shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

グルーヴ歌謡の名盤特集②

2023-03-26 | 昭和歌謡・シングル盤
 先週は日本中が侍JAPANのWBC優勝で大いに盛り上がったが、私もご多分に漏れずワールドカップの時と同様にミーハー根性丸出しで思いっきり楽しませてもらった。今回のWBCでは面白い出来事が一杯あったが、私としては日本人が世界一になったという事実が何よりも嬉しかったし、準決勝のメキシコ戦と決勝のアメリカ戦は私のような “にわか” ファンをもテレビに釘付けにするくらい緊張感に溢れた良い試合だったと思う。それにしても大谷選手って、あの若さで歴史に名を残すレジェンドになったというのが何よりも凄いですな。日本人の誇りですわ。
 とにかくどの試合も見どころ満載で記憶に残る名シーンが目白押しだったが、中でも個人的に一番気に入っているのが優勝決定後にヌートバー選手のオカンがインタビュー中に大魔神佐々木に会えて感激のあまり卒倒するシーン(笑)で、ヘタなリアクション芸人を遥かに凌ぐ面白さ。 “はい、大魔神です” っていう佐々木の返しもオモロかったし、ヌーママの “やぁだぁ~” の陽キャ全開ぶりにも大笑いさせてもらった。
ヌートバー母、生放送中に卒倒する

 このようにWBC狂騒曲で大フィーバーした日々も終わり、仕事の残務整理も一段落したこともあって、今は朝から晩までレコード三昧の贅沢な生活を満喫している。このブログでは前回に引き続き、お気に入りのグルーヴ歌謡名盤シングルを大特集。

③小山ルミ「グット,,がまんして!!」(1970.10)
 小山ルミは私にとってまさに “クイーン・オブ・カルト歌謡” と言ってもいい存在で大好きな歌手の1人なのだが、彼女の一番の強みはそのヘタウマ歌唱(?)と相性抜群のキャッチーな楽曲に恵まれたことではないか。たとえばこの「グット,, がまんして!!」、コミカルさを前面に押し出しながらキュートでダンサブルなシュビドゥビサイケビート歌謡に仕上がっており、何度聴いても飽きない魅力に溢れている。理屈抜きに楽しめるリズム歌謡として、“昭和歌謡ナイト” のようなゴーゴークラブ・ダンスパーティーで大受けすること間違いなしの逸品だ。尚、ほぼ同時期にグルーパーというガール・グループがシングルB面で出した「帰ろうかな」はこの曲と異名同曲なのだが、2枚を聴き比べてみると小山ルミ・ヴァージョンの完成度の高さがわかろうというものだ。それにしてもこんな挑発的なジャケットで「がまんして」はないでしょ?
小山ルミ「グット,,がまんして!!」1970

グルーパー「帰ろうかな」


④松島トモ子「コーヒーと仔犬」(1971.2)
 松島トモ子と言えば “テレビの企画か何かでライオンに噛まれた女優” という色物タレント的な存在だと思っていたので、昭和歌謡のシングル盤を色々と聴き漁っていく中で見つけたこの「コーヒーと仔犬」というシングルを聴いて驚倒した。めちゃくちゃ良いではないか! 作曲したのは山本リンダやピンクレディーで大ブームを巻き起こした都倉俊一で、この曲も彼が得意とする “簡単にリズムに乗っていける” ダンス・チューンになっており、ショッキング・ブルーの「Venus」からアダプトしてきたようなグルーヴで聴く者をグイグイ引き込んでいく。ジャケット・アートワークの色使いもめちゃくちゃ気に入っている。
松島トモ子 / コーヒーと仔犬


