shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ザ・タイマーズ (Pt. 2)

2011-07-27 | J-Rock/Pop
 タイマーズのこのデビュー・アルバムはゼリーさんのオリジナル曲を中心に、モンキーズの2大名曲「モンキーズのテーマ」と「デイドリーム・ビリーバー」のカヴァー曲を要所要所に配置することによって絶妙な流れを作り出しており、デルタ・ブルースの薫りが色濃く立ち込めるアコースティックでシンプルなロックンロールに乗せて、原発を始め「カバーズ」で顕在化した様々な社会問題を真っ正面から取り上げている。基本的に4ピースのガレージ・パンク・バンドのノリなので、「カバーズ」や「コブラの悩み」に比べてサウンド・プロダクションがシンプルになった分、歌詞のメッセージがよりストレートに伝わってくる。
 まずは何と言っても1曲目の①「タイマーズのテーマ」の歌詞が最高だ。 “キメたい 燃やしてくれ さえない時はぶっ飛んでいたい~♪” “火をつけて お前の匂いを嗅ぎたいぜ~♪” “いつでも君と笑っていたいな~♪” “素敵な君と トリップしたいな~♪” “まわしてくれ ここでとびたい~♪” というように麻薬吸引を示唆するフレーズを連発し、一気に “Timer を持ってる~♪” “Timer が大好き~♪” へと繋げるのだが、どこをどう聴いても “大麻を持ってる” “大麻が大好き”としか聞こえない(笑) ゼリーさんのユーモアのセンスにニヤリとさせられる、実に完成度の高い空耳ソングだ。又、アレンジも絶妙で、原曲の良さを見事に引き出しながら自分たちのオリジナルであるかのように聴かせるあたり、このバンドの音楽性の高さを如実に示している。
 尚、この曲はラス前で「サージェント・ペパーズ」を模してか1分にも満たない⑯「タイマーズのテーマ(エンディング)」として反復されるのだが、その歌詞が “Timer が切れてきたぁ~♪”(← “切れてくる” ってモロやん!)、“Timer が欲しい 急いで帰って ヘラヘラ笑うぜ~♪” と実に見事にオチがキマッている。清...じゃなかったゼリーさん、これ作ってる時はめちゃくちゃ楽しかったやろなぁと思うが、それにしても “原発” はダメで “大麻” がOKって、東芝EMI って一体どういう発想の会社なのだろう? それって “原発” は “大麻” よりもタブーということなのか???
 偽善者・被害者・犠牲者・司会者・親会社・子会社・2トン車・配偶者と、ゼリーさんのライミングが冴え渡る②「偽善者」、さりげなく東芝への皮肉を交えながら一般大衆目線で反骨精神を歌い上げた③「偉人のうた」、ド演歌調で “替え歌のひとつにもいちいち目くじらを立てる 嫌な世の中になっちまったもんでござんすねぇ えぇ 社長、どうなんだい!” とこれまた「カバーズ」騒動を痛烈に皮肉った④「ロックン仁義」、そしてコレに続くのがタイマーズ屈指の名カヴァー⑤「デイ・ドリーム・ビリーバー」だ。
 以前にも取り上げたことがあるこの曲は私の中では名曲の殿堂入りしているキラー・チューン。当然数々の名カヴァーが存在するのだが、そんな中でもゼリーさんの優しい人柄が滲み出た歌声にホロリとさせられるタイマーズ・ヴァージョンが一番好き。特に “Cheer up, sleepy Jean~♪” のラインを “ずっと夢を見て~♪” とやったゼリーさんのメロディーに日本語を乗せていくセンスには脱帽だ。曲中の “彼女” は彼の亡くなったお母さんのことを歌ったものだと言われており、そういう耳で聴くと余計に胸にグッとくるモノがある。当時エースコック・スーパーカップのCMソングとして大ヒットしたこの曲はタイマーズの、いや、清志郎の代表曲の一つと言っていい名曲名演だ。
 伸ちゃん...じゃなかったトッピさんが作った⑥「土木作業員ブルース」は泥臭いブルースで何度も聴いているうちに病み付きになるスルメ・チューン。⑦「争いの河」も泥臭さ全開のデルタ・ブルースで、特にトッピさんのスライド・ギターの切れ味は絶品! ドラムスのパーさんが生み出す弾むようなリズムに乗って変幻自在なプレイを聴かせてくれる。演奏だけ聴いたら日本人ミュージシャンのものとは思えないぐらいグルーヴィーで、私がこのアルバム中で最も愛聴しているナンバーだ。
 昭和天皇が亡くなった時の大喪の礼による交通規制を皮肉った⑧「カプリオーレ」、スペシャルズもビックリのスカの裏打ちリズムを隠し味に原爆から原発へと繋げたシニカルな歌詞を歌いまくる⑨「ロング・タイム・アゴー」、自らの体験を基に世の中の不条理な現実をクールな視点から歌にした7分を超える大作⑩「3部作:人類の深刻な問題~ブーム・ブーム~ビンジョー」、ウザい政治家連中をおちょくった⑪「ギーンギーン」と⑫「総理大臣」、カントリー・タッチの軽いサウンドで日本人を皮肉った自虐的⑬「ロンリー・ジャパニーズ・マン」と、ロックンロールをベースにしながらも様々な音楽のエッセンスを取り入れながらヴァラエティーに富んだアルバムに仕上げている。
 ⑭「税」は⑦と並んでトッピさんのスライド・ギターが縦横無尽に暴れまくる疾走感溢れるロックンロール。「学園天国」を想わせる掛け合いのパートも楽しいが、何と言っても“間接税、消費税、増税、そりゃないゼェ~♪” “物品税、分離課税、市民税、酒がしみんゼェ~♪” と速射砲のように繰り出されるシニカルな歌詞が最高だ。“風邪ひくゼェ~♪” にも大笑い(^o^)丿 歌詞良し、曲良し、演奏良しと、三拍子揃ったキラー・チューンだ。
 ⑮「イモ」はFM東京事件で有名な「夜ヒット」でも演奏していたが、私の耳にはどうしても “陰毛” に聞こえてしまう。曲の出来としては可もなし不可もなしという感じなので、とにかく気のすむまで “インモォー” を連呼したかっただけなのかもしれない(笑)  そしてアルバムは⑯「タイマーズのテーマ」のリプリーズに続いてわずか30秒ほどの⑰「ウォーク・ドント・ラン」でシメ。ライヴではよくベンチャーズを演っていたが、それにしてもアコギでベンチャーズ・ナンバーをバリバリ弾きまくるゼリーさんがめちゃくちゃカッコイイ(^o^)丿 とにかくこの「ザ・タイマーズ」、CD1枚約50分を一気呵成に聴かせて全く飽きさせない超一流のロックンロール・アルバムだ。
 尚、2006年のリマスター版にはボートラとしてシングル「ロックン仁義」のB面(とゆーか、2nd & 3rd beat)だった⑱「企業で作業」と⑲「ダイナ(嫌煙のダンナ)」が追加収録された19曲入りになっているのでそちらの方がお買い得だ。

