shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「Please Please Me」金パロ・モノの 1G/1G盤ゲット\(^o^)/

2019-07-30 | The Beatles
 1週間ほど前だったか、いつものようにB-SELSでSさんと各国盤聴き比べをやって大いに盛り上がっていた時のこと、「Please Please Me」の5ヶ国分を聴き終えて残すはUK盤のみとなったところで時間がきてしまったので、私が “次回は2ndプレスの金パロと4thプレスの黄パロを持ってくるのでじっくりと聴き比べましょか。” と言うと、Sさんが “盤質極上の「Please Please Me」3rdプレスが店にあるんですけど、黄パロなのに音はかなり金パロ2ndプレスに近いと思うので、どうせなら3枚聴き比べませんか?” と仰った。その時は深く考えもせずに “おぉ、それは面白そうですやん。これで1stプレス盤があれば最高なんですけどねぇ。版権者名が Dick James表記の1stプレスって実はまだ1回も聴いたことがないんですよ... きっとえげつない音してるんでしょーね...” とかなんとか言いながらB-SELSを後にした。
 しかし家に帰って一息入れた後、ほんの好奇心から(←いつもこのパターンでアリ地獄にハマるよな...)Dick James表記の「Please Please Me」をeBayで検索してみたところ、何と3枚も出品されており、しかもその中の1枚が “THE ULTIMATE PLEASE PLEASE ME BLACK & GOLD 1G 1G STAMPERS!” となっているではないか! Dick James表記の1stプレスというだけでも凄いのに、更にスタンパーが 1G/1G とは... (≧▽≦)
 ここでもう一度レコード作りの工程を整理しておくと、①まずマスター・テープからカッティング・マシンでラッカー盤凹が製作されるのだが、この時にデッドワックスの6時方向(つまりセンター・レーベルの下側)にマトリクス№が刻まれ、ポーキーさんやらラドウィックさんといったカッティング・エンジニアの名前が刻まれたりもする。②次にこのラッカー盤を鋳型としてメタル・マスター凸が作られ、③再びそれを鋳型としてメタル・マザー凹が作られる。一番最初に作られたマザーはデッドワックスの9時方向(つまりセンター・レーベルの左側)に1が刻まれるというワケだ。④更にそこからスタンパー凸が作られ、⑤それを使ってビニールにプレス凹するのだが、デッドワックスの3時方向(つまりセンター・レーベルの右側)に各レコード会社独自のコードを使って何枚目のスタンパーかを刻印してある。例えばビートルズならEMIコードでG⇒1, R⇒2, A⇒3, M⇒4, O⇒5, P⇒6, H⇒7, L⇒8, T⇒9, D⇒0、ストーンズならDeccaコードでB⇒1, U⇒2, C⇒3, K⇒4, I⇒5, N⇒6, G⇒7, H⇒8, A⇒9, M⇒0 という風に。つまり簡単に言えばビートルズなら 1Gが、ストーンズなら 1Bが理論上は最も鮮度の高い音がするということになる。
 で、ここに出品されている「Please Please Me」はマトリクス枝番が -1Nでマザー/スタンパー№が 1G/1G ということだから、初版の鋳型(つまりマトリクス1)から最初に作られたメタルマザーから起こした1枚目のスタンパーでプレスされたレコードということであり、それはつまりこれ以上音の鮮度が高い「Please Please Me」は地球上に存在しえないということを意味しているのだ。これはえらいこっちゃである。
 先月「SGT Pepper's」のニンバス盤を手に入れた時に “残すは金パロのステレオ盤のみ” みたいなことを書いた覚えがあるが、モノラルの 1G/1G となると話は別だ。いやむしろ、私の音の好みから言えば、稀少価値のせいで鬼のようなプレミア価格がついた金パロ・ステレオ盤にウン十万円をつぎ込むよりも1G/1Gモノラルの轟音盤をその数分の一の値段で手に入れる方が断然理にかなっている。 “This is very rare and only comes around a couple of times in a lifetime.”(めちゃくちゃレア。生涯に2~3度巡り合えるかどうか。)という商品説明もまんざら大袈裟とは言い切れないくらいの究極の逸品なのだ。ということで私はこのレコードがどうしても欲しくなり、ウォッチリストに入れて監視し始めた。
 スタート価格は£500(=約67,000円)で6日間のオークション、終了日時は月曜の早朝5時である。私は “あと3日... あと2日...” と指折り数えながら締め切りを待った。特に終了まで1日を切った日曜日はこのレコードのことが気になって何も手につかない有り様で、数十分おきに入札状況をチェックしていたのだが、直前まで£550/4bidsのままで膠着状態が続いていた。ただ、商品ページには17 Watchers と表示されており、それはつまりこのまま平穏無事に終わるはずがないという、いわば嵐の予兆を意味していた。その日は早朝決戦に備えていつもよりも早めに布団に入ったのだが、コーフンして中々寝付けず、結局2時間ほどウトウトしただけで3時過ぎに目が覚め、二度寝を恐れた私は顔を洗ってコンタクトを入れ、臨戦態勢に入った。
 そしていよいよその時は来た。午前5時1分の締め切り時刻の3秒前に全身全霊を込めた£1,001(←我ながら姑息やな... 笑)のビッドを敢行、価格表示が緑の文字で£820に変わった時は思わず “よっしゃぁ!!!” と叫んでしまったくらい大コーフンしてしまった。これでまたまた8月もレコード断食を余儀なくされそうだが、SGTのニンバス盤とPPMの1G盤があればもうそれだけで十分だ(^o^)丿
 その日はそのまま超ハイテンションで出勤して同僚に気味悪がられたりいじられたりしたのだが、一番面白かったのがレイちゃん(※)という同僚のアメリカ人女性の反応で、“I've got the holy grail!!!”(究極のお宝を手に入れたで!)と言うと、大笑いしながら “I heard it before. It's today's holy grail, isn't it? Tomorrow you'll find another holy grail, right?” (それ前にも聞いたわ。それって「今日のお宝」で、どうせまた明日には別のお宝見つけて大騒ぎするんでしょ?)と言われてしまった。う~ん、こやつ、見抜いておるわ(笑)
 ということで、レコードがイギリスから届き次第 B-SELS に持ち込んで「Please Please Me」1stプレスから4thプレスまでの4枚聴き比べをやって、このブログで報告しますんで興味のある方はお楽しみに...(^.^)

(※)レイちゃんは私が去年ポールのライヴに行ってきた時も “You're on cloud nine.”(最高に幸せそうな顔してるね)と喜んでくれたほどの仲良しなのだが、この7月をもって任期満了で帰国することになった。あぁ寂しい...(T_T)  今日最後にお別れの手紙をもらったのだが、そこには “I'm going to miss that sparkle in your eyes when you get excited about the Beatles.”(ビートルズのことでコーフンしてるあなたの目の輝きが見れなくなるは寂しいわ)と書かれていた。

