shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

林マキ特集

2024-05-26 | 昭和歌謡・シングル盤

 林マキのレコードはどれもこれも入手が難しい。メルカリで検索したらワケのわからん少女コミックが一杯出てきて往生したことがあるが(←同じ名前の漫画家がおるらしい... 紛らわしいこっちゃ)、とにかくブツの数が圧倒的に少ないのだ。せっかくなので今日は前回取り上げた「ただそれだけのこと」以外の彼女のシングルとEPをまとめて取り上げよう。 

①なっとくのブルース(1969)
 彼女は国立音楽大学声楽科を1年で中退して寺内企画に入社し、社長である寺内タケシの「なっとくのブルース」で1969年にデビューしたのだが、私はB面に収められた “絵に描いたような” 昭和歌謡「二人のハンド・バー」の方が気に入っている。特に“夜を楽しむ~♪” のラインは青江三奈の「伊勢佐木町ブルース」を彷彿とさせる必殺の美旋律で、その魅力を最大限引き出す彼女のヴォイス・コントロールも絶妙だ。ライナーノーツのプロフィール欄に“B103cm, W60cm, H96cmの文字通り大型グラマー歌手” と書いてあるのがいかにもこの時代らしくて微笑ましい。

②太陽の誘惑(1970)
 A面の「太陽の誘惑」は寺内タケシのギターを満喫できる歌謡ロックで、林マキのパワフルなヴォーカルが生み出す圧倒的なグルーヴが聴いてて実に気持ち良い。B面に収録されている「一筋の道」は映画版「サインはV」の主題歌で、前年に発売されたTV版サントラEPの④にも入っていた曲で、颯爽としたイントロにストリングスとコンガが絡みつき、間髪を入れずに彼女がスタッカート唱法で畳み掛けるという展開が実に素晴らしい。AB面共に寺内タケシがスポコン・ドラマを意識して作曲したエモーショナルなナンバーだが、パワフルな歌と演奏を上手くまとめて極上の歌謡ポップスに仕上げているのは編曲の宮川泰の手腕によるところが大きいと思う。個人的には「ただそれだけのこと」に比肩する彼女の最高傑作だと思っている。
林マキ 太陽の誘惑(1970年)

林マキ / 一筋の道(Maki Hayashi / Hitosuji no Michi "I Chose The Road")


③雪山は招く(1970)
 A面の「雪山は招く」は同名タイトルのアメリカ映画の主題歌らしいが、タイトルを聞いたことももちろん映画を観たこともない。曲の方もごくごく普通で心に残る旋律もなしと、まさにナイナイづくしだ。伸びやかな彼女のヴォーカルだけが空回りしている感じがするのがもったいない。B面の「愛のスキー・ロッジ」はA面よりは幾分マシで寺内師匠も軽快なギターで曲を盛り立てようとしているが、いかんせん旋律面で強力なフックに欠けるのは否めない。ロックでもジャズでも歌謡曲でも、いくら歌い手が優れていても最終的には “曲の良し悪しがすべて” だということを思い知らされたレコードだ。

④サインはV(1969)
 岡田可愛版「サインはV」の主題歌を歌っていたのは麻里圭子(ビクター)だが、ドラマが社会現象と言えるくらいに大ヒットしたため(←自分も小学生の頃、稲妻落としや回転レシーブを必死で真似しようとしてた...)、他のレコード会社もブームに便乗してカヴァー盤を乱発、前川陽子(朝日ソノラマ)や中村晃子(キング)、富田智子(東芝)らのヴァージョンが世に出たが、CBSソニーが「アタック№1」とのカップリングで出した4曲入りEPで「サインはV」「この道の果てに」「一筋の道」の3曲を歌っていたのがドラマの中でライバルチームのエース役を演じていた林マキだ。卒業写真の欠席者のような扱いでジャケット右上にポツンと写っている(←ミカサのユニフォーム着てる...)のが笑えますな。残念ながら YouTubeに林マキ版がなかったので、代わりに他のヴァージョンを並べてみたが、これがまた三者三様で実に興味深い。こういう歌謡曲の競作聴き比べっていうのも結構楽しいですな。
サインはV 麻里圭子

