shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「With The Beatles」各国盤バトルロイヤル

2019-05-28 | The Beatles
 B-SELSでの「With The Beatles」マト番違い聴き比べがとても面白かったので、調子に乗った私は “UK盤同門対決であれだけ違いが出るんやから各国盤同士のバトルロイヤルをやったらもっとオモロイやろな...(^.^)” と考え、手持ちの「With The Beatles」モノラル盤をかき集め(←いくら何でもこのレコードを泣き別れステレオ・ミックスで聴いて幸せ... というビートルズ・ファンはいないでしょ?)、B-SELSに持ち込んだ。
 Sさんが “今日は何を持ってこられましたか?” と仰ったので “「With The Beatles」の UKマト番違い聴き比べが面白かったので今度は各国盤でやりませんか?” と言うと “それはいいですねぇ!” と眼鏡の奥の眼をキラリと光らせながら快諾して下さった。一応スウェーデン ⇒ デンマーク ⇒ ニュージーランド ⇒ オーストラリア ⇒ インド ⇒ イタリア ⇒ フランス ⇒ カナダの順で聴いていき、締めはお店にあった UKラウドカット1N盤。もちろん全曲聴いていると真夜中までかかりそうなので、A①「It Won't Be Long」とB①「Roll Over Beethoven」に絞って聴くことにした。
 聴き比べは最初モノ針でスタートしたのだが、出力が小さくて私的にイマイチな感じがしたので無理をお願いしていつものステレオ針に戻していただき(Sさん、わがまま言ってすんません...)聴き比べリスタート。以下、Sさんとの会話形式で各盤の感想を書いていこうと思う。

①スウェーデン盤
 Sさん:これは中々上質なラウドカットの音ですね。ハイハットの音がとても良いです。
 私:確かにエエ音やとは思いますが、ちょっと高域寄りじゃないですか?
 Sさん:それは言えますね。UKマザーの音なんやけど、微妙に違う感じです。
 私:この前やった「Wild Life」聴き比べを思い出しました。スウェーデン人はこういうシャキシャキした音が好きなのかもしれませんね。

②デンマーク盤
 Sさん:これは素晴らしい! 文句ナシです。ラウドカットの王道を行く音ですね。
 私:同感です。スウェーデン盤に比べるとこっちの方が中域が分厚くてヴォーカルの押し出し感が強いです。
 Sさん:とにかく生々しい音ですよね。「With The Beatles」にゴールド・パーロフォンがあったらこんな感じで鳴るんじゃないでしょうか。
 私:名言ですね。その言葉がすべてを物語ってると思います。

③ニュージーランド盤
 私:何じゃこりゃ?
 Sさん:音、小さいですね...
 私:さっきのデンマーク盤との落差が激しすぎますよ。ジョンの「Rock 'n' Roll」NZ盤と同じ症状が出てますね。コイツはダメです。

④オーストラリア盤
 Sさん:う~ん、UKマザーのはずなのに、何か変ですね。
 私:悪くはないけど、UKやデンマークに比べると確実に何かが足りない。
 Sさん:低域は良いんですが、中高域が足りてない。
 私:同じ UKマザーなのに... まぁこれがアナログの面白さでもあるんですけどね。

⑤インド盤
 Sさん:これは以前聴かせていただいた盤ですね。
 私:そうです。今回は他との比較の意味も込めて持って来ました。
 Sさん:典型的な7Nの音ですね。UKマザーに忠実な音...
 私:良くも悪くも “7Nの音” そのものという感じですね。

⑥イタリア盤
 Sさん:うわぁ、さすがイタリア。センター・レーベルが真っ赤ですね(笑)
 私:そりゃあフェラーリの国ですから(笑)
 Sさん:ローカル・リカットで、イタリア独自の音してますね。
 私:まぁイタリアだから、これはこれでエエんとちゃいますか(笑) ドライで何の悩みも無いといった感じのノーテンキな(?)音ですよね。聴いてて気持ちEです。

⑦フランス盤
 Sさん:うわっ、音がデカいですね。
 私:音はデカいけど、雑すぎません?この音。デリカシーに欠けるというか...
 Sさん:私もそう言おうと思ってました(笑) これはダメですね。
 私:ジャケットのタイトル文字のオレンジ色はホンマにキレイなのに...

⑧カナダ盤
 Sさん:おぉ、これは面白い。同じキャピトルなのに US盤とは違う音ですね。
 私:そうなんですよ。私もビックリしたんですが、中々聴かせるでしょ?
 Sさん:特にヴォーカルが良いですね。「Till There Was You」なんかまるで「ポール・マッカートニー&ザ・ビートルズ」みたいな感じです(笑)
 私:またまた上手い例えですね。器楽演奏よりも「歌」にスポットを当てた音作りですよね。
 Sさん:これを聴いていると当時の北米大陸でビートルズがどのように捉えられ、どんな風に売り出そうとされていたのかが垣間見えて興味深いです。

⑨UKラウドカット盤
 Sさん:最後にコレ聴いてみて下さい。入ったばかりの盤なんですが、ラウドカットなのに音がつぶれていないんです。どうですか?
 私:ほほぉ~、これは面白い。確かに音圧が高いのに音がキレイですね。
 Sさん:でしょう? スタンパーは3桁なのに、本当に不思議です。
 私:最後にエエもん聴かせてもらいました。やっぱりラウドカットはエエなぁ...(←結局それかよ...笑)