「A Hard Day's Night」各国盤バトルロイヤル②

2019-07-28 | The Beatles
前回に引き続き、「A Hard Day's Night」聴き比べのパート2... UK盤 vs DK盤の頂上対決が凄い(≧▽≦)

④デンマーク盤(3N/3N-A, 173g)
 私:おぉ、これこれ、このガツン!とくる音。これこそまさに私の求めてる「A Hard Day's Night」ですわ。
 Sさん:いきなりきましたね。100点満点の音ですよ。
 私:これは優勝候補筆頭ですわ。何ていうか、胸がトキメキますね。
 Sさん:でも映画ではこんなエエ音は鳴ってませんでしたけどね(笑) 
 私:それにしても素晴らしい音ですね。
 Sさん:各楽器の音の重なりが目に見えるようです。
 私:A④「I'm Happy Just To Dance With You」もイントロからガンガンきますね。
 Sさん:ギターの音がとてもよく聞こえます。
 私:A⑤「And I Love Her」、全部の楽器がベストの音で、ベストのバランスで鳴ってる感じがします。
 Sさん:クラベスの音が生々しい...
 私:A⑦「Can't Buy Me Love」の圧がスゴイですね。めっちゃ気持ちイイ! やっぱりビートルズはこーでなくっちゃ(^o^)丿
 Sさん:凄いですねェ、デンマーク。王者やなぁ...
 私:B面もブレませんな。B①「Any Time At All」なんて、これがジョン・レノンや、参ったか!みたいな凄い音です。もう分析的に聴くのがアホらしくなってきました(笑) (しばらくの間2人とも黙って聴き入る...)
 Sさん:今気が付いたんですが、B面は独自マトでテープを使ってるんですね。UKマザーのB面がアカンかったんでしょうか?
 私:じゃあ今からそれを確かめましょう。

⑤UK盤(3N/3N, 165g)
 私:文句なしですね。
 Sさん:A面に関しては基本的にデンマーク盤と同じ音ですね。それにしてもエエ音してますよね、このA③「If I Fell」のギター。まぁ敢えて言えばほんの僅かだけデンマーク盤が勝ってるように思いますが。
 私:どのあたりが?
 Sさん:音の響きです。僅差ですけどね。でもこのUK盤も素晴らしい音ですよ。やっぱり盤の状態がすごく良いのが効いてるんとちゃいますか? このレコードでこんなにキレイなの、滅多に見ませんもん。
 私:確かにそうですね。買った時に自分でも “何でこんなにピカピカやねん?” とビックリしたくらいですから...(笑)
 Sさん:これだけ若いスタンパーの盤で状態が極上というのも珍しいですね。
 私:ホンマにラッキーでしたわ(笑)
 Sさん:ものすごく力強い、UKモノの長所がよく出ていますね。理想的な音です。
 私:B⑤「You Can't Do That」なんか楽器の鳴りのバランスがパーフェクトじゃないスか?
 Sさん:倍音がすごく良く出ていますね。これまでのところ、UKとデンマークが突出してるように思います。

⑥スウェーデン盤(3N/3N, 163g)
 Sさん:これはUKやデンマークほど尖ってない、良く言えばマイルドな音ですね。
 私:デンマーク、UKと聴いてきてコレを聴くと何かホッとしますね。聴き疲れしない音というか、音の角が丸くなってる感じがします。
 Sさん:A⑦「Can't Buy Me Love」のバックのギターも少し弱い気がします。こーやって聴き比べをするとほんのちょっとした差でも物足りなさを感じてしまうんですよね。
 私:B①「Any Time At All」イントロのバシン!に殺気が感じられませんね。
 Sさん:コレはコレで十分良い音なんですけど、さっきのを聴いちゃうとねぇ...
 私:B③「Things We Said Today」のイントロのギターの音もマイルドですね。
 Sさん:コーヒーにミルクを入れたような感じ、とでも言いましょうか...
 私:でもこっちの方が好き、という人もいるでしょうね。ちょうど「With The Beatles」のマト7N盤みたいな感じかな。私はガチガチの轟音派ですけど(笑)
 Sさん:いやぁ、ホントに優しい音ですね。ギターのストローク一つとってもすごく優しい音です。
 私:まさに “ジェントル・カット” ですね。

と、ここで私がデンマークとUKの2強で決着をつけませんかと提案、Sさんも大賛成で、再びデンマーク盤がターンテーブルに...
 Sさん:(A①が始まって数秒もたたないうちに...)もう4人が走ってますよ(笑)
 私:グイグイきますね。さっきのスウェーデン盤にはこの圧力がなかった。
 Sさん:ポールの声が活き活きとしてますね。「A Hard Day's Night」の映画をかぶりつきで見てるみたいです。
 私:世界中を虜にしたビートルズのエネルギーをレコード盤に見事に封じ込めてます。
 Sさん:A②のベースの音が太いですし、A③のバックのギターの響きもすごく良いです。
 私:スローな曲でも力強さを感じますね。
 Sさん:とにかく音が一杯詰まってるレコードですね。こんな良い音で聴いたことがないです。A面はさっき聴いたUK盤の上を行ってると思います。
 私:ヴォーカルがすごくクリアーですよね。A⑥の爽快感もハンパないです。
 Sさん:曲があっという間に終わりますね(笑)
 私:A⑦も最初っから力強い。とにかく押しが強いです。
 Sさん:いやぁ~、素晴らしい!
 私:映画の躍動感を見事に再現してますね。
 Sさん:B面はA面に比べると少し落ちるかな。
 私:B①アタマのバシン!はUK盤の方が凄いですよ。B面に関してはUK盤に一日の長があるように思いますね。
 Sさん:(デンマーク盤のB③までいったところで今度はUK盤のB①をかける...)確かにB②のエッジの強さもUK盤の方が勝ってる気がしますね。
 私: B面はUK盤の方がダイナミックに聞こえます。
 Sさん:いやぁまったく、UK盤のB面は隙がありませんね。疾走感もUKがやや上かな。
 私:結論としてはA面はデンマーク盤が、B面はUK盤がそれぞれ僅差で上回ってる... ということでいいでしょうか。
 Sさん:その通りだと思います。

ということで今回の「A Hard Day's Night」頂上対決は、先日行われたウインブルドン決勝のジョコビッチ対フェデラーのような(?)突出した2強による超ハイレベルの戦いとなった。どちらの盤も甲乙付け難いスーパーウルトラ高音質だったが、敢えて言うなら倍音派(?)のSさんはデンマークに、轟音派(笑)の私はUKに1票という感じで DKUK両者譲らずの引き分けとしたいと思う。あ~楽しかった(^o^)丿

「A Hard Day's Night」各国盤バトルロイヤル①

2019-07-26 | The Beatles

 単なる思い付きで各国盤の聴き比べをやった「With The Beatles」、前回が面白かったので柳の下のドジョウを狙った「Help!」、引っ込みがつかなくなり(笑)こーなったらオリジナル・アルバム全部やったれとシリーズ化を決意した「Beatles For Sale」に続く“ビートルズの各国盤バトルロイヤル・シリーズ” 第4弾は「A Hard Day's Night」です。