⑤篠ヒロコ「私あぶないの」(1971.8)
 篠ヒロコというと一般的には女優さんのイメージが強いかもしれないが、私は歌手としての彼女の大ファンで、彼女こそ昭和ガールズ歌謡史上最も過小評価されているシンガーの1人だと思っている。特に初期のシングルは素晴らしく、全くと言っていいほど売れなかったようだが私は超の付く愛聴盤として溺愛している。この「私あぶないの」もそんな1枚で、YouTubeで初めて聴いてすぐに気に入り、ヤフオクやメルカリで探してみても全然出てこない。やっとのことでディスクユニオンの通販で見つけた時は大喜びしたものだが、商品説明のところに “サニーファイブ盗作回収盤” とあったので、回収盤なら世間に出回っている数が少ないのもしゃあないと納得。好奇心に釣られてサニーファイブ盤も入手して聴いてみたが、ほとんど同じメロディー展開で笑ってしまった。どちらもいずみたくが作曲しているのだが、自分で自分の作品をパクるのは “使い回し” やのうて “盗作” になるとは知らなんだ。ただ、「My Sweet Lord」や「Come Together」と同様、盗作と言われようが何と言われようがこのレコードの素晴らしさに変わりは無く、彼女のエモーショナルなヴォーカルが存分に楽しめる名曲だと思う。
篠ヒロコ / 私あぶないの

ザ・サニー・ファイブ / 太陽のジュディー 

グルーヴ歌謡の名盤特集①

2023-03-19 | 昭和歌謡・シングル盤
 1960年代後半のビート歌謡革命をきっかけに、バタ臭い歌謡曲から脱却して洗練された歌謡ポップスへと向かう大きな流れが生まれたが、当時の洋楽の影響を上手く吸収して日本独自のスタイルへと昇華させたグルーヴ歌謡の楽曲には特に魅力的なナンバーが多いので、このブログでも特集していきたいと思う。

①太田とも子「恋はまっさかさま」(1970.9)
 太田とも子という歌手の歌を初めて聴いたのは「歌謡曲番外地~悪なあなた~」というコンピCDで、小山ルミや沢知美といった錚々たる顔ぶれの中でひときわカッコいいグルーヴで他を圧倒していたのが他でもないこの曲だった。 “この太田とも子って初めて聞く名前やけど一体何者なんや???” と大コーフンしながらネットで調べてみたら何と梶芽衣子の実妹でビックリ(゜o゜) 確かにその声質といい、節回しといい、お姉さんに実に雰囲気が似ているが、良い曲に恵まれたこともあって、寡作ながら名曲名演の数ではお姉さんを凌駕しているのではないか?
 そんな彼女の全シングル中でも屈指の人気盤がこの「恋はまっさかさま」だ。特に転調を繰り返しながら疾走するところなんかもう痛快そのもので、宇崎竜堂の最高傑作と言っても過言ではないキラー・チューンだと思う。“幸せか幸せでないか 女の気持ちをそんな言葉で 訊かないで下さぁい~♪” で始まるちあき哲也の歌詞も聴きごたえ十分。“苦い酒を甘く 甘い酒を苦く 女はできる 魔法使いなの~♪” のラインなんかも実にユニークで唸ってしまう。シングル・ヴァージョンは軽やかな女性コーラスがフィーチャーされているのに対し、CD化されたのは映画「野良猫ロック マシン・アニマル」の中で使われていた別ヴァージョンで、チープなオルガンやウネウネしたサックス、そして縦横無尽に弾けまくるベースが独特のグルーヴを生み出している。どちらかを選べと言われれば僅差で前者だが、クラブなんかでめっちゃウケそうな後者にも捨てがたい魅力があって悩ましいところだ。
 このレコード、シングル盤にもかかわらず今では1万円近い値段で取り引きされているようだが、私が買った頃はまだ真っ当な値段で手に入れることができた。これは昭和歌謡だけでなくビートルズでもジャズでも言えることだが、状態の良いアナログ・レコードのオリジナル盤は年々値が吊り上って入手困難になっているので、好きな盤を早目に買っておいてホンマに良かったと思っている。
太田とも子 - 恋はまっさかさま(シングル・ヴァージョン)

太田とも子 - 恋はまっさかさま(映画「野良猫ロック マシン・アニマル」劇中ヴァージョン)


