shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「With The Beatles」アルゼンチン・モノラル盤

2023-09-30 | The Beatles

 先週の土曜日に母親の美容院の送り迎えの合間を縫って久々に B-SELS に行き、短時間ながらも至福の時間を過ごすことができた。その時にお店にあったレコードの中から何枚か、それぞれ少しずつ聴かせていただいたのだが、その中の1枚の音が頭から離れず、1週間経った今日、今度は母親の MRI検査の結果待ちの間に病院を抜け出して前回の続きを聴かせていただこうと再び B-SELS を訪れた。転勤のせいで “仕事帰りにB-SELS” が出来なくなったのは残念だが、おかん行きつけの美容院と病院が B-SELS に近くてラッキーだ。
 そのレコードというのが今日取り上げる「With The Beatles」のアルゼンチン盤で、最近モノラル盤ばかり聴いている私が目ざとく見つけた1枚だ。商品紹介ポップには “レア! アルゼンチン・モノ” “鮮烈!! すばらしい音! オススメです” “盤うすいスレのみ、当時のアルゼンチン盤の中ではかなりの美盤です” “2nd Label、ただ 2ndといっても 1stはほぼ市場に出ないのでオリジナルと言っていいと思います” と書かれていたが、私の目を引いたのは他でもない「鮮烈」というパワー・ワードだった。
 そう言えば2年ほど前にここで同じ「With The Beatles」のベネズエラ盤を購入したが、あれも凄い音がしていたなぁ... などとその凄い音体験を思い出し、同じ南米ということで大いに期待しながらSさんにお願いして聴かせていただいたのだが、何よりもまずその盤質の良さに驚かされた。余程音溝の状態が良いのだろう、とにかくチリパチ音がほとんど無く、NM+と言ってもいいぐらいにクリアーな音でビートルズの若さ溢れるロックンロールを楽しめるのだ。その時は時間の関係でA面の半分ほどしか聴くことが出来ず、この1週間ずーっと気になっていたので、今日また近鉄奈良駅近くまで行くことになって、これ幸いと続きを聴かせてもらいに行ったというワケだ。

 私:おはようございます。今日はこの前少し聴かせていただいた「With The Beatles」のアルゼンチン盤をもう一度聴かせていただけますか?
 Sさん:もちろんです。
 私:先週聴かせていただいた時、盤質が良くってノイズがほとんど無く、めっちゃ気持ち良く聴けたので気になってたんです。
 Sさん:立ち上がりはラウドカットみたいにガーン!ときませんけど、音的にはすごく良いと思います。
 私:(A①「It Won't Be Long」を聴きながら)めっちゃ盤質良いですねー 南米盤でこれはちょっと信じられないレベルですよ。この独自マトの音も好みですし。
 Sさん:結構エエ感じでしょ?
 私:(A③「All My Loving」がかかる...)ホンマに60年代の音そのもの、っていう感じですね。好っきゃわぁ、こういう音。
 Sさん:うん、ホントそうです。
 私:(A⑥「Till There Was You」がかかる...)ポールの声が瑞々しい! 絶妙な潤い感というか、この音は素晴らしいですね。アコギの響き具合いも最高ですよ。
 Sさん:真空管のエエ音ですね。
 私:A⑦「Please Mister Postman」も歪み感が全然無いですね。
 Sさん:(A面が終わり、盤を裏返しながら)ただ、ラウドカット盤を聴き慣れていると、やっぱりこの立ち上がりの部分がねぇ...(と言いながらアンプのヴォリュームを少し上げる...)
 私:いやいや、これはこれで素晴らしいバランスの音やと思いますよ。私が言うと、一体どの口が言うてんねん!と言われそうですが...(笑)
 Sさん:ハッハッハッ(と大笑い)
 私:普段ラウドカット盤ばかり聴いてるので、たまにはこんなのもエエもんですよ。それにこの独自マトの音作りは私のスイートスポット直撃ですし。
 Sさん:確かに音の傾向がラウドカット盤に似てますね。だからヴォリュームを上げて聴くとすごく鮮烈な音が楽しめます。
(ここで私の携帯が鳴り、おかんから診察終わったから早よ迎えに来いという連絡が入る...)
 私:まだB面の途中ですけど、これいただきます!
 Sさん:えっ、エエんですか?
 私:もちろん! B-SELSのレコードには100%の信頼を置いてますんで。残りは帰ってからゆっくり聴きます。
 Sさん:いつもありがとうございます。
 私:いえいえ、こちらこそいつもありがとうございます。エエ週末になりそうですわ...(^.^)

 家に帰ってこのレコードを聴きながら(→実は今3回目聴いてます...)この文章を書いているのだが、ウチのシステムでもめちゃくちゃ良い音で鳴ってくれて大喜びヽ(^o^)丿  非ラウドカットの「With The Beatles」では少し前にここに書いたパイ・プレス盤とタイマンを張れるくらい気に入っている。Sさん、今回も素晴らしいレコードをどうもありがとうございました。

「Help!」メキシコのプロモ盤

2023-09-17 | The Beatles

 私がビートルズの各国盤を集めるのは、独自マトやプレスの違いでUKオリジナル盤とは一味違った音が楽しめるというのが一番の理由だが、ごくたまにその国独自のアートワークで “おぉ、このジャケットめっちゃエエやん!” とジャケ買いするケースがある。有名なところではフランスの「ホース・カヴァー」やデンマークの「エスキモー・カヴァー」、オランダの「シェル・カヴァー」などがあるが、これら以外にも全世界規模でまだまだ存在しているだろう。eBay検索では基本的にページをスルロール・ダウンしながら良さそうなアイテムを探していくので、そういう珍しいジャケットのブツがあるとパッと目に留まるのだ。
 ある時「Help! LP」で検索していてとてもユニークな色遣いの盤を見つけた。白地に茶系色を基調にした、まるで70年代の海賊盤を思い起こさせるようなアートワークが目を引く。何じゃこりゃ?と思ってタイトルを見ると “Mexico Promo Radio Unique cover PS” とある。へぇ~、こんなプロモ盤があったんか... 初めて見たわ... と思いながら商品説明を読むと “Promo Radio Station: The record is official. The cover is promo art.” ということで、どうやら正規盤らしい。更に “Megarare cover Mexico LP promo record, in great conditions, no marks or writings, minimal acoustic noise, very hard to find, unique cover, very nice copy.”(珍カバーのメキシコ・プロモ盤、状態良好でスレ・書き込み無し、ノイズ最小限、入手困難、ユニークなカバーの良盤)と書いてあったのと、$40という手頃なお値段に釣られてウォッチリストに入れることにした。
 メキシコ・キャピトルの「Help!」ということは、A①「Help!」のイントロに007のテーマがくっついているUS盤と同じ内容ということである。これまで何度も書いてきたように私はビートルズのUS盤に対して良い印象を持っていない。アルバムをバラバラに解体して云々とかいう以前の問題として、単純に音そのものが眠たいからである。エコーがドバーッとかけられた盤は論ずるにも値しないが、それ以外のレコードもUK盤の足元にも及ばないヘタレな音ばかり。例外的に音が良い「Magical Mystery Tour」以外はターンテーブルに乗ることは滅多にないし、それより何よりUS盤の半数以上は持ってすらいない。
 「Help!」のUS盤に関して言うと、大昔に$9.99で買ったモノ盤が1枚あるだけで、しかも「I Need You」のイントロにザーッという不快なノイズが入っているのが嫌で隣室のレコード墓場に眠っている。このメキシコ・プロモ盤の盤質が “最小限のノイズ” という説明通りならジャケットと中身の一石二鳥というワケだ。因みにメキシコの通常盤を調べてみたら、ほぼ同じアートワークでビートルズの写真だけがカラーというものだった。
 これはジャケットも珍しいしビッドが集中したらいらんなぁ... と思いながらとりあえず$60でスナイプしたところ、あっけなく$42で落札。USキャピトル系のビートルズってやっぱり世界的に人気無いんやなぁ... と思いながらも珍盤を安く買えて嬉しかった。これで音が良かったら万々歳だが、そっちの方はまぁボーナスみたいなものだ。
 送料が安かったせいか、3週間かかって今日到着したばかり。お目当てのジャケットは問題ナシのグッド・コンディションだったが盤の方は満身創痍で、更に悪いことにB②とB⑤にえげつない深キズがある。“これのどこが no marks やねん!” と思いながら恐る恐る針を落としてみると、無音部では結構なチリパチ・ノイズが入るものの音楽が始まると音圧の高さとモノ針のおかげで見た目ほど酷くはない。少なくともSP盤よりはマシなレベル(笑)だが、やっぱり盤質詐欺は気分が悪い。試しにステレオ針に変えてみるとこれがもう聞くに堪えないくらいの盛大なノイズの嵐でビックリ。特に深キズの箇所なんかヤバすぎて思わず針を上げてしまうほどで、no marks / minimal acoustic noise が聞いて呆れる。まぁUSマザーと言うことで最初から音に期待はしていなかったが、それでもウソはいかんでしょ! それともこのメキシコのセラーは目も耳も不自由なのだろうか?
 気になるマトリクスはと言うと、手持ちのUS盤「Help!」を隣室から引っ張り出してきてデッドワックス部を見比べてみたら、同じキャピトルにもかかわらずメキシコ独自のマトだった。面白そうなので聴き比べてみたところ、US盤の方が明らかにクリアーなサウンドで、しかもメキシコ盤のA①「Help!」は1:50あたりで一瞬音がこもる箇所があって(→メキシコに送られたマスターテープの不良か???)、レッドブルのヘルムート・マルコじゃないが(←F1ファンにしかわからないネタですんません...)メキシコは所詮メキシコなんやなぁと思わされた。
 このように盤質・音質に関してはハズレだったが、先に書いたようにそもそもこのレコードは “目で楽しむ” 珍盤として取ったものなので特に問題はない。今後ターンテーブルに乗ることはあまりないと思うが、時々取り出してジャケットを眺めるには良いアイテムだ。まぁ明日も休みやし、久しぶりにタコスでも作ろうかな...(^.^)