①イタリア盤(3N/3N, 164g)
 Sさん:おぉ、これはイタリアの元気が戻りましたね。
 私:“戻った” というか、時系列で言うと、前回聴いた「For Sale」よりもこっちが先なので、イタリアでは「With The Beatles」「A Hard Day's Night」と順調にきて、何故か「For Sale」だけがイマイチで、続く「Help!」で完全復活した... という流れになりますね。それにしてもエエ音です。やっぱり「A Hard Day's Night」はこうでなくっちゃ!
 Sさん:楽器の響きもいいですね。前回の「For Sale」よりも低音の響きがよく出てるんで気持ち良く聞こえるんでしょう。ただ、「With The Beatles」や「Help!」のようなイタリアの独自性はないですね。基本的にUKっぽい音作りです。
 私:B面はA面よりも音が大きくて迫力が出てますね。押し出し感がハンパないです。
 Sさん:B②「I'll Cry Instead」、良いですね! ベースがよぉ仕事してるのが分かります。
 私:ベース・ラインがハッキリと聞こえますね。思わずニヤついてしまいそうなエエ音です。
 Sさん:B面の方が良かったですね。一体何が違うんやろ...??? A面は内周に行くに従ってだんだん迫力が無くなっていった感じです。もう一度A⑦「Can't Buy Me Love」を聴いてみましょか... (A⑦をかける)... やっぱりB面の方が音がシャープですね。
 私:A面も決して悪くはないんだけれど、B面に比べるとキラキラ感が足りませんね。

②フランス盤(154g)
 私:(A①「A Hard Day's Night」イントロの“ジャ~ン♪” を聴いて)コレは強烈!
 Sさん:やっぱり音デカいですね(笑) 「For Sale」と同じ路線ですね。聴いてて楽しくなります。
 私:このアルバムも「For Sale」の時と同じジョン大好きエンジニアですかね? アルバム全体が “John Lennon & The Beatles” になってます(笑)
 Sさん:独自のジャケット写真がエエですよね。
 私:色使いも素晴らしいですねぇ... さすがはフランス! おぉ、このA④「I'm Happy Just To Dance With You」、高域をシンバル、中域をリズムギター、低域をベースの音がしっかりと空間を埋め尽くしてて、まるで音の壁がドバーッと目の前に迫ってくるような感じがすごく良いです。
 Sさん:そうですね。ジャケットも良いし、これは優勝候補でしょう。やっぱり独自路線がエエのかな...
 私:A⑦「Can't Buy Me Love」もさっきのイタリア盤よりもこっちの方が全然良いですね。シンバルの音がスゴイです。
 Sさん:目一杯切ってる感じですね。「With The Beatles」UKラウドカット盤の「Roll Over Beethoven」を思い出します。これはちょっとやりすぎかな...(笑)
 私:ただ、リズムギターもベースもよく入ってるからシンバルがコレでも気持ち良く聴けるんですよね。UKでは針飛びとか考えますけど、イタリアやフランスみたいなラテン系はそんなこと全然気にせぇへん感じですね。
 Sさん: B面も元気ですね。
 私:全然ブレませんね。
 Sさん:このエンジニア、やっぱりジョンが好きなんやな...(笑)
 私:B①「Any Time At All」なんかもう凄いの一言ですわ。
 Sさん:B④「When I Get Home」もかなりエエんちゃいますか?
 私:ジョン好きにはタマランでしょう。B⑤「You Can't Do That」のカウベルの音がめっちゃ小っちゃいですね。その分ジョンのヴォーカルが大きく入ってる(笑) 他のレコードと楽器の音のバランスがちゃいますね。
 Sさん:完全に “ジョンの声ありき” のアルバムになってますね。
 私:B⑥「I'll Be Back」なんてジョンのヴォーカルと伴奏のアコギが見事な主従関係になってます。
 Sさん:他のレコードならもっとアコギが大きく聞こえますもんね。

③ニュージーランド盤(159g)
 Sさん:A①「A Hard Day's Night」、すごく疾走感がありますね。
 私:低域の低いところを潔くスパッと切り捨てて中域のスピード感をとった感じですね。映画のサントラとしてはこっちが正解でしょう。
 Sさん:A②「I Should Have Known Better」、映画の中でトランプやってるのはこっちの音ですね。フランス盤の音じゃない。
 私:フランス盤の音やったら列車が揺れてトランプなんかできませんわ(笑)
 Sさん:コレは万人にウケそうな音ですね。ラウドカットに行くか、こういう聴きやすい音に行くか、中々悩ましいところです。
 私:すごく丁寧に作ってありますね。ヴォリューム上げたらもっとエエ感じになるかな? ヴォリューム上げてみます?... あぁコレの方がエエですわ。
 Sさん:A④「I'm Happy Just To Dance With You」、独特の疾走感がたまりませんね。A⑤「And I Love Her」のアコギの音もこっちの方がエエでしょ。
 私:ヴォーカルとバックの演奏のバランスがエエですね。どこまでいっても破綻しない音、という感じがします。ただ、気になったのはどの曲もアタマの入りが安全運転で、徐々に盛り上げていくように聞こえるところです。
 Sさん:決して最初からドーン!ときませんね。
 私:B面、ちょっと音が小さいですね。A面の方が良かったです。
 Sさん:A面は高級感のある音でしたけど、B面は何か安っぽくなっちゃいましたね。
 私:B⑥「I'll Be Back」、ジョンの声が痩せ細ってません?
 Sさん:そうそう、A面の方がもっと良い声してました。
 私:もう一度A①を... あぁ、コレもう全然ちゃいますやん、音の厚みが! コレがジョンの声ですよ。
 Sさん:この疾走感がB面にはありません。A面には色んな音が一杯詰まってますね。
 私:独自マトの音はハマると凄いけど、ハズすと悲惨ですね。それをAB両面で体現したのがこのNZ盤と言えるんじゃないでしょうか。エンジニアの人、ひょっとするとB面切った日の朝に嫁はんと喧嘩でもしたんちゃいますか?(笑) (つづく)

「Beatles For Sale」各国盤バトルロイヤル②

2019-07-21 | The Beatles
 今回は「Beatles For Sale」各国盤バトルロイヤルの後半戦。UKマザーはニュージーランドとイタリアで、フランスとブラジルは独自マトだ。前回の北欧3強対決も面白かったが、今回も中々個性的な音で、Sさんと二人で大いに盛り上がった(^o^)丿

