shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

銭形平次 / 舟木一夫

2011-10-29 | TV, 映画, サントラ etc
 前回は手持ちの “時代劇コンピ” CD から「大岡越前」と「大江戸捜査網」の2曲を取り上げた。一般的な知名度で言えば多分「水戸黄門」、「暴れん坊将軍」、そして「銭形平次」あたりがチャンバラ主題歌界(?)のスタンダード・トップ3だろうが、「水戸黄門」は私にはクッサクサの老人向け音楽だし、「暴れん坊将軍」は名曲だとは思うがあまりにも松平健のイメージが強すぎて “白馬に跨って砂浜を駆ける時の BGM ” という刷り込みが私の中に出来上がってしまっており、スピーカーと対峙して聴く気にはなれない。
 残るは「銭形平次」だが、子供の頃は水曜の夜になるとそれこそ毎週のようにお茶の間からこの曲が聞こえてきたもので、大川橋蔵が出てたという以外ドラマの内容は全然覚えていないのに、この曲だけはほとんど耳タコ状態。だからそれ以来ずっと好きとか嫌いとかの対象ではなく、楽曲としては全く意識していなかった。
 そんな私がこの曲の素晴らしさに目からウロコしたのは昨年のこと、大好きな「宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ」 CM の “鵜飼い編” でこの曲のイントロ部分が使われているのを聞いて、昔は何とも思わなかったこの曲の持つ抜群のスイング感を再認識させられたのだ。改めて1曲フル・ヴァージョンで聴いてみたが、コレはもう立派な和ジャズ・ヴォーカル・ナンバーだ。今時どこを探してもこんなにウキウキワクワクさせてくれる歌と演奏は滅多にあるものではない。
 特に印象的だったのがノリノリのイントロに絡んでいくバス・クラリネットのカッコ良さで、軽快なテンポで飛ばすこの曲の要所要所をビシッと締める低音はまさに “一人ゴルソン・ハーモニー”。時代劇らしさ溢れる三味線やお囃子の鐘の音が支配するこの曲の中にファンキーなバスクラを巧みに取り入れたアレンジは考えれば考えるほど凄いと思わざるを得ない。例えるなら「ペニー・レイン」のピッコロ・トランペットや「恋のフーガ」のティンパニみたいなもんだが、コレがあるとないとではエライ違いで、よくもまぁここにバスクラなどという非日本的な楽器を持ってくることを思いついたもんだなぁと感心してしまう。
 それともう一つ、恥ずかしながら私は YouTube を見るまでこの曲を歌っているのが舟木一夫だとは知らなかった。舟木一夫というとどうしても「高校三年生」のイメージが強く、歯が浮くような “青春歌謡” というジャンルが苦手な私にとって彼は完全に対象外の存在だったのだが、この「銭形平次」では得意の詰襟唱法(?)を封印して見事なリズム歌謡を聞かせており、私の射程圏内に入ってきたのでヤフオクでシングル盤をゲット、無競争で200円だった。
 とにかくここで聴ける彼の “粋” を絵に描いたような変幻自在のヴォーカルは天下一品で、そのスイング感溢れるノリはまさに “江戸っ子ジャズ” とでも言うべきもの。この “粋” が分かる日本人に生まれてホンマに良かったなぁと思う今日この頃だ。

銭形平次 舟木一夫


BOSS#27『宇宙人ジョーンズ 鵜飼い 30s』
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ちょんまげ天国 ~ TV時代劇音楽集 ~

2011-10-25 | TV, 映画, サントラ etc
 「プレイガール」で山下毅雄のことを書いていたら無性に「大岡越前のテーマ」が聴きたくなり、早速 YouTube でチェック(←このパターン多いよな...)。久々に聴いたらもうめちゃくちゃ良くて、折角やから他の主題歌も聴いてみようと取り出したのがこの CD。「キイハンター」→「プレイガール」ときて、挙句の果てに「ちょんまげ」では “一体何を考えとるんや?” “ふざけるのもエエかげんにせえよ...” とか思われそうだが、私は曲さえ良ければアニメでもCMソングでも時代劇でもかまわない。ということで今回も昭和歌謡から横道に逸れてしまうが、昔懐かしい時代劇の主題歌ばかりを集めたコンピ盤CD「ちょんまげ天国」だ。
 私は基本的にTV番組の主題歌と言うのは思い入れ一発で聴くものだと思っているが、「キイハンター」にしても、「プレイガール」にしても、はたまた「ザ・ガードマン」にしても「ウルトラQ」にしても、昔のテレビ主題歌というのはそういった個人的なレベルを超越して楽曲単体として聴いてもよく出来ているものが多い。この CD にも有象無象の J-Pops が束になっても敵わないような美メロ連発の名曲名演がいくつも入っており、これらを単なる “チャンバラ・ドラマの主題歌” で埋もれさせてしまうのは余りにも勿体ない。私は別に時代劇ファンでも何でもないので知っている曲は数えるほどしかないのだが、その数曲というのが私の嗜好のスイートスポットを直撃するのだ。
 まずは何と言ってもこの盤を取り上げるきっかけとなった「大岡越前のテーマ」である。数ある山下毅雄作品の中で私が最高傑作と信ずるこの曲、哀愁舞い散る旋律に涙ちょちょぎれまくりで、コレを聴いて何も感じない人がいるとするなら私はその人の音楽的感性を疑う。ヤマタケさんお得意の口笛がこの曲に秘められた哀愁を極限まで引き出しており、聴く者の心の琴線をビンビン刺激する。この番組は小学生の頃よく見ていたが、ドラマのストーリーがどうのこうのよりもむしろこのテーマ曲が聴きたくてテレビの前に座っていたようなものだった。
 この曲にはいくつかの異なったヴァージョンが存在するが、口笛や女性コーラスを大きくフィーチャーした初期のものがベスト。後期のものは時代を反映した軽めの音作りになっているが、この旋律にシンセサイザーや打ち込みビートは似合わない。因みにこのCDに入っているのは口笛を大きくフィーチャーした劇中挿入ヴァージョンだ。
 “クール・ビューティー”を絵に描いたような梶芽衣子の凛とした美しさに憧れて(←野際陽子といい、ひし美ゆり子といい、梶芽衣子といい、今から思えばめっちゃ不純な動機でドラマ見ててんなぁ...)毎週見ていたのが「大江戸捜査網」だ。 “死して屍拾う者なし...” というナレーションがインパクト絶大だったこの番組、そのオープニング・テーマ曲がとても時代劇の主題歌とは思えないようなスケールのデカい演奏で、テーマ・メロディーを高らかに吹き切るホルンなんか爽快そのもの! ホルンの私的3大名演といえば「ウルトラセブン」の咆哮、「アルプスの少女」のイントロ、そして極めつけがこの「大江戸捜査網」というぐらい惚れ込んでいる。とにかく日本的というよりはむしろカウボーイが出てくるマルボロの CM なんかにピッタリ合いそうな、広大なアメリカ西部の大地をイメージさせるナンバーだ。
 私は吹奏楽のオーケストラを聴くことなど滅多にないが、「スタートレックのテーマ」とこの曲だけは別。リズムがどんどん変わっていくというプログレ・ファンが泣いて喜びそうな変拍子バリバリの構成ながら、躍動的でダイナミックなオーケストレイションとスピード感溢れる曲展開に圧倒され、何かこう聴いているだけで血沸き肉躍るというか、奮い立つような曲想を持ったキラー・チューンである。この曲はぜひともスピーカーと対峙して、大音量で音の奔流の中に身を委ねるようにして聴くべし!!!
 チャラいジャケットのせいで思わずスルーしてしまいそうな盤だが、こういった名曲が入っているだけでも十分聞く価値がある。たかがチャンバラ・ドラマの主題歌集とバカにしていては損をする、まさに “羊の皮をかぶったオオカミ” 的な1枚だ。