「With The Beatles」デッカ・プレス vs パイ・プレス

2023-09-10 | The Beatles

 この前B-SELSに行った時にマトリクスによる音の違いの話で盛り上がったのだが、そこで話題に上がったのがちょうどその前日に「日記」に書かれて即売り切れたという「With The Beatles」のデッカ・プレスだった。よくよく考えてみれば、「With The Beatles」に関しては “究極のラウドカット” を探し求めてマト1盤を何枚も買うくせに、それ以降のマトはマト4とマト7をそれぞれ1枚ずつ申し訳程度に持っているだけで、レアなパイ・プレスはおろか、割と有名なデッカ・プレスですら持っていないという体たらくだった。
 Sさんにそのことを言うと “いやいや、その方が Shiotchさんらしくていいんじゃないですか?” と笑っておられたが、筋金入りの “ビートルズきちがい” を自認する私としては他社プレスの話になった時に “えーっ、まさかデッカ・プレスも聴いたことないんでっか?” と言われたらぐうの音も出ない。そういえば何年か前にB-SELSで「My Sweet Lord」のプレスによる音の違いを教えてもらい、パイ・プレスの音が気に入って買ったことを思い出した。それに「With The Beatles」の他社プレス盤はラウドカットではないけれど、-7Nだって少しヴォリュームを上げれば捨てたモンじゃない。
 こーなってくると何だか無性にデッカやパイでプレスされた「With The Beatles」の音が気になってくる。EMIプレス盤と比べて “It Won't Be Long” の爆裂具合いはどうなのか... 「Roll Over Beethoven」のイントロはキレッキレなのか... これは是非とも現物を手に入れて実際に自分の耳でその違いを確かめなければならない... と心に決めた私は久々にハイ・テンションで B-SELS を後にした。
 家に帰って早速 eBayをチェックするとラッキーなことに盤質Exのデッカ・プレス盤が£25というお買い得価格で出ているではないか! 自分の中では £1≒155~160円 というイメージだったのだが、その時見たら171円でビックリ(←今は184円でぺんぺん草も生えない...)。こんな酷い円安を放置して知らぬ存ぜぬの日本政府なんぞ消えてなくなれ!と叫びたい気持ちになったが、結局誰も来ずに無風で落札できて(←人気無いのかな?)、送料込みで7,200円で買えたのは不幸中の幸いだった。オークションってホンマに運ですな...
 勢いづいた私は “こーなったらパイ・プレスもいったれ!” と同じeBayで検索してみたところ、あるにはあったのだが、何と£250(約45,000円)と£300(約55,000円)という無慈悲な値付けに開いた口が塞がらないし、Discogsに至ってはパイ・プレスの出品すら見当たらないのだからお話にならない。これは万事休すかな... と諦めかけた時に、CD and LPというヨーロッパの通販サイトのことを思い出した。レイアウトが見にくいのと現物写真が載ってないという致命的な欠陥のために滅多に見ることはないのだが、背に腹は代えられない。
 う~ん、それにしても見にくいなぁ... 最近老眼が進んで細かい文字を見るのが億劫なので、ページ毎の商品表示数を最大の500に設定して “Pye” で検索をかけてみたところ、300枚近く出品されていた「With The Beatles」の中で1件だけヒット。盤質はNMで値段を見ると €100となっている。私はパイ・プレス盤の相場というのがどれくらいなのかよくわからないのだが、少なくとも eBay の1/3の値段である。これってひょっとしてラッキーちゃうの?とコーフンしながらも念には念を入れてセラーにメールでマザー/スタンパーを確認すると(←海外からレコードを買い始めてからすっかり人を信用できなくなってしまった...)1時間もしないうちに返信が来て、A面が “P 2 11/A” でB面が “P 3 12/A” とのこと。これは本物だ!と小躍りした私は即買いを決めた。
 それから10日ほどしてまずデッカ・プレス盤が届いた。私がジャズのアナログ・レコードを買い始めた時、50年代のレコードでよく見られるセンター・レーベルの Deep Groove(深溝)を初期プレスを示す指標の一つと見なしていたこともあって DG のある盤に対する思い入れは非常に強く、「With The Beatles」デッカ・プレスのセンター・レーベルに刻まれた DG を見ただけで良い音がしそうな気がした。
 早速EMIプレス(-7N)と聴き比べてみたところ、デッカ盤の方が優等生的というか、音がキレイで細かい音もしっかりと聞こえる感じがする。何度も切り直すことによってバランスを最適化していった -7Nの音を更に突き詰めたようなサウンドで、一般ピープルにとっては非常に聴きやすい音作りだと思う。ただ、ラウドカットに慣れきった私の耳(←ハッキリ言って異端ですわ...)にはデッカもEMIも大同小異でイマイチ物足りない。ロックンロールにはやはり “度肝を抜くような重低音が轟きわたり、中音域がバーン!と張り出してきて、キレッキレの高音域が躍動する” -1Nのエグい音作りが最高だ。
 それから2日して今度はパイ・プレス盤が到着。EMIだけでは生産が追いつかず、DECCA社に委託してプレスされ、更にそれでも間に合わずにPYE社にまで委託するハメになったという曰く付きのレコードだ。EMIやデッカの盤がフラット・エッジなのに対し、このパイ・プレス盤はナイフ・エッジと呼ばれる形状をしており、スタンパー・コードはどれもA。しかしマザーに関してはちょっとややこしくて、色々調べてみたところ、数字は 3 12と 2 11の2通りなのだがそれと組み合わせるアルファベットが私の P 以外にも PB や QA など何種類かのパターンがあるようでいまいちよくわからない。。
 肝心の音の方だが、ハッキリ言ってめっちゃ私好みの音だ。とにかくシャープで音の輪郭がクッキリハッキリしていて押し出し感が強く、その一方で倍音もキレイに伸びているという、まさに言うことナシの高音質。ラウドカットの長所をちゃんと残しながらも「Till There Was You」のようなバラッドを美しく聴かせるところは只者ではない。もちろんAラスの「Please Mister Postman」も歪み無く聴けて大満足だ。
 3枚を改めて聴き比べてみてその音の印象はまさに三者三様で面白かったが、1枚選ぶとすれば迷うことなくパイ・プレスだ。自分にとっての「With The Beatles」は UKのスタンパー1G、オーストラリア、デンマークの -1Nラウドカット盤がトップ3なのだが、今回聴いたパイ・プレスはそれらに迫る堂々の4番手だし、残りの2枚もラウドカット御三家に次ぐ第2グループの中ではかなり上位に来ると思った。それにしてもこの「With The Beatles」というレコードを私は一体何枚買えば気が済むのだろうか???

「Rubber Soul」トルコ盤

2023-09-03 | The Beatles

 最近はこれまでの “欲しいレコード、特にビートルズ関連盤は金に糸目をつけずに買う” という放蕩生活をやめて大人しくしていたのだが、先日 Discogs から例の “ほしいものリストから1点の新しいアイテムが出品されています” というメールが来て、鋼のような硬い決意が大きく揺らいでしまった。Discogsは見にくいβバージョンになってからご無沙汰していたのだが、数枚の “どうしても手に入れたいレコード” だけは “ほしいものリスト” に入れたままにしてあり、そのうちの1枚が出品されたというのだ。
 そのレコードというのが「Rubber Soul」のトルコ盤で、eBayでも過去15年間で数枚しか出てこないというスーパーウルトラ稀少盤だ。う~ん、これはさすがに見逃せない。売り値が €180のところをダメ元で10%オフの €162でオファーしてみたところ、すんなり了承されてビックリするやら嬉しいやら... 結局約24,000円で喉から手が出るほど欲しかった「Rubber Soul」のトルコ盤をゲットした。
 支払いを済ませてから発送までに2週間もかかったのでかなり不安だったがトルコ・ポスト(PTT)はすこぶる優秀らしく、発送からわずか9日で到着。こんな大物を買うのは久しぶりだったのでパッケージを開ける時はめっちゃドキドキしたが、出てきた盤の状態を目視確認したところ目立つキズが無かったので一安心。ある意味一番曖昧というか主観的な差が生じやすい VG+ という盤質表記だったので気が気ではなかったのだ。私は逸る気持ちを抑えながらいつものように超音波クリーニングをしてからレコードをターンテーブルに乗せた。ビートルズのレコードを買うのは「With The Beatles」のOZ盤(←“ラウドカット最強盤” で大騒ぎしたヤツ)以来3か月ぶりである。コーフンするなという方が無理だ。
 スピーカーから出てきた音はこれまで私が経験してきた中域の分厚いトルコ盤の音とはかなり違う、どちらかというとスッキリしたサウンドで、高域もキレイに伸びている。手に持ったビニール盤の質感も違っていて何か軽い感じで、量ってみたら135gしかなかった。マトは -5とかなり後の方なので1966年以降にプレスされたもののようだ。
 私が持っているUKモノラルの「Rubber Soul」はマト-1ラウドカット盤ばかりで、マト-5はおろかマト-4すら持っていないのでUKプレスと比べようがないが、ラウドカット盤に慣れた耳には “強烈なエネルギー感には欠けるがバランスの取れた聴きやすい音” としか言いようがない。とにかく個々の楽器が突出していないので、BGM的に “ながら聴き” するのにピッタリの音なのだ。これはトルコ云々関係なしにマト-5自体がこういう音なのだろうか。ここはやはりSさんに聴いてもらうしかないな... と考えた私は早速B-SELSにこのレコードを持って行った。最近ご無沙汰気味だったのでめっちゃ楽しみだ。