⑤ニュージーランド盤(4N/3N, 167g)
 Sさん:良い音ですね。まさにUKの音です。
 私:音圧は普通ですが、しっかり作り込んだ良い音という感じですね。手堅いというか...
 Sさん:UKマザーの各国盤は4N/3Nの組み合わせが多いみたいですが、そのせいか 3NのB面の方が音圧は高く感じます。
 私:「Eight Days A Week」の例のベース、ボンボンボンボン~♪ が気持ち良く聞こえるのもそのせいでしょうね。
 Sさん:「I Don't Want To Spoil The Party」も「What You're Doing」もすごく良い音してますね。バックの音がとてもよく聞こえます。
 私:やっぱりB面の方が良いですね。
 Sさん:細かい所を聴き比べてみたいのでもう一度ノルウェー盤をかけてみてもいいですか?
 私:どーぞどーぞ。
 Sさん:うわぁ~、やっぱりコレが一番ですわ。
 私:ズウゥ~ンと響きますね。低音の、もひとつ下の帯域まで音が出ている感じです。
 Sさん:別テイク聴いてるみたいですよ。
 私:ギターを縦横無尽に弾きまくってる感じが最高ですね。「For Sale」のB面がこれほどド派手に鳴り響くノルウェー盤はやっぱり別格ですよ。

⑥フランス盤(145g)
 Sさん:これが例の高いヤツですか... ジャケットが良いですね。
 私:はい、横野さんがTVで紹介されてたのを見て欲しくたまらなくなり、方々探して買っちゃいました。TVでは20~30万とか言ってましたがいくら何でもアレはちょっと盛り過ぎ。仙台の某レコ屋でも十数万円ぐらいしますが、ネットで根気強く探せば10万円以下でありますよ。私のは4万円弱でした。コレはもう100%ジャケ買いです(笑)
 Sさん:音デカいですね。「Help!」の時と同じ元気な音です。
 私:60年代前半のフランス・モノラル盤は大体ラウド傾向にありますね。
 Sさん:ヴォーカルがグイグイ前に出てきます。
 私:この「I'm A Loser」なんてまるで “John Lennon & The Beatles” という感じですよ(笑) 聴いてて楽しくなってくる、めっちゃ直球勝負の音ですね。
 Sさん:さすがフランス、我が道を行きますね(笑)
 私:倍音とか響きとか細かいことを気にせず、とにかくガンガン攻める...(笑) ある意味、モノラルにピッタリの発想と言えますね。まさに “火の玉ストレート” な音。
 Sさん:モノラル・サウンドのド真ん中を外してませんよね。
 私:これこれ、この「Rock & Roll Music」... この曲が一番よく鳴る音作りですね。
 Sさん:ジョンのヴォーカルが凄いですよ、これ。ジョンが目立ち過ぎです(笑)
 私:ジョン好きにはたまらんレコードですね。これなんかモロに “John Lennon & The Beatles”!!!
 Sさん:これだけヴォーカルが映えるレコードもそうないと思いますよ(笑)
 私:まさにエンターテインメントの極致!
 Sさん:エンジニアが完全にジョンのバンドやと思い込んでますね。ポールが脇役みたいな扱いです。
 私:うわぁ、この「Eight Days A Week」なんかもうジョンの独壇場ですやん! 
 Sさん:やっぱりこのエンジニア、ジョンのファンですよ(笑) バックの演奏は “鳴っとったらエエ” みたいな感じでハンド・クラッピングもおとなしい... ガチの “ヴォーカル・アルバム” ですね。
 私:ジョンのヴォーカル全振りアルバム...(笑)
 Sさん:「I Don't Want To Spoil The Party」間奏のギター・ソロのおとなしいこと...(笑) 
 私:それに引き換え、ジョンの一人二重唱の大きいこと...(笑)
 Sさん:これ、もうノルウェー盤とは別のレコードに聞こえちゃいますね。
 私:ジョンと他の3人との差別化が凄いです。
 Sさん:ベースも小さいですし、ポールの存在感が希薄ですね。
 私:いやぁ、ホンマに色んな意味でおもろいレコードですわ。今回の「For Sale」はノルウェー盤の優勝で異存ないですけど、このフランス盤には是非とも審査員特別賞をあげたいですね(笑)

⑦イタリア盤(4N/4N, 153g)
 私:さぁ、次はSさんの大好きな赤いレーベルですよ(笑)
 Sさん:カッコエエなぁ... (≧▽≦)
 私:どうですか、この音? 「Help!」ではイタリア盤がブッチギリの優勝でしたが...
 Sさん:(しばらく沈黙した後で)う~ん、もうちょっと何か欲しいなぁ... まぁさっきのフランス盤の後やから余計にそう感じるのかもしれませんが...
 私:この「Kansas City」、ちょっとフェイド・アウトが早過ぎやしませんか?
 Sさん:そうですね... 何か変でした(笑)
 私:「With The Beatles」や「Help!」で聴けた、あのイタリア盤の音じゃないですね。
 Sさん:基本的にUKの音なんですけど何かもの足りない... 倍音がちょっと足りないのかな。
 私:「Eight Days A Week」は重低音の低いところが出てないですね。
 Sさん:高いところもイマイチ出てないから音に艶がない...
 私:ノルウェー盤はまるで演奏してる姿が見えるようでしたし、フランス盤ではジョンの唾が飛んできそうで思わず顔をよけずにはいられませんでしたが、このイタリア盤はただそこでレコードが鳴ってるって感じです。音が平面的なんですよね。立体感がない。
 Sさん:ちょっと元気がないですね。迫力不足というか...
 私:音がスピーカーから飛び出してこないんです。前回の優勝者がまさかの... という、よくある展開ですね。

