shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト / アニー・ロス

2010-04-29 | Standard Songs
 テレビドラマを見ていてたまたま自分の好きな曲が印象的なシーンで効果的に使われていたりすると嬉しいものである。だから大好きなスタートレック・シリーズの中でも一番のお気に入りである「スタートレック・ディープ・スペース・ナイン」にジェームズ・ダーレンがヴィック・フォンテーンというホログラム・シンガー・キャラで登場し、ストーリー展開にピッタリ合ったスタンダード・ナンバーをチョイスして次から次へと歌ってくれた時は大喜びしたものだ。さすがアメリカのドラマ作りは奥が深いわいと感心したものである。そんなヴィックの数々の名唱の中でも一番印象に残っているのが最終回に宇宙ステーションのクルーの別れの宴で歌われた「ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト(邦題:今宵の君は)」である。
 この曲は元々1936年のミュージカル映画「有頂天時代」の中で “今宵の君を愛せるなら他には何もいらない” とフレッド・アステアが歌い、アカデミー賞を受賞したバラッドの逸品だが、私は蕩けるようなアニー・ロスのヴァージョンを聴いてその優しさ溢れる旋律と愛情がヒシヒシと伝わってくる歌詞をすっかり気に入り、それ以降この曲が入った盤はすべて買うようになった。流れるようなメロディーとコード進行のせいか、モダン・ジャズのインストではスタン・ゲッツ、アート・ペッパー、ジョニー・グリフィン、ロリンズ&モンクなど、アップテンポで快調に飛ばす名演が多いが、今日は敢えてヴォーカル物で、しかも多分私しか選ばないであろう極私的愛聴盤を5つご紹介;

①Annie Ross
 アニー・ロスの初録音で、22才という若さのせいか、とにかく初々しくて可愛いところがいい。その甘~い歌声は聴いてるこっちがフニャフニャと腰砕けになっちゃいそうなくらい魅力的。後年の姐御肌のロスとは別人のようだ。バックがジョン・ルイスの代わりにブロッサム・ディアリーが入ったMJQというのも珍しいし、何よりミルト・ジャクソンの歌伴というのが貴重だと思う。
アニー・ロス


②June Christy
 ジューン・クリスティーのケントン楽団退団直後の SP 音源を集めたCD「デイ・ドリームズ」収録のこのヴァージョン、何とスキャットのみで歌い切ってしまうという大胆さ、40年代においてここまでやってしまう斬新さに改めて彼女のモダンなジャズ・フィーリングを実感させられる。スイングせずに何のジューン・クリスティーか、と言いたくなるようなカッコ良さだ。
ジューン・クリスティ


③The Dinning Sisters
 癒し系女性コーラス・グループで愛聴しているのがこのディニング・シスターズ。綴りにnが2個あるので決して “ダイニング” ではない(←食堂じゃあるまいし...笑) コレは43年録音のSP音源で、ピッタリ息のあったコーラス・ハーモニーが生み出すノスタルジックな響きにウットリ聴き入ってしまう。寝る前に聴くと安眠できそうな名唱だ。
ディニング・シスターズ


④Sara Lazarus
 以前このブログでも取り上げたサラ・ラザラス盤の中でも一番好きなトラックがコレ。もちろんサラのヴォーカルもエエのだが、それに輪をかけて素晴らしいのがバックに回って歌心溢れるプレイを聴かせるビレリ・ラグレーンだ。特に1分35秒から始まる変幻自在のソロは何度聴いても鳥肌モノ。ここまできたらもうジャンルもヘッタクレもない、音楽ってホンマにエエよなぁ...と思わせてくれる至福の3分16秒である。
サラ・ラザラス with ビレリ・ラグレーン


⑤James Darren (Vic Fontaine)
 筋金入りのスタートレック・ファンとしては、「今宵の君は」と言えばやはりジェームズ・ダーレンのクルーナーぶり(←ホンマに渋いッ!!)が存分に発揮されたこのシーンを忘れることはできない。特に鼻筋に独特の皺があるという設定のベイジョー人、キラ少佐(赤い軍服の女性)に向かってさりげなく And that laugh that wrinkles your nose と歌うくだり(3分50秒あたり)なんか、テレビを見ていて思わず唸ってしまった。バックのトランペットもエエ味出してるなぁ...(≧▽≦)
DS9 - The Way You Look Tonight
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Couldn't Stand The Weather / Stevie Ray Vaughan

2010-04-27 | Rock & Pops (80's)
 ロック・ファンはギターのサウンドが大好きだ。私もその例に漏れずエディー・ヴァン・ヘイレンやブライアン・メイ etc、お気に入りのギタリストが何人かいるが、そんな中でも “ギター職人” というか、 “ギター馬鹿一代” の称号が最も相応しいギタリストが SRV ことスティーヴィー・レイ・ヴォーンだ。
 テキサスのローカル・バンドでくすぶっていた彼の名を一躍有名にしたのは1983年、デヴィッド・ボウイのアルバム「レッツ・ダンス」への参加だった。特にタイトル曲で聴けるホットなソロが絶品だったが、私はてっきりベテランのブルース・ギタリストが弾いているのだと思い込み、当時無名だった彼に注目することもなくスルーしてしまった。
 そんな私が初めて彼の事を意識したのは翌1984年、「ベスト・ヒット・USA」で小林克也さんがこの 2nd アルバム「クドゥント・スタンド・ザ・ウェザー」から⑥「コールド・ショット」を紹介された時だった。 MTV を意識したベタなストーリー展開のビデオも面白かったが、何よりも私が魅かれたのは絶妙なグルーヴを生み出すギター・カッティングのカッコ良さで、顎が落ちそうなシャッフル・ビートに乗って淡々と渋いヴォーカルを聴かせるスティーヴィー・レイにすっかり参ってしまった。特に2分14秒あたりからの魂に語りかけてくるような説得力溢れるソロは圧巻で、私はその翌日急いでタワレコへと走ったのだった。
 このアルバムには全8曲が収められており、冒頭の①「スカットル・バッティン」からいきなり火の出るようなロックンロールが炸裂、これがもうめちゃくちゃカッコエエんよね(^o^)丿 これだけ野太い音でスピード感溢れる縦横無尽なプレイが出来るギタリストって他には誰も思いつかない。ガッツ溢れるソロに言葉を失うアルバム・タイトル曲②「クドゥント・スタンド・ザ・ウェザー」、ギターもヴォーカルも渋さがタマラン③「ザ・シングズ・アイ・ユースト・トゥ・ドゥ」、ジミヘンの鬼気迫るカヴァー④「ヴードゥー・チャイル」と、あっという間にA面が終わってしまう。
 B面は私が SRV にハマるきっかけとなったシャッフルの逸品⑤「コールド・ショット」でスタート。中間部のソロで、弾いて弾いて弾きまくる、弾き倒すと言ってもいいくらいの入魂のプレイは何度聴いても圧倒されてしまう。ジミー・リードのスロー・ブルース⑥「ティン・パン・アレイ」では甘~い音色でこれでもかと続くブルージーなフレーズの連続技が鳥肌モノで、彼のブルースへの深い造詣と愛情がヒシヒシと伝わってくる名曲名演になっている。⑤と同様にシャッフル・ビートを巧く使ったブルース・ロック⑦「ハニー・ビー」はまさに安心の SRV 印と言う感じで文句ナシ。リズムに切り込んでいくタイム感覚が絶品やねぇ(≧▽≦) ラストの⑧「スタングズ・スワング」は何と4ビート・ジャズなインストだ(゜o゜) チャーリー・クリスチャンを想わせるようなライト・タッチ奏法であくまでもジャジーにスイングするあたり、彼の懐の深さを物語っている。途中のギターとサックスの掛け合いもお見事という他ない。
 ロックンロールからブルース、シャッフル、そしてジャズまで、彼のギター奏法の様々なヴァリエーションが楽しめ、どこを切ってもホットなソロが飛び出してくるこのアルバム、ギターを弾くために生まれてきた男、 SRV の全作品中でも最も愛聴している1枚だ。