 私:まいど。お久しぶりです。
 Sさん:おぉ、shiotchさん!
 私:今日は久々に珍しいレコード手に入れたんで持ってきましてん。
 Sさん:「Rubber Soul」ですか... トルコ盤ですやん。
 私:そうですねん。ぜひご感想を聞かせて下さい。
 Sさん:(レコードをかけながら)マト-5ですね。悪くないじゃないですか。
 私:そうそう、そのマト5の音を知らないのでご意見を伺おうと思って。今まで一杯聴いてきやはりましたやろ?
 Sさん:もちろん何枚か売ったことはありますが、マト-5は数が少ないですからねぇ。それにマト-4よりも人気があるんですよ
 私:へぇ、そうなんですか?
 Sさん:マト-4って数が多すぎてありふれてるっていうか、ありがたみがないのかもしれませんね。それにマト-5の音って結構良いんですよ。
 私:なるほどねぇ... 自分はラウドカット盤しか眼中になかったんで全然知りませんでした...(笑)
 Sさん:それと、盤質もあるかもしれませんがB面の方が音が良いですね。
 私:そうなんです。ビートルズのレコードって何故かそのパターンが多いですね。
 Sさん:この「If I Needed Someone」なんてマト-1とマト-4の中間ぐらいの音してますよ。
 私:いやぁ... 勉強になりますわ。ウチの「Rubber Soul」はアホの一つ覚えみたいにラウドカット盤ばっかりですもん。
 Sさん:(大笑いしながら)確かに。
 私:もし仮に僕がマト-4や-5の盤を買ったとしても結局ターンテーブルに乗るのはマト-1になるでしょうし...
 Sさん: そうでしょうね(笑)
 私:「With The Beatles」も同じですよ。一応マト-4Nやマト-7Nも持ってますが、今まで1回か2回ぐらいしか聴いたことないですからね。聴くのはいつもマト-1Nラウドカットのスタンパー1G盤か、この前ここで買ったOZ盤ですわ。
 Sさん:いやいや、shiotchさんらしくていいじゃないですか(笑)
 私:まぁこのトルコ盤も思ってた音とは違いましたが、実際に聴いてみないとわかりませんもんね。頻繁に聴くことはないと思いますが、これはこれでまぁ面白いです。

 ということで、今回はマトが進んだUK盤のことも知ることが出来て中々興味深いお話しだった。久々にビートルズのレコードを買って元気が出てきたが、これまで我慢してきた反動でまためちゃくちゃレコード買いまくりそうな(←リバウンドかよ...笑)自分がちょっと怖い気もする今日この頃だ。

オーストラリアの「With The Beatles」 ~ラウドカット最強盤~

2023-04-23 | The Beatles
 転勤してもうすぐ1ヶ月が過ぎようとしているが、今度の職場は奈良県の同業種の中でもICT化推進の最右翼らしくって、何かというとすぐにアカウントがスベッただの仮想デスクトップがコロんだだのと、ウザいことこの上ない。ワシはスマホもタブレットもウインドウズ10も大嫌いなんじゃい! そもそも仮想デスクトップって何やねん、気持ち悪い...(>_<)  そんな異次元空間みたいなとこで仕事できるかいな、ボケが!と思わず怒りの展開になってしまったが、すべてはレコード代を稼ぐための忍耐と割り切って心頭を滅却し(←大袈裟な...)、やっとのことで仕事も落ち着いてきた先週末、いつものように B-SELSの「日記」コラムを見ると、そこには “『WITH THE BEATLES』レア!オーストラリア・ゴールドパーロフォン モノラル UK初回マト1Nラウドカット ただものではない!” というタイトルが踊っていた。
 この数ヶ月、迫りくる収入減に備えてレコード購入を控えていた私にとって “ラウドカット” という禁断ワード(笑)だけでも目の毒なのに、“ただものではない” という煽り文句が続くのである。これで魂を揺さぶられなければ “ラウドカット至上主義者” の名が泣くというものだ。はやる気持ちを抑えながら内容を読むと、“「並み」のUK盤では太刀打ちできないほど音が大きい” “このオーストラリアのラウドカット盤はよほど音溝の状態が良かったのだろう” “両面とも深いキズが全くと言っていいほどない。だからまず音に出ない。音的にはEX以上を付けられるし、実際の音の破壊力は凄まじいというほかない。これぞ正真正銘のラウドカットの音、聴いてみていただくしかない。” とべた褒めである。
 Sさんとはこれまで何十枚ものレコードを一緒に聴いてその感想を語り合ってきた仲なので、どんな音をどう表現されるのかは大体熟知しているつもりだ。だから「日記」コラムの “行間” を読んでおおよその音を頭の中でイメージする自信があるのだが、この “音の破壊力は凄まじい” という表現を見た瞬間に “こいつはえげつない音しとるに違いない” という確信を持ち、“これは絶対に聴かなアカン!” と思った私はすぐにB-SELSに電話を入れて取り置きをお願いし、その日の夜にその凄まじい破壊力を持つというその OZ盤を買いに行ったのだった。
 転勤のゴタゴタで長いことご無沙汰していたこともあって、お店に顔を出すとSさんはとても喜んで下さり、早速問題のレコードを聴かせて下さった。私は全神経を耳に集中して音が出るのを待った... そして「It Won't Be Long」の出だしのジョンの第一声を聴いて私の予想が正しかったことを強く確信した。ハッキリ言ってこのラウドカットの音はヤバい、いやヤバすぎるくらい凄い音だ。私はこのレコードのラウドカット盤を何枚も所有しているが、これほど音溝の状態の良い盤は初めてだ。音圧の面だけとってもUKのスタンパー1G盤に匹敵するような凄まじいパワーが感じられるというのに、それに加えてこのレコードは音の響きも非常にキレイで、音の総合力で言うと間違いなく自分史上№1の「With The Beatles」だ。
 比較試聴用に手持ちの「With The Beatles」ラウドカットOZ盤を持参したので「It Won't Be Long」の出だし部分を聴き比べさせていただいたのだが、大袈裟ではなく月とスッポンほどの差があってビックリ。持参した方はごくごく普通のラウドカットの音だったのに対し、このB-SELS盤は桁違いのパワーでジョンのロック魂がスピーカーから迸り出てくるのが実感できたのだ。いやぁ~、これには参りましたわ... やっぱり音溝の状態って大事なんやなぁ... (≧▽≦)
 私が大コーフンしながらサムズアップするとSさんも満面の笑み。 “自分はこの音の凄さに自信があって、初めて針を落とした瞬間からコイツは明らかに違うと思ったんですよ。「Hold Me Tight」なんかもう大きなノコギリでザクザク切っているかのような、そんな感じでしたから、聴きながらお店の中で踊っちゃいました(笑) でもラウドカット・マニアのshiotchさんにはどうかとなると、そこまでの確信は持てなかったんです...” と仰ったので、“いやいや、日記に書かれてたのを読んで自分が想像してたのと同じ、いや、その斜め上を行く音ですよ、これは。この音のパワーはそれこそまさに異次元という感じで、例えるなら大谷翔平選手の大ホームラン級です!” と言ったらSさんに大笑いされてしまったが、この音の凄さの例えとしては結構マトを得ているのではないかと思っている。とにかく凡百のラウドカット盤とは次元が違うスケールのデカさで、この音のイメージとしてはまさにこんな感じ↓だった。
[WBC] 大谷翔平 驚愕のホームラン祭り!バンテリンドーム5階席に超特大アーチ!

 お店の商品説明ポップには “スゴイ音!! おそろしく音の良いラウドカット。絶対オススメ!” と書いてあったが、まさに看板に偽りなしの凄まじい音で、両面聴き終えて即このレコードを購入し、“今日は今年に入って最高の日になりました!” とお礼を述べるとSさんはとても喜んで下さった。
 家に飛んで帰った私は晩メシも喰わずに自室に駆け上がってこのレコードをかけてみたのだが、我がオルトフォン・モノ・カートリッジとの相性も抜群らしく、A面アタマからB面ラストまで、ほとんどノイズレスで凄まじい爆裂サウンドが楽しめて大喜び。これは上の動画のようにナゴドの5階席に飛び込むホームラン級の音(笑)である。ラウドカット桃源郷である。仕事のストレスなど消し飛んでしまう音、寿命が軽く十年は延びる音である。これから死ぬまでこの音を聴いていけるのかと思うと嬉しくってしようがない\(^o^)/ この盤との運命的な出会いをさせて下さったレコードの神様に感謝! そして何よりもまずSさんに感謝だ。
 このレコードは、例えば手持ちの「Please Please Me」で言えば UK両面 1G盤に、「Sgt. Pepper's」で言えばニンバス盤に匹敵する神棚級の1枚、といえばその凄さがわかってもらえるかもしれない。「With The Beatles」では間違いなく G.O.A.T.(Greatest Of All Time)... “音のデカさ” と “響きの美しさ” の二刀流で圧倒的な存在感を誇る文句ナシのMVP盤だ。

【おまけ】大谷翔平つながりで、こんなオモロイ動画を見つけた。まぁビートルズとは何の関係もないけど、オモロかったら何でもエエねん!
誰が好み?世界一のメンバーが可愛すぎた!【侍ジャパン】【WBC】