タイマーズのテーマ 


デイドリーム・ビリーバー


THE TIMERS - PIPE LINE  1990 #01


タイマーズ 税


the timers / long time ago
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ザ・タイマーズ (Pt. 1)

2011-07-23 | J-Rock/Pop
 忌野清志郎のキャリアの中でRCサクセションと共に重要な位置を占めるのが、例の「カバーズ」騒動を受けて彼が結成した覆面バンド、ザ・タイマーズである。彼の40年近いキャリアの中では、RC 後期からこのタイマーズ、そしてそのスピンオフ的存在のアルカイダーズ(笑)あたりまでの、風刺の効いた歌詞を絶妙なユーモアのオブラートで包み、高い音楽性でもって表現しながらゲリラ・ライヴを行っていた頃の作品が一番好きだ。
 このタイマーズ、正式名称は英語で The Timers となっており字面ではキッチンタイマーの “タイマー” のことだが、コレは同時に “大麻” に引っ掛けたもので、いかにも遊び心溢れる清志郎らしいバンド名だ。メンバー名は GS のタイガースに引っ掛けて、ゼリー(vo)、トッピ(g)、ボビー(b)、パー(ds)(←本家のジュリー、トッポ、サリー、ピーをもじっている...)となっており、それぞれ清志郎、三宅伸治、川上剛、杉山章二丸のそっくりさん(笑)である。しかもメンバーはみんな手拭いにサングラスで顔を隠し土木作業員の格好で演奏するというからインパクトは抜群だ。
 彼らのアルバムは1989年のデビュー作「ザ・タイマーズ」、1995年に出たライヴ盤「復活!!ザ・タイマーズ」とそのわずか4日後(!)にインディーズ・レーベルからリリースされた「不死身のタイマーズ」(←廃盤で入手困難とはいえアマゾンでの中古価格が凄いことになってる... 何と驚愕の13,500円~159,800円!!! CD1枚に16万円も出すバカおるんかいな???)の3枚があるが、歌詞が過激すぎてアルバムに収録できなかったものも少なくない。そんな中でも一番笑えるのが、タイマーズ結成のきっかけともなった原発問題を徹底的におちょくった「原発賛成音頭」である。
 「サマータイム・ブルース」で原発を批判したがためにレコードを発売中止にされた清志郎は、敢えて “音頭” という日本古来のノーテンキなリズムに乗せて原発を茶化す歌を唄うことによって見事に切り返したのである。まずは “これなら問題ないだろ~ みんな大好き原子力♪” という「カバーズ」騒動への痛烈な皮肉で東芝を一刀両断、返す刀で “日本の原発世界一 何にも危険はございませーん” “一家に一台原子力 原発推進当たり前” と諧謔精神とユーモアに満ちたフレーズ連発で電力会社をメッタ切り。しかも下に貼り付けた動画はよりにもよって福岡電気ホールでのライヴときたもんだ(笑) オーディエンスを煽りながら “九州電力バンザーイ!” とか “自信を持っていきましょう! 何も怖がることはありません、安全ですよぉ” とか、もう面白すぎて腹筋が痛い。そしてエンディングの “オマエら よくやるよなぁ ホントになぁ” という清志郎の醒めた声がトドメの一撃になっている。それにしても今の日本の状況を鑑みるにつけ、清志郎の洞察力というか、先見の明はホンマに凄かったんやなぁと改めて痛感させられる。
原発音頭 タイマーズ


 体制ベッタリのラジオ局を名指しでこき下ろした「FM東京のうた」も最高だ。事の経緯はウィキペディアに詳しく書かれているのでそれを転載すると、“フジテレビの音楽番組「ヒットスタジオR&N」に出演した際、予定されていた曲目は「タイマーズのテーマ」→「偽善者」→「デイドリーム・ビリーバー」→「イモ」の順であったが、「偽善者」の所で突然FM東京を「おマンコ野郎」などと放送禁止用語を用いて罵倒する曲にすり替えて歌った。ゼリーの友人である山口冨士夫の曲がFM東京とFM仙台で放送禁止にされたことと、「COVERS」収録の「サマータイム・ブルース」が放送禁止にされたことに対する反撃だといわれる。東芝EMIに所属するタイマーズの、この行為への報復としてFM東京は発売直前だった松任谷由実のアルバム『LOVE WARS』の曲を一切放送しないということを東芝EMIに通知した。”とのこと。
 何でユーミンを放送禁止にするのか全くワケが分からないが、その事自体 “何でもカンでも放送禁止♪”を逆説的に証明する愚行だということにすら気がつかないアホバカ放送局であることだけは間違いない。それにしてもこの痛快極まりない言葉の速射砲は何度聴いても胸がスカッとする。これこそまさにロックの精神そのものだ。特にエンディングの “ざまぁみやがれぃ!” が最高にカッコイイ(^o^)丿
FM東京のうた