 とまぁこんな感じで延々3時間ほどかけて9枚の「With The Beatles」を取っ替え引っかえしながら聴いたのだが、思っていた以上に各国盤の特徴がハッキリ出て実に面白い聴き比べとなった。私の個人的な評価としては、基準となる UKラウドカット盤(1N)を10点満点とすると、①デンマーク(10点)、②カナダ(8.5点)、②イタリア(8.5点)、④スウェーデン(7.5点)、⑤インド(7点)、⑥オーストラリア(5.5点)、⑦ニュージーランド(4.5点)、⑧フランス(4点)、という感じ。何かサッカーのワールドカップ特集みたいになってきたな...(笑)
 ということで「With The Beatles」各国盤バトルロイヤルのウィナーはデンマーク盤に決定!!! 最後になりましたが、こんな思い付きの珍企画に最後まで付き合って下さったSさん、ホンマにどうもありがとうございましたm(__)m  よかったらまたやりましょね(笑)

【追記】この聴き比べの後、Sさんにレコードをお貸ししてじっくり聴いていただいた結果、イタリア盤の音がえらく気に入られたようで、“このカラッとしたラテン系の音作りがアルバムの性格に合っていてとっても気に入りました。” とのこと。又、“スウェーデン盤の「マネー」のピアノの音が他の盤とは違ってとても鮮明に聞こえたのが印象に残ってます。” とも仰っておられた。試聴時に評価が低かった盤に関してもポジティヴなポイントを見つけられたようで、音圧不足だった NZ盤は “ヴォリュームを上げてやればとても整った良い音” だったし、高音成分が不足気味だった OZ盤も “それなりに大きな音で聴くとバランスが改善されたし、何よりも音の鮮度が良かった。” と評価 UP。最低評価だったフランス盤ですら、“雑な音を得意とする(?) GRADOのモノ・カートリッジに変えたらかなり改善された” とのことで、“こーやって色んな国のレコードを一気聴きできてとても貴重な経験になりました(^o^)丿” と喜んでおられた。