Hours Of Darkness (14CD BOX) / The Beatles

2023-01-29 | The Beatles
 私は毎年1月30日の “ルーフトップ記念日” が近づくとゲット・バック・セッション関連の音源を聴きまくる。映像に関しては今年は映画「Get Back」のブルーレイという極めつけのアイテムがあるので問題ないが、レコード/CDではここのところ「Sweet Apple Trax」や「River Rhine Tapes」、それにグリン・ジョンズ版「Get Back」ばかり聴いていて少しマンネリ気味だった。ところが先月 Empress Valley から出ている「Hours Of Darkness」というボックス・セットを首尾よく手に入れた。これが何とCD14枚組で、トータル15時間422曲収録という凄いヴォリュームなんである。
 このボックス・セットは長尺なゲット・バック・セッション音源を “スペクター効果排除ミックス” “トゥイッケナム・スタジオ・リハーサル” “アップル・スタジオ・リハーサル” “アコースティック・デモ” “インプロヴィゼーション主体のジャム・セッション” “オールディーズ・カバー” “ルーフトップ・コンサート” といったコンセプト別に、それぞれのハイライト、つまり聴きどころを上手くまとめてあるのが大きな特徴だ。この「Hours Of Darkness」、ヤフオクでUSBに入れられて売られているのを以前に見たことがあるが、おそらくこれはそれを音盤化したものだろう。ネット上に転がっている音源に帯やら紙ジャケやらといった無駄で大仰な装飾を施してプレスCD化し、アブク銭を稼ぐというエンプレス・バレイらしいアイテムだが、色々とゲット・バック関連のブートレッグを買い揃えて音源がダブりまくるよりは、このボックス一つで済ませる方がずっとお財布にやさしいだろう。
 私はこれを PayPayフリマというサイトで手に入れた。出品価格5,980円のところをワケのわからんクーポンと勝手に貯まってたポイントを使ってほぼタダ同然で手に入れることが出来て何か得した気分。スマホを滅多に使わない私にとっては購入手続きがめっちゃ難しかったし、ヤフーのログイン設定を無理やりスマホ認証に変えさせられたりで(←いちいちスマホを取り出すのがめっちゃ鬱陶しいので支払いが済んでからすぐに元に戻したけど...)面倒くさいことだらけだったが、使い道の無かったペイペイポイントを使って 6,000円近くも浮くのはめちゃくちゃデカい。このボックス・セットの定価がいくらだったのかは知らないが(←どーせナナキュッパぐらいやろ...)、とにかく安く手に入れるに越したことはない。
 念のために内容を列挙しておくと、
Disc 1:The De-Spector-ed Edition of the Let It Be Album
Disc 2:The Best of the Twickenham Studio Rehearsals
Disc 3:The Best of the Apple Studio Sessions
Disc 4:The Best of the Rest of the Let It Be Sessions
Disc 5:Acoustic and Demo Performances from the Let It Be Sessions
Disc 6:Famous and Infamous Let It Be Improvisations
Disc 7:More Non-Album Highlights of the Let It Be Sessions
Disc 8: More Outtake Highlights of Songs Destined For the Let It Be Album
Disc 9:The Beatles Cover The Beatles, and Other Highlights
Disc 10:More Highlights of the Beatles Covering the Oldies.
Disc 11::A Spoken Word Documentary of the Let It Be Sessions (Part One)
Disc 12:A Spoken Word Documentary of the Let It Be Sessions (Part Two)
Disc 13:SILVER APPLES. The De-Spector-ed Special Edition of the Let It Be Album
Disc 14:AERIAL BALLET. More Mixes of the Rooftop Concert.
となっている。
 それぞれのディスクはテーマ別でうまく編集してあって「ゲット・バック・セッション」を手軽に楽しむのにはぴったりのブツだと思うが、1つだけ気になったのはディスク1の「The De-Spector-ed Edition of the Let It Be Album」とディスク13の「SILVER APPLES. The De-Spector-ed Special Edition of the Let It Be Album」の一体どこが違うねん... ということ。どちらも De-Spector-ed、つまり“非・スペクター化”された「Let It Be」のアルバムということで、例のエコーやらコーラスやらオーケストラやらを取り除いてあるのだろうが、ディスク13のSILVER APPLES っていうのが何のことだかよく分からないし、Specialというのも一体どこが特別なのか何の記載も無い。ということでまず最初に “ブートレガーが作ったネイキッド” とでも言うべきこの2枚を聴き比べてみた。
 ディスク1の方は文字通りスペクターが施した余計な装飾がモノの見事に取り除かれており、モヤが晴れたようなスッキリした印象だ。そのおかげで音楽全体の躍動感がアップし、特に「Across The Universe」なんかジョンの声が近くて超気持ちイイし、ルーフトップで演奏された4曲なんかもスペクター版よりもロックンロール色が強まって聞こえ、当初ビートルズが目指していたゴールに近い仕上がりになっているように思う。うん、コレは気に入った。
 ディスク13の方は最初のうちは一体どこが違うのかよくわからなかったが、3曲目の「Across The Universe」を聴いてビックリ。女性コーラスがカットされているのは同じなのだが、何とエンディング・パートに過剰なリヴァーヴがかけられており、気持ち悪いったらないのだ。例えるなら最高の食材にクソ不味いソースをドバドバかけて料理を台無しにする三流シェフみたいなものだ。一体これのどこが “スペシャル” だというのか? ビートルズの音源で遊ぶな!
 思わず怒りの展開になってしまったが、それ以外のトラックでは「The Long And Winding Road」や「Get Back」が違うテイクを採用してたりとか、「Dig It」がオリジナルよりも遥かに長い4分のロング・ヴァージョンになっていたりとか(←これは大正解!)、曲順がオリジナルとは異なっていたりとかぐらいが目立つ違いで、特に大きなやらかしは無かったように思う。とにかく詳しい解説が無いのでこのディスクの存在意義自体がイマイチよくわからないが、まぁそれはそれとして、上記のキモい「Across The Universe」以外は気持ちよく聴けたし、音質は文句ナシに良いので、この14枚組ボックスは良い買い物だった(←実質タダやけど...)と思っている。みなさんもそれぞれ思い思いのやり方で「ルーフトップの日」を楽しんで下さいませ。

「White Album」ペルー盤

2023-01-15 | The Beatles
 私は苦労して手に入れた垂涎盤がネット・オークションに出ているのを見つけると、ビッドするわけでもないのにウォッチして最終結果を見たくなる。そのレコードに対する最新の世間の評価がわかって興味深いというのもあるが、やはり一番の理由は自分の購入価格と比べて高く落札されれば得した気分になり、安く落札されれば悔しがるという、卑しいコレクター根性によるところが大きい。
 つい先日もヤフオクで東京の ELLA RECORDS というお店(ID:vintageking2005)から大量にビートルズのペルー盤が出品され、“おぉ、これは凄いやん... ペルー盤って今の日本でどれくらい人気あるんかいっぺん見たろ...” と思って14枚すべて(!)ウォッチしてみた。結果は私の想像を遥かに超える激戦で、ペルー盤人気をまざまざと見せつけられた。落札価格が高い順に列挙すると;
 White Album(50,930円、入札57、8人)
 Revolver(24,200円、入札36、7人)
 Let It Be(23,650円、入札35、5人)
 Sgt. Pepper's(23,100円、入札24、7人)
 Magical Mystery Tour(19,679円、入札27、8人)
 Beatles For Sale(16,500円、入札18、8人)
 Hey Jude(16,060円、入札18、6人)
 Abbey Road(15,950円、入札11、6人)
 Help! (14,850円、入札22、5人)
 Let It Be(14,190円、入札18、7人)
 Yellow Submarine(13,200円、入札8、5人)
 Hey Jude(12,210円、入札15、5人)
 Please Please Me(12,100円、入札12、8人)
 Rock 'n' Roll Music(11,550円、入札14、4人)
という具合。へぇ~、ペルー盤探してるコレクターって意外とおるんやなぁ... と驚かされたが、中でも突出した落札額になった超激戦盤が「White Album」(←“マトほぼ1” って何やねん... ちゃんと書けや...)だった。たまたまヒマだった私はその一部始終をライヴで見学させていただいたのだが、ハッキリ言って自分が参戦しないオークションほど気楽なモノは無い。それはまさにドッグ・ファイトと呼ぶに相応しい延長に次ぐ延長戦で、決着がついたのが終了予定時刻から約40分後という壮絶な闘いだったが、いくら何でもペルー盤に5万円って... UKのアーリー・プレス盤が買えますやんwww
 しかしかく言う私も一歩間違えばここに参戦を余儀なくされていたかもしれないのだ。実際、ビートルズのペルー盤蒐集で私が最後の最後まで苦労したのが他ならぬ「White Album」で、1年以上探しまくったにもかかわらず、滅多に市場に出てこなかったし、やっと出てきたかと思えば送料込みで5万円とか人をバカにしたような値付けで手も足も出ない。どうしたものかと考える日々が続いたある日のこと、妙案を1つ思いついた。ネット・オークションがダメなら現地のセラーに直接探してもらえばいいのだ。幸いなことに、以前ウルグアイ盤を買いまくっていた時に仲良くなったセラーが南米に何人かいるので彼らに訊いてみることにした。
 まずは一番親しいウルグアイのダニエルさん(←去年「Band On The Run」のボリビア盤を買ったセラー)にメールして “「White Album」のペルー盤を探してるんですけど、ないですか?” と尋ねると“商品としては無いけど、私個人のコレクションとして持ってるよ。shiotchさんなら売ってあげてもいいけど...” という返事。“もちろん買いたいけど、いくらぐらいで売ってくれるの?” と恐る恐る訊くと “音が良いんでちょっと高いよ... $120 でどう?” と言ってきたので内心ガッツポーズしながら “Deal!(買った!)” でペルーの「ホワイト」があっけなく我が手中に落ちたというワケだ。まだ$1=120円ぐらいの頃だったので(←最近円が127円台まで戻してきたの、めっちゃ嬉しい... もうひと踏ん張りして110円台まで戻してくれぇ!!!)、送料込みでも2万円でお釣りがくる計算だ。半年後に日本のネット・オークションでその3倍以上の値段で落札されたと知ったら腰を抜かすほどビックリするやろなぁ...
 で、私が手に入れたペルー盤の「White Album」だが、ダニエルさんの保管状態が良かったらしく、実に良いコンディションだ。興味深かったのはディスク1がUKマザーのマト -1/-1 で、ディスク2が独自マトということ。その独自マトの盤に関して言うと、音圧は普通ながら倍音が実によく聞こえるし、ちょっとヴォリュームを上げれば「Everybody's Got Something To Hide...」や「Helete Skelter」なんかもう凄まじい美爆音で鳴り響く。音質的には大満足だ。
 ただ、一つ残念だったのは「Good Night」が2:35あたりでシレッとフェイド・アウトしてしまうこと。初めて聴いた時は一瞬真空管が逝ってしまったのかと肝を冷やしたものだ。気持ち良~く聴いてきた「White Album」の最後の最後で「Good Night」が盛り上がる前に終わってしまうガッカリ感を想像してくれい! デリカシーの欠如にも程があるというものだろう。「Good Night」を中途半端にフェイド・アウトするぐらいなら、その前の「Revolution 9」を一部編集して短くするか(→どうせムチャクチャなんやからテキトーに切り貼りしても聴いてる方は気付かんやろ...笑)いっそのこと丸ごとカットすればよかったのにと思ってしまう。まぁ各国盤のこのようなやらかしは、イタリア盤「Abbey Road」の「I Want You」やトルコ盤「London Town」の「Morse Moose And Grey Goose」で免疫が出来ているとはいえ、興醒め感は否めない。針を上げるまで各国盤に油断は禁物なのだ。