⑧ブラジル盤(141g)
 私:最後はコレで笑わしてもらいましょか。
 Sさん:確か以前に一度ココで一緒に聴きましたね。
 私:はい、初期のブラジル盤を5枚ほど一気聴きして思い切りズッコケた記憶があります。今回は “色物枠” でのエントリー(笑)
 Sさん:ジャケットで「In Italy」と思わせといて中身は「For Sale」... しかも曲順もメチャクチャで、A①「Rock & Roll Music」A②「Kansas City」とド派手な曲から順に並んでるのが笑えます。当然A面ラストは一番地味な「I'll Follow The Sun」(笑) B面ラストが「Words Of Love」で終わる「For Sale」っていうのもある意味すごいです。
 私:まったく、何考えてるんでしょうね、ブラジル人は。音の方は... う~ん、なんか昔のカセットデッキで鳴らしてるみたいな音ですね。良く言えば素朴な音。ハッキリ言って倍音がどうの、という次元じゃない。
 Sさん:でもイタリア盤よりは元気ありますよ。フランス盤と比べても、少なくともポールはこっちの方が喜ぶと思います(笑)
 私:ジョン以外の3人は、でしょ?(笑)
 Sさん:まぁブラジル人エンジニアがビートルズというバンドの音楽をちゃんと理解できてなかったのかもですけど...(笑) 一応黒っぽい音にはなってますけど、少なくともカントリーのフィーリングは無いですね。何か農園で作業してる時のBGMみたいな感じです。
 私:そりゃあボサノバの国ですからね。ジョアン・ジルベルトのカントリー&ウエスタンなんて想像できないでしょ(笑) まぁこのレコードはハイファイとは別世界の音ですけど、何か味があってコレはコレで許せるなぁ。もしも66年の武道館公演で開演前のプレ・ショウ・ミュージックがあったとしたら多分こんな音で鳴ってたんちゃうかなぁ、って思います。
 Sさん:なるほどねぇ。何となくわかる気がします。このB①「Eight Days A Week」、演奏は遠いですけど手拍子は近いです。
 私:ベースもショボイなぁ... まるでシンセで出してるような音ですね。
 Sさん:B②「Honey Don't」は逆に演奏が近いですね。さっきよりベースがグイグイきますしギターも響きわてたってます。
 私:このメチャクチャなバラつき具合がブラジル盤(笑)
 Sさん:「I Don't Want To Spoil The Party」なんて、パーティーがとっても楽しそうですよ。哀愁はほとんどないですけど...(笑)
 私:Bラスの「Words Of Love」もノーテンキに明るいというか、カラッとしててエエんとちゃいますか。エンジニア、多分何も考えずに切ってますよ、コレ。
 Sさん:明るい「For Sale」っていうのもねぇ... まぁ最初からそれを狙ってこういう曲順にしたのかな?
 私:鋭い分析ですね。このブラジル盤はビートルマニアが酒の肴にして盛り上がるのにはピッタリの1枚と言えるのではないでしょうか。

ということで2回にわたってお届けした「Beatles For Sale」各国盤バトルロイヤルは如何でしたでしょうか? 文中に書いたように、ウィナーは文句なしにノルウェー盤で特別賞がフランス盤ということで満場一致(←2人しかいてへんけど...)。それにしてもいかに音が違うとはいえ1枚のアルバムを8回続けて聴いても全然飽きるどころかまだまだ聴きたいと思わせてくれるビートルズの音楽って改めて凄いなぁと思いました。

「Beatles For Sale」各国盤バトルロイヤル①

2019-07-18 | The Beatles
 当ブログのビートルズの各国盤バトルロイヤル・シリーズ(←いつの間にかしれっとシリーズ化www)は本体にソロを含めてその時の気分次第でテーマ・アルバムを決めているのだが、前回は中期ビートルズの「Help!」だったので今回も同じく中期の傑作「Beatles For Sale」にしようと思い立ち、警報明けで人の少なそうな平日の夕方を狙って B-SELS を急襲(笑)した。持っていったのはUK盤、デンマーク盤、スウェーデン盤、ノルウェー盤、ニュージーランド盤、イタリア盤、フランス盤、ブラジル盤の8枚で、3時間かそこらで全部を聴くのは到底不可能なため、とりあえずUKマザーの北欧3国と本家本元のUK盤の計4枚を聴き比べ、残りは後日に回すことにした。

①デンマーク盤(4N/3N, 166g)
 私:それじゃあまず「With The Beatles」チャンピオン(笑)のデンマーク盤からいきましょか。
 Sさん:おぉ、いきなりコレは文句ナシの良い音ですね。
 私:いやぁ、おっしゃる通り、文句のつけようがありませんね。
 Sさん:思い描いていた通りの音です。
 私:何も言わずに聴き入ってしまいますよね。
 Sさん:B面は更に音が良いですね。かなり細かい音まで聞こえて、音楽が豊かに響きます。
 私:「Help!」とは違って音のまとめ方が上手いですよね。さすがはチャンピオン!(笑)

②ノルウェー盤(4N/3N, 160g)
 Sさん:カッコ良いレーベルですね。パープル・パーロフォンですか。
 私:アナログ盤はレーベル・デザインを目でも楽しめるのが良いですね。
 Sさん:さっきのデンマーク盤よりも音が大きいですね。しかも音がクッキリしていて、まるで薄皮が剥がれたように聞こえます。
 私:ダイナミックな音ですよね。前へグイグイくる圧力が凄いです。
 Sさん:同じUKマザーなのにこっちの方が音が大きいって不思議ですね。プレスの違いとか色々あるんでしょうか。色んな音が聞こえますよね。
 私:「Mr. Moonlight」のドラムの響きが実にリアルです...(≧▽≦)
 Sさん:「Kansas City」のこの余韻は素晴らしい!!! こんなの他の盤では聴いたことがないですよ。まるで歌ってるポールの表情が目に浮かぶようです。コーラスも活き活きしてますね。楽しそうな感じがすごく伝わってきます。
(A面が終わり、盤をひっくり返しながらしみじみと)このレーベル・デザイン、ホンマにカッコエエなぁ...
 私:音の鮮度が高いですね。55年前のレコードとは思えませんわ。「Eight Days A Week」のベースがめっちゃよぉ聞こえますね。
 Sさん:コレ凄いですよ。さっきのデンマーク盤も良かったですが、コレは更にその上をいってますね。
 私:F1の予選でいきなり良いタイム出してトップに立ったのにすぐ後ろから来た車が更に凄いタイムでコースレコード更新したような、そんな感じですかね。とにかくハイレベルな戦いです。それにしてもコレ、手拍子がめっちゃクリアですね。それに「Words Of Love」のベースがこんなによく聞こえるなんて... (≧▽≦)
 Sさん:ギターの音が生々しいですし、エンディング部分も最後までコーラスがキレイに残ってますね。
 私:この「Honey Don't」、何だか違うレコードを聴いてるみたいです。
 Sさん:リンゴの声がよく伸びてるんですよ。リンゴってこんなに歌上手かったっけって感じです。
 私:「Every Little Thing」のティンパニの響きがたまりませんねぇ。
 Sさん:音が残るのが長いので余韻が凄く気持ちいいんですよ。それと「I Don't Want To Spoil The party」の間奏のギターですけど、何ですか、このパワーは! もうコレが優勝でエエんとちゃいますか(笑)
 私:私も同じことを言おうと思ってましてん(大爆笑) まぁせっかく持ってきたんで一応他のも聴いてみてくださいな(^.^)

③スウェーデン盤(3N/4N, 146g)
 Sさん:コレも音大きいですね。
 私:高域が良く伸びてるし、低域も豊かです。
 Sさん:結構きますね。ベースもしっかりしてるし。
 私:スウェーデン盤らしい華やいだ感じがしますね。
 Sさん:この前の「With The Beatles」もこんな感じの良い音でしたね。
 私:「Rock & Roll Music」のピアノのカン高い音が超刺激的!!!
 Sさん:かなりの高音質ですね。ただ、「Kansas City」はさっきのノルウェー盤の方が良かったです。色んなものが一杯詰まった豊かな音でした。
 私:B面にいきましょう... う~ん、B面はA面と比べるとちょっと落ちるかな。
 Sさん:さっきのノルウェー盤は「Eight Days A Week」のココのベースのボンボンボンボン~♪っていう4拍子のとこが凄かったですけど、コレはそこんところがちょっとイマイチかな。
 私:コレ単体で聴けば全然不満はないんですけど、さっきのノルウェー盤と比べてしまうとどうしても物足りませんね。
 Sさん:A面よりも少しだけヴォーカルとコーラスが引っ込んだかな? もう一盛り倍音成分が足りない感じですね。
 私:今のところ、ノルウェー>デンマーク≧スウェーデンですかね。とにかくこの北欧3国、めっちゃレベル高いです。これはもうUK盤と直接対決させるしかないでしょう。

