shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Greatest Hits II / Queen

2011-03-29 | Queen
 私はクイーンの大ファンだが、全時代をまんべんなく聴いてきたかというとそうではなく、ライヴはともかくアルバムに関しては断然70年代支持派である。「ザ・ワークス」以降のクイーンは確かに良い曲や演奏もあるにはあるのだが、1枚のアルバムとして聴いてみると、収録曲のクオリティー、演奏のテンションの高さ、4人の個性が高い次元でぶつかり合うことによって生まれる風雲急を告げるような切迫感といった様々な面で「ザ・ゲーム」までの彼らの諸作品には及ばないと思う。しかし70年代のスリリングな展開とは又違った魅力、バンドとしての円熟を示すような佳曲が多いのも事実。そんな80年代クイーンの名曲をつまみ食いしたいという私のような我儘なファンにとって、安心ラクチン格安パックツアーのようなお買い得アルバムがこの「グレイテスト・ヒッツII」なんである。
 このアルバムはイギリス国内であの「スリラー」をも凌駕して歴代売り上げ№1を誇る「グレイテスト・ヒッツ」の続編で、「ホット・スペース」から「イニュエンドゥ」までの代表曲をほぼ網羅したベスト盤。私は個々のオリジナル・アルバムがあるから別にエエわいと思って持っていなかったのだが、今年の1月にリマスターされて再発されたのを機に、アルバムとは微妙に違うシングル・ヴァージョンやリマスター効果に魅かれて買ってみた。後期の名曲群が18曲も入って2,200円という安さも嬉しい。
 アマゾンから届いたこのCDを聴いた私はまずその音の素晴らしさにビックリ(゜o゜) 手持ちの古いCDのショボイ音とは比べ物にならないくらい音圧がアップしており、音像もめっちゃクリアで、特にフレディーのヴォーカルの生々しさの前には言葉を失う。そして今回のリマスターで一番インパクトが強かったのがジョンのベースで、それまではノッペリと他の音に埋もれがちだったのがクッキリと眼前に屹立しキレ味も格段に向上、ソリッドでキリリと締まった音でまるでゴムまりのように(←ヘタな例えですんません...)ブンブン弾むのだ(^o^)丿 乱暴な言い方をすればこのブンブン・ベースだけでもこの CD を買う価値があると思う。
 収録曲は全18曲で、日本盤のみカップヌードルCM曲⑱「アイ・ワズ・ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」がボートラとして入っており、コレがお買い得なのか蛇足なのかはファンの間で意見が分かれるところだろう。私は別にどっちでもいいが、収録時間ギリギリまで無理して曲を詰め込んだ関係で短く編集されているので、この曲が目当ての人はご注意を。
 「ホット・スペース」から唯一選ばれた②「アンダー・プレッシャー」はアメリカでは不思議なことに最高位が29位と不発だったがイギリスでは見事「ボヘミアン・ラプソディ」以来6年ぶりの全英1位に輝いた大名曲。何度も聴いていると “アイス・アイス・ベイビー~♪” なリズムを刻むベースラインが脳内リフレインを起こして病み付きになるスルメ・チューンだ。前回取り上げた愛聴盤「ザ・ワークス」から選ばれたのは③「レディオ・ガ・ガ」、⑤「アイ・ウォント・トゥ・ブレイク・フリー」、⑦「イッツ・ア・ハード・ライフ」、⑭「ハマー・トゥ・フォール」の4曲で、すべてシングル・ヴァージョンで収録というのがファンとしては嬉しい。
 86年の「ア・カインド・オブ・マジック」からは同タイトル曲①、⑨「フー・ウォンツ・トゥ・リヴ・フォーエヴァー」、⑮「フレンズ・ウィル・ビー・フレンズ」、⑰「ワン・ヴィジョン」の4曲が選ばれており、この中では AC/DC みたいなリフがカッコ良いタテノリ・ロックな⑰が一番好き。エンディングを “Just gimme gimme gimme fried chicken!” でシメるユーモアのセンスも最高だ(^.^) 美メロとタイトなリズムが見事に溶け合い、今回のリマスターで更なるパワー・アップを果たした①も昔ながらのクイーンらしさを80年代風に表現したという点で気に入っているナンバーだ。
 89年の「ザ・ミラクル」からは④「アイ・ウォント・イット・オール」、⑧「ブレイクスルー」、⑪「ザ・ミラクル」、⑬「ジ・インヴィジブル・マン」の4曲で、何と言ってもリマスタ効果抜群な⑬が必聴だ。このダイナミックなサウンドはぜひ大音量で音の洪水の中に身を委ねるようにして聴きたい。この曲はクイーンとしては異色のリズミカルなナンバーだが、プロモ・ビデオもめちゃくちゃ面白いし(←グラサン・フレディーのコミカルな動きとと増殖するブライアンが最高!クイーンのPVでは一番好きかも...)フレディーがメンバーの名前を叫んでからソロに入るという構成も楽しくて私は大好きだ。プロモ・ビデオといえば⑧も列車の上で演奏する4人の姿が疾走感溢れる曲調とバッチリ合っていて、特に最後の壁をブチ破るシーンなんか何度見てもスカッとする痛快なナンバーだ。
 実質的なラスト・アルバムとなった91年の「イニュエンドゥ」から選ばれたのは同タイトル曲⑥、⑩「ヘッドロング」、⑫「アイム・ゴーイング・スライトリー・マッド」、⑯「ザ・ショウ・マスト・ゴー・オン」の4曲で、私が大好きなのは疾走感溢れるロックンロール⑩だが、リマスター効果絶大だったのは⑥で、スティーヴ・ハウのフラメンコ・パートから一気呵成にクライマックスへとなだれ込む怒涛の展開はもう鳥肌モノだ。死を目前にしたフレディーのスワン・ソング⑯はファンとしては涙なしには聴けない。
 こーやって聴いてくるとやっぱりクイーンは別格やなぁ...と改めて痛感させられる。そんな彼らの遺した音源をブラッシュ・アップしてドドーンとリリースする今回のリマスター・シリーズ、ビートルズの時と同じく旧 CD や UK オリジナル LP との聴き比べなど、楽しみは無限に広がりそうだ。