サインはV 前川陽子

サインはV 中村晃子

ただそれだけのこと / 林マキ

2024-05-19 | 昭和歌謡・シングル盤

 少し前のことになるが、ヤフオクのレコード落札相場がわかるサイトを見ていてすごいものを見つけた。林マキという歌手が出した昭和歌謡のシングル盤なのだが、たかがシングル盤に85ビッドが集中し、最終落札価格は驚異の13万円というのだから驚くなという方が無理だろう。
 林マキ... と言ってもほとんどの人は “誰それ?” となるのが関の山だろうし、昭和ガールズ歌謡好きでも名前ぐらいしか聞いたことがないという人が多いかもしれない。しかしディープなマニアなら “林マキ” と聞いただけでパブロフの犬状態になること間違いなし!と言いたくなるくらいネット・オークションでの人気は高い。ブツの数が圧倒的に少ないというのもあるが、何よりもまず内容が素晴らしく、1971年の発売から50年近く経っても全く色褪せない魅力があるからこその超人気盤なのだ。
 私が彼女の存在を知ったのは YouTubeで、誰の動画だったかは忘れたがその関連動画の中に彼女の「ただそれだけのこと」という曲があって(←関連動画から芋づる式っていうパターン結構多いな...)、たまたまそれをクリックして聴いてみたらめちゃくちゃカッコ良い和ボッサ・ナンバーだったのですぐにウォント・リストに加え、その日からこのレコードを探す日々が始まった。
 今でこそこの盤の価値・稀少性は十分わかっているが、その当時は林マキに関する情報も知識もなく、ヤフオクには全然出てこないし大阪京都のレコ屋を廻っても全く置いてないしでお先真っ暗状態。彼女の他のシングル盤もごくごくたまに出てはくるのだが、それでもシングル盤の分際で1万円前後というえげつない値段で取り引きされていて、林マキのカルト人気の凄さに驚かされたものだった。
 初めてこのレコードがヤフオクに出たのを見つけた時は “おぉ、ついにきたか!” と武者震いしたが、値段を見ると異次元の8万円(!)で、その値段を見た瞬間に戦意喪失。結局その盤は落札されずに終わり、その後も一応 “保存した検索条件” に入れて監視を続けたのだが、確か2度ほど出品されてスタート価格がどちらも数万円だったのを見て “あかん、こんなん絶対に無理やわ...” と一旦は諦めモードに入った。
 それから何年か経って、ある日突然何を血迷ったのかこの盤を Discogs で探してみようと思い立って検索してみると、信じられないことに何とこのレコードが出品されているではないか! 値段を見ると$10という嘘みたいな値段で、しかもそのセラーが中国人だったこともあって “いくら何でもこれは怪しすぎるやろ...” と警戒心がMAXまで高まったが、送ってもらったメールの写真を見る限りは本物っぽいし、フィードバックはポジティヴ100%。他の出品物を見ると昭和歌謡のレコードを一杯出していて、麻丘めぐみやら南沙織やらのシングル盤がズラリと並んでおり、私の直感では詐欺の匂いはしない。まぁ値段が値段だけに失敗してもたかが知れているし、いざという時は PayPal Protection があるわいと考え、思い切って買ってみることにした。
 購入から10日ほどしてレコードが届いた。信じられないことに(?)れっきとした本物だ。VG+と書いてあった盤質も Ex+レベルのめちゃくちゃ良い音で鳴る。結局送料込みでも当時のレート(確か $1=110円ぐらいやったと思うが、あの頃は良かったなぁ...)で約2,000円でこの垂涎盤を手に入れることができて、大袈裟ではなく天にも昇る気持ちだった。そういえば昔、901さんが eBay でアート・テイタムのダイアル盤10インチやクリフォード・ブラウンのヴォーグ盤10インチを相場の1/10以下で入手された話を伺った時に心底羨ましく思ったのを今でもよく覚えているが、私の場合はこのレコードこそがまさにそんな “信じられへんくらい安く買えたラッキー盤” の筆頭と言えるかもしれない。
 それにしても心の琴線をビンビン震わせるこの妙なる旋律は何なのだろう? この曲って歌うとなると案外難しいのではないかと思うのだが、彼女は哀愁舞い散るマイナー調メロディーをその変幻自在の唱法と圧倒的な声量でもって余裕綽々という感じで歌いこなしているし、バックの演奏もめっちゃクールでカッコ良い。特に寺川正興の闊達なベースには耳が吸い付くし、ジャジーな雰囲気横溢のフルートも言うことナシだ。
 たまたまセラーが無知な外国人で、たまたま他のコレクターに先を越されず、たまたま盤質も良かったという、幸運が幾重にも重なって手に入れたこのレコード... ひょっとするとこれでもう一生分の運を使い果たしてしまったかもしれないが、それこそ一生モノの宝物を手に入れたも同然なので気にしない。こういうラッキーがあるからレコード・コレクターはやめられないのだ。
Maki Hayashi / 林マキ・ただそれだけのこと(Japan, 1971)

