shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

林マキ特集

2024-05-26 | 昭和歌謡・シングル盤

 林マキのレコードはどれもこれも入手が難しい。メルカリで検索したらワケのわからん少女コミックが一杯出てきて往生したことがあるが(←同じ名前の漫画家がおるらしい... 紛らわしいこっちゃ)、とにかくブツの数が圧倒的に少ないのだ。せっかくなので今日は前回取り上げた「ただそれだけのこと」以外の彼女のシングルとEPをまとめて取り上げよう。 

①なっとくのブルース(1969)
 彼女は国立音楽大学声楽科を1年で中退して寺内企画に入社し、社長である寺内タケシの「なっとくのブルース」で1969年にデビューしたのだが、私はB面に収められた “絵に描いたような” 昭和歌謡「二人のハンド・バー」の方が気に入っている。特に“夜を楽しむ~♪” のラインは青江三奈の「伊勢佐木町ブルース」を彷彿とさせる必殺の美旋律で、その魅力を最大限引き出す彼女のヴォイス・コントロールも絶妙だ。ライナーノーツのプロフィール欄に“B103cm, W60cm, H96cmの文字通り大型グラマー歌手” と書いてあるのがいかにもこの時代らしくて微笑ましい。

②太陽の誘惑(1970)
 A面の「太陽の誘惑」は寺内タケシのギターを満喫できる歌謡ロックで、林マキのパワフルなヴォーカルが生み出す圧倒的なグルーヴが聴いてて実に気持ち良い。B面に収録されている「一筋の道」は映画版「サインはV」の主題歌で、前年に発売されたTV版サントラEPの④にも入っていた曲で、颯爽としたイントロにストリングスとコンガが絡みつき、間髪を入れずに彼女がスタッカート唱法で畳み掛けるという展開が実に素晴らしい。AB面共に寺内タケシがスポコン・ドラマを意識して作曲したエモーショナルなナンバーだが、パワフルな歌と演奏を上手くまとめて極上の歌謡ポップスに仕上げているのは編曲の宮川泰の手腕によるところが大きいと思う。個人的には「ただそれだけのこと」に比肩する彼女の最高傑作だと思っている。
林マキ 太陽の誘惑(1970年)

林マキ / 一筋の道(Maki Hayashi / Hitosuji no Michi "I Chose The Road")


③雪山は招く(1970)
 A面の「雪山は招く」は同名タイトルのアメリカ映画の主題歌らしいが、タイトルを聞いたことももちろん映画を観たこともない。曲の方もごくごく普通で心に残る旋律もなしと、まさにナイナイづくしだ。伸びやかな彼女のヴォーカルだけが空回りしている感じがするのがもったいない。B面の「愛のスキー・ロッジ」はA面よりは幾分マシで寺内師匠も軽快なギターで曲を盛り立てようとしているが、いかんせん旋律面で強力なフックに欠けるのは否めない。ロックでもジャズでも歌謡曲でも、いくら歌い手が優れていても最終的には “曲の良し悪しがすべて” だということを思い知らされたレコードだ。

④サインはV(1969)
 岡田可愛版「サインはV」の主題歌を歌っていたのは麻里圭子(ビクター)だが、ドラマが社会現象と言えるくらいに大ヒットしたため(←自分も小学生の頃、稲妻落としや回転レシーブを必死で真似しようとしてた...)、他のレコード会社もブームに便乗してカヴァー盤を乱発、前川陽子(朝日ソノラマ)や中村晃子(キング)、富田智子(東芝)らのヴァージョンが世に出たが、CBSソニーが「アタック№1」とのカップリングで出した4曲入りEPで「サインはV」「この道の果てに」「一筋の道」の3曲を歌っていたのがドラマの中でライバルチームのエース役を演じていた林マキだ。卒業写真の欠席者のような扱いでジャケット右上にポツンと写っている(←ミカサのユニフォーム着てる...)のが笑えますな。残念ながら YouTubeに林マキ版がなかったので、代わりに他のヴァージョンを並べてみたが、これがまた三者三様で実に興味深い。こういう歌謡曲の競作聴き比べっていうのも結構楽しいですな。
サインはV 麻里圭子

サインはV 前川陽子

サインはV 中村晃子
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