shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

【W杯1次リーグ突破記念】クリスタルズ特集

2022-12-03 | Wall Of Sound
 私はサッカーに関してはメッシとロナウドとネイマールぐらいしか知らない超ド素人だが(→正直言うと日本代表の名前は一人も知らんかった...)、ワールドカップの時だけはミーハー根性丸出しで思いっきり盛り上がる。それにしてもまさか日本がドイツとスペインに勝つとは夢にも思わなんだが、テレビを見ていて試合以外で気になったのが CMから試合中継に戻る時に流れる音楽だ。いったんもめんみたいなのが砂漠やスタジアムの上空を飛んでる映像のバックに流れる “タン タ タン タン♪” というあの短いフレーズである。これが私には何度聴いても「Then He Kissed Me」のイントロに聞こえてしまうのだ。最初聴いた時は “何でフィル・スペクター???” と不思議に思ったが、どうやらこれが今回のW杯の公式テーマ曲らしい。
The Official FIFA World Cup Qatar 2022™ Theme | FIFA World Cup 2022 Soundtrack

 というワケで、ワールドカップ1次リーグ突破記念としてクリスタルズの特集をやってみることにした。

①Da Doo Ron Ron(Philles 112)
 クリスタルズ最大のヒット曲は全米1位になった「He's A Rebel」かもしれないが、曲の知名度や出来の良さ、カヴァー人気という点ではこの「Da Doo Ron Ron」の方が数段上だろう。全米チャートの詳細な資料を最近手に入れたので調べてみたら、80⇒54⇒37⇒19⇒13⇒5⇒3位という凄いペースでチャートを駆け昇ってきたものの、レスリー・ゴーアの「It's My Party」(60⇒26⇒9⇒1位ってまるでビートルズみたいな急上昇ぶりやな...)と坂本九の「Sukiyaki」(こっちは3週連続1位!!!)の牙城を崩せなかったということらしい。
 私がこの曲を最初に聴いたのはCD黎明期に買ったオールディーズの怪しげなコンピ盤で、そのキャッチーなメロディーと弾むようなリズムがいっぺんに気に入ったのだが、バックの楽器の音がどこをどう聴いても60'sオールディーズっぽくなかったので色々調べてみたら案の定再録ヴァージョンだった。それからしばらく経ってようやく真正本物ヴァージョンを聴くことができてメデタシメデタシとなった次第。ただ、私の体験上オールディーズの名曲の再録ヴァージョンってほとんどの場合期待ハズレに終わることが多いのだが、この曲に限ってはキラキラしたポップ感全開で迫る再録ヴァージョンの方も捨て難い魅力があって、私は両方とも気に入っている。
Da Doo Ron Ron [日本語訳・英詞付き] ザ・クリスタルズ

Da Doo Ron Ron (Rerecorded)


②Then He Kissed Me(Philles 115)
 今回の特集のきっかけとなったこの曲はクリスタルズの、いや、フィル・スペクターの全楽曲中でも三指に入る愛聴曲。初めて聴いたのはキッスによるカヴァーで、その後も本家クリスタルズを始め、ビーチ・ボーイズやマーサ&ヴァンデラス、レイチェル・スウィートと名カヴァーが目白押しだが、最近特に気に入っているのがスペクター・マニアで知られるブルース・スプリングスティーンが2008年にセントルイスのスコットトレードセンターで行ったライヴのオープニング・ナンバーとして取り上げ、後にライヴ・アーカイヴ・シリーズとしてオフィシャル・リリースされた音源で(←1975年以来33年ぶりにセトリに復活というのが凄い!)、この曲への愛情とリスペクト溢れる神カヴァーだと思う。“名曲は時代を超える” を地で行くこの「Then He Kissed Me」、まさにブラボー!と快哉を叫びたくなるキラー・チューンだ。
The Crystals - Then He Kissed Me (With Lyrics)

Then She Kissed Me (Live at the Scottrade Center, St. Louis, MO - 08/23/08 - Official ...


③I Wonder(London 9852)
 この曲は私がまだフィレス・レーベルのアーティスト達の複雑な事情もフィル・スペクターの鬼畜な性格も知らない音壁初心者だった頃に購入したロネッツのCDに入っているのを聴いて大好きになったもので、私は何の疑いも抱かずにロネッツの曲だとばかり思っていた。ところがその後手に入れたクリスタルズのCDにもこの曲が入っていたので “どういうこっちゃねん?” と訝しがりながらも大好きな曲が色んなヴァージョンで聴けるのが嬉しくてすぐに聴き比べをやってみた。
 ところが流れてきた曲はロネッツのヴァージョンとはかなり違う中途半端なアレンジで、ロネッツ版の完璧なアレンジでクリスタルズ版「I Wonder」が聴けると思っていた私は肩透かしを食ったのだった。クリスタルズ版が先に世に出ていることを考えると、畜生のスペクターがまずクリスタルズを実験台にして試行錯誤中のアレンジを試し、それを更に改良して完成度を高めたアレンジを自分の女であるヴェロニカのロネッツに提供したのではないかと想像を逞しくした。
(54) The Crystals - I Wonder

Ronettes - I Wonder on Mono 1964 Phil Spector Records.


④Little Boy(Philles 119)
 フィル・スペクターは嫁さんのロニーを自宅軟禁状態にしてモラハラしまくるわ、ジョンの「Rock 'n' Roll」のレコーディング・テープを持ち逃げするわ、ラモーンズとのレコーディング時にはムシャクシャすると天井に向かって拳銃をぶっ放すわ、挙句の果てに自宅で女優を射殺して刑務所にぶち込まれ、そこでコロナ感染してあっけなく死んでしまうわと、人としてはまさに絵に描いたような畜生中の畜生なのだが、プロデューサーとしてはレジェンド・クラスの超一流で、彼の “ウォール・オブ・サウンド” は人類音楽史上屈指の大発明と言っても過言ではないと思う。
 スペクターがフィレス・レーベルの総力を結集して作り上げた「A Christmas Gift For You」というクリスマス・アルバムは同レーベルの「Presenting The Ronettes featuring Veronica」と並ぶスーパーウルトラ大名盤だが、クリスタルズのこの「Little Boy」はそんなクリスマス・アルバムのエッセンスを3分にギュッと濃縮還元したかのようなポップな仕上がりになっている。てゆーか、バック・トラックだけ聴いたらほとんど違いがワカランかったりして...(笑)
1964 Crystals - Little Boy

 ということで、ワールドカップ⇒クリスタルズ⇒クリスマスと見事に(?)つながった今回の特集でした。あさってはいよいよベスト8をかけたクロアチア戦... ニッポンがんばれー!!!