スペイン盤特集⑦「A Hard Day's Night」

2024-05-12 | The Beatles
 ビートルズのスペイン・オリジナル盤蒐集で最後の最後まで残った最難関盤が「A Hard Day's Night」だった。他のレコードはみんなスムーズに入手できたのに、この盤だけはありとあらゆるサイトを探してみても全く出てこない。痺れを切らした私は以前ビートルズのスペイン盤を買ったeBayのセラーにメールして “「ハード・デイズ・ナイト」のゴシック・オデオン・ロゴ(1stプレス)盤ありませんかねぇ?” と訊いてみたのだが、返ってきた答えは“Almost impossible to find even in Spain...”(スペイン本国でも見つけるのはほぼ不可能に近いで...)という絶望的なものだった。まぁ無いものはしゃあないので、私は手に入れられればラッキーぐらいの軽~い気持ちでそこら中のWant List に登録しておいた。
 すると先日、Discogsから “Want Listのアイテムが出品されたよ~♪” メールが来たので見てみると、何とこのレコードが €90で出品されているではないか! eBayでは過去15年間で3枚しか出品されておらず、そのどれもが数百ユーロで取り引きされていた稀少盤がたったの €90ってホンマかいな??? いつもならメールでセンター・レーベルの写真を送ってもらって確認するのだが、そんな悠長なことをやっている間にライバルに先を越されたら悔やんでも悔やみきれないので、“発送前に必ずセンター・レーベルが商品説明ページの写真と同じゴシック・オデオン・ロゴであることを確認して下さいね!” というメッセージを添えて購入した。
 それからちょうど2週間ほど経ってブツが届いた。あれから何の返答もなく普通に発送されたようなので私は “しめしめ、超の付くレア盤が安ぅ手に入ったわい...(^.^)” と楽しみにしていたのだが、いざレコードを取り出してみるとビッグ・オデオン・ロゴの 2ndプレス盤ではないか! “何じゃあ、こりゃあ!” と松田優作が憑依した私はすぐにセラーに怒りのメールを送ったのだが、いくら待っても返事は来ない。
 舐めたマネをしやがってと激オコ状態でペイパルに異議申し立てのクレームを起こすとやっと返事が来たのだが、ふざけたことにスペイン語でワケのわからんことを書いてきよったので “商品説明と違う物を送り付けてバックレるのは完全な詐欺行為。悪質セラーとしてオマエを訴えてペイパルで商売出来んようにしたるから覚悟せえ! それと今後二度とスペイン語なんかでメールしてくるな、ちゃんと英語で書いてこい!” とブチギレ・メールを返したところ、態度が180°変わって英語で謝罪メールが届いた。
 それでも最初は “半額返金しますので何とかそれで許してもらえませんか?” と虫のいいことを言うてきよったので、“2ndプレス盤に €45も払うアホがどこにおるんや? そっちが送料持って送り返して完全返金にするか、それともこっちが €20で引き取って残り €70を返金か、どっちかを選べ!” って返したらすぐに €70返金してきやがった。向こうからすれば身から出た錆とは言え、送料を往復2回分払うよりは大幅値引きの方がマシと考えたのだろう。私としてもこのクッソ忙しい時期にわざわざ郵便局まで行って送り返すのは面倒臭かったし、€20やったら 2ndプレスでもとりあえずの filler(埋め草、つなぎ)として許せる範囲内だったので手打ちにして訴えを取り下げ、ケースを終了することにした。
 とまぁこのようにスッタモンダの末に我がコレクションに加わったこのレコードだが、実際に聴いてみると実に鮮烈な音がしてビックリ(゜o゜)  そもそも「A Hard Day's Night」というレコードはA面アタマの “ジャーン!” とB面アタマの “バン!” に尽きると思うのだが、この盤はそのどちらもガツン!とくる音がして大喜び。盤質は VGで「And I Love Her」でややチリパチが目立つのが玉にキズだが、それ以外のトラックはキズなんて笑い飛ばしてしまうくらい豪快なモノラル・サウンドが楽しめた。
 まぁよくよく考えてみると「A Hard Day's Night」がリリースされた1964年というのはちょうどセンター・レーベルがゴシック・オデオン・ロゴからビッグ・オデオン・ロゴに切り替わった年で、プレス時期的にほとんど差がないことになる。しかも私が手にした盤は裏ジャケットのデザインが 1stプレスのものだったので、2ndプレスといってもその最初期のものであることは明白。つまり実質的には 1stプレス盤とほぼ変わらないということだ。不愉快な思いをして手に入れたレコードだが、最終的には数百ユーロ相当の稀少盤とほぼ変わらない爆音盤を1/10以下の値段で買えて結果オーライ。レコードの蒐集っていうのはホンマに一筋縄ではいかんもんですな。