Stevie Ray Vaughan - Cold Shot


Stevie Ray Vaughan - Scuttle Buttin'


Tin Pan Alley (AKA Roughest Place In Town)

Enter Sandman / Metallica

2010-04-25 | Hard Rock
 4月に入って3週間以上が過ぎ、何とか新しい環境にも慣れてきた。仕事自体はチョロイのだが、何せ1日で往復60kmを通勤せねばならない。最近は超早起きして道が混む前に京奈和道に乗り、鬼神のような走りでタイムアタック、当初は片道75分かかっていたものをコンスタントに50分を切るまで時間短縮するのに成功した。毎日がモナコ・グランプリみたいなモンである(笑) 私はただでさえバラッドよりもアップテンポの曲が好きなのだが、高速ドライヴィング時の BGM は絶対にノリの良いロックンロールと決めているので、毎日2時間近くイケイケ・オラオラ系ロックを聴いている計算になる。昭和歌謡も太田裕美3連発で一段落したので、今日は大好きな胸毛系ハードロックに戻ってメタリカでいこう(←姐さん、ごめんなさい...笑)。
 一見同じように見える胸毛系ロックでも、私はキャッチーなハードロックが大好きで、ただウルサイだけのヘヴィーメタルが嫌いである。こんなことに拘ってるのは自分だけかなぁと思っていたら、モトリー・クルーやシンデレラのメンバー達がインタビューの中で “ヘビメタと呼ばないでくれ。俺たちはロック・バンドなんだ!” と言っているのを聞いて我が意を得たりと思ったものだ。ましてや嫌いなヘビメタの中でも特に粗野で、メロディーもヘッタクレもないスラッシュ・メタル系のバンドなんか全くもって論外で、世間で “スラッシュ・メタル四天王” と呼ばれるメガデス、アンスラックス、スレイヤー、そしてこのメタリカも嫌いだった。
 しかしそんなスラッシュ・メタル嫌い、メタリカ嫌いの私を屈服させた名曲名演が1991年にリリースされたこの「エンター・サンドマン」だ。初めて聞いたのは確かラジオのトップ40番組でDJのスコット・シャノンが “メタリカの新曲、めちゃくちゃカッコイイぜ~” みたいなことを言ってこの曲をかけた時だったと思う。あのメタリカがトップ40ってか?そんなアホな!と思って聞いてみてビックリ(゜o゜)  スリリングなイントロのバスドラ、凄まじいグルーヴを生み出すギター・リフ、強烈無比なフックを持ったメロディー、ただ叫んだりがなったりするしか能のない凡百のスラッシュ・メタルとは激しく一線を画すエモーショナルなヴォーカルと、それまでの私が彼らに対して抱いていたネガティヴなイメージを木端微塵に打ち砕くようなカッコ良さ(≧▽≦) とことんヘヴィーでありながらもメロディアスでグルーヴィーという、まさに非の打ち所のないロック曲に仕上がっており、その殺気すら感じさせるアグレッシヴで重量感に満ちたサウンドが私はいっぺんに気に入ってしまった。
 タイトルに出てくる “サンドマン” というのは “おとぎ話の中で子供の目に砂をまき眠りを誘う(←眠くなると目をこするでしょ?)という眠りの精” 、つまり睡魔のことで、要するにこれは “メタリカ版子守唄”(←こんなん聴いて寝れるかよ...笑)なのだ。現に3分26秒あたりから挿入されている小さな子供の就寝前のお祈りなんか実にぴったりハマッているし、サビの最後の “We’re off to never never land” (ネヴァー・ランド=夢の国へ行くんだよ)というのも面白い。それと、歌詞とは全然関係ないが、タモリの空耳アワーでやってた “千代田生命に行こう~♪” (←CDでは1分22秒あたり)にはワロタ(^o^)丿
 その後、アルバムの他の曲も色々聴いてはみたものの正直言ってイマイチ楽しめず、結局メタリカはこのCDシングル1枚しか持っていない。メタリカのサウンドでビートルズ・ナンバーをカヴァーするというパロディー・バンド、ビータリカは大好きなので、音楽のジャンルや演奏スタイルの問題ではなく、やはり “名曲が名演を呼ぶ” のだなぁ...と実感した。

METALLICA - Enter sandman live


【おまけ・その①】ビータリカ(←大ファンです!)による「タックスマン」のパロディーをどうぞ
Beatallica - Sandman


【おまけ・その②】タモリの空耳アワーでジャンパーを取ったメタリカ関連のネタをどうぞ


太田裕美・ゴールデン☆ベスト (Pt. 3)

2010-04-24 | 昭和歌謡
 1977年から78年にかけての太田裕美は非常にクオリティーの高いシングルを連発し、ヒット・メーカーとしての大衆性とニューミュージックへの傾倒によるアーティスティックな志向性が非常に高い次元で絶妙なバランスを保っていた。ポップでありながら何度聴いても飽きさせない彼女独自の歌世界は、数カ月後にはキレイサッパリ忘れ去られてしまうような凡百の “使い捨て感覚のヒット曲” とは激しく一線を画しており、前回も書いたように私はこの時期の彼女が一番好きだった。
 そんな彼女のシングル曲の雰囲気がガラッと変わったなぁ...と感じたのが78年12月にリリースされた⑬「振り向けばイエスタデイ」。もちろん相変わらずの舌っ足らずなヴォーカルは健在だったが、シングル・ヒット曲に必要不可欠なウキウキワクワクドキドキ感が非常に希薄で、 “これがあの「ドール」に続くシングルなん?” と当時は面食らったものだった。これは曲の良い悪いではなくシングル向きかどうかということで、私の中では “ニューミュージック系アーティストの、アルバムの中でキラリと光る隠れ名曲” という印象だ。この傾向は同日発売されたアルバム「海が泣いている」でもより顕著に表れており、当時流行っていた “ロス録音で海外ミュージシャン参加” が売り物のこのアルバムには何とあのリー・リトナーやジミー・ハスケル(←S&Gの「明日に架ける橋」のオーケストレイション・アレンジを担当した人)らが参加、哀愁舞い散る歌謡曲とは対極に位置するような乾いたアメリカン・サウンドに仕上がっていた。
 ⑬に続く⑭「青空の翳り」も良い曲だったがやはりシングル曲としては地味すぎるというかヒット・ポテンシャルは弱く、ヒット・チャート的にも⑬以降はガクンと急降下して50位内に入ることすらなく、売り上げも3万枚を切ってしまった。この流れは阿木燿子&宇崎竜童という当時の売れっ子コンビを起用した⑮「シングル・ガール」でも変わらず、アレンジに萩田光雄を起用して初期の作風を再現したような彼女の自作曲⑯「ガラスの世代」をもってしても凋落傾向に歯止めはかからなかった。⑮も⑯も強烈なフックにはイマイチ欠けるものの私的には決して悪い曲とは思えず、これらが「ドール」に続いて出ていたら又違った展開になっていたように思う。
 そんな彼女が再び表舞台に返り咲いたのが1980年リリースの⑰「南風~サウス・ウインド~」だった。この曲はキリンオレンジのCM曲に起用されたこともあり、久々にスマッシュ・ヒットを記録。 “君は光のオレンジ・ギャル~♪” のフレーズが耳に残るキャッチーなナンバーだ。続く⑱「黄昏海岸」も⑰同様に彼女には珍しいメジャー調のポップ・ソングで、CMタイアップがなかったせいか⑰ほどヒットはしなかったものの、彼女の魅力を存分に引き出すアレンジが施されていた。このあたりは松本隆、筒美京平と共に初期の彼女を支えた名アレンジャー萩田光雄の腕の冴えだろう。
 1980年の暮れ、私は目前に迫った大学受験の勉強に追われる地獄のような日々を送っていたが、ある時たまたま気分転換のつもりでつけたラジオから流れてきたのがこの⑲「さらばシベリア鉄道」だった。その瞬間、私の耳はスピーカーに吸いつき、その疾走感溢れる流麗なメロディーにすっかり心を奪われてしまった。大瀧詠一が彼女に贈り、後に「LONG VACATION」でセルフ・カヴァーした大名曲で、私にとっては「木綿」をも凌ぐ彼女の最高傑作なんである。筒美京平を想わせるようなインパクト抜群のイントロから始まって、想像力をかきたてるような細やかな器楽アレンジが寒風吹きすさぶシベリアの大雪原をイメージさせ、細部に至るまで無駄な音が一つもない見事なオケと彼女の素朴で透明感溢れる歌声が絶妙にマッチして奇跡的な名曲名演になっているのだ。曲想の元ネタになっているのはジョン・レイトンの「霧の中のジョニー」だが、器楽アレンジの面ではスプートニクス「空の終列車」あたりの影響大と見た。それを裏付けるかのように1分40秒からボー・ウィンバーグ降臨!(笑)と言いたくなるようなギター・ソロが炸裂、これは北欧インスト・マニアとして知られる大瀧氏の遊び心というか、スプートニクスへの愛、オマージュだろう。信じがたいことにオリコン・チャートでは70位止まりだったのだが(←所詮日本のヒット・チャートなんてそんなモン...)、この曲はリリースから30年経った今でも人々に愛され、聴き続けられている。まさに “記録” よりも “記憶” に残るヒット曲と言っていいと思う。