④UK盤(3N/3N, 165g)
 Sさん:さすがは本家本元、コレは立派な音ですわ。
 私:自分で持ってきて言うのも何ですけど、盤質がめちゃくちゃ良いですね(笑)
 Sさん:確かにこのレコードは盤質に左右される要素が多いですね。カッティングやプレス技術の実力をシビアに暴き出すレコードです。これがもし「Please Please Me」や「With The Beatles」やったらモノのド迫力だけで感動させてしまうところがありますけど、この「Beatles For Sale」には色んな要素が詰まってますから総合力が問われるんですね。
 私:なるほど... その視点は私には無かったです。確かに言われてみればその通りですね。私なんかいつも「With The Beatles」のラウドカット聴いて “んほぉ~” ってヨガってるだけでしたもん(笑)
 Sさん:「Words Of Love」のこのギターの音がさっきのスウェーデン盤では倍音が後退してましたけど、やっぱりUK盤はそのあたりがしっかりしてます。
 私:コーラス・ハーモニーの素晴らしさに改めて感心させられますね。演奏も、ヴォーカルも、コーラスも、どこをとっても欠点のない完全無欠な音作りですよ。
 Sさん:でも私としてはノルウェー盤が一番です。あの音はホントに凄い!!!

と2人で大いに盛り上がったところで聴き比べパート1は時間切れ終了。独自マトの盤を含む残りの4枚は日を改めて行うことにした。それにしてもこのバトルロイヤル企画、段々大ごとになってきたな... (つづく)

「Help!」各国盤バトルロイヤル②

2019-07-14 | The Beatles
前回に引き続き「Beatles For Sale」各国盤バトルロイヤルの後半戦をどーぞ。

④フランス盤(マト枝番なし, 174g)
 私:これは独自マトです。
 Sさん:この前の「With The Beatles」もそうでしたが、フランス盤は音がデカい(笑)
 私:これ、今まで聴いたUKマザーの3枚よりも元気があって気持ちイイです。私は眠たいUKの音よりもこっちの方が断然好きですね。
 Sさん:歪む直前のぎりぎりまで音圧を上げて切ってますよ。「Ticket To Ride」なんてちょっと危なかったくらいです。
 私:ドスンドスンとくるし、今のところ一番ですね。
 Sさん:「It's Only Love」の裏のギターがとてもよく鳴ってますね。「I've Just Seen A Face」のギター・ストロークの厚みも凄いですし、「Dizzy Miss Lizzy」のジョンのヴォーカルも良いじゃないですか!
 私:めっちゃワイルドですね。とにかくジョンのテンションが高い(笑) 
 Sさん:これエエなぁ... こんな楽しい「Help!」は初めてですよ。まさかフランス盤がこれほど良いとは思いませんでした。
 私:買った時はジャケットが狙いで音にはそれほど期待してなかったんですよ。何たってフランス盤ですから...(笑) でもこれ聴くとUK盤よりも明らかに良いですね。まるでオリックスや阪神がソフトバンクや巨人に勝って優勝したかのような(笑)聴き比べ下剋上です。とにかく前回の仏盤「With The Beatles」の汚名返上ですね。

⑤イタリア盤(T1/T1, 148g)
 Sさん:おぉ~、これは凄い! フランス盤の更に上をいってますね。これは目ぇ覚めますわ!
 私:でしょ?(笑)
 Sさん:「Help!」に足りひんかったんはこの音ですよ。これこそ私が求めてた「Help!」です!(といきなり大コーフン)
 私:私の知る限りこれが最強の「Help!」です。「Help!」って本来はキラキラしたポップな内容の楽しいアルバムじゃないスか。だからこんな元気な音じゃないとダメなんですよ。
 Sさん:おぉ~、「The Night Before」のヴォーカルが飛び出してきますよね。UK盤はフォーキーな曲に音を合わせてるから「Help!」や「The Night Before」が犠牲になってる感じなんですよ。
 私:このイタリア盤の「Help!」ってどんな曲調のナンバーでも文句なしに楽しめる、まさに「Help!」の理想の音作りですわ。
 Sさん:この「Ticket To Ride」なんてまさにヘビーメタルでしょ! バックでロニー・ジェイムズ・ディオに歌わせたいくらいです(笑)
 私:この「Act Naturally」、もう文句のつけようのない完璧なサウンドですね。
 Sさん:「It's Only Love」はさっきのフランス盤も裏のギターの音が良かったですが、これはもっと良いですね。
 私:クリアーでクリスプな音ですよね。他の盤とはジョンの声が全然違います。
 Sさん:「I've Just Seen A Face」の圧力が凄い。リズムがグイグイきますね。エンディングのギターの音もキレイですよ。
 私:音もデカいし、それでいてめっちゃクリアーやし... どないしたらあの眠たい「Help!」がこんなキリッとした良い音になるのか謎ですね。イタリア盤恐るべしですわ。

⑥UK盤(2/2, 161g)
 最後にUK盤のシングルとアルバムを聴いて終えるはずだったが、時間がかなり遅くなったので「Ticket To Ride」のシングル盤を聴いたところでお開きに。ただしこの1曲だけでも UKマザーの盤と独自マトのイタリア盤の音作りの違いがハッキリ出ており(←UK盤は音圧の高い45回転シングルであっても端正な音で、イタリア盤のはっちゃけた音とは本質的に違う...)、私もSさんも “全部聴かなくても十分。” という感じで、アルバム「Help!」に関してはイタリア盤の音が断トツに素晴らしいという結論に達した。

 尚、家に帰ってから再度 UK盤とイタリア盤をじっくりと聴き比べてみたが、何度聴いても圧倒的にイタリア盤の勝ち。「アナログ・ミステリー・ツアー」でも “全アルバム中で最も音が眠い” と酷評されていたUKモノ盤「Help!」の音作りがイマイチ好きになれないビートルズ・ファンにはこのイタリア盤「Aiuto!」が超オススメだ。