 ついでにもう一つ、タイマーズではないが強烈なのがある。ギターの三宅伸治とのユニットで文字通りゲリラってたアルカイダーズ(笑)だ。メンバーはゼリーとトッピ改め、長間敏(おさまびん)と神田春(かんだはる)、遠くアフガンからはるばる自転車に乗ってやってきたらしい。この「アルカイダーズのテーマ」は「モンキーズのテーマ」をパロッた大麻ネタの「タイマーズのテーマ」の歌詞を一部変えて9.11ネタにしたもので、 “キメたい 燃やしてくれ 貿易センタービル 2つとも~♪” というブラック・ジョークで始まり、 “破壊が大好き いつでもどんな時も 素敵なテロリズム~♪” という超不謹慎なフレーズが連発されるのだが、コレは先の「原発賛成音頭」と同様、清志郎流のユーモアと解釈すべきだろう。まぁその格好といい、カタコトでブチかますおもろいトークといい、タイマーズよりも遥かにエンターテイメント的色彩が濃いユニットだが、それにしても同時多発テロの翌年にこんな曲をラジオのイベントで歌うあたり(←放送ではカットされたらしいが...)もう怖いモノ無しという “ふっきれた感” すら漂う。 RC ではとても出来ないことをタイマーズやアルカイダーズといった身軽なユニットを使ってやりたい放題やっているといった感じなのだ。因みに清...じゃなかった長間敏の命日である5月2日に本物のビン・ラディンが殺されたというのも何か因縁めいたものを感じてしまう。(つづく)
アルカイダーズ

カバーズ / RC サクセション

2011-07-19 | J-Rock/Pop
 「コブラの悩み」が気に入って清志郎熱が再燃したた私が次に買ったのは当然「カバーズ」だった。1986年にソ連のチェルノブイリで起きた原発事故に触発された清志郎は原子力問題を始めとして戦争やテロを題材にした歌詞を洋楽のメロディーに乗せて歌うという替え歌プロテスト・ソング集のアルバムを作ったが、その中に反原発ソングが含まれていたせいで所属レコード会社である東芝EMIが発売を拒否、紆余曲折を経て(←この辺の経緯はウィキペディアに詳しく載ってます...)結局古巣のキティ・レコードから発売されることになったという曰く付きのアルバムである。
 まずは何と言っても今回の清志郎祭りのきっかけとなった⑦「サマータイム・ブルース」である。誰もが知っているロックンロール・クラシックスを反原発ソングに仕立て上げた清志郎の日本語センスには脱帽だ。これは他の曲にも言えることだが、まるでオリジナル曲であるかのように自分の伝えたいことを言い切っているところが凄い。このメロディーに乗せてこれこれこんなメッセージ・ソングの歌詞を書いてくれ、と言われて “あいよ!” と11曲分もそう簡単に書けるものではないだろう。
 歌詞は “東海地震もそこまで来てる~♪” とまさに23年前に今回の原発事故をズバリ予言するかのようなフレーズに始まり、“原子力発電所が建っていく さっぱりわかんねぇ 誰のため?”“それでもテレビは言っている 「日本の原発は安全です」 さっぱりわかんねぇ 根拠がねぇ!” と、日本の原子力行政のダーク・サイドを鋭くえぐるものだ。この歌を繰り返し聴けば聴くほど清志郎の洞察力の凄さを改めて痛感させられる。
 前回貼り付けた映像は DVD「ライヴ帝国」からのもので、この曲のライヴ映像を見れる唯一の市販 DVD だと思うが、今回は88年の年越しライヴ(ロックンロール・バンドスタンド)の貴重な映像を見つけたのでそっちを貼ってみた。 “新宿区からいらっしゃいました仲井戸麗市さん”(笑)が間奏でギターを客席に向け、ガイガー・カウンターを模したと思しきサウンドを響かせる。私的には高井麻巳子がバック・ヴォーカルを付けるスタジオ録音ヴァージョンよりも金子マリのグルーヴィーな歌声が聞けるライヴ・ヴァージョンの方が好きだ。
 とにかくコレはもう単なる替え歌のレベルを軽く超越して完全無欠な清志郎ナンバーに昇華されており、オリジナルのエディー・コクラン、ロック・バンドによるカヴァーの雛形となったザ・フーと並ぶ “サマータイム・ブルース3大名演” の一つと言っていいと思う。
 ⑤「ラヴ・ミー・テンダー」は言わずと知れたプレスリー・ナンバーを “反核ソング” にしたもので、いきなり “何言ってんだ~♪” とダジャレで入るあたりは清志郎の照れ隠しか。しかしそのすぐ後に“ふざけんじゃねぇ 核などいらねぇ~” と一刀両断。“放射能はいらねぇ 牛乳を飲みてぇ” “何やってんだ~ エラそうに 世界の真ん中で♪” なんてまさにトホホな今の日本の状況そのものだし、“巧みな言葉で一般庶民を騙そうとしても ほんの少しばれてる その黒い腹~♪” なんて政治家や電力会社、マスコミの実態を簡潔明瞭に暴いていて痛快そのものだ。
 反核・反原発以外ではプロテスト・ソングの王道とでも言うべき政治・テロ・戦争ネタのナンバーが秀逸だ。特に私が気に入っているのが大韓航空機爆破事件の事を歌った④「シークレット・エージェント・マン」で、イントロは何と金賢姫の肉声入りという凝りようである。日本語詞の内容も実に生々しいもので、政治的には原発よりもこっちの方がヤバイんちゃうの?と思ってしまう。途中でコブシの効いた歌声を聞かせてくれるのは演歌の坂本冬美で、賛否両論あるだろうが私的には曲の展開にメリハリが付いて大正解だと思う。
 ライヴ名盤「コブラの悩み」の1曲目を飾った①「イヴ・オブ・デストラクション」にしても、これまで幾多のアーティスト達にカヴァーされてきたディランの②「ブロウイン・イン・ザ・ウインド」にしても、世界に一つしかない清志郎の “声” によって新たな生命を吹き込まれ、生き生きと躍動している。そして圧巻なのがジョン・レノンの⑪「イマジン」... 日本人でこれほどソウルフルで説得力のあるヴォーカリストが他にいるだろうか? 私としては彼の歌声にただただ聴き入るのみだ。
 ③「バラ・バラ」はレインボウズの1967年のヒット曲を清志郎が巧くもじったもので、ゲスト参加の桑田師匠(←何故か Isuke Kuwatake とクレジットされているが...笑)もノリノリでコーラスしている。ストーンズの⑥「ペイント・イット・ブラック」やアダモの⑨「サン・トワ・マミー」も見事に清志郎の色に染め上げられており、そのどれもが実に新鮮に耳に響いて心地良い。
 当時の清志郎はこの “カバーズ騒動” が相当アタマにきていたようで、その後の「コブラの悩み」やタイマーズでのゲリラ活動へとつながっていくのだが、それは原発の是非云々の問題というよりもむしろ言論の自由を侵されたことに対するやり場のない怒りのように思えてくる。脱原発を訴える清志郎のような人達のストレートな心の叫びを真摯に受け止めずに無視してきた結果が今の福島の、いや、日本の惨状なのだ。人類史上最悪の原発事故を引き起こしてから既に4ヶ月以上が経ったが、今の fuckin' 能なし政府の下では一向に収束する気配がなく、その一方で官民あげての電力不足キャンペーンで “節電” の大合唱、ついにヤフーにまで電力消費量が張り出される始末である。これこそまさに “狭い日本のサマータイム・ブルース” ではないだろうか...