「大岡越前」テーマ音楽


大江戸捜査網


Ooedo Sousamou(1970-1984) – Theme (Full Version)

プレイガール・ミュージックファイル

2011-10-21 | TV, 映画, サントラ etc
 先日、ブログに貼り付ける「キイハンター」の動画を色々と物色していた時、見終わった後に現れる関連動画に「昭和の懐かしのお色気アクションドラマ」というのがあった。“昭和” と “アクション” だけでも十分魅かれるものがあるが、そこに “お色気” とくればこれはもう見ずにはおられない。早速クリックすると、いきなり出てきたのが「プレイガール」... おぉ、これはめっちゃ懐かしい!!! 子供の頃はよく親の目を盗んで見てたなぁ...などと考えていたら、“AVもヘアヌードもないこの時代、健全な青少年は親の目を盗んでプレイガールに夢中だった” というナレーションが入り大笑い。そーか、俺は健全な青少年やったんか...(^.^)  ということで、今回の “昭和特集” はシングル盤企画をお休みして「プレイガール・ミュージックファイル」のCD にしよう。
 「プレイガール」(1969-74)は “オネエ” こと、沢たまき率いる女性ばかりの秘密保険調査員グループが事件を解決していくお色気アクション・ドラマで、簡単に言ってしまえば「キイハンター」の女性版みたいなモンなのだが、この番組の一番の売りはミニスカートでの回し蹴り連発が楽しめる乱闘シーン... とにかくパンチラあり胸ポロありのカオス状態がインパクト絶大だった。ケッサクなのはこのナレーションの続きで、 “月に2回は温泉ホテルとタイアップ、露天風呂、刺身の舟盛り、温泉芸者にストリップ、スリルとサスペンスとは無縁の、オヤジの大好きな場所でしかプレイガールの事件は起きない...” にはワロタ(^.^)
 もうひとつ強烈に記憶に残っているのが、黒をバックに映える真っ赤なキスマークのロゴとCM前に流れるガマガエルのゲップみたいな(?) “プレイガ~ル” という不気味なジングルで、友達とよくコーラを飲んでゲップしながらマネして遊んだのを覚えている。それにしてもこの番組、当時はお色気に目が眩んで何の疑問も持たずに見ていたが、よくよく考えてみるとプレイガールってただの保険調査員なのに、何でピストル持ってるんやろ? コレって銃刀法違反やんね(笑)
 音楽を担当したのは様々なテレビ番組のテーマ曲を手掛けてきた鬼才、山下毅雄。この人は「パネルクイズアタック25」や「霊感ヤマカン第六感」、「タイムショック」といったクイズ番組を始め、「ルパン三世(第1シリーズ)」に「大岡越前」(←コレ最高!)と、スキャットや口笛を駆使しながらジャジーな感覚溢れる名曲を数多く生み出しており、この「プレイガール・オープニング・テーマ」でもラテン・ジャズのリズムに乗せてオシャレなダバダバ・スキャットが炸裂する妖しさ満点のサウンドが楽しめて言うことなし(^o^)丿 そんな「プレイガール」の音楽をコンパイルしたのがこのCDなのだ。
 この曲のスキャットを担当しているのは日本が誇る “スキャットの女王” 伊集加代。そんな名前知らんなぁ...という人でも “ダバダ~♪” で始まるネスカフェ・ゴールド・ブレンドの CM は聞いたことがあるだろう。かの有名な「11PMのテーマ」のスキャットも彼女によるものだ。だから彼女はスキャットを多用したヤマタケ作品には欠かせない存在で、上記の「霊感ヤマカン第六感」や「タイムショック」でも大活躍だし、この「プレイガール・オープニング・テーマ」では “ウッ スィクスィク プレ~イ ガァ~ル♪” と洗練の極みのような歌声を聴かせてくれる。
 涼しげなヴィブラフォン、コロコロと転がるように弾むピアノ、ゴキゲンなリズムを刻むパーカッションと、ジャズの美味しい部分だけを抽出して濃縮還元したようなオシャレなサウンドもカッコ良く、単なるお色気アクション・ドラマのサントラとタカをくくっていると驚かされること間違いなし。それもこれもやはりベースになるヤマタケ・ミュージックの素晴らしさ故だろうが、とにかく1枚のアルバムとして聴いても中々充実した内容になっていると思う。
 全編に亘っていかにも “昭和” といった感じのレトロなムードが横溢で懐かしさ満点のこのアルバム、世の男性諸氏は自分のお気に入りキャラ(←私の贔屓は何と言ってもアンヌこと、ひし美ゆり子さん!)のパンチラ・ハイキックのシーンなんかを思い浮かべながら聴くと一層幸せな気分に浸れるかもしれない(^.^)

プレイガール OP TVサイズ


プレイガール ENDING テーマ / 山下毅雄


昭和の懐かしのお色気アクションドラマ


音楽の神様 伊集加代

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非情のライセンス / 野際陽子

2011-10-17 | 昭和歌謡・シングル盤
 レコード・ハンティング・レポートも一段落し、次はどの曲にしようかな... などと考えていたところ、shoppgirl 姐さんからゴールデン・ハーフつながりで “小学生の頃、キイハンターごっこをして遊んでました” というコメントをいただいた。 その瞬間、私の頭の中で例のオープニング・テーマが “チャ~ チャララ チャラララ ラ~ララ~♪” と鳴り始めた(笑) この感覚は私と同世代の日本人ならきっと分かってもらえると思うが、「キイハンター」といえば何はさておきあの “チャララ チャラララ~♪” なんである。感化されやすい私は思わず YouTube でキイハンター関連の動画を見まくってしまったのだが、う~ん、懐かしい...(≧▽≦) 当時小学生だった私にとって、土曜の夜は「全員集合」→「キイハンター」と決まっていた。
 「キイハンター」は 1968年から1973年までの5年間 TBS系列で放送されていた番組で、丹波哲郎をリーダーに、野際陽子、千葉真一、川口浩、谷隼人、大川栄子という、今から考えると実に濃いメンバーが国際警察特別室に属する秘密チームとして大活躍するスパイアクション・ドラマである。かなり後になって監督があの深作欣二と知った時は驚くと同時に大いに納得したものだ。何と言っても東映でハードボイルド・アクション物とくればこの人しかいませんからね。
 丹波哲郎は前年の1967年に「007は二度死ぬ」で日本の諜報機関のボス役を演じたこともあってピッタリのハマリ役で渋くてカッコ良かったし、千葉真一の息を飲むようなハイパー・アクションには毎回シビレまくり。中でも一番インパクトが強かったのがオープニングのシーンで、股が裂けそうなぐらい脚を上げて鮮やかなハイキックをキメる千葉ちゃんといい、敵を投げ飛ばして爽やかな笑顔を見せる野際姐さんといい、実にメイン・キャラクターの見せ方が上手いと思う。芥川隆之のナレーションも絶妙だし、さすがは深作監督である。私は子供心に “大人になったら国際秘密警察に入りたい!” などとアホなことを考えていた。
 そしてそんな深作監督のスリルとサスペンス満点の映像と相乗効果を上げているのが他でもないこのテーマ曲だ。 007 とディック・デイルとアストロノウツを足して3で割ったようなドライヴ感抜群のサーフ・ロック・サウンドに、ゴージャスなブラスを大量投下、その一気に畳み掛けるような展開は、一度聴いたら頭から離れないような中毒性を秘めている。
 作曲した菊池俊輔はアニメ・特撮物を中心に数多くのTV主題歌を書いている人で、「仮面ライダー」、「タイガーマスク」から「暴れん坊将軍」に至るまで、わずか1分かそこらで聴き手の心をワシづかみにするようなアップテンポの曲を書かせたら天下一品! そんな彼の数々の名作の中でも傑出して素晴らしいのがこの「キイハンターのテーマ」なのだ。
 野際姐さんの「非情のライセンス」は番組のエンディング・テーマとして使われていたもので、インストのオープニング・テーマに彼女の歌をかぶせたもの。いきなり炸裂する悩ましげなフランス語 “ウフン ラム~ル オ~ ラモ~ル♪” は生唾モノだし、軽快でスピード感溢れるバックの演奏と唱歌みたいな姐さんの生硬なヴォーカルの絡みが生み出すミステリアスな雰囲気もたまらない。スパイ同士の刹那的な恋愛観を描いた歌詞もめっちゃシュールで、もうほとんど映画007の世界である。特に “涙流さず泣こう♪” というフレーズは何度聴いてもカッコイイ(^o^)丿
 ジャケットに写る姐さんは知的でセクシー、まさに絵に描いたような “クール・ビューティー” ぶりだ。それにしても後年の “冬彦さん” で強烈なインパクトを残した鬼姑キャラしか知らない人は、まさか彼女が昔こんなハードボイルドなアクション・ドラマでセクシーな女スパイを演じてたなんて夢にも思わんやろな...

☆めっちゃ懐かしいオープニング映像。車に追いかけ回され、危機一髪のところでジャンプして逃れる千葉ちゃんにシビレます(≧▽≦)
キイハンター (高音質)


☆この動画は前回の「二人の銀座」と同じ方が編集されたもののようだが、めっちゃ良いセンスしてはりますな(^.^)
野際陽子 - 非情のライセンス


【おまけ】YouTube の関連動画で偶然見つけたのがコレ。全然知らへんアニメやけど、曲と映像がコワイぐらいに合った傑作MADだ。まったく違和感が無いのが凄い!
(MAD) [さよなら絶望先生] EDをキーハンターで
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二人の銀座 / 和泉雅子 & 山内賢

2011-10-14 | 昭和歌謡・シングル盤
 大阪、京都と続いた歌謡曲シングル盤ハンティング・ツアー・レポートは一応前回でお終いなのだが、京都編の最後で「東京ナイト」を取り上げたついでと言っては何だが、先月亡くなられた山内さんへの追悼の意味も込めて今日はもう1曲、「二人の銀座」でいってみたい。
 山内&和泉ペアは60年代に計5枚のデュエット・シングルを出しているが、「ユー・アンド・ミー」、「星空の二人」、「二人の朝」といった歯が浮くような激甘青春歌謡は私的にはNGで、やはりこのデュオは「東京ナイト」と「二人の銀座」というベンチャーズ歌謡の2曲に尽きる。そういえば太陽レコードで「東京ナイト」をレジへ持って行った時、店主のオッチャンが “山内賢、亡くなったんやてなぁ... いくつやったん?” と話しかけてこられたので “67歳やったみたいですよ。映画とかリアルタイムで見たことないので、僕が知ってるのはこの曲と「二人の銀座」だけなんです。” と答えたところ、 “せやなぁ... 僕もその2曲だけで十分やと思うわ。” と仰っていた。
 私のこの曲との出会いは今から6年ぐらい前のこと、ベンチャーズにハマるきっかけとなった4枚組CD「EPコレクション」に入っていたオリジナル・ヴァージョン「Ginza Lights」を聴いて大感激! ベンチャーズってめっちゃエエ曲書くやん!と目からウロコ状態で、心の琴線を震わすようなマイナー調のメロディーにすっかり参ってしまった。彼らはこの後「北国の青い空」(奥村チヨ)や「雨の御堂筋」(欧陽菲菲)、「京都の恋」に「京都慕情」(渚ゆう子)と、ひょっとして日本人よりも日本の情緒を深く理解してるんやないかと思わせるような哀愁舞い散るメロディーを持った名曲をいくつも生み出していくのだが、そのきっかけとなったのがこの「二人の銀座」なんである。
 この曲、元々は66年のアルバム「ゴー・ウィズ・ザ・ベンチャーズ」に入っていたもので、彼らのインタビューによると “特に日本を意識して書いたわけではなく、出来上がってみるとどことなく日本的な感じがしたのでそういうタイトルにしたんだ。まさか日本人の歌手にカヴァーされるなんて思ってもみなかった。日本を意識して曲を書くようになったのは「ポップス・イン・ジャパン」をレコーディングしてからのことで、東芝のスタッフが日本のヒット曲を色々送ってくれたんで、僕らもそれに見合うようなオリジナルを6曲ほど書いたんだ。” とのこと。要するにベンチャーズ歌謡の第1号であるこの曲は偶然の産物だったということらしい。
 その後、私は「ベンチャーズ歌謡大全」というCDで初めてこの山内&和泉ヴァージョンを聴いたのだが、あまりの歌のヘタさ加減に愕然としたのを覚えている。まぁ二人とも日活の俳優さんということで当然本職の歌手のようにはいかないのは分かるが、それにしても和泉雅子の音程の外しっぷりは強烈だし、いきなり取って付けた様な高音で歌い出す山内賢の素っ頓狂なヴォーカルも正直言って痛かった。まぁ何度も聴いているうちにだんだん慣れてきて今では昭和歌謡の名曲の一つとして楽しんでいるが、それでもやっぱりヘタなもんはヘタやわ(笑)
 作詞・編曲は「東京ナイト」と同様、永六輔と川口真のコンビで、 “みゆき通り すずらん通り~♪” と地名を連発するご当地ソングのお約束的な展開といい、軽快なノリの良さ一発に賭けたエレキなアレンジといい、原曲の魅力を活かしながら一般ピープル受けしそうな歌謡ポップスに仕上げている。
 YouTube の動画は同名映画の演奏シーンを巧く編集してあって、モノクロ画面が古き良き昭和の空気を感じさせてくれる。残念ながらここでは映画の一部しか見ることはできないが、山内賢の爽やかな好青年ぶりや、思わず抱きしめたくなるような和泉雅子の愛らしさ、そして若者たちの風俗・ファッションなども含め当時の世相が実に魅力的に描かれていて中々面白そうだ。もしDVD化が無理なら、せめて日活に強いチャンネルnecoあたりで山内さんの追悼特集を組んでほしいなぁ。

山内賢&和泉雅子 - 二人の銀座


THE VENTURES - GINZA LIGHTS - 33RPM 1967
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東京ナイト / 和泉雅子 & 山内賢

2011-10-11 | 昭和歌謡・シングル盤
 京都猟盤ツアー最後の目的地は太陽レコードである。ここは今回初めて行くお店なのだが、ネットにアップされてた小さな写真を見ただけでも他のレコ屋とは違う一種独特な雰囲気が伝わってくるし、何よりも歌謡曲に強いということなので他では中々見つからないような盤が何気なくエサ箱に眠っていそうな予感がする。
 私が知っている京都は清水寺でも金閣寺でも嵐山でもなく、レコ屋が集中している四条~三条河原町界隈だけなので、このお店がある “東山二条” というのはまったく未知のエリアである。まずは京阪三条駅を超えて東へと向かい、東大路通の交差点で左折、二条通を目指してひたすら北へと向かう。それにしてもこの東大路通というのはまるで路面電車でも走っていそうなぐらい幅の広い道路で、周りに高い建物がないこともあって地図を見てイメージしていた風景とはかなり違う。しかもそんな大通り沿いにいきなり大きなお寺があったりしてビックリ(゜o゜) さすがは京都やねぇ。空気も涼しくて気持ちイイし、地図を片手にちょっとした小旅行気分が味わえてめっちゃ楽しい(^o^)丿
 すっかり京都散策気分に浸りながら歩いているといつの間にか二条通に到着、交差点を超えるとすぐに “中古レコード専門店” の黄色い看板が目に入る。大通りに面しているこのお店の前にはバス停があり、数人の人がバスを待っている。私の知っているレコ屋というのはゴミゴミした街中の雑居ビルの何階かにあるものばかりなので、こういう立地のお店は初めてだ。何というか、まるで子供の頃に見た駄菓子屋みたいな店構えで、それだけでも昭和の薫りがプンプン漂う。入口のガラス戸にはカラー・レコードが飾ってあり、一歩中へ入ると狭い店内に60年代のアナログ・レコードがビッシリと、しかし非常に見やすく並べられている。壁には歌謡曲やオールディーズの貴重盤シングルと10インチ、ヤフオクでかなりの高値で取り引きされているミコたんの「ヒット・キット・パレード」10インチ原盤や昔懐かしいジョニー・シンバルの「ミスター・ベースマン」なんかも壁面を賑わしている。
 他のお店とは違い、歌謡曲のシングル盤のエサ箱は入ってすぐの見やすい位置にある。ナ行最前列には西田佐知子の「涙のかわくまで」、ハ行は平山三紀の「ノアの方舟」、マ行は黛ジュンの「雲にのりたい」が並んでいて何だか嬉しくなってしまう。ここはレコードの入っているビニールの裏面にマジックで値段が書いてあるというユニークなシステムで、壁に掛かっている貴重盤以外は大体 200円~400円ぐらいの良心的な値付けである。私はこの2ヶ月ほどかけてヤフオクでコツコツと昭和歌謡のシングル盤を買ってきたが、最初からココを知っていればもっとラクが出来たのに(笑)と思えるぐらい私の嗜好にピッタリの品揃えだ。
 ワクワク気分でエサ箱を漁る私の後ろで店主のオッチャンが常連さんと楽しそうに歌謡曲談義をされており、そっちの話も興味深いのでついつい聞き耳を立ててしまう。ここは歌謡曲やオールディーズのファンにとってはまさに聖地とも言えそうなお店である。そんな中でついにこれぞ本日最大の収穫といえる盤を発見! それがこの「東京ナイト」、山内賢と和泉雅子のデュエットによるベンチャーズ歌謡の隠れ名盤だ。このレコードは “どこにでもありそうで、実際に探してみると中々見つからない盤” の1枚で、ヤフオクでも滅多に出てこない。これだけでも京都まで出てきた甲斐があったというものだ(^.^)
 山内・和泉デュオといえば世間では「二人の銀座」(66年)ばかりでこの「東京ナイト」(67年)の方はあまり話題に上らないが、私はこの曲が大好き! 元々は67年に日本のみでリリースされたベンチャーズのアルバム「ポップス・イン・ジャパン」に入っていた曲で、それに永六輔が詞を付け、川口真が編曲を担当、「二人の銀座」では聴くに堪えなかった和泉雅子の下手糞な歌もわずか1年で何とか聴けるレベルにまで上達、 “月と星 影と影~♪” と舌っ足らずな感じで歌うところなんかはご愛嬌で、この曲では彼女の素人っぽさが良い方向に作用しているように思う。
 歌詞の方も技アリで、 “二人の街 銀座~♪” と前作から巧くつないで “若い街 新宿、恋の街 赤坂~♪” と続けて東京ガイドマップ的な展開を見せると同時に、 “モノレール” “エアポート” “東京タワー” “高速道路”と、高度経済成長期の60年代日本を象徴するような “憧れの街” 東京” をイメージさせる単語を散りばめた詞はさすが永六輔という他ない。今ではもう死語と化した感のある “ランデヴー” という言葉(←要するに “逢引き” ですね)もめっちゃレトロな響きがして気に入っている。
 ベンチャーズの原曲を更に高速化して一気に畳み掛けるアレンジも素晴らしい。川口真といえば私の中では「人形の家」や「他人の関係」といったコテコテ歌謡曲のイメージが強かったので、この曲のアレンジが彼だと知った時は正直ビックリした。エレキな歌心溢れるギターも、随所で爆裂するドラムスも、まさに “あの時代” の薫りが色濃く立ち込めるエレキ歌謡の大傑作で、私的にはベンチャーズのオリジナル・ヴァージョンよりもこっちの方が好きだ。
 下に貼り付けた YouTube 動画は映画のシーンを編集したもののようだが(←この映画、DVD化してほしいなぁ...)舞妓さん姿で歌う和泉雅子のキラキラ輝くような美しさは必見だ。なぜかそのまんまの格好で新幹線に乗ってるエンディングは笑えるけど... それにしてもこの時代の女優さんってみんなめちゃくちゃ綺麗やし、何よりも品があるところに憧れてしまう。やっぱり音楽も女性も昭和が最高やわ(^o^)丿

追悼!山内賢さん、・和泉雅子「東京ナイト」


THE VENTURES-TOKYO NIGHT 東京ナイト

太陽の彼方 / ゴールデン・ハーフ

2011-10-08 | 昭和歌謡・シングル盤
 今日はまず最初に音楽とは関係のない F1 の話から。キョーミが無い or 話がヘチマな人は読み飛ばして下さいな。この週末はちょうど鈴鹿で F1日本GP をやっているのだが、今日の予選で小林カムイが物凄い走りを見せてくれた。彼が乗っているザウバーのポテンシャルの低さを腕でカバーしようと、超高速コーナーとして世界的に有名な鈴鹿の130R を DRS 開きっ放しのレス・ダウンフォース状態で駆け抜けたのだ。あそこを全開で行けるのはレッドブルくらいのもので、あのマクラーレンやフェラーリですら DRS を閉じて走っていたというのにである。カムイ自身、正直に “むっちゃ怖かったですよ” と言っていたらしいが、あそこでアレが出来る勇気が凄い!!! 不本意な休日出勤から怒涛の勢いで帰って来た甲斐あって、ホンマにエエもん見れました(^o^)丿
 それにしてもシケインに3台並んで突っ込んでいったハミ、シュー、ウェバー(←よりにもよってこのメンツ...笑)といい、完全に空気と化したフェラーリ勢といい、中々面白い予選だった。明日はウェバーがお約束のスタートミスをしでかし、ハミルトンが因縁のマッサと絡み、更に上位の誰かがパンクでもして(←何という他力本願...)カムイが感動の表彰台ゲット!とかなったらエエのにな。それにしてもいくら母国グランプリとはいえ、天下の BBC が特集組むなんてカムイ凄いな~(ラストのBGM少年ナイフにはワロタ)↓


 それではココから京都レコード・ハンティング報告パート2だ。 100000t のビルを出て南に数メートル歩くとホットラインがある。昔京阪神のレコ屋を廻っていた頃、ココの近所にあるジャズ専門店ハードバップは店のオヤジさんのマスク越し上目遣いの視線が痛くて(←アンタは監視カメラか!)息が詰まった時は、いつもこのホットラインでまったりと過ごしてリフレッシュしたものだった。
 京都のレコ屋は大阪とは違ってジャズだけ、クラシックだけ、レゲエだけ、という専門店が多いように思うのだが、このホットラインはジャズ・ロック・ポップス・フォーク・歌謡曲とオールラウンドな品揃えで、ビートルズもフランス・ギャルもゼッペリンもペギー・リーもスティーヴィー・レイ・ヴォーンもロネッツもレスター・ヤングも西田佐知子も全部大好きという私のようなレコード・ジャンキーにとってはパラダイスみたいなお店である。しかも店員さんがフレンドリーで値段設定も良心的、在庫数もハンパないのでとっても居心地が良く、ついつい長居してしまう。
 前に来てからかなりの年月が経っているのでどーなってるかなぁと思いながらお店に入るとあの懐かしい雰囲気は全然変わっていない。21世紀に入って廃業したり宗旨替えしたりするレコ屋が多い中、ここだけは時間が止まったような感じである。いや、むしろアナログ・レコードの数は昔よりも増えているんじゃなかろうか... 一般ピープルから見ればただの塩化ビニールだが、私にとっては宝の山である。入口を入ってすぐ左奥の方がシングル盤のコーナーだ。以前ここに通っていた頃は全く縁が無かったこの一角が今回のターゲット、早速猟盤開始である。
 シングル盤にも序列のようなものがあって、ビートルズやストーンズ、バーズといった60’s ロックが最も見やすい特等席を占めており、私が狙っている昭和歌謡は細長い段ボール箱に入れられて一番奥の隅の方に押し込められている。これでは不自然な姿勢で身体をよじらないと見れそうにないので、エサ箱の中身をゴッソリ抜いて手元でチェックしていくことにする。青江三奈や伊東ゆかり、由紀さおりにピンキラと、昭和歌謡の定番シングルが200~400円ぐらいで並んでおり、この辺は既に持っている盤が多いが、値段を見ながら安い高いをアレコレ考えるだけで愉しい。
 そうこうしているうちに引いた1枚のレコードで私の手がピタリと止まった。こういう場合、大抵は ①ず~っと探していたレコード、②特に探していたというワケではないが実際に手に取ってみたら急に欲しくなるレコード、③色っぽい女性がフィーチャーされたチーズケーキ・ジャケット(←下世話な言い方をすればエロジャケですね)、のどれかなのだが、今回は②+③という組み合わせである。私が手にしたそのレコードこそ、ゴールデン・ハーフの「太陽の彼方」だった。
 彼女らのシングル盤はどこのお店へ行っても「アダムとイヴ」と「24,000回のキッス」ばかりで、大体150~200円ぐらいで簡単に手に入るが、デビュー曲の「黄色いさくらんぼ」とこの「太陽の彼方」はどこにも置いてなかったし、オークションにも中々出てこない。そんな入手困難な “ジャケ名盤” が何と500円である。これで買わねば男がすたるというモノだ。
 私見だが、ゴールデン・ハーフは何と言ってもジャケットが命! 彼女らの場合、持ち歌がそれほど多くないので CD なんかどれもこれも大体似たような選曲になってしまう。結局、違いを生むのはジャケットなのだ。因みに私のお気に入りジャケは、 LP なら「ゴールデン・ハーフでーす」(←しかし何ともまぁ凄いタイトルやね...)、CD なら「NEW BEST 1500」、そしてシングルでは何と言ってもこの「太陽の彼方」が一番好き(^o^)丿 透けるような青い空と白い帆をバックに佇むカラフルな水着姿の4人が醸し出す健康的なお色気がたまらない。
 この曲は色んなアーティストにカヴァーされているが、私が最初に聴いたのはこのゴールデン・ハーフのヴァージョンで、タカオ・カンベ(神戸孝夫)氏が書いた “乗ってけ 乗ってけ 乗ってけ サーフィン♪” という歌詞がメロディーと一体化した形で脳内に刷り込まれてしまったため、後になってオリジナルであるアストロノウツの「Movin'」を聴いた時は最初のうち何か物足りなく感じたものだ。
 今回シングル盤をゲットして久々に聴いたが、何もかもがめっちゃ懐かしい。やっぱり「太陽の彼方」はゴールデン・ハーフやね(笑) 歌はそれほど上手くはないが、彼女らの持ち味である “程良いB級感覚” が曲想とバッチリ合っていて、良い意味でのガールグループらしさが味わえる1曲に仕上がっている。それにしてもエバ可愛いなぁ...(^.^)

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ダーリング / 沢田研二

2011-10-05 | 昭和歌謡・シングル盤
 歌謡曲のシングル盤という比較的マイナーなジャンルだったせいもあるだろうが、9月の初めに行った日本橋猟盤ツアーは大成功で、レコ屋廻りはそろそろリタイアしようかと思っていた私に実際にお店で希少盤を手にした時のワクワクドキドキ感を思い出させてくれた。さすがにジャズやロックのオリジナル盤は eBay に限ると思うが、こと昭和歌謡に関しては時々レコ屋を廻ってヤフオクだけでは手に入らないブツを補完していくのがよさそうだ。
 ということですっかり味をしめた私が次に狙いを定めたハンティング・エリアは京都である。京都のレコ屋廻りは2002年にネット・オークションを始めて以降ずーっとご無沙汰していたから約10年ぶりだ。当時はジャズのレコード目当てに廻っていたので、歌謡曲を置いていそうなお店は全然知らない。手持ちのレコードマップは古すぎて使い物にならないので、ネットで京都の中古レコード屋を検索していくつかピックアップし、月が替わって急に涼しくなった先週の土曜日に京都猟盤ツアーを敢行した。
 奈良から京都まで近鉄→京阪と乗り継いで昔のように四条河原町界隈からスタート、ネットに “GSと歌謡曲に強い” と出ていた Second hanZ というレコ屋を目指してオーパ沿いに細い道を歩く。しかしお店があるはずの場所にはドデカイ高層ホテルが建っていてレコ屋のレの字もない。やはり時代の波に呑まれて消えていった多くのレコ屋と同じ運命を辿ったのだろうか? ユニークな品揃えで面白そうなお店だっただけに残念だ。
 いきなり出鼻を挫かれた格好だがめげずに新京極通りを北上して次なる目的地である Kikuya Records へと向かう。ここはすぐに見つかったが中に入ると店内はレゲエ一色で完全に場違いな雰囲気だ。レゲエは大の苦手なので急いで店を出る。予定していたお店は5つだったが、ツアー開始後まだ15分と経たないうちに2連敗である(>_<) 残り3店のうち2つも5年ぐらい前のネット情報なので段々不安になってくる。
 御池大通りを渡って市役所の敷地を横切るとかつて通い慣れた Hard Bop の看板が目に入るが当然パス(笑)、私が入ったのはそのすぐそばのビルの3Fに新しく出来たレコ屋で、 100000t と書いて “じゅうまんとん” と読む。2年前に惜しくも閉店したビーバー・レコードの元スタッフの方が始められたお店らしい。どちらかというとガチガチのレコ屋というよりはレコードとCDをメインに古本なんかも置いてあるリサイクル・ショップ的なノリがいかにも京都といった感じ。広々とした店内の奥には何故かソファーが置いてあったりして何ともゆったりした雰囲気が漂う。
 右手の壁に掛かっているLPレコードはジャズ、ロック、ブルースが中心で、左手のCD棚はチェックしなかったが、中央のエサ箱には70~80年代の洋楽邦楽シングルがギッシリ詰まっている。商品の値付けは非常に良心的で、シングル盤なんか100円均一かと思うぐらい安い。さすがに私の探しているような60年代の希少盤は少ないが、「歌謡曲」「GS」と並んで「お笑いトラの穴」などという怪しげなコーナー(笑)もあって、その筋系の珍盤が好きな人なら格安で掘り出し物が見つかりそうだ。そんな中、100円という安さに釣られて衝動買いしたのがジュリーの「ダーリング」である。
 私が中学高校時代を過ごした70年代、ジュリーはまさに超の字が付くスーパースターだった。私の聴く歌謡曲はGSを除けばその99% が女性歌手だが、昔からジュリーだけは別格で、男の色気を湛えたザ・ワン・アンド・オンリーな彼の歌声も、歌謡ロックの王道といえるキャッチーでノリの良い楽曲の数々も、ヴィジュアル効果満点のド派手な演出も、そのすべてが大好きだった。彼こそ昭和歌謡史上屈指のエンターテイナーであり、歌いながら帽子を投げたり、バーボンを口に含んで霧みたいに吹いたり、電飾の衣装にパラシュートを背負ったり、私なんか “今度は何をやるんやろ?” と彼の新曲が出るのを今か今かと心待ちにしていたものだが、とにかく何をやってもサマになるのが70年代のジュリーだった。
 1978年にリリースされたこの「ダーリング」はジュリーにとって、「危険なふたり」「追憶」「時の過ぎゆくままに」「勝手にしやがれ」に続く通算5枚目の№1シングルで、作曲したのは元スパイダースの大野克夫。前年に歌謡界を席巻した「勝手にしやがれ」を更にゴージャスにリファインしたようなカッコイイ歌謡ロックである。特に後半部で “春が来ても 夏が来ても~♪” と一気にたたみかけ、ラストで “ダァ~~~ リ~ング♪” とキメるところなんかもう最高だ(^o^)丿 テレビでこの曲を歌う時は何故か船員風のマリンルックだったが、何といってもインパクト絶大だったのが例の指をなめる振り付けで、ただチュバッと指をなめてるだけなのに何かめちゃくちゃカッコ良くて、カラオケなんかに行った時は得意満面でよくマネをしたものだ(←アホ?)。
 シングル盤のジャケットに写っている女の子は今の今まで人形だとばかり思っていたが、ジャケ裏の隅に “Model:アントニア” と書いてある。まさか人形に名前付けへんやろし、本物の人間なんやということを初めて知ってビックリした。それにしてもジュリーって何しててもホンマにカッコエエなぁ。今度の3連休は昔の思い出に浸りながら YouTube でジュリー三昧でもしようかな...(笑)

☆78年にTBSの サウンド・イン"S" に出演した時の映像。この時ジュリーはまだ30歳。何かめっちゃ懐かしいな~(^.^)
Darling (Julie Kenji Sawada) J-pop  沢田研二


☆こちらは94年のライヴ映像。惜しげもなく指ナメを連発、歌い終わった時の爽やかな笑顔も最高デス (^o^)丿
★ふりふり ダーリング・・・by ジュリー
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情熱の花 / ザ・ピーナッツ

2011-10-02 | 昭和歌謡・シングル盤
 日本橋猟盤ツアー報告もいよいよ最終回、垂涎のローザ盤を首尾よく手に入れモーレツに高揚した気分で Disc JJ を出て最後の目的地であるサウンドパック・アナログ店へと向かう。ココはその名が示すように今の時代には珍しいアナログ・レコード中心のお店で、私のようなレコード大好き人間にとっては神戸のハックルベリー、京都のホットラインと共に重要文化遺産的な(?)存在のレコ屋なのだが、通路がめちゃくちゃ狭くって店内で客同士が行き違うだけでも一苦労なのが玉にキズ。しかも悪いことに狭い入り口の左手がシングル盤コーナーになっており、比較的新しい時代の盤が見やすい上段のエサ箱に、私のお目当ての60's歌謡はその下にほとんど地面に直置きで敷き詰められているので他の客が入ってくるたびに立ち上がってやり過ごさせなければならない(>_<)
 この日は台風のせいで暑さは比較的マシだったが、湿気が高い中をかなり歩き回ったこともあって汗だくになりながら窮屈な姿勢を強いられ、私の集中力はそろそろ限界にきていた。10年ぐらい前なら京都→梅田→難波と廻っても平気やったのに、やっぱり年齢による気力体力の衰えなのか、それともネット・オークションでラクして探すことを覚えてしまったからなのか、 “今日は十分収穫あったし、ちゃっちゃと見て帰ろかな...” などと不埒なことを考えながら注意力散漫になりかけていた。そんな電池切れ状態からいきなりテンションMAX へと激変させてくれたのが、他でもないザ・ピーナッツの「情熱の花」だった。
 ザ・ピーナッツの66年以降のシングルはヤフオクで比較的簡単に手に入るのだが、60年代初めの盤は中々出てこないし、たまに出てきてもスタート価格が高く、しかも競争が激しくて値段が吊り上るので、とてもじゃないが私のような貧乏コレクターには手が届かない。ラッキーなことに「可愛い花」と「恋のバカンス」はたまたま安く買えたのだが、さすがに人生そんなに甘くなく、未だに「ふりむかないで」が手に入らない。「情熱の花」もそんな “垂涎盤リスト” の上位に位置する1枚だったのだが、それが何と盤質良好で1,200円である。私は基本的にシングル盤に1,000円以上は出さない主義なのだが入手困難盤は例外で、この機会を逃せば恐らくずっと買えないだろうと考えて一気に買いを決めた。
 ザ・ピーナッツは60年代半ばに「恋のバカンス」(1963)や「恋のフーガ」(1967)でザ・ワン・アンド・オンリーな “無国籍歌謡ポップス” を完成させるが、その源流と言えるのが1959年にリリースされたこの「情熱の花」である。元々はベートーベンの「エリーゼのために」からアダプトしたメロディーをベースに作られた「Passion Flower」という曲で、カテリーナ・ヴァレンテの歌でヒットしていたものをザ・ピーナッツがカヴァー、オリジナルのラテン・アレンジをベースにしながらも変幻自在なコーラス・ハーモニーを活かして彼女らの代表曲の一つに仕立て上げたのだ。それにしてもデビュー曲の「可愛い花」がジャズで今度はクラシック... 1959年という時代を考えれば実にユニークな選曲である。このあたりにも宮川先生の音楽的な嗅覚の鋭さというか、センスの良さが光っている。
 この「情熱の花」には59年のオリジナル・ヴァージョンの他に、67年のアルバム「ザ・ピーナッツ・デラックス」に収録されたリメイク・ヴァージョンが存在する。私の経験ではヒット曲の再録ヴァージョンというのはアレコレいじりすぎてオリジナルの良さを殺してしまう場合が多いのだが、この'67ヴァージョンはオリジナルと甲乙付け難い出来栄えだ。ベースになっているのはハーブ・アルパート&ティファナ・ブラスっぽいノリノリのアメリアッチ・サウンドで、そこに「ラバー・ソウル」なサウンド・プロダクションを大量投下、途中でビゼーの「カルメン」を添い寝させるなど、とにかくザ・ピーナッツという不世出のコーラス・ユニットを得て思う存分腕をふるう宮川泰シェフの遊び心満載のアレンジが実に愉しい。
 ただ、一つ不思議なのはこのリメイク・ヴァージョンの歌詞がオリジナルとはかなり違っていること。手持ちのレコードを調べてみたが、オリジが “訳詞:音羽たかし、水島哲” で、リメイクが “作詞:ダイヤモンド・シスターズ” という表記になっていた。両方の歌詞を並べてみると...
【'59 ver】
  小さな胸に 今宵もひらくは
  情熱の花 恋の花よ
  初めてふたりが ちぎりをかわした
  その想い出が 妖しくにおう
  小さな胸に 今宵も咲いた
  血潮のような 赤い花びら
  叶わぬ恋と 知りつつ今も
  その切なさに 夜ごと震える
【'67 ver】
  私の胸に 今日もひらく
  情熱の花 あなたを求めて
  初めて会った 雨のあの夜
  その想い出が 涙を呼ぶの
  恋は気ままな 青い風よ
  そっと知らぬ間に 心をくすぐる
  あなたの愛を 求めて今宵も
  情熱の花 胸を焦がす
テレビやライヴのステージでは後者の歌詞で歌っていることが多いように思うのだが(←ラスト・コンサートも後者でした...)、リメイクするにあたってわざわざ歌詞を変える理由が何かあったのか興味深いところ。とにかく曲調もアレンジも歌詞も違う2つのヴァージョンが存在するザ・ピーナッツの「情熱の花」、 私はどちらも大好きなのだが、サービス精神満点の宮川先生のこと、きっと “両方聴き比べで楽しんで下さいな...(^o^)丿” ということなのかもしれない。

☆1959年のオリジナル・ヴァージョン
情熱の花


☆1967年のリメイク・ヴァージョン
ザ・ピーナッツ 『情熱の花』


☆ザ・ピーナッツがカヴァーしたカテリーナ・ヴァレンテのヴァージョン
Passion Flower - Caterina Valente (France version) - "Kaipuun Kukka".wmv


☆イタリアン・ポップスの女王ミーナのヴァージョン。ザ・ピーナッツ以外ではコレが一番好き!
Mina Mazzini - Passion flower - Mina50


☆【おまけ】私はザ・ピーナッツとザ・ヴィーナスを聴いて初めてベートーベンの偉大さを知りました(笑)
ザ・ヴィーナス / キッスは目にして (Live)