Queen - 'Under Pressure'


Queen - One Vision


Queen - A Kind Of Magic


Queen - 'The Invisible Man'


Queen - Breakthru


Queen - Headlong


Queen - Innuendo
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The Works / Queen

2011-03-24 | Queen
 地震でちょっと間が空いてしまったが、気を取り直して今日からクイーン特集再開だ。前回ブライアンのソロを取り上げた時にも書いたが、私は「ホット・スペース」以降のクイーンのアルバムにはどうしても物足りなさを感じてしまう。これは良い悪いではなくあくまでも個人的な好みの問題で、 “流麗なギター・オーケストレイションと分厚いコーラスで完全武装しながらメロディアスかつハードにロックする” という、私が一番好なクイーン・サウンドがほとんど聴けないからだ。だから「ア・カインド・オブ・マジック」も「ザ・ミラクル」も「イニュエンドゥ」も決して嫌いではないのだが、「ザ・ゲーム」までのアルバムのようには楽しめなかった。しかしそんな “80年代クイーン” のアルバムの中で例外的に “愛聴盤の殿堂” 入りしたのが1984年にリリースされたこの「ザ・ワークス」である。
 ロジャー作のリード・シングル①「レディオ・ガ・ガ」を初めて聴いた時、シンセ臭いサウンド・プロダクションはあまり好きになれなかったが、ブラック・ミュージックに擦り寄った前作「ホット・スペース」から明らかに軌道修正されたポップでキャッチーな曲想には大喜びしたものだった。当時はちょうどMTV全盛の時代だったが、私にとっては American Top 40 を初めとするラジオのチャート番組がメインでMTVはあくまでもその補足的な存在だったので、 “古き良きラジオ賛歌” 的な歌詞も大いに気に入っていた。しかし私がこの曲の真価を知ったのはライヴ・エイドを見た時で、スタジオ・ヴァージョンよりも遙かにロックなノリが増していてめちゃくちゃカッコ良かったし、スタジアムを埋め尽くした大観衆が拳を突き上げて手拍子する例のパフォーマンスも圧巻だった。やっぱりこの曲はライヴ・ヴァージョンに限ります(^.^)
 ジョン作の 2nd シングル⑥「アイ・ウォント・トゥ・ブレイク・フリー」は曲だけ聴くと中々の名曲なのだが、この曲に関してはどうしても例のプロモ・ビデオを抜きに語ることは出来ない。アレを初めて見た時はブライアンのウサちゃんスリッパとかロジャーの可愛いすぎる女子高生姿とか大笑いしたが、さすがにフレディーの女装だけはインパクトが強烈すぎて頭がクラクラした。今でも曲を聴いているだけで彼のウインクや全身牛柄タイツ姿が浮かんできてしまう(笑) まぁ何やかんや言うてもツッコミどころ満載の面白ビデオ・クリップなんですけどね。
 しかしそんなシングル2曲を差し置いて私が圧倒的に好きなのがブライアン作の⑧「ハマー・トゥ・フォール」だ。コレ、ハッキリ言ってクイーン曲の中で「'39」「セイヴ・ミー」と並ぶ最愛聴曲で、彼らとしてはホンマに久々の痛快無比なロックンロール。思わず一緒に歌いたくなるようなウキウキワクワク・メロディー、聴く者をロックな衝動に駆り立てるエッジの効いたラウドなギター・サウンド、アドレナリンがドバーッと出まくるロジャーの爆裂ドラミング、そして “世界にひとつ” な流麗コーラス・ワーク(←特に You don't waste no time at all~♪ のとこなんかもうゾクゾクするわ!!!)と、私がクイーンに求める要素を全て兼ね備えたスーパーウルトラ大名演だ。フレディーも超ノリノリでシャウトしまくり、 “こんなクイーンを待っていた!!!” と叫びたくなるようなカッコ良さ!今回の地震で落ち込んでいた私の気持ちを “いつまでも凹んでられるか、クソッタレ!俺にはロックンロールがあるんじゃい!!!!!” と奮い立たせてくれたのが何を隠そうこの曲なのだ(^o^)丿
 このアルバムには大コケした前作「ホット・スペース」の失地を回復するために今一度原点回帰を図ったかのような雰囲気が濃厚に立ちこめており、良く言えばクイーンらしい、意地悪く言えば過去のヒット曲の焼き直しみたいなナンバーも見受けられるが、昔のクイーンを愛するファンとしてはそれがどーしたソー・ホワット? セルフ・コピーだろうが何だろうがあの音が聴けるだけで満足なんである。そういう意味で、「プレイ・ザ・ゲーム」に「ボヘミアン・ラプソディ」のピアノのフレーズをふりかけてレンジでチンした様な③「イッツ・ア・ハード・ライフ」も、「クレイジー・リトル・シング・コールド・ラヴ」路線のロカビリー復活が嬉しい④「マン・オン・ザ・プラウル」もめっちゃ好きだ。
 又、前作の鬱憤を晴らすかのようにブライアンのギターが唸りを上げるハードロック②「テア・イット・アップ」や美メロ連発の切れ味鋭い疾走系ポップンロール⑦「キープ・パッシング・ザ・オープン・ウインドウズ」など、どことなく大傑作「ザ・ゲーム」の小型版みたいな印象を受けるのは気のせいか?シンプルなアコギが切なさを際立たせる名バラッド⑨「イズ・ジス・ザ・ワールド・ウィー・クリエイテッド」でアルバムを締めくくるというのも70年代の彼らのスタイルそのものだ。
 このアルバムは70年代の諸作品のようにスリルとコーフンをもたらしてくれるような内容ではないが、クイーンが一番クイーンらしかった “あの時代の音” を80年代の空気の中で可能な限り再現したという意味で、昔ながらのクイーン・ファンにとってはひとしきり愛着の湧く特別な1枚なのだ。