CM キリンオレンジ 唄:太田裕美「南風」


南風 SOUTH WIND / 太田裕美


太田裕美 さらばシベリア鉄道


空の終列車 (Le Dernier Train De L'espace)
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太田裕美・ゴールデン☆ベスト (Pt. 2)

2010-04-21 | 昭和歌謡
 太田裕美は④「木綿のハンカチーフ」の大ヒットの後、④と同じく男女の対話形式を用いた⑤「赤いハイヒール」、オー・ヘンリーの同名小説を基にしたドラマチックな⑥「最後の一葉」、歌謡曲からニューミュージックへと大きく舵を切った⑦「しあわせ未満」、今の耳で聴いても古臭さを感じさせない裕美流ボッサ⑧「恋愛遊戯」、初期の集大成的名曲⑨「九月の雨」と、様々なタイプの曲を歌いながらも着実に独自の歌世界を完成させつつあった。
 1977年9月リリースの⑨で旧来の歌謡曲とは激しく一線を画すザ・ワン・アンド・オンリーな世界へと踏み出した彼女がわずか3ヶ月のインターバルを置いてリリースしたのが⑩「恋人たちの100の偽り」だった。思わずポール・サイモンの「恋人と別れる50の方法」を思い出してしまうようなインパクトのあるタイトルである。京平さんお得意の風雲急を告げるようなストリングスのイントロがカッコイイこの曲、 “嘘つくの下手ね~♪” から一気にたたみかけ、“さよならとたったひとつの嘘が言えない~♪” でストン!と落とす見事な構成にはもう参りましたという他ない。歌詞良し、曲良し、ヴォーカル良しと三拍子揃った名曲名演だ。そうそう、歌詞と言えば、当時は “ゼラニウム” が何となく化学物質みたいな感じがして(←多分プルトニウムと間違えてた...笑)、意味がイマイチ分からないまま聴いていたが、花の名前やったんやと最近になって知った。あ~恥ずかし(>_<)
 ⑪「失恋魔術師」は彼女のシングル曲としては初めて筒美京平以外の手になる作品となったのだが、これが何と吉田拓郎というから驚きだ。実は彼女の6th アルバム「背中合わせのランデブー」が彼女の歌謡曲離れを象徴するかのような “A面拓郎曲、B面裕美の自作曲” という一種のコラボ盤で、そこからシングル・カットされたのがこの曲というワケだ。拓郎というとどうしても “フォーク” というイメージが強いが、キャンディーズの「やさしい悪魔」と同じく、ポップに徹した時の拓郎の紡ぎ出すキャッチーなメロディーはまさに絶品で、それが彼女の軽やかでキュートな歌声と絶妙にマッチし、裕美流ストーリーテリングの妙を存分に味わえる逸品になっている。バスの中で失恋魔術師のオジサンに声をかけられ、バスを降りても付きまとわれ(←ストーカーやん!)、待ち合わせの彼が中々現れず、そのオジサンにあっちへ行ってと言っていると彼が遅れて現れ、一件落着でオジサンの負けという何ともユニークな発想の歌詞が実に楽しい。曲の随所で聴かれる細やかな器楽アレンジも見事にキマッたキラー・チューンだ。
 ⑨から始まった名曲怒濤の4連発の最後を飾るのが⑫「ドール」で、まずは何と言ってもイントロのオモチャのピアノの音に耳が吸いつく。それにしても一体誰がこんな楽器選択を思いついたのだろう?繰り返すがバリバリのヒット曲にオモチャのピアノである。童謡ではないのだ。普通ならあり得ないチョイスだが、にもかかわらずこのピアノの音が忘れ難いインパクトを残し、「ドール」といえばオモチャのピアノが奏でるイントロが即座に思い浮かぶようになる。この発想、このアレンジはまさに天才の仕事である。曲のテーマは男に捨てられた不幸な女の哀しい物語で、舞台設定は異国情緒溢れる横浜... 京平先生の十八番だ。マイナー→メジャー→マイナーと転調を繰り返しながら疾走感溢れるメロディーに乗って哀しみオーラ全開のフレーズが次から次へと登場、特に “涙で瞳が青く染まった ドール、ドール、ドールゥ~ ヨコハマ・ドール~♪” と一気呵成にたたみかける展開は圧巻だし、曲全体が醸し出すエキゾチックな薫りもたまらない(≧▽≦) 「木綿のハンカチーフ」のように邦楽史上に燦然と輝く名曲名演、というのとは又違う妖しげな魅力を持った、クセになる1曲だと思う。

恋人たちの100の偽り~太田裕美さん


失恋魔術師・・・太田裕美


ドール ~ 太田裕美さん

太田裕美・ゴールデン☆ベスト (Pt. 1)