イスラエルの「赤盤」「青盤」

2023-01-04 | The Beatles
 私が各国盤を買う場合、オリジナル・アルバム12枚に加えて「Magical Mystery Tour」「Hey Jude」「赤盤」「青盤」の計16枚すべて揃えるのをマストにしている国がいくつかあるが、そんな “重要国” の中で先日ようやくイスラエルの「赤盤」と「青盤」をゲットし、ますます各国盤のコレクションが充実してきた。
 ここまで読んで “「赤盤」と「青盤」なんてちょろいやろ...” と思われた方もおられるかもしれないが、そもそもイスラエルの「赤盤」「青盤」には73年に出たシルバー・パーロフォン・レーベル盤(1stプレス)、70年代半ばにプレスされたレッド・パーロフォン・レーベル盤(2ndプレス)、そして70年代終わりから80年代にかけてプレスされたポートレイト・レーベル盤(3rdプレス)の3種類があって、eBayその他のオークション・サイトでよく見かける(つまりず~っと売れ残っている)ブツのほとんどはこのポートレイト・レーベル盤だ。
 私は当然 “銀パロ盤” しか眼中になく、色んなサイトで探してみたのだが、これが結構レアらしく中々市場に出てこない。「赤盤」と「青盤」の入手が最後になったのは、もちろんオリジナル・アルバムを優先して買っていったというのもあるが、実際にこの2枚の “銀パロ盤” が入手困難だったというのが一番の理由なのだ。
 先に手に入れたのは「赤盤」の方で、CD and LP というヨーロッパの通販サイトにVG+盤が $50で出ているのを見つけ、センター・レーベル確認のメールを送ったところ、“Silver/Black” という返事だったので即決。送料込みで $66ならまぁ許せる範囲内だ。
 届いたレコードはマトが -1/-1/-3/-1 のUKマザー盤で重低音マニア御用達の“Q”刻印も4面全部に刻まれており、イスラエル盤ならではのガッチリした低音が気持ちいい痛快なサウンドで初期~中期ビートルズの名曲群が楽しめる。いきなりA①「Love Me Do」のベースからして低音クオリティーの高さが一聴瞭然だし、A②「Please Please Me」の爆発的なエネルギーにも圧倒される。A⑤「I Want To Hold Your Hand」なんかもう形容しがたい凄まじさで、血湧き肉躍るとはまさにこういう音を指すのだろう。B①「A Hard Day's Night」の “ジャーン!” もリスニングルームの床が鳴動するような感じで(←どんな大音量で聴いてんねん!)超気持ちイイし、B⑤「Ticket To Ride」のリンゴのドラミングも強烈そのもの。D④「Girl」のブラッシュの音は他の盤では味わえないような凄味すら感じさせるし、D⑤「Paperback Writer」のアグレッシヴな音はあのペルー赤盤と並ぶ双璧と言っていい轟音だ。う~ん、これは買って大正解だった。
 さて、イスラエルに関してはこれでいよいよ残すところ「青盤」のみとなったワケだが、私は「青盤」には「赤盤」に対するような特別な思い入れはないし、「青盤」に入っている後期の楽曲はすべてオリジナル・アルバムで入手済みなので別に買わんでもエエかなぁとも思ったが、お気に入り国の中でイスラエルの「青盤」だけ持ってないというのもなんだし、ひょっとするとオリジナル・アルバムよりも良い音で入っている可能性も捨てきれないので、“毒を食らわば皿まで”のノリで(←使い方あってる???)「青盤」の銀パロ・ヴァージョンを探すことにした。
 そこでしばらくの間、色んなサイトで探してみたが、そう簡単に見つかるワケがない。はてさて、どーしたものかと思いながら、ある時ちょっとした気まぐれで eBayでの検索ワードを変えてみたところ、何と銀パロの「青盤」が出てきたではないか! 検索ワードの変更による辻褄の合わない検索結果の違いはeBayに限らず、メルカリやヤフオクでも時々起こる現象なのだが、兎にも角にも念願の銀パロ盤を見つけることが出来たのだからラッキーだ。こちらもEx+で €45とリーズナブルなお値段だったので即購入。これでめでたくイスラエル盤コンプリートと相成った。
 届いた盤はグレーディング通りのピカピカ盤で、これで良い音がしないワケがない。マトは -1/-3/-3/-1 のUKマザーだ。私が「青盤」の音を評価する時にイの一番に聴くのがD①「Here Comes The Sun」なのだが、盤に針を落とすと軽快にメロディーを奏でるアコギのクリスプな音がスピーカーから流れてきて “おっ、これはエエやん!” と思った瞬間に地を這うような重低音ベースが鳴り響いてビックリ(゜o゜)  “低音” ではなくまさに “重低音” という言葉がピッタリの凄い音で、まるで井上尚弥のボディー・ブローのように(?)ズンズン腹に響いてくる。いやぁ、これは最高やわ... たまらんなぁ... とよがっていると続くD②「Come Together」でまたまた重低音ベースが爆裂! このD①②連続コンボで完全KO間違いなしだ。とにかく音が下の下まで出ている感じで、“重低音のイスラエル盤” の看板に偽りナシの強烈さなのだ。
 「Abbey Road」のイスラエル盤は無慈悲なくらいのド迫力サウンドだったので、後半の「Let It Be」関連のトラックはどうだろうと思って聴き進めていったところ、「Let It Be」「Across The Universe」「The Long And Winding Road」というスロ-・バラッド3連発にもかかわらず、力強い音が聴けて大満足。続けて聴いた他の3面も同様で、一言で言えば “全編パワー漲る力強い音” という感じ。特にリンゴのドラミングなんかもう “ユンケル飲んだ?” と訊きたいくらいの絶倫プレイで、B②「Hello Goodbye」がこんな音で聴けるとは思わなんだ。とにかくこれほど「青盤」を気持ち良く聴き通したのはちょっと記憶にないくらいだ。う~ん、イスラエル盤恐るべし(≧▽≦)  轟音爆音好きのビートルズマニアに超オススメの逸品だ。

「Help!」ウルグアイ盤

2023-01-01 | The Beatles
 新年あけましておめでとうございます。いきなり私事になりますが、今年で一応今の仕事を定年退職して4月から仕事も勤務形態も変わる可能性があるので、今は “一寸先は闇” という心境です。まぁ私にとっては仕事なんて所詮レコード買うためにやってるようなもんなので、どうなろうとあんまり変わらんとは思いますが。このブログに関して言うと、始めてから15回目のあけおめ投稿ということで、よくもまぁここまで続けてこれたなぁと我ながら驚いてますが、とりあえず今年も好きな音楽について感じたことをそのまま書いていこうと思いますので好みが合う方はお付き合い下さい。

 一般的に言って、ディフ・カヴァーというのはレコード・コレクターの好奇心を刺激する。私の場合は何よりもまず爆音・轟音優先(笑)でジャケットは二の次三の次なのだが、プレミアがついて値段が上がるようなことがなければ十分購入対象になるのだ。
 60年代にプレスされたビートルズのウルグアイ・オデオン盤を集め始めたきっかけについてはこの前ここに書いたが、eBayでビートルズのウルグアイ盤を検索していて真っ先に目に留まったのが「Help!」のウルグアイ最初期プレス盤だった。ジャケット・デザインは基本的にUK盤と同じなのだが、大きな違いは “Help!” の代わりにスペイン語でデカデカと“Socorro!”と書いてあることと、もう一つ、4人が着ているマントの色がオリジナルの青ではなくモス・グリーンなことだ。これまでいろんなビートルズのレコードを見てきたが、「Help!」のこんな色違いジャケは初めて見た。各国盤でこういう色違いジャケと言えば真っ先に思い出すのがイスラエル盤「Magical Mystery Tour」だが(←あれも緑がかっててかなりインパクトあったなぁ...)だが、このウルグアイ盤「Help!」も負けず劣らず印象的だ。
 色々調べてみたところ、どうやらこれが数少ない最初期プレスで、発売されてすぐにノーマルな青いマント・ジャケに変わったらしい。モノラルでマトは -2/-2のUKマザーだ。ありがたいことに盤質VG+ で何のプレミアも付いてない $39というお買い得価格だったので即決した。
 届いたレコードをパッケージから取り出して改めてジャケットを確認したが、見れば見るほどユニークな色遣いだ。これって意図的なものではなく単なる偶然(ミス?)のせいだと思うのだが、このように一筋縄でいかないところが各国盤の面白さだ。
 実際に聴いてみた印象としては残念ながらごくフツーのUK盤と変わらなくてちょっと肩透かしを食らった感じ。特に鮮度が高いでもなく、何らかの際立った特徴があるでもなく、フツーすぎるくらいフツー(笑)の音なのだ。B-SELSに持って行ったところ、ジャケットを見てSさんも “おぉ、これは珍しい!” と驚いておられたが、音に関しては “典型的なUKマザーの音ですね...” 以外の言及はなかったと記憶している。
 この前の「Revolver」(マト-2/-2)とこの「Help!」(マト-2/-2)、そして同時期に手に入れた「Rubber Soul」の濃青ラベル盤(マト-4/-4)も含め、少なくとも私の印象としてはビートルズのウルグアイ盤で音が良いのは68年プレスの「White Album」以降で、それ以前のプレスに関しては余程のマニアでもない限り、目の色を変えて探すようなレコードではないと思う。

「Revolver」ウルグアイ盤

2022-12-26 | The Beatles
 2022年を振り返って個人的に最大の出来事は何と言っても「Revolver」ボックス・セットのリリースだった。このアルバムはビートルズ全作品中で三指に入る愛聴盤なのだが、ボックスに入っていた様々な音源を聴いてますます好きになった。ということで、今日は「Revolver」の中でまだ取り上げていなかったウルグアイ盤にしよう。
 私がビートルズのウルグアイ盤を買い始めたきっかけは70年代にプレスされた「赤盤」「青盤」や「Love Songs」のような編集盤や各メンバーのソロの音が良かったからだが、60年代にプレスされたオリジナル・アルバムに関しては当たり外れが大きく、「White Album」以降の盤は結構良い音がして大喜びした一方で、南米らしいディフ・カヴァーに魅かれて買った「para ti」という初期のアルバムの音がめちゃくちゃ貧弱だったこともあって、初期~中期ビートルズのオリジナル・アルバムに関しては1stプレス盤の購入に二の足を踏み、結局70年代プレスの薄青(スカイブルー)レーベル盤を買ってお茶を濁していた。
 それら薄青レーベル盤は “そこそこ良い音” だったのだが、私は “ひょっとしたらハズレはあの「para ti」だけで、他の60年代プレス盤は良い音なのかもしれない...” という思いがどうしても頭から離れず、とりあえず60年代プレスのウルグアイ盤を何枚か買ってみることにした。ただ、「para ti」(←ホンマにクソみたいな音しとった...)と同時期にプレスされたと思われる初期のアルバムはさすがに腰が引けるので、とりあえず中期のアルバムをターゲットに選んだ。
 私が調べたところでは、60年代プレスのウルグアイ・オデオン盤は1965年前半までが紫がかった濃いインディゴ・ブルー(「Please Please Me」~「Beatles For Sale」)、1965年後半から1967年前半までがコバルト・ブルー(「Help!」~「Sgt. Pepper's」)、1967年後半から1968年までがレッドのセンター・レーベル(「White Album」)なので、とりあえず1stプレスのコバルト・ブルー・オデオン盤を探すことにした。
 中期4枚のうち「Help!」と「Rubber Soul」はすぐに見つかったのだが、「Revolver」と「Sgt. Pepper's」の1stプレスは中々出てこないし、たまに見かけても G とか G+ ばかりで全くハナシにもならない。一度 Discogsに青リボのVG盤が出品されたことがあって、“ひょっとするとひょっとするかも...” と淡い期待を抱いて盤面の画像をメールで送ってもらったのだが、派手なキズこそないものの、盤面が白っぽく汚れてシミのようになっており、溝の状態が劣悪なのは写真からでも一目瞭然。いくら超音波でクリーニングしても傷んだ溝は修復不可能だ。
 それを機に私は1stプレスの青リボを諦め、2ndプレスの赤リボにターゲットを変更した。青リボと赤リボはUKマザーの同じマト2でリリース時期も1年ぐらいしか変わらないので音もそれほど違わないだろうし、盤質の悪い1stプレスを聴いてイライラするよりも、盤質の良い2ndプレスを気持ち良く聴く方が精神衛生上ずっと良い。
 それから2ヶ月ほど経って、待望の赤リボ盤がヤフオクに出品された。盤質 VG+で6,800円なら御の字だ。ウルグアイだけでなく、ペルーやアルゼンチンといった南米のレコードを買う時は送料の点でも盤質の点でも国内のセラーから買うに越したことはないので即ウォッチ。結局誰もライバルは現れず、スタート価格で無事落札することが出来た。
 届いた盤は見た目も実際に聴いても絵に描いたような VG+で、無音部分で少しチリチリいうものの、曲が始まればほぼ Ex~ Ex+レベルでガンガン鳴ってくれるので文句はない。同じマト -2/-2のUK盤と聴き比べてみたところ、UKの方がよりソリッドでシャープ、ウルグアイの方がややラフで大らかに聞こえるが、基本的にはどちらもUKマザーのしっかりした音で鳴ってくれるので、ちょっとしたヴァリエーションが楽しめる... 程度の些細な違いと言っていいだろう。
 ということでビートルズのウルグアイ1stプレス盤は残すところ「Please Please Me」から「Beatles For Sale」までの4枚になったのだが、私は「para ti」がトラウマになっていて中々買う気が起きない。誰か勇気のあるコレクターの方が人柱になってくれへんかなぁ...

「Hey Jude」アルゼンチン盤(Mono)

2022-12-20 | The Beatles
 日本代表の活躍で大いに盛り上がったワールドカップはアルゼンチンの優勝で幕を閉じた。私は基本的にビートルズとスター・ウォーズとF1以外のことはどーでもいいのだが、サッカーのワールドカップだけは理屈抜きに盛り上がれるので、この世界中を巻き込んだ4年に一度のお祭り騒ぎに便乗して大いに楽しませてもらった。
 今回のW杯で一番印象に残っているのはもちろん日本代表のドイツ戦とスペイン戦だが、決勝のアルゼンチンvsフランスも見ごたえ十分の死闘だったし、番外編で言うと、メッシが試合後のインタビュー中にガンを飛ばしてきたオランダFWに向かって “Que mira bobo, anda pa alla!(何見とるんじゃ、ボケ! とっとと失せろ、クソ野郎!)” とメンチを切ったシーンが面白くて、私はこの “ケ ミラ ボゥボォ、アン ダ パジャー ボゥボォ!” という南米版Vシネさながらの名フレーズ(笑)がすっかり気に入ってしまった。というワケで、今日はチームを優勝に導いただけでなく、そんな面白ネタまで提供してくれたメッシさんに敬意を表してお気に入りのアルゼンチン盤「Hey Jude」を取り上げよう。
Leo Messi: Que Mira' Bobo, que Mira Bobo? 🤣


 「Hey Jude」というアルバムは、同じ米キャピトルによる編集盤「Magical Mystery Tour」が今では準オリジナル・アルバム的な地位にまで昇格(?)したのに対し、不当なくらい過小評価されているように思う。ビートルズの全シングル中で最大の売り上げを誇る名曲「Hey Jude」を始め、「Lady Madonna」や「Revolution」、「The Ballad Of John And Yoko」といった後期ビートルズ屈指のロックンロール・ナンバーが入っているにもかかわらず、である。その原因はおそらくその中途半端な選曲基準にあるのではないかと思うのだが、要するにアメリカ市場でまだステレオ音源がリリースされていなかったというただそれだけの理由でここに入れられた「Can't Buy Me Love」や「I Should Have Known Better」といった何の罪もない初期の楽曲たちが大半を占める後期音源の中で居心地悪そうにしているのが不憫でならない。
 あくまでも私見だが、A①「Can't Buy Me Love」からA④「Rain」までの4曲をアルバム「Yellow Submarine」のA面に入っている新曲4曲と入れ替えて68~69年音源でアルバムに統一感を持たせていればイメージがガラッと変わっただろう。「Lady Madonna」「All Together Now」「Hey Bulldog」「Revolution」の並びなんて、もう考えただけでワクワクするではないか?
 話がちょっと横道に逸れてしまったが、要するに私はこの「Hey Jude」というアルバムが大好きなのだ。もっと評価されても良いのではないか、と言いたいのだ。確かに初期~中期の4曲はちょっと場違いな感もあるが(→だって「Magical Mystery Tour」に「All My Loving」や「Day Tripper」が入ってたらおかしいでしょ?)どれもみんな大好きな曲なので、ただのコンピ盤として割り切れば特に不満はない。このブログで以前「Hey Jude」の各国盤を数回にわたって特集したことがあって、それが後に “各国盤バトルロイヤル” なる企画を始めるきっかけとなったのだが、その特集以降も「Hey Jude」は常に他のオリジナル・アルバムと同じトップ・プライオリティで集めており、そんな中で私のレーダーに引っ掛かってきたのがモノラルのアルゼンチン盤だったのだ。
 「Hey Jude」のモノラル盤と言えば真っ先にブラジル盤が頭に浮かぶが、既出のシングル盤用モノ・ミックスを使って製作された真正モノのブラジル盤とは違い、このアルゼンチン盤はすべてのトラックがステレオ・ミックスをモノにしただけの “偽モノ” とのことだが、私としては “本モノ” であれ “偽モノ” であれ気持ちよく聴ければそれでいいので問題はない。それに、大好きな「Paperback Writer」があのキモいエコー無しのモノラル・ヴァージョンで聴けるなんて最高だ。 “偽モノ” なんか邪道だという奴には “アン ダ パジャー ボゥボォ!” だ。
 ちょうど eBay で知り合って懇意にしていたアルゼンチンのセラーが eBay 外取引を持ちかけてきていて(← eBay に手数料を支払うのが嫌だったらしいwww)たまたまそのリストにこのアルゼンチン盤モノラル「Hey Jude」が載っており、ジャケットのレコード取り出し口がボロボロながら盤質 Exで $50ならエエ買い物だと考えて即オーダーしたのだった。
 届いたレコードのマトは ブラジル盤と同じ YEEX-150/151だが、字体は全く違う独自カットだ。盤に針を落とすといきなり凄い音でA①「Can't Buy Me Love」がスピーカーから迸り出てきた。これこれ、やっぱりモノラルはこうでなくっちゃ... と嬉しくなるような明朗快活なサウンドだ。続くA②「I Should Have Known Better」も、A③「Paperback Writer」も “ファイトー、イッパァーツ!” と快哉を叫びたくなるような元気な音で大満足。ところがA④「Rain」は何故かジョンのヴォーカルがバックの演奏に埋もれてショボく聞こえる変てこりんなミックスになっており、このトラックだけはハッキリ言って音作りに失敗している感じ。因みにブラジル盤の「Rain」はちゃんとしたバランスで鳴っている。A⑤「Lady Madonna」からはマトモなミックスに戻っており、文句ナシの爆音でこの名曲を楽しむことが出来る。A⑥「Revolution」のロックな圧も最高だ。
 B①「Hey Jude」はベースがブンブン唸る豪快な音作りで私は大いに気に入った。まるで鉄の指サックをして(笑)太い弦をつま弾いているような感じ。大地を揺るがす重低音は私の大好物なのだ。B②「Old Brown Shoe」のベースも同様の重低音でアルテック・ヴァレンシアの38cmウーファーを震わせる。B③「Don't Let Me Down」は演奏も凄いがジョンのヴォーカルも負けじと強烈に主張してくるところがいい。B④「The Ballad Of John And Yoko」を爆音モノラルで聴く喜びを何と表現しよう? この曲はイマイチ過小評価されているきらいがあるが、曲としてはノリ1発で楽しめる痛快なロックンロールだと思う。
 名曲の宝庫といえるアルバム「Hey Jude」を気持ちの良いモノラル爆裂サウンドで聴けるこのアルゼンチン盤、私はサッカー・ファンでもアルゼンチン・サポーターでもないが、思わず “アージェンティナ!” と叫びたくなるような好盤だ。

