shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

林マキ特集

2024-05-26 | 昭和歌謡・シングル盤

 林マキのレコードはどれもこれも入手が難しい。メルカリで検索したらワケのわからん少女コミックが一杯出てきて往生したことがあるが(←同じ名前の漫画家がおるらしい... 紛らわしいこっちゃ)、とにかくブツの数が圧倒的に少ないのだ。せっかくなので今日は前回取り上げた「ただそれだけのこと」以外の彼女のシングルとEPをまとめて取り上げよう。 

①なっとくのブルース(1969)
 彼女は国立音楽大学声楽科を1年で中退して寺内企画に入社し、社長である寺内タケシの「なっとくのブルース」で1969年にデビューしたのだが、私はB面に収められた “絵に描いたような” 昭和歌謡「二人のハンド・バー」の方が気に入っている。特に“夜を楽しむ~♪” のラインは青江三奈の「伊勢佐木町ブルース」を彷彿とさせる必殺の美旋律で、その魅力を最大限引き出す彼女のヴォイス・コントロールも絶妙だ。ライナーノーツのプロフィール欄に“B103cm, W60cm, H96cmの文字通り大型グラマー歌手” と書いてあるのがいかにもこの時代らしくて微笑ましい。

②太陽の誘惑(1970)
 A面の「太陽の誘惑」は寺内タケシのギターを満喫できる歌謡ロックで、林マキのパワフルなヴォーカルが生み出す圧倒的なグルーヴが聴いてて実に気持ち良い。B面に収録されている「一筋の道」は映画版「サインはV」の主題歌で、前年に発売されたTV版サントラEPの④にも入っていた曲で、颯爽としたイントロにストリングスとコンガが絡みつき、間髪を入れずに彼女がスタッカート唱法で畳み掛けるという展開が実に素晴らしい。AB面共に寺内タケシがスポコン・ドラマを意識して作曲したエモーショナルなナンバーだが、パワフルな歌と演奏を上手くまとめて極上の歌謡ポップスに仕上げているのは編曲の宮川泰の手腕によるところが大きいと思う。個人的には「ただそれだけのこと」に比肩する彼女の最高傑作だと思っている。
林マキ 太陽の誘惑(1970年)

林マキ / 一筋の道(Maki Hayashi / Hitosuji no Michi "I Chose The Road")


③雪山は招く(1970)
 A面の「雪山は招く」は同名タイトルのアメリカ映画の主題歌らしいが、タイトルを聞いたことももちろん映画を観たこともない。曲の方もごくごく普通で心に残る旋律もなしと、まさにナイナイづくしだ。伸びやかな彼女のヴォーカルだけが空回りしている感じがするのがもったいない。B面の「愛のスキー・ロッジ」はA面よりは幾分マシで寺内師匠も軽快なギターで曲を盛り立てようとしているが、いかんせん旋律面で強力なフックに欠けるのは否めない。ロックでもジャズでも歌謡曲でも、いくら歌い手が優れていても最終的には “曲の良し悪しがすべて” だということを思い知らされたレコードだ。

④サインはV(1969)
 岡田可愛版「サインはV」の主題歌を歌っていたのは麻里圭子(ビクター)だが、ドラマが社会現象と言えるくらいに大ヒットしたため(←自分も小学生の頃、稲妻落としや回転レシーブを必死で真似しようとしてた...)、他のレコード会社もブームに便乗してカヴァー盤を乱発、前川陽子(朝日ソノラマ)や中村晃子(キング)、富田智子(東芝)らのヴァージョンが世に出たが、CBSソニーが「アタック№1」とのカップリングで出した4曲入りEPで「サインはV」「この道の果てに」「一筋の道」の3曲を歌っていたのがドラマの中でライバルチームのエース役を演じていた林マキだ。卒業写真の欠席者のような扱いでジャケット右上にポツンと写っている(←ミカサのユニフォーム着てる...)のが笑えますな。残念ながら YouTubeに林マキ版がなかったので、代わりに他のヴァージョンを並べてみたが、これがまた三者三様で実に興味深い。こういう歌謡曲の競作聴き比べっていうのも結構楽しいですな。
サインはV 麻里圭子

サインはV 前川陽子

サインはV 中村晃子

ただそれだけのこと / 林マキ

2024-05-19 | 昭和歌謡・シングル盤

 少し前のことになるが、ヤフオクのレコード落札相場がわかるサイトを見ていてすごいものを見つけた。林マキという歌手が出した昭和歌謡のシングル盤なのだが、たかがシングル盤に85ビッドが集中し、最終落札価格は驚異の13万円というのだから驚くなという方が無理だろう。
 林マキ... と言ってもほとんどの人は “誰それ?” となるのが関の山だろうし、昭和ガールズ歌謡好きでも名前ぐらいしか聞いたことがないという人が多いかもしれない。しかしディープなマニアなら “林マキ” と聞いただけでパブロフの犬状態になること間違いなし!と言いたくなるくらいネット・オークションでの人気は高い。ブツの数が圧倒的に少ないというのもあるが、何よりもまず内容が素晴らしく、1971年の発売から50年近く経っても全く色褪せない魅力があるからこその超人気盤なのだ。
 私が彼女の存在を知ったのは YouTubeで、誰の動画だったかは忘れたがその関連動画の中に彼女の「ただそれだけのこと」という曲があって(←関連動画から芋づる式っていうパターン結構多いな...)、たまたまそれをクリックして聴いてみたらめちゃくちゃカッコ良い和ボッサ・ナンバーだったのですぐにウォント・リストに加え、その日からこのレコードを探す日々が始まった。
 今でこそこの盤の価値・稀少性は十分わかっているが、その当時は林マキに関する情報も知識もなく、ヤフオクには全然出てこないし大阪京都のレコ屋を廻っても全く置いてないしでお先真っ暗状態。彼女の他のシングル盤もごくごくたまに出てはくるのだが、それでもシングル盤の分際で1万円前後というえげつない値段で取り引きされていて、林マキのカルト人気の凄さに驚かされたものだった。
 初めてこのレコードがヤフオクに出たのを見つけた時は “おぉ、ついにきたか!” と武者震いしたが、値段を見ると異次元の8万円(!)で、その値段を見た瞬間に戦意喪失。結局その盤は落札されずに終わり、その後も一応 “保存した検索条件” に入れて監視を続けたのだが、確か2度ほど出品されてスタート価格がどちらも数万円だったのを見て “あかん、こんなん絶対に無理やわ...” と一旦は諦めモードに入った。
 それから何年か経って、ある日突然何を血迷ったのかこの盤を Discogs で探してみようと思い立って検索してみると、信じられないことに何とこのレコードが出品されているではないか! 値段を見ると$10という嘘みたいな値段で、しかもそのセラーが中国人だったこともあって “いくら何でもこれは怪しすぎるやろ...” と警戒心がMAXまで高まったが、送ってもらったメールの写真を見る限りは本物っぽいし、フィードバックはポジティヴ100%。他の出品物を見ると昭和歌謡のレコードを一杯出していて、麻丘めぐみやら南沙織やらのシングル盤がズラリと並んでおり、私の直感では詐欺の匂いはしない。まぁ値段が値段だけに失敗してもたかが知れているし、いざという時は PayPal Protection があるわいと考え、思い切って買ってみることにした。
 購入から10日ほどしてレコードが届いた。信じられないことに(?)れっきとした本物だ。VG+と書いてあった盤質も Ex+レベルのめちゃくちゃ良い音で鳴る。結局送料込みでも当時のレート(確か $1=110円ぐらいやったと思うが、あの頃は良かったなぁ...)で約2,000円でこの垂涎盤を手に入れることができて、大袈裟ではなく天にも昇る気持ちだった。そういえば昔、901さんが eBay でアート・テイタムのダイアル盤10インチやクリフォード・ブラウンのヴォーグ盤10インチを相場の1/10以下で入手された話を伺った時に心底羨ましく思ったのを今でもよく覚えているが、私の場合はこのレコードこそがまさにそんな “信じられへんくらい安く買えたラッキー盤” の筆頭と言えるかもしれない。
 それにしても心の琴線をビンビン震わせるこの妙なる旋律は何なのだろう? この曲って歌うとなると案外難しいのではないかと思うのだが、彼女は哀愁舞い散るマイナー調メロディーをその変幻自在の唱法と圧倒的な声量でもって余裕綽々という感じで歌いこなしているし、バックの演奏もめっちゃクールでカッコ良い。特に寺川正興の闊達なベースには耳が吸い付くし、ジャジーな雰囲気横溢のフルートも言うことナシだ。
 たまたまセラーが無知な外国人で、たまたま他のコレクターに先を越されず、たまたま盤質も良かったという、幸運が幾重にも重なって手に入れたこのレコード... ひょっとするとこれでもう一生分の運を使い果たしてしまったかもしれないが、それこそ一生モノの宝物を手に入れたも同然なので気にしない。こういうラッキーがあるからレコード・コレクターはやめられないのだ。
Maki Hayashi / 林マキ・ただそれだけのこと(Japan, 1971)