2010-04-18 | 昭和歌謡
 ビートルズとハードロック一色だった私の中学・高校時代、邦楽でよく聴いていたのはキャンディーズと太田裕美だった。アイドル的な目線で熱を上げていたキャンディーズに対し、太田裕美は純粋に歌そのものにハマっていた。当時の彼女の立ち位置は歌謡界に身を置きながらニュー・ミュージック系の洗練された楽曲を歌うという実にユニークなもので、他のアイドル歌手達とは激しく一線を画していた。特に松本隆=筒美京平ラインが生み出す楽曲の数々が彼女の舌っ足らずな歌声を得て一種独特な歌世界を構築しており、まるで1曲1曲が短編小説のように感じられ、シングルが出るたびにセッセと買っていた。もちろんアルバムも欠かさず買ってはいたが、やはり彼女の場合はシングル盤の方が断然面白い。時期的に言うと「木綿のハンカチーフ」から「さらばシベリア鉄道」あたりまでで、よくもまあこれだけヴァラエティーに富んだ魅力的な作品を次から次へと連発できるものだと感心していた。ということで今回はリアルタイムで聴いてきた彼女のシングル曲について書いてみたい。 CD で言うと「太田裕美・ゴールデン☆ベスト ~コンプリート・シングルス・コレクション~」の Disc-1 である。
 ①「雨だれ」、②「たんぽぽ」、③「夕焼け」とデビューからの3曲はピアノの弾き語りという目新しさはあったものの、基本的にはアイドル歌謡と言っていい路線だった。それが④「木綿のハンカチーフ」という邦楽史上屈指の大名曲で一気にブレイク、特にあの駆け上がるようなストリングスのイントロで聴き手に高揚感を抱かせ、一気に連れ去っていくところなんかもう筒美京平の天才が如何なく発揮されている。あゆの「太陽は泣いている」もそうだったが、まさに“イントロの魔術師”と言いたくなるような吸引力だ。この曲に対する思いのたけは確かこのブログを始めた頃に延々と書き綴った記憶があるので興味のある方はそちらをご覧下さい。
 ④に続くのは “ねぇ 友達なら 聞いてくださる? 淋しがりやの 打ち明け話~♪” で始まる⑤「赤いハイヒール」で、本当にさしで彼女の話を聞いているような錯覚に陥りながらストーリーに引き込まれていく。心にス~ッと沁み入ってくるようなピアノのイントロに涙ちょちょぎれる⑥「最後の一葉」も彼女の歌声を聴いていると “レンガ塀に描かれた木の葉の絵” が目に浮かんでくるようで、歌謡曲やニュー・ミュージックの歌手というよりはむしろ一種のストーリーテラーという趣きである。エンディングで “あなたが描いた絵だったんです~♪” に続いてピアノ、コーラス、ストリングスが一致団結して盛り上げる大仰なアレンジが絶妙だ。
 ⑦「しあわせ未満」は重厚な⑥とは正反対の実に軽やかな旋律を持った佳曲だが、歌詞の方はかなりヘヴィーで、 “僕の心のあばら屋に住む君が哀しい” というフレーズを初めて聞いた時はギクリとした。⑧「恋愛遊戯」は当時としては珍しいボッサ調のナンバーで、起伏の少ないメロディーのせいかそれほどヒットはしなかったが、明らかに他の歌謡曲とは空気感を異にしており、彼女とその制作スタッフ陣がこの曲あたりからニュー・ミュージックの世界に軸足を移し始めたように思う。
 ⑨「九月の雨」は④を別格とすれば初期の彼女の最高傑作と言っていいような名曲だ。④とは逆に今度は駆け下りるようなピアノのイントロが耳に突き刺さり、 “車のワイパー 透かして見てた 都会にうず巻く イルミネーション~♪” というそれまでの彼女の世界にはなかったような大人っぽい歌詞が、哀愁を湛えた旋律に乗って彼女のファルセット・ヴォイスで歌われるのだからたまらない(≧▽≦) 随所に聴ける細やかな器楽アレンジもまさに絶品と言ってよく、筒美京平の天才ここに極まれりといった感じがする。私的にはこの⑨が発表された1977年9月から翌78年7月の⑫「ドール」までのシングル4枚が、歌詞の物語性と曲のポップ性が最も高い次元でバランスされ、ストーリーテラーとしての彼女の絶頂期と言っていいと思っているのだが、そのあたりの話は次回に... (つづく)

九月の雨~太田裕美さん


最後の一葉~太田裕美さん
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プレイバック・パート2 / ノーランズ

2010-04-15 | Cover Songs
 前回は大好きなアン・ルイスが入っている山口百恵カヴァー・アルバムをご紹介したが、 “百恵トリビュート” としては実はもう1枚愛聴している盤がある。純粋な昭和歌謡からは逸れてしまうが、何とあのノーランズが1991年にテイチクからリリースした逆カヴァーの珍盤「プレイバック・パート2」である。
 ノーランズといえば我々40代の人間にとっては非常に懐かしい存在で、1980年に「ダンシング・シスター」を大ヒットさせ、その後も「セクシー・ミュージック」etc のヒットを飛ばし、特に日本で人気が高かったイギリスの姉妹グループだ。1982年以降はヒットらしいヒットもなく音楽シーンから姿を消していたが、1990年代に入って山口百恵のカヴァー盤「プレイバック・パート2」、小泉今日子のカヴァー盤「なんてったってアイドル」、そしてキャンディーズや中森明菜ら数組のシンガーをカヴァーした「淋しい熱帯魚」と逆カヴァー・アルバムを連発し、日本限定ながら見事カムバックを果たしたのだ。この “逆カヴァー3部作” の中では、二匹目のドジョウ狙いがミエミエの「なんてったってアイドル」と統一感も必然性も何もない「淋しい熱帯魚」の2枚に比べ、最初に出た「プレイバック・パート2」が断トツに素晴らしい。
 トラックリストは①「イミテーション・ゴールド」、②「横須賀ストーリー」、③「秋桜」、④「プレイバック・パート2」、⑤「夢先案内人」、⑥「ロックンロール・ウィドウ」、⑦「ひと夏の経験」、⑧「いい日旅立ち」、⑨「乙女座宮」、⑩「さよならの向こう側」という全10曲。まずはインパクトの強い①とたたみかけるようにアップテンポの②で “おぉ、コレはオモロそうや(^o^)丿” とリスナーの興味を引き、箸休めのようにスローな③で一息つかせ、百恵の代名詞というべき④で再加速... 実に巧妙に考え抜かれた曲配置である。聴き慣れた歌謡曲のヒット・ナンバーが次から次へと英語で歌われるのが実に新鮮だ。
 ⑤、⑥、⑦と原曲のイメージを壊さずに巧くノーランズ・ヴァージョンへと仕上げられているし、そろそろバラッドが欲しいなぁ...と思うこちらの気持ちを見透かしたかのように名曲⑧が颯爽と登場、しっとり感溢れる歌声で癒される。軽快な⑨を経てもうこれしかないというクロージング・ナンバー⑩でシメるという実に見事な流れである。アルバム1枚まるごと一気呵成に聴けてしまい、38分23秒がアッという間に過ぎ去っていく。
 このアルバムは2005年に百恵引退25周年を記念して新たにメンバー二人のコーラス・ハーモニーをオーヴァーダブし、ジャケットも差し替えて「ノーランズ・シング・百恵2005」としてソニーから再発されているが、どう考えてもエンディング曲としか思えない⑩を1曲目に配するという滅茶苦茶な曲順に改悪されているので、そっちしか知らない方はぜひこのオリジナル盤の曲順で聴いてみることをオススメする。「ビートルズ赤盤」や「自家製ダブル・ファンタジー」の時にも書いたが、曲の配置というのはアルバムのイメージを決定付ける重要な要素なのだ。
 ノーランズと山口百恵という意表を突く組み合わせで成功したこのアルバム、これから暖かくなってきて友達と遠出のドライヴに行く時なんかにさりげなく BGM として流せばウケること間違いなしの1枚だ。

