shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

昭和歌謡の極私的名盤特集

2023-06-25 | 昭和歌謡・シングル盤
 この半年ほどやってきた昭和歌謡のシングル盤ネタもそろそろ尽きてきたので、今日はまだここで取り上げていない愛聴盤をまとめて一気に特集しよう。

①ジュディ・オング「ヤング・ヤング東京」(1967.3)
 ジュディ・オングというとどうしても1979年の超特大ヒット「魅せられて」のインパクトがデカすぎて、煌びやかなドレスをヒラヒラさせて歌う “高級スナックのママさん風シンガー” のイメージが強い気がする(←でしょ?)が、彼女の真価は1967年~1972年の日本コロムビア時代にこそあると私は思う。中でも「涙のドレス」や「ブラック・パール」といった筒美京平作品は屈指の名曲だが、それ以外では3rdシングルの「ヤング・ヤング東京」が圧倒的に、超越的に素晴らしい。時代を先取りしたようなスカ・ビート(?)の裏打ちリズムに乗って初々しい歌声を聴かせる彼女はまさにリズム歌謡の王道を行くという感じだし、ボビー・ハケットやルビー・ブラフを想わせる歌心溢れるトランペットのオブリガートも絶品だ。
ジュディ・オング 翁倩玉 - ヤング・ヤング東京(1967)


②マーガレット「逢えば好き好き」(1968.7)
 寺内タケシの秘蔵っ子であるマーガレットの2ndシングル。以前ジャケット・クイズで取り上げたデビュー曲「遊びに来てね」も素晴らしい出来だったが、それに負けず劣らず大好きなのがこの「逢えば好き好き」だ。基本的には1stシングルと同様に、彼女の舌っ足らずなヘタウマ・ヴォーカルとバックを務める寺内タケシ師匠のギターという個人技(?)頼み路線なのだが、この2ndシングルではガールズ・ガレージ・パンク色がより一層強まり、曲の良さも相まって何度も何度もリピートして聴きたくなるキラー・チューンに仕上がっている。私の手持ちはクリンク・レコードから出た再発盤で、キングの原盤はネット・オークションで1度だけ見たことがあるが、ウン万円という超絶プレミアが付いていて手が出なかった。ジャケット写真で彼女がマタニティ・ドレスみたいな服を着ているのがジワる。
マーガレット「逢えば好き好き」


③ジュリーとバロン「ブルー・ロンサム・ドリーム」(1969.6)
 鍵山珠理が名曲「涙は春に」を出した後に、尾藤イサオのバックバンドであるバロンにリード・ヴォーカルとして加入してリリースしたシングルがこの「ブルー・ロンサム・ドリーム」だ。このレコードの一番の魅力は何と言ってもあの “阿木燿子 & 宇崎竜童” コンビの処女作という点、これに尽きるのではないか。太田とも子の「とおく群衆を離れて」や「恋はまっさかさま」でもそうだったが、このブルージーなナンバーでもその楽曲クオリティの高さに驚かされる。後に山口百恵や中森明菜で一世を風靡するだけのことはあると大いに納得させられる1曲だ。尚、肝心のジュリーこと珠理ちゃんはこの曲を発表した1週間後に男とフケてしまったらしいwww
ジュリーとバロン / ブルー・ロンサム・ドリーム


④山内恵美子「太陽は泣いているセンセーション'78 / 涙は紅く」(1978.7)
 以前フェロモン歌謡特集で取り上げた「熊ん蜂」の山内えみこがショートヘアにイメチェンして “山内恵美子” 名義で1978年にリリースしたのがこの「太陽は泣いているセンセーション '78」だ。いしだあゆみの “ひとりGS” 最高傑作をサンタ・エスメラルダっぽいスパニッシュ・ギターをフィーチャーしたディスコ歌謡としてリメイクしているのだが、当時我が物顔でバッコしていた有象無象のディスコ・ナンバーとは違い、今の耳で聞いても十分傾聴に値するのはやはり筒美京平先生の神アレンジ(→何となく「東京ららばい」に雰囲気が似てる...)のなせるワザか。B面の「涙は紅く」も良い出来で、筒美京平という音楽家の偉大さを改めて実感させられる名シングルだと思う。
山内恵美子 -太陽は泣いているセンセーション'78 / 涙は紅く