「With The Beatles」UKモノ盤のマト1/4/5/6/7聴き比べ

2019-05-23 | The Beatles
 先の大型連休中はどこへも行かずにネットと B-SELSにへばりついていたお蔭で良いレコードを山ほど買えたのだが、そんな中でも以前取り上げた「Uncle Albert~Admiral Halsey / Too Many People」の USプロモ・シングルに次ぐ収穫が、今回ご紹介する「With The Beatles」UKモノラルのマト7N盤だ。
 「With The Beatles」UKモノラル盤と言えば私の中ではラウドカットで有名なマト1N盤が絶対王者として君臨しており、それ以外のマトリクスなど全くアウトオブ眼中だったのだが、2ヶ月ほど前に B-SELSにお邪魔した時に Sさんが「こんなの聴いてみませんか?」と仰ってかけて下さったのが「With The Beatles」UKモノラルのマト4N/3N盤だった。
 その時は “2ndプレスのマト4N/3N盤なんてどうせ大したことないやろ...” という軽い気持ちで聴き始めたのだが、実際にスピーカーから出てきた音はというと、確かにマト1N盤に比べると音圧は低いものの、これまで何百回と聴いてきたラウドカット盤のド迫力サウンドとはまた違った魅力があって、「2ndプレス盤の音も捨てたモンじゃないですねぇ...」と言うと、「でしょ。これはこれで結構良い音してると思うんですよね。」と Sさん。
 具体的に言うと、「All I've Got To Do」や「Till There Was You」、「Devil In Her heart」といったミディアム・テンポの曲が実に味わい深く、ヴォーカルが心に切々と訴えかけてくるのである。そしてあの「Please Mr. Postman」が今まで聴いたことがないような麗しい音で鳴ったのだ。これをラウドカット盤の “控え” として持っておくのも悪くないなぁと思ったが、盤質がめちゃくちゃ良かったせいもあって12,800円の値札が付いており即決とはいかず、それからというもの、B-SELSに来るたびにこの盤の存在を確認して “よしよし、まだ残っとるな... もうちょっと待っとれよ...” と秘かに狙っていた。
 そして迎えたこの GW、ようやくキャッシュの用意ができたので勇躍 B-SELSに乗り込んだところ、4日前まで壁面を飾っていた「With The Beatles」マト4N/3N盤が無い。慌ててエサ箱を探してもどこにも無い。 Sさんに尋ねると “あぁ、あの盤ね。あれは昨日常連さんが買って下さったんですわ。” とのこと。やはりコレクターの活動が活発になる大型連休は鬼門である(←自分のことを棚に上げてよぉ言うわ...)。そしてこの前ここに書いた “目をつけていたのが売れちゃって落ち込んだレコード” こそが他でもないその盤だったのだ。ということで、コレクターの教訓 “気になるレコードは見つけた時に買え。” を改めて実感させられた GWになった。
 この話にはまだ続きがあって、前に書いたようにその日は家に帰ってからネットで USプロモ・シングルを検索しまくったのだが、その時にふと思いついて「With The Beatles」のマト4N/3N盤も調べてみたところ、盤面ズタボロだったりジャケットのリンゴの顔部分がちぎれてなくなっていたり(笑)親の仇でも取るかのようにレーベル面が黒マジックで塗りつぶされていたり(?)といった “訳あり盤” だらけの中に1枚だけ盤質 VG+ でジャケットもそこそこキレイな 4N/4N盤が£20で出ているのを発見。13人のウォッチャーがいると表示されており、この時を逃せば買われてしまうに違いないと(← eBayの思うツボやな...)例の教訓が頭をよぎった私は送料が£8.95とめちゃくちゃ良心的だったこともあって、思わずその場で衝動買いしてしまった。
 その翌日、例の「Uncle Albert~Admiral Halsey / Too Many People」USプロモ・シングルを B-SELSに回収に行った時に Sさんに「マト4N/3N盤が売れたって聞いたので昨日の晩に 4N/4Nの盤を eBayで衝動買いしましてん。」と報告すると、「えー? いつものことながら速攻ですねぇ...」とビックリされてしまった。そこで調子に乗って「せっかくなのでお店にある 5N、6N、7Nの盤を聴き比べさせてくださいませんか?」とお願いすると、「喜んで!」と快諾していただいた。今年に入って何度となく繰り返されてきたいつもの展開である(笑)
 まずはマト5N盤だが、A①「It Won't Be Long」がスピーカーから流れ出てきた瞬間に “これじゃない感” が濃厚に漂う。リズム隊、特にベースがほとんど聞こえないに等しいこの 5Nサウンド... スッカスカではないか! さすがに高音域だけは USキャピトル盤が逆立ちしても出せないクリアネスがありUK盤の片鱗を感じさせるものの、ロックンロールに必要不可欠な “熱さ” が感じられないのだ。“よくできた日本盤の音” と言ったらみんな信じてしまうだろう。
 次に聴いたのはマト6N盤で、私と Sさんの予想通り “5N盤に少し低音を足した” という感じの音。しかし 5N盤よりも心持ちマシというだけで、ハッキリ言ってあまり変わり映えのしない中途半端なサウンドだ。ビートルズのヴォーカルとコーラス・ワークにスポットを当ててみました、というなら分からないでもないが、やはりこれはロックンロールの音ではない。
 最後に聴いたのはマト7N盤で、5N、6Nに比べると明らかに中低音が復活しており、マト1N盤の存在を知らなければもうこれで十分という感じの、非常にコスパの高いサウンドだ。B①「ロール・オーヴァー・ベートーベン」なんか、ラウドカット盤の耳に突き刺さるような鋭利なサウンドを絶妙なバランスにまとめ上げて聴き易くした感じだし、B⑦「マネー」のプリミティヴなリズムも(線は若干細いものの)しっかりとトグロを巻いて(?)おり、日常聴きならこれで十分と言っても過言ではないほど完成度が高い。UKモノの音がこの7Nをもって一応の完成をみたというのも大いに納得のいくシャキッとした音作りだ。
 ここで Sさんが「比較するためにラウドカットと7Nを交互に聴いてみましょう。」ということでマト1N盤をかけて下さった。う~ん、これこれ。やっぱり聴き慣れたこの音が一番エエわ...(^.^) と思ったが、続いてかかった 7N盤も決して捨てたモンではない。例えるなら、ラウドカット1N盤がスカイラインGT-Rで、7N盤がノーマルなスカイラインGTという感じ。ビートルズ・ファンのみんながみんな私のようなラウドカット中毒(笑)とは限らないので、“聴き易い” という理由から7N盤に軍配を上げる人がいても何ら不思議ではない。まぁ私の1N信仰は1ミリたりとも揺るがないが...(^.^)
 というワケで、「With The Beatles」UKモノラル盤についての私なりの結論は “爆音好きは1Nでコスパ重視は7N。好事家は3N, 4Nもアリ。” というのが正直なところ。尚、後日イギリスから届いた 4N盤は見た目は VG+ だが聴感上は余裕の NMといえるほどの盤質の良さで大喜び(^o^)丿 音作りの傾向は B-SELSで聴かせていただいた 4N/3N盤とほぼ同じで、ラウドカットでない分ビートルズの音楽にじっくりと向き合ってしっかりと聴き込めるところがかえって新鮮に感じられた。最後になったが、マト違いのレコードに関する私の視野を広げ、このような非常に興味深い聴き比べに誘ってくださった Sさんに感謝!!!