②市地洋子「髪を染めたの」(1970.6)
 市地洋子と言っても “誰、それ?” となるのが関の山だと思うが、“ミラーマンに出ていた野村隊員” といえば私と同世代の方なら覚えておられるかもしれない。まぁ同じ特撮物の女性ヒロインでもセブンのアンヌ隊員のようなセクシー系ではなくちょっと地味目な大人の女性という感じだったし、ミラーマン自体がどちらかというとマイナーな存在なので、やっぱり知名度は低いかもしれない。しかし、彼女のこのデビュー・シングル「髪を染めたの」は “聴かずに死ねるか、この1曲!” レベルのスーパーウルトラ大名曲であると声を大にして言いたいくらい大好きな曲なんである。
 この曲は私が敬愛する鈴木邦彦氏の作品中でも屈指のグルーヴ歌謡で、ホーンとストリングスのアレンジが絶品! ウネりまくるベースのラインが圧倒的にカッコイイのだ。こういう隠れ名曲名演との出会いがあるから昭和ガールズ歌謡マニアはやめられないヽ(^o^)丿  彼女のヴォーカルはあくまでもニュートラルで耳に心地良く、時折聴かせるちょっと甘えたような歌声とフェイクを交えた歌い方が男心をくすぐるのだ。一度聴いたら脳内リフレインが止まらなくなるメロディーとビートと歌声の三位一体攻撃の前に私はなす術もなく完全KOされてしまった。いやぁ... これホンマに最高ですわ(≧▽≦)
市地洋子 / 髪を染めたの

橋本淳&筒美京平コンビ傑作選

2023-03-12 | 昭和歌謡・シングル盤
①江美早苗「涙でかざりたい」(1968.2)
 江美早苗は由美かおるや金井克子と共に“レ・ガールズ”で活躍した人だが(→別れたダンナに逆恨みされて刺し殺されたのホンマにかわいそう...)、橋本淳&筒美京平コンビが書いたこの「涙でかざりたい」は “レ・ガールズ” 関連の楽曲では異色ともいえるミディアム・スロー・テンポの哀調ビート歌謡で、同コンビによる翌年のスーパーウルトラ大ヒット曲「ブルーライト・ヨコハマ」のプロトタイプ的な雰囲気を持ったナンバーだ。彼女のシングルでは「チャカブン」や「恋のロリロリ」(←何ちゅーこっ恥ずかしいタイトル付けるねん...)といったキュート系ナンバーの方が人気があるようだが、私的にはこの「涙でかざりたい」一択だ。ポール・マッカートニーの影響をもろに感じさせるベース・ラインも愛おしい。
江美早苗(Sanae Emi)/涙でかざりたい(Namida de Kazaritai "I Want To Decorate With Tears")


②鍵山珠理「涙は春に」(1968.6)
 あくまでも私見だが、橋本淳&筒美京平コンビは①の「涙でかざりたい」とこの②「涙は春に」で様々なアレンジのアイデアを試し、満を持して「ブルーライト・ヨコハマ」を完成させたのではないか。思わずそんなことを考えてしまうくらいこれらの楽曲は雰囲気がよく似ているし、曲の完成度の高さも群を抜いている。何を隠そう、この「涙は春に」は私の昭和歌謡シングル盤コレクションの中でも最上位に位置する超愛聴盤なのだ。尚、この曲は後に安西マリアがアルバムで(←言うたら悪いけどアレンジが酷すぎて聴くに堪えない...)、また「涙は紅く」とタイトルを変えて山本リンダや山内恵美子らがカバーしているが、京平先生入魂の鉄壁アレンジを施されたオリジナルの鍵山珠理ヴァージョンには遠く及ばない。絵に描いたような名曲名演とはまさにこういう曲のことをいうのだ。
EP-1113 鍵山珠理/涙は春に


③ジュディ・オング「ブラック・パール」(1969.8)
 ジュディ・オングのコロムビア時代のシングルでは前回取り上げた「涙のドレス」とこの「ブラック・パール」の2枚が橋本淳&筒美京平コンビの作品だ。やさぐれたファズ・ギターと京平印のストリングスが全編を支配する「涙のドレス」とは対照的に、この「ブラック・パール」の方は “おっとこのこ~ はたちに なるっとぉ~♪” と一度聴いたら忘れられないようなキャッチーなメロディーをアップテンポで軽快に歌い上げ、歌謡曲の王道を行くような見事なナンバーに仕上げている。とにかくまるで一筆書きで書いたようなこのメロディー・センスは天衣無縫と呼ぶに相応しい素晴らしさである。何度聴いても唸ってしまう、実に良い曲だ。
【ブラック・パール】ジュディ・オング 1969年


④諏訪マリー「デイトのあとで」(1970.7)
 諏訪マリーの「デイトのあとで」は一般的な知名度は低いかもしれないが、橋本淳&筒美京平コンビが作り上げた “かくれ名曲” と呼ぶにふさわしい1曲だ。イントロの爽快なトランペット・アレンジからしてもう京平色が濃厚に立ち込めているが、ヴォーカルをダブル・トラック処理することによって “ひとり ザ・ピーナッツ” 的なニュアンスを加えているあたりも実にニクイし、スパニッシュな味わいのギターも絶妙なアクセントになっている。筒美京平の天才ここに極まれりといった感じのキラー・チューンだ。
諏訪マリー / デイトのあとで(Mary Suwa / Deito no Ato de "After The Date")

“ひとりGS” 裏名盤特集

2023-03-06 | 昭和歌謡・シングル盤

①黛ジュン「乙女の祈り」(1968.1)
 衝撃のデビュー・シングル「恋のハレルヤ」で確立したスタイルを更に突き詰めて生まれた名曲がこの3rdシングル「乙女の祈り」だ。多くのフォロワーを生み出した彼女のユニークな歌唱法に負けないくらい印象的なのがやさぐれたファズ・ギターで、彼女のヴァーカルとバックの演奏が有機的に結びつき、これ以上ないくらいカッコイイひとりGSに仕上がっている。黛ジュンは「ハレルヤ」や「夕月」だけじゃないことを如実に示すキラー・チューンだ。
黛ジュン「乙女の祈り」 1968


②美空ひばり「むらさきの夜明け」(1968.1)
 美空ひばりの “ひとりGS” といえば何はさておき「真っ赤な太陽」で決まり!みたいな風潮があるが、それで終わりではあまりにも勿体ない。「真っ赤な太陽」に続いてリリースされたこの「むらさきの夜明け」は知名度は低いが「真っ赤な太陽」に勝るとも劣らない名曲名演なのだ。津々美洋とオールスターズ・ワゴンをバックに従え、持ち前のリズム感と圧倒的な歌唱力で縦横無尽にひとりGSするひばりがめちゃくちゃカッコイイ! かなり荒ぶった演奏でビシッとキメたエンディングの余韻に浸る快感は priceless だ。
美空ひばり むらさきの夜明け(1968年)


③ジュディ・オング「涙のドレス」(1969.3)
 私は60年代コロムビア・レコード時代のジュディ・オングが大好きでシングル盤もほとんど持っているが、そんな中でも三指に入る愛聴盤がこの「涙のドレス」だ。邦楽界のレノン&マッカートニーと呼んでも過言ではない「橋本淳&筒美京平」コンビの作品で、ジュディ・オングという名前に油断しているといきなりイントロのファズ・ギターに面食らうというサイケなグルーヴ歌謡なのだ。ジュディ・オング唯一の欠点は歌唱がキレイすぎることだと思うのだが、大暴れするファズ・ギターがそのあたりをうまいこと “汚して” くれている。実に見事な器楽アレンジだ。
「涙のドレス」ジュディ・オング


④由美かおる「星空のシェドン」(1968.2)
 60年代の由美かおるはどちらかというと明るくて健康的なイメージの曲が多いのだが、そんな中で異彩を放っているのがこの「星空のシェドン」だ。作曲したのは黛ジュンの「恋のハレルヤ」や川奈ミキの「愛のおもかげ」、ゴールデン・カップスの「長い髪の少女」などでマイナー調の名曲を連発した鈴木邦彦で、イントロを聴いただけでもうウネウネしたサイケなグルーヴ感が横溢、1968年という時代だからこそ生まれた面白い1曲だと思う。
星空のシェドン