである。
ビートルズがカヴァーした曲のオリジナル・アーティストによるシングルをUS原盤で集めるにあたって、私がガール・グループに続くターゲットとして選んだのがそのチャック・ベリーだった。若き日のビートルズはもちろんのこと、ローリング・ストーンズやヤードバーズといった60'sブリティッシュ・ロックの超大物グループたちは皆チャック・ベリーを聴いてロックンロールにハマり、メジャーになってからも嬉々としてチャック・ベリーの作品をカヴァーしている。こんなアーティストはチャック・ベリーを置いて他にはいない。
特に彼のヒット曲で多用されている例のイントロのフレーズの吸引力には抗しがたいものがあり、極論すればあのギター・リックを聴いて何も感じなければロックンロールは諦めた方がいいのではないかとすら思ってしまう。あれの元ネタは1940年代に活躍したジャンプ・ブルースの大物ルイ・ジョーダンの「エイント・ザット・ジャスト・ライク・ア・ウーマン」だと思うが、それをモディファイして “ロックンロールの古典的フレーズ” にまで昇華させたところにチャック・ベリーの偉大さがあると思う。
Louis Jordan Ain't That Just Like A Woman
①Roll Over Beethoven [Chess 1626]
この有名なギター・リックで始まる彼のヒット曲は「ジョニー・B・グッド」を始め、「キャロル」「バック・イン・ザ・USA」「スウィート・リトル・ロックンローラー」「レット・イット・ロック」などがあるが、ビートルズ・ファンの私にとって “あのイントロ” の代表曲は「ロール・オーヴァー・ベートーベン」以外には考えられない。チャック・ベリーのオリジナル・ヴァージョンを聴いたのはかなり後になってからだが、ロックンロールの原点としての輝きを感じさせるカッコイイ歌と演奏だった。
この曲のもう一つの魅力はその歌詞にある。ベートーベンをブッ飛ばしてチャイコフスキーに知らせてやれというフレーズは痛快そのものだし、“ブルー・スウェード・シューズ” や “リズム・アンド・ブルース” といったロックンロール・ボキャブラリーがポンポン飛び出してきて楽しいことこの上ない。スピード感溢れる曲想とのマッチングも最高で、まさにロックンロール・クラシックスの鑑といえる1曲だ。
オリジナルのシングル盤は言わずと知れたチェス・レコードなのだが、星の数ほど存在するオールディーズ・レコード・レーベルの中でも「チェス・レコード」と「サン・レコード」の2つは別格という感じで、私なんかもう手にしただけでワクワクしてしまう。そんなチャック・ベリーのチェス盤の中で状態の良いブツを見つけるのに一番苦労したのがこのレコードで、eBayに出てくるのは再発盤かジャリ盤ばかりだったこともあり、結局ヤフオクに出品されていたEX- 盤を2,300円で購入。ちょっと高いかなとは思ったが、海外から買う時の送料を考えれば許容範囲内である。実際に聴いてみて、50'sモノラル・シングル盤ならではの音の太さに大感激!!! これが伝説のチェス・レコードの音か... (≧▽≦) やっぱりアナログの音はエエなぁ。
Chuck Berry Roll Over Beethoven
ビートルズのヴァージョンに関してはもう何の説明も不要なくらいのスーパーウルトラ大名演で、ジョージが弾く気合い十分のイントロからノリ一発で一気呵成に駆け抜けるようなハイ・テンションの演奏がチョースバラシイ(^o^)丿 初期ビートルズ御用達のハンド・クラッピングもノリの良さに拍車をかけており、この曲の名演度アップに大きく貢献している。
The Beatles - Roll Over Beethoven (2009 Mono Remaster)
②Too Much Monkey Business [Chess 1635]
チェスの初期レーベル盤のチャック・ベリーでもう1枚の私的溺愛盤が「トゥーマッチ・モンキー・ビジネス」だ。この曲との出会いはビートルズでもチャック・ベリーでもなく、FMラジオの「3大ギタリスト特集」の時にかかったヤードバーズによるカヴァーだった。曲そのもののカッコ良さも怒涛の勢いで弾きまくるクラプトンのギターの凄まじさも大いに気に入ったが、当時高校生だった私にとって何よりもインパクトがあったのは「モンキー・ビジネス」という言葉の響きの可笑しさだった。猿仕事??? 何じゃいそれは??? という感じでエアチェックしたテープを何度も何度も聴き返すうちにすっかりハマってしまい、私の中では “ヤードバーズと言えばモンキー・ビジネス” という歪んだ刷り込み(笑)がなされてしまった。
Too Much Monkey Business - The Yardbirds
チャック・ベリーのオリジナル・ヴァージョンを聴いたのはそれからかなり経ってからのことだが、ベスト盤CDを聴いて “おぉ、これが猿仕事のオリジナルか...(^o^)丿” と悦に入って聴きまくったのを覚えている。因みに“モンキー・ビジネス”とは “インチキ、不正行為” という意味で、仕事やオンナや学校やバイトの愚痴を羅列しておいて “俺のまわりはインチキだらけさ!” とボヤきまくる歌詞が実にユニークだ。
このレコードも上記の①同様にキレイな盤を探すのは至難のワザで、私は仕方なしにeBayでVG表記の盤を無競争の$6,00(約740円)でゲットしたのだが、届いた盤はサーフェス・ノイズを圧倒するように飛び出してくる剛力サウンドが圧巻で、めっちゃ得した気分である。VG盤に手を出すのは一か八かの賭けみたいなモンだが、この盤に関してはホンマにラッキーしましたわ(^.^)
Chuck Berry - Too Much Monkey Business
ビートルズによるカヴァーは「BBCライヴ」に入っており、ヴォーカルは “チャック・ベリーは私のヒーロー” と公言しているジョン・レノンだ。大好きなチャック・ベリーのカヴァーということで水を得た魚のように活き活きとした歌声を聞かせるジョンといい、ドライヴ感抜群のバックの演奏といい、ソリッドなロックンロール・バンドとしてのビートルズの魅力が全開だ。
The Beatles "Too Much Monkey Business"