The River Rhine Tapes / The Beatles

2022-11-26 | The Beatles
 去年の今頃、ピーター・ジャクソン監督の映画「Get Back」を観るためにディズニープラスへの入会でスッタモンダしていたのが今となっては懐かしい思い出だが、あの映画をきっかけにしてそれまで細かいことを気にせずに気の向くままに楽しんでいたゲット・バック関連の音源を再度時系列に沿って整理して聴くようになり、そのおかげでいくつか新たな発見があった。結果として「Get Back」を観る楽しみも又倍増するという、まさに絵に描いたような好循環を経験できた。
 そもそもビートルズのゲット・バック・セッションの音源に関しては数えきれないくらいのブートレッグが出ており、初心者の頃は何が何だか分からずに手当たり次第に買っていたこともあって、私のレコード/CD棚には似たような盤が一杯並んでいる。それらの大元となった1/2~1/31までのセッションを完全収録したPurple Chickレーベルの「A/B Road」はトータルで97時間もあるらしいのだが(←何年か前にMoonchildレーベルがこれをプレスCD化した「The Complete Get Back Sessions」は何と83枚組!)、膨大な音源の中からこれぞ!というべき名演をピックアップして絶妙な編集で聴かせてくれるアイテムこそが普段聴きに相応しい。
 私の場合、日常的に聴くのはLPなら「Sweet Apple Trax」(モノラル)、CDなら「The River Rhine Tapes」(ステレオ)とほぼ決まっており、たまには他の盤も聴くように努めているのだが、結局はこの2枚に戻ってしまう。「Sweet Apple Trax」は以前このブログで取り上げたので、今回は「The River Rhine Tapes」にしよう。
 この「The River Rhine Tapes」は小型のオープンリールで録音された “ナグラ・テープ” が元になっているという点では「Sweet Apple Trax」や「Black Album」と同じであり、実際半分以上のトラックがそれらと被っているのだが、決定的な違いはスタジオ内の離れた位置に設置されたAロールとBロールの音をミックスするというチカラワザ(?)でステレオに仕上げてあることで、他の盤とは一味も二味も違う臨場感が味わえるのが何よりも嬉しい。実際私はそれまでずっとモノラルでナグラを聴いてきたこともあって、初めてこれを聴いた時はかなり新鮮に響いたものだ。
The River Rhine Tapes; Get Back sessions / The Beatles

 編集のセンスも抜群で曲の配置もかなりよく考えられており、まるでスタジオでビートルズのセッションを聴いているかのような自然な流れを生み出している。私的ベスト編集盤である「Sweet Apple Trax」に比肩する内容の濃さであり、気持ち悪いエコーが過剰にかけられた Disc2-③「Oh Darling」(1/14録音)だけが思いっ切り浮いている以外は大満足の逸品だ。とにかく理屈抜きに聴いてて楽しいので、未聴のビートルズ・ファンは是非一度聴いてみて下さい。

Revolver 2022 Super Deluxe Edition ④

2022-11-20 | The Beatles
 ディスク4は「Original Mono Master」だ。ロックであれジャズであれ、昔のモノラル音源をデジタルでCD化したものがオリジナル盤LPよりも音が良かったなんて経験はこれまで一度も無かったので正直言って今回のモノ・マスターにもあまり期待はしていなかったのだが、案の定CD版モノは良くも悪くも私の予想通りの音で、それなりに空間の広がりのようなものは感じるが、“まぁこんなもんかな...”というところ。その後届いたLP版モノは、CD版よりは音が良かったものの、オリジナル盤の足元には遠く及ばなかった。まぁ人によって音の好みはそれぞれだが、少なくとも私がモノラル音源に求めるものは一にも二にも “生々しさ” であり、“有無を言わせぬ圧倒的パワー” であるからして、少なくともモノラルに関してはUKオリジナルのアーリー・プレス盤さえあれば他は何も要らないというのが私の正直な感想だ。因みにステレオに関しては今回のニュー・リミックスLP版の音は十分合格点だと思う。
 ディスク5「Revolver EP」には「Paperback Writer」と「Rain」のステレオとモノの計4トラックが入っている。「Paperback Writer」のステレオはコーラス・ハーモニー部分の重ね方がデミックスによってかなり精緻に再構築され、メリハリ感が大きくアップしてシャキシャキした “とってもモダンな音” に生まれ変わっており、これはこれでアリやなぁという感じ。逆にギターの荒々しさはオリジナル・ミックスよりも控え目になってしまっているのが私的にはちょっと残念。まぁこのあたりはディスク1の本編ステレオと同じく、オリジナルとの優劣云々よりも “こんな音作りの「Revolver」もアリか...” と楽しむ選択肢が増えたことを喜ぶべきなのだろう。
Paperback Writer (2022 Stereo Mix)

 モノラルの方は比較対象が鬼ラウドカットのシングル盤なので、ハッキリ言って相手にもならない。これは上記のモノ・マスター同様、今回のミックスがどーのこーのではなく、UKオリジナル盤の音があまりにも凄すぎるのだ。特に「Paperback Writer」はビートルズの全シングル中最強と言われるスーパーウルトラ爆音盤であり、リイシュー盤の分際でそんなエグいレコードの音とタイマンを張れるワケがない。それと、私はモノ・ミックスの中盤でエコーが強くかかるところにどうしても違和感を感じてしまうのだが、今回のニュー・ミックスではそのあたりが強調されて聞こえるので余計にアウトだ。
Paperback Writer (Mono)

 「Rain」のステレオはベースが大きく前面に出て来たりヴォーカルの配置が変えられていたりで結構面白い。ただ、だからと言ってこれからこれを頻繁に聴くようになるかと問われると答えに窮してしまう。“興味深い”と“好き”とは違うのだ。モノラルの方は、「Paperback Writer」同様にアナログ・シングル盤の音に勝るものは無い。この曲のキモである混沌としたカオスな感じが強く出ていてリヴォ指数が高く感じられるからだ。あくまでも私個人の好みの問題だが、モノラル音源はやっぱりアナログのアーリー・プレス盤に限ると思う。
Rain (Mono)

 ということで4回に分けてダラダラと感想を書き散らかしてきたこの「Revolver 2022 Super Deluxe Edition」。届いてからもう3週間ほど経ったが、ずーっと頭の中がリヴォりまくりで毎日が実に愉しい。それにしても大好きな「Revolver」の珍しい音源が一杯聴けるなんて、長生きはするモンですなぁ...

【おまけ】この前の日曜に行われたF1サンパウロGPでレース前のグリッド上にサージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドが降臨! サンバとペパーズという組み合わせがいかにもブラジルという感じだ。私的にはレース結果よりもこのビートルズの巨大案山子(?)とレッドブルのチームオーダーを巡る内輪揉め(←今後めちゃくちゃ尾を引きそうで楽しみ...笑)が一番印象に残りました。
      

Revolver 2022 Super Deluxe Edition ③

2022-11-15 | The Beatles
 ディスク3の「Revolver Sessions 2」はディスク2の最後の2トラック「And Your Bird Can Sing(First version ‐Take 2)」に続く形で同曲のSecond Version ‐Take 5 から始まる。このテイクは結構面白くて、最終的にはボツになったものの、ポールとジョージの “ア~♪” というコーラスがめちゃくちゃ新鮮に響く。ビートルズってコーラスには人一倍拘りがあるようで、貪欲と言ってもいいくらい色んなアレンジを試しているのがよくわかる。まぁオフィシャル・ヴァージョンのアグレッシヴなアレンジを聴くと、確かにこのポップなコーラスの入る余地はどこにもないが、私個人としてはこの “ア~♪”コーラスが気に入っているので、コーラス入りの完成形を聴いてみたかった気もする。逆に「Anthology 2」で既出の「Taxman(Take 11)」は “anybody got a bit of money?” の早口コーラスがイマイチ曲想に合ってないように思う。ポールの尖がったギター・ソロが無いエンディングも何て言うか “気の抜けたビール” みたいで、ボツになるのは当然か。
And Your Bird Can Sing (Second Version / Take 5)