NOLANS - PLAYBACK Part2


Imitation Gold


MOMOE TRIBUTE ~Thank You For... Part 2~

2010-04-13 | Cover Songs
 そろそろ60年代歌謡も出尽くした感があるので(←まさかザ・ピーナッツ28連発とか、江利チエミ20連発とかするワケにもいかへんし...笑)、同じ昭和歌謡でも70年代、それも王道といえる山口百恵ネタでいきたい。
 以前彼女のコンプリート・ベスト盤を取り上げた時にも書いたと思うが、私はアイドル時代の彼女には特に関心は無い。曲は普通の歌謡曲の域を出るものではなかったし、アイドルとしても自分の好みではなかったからだ。私が山口百恵というシンガーに魅かれるようになったのは一にも二にも「イミテーション・ゴールド」や「プレイバック・パート2」を始めとする “歌謡ロック” 路線の楽曲を聴いてからだった。彼女こそがロックのスリルと歌謡曲のメロディーを併せ持つこの “歌謡ロック” というジャンルを切り開いてきたパイオニアなのであり、そのあたりはもっと評価されていいと思う。「ひと夏の経験」や「いい日旅立ち」、「秋桜」だけが百恵ではないのだ。
 当然、音楽界にも彼女をリスペクトするアーティストが多く、これまで何枚かトリビュート・アルバムが出ているが、唯一無比な世界を構築している彼女の楽曲を歌いこなすのは一筋縄ではいかないようで、中には “何じゃいコレは?” と言いたくなるような盤もあるが、そんな玉石混交の中で私が気に入っているのがこの「MOMOE TRIBUTE ~Thank You For... Part 2~」である。因みに Part 1 はアホバカ CCCD なので要注意、ジャケットの雰囲気が似ているので間違って買ってしまったら燃えないゴミの日に出すしかない(笑)
 私がこの盤を買った理由はただ一つ、大好きなアン・ルイスの歌う「イミテーション・ゴールド」が入っていたからである。百恵の歌謡ロック路線を引き継ぎ、80年代に入って「ラ・セゾン」(←作詞:三浦百恵、作曲:沢田研二という凄い組み合わせ!)や「六本木心中」で完成させたのが他でもないアン・ルイスなのだ。これ以上のキャスティングは考えられない。ネットで試聴すると予想を遥かに超えるようなロックなサウンドがインパクト抜群だったのでこの1曲だけでも買いだと思い、ヤフオクで検索すると最安値で200円... レンタルするのと変わらんぐらい安いので思わず即決した。
 全10曲一気通聴してみてやはりアン・ルイスが圧倒的に良かった。とにかくエッジの効いたギターのイントロからハードでへヴィーなサウンドをバックに低いキーで歌うアンがたまらなくカッコイイ(≧▽≦) 私がアンの最高傑作と信ずる「REBIRTH」に入っていてもおかしくないような歌謡ロックの王道サウンドが圧巻だ(^o^)丿 
 アンの次に気に入ったのが⑦「美・サイレント」(大橋純子)だ。コレがもうオルガンバー・サバービアなグルーヴが支配するノリノリのサウンドで、トランペットは飛来するわ、スパニッシュ・ギターは暴れ回るわと、もうやりたい放題。それでいて原曲の良さを壊さずに新たな魅力を引き出す斬新で見事なアレンジで、彼女の力強いヴォーカルがこの曲を新たな次元へと昇華させているように思う。
 未知のアーティストでは疾走感溢れる⑤「ちっぽけな感傷」(スネオヘアー)と素直な歌い方が好感度抜群な②「いい日 旅立ち」(I WiSH)が良かった。逆に③「横須賀ストーリー」(RAG FAIR)はいかにも今風ののゴスペル・コーラスとして曲が処理されており、私の最も苦手な J-Pops サウンドになっているのでコレはパス。若い人なら抵抗なく聴けるかもしれないが、私はこの手の薄っぺらい音楽は生理的にダメだ。
 それ以外は可もなく不可もなしという感じで、アクの強さが胃にもたれる①「さよならの向こう側」(鈴木雅之)、歌はエエけどアレンジがイマイチな④「曼珠沙華」(工藤静香)、悪くはないけどオリジには遠く及ばない⑥「パールカラーにゆれて」(原田知世)、まったくジャズ・シンガーと思えないような重苦しい雰囲気の⑨「秋桜」(ケイコ・リー)、スカ・ビートを使ったアレンジの方向性がチョット違うような気がする⑩「愛の嵐」(三原じゅん子)、ベテランの味だけで聴かせてしまう⑪「夢先案内人」(柳ジョージ)といった塩梅だ。まぁさすがに定価の3,059円も出して買う盤では決してないが、ちょっと変わった百恵カヴァーをお探しの方は一度レンタルして聴いてみるのもいいと思う。

イミテイション・ゴールド/ アン・ルイス


美・サイレント
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灼熱のミニスカ・ダイナマイト!! / 黛ジュン

2010-04-11 | 昭和歌謡
 60年代ガールズ歌謡を語る上で黛ジュンの存在を避けて通ることはできない。彼女こそが私の大好きな “一人GS” の第1号と言われており、彼女の出現によってそれまでの純粋な歌謡曲にロック・サウンドが本格的に導入され、その後の中村晃子やいしだあゆみといった歌謡ポップス・シンガー百花繚乱の時代を迎えることになったのだ。
 前にも書いたように私がヒット曲で覚えているのはピンキラ「恋の季節」からなので、当然ながらリアルタイムで彼女の歌を聴いた記憶がなく、2年前に昭和歌謡に興味を持ってから後追いで聴き始めたのだが、ベスト盤 CD が何種類も出ていて何を買うか迷った挙句、有名なヒット曲とカヴァーをほぼ網羅したお買い得盤「灼熱のミニスカ・ダイナマイト!!」をチョイス。全40曲入りの2枚組で彼女のヒット曲を完全網羅している上に、私の好きな曲のカヴァーも数多く収録されており、特にビートルズ・ナンバーが3曲も入っているのが嬉しい(^.^)
 彼女は “ビートルズが歌えて美空ひばりのこぶしを持つ” 稀有なシンガーで、その個性的な歌声とパンチの効いた歌唱スタイルがロック・コンボ風アレンジと見事にマッチして大ヒットしたのが東芝からのデビュー曲A①「恋のハレルヤ」だった。サビのメロディーもめちゃくちゃ覚えやすく、ついつい “ハレルヤァ~♪” と口ずさんでしまう。伴奏のブラックストーンズのビートがふらつくのも何のその、見事な一人二重唱を聴かせるところなんかめっちゃカッコイイ(^o^)丿
 スプートニクス風のイントロに涙ちょちょぎれる哀愁歌謡の 2nd シングルA③「霧のかなたに」、意表を突いたコーラスのイントロから絵に描いたような一人GSへとなだれ込み、ファズ・ギターが要所要所をビシッとキメる 3rd シングルA⑥「乙女の祈り」、レコード大賞を受賞した “ハワイアン・ロック” の 4th シングルA⑪「天使の誘惑」と、ヴァラエティーに富んだシングル4連発は当時東芝でビートルズを担当していた高嶋ディレクターのアイデアだという。曰く “ビートルズのリリース方法にヒントを得、同じタイプの曲を並べないようにした。” とのこと。とにかくシングル曲ではこの4曲と、そこはかとなく漂う哀愁がたまらないB⑤「雲にのりたい」が断トツに素晴らしい。
 カヴァー曲ではビートルズのA⑧「キャント・バイ・ミー・ラヴ」とA⑭「ツイスト・アンド・シャウト」が筒美京平アレンジでスタジオ録音、B②「デイ・トリッパー」が宮川泰アレンジでライヴ録音と、それぞれのアレンジャーの個性が出たヴァージョンに仕上がっているが、どちらも彼女の抜群のリズム感を存分に楽しめるトラックで、言うことナシの名曲名演だ(^o^)丿 それ以外にも、弾けるようなダイナミズムに圧倒されるA④「ダンス天国」、ミコたんを彷彿とさせるA⑩「砂に消えた涙」、余裕しゃくしゃくで貫録さえ感じさせるヴォーカルが圧巻なA⑳「フジヤマ・ママ」やB⑩「ステューピッド・キューピッド」と、彼女の持ち味を活かす楽曲が選ばれているあたりにも洋楽担当ディレクターの手腕が光っている。
 邦楽のカヴァーではまるで自分のオリジナル曲であるかのように見事な歌声を聴かせるB④「黄昏のビギン」やB⑦「夕陽が泣いている」なんかめっちゃエエのだが、やはり美空ひばりのカヴァーB⑭「真っ赤な太陽」に尽きるだろう。実はこの曲、4曲入りEP盤の収録曲として録音されたものの、美空ひばりと日本コロムビア・サイドから “女王の芸能生活20周年の記念曲をカヴァーすることはまかりならん!” (←何でやねん!)とクレームがつき、プレスまでされていたのに結局はオクラ入りとなったという、いわく付きのナンバーだ。この曲自体、まるでジュンのために書かれたような和製ポップスで、両者を聴き比べてみても、私は絶対に黛ジュン・ヴァージョンの方が良いと思う。ひばりが競作を怖れた気持ちがよくわかる、ジュン屈指の名唱だ。
 ロック/ポップス・ファンにとって、黛ジュンは60年代に活躍したシンガー達の中でも最も馴染みやすい一人だろう。そんな彼女の魅力が満載のこのアルバム、黛ジュンを聴かずしてガールズ歌謡を語るなかれ、と言いたくなるような大名盤だ。