【フェロモン・クイーン】渚まゆみ特集

2023-06-18 | 昭和歌謡・シングル盤
 私は渚まゆみの大ファンで彼女のレコードはいっぱい持っているが、ターンテーブルの乗る回数が多いのはやはり彼女が浜口庫之助と結婚した1973年以降のハマクラ作品だ。デビューした大映レコード~キャニオン時代の彼女の歌は “女優の余技” の域を出ない生硬なヴォーカルで “歌詞をなぞっている”感が強かったが、彼と出会ってからは歌い方がガラリと変わり、歌詞の内容を “表現する” 歌い手へと大きく成長しているのだ。今回はそんな彼女のフェロモンが横溢するCBSソニー時代のシングルを取り上げよう。

① 「奪われたいの」
 渚まゆみの代表曲であると同時に “フェロモン歌謡で五指に入る大傑作” と言っても過言ではないのがこの「奪われたいの」だ。これはもう言葉で説明するよりも実際に聴いてもらった方が早いが、もしも “フェロモン歌謡って何?” と誰かに訊かれたら、私なら黙ってこのレコードを差し出すだろう。この曲に関して私が凄いと思うのは何よりもまずその歌詞だ。“あげるのはイヤ”→“奪われたい” →“なぜならあげてしまうと愛がわからないから” →“奪われた時に初めてあなたの愛を感じられる” という、非常に起承転結のハッキリした論理的(?)な展開が3番まで繰り返されるのが実に斬新で、露骨な表現で聴き手を引きつけようとする単純なパターンのフェロモン歌謡とは激しく一線を画している。彼女の歌い方もまるで水を得た魚のように活き活きとしており、それまでのシングルとはまるで別人のようだ。大人の色香を感じさせるジャケットも素晴らしい。
「奪われたいの」 唄:渚まゆみ
   

②「わたし半人前」
 浜口庫之助という人の一番の魅力は誰にでも楽しめるシンプルで親しみ易いメロディー展開と、ユニークな発想から生み出される軽妙洒脱なユーモアのセンスにあると思うのだが、大ブレイクした「奪われたいの」に続くこのシングル「わたし半人前」でもハマクラ節は絶好調。“わたし半人前 あなた半人前 二人合わせてやっと一人前になるってことね...” という単純明快さや “二人になったら なったとたんに ハッチャル チャッチャルするの...” というコミカルな面白さはハマクラさんの真骨頂だ。彼女のヴォーカルも堂に入っており、“全然元気がない~♪”の少し鼻にかかったような声色表現は彼女ならでは。ドレミファンという女性グループによるカヴァー・ヴァージョンと聴き比べてもその差は圧倒的だ。ただ、ジャケット写真がオバサン風の化粧で少しガッカリで、同日に撮影されたと思しき同名LPの裏ジャケ写真の方が私は好きだ。
「わたし半人前」 唄:渚まゆみ


③「夜の虫」
 このシングルは何よりもまずゴージャスな雰囲気を湛えたジャケット写真に目がいってしまうが、中身の方もそれに負けず劣らずの素晴らしさで、まゆみ姐さんはデビュー時からは想像もできないくらい堂々たる歌いっぷりで聴く者をグイグイ引き込んでいく。その表現力にはますます磨きがかかり、本職の歌手顔負けのヴォーカルを聴かせるところが凄いと思う。歌詞の内容はいわゆるひとつのフェロモン系ではなく、酒と煙草と女が大好きで夜な夜な酒場で過ごす男の話で、昭和歌謡の王道を行くメロディー展開と相まって、男女問わずにカラオケなんかで歌うのにピッタリのナンバーだ。
渚まゆみ 夜の虫

フェロモン歌謡の名盤特集

2023-06-11 | 昭和歌謡・シングル盤

①倍賞美津子「恋の芽生え」(1969.6)
 私にとって倍賞美津子は “猪木の元嫁さんで、一時期めっちゃCMに出ていた女優” という認識で、何よりも松田優作の「探偵物語」に女弁護士役で準レギュラーとして出演していた “ボインのマサ子ちゃん” のイメージが強かった。ところが昭和歌謡のレコードを集めていた時に日本橋の「ナカ」でこのシングル「恋の芽生え」を偶然見つけて “倍賞美津子ってレコードも出してたんか...” と驚かされ、“買ってぇ~♡” と訴えかけてくる視線に魅かれてジャケ買いし、実際に聴いてみるとジャケットどうりの肉感的なフェロモン歌謡、しかも曲自体のクオリティーも高くて大喜び(^o^)丿 B面の「耳を噛まずに」(←伊東ゆかりの「小指の思い出」といい、この曲といい、60年代の歌謡曲の歌詞ってヤバないですか?)も雰囲気抜群で、スケベな昭和歌謡ファンには必携の1枚だと思う。
倍賞美津子 恋の芽生え