「Help!」各国盤バトルロイヤル①

2019-07-12 | The Beatles
 何週間か前に「With The Beatles」、そしてつい最近も「McCartney」の各国盤を B-SELS に持ち込んで聴き比べをやってみたところ、アルバム単体で聴いていた時には気付かなかったような新たな発見がいくつもあってめっちゃ楽しかったので他のアルバムでもやってやろうと思い立ち、どのアルバムにしようか考えていた時に届いたのが「Help!」のインド盤。このレコードは既に持っていたのだが、盤の溝の状態が悪くて音がビリつくのでVG++の盤を見つけて最近買い直したのだ。届いた盤の状態は予想よりも良い EX+レベルだったので一安心(←買い直した盤に傷とかあったら凹むでしょ?)。せっかくなので手持ちの「Help!」モノラル盤の中から厳選した UK盤、デンマーク盤、ニュージーランド盤、フランス盤、イタリア盤と共に B-SELS へ持って行って聴き比べをやることにした。ということで今日はビートルズ各国盤バトルロイヤル・シリーズ第2弾の「Help!」である。

①インド盤 (2/2, 149g)
 私:昨日の晩にコニシの木工用ボンドでパックしたのをそのまま持って来ました。今剥がしますね。[ペリペリ...] レコ屋でパック剥がすの初めてですわ(笑)
 Sさん:盤の状態が良いですね。
 私:ピッカピカでっせ(笑)
 Sさん:おっ、これはちょっと面白い音してますね。同じUKマザーでもUK盤とはかなり違います。
 私:ドラムがおとなしいですね。ベースも奥に引っ込んでますし。
 Sさん:ちょっとマイルドな音ですよね。クリアさに欠けるというか... でもこの音の出方がインド盤なんですよ。
 私:寸止めというか、まだ発展途上の音という感じがします。これが音のスイートスポットを捉えると例の「Imagine」や「McCartney」みたいな極上サウンドになるんでしょうね。

②デンマーク盤 (2/2, 178g)
 Sさん:インドより元気ですね。
 私:タンバリンの存在感大幅アップ(笑)
 Sさん:インド盤で埋もれていた音が一斉に前に出てきた感じですね。
 私:インド盤もそうでしたが、B面の方が音がシャキッとしてますね。「Help!」のUKマザーに共通する特徴なんでしょうか?
 Sさん:確かに... A面をこの音で聴きたかったですね。とにかくこれはかなり良いですよ。迫力がさっきのインド盤とはエライ違いです。シングル盤にも負けへんのとちゃいますか?
 私:じゃあ、これと比べてみましょう。(と言って持参した「Dizzy Miss Lizzy」の輸出用UKシングルをかけてもらう...)
 私:これはエグイっすね。
 Sさん:さすがにシングル盤には負けましたね(笑)

③ニュージーランド盤 (2/2, 169g)
 Sさん:う~ん、悪くはないんですけども...
 私:音はそれなりに出てはいるんですけど、デンマーク盤を聴いてしまった後ではちょっと...
 Sさん:インド盤よりは良いですけど、これではまだ迫力不足ですね。
 私:タンバリンがデンマーク盤よりも後ろで鳴ってます。
 Sさん:B面は元気ですよ。
 私:やっぱり「Help!」のUKマザー盤のA面はアカンのですよ、きっと。「アナログ・ミステリー・ツアー」の本にも書いてありましたけど、こうやってまとめ聴きするとよくわかりますね。  (つづく)

「McCartney」各国盤バトルロイヤル

2019-07-07 | Paul McCartney
 つい最近ポールの1stソロ・アルバム「McCartney」のニュージーランド盤を手に入れた。Discogsでたったの£4.99という安さだったので何も考えずにオーダーしたのだが、届いたレコードをジャケットから取り出してビックリ(゜o゜)  A面後半部分の盤面がまるで何らかの薬品で腐食したかのように白く光っており(←シンナーみたいなモンで拭いたっぽい... アホか!)、実際に鳴らしてみてもシャーッというノイズがひどくて「Junk」なんか悲惨そのものだ。一体これのどこがVG+やねん!!!と怒りがこみ上げてくるが、Discogsでの買い物はギャンブルみたいなモンなので運が悪かったと諦めるしかない(>_<)
 ただ、A面後半は完全にアウトだが、薬(?)に侵されていない部分は中々エエ雰囲気で鳴っている。倍音成分が豊かなのか音の響きがキレイなのだ。う~ん、惜しいなぁ(>_<) これは是非とも盤質の良いレコードで全曲聴いてみたいぞ... と思い早速「McCartney」のNZ盤をネットで検索してみたところ、 MucisStackという通販サイトに1枚だけ出ていたのを見つけて £5.99で購入。届いたレコードは前のとは違ってコーティング無しのジャケットだったのでどうやら2ndプレスのようだが(←たぶん73年頃のプレス)、盤質は問題なしでホッと胸をなで下ろす。実際にスピーカーから出てきた音も1stプレスと遜色のないもので、NZ盤も中々やりよるのぉ… という感じだ。
 私はこの美音「McCartney」をSさんにも聴いてもらおうと思ったのだが(←毎回このパターンやな…)、せっかくの機会だからどうせなら UK盤やUS盤、インド盤と併せていつものようにバトルロイヤル形式で聴き比べをした方が面白いと考え、私は手持ちの「McCartney」を総動員してB-SELSに持って行った。

①ニュージーランド盤(1stプレス:2U/2U, 152g、2ndプレス:2U/2U, 145g))
 Sさん:A面前半のノンダメージ部分は結構エエんちゃいますか?
 私:そうなんですよ。盤が傷んでるA面後半部分はノイズが酷いですが、それ以外のところが良かったんで一度聴いてもらおうと思って持ってきたんです。
 Sさん:キレイな音です。ただ、B面はA面より落ちるというか、A面の良さが消えてしまってますね。
 私:悪くはないんだけれど、ごく普通のサウンドですね。まるでA面の魔法が解けちゃったような... A面とB面で何故こんなに差があるのか不思議です。それじゃあ次は2ndプレスを聴いてみましょか。
 Sさん:音の傾向はさっき聴いた1stプレスと同じですが、1stプレスはB面がA面ほど良くなかったのに対し、この2ndプレスはB面もA面と同じハイ・クオリティーをキープしてますね。
 私:不思議ですよね~、同じマトの 2ndプレスの方が音が良いなんて。しかもこっちの方が軽いっちゅーのに...
 Sさん:アコギの曲なんか、本当にキレイな音で鳴ってますよね。
 私:音圧はそれほどでもないですが、音のキメ細やかさが抜群で、高域の伸びが気持ちイイです。コレは買って正解でした。

②UK盤(2U/1U, 141g)
 私:ひょえ~(≧▽≦)  自分で持ってきて言うのも何ですが、めっちゃエエ音ですね(笑)
 Sさん:これがUKの音ですよ。いやぁ~、ホントに素晴らしい!
 私:やっぱりUKの1Uはモノが違いますね。
 Sさん:これがポールの意図した音なんですよね。
 私:おっしゃる通りでございます(笑) こ・れ・が「マッカートニー」!!!

③US盤(両面とも Z14 STERLING LH/RL, 139g)
 私:UK盤の後に続けてコレを聴くとめっちゃ面白いですね。
 Sさん:音にガッツがありますね。
 私:UK盤こそが王道ですが、このガンガンくる感じも捨て難いですよ。
 Sさん:まさしく “ロックな「マッカートニー」”。
 私:このレコードは “ロック魂溢れるアルバム” というワケでもないのにコレですからね... さすがはボブ・ラドウィッグというか... エンターテインメントの国、アメリカならではですわ(笑)

④インド盤(2UT1/2UT1, 161g)
 Sさん:おぉ、これはイイですねぇ~。どこを切ってもチューブカットの音ですよ。いわゆる “現代的な音” の真逆を行ってますね。
 私:中域にエネルギーが集中してますね。聴いててめっちゃ気持ちの良い音です。アナログ・レコード好きにはタマラン音ですよ、コレ。
 Sさん:まるでもう1台プレイヤーを用意してディレーをかけたような奥行きのあるサウンドですね。
 私:チューブカットの一番美味しいところが存分に味わえる音作りですよね。
 Sさん:「Junk」のベースなんて、そこまでやるか!みたいな太さで入ってますよね。何とも言えない余韻が残ります。
 私:例の「Imagine」A面もそうでしたが、インド盤って時々こういう凄いのにブチ当たるからやめられません(笑)
 Sさん:コレ、本当にいいですねぇ~。興奮して今晩寝られませんわ... (と満面の笑顔)
 私:また体内時計を狂わせちゃいますかね?(笑)

ということで、当初はNZ盤を中心に聴くつもりだったのだが、たまたま比較対象用に持っていったインド盤にすっかり主役の座を奪われた感じで、その日は遅くまで Sさんと二人でインド盤「McCartney」を大音量で聴きまくったのだった。これがもしもインド盤単体で聴いていたとしたら、果たしてここまで盛り上がったかどうか... 同じ曲で定点観測的に複数の盤を比較する聴き比べはこういう新発見があるから面白い。とにかく今回の「McCartney」バトルロイヤルは聴いた盤それぞれに独自の長所があって、珍しく “ガッカリ盤” が1枚も無いという、非常にレベルの高い聴き比べだった。さて、次はどのレコードで聴き比べをやろうかな?

「Wings Over America」各国盤バトルロイヤル②

2019-07-02 | Paul McCartney
 「Wings Over America」といえば半年前にマト枝番がオール1Uの UK盤を手に入れたばかりだが、それと同時期にたまたま eBayでオーストラリア盤のDJコピーを見つけ、ジャケット不良による$18という安値に目が眩み衝動買い(笑)。立て続けにUS、UK、OZと手に入れた私は調子に乗ってオーストラリア直近のライバル(?)であるニュージーランド盤も入手し($20)、いつか聴き比べをしてやろうと機会をうかがっていた。
 今回のスウェーデン盤入手で私の頭の中に浮かんだのが「Rock 'n' Roll」、「With The Beatles」で味をしめた各国盤バトルロイヤルである。前回取り上げたオランダ盤は予選落ち(笑)ということで、エントリーはニュージーランド、オーストラリア、スウェーデンの3ヶ国(←他に目ぼしい国がなかった...)。私は3枚組3セットをえっちらおっちら抱えて B-SELS に持っていった。
 いつものように笑顔で迎えて下さったSさんに “今日は何でしょう?” と尋ねられた私が “「Over America」の3ヶ国盤聴き比べなんてどうでしょう?” と答えると “「Over America」を何種類も持ってる人なんてそんなにいませんよ(^.^)” と大笑いされたが、そう言いながらも楽しそうにターンテーブルにレコードをセットしてくださる後姿を見ていると “あぁこの人は心底ビートルズが好きなんやなぁ... (≧▽≦)” と思えて嬉しくなってくる。さぁ、いよいよ「Wings Over America」3ヶ国盤聴き比べのスタートだ。

①ニュージーランド盤
 Sさん:ほぉ~、シルバー・パーロフォンの「Over America」ですか。これは珍しいですね。
 私:はい、珍しいと思います。
 Sさん:ドラムの音がいいですね。
 私:ええ、でもこれ音圧低くないですか? NZ盤って時々こーゆー音の小さい盤があるので要注意なんです。「アナログ・ミステリー・ツアー」の本では “NZ盤=高音質” みたいな書き方してありますが、ハズレも結構ありますよ。
 Sさん:なるほど。それと微妙にエコーがかかってて、それがポールのヴォーカルを台なしにしている気がします。
 私:オランダ盤ほど酷くはないですが、ライヴ盤の音作りに失敗したという感じですね。
 Sさん:これを聴いているとライヴ盤の音作りってホント難しいなぁと思います。

②オーストラリア盤
 Sさん:こっちは NZ盤よりはマシですね。
 私:ええ、でもあくまでも “マシ” というレベルであって満足のいく音じゃない。UK盤はおろか US盤にすら負けてると思います。
 Sさん:やっぱり UK盤の音を聴いてしまうとこの OZ盤は中途半端に聞こえますよね。US盤はライヴの楽しさが伝わってくるという点である程度成功していると思いますが。
 私:オセアニア系の「Over America」はダメ、という結論でいいでしょう。

③スウェーデン盤
 私:おぉ、コレめっちゃ良いじゃないですか!
 Sさん:ラウドカットですね(笑) ひょっとして UKの1U盤よりも音圧高くないですか?
 私:はい、今まで私が聴いてきた「Over America」の中で一番迫力があります。
 Sさん:音がデカいだけでなく、音のクオリティーもかなり高いですよ。「ブラックバード」のアコギの音がさっきの NZ盤や OZ盤とは全然違いますもん。
 私:アコギの音に命をかけてるSさんの言葉は重いですね(笑)
 Sさん:それと一番大事なポールのヴォーカルが前に出てくるんです。この「Yesterday」なんかもう最高ですね。
 私:そうなんですよ! 目をつむるとまるでポールが目の前で歌ってくれているような錯覚を覚えるんですよね。NZ盤や OZ盤では全く味わえなかった感動です。それにしても同じライヴ音源でこんなに再生音が違うというのはビックリですね(゜o゜)
 Sさん:あと、ベースの音が太いのも良いです。
 私:よ~くわかります、それ。私はベースの音に命をかけてますから(笑)
 Sさん: UKのオール1U盤も凄かったですが、このスウェーデン盤も負けていませんね。ビックリです。「Lady Madonna」なんか UK盤より上じゃないですか?
 私:この盤の凄さを一言で言うと、ポールのヴォーカルを前面に押し出しながらバックの演奏もしっかりとポールを支えていて、ライヴの躍動感がビンビン伝わってくるところだと思います。
 Sさん:ホントにライヴ盤としての音のバランスが素晴らしいですね。
 私:私としてはスウェーデン盤に「大あっぱれ」ですよ。NZ盤と OZ盤には「喝!」ということで...(笑) 今度は UKオール1U盤とスウェーデン盤で頂上対決でもやりましょか。