真赤な太陽・・・黛ジュン


恋のハレルヤ・・黛ジュン


天使の誘惑 / 黛 ジュン


キャント・バイ・ミー・ラヴ


ツイスト・アンド・シャウト


デイ・トリッパー
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SP原盤再録による江利チエミ・ヒット・アルバムVol. 2

2010-04-10 | 昭和歌謡
 いわゆるひとつの “昭和歌謡” の定義付けは人によって様々だろうが、私の中では西田佐知子「アカシアの雨がやむとき」(1960)あたりを起点にしてその後ザ・ピーナッツがしっかりと基礎を築き、60年代後半に筒美京平を始めとする新進ライターがアメリカン・ポップスの黄金時代を支えたブリル・ビルディング方式のようにヒット曲を量産、1970年代に入って百花繚乱の時代を迎えた、という認識だ。因みに笠置シヅ子を始めとする1940年代後半、いわゆる敗戦直後のヒット曲はこれまた独特の雰囲気を湛えており、私は “戦後の流行歌” として一つのジャンルだと思っている。で、その間の空白の1950年代を埋める存在が江利チエミというワケだ。何と言ってもミュージック・ライフ誌の人気投票で1954年から61年までの8年間連続して1位だったというからその人気の凄まじさは想像がつくだろう。因みに1962年、その連続記録にストップをかけ、60年代を支配したのは他でもない最終兵器・ミコたんでした(笑)
 私のような60年代生まれで70年代育ちの人間にとって、江利チエミという存在は接点すらなく、“名前は何となく聞いたことあるけど、歌も知らんし顔も知らん” 状態だった。そんな私が初めて彼女に関心を持ったのは2年ほど前のこと、KING RE-JAZZ SWING という一連の和モノ復刻シリーズのラインナップに彼女も入っており、曲目を見ると「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」や「チーク・トゥ・チーク」といった愛聴スタンダード・ナンバーが一杯入っていたので、 “歌手がハズレでも曲で聴ける” と思って試しに買ってみたのがキッカケだった。で、届いたCDの1曲目「クレイジー・リズム」を聴いてビックリ、めっちゃエエやん!日本の “自称” ジャズ・シンガー達が束になってかかっても敵わないような天性のリズム感に驚倒すること必至の名唱である。他のトラックも捨て曲ナシの大名盤で、私はその日から江利チエミの大ファンになってしまった。
 彼女のCDはさすがはキングレコードというべきか(笑)、 “「テネシー・ワルツ」入れときゃそれでエエやろ” みたいな感じのやっつけ仕事的ベスト盤が多く、ファンが本当に聴きたいアルバムは既に廃盤になっているものが多くて集めるのに苦労したが、BOXセットを2種類とも買うなどして何とか主要音源はすべて入手できた。私の感想としてはやはり彼女は “歌謡曲の歌手” というよりはむしろ “ジャズやラテンといった軽音楽のスタンダード・ナンバーをカッコ良く歌うシンガー” という表現の方がしっくりくる。特にその比類なきリズム感とスキャットの巧さは天下一品だ。彼女は何かと言うとすぐにひばり・チエミ・いずみという “三人娘” として語られることが多いが、シンガーとしての江利チエミの偉業は過小評価されているように思う。
 彼女の全盛期は先の人気投票の結果が示すように1950年代中盤から1960年代初めまでだろうが、この時期の彼女の録音はどれを聴いても傑作なのだから恐れ入る。私は1950年代のアメリカの女性ヴォーカル盤はかなり聴き込んできたが、一部のビッグ・ネームを除いてマイナーな歌手の稀少盤を探す暇があったら絶対に江利チエミを聴くべきだと思う。
 彼女が素晴らしいのは、ただ単にオリジナルの模倣をするのではなく、日本人としての薫りというかアイデンティティーというものをしっかりと感じさせるヴォーカル・スタイルを貫いていることである。「テネシー・ワルツ」も、「カモナ・マイ・ハウス」も、「ガイ・イズ・ア・ガイ」も、カヴァーでありながらすべて彼女のオリジナル曲のように響くのは凄いとしか言いようがない。どの盤をアップするか迷ったが、今回は先の KING RE-JAZZ SWING と共に日頃から愛聴している「SP原盤再録による江利チエミヒット・アルバムVol.2」にしよう。
 私がこのCDを買ったのは一にも二にも③「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」を聴くためだった。実はこの曲には2テイクあって、他のCD に入っているのは全てカール・ジョーンズ編曲のリメイク・ヴァージョンなのだが、私は SP で発売されたオリジナルの村山芳男編曲ヴァージョンの方が圧倒的に好きで、それが聴けるのはこのCDをおいて他にないからだ。オリジナルの方は多分マスター・テープの状態が悪いのだろう。彼女の場合、同じ曲を何度も再録音している(←「テネシー・ワルツ」なんて4ヴァージョンもある...)ので CD を買う時は注意が必要なのだ。
 この CD には他にも英語から日本語へのスイッチが絶妙な⑤「裏町のおてんば娘」や⑦「恋人よ我に帰れ」、⑬「セプテンバー・ソング」といった珠玉のスタンダード・ナンバーが収められており、それが SP 独特の温もりのある音(←針音はないのでご安心を!)で聴けるのだからたまらない(≧▽≦) とにかく百聞は一聴にしかず、どこかにエエ女性ヴォーカル盤はないかなぁ...とお探しのご貴兄にオススメのスタンダード・ヴォーカル・アルバムだ。