Queen - Hammer To Fall


Live Aid 1985 Queen-Radio Ga Ga


Queen - i want to break free (high definition) + Download link

Let It Be / The Beatles

2011-03-20 | The Beatles
 大地震が起こってから1週間以上が過ぎた。避難所生活を余儀なくされている方々が置かれている過酷な状況、厚顔無恥な東電幹部とアホバカ民主党政府の連中による人災としか言いようがない福島の原発危機、関東一円で行われている計画停電など、“平和で安全な国” であるはずの日本がどんどん崩壊していく。F1の開幕戦バーレーンGPがアラブの政情不安のせいで中止になったことでも明らかなように、スポーツや音楽といったエンターテインメントはあくまでも平和と安全の上に成り立つもの。私の信条は “No Music, No Life” だが、今日本で起きていることを考えると、とてもじゃないがノーテンキに音楽を聴いて盛り上がる気分にはなれない。かと言って募金と節電以外に自分に出来ることも思い浮かばないというジレンマで、何ともやりきれない毎日だ。そんなワケでこのブログも暫く中断していたのだが、いつまでも悶々としているわけにもいかない。ということで再開一発目の今日はクイーン特集をお休みしてビートルズの「レット・イット・ビー」でいきたい。
 この let it be という言葉、 “すべてなすがままに” と訳されているのをよく見かけるが、この表現は取りようによっては受動的にも聞こえるし、ヘタをすると “なるようになれ” という投げやりな意味に曲解されかねない。しかし歌詞全体を読めば分かるように、この曲は聴く者を優しく励ますポジティヴなメッセージを持った “希望の歌” なのである。ライヴ・エイドやフェリー・エイドを始めとする数々のチャリティー・イベントでこの曲が歌われていることからもそれは明らかだ。私はこれまでこの曲を何千回聴いてきたかわからないが、今ほどその歌詞がグッと心に響いたことはない。特に 2nd ヴァースの歌詞を今苦しんでおられるすべての人々と分かち合いたいと思う。

 And when the broken-hearted people   打ちひしがれて
 Living in the world agree          この世に生きる人々の思いはみな同じ
 There will be an answer           いつか答えがみつかる
 Let it be                    今は堪え忍ぼう

 For though they may be parted       たとえ別れ別れになっていても
 There is still a chance that they will see  また会える日が来るかもしれない
 There will be an answer           いつか答えがみつかる
 Let it be                    今は堪え忍ぼう (内田久美子著「ビートルズ全詩集」より)

そういえば映画で使用されたテイクはレコードとは違い、ポールが後半の歌詞の一部を There will be no sorrow と変えて歌っていたが、まったく同感だ。一日も早くこの悲しみと混乱が過ぎ去りますように...