ロネッツのオランダ盤でやらかした(*_*)

2022-08-24 | Wall Of Sound
 ロネッツ唯一のLP作品「Presenting The Fabulous Ronettes featuring Veronica」はめちゃくちゃ好きなアルバムで、フィレス・レーベルのオリジナルUS盤を始めとしてUK盤、カナダ盤、オーストラリア盤と手当たり次第に60年代プレスの各国盤を買いまくってきたが、先日eBayでレアなオランダ盤を見つけた。
 プレス時期は上記の国々よりも3~4年遅い1968年で、しかも “STEREO (also playable on mono)” 表記。私が蛇蝎の如く嫌っている疑似ステレオの危険性がないとも言えない。実際、同じ1968年にキングレコードから発売された日本盤(SLC-225)はキャピトルご自慢(笑)の疑似ステで、“稀少なロネッツの日本盤 1stプレスを喜び勇んで買ったものの、聴きにくくて仕方なかった...” というコレクターの嘆きをネットで読んだことがあったので(→不吉なことにこちらも同じ LONDON レーベルだ...)、もしもこのオランダ盤が疑似ステだったら目も当てられないが、その一方でマトを調べたらフィレスのリアル・ステレオ盤が SLP-4006A、キャピトルの疑似ステレオ盤が ST-90721-W1なのに対し、このオランダ盤は AA 379 262 1Y 1 P 1968 670 111 と独自カットみたいやし、ヨーロッパの人は脳ミソお花畑のアメリカ人とは違うてキモい疑似ステ盤なんか作らへんやろ...という希望的観測、更に自分の耳で事実を確かめたいという好奇心もあって購入を決めた。まぁ一種のギャンブルみたいなモンだが、送料込みで €51(約7,000円)ならギリギリ許せる範囲のバクチと言えるだろう。
 で、その結果はというと、これが見事なくらいの大ハズレ...(泣) A①「Walking In The Rain」のイントロを聴いただけで “やってもうたぁ...(>_<)” と目の前が真っ暗になった。当時の人はコレ聴いてどう思ってたんやろ?と不思議に思うくらい気持ちの悪い音だ。要するにオランダに送られたマスター自体がクソで、カッティング云々以前の問題だったということだろうが、久々にこの気色悪い音を聴いて、疑似ステレオって人類音楽史上最悪の発明の一つやってんなぁと改めて思い知らされた。まぁそんな怪しいブツに手を出した自分が悪いのだが...
 しかしいくら大好きなアルバムとはいえ、こんなキモい音を片面全部聴き続けるほど私は忍耐強くはない。私はすぐに針を上げ、カートリッジをモノラルに変えてみることにした。まだアナログ盤コレクター初心者だった頃に Duophonic 表記を見落として買ってしまった坂本九のキャピトル盤で同じことを試して、十分とは言えないまでもまぁまぁ我慢できるくらいまでマシになったのを思い出したからだ。
 改めてモノ針で聴くロネッツ疑似ステ盤はまさに “エコーのよく効いた薄っぺらいモノラル・サウンド” そのもので、特にドラムスが引っ込み気味なのが情けない。当然US盤やUK盤の真正モノラル・サウンドの足元にも及ばないが、ステレオ針で聴いた時の吐き気をもよおすような不快感はそれなりに軽減されて何とか許せるレベル。まぁ “変な音のロネッツ” が聴ける珍盤・奇盤・怪盤の類としてコレクションの末席に置いておくのも悪くはないが、ステレオ針で聴くことだけは今後二度とないだろう。
 ということで完全にやらかしてしまった感のあるロネッツのオランダ盤だが、毎月アホみたいにレコードを買いまくっていれば、たまにはこんなハズレ盤をつかんでしまうこともあるやろ...と割り切ることにした。普段は60年代後半にプレスされたステレオ盤なんて滅多に買わないのだが、今回はロネッツの珍盤ということでついつい目が眩んでしまったというワケだ... う~ん、猛省せねば。いくら音楽が素晴らしくても(というか素晴らしいがゆえに失望感がハンパない...)音そのものがエコー処理等で改悪されていれば気持ち良く聴けないということはビートルズのキャピトル盤で骨身に沁みてるはずなのに、あぁ情けない。皆さんもどうかお気を付けあそばせ...

【追悼】ロニー・スペクター

2022-01-13 | Wall Of Sound
 今日、仕事の休憩時間に何気なくヤフーニュースを見ると、そこに「米ロニー・スペクターさん死去」というショッキングな記事が出ていた。あのロニーが亡くなったって... うそやろ??? う~ん、これは大ショック(>_<)  ハッキリ言ってもう仕事どころではない。その後はずーっとテンション下がりっぱなしで、勤務時間を終えて早々に帰宅した。
 私はフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドが大好きで、フィレス・レーベルのレコードはビートルズやゼップに次ぐレコード棚の特等席に並んでいる。最初のうちはオリジナルのUS盤を1枚また1枚と手に入れるたびに大コーフンしていたのだが、US盤すべてをコンプリートした後はついに禁断の(?)各国盤にまで手を出し、UK盤やカナダ盤、オーストラリア盤に至るまで色々と買いまくって聴き比べをして楽しんできた。このお正月も新しく手に入れた例の超音波洗浄機でフィレス・レーベルの盤をすべてピカピカにして、ほぼノイズレスであの濃厚なサウンドに浸ったばかりだった。
 そんなフィレス・レーベルのレコードの中でも断トツに好きなのがロネッツの「Presenting The Fabulous Ronettes featuring Veronica」で、ビートルズ関連を除けば、いわゆる “無人島ディスク” の最有力候補と言って憚らないくらいこのレコードに惚れ込んでいる。もちろん一番の魅力はロニーの “ザ・ワン・アンド・オンリー” な歌声で、大袈裟ではなく人類史上最高の女性ヴォーカルの一人と言っていいと思う。音壁処理されたハル・ブレインのカッコいいドラムで始まる「Be My Baby」や「I Wonder」といった名曲の数々を大音量で聴きながら今夜は彼女を追悼したいと思う。
𝗧𝗵𝗲 𝗥𝗼𝗻𝗲𝘁𝘁𝗲𝘀 - 𝐁𝐞 𝐌𝐲 𝐁𝐚𝐛𝐲 - l𝗶𝘃𝗲 | [𝗰𝗼𝗹𝗼𝗿]

The Ronettes-I Wonder

The Ronettes - Do I Love You?