901さんと久々のオフ会④

2024-05-07 | The Beatles

901さん:じゃあ次はいよいよ1Gお願いします
私:その前に、さっきバーデン・パウエルでステレオ針に変えたので、せっかくやからニンバス盤聴かはります? ビートルズのステレオ盤では一番音がエエやつです。
901さん:UKパーロフォンとは又違うんですか?
私:ニンバス盤は80年代にイギリスのオーディオ専門誌が企画した超高音質盤で、クラシック専門レーベルがカッティングから徹底した音質重視で作って通販のみの少数限定で発売されたレコードなんですよ。私がこれまで買った中で一番高かったですわ。
901さん:へぇ~、いくらしましたん?
私:20万ほどです。
901さん:ひょえ~(゜o゜)  それはぜひ聴かせて下さい。
私:【♪~】どうですか?
901さん:さすがにエエ音やねぇ... めちゃくちゃクリアーやわ。せっかくやからUKオリジナルの1stプレスの音も聴かせてもらえる?
私:もちろんです。【♪~】いかがでしょう?
901さん:これは又かなり違うねぇ... 何ていうか、これはこれで迫力あるよねぇ。
私:でしょ? どちらの音も捨て難いんですよ。
901さん:Shiotchさんがどちらも持ってはるの、よぉわかりましたわ。 
私:レコードによって色んな音が楽しめる贅沢がビートルズにはあるんですよ。
901さん:じゃあ次は 1G!
私:ずっと楽しみにしてはりましたもんね。お待たせしました。
901さん:ブログ読ませてもろうて、どんな音するんやろうかと思うてましてん。
私:じゃあまずは「Please Please Me」の金パロの両面1G盤から。
901さん:これはB-SELS ですか?
私:いえ、eBayで買いましてん。
901さん:高かったでしょう?
私:確か10万ちょっとで手に入れました。今やったら円安もあるから軽く倍以上するでしょうね。
901さん:$1=75円の頃が懐かしいねぇ。
私:ホンマにあの時代は良かったですよね。手当たり次第買いまくってました。eBay始めるのがあと10年遅かったらこんなにレコード買えてなかったと思います。
901さん:今は160円?
私:150円台後半です。全部アホバカ日銀のせいですわ。何だか腹立ってきたんで(笑)曲聴いて心を落ち着けましょう。(「I Saw Her Standing There」をかける)【♪~】
901さん:うわぁ、凄い音やなぁ...(と唖然とされてる901さん)。
私:じゃあ次はラウドカットの1Gいきますか?
901さん:あっ、それ(「RUBBER SOUL」を指して)ここで初めて聴かせてもろうた時にあまりの凄さに腰抜かしそうになったヤツですね。
私:そうそう、それです。
901さん:よぉ覚えてますよ。それまでマッカートニーのベースなんて気にも留めてなかったので、あれはホンマに衝撃的でした。
私:A面は1Gじゃないんですが、ここはやっぱり思い出の「Drive My Car」いきましょか。
901さん:【♪~】これこれ、このベースの音。ホンマにビックリしたなぁ、もう(笑)
私:じゃあ次は別のラウドカットの1Gいきましょう。「With The Beatles」です。
901さん:あっ、それ B-SELS へ2日連続でラウドカット盤を買いに行って店主の方が呆れてはったっていうヤツでしょ?
私:そうです(笑)
901さん:そりゃあビックリしやはったでしょうね...(笑)
私:あの時の Sさんの反応はよぉ忘れませんわ(笑)
901さん:じゃあその盤をお願いします。
私:一番エグいのいきましょう。(「Roll Over Beethoven」をかける)【♪~】どうですか?
901さん:絶対にその曲くると思うてました(笑) もの凄い迫力ですね。
私:私のパワーの源です。これ聴くとホンマに元気出ますよ。
901さん:凄い音やなぁ...(と言葉を失われる901さん)
私:じゃあ次はコレいきましょうか。「Beatles For Sale」を。
901さん:あっ、それちょっと地味なヤツですよね。
私:よくご存じですね。カントリーやロカビリー色が濃いです。(「Rock And Roll Music」をかける)【♪~】
901さん:いやぁ、コレも凄い迫力...
私:これ盤質がめちゃくちゃ良くてほとんどミント状態の盤なので、1Gの凄みが際立つんです。
901さん:(スピンドル・マークを確認しながら)ホンマにほとんど聴かれてないといっていいくらいキレイですね。
私:チリパチ皆無の1G盤が手に入ったのは奇跡に近いです。
901さん:いやぁ~、1G盤連発ですっかり満腹になりましたわ。又やりましょうね。
私:こちらこそ、ぜひお願いします。一緒に音楽聴きながら喋るのホンマに久しぶりなんですけど、全然ブランク感じひんかったです。今日はホンマに楽しかったです。是非又やりましょう!