 「I’m Only Sleeping」は彼らにしては珍しくヴィブラフォンを使ったクールな「Rehearsal Fragment」、レイドバックしたアコースティック・セッション風の「Take 2」、ドラムスが入った軽快なテンポがめちゃくちゃ気持ち良いインスト・ヴァージョンの「Take 5」、逆回転ギターの入りが最終完成形ヴァージョンと違うアンニュイな「Mono Mix RM1」と4つものテイクが入る大盤振る舞いで、この曲が出来上がるまでどのように進化&深化していったかが垣間見れてめちゃくちゃ面白い。特に3つ目の「Take 5」が生み出すグルーヴは特筆モノで、何度聴いてもクーッ、たまらん!の世界。大好きだったこの曲が益々好きになっていく...
I’m Only Sleeping (Take 5)

 「Eleanor Rigby」ではまずジョージ・マーティンがヴィブラート “有り”と“無し”の2パターンで曲のアタマ部分をストリングス隊に演奏させてポールに “違いが分かるかい? (Tell the difference?)” と尋ねたところ、“う~ん、よく分かんない...(Ummm... not much.)” という気のない答えが返ってくるところが笑える。現場では “無しの方がエエやろ...(It sounded better without)”という意見が大勢を占め(←確かに!)、そこから弦楽アンサンブルのみのインスト・ヴァージョン「Take 2」へと繋げるという実にニクイ構成になっている。このインスト・ヴァージョン自体は「Anthology 2」に入っており、ビートルズが関わってないクラシック音楽の楽器演奏なんかに何の興味もない私はいつも飛ばして聴いてきたが、こういうオモロイ前振り付きだとついついもののついでに聴いてしまう(笑)
Eleanor Rigby (Speech Before Take 2)

 「For No One(Take 10 ‐Backing Track)」はポールのピアノとクラヴィコード主体のインスト・ヴァージョンだが(←まだフレンチホルンは入っていない...)、埋もれていたリンゴのドラムスがしっかりと聞こえるのが嬉しい。伴奏のみということで、ポールが「Michelle」で味をしめたクリシェ(←伴奏を一音ずつ下げていくバロック音楽の手法)の効果が実にわかりやすいトラックになっている。
For No One (Take 10 / Backing Track)

 この「Revolver Sessions 2」で最大の発見が「Yellow Submarine」だ。私はこれまでこの曲は “ポールが作った童謡風の曲をリンゴに贈った” ものだとばかり思っていたのだが、大元となったバースは何とジョンが作った物悲しげなメロディーの断片で、ポールがそこに “黄色い潜水艦”というキャッチーなコーラス部を付け加えて曲想が大きく変化、更に色んな効果音を付け加えて大衆向けのポップ・ソングに仕立て上げたという、まさに “Lennon-McCartney” ならではのクリエイティヴな作品だったとは本当に驚きだ。この曲に関しては4トラック収録されており、「Take 4 before sound effects」や「Highlighted sound effects」も悪くはないが、やはり何と言っても曲が出来上がるまでの変化の過程がよくわかる「Songwriting work tape」の2つトラックが私にとっては最大の収穫だ。
 まず「Songwriting work tape‐Part 1」だが、これこそまさに世紀の大発見! ジョンがギター弾き語りで “僕の生まれた町では... 誰も気にかけない... 僕の名前... 誰も気にかけない...” と歌うバースのみのフラグメンツで(→仮題は「No One Cared」か???)、まだサビの “イエロー・サブマリン” のイの字も無い。「ジョンたま」期を想わせるようなホーム・デモ・レコーディングで淡々と歌うジョンの歌声が兎にも角にも素晴らしい。
 それが「Songwriting work tape‐Part 2」になるとサビの部分が登場(←ポールが Can you read that? って言ってるから、ポールが歌詞を書き換えてジョンがそれを見ながら歌ってるのかな...)、全編ジョンのヴォーカルで(←めちゃくちゃ良いっ!!!)ポールの “Look out!” “Get down!” という合いの手も実に良い味を出している。ジョンとポールの共同作業の様子が伝わってくる秀逸なトラックだ。
Yellow Submarine (Songwriting Work Tape / Part 2)

 「I Want To Tell You(Speech and Take 4)」は演奏前の会話からこの時点で曲名がまだ決まってないこととかリンゴが“Tell You”というアイデアを出したこととかが分かるが、肝心の演奏は40秒程度のインストだけで終わってしまうのが残念だ。「Here There And Everywhere(Take 6)」はポールのカウントから始まり、コーラス・パート無しでポールのヴォーカルがシングル・トラックで聴けるという “スッピン” ヴァージョン。メロディーの美しさが際立つ素朴な仕上がりになっている。
Here, There And Everywhere (Take 6)

 リヴォルヴァー・セッションで最後にレコーディングされた「She Said She Said」は「John's demo」と「Take 15‐Backing track rehearsal」の2トラックを収録。前者はアコギをかき鳴らしながら力強いヴォーカルを聴かせるジョンが素晴らしいし、インスト・ヴァージョンの後者はこの時点でアレンジがほぼ完成していることをうかがわせるまとまった演奏で、特にビシバシ叩きまくるリンゴのキレッキレのドラミングは圧巻だ。
She Said She Said (Take 15 / Backing Track Rehearsal)

Revolver 2022 Super Deluxe Edition ②

2022-11-11 | The Beatles
 ディスク2の「Revolver Sessions 1」は録音した時系列に沿って収録されているらしく、「Tomorrow Never Knows(Take 1)」から始まる。このヴァージョンは「アンソロジー2」で既出なのだが、めちゃくちゃ好きなので何度聴いても飽きない。才気煥発というか、テイク1でこの凄さである。私にとってはこの1曲だけで「ペパーズ」以上の衝撃を受けたという、まさに神曲の記念すべきテイク1なのだ。続いて同曲の Remix 11(←UKモノ1stプレスに入ってた回収ヴァージョン)が入っているが、手持ちのアナログ1G盤のエグい音に比べるとかなり整然とした感じに聞こえてしまう。21世紀の最新テクノロジーをもってしてもあのおどろおどろしい雰囲気は再現不可能なのだろうか?
The Beatles - Tomorrow Never Knows (Take 1 / Audio)

 「Got To Get You Into My Life」は3つのヴァージョンが収録されているが、何と言っても2つ目の Second Version ‐Unnumbered Mix のロックンロール・バンド然としたホーン・セクション抜きアレンジが新鮮でカッコ良い。「Think For Yourself」のファズ・ベースみたいな音も耳に残る。3つ目の Second Version ‐Take 8 はインスト・ヴァージョンであるが故にこの曲のそれまでの器楽アレンジの変遷が手に取るように分かって実に楽しい。
The Beatles - Got To Get You Into My Life (Second Version / Unnumbered Mix)

 同じく3つのヴァージョンが入っている「Love To You」は1つ目の素朴な Take 1 が気に入っている。タイトルはまだ Granny Smith(青リンゴ)のままだが、シタールが入ってないだけでこうも印象が違うとは...(゜o゜)  てゆーか、私は常々 “シタールは「Norwegian Wood」みたいに隠し味的に使ってこそ活きる” と思っていて、「Within You Without You」や「The Inner Light」みたいな “全身シタールまみれ” の曲がどうしても苦手なので、この「Love You To」もそれら2曲よりは幾分マシとはいえシタール全開で来られるとちょっと辛い。過ぎたるは及ばざるが如しと言うではないか。余計な装飾が一切無いこのTake 1 を聴いて “あぁこんなにエエ曲やってんなぁ...” と再発見できた。
Love You To (Take 1)

 「Paperback Writer(Takes 1 &2 ‐Backing Tarck)」はヴォーカルの入ってないインスト・ヴァージョンなのだが、これがもう鳥肌が立つくらいのカッコ良さ。そういう意味では後で出て来る「Doctor Robert(Take 7)」も甲乙付け難いくらい素晴らしいのだが(←リンゴのドラミングがめっちゃ巧い!)、聴いてて思わず身体が揺れてしまうグルーヴは唯一無比だ。これらの凄まじいまでのドライヴ感を前にすれば他のロックンロール・バンドなど瞬時にして砕け散ってしまう。何しろビートルズなのだ。砕け散って本望と言うべきだろう。
Paperback Writer (Takes 1 & 2 / Backing Track)

Doctor Robert (Take 7)

 ディスク2で一番興味を引かれた音源が「Rain(Actual speed)」だ。アップテンポで演奏・録音したバック・トラックのテープ・スピードを下げてこの曲を完成させたという経緯は知識として知ってはいたが、まさかその超高速ヴァージョンを実際にこの耳で聴けるとは思わなんだ。メロディーは同じでもテンポ / キーが違うだけでこれほどイメージが変わるとは驚きだが、リヴォってない「Rain」なんか「Rain」じゃない!と言いたくなるくらい強烈な違和感だ。それにしても、リンゴといい、ポールといい、よくぞまあこんな超高速で演奏できるもんやなぁと感心させられた。続きに収録されている「Rain(Slowed down for master tape)」(←まだADT処理前のジョンのヴォーカルがガチのダブル・トラックで聴ける!)と併せて聴くことによって当時のレコーディング・プロセスがわかるところがファンとしては嬉しかった。
Rain (Take 5 / Actual Speed)

Rain (Take 5 / Slowed Down For Master Tape)

 「And Your Bird Can Sing」には「Anthology 2」で有名になった “Giggling(くすくす笑う)”ヴァージョンというのがあるが、ここではそれとはまた別の “Giggling”ヴァージョン(←First version / Take 2となっていてAnthologyのとは笑い方が違う...)が収録されており、Giggling Vocalを重ねるまでのビフォー/アフター2トラックが並んでいる。演奏そのものは最終完成形のテイクよりも軽やかでポップな感じだ。それにしても大麻ラリパッパ状態(?)でバカ笑いしながら歌ったテイクでもロックンロールとして立派に聴かせてしまうあたり、ビートルズってホンマに凄いバンドやなぁと感心してしまった。
And Your Bird Can Sing (First Version / Take 2 / Giggling)