BABY I LOVE YOU (ORIGINAL SINGLE VERSION) - THE RONETTES


 ロニーを語る上で個人的に欠かせないと思うのが、彼女がゲスト参加したエディー・マネーの1986年のヒット曲「Take Me Home Tonight」だ。初めてラジオからこの曲が流れてきた時のインパクトは今でもよく覚えているが、最初 “ノリが良くてカッコエエ曲やなぁ...(^.^)” と思って聴いているとサビの部分でエディーの “Just like Ronnie sang....” に続いていきなり “Be my little baby~♪” とロニーの歌声が聞こえてきてビックリ。更に彼女のキラー・フレーズ “ウォッ、オッ、オッ、オ~♪” を惜しげもなく連発するのだからこれはもうたまりません。 何という圧倒的存在感!!! “ビー マィリル ベイベ~♪” と“ウォッ、オッ、オッ、オ~♪” だけで完全に主役を喰ってしまっている。私に言わせれば彼女は “人間国宝” レベルのシンガーだ。この曲のビデオも最高で、彼女のシルエットでじらすだけじらしておいて後半でその姿を見せるという展開が実にニクイ。エディーも3年前に亡くなってしまったが、きっと今頃はあの世でこの曲を仲良く歌っていることだろう。R.I.P. Ronnie Spector. I will miss you.
Eddie Money - Take Me Home Tonight/Be My Baby


「Presenting The Fabulous Ronettes」US ステレオ盤

2021-01-23 | Wall Of Sound
 フィル・スペクターが亡くなった。今日取り上げるこのロネッツ盤は本来なら年明けすぐにアップしようかなと思っていたレコードだったのだが、エディ・コクランやら南ローデシア盤やらにうつつを抜かして(笑)先延ばしにしている間にフィルが急逝してしまい、図らずも追悼特集になってしまった。まぁ人を射殺するほどの狂気の人だから獄中死もしゃあないのかもしれないが、何と言ってもビートルズの「Let It Be」をプロデュースしたレジェンドである。大いなる敬意をもって追悼するのがビートルズ・ファンとしての務めというものだろう。
 各国盤の蒐集に血道を上げていることで既にお分かりだと思うが、私は大好きな盤は色んな音で聴きたいという欲張りな人間である。特に60年代にプレスされたレコードはモノラルとステレオの2種類のミックスが存在する場合が多いので、各国盤も含めると楽しみが何倍にも膨れ上がるのだ。まぁそれくらい惚れ込んだレコードというのはビートルズ以外では数えるほどしか存在しないが、そんな中でステレオ盤をまだ手に入れていない “最後の大物” 的存在(?)としてずーっと気になっていたのがロネッツの「Presenting The Fabulous Ronettes」だった。
 このレコードはまず1964年にフィル・スペクターのフィレス・レコードから薄青レーベルのモノラル盤がリリースされ、すぐに黄色レーベルの盤に切り替わったのだが、ステレオ盤が出たのはそれから1年くらい後だった。しかもそのオリジナル・ステレオ盤(←レーベル面の文字は赤色)もすぐに廃盤になってしまい、その後は版権を持っているキャピトル・レコードがレコード・クラブの通信販売用にプレスしていたらしい。そんなキャピトル・プレスのステレオ盤にも1stプレスと2ndプレスがあるので(←どちらもレーベル面の文字は黒色で、しかもグループ名を RONNETTESと綴りミスをしている...)、ロネッツのUSステレオ盤は最初に出たフィレスの盤を含めると計3種類のレコードが存在することになる。
 私はこのキャピトル製ロネッツ盤を所有している人から “キャピトルのロネッツはあんまり音良ぉないで...(>_<)” という話を聞いたことがあって、“どーせキャピトルのことやから気持ち悪いエコーをドバーッとかけとるんやろ...” と完全スルーを決め込んでいたのだが、ある時 Discogsでフィレスのレコードを色々と調べていて同じロネッツのステレオ盤でもフィレスとキャピトルではマトが全然違うことを知り、フィル・スペクターが関わったオリジナル・ステレオ盤の方を是非とも聴いてみたいと思うようになったのだ。
 しかしネットで調べてみるとキャピトル製の黒文字ロネッツ盤は比較的入手しやすく値段も安いが(←$100~$150)、フィレス製の赤文字ロネッツ盤の方は滅多に出てこないし、ごくごくたまに出てきたとしても$400~$500という高値で取り引きされていてちょっと手が出ない。私は他の垂涎盤と同じようにこの盤を “お気に入り” に入れて来る日も来る日も忍耐強くチェックしていたのだが、待てば海路の日和ありとはよくぞ言ったもので、先月ついに赤文字ロネッツ盤が真っ当な値段でeBayに出品されたのだ。
 スタート価格は$150で思わず “安っ!” と思ったのだが、よくよく見るとジャケットの右下側に小さなカットアウトがある。なるほど、それで安いんか... と納得したが、プレイ・グレードはVG+ ということだし写真で見る限り盤面の光沢も十分あるしで聴く分には特に問題無さそうだ。私はジャケットに多少の難があろうとも音さえ良ければ気にならない人間なので、由緒正しいコレクターが敬遠しそうなこのレコードを千載一遇のチャンスと考えて絶対に取るつもりで$300付けたところ、結局他に誰も来ずにスタート価格の$150で落札できたのだった。終了時刻がちょうど勤務所間とバッティングしていたのでわざわざこのレコードために有休を取ってスナイプしたのだが、その甲斐は十分あったというものだ(^.^)
 2週間ほどで届いたレコードを丁寧にクリーニングしてからターンテーブルに乗せて針を落とす。盤質VG+ 表記だったがほとんどノイズらしいノイズが聞こえないので聴感上はほぼミントと言っていい。スピーカーから出てきた音は確かにステレオらしく音がフワーッと広がるのだが、キャピトルのステレオ盤にありがちなエコーの気持ち悪さは全く無い。私はこれまでモノラル盤しか聴いたことがなかったので、まともなステレオ・サウンドで聴くロネッツは中々新鮮で面白い。まぁモノラルかステレオかのどちらか一方を選べと言われれば迷わず濃厚一発官能二発という感じのモノラルを選んでしまうが(←古き良きオールディーズ・ポップスはやっぱりモノラルが王道でしょ?)、あのフィル・スペクターが時間をかけて作り上げたミックスだけあって、このオリジナル・ステレオ盤も十分傾聴に値する音だと思う。
 それともう一つ特筆すべきはモノラルとステレオでテイク違いの音源が採用されていることで、これは全く予想していなくてビックリ(゜o゜)  一番わかりやすいのはB④「How Does It Feel」のバック・コーラス部分だが、疑似ライヴ仕立てのA⑥「What I'd Say」なんかもモノラルとステレオではかなり雰囲気が違って聞こえるのが実に面白い。他にも色々と細かい点で違いに気付かされて、まるで宝探しをしているような楽しさを味わうことができた。それにしてもこのレコードはホンマにエエ曲ばっかり入っとるなぁ... (≧▽≦)
 フィル・スペクターってロニーを脅して軟禁したりジョンの「Rock 'N' Roll」のテープを持ってトンズラしたりと人間的にはちょっとアレだったが、“ウォール・オブ・サウンド”を考案し、「Let It Be」を始めジョンやジョージのソロ、フィレス・レーベルのロネッツやクリスタルズ、そしてあのラモーンズに至るまで、数々の名盤を世に生み出してきたプロデューサーとしての彼はまぎれもなく不世出の天才だった。R.I.P. フィル・スペクター、たとえ時代が変わろうとも彼が作り上げた素晴らしい音楽は永久に不滅なのだ。
𝐓𝐡𝐞 𝐑𝐨𝐧𝐞𝐭𝐭𝐞𝐬 - 𝐁𝐞 𝐌𝐲 𝐁𝐚𝐛𝐲 - 𝐥𝐢𝐯𝐞 [𝐇𝐐]