「Band On The Run」Nimbus Supercut 盤

2019-05-18 | Paul McCartney
 ディスクユニオンの通販サイトでビートルズ・ソロの USプロモ・シングルを色々探していた時のこと、海外サイトに無かった「Band On The Run」を検索したら一応あるにはあったのだが、そいつが何とテストプレスということで30,400円という無慈悲な値付け(←いくら超稀少なテスト盤とはいえシングル1枚でこのお値段!)のため即撤退。ビートルズ・コレクターの道は厳しいのぅ... と凹んでいたら、その「Band On The Run」の検索結果の中に「NIMBUS SUPERCUT」という禁断のフレーズ(笑)を発見! その瞬間、頭の中からプロモ・シングルのことなど完全に消し飛び、“うわぁ、ニンバス・スーパーカット出とるやん! でもどうせお高いんでしょ?” と思いつつも一応値段を確認てみると、EX+盤で 59,800円となっている。
 確かに高額ではあるが、安くても7~8万円、ヘタをすれば10万近くはいくだろうと思っていた私は一瞬 “ひょっとするとこれはお買い得なんか???” と誘惑に負けそう(←まともな神経しとったらLP1枚に6万円なんて論外なんやろうけど...)になった。しかしこの1週間だけで既に10万円近くをレコードに使ってしまっていた私は “やっぱり無理。こんなことしとったら破産してまうわ...(>_<)” と一旦は諦め、パソコンを閉じた。
 その日の夕方、昔一緒にレコ屋巡りをした友人に電話して猟盤の近況報告なんぞをしたのだが、その時にたまたまディスクユニオンの話題が出て、“さっきもユニオンの通販サイトでポールのニンバス・スーパーカット盤っていうレア盤を見つけたんですけど、59,800円やったんで腰が引けましてん。” と言うと “それは shiotchさんらしくないなぁ... 昔の shiotchさんやったら即買うてたと思うで。” と言われ、“いやぁ、最近お金のやりくりが色々と大変ですねん(*_*)” と言ってその場は終わった。
 しかし電話を切ってから “確かに言われる通りや。ワシとしたことが完全に弱気になっとったわ。あの超高音質ニンバス・スーパーカットを手に入れるチャンスやぞ... 6万ぐらいなんぼのもんじゃい!” と迷いが吹っ切れた私は即ユニオンにメールを送信。ダメ元でカードのボーナス一括払いが可能か確認するとラッキーなことにOKとのことだったので、その場で買いを決めた。長年憧れ続けたあのニンバス・スーパーカット盤を、何と衝動買いしてしまったのだ。その日はちょうど大型連休の最終日で、“明日から仕事かぁ... ホンマにイヤやなぁ...(>_<)” という鬱状態だったのが、この買い物のおかげで超ハイテンションでの社会復帰となった(笑)
 2日後に届いた盤はさすがユニオンだけあって盤・ジャケット共に極上のコンディション。デッドワックスには手書きのマト番の他に機械打ちで NIMBUS ENGLAND と誇らしげに刻まれている。この喜びはぜひ Sさんと分かち合わねばと思い、到着翌日に B-SELSにこのレコードを持ち込み、“「Band On The Run」のニンバス・スーパーカット盤買っちゃったんですけど一緒に聴きませんか (^o^)丿” と言うと “それはぜひ聴きたいです!!!” ということで2人してワクワクドキドキしながら試聴開始。
 A①「バンド・オン・ザ・ラン」が始まってすぐに“う~ん、これは明らかに違いますねぇ~(≧▽≦)” と唸ったまま、目を閉じて聴いておられる。A②「ジェット」で目を見開き、“いやぁ、これは本当に凄い音です! ドラムの音がとてもリアルですね。” と仰るので、“そうなんですよ。「ヴァンデビルト」なんかもうブッ飛びますぜ。” と私。A③「ブルーバード」では “倍音がしっかりとキレイに聞こえますねぇ...” と感心されることしきり。で、いよいよ私がイチ押しのA④「ミセス・ヴァンデビルト」に突入したのだが、ポールのブンブン唸るベースの重量感が凄まじく、これまた重戦車のようなバスドラと相まって、2人とも大コーフン(笑) “タムタムが目の前に見えるようです!!!” と Sさん。 “そうそう、やっていることが見えますよね。オーディオのプロが本気だしたらこんなレコードが出来るんか... っちゅー感じですわ。” と私。A⑤「レット・ミー・ロール・イット」では “かぶりつきでライヴ聴いてるような生々しさですね!” と喜色満面の Sさん(^.^)
 A面が終わり、意気揚々という感じでB面にいく。B①「マムーニア」のアコギの響きが実に美しく、アコギ大好き Sさんはもうニッコニコ(^.^)  コーラス・ハーモニーの美しさも絶品で、まるでハイビジョンが 4Kにでもなったかのような精緻なサウンドだ。B②「ノー・ワーズ」後半のギター・ソロのパートでは “こんなに音が伸びるんですねぇ~” と感心することしきり。B③「ピカソズ・ラスト・ワーズ」では、このアルバムを何百回と聞いてきたであろう Sさんをして “こんな音が入ってたんですねぇ...” と言わしめたニンバス盤。そして Bラスの「1985」が異様なほどの盛り上がりで大団円を迎え、タイトル曲のサビに戻ってフェイドアウトすると、2人で大拍手(笑) 私が “究極の再生芸術を見た、っていう感じですね!” と言うと “いやぁ... エエもん聞かしてもらいました。まさか生きているうちにニンバス盤を聴けるとは思いませんでした。” と仰ったので “私もまさか自分がニンバス盤を買うことになるなんて正直夢にも思いませんでしたわ。” と言って2人で大笑い。“でも元はと言えば、先週聴かせていただいた USプロモ・シングル盤がきっかけなんですよ。あれがなかったらユニオンの通販サイト見てへんわけやし... ” と感謝すると照れくさそうに笑っておられた。
 とまぁこのように予想を遥かに上回る高音質を聴かせてくれた「バンド・オン・ザ・ラン」のニンバス・スーパーカット盤。今年に入って早くも5枚目の “神棚盤” となったワケだが、そーなってくると当然もう1枚のアレ、すなわちニンバス盤「ペパーズ」はどうなるんだ?という風に話が展開していくわけである。で、恐る恐る eBayを覗いてみると£1,750... 日本円にして約25万円で NM盤が、そしてシールドの正真正銘ミント盤が£3,000(43万円!!!)で出品されていた。ヤフオクを見たらユニオンから31万円のが1枚出ているのみ... う~ん、まいったなぁ。マグロ船に乗るか、あるいは原発で働くかでもしないかぎり、ポンと出せる額ではない。ビートルズ・コレクターの道は厳しいのである(*_*)

「Uncle Albert / Too Many People」のモノラル・シングル盤

2019-05-14 | Paul McCartney
 この前のGW中に B-SELSを訪れた時のこと、この日はたまたま先客の方々とお店の奥のテーブルで相席することになったのだが、前々から目を付けていたレコードが売れてしまって(←さっさと買っておけばよかったのだが、こればっかりはしゃあない... )ちょっと落ち込んで口数が少なかった私に気を遣ってくださったのか、 Sさんが “shiotchさん、こんなんどうですか?” とかけてくださったのがポールの USプロモ・シングル「Uncle Albert ~ Admiral Halsey / Too Many People」(PRO-6278)だった。私はシングルのプロモ盤にはあまり興味はないのだが、この盤は違った。何とモノラル盤だったのである(゜o゜)
 この2曲が入っている「ラム」のモノラル盤と言えば2ヶ月ほど前にこのブログでも取り上げた邪道(?)のブラジル盤が頭に浮かぶが、こちらは王道中の王道を行く正真正銘の US盤、つまり例の激レア・プレミア付き $15,000盤の 12分の2、つまり $2.500(約28万円!)分の値打ちがある USモノの音が聴けるというワケだ。これはえらいこっちゃである。私は買い損ねた盤のことなどすっかり忘れ、お店のスピーカーから出てくる音に全神経を集中させた。
 出てきた音はブラジル盤ともニュー・リマスター盤とも激しく一線を画す古き良きモノラル・サウンドで、そのヴィンテージな味わいはとにかく素晴らしいの一言に尽きる。特に B面の「トゥー・メニー・ピープル」はモノラル効果が絶大で、そのまま「3レッグズ」へと突入してくれへんかなぁ... と思わず無い物ねだりをしてしまうくらいの野太いサウンドだった。
Paul & Linda McCartney - Too Many People - 45 RPM - RARE MONO MIX


 結局その日はスーパーが閉まる前に連休中の食材を買いに行かなくてはいけなかったので早目にお店を出たのだが、家に帰ってからは真夜中までこのプロモ・シングル盤のことを調べまくった。まず最初に Discogsで調べてみたところ、意外なことに3枚も出ていたのだが、最安の盤は G+の分際で£70(= 約1万円)という強気の値付けでビックリ。更に残りの2枚はどちらも NMながら $150というえげつなさで、eBayに至っては何と $175(= 約2万円)というのだからハナシにならない。
 こういう時は案外灯台下暗しで国内のサイトで安く買える場合があるのでヤフオクを見てみたが出品はナシ。それならばとディスクユニオンの通販サイトで検索してみたところ、1枚だけ在庫があるにはあったのだが、お値段の方は EX+ 盤が17,400円と、Discogsとほぼ同じ価格設定だ。しかも商品説明欄には「最難関タイトル!!」と ! が2つも付いている。私は自分の無知を思い知ると同時にビートルズ関連のレコード蒐集の奥の深さを痛感した。
 B-SELS で聴かせていただいた盤は確か VG表記だったがそれはあくまでも Visual grade での話。実際の Play gradeは EX+レベルで聴感上ほぼ問題ナシの良盤であり、しかもそれが7,800円というお値打ち価格なのだから実に良心的な商いをされていると言える。お店で聴いたあの音がどうしても忘れられなかった私は購入を固く決意し、その翌日にお店に電話を入れて “昨日聴かせていただいたモノラルのプロモ盤シングル、まだ売れてませんか?” と訊くと “そんなん、売れるワケないじゃないですか!” と大笑いされたのだが、大型連休を利用して全国のビートルズ・ファンが B-SELS詣でに来るのではないか... と気が気ではなかった私は電話を切って30分後には B-SELSで支払いを済ませていた(笑)
 Sさんによると “盤の表面に結構な数のスリキズがあるので、どうしても盤質表記を厳しめにせざるを得なかったんです。” とのことだが、私は音に出ないキズなんか全然気にならないので余裕のセーフ(^o^)丿  因みに “この盤いつ頃から置いてはったんですか?” と尋ねると “店のオープンの時からずーっと置いてましたよ。” と言われ、こんな宝物がエサ箱に眠っていたというのに半年以上も見逃していたことを大いに反省した(>_<)  そういえばいつも真剣に見るのは LPの棚ばかりでシングル盤の方はほとんど見たことがなかったなぁ...
 ということで、これまではビートルズ関連のシングル盤は UK盤で揃えて(あとちょこっと NZ盤)安心していたのだが、B-SELSで USプロモのモノラル盤の存在を知ってしまった今となっては指をくわえて見ているわけにはいかない。野太いモノラル・サウンドが三度のメシより好きなヴィンテージ・レコード愛好家の血が騒ぐのだ。最近はブラジル盤やらインド盤、アイルランド盤といったマニアックな各国盤にかまけていたが、これから暫くはモノラルの USプロモ・シングルを徹底的に狙ってやろうと戦闘モードに突入した。
Paul & Linda McCartney - Uncle Albert/Admiral Halsey - Mono 45RPM