RCサクセション / サマータイム・ブルース ('88.12.31-'89.1.1)


LOVE ME TENDER


SECRET AGENT MAN (金賢姫) .wmv


忌野清志郎/サン・トワ・マミー


忌野清志郎 IMAGINE
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コブラの悩み / RC サクセション

2011-07-15 | J-Rock/Pop
 私がリアルタイムで RCサクセションを聴いて盛り上がっていたのは1980~82年頃までで、清志郎が教授と共演して大ヒットした CMソング「いけないルージュ・マジック」あたりを最後に、私の関心は日本のロックから英米の80'sポップスへと移っていった。これは歌謡曲をも含めた当時の邦楽が私の嗜好から外れていったのに対し、洋楽から大嫌いだったディスコ音楽が姿を消し、メロディアスなポップスが主流になったからだ。そういうワケで80年代は RC も含めて、私はほとんど邦楽を聴かずに過ごした。
 そんな私が再び清志郎に注目したのはそれからずっと後のこと、彼が歌うビートルズ・カヴァー「ヘルプ」を偶然耳にしてすっかり気に入った私はすぐにこの「コブラの悩み」を購入した。その時点では有名な “カバーズ発売中止騒動” のことは何も知らず、ただただ「ヘルプ」目的で買ったのだった。
 この盤を初めて聴いた時は何よりもまずその攻撃的な歌詞にビックリ。アルバム全体に清志郎の怒りが充満しているのだ。それから色々調べて、前作「カバーズ」に反核・反原発ソングが含まれていたことに彼らの所属レコード会社である東芝EMIが難色を示し(←親会社の東芝は原子炉を作っており、そこから圧力がかかったという噂...)、仕方なくレコード会社を変えて発売したということを知った。そりゃあ清志郎も怒るわな。
 このアルバムは “カバーズ騒動” 真っ只中の8月に日比谷野音で行われたコンサートの模様を収録したライヴ盤で、そのせいか清志郎のヴォーカルには鬼気迫るモノが感じられる。演奏の方も70年代前半のストーンズのようなグルーヴを感じさせる素晴らしさで、個人的にはこの時期のRC(清志郎、チャボ、新井田、小林、G2 の5人が揃った公式音源としてはコレが最後やったと思う...)が一番好きだ。
 “本当の事なんか言えな~い 言えばつぶされる♪” と吼えるように歌う②「言論の自由」を始めとして⑦「軽薄なジャーナリスト」、⑪「あきれて物も言えない」といったオリジナル曲の過激な歌詞からも十分に清志郎の怒りが伝わってくるが、このアルバムのハイライトは何と言っても洋楽のメロディーに彼が独自の訳詞をつけて歌うカヴァー曲だと思う。前作「カバーズ」でも明らかなように、自分が伝えたいメッセージをダイレクトに既存の曲に乗せていく一種の替え歌作業において清志郎の天才ぶりは冴え渡っており、その切れ味は日本のロックという概念を軽く超越している。例えるなら、「ラプソディー」でブレイクした頃はフォーミュラ・ニッポンのドライバーだったのが10年経って世界トップ・レベルのF1レーサーに成長したような、そんな感じなのだ。
 まずは私が清志郎に再注目するキッカケとなったビートルズ・カヴァーの④「ヘルプ」だが、 “I need somebody” の所を “あ~兄さん婆さん♪” という見事な語呂合わせで始め、細部にわたってビートルズのオリジナルに忠実なアレンジを施しながらも(←特にバック・コーラスの絡みが絶妙!)訳詞の方は清志郎節が全開で、 “そりゃー10年前は電気のことも それほど恐ろしいことじゃなかった でも10年たって気づいたことは ずる賢い奴らがいるってことさ” と例の反原発ソング騒動にサラリと触れながら “あの子供の頃は心配な時も すべてを忘れて眠れたものさ でも大人になって気づいたことは どこにも逃げ場が無いってことさ” と不条理な現状を嘆き、最後は HELP US! というシンプルなメッセージで締める。 HELP ME! ではなく HELP US! としたところが技アリだ。尚、同タイトルの DVD もあるが若干曲目が違っており、「ヘルプ」は CD のみの収録なので要注意である。
 続く⑤「イヴ・オブ・デストラクション」(邦題:明日なき世界)も圧倒的に素晴らしい。オリジナルはバリー・マクガイアが1965年に歌って大ヒットした全米№1ソングで、「受験生ブルース」で有名な高石友也がそれに訳詞を付けてカヴァーしたものに清志郎がバリバリのロック・アレンジを施したものがコレだ。25年前の古き良きプロテスト・フォーク・ソングが換骨堕胎されて疾走感溢れるカッコ良いロックンロールに生まれ変わっており、初めてこの RC ヴァージョンを聴いた時はそのあまりの違いに同じ曲だとは全く気付かなかった。他人が書いた歌詞でありながらそれを完全に自家薬籠中のモノにした清志郎の説得力抜群の歌声を聴いていると彼のオリジナル曲のように聞こえてしまう。カヴァーがオリジナルを超える瞬間とはこういうのを言うのだろう。個人的には RC の名演ベスト3に入れたいくらい気に入っている超愛聴曲だ。
 ザ・バンドの名演が忘れ難い①「アイ・シャル・ビー・リリースト」のカヴァーも圧巻で、アルバムの1曲目に持ってきたのも十分納得がいく名演だ。この盤はジョン・レノンの「サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ」と同様にまず第一に歌詞を聴かせるアルバムだと思うのだが、ここでも “カバーズ騒動” をストレートに皮肉った歌詞が痛快そのもの。 “頭の悪い奴らが圧力をかけてくる 呆れてモノも言えねぇ またしても物が言えない 権力を振り回す奴らが またワガママを言う 俺を黙らせようとしたが かえって宣伝になってしまったとさ...” のラインなんて最高だし、 “陽はまた昇るだろう 東の島にも” という行を “東の芝”(←つまり東芝EMI のことやね!)と歌うところなんか清志郎のブラック・ユーモア炸裂でオーディエンスからもひときわ大きな歓声が上がっている。もちろん演奏面でも聴き所満載で、チャボの歌心溢れるギター・ソロといい、金子マリのソウルフルなバック・コーラスといい、言うことナシのキラー・チューンだ。
 このアルバムのラストには⑫「君は LOVE ME TENDER を聴いたか?」というわずか30秒のスペシャル・ショート・ヴァージョンが収められており、“君は LOVE ME TENDER を聴いたかい 僕が日本語で歌ってるやつさ あの歌は反...” と尻切れトンボで終わってしまうのだが、当時は何でこんな中途半端なヴァージョンが入ってるのかワケがわからんかった。今ではネット上で完全版が聴けるので、清志郎が言いたかったことが痛いほど伝わってきて激しく胸を打つ。 “それとも原子力発電と核兵器は同じものなのかい?” と、東芝を始めとして清志郎に不当な圧力をかけてきたブタ連中にナイフを突きつけるかのような歌詞が痛快だ。ニコニコ動画にアップされてたヤツを下に貼っときましたので興味のある方はどーぞ。