フィレス・レーベルのカナダ盤、更に2枚ゲット

2020-09-05 | Wall Of Sound
 レコードというのは不思議なもので、長い間ずーっと探していても中々見つからなかった盤が、1枚市場に出てくるとその後を追うようにドドッとまとまって出品されたりとか、一種の周期のようなものがあるように思えることがある。実際これまでに何度かそういう経験をしてきたし、近いところでは去年の秋から冬にかけてeBayで体験したビートルズ1G盤の怒涛のような出品ラッシュ(年が明けてからその波がパタッと止んでしまって1枚も出てこない...)なんかその最たるものだろう。
 長いこと探していたロネッツのカナダ盤をついに手に入れた話は前回書いたが、実はその1週間後に今度はフィレス・レーベルのもう一つの看板グループ、クリスタルズのカナダ盤がDiscogsに出品されたという通知がきたのだ。商品説明には盤質VG+~EXで£80という超お買い得価格だ。更にそのセラーの他の出品物もチェックすると、何ともう1枚フィレス・レーベルのオムニバス盤「Today’s Hits」のカナダ盤も出しているではないか! さすがにこちらは盤質がVGなせいか£20とかなり安くなっていて一抹の不安はあるが、このレコードのカナダ盤なんて他では見たことがないくらいレアなので、たとえ少々地雷臭がしようとも3,000円弱で買える(←2枚同梱で送料チャラやし...)なら御の字だ。私は喜び勇んで2枚とも購入した。
 この2枚はイギリスのセラーから買ったのだが、向こうのコロナ事情がよく分からないので(←最近は国内の新規感染者数しかニュースでやらへんけど、ヨーロッパはどーなってるんやろか...)届いたパッケージにエチルアルコールを吹きかけ、手袋をしてレコードを取り出す。もちろんレコード本体は超音波で洗浄し、ジャケットもアルコールを染ませた布でしっかりと拭いてからでないと安心できない。いつまでこんなクソ面倒くさいことせなアカンねんと愚痴の一つも言いたくなるが、こればっかりはどうしようもない。
 まず「Crystals Greatest Hits」から聴いていく。Bラス曲を除けば NMと言ってもいいくらい曲中ノイズが少ないのが嬉しい。そのBラス「Look In My Eyes」は少しノイズが目立つものの、幸いなことにあってもなくてもいいような凡庸な曲なので大して気にならない。肝心の音質だが、ロネッツのカナダ盤と同様にドライでシャープな音作りがされていて “これはこれでアリかな...” と思ったが、比較対象にUS青レーベル盤を引っ張り出して聴いてみたところ、その凄まじい音圧差にビックリ。カナダ盤を一般車とすれば、US盤はまるで重戦車だ。因みにこのアルバムはクリスタルズ名義にもかかわらず彼女らとは違うグループが歌っているトラックが入っているのだが、今の私のお気に入りはロネッツが歌っている「Hot Pastrami」と「Mashed Potato Time」だ。
Hot Pastrami

Mashed Potato Time


 次に「Today’s Hits」だが、見た目の擦れは多いものの音に出るような深いキズは無く、VGと呼ぶのは失礼なくらい良好なコンディションだ。私ならVG++かEX-をつけるだろう。音の方はやや線が細くてハイ上がりなサウンドで、重低音が轟きわたるUS青レーベル盤に比べると物足りない。「Crystals Greatest Hits」ほどの音圧差はないが、こちらもやはりUS盤の重厚なサウンドに軍配を上げざるを得ない。
 ということで今回手に入れた2枚のカナダ盤はさすがにUS盤には敵わなかったものの、盤質はそこそこ良いし、何より少ない出費で興味深い聴き比べができたのが一番の収穫で、これらのカナダ盤のおかげで(?)フィレスのUS青レーベル盤の音の凄さを改めて思い知らされた。フィレスはやっぱりUSオリジに尽きますな...(≧▽≦)
1963 HITS ARCHIVE: Then He Kissed Me - Crystals