Chiemi Eri - THE NAUGHTY LADY OF SHADY LANE


Chiemi Eri - ON THE SUNNY SIDE OF THE STREET

夢のシャボン玉ヒッツ / ザ・ピーナッツ他

2010-04-09 | 昭和歌謡
 2年ほど前、私はザ・ピーナッツにハマり、2つのBOXセットを始め、彼女らのCDやLPを買い漁っていた。彼女らが所属するキングレコードは非常に商売が上手く、帯に短しタスキに長しという感じの中途半端な企画盤を連発してファンに二度買い三度買いをさせる天才みたいな会社で(←ハッキリ言って皮肉です...笑)、しかもすぐに廃盤してファンの渇望状態を煽り、機が熟したらタイトルとジャケット、それに数曲を入れ替えて発売するという姑息さはもうお見事という他ない(←ハッキリ言わなくても皮肉ですね...笑)。しかし惚れた弱みというか、そんなクソったれレコード会社に腹を立てながらもやはり聴きたい音源が入っていれば買ってしまうのがファンというもの。結局私のCD棚には何と28枚ものザ・ピーナッツ盤が並ぶことになり、しかもそのうち3~4割がカブリまくっているという悲惨な状況だ(泣) 大好きな江利チエミもキングレコードなので、やはり中途半端なBOXセットを2種類も買うハメになり、棚には彼女のCDが20枚並んでいる(笑) 何万もするBOXセットを買わすんならビクターの麻丘めぐみやソニーのキャンディーズみたいにコンプリートなセットを出すのが良識あるレコード会社だと思う今日この頃、みなさん如何お過ごしですか?(笑)
 皮肉はこれぐらいにして本題に入ろう。まぁ大枚を叩きながらも何とか彼女らの主要音源をほぼ押さえたと安心していたところ、 901さんからの情報でジョニー・シンバルの「ミスター・ベースマン」のカヴァーをメドレーでやってるCDがあるという。そんなん初耳やん!コレはエライこっちゃと色々調べてみると、どうやらミュージック・テープのみで発売された曲がいくつかあるらしい。テープのみって一体何やねん、それは...(>_<) 更にネットで調べまくってようやく謎が解けた。当時彼女らが所属していた渡辺プロダクション・グループ傘下にアポロン音楽工業というカーステ用8トラック・カートリッジ・テープ専用の企画制作発売会社があり、 “ミュージック・テープのみの企画” としてキングではなくアポロンからのみ発売された曲がいくつか存在したのだ。しかもラッキーなことにそれらの音源はCDとしてリリースされていると知り、私はすぐにアマゾンで注文、届いた盤がこの「夢のシャボン玉ヒッツ」である。後で分かったことだが、 901 さんが買われたのは「ザ・ピーナッツ~恋のフーガ Best ★ BEST」という盤で、よくヤフオクやスーパーで見かける、 “本人歌唱” の文字がまぶしい(笑)CD を扱っている “キープ” という会社からリリースされたものだった。
 この「夢のシャボン玉ヒッツ」という CD はタイトルからも分かるように、渡辺プロ所属のシンガー達によって「シャボン玉ホリデー」の内容を再現したようなオムニバス・アルバムで、ザ・ピーナッツの6曲を筆頭に布施明や伊東ゆかり、奥村チヨ、梓みちよ、園まり、田辺靖雄、辺見マリ、トワ・エ・モア、ワイルドワンズらのカヴァー・ポップスが収められている。ちょっと油断すると、声や歌い方が生理的にどうしても受け付けない布施明や、あまりにもヘタクソな発音にウンザリさせられるトワ・エ・モアの曲が出てきて困るので、私は CD-R に編集し直してザ・ピーナッツのトラックを6曲連続で楽しんでいる。
 選曲もヴァラエティーに富んでいて、番組主題歌の①「シャボン玉ホリデー」、楽しいポップス・メドレー④「ミスター・ベースマン~可愛い花~悲しき16歳」、クールでヒップなボサノヴァを粋に歌いこなす⑧「マシュケナダ」、エド・サリヴァン・ショーでも歌った⑩「恋人よ我に帰れ」、アルバム「フィーリン・グッド」収録のものとは別ヴァージョンのバカラック・メドレー⑫「雨にぬれても~恋よさようなら」、スタンダード・ナンバーの定番⑯「スターダスト」と、キングレコード原盤では聴くことのできないザ・ピーナッツの様々な魅力が満喫できる名企画盤なのだ。

シャボン玉ホリデー オープニング


マシュケナダ


恋人よ我に帰れ
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恋の季節 / ピンキーとキラーズ

2010-04-07 | 昭和歌謡・シングル盤
 901 さんからのコメントで昭和ガールズ歌謡シリーズの再開のご要望を頂いた。こんな偏向趣味の音楽ブログ(笑)にリクエストを頂くなんて、ホンマにありがたいことである。前回は2週間という長期に亘っての大特集でそろそろ潮時かなというのもあったし、何よりネタが尽きかけてきたこともあって最終兵器 “ミコたん” を投入したのだが、こーなったら無い袖を振ってでもやるしかない(>_<) ということで、今日から再び “昭和ガールズ歌謡・アンコール・シリーズ” に突入だ。
 記念すべき(?)再開第1号は私が生まれて初めて買ったレコードにしよう。ピンキーとキラーズの「恋の季節」である。1968年7月に発売され、同年9月から12週連続でチャート№1を独走し、1週だけその座を明け渡したものの、再び№1に返り咲いた後は更に5週間そこにに居座ったウルトラ・メガ・ヒット曲だ。トータルで17週№1(←歴代最高記録!)ということは、単純計算で1年の 1/3 の間、最も聴かれ売れまくっていたことになる。まだ音楽が今のようにファスト・フード化していなかったあの時代に200万枚以上を売り上げたというのだから、これはもう恐れ入谷の鬼子母神だ。1968年後半は日本中が「恋の季節」一色に染まっていたと言っても過言ではないだろう。
 当時の私はまだ小学生にもなっていなかったが、必殺のイントロ、絶妙なテンポ設定、心の琴線をビンビン震わせる魔力を秘めた旋律、伸びやかなピンキーの歌声、山高帽にパンタロンスーツというユニークなファッション、思わず真似したくなるようなカッコイイ振り付けと、もうすっかり「恋の季節」にハマッてしまい、 “夜明けのコーヒー♪” の意味も分からぬままに(←当り前やん!)来る日も来る日も黒い画用紙で作った帽子をかぶり新聞紙を丸めたステッキを持ってピンキーのモノマネをしていた。特に “死~ぬまで私を~♪” のところで帽子に手を置いて足をクロスさせる動きがめちゃくちゃ好きだった。
 当時は “セルジオ・メンデスを目指す新進気鋭のグループ” と紹介されており、それはつまりボサ・ノヴァのグループとして売り出していたということだ。又、この曲をレコーディングした時、ピンキーこと今陽子さんはまだ弱冠17才だったというのもビックリだ(゜o゜) YouTube で見つけた映像は当時のモノクロのものと2008年期間限定再結成時のものの2種類で、40年の時を経て平成の世になっても、いや、薄っぺらい音楽が蔓延するこんな時代だからこそ余計にこの昭和歌謡史上屈指の名曲の素晴らしさが胸に沁みるし、ピンキラのパフォーマンスも色褪せるどころかむしろ輝きを増しているように思う。そこにはノスタルジーの一言では説明のつかない何か、素晴らしい音楽だけが持つ “時代を超えて輝き続けるパワー” が溢れている。
 尚、ピンキラは「恋の季節」だけの一発屋のように思われているが、実際はコレに続く「涙の季節」も№1になっており、ファンの中にはこちらの方が好き!という人もいるかもしれない。折角なので一緒に貼っときますんで、キョーミのある方は聴いてみて下さい。

恋の季節/ピンキーとキラーズ


ピンキーとキラーズ 「恋の季節」(2008バージョン)
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Who Made Who / AC/DC

2010-04-05 | Hard Rock
 4月に入ってすっかりロック色が濃くなってきたこのブログだが、やっぱり物心ついて以来ずぅ~っと聴き続けてきた音楽というのは耳に心地良い。私の場合、ビートルズとハードロック一色の10代を過ごしたこともあって、この歳になっても未だにハードロックから抜け出せない。ということで今日は胸毛系の中でも異色の “半ズボン&ランドセル系(笑)” バンド、AC/DC である。
 私が初めて AC/DC というバンドの存在を知ったのは高校時代に愛読していた「音楽専科」という雑誌でヘビメタ評論家の伊藤政則氏のレビューを読んだのが最初だったと思う。NWOBHM (New Wave Of British Heavy Metal) に心酔する氏が絶賛しているのを見て、私は聴いてもいないのに彼らをアイアン・メイデンやジューダス・プリーストと同列のヘビメタ・バンドと思い込んで敬遠するようになり、当時アメリカで大ヒットを飛ばしていた「バック・イン・ブラック」や「悪魔の招待状」も結局リアルタイムでは聴かずじまいだった。
 そんな私の聴かず嫌いな偏見を木端微塵に打ち砕いたのが「ベスト・ヒット・USA」で見た「フー・メイド・フー」のビデオ・クリップだった。それは半ズボン&ランドセルのスクールボーイ・スタイルでチャック・ベリーみたいに弾きまくる看板ギタリスト、アンガス・ヤングのクローンが一杯登場してヘッド・バンギングしまくる光景がめっちゃ笑える楽しいビデオ・クリップで、番組を録画したテープを何度も繰り返し見るうちにすっかり彼らのグルーヴにハマッてしまった。彼らのサウンドはただウルサイだけのヘビメタとは激しく一線を画すブルース・ルーツのタテノリ・ロックで、一緒に口ずさめるキャッチーさも兼ね備えているところが何よりも素晴らしい。 “一体コレのどこがヘビメタやねん!” と思った私は慌ててタワレコへ走り、この曲が入っているCDを買った。それがこの「フー・メイド・フー」である。
 このアルバムは元々「マキシマム・オーヴァードライヴ」という映画のサントラとして1986年にリリースされたもので、全9曲中アルバム・タイトル曲の「フー・メイド・フー」を含め新曲が3曲と既発曲が6曲という中途半端な構成のためファンの間での評価は低いようだが、私にとっては初めて買った彼らのアルバムと言う思い入れもあるし、何よりも “ヘッドバンガー達のアンセム” ①「フー・メイド・フー」と “踊れるハードロック” ⑦「シェイク・ユア・ファウンデイションズ」という大好きな2曲が入っているだけでもう十分に大名盤だ。2曲とも、 “ソナー・ドラムの鬼” と呼ばれるサイモン・ライトが生み出す熱いビートに乗ってノリノリのギター・リフ攻撃が炸裂、聴いてて思わず身体が動いてしまうキラー・チューンだ。このプリミティヴなエネルギーの奔流がタマランなぁ...(≧▽≦) ①の “フメイフゥ~♪” 、⑦の “アイヤイヤァ~♪” と一緒に歌いたくなるような理屈抜きの楽しさも嬉しい。やっぱりロックはこーでなくちゃね(^o^)丿

AC/DC - Who Made Who


AC/DC - Shake Your Foundations

We're Not Gonna Take It / Twisted Sister

2010-04-04 | Hard Rock
 やっと土曜日だ。転勤してまだ2日というのに、3月までの遊び放題な生活が祟ったのか結構疲れた。仕事そのものはめちゃくちゃラクチンやし職場の雰囲気も段違いにエエのだが、やはり通勤がネックで、一車線の道でミラー見てないオバちゃんや走るシケイン状態の枯葉マークの後ろについてしまうともう最悪、何台もの車がまるでカルガモ親子のように数珠つなぎになってチンタラ走るハメになる。モナコGPで遅い車に前を塞がれてイライラするF1ドライバーの気持ちを痛感させられているのだが、私は車に乗っている時は必ず音楽を聴いているのでそんな時の選曲は重要だ。これまでの経験からイライラした時に最適なのは、怒るのもアホらしくなるような脱力系音楽が一番で、最近ではこの前取り上げた小山ルミの「グット,, がまんして!!」が効果テキメン、 “早よ行けよ、このタコ!!!” とイラついていたのが何だかバカバカしくなってきて、“まぁエエか...” と思えてくるから不思議である。私と同じイラチの方は是非お試し下さい(笑)
 で、彼らが消えて目の前がクリアになったら遅れを取り戻そうとアクセル全開である。そんな時はやっぱりアップテンポなロックンロールがいい。ということで今日はツイステッド・シスター、バリバリの胸毛系(笑)である。1984年にリリースされ、全米だけで300万枚を売り上げた大ヒット・アルバム「ステイ・ハングリー」は、バカ丸出しのヘビメタ・ファッションに身を包み生肉にかぶり付こうとするケバいメイクの大男のジャケットは大概にせい!といいたくなるような代物だが、中身は理屈抜きの楽しさが満載のストレートアヘッドなアメリカン・ロックンロール。ナメてかかると痛い目に会う1枚だ。
 アルバムからの 1st シングルになった「ウィアー・ノット・ゴナ・テイク・イット」はめちゃくちゃキャッチーでノリの良いナンバーで、一度聴いたらそのサビのメロディーが頭から離れなくなり、気がつけばいつの間にか口ずさんでしまっていること請け合いのロックンロール・アンセムだ。クワイエット・ライオットのスレイド・カヴァー「カモン・フィール・ザ・ノイズ」を想わせるイントロのドラムから一気に突っ走る曲想は痛快そのものだし、思わず一緒に大合唱したくなるメロディーも秀逸でサビの盛り上がり方はハンパではない。私は80'sロックの名曲の一つだと思っている。
 又、この曲のビデオ・クリップも笑撃のケッサクで、いかにも MTV ウケしそうな単純で分かりやすいベタなストーリー展開がめっちゃ楽しい(^.^) まぁどう見てもアホな外見(←失礼!)からついつい冷笑・軽視・敬遠されがちなバンドだが、ロックンロールの本質を見事に突いた歌詞といい、呆れるほど覚えやすいサビのメロディーといい、シンプルの極みのようなギター・ソロといい、私のようにポップなハードロックが好きな人間にとっては座右の名曲だと思う。

Twisted Sister - We're Not Gonna Take It

夢みるシャンソン人形 / WIZO

2010-04-03 | Cover Songs
 YouTube のページ・レイアウトが急に変ってめっちゃ見づらくなってしっまった。何なん、コレ? ったくもう、改悪もエエとこやわ(>_<) まぁ YouTube に限ったこっちゃないけれど、eBay にせよ、goo のメール・システム(←コレもかなり酷いが...)にせよ、何でネットの世界って上手くいってるモンをわざわざ改悪して使いにくくするんやろ?ただのアホなのか、しょーもない自己満足なのかは知らないが、ユーザー・オリエンティッドという発想はどうやら彼らの頭にはないらしい。旧式に戻してくれへんかな...
 ネットに限らず、私は変節モノが嫌いで一徹モノが大好き。音楽の趣味もそうで、私が好んで聴くのはロックであれジャズであれ、時の試練に耐えて生き残った昔の音楽ばっかりだ。中でもワンパターンの極みとも言うべきハードロックには目がない。そもそもハードロックとヘビメタは似て非なるもので、メロディーもクソもなくただウルサイだけの騒音がヘビメタで、轟音の中にもちゃーんとキャッチーなメロディーが生きているのがハードロックだと定義付けている。 “曲は甘く、演奏は辛く” こそが私にとって理想的なパターンだ。昭和ガールズ歌謡が一段落した今、私がよく聴いているのがこの手の音楽で、デフレパ3部作や「サタデー・ナイト」と共に毎朝出勤時にカーステでよく聴いているのが WIZO(ワイゾーと読むらしい...)の「夢シャン」である。
 彼らはドイツのバンドで、ジャンル的にはメロコア(メロディック・ハードコア)と呼ばれ、早い話が耳なじみが良くて疾走感のあるパンクといった感じで、激しいギター・リフを基本とするそのサウンドは、パンクというよりもむしろハードロックに近いものがある。ジャケはエグいが、コレは原曲がまさかまさかのフランス・ギャル... パンクやハードロックとは無縁な世界のお姫様の大ヒット曲をここまで大胆にメロコア化してしまうとは、この WIZO というバンド、只者ではない。わずか2分27秒という短い演奏だが、無駄な贅肉を一切削ぎ落としたシャープでソリッドなサウンドが圧巻で、後半部で威勢の良い掛け声と共にサビが疾走するところなんかもうタマランなぁ...(≧▽≦) 数ある「夢シャン」カヴァーの中でも異色の、そして私の超お気に入りのヴァージョンだ。

Wizo - PoupPee de Cire, Poupee de Son (France Gall cover)
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