ヘルプ


RC SUCCESSION - 明日なき世界


忌野清志郎 I Shall Be Released.



Paint It Black / Marie Laforet

2011-07-11 | European Pops
 昨日サムとデイヴがウチへ遊びに来てくれた。2月に続いて2度目なのだが、今回はもうすぐ日本を去る2人のためのフェアウェル・ディナー&ロックンロール・パーティーである。私は「料理の鉄人」の大ファンで、大切なゲストを迎える時はいつも自分でテーマ食材を決めて料理を作ることにしているのだが、前回はベジタリアンの2人のためにトマトを使ったイタリアン・コースにしたので、今回は豆腐をメイン食材にして和のテイストを活かした料理を作ってみた。2人によるとオーストラリアでも料理の鉄人は有名らしく、例のキッチン・スタジアムでの料理バトルが怪しい英語の吹き替え付きで放送されているらしい。2人は審査員のモノマネをしながら盛り上がっていたが(笑)、特に “木綿豆腐のソテー香味ソース・ガーリック乗せ” と “高野豆腐のフライ・BBQソース” を気に入ってくれて、2人から “アイアン・シェフ” の称号を頂いた。次に彼らが再来日した時には得意のメキシカン・ディナーでも作ろうかな(^.^)
 食事が終わるとリスニング・ルームへと移動、前回はレコード棚の整理がええかげんでLPを探しにくそうだったので今回はジャンル枠ごとにラベルを貼り付けておいたのだが(←レコード・ショップみたい!と笑われてしまった...)、これで見やすくなったのかサクサクと LP を引き抜き “ツギ コレ オネガイ” と手渡してくれる。結局約4時間で31曲をフル・ヴォリュームで聴きまくった。プレイリストは以下の通り;
 Rolling Stones / Sympathy For The Devil
 Clash / Bankrobber
 Queen / We Will Rock You
 Bruce Springsteen / Dancing In The Dark
 Bon Jovi / Wanted Dead Or Alive
 Clash / Rudie Can't Fail
 Clash / The Guns Of Brixton
 Clash / Police & Thieves
 Frankie Lymon & The Teenagers / Why Do Fools Fall In Love
 Miles Davis / Milestones
 Guns N' Roses / Patience
 Roxette / The Look
 Roxette / Dangerous
 Beach Boys / California Dreamin'
 Led Zeppelin / No Quarter
 Bobbie Gentry / Fancy
 Sam Cooke / Ol' Man River
 Jackie Wilson / Lonely Teardrops
 Poison / Nothin' But A Good Time
 Poison / Your Mama Don’t Dance
 Marie Laforet / House Of The Rising Sun
 Marie Laforet / Paint It Black
 Beatles / Michelle
 Stevie Ray Vaughan / Manic Depression
 Stevie Ray Vaughan / Little Wing
 Cream / SWLABR
 Doors / The Crystal Ship
 Doors / The End
 Metallica / Enter Sandman
 Led Zeppelin / Communication Breakdown
 Beatles / I Saw Her Standing There
サムのサム・クック好き、デイヴのクラッシュ好きは知っていたが、アラサーの2人にとって80'sポップスが子供時代の懐かしい思い出の曲というのは知らなんだ。特にロクセットの LP を見つけた時のデイヴのコーフンぶりは微笑ましかったし、ポイズンの「オープン・アップ・アンド・セイ・アー」を持ってべろを出して記念撮影するなど、とにかく大はしゃぎだった。
 LP 棚の一角にあるロング・ボックス CD コーナーの中からマリー・ラフォレの 3CD Long Box に興味を示したサムのためにアニマルズの「ハウス・オブ・ザ・ライジング・サン」とストーンズの「ペイント・イット・ブラック」のラフォレ・ヴァージョンをかけたところ、そのユニークな歌声が凄く気に入ったようなので CD-R に焼いて進呈することにした。ラフォレは他にも「サウンド・オブ・サイレンス」、「エル・コンドル・パサ」、「ブロウイン・イン・ザ・ウインド」などの60'sの名曲カヴァーが存在するが、そのどれもが彼女のか細い声で囁くように歌うスタイルによって独特の雰囲気を醸し出しており、そのあたりが英米のロック中心に聴いてきたサムの耳には新鮮に響いたようだ。そんな中で「ペイント・イット・ブラック」は彼女にしては珍しいアップテンポのカヴァーで、所々フランス・ギャルを想わせるようなイエ・イエっぽい歌い方をしているのが面白い。それにしてもフランス語の歌ってどれを聴いても何を歌ってるのかさっぱりワカランなぁ... (>_<)
 11時を回ってデイヴの目がトロ~っとしてきた(笑)ので、最後はメタリカ→ゼッペリン→金パロと、部屋中が鳴動するくらいのラウドなロックンロールの3連発で幕。今回も3人で浴びるほど音楽を聴いてホンマに楽しいひと時だった。彼らが日本を去るのはめちゃくちゃ淋しいが、出会いがあれば別れもあるのが人生である。一旦オーストラリアへ帰った後、来年にはロンドンへ移住する予定の2人、“絶対にイギリスへ遊びに来てや。アビー・ロードへ案内するから (^o^)丿” と言ってくれた。いつになるかワカランけど、この続きをビートルズの母国でやるのもエエかもしれない...

Marie Laforet - Marie Douceur Marie Colere (Paint in Black)


Marie Laforet - House of the rising sun


Marie Laforet - La Voix Du Silence / "Le Laureat" Movie dub


【おまけ】デイヴが着ていたスター・ウォーズのTシャツを見て思い出したんですけど、こんなオモロイ動画を見つけました。ギャングの喧嘩が一転...大爆笑! こういうユーモア大好きです(^o^)丿
Gang Fight! Knocked out!
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Rhapsody / RC サクセション

2011-07-08 | J-Rock/Pop
 親友のサムが仕事の契約満了に伴い、この7月でオーストラリアへ帰ることになった。数ヶ月前からわかっていたことだが、いざお別れとなると実に淋しい。彼女とはすぐに意気投合し、仕事そっちのけでおバカな話で盛り上がった(←寒いギャグを連発してゴミんな~)ものだった。週に一度のマジック・チューズデイに彼女とブチかますロッケンロー談義はサイコーに楽しかったし、何よりもサム&デイヴと出会っていなかったら今年に入ってからのアナログ盤大フィーバーもなかったワケだから、それはつまり「マイ・ジェネレイション」も、「ディスラエリ・ギアーズ」も、「ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン」も、「ベガーズ・バンケット」も、オリジ盤を買えていなかったことになる。大袈裟ではなく、彼らが私の音楽人生に与えた影響は計り知れなく大きい。去年転勤になった時は遠距離通勤がイヤでイヤで仕方なかったが、そのおかげでこの二人と出会えたのだから、今では転勤してホンマによかったと思っている。
 デイヴが見つけたランキン・タクシーの反原発ソングを先月ここで取り上げた時、おまけとして貼り付けたのが、私がプロテスト・ソングの最高峰と信ずる RCサクセションの「サマータイム・ブルース」だった。するとサムが早速それに反応、YouTube で何曲か聴いてすぐにキヨシローのソウルを鋭く見抜くあたりはさすがという他ない。音楽に国境なしというが、まさに言葉の壁を乗り越えてキヨシローの歌声が彼女の心を捉えたのだ。
 早いモノで彼が亡くなってもう2年になる。ミュージシャンとしてだけでなく一人の人間として大好きだった彼の死を中々受け入れられなかったのだが、そろそろ自分の気持ちに区切りを付けなければならない。ということで “ザ・フー祭り” はしばらく中断して “サム&デイヴお別れ特集” としてキヨシローを取り上げることにした。
 私がキヨシローの歌を初めて聴いたのは高校3年の時だった。当時アメリカで蔓延していた軽薄ディスコ・ミュージックを蛇蝎のように嫌っていた私はリアルタイムの新譜としてイギリスのニュー・ウェイヴや日本のロックをよく聴いていたが、そんな時にたまたまラジオから流れてきたのがRCサクセションの「雨あがりの夜空に」だった。いきなり炸裂するソリッドなギター・リフに続いてスピーカーから飛び出してきたキヨシローの歌声に耳が吸い付き、そのグルーヴィーなノリに圧倒されたのを覚えている。洋邦を問わず、キヨシロー以前にキヨシローのような声はなかったし、キヨシローのように歌ったシンガーもいなかった。とにかく一度聴いたら忘れられないようなソウルフルな歌声で、その吸引力抜群のヴォーカル・スタイルはまさに “ザ・ワン・アンド・オンリー” だった。
 この曲は歌詞もめっちゃユニークで面白い。何かの事情(マンスリー・デイか???)で彼女と愛し合えない男のもどかしさを、車が故障してドライヴに行けないというストーリーに重ね合わせたダブル・ミーニングなのだが、“バッテリーはビンビンだぜ!” とか “お前に付いてるラジオ 感度最高” といったキワドイ表現を随所に散りばめながら、愛車を想う気持ちと好きな女性を思う男の気持ちを絶妙に表現した傑作だと思う。特に “こんな夜にお前に乗れないなんて” “こんな夜に発車(発射)できないなんて” とキメるところなんか、言葉を自由自在に操る天才詩人キヨシローの魅力が全開だ。Eストリート・バンドのクラレンス・クレモンズみたいなブ厚いサックスのサウンドもカッコイイ(^o^)丿 コレを聴いて彼らの大ファンになった私が最初に買ったレコードがこの「ラプソディー」だった。
 これは1980年4月に久保講堂で行われたギグを収録したライヴ・アルバムで、当時のバンドの勢いが見事に音盤に刻み込むことに成功している。彼らは私の大好きなザ・フーやラモーンズと同じくライヴで真価を発揮するバンドであり、その圧倒的なノリの前ではとても冷静ではいられない。特に①「よォーこそ」なんて、こんなカッコ良いメンバー紹介曲を私は他に知らないし、コレに続くストレートアヘッドな②「エネルギー・oh・エネルギー」もめっちゃパワフルだ。
 スローな③「ラプソディー」、イントロの最中にキヨシローが発する “エ~ッ?” がめっちゃエエ味出してる④「ボスしけてるぜ」、「悲しみのアンジー」を裏返しにした様な⑤「エンジェル」を間に挟み、後半は再びアップテンポな曲が続く。凄まじいまでのグルーヴに身悶えしてしまう⑥「ブン・ブン・ブン」、スタジオ録音ヴァージョンよりも数段パワーアップした⑦「雨あがりの夜空に」、“日本の有名なロックンロール... ワン、トゥー、ワン、トゥー、さん、しっ!” という有名な MC で始まるライヴの定番曲⑧「上を向いて歩こう」(←意表を突いたロックなアレンジがタマラン!)、そして疾走感溢れる⑨「キモチE」まで、たたみかけるように加速していく流れが素晴らしい。
 このアルバムはオリジナル盤発売から25年経った2005年に「ラプソディー・ネイキッド」という完全版がリリースされたが、ザ・フーの「ライヴ・アット・リーズ」と同じく、勢いで一気呵成に聴かせるこのオリジナル版の編集がベストだと私は思っている。それにしても RC のライヴはホンマにカッコエエなぁ... (≧▽≦)

RCサクセション よォーこそ


RCサクセション 雨上がりの夜空に(1980) )))STEREO(((


RCサクセション 上を向いて歩こう
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Live at the Royal Albert Hall / The Who

2011-07-05 | Rolling Stones / The Who
 5月の半ばから何となく始めた “ザ・フー祭り” も何やかんやでもう7月なのだが、懲りずにまだ継続中である。前回はケニー・ジョーンズ時代のライヴ盤「フーズ・ラスト」を取り上げたので、今日はザック時代のライヴ盤「ライヴ・アット・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール」でいってみたい。
 彼らは1983年に一旦解散した後、ライヴ・エイド(1985)や結成25周年記念ツアー(1989)で再結成しているが、他の多くのバンドのリユニオンと同様にザ・フーの場合も、メンバーが何となく集まってハイ弾きましたハイ叩きましたという同窓会的なプレイに終始しているように聞こえ、見ていて迫ってくるものはあまり感じられなかった。ザ・フーとしての必然性が感じられず、バンドとしての集中力は拡散し、演奏のテンションも低いように思えたのだ。
 しかし1996年にハイド・パークで行われたプリンス・トラスト・コンサートではドラマーにリンゴ・スターの息子であるザック・スターキーを起用、かつてのザ・フーの片鱗を感じさせるパフォーマンスを見せつけた。その後1999年の再々結成コンサート・ツアーでは大編成を止めてよりロック向きの5ピース・バンドに切りかえ、ピートもアコギから再びエレキに持ち替えてエネルギッシュなプレイを披露、ザ・フー本来のタイトで引き締まったバンド・サウンドが戻ってきた。結局このツアーは2000年末まで続けられたのだが、その最終日にあたる11月27日のライヴの模様を収めたのがこの「ライヴ・アット・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール」である。
 恥ずかしながら私はこの CD を買うのをずっと後回しにしていて、他のザ・フー盤をほとんど聴き尽くした後で “そー言えばコレまだ聴いてへんかったなぁ...” ぐらいの軽いノリであまり期待もせずに買ったのだが、実際に聴いてみてビックリ(゜o゜) めちゃくちゃエエのである。そのハイテンションな演奏は1980年代以降では抜きん出ているのではないか。マネージャーのビル・カービシュリーと同じく、私がザ・フーのステージで最も感銘を受けたのは以前取り上げた「コンサート・フォー・ニューヨーク・シティ」(2002)なのだが、彼らはこのツアーでの好調ぶりをそのまま維持してニューヨークに乗り込み、あの神懸かったパフォーマンスが生まれたのだと思う。
 このようにザ・フーが完全復活したのは一にも二にもザックのダイナミックなプレイによるところが大きい。これだけガンガンとプッシュされたらピートも難聴を理由にアコギでお茶を濁しているわけにはいかないだろうし、同じリズム隊のジョンも本気になってスーパー・プレイを連発、ここに躍動感溢れる21世紀のザ・フー・サウンドが生み出されたのだ。
 ディスク1では①「アイ・キャント・エクスプレイン」や③「ピンボール・ウィザード」、⑤「マイ・ワイフ」から⑩「フー・アー・ユー」、⑪「ババ・オライリー」に至るまで、耳慣れたライヴの定番曲がザックの躍動感溢れるドラミングによって息を吹き返している。そんな中で注目はそれまでのライヴ盤には収録されていなかった②「エニーウェイ・エニーハウ・エニーウェア」、⑥「ザ・キッズ・アー・オールライト」、⑦「メアリー・アン・ウィズ・ザ・シェイキー・ハンド」、⑧「バーゲン」といった楽曲群。特に間奏のドラム・ソロが重要な②はこれまであまりライヴで演奏されてこなかったように思うのだが、彼らがこの曲をセット・リストに加える気になったのは、キース直系のスリリングなプレイを身上とするザックを得たからだと思う。 又、1st アルバムに入っていた甘口ビート・ポップスの⑥もシャキシャキした演奏で旨口ロックに仕上げている。大好きな⑦⑧をザック・ヴァージョンで聴ける幸せもこの盤でしか味わえない(^o^)丿
 このように良いことずくめに思えるこのライヴ盤なのだが、私的にどうしても許容できない点が一つある。ディスク2の半数以上のトラックでしゃしゃり出てくるゲスト陣がめちゃくちゃ鬱陶しいのだ。ブライアン・アダムス、ポール・ウェラー、エディー・ヴェダー、ノエル・ギャラガー、ケリー・ジョーンズといった連中が “スペシャル・ゲスト” として登場し、あろうことかヴォーカルまで取っている。図々しいにも程があるというか、厚顔無恥も甚だしい。例えるならロネッツやスプリームズのリユニオン・ライヴでレディー・ガガやビヨンセが歌うようなモンである(←極端な例えだが...)。ファンはザ・フーが聴きたくて身銭を切るのであり、こんな若手連中の下手くそな歌が目当てでこの盤を買う人なんてそんなにいないと思うのだが...(>_<) 私はこいつらが入ったトラックはすべて飛ばして余計な不純物の混じらない真正ザ・フーの演奏だけを CD-R に入れて楽しんでいる。こーいう時にパソコンってホンマに便利やね。
 とまぁこのようにあまり好きになれないディスク2だが、そんな中では⑦「ユー・ベター・ユー・ベット」、⑧「ザ・リアル・ミー」、⑨「5:15」と続く流れがめっちゃ好き。特に⑨で聴けるジョン・エントウィッスルの驚異のベース・プレイは圧巻で、涼しい顔して物凄い速弾きをブチかましている。リード・ベースの真髄ここにありと言えるトラックだ。
 尚、このCDにはジョン・エントウィッスルにとって最後のステージとなった2002年2月の同所でのライヴ4曲を収録したボーナス・ディスクが付いており、不要なゲスト参加の数トラックを除けば(←しつこい!)ファンとしてはお買い得感溢れる3枚組ライヴ盤なのだ。

The Who Live at The Royal Albert Hall - Can´t Explain


John Entwistle bass solo


The Who at The Royal Albert Hall - The Real Me

Who's Last / The Who

2011-07-02 | Rolling Stones / The Who
 ザ・フーはそのサウンドの屋台骨を支えていたキース・ムーンが1978年に急死した後、元スモール・フェイセズのケニー・ジョーンズを後任ドラマーに迎えて再出発を図った。このあたりはボンゾの死をもって活動を停止したレッド・ゼッペリンとは好対照だが、とにかく彼らは “続ける” ことを選んだのだ。しかし残念なことにシュアーなプレイを信条とするケニーのスタイルはザ・フーとは合わなかった。それはケニー時代のスタジオ録音アルバム「フェイス・ダンシズ」と「イッツ・ハード」を聴けば明らかで、キース時代の諸作に比べれば気の抜けたビールというか、決定的な何かが欠けていた。
 キースの死後、バンドへの熱意を失いつつあったピートはそんな状態でバンドを続けていくことに限界を感じたのか、ついに1983年にザ・フーの解散を発表、当時の北米ツアーがそのまま “サヨナラ・ライヴ” となったのだが、その時の模様を収録したライヴ・アルバムが1984年の末に出たこの2枚組「フーズ・ラスト」である。
 このアルバムの収録曲はすべてキース時代の作品(英Track、米MCA)で占められており、ワーナー・ブラザーズから発売されたケニー在籍時代の2枚のアルバムからの曲が1曲も入っていないのだが、それは多分このライヴ盤が MCA レコードからリリースされたからだろう。いずれにせよ、いきなり①「マイ・ジェネレイション」から始まって②「アイ・キャント・エクスプレイン」、③「サブスティテュート」と続く流れはまさに “ライヴ音源によるベスト盤” 的な色合いの濃い選曲であり、私としては大歓迎。しかし好事魔多しと言うべきか、私が買った1枚物の輸入盤CDは情けないぐらいに薄っぺらいサウンドで、私の中では “「フーズ・ラスト」はイマイチ元気がない” という刷り込みがなされてしまった。
 しかし今年に入って “ザ・フー・アナログ盤フィーバー” に突入した私は、あのユニオン・ジャックが燃えているジャケットを LP サイズで欲しくなったのと、CD はスカスカでもアナログ盤ならエエ音するかもという好奇心から、UK オリジナルの MCA レーベル盤を£4.99でゲット。このあたりの盤になるとほぼ無競争で買えるのが嬉しい。支払いを済ませてからちょうど1週間でイギリスからブツが到着、スモール・パケットから取り出した2枚組 LP の “燃えさかるユニオン・ジャック” のジャケットはインパクト抜群だ。
 肝心の音の方だが、コレがもう手持ちの旧規格ヘタレ CD とは異次元のリッチなアナログ・サウンドで、イマイチ面白味に欠けると思っていたケニーのドラミングはキースやザックには及ばないまでも、ライヴということもあってか彼にしてはかなり頑張って叩いているように思う。さすがに⑬「ウォント・ゲット・フールド・アゲイン」なんかはキースやザックの爆裂ドラムが恋しくなるが、それ以外のトラックに関しては大きな不満はない。一旦音楽が始まってしまえばドラマー比較などという悠長なことを考えていられないくらいの圧倒的な説得力を持って迫ってくるところがライヴで最高の魅力を発揮するザ・フーのザ・フーたる所以だろう。
 とにかく息をもつかせぬ名曲のつるべ打ちといった感のあるこのアルバム、①②③の60年代大ヒット3連発に続くのは④「ビハインド・ブルー・アイズ」、⑤「ババ・オライリー」、⑥「ボリス・ザ・スパイダー」、⑦「フー・アー・ユー」、⑧「ピンボール・ウィザード」、⑨「シー・ミー・フィール・ミー」と、彼らのライヴには欠かせない大定番曲がズラリと並んでいる。この期に及んで “ドラムスが云々...” というのは素直に音楽を楽しめない野暮な人達のタワゴトに聞こえてしまうぐらいの充実した内容だ。
 ⑩「ラヴ・レイン・オーヴァー・ミー」で一旦クール・ダウンした後、⑪「ロング・リヴ・ロック」とその⑫「リプリーズ」の連続攻撃でオーディエンスは一気にヒートアップ。「ジョニー・ビー・グッド」を裏返しにしたようなメロディー展開が楽しいこの曲は、映画「キッズ・アー・オールライト」のエンディングでも実に印象的に使われていたが、ライヴ・ヴァージョンでは更にテンポが上げられ、ノリノリのロックンロールに仕上がっている。私がこのアルバム中で一番好きなトラックだ。
 LP の D面にあたるラスト4曲も凄まじい。⑭「ドクター・ジミー」、⑮「マジック・バス」、そして彼らの十八番である⑯「サマータイム・ブルース」と、フィナーレへ向けて一気に加速していき、トドメが何とあの⑰「ツイスト・アンド・シャウト」である。「ツイスト・アンド・シャウト」といえばもちろんビートルズのヴァージョンがスタンダード化しているが、ザ・フーも例のコーラスで始まるビートルズ・アレンジで演っている。
 このサヨナラ・ツアーの模様は「ライヴ・フロム・トロント」という DVD でも見れるのだが、ベースを弾きながらヴォーカルを取るジョン・エントウィッスルの歌い方はもろにジョン・レノンを想わせるし、身を寄せ合って1本のマイクでバック・コーラスを付けるピートとロジャーの姿はポールとジョージそのものだ。オーディエンスはもう大盛り上がりである。やっぱりロックのライヴはこうでなくっちゃ(^.^)  尚、その DVD では「5:15」でロジャーが振り回すマイクのコードがピートのギター・シールドに絡まってしまい、ロジャーが焦って必死にほどこうとするシーンが微笑ましくて好きなのだが、画質が VHS 3倍モード並みに悪いのが玉にキズか...(>_<)
 キース・ムーンが叩いていないということでファンの間では何となく黙殺されているように感じられるこのアルバムは、ドラムスが大暴れしない分、むしろ “聴きやすいザ・フー・ヒット・パレード・ライヴ” として気軽に楽しめる1枚と言えるのではないだろうか。ザ・フーの歴史はここで幕を閉じる... はずだった。

The Who-Long Live Rock


The Who - Twist & Shout - (Live)
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