ということで約5時間にわたって一緒にレコードを聴きまくって楽しいひと時を過ごし、大いにリフレッシュできた。やはり持つべきは同好の音楽友達。このブログをお読みの音楽好きの皆さんもこんな風にレコードを持ち寄って一緒に音を聴きながら音楽談義の花を咲かせるオフ会をされてみては如何だろう。自分1人で聴いているのとは又違った新たな世界が広がるはずだ。

901さんと久々のオフ会③

2024-05-06 | Jazz

901さん:青のアルバニタス行く前にヴォーカル聴きましょか。
私:何なりと。
901さん:チンクエッティとロス・パンチョスの共演盤なんやけど、自分が持ってるメキシコ盤の状態がイマイチやったんで国内盤のキレイなのをヤフオクで1,000円で手に入れたんですわ。で、そのセラーの方とメールでやり取りしててわかったんですが、この人がチンクエッティとクリフ・リチャードの熱烈なコレクターで、このチンクエッティ盤は同じメキシコ盤でもプロモ盤と普通の盤で1曲差し替えられてるっていうんですよ。
私:チンクエッティとクリフ・リチャードという組み合わせだけでもかなりアレですが(笑)、メキシコのプロモ盤と普通の盤を両方持ってるという時点でヤバい人ですね。ディープすぎる...
901さん:でしょ? よりにもよってそんな大物コレクターに対して “メキシコ盤持ってるんですけど...” とかエラソーに言うてしもうて...(笑) 
私:それ、めっちゃ恥ずかしいやつですやん(笑)
901さん:そうそう(笑) じゃあこの「Lisboa Antigua」かけて下さい。
私:【♪~】あれ? これって自分も持ってたような気が... ピンク色のジャケットやったっけ... (レコード棚を探す)あったあった、コレですわ。
901さん:へぇ、アルゼンチン盤ですか... おっ、「ベサメ」入ってますやん! メキシコ盤にも日本盤にも入ってへんのに。
私:ひょっとして差し替えられた曲って「ベサメ」じゃないですかね? ちょっとDsicogsで調べてみましょう... え~っと、南米ではメキシコ・アルゼンチン以外にもブラジルやペルーで、ヨーロッパではイタリア、スペイン、フランスで出てて、「ベサメ」抜きの11曲入りとか「ベサメ」入りの12曲入りとか国によって微妙に違うんですね。ジャケットもそれぞれ違ってて、フランス盤なんかランボーに出てくるベトナムの村みたいな風景写真だけで肝心のオーラどこにも写ってへんし...
901さん:へぇ~、なるほど。じゃあその「ベサメ」を聴かせてもらえますか?
私:もちろん!【♪~】
901さん:まさかチンクエッティの「ベサメ」聴けるとは思わんかったですわ...ヽ(^o^)丿 じゃあ次は青のアルバニタスお願いします。【♪~】さっきの赤いのとは又雰囲気が違うなぁ...
私:確かに。ピアノトリオでリズムセクションが変わるとこうも違うモンかというエエ見本ですね。
901さん:いやぁ、貴重なレコード聴かせてもろうてありがとうございました。次はヴォーカルのシルビア・テレス。このレコードはオリジナルのモノラル盤が欲しかったんですが、やっと手に入れることが出来ましてん。
私:kAPP の白ラベルって珍しいじゃないですか! こんなん初めて見ましたわ。ヴァージニア大学所蔵のプロモ盤、ってスタンプ押してありますね。【♪~】
901さん:この人は “ブラジルの美空ひばり” 的な国民的シンガーで、アメリカでも売り出そうとしたんやけど、全然ウケへんかったみたいやね。
私:へぇ~、そうやったんですか。僕はコレ、わりと好きなんですけどね。確か持ってたはず... (レコード棚を探す)あったあった... 自分のはステレオ盤でしたわ。そうそう、モノラル盤探したけど中々見つからなかったんで、しゃあなしにステレオ盤買うてモノ針で聴いてたんです。
901さん:次はブラジル繋がりでバーデン・パウエルの「知床旅情」。
私:そうきましたか...(笑)
901さん:歌のない歌謡曲ですけど、バーデン・パウエルもよぉこんなん引き受けたなぁと思いますわ。1曲が短いので、「知床旅情」と「花嫁」の2曲続けて聴きましょう。【♪~】
私:いや、そんなに悪くないと思いますけど...
901さん:これ(Canyon: CAL-5004)の続き番号でアートブレイキーが「花嫁」やってるレコード(CAL-5005)があるんですよ。
私:それ、存在だけは知ってます。「ジャズ批評」か何かで読んだ記憶が... ひょってしてそれも持ってきはりましたん? 
901さん:いや、あまりにも酷いので...(大爆笑)
私:ハハハ...(大爆笑)
901さん:次なんですが、Shiotchさんにぜひ聴いてほしかった女性ヴォーカルがありますねん。ラジオで流れてきていっぺんに気に入ってCDを即買いしたんですよ。この Madeleine Peyroux(マデリン・ペルー)っていう人の「Careless Love」。【♪~】
私:おぉ、これはノスタルジックな雰囲気がエエですねぇ。気に入りました。
901さん:歌伴がまためちゃくちゃ上手いでしょ、何ていうか、その、乗せるのが... 
私:これは私のスウィート・スポット直撃ですわ。
901さん:この人、誰かに似てるなぁと思うたら、若い時のビリー・ホリデイなんよね。
私:ホンマや! これは大当たりですわ。
901さん:気に入ってもらえてよかったですわ。
私:たまたまラジオで流れてきた曲を901さんが気に入って、それを僕に教えて下さる... こうやってどんどん新しい世界が広がっていくのが楽しいんですよ。やっぱりオフ会はエエなぁ...
901さん:そうそう。こういう刺激があるから気持ちが元気でいられるんよね。
私:いやぁ~、これはエエもん教えてもらいました。  《つづく》

