shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「My Sweet Lord」の Pyeプレス盤 ~4種聴き比べ~

2019-12-08 | George・Ringo
 B-SELSで「My Sweet Lord」のスタンパー1桁盤を買ったことは前回書いたが、あの話には続きがある。3桁盤との比較試聴を終え、“やっぱり違うもんですねぇ... スタンパーがヘタってくると倍音成分が減ってしまうのか、音壁も平凡で1桁盤のような高揚感が出ませんね...” と悦に入っていると、“もしよかったらこんなのもあるんで聴いてみます?” とSさんがエサ箱から2枚のシングル盤を持ってこられた。
 どちらも「My Sweet Lord」のソリッド・センター盤なのだがよくよく見ると中央部の DG円の大きさが違う。“PyeプレスとCBSプレスですよ。” とSさん。“「My Sweet Lord」にも他社委託プレスがあったんですか... めちゃくちゃ売れたもんなぁ...” と感心していると“「Hey Jude」の時に Pyeプレスのお話しをしましたけど、PyeとCBSの委託プレスって本やサイトによって書いてあることが違うんで参りました。” と苦笑いされ、“こっちの中心円の小さい方が Pyeでマザーは12/12、大きい方がCBSでマザーは6/8、どちらもスタンパーコードはありません。” とおっしゃりながらレコードを順番にかけて下さった。
 まずCBSプレス盤の方だが、イントロのギターの鳴りからしてさっき聴いたEMIプレス1桁盤と全然違う。ハッキリ言ってこの音は私の好みではない。とにかくウォール・オブ・サウンドの構築が中途半端で、逆巻くようなあの “音壁ワンダーランド” が眼前に現れず、思わず個々の楽器の音に耳が行ってしまったほど...(笑) ホーンやストリングスが爆発せずに何のウォール・オブ・サウンドかと言いたい。
 しかし次にかけていただいたPyeプレス盤は違った。一言で言うと “面白い音” で、Sさんも “何でこんなに音が違うんですかね?” と不思議そうにおっしゃる。まず気が付くのはヴォーカルで、ジョージにしてはやけに声が力強いしうっすらとエコーがかかってるのかと思うくらい声質自体も微妙に違って聞こえる。バックの演奏もヴォーカル同様にパワーアップ(?)されており、“まるでジャイルズ・マーティンがリマスターしたような音ですね。これホンマにおもろいですわ(^o^)丿” と大笑いの私。自分の中で音質格付けをするとしたら、EMI1桁盤 > Pye盤 > EMI3桁盤 > CBS盤、という感じか。
 “それにしても同じマスターから作ってるのに4枚とも音に個性があって面白いですね。” と言うと、“それなんですが、もう一つ面白い話があるんですよ。「My Sweet Lord」初回盤のマト末尾は「1U」って言われてますが、スタンパーが1桁の盤は「1U」じゃなくて「1」なんです。 で、3桁盤のマト末尾の「U」を見ると字体や角度が他の文字と微妙に違ってるのでどうやら後から付け足したようなんですよ。だから多分最初にプレスした後に「U」を付け忘れたことに気付いて慌てて後から「U」を付け足したんじゃないかなぁと思うんですよね。” とSさん。
 “へぇ~、ホンマかいな???” と思って1桁盤のマトを見ると確かに「1U」ではなく「1」になっている。いやはや、これにはビックリだ。しかし更に驚いたことには2枚の委託プレス盤では共にマト末尾の「U」が EMIプレス(←要するに3桁盤ね)とは違って大きく右に傾いて刻印されていたのだ。まぁこのあたりの謎に関してはあまり深入りせずに研究家のみなさんに任せるのが賢明だろう。私にとって大事なのは「音」であって「マト刻印」ではない。
 ということで本日の結論;「My Sweet Lord」を最良の音で楽しむには...
①まずセンター・レーベル左の表記が“Harrisongs” のみのUK盤シングルを探す。“Essex Int. MCPS Bririco NCB” という長~い文言が書かれているのはレイター・プレス。
②更にその中からマトリクス末尾の枝番が 1U ではなく 1 の盤を見つける。
③最後に盤質をチェック... 最低でもVG++か、出来れば EX以上のものが望ましい。
 これで最初期プレス盤の鮮烈なウォール・オブ・サウンドが手に入ることはほぼ間違いなし... 「My Sweet Lord」コレクター同志諸兄の健闘を祈ります。尚、Pyeプレス盤の音が忘れられなかった私は例の1桁盤をいただいた2日後にB-SELSを再訪して首尾よくゲットしました...

「My Sweet Lord」UKシングルの 1A/1G 盤

2019-12-04 | George・Ringo
 この前B-SELSへ行った時のこと、エサ箱から1枚のシングル盤を引き抜いたSさんが “いっぺんこれ聴いてみてください。” とおっしゃった。見るとジョージの「My Sweet Lord」UK盤シングルだ。最近Sさんとはスタンパーの話ばかりしているので “ひょっとして1桁盤ですか?” と尋ねると“はい、1A/1Gです。惜しいことに最初の方にちょっとキズがあってパチパチいうんですけど... ”とのこと。“ひょえ~、ウチのなんて3桁ですよ。凄いですやん!”といきなりテンションが上がる私。
 実を言うと、先週のジョージの命日に彼のアルバムやらシングルやらを聴いていた時に手持ちの「My Sweet Lord」のスタンパー・コードをチェックしたら悲しいことに1GGM/4LHという3桁盤で(←最近マトリクスよりも3時方向にばかり目が行ってしまう...)、“1桁の盤でフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドをフル・ヴォリュームで聴いてみたいなぁ... ” と考えていたこともあって、まさに渡りに船という感じで大喜びしたというワケだ。それにしてもまさかその3日後に現物を聴けるとは何たる幸運!!!
 まずはA面の「My Sweet Lord」だ。Sさんのおっしゃる通りイントロで微かにチリチリいうが、音圧がすごく高いのでこの程度のキズなど45回転パワーで笑い飛ばしてしまう。“これでVG+ですか... 私やったら文句なしにEXですわ。” と言うと “そんな無茶な... EXなんてよっぽどキレイな盤でないとつけられませんよ。”とあくまでも自分に厳しいSさん。15秒くらいのチリチリ・パートが終わるとそれ以降はほとんどノイズレスで、最初期プレス盤の実力を遺憾なく発揮し、私がそれまで聴いたことがないような超ド級の音壁が眼前に屹立した。
 “イントロからもう音の厚みが違いますやん! 私の知る限り、スペクター・プロデュース作品の中でもトップ3に入るんちゃいますか。” と言うと “ええ、中盤からすごく盛り上がって後半に向けてどんどん良くなっていくんですよ。フェイドアウト直前までパワーが落ちませんし...” とSさんも嬉しそう。“ジョージのヴォーカルってちょっと線が細いところがあるんで、スペクターのウォール・オブ・サウンドとの相性が抜群なんでしょうね。音壁の無い「All Things Must Pass」なんてクリープを入れないコーヒーみたいなモンですよ。” とか言いながらお店のスピーカーから飛び出してくるゴージャスなサウンドを満喫した。
 B面の「What Is Life」(←こんな大名曲がB面とは... 何ちゅー豪華なカップリングじゃ!!)は無音部からイントロにかけては少しパチパチいうVGコンディションだが、ドラムが入ってくればほとんど気にならないVG++ かEX−レベル。しかもA面同様に中盤からは文句なしの“1Gサウンド” が炸裂し、思わず快哉を叫ぶ。“最高ですやん! これって最近入ったんですか?” と尋ねると “いえいえ、ずっと前からありましたよ。” と言われて赤っ恥をかいてしまった... 最近ホンマにボケてきたわ(>_<)
 それにしてもこのマッシヴな音壁の気持ち良さを何と表現しよう? シングル盤ならではの高音圧で襲いかかってくるホーン・セクションと上昇下降を繰り返すストリングスの合わせ技でパワーアップしたウォール・オブ・サウンドの気持ち良さは筆舌に尽くし難い。“いやぁ~、これはエエもん聴かせていただきました(^.^)” とお礼を言ってその日はお店を出たのだが、家に帰ってからもさっき聴かせてもらった音が頭を離れず、結局その翌々日(←翌日は定休日だったので誰かに買われる心配なしwww)に昼から有休を取ってお店へ直行し、この音壁爆裂盤を購入させていただいた。
 家に持ち帰って早速自分のシステムでかけてみたところ、お店で聴いた通りの強大なウォール・オブ・サウンドが目の前に再現され大喜び(^o^)丿 さっき風呂から上がってから大音量でA面とB面を何度も何度も繰り返し聴いているのだが、もうすぐ真夜中だというのにアンプのヴォリュームをどんどん上げていくと、いつしかリスニング・ルームが音壁桃源郷と化し、気分はすっかり “ハァ~レ ルゥ~ヤ♪”である。この得も言われぬ高揚感... priceless(≧▽≦)

「Ringo」US盤 vs UK盤

2019-04-14 | George・Ringo
 去年の12月に B-SELSでポールのソロ・アルバムの US盤を大人買いした話はこのブログにも書いた通りだが、思っていた以上に音が良かったこともあって、それ以降はジョン、ジョージ、リンゴのも安くて盤質の良い US盤を見つけたら逃さず買うようにしてきた。US盤は海外からネットで直に買うと送料だけで3,000円近く取られるので日本国内のお店で探すに限るのだが、2年ほど前に大阪や京都のレコ屋を廻ってみたところほぼ壊滅状態だったので、今となってはわざわざ電車に乗って県外にまで足を延ばす気には全くなれない。つまり私が行くレコ屋といえば地元の B-SELS一択なのだ。
 そういうわけで私は B-SELSに行くたびにソロのコーナーの US盤をチェックしているのだが、先日「リンゴ」の US盤で盤質 EX+という掘り出し物を見つけた。リンゴの US盤は「ブラスト・フロム・ユア・パスト」しか持っていないので、これはコレクション充実のチャンスである。私はいつものように試聴させて下さいとお願いし、Sさんと一緒に聴き始めた。
 US盤はプレス工場によって微妙に音質が違うが、この盤はジャクソンビル・プレスで(←デッドワックスにあるアルファベットの Oみたいな刻印が目印)、以前ここで「ウイングス・オーバー・アメリカ」の US盤2種を聴き比べた時と同じく音圧はやや低め。音がフワーッと広がる感じでとても華やかだが、押さえるところはきっちり押さえてある感じがする。比較試聴した UK盤の「リンゴ」はカチッとしたソリッドな音で US盤よりもロックな音がするのだが、そもそもリンゴの歌というのは基本的にポップスなので US盤でも十分に楽しめるし、特に“パーティー気分でお気楽に楽しみましょう” というこのアルバムのコンセプトには合っているように思う。
 曲別に言うと、例えば A④「サンシャイン・ライフ・フォー・ミー」のようなカントリー色の濃い曲は US盤の方が雰囲気を上手く表現しており、さすが本場の音作りは手馴れているなぁという印象だ。一方、B③「シックス・オクロック」はどう考えても “イギリスの朝” という雰囲気の曲であり、UK盤の音作りがピッタリだ。又、B④「デビル・ウーマン」のドラム・ソロなんかは UKと USの特徴が如実に出ており、“押し出し感の UK” vs “派手さの US” という構図が実に面白い。私自身に関して言えば基本的に UKの音が好きなこともあって UK盤に軍配を上げたいが、US盤も捨てがたい魅力を持っている。
 それにしてもこのアルバムってさすがは元ビートルたちがこぞって参加しているだけあって絵に描いたような名曲名演のオンパレードで、ホンマによく作り込まれてるなぁ... と感心してしまう。特にジョージとの共作 A③「フォトグラフ」とポールが参加したジョニー・バーネットのカヴァー A⑤「ユア・シックスティーン」は絶品で、全米№1も納得のキラー・チューンであると再認識させられた。
 そういえばこのレコードを買った時に Sさんが “リンゴのレコードを一緒に聴いてあれやこれや言い合える人って中々いないですよ。まぁリンゴで UK盤と US盤の聴き比べやってる所なんか日本中探してもそんなにないでしょうけど...(笑)” とおっしゃっていたが、全く同感だ。好みの似通った音楽友達と一緒にレコードを聴いて語らい合うほど楽しいことは他にないのである。

Here Comes The Sun / Paul Simon & George Harrison

2018-11-30 | George・Ringo
 数日前からポールの2018日本公演ブートがドドーン!と届き始め、ようやく “ポール・ロス型”燃え尽き症候群から再起しつつあるのだが、今日はジョージの命日(←日本時間では30日の早朝だった...)ということで、ポールはポールでもマッカートニーではなくサイモンの方とジョージとの共演を取り上げようと思う。
 これは1976年にポール・サイモンがホストを務めていた「サタデーナイト・ライヴ」というテレビ番組にジョージがゲスト出演した時に2人でデュエットした時の映像で、ギターはもちろんのこと、ハモるパートもすごく息が合っててめっちゃエエ感じ(^.^) しかも演奏曲が「Here Comes The Sun」と「Homeward Bound」という “アコギの神曲” みたいな2曲なのだからこれはもうたまりまへん(≧▽≦)  この S&H(?)コンビのアコースティック・セットでもっともっと色んな曲を聴いてみたいと思わせてくれる心温まる演奏だ。
Paul Simon & Goerge Harrison- Here Comes The Sun


 尚、テレビで放送されたのは上記の2曲だけだが、撮影の休憩時間に2人が「Bye Bye Love」と「Rock Island Line」を演奏していたのをその場にいたオーディエンスが録音したという貴重な音源が コレ↓。
Bye bye love - GEORGE HARRISON AND PAUL SIMON

rock island line (george harrison_paul simon) unreleased rehearsal s n l 1976


 私が持っているのは「Saturday Night Live 1975-1978」という 2枚組DVD-Rで、ライトハウスのギフトで貰ったものだが、21世紀に入ってからの再放送から収録しているため70年代の放送のわりに画質が良くて気に入っている1枚だ。ジョージとの共演以外ではサイモンが七面鳥の恰好(笑)で歌う「Still Crazy After All These Years」も必見だ。

【おまけ】ポール・サイモンが2014年に米TBSテレビの「CONAN」に出演してジョージの思い出を語っているシーンがYouTubeにアップされているが、ケッサクなのはジョージの大邸宅フライアー・パークに関する話のくだりで(3:15~)、庭に置いてある巨大な石を見たリンゴが “あれ何なん?” と尋ねたのに対してジョージが “ポールが新作「Standing Stone」の宣伝に送り付けてきたんだ。” と答え、リンゴが “俺んとこには送ってこなかったぞ。” と返したというエピソードに大笑い(^.^)  ジョージのユーモアのセンスってホンマに最高ですな...
Paul Simon's Memories Of George Harrison - CONAN on TBS

ジョージ・ハリスンのスライド・ギター隠れ名演特集

2012-12-04 | George・Ringo
 今日も前回に引き続き、ジョージ・ハリスンのゲスト参加作品の中から個人的に愛聴している隠れ名演を選りすぐってご紹介します。

①Theme For Something Really Important / Duane Eddy
 グゥイ~ンと深くリヴァーヴをかけた独特の低音が魅力の “トゥワンギー・ギター” でサーフ・インストの基礎を築いたデュアン・エディは大きなヒット曲に恵まれなかったせいもあって日本での知名度はイマイチだが、欧米では多くのミュージシャン達から絶大なるリスペクトを受けているギター・ヒーローだ。その影響力は絶大で、ビーチ・ボーイズの「サーフィンUSA」のイントロは彼の「ムーヴィン・グルーヴィン」からアダプトしたものだし、スプリングスティーンの「明日なき暴走」が “ボブ・ディランのような詩、フィル・スペクターのようなサウンド、ロイ・オービソンのような歌唱、そしてデュアン・エディのようなギターを目指した” というのは有名な話だ。
 ジョージも彼の信奉者の一人で、1987年にリリースされた彼の復帰作「ヒズ・トゥワンギー・ギター・アンド・ザ・レベルズ」に参加、「テーマ・フォー・サムシング・リアリー・インポータント」におけるツボを心得た味わい深いスライド・ギターはもう人間国宝級の名人芸と言っていいだろう。ジェフ・リンのプロデュースということもあるだろうが、このリラクセイション溢れる “トラベリング・ウィルベリー” な雰囲気がたまらんたまらん(≧▽≦)  尚、このアルバムにはポールも参加しており「ロッケストラのテーマ」のカヴァーでベースを弾いているので、ビートルズ・ファンは要チェックだ。
Duane Eddy plays "Theme For Something Really Important" 1987


②That Kind Of Woman / Gary Moore
 80年代に鬼神の如く弾きまくる “マシンガン・ピッキング” と聴く者の魂を揺さぶる “泣きのチョーキング” を武器にハードロック路線でブイブイいわしていたゲイリー・ムーアは私の大好きなギタリストの一人。彼は後にトラベリング・ウィルベリーズの「Vol.3」にゲストとして参加したり、ジョージにとって最後のステージとなった92年ロンドン・ロイヤル・アルバート・ホール公演のアンコールに飛び入りで「ホワイル・マイ・ギター」のソロを弾いたりと、ジョージとはかなり仲が良かったらしい。
 そんなゲイリーが突如自らのルーツであるブルースに回帰したアルバム「スティル・ガット・ザ・ブルース」(1990年)にジョージが提供した曲がこの「ザット・カインド・オブ・ウーマン」だ。ジョージは演奏にも参加しており、ゲイリー入魂のパワフルなプレイに歌心溢れるスライド・ギターで絶妙なアクセントを付けている。ジョージとゲイリーという名手二人の寛ぎに満ちたプレイが楽しめる、隠れ名演の最右翼に挙げたい1曲だ。
GARY MOORE - THAT KIND OF WOMAN


③Bluest Blues / Alvin Lee
 アルヴィン・リーはあのウッドストックにも出演してジミヘンばりのプレイを聴かせた知る人ぞ知るギター・ジャイアント。彼のバンド、テン・イヤーズ・アフターはジミヘンのエクスペリエンスみたいなモンだろう。ジョージは彼のアルバムに何度か参加しているが、中でも一番気に入っているのが「1994」というアルバムで、ビートルズのカヴァー「アイ・ウォント・ユー(シーズ・ソー・ヘヴィー)」とこの「ブルーエスト・ブルース」の2曲でスライド・ギターを弾いており、哀愁舞い散るソロを聴かせてくれる。ジョージの音色はブルース系のギタリストとの相性が抜群ですな。他の曲もスティーヴィー・レイ・ヴォーンを想わせるブルージーなプレイが満載で、噛めば噛むほど味が出るスルメのような好盤だ。ただ、アルバム・アート・ワークが内容の素晴らしさを台無しにするような悪趣味極まりないものなので、この曲を聴くならジャケットがめちゃくちゃカッコ良いベスト盤「ピュア・ブルース」の方が断然オススメです(^.^)
Ten Years After -Alvin Lee - The Bluest Blues


④The Last Time / Hall & Oates
 80年代に「ヴォイシズ」→「プライベート・アイズ」→「H2O」で大ブレイクする以前のホール&オーツが1978年にリリースした「アロング・ザ・レッド・レッジ」(邦題:「赤い断層」)のプロデューサーであるデヴィッド・フォスターがダーク・ホース・レーベルに所属していた関係でアルバム中の1曲「ザ・ラスト・タイム」(←ビー・マイ・ベイビーなイントロが笑えます...)にジョージが参加、変幻自在なスライド奏法で曲に彩りを添えている。一聴してわかるこの音色こそ70年代のジョージそのものだ。
Hall & Oates ; THE LAST TIME


⑤Day After Day / Badfinger
 バッドフィンガーの3rdアルバム「ストレート・アップ」からシングル・カットされて彼ら最大のヒットになった「デイ・アフター・デイ」でジョージはプロデュースだけでなく演奏にも参加、まさに妙技と呼べる素晴らしいスライド・ギターを披露している。クラプトンに “楽曲に最適な音色で最適なフレーズを弾くギタリスト” と言わしめたジョージの真骨頂が聴ける名演だ。
デイ・アフター・デイDay After Day/バッドフィンガーBadfinger
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Leave A Light On / Belinda Carlisle

2012-11-30 | George・Ringo
 今日はジョージ・ハリスンの魅力の一つであるスライド・ギターにスポットを当て、他のアーティストのレコーディングにゲストとして参加した作品の中でも出色の出来を誇る「リーヴ・ア・ライト・オン」でいこう。
 彼のスライド・ギターはそのソロ・キャリアを語る上で欠かせない要素であり、70年代初期の「マイ・スウィート・ロード」や「ギヴ・ミー・ラヴ」といったヒット曲においても重要な役割を果たしてきたのだが、そのプレイは年齢を重ねるにつれて更にメロウで芳醇な響きを増していき、ギターの音だけでこれほどまでに豊かな表現が可能なのか... と驚愕させられるような、ザ・ワン・アンド・オンリーな世界を確立していった。特に80年代後半から90年代にかけての彼の滋味あふれるプレイはまさに円熟の極みと言っても過言ではなく、 “楽器を通して歌を歌う” という至高の境地にまで達しているように思う。そういう意味で、彼のスライド・ギターの名演と言えばビートルズ・アンソロジーの「フリー・アズ・ア・バード」やトラベリング・ウィルベリーズの「ハンドル・ウィズ・ケア」あたりがすぐに思い浮かぶが、ゲスト参加ということもあってか案外知られていないのがこのベリンダ嬢の「リーヴ・ア・ライト・オン」である。
 べリンダ・カーライルは80年代初め頃に活躍したガールズ・ロック・バンド、ゴーゴーズのリード・シンガーで、ソロになってからも「マッド・アバウト・ユー」や「ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース」といった楽曲に恵まれてヒットを連発しており、私のお気に入りのシンガーの一人だった。この曲は1989年に彼女がリリースした3枚目のソロ・アルバム「ラナウェイ・ホーシズ」からの 1stシングルで、絶妙な多重コーラス効果で思わず一緒に歌いたくなるようなサビの盛り上がり方といい、ガールズ・ポップスの王道をいく分厚いサウンド・プロダクションといい、まさに “これぞ80's!!!” と言いたくなるような超愛聴曲なんである。
 そんな名曲名唱に花を添えるかのように登場するのがジョージのスライド・ギターなのだ。ジョージとベリンダはそれまで何の面識もなかったのだが、煌びやかなガールズ・ポップ・ロック・サウンドを作らせたらこの人の右に出る者はいないと言われる名プロデューサー、リック・ノウェルズがベーシック・トラックを録り終えてプレイバックを聴いていた時に “ここにジョージ・ハリスンみたいなスライド・ギターを入れたら最高やろな...” と閃いてダメ元で(?)ジョージにコンタクトを取ってみるとすんなりとOKの返事が返ってきたので驚いたという。
 このアルバムの場合、ジョージが直接セッションに参加するのではなく、ちょうど「ビート・イット」のエディー・ヴァン・ヘイレンの時と同じように、曲のソロの部分を弾いたテープを送ってもらってそれをオーヴァーダブするというやり方だったらしいが、エディーといい、ジョージといい、テープによる参加ながらその曲の魅力を決定づける素晴らしいソロを弾いているのはもうさすがとしか言いようがない。こういうのを “名人” の仕事というのだろう。
 それにしても3分3秒から炸裂するスライド・ソロの何とカッコ良いことよ... (≧▽≦)  まさに聴く者の魂を揺さぶるかのようなエモーショナルなソロである。ラジオから流れてきたこの曲を初めて聴いた時は “このスライド・ギター、めっちゃジョージに似てるやん!” と思ったのだが、後で本物のジョージが弾いてると知った時はあぁやっぱりと大いに納得したものだ。そういえば確か91年にジョージがクラプトンと一緒に来日した時に出たTV番組「すばらしき仲間」の中でこの曲の話題になり、二人の間で次のようなやり取りがあった;
 EC:彼の演奏スタイルはとてもユニークだから他の人の作品に参加しててもすぐわかるよ... この前ラジオで君のスライドギターにそっくりなのを聞いたけど...
 GH:女性歌手のレコードで弾いたよ... 何ていう名前だっけ... あの赤毛の娘...
 EC:やっぱり君だったのか... 彼女の名前は... そうそう、ベリンダ・カーライルだ。スライドギターでロックンロールを弾けるのはジョージだけだからね。

クラプトンもこの曲をラジオで聞いて我々一般ピープルと同じことを考えとったという微笑ましいエピソードだが、この番組の貴重な映像を YouTube で見つけたので一緒に貼っときます。消される前に楽しんで下さい。

べリンダ・カーライル 輝きのままに Belinda Carlisle Leave A Light On


George Harrison&Eric Clapton3/4(5分50秒あたりからこの曲のエピソードが語られます)


【おまけ】確か銀座ジュエリーマキのCMソングやったと思うけど、この曲もめっちゃ好き(^o^)丿 強烈なサビメロの脳内リフレインが止まりません....
この胸の想い ベリンダ・カーライル/ (WE WANT)THE SAME THING-Belinda Carisle


美しき人生 / ジョージ・ハリスン

2011-11-29 | George・Ringo
 月日の経つのは早いもので、ジョージが亡くなって今日でちょうど10年になる。厳密には日本時間で11月30日の早朝だったのだが、その2年前に暴漢に襲われて重傷を負いながらも「オール・シングス・マスト・パス」のリマスターを完成させ、さぁこれからという矢先だっただけに、58才という余りにも早すぎる元ビートルの死、しかもコバルト放射線治療で脳腫瘍と闘うという壮絶な闘病生活の末の死ということもあって、ジョンの時とは又違った意味で大きなショックを受けたのを覚えている。
 そんなジョージの10周忌に合わせるかのように、彼の生涯を綴ったドキュメンタリー映画「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」が制作された。監督はマーティン・スコセッシ、3時間30分という大作だ。私は映画には疎いので、この人に関してはマイケル・ジャクソンの「バッド」のビデオを制作したということぐらいしか知らなかったが、色々調べてみるとザ・バンドの「ラスト・ワルツ」やストーンズの「シャイン・ア・ライト」なんかも手掛けた中々の音楽通らしい。オリビア・ハリスンを始めポールやリンゴも絶賛したというこの映画、日本では2週間限定で劇場公開中なのだが、来月23日に DVD が発売されるということもあり、アマゾンで予約を済ませた私はクリスマスのお楽しみに取っておくことにした。 “以下の商品は12/25以降のお届けになる場合があります” という但し書きがちょっと気になるけど、とにかく今からクリスマスが待ちきれない。
 同映画の公式サイトで予告編を見ていて一つ気付いたのは “人生” という言葉が頻繁に出てくるということ。どうやらよくある “ロック・スターの伝記” 的な作品ではなく、物質的な豊かさよりも精神的な充足感を追い求めたジョージ・ハリスンという一人の人間の生き様を描いた映画のようだ。そこで頭に浮かんだのが “美しき人生” という言葉... 「オール・シングス・マスト・パス」からの第2弾シングルとしてヒットした「What Is Life」(←イギリスでは「マイ・スウィート・ロード」のB面だったが...)の邦題である。
 リビー姫のカヴァーでも有名なこの曲、「マイ・スウィート・ロード」の陰に隠れがちだが私的にはジョージのソロ作品中でも三指に入るくらいの超愛聴曲。どちらかというと哀しげな曲調のものが多い70年代前半の彼の作品の中で、この曲は異色と言えるぐらいポジティヴなエネルギーに満ち溢れたノリの良いストレートな作品に仕上がっている。何と言ってもスペクター・マジックによってパワーアップされたジョージの溌剌とした歌声が圧巻だし、イントロでジョージの弾くファズ・ギターに印象的なリフが寄り添うように重なっていき、やがて一気に爆発するような感じで炸裂する “ウォール・オブ・サウンド” の快感は筆舌に尽くし難い。タンバリンの入り方なんかも絶妙だ。いやぁ~スペクター先生、ホンマにエエ仕事してはりますなぁ...(^.^)
 この曲の歌詞は非常にシンプルで高校生程度の英語力があれば簡単に理解できるものだが、シンプル・イズ・ベストとはよくぞ言ったもので、ストレートに心に訴えかけてくるフレーズが心に響く。特に “君の愛が無い人生に何の意味があるのだろう? 君が傍にいないなら僕の存在理由は一体何なんだろう?” というサビのラインで顕著なように、男女間の恋愛感情にとどまらず、広く普遍的な愛、つまり家族・友人など自分にとって大切な人への愛情・思いやりの大切さについて歌われており、明るい曲調とも相まって、聴いてて心がホンワカ暖かくなってくるのだ。ポップ・ソングはやはりこうでなくてはいけない。
 今夜はこの曲の入った「オール・シングス・マスト・パス」のリマスター CD を大音響で聴きながらジョージに思いを馳せるとしよう。

『ジョージ・ハリスンLiving in the Material World』予告

What Is Life - George Harrison - (@alvar0rtega)
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The Best Of George Harrison (Pt. 2)

2010-01-08 | George・Ringo
 ジョージはビートルズの実質的ラスト・アルバム「アビー・ロード」で①「サムシング」、③「ヒア・カムズ・ザ・サン」というレノン=マッカートニーに比肩するようなスーパー・ウルトラ大名曲を2曲も提供し、一気に注目を集めた。それまでジョンとポールという二人の天才の陰に隠れがちだったジョージは積年のうっ憤を晴らすかのように一気にその才能を大爆発させ、フィル・スペクターと組んで3枚組大作「オール・シングス・マスト・パス」を70年にリリース、そこから 1st シングルとしてカットされ4週連続全米№1を爆走したのがジョージ屈指の名曲⑧「マイ・スウィート・ロード」だった。
 イントロの “ジャンジャン ジャジャジャ~ン♪” というアコギのリズム・カッティングを聴いただけでこれから素晴らしい音楽が始まりそうな期待感に胸がワクワクしてくる。続いてジョージの至芸ともいえるスライドギターがたまらんメロディーを奏で、スペクターお得意の分厚いサウンドにサポートされてジョージのヴォーカルが登場、単純な歌詞の繰り返しがえもいわれぬ高揚感を生み、宗教嫌いの私ですら思わず “ハァ~レェ~ ルゥ~ヤ♪” と口ずさんでしまうという必殺のキラー・チューンだ。盗作騒動?論理的に考えても、ジョージほどの富と名声を得た人が自らのキャリアを危険にさらしてまで盗作せなアカン理由がないやん... それに確信犯的パクリと無意識アダプトは違うし。シフォンズは「マイ・スウィート・ロード」の大ヒットのおかげでタダで「ヒーズ・ソー・ファイン」の宣伝ができたんやから感謝こそすれ告訴するなんて、何とまぁケツの穴の小さい連中なんや(>_<) “ビートルズのメンバーに使ってもらえて光栄です” ぐらい言えんのか?
 翌71年に出された 2nd シングル⑬「ホワット・イズ・ライフ」(邦題:美しき人生)も明るくてノリの良いナンバーで、まるで目の前に輝ける道が広がっているような、非常にポジティヴな雰囲気を湛えており、全米10位のスマッシュ・ヒット。オリビア・ニュートン・ジョンも72年のアルバム「オリビア」でカヴァーしている名曲だ。様々な楽器が適材適所で使われており、繰り返し聴くうちに “おっ、こんな所にこんな音が入ってたんか!” と、何かしら新しい発見があって実に楽しい。細部に至るまで徹底的に作り込んでいくスペクター・マジックの真髄を垣間見れる1曲だと思う 。
 71年夏に開催された “バングラ・デシュ・コンサート” と同時期にリリースされた⑪「バングラ・デシュ」(スタジオ録音)は文字通りバングラ・デシュ難民救済のためのチャリティー・シングルで、偉大なる前2曲に比べてしまうとどうしても小粒というか、ポップさに欠けるというか、楽曲としての大衆へのアピール度が弱く、全米23位が限界だった。私も最初聴いた時は “何か重苦しい曲やなぁ...” (←そもそも貧困の現状を訴える内容なので曲調も重苦しくて当然なのだが...)と思ったが、何度も聴くうちにジョージの魂の叫びのような歌声が心にグイグイ食い込んできていつの間にか惹き込まれていた。
 73年にはアルバム「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」から⑨「ギヴ・ミー・ラヴ」がシングル・カットされ全米№1をゲット。ジョージお得意のスライド・ギターはまさに変幻自在と言ってよく、聴く者に鮮烈な印象を与えてくれるのだが、素のメロディーも実に綺麗でエエ曲やと思う。まさかこの時点で彼が次に№1を取るまで15年もかかるとは誰も予測していなかったと思うが、チャート的にはこの頃から徐々に失速していく。やはりアルバム1枚からキャッチーなシングルを2~3枚切っていかないとキツイのだろう。そういう意味で、74年のアルバム「ダーク・ホース」のタイトル曲⑫は、渋~い曲で私は結構好きなのだが(←特に隠し味のフルートなんてエエ味出してると思うんやけど...)シングルとしてはインパクトが弱く、ジョージの声もかなり荒れてて結局15位止まり。この73~74年の2枚のアルバムがもう少しポップな出来だったらその後の流れも変わっていたように思うのだが...(>_<)
 75年のアルバム「エクストラ・テクスチャー」からの 1st シングル⑩「ユー」(邦題:二人はアイ・ラヴ・ユー)は元々ジョージがロニー・スペクターのために書いたがボツになっていたものを引っ張り出してきたもので、私にはこの曲だけアルバム中でポツンと浮いているように聞こえたものだ。どことなく「ホワット・イズ・ライフ」を思わせるキャッチーなナンバーで、コレが「ギヴ・ミー・ラヴ」の前後に出ていたらと思ってしまうが、一度狂った歯車は中々元へは戻らず、この曲は20位になるのがやっとだった。結局このアルバムを最後にジョージはワーナーへと移籍、心機一転して傑作「33 & 1/3」を作り上げるのだが、それはまた別のはなし... (^.^)

What Is Life - George Harrison

The Best Of George Harrison (Pt. 1)

2010-01-07 | George・Ringo
 昨日でリンゴ3連発も一段落し、ビートルズ・ソロ特集も一応終わりにしようかと思ったが、よくよく考えてみるとまだジョージだけソロ時代の総括をやっていなかった。オリジナル・ソロ・アルバムは又別の機会に譲るとして、とりあえずリンゴ同様ベスト盤で大まかな流れを整理しておこうと思う。
 ジョージのベスト盤と言えば去年 “レーベルを超えたオールタイム・ベスト” という触れ込みで「レット・イット・ロール」が出たが、あまりにもアホな選曲に呆れてモノも言えなかった。「ディス・ソング」も「クラッカーボックス・パレス」も「二人はアイ・ラヴ・ユー」も「ダーク・ホース」も「バングラ・デシュ」も入っていないベスト盤って何なん?しかもその代わりにバングラ・デシュ・コンサートからビートルズ時代の彼の代表曲3曲のライヴ・ヴァージョンを入れるという、 “とにかく売れたらそれでエエやん” 的精神丸出しの暴挙!オリビアが選曲したと謳っているが、ホンマかいな?私がひねくれているだけかもしれないが、ファン目線の選曲基準とはとても思えない。ジャケットがめちゃくちゃカッコエエだけに返す返すも残念だ。そういえば「ベスト・オブ・ダーク・ホース1976-1989」という盤もあったなぁ... いくら「セット・オン・ユー」が1位になったからっちゅーて、アレはないわ。個人的には好きな曲が多いけど、一般ウケとは程遠い内容だった。
 そこで登場するのが76年にアップルとの契約切れに伴ってレコード会社が最後のアブクゼニ稼ぎとばかりに発売した「ザ・ベスト・オブ・ジョージ・ハリスン」である。選曲はジョージに無断でレコード会社がやったということだが(←アーティストの側に拒否権ないんかな?)、この盤はA面にビートルズ時代の代表曲、B面にソロになってからのヒット曲というイビツな構成になっており、いかにも “アンタはソロ・ヒットだけではベスト盤1枚作れへんよ” と言ってるみたいでジョージに失礼だ(←ジュリーのベスト盤に「シーサイド・バウンド」入れへんでしょ?)。「イズント・イット・ア・ピティ」とか、「ディン・ドン」とか、「イフ・ノット・フォー・ユー」とか、いくらでもエエ曲あるやん!しかもそれに追い打ちをかけるかのようなこのトホホなジャケット... このジャケ見て購買意欲が湧きますか?
 ボロクソついでに言うと、カッティング・レベルが低いせいか情けないくらい脆弱な音で、「マイ・スウィート・ロード」や「ホワット・イズ・ライフ」といったスペクター・サウンドすら迫力に欠け、 “音の壁” どころか “音のカーテン” と言った方がいいくらいの薄っぺらいサウンドだ。ジョージと同じくアップル離脱ということで同時期に発売されたジョンの「シェイヴド・フィッシュ」やリンゴの「ブラスト・フロム・ユア・パスト」といった元ビートルのベスト盤と比べても、選曲、ジャケット、サウンドと、すべての面でこのジョージ盤だけが不当な扱いを受けているように思う。実際、私がこの盤を買ったのも、「バングラ・デシュ」のシングル・ヴァージョンが入ってるからで、あまりちゃんと聴いていなかった、
 で、今日久しぶりに①「サムシング」から⑬「ホワット・イズ・ライフ」まで一気聴きしてみたのだが、LP時代には納得いかなかったAB面分割構成もCDで通して聴くと、グループとかソロとか関係なしにジョージ・ハリスンという一人のアーティストの足跡が辿れて違和感なく楽しめるのだ。CDフォーマットの恩恵か、それとも私の感性が変化したのだろうか?とにかくこのアルバム、安心ラクチン格安パック・ツアーでジョージのヒット曲を楽しめるという点では大いにアリだと思う。70年代前半のヒット曲についてはパート2で... (つづく)

マイ・スウィート・ロード/ジョージ・ハリスン My Sweet Lord/George Harrison
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Photograph - The Very Best of Ringo (Pt. 3)

2010-01-06 | George・Ringo
 リンゴのソロ・キャリア総括も後半戦に突入だ。元ビートルズのメンバーが参加し、クオリティーの高い曲を揃えた前作「リンゴ」の大ヒットですっかり自信をつけたリンゴはその路線を踏襲したアルバム「グッドナイト・ヴィエナ」を74年にリリース、元ビートルズの参加がジョンのみというのが寂しいが、それでもエルトン・ジョンやハリー・ニルソン、ビリー・プレストンといった錚々たるメンツを揃え、前作の勢いをかって3曲のトップ40シングルを生み出すヒット・アルバムになった。
 このアルバムからの 1st シングルは1955年のプラターズの大ヒット曲をカヴァーした⑦「オンリー・ユー」だ。ノスタルジックな曲調とリンゴのトボケたヴォーカルが絶妙にマッチして全米6位まで上がったが、私はどうもこの曲が苦手なんである。決して悪い曲ではないが、何となく間延びして聞こえると言うか、気だるすぎるというか... そういえば中学生の頃に参加した “ビートルズ復活祭” のソロ PV コーナーで、ジョンの「スリッピン・アンド・スライディン」やポールの「ジェット」、ジョージの「ディス・ソング」といったノリノリの曲が続いた後に、空飛ぶ円盤がキャピトル・レコード屋上に飛来するこの曲の PV がスクリーンに映し出されると会場全体がザワザワし始め、何とも言えない気まずい空気が流れたっけ。私の場合、更に悪いことにこの曲を聴くとどうしてもカップヌードルの CM “オンリー 湯~♪” を思い出してしまうので始末が悪い(>_<) 何かネガティヴなことばっかり書いてしまったが、ジョンが弾く “スタンド・バイ・ミーな” アコギのリズム・カッティングは快感の一言に尽きる(^.^) 顎が落ちそうなリズム・ギターとはこういうのを言うのだろう。「ジョン・レノン・アンソロジー」収録のジョン・ヴァージョンとの比較も一興だ。
 2nd シングル⑪「ノー・ノー・ソング」は一転してネアカなポップ・ソングで、どことなく「オブラディ・オブラダ」をひっくり返して漂白したような(?)浮遊感漂う軽やかな雰囲気がウケたのか、全米3位の大ヒット。 “マリファナもコカインも密造酒もいらないよ...ノーノーノーだ...” という歌詞が面白い。B面になった⑩「スヌーカルー」(←イギリスではこっちがA面、ってややこしいなぁ...)はエルトン作の疾走感溢れるロックンロールで、リンゴもノリノリで歌っている。 “オンリー 湯~♪” のリンゴしか知らない人が聴いたらビックリするだろう。私ならコレを絶対 1st シングルに切るけどなぁ...(>_<)  
 ジョンが書いたアルバム・タイトル曲⑫「グッドナイト・ヴィエナ」は 3rd シングルとしてカットされ全米31位になったが、この曲はチャート成績なんてクソクラエと思えるぐらいカッコイイ、メリハリの効いたリズミカルなロックンロール。思わず身体が揺れてしまうようなグルーヴ、音楽が前へ前へと進んでいく快感、ハンド・ラッピングを多用したノリの良さ... すべてが圧巻だ(≧▽≦)
 キャピトルを離れポリドールへの移籍第1弾アルバム「リンゴズ・ロートグラビア」からは⑭「ア・ドゥス・オブ・ロックンロール」(全米26位)と⑬「ヘイ・ベイビー」(全米74位)がシングル・カットされたが、既に前作までの勢いはなく、当時リアルタイムで聴いた私もエアチェックで済ませる程度で、LP を買って聴き込むまでは至らなかった。しかし今の耳で聴くとこの2曲、どちらも古き良き時代のオールディーズを思わせるような楽しさに溢れ何度も繰り返し聴きたくなるスルメ・チューンで、思わず知らず “へェ~ エェイ、ベイベッ!” と口ずさんでしまう(笑)。これだから音楽は面白い。
 コレ以降の曲⑮~⑳はアルバムを持っていないので知らない曲ばっかりだ(>_<) そんな中ではポップな⑮「ウエイト・オブ・ザ・ワールド」とジョージに捧げた⑰「ネヴァー・ウィズアウト・ユー」がそこそこ良かったように思う。
 とまぁこのようにビートルズ解散後のリンゴの足跡を駆け足で辿ってみて、改めて彼の魅力を再発見できて大満足(^o^)丿 音楽ブログやってて良かったなぁと思うのは、こんな風に一つのテーマに沿って徹底的に聴き込むキッカケになることやね。これからはポリドール期のリンゴ盤も少しずつ集めて聴いていこうと思う。

Ringo Starr & Elton John - Snookeroo

Photograph - The Very Best of Ringo (Pt. 2)

2010-01-05 | George・Ringo
 今日はリンゴのベスト盤を使って彼のヒット曲を時系列に沿った形で整理してみたい。彼の初ソロ・シングルは70年にリリースした趣味丸出しのC&Wアルバム「ボークー・オブ・ブルース」のタイトル曲⑧で、あまりにもロック/ポップスとかけ離れたカントリー・ソングだったため全米87位という悲惨な成績に終わったが、翌71年に出した②「イット・ドント・カム・イージー」(邦題:明日への願い)は全米4位という大ヒット。いきなりイントロから “アビー・ロードな” フレーズを繰り出すジョージに涙ちょちょぎれる。リンゴの自作曲ながら「オクトパス・ガーデン」同様ジョージがアレンジ面でも協力しており、フィル・スペクターみたいな分厚い音作りのプロデュースでリンゴのソロ曲中一二を争う名曲名演に仕上げている。B面になった⑨「アーリー 1970」(邦題:1970年代ビートルズ物語)は曲そのものは平凡なカントリー・ソングなのだが、ポールとリンダ、ジョンとヨーコ、ジョージとパティを示唆する代名詞がバンバン登場する歌詞がビートルズ・ファンの琴線に触れまくる。特に “町に行ったら3人みんなに会いたいな” というパートは彼の人柄を表わしていて心が和みます。リンゴってホンマにエエ人やなぁ...(^.^) 
 72年の④「バック・オフ・ブーガルー」は②と同じく “リンゴ作でジョージのプロデュース” というパターンで全米9位の大ヒット、舎弟(?)のマーク・ボランを意識して作ったというからリンゴの作曲能力もたいしたものだ。リンゴにしてはハードな作風で彼の重厚なドラミングが曲全体を支配、ジョージの “バングラデシュな” ギターも大活躍で、私の大好きな曲だ(^o^)丿
 ジョン、ポール、ジョージの3人がそれぞれ曲を提供し、別々とは言えレコーディングに参加したことで大きな話題になった73年のアルバム「リンゴ」からの 1st シングル①「フォトグラフ」はジョージとの共作で、全米№1に輝いた大ヒット。のどかな雰囲気の曲調が温か味のあるリンゴの歌声にピッタリ合っているし、隠し味のカスタネットも効いている。プロデューサー、リチャード・ペリーの慧眼というべきだろう。 2nd シングルの③「ユア・シックスティーン」は1960年のジョニー・バーネットのヒット曲をカヴァーしたものだが、何とコレが①に続いて全米№1に輝くという快挙を達成、元ビートルズでは断トツと言っていいチャート成績だ。間奏で聞けるカズー笛はポールで、これがまた実にエエ味出してるんよね(^o^)丿 ハリー・ニルソンの多重コーラスも絶品で、私的にはアルバムのベスト・トラックだと思う。
 調子に乗ってリリースした 3rd シングル⑥「オー・マイ・マイ」はノリはいいがメロディーは単調で、曲としてはそれまでのシングルに比べるとクオリティー・ダウンの感は否めないが、コレも全米5位まで上がったというから勢いというのは恐ろしい。私はこの曲のタイトルを聞くとどーしてもスパゲッティを連想してしまう(笑)。ジョンが作った⑤「アイム・ザ・グレイテスト」はこの傑作アルバムの冒頭を飾ったミディアム・テンポのナンバーで、シングル・カットこそされなかったが、リンゴ、ジョン、ジョージの3人にビリー・プレストンとクラウス・ヴアマンというメンツはゲット・バック・セッションを彷彿とさせるモノがあり、そのビートリィなサウンドに涙ちょちょぎれる。歌詞にもビリー・シアーズが登場、ペパーズばりのSEを被せるなど、ビートルズ・ファンの秘孔をズバリ突いてくる。ここはもう “ヒデブッ!” と言って砕け散るしかない(笑)。いや、砕け散ってこそ真のビートルズ・ファンといえるだろう(←何のこっちゃ!)。74年以降のリンゴはパート3で...(つづく)

Ringo Starr - It Don't Come Easy (The Concert For Bangladesh)

Photograph - The Very Best of Ringo (Pt. 1)

2010-01-04 | George・Ringo
 ビートルズ・ソロ特集の最後はリンゴ・スターだ。そーいえばブログを始めてもう1年以上も経つというのに、元ビートルズのソロ作品でリンゴだけまだ取り上げていなかった。ゴメンね、リンゴm(__)m
 70年代前半に限って言えば、4人の元ビートルズの中で最もヒット・チャート上の成績が良かったのは何を隠そうこのリンゴである。政治的な言動が目立ったジョンやインド信仰に肩入れしすぎたジョージはともかく、 “ヒット曲製造機” と言ってもいい20世紀最高のメロディー・メーカー、ポールよりも多くのヒットを飛ばしていたというからオドロキだ。ビートルズの中にあってその唯一無比のドラミングは絶対的不可欠なものではあったが、ことリード・ヴォーカルということになると、あのユルい声質にノホホンとした歌い方はどうヒイキ目に聴いてもロックというよりはカントリー向きだったし、実際に「アクト・ナチュラリー」や「ホワット・ゴーズ・オン」といった C&W 色の濃いナンバーがレパートリーの中心だったリンゴ。しかも作曲能力に関しては他の3人に比べるべくもない。だからシングルはともかく、ソロ・アルバムとなるとどーしてもリンゴのは後回しになってしまう。
 洋楽を聴き始めた当時の私にとっては何よりもまずビートルズの全アルバムを揃えるのが先決だったし、雑誌広告に載っている海賊盤も妙に気になって仕方がなかった。レッド・ゼッペリンやディープ・パープルといったハードロックにも入れ込んでいたし、クイーン、キッス、エアロスミスの御三家も全盛期だ。結局貧乏学生だった私が買ったのは彼のベスト盤「ブラスト・フロム・ユア・パスト」(←ハトが豆鉄砲を食らったようなジャケットのヤツ)1枚きりで、当時の新作「リンゴズ・ロートグラビア」もFMエアチェックで済ませていた。ホンマにゴメンね、リンゴm(__)m
 その後80年代に入り、リンゴの作品はシングル、アルバム共に Top 40どころか Hot 100 にすら入らないという大苦戦を強いられるようになる。ジョンが逝き、ジョージは沈黙、70年代には飛ぶ鳥を落とす勢いだったポールも失速し、リンゴも低迷と、80年代は元ビートルズにとっては暗黒の時代だった。しかし80年代も終わりに近づくと、まずポールとジョージが復活、90年代には一連の「アンソロジー」怒涛のリリース・ラッシュで大盛り上がりとなり、私もLP時代に買いそびれていたビートリィな名盤「リンゴ」と「グッドナイト・ヴィエナ」を購入、ベスト盤に漏れてた曲にもエエのが一杯あることを知って大いに反省した次第。特にジョンの「グッドナイト・ヴィエナ」とエルトンの「スヌーカルー」のカッコ良さにはブッ飛んだ。調子に乗って、リンゴの歌う「バイ・バイ・ブラックバード」や「スター・ダスト」、「慕情」といったスタンダード・ナンバーも聴いてみたれと「センチメンタル・ジャーニー」も買ってはみたが、さすがにコレはキツかった(>_<) キャピトルを離れて以降のいわゆる “低迷期” の盤は相変わらずの手つかず状態。ホンマのホンマに... もうエエか(笑)
 とまぁこんな風に、決してリンゴの良い聴き手ではなかった私が2年ほど前に久しぶりに買ったのがこの「フォトグラフ~ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・リンゴ・スター」... またまたベスト盤である。ネットで見つけていつものように衝動買いした1枚だ。で、届いた CD を聴いたらコレがもうめっちゃエエんですわ(≧▽≦) 私は70年代前半をリアルタイムで経験したワケではないので、彼の快進撃も “元ビートルズ” の肩書きで売れたんだろうと思っていたが、それはとんでもない誤解だった。ジャケットもカッコ良いし(←何か絵的に昨日の盤とダブるなぁ...)、リマスターされているのか、音も抜群に良くって(←私の持ってた盤の音がショボかっただけかもしれないが...)コレは買って大正解!収録曲についてはパート2で... (つづく)

Ringo Starr - "Goodnight Vienna"

33 & 1/3 / George Harrison

2010-01-03 | George・Ringo
 年末からビートルズ・ソロ特集みたいな流れで来てるので、今日はジョージ・ハリスンにしよう。私が初めて買ったジョージのレコードは「エクストラ・テクスチャー」(邦題が「ジョージ・ハリスン帝国」って... (゜o゜) 何ちゅーアホなタイトル付けとんねん... スター・ウォーズかよ!)だった。ちょうど洋楽を聴き始めてすぐの頃で、当時ラジオから頻繁に流れていたヒット曲「二人はアイ・ラヴ・ユー」が気に入って、ああいう感じのポップさを期待して買ったのだが、他の曲は思いっ切り暗い雰囲気のばっかりだった(>_<) これはたまたま運が悪かっただけと自分に言い聞かせ、ディスコグラフィーを見ながら次は何を買おうかと迷ったが、大傑作といわれる「オール・シングス・マスト・パス」は3枚組で高くて買えなかったし、「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」と「ダーク・ホース」は抹香臭いジャケットを見ただけでドン引きし、結局シングル盤を何枚か買ってお茶を濁していた。
 そうこうするうちにジョージのニュー・アルバムがリリースされた。タイトルは「33 & 1/3」... LPレコードの回転数とジョージの年齢を引っかけたダブル・ミーニングというのがシャレている。何よりもこのアルバムからの 1st シングル④「ディス・ソング」のキャッチーなメロディーが気に入っていた私は「帝国の逆襲」(笑)と言わんばかりに即買いした。で、結果は大正解!!! 当時のジョージはパティとの離婚、全米ツアーの不評、「マイ・スウィート・ロード」の盗作問題、そしてワーナーへの電撃移籍でA&Mから訴えられるなど、まさに踏んだり蹴ったりの状態だったのだが、アルバム全体に漂うポジティヴなフィーリングはそれまでのジョージにはなかったものだ。多分オリビアという新しい恋人との出会いが大きかったのだろう。宗教の押し売りみたいな曲がないのも嬉しい(^o^)丿
 アルバムは弾けるようなファンキーなリズムにビックリの①「ウーマン・ドンチュー・クライ・フォー・ミー」で幕を開ける。⑥「イッツ・ホワット・ユー・ヴァリュー」もうねるようなリズムに乗ったジョージのヴォーカルが心地良い(^.^) この2曲は良い意味で私の予想を裏切ってくれて、当時かなり新鮮に響いたものだ。例の盗作騒動を皮肉った④「ディス・ソング」にしても、昔のジョージならもっと自虐的でシリアスなものになっていただろうが、ここではその裁判自体をもパロディーにして笑い飛ばしてしまおうという、何か吹っ切れたような明るささえ感じられるのだ。 2nd シングル⑨「クラッカーボックス・パレス」もキャッチーなナンバーで、まるで生まれ変わったかのように軽快なメロディーを連発するジョージが愛おしい。コレ、私の大好きな曲だ。
 大好きと言えば⑦「トゥルー・ラヴ」、私はずぅ~っとジョージのオリジナル曲だと信じ切っていたのだが、10年ほど前にジャズを聴き始めてからこの曲がコール・ポーター作の有名スタンダード・ナンバーだと知った。こーゆう曲をさりげなくB面2曲目(!)に入れておくジョージのセンスは素晴らしいし、何よりも彼のヴォーカルが見事に曲の髄を引き出している。そしてトドメは⑩「ラーニング・ハウ・トゥ・ラヴ・ユー」、ポール顔負けの流れるようなメロディー・ラインが絶品で、名曲だけが醸し出す品位と風格が漂う、まさに洗練の極みといったナンバーだ。デヴィッド・フォスターのキーボードも実にエエ味を出しており、間奏のギターが醸し出す儚さにも涙ちょちょぎれる。ジョージ屈指の隠れ名曲だろう。
 このアルバムは「オール・シングス・マスト・パス」のようなロック史上に名を残す大名盤でもなければ、「クラウド・ナイン」のような “劇的なカムバック・アルバム” という話題作でもない。しかしジョージのオリジナル作品の中で私が最も愛聴しているのがこの「33 & 1/3」であり、個人的には彼のベスト作だと思っている。

Learning How to Love You - George Harrison

Cloud Nine / George Harrison

2009-03-29 | George・Ringo
 「ジョージ・ハリスンの代表作は?」と問われれば、よっぽどの天邪鬼でもない限り「オール・シングズ・マスト・パス」と答えるだろう。「マイ・スイート・ロード」の入った例の3枚組大作だ。しかしこの“代表作”という言葉が曲者で、この言葉の裏には“歴史的重要性”とか“エポックメイキングな大作”といったニュアンスが含まれているように思える。それはちょうどビートルズなら「サージェント・ペパーズ」や「アビー・ロード」を、ゼッペリンなら「Ⅱ」や「Ⅳ」を挙げる人が多いのと同じである。だから「それじゃあ一番よく聴くアルバムは?」と聞けば答えは分かれるのではないだろうか?愛聴盤というのは初めて聴いた時の衝撃度や個人的な嗜好・思い入れによって千差万別、十人十色だからである。私がよく聴くのはビートルズ的なものを意識的に避けてある意味“無理していた”ように聞こえる70年代前半のアップル期よりも、“ビートルズの封印を解いた”70年代後半以降のリラックスしたジョージである。そういう理由で私はこの「クラウド・ナイン」を愛聴している。
 この盤はビートルズの舎弟頭といえるジェフ・リンのプロデュースで、彼お得意の万華鏡のようなポップ・ワールドが展開されており、人によってはそこがオーバープロデューシングに思えるのかもしれないが、ビートルズを知り抜いたジェフ・リンだからこそ作り得たビートリィな音世界の中で、ジョージが肩の力を抜いて愉しみながら歌い演奏しているように私には聞こえる。76年の「33&1/3」や79年の「慈愛の輝き」あたりのアルバムに顕著な、彼の優しさが滲み出るような温かみのあるサウンドと、ジェフ・リンが後期ELOで実践していたアコースティック・ギター主体のカラフルでポップなサウンドが見事に融合して化学反応を起こし、ジョージをコンテンポラリー・ミュージック・シーンへとカムバックさせる大ヒットに繋がったのだと思う。
 個々の曲に関して言えば、ジョージにとって久々の全米№1となったファースト・シングル⑪「ゴット・マイ・マインド・セット・オン・ユー」が目立っているが、私はむしろ開き直って徹底的に“ビートルズ的なサウンド”を再現した⑥「ホエン・ウィー・ワズ・ファブ」が好きだ。まるで「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のセルフ・パロディーかと思ってしまうくらい見事に「マジカル・ミステリー・ツアー」あたりのサイケデリックなサウンド・プロダクションを施したキラー・チューンで、リンゴのドラムが「バスン!」と入ってきた瞬間、あたりの空気が一変し、それは完全にビートルズのサウンドと化す。私なんかこれだけでもう鳥肌が立つほどゾクゾクしてしまう。しかもこの懐かしさ全開のコーラス・ワーク、ストリングスの絶妙な使い方... これこそまさに“87年に蘇ったビートルズ・サウンド”そのものだ。しかもゴドレイ&クレーム製作のビデオ・クリップ、これがまた圧倒的に素晴らしい。リンゴはもちろんのこと、左利きでベースを弾くセイウチの着ぐるみまで登場(←ここんとこ、大好き!)、最後にはシタールが鳴り響く中、千手観音と化して空中浮遊(?)するシーンなど、細部にまで徹底的に拘ったその作りはビートルズ・ファンなら感心・感動・感激せずにはいられない。
 タイトル曲①「クラウド・ナイン」も上記2曲に負けず劣らず素晴らしい。左右のスピーカーに振り分けられたジョージとクラプトンのギターの絡みに涙ちょちょぎれる渋~いブルースで、ジョージの達観が伝わってくるようなめちゃくちゃカッコ良いナンバーだ。それ以外にもELO版「ハード・デイズ・ナイト」みたいなポップさが愉しい③「フィッシュ・オン・ザ・サンド」、もろELOサウンドの中、ジョージ至芸のスライド・ギターが冴え渡る⑤「ジス・イズ・ラヴ」、ビートルズが得意としていた風刺の効いた歌詞が面白い⑦「デヴィルズ・レディオ」etc聴き所満載だ。確かにジョージ本来の持ち味という点では「33&1/3」や「慈愛の輝き」に一歩譲るが、私は80年代に不死鳥のように蘇ったビートルズ・サウンドが聴けるこのアルバムの“吹っ切れた”ジョージが大好きだ。

George Harrison - When we was fab

All Those Years Ago / George Harrison

2008-12-08 | George・Ringo
 今年も12月8日がやって来た。彼が亡くなってもう28年になる。彼がいなければビートルズは存在せず、それはつまり今の私もなかったということである。私が彼の悲報を知ったのは大学受験を目前に控えた高3の冬、FM大阪の「ビート・オン・プラザ」という番組を聴いていた時のことだった。LP丸ごと流してくれるこの番組はエア・チェック(懐かしい言葉やなぁ...)に最適で、その日はたまたま彼の待望の新作「ダブル・ファンタジー」の特集(これもすごい偶然だ!)だった。ラストの曲が終わると、「ただ今の番組はジョン・レノンが射殺される前に収録したものです」というニュース速報が流れ、私は一瞬「???」、続いて「何を悪い冗談言うてんねん!」と思いつつも一抹の不安から7時のNHKニュースを見た。そこで私の目に飛び込んできたのは「ジョン・レノン射殺」の大きな文字と、騒然とするニューヨークのダコタ・ハウス周辺の映像だった。「時間が止まった」という表現があるが、その時の私はまさにそんな感じだった。その後のことはハッキリとは覚えていないし、思い出したくもない。それ以降私は「ダブル・ファンタジー」を人前では聴けなくなってしまった。どうしてもあの日の悪夢が甦ってきて感情が昂ぶってしまうからだ。そしてそれと同様のことがジョンへの追悼曲にもいえる。あの事件以降、幾多のアーティストがジョンへの追悼曲をレコーディングした。ポールの「ヒア・トゥデイ」を始め、エルトン・ジョンの「エンプティ・ガーデン」、クイーンの「ライフ・イズ・リアル」etc... 当然とはいえ悲壮感溢れるバラッド調の曲ばかりで余計に気が滅入ってしまう。ジョンならきっと茶目っ気たっぷりにこう言うだろう...「おいおい、そんな湿っぽいのじゃなくて、もっとアップ・テンポなヤツを頼むよ」と。私も同感だ。そこでジョージ・ハリスンの「過ぎ去りし日々」である。この曲はビートルズ時代の映像をふんだんに使ったビデオ・クリップの編集が絶妙で、これを見て涙しないビートルズ・ファンはいないだろう。録音にはポールとリンゴも参加しているし、歌詞の中に「愛こそはすべて」や「イマジン」といった言葉も登場するなど、ジョージの作品中最もビートルズ・テイストに溢れた1曲といえるだろう。そんなジョージも今はもういない。ファブ・フォーもついにポールとリンゴの2人だけになってしまったが、彼らが残してくれた音楽は永遠に不滅なのだ。

George Harrison All Those Years Ago