1963 HITS ARCHIVE: Da Doo Ron Ron (When He Walked Me Home) - Crystals

ロネッツのカナダ盤ゲット\(^o^)/

2020-08-29 | Wall Of Sound
 私はガイド本「アナログ・ミステリー・ツアー」に各国盤蒐集の面白さを教えてもらった人間だが、実際のところ、そこまでして音の違いを楽しみたいと思えるほど入れ込んでいるアーティストはビートルズを筆頭にほんの一握りで、ほとんどの場合はオリジナル盤さえあればそれで十分だ。そんな私が“アーティスト”ではなく“レーベル”単位で各国盤の音の違いに興味を持っているのがご存知フィル・スペクターのフィレス・レーベルだ。
 ちょうど半年ほど前にも “新春音壁祭り” と題してフィレスのUK盤(ロンドン・レコードのプラム・レーベル)を特集したが、先日フィレスのカナダ盤を手に入れることが出来たので今回はそれを取り上げようと思う。
 ロネッツやクリスタルズがまだ現役バリバリだった60年代当時、オリジナルのUS以外でフィレス・レーベルのレコードがリアルタイムでリリースされていた国といえばイギリス、オーストラリア、カナダ、日本ぐらいだったが、そんな中でもカナダ盤はほとんど市場に出てこず入手が非常に困難なのだ。
 しかしラッキーなことに Discogsから “ほしい物リスト” に登録しておいたロネッツの「Presenting The Fabulous Ronettes Featuring Veronica」のカナダ盤が出品されたという通知が来たのでこれはエライコッチャとばかりに商品説明を見てみると、盤質 VG+で $160というお買い得価格だ。Discogs はeBay と違って写真が無いので普段ならメールで盤面やジャケットの写真を送ってもらうことにしているのだが、そんな悠長なことをしている間に他人に買われてしまっては元も子もないと思い、私は即買いを決めた。
 レコードが届いたのはその2週間後で、コロナのせいで1ヶ月くらいかかるんちゃうかと思っていた私の予想よりもかなり早く到着。急いで中身をチェックすると、盤質もジャケットも説明通りのコンディションで一安心だ。センター・レーベルはカナダ独自の黒レーベルで、初めて実物を手にできてめっちゃ嬉しい。60年代中期から後期のカナダ盤に多く見られるDG(←いわゆるひとつの深溝ですね)は無い。
 盤の重さは139gでUS盤(163g)UK盤(158g)OZ盤(160g)に比べると圧倒的に軽く、ビニールの材質も他国盤とはかなり違っているようだ。肝心の音の方はUSオリジナル初版の青レーベル盤ともUKプラム・レーベル盤ともOZ黒レーベルとも微妙に異なるカナダ独自のドライなサウンドで、こってりした濃厚な音が魅力のUS盤との聴き比べが楽しい。もちろんUS盤の方が王道の “ウォール・オブ・サウンド” だがこのカナダ盤の音も魅力的だし、ビートルズの場合と同じくロネッツもUS盤とカナダ盤で音が違うというのが実に面白い。
 ロネッツのこの「Presenting The Fabulous Ronettes Featuring Veronica」はビートルズ関連を除けば無人島ディスクの最有力候補と言ってもいいくらい大好きなレコードなので、それを各国盤の色んな音で取っかえひっかえ楽しめるというのが何よりも嬉しい。各国盤蒐集の楽しみは尽きませんな...(^.^)
THE RONETTES (HIGH QUALITY) - BABY I LOVE YOU

新春音壁祭り②

2020-01-24 | Wall Of Sound
 フィレス・レコードといえばもちろんUS盤がオリジナルになるが、ビートルズの各国盤蒐集で味をしめた私は “他の国の音壁も聴いてみたい” と思い立ち、早速 Discogsで調べてみた。すると驚いたことにリアルタイムで出ていたフィレスの各国盤はUK、カナダ、オーストラリアといった英語圏のみで、ビートルズのようにインド盤やらブラジル盤といった珍盤レア盤の類は存在しなさそうなのだ。しかし逆にターゲットが狭まったことで “せめてUK盤とUS盤の聴き比べくらいはやってみたい...” という興味が湧いてきた。
 そこで早速ネットでUK盤のデータ集めを始めたのだが、海外セラーの説明には “Killer sound... better than US press!”(素晴らしい音... US盤よりも凄いで!)とあるし、ヤフオクの某セラーも “これを聴いてしまうとUS盤には戻れない” と、どこを見ても高評価のオンパレードだ。それもそのはずで、フィレスのUK盤は高音質で有名なロンドン・レコードが “AMERICAN SERIES” と銘打ってリリースしていたプラム・レーベルだった。
 このシリーズは私もジェリー・リー・ルイスやリトル・リチャード、エディ・コクランといった50'sロックンロールからクリス・コナーやクラーク・シスターズといったジャズ・ヴォーカルに至るまで10枚近く持っているが、そのどれもが確かにUS盤よりもクリアーでクリスプなサウンドなのだ。これは是非とも聴いてみたい。いや、聴かねばならぬ!
 ということで私はフィレス・レコードの7枚の中でプラム・レーベルのUK盤が出ている「He’s A Rebel」「Presenting The Fabulous Ronettes featuring Veronica」「A Christmas Gift For You」の3タイトルにターゲット・ロックオン。で、早速手に入れたのが私にとってポールの「RAM」に次ぐ無人島ディスクの最右翼と言っても過言ではないスーパーウルトラ愛聴盤のロネッツで、NM盤が£60(≒8,500円)なら超お買い得と言えるのではないか。このレコードはUS盤薄青レーベル、OZ盤黒レーベルの2枚を所有しているが、このUK盤との聴き比べがめっちゃ楽しみだ。
 次に手に入れたのはクリスタルズの「He’s A Rebel」で、この時点ではまだUSオリジナル盤すら持っていなかったため私にとってこのタイトルの最初の1枚になったのだが、VG+ 盤をロネッツと同じ£60(≒8,500円)でゲット。完成前夜の初期ウォール・オブ・サウンドがUKロンドン・レコードの手によってどのような音に仕上げられているのか興味津々だ。
 最後に買ったのが前回書いたMintなUS盤を手に入れたばかりの「A Christmas Gift For You」で、VG+ 盤を£45(≒6,400円)でゲット。これはUS 1stプレス、US 2ndプレス、そしてUK盤の三つ巴聴き比べが楽しみだ。結局3枚トータルで£165、送料込みでも1枚当たり1万円を切る値段で買えて、1年を締めくくるに相応しいお得な買い物だった(^.^)
 3枚とも年明け早々に届いたので簡単な感想を書いてみたい。まずはUK盤「Presenting The Fabulous Ronettes featuring Veronica」だが、さすがはロンドン・レーベルだけあってスペクターの意図したであろうウォール・オブ・サウンドのコアの部分を尊重しながらもよりクリアーなサウンドに磨き上げたという印象。特に「I Wonder」で聴けるロニーのヴォーカルは絶品だ。それに対してオリジナルであるUS盤薄青レーベルは良い意味での “古めかしさ” が濃厚に立ちこめるコテコテのウォール・オブ・サウンド。“古き良きモノラル・サウンド” で音壁をとことん堪能したいならUS盤、スペクターの音壁を高音質で楽しみたければUK盤、ということになるだろうか。因みにOZ盤黒レーベルは音圧はやや低めながらUK盤の音を更にモダンな方向に振ったような感じで、まるでステレオ・カートリッジで聴いているかのようなあっさり系のサウンドだ。大好きなロネッツ盤をこれからはその時の気分で三者三様の色んな音で聴けると思うと嬉しくてたまらない(≧▽≦)
The Ronettes - Be My Baby - live [HQ]