The Beatles.Let it Be
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Keep Yourself Alive / Queen

2011-03-12 | Queen
 東北から関東にかけて大地震と大津波でエライことになっている。逃げ惑う人々、流されていく家や車、闇夜を照らすように炎上する街と、まるで地獄絵図そのものだ。私の住んでいる奈良では特に大したことは無かったが、被害に会われた方々のことを考えると心が痛む。このブログを読んで下さっている方々の中にも東北や関東の方がいらっしゃったと思うが、みなさんご無事だろうか?まだまだ余震も続いているようなのでくれぐれもお気を付け下さい。
 ということで今日はしがない音楽ブログらしく、被災された方々に捧げる曲をと思い、クイーンの「キープ・ユアセルフ・アライヴ」を選んでみた。この曲は彼らの記念すべきデビュー曲で、シンセサイザーもダンス・ミュージックも知ったこっちゃないと言わんばかりの勢いで突っ走る痛快無比なロックンロール。このイントロを聴いて何も感じなければロック・ファンではない、と言い切ってしまいたくなるようなバリバリのキラー・チューンだ。フレディーの速射砲のようなヴォーカル、ロジャーの爆裂ドラミング、ロック魂全開で疾走するブライアンの “ザ・ワン・アンド・オンリーな” ギターと、まさに私が一番好きな“ロックなクイーン”の原点と言える1曲で、その歌詞も凹んだ時なんかに聴くと非常に元気づけてくれる類のポジティヴなものだ。

 ♪Keep yourself alive, keep yourself alive まず生き続けていくことさ
  Take you all your time and money     ありとあらゆる手を尽くせば
  Honey, you'll survive             何とか生き延びれるはずさ

東北や関東のみなさん、ネットなんか見てる場合やないとは思いますが、この曲を聴いて元気を出して下さいね。

Queen - 'Keep Yourself Alive'


Queen - Keep Yourself Alive (Long Lost Retake)
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Star Fleet Project / Brian May & Friends

2011-03-10 | Queen
 1980年の大傑作アルバム「ザ・ゲーム」で全米を制覇したクイーンは80年代に入ってからも絶好調で、「フラッシュ・ゴードン」のサントラ盤、デヴィッド・ボウイとの共演シングル「アンダー・プレッシャー」、そして名曲名演の “これでもか攻撃” に圧倒される究極のベスト盤「グレイテスト・ヒッツ」と、70年代に活躍した他のバンドが沈黙したり解散したりする中、彼らだけは怒涛の快進撃を続けていた。実際、1973年のデビュー以降、彼らには駄演凡作の類が1枚もなく、すべてが名演傑作のオンパレードで、レッド・ゼッペリン亡き後、アルバムを出すごとに見事な裏切りでもって未知の感動を与えてくれそうなブリティッシュ・ロック・バンドはクイーンだけだった。
 しかし遂にと言うべきか、来るべき時が来たと言うべきか、そんなクイーンもやってはいけないミスを犯してしまった。「アナザー・ワン・バイツ・ザ・ダスト」の全米№1ゲットで血迷ったのか、よりにもよってブラック・ミュージックに手を染めたのだ。それが1982年リリースの「ホット・スペース」で、ラジオからシングル「ボディ・ランゲージ」が流れてきた時はあまりのショックに言葉を失ったほどだ。アルバムの購買意欲も起きず、結局FMエア・チェックだけで済ませたのは彼らの全アルバム中コレが初めてだった。
 私が「ホット・スペース」に失望したのはブラック・ミュージック云々以前の問題として、これまでのアルバムには必ず入っていた “古典的ブリティッシュ・ハード・ロック” タイプの演奏が1曲も無かったからだ。クイーンはあくまでもロック・バンドであって、ただ単にヒット曲をタレ流すポップ・グループではない。常にハイ・テンションとハイ・クオリティを維持し、ブリティッシュ・ロックの王道を行ってほしいという思いがあったのだが、私が愛したクイーンは以前ご紹介した空耳のように “あ~あぁ 終わっちゃった...♪” という感じで、まさに忸怩たる思いだった。果たせるかな、このアルバム以降の80年代クイーンのアルバムではブライアンのギター・パートが激減し、その結果として70年代のような血湧き肉躍るようなロック曲がぱったりと姿を消してしまった。
 1983年の終わり頃、そんな私のモヤモヤを吹き飛ばすような1枚のミニ・アルバムがリリースされた。それはブライアン・メイのソロ・プロジェクトで、サンダーバードとガンダムを足して2で割ったような(?)イギリスの子供向けTV番組「スター・フリート」の主題歌をカヴァーしているのだが、何とあのエディー・ヴァン・ヘイレンが参加しているというからコレはもうえらいこっちゃである。何を隠そう私にとっての “3大ギタリスト” はブライアン・メイ、エディ・ヴァン・ヘイレン、そしてスティーヴィー・レイ・ヴォーンの3人なのだが、その内の2人が共演しているのだ。これでコーフンしない方がおかしい。
 裏ジャケに載っているブライアン自身の解説によると、このプロジェクトは元々、ブライアンが息子のお気に入りTV番組のテーマ曲をロック・ヴァージョンでやってみようという軽~いノリでスタートしたもので、彼が一度共演してみたいと思っていたミュージシャン達に声をかけて実現したという。そのA①「スター・フリート」はウキウキワクワクするような曲想と爽快感溢れるブライアンの脱力ヴォーカルがバッチリ合っていて実に楽しい1曲なのだが、聴き物はやはりブライアンとエディーのギターだろう。この二人、何が凄いといって彼らにしか出せないユニークな音色で変幻自在なフレーズを次から次へと繰り出してくるところが他のギタリスト達と決定的に違う。私はほとんど盲目的と言ってもいいぐらい二人の大ファンなので、仮に弾いているのが「禁じられた遊び」でも(笑)フニャフニャと腰砕け状態になってしまう。そんな二人の共演ということで壮絶なギター・バトルをイメージしてしまうが、 “ブライアン・メイ & フレンズ” というだけあって、バトルと言うよりも和気あいあいとした雰囲気が伝わってくる楽しげなセッションといった感じだ。それにしても子供向けTV番組のテーマ曲をここまでカッコ良いロック・ナンバーにしてしまうのだからホンマに大したものだ。
 A②「レット・ミー・アウト」はブライアン作のブルージーなナンバーで、前半の歌の部分はどこにでも転がっていそうな単調なテーマ・メロディーの繰り返しなのだが、2分47秒からのギター・ソロ・パートに突入すると名手二人の個人芸が炸裂、演奏が俄然熱を帯びてきてブルージーなギター・インプロヴィゼイションの応酬に耳が吸い付く。クイーンやヴァン・ヘイレンが日頃演っている音楽はブルースではないが、さすがはロック界を代表する天才ギタリスト二人、ロックのルーツ・ミュージックとしてのブルースへの造詣も深そうだ。
 B面すべてを占める13分近い大作「ブルース・ブレイカー」は “Dedicated to E.C.” と書かれているようにエリック・クラプトンに捧げられた大ブルース大会で、バンドを離れて好き勝手にやれるソロ・アルバムだからこそ出来た趣味的なセッションの極めつけといった感じの曲。60年代末期から70年代初頭あたりの雰囲気濃厚な泥臭いブルースで、二人とも “ブルースの化身” と化して思う存分弾きまくっている。決して一般受けするような演奏ではないが、二人のファンなら聴いておいて損はないと思う。私がブルージーなギターを腹一杯き聴きたいと思った時にターンテーブルに乗せるのは大抵スティーヴィー・レイ・ヴォーンかこのアルバムのどちらかだ。
 ブライアン・メイ初のソロ・プロジェクトということで “春のクイーン祭り” のスピンオフ的なニュアンスで取り上げたこのアルバムは、その安っぽいジャケットとは裏腹にバリバリのロック・ギターやコテコテのブルース・ギターが満載のマニアックな1枚なのだ。

Brian May - Star Fleet [Star Fleet Project 1983]


Brian May & Eddie Van Halen - Blues Breaker (parte 1)[Star Fleet Project 1983]


Brian May & Eddie Van Halen - Blues Breaker (parte 2)[Star Fleet Project 1983]
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The Game / Queen

2011-03-05 | Queen
 70年代半ばにして白黒2枚のアルバムでオペラ・ロックを極め、それ以降はアメリカン・マーケットを意識した何でもアリのポップなアルバムを連発して楽しませてくれたクイーンは、ベスト・アルバム的な意味合いも兼ねた怒涛のライヴ盤「ライヴ・キラーズ」で70年代を締めくくった。特に前作「ジャズ」が非常にヴァラエティに富んだ内容だったので “次のアルバムはどんな感じやろ?” と期待に胸を膨らませながら毎週ラジオで英米のヒット・チャート番組をチェックしていたところ、1979年も押し詰まったある日のこと、いきなり全英チャートにドカン!と飛び込んできたのが彼らのニュー・シングル⑤「クレイジー・リトル・シング・コールド・ラヴ」だった。
 いきなり軽快なアコギのイントロからプレスリー風のロカビリーが炸裂!もうノリノリである。それまでのクイーンからは考えられないような贅肉を削ぎ落としたシンプル&ストレートなサウンドがめちゃくちゃカッコイイのだ(^o^)丿 男の色気すら感じさせるフレディーの円熟ヴォーカル、音楽の根底をしっかり支えながら要所要所をビシッとキメるジョンのベース、バンドをグイグイとドライヴさせるロジャーのタイトなドラミング、相変わらず歌心全開で絶妙なソロを取るブライアンのギターと、バンドが第2黄金期のピークを迎えつつあったことを如実に示す快演だ。一度聴いたら忘れられないようなキャッチーなメロディー展開や爽快感溢れるコーラス・ハーモニーは初期ビートルズを彷彿とさせるものがあり、音楽活動を再開しようとしていたジョン・レノンがこの曲を聴いて大いに刺激を受けたというのも頷けるスーパー・ウルトラ・キラー・チューンだ。
 このリード・シングルに顕著なように、彼らが大作主義が主流だった70年代に別れを告げ、来るべき80年代を先取りしたかのような “シングル志向の” シンプルでキャッチーなサウンドで勝負に出たのが翌1980年にリリースされたアルバム「ザ・ゲーム」だった。シングル「クレイジー・リトル・シング・コールド・ラヴ」を聞いた時もブッ飛んだが、このアルバムも実に衝撃的な内容で、いきなりシンセが飛び交うわ、ベースはブンブン唸るわでビックリ(゜o゜) しかしアルバム1枚聴き終えて感じたのは、ここに屹立しているのは紛れもないクイーンの音楽であり、キャッチーであることが決してロックの正当性を破壊するものではないことを如実に示す非常にクオリティーの高いアルバムだということ。どこを切っても捨て曲ナシの大傑作で、私的にはこんな“アルバム1枚丸ごとメロディーの塊” みたいな盤はポールの「ラム」以来だった。
 このアルバムは①「プレイ・ザ・ゲーム」で幕を開ける。彼らの初期のアルバムにあった “No Synthesisers!” というクレジットは前々作「世界に捧ぐ」から無くなってはいたものの、その後の「フラッシュ・ゴードン」への流れを想わせるスペイシーなシンセのイントロに驚かされる。そもそも私は基本的にシンセが大嫌いで80年代中盤以降のフォリナーやヴァン・ヘイレンみたいな使い方には虫唾が走るのだが、さすがはクイーン、シンセに頼るのではなくあくまでも曲を巧く引き立てるサウンド・スパイス的な使い方をしている。曲自体はクイーンの王道とも言うべきドラマチックな展開のメロディアスなバラッドで、特にフレディーの優しく包み込むような歌声とブライアンの哀愁舞い散るギター・ソロに涙ちょちょぎれる。サビのコーラスもたまらんなぁ... (≧▽≦)
 これに続くのがベースが大活躍する②「ドラゴン・アタック」と③「アナザー・ワン・バイツ・ザ・ダスト」だ。②はブライアンのプッツンした様な(?)ギターが聴き物で、リズム隊も生き生きとビートを刻む。③はフレディーと親交のあったマイケル・ジャクソンからシングルにするべきだとアドバイスされたというブラック・フィーリング溢れるダンス・ナンバーで、ここでもベースが唸りまくるのだが、私としてはファンク路線のクイーンというのはあんまり好みではない。こんなこと、別に彼らがやらんでもエエのにと思ってしまうのだ。ただ、ブライアンの光速カッティングはめちゃくちゃカッコイイけど。
 ジョンが書いた④「ニード・ユア・ラヴィング・トゥナイト」は軽快なポップンロールで、思わず一緒に歌いたくなるキャッチーなメロディーはクイーンの隠れ名曲トップ3に入れたいくらいの出来の良さ。ブライアンのソロもサビのコーラスもウキウキワクワク感をかき立てる楽しいもので、転がり落ちるようなエンディングから次の⑤への流れもめっちゃ好きだ。
 B面1曲目の⑥「ロック・イット」はフレディーがスローに迫る前半部と一転してロジャーがハスキーなヴォーカルでハードに疾走する後半部の対比の妙がお見事!この手の曲調はロジャーに限ると思うし “We want some prime jive♪” の後追いコーラスも実にエエ味出している。⑦「ドント・トライ・スイサイド」は次作「ホット・スペース」の布石になってそうなダンサブルなナンバーだが、ここではまだ抑制が効いている。それにしても邦題の「自殺志願」は何とかならんかったんか...(>_<)
 ⑧「セイル・アウェイ・スウィート・シスター」はブライアンの切ない歌声が胸に沁みる名バラッド。クイーンお得意の美しいコーラスにブライアンのまろやかな音色のギターと、ファンとしてはたまらん展開の1曲だ。⑨「カミング・スーン」はロジャーが書いたノリの良いロックンロールで、やや単調だが “カミン ス~ン♪” の心地良いフレーズが耳に残るナンバーだ。
 アルバムのラスト曲⑩「セイヴ・ミー」は何を隠そう私がクイーンで一番好きな曲。オマエが好きな “ロックなクイーン” とちゃうやんけ!と言われそうだが、私にとってこの曲はロックとかポップとかを超越した次元にある神曲で、特にこの切ない歌詞が心にグッとくるのだ。サウンド面でもブライアンのギターは “もうこれしかない!” という感じの音色・フレーズのアメアラレ攻撃だし、力強く歌い上げるフレディーのヴォーカルは圧倒的な説得力で迫ってくるという実にドラマチックな展開で、クイーンというバンドが貫いてきた美学のようなものをギュッと凝縮したかのような屈指の名曲名演だと思う。
 とにかくこの「ザ・ゲーム」は全曲シングル・カットできそうなぐらいヒット・ポテンシャルの高い楽曲が揃っており、1枚のアルバムからシングルを何枚も切ってアルバム・セールスを伸ばしていくという80年代ロックの方向性を決定づけた大名盤。クイーンの全てのアルバム中で「シアー・ハート・アタック」と並んで最も愛聴している1枚だ。

Queen - 'Crazy Little Thing Called Love'


Queen - Save Me at The Hammersmith 1979 (Improved Quality)


Queen - Play The Game [ High Definition ]


Queen - Need Your Loving Tonight


Queen - Sail away sweet sister pic

Jazz / Queen

2011-03-01 | Queen
 今日からいよいよ3月、ちょっと前に大雪でエライ目にあったというのに、もう春はすぐそこだ。食パンでもこのブログでも春と言えば恒例の “祭り” なのだが、去年は確か “春のフレンチ祭り” と題してフランス・ギャルやシルヴィ・バルタン、シェイラなんかを集中投稿して萌えていた。今年は “春のクイーン祭り” ということで、「ライヴ・キラーズ」、「世界に捧ぐ」に続く第3弾として今日は1978年にリリースされたクイーン7枚目のアルバム「ジャズ」を取り上げたい。
 このアルバムが出た時私はちょうど高校生で、クイーンのニュー・アルバムのタイトルが「ジャズ」と聞いてビックリ(゜o゜) もちろん当時の私は “ジャズ” という言葉に対して “年配のオッサンが聴くスカした音楽” という認識しかなかったし、アルバム・ラスト曲の邦題が「ジャズはいかが」というマヌケなものだったせいもあって(←ここでの jazz とはもちろん音楽のことではなく、“たわごと、ナンセンス” を意味する俗語で、曲の歌詞の最後は “No more, no more of that jazz... もうやめてくれ、そんなたわごとは...” で締められている。「ジャズはいかが」とは勘違いも甚だしいアホな邦題だ) “今度のクイーンはロックとちゃうんか...???” と一抹の不安を感じながらアルバムの発売を待った。
 ラジオで頻繁に流れ始めたリード・シングル②「バイシクル・レース」もそれまでのクイーンのイメージとはかなり違った雰囲気の曲で、初めて聞いた時は “何じゃこりゃ???” だった。何と言ってもいきなり “バーイシコゥ、バーイシコゥ、バーイシコゥ...♪” である。しかも曲のテンポがコロコロ変わることもあってクイーンお得意のコーラスをもってしても「オペラ座の夜」の頃のような高揚感はあまり感じられないし、何よりも曲の途中に挿入された “チリン チリン♪” という軽薄なベルの音が気恥ずかしくて、聴いてて腰砕けになってしまう。ただ、1分7秒からの “Bicycle races are comin’ your way, so forget all your duties, oh yeah~♪” のパートは “さすがはクイーン!” と言いたくなるようなカッコ良さで、結局何度も聴いているうちにすっかり脳内リフレインを起こして病み付きになってしまうという不思議な魅力を持ったナンバーだ。
 発売日に行きつけのレコード店で買ってきたこのアルバム、前作「世界に捧ぐ」の “ロボ・ジャケ” も何か変だったが(←背景のくすんだ緑色が妙に印象的...)、今回のジャケット・デザインも意味不明。あのグルグルはレコードの円盤を意味しているのだろうか?下端に自転車に乗った女性のシルエットが1列に描かれているのは「バイシクル・レース」に引っ掛けたのだろう。そういえばこのアルバムには大勢の金髪美女が裸で自転車に乗ってるポスターが付いとったけど、あんなモン恥ずかしゅーて部屋に貼れるかいな...
 そんなこんなで期待と不安が入り混じった気持ちでレコード盤に針を落とすといきなり聞こえてきたのが “イ~~~ブラヒィィィ~♪” というフレディーの雄叫びだった(>_<) 聴いてるこっちは茫然自失、 “何じゃこりゃぁ...(゜o゜)” の松田優作状態である。当時のクイーンは “ブリティッシュ・ロックの貴公子” と呼ばれていたが、コレはどう聴いても怪しげなアラビアン・ロックだ。とにかくこの①「ムスターファ」、一体どういう意図でアルバムの1曲目に持ってきたのか、彼らの真意がよく分からない。
 2曲目の②「ファット・ボトムド・ガールズ」はいつものクイーンに戻って一安心。曲そのものは単調なメロディーの繰り返しに過ぎず、他のクイーン曲のようにクライマックスへ向かって登りつめていくような快感が希薄なのだが、何と言っても①の後だけにあの万華鏡のようなコーラスが出てくるだけでホッとしてしまう。単調な曲をここまで聴かせてしまうというのがクイーンのヴォーカル・ユニットとしてのレベルの高さを物語っている。
 A面には他にシタールっぽい音色のギターが耳に残る無国籍風の③「ジェラシー」、シングル・カットされた④「バイシクル・レース」、フレディー自身の決意表明のような歌詞が面白い⑥「レット・ミー・エンターテイン・ユー」などが入っているが、私が好きなのはジョン・ディーコン作の⑤「イフ・ユー・キャント・ビート・ゼム」で、次作「ザ・ゲーム」に相通ずるような爽やかでキャッチーなポップンロールに仕上がっている。ジョージ・ハリスン、ジョン・ポール・ジョーンズ、そしてこのジョン・ディーコンと、 “ブリティッシュ・ロック界のうなずきトリオ” は寡黙で他のメンバーの陰に隠れがちだが、みんなホンマにエエ仕事してまっせ~(^o^)丿
 B面では何と言っても1曲目に置かれた⑦「デッド・オン・タイム」、コレに尽きる。ブライアンのギターが唸りを上げて疾走し、フレディーの超早口ヴォーカルが負けじとこれを追走、聴く者の心にロックな衝動を呼び起こす。「キープ・ユアセルフ・アライヴ」→「ブライトン・ロック」→「タイ・ユア・マザー・ダウン」→「シアー・ハート・アタック」の流れをくむノリノリのハードロックで、数多いクイーン曲の中でもトップ5に入るくらい大好きなナンバーだ。やっぱりクイーンはブリティッシュ・ハードを演った時が最高やね。
 ブライアン作のジャジーなブルース⑨「ドリーマーズ・ボール」も大好きな1曲だ。チェンジ・オブ・ペースとでも言おうか、クイーンのアルバムにはこういった異色のナンバーがさりげなく入っていることが多いが、それが絶妙なアクセントになってアルバムの魅力を高めている。この曲もフレディーの歌声がゆったりまったりエエ感じで、歌心溢れるブライアンのギターとのデュオローグを聴いているような錯覚に陥ってしまう。エンディングの雷雨のSEから次曲⑩「イン・オンリー・セヴン・デイズ」の清涼感溢れるピアノのイントロへの繋ぎも完璧だ。
 ⑫「ドント・ストップ・ミー・ナウ」は全クイーン曲の中でトップ3に入るぐらい好きな超愛聴曲。ブライアンの “よく歌う” ギターは相変わらず絶好調だが、何と言ってもフレディーのピアノ連打がスポーツカーのターボ・ブーストのように曲のスピード感を増幅させているところが凄い。スローから始まってテンポアップしていく時の高揚感、バンドが一体となってメロディアスに疾走するこのウキウキワクワク感は唯一無比で、まさに “クイーンの魅力全開!” と叫びたくなるようなカッコ良いナンバーだ。
 クイーンにとって70年代最後のスタジオ録音アルバム「ジャズ」で、彼らは “ブリティッシュ・ロック” という枠を飛び出し、様々なジャンル・スタイルの音楽を内包した “クイーン・ミュージック” と呼ぶしかない音楽を構築した。このアルバムはそんな何でもアリの魅力に満ち溢れたクオリティーの高い “クイーン流ポップス” が満喫できる楽しい1枚なのだ。

Queen - 'Don't Stop Me Now'


"Dead On Time" - Queen Unofficial Video #Remastered Audio#


Queen-Dreamer's ball


QUEEN - Bicycle Race (Uncensored - Nudity)