901さんと久々のオフ会②

2024-05-05 | Jazz
901さん:じゃあ次はその可愛らしいやつお願いします。
私:ヘレン・メリルの7インチですね。
901さん:それにしてもよぉ全部集めはりましたね。3枚セットで買わはったん?
私:いえいえ、1枚ずつ執念で買い集めましてん。
901さん:eBayですか?
私:え~っと、どうやったっけ... 最近ボケてきて、昔のことが思い出せへんのですよ。確かブログに書いたと思うので... ちょっと待って下さいね...(自分の過去ブログを検索...)あったあった... 最初の1枚が Discogsで、残り2枚が eBayですわ。
901さん:じゃあ「Falling In Love With Love」お願いします。【♪~】おぉ、しっかりした音してますやん。この曲、ペティフォードのセロが効いてると思うんですよ。クインシーは天才ですね。ここにセロをもってくるところが...
私:うん、めっちゃわかります、それ。で、ジミー・ジョーンズの趣味の良いピアノを挟んで、満を持してクリフォード・ブラウンの登場... いやぁもう実に考え抜かれた完璧なアレンジですね。
901さん:次は「You'd Be So...」をお願いします。【♪~】おぉ、これもエエ音しとる...
私:もののついでと言っちゃ何ですが、オリジナル1stプレスLPと2ndプレスLPとの聴き比べもやりますか?
901さん:ぜひ!(2枚のLPのセンター・レーベルを見ながら)どちらが 1stなんですか?
私:このビッグ・ドラマーで銀縁ある方が 1stです。
901さん:そう言えば昔ユニオン人が “銀縁がズレてる盤が結構あって、それは価値が下がる” って言うてはったのを思い出しましたわ。これはキレイですね。高く売れますよ。
私:売りませんて...(笑) じゃあまず 1stプレスの方から... 【♪~】
901さん: うわぁ、やっぱり全然違うわ。凄い迫力ですね。
私:あれ?前に聴いた時よりもエエ音してる気がする。何回も超音波クリーニングしたのが効いたんかな? 自分のレコードの音にビックリしてたら世話ないけど...(笑) じゃあ次は 2ndプレスいきますね。【♪~】
901さん:う~ん、これもエエ音には違いないんやけど 1stプレスの迫力には負けるね。アンサンブルの迫力が違うねぇ。2ndの方は整然としててカッチリとまとまった良い音、という感じやね。
私:ホンマにそうですよね。でも盤質がめちゃくちゃエエので、これはこれで手放せへんのです。
901さん:なるほど。
私:因みに裏ジャケットが 2ndプレスまではブルーで、3rdプレスから黒色印刷になるんです。実はその 3rdプレスも持ってたんですが、音が良くないので売っちゃいました。たったの2年の違いですが、音は天と地ほど差がありましたわ。
901さん:へぇ~、そうなんですか。じゃあ次はブラウニー繋がりでメトロノームの7インチ「Cliff Brown Art Farmer」を。これはさすがにちょっと高くて Vol.1とVol.2 の2枚セットで8,000円しましたわ。
私:おぉ、これは又貴重な盤を! でもこれで8,000円ならお買い得ですよ。
901さん:そう言っていただけると何か嬉しいですな。
私:【♪~】さすがはスウェーデンのメトロノームだけあって音もエエですね。
901さん:当たり外れはあるみたいですけど、これに関しては大当たりでした。じゃあ次はコレを。
私:おぉ、パシフィックの「Solo Flight」の7インチ!
