shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ストーンズのシングル盤特集⑤【1971-1974】

2020-07-30 | Rolling Stones / The Who

① Brown Sugar [英RS 19100 /1971.4]
 ストーンズが最も得意としているのは軽快なリフに乗って疾走するこの「Brown Sugar」のようなアッパー・チューンだ。この手の曲を演らせたら彼らの右に出るバンドはいないだろう。曲自体はシンプルそのもので「Jumpin' Jack Flash」の70年代版という感じがしないでもないが、バックでかき鳴らされるアコギや気分を高揚させるマラカスが絶妙な隠し味として響き、彼らにしか出せないノリで聴き手をグイグイ引っ張っていくところがたまらない。アルバム「Sticky Fingers」はあのジッパー付きジャケットとこの曲のおかげで名盤化したのではないか。尚、B面に収録されたチャック・ベリー・カヴァー「Let It Rock(Live Version)」も負けず劣らずの名演だ。
Brown Sugar (2009 Mix)

The Rolling Stones - Let It Rock


② Tumbling Dice [英RS 19103 / 1972.4]
 私がこの「Tumbling Dice」という曲を初めて聴いたのはリンダ・ロンシュタットがアルバム「Simple Dreams」でカヴァーしたヴァージョンで、ストーンズのオリジナル・ヴァージョンを聴いたのはそれからかなり後になってからのことだった。だから今でも「Tumbling Dice」と言えばリンダの力強いヴォーカルが頭の中に鳴り響いてしまうが、ストーンズによるオリジナル・ヴァージョンには洗練されたリンダ・ヴァージョンとは又違った “ダイヤモンドの原石” 的な魅力があるのも事実。この曲は他の派手派手なシングル曲と比べるとイマイチ目立たないかもしれないが、アルバム「メインストリートのならず者」の一連の流れの中で聴くと一際強い存在感を感じさせる重要な1曲だ。
Tumbling Dice ~ The Rolling Stones

Tumbling Dice


③ Star Star [仏RS 19.108 /1974.2]
 この「Star Star」はイギリスでもアメリカでもシングル・カットされず、アルバム「Goats Head Soup」のB面ラストにひっそりと(?)収められていたこともあって、最初はこの名曲名演の存在に気付かなかった。そもそもあのアルバムはAラスに大嫌いな「Angie」が入っているので(←ミックのくどいヴォーカルにゲップ出ませんか?)ストーンズの全アルバム中もっとも聴かないレコードと言ってもいいくらい敬遠していたのだ。そんな私にこの曲の素晴らしさを再発見させてくれたのはジョーン・ジェット姐さんによるリスペクトに満ちたカヴァーで、“おぉ、これめちゃくちゃカッコエエやん!” と思って調べてみるとストーンズがオリジナルだったでござる... というオチだ(笑) 改めてストーンズ・ヴァージョンを聴いてみるとこれがもうむしゃぶりつきたいくらいカッコイイ(^o^)丿  チャック・ベリー直系のシンプルでストレートアヘッドなロックンロールは彼らのレパートリーの中に散見されるが、この曲はそれらの中でも最上の1曲と言えるものだ。
The Rolling Stones Star Star (Starfucker) (Uncensored)

Joan Jett - Star Star


④ It's Only Rock 'n Roll [英RS 19114 /1974.7]
 先の2曲は秀逸なカヴァー・ヴァージョンを聴いてその素晴らしさを知ったようなものだが、この曲に関してはもちろんストーンズのオリジナル・ヴァージョンこそが唯一無比の存在で、この顎が落ちそうなグルーヴは本家ストーンズ以外ではとてもじゃないが再現不可能。今やストーンズの登録商標となった “I know it's only rock 'n roll but I like it.” というフレーズを繰り返すだけでこれほどまでの快感を与えてくれる曲はちょっと他では思い出せないし、泡だらけになるプロモ・ビデオも大いに笑わせてくれる。私的にはストーンズの最盛期は1966年から1970年くらいまでで、ここ一番という名曲名演はこの時期に集中しており、70年代前半は爛熟期... 花で言えば散り始める直前というイメージなのだが、その中でもこの曲はまさに “巨星ストーンズ最後の輝き” という感じがする必殺のキラー・チューンだ。
The Rolling Stones - It's Only Rock 'N' Roll (But I Like It) - OFFICIAL PROMO

ストーンズのシングル盤特集④【1968-1969】

2020-07-27 | Rolling Stones / The Who
① Jumpin' Jack Flash [F.12782 英Decca / 1968.5]
 器楽アレンジメント面でブライアン・ジョーンズ色の強い「Their Satanic Majesties Request」での迷走(←私個人はこのアルバム結構好きなのだが...)を経て、新たにジミー・ミラーをプロデューサーに起用し、“俺らにはコレしかない” と完全に吹っ切れたかのようなストーンズのノリノリ・ロックンロール宣言がこの「Jumpin' Jack Flash」だ。 “ジャン、ジャン♪” というイントロのギター(←しかもアコギ!!!)から始まるシンプルなリフ攻撃に血湧き肉躍るのは私だけではないだろう。チャーリー・ワッツのツボを心得たドラミングも最高だし、絶妙なアクセントになっているマラカスの使用も心憎い。とにかくすべての楽器が然るべきところで鳴っている感じで、まさにシンプル・イズ・ベストを絵に描いたような名曲名演だ。
Jumpin' Jack Flash (Original Single Mono Version)


② Sympathy For The Devil [F13635 英Decca / 1976.4]
 前回書いたように「Paint It Black」と並ぶ私的№1ストーンズ・ソングがこの「Sympathy For The Devil」だ。「A Night In Tunisia」にインスパイアされたと思しきサンバのリズムを刻むパーカッションとマラカス、要所要所でここぞとばかりに飛来する “フッ フゥ~♪” コーラス、キンキンに尖ったギター、不安をかき立てるピアノの連打、そしてそういったすべての要素が混然一体となってまるでトランス状態に突入したかのように曲の終盤に向かってどんどん盛り上がっていく様はとても言葉では表現できないカッコ良さ(≧▽≦)  歌詞の中の “Who killed the Kennedys?” というフレーズもこの曲の持つ悪魔的雰囲気に拍車をかけている。時代の空気というのもあるのだろうが、この風雲急を告げる緊張感、ただならぬ雰囲気、二度と再現不可能な異様な世界は何度聴いても実にスリリング!!! まさにストーンズ一世一代のスーパーウルトラ大名演だ。尚、私が持っているシングル盤は73年に出たオランダ盤(6103 066)と76年に「Honky Tonk Women」のB面として再発されたUK盤(F13635)の2枚だが(←この曲の発表当時は本国イギリスではシングル・カットされなかった...)、UK盤が6:25のフル・ヴァージョンなのに対し、オランダ盤は4:12のショート・ヴァージョンなので注意が必要だ。
The Rolling Stones - Sympathy For The Devil (Official Lyric Video)

Sympathy for the Devil recording sessions with The Rolling Stones - 1968 (HD)


③ Honky Tonk Women [F.12952 英Decca / 1969.7]
 顎が落ちそうなリフを刻むギターにもう一本のギターが絡み、そこへ迫力満点のバスドラが入ってくる... いやぁ~、これはもうたまりまへんな(≧▽≦) ゆったり流れるリズムも “場末の酒場のオンナたち” にピッタリのルーズな雰囲気を醸し出していて言うことナシ。ブルージーでレイドバックした感じは快感そのもので、随所にカントリー・フレーバーを散りばめたこの曲を聴いて身体が揺れなければストーンズ流 “グルーヴ” の気持ち良さは一生分からないだろう。これこそまさに “音楽は理屈じゃない!” というのが実感できる名曲名演。それにしてもこの曲はどの時代のライヴで聴いても盛り上がれますな(^.^)
Honky Tonk Women (Original Single Stereo Version)


④ Gimme Shelter [TOP-1659 日London / 1971.11]
 この曲はイギリスでもアメリカでもシングル・カットされておらず、私の知る限りでは日本、ベルギー、フランスだけでしかシングルになっていないが、私的にはストーンズを語る上で欠かせない曲なので気にせず紹介。世評の高いアルバム「Let It Bleed」の冒頭を飾ると共にブライアン・ジョーンズ亡き後のストーンズの再出発を高らかに宣言したキラー・チューンで、この曲の存在こそが「Let It Bleed」の過大評価(→正直言ってこの曲以外は印象に残る曲が無い...)につながっていると思う。とにもかくにもこの殺気をはらんだ緊張感がたまらなくスリリングで、ゲスト・ヴォーカルとして起用されたメリー・クレイトンのソウルフルで存在感抜群の歌声もこの曲の泥臭いグルーヴ増幅に一役買っているし、ひんやりとした感触にゾクゾクさせられるイントロもカッコイイ。前半の “War, children, it's just a shot away.(戦争なんてたった一発の銃声で始まるものさ。)” と後半の “I tell you, love, sister, it's just a kiss away.(1つのキスから愛が芽生えるのさ。)” というフレーズの対比の妙がたまらなく好きだ。
The Rolling Stones - Gimme Shelter (Official Lyric Video)

ストーンズのシングル盤特集③【1966-1967】

2020-07-23 | Rolling Stones / The Who

① Paint It Black [F.12395 英Decca / 1966.5]
 もしもストーンズのベスト曲を選べと言われたら、「Sympathy For The Devil」かこの「Paint It Black」を選ぶだろう。前者が音楽の範疇を超えた得体のしれない吸引力で聴く者をグイグイ引き込んでいくのに対し、この曲はメロディー、リズム、そして器楽アレンジといった純粋に音楽的な要素のみで聴き手を圧倒するところが凄い。ブライアン・ジョーンズのシタールが絶妙な隠し味になっており、この曲の持つ妖しげな魅力をアップさせているし、後半部のベースがうねりまくるところなんかもうたまらない。尚、ベンチャーズ歌謡として有名な渚ゆう子の「京都の恋」はこの曲にインスパイアされたもので、実際に「ベンチャーズ・オン・ステージ'71」以降の来日公演でしばしばこの2曲をメドレーで演奏している(←ジェリー・マギーのエレキ・シタールがエエ味出してます...)のが面白い。
Paint It, Black (Mono)

Paint it Black - Ventures live in Japan 1990


② Let's Spend The Night Together [F.12546 英Decca / 1967.1]
 リンゴ・スターのあのドラムの音がなければビートルズのサウンドにならないのと同様に、“ストーンズの音” を形作っているのは間違いなくチャーリー・ワッツのドラミングだ。この曲でもドコドコ叩きまくるチャーリーが目立っていて思わず頬が緩んでしまうが、もう一つこの曲のイメージを決定づける重要な役割を担っているのがジャック・ニッチェの弾くピアノで、曲を前へ前へと押し進めていく大きな推進力になっている。尚、[エド・サリバン・ショー」出演時に “歌詞が性的な意味を連想させる” という理由で圧力がかかり、サビの部分を “Let's Spend Some Time Together” へと変えて歌わされたという話は有名だが、「Brown Sugar」といい、「Starfucker」といい、いかにも下ネタ上等を信条とする(?)ストーンズらしいエピソードだ。
Let's Spend The Night Together (Mono)


③ We Love You [F.12654英Decca / 1967.8]
 この「We Love You」はビートルズの「All You Need Is Love」のレコーディングにミックとキースが参加したことに対するお礼としてジョンとポールがコーラスで参加したという理由でビートルズ・ファンにも知られているが、この曲の一番の魅力は何と言ってもニッキー・ホプキンスの弾くスピード感溢れるピアノに尽きるだろう。彷徨浮遊系のヴォーカル、妖しい雰囲気を醸し出すコーラス・ワーク、そして混沌としたサウンドを生み出すバックの演奏と、どこを切っても典型的なサイケデリック・ロックのサウンドだが、そんな中でホプキンスの硬質なピアノの音が曲全体をグイグイ引っ張っていくところが超カッコイイ(^o^)丿 この曲はオリジナル・アルバムには未収録だが、コレを「Their Satanic Majesties Request」のAラスかBラスに入れてたらあのアルバムの評価も変わっていたかもしれない。
We Love You


④ She's A Rainbow [AT15088 オランダDecca / 1967.12]
 ストーンズの名曲というのはほとんどがキャッチーなリフを中心としたタテノリ・ロックなのだが、ごくごくたまにめちゃくちゃメロディアスな曲に出くわして “これ、ホンマにストーンズ???” と驚かされることがある。この「She's A Rainbow」なんかその典型と言ってもいいような名曲で、まるでポール・マッカートニーが作曲したかのような流麗なメロディー・ラインに耳が吸い付く。曲全体をリードするピアノはまたまたニッキー・ホプキンスで、彼のピアノがこの時期のストーンズ・サウンドに欠かせないものであったことがよくわかる。一度聴いたら耳に残るバックコーラスも絶妙で、ミックのヴォーカルを見事に引き立てているところはさすがという他ない。かなり昔のことになるが、この曲がCMソングとしてテレビから流れてきたのを聴いた時、選曲担当者のセンスに唸ったのを覚えている。尚、ストリングス・アレンジはレッド・ゼッペリン加入前のジョン・ポール・ジョーンズが担当している。
She's A Rainbow ((Original Single Mono Version))

iMac [She's a Rainbow]

ストーンズのシングル盤特集②【1965】

2020-07-18 | Rolling Stones / The Who

① The Last Time [F.12104英Decca / 1965.2]
 ストーンズが世界的に大ブレイクを果たしたのはこの次のシングル「Satisfaction」だが、その伏線となったのがこの「The Last Time」だ。それまではカヴァー曲に名演が集中していた彼らがジャガー&リチャーズの自作曲で初めて強烈なインパクトを残したのがこの曲で、“キャッチーなメロディーラインやリフを繰り返して印象的なフレーズを紡ぎ出し、大衆にアピールするシングル曲を作る” という手法は続く「Satisfaction」、「Get Off Of My Cloud」を経てストーンズ屈指の名曲「Paint It Black」へと繋がっていく。そういう意味でもストーンズ史において非常に重要なナンバーと言えるのではないか。チャーリー・ワッツの刻む正確無比なビートに乗ってブライアン・ジョーンズが繰り返し弾き続けるあの印象的なリフが脳内リフレインを起こすようになれば、もう立派なストーンズ中毒だ。
The Last Time (Mono)


② Satisfaction [F.12220 英Decca / 1965.5]
 ストーンズは聴かないけれどこの曲だけは知っているという一般の音楽ファンも多いのではないかと思えるぐらいの知名度を誇る、言わずと知れたストーンズの代表曲。ビートルズで言えば「Yesterday」や「Let It Be」、「Hey Jude」的な位置付けの曲で、マニアにとっては耳ダコかもしれないが、改めて聴いてみるとやっぱりエエなぁ...と思わせてくれるのがこういった超有名曲だ。一番の魅力は何と言っても一度聴いただけで頭に残るあのカッコ良いギター・リフで、ミックの歌唱もコレしかない!という感じで迫ってくる。ミック・ジャガーは決して好きなタイプのシンガーではないが、ストーンズのサウンドにはアクの強い彼のヴォーカルが一番あっていると実感させてくれる一曲だ。
[I Can't Get No] Satisfaction


③ Get Off Of My Cloud [F.12263 英Decca / 1965.9]
 この「Get Off Of My Cloud」はこの時期のストーンズとしては一番好きな曲で、イントロのチャーリー・ワッツの切れ味鋭いドラミング(←何回聴いてもシビレるわ...)で一気に引き込まれ、ミックのアグレッシヴなヴォーカルが印象的なサビメロの強烈なフックに耳が吸い付く。“Hey, you, get off of my cloud!” での掛け合いもインパクト絶大だし、バックで呪文のように上昇下降を繰り返すメロディー・ラインも絶妙な隠し味になっている。それにしても「満足できない!」(I Can’t Get No Satisfaction)に続いて「とっとと失せろ!」(Get Off Of My Cloud)というタイトルのシングルをもってくるところがいかにもストーンズらしい。
Get Off Of My Cloud (Mono)


④ 19th Nervous Breakdown [F.12331 英Decca / 1966.2]
 この曲を初めて聴いた時は弾むようなイントロがめちゃくちゃカッコ良くてウキウキワクワク... アップテンポで快調に飛ばし(←特にギターがふるいつきたくなるぐらいにカッコイイ!)、更にサビの“Here it comes...♪” 4連発で気持ちが高まり一気にクライマックスへ... とここまでは完璧な流れだったのだが、続く “Here comes your 19th nervous breakdown...♪” のラインの凡庸なメロディーが生み出す尻すぼみ感に “えっ、これで終わり???” と肩透かしを食ったのを今でもよく覚えている。その後何十回何百回とこの曲を聴いてきたが、残念ながらこの第一印象が覆ることはなかった。前半部分がカッコ良いロックンロールに仕上がっているだけに、本当に惜しいと思う。
19th Nervous Breakdown (Mono)

ストーンズのシングル盤特集①【1963-1964】

2020-07-11 | Rolling Stones / The Who
 10年間愛用しているパソコン(Lifebook AH550)の冷却ファンが先週壊れてしまって修理に出していたのだが、そいつが昨日やっと返ってきた。“ガリガリ...” “ギギギ...” と凄まじい異音がしているのに使い続けた私が悪いのだが、その代償は修理代24,000円(←ファンだけでなくマザーボードまで熱でやられてたのでそっちも交換するハメに...)と結構高くついてしまった(*_*)  まぁ今となっては貴重なwindows7機なのでwindows10(←使いにくいので嫌い!!)に買い替えずにすんで正直ホッとしたし、これでネット・オークションもブログ更新も再開できるので良しとせねば... 
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 私はローリング・ストーンズの大ファンというわけではないが、レコードは結構持っている。ビートルズに比べるとアルバム曲のクオリティーに大きな差があるように思えるので(←あくまでも私見です...)ビートルズのようにスタンパーに拘ったり各国盤を集めたりするところまではいかないのだが、シングルに限って言えばそのほとんどが名曲名演のオンパレードで、かなりのレベルにあるのではないか。というワケでこれから数回に亘って“ビートルズ者” の視点からストーンズのシングル盤を特集していきたいと思う。

① I Wanna Be Your Man [F.11764英Decca /1963.11]
 レノン&マッカートニーがストーンズに贈ったとされるこの曲は本家ビートルズも「With The Beatles」の中で演っているのだが、両者のヴァージョンを聴き比べてみると、筋金入りのビートルマニアの私でさえもこのストーンズ・ヴァージョンに軍配を上げざるを得ない。ビートルズのヴァージョンにはリンゴのヴォーカルがロックンロールに向いていないという弱点があるが、それ以上に違いを生んでいるのがストーンズの尋常ならざるアグレッシヴなサウンドだ。まるでヘビー級ボクサーのパンチの乱打のような圧力で迫ってくるビル・ワイマンのゴツゴツしたベースがうねりまくって凄まじいグルーヴを生み出し、バンドが一体となって疾走するさまはまさにガレージ・パンクそのもので、理屈を超えた原始的なロックンロールの初期衝動がマグマのように押し寄せる...(≧▽≦)  初期ストーンズを聴くというのはつまりそういうことなのだ。
I Wanna Be Your Man ((Original Single Mono Version))


② Money [DFE 8560 英Decca / 1964.1]
 ビートルズ vs ストーンズのカヴァー対決(?)第2弾はバレット・ストロングの「Money」だ。ジョン・レノンのドスの効いたシャウト・ヴォイスによってこれ以上ないと思えるぐらいヘヴィーに仕上げたビートルズのヴァージョンこそが史上最強だという確信は1ミリたりとも揺るがないが、原曲を換骨奪胎して暴力的とさえ言えるパンキッシュな演奏で対抗したストーンズもかなりいい線いっていると思う。尚、この曲はイギリスではアルバムにもシングルにも入っておらず、4曲入りEP盤「The Rolling Stones」でしか聴けない貴重な音源なのだが、ドイツでは上記の「I Wanna Be Your Man」とのカップリング(←凄い!!!)でシングル・カットされているので、そちらを狙うのもいいかもしれない。
The Rolling Stones - Money (EP version)


③ Carol [72.025 フランスDecca JukeBox用プロモ・シングル/ 1964.6]
 ビートルズと同様、いやそれ以上にストーンズ(特にキース)のチャック・ベリー愛はハンパない。カヴァーした曲数も(オフィシャル・リリースに限って言えば)ビートルズが「Rock & Roll Music」と「Roll Over Beethoven」の2曲なのに対し、ストーンズはデビュー・シングルの「Come On」を始め、「Bye Bye Johnny」「Carol」「Around And Around」「You Can’t Catch Me」「Talkin’ ‘Bout You」「Little Queenie」「Let It Rock」「Don’t Lie To Me」と、私の知っているだけで9曲も演っている。そのどれもが名演なのだから恐れ入るが、中でもこの「Carol」の出来は群を抜いている。切れ味抜群のキースのギターといい、お約束のハンド・クラッピングといい、ノリ一発で一気呵成に駆け抜けるようなハイ・テンションの演奏は圧巻で、ビートルズの「Live at the BBC」ヴァージョンに比肩するベスト・カヴァーだと思う。
Carol (Mono)


④ Route 66 [23.536 ベルギーDecca / 1964.8]
 私が最も愛聴しているストーンズのアルバムは名盤の誉れ高い「Let It Bleed」でも「Exile On Main St.」でもなく、ほとんど話題にも上らない彼らのUKデビュー・アルバムなのだが(←UKオリジナル盤とは似て非なるUS盤は論外...)、そんな愛聴盤の1曲目を飾るのが他でもないこの「Route 66」だ。この曲のオリジナルはジャズ・ピアニストのボビー・トゥループで、多分ナット・キング・コールのヴァージョンが一番有名だと思うが、ストーンズはチャック・ベリーがカヴァーしたものをベースにしながら、ラウドなギターやハンド・クラッピングを加えてノリノリのロックンロールに仕上げている。この後も様々なロック系アーティストがこの曲をカヴァーしているが、その原型はすべてストーンズにあると言っても過言ではない。
Route 66 (Mono)