再会の湖 / 尾崎奈々

2023-10-15 | 昭和歌謡・シングル盤
 私はこれまで主にネット・オークションでレコードを買ってきたが、首尾よく落札できた時の喜びよりも失敗した時の悔しさの方が遥かに強く記憶に残っている。真っ向勝負でアウトビッドされたのならまだ “やっぱり金持ちには勝てへんな...” と諦めもつくのだが、締切り間際にネット回線がダウンしたりクリックしてもパソコンが反応しなかったりとかで獲れたはずの盤をスナイプ出来ずに獲り損ねた時は悔しくて悔しくて夜も眠れず、その盤を手に入れるまで延々と引きずることになってしまう。これって締切り直前のスナイプをやめて早めに入札しておけば済む話なのだが、ライバルを出し抜いて1円でも安く買おうという貧乏根性がどうしても抜けきれず、それが仇になってしまうのだ。
 今回取り上げる尾崎奈々の「再会の湖」もそんな大失態の末にようやく手に入れた1枚で、オークションでいつも通り締切り5秒前に入札ボタンをクリックしたところ、何故か “オークションにアクセスできませんでした” という表示が出てビックリし、大慌てで再入札したものの、時すでに遅しで “このオークションは終了しています” という無慈悲な表示が出るばかり...(>_<) F1では雨でコンディションが難しい時の予選で、とりあえず保険のために出しておくタイムを “バンカー” というのだが、何故もっと早く “バンカー” 入札しておかなかったのだろうと悔やんでも悔やみきれなかったし、その時は予算的に余裕をかましていたこともあって悔しさも倍増。それから2週間くらいはこの “逃がした魚” のことで凹みまくって仕事も手につかなかったほどだ。
 その一件から約3ヶ月ほど経ったある日、登録しておいたヤフーから “オークションに出品されました” という通知が来て私の心に火が付いた。リベンジの機会到来である。今回は絶対に負けは許されない。私は前回の反省を基に締切り7分前に渾身の入札をして何とか無事落札。落札額は前回逃がした時のほぼ半額で、届いた盤もピッカピカのNM盤だったので、まぁ結果オーライというところだが、3ヶ月間のストレスを考えると “あーしんどかった...” という思いしか残らない。
 前置きがめちゃくちゃ長くなってしまったが、私はこの「再会の湖」という曲が大好き♡  レコードがリリースされた1971年というのはちょうどベンチャーズ歌謡が猛威を振るっていた時期だったが、北欧エレキを基調としたアッパーな曲調はまさに絵に描いたような “スプートニクス歌謡” とでも呼ぶべきもので、この手のサウンドが三度のメシよりも好きな私は哀愁舞い散るエレキの音色に涙ちょちょぎれるのだ。この曲における北欧インスト的な要素は大瀧詠一の「さらばシベリア鉄道」なんかにも影響を与えているように思えるのだが、それはまた別の話。
 私がこの曲に魅かれるもう一つのポイントはジョニー・グリフィンの名演で知られるスタンダードの名曲「Hush-A-Bye」の美旋律をパク... いや、アダプトしているところで、特にAメロの “湖に投げかけた あなたへの口づけ 恋人になれた あの日が懐かしい~♪” のパートなんかもうそっくり。作曲した井上忠夫はブルーコメッツに入る前はジャズ喫茶で演奏していたらしいので、おそらくスタンダード・ソングにも造詣が深かったのだろう。“パクリ云々” に関する私の考えはこれまで何度もこのブログに書いてきたが、優れた曲を元にしてまた別の優れた曲を作ることは誇るべき才能だと思うし、そのようにして素晴らしい楽曲がどんどん増えていくことは音楽ファンとして大歓迎だ。
 歌っている尾崎奈々は松竹の清純派女優で1968年にテイチクからシングルを2枚出しているが、この「再会の湖」は1971年にワーナー・ブラザーズのリプリーズ・レコードからリリースしたもの。やや音程が不安定になるところはあるものの、曲の良さと絶妙な器楽アレンジの相乗効果で私にとっては超の付く愛聴曲になっているし、スナイプを失敗して忸怩たる思いの末にようやく手に入れたこともあって愛着もひとしおだ。
 それにしてもこんな名曲名演が次から次へと生み出されていた1960年代の終わりから1970年代の初めにかけての数年間って日本の音楽史上でも “神ってる”(←短命だったなこの言葉...)レベルの黄金期だったように思う。昭和という素晴らしい時代を生きることができてホンマにラッキーだ...(^.^)
尾崎奈々/再会の湖

Hush-A-Bye – Johnny Griffin

スナッキーで踊ろう / 海道はじめ

2023-07-15 | 昭和歌謡・シングル盤

 私はいわゆる “変なレコード” というやつが大好きで、その曲が自分の好みに合ってさえいればどんな怪しげな盤でも喜び勇んで買ってしまう。そして私の手持ちのレコードの中でも一二を争う珍盤(奇盤? 怪盤?)が今日取り上げる「スナッキーで踊ろう」だ。
 私がこの曲の存在を知ったのはバックで踊っているスナッキー・ガールズの1人、小山ルミつながりで、“小山ルミがソロ・デビュー前に怪しげなレコード(笑)に参加していたらしい... という話をネットで知って、色々調べて辿り着いたのがこの「スナッキーで踊ろう」だった。
 原盤は今でこそ15,000円ぐらいのえげつないプレミア価格で取り引きされているようだが(←1995年に Vivid Sound から出た再発盤ですら6,000円超えしててビックリ...)、私が買ったレコードは盤質表記が良くなかったこともあってか確か3,000円ちょっとで手に入れれたと思う。
 歌謡曲のシングル盤ということで少々音が悪くても “まあエエか...” と気にせずにいたが、先日たまたま思い立って超音波クリーニングを施してみたところ、それまでのノイズがウソのようにキレイさっぱり消え去ってEx+レベルの高音質でこの珍曲が楽しめるようになったのが嬉しくて、早速このブログに書くことにしたのだ。
 この曲は元々プリマハムが若者向けに発売した新商品フランクフルト・ソーセージ「スナッキー」のプロモーションの一環として企画したもので、ある意味では日本初のタイアップ・ソングと言えるが、驚かされるのはそのキャンペーン・ソングの作曲を演歌界の巨匠である船村徹に依頼したことで、その結果として信じられないくらいファンキーな船村作品が誕生したのだから面白い。
 インタビューでは “奈落の底というか地獄へ落ちていく断末魔みたいなサウンドを作りたかった... きまったものをブチ壊したいという破壊衝動に突き動かされて作った...” と、とても演歌界の大御所とは思えないような突飛なことを仰っていたが、ベンチャーズ顔負けのアグレッシヴなガレージサイケ・サウンドに民謡をミックス、フィル・スペクターばりの過剰なエコーをぶっかけて当時の弟子だった民謡歌手の海道はじめに歌わせるという、アヴァンギャルドというか、ブッ飛んだ凄い作品なのだ。
 この曲を初めて聴いた時は “何じゃこりゃ?” だったが、その “何かめっちゃ変やけど妙に気持ち良い” 感じがクセになって脳内リフレインが止まらなくなってしまったのだ。そういう意味では危険な中毒性を持った1曲と言えるが、デッドなドラム・サウンドが生み出す強烈なグルーヴ感がとにかくヤバいので、“昭和歌謡ナイト”のようなパーティーはもちろんのこと、今の時代ならサンプリング・ネタとして使っても十分上手くハマると思う。まぁ時代がやっとこの曲の先進性に追いついたとも言えるが、私にとっては大音量で聴いて日常のストレスを吹き飛ばしてくれる、そんな1曲なのだ。そう、この曲は小さな音で聴いてもその魅力は伝わらないだろう。とにかく可能な限りの大音量で聴く... これに尽きると思っている。
 尚、バックでコーラスと踊りを担当した “スナッキー・ガールズ” はジャケット左からルミ(小山ルミ)、ミミ(吉沢京子)、ハニー(羽太幸得子)の3人で、風吹ジュンが参加していたというのはガセネタのようだ。
スナッキーで踊ろう

謎の歌謡曲「スナッキ―で踊ろう」誕生秘話(3/3)

邦楽 “ビートルズ・オマージュ” 曲特集

2023-07-02 | 昭和歌謡・シングル盤

今日はちょっと趣向を変えて、邦楽曲の中でビートルズを連想させるオマージュ曲をいくつかピックアップしてみた。もちろんこの他にも一杯あると思うが、真っ先に私の頭に浮かんだのが以下の4曲だ。

①原田真二「キャンディ」(1977.11)
 原田真二は吉田拓郎のプロデュースで「てぃーんず・ぶるーす」「キャンディ」「シャドー・ボクサー」と1ヶ月ごとにシングルをリリースするという当時としては前代未聞のデビューを飾った大型新人で、私も結構気に入ってレコードを何枚も買ったものだった。彼のシングルでは「タイム・トラベル」とこの「キャンディ」が断トツに素晴らしいと思う。曲想はモロにビートルズの「Michelle」で、クリシェを用いた作風はもちろんのこと、バック・コーラスの付け方なんかにも彼のビートルズ愛がビンビン伝わってきて嬉しくなってしまう。彼が随所に散りばめたビートリィな要素を “あっ、ここにもある!” と大喜びで味わい尽くすのが由緒正しいビートルズ・ファンというものだ。
原田真二「キャンディ」


②沢田研二「おまえがパラダイス」(1980.12)
③南佳孝「スローなブギにしてくれ」(1981.1)
 私は中学に入った1975年から音楽を聴き始めたので、ちょうどジュリーの全盛期をリアルタイムで経験できた幸せ者なのだが(←ザ・ベストテンとか毎週見てた...)、32枚目(!)のシングルにあたるるこの「おまえがパラダイス」を初めて聴いた時はさすがに目が点になった。ビートルズの「Oh! Darling」そのまんまではないか! イントロからいきなりあの有名な旋律をモロに引用していて “これって盗作とかにならへんのかな?” と不思議に思っていたら、そのすぐ後に南佳孝が今度は曲調までそっくりな「スローなブギにしてくれ」を出したので、またまたビックリ。副題が「I Want You」なので、こっちの方はわざと狙ってやってるフシがある。「Abbey Road」から10年以上経って日本のヒット・チャートに「Oh! Darling」もどきが次々と出現したのには笑えたが、当時は “日本って何でもアリなんやな...” と妙に納得していた。これらの曲をまだ聴いたことのないビートルズ・ファンの方は是非一度聴いてみて、イスから転げ落ちて下さい(笑)
沢田研二「おまえがパラダイス」

南佳孝「スローなブギにしてくれ」


④PUFFY「これが私の生きる道」(1996.10)
 邦楽ビートルズ・オマージュ曲特集のトリは奥田民生のビートルズ愛をシングル曲としてギュッと凝縮したパフィーの2ndシングル「これが私の生きる道」だ。3分少々のこの1曲中に「Day Tripper」を始めとして「Please Please Me」「From Me To You」「Twist And Shout」「She Loves You」(まだまだ他にもいっぱいあるかも...)といった珠玉の名曲のリフやらフラグメンツやらがそこかしこに散りばめられており、ビートルズ・ファンにとっては宝探し感覚で楽しめてしまうナンバーなのだ。何かというとすぐにパクリ云々する悪癖がマニアにはあるが、こういうスマートで洗練されたオマージュの仕方は実にクールでカッコイイと思う。1990年代という時代に敢えてモノラル録音を敢行という徹底した拘りっぷりも最高だ。
PUFFY「これが私の生きる道」

昭和歌謡の極私的名盤特集

2023-06-25 | 昭和歌謡・シングル盤
 この半年ほどやってきた昭和歌謡のシングル盤ネタもそろそろ尽きてきたので、今日はまだここで取り上げていない愛聴盤をまとめて一気に特集しよう。

①ジュディ・オング「ヤング・ヤング東京」(1967.3)
 ジュディ・オングというとどうしても1979年の超特大ヒット「魅せられて」のインパクトがデカすぎて、煌びやかなドレスをヒラヒラさせて歌う “高級スナックのママさん風シンガー” のイメージが強い気がする(←でしょ?)が、彼女の真価は1967年~1972年の日本コロムビア時代にこそあると私は思う。中でも「涙のドレス」や「ブラック・パール」といった筒美京平作品は屈指の名曲だが、それ以外では3rdシングルの「ヤング・ヤング東京」が圧倒的に、超越的に素晴らしい。時代を先取りしたようなスカ・ビート(?)の裏打ちリズムに乗って初々しい歌声を聴かせる彼女はまさにリズム歌謡の王道を行くという感じだし、ボビー・ハケットやルビー・ブラフを想わせる歌心溢れるトランペットのオブリガートも絶品だ。
ジュディ・オング 翁倩玉 - ヤング・ヤング東京(1967)


②マーガレット「逢えば好き好き」(1968.7)
 寺内タケシの秘蔵っ子であるマーガレットの2ndシングル。以前ジャケット・クイズで取り上げたデビュー曲「遊びに来てね」も素晴らしい出来だったが、それに負けず劣らず大好きなのがこの「逢えば好き好き」だ。基本的には1stシングルと同様に、彼女の舌っ足らずなヘタウマ・ヴォーカルとバックを務める寺内タケシ師匠のギターという個人技(?)頼み路線なのだが、この2ndシングルではガールズ・ガレージ・パンク色がより一層強まり、曲の良さも相まって何度も何度もリピートして聴きたくなるキラー・チューンに仕上がっている。私の手持ちはクリンク・レコードから出た再発盤で、キングの原盤はネット・オークションで1度だけ見たことがあるが、ウン万円という超絶プレミアが付いていて手が出なかった。ジャケット写真で彼女がマタニティ・ドレスみたいな服を着ているのがジワる。
マーガレット「逢えば好き好き」


③ジュリーとバロン「ブルー・ロンサム・ドリーム」(1969.6)
 鍵山珠理が名曲「涙は春に」を出した後に、尾藤イサオのバックバンドであるバロンにリード・ヴォーカルとして加入してリリースしたシングルがこの「ブルー・ロンサム・ドリーム」だ。このレコードの一番の魅力は何と言ってもあの “阿木燿子 & 宇崎竜童” コンビの処女作という点、これに尽きるのではないか。太田とも子の「とおく群衆を離れて」や「恋はまっさかさま」でもそうだったが、このブルージーなナンバーでもその楽曲クオリティの高さに驚かされる。後に山口百恵や中森明菜で一世を風靡するだけのことはあると大いに納得させられる1曲だ。尚、肝心のジュリーこと珠理ちゃんはこの曲を発表した1週間後に男とフケてしまったらしいwww
ジュリーとバロン / ブルー・ロンサム・ドリーム


④山内恵美子「太陽は泣いているセンセーション'78 / 涙は紅く」(1978.7)
 以前フェロモン歌謡特集で取り上げた「熊ん蜂」の山内えみこがショートヘアにイメチェンして “山内恵美子” 名義で1978年にリリースしたのがこの「太陽は泣いているセンセーション '78」だ。いしだあゆみの “ひとりGS” 最高傑作をサンタ・エスメラルダっぽいスパニッシュ・ギターをフィーチャーしたディスコ歌謡としてリメイクしているのだが、当時我が物顔でバッコしていた有象無象のディスコ・ナンバーとは違い、今の耳で聞いても十分傾聴に値するのはやはり筒美京平先生の神アレンジ(→何となく「東京ららばい」に雰囲気が似てる...)のなせるワザか。B面の「涙は紅く」も良い出来で、筒美京平という音楽家の偉大さを改めて実感させられる名シングルだと思う。
山内恵美子 -太陽は泣いているセンセーション'78 / 涙は紅く

【フェロモン・クイーン】渚まゆみ特集

2023-06-18 | 昭和歌謡・シングル盤
 私は渚まゆみの大ファンで彼女のレコードはいっぱい持っているが、ターンテーブルの乗る回数が多いのはやはり彼女が浜口庫之助と結婚した1973年以降のハマクラ作品だ。デビューした大映レコード~キャニオン時代の彼女の歌は “女優の余技” の域を出ない生硬なヴォーカルで “歌詞をなぞっている”感が強かったが、彼と出会ってからは歌い方がガラリと変わり、歌詞の内容を “表現する” 歌い手へと大きく成長しているのだ。今回はそんな彼女のフェロモンが横溢するCBSソニー時代のシングルを取り上げよう。

① 「奪われたいの」
 渚まゆみの代表曲であると同時に “フェロモン歌謡で五指に入る大傑作” と言っても過言ではないのがこの「奪われたいの」だ。これはもう言葉で説明するよりも実際に聴いてもらった方が早いが、もしも “フェロモン歌謡って何?” と誰かに訊かれたら、私なら黙ってこのレコードを差し出すだろう。この曲に関して私が凄いと思うのは何よりもまずその歌詞だ。“あげるのはイヤ”→“奪われたい” →“なぜならあげてしまうと愛がわからないから” →“奪われた時に初めてあなたの愛を感じられる” という、非常に起承転結のハッキリした論理的(?)な展開が3番まで繰り返されるのが実に斬新で、露骨な表現で聴き手を引きつけようとする単純なパターンのフェロモン歌謡とは激しく一線を画している。彼女の歌い方もまるで水を得た魚のように活き活きとしており、それまでのシングルとはまるで別人のようだ。大人の色香を感じさせるジャケットも素晴らしい。
「奪われたいの」 唄:渚まゆみ
   

②「わたし半人前」
 浜口庫之助という人の一番の魅力は誰にでも楽しめるシンプルで親しみ易いメロディー展開と、ユニークな発想から生み出される軽妙洒脱なユーモアのセンスにあると思うのだが、大ブレイクした「奪われたいの」に続くこのシングル「わたし半人前」でもハマクラ節は絶好調。“わたし半人前 あなた半人前 二人合わせてやっと一人前になるってことね...” という単純明快さや “二人になったら なったとたんに ハッチャル チャッチャルするの...” というコミカルな面白さはハマクラさんの真骨頂だ。彼女のヴォーカルも堂に入っており、“全然元気がない~♪”の少し鼻にかかったような声色表現は彼女ならでは。ドレミファンという女性グループによるカヴァー・ヴァージョンと聴き比べてもその差は圧倒的だ。ただ、ジャケット写真がオバサン風の化粧で少しガッカリで、同日に撮影されたと思しき同名LPの裏ジャケ写真の方が私は好きだ。
「わたし半人前」 唄:渚まゆみ


③「夜の虫」
 このシングルは何よりもまずゴージャスな雰囲気を湛えたジャケット写真に目がいってしまうが、中身の方もそれに負けず劣らずの素晴らしさで、まゆみ姐さんはデビュー時からは想像もできないくらい堂々たる歌いっぷりで聴く者をグイグイ引き込んでいく。その表現力にはますます磨きがかかり、本職の歌手顔負けのヴォーカルを聴かせるところが凄いと思う。歌詞の内容はいわゆるひとつのフェロモン系ではなく、酒と煙草と女が大好きで夜な夜な酒場で過ごす男の話で、昭和歌謡の王道を行くメロディー展開と相まって、男女問わずにカラオケなんかで歌うのにピッタリのナンバーだ。
渚まゆみ 夜の虫

フェロモン歌謡の名盤特集

2023-06-11 | 昭和歌謡・シングル盤

①倍賞美津子「恋の芽生え」(1969.6)
 私にとって倍賞美津子は “猪木の元嫁さんで、一時期めっちゃCMに出ていた女優” という認識で、何よりも松田優作の「探偵物語」に女弁護士役で準レギュラーとして出演していた “ボインのマサ子ちゃん” のイメージが強かった。ところが昭和歌謡のレコードを集めていた時に日本橋の「ナカ」でこのシングル「恋の芽生え」を偶然見つけて “倍賞美津子ってレコードも出してたんか...” と驚かされ、“買ってぇ~♡” と訴えかけてくる視線に魅かれてジャケ買いし、実際に聴いてみるとジャケットどうりの肉感的なフェロモン歌謡、しかも曲自体のクオリティーも高くて大喜び(^o^)丿 B面の「耳を噛まずに」(←伊東ゆかりの「小指の思い出」といい、この曲といい、60年代の歌謡曲の歌詞ってヤバないですか?)も雰囲気抜群で、スケベな昭和歌謡ファンには必携の1枚だと思う。
倍賞美津子 恋の芽生え


②渥美マリ「好きよ愛して」(1970.10)
 渥美マリは大映の「でんきくらげ」「しびれくらげ」「夜のいそぎんちゃく」(←凄いタイトルwww)といった “軟体動物シリーズ” 映画に主演した女優さんで、日本初のヌードジャケット・レコードとして中古市場で人気の高い「可愛い悪魔」(←何と橋本淳=筒美京平コンビです!)が有名だが、中村泰士作曲の2ndシングル「好きよ愛して」も負けず劣らずの名曲名唱で、フェロモンをまき散らしながら “好っきよ 好き好き 愛してぇ~♪” と歌う様はさすが “大映ハレンチ五人娘” と呼ばれただけのことはあるなぁと実感。エンディングの “アア~ン 愛してぇ~♪” もたまらんたまらん(≧▽≦)
渥美マリ 好きよ愛して


③木の実ナナ「セクシカ」(1971.4)
 木の実ナナは60年代ならコミカルな「ミニミニロック」、70年代なら「探偵物語」で効果的に使われてた「うぬぼれワルツ」ぐらいしか知らなかったので、70年代初めにリリースされたというこの「セクシカ」を聴いた時はホンマにビックリした。この曲はマレーネ・ディートリッヒの「リリー・マルレーン」を日本語でカヴァーした「悲しい道」というシングルのB面にひっそりと(?)収められていたのだが、クニ河内が書いた “指と指 口と口 胸と胸 髪と髪... 私の中にあなたがいるぅ~♪”“今二人 一つなの~♪” という火の玉ストレートな歌詞を失速寸前のスロー・テンポで歌うというエロ歌謡のインパクトが絶大で、どうしてもこっちの面ばかり聴いてしまう... 人に聞かれると恥しいので小音量でだが... 歌のイメージを見事に表現したセクシーなジャケ写も最高だ(^o^)丿
ナナ / セクシカ


④山内えみこ「熊ん蜂」(1974.9)
 何年か前にコロムビア、クラウン、キング、テイチク、ビクター、東芝の音源から選りすぐりのフェロモン歌謡を集めた「魅惑のムード☆秘宝館」という6枚組CDボックスを買ったことがあって、全108曲の中で最も気に入った曲の一つが山内えみこの「熊ん蜂」だった。出だしはごく普通のアイドル・ポップスっぽいのだが、歌詞を聞いていくと “刺されたの私... 抱かれたの私...”から “抜いちゃイヤ... 甘い針... こんな幸せ初めてよ..♡” と、その行為をモロに連想させる隠喩表現が出てきて思わずニヤリとさせられる。 “お返しをさせてね... 雨がやむまでは...” “きっとまた誰かの蜜をすするのね...” という、聴き手の想像力を逞しくさせてしまうスケベな歌詞を甘~い歌声でコーティングしたフェロモン歌謡の大傑作だ。
山内えみこ 熊ん蜂

「さすらいのギター」別テイクの初期プレス盤ゲット!

2023-05-21 | 昭和歌謡・シングル盤

 ベンチャーズ歌謡の傑作といわれる小山ルミの「さすらいのギター」には一般に出回っているノーマル・ヴァージョンの他に “初期プレス”ヴァージョンというのが存在する。アルバム用にシングル・ヴァージョンとは別のテイクを録音するというパターンはたまに見かけるが、このようにシングル発売から短期間でこっそりと(笑)別のテイクに差し替えられた例というのはキャンディーズ「やさしい悪魔」の通称 “木魚”ヴァージョンぐらいしか記憶にない。
 そもそもこの別ヴァージョンの存在を初めて知ったのはもう今から10年以上も前のことになるのだが、小山ルミの大ファンを自認する私としてはそのレアな音源とやらを是非とも聴いてみたいと思って色々調べた結果、幸いなことに手持ちの「SINGLE COLLECTION」というCDに収録されているのがわかり、とりあえず両方のヴァージョンを聴き比べることが出来た。明確な違いはヴォーカルとギター・パートで、特に随所に登場するギターのオブリガート・フレーズが全く違うのが非常に面白い。
 しかし好きな音楽に関しては徹底的に極めないと気がすまない私はその時もCDだけでは飽き足らず、アナログ・シングル盤でもこの “初期プレス” ヴァージョンを手に入れたいと思ってネット検索したところ、あるレコ屋の通販サイトに “初期プレス・ヴァージョン” と明記してあるのを見つけてラッキーと思い即オーダー。ところが送られてきたのはどこにでも転がってるノーマル・ヴァージョン盤だったので “こんなん詐欺やんけ!” とブチギレてメールで問い詰めると、“以前に出品した商品の説明をそのまま流用してアップしてしまいました... 申し訳ありません...m(__)m” と平謝りされた。エエ加減な商売しとるのぉ...
 まぁ無いモンはしゃーないということで再度ネットで調べてみると、別のお店の通販で “レア盤初期プレス!”というのを発見。いくらなんでも今度は大丈夫やろ...と思ってオーダーしたところ、あろうことかまたまたノーマル盤が送られてきてブチギレ(>_<) 言い訳も先のお店と全く同じ “昔の商品の説明を流用してました” とのことで、開いた口がふさがらない。おどれらはド素人か!
 それから何年か経ったある時、たまたまこの初期プレス・ヴァージョンのことを思い出して今度はヤフオクで探してみたが、20枚近く出品されているのにヴァージョン違いに関する記載は一つもなかったので、各セラーに質問を送ってみることにした。手持ちのノーマル・ヴァージョンのマト末尾は N3 なので、初期ヴァージョンは N1 か N2 ということになる。そういうワケで “マト末尾番号を教えて” とメールを送りまくったところ、5~6人くらいが返事をくれて皆 N3 ですとのことだったが、一人だけその日のうちに商品を削除してガッツリ値上げしてから再出品した畜生(笑)がいたのには呆れてモノも言えなかった。おそらく初期プレス盤だったのだろうが、いくらレアな盤とはいえ、これに3,000円も出すアホはおらんやろ... レコードには適正価格っちゅーモンがあるんやで。
 そしてこの4月、仕事のストレス解消のためにネット通販のサイトを色々見ていた時にふとこの盤のことを思い出し(←レコードに関しては執念深い...)、今度はド素人相手ではなくディスクユニオンの通販で探してみようと思い立って在庫詮索でヒットした2つのお店に問い合わせてみたところ、昭和歌謡館の方に N2 盤があるとのことで即オーダー。お値段たったの 563円だった。
 盤が届いて真っ先にマトを確認すると、まごうことなき N2 盤でひと安心。実際に針を落として聴いてみても初期プレス・ヴァージョンで間違いない。それにしてもこのテイクのギターのフレーズってノーマル・ヴァージョンに比べるとまだまだアイデアの練り込みが足りないというか、不自然なくらい饒舌なギターだけが浮いてしまっているような感じがする。差し替えを行ったのはまさに慧眼と言えるだろうが、何度も聴いているとボツにされたこの軽薄なギター・フレーズ(笑)に愛着がわいてくるから不思議なもの。まぁ食べ物で言うと “珍味” みたいなモンだろう。
 ということでかなり時間はかかったが、3度目の正直で念願のレア盤を手に入れることが出来て気分も上々。マト末尾 N1 盤が存在するのかどうかという謎は依然残ったままだが、そんなのはどこぞのマニアか研究家に任せればいい。私としては N2 盤の良い音で初期プレス・ヴァージョンを聴けるというだけで十分満足だ。
初期プレス・ヴァージョン

ノーマル・ヴァージョン

B面名曲特集③

2023-05-14 | 昭和歌謡・シングル盤

なんやかんやでB面名曲特集もいよいよ最終回。今回もエエ曲揃ってます。

⑨ダイアモンド・シンガー「鍵」(1967.4)
 まずはこのジャケットをご覧あれ... A面の「黒い蝶のブルース」に引っ掛けて蝶の仮面を付けた謎の女性歌手という、ミル・マスカラスもビックリのユニークな絵面に加え、歌手の名前が “ダイアモンド・シンガー”(←本人の直筆サインが ”ダイヤモンド" になっててワロタ... 自分の芸名を間違えんなよ...)というのだから、もうこれだけでつかみはOK!という感じ。この謎のマスクマン... じゃなかったマスクウーマン(?)の正体は、1961年に「東京ドドンパ娘」のヒットをとばした渡辺マリ。彼女のパンチのあるヴォーカルで歌謡ブルースの王道を行くA面も悪くはないが、私的にはB面「鍵」のコテコテのムード歌謡っぷりがめっちゃ気に入っている。イリノイ・ジャケーやエディー・ロックジョー・デイビスを想わせる “むせび泣くサックス” がたまらないルチャリブレ歌謡(?)の傑作だ。

⑩ヒデとロザンナ「真夜中のボサノバ」(1969.8)
 私は男女デュオの良い聴き手ではない。たとえば以前取り上げた久美かおりの「髪がゆれている」なんかも男性ヴォーカル入りのオフィシャル・ヴァージョンよりもボートラの“一人二重唱”ヴァージョンの方が断然好きだし、手持ちのレコード・コレクションの中でデュオといえばジャッキー&ロイが数枚あるだけという事実からも明白なように、私は男女デュオという歌唱スタイルがどうも苦手なのだ。おそらく中性化した男性の声がキモいと感じるからかもしれない。だからヒデとロザンナに関しても興味の対象外でずーっとスルーしていたのだが、何年か前に買った「筒美京平ウルトラベストトラックス」というCDにヒデとロザンナの曲が何曲か入っていて、その中の「真夜中のボサノバ」という曲に耳が吸い付けられたのだ。何と言っても曲が抜群に良いし、ヒデのヴォーカルだって全然キモくない。慌ててシングル盤を購入したが、A面の「ローマの奇跡」よりも圧倒的にB面のこっちの方が気に入った。ちょっとエコーのかけ過ぎなところが玉にキズだが、それさえなければ文句ナシの名曲名演だ。
ヒデとロザンナ「真夜中のボサノバ」