②渥美マリ「好きよ愛して」(1970.10)
 渥美マリは大映の「でんきくらげ」「しびれくらげ」「夜のいそぎんちゃく」(←凄いタイトルwww)といった “軟体動物シリーズ” 映画に主演した女優さんで、日本初のヌードジャケット・レコードとして中古市場で人気の高い「可愛い悪魔」(←何と橋本淳=筒美京平コンビです!)が有名だが、中村泰士作曲の2ndシングル「好きよ愛して」も負けず劣らずの名曲名唱で、フェロモンをまき散らしながら “好っきよ 好き好き 愛してぇ~♪” と歌う様はさすが “大映ハレンチ五人娘” と呼ばれただけのことはあるなぁと実感。エンディングの “アア~ン 愛してぇ~♪” もたまらんたまらん(≧▽≦)
渥美マリ 好きよ愛して


③木の実ナナ「セクシカ」(1971.4)
 木の実ナナは60年代ならコミカルな「ミニミニロック」、70年代なら「探偵物語」で効果的に使われてた「うぬぼれワルツ」ぐらいしか知らなかったので、70年代初めにリリースされたというこの「セクシカ」を聴いた時はホンマにビックリした。この曲はマレーネ・ディートリッヒの「リリー・マルレーン」を日本語でカヴァーした「悲しい道」というシングルのB面にひっそりと(?)収められていたのだが、クニ河内が書いた “指と指 口と口 胸と胸 髪と髪... 私の中にあなたがいるぅ~♪”“今二人 一つなの~♪” という火の玉ストレートな歌詞を失速寸前のスロー・テンポで歌うというエロ歌謡のインパクトが絶大で、どうしてもこっちの面ばかり聴いてしまう... 人に聞かれると恥しいので小音量でだが... 歌のイメージを見事に表現したセクシーなジャケ写も最高だ(^o^)丿
ナナ / セクシカ


④山内えみこ「熊ん蜂」(1974.9)
 何年か前にコロムビア、クラウン、キング、テイチク、ビクター、東芝の音源から選りすぐりのフェロモン歌謡を集めた「魅惑のムード☆秘宝館」という6枚組CDボックスを買ったことがあって、全108曲の中で最も気に入った曲の一つが山内えみこの「熊ん蜂」だった。出だしはごく普通のアイドル・ポップスっぽいのだが、歌詞を聞いていくと “刺されたの私... 抱かれたの私...”から “抜いちゃイヤ... 甘い針... こんな幸せ初めてよ..♡” と、その行為をモロに連想させる隠喩表現が出てきて思わずニヤリとさせられる。 “お返しをさせてね... 雨がやむまでは...” “きっとまた誰かの蜜をすするのね...” という、聴き手の想像力を逞しくさせてしまうスケベな歌詞を甘~い歌声でコーティングしたフェロモン歌謡の大傑作だ。
山内えみこ 熊ん蜂

アルテックのスピーカーを買った日

2023-06-04 | その他
 前回、愛機アルテック・ヴァレンシア復活の話を書いていて、このスピーカーを買った時のことを思い出した。購入日は1999年7月22日だから今から約24年前のことになる。過去のことはどんどん忘れていくのだが、音楽関連の記憶だけは何故か鮮明に頭の中に残っている。しかも幸いなことに当時の感動を書きなぐったノートが出てきたので、今回はそれを元に今現在の視点から見て加筆修正し、我が音楽日記であるこのブログに記しておきたいと思う。
 私は高校→大学→社会人と、ずっとサンスイのプリメイン・アンプとケンウッドのスピーカーという国産オーディオの組み合わせで音楽を聴いていた。しかし、初めて行ったオーディオ・ショーでJBLの最新スピーカーを聴いてから、何とか自宅でもあの凄まじい音を全身で浴びたいという想いに取りつかれ、絶対にJBLの大型ホーンスピーカーを買うぞと固く心に誓ったのだった。
 しかしデカいスピーカーを駆動するにはそれなりのアンプを使わねばならない。当然セパレート型である。スピーカーがJBLとくればアンプはマッキントッシュと決まっている(←決まってないってwww)。オーディオに興味を持ち始めた頃から “JBL + マッキン” の組み合わせには強い憧れを抱いていたし、ジャズ喫茶の薄暗い空間にほんのり浮かび上がるブルーの文字には抗しがたい魅力があった。そんなこんなで色々調べていた時に知り合いに紹介されたのが大阪の西田辺にある「オーディオ南海」というお店だった。
 早速お店に行ってみると、平日の昼間だというのに数人のマニアらしき人たちで賑わっている。奥の方を見ると巨大なスピーカーがたくさん並んでおり、EMT、ガラードといったアナログ・プレイヤーやマッキンのアンプなんかもゴロゴロしている。どれもこれも銘機ばかりだ。まるでお店自体がヴィンテージ・オーディオ・ショーの会場のような感じでその雰囲気に圧倒されていると、奥からご主人の尾崎さんが出てこられた。
 私が ①大きなヴィンテージ・スピーカーで60年代ロックンロールと50年代ハードバップジャズをガツン!とくるヤクザな音で聴きたい... クラシックやECM系ジャズのような眠たい音楽は大嫌い、②スピーカーの第一希望はJBL4344、アンプはマッキントッシュで、とこちらの希望を伝えたところ、“インスト専門ですか?それともヴォーカルも聴かれますか?” と訊かれたので “もちろんヴォーカルも聴きます。ペギー・リーやドリス・デイみたいな温かみのある女性ヴォーカルが好きです。” と答えた。すると、“でしたらJBLも悪くはないですが、中低域を重視したアルテックの方が好みに合うかもしれませんね。幸いお好みにピッタリ合いそうなヴァレンシアという機種があるので、ご希望のJBLと聴き比べてから決められたら如何ですか? それと、古い音楽を中心に聴かれるようですから、アンプは真空管タイプがいいでしょう。” と仰った。
 私はお言葉に甘えて持参した愛聴盤を試聴させてもらうことにした。愛聴盤と言っても当時の私はまだオリジナル盤LPなど持ってはおらず、聴くのは専らCD... というオーディオ初心者である。尾崎さんはマッキンのプリとパワーの組み合わせにリンのCDプレイヤー(!)を繋いで、JBLとアルテックを比較試聴させて下さった。
 まず「Art Pepper Meets The Rhythm Section」ではアルトの音色自体もCDのデジタル臭さなど微塵も感じさせない柔らかい音にビックリ。自宅のシステムでは奥の方に引っ込んでいたペッパーが前へ出てきてマイルスのリズム隊と“闘って” いるのが手に取るようにわかる。マッキン240がヴァレンシアの38cmウーファーを楽々と動かしてポール・チェンバースのベースを活き活きと躍動させているのだ。中高音域を受け持つホーンも抜群で、フィリー・ジョー・ジョーンズのスネアがスコーン!と気持ちの良い音を立てる。
 興奮した私は用意してきたCDを次々とかけていく。ジョニー・グリフィンの「The Kerry Dancers」ではテナーの音が実にゆったりと深い。朗々と鳴るのである。さすがは中低域に強いアルテックだけのことはある。テナーの表現力ではJBLに対して一日の長がある感じだ。マイルスの「Walkin'」ではケニー・クラークの高速ブラッシュ・ワークが超気持ちイイヽ(^o^)丿 このホーン・ツイーターの音はめっちゃ気に入った。「Ray Bryant Trio」ではアイク・アイザックスのグ~ンと沈み込むようなベース地の底から響いてくるような感じである。いやはやさすがは巨大ウーファーだ。ズンズンではなくズゥ~ンズゥ~ンと迫ってくるのだ。このようにどの盤を聴いても、ドライでシャープな切れ味一辺倒のJBLよりも濃厚で官能的な音を発するアルテック・ヴァレンシアの方が圧倒的に気に入り、マッキン240と共に一括購入したのだった。
 あの日から四半世紀、アルテック・ヴァレンシアは来る日も来る日も爆音を発して私を楽しませてくれたのだが、最近ラウドカット盤ばかり聴いて負荷をかけ過ぎたせいか(←もちろん冗談ですwww)長年にわたる勤続疲労で高域コンデンサーがとうとう逝ってしまったというワケだ。まぁいくら音の良いレコードを手に入れてもオーディオ機器が不調では宝の持ち腐れというもの。モノラル盤ばかり聴いて過ごしたこの1ヶ月(笑)でそのことを身に沁みて痛感させられたが、幸いなことに、交換した右スピーカー・ネットワークのエイジングもうまくいったようで、まるでスピーカーが若返ったかのように(?)パワーアップしてて快調そのもの(^.^) 今晩あたり久しぶりにブルーノートのヴァンゲルダー祭りでもやるか...(笑)