【追悼】このブログを書き終えてさぁアップしようとネットを開いたところ、トップページのヤフー・ニュースでドリス・デイが亡くなったと知ってビックリ... う~ん、ショック(>_<) 彼女は古き良きアメリカの象徴のような存在であり、私にとってはペギー・リーと並ぶ2大フェイヴァリット・フィーメイル・シンガーだった。悲しいなぁ...(*_*) もちろんビートルズ・ファンにもこの曲でおなじみだ。心より追悼の意を込めて... RIP Doris Day... Dig it, Dig it...
Dig It (Remastered 2009)

アイルランド盤で聴くビートルズ・ソロアルバム特集

2019-05-11 | Paul McCartney
 興味本位で買ったジョンの「ロックンロール」とポールの「アイルランドに平和を」のアイルランド盤が両方とも大当たりだったこともあって、私は他のビートルズ関連の LPもアイルランド盤で聴いてみたくなった。まず本体のビートルズを Discogsで調べてみたが、リアルタイムで出たアイルランド盤は「ホワイト・アルバム」しか載っていない。次に popsikeで過去の eBayデータを調べてみたところ、「アビー・ロード」と「レット・イット・ビー」もアップルのレーベルで出ていることが分かったが、他のアルバムはみんな70年代リイシューと思しき2ボックス EMIの銀パロ・レーベルしか出てこない。
 ソロの方もアイルランド盤は少なくて、ジョンでは「ロックンロール」以外に「ジョン魂」「イマジン」「シェイヴド・フィッシュ」、ポールでは「バンド・オン・ザ・ラン」と「バック・トゥ・ジ・エッグ」が出ているだけという厳しい状況である。私はそれらの中から盤質の良さそうな「バンド・オン・ザ・ラン」「バック・トゥ・ジ・エッグ」「ジョン魂」の3枚をオーダーした。
 まず最初に届いたのが「バンド・オン・ザ・ラン」で、センター・レーベルは他国盤とは違ってシルバー・パーロフォン(盤の重さは128g)。マトは -2/-5(IRL刻印あり)ということで70年代後半のプレスと思われる。私が持っているUK盤はパワフルな音が楽しめるラウドカット盤(マト-1/-1, 132g)と精緻を極めた極上サウンドが絶品のフィリップス・プレス盤(マト-3/-3, 130g)の2枚だが、このアイルランド盤は中庸を行くとでも言えばいいのか、手堅くまとめたカッチリとした音に仕上がっている。特にマト5の B面でもマト2の A面に遜色のないソリッドな音が聴けるので、Bラスの「1985」なんか結構力強いサウンド展開が楽しめる。とにかくマト番が若くないにもかかわらず芯がしっかりしたサウンドになっているのはさすがアイルランド盤といったところか。
 「バンド・オン・ザ・ラン」の翌日に届いたのが「バック・トゥ・ジ・エッグ」で、センター・レーベルはやはりシルバー・パーロフォンだ。マトは -2/-1で、やはり IRLの刻印がある。手に持った感触がズシリと重かったので量ってみると何と147gもある。比較対象としてUKオリジナル盤(マト-2/-2)を量ってみたが129gしかなかった。実際に音を聴いてまず感じたのは音が UK盤よりもデカいことで、A①「レセプション」のポールのベースが大音量でアグレッシヴに轟きわたるのを聴いて腰を抜かしそうになった。すぐに針をあげて UK盤をかけてみたが、こちらもかなりガッツのある音で鳴るものの、ラウドなアイルランド盤に比べると少々大人しく感じてしまう。特にA②「ゲッティング・クローサー」やA④「スピン・イット・オン」といったロック曲でその差が顕著なのだが、圧巻は何と言ってもB①「ロケストラのテーマ」とB⑥「ソー・グラッド・トゥ・シー・ユー」の2曲で、まるで巨大な音の塊が眼前に迫ってくるかのようなド迫力には言葉を失ってしまうほど。これだけでも “ホンマに買って良かったぁ...(^o^)丿” と大喜びした。
 それからかなり遅れて(←メールで催促するまで放置されてた... 他にもマト違いやレーベル違いを送ってきたりとか、最近の Discogsのセラーはホンマに質が低下しとるわ...)「ジョン魂」が届いた。こちらは1970年代初めということでグリーン・アップル・レーベルなのだが、マトは -2/-3 で重量も126gと軽め。UKオリジナル盤(マト -1/-1 で重量139gのホワイト・アップル・レーベル)と比較試聴してみたところ、こちらは完全に UK盤の圧勝で、A①「マザー」の鐘の音からして全然違うし、ベースの音の強さも雲泥の差。特にこのレコードは楽器構成が非常にシンプルなので、そのあたりの差が残酷なぐらいにハッキリと出てしまうようだ。それにしても「ジョン魂」UK 1stプレス盤の音ってホンマにエグいなぁ(≧▽≦)
 結局、今回のアイルランド盤チャレンジは、ポールの2枚が“当たり”で、ジョン魂は“ハズレ” という感じ。まぁ未知の世界に踏み込んでいくわけだからこれからも“ハズレ”盤をつかむことは多々あるかもしれないが、それと同じか上回る確率で“当たり”盤をゲットできれば御の字だ。「○○カヴァー」や「△△カット」といった有名なコレクターズ・アイテムもいいが、誰も知らない高音質盤を自分の手で発掘するのもまたファンの愉しみのひとつなのだ。

Wings「Wild Life」の音質最強盤を求めて②

2019-05-05 | Paul McCartney
 その週末に B-SELSにマト9のスウェーデン盤「ワイルド・ライフ」を持ち込んだ私はいつものように Sさんと一緒に聴き比べを開始。私が持参した盤に加え、お店にあった UKマト9 Factory Sample盤と UKマト11の1st プレス盤の3枚をあーでもないこーでもないと言いながら聴いていくのだが、毎度のことながら一文の得にもならないマニアックな聴き比べに付き合って下さる Sさんにはいくら感謝しても足りない。
 まずはA①「マンボ」を取っ替え引っ替え聴き比べてみる。スウェーデン盤は我が家と同様の元気溌剌とした音で、Sさんも“盤もキレイやし、良い音してますねぇ...” と仰る。しかし次に聴いた UKマト9盤はスウェーデン盤と同じマトとは思えないようなどっしりした重心の低い音で、これこそまさに王道を行く UK 1stプレスの音である。音圧も高く、歪むか歪まないかのギリギリのレベルでカッティングしてある感じで、まるでヘヴィー級ボクサーのボディー・ブローのようにガンガン腹にくる重低音が心地よい。最後にかけた UKマト11盤はマト9盤の “やり過ぎ” な部分をうまく緩和して一般のリスナーにも聴きやすい音に仕上げてあるが、やはり一本筋の通った硬派な音だ。
 “同じマト9でもかなり違いますね。” と言いながらA②「ビップ・ボップ」、A③「ラヴ・イズ・ストレンジ」と、それぞれ違ったリズム・パターンの曲で聴き比べてみるがやはり結果は同じ。この3者で聴き比べるとスウェーデン盤の音がまるで US盤のようにふんわり広がって聞こえるから不思議なものだ。そしてトドメはブルージーな A④「ワイルド・ライフ」で、ごまかしの利かないこの曲ではスウェーデン盤の音が相対的に薄っぺらく感じられた。Sさんに “UKマト9盤の圧勝ですね!” と言うと“同じ UKマザーでも盤の厚さとかプレス技術で音が変わりますからねぇ...” とのこと。確かに UK盤の方がスウェーデン盤よりもソリッドでガッシリしている。A面を聴き終えた段階でもうかなり時間が遅くなっていたので “いやぁ~、参りました。顔を洗って出直してきますわ。” と丁重にお礼を言って B-SELSを辞した。
 家に帰った私は “やっぱりこれは UKマト9のサンプル盤買うしかないな...” と思ってもう一度「Wings Wild Life Factory Sample」でググってネット上を隅から隅まで探した結果、イギリスのコレクター向けサイトにこの盤が出ているのを発見、デニー・シーウェルのサイン入りで£75の値がついている。そこで念のためにメールで A面のマトを確認したところ、何と「11」という意外な返事が返ってきた。つまり FACTORY SAMPLE のステッカーが貼ってあるからといって必ずしもマト9だとは限らないということだ。あぶないあぶない... もう少しで無駄金を使うところだった (>_<)
 ということで、それから2ヶ月ほどの間 eBayで網を張ってはみたものの、待てど暮らせど「ワイルド・ライフ」のマト9盤は一向に出品される気配すらない...(>_<) さて、どうするか? このままひたすら出品されるのを待ち続けるというのもアリっちゃアリだが、ブツの数が極端に少ないのでかなりの長期戦を覚悟しなければならないし、仮に市場に出てきたとしても自分が落札できるとは限らない。もちろん試聴はできないので盤質の保証もない。しかし、マト9盤の音を知ってしまった以上、買わないという選択肢はもはや存在しない。これらの前提から導かれる最も論理的な結論は “B-SELSの盤を買う”... そう、それしかない。
 そういうワケで、この連休初日に B-SELSを訪ね、壁に飾ってあったマト9盤を再度聴かせていただいた後、唐突に “これ、売って下さい!” と Sさんにお願いすると “えっ? 本当に?” と驚かれたご様子。そこで “この前聴かせていただいたマト9の音がどうしても諦めきれなくて 2ヶ月越しで狙ってましてん!” と言うと “この音の良さが分かる人に買っていただけてよかったです。” と喜んで下さったのだが、お礼を言いたいのは私の方だ。「ワイルド・ライフ」のマト9盤はユニオン通販にも出てはいるが、その VG+盤とほぼ同じ額でピッカピカの NM盤を完全試聴して買えたのだから嬉しくって仕方がない。とにかく B-SELSに通い始めてからというもの、私のレコード・ライフは充実しまくりで、 ホンマにありがたいことである。
 結局その日はコーフンして眠れなかったので朝の5時まで何度も聴き返し(←寝たい時に寝て起きたい時に起きれる大型連休はエエなぁ...)、それからも毎日聴きまくっているのだが、やっぱり大枚を叩く価値は十二分にあったと胸を張って断言できる痛快無比なサウンドだ。特にA面なんか何度聴いても自然と身体が揺れてしまう躍動感に溢れていてたまらんたまらん(≧▽≦)  このマト9盤は私にとってはハイレゾをも含めた上で間違いなく「ワイルド・ライフ」のベスト音源であり、今年4枚目(←月1枚のハイペースやん!)の “神棚盤” なのだ。


【おまけ】B-SELSの壁面を飾っていた「ヴィーナス・アンド・マース」UK 1stプレスの初回稀少ジャケットを見ていて、表ジャケのタイトル文字を形成している赤球と黄球が UK盤と US盤で真逆になっていることを発見。それがどーしたソー・ホワット?と言われてしまえば身も蓋もないが、ビートルズ関連はほんの些細なことまで気になってしまう。困ったものだ(笑)

Wings「Wild Life」の音質最強盤を求めて①

2019-05-01 | Paul McCartney
 ポールの、いや全てのビートルズ関連アルバムの中で最も過小評価されていると私が考えるのがウイングスのデビュー・アルバム「ワイルド・ライフ」だ。かく言う私も中高生の頃は “有名なシングル曲も入ってないし、何か地味なアルバムやなぁ...” と思っていたのだが、何度も聴き込むうちにすっかりハマってしまい、いつの間にか超の付く愛聴盤になっていた。特にこのアルバムのA面はリズミカルな曲が多くて何度聴いてもウキウキワクワクさせてくれる。
 私がビートルズ関連のUKオリジナル盤を買い始めたのは15年ほど前のことだが、その時に参考にした「Beatles' Vinyl Made in UK」という本の中で著者の和久井光司氏が「ワイルド・ライフ」の UK盤について “初版のマトリクス・ナンバーの末尾は A面が「‐1」で B面が「‐11」。B面は「1」を2度打ってしまったものと思われる。” と書かれていたので “へぇ~、そうなんや...” とその本の内容を盲信して(←まだ純真無垢なコレクターの卵でしたわ...笑)マト11の盤を eBayで買ったのだった。
 しかしいざレコードが届いてみると A面が「‐11」でB面が「‐1」と AB面のマトが逆であり、その後も「赤盤」「青盤」や「アット・ザ・ハリウッドボウル」、「マッカートニー」などで初版マトの間違いが数多く判明するにつけ、私の中で和久井氏の本の信憑性は著しく低下していったのだが、その極めつけがこの「ワイルド・ライフ」で、その後の調べでA面のマトが9の盤の存在を確認。こーなってくると和久井氏の言う「1を2度打ってしまった説」はどう考えても筋が通らない。
 私はこのマト9盤が欲しくなり、早速 eBayでチェックしてみたが待てど暮らせど出品される気配がない。そこで Popsikeで過去にどれほどの数が出品されたのかを調べてみたところ、2011年からの約8年間でたったの9枚、しかも2016年を最後にこの2年半ほどは出品すらされていないという激レア・アイテムであることがわかったのだ。このアルバムの人気の無さを反映してか、落札金額自体は£30前後なのだが、市場に出てこなければこちらとしても手の打ちようがない。
 そんな「ワイルド・ライフ」のマト9盤を実際にこの目で初めて見たのが他でもない B-SELSで、しかも泣く子も黙る Factory Sample盤である。当然ながらエサ箱ではなく壁面に飾ってあったのだが、欲しくて欲しくてたまらなかった私にとってはまるで後光が差しているかのような神々しさだ。当然私の心は激しく動いたが、さすがに超の付く稀少盤だけあって(←しかも盤質極上!!!)値段を見るとやはり桁が1つ違っており、貧乏コレクターの私にポンと払える額ではない。う~ん、これは実に悩ましい。
 悶々としながら家に帰った私は Discogsで「ワイルド・ライフ」の各国盤をチェック、UKマザーの盤をしらみつぶしに調べたところ、スウェーデン盤のマトが「9/1」であることを発見。これってもしかして...!(^^)!  しかも盤質 NMで値段の方も €15.99 とお買い得だ。これで UKマト9と同じ音が聴ければ儲けものと思った私は即買いを決めた。
 6日後(←早っ!)に届いた盤をワクワクしながらターンテーブルに乗せ、早速試聴。第1印象としては確かに高音質なのだが、どちらかと言うと高音が強調された派手な音作りで UK初版らしい重厚さに欠ける。 “ホンマにこれがマト9の音なんかいな?” と訝しく思った私はこの盤を B-SELSに持ち込んで(←いつもの展開...)本物の UKマト9盤と聴き比べをさせていただくことにした。 (つづく)