901さん:ペッパーのこの「I Can't Give You Anything But Love」、昔ShiotchさんにCDを焼いてもらったのが気に入って、コレが入ってるオムニバスLPの「Solo Flight」が欲しくてずーっと探してたんですが中々手に入らなかったんですよ。そしたらある時この日本盤シングルがヤフオクで550円で出てて、大喜びで買ったんです。CDよりも1分長いロング・ヴァージョンでめちゃくちゃ嬉しかったなぁ...
私:「Solo Flight」のシングル盤って初めて見ました。【♪~】音、良いですね。日本盤も侮れません。オリジナル盤と聴き比べますか?
901さん:えっ、持ってはるの? ホンマにここ、何でもあるなぁ...
私:そんなことないですよ。ペッパーが入ってるからたまたま持ってただけですわ。
901さん:【♪~】やっぱりオリジナル盤の音はエエなぁ。じゃあ次もペッパーのSONET 7インチで「Art Pepper Returns」。これはヤフオクで2000円でした。
私:“タンパのペッパー” をスウェーデン盤7インチで聴くとは粋ですね。【♪~】おぉ、これ音めっちゃ良い! ジャケットもエエし、僕も買おうかな。
901さん:じゃあ次はアルバニタスの PRETORIA盤2枚を聴かせて下さい。こんなん2枚ともオリジナルで持ってる人、そんなにいてへんでしょ。
私:2枚とも確か5年ほど前に手に入れたんですが、自分でもまさか買えるとは思うてませんでしたよ。澤野の復刻盤がエエ音してて、それで十分満足してたんです。でも、ジャズで欲しい盤をほぼ買い尽くした時にあわよくばと欲が出て、ダメ元で探してるうちに段々本気になっていって、最後は執念で手に入れました。
901さん:じゃあまず赤い方、「3am」からお願いします。【♪~】ダグ・ワトキンスのベースが凄いなぁ...
私:地の底から響いてくる感じですね。
901さん:いやぁ、コレはたまらんですわ。
私:喜んでいただけて何よりですわ。赤バニタスはピアノトリオかくあるべし!と言いたくなるレコードですね。
901さん:そういえば「ソフトリー」も入ってるね。
私:B①です。昔オフ会で「ソフトリー」大会やった時に 45ヴァージョン一気聴きやったのが懐かしいですね。
901さん:アレはホンマに面白い企画やったなぁ... 思いつかへんで、ふつう(笑) しかもMJQもソニー・クラークも敢えて外しての45曲やからね。
私:その辺の拘りはハンパなかったですね。じゃあB面も聴かはりますか?
901さん:いやいや、次来る時の楽しみに取っときますわ(笑)  《つづく》

901さんと久々のオフ会①

2024-05-04 | Jazz
 連休初日に901さんがレコードを何枚も抱えて我が家に遊びに来て下さった。901さんと知り合ってもう25年ほど経つが、私の音楽人生にとてつもなく大きな影響を与えて下さった大恩人である。音楽に対する造詣の深さだけでなく人間的にも素晴らしい方なので、音楽談義はいつも時間の経つのも忘れてしまうほど楽しい。901さんとは 2003年から月に1回のペースでウチの家にレコードを持ち寄って一緒に聴くオフ会のようなものを行ってきており(←これも律儀にカウントして下さっていて、117回もやってたのにはビックリ...)、様々な事情で2015年の3月を最後に中断していたのだが、この前久しぶりに “又一緒にレコード聴きませんか?” と連絡したところ快諾して下さり、今回何と9年ぶりに復活したというワケだ。二人だけの再結成ということで “ペイジ&プラント” みたいなもんだが、あまりにも楽しかったのでこの至福のひとときを忘れないためにブログに書き記しておこうと思う。