The Ronettes-I Wonder


 「He’s A Rebel」は聴き比べ対象が無いのでUK盤単独の感想になるが、音の傾向としては上記のロネッツ盤と同じで、籠りのないクリアーなウォール・オブ・サウンドが展開する。特にフィル・スペクターの代名詞と言っても過言ではない怒涛のカスタネット攻撃が堪能できる「Uptown」のインパクトは凄まじい。こーなってくるとやはりUS盤薄青レーベルを手に入れて聴き比べをやってみたくなるが、どっかに安ぅ売ってへんかなぁ...
He's A Rebel - The Crystals

1962 HITS ARCHIVE: Uptown - Crystals


 「A Christmas Gift For You」もめちゃくちゃ音が良くて大喜びなのだが、1ヶ所だけ音に出る小キズがあるのが残念(>_<) 比較対象のUS 1stプレスがノイズレスのMint盤ということでどうしても音質よりも盤質の差に耳がいってしまうのだ。このレコードも私的溺愛盤なので今後もしUKのMint盤を見つけたら衝動買いしてしまうかもしれない。因みにUS盤の薄青1stプレスと黄2ndプレスを聴き比べたところ、1stプレスの方がエコーの響きが深くて音場も広く感じるが、その違いはごく僅かなので、コスパを考えれば黄色い2ndプレスで盤質の良いのを買うのが一番賢明かもしれない。
 フィル・スペクターって何年か前に知り合いの女優を射殺したとかで今はまだ服役中(←ネットで調べたら禁固19年って書いてあった...)だったはずだが、まぁこれだけ素晴らしい作品を遺したのだから恩赦か何かで許したってもエエんちゃうかと思ったりもする。でもそうすると又トチ狂って誰かを撃ち殺してまうかもしれんからやっぱりアカンか... (笑)