⑪杉本エマ「青い薔薇のトゲ」(1970.4)
 私はLPであれシングルであれ、レコードはジャケット・デザインがすごく大事だと思っている。だからサイズの小さなCDではどうしても物足りなさを感じてしまうし、ましてやジャケット自体が存在しないストリーミングなんぞ論ずるにも値しない。私の経験から言うと、バート・ゴールドブラットやデヴィッド・ストーン・マーティン、リード・マイルスといった巨匠デザイナーたちが手掛けたジャズのアルバム・ジャケットに傑作が多いと思うが、昭和歌謡のレコードでも時々ハッとさせられるようなジャケット・アートワークに出会うことがある。この杉本エマのシングル盤なんかまさにその最たるもので、私は中身の音楽を聴く前にまずそのセンス抜群のジャケットに魅了され、再発盤をジャケ買い(→オリジナル盤はシングル盤の分際で4万円以上もするので手が出ません...)してしまったのだ。このシングル、A面の「アイ・アイ・アイ」も大好きだが、それに負けないくらい気に入っているのがB面の「青い薔薇のトゲ」だ。AB面共に小林亜星の作曲で、少し翳りを感じさせる「青い薔薇のトゲ」で軽快な「アイ・アイ・アイ」とは別人のようにアンニュイなヴォーカルを聴かせる杉本エマが実に魅力的。ジャケットのイメージ通りの歌声には正直驚かされた。
杉本エマ「青い薔薇のトゲ」


⑫ザ・シュークリーム「ホットパンツのお嬢さん」(1971.6)
 私はいわゆるひとつの “ガールグループ” に目がなくて、特にロネッツやスプリームスといった60年代オールディーズのガールグループは三度のメシよりも好きなのだが、邦楽のガールグループに関して言うと、キャンディーズという稀有な例外を除けばほとんどと言っていいほど食指が動かない。ソロではダメそうなのを数だけ揃えて雰囲気で誤魔化してるようなのばかりだし(←あくまでも私見です...)、何よりも肝心の楽曲に魅力がないからだ。しかしこの「ホットパンツのお嬢さん」は、コンピCDで初めて聴いていっぺんに気に入った。歌っているザ・シュークリームというのはゴールデン・ハーフの対抗馬としてスクールメイツから選抜されたグループで、メンバー1人1人は影が薄くて誰が誰だかサッパリわからないが、グループとしてこの曲で聞かせるヘタウマ・コーラスは曲の良さもあってか十分耳に残るものだ。作曲したのは市地洋子の「髪を染めたの」と同じ鈴木邦彦氏。「恋のハレルヤ」(黛ジュン)や「恋の奴隷」(奥村チヨ)、「長い髪の少女」(ゴールデン・カップス)など、基本的にこの人の書く曲は私の好みにピッタリ合うようだ。
ザ・シュークリーム「ホットパンツのお嬢さん」(21:04~)

B面名曲特集②

2023-04-30 | 昭和歌謡・シングル盤

B面名曲特集第2弾はその筋系のマニア受けしそうな “女優編” です。

⑤篠ヒロコ「愛の世界」(1968.10)
 篠ヒロコは1968年にクラウンレコードからデビューして2枚のシングルをリリースし、キングレコードに移籍して6枚シングルを出すもヒットせず、結局その後女優として成功したのだが、私は幸薄な女を演じる女優としての彼女よりも、フェロモンをまき散らしながら濃厚でメロウな歌声を聞かせる実力派シンガーとしての彼女の方が断然好き。特に彼女のデビュー・シングルはB面の「愛の世界」がA面の「水色の風」に比肩するくらいクオリティーの高い作品で、これがB面では勿体ない... 少なくとも両A面扱いにすべきではないか... と思うほど気に入っている1曲なのだ。スプートニクスを想わせる哀愁舞い散るイントロのギターの音色だけで昭和歌謡ファンはフニャフニャと腰砕け状態に陥るだろう。名曲揃いのいずみたく作品の中でも五指に入るキラー・チューンだ。
篠ヒロコ 愛の世界


⑥荒井千津子「男と女のなぎさ」(1969.3)
 映画「いれずみ無残」シリーズで主役を張った荒井千津子は “女優の余技” として2枚のシングルをリリースしており、1枚は以前取り上げたやさぐれ歌謡の名曲「ふうてんブルース」で、もう1枚がこの「終りのブルース」というシングル。このレコード、A面が気の毒に思えるくらいB面の「男と女のなぎさ」が圧倒的に、超越的に、絶対的に素晴らしい。作曲したのはマイナー調のメロディーを書かせたら天下一品の鈴木淳で、出だしの “パッ パッ パヤパパ パパパヤ~♪” からもう美旋律が出るわ出るわのわんこそば状態で、絵に描いたような哀調メロディーに涙ちょちょぎれる。インパクト抜群のジャケットもたまらんたまらん!!!
男と女のなぎさ


⑦加山麗子「センチメンタル・モーニン」(1978.3)
 日活ロマンポルノからキャリアをスタートさせた加山麗子は、後に数多くのテレビドラマやメジャーな映画(→松田優作の「探偵物語」や三船敏郎の「制覇」なんかにも出てた...)に出演するくらいまで売れっ子になった女優で、私と同年代の方なら “あぁ、あの人か...” とご存じの方の多いと思う。そんな彼女が出した唯一のシングルが「うらみ花」というやさぐれ演歌なのだが、このレコードの真価はB面の「センチメンタル・モーニン」にこそあると断言したい。正直言うとこのレコードはジャケ買いしたのだが、とにかく女優とは思えないくらい歌は上手いし、昭和歌謡のエッセンスを濃縮還元したような親しみやすいメロディーは絶品だし、おまけにこれほどの美人ということで、グルーヴ歌謡の大当たり盤として忘れられない1枚なのだ。
加山麗子「 センチメンタル・モーニン」


⑧渚まゆみ「Mr. TENG」(1985.9)
 A面のムード歌謡風「ロマン札幌」も決して悪い出来ではないが、盤をひっくり返してフリップ・サイドを聴いてしまうともうこっちばかりを何度もリピートしてしまう... そんな強烈な吸引力と危険な中毒性を持ったナンバーがハマクラ・ワールド全開で迫るB面曲「Mr. TENG」だ。とにかく他では味わえない面白さというか、バカバカしいほどの楽しさに満ち溢れており、文字通り “楽しむ” という音楽の原点を思い出させてくれるナンセンス・コミック・ソングなのだ。80'sらしいシンセの打ち込み音でチープな味わいを増幅させているあたりにもハマクラの天才を感じさせるし、“天狗” が “ぐでんぐでん” に酔っ払うという歌詞のアイデアも秀逸そのもの。何よりもハマクラの軽妙な合いの手をバックに水を得た魚の無ようにノリノリで歌うまゆみ姐さんが最高だ。酔いつぶれた天狗を起こそうと様々な声色で呼びかけるエンディングなんかはさすが女優だけあって凡百の歌手では真似できないような見事な表現力をみせつける、珍曲にして名曲と言えるナンバーだ。
渚まゆみ『Mr.TENG』

B面名曲特集①

2023-04-16 | 昭和歌謡・シングル盤

 ストリーミングやダウンロードといった言葉とは無縁の世界に生きている私のようなレコード至上主義者にとって “B面に名曲あり” というフレーズはまさに至言と言ってよく、たまにA面を凌駕するようなB面曲に出会うと大コーフンしてしまう。特に60~70年代にリリースされた昭和歌謡のシングルB面はまさに “宝の山” と言ってもいい充実ぶりで、そういった “隠れ名曲” の存在を知らずに生きていくのは音楽ファンとしては実に勿体ないことだと思うのだ。そういえば前回取り上げた木元泉の「どこかでだれかに」もB面扱い(→ジャケットのタイトル文字がめちゃくちゃ薄いwww)だった。そういうワケで、この“B面名曲特集” という企画を思いついた次第。パート1はメジャーな歌手編です。

①黛ジュン「ブラック・ルーム」(1968.5)
 レコード大賞を受賞したA面の「天使の誘惑」の陰に隠れがちだが、B面の「ブラック・ルーム」という曲のカッコ良さはハンパない。特に洋楽ファンにはハワイアンなA面よりも絶対にこっちの方がウケるのではないか。ファンキーなブラスとドラムのアンサンブルをバックに力強いヴォーカルで縦横無尽にグルーヴするジュン姐さんが超カッコイイのだ(^o^)丿 後半のコール&レスポンスのパートなんかもう “ホンマにこれが1968年の邦楽???” と “?” を3つも付けたくなるくらいソウルフル。これをB面曲として埋もれさせてしまっては昭和歌謡ファン失格というものだろう。黛ジュンの凄さを思い知らされた1枚だ。
黛ジュン「ブラック・ルーム」1968


②弘田三枝子「風とオトコのコ」(1967.7)
 これまた大名曲の誉れも高いA面「渚のうわさ」のB面として不遇をかこっているのが橋本淳&筒美京平コンビによる “ひとりGS” 屈指の名曲「風とオトコのコ」だ。もしも私が “ひとりGS” って何?と訊かれたら、この曲をイの一番に聴かせるだろう。コロムビアに移籍して東芝時代よりも更にキメ細やかな表現力を増したミコたんのパンチの効いたヴォーカルが京平先生の曲想と見事にマッチして完全無欠なビート歌謡に仕上がっているのが凄い。スパイダースへのオマージュとおぼしき歌詞と演奏が心の琴線をビンビン震わせるキラー・チューンだ。
弘田三枝子/風とオトコのコ


③金井克子「ミニ・ミニ・ガール」(1967.8)
 このシングルが発売された1967年当時はどうだったのかは知らないが、少なくとも今現在ではB面の「ミニ・ミニ・ガール」がA面の「小っちゃな恋の歌」を知名度でも人気度でも圧倒的に凌駕しているのではないか。とにかくこのレコードは疾走感溢れるB面「ミニ・ミニ・ガール」の魅力に尽きるだろう。金井克子といえば能面のような無表情で「他人の関係」をクールに歌う姿しか知らないという人も多いかもしれないが、そういう人がこれを聴いたら驚倒するに違いない。とにかくノリがすべて、という感じのイケイケなアッパー・チューンだが、この曲を書いたハマクラこと浜口庫之助って、この手のキャッチーな大衆向けソングを作らせたら天下一品ですな。
レ・ガールズ 1967年

ミニミニ・ガール 金井克子+ザ・ブルー・ビーツ+ミニ・ガールズ


④いしだあゆみ「星のタンバリン」(1968.1)
 いしだあゆみの “ひとりGS” と言えば何はさておきコロムビア移籍第1弾シングルの「太陽は泣いている」に尽きると思うが、移籍前にビクターから最後に出したシングル「小雨の思い出」のB面に入っているこの「星のタンバリン」で既に “ひとりGS” をやっていることはあまり知られていない。ハジけまくってる「太陽は泣いている」に比べるとさすがに “寸止め状態” な感は否めないが、地味な印象の強いビクター時代では文句なしにベストと言える作品だ。「雨に濡れた慕情」や「朝がくるまえに」「四つのお願い」といったちあきなおみの初期名曲の数々を手掛けた鈴木淳によるビート歌謡の傑作として、昭和歌謡ファンにもっと認知されてもいい1曲だと思う。
いしだあゆみ - 星のタンバリン

和ボッサの名盤特集②

2023-04-09 | 昭和歌謡・シングル盤

 この4月から新しい職場で働き始めたが、慣れない仕事に苦労して結構ストレスが溜まる1週間だった。ある時はビートルズでテンションを上げ、またある時はガールズ歌謡に癒されながら何とか乗り切ったという感じだ。ぶっちゃけ収入が減るので(→でも税金は去年の年収がベースという糞システム...)最近はレコードもほとんど買っていなかったのだが、901さんとの電話をきっかけにコレクター魂に火がついて(←こんなことしとったら絶対に老後ヤバいと思うけど、まぁ食費とか削ったら何とかなるやろ...)久しぶりにレコードを買ってしまった。今日はそのうちの残り1枚と、元々持っていた和ボッサ愛聴盤1枚を取り上げよう。

③木元泉「どこかでだれかに」
 前回ちょこっと書いた「Japanese Bossa Nova」というコンピレーションCDには聴きやすい曲がいっぱい入っているのだが、中でも断トツで好きなトラックが大橋巨泉とザ・サラブレッズの「どこかでだれかに」だ。大橋巨泉というと例のだみ声で“メンタンピン イーペーコー ドラドラ バンバン!” というフレーズが脳内リフレインしてしまう(→でしょ?)私は “あの巨泉がボサノバ?...ってふざけてんのか!” と思ったが、実際に聴いてみるとメイン・ヴォーカルは木元泉という女性シンガーで、巨泉の巨の字も感じられない洗練された和ボッサだったのだ。巨泉が入っているというバックコーラスも実に控え目で、彼女の透明感溢れるヴォーカルと流れるようなメロディーラインの相乗効果によって品格したたり落ちる名曲名演になっている。このレコードはめっちゃレアらしく色々調べてみてもオークションで7,000円前後、セット・プライスでも9,000円前後と中々手が出しづらいお値段なのだが、ユニオンの通販で「外装VG+、盤Ex-」という盤がその半額近い値段で出ていたのを見つけて“何でこんな安いんやろ??? VG+っちゅーのが気になるけど、これを逃したら買えへんかもわからんからとりあえず買っとこ...” と散々迷った末に購入。届いたジャケットを見ると右端3cmほどの部分が黒くすすけていてめちゃくちゃ汚らしい(>_<) あちゃー、どうりで安いわけや... と凹みながらもダメ元でエタノールをつけたコットンパフで軽く拭いてみるとかなり汚れが取れて(→やりすぎると色が剥げる可能性大なので要注意...)何とか許容できるレベルにまで回復。盤質は良いし、安く買えたので結果オーライだったが、ミズテン買いはやっぱり怖いですな...
木元泉 / どこかでだれかに


④渚まゆみ「アイ・ラブ・ユー」
 菅原文太の大ファンである私にとって渚まゆみという人は「人斬り与太」シリーズ、「仁義なき戦い」シリーズ、そして「山口組外伝 九州侵攻作戦」といった数々のヤクザ映画で文太と共演して薄幸な女を見事に演じきった女優(→特に「仁義なき戦い 頂上作戦」でのチンピラの元情婦役はめちゃくちゃハマってた...)というイメージが強かった。しかしその後、昭和歌謡を色々聴いていく中でフェロモン歌謡の名曲「奪われたいの」を始めとする彼女のキラー・チューンの数々にKOされ、今では昭和ガールズ歌謡を語る上で欠かすことが出来ない超お気に入りのシンガーになっている。彼女の傑作は1972年にCBSソニーに移籍して以降の浜口庫之助作品に集中しているが、初期の作品では大映レコードからリリースされた彼女のデビュー・シングル「アイ・ラブ・ユー」が圧倒的に素晴らしい。初めて聴いた時は “えーっ、女優がデビュー曲でボサノバやってんの?” と驚かされたが、まだまだ生硬な彼女のヴォーカルと哀愁舞い散るメロディーが見事に融合してムード満点の和ボッサになっている。フェロモン横溢のジャケットも最高だ。
渚まゆみ / アイ・ラブ・ユー

和ボッサの名盤特集①

2023-04-02 | 昭和歌謡・シングル盤
 先日久しぶりに901さんからお電話をいただいた。901さんはジャズやボサノバにめちゃくちゃ造詣が深いだけでなくフランス・ギャルからベンチャーズまで幅広く楽しんでおられる音楽マニアであり、私がビートルズのオリジナル盤を買うきっかけを作って下さった大恩人でもある。そんな901さんとの久々のレコード談義は大いに盛り上がり、最近私が昭和ガールズ歌謡ネタを立て続けに投稿していることもあって、自然と話は邦楽、それも901さんの得意分野である和ボッサへと移っていった。そしてそこで話題に上ったのが久美かおりの「髪がゆれている」というレコードだった。中古盤市場でウン千円はするこの稀少盤を “ジャケに書込み有り” なだけで 1,800円で落札できたというのだ。それを聞いて久々に私のコレクター魂に火がついた。やっぱり自分のような音楽バカには901さんのように刺激を与えて下さる存在が絶対に必要やなぁと改めて実感させられた次第。電話を切った後、怒涛の勢いで和ボッサ盤を何枚か手に入れたのは言うまでもない(笑)

①久美かおり「髪がゆれている」(1969.8)
 私は和ボッサに関しては超の付くド素人で、「Japanese Bossa Nova」というコンピレーションCD1枚しか持っていない。その2曲目に入っていたのが久美かおりの「髪がゆれている」という曲で、めちゃくちゃ良い雰囲気のボサノバだったこともあってオリジナル盤の購入を考えたことがあったが、その時は値段が高すぎたこともあって “まぁCDでエエか...” と一旦は諦めていた。しかし今回901さんの話を聞いた後で何度も何度もCDをリピート再生しているうちに “やっぱりどうしてもオリジナル盤が欲しい...” という思いが強くなりネットで色々探してみたところ、ユニオンの通販で「ジャケ汚れ・傷み、盤質B」という盤が安く出ていたのでこれ幸いと衝動買い。届いたレコードは盤質Ex+の美盤で、心配されたジャケットも自分的には “これのどこが汚れ・傷みやねん?” と思えるレベルだったのでひと安心.。それにしてもこのピアノ、めちゃくちゃクールでカッコエエなぁ... (≧▽≦)  尚、この曲には彼女が単独で歌っている「二重唱ヴァージョン」というのがあってそちらの方が更に良い出来だと901さんに教えていただいたので色々調べた結果、彼女のCDにボートラ扱いで入っているのを突き止めてそちらもゲットしたのだが、声色が統一されたことでアンニュイな雰囲気がより強く出ていて、私も絶対にこっちの方が良いと思う。とにかく901さんのおかげで愛聴盤がまた1枚増えたことに感謝感謝である。
久美かおり / 髪がゆれている


②浅丘ルリ子「シャム猫を抱いて」(1969.8)
 901さんとの和ボッサ談義で盛り上がった時に久美かおり盤に続いて名前が挙がったのが浅丘ルリ子の「シャム猫を抱いて」だった。この曲は元々彼女の芸能生活15周年を記念して1969年にリリースされた「心の裏窓」というアルバムに収められていたものでシングル・カットはされていなかったのだが、色んなガイド本やDJに取り上げられて和ボッサ・ファンの間で “知る人ぞ知る名曲” として知られることになり、2016年に クリンク・レコード(←マーガレットの「逢えば好き好き」や朱里エイコの「イエ・イエ」を再発したレーベル) がテイチクのアナログ・マスターテープからダイレクト・カッティングで初7インチ・シングル化したところ即完売したという超人気盤なのだ。 “このレコードってオークションに中々出てきませんよねぇ...” “そりゃあ和ボッサ好きは滅多に手放さへんよ...” と901さんと愚痴っていた1枚なのだが、ダメ元で再度ネットをくまなくチェックしてみたところ、運良く Discogsに安値で出ているのを見つけて速攻でゲット。昭和歌謡のレコードをDiscogsで買うという発想の転換である。内容は “和ボッサ歌謡最高峰” という謳い文句に相応しいクールでカッコイイ歌と演奏で、何度でも聴きたくなること請け合いの名曲名演だ。“マスターテープからのダイレクト・カッティング” のおかげなのか、音質もめっちゃ良くて、彼女のソフィスティケートされたヴォーカルを存分に味わえるのが嬉しい。901さん、またまた名盤ゲットのきっかけを作って下さってありがとうございました!
浅丘ルリ子 / シャム猫を抱いて

グルーヴ歌謡の名盤特集②

2023-03-26 | 昭和歌謡・シングル盤
 先週は日本中が侍JAPANのWBC優勝で大いに盛り上がったが、私もご多分に漏れずワールドカップの時と同様にミーハー根性丸出しで思いっきり楽しませてもらった。今回のWBCでは面白い出来事が一杯あったが、私としては日本人が世界一になったという事実が何よりも嬉しかったし、準決勝のメキシコ戦と決勝のアメリカ戦は私のような “にわか” ファンをもテレビに釘付けにするくらい緊張感に溢れた良い試合だったと思う。それにしても大谷選手って、あの若さで歴史に名を残すレジェンドになったというのが何よりも凄いですな。日本人の誇りですわ。
 とにかくどの試合も見どころ満載で記憶に残る名シーンが目白押しだったが、中でも個人的に一番気に入っているのが優勝決定後にヌートバー選手のオカンがインタビュー中に大魔神佐々木に会えて感激のあまり卒倒するシーン(笑)で、ヘタなリアクション芸人を遥かに凌ぐ面白さ。 “はい、大魔神です” っていう佐々木の返しもオモロかったし、ヌーママの “やぁだぁ~” の陽キャ全開ぶりにも大笑いさせてもらった。
ヌートバー母、生放送中に卒倒する

 このようにWBC狂騒曲で大フィーバーした日々も終わり、仕事の残務整理も一段落したこともあって、今は朝から晩までレコード三昧の贅沢な生活を満喫している。このブログでは前回に引き続き、お気に入りのグルーヴ歌謡名盤シングルを大特集。

③小山ルミ「グット,,がまんして!!」(1970.10)
 小山ルミは私にとってまさに “クイーン・オブ・カルト歌謡” と言ってもいい存在で大好きな歌手の1人なのだが、彼女の一番の強みはそのヘタウマ歌唱(?)と相性抜群のキャッチーな楽曲に恵まれたことではないか。たとえばこの「グット,, がまんして!!」、コミカルさを前面に押し出しながらキュートでダンサブルなシュビドゥビサイケビート歌謡に仕上がっており、何度聴いても飽きない魅力に溢れている。理屈抜きに楽しめるリズム歌謡として、“昭和歌謡ナイト” のようなゴーゴークラブ・ダンスパーティーで大受けすること間違いなしの逸品だ。尚、ほぼ同時期にグルーパーというガール・グループがシングルB面で出した「帰ろうかな」はこの曲と異名同曲なのだが、2枚を聴き比べてみると小山ルミ・ヴァージョンの完成度の高さがわかろうというものだ。それにしてもこんな挑発的なジャケットで「がまんして」はないでしょ?
小山ルミ「グット,,がまんして!!」1970

グルーパー「帰ろうかな」


④松島トモ子「コーヒーと仔犬」(1971.2)
 松島トモ子と言えば “テレビの企画か何かでライオンに噛まれた女優” という色物タレント的な存在だと思っていたので、昭和歌謡のシングル盤を色々と聴き漁っていく中で見つけたこの「コーヒーと仔犬」というシングルを聴いて驚倒した。めちゃくちゃ良いではないか! 作曲したのは山本リンダやピンクレディーで大ブームを巻き起こした都倉俊一で、この曲も彼が得意とする “簡単にリズムに乗っていける” ダンス・チューンになっており、ショッキング・ブルーの「Venus」からアダプトしてきたようなグルーヴで聴く者をグイグイ引き込んでいく。ジャケット・アートワークの色使いもめちゃくちゃ気に入っている。
松島トモ子 / コーヒーと仔犬


⑤篠ヒロコ「私あぶないの」(1971.8)
 篠ヒロコというと一般的には女優さんのイメージが強いかもしれないが、私は歌手としての彼女の大ファンで、彼女こそ昭和ガールズ歌謡史上最も過小評価されているシンガーの1人だと思っている。特に初期のシングルは素晴らしく、全くと言っていいほど売れなかったようだが私は超の付く愛聴盤として溺愛している。この「私あぶないの」もそんな1枚で、YouTubeで初めて聴いてすぐに気に入り、ヤフオクやメルカリで探してみても全然出てこない。やっとのことでディスクユニオンの通販で見つけた時は大喜びしたものだが、商品説明のところに “サニーファイブ盗作回収盤” とあったので、回収盤なら世間に出回っている数が少ないのもしゃあないと納得。好奇心に釣られてサニーファイブ盤も入手して聴いてみたが、ほとんど同じメロディー展開で笑ってしまった。どちらもいずみたくが作曲しているのだが、自分で自分の作品をパクるのは “使い回し” やのうて “盗作” になるとは知らなんだ。ただ、「My Sweet Lord」や「Come Together」と同様、盗作と言われようが何と言われようがこのレコードの素晴らしさに変わりは無く、彼女のエモーショナルなヴォーカルが存分に楽しめる名曲だと思う。
篠ヒロコ / 私あぶないの

ザ・サニー・ファイブ / 太陽のジュディー