901さん:いやぁ~、懐かしいねぇ...
私:ホンマにお久しぶりです。今日は腹一杯レコード聴いていって下さい。
901さん:じゃあ早速 “イントロのペッパー” から行きましょか。
私:おぉ、いきなりですか!
901さん:このレコード、ディスクユニオンの買取価格が凄いことになってますねん。
私:うわ、エグぅ...
901さん:コレが欲しくてお金貯めてたんやけど、実際に音を聴かずに10万円超えるレコードを買うのは勇気いりますやろ。やっぱりB-SELSさんみたいに自分の耳で聴いてから買えるのが安心ですな。
私:ホンマそうですよね。
901さん:かと言って国内盤のブルーノートのレーベルでは雰囲気出ぇへんからねぇ。
私:その気持ち、めっちゃわかります。
901さん:そんな時にヤフオクで 2ndプレスの SCORE盤見つけたんですよ、8,000円で。オリジナルの INTRO盤の何十分の一の値段やけど、レーベル・カラーもオリジナルにソックリなので買いましてん。
私:【♪~】材質のせいかサーッというノイズは入るけど、アルトの音はエエ感じですね。コスパよろしいやん。
901さん:じゃあ本家の音を聴かせて下さい。「When You're Smiling」を。【♪~】エエなぁ... この曲だけで10万円分ぐらいの価値あるわ。
私:ホンマに。僕もこの曲めっちゃ好きです。
901さん:それにしてもキレイな盤やねぇ... めちゃくちゃエエ音してるわ。ジャケットもピカピカやし。これユニオンに持って行ったら高ぅ売れますよ。
私:ハハハ... ありがとうございます。絶対に売りませんけど(笑)
901さん:じゃあ次はジャンゴの10インチ。ブログに書いてはったのを見てエエジャケットやなぁと思って探して見つけたのがコレですわ。同じジャケットの国内盤で、レーベルはANGEL盤ですねん。ヤフオクで800円でしたわ。
私:おぉ、コレは珍しい! 初めて見ました。これが800円て、901さんホンマに買い物の達人ですね。
901さん:じゃあ「Minor Swing」を2枚続けて聴かせて下さい。
私:【♪~】音も良いじゃないですか。エエ買い物しやはりましたなぁ...
901さん:でもやっぱり仏PATHEのオリジナルの音は違いますな。次もジャンゴ繋がりでHenri Crolla の「Notre Ami Django」。CDになってたヤツの元ネタLPです。これもヤフオクで800円。
私:【♪~】これも初めて見ました。めちゃくちゃ音良いですね。グラッペリも入ってるし、これは欲しいなぁ... やっぱり901さんと音楽の話するとめちゃくちゃ刺激受けますわ。
901さん:喜んでもらえてよかったです。じゃあ次はジミー・ジョーンズの10インチお願いします。これ聴いてみたかったんですよ。こんな激レア盤、よぉ手に入れはりましたなぁ。
私:自分でも何故買えたのか正直言ってワカランのです(笑) たまたま運が良かったとしか言いようがないですね。
901さん:わかる! レコード買うのって運が大事やもんね。【♪~】うわぁ、凄いエエ音しとるなぁ... これはロイ・ヘインズを聴くレコードやと思うけど、ブラッシュの音が凄いなぁ。国内盤の音とは全然違うわ。
私:私にとって “ジャズはブラッシュ” ですから。
901さん:ハハハ... Shiotchさんホンマにブラッシュ好きやからねぇ。じゃあ次はこんなCD持って来たんやけど、知ってはる?
私:山本玲子の「Wilton's Mood」? いや、知らないです。
901さん:ヴァイブ奏者なんやけど、いっぺん聴いてみて。とりあえず1曲目の「ボヘミア」いこか。
私:ミルト・ジャクソン系かな?【♪~】おぉ、これはユニーク。ミルト系ちゃいますね。めっちゃ新鮮!
901さん: でしょ! まだヴァイブ始めてそれほど日が経ってへんせいか、ミルトっぽくないところが逆にエエんですわ。
私:わかります。
901さん:これ聴いてほしかったんですよ。Shiotchさんヴァイブ好きやし。寺島レコードですねん。
私:寺島さんってまだ現役でやってはるんですか?
901さん:もう80歳超えてるはずやから引退しはったんちゃいますか?
私:なるほど。どうりで音にも選曲にも寺島色が出てるワケですね。コレはエエ盤教えてもらいましたわ。
901さん:次もCDで Brian Bromberg の「Wood 2」。
私:【♪~】うわぁ、めっちゃ生々しい音。キングの “低音” シリーズですね。
901さん:Shiotchさんとこのアルテックのスピーカー、ヴィンテージ物やのにこういうオーディオファイル用CDの音もバリバリに再生するのが凄いですな。
私:ありがとうございます。新旧問わず “ガツン!” とくる音の再生を追求して完成した “二刀流” システムなんですけど、愛機を褒めてもらうとやっぱり嬉しいですね。 《つづく》