新春音壁祭り①

2020-01-19 | Wall Of Sound
 今年のお正月休みはひたすらレコード洗浄に明け暮れてピッカピカになった盤を聴きまくり、“おぉ、このレコードこんなにエエ音しとったんか...” と再発見した盤も少なくなかったが、そんな中でも特にインパクトが大きかったのがフィレス・レコード、つまりフィル・スペクターが60年代初めに設立した自主レーベルからリリースされたロネッツやクリスタルズのレコードだった。
 フィレス・レコードと言えば何年か前にコンプリートCDボックスが出ており、音壁マニアの私はもちろん速攻で買ったのだが、残念なことに音が薄っぺらくてガッカリ。眼前に分厚い音壁が屹立せずして何のフィル・スペクターか! 私はCDのヘタレな音を聴いて “やっぱりウォール・オブ・サウンドはオリジナル盤に限るわ...” と痛感させられたのだった。
 フィレスのレコードは1stプレスが薄い青色のセンター・レーベルで、2ndプレスになるとレーベルの色が黄色に変わるのだが、この薄青1stプレスというのは非常に数が少なく、良い状態の盤を手に入れようとするとウン万円の出費を覚悟しなくてはならない。フィレス・レーベルから出ているレコードはクリスタルズ3枚、ロネッツ1枚、ボブBソックス&ザ・ブルージーンズ1枚、それら所属アーティストたちの寄せ集めコンピ盤2枚の計7枚。貧乏コレクターの私が持っている薄青1stプレスはクリスタルズのベストとロネッツの2枚だけで、それにコンピ盤2枚の黄2ndプレスを併せた計4枚でフィル・スペクターのリアル・ウォール・オブ・サウンドを楽しんできたが、 “7枚全部を薄青1stプレスで揃えたいなぁ...” という野望(?)は常に頭から離れなかった。
 今回の “手持ち盤一斉洗浄” で久々にこれらのフィレス盤を聴いて、チリノイズのほぼ無くなった音壁に改めて感銘を受け、禁断の “フィレス熱” が再燃。試しにDiscogsを覗いてみたところ、そこでとんでもない盤を発見した。盤は「A Christmas Gift For You」という例のクリスマス・コンピ盤なのだが、何とその薄青1stプレスの、しかもあろうことかMint(←未使用のこと)状態の盤が$150で出ていたのだ!
 先ほども書いたように私はこのレコードの黄2ndプレス盤を既に持っており、VG+状態だったものを徹底洗浄してNM状態で聴けるようになったばかりだったこともあって一瞬どうしようかとためらったのだが、“MINT ORIGINAL 1963 MONO PRESSING. BLUE LABEL. UNPLAYED DEADSTOCK. Crisp and Bright Cover no wear other than crease to top right corner. Warehouse find...ARCHIVAL Condition..total time machine deal.”(1963年に出た青レーベル・モノ盤の未使用デッドストック。倉庫で発見した“記録保存用”コンディションで、まるでタイムマシンを手に入れるような超お買い得品です。)という商品説明を読んで、理性が木っ端微塵に吹き飛んだ。なるほど、time machine dealとは実に上手い表現だ。それにコレを逃せばフィレスの1stプレスをMint状態で手に入れるチャンスなんて二度と巡ってこないだろう。そう考えた瞬間、私はこのレコードをカートに入れていた。
 更に“倉庫で発見ちゅーことはひょっとして他にもあるんちゃうやろか...” という予感が頭をよぎり、そのセラーの他の出品物を検索してみたところ、私が睨んだ通りコンピ盤「Today's Hits」の薄青Mint盤も売りに出ており、クリスマス盤と同じく “倉庫で発見したデッドストック” と書いてある。この盤はこれまで黄レーベル盤しか見たことがなく、薄青レーベルなんて夢のまた夢という認識だったのだが、そのMint盤が$190で手に入るとなればそんな千載一遇のチャンスを逃す手はない。私は他の誰かに先を越される前に買わねばと大慌てでこの盤もカートに入れ、2枚まとめて速攻オーダーした。
 でっかいパッケージが届いたのはそれから1週間たったクリスマスの日で(←これホント!)梱包を解いておそるおそるレコードを取り出すと、ジャケットも盤もピッカピカ(^o^)丿 う~ん、これは確かにタイムマシン・ディールである。私は1年の最後の最後になってとんでもないお宝を2枚も手に入れることができたことをレコードの神様に感謝した。
 そしていよいよ筆おろしならぬ “針おろし” である。カートリッジを買い替えといてホンマによかったわぁ... と胸をなでおろしながらまずはクリスマス盤に針を落とす。ほぼ無音状態からいきなり濃厚一発官能二発という感じのウォール・オブ・サウンドが眼前にドドーン!と現れ、生々しいダーレン・ラヴのヴォーカルが炸裂。これは凄い... いや凄すぎる!!! 確かに黄レーベル盤の音もめちゃくちゃ良かったが、この薄青レーベル・ミント盤の音はそれすらも凌駕する巨大な音壁を目の前に打ち立てたのだ。これが “音の鮮度” というやつか... そう、例の「Please Please Me」1G盤で体験したアレと同じだ。AB両面併せて35分間がアッという間に過ぎ去っていく。続いてかけた「Today's Hits」でもクリスマス盤同様の鮮烈なウォール・オブ・サウンドを堪能し、私にとっては最高のクリスマスになった。
 アメリカ音楽の聖地メンフィスの倉庫の片隅で埃をかぶっていた2枚のレコードが、遥か離れたこの日本の奈良という地で長~い眠りから覚め、フィル・スペクターが56年前に音溝に刻み込んだウォール・オブ・サウンドを見事に再現する... そこに何か不思議な縁のようなものを感じるし、これこそまさにレコード・コレクションの醍醐味やなぁ... などと感慨に耽りながら音壁三昧している今日この頃だ。
Various Artists - A Christmas Gift for you from... - Full Album

キュートな女性ヴォーカルで聴く「ビー・マイ・ベイビー」カヴァー特集

2015-04-04 | Wall Of Sound
①Rachel Sweet
 女性シンガーの声質と曲調、そしてそのサウンド・プロダクションとの相性というのは非常に重要なファクターだと思うのだが、レイチェル・スウィートの文字通り甘~いロリータ・ヴァイスはフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドにピッタリだ。彼女がパット・ベネターばりに黒の皮ジャンに身を包んで歌ったプレスリー・カヴァー「ベイビー・レッツ・プレイ・ハウス」なんかは気持ちばかりが先走った余裕のない歌い方で観ていて痛々しかったが、「ゼン・ヒー・キスド・ミー」とのメドレーで聴かせるこの「ビー・マイ・ベイビー」では一転して水を得た魚のように活き活きとした歌声を聴かせてくれる。やっぱり選曲って大事やねー。彼女に合ったミディアム・スロー・テンポ曲2連発ということも相まって、そのキュートな魅力全開で音壁ファンのハートを撃ち抜く必殺のスペクター・メドレーだ。
Rachel Sweet - Then He Kiss Me (Be My Baby) 1981


②Sandy Posey
 歌手の中にはオリジナル作品はイマイチ面白くないのにカヴァー曲になると俄然魅力を発揮する人達がいる。要するに実力はあるのに良い曲に恵まれなかったということなのだろうが、このサンディー・ポゥジィという人もそんな不運な女性シンガーの一人だろう。彼女の持ち味であるカントリー・テイスト溢れるそのキュートなポップ・ヴォーカルは「シングル・ガール」や「ボーン・ア・ウーマン」といった旋律性の薄いオリジナル曲よりもキャッチーなアメリカン・ポップスのカヴァーの方が断然合っている。
 そんな彼女のカヴァー曲を中心に選曲された超お宝CDがこの「シングル・ガール」で、「ビー・マイ・ベイビー」を始めとして、クリスタルズの「ゼン・ヒー・キスド・ミー」、リトル・ペギー・マーチの「アイ・ウィル・フォロー・ヒム」、シフォンズの「ヒーズ・ソー・ファイン」「ワン・ファイン・デイ」(←何故か 'Till I Kissed You と誤植されてる...)、シュレルズの「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ」、パリス・シスターズの「アイ・ラヴ・ハウ・ユー・ラヴ・ミー」といった私の大好きなガール・ポップ・クラシックスが満載だ(^o^)丿 特に彼女と歌い方が似ているコニー・フランシスの「フーズ・ソリー・ナウ」「エヴリバディーズ・サムバディーズ・フール」「マイ・ハピネス」の3曲なんかもう絶品と言える素晴らしさだし、エヴァリー・ブラザーズの「オール・アイ・ハヴ・トゥ・ドゥ・イズ・ドリーム」「ホェン・ウィル・アイ・ビー・ラヴド」(←リンロンのカヴァーでも有名ですね)も鳥肌モノの名唱だ。このCDは今ではかなり入手困難なようだが、サンディー・ポゥジィを聴くならまずはこの1枚から!と言いたくなるオールディーズ・ファン必携盤だ。
Sandy Posey - Be My Baby


③Maggie Roberts
 このマギー・ロバーツという女性シンガーのことは「ビー・マイ・ベイビー」カヴァーを集めていた時に初めて知った。今はネットを駆使すれば大抵の情報は手に入るものだが、この人はよっぽどマイナーな歌手だったのか、色々調べてみても顔写真1枚すら出てこず、結局1963~64年頃に Cannon や Crossbow といったイギリスの超マイナー・レーベルから出されたカヴァー曲コンピレーションEPの中でレスリー・ゴーアの「イッツ・マイ・パーティ」やスプリームズの「恋はどこへ行ったの」、ロネッツの「ベイビー・アイ・ラヴ・ユー」なんかをカヴァーしていたということぐらいしか分からなかった。当時はヒット曲カヴァー専門のシンガーがたくさんいたので、ひょっとすると彼女もそんな1人かもしれない。
 彼女の「ビー・マイ・ベイビー」カヴァーは63年にイギリスでリリースされた6曲入りEPの中に入っていたものだが、私が買ったのは翌64年にイタリアの Variety というこれまた未知のレーベルから出された2曲入りシングルのプロモ盤。以前取り上げたジョージェッツと同じく歌も演奏もオリジナルに忠実にカヴァーするというこの手の企画の鉄則通りの内容で、この曲に特別な思い入れのない人にとっては取り立ててどうということのないレコードかもしれないが、私にとってはそのキュートなヴォーカルとVariety というレーベルの神秘性で結構愛着のある1枚なのだ。
Maggie Roberts - Be My Baby
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ロッカーたちの「ビー・マイ・ベイビー」カヴァー特集

2015-03-28 | Wall Of Sound
①Graham Bonnet
 強面で鳴らすロッカーたちの中にもキャッチーなポップスをこよなく愛する者は意外に多い。あのリッチー・ブラックモアがアバの大ファンだというのはその筋では有名な話だが、そんなリッチー率いるレインボーの2代目ヴォーカリストとして活躍し、そのユニークな “血管ブチギレ・シャウト” で「オールナイト・ロング」や「ロスト・イン・ハリウッド」といった不滅の名作を残した “ハードロック界のやっさん” こと、グラハム・ボネットも見かけによらず(失礼!)歌モノ・ポップスが大好きなようだ。
 西城秀樹もカヴァーした「孤独のナイト・ゲームズ」が入っている81年リリースのソロ・アルバム「Line-Up」はそんな彼の嗜好がよく表れた好盤だが、ポップな選曲の中でもとりわけ異彩を放っていたのがこの「ビー・マイ・ベイビー」カヴァーだ。4オクターブといわれるハイトーン・ヴォイスで “ウォ~ウ ウォ~ウ ウォ~♪” とこめかみに青筋を立ててシャウトするグラハムと、一聴してそれとわかるコージー・パウエルの爆裂ドラムのコラボで聴くヘヴィーなロネッツ・カヴァーというのも中々オツなモノだ。
Graham Bonnet - Be My Baby(The Ronettes cover)


②Blue Oyster Cult
 ブルー・オイスター・カルトという名前を聞いてすぐに音が浮かんでくる人は少ないだろう。特に日本のリスナーにとっては “名前だけは聞いたことあるけど、曲は聴いたことがない” バンドの一つではないか。そもそも “青い牡蠣の教団” などという怪しげな名前だけで良識ある音楽ファンは眉をひそめそうだし、“ヘヴィー・メタルの元祖” というキャッチ・コピーも敬遠される一因になっているのかもしれないが、彼らの音楽はヘビメタというよりも “重厚でちょっと翳りのあるアメリカン・ロック” という感じで、アイアン・メイデンやジューダス・プリースト的なメタル・サウンドとは全く違う。私は “アメリカ版モット・ザ・フープル” 的な捉え方をしている。
 1977年にリリースされたアルバム「Spectres」はメロディアスな楽曲が多く収録されているのでBOC入門盤に最適な1枚だと思うのだが、同アルバムのCD化にあたってボーナス・トラックとして追加収録されたのがこの「ビー・マイ・ベイビー」カヴァーだ。深~いエコーのかかったイントロ、やる気があるのかないのかよーわからん浮遊ヴォーカル、気怠さ満点の揺らめくバック・コーラスと、何度も繰り返し聴くうちにクセになる麻薬のような中毒性を内包した、文字通りカルト的魅力横溢のロネッツ・カヴァーになっている。
Blue Oyster Cult - Be My Baby


③Ultima Thule
 ウルティマ・トゥーレは「ビー・マイ・ベイビー」カヴァーを色々集めていて偶然見つけたスウェーデンのロック・バンド。基本的にはストレートアヘッドなガレージパンクなのだが、ポップ・メタル色が強いので結構楽しめる。カスケーズの「リズム・オブ・ザ・レイン」やボックス・トップスの「ザ・レター」のカヴァーなんかめっちゃエエ感じで、まだまだ世界には未知の良いバンドがいっぱいおるなぁ... と改めて実感した次第。
 この「ビー・マイ・ベイビー」カヴァーはYouTubeで見つけたもので(←最近このパターンばっかりやな...)、彼らが1992年にリリースした「För Fäderneslandet」(←読み方わからへん...)というアルバムに入っているのだが、何と言ってもイントロから炸裂するエッジの効いたギターのシャープなリフが最高に気持ち良いし、ビシバシ決まるパワフルなドラムの響きも痛快無比で、初期のシーナ&ザ・ロケッツを想わせる荒削りでアグレッシヴな音作りがたまらんたまらん...(≧▽≦)  パンキッシュなロネッツ・カヴァーならコレでキマリ!と言いたくなるカッコ良い演奏だ。
Ultima Thule - Be My Baby


【おまけ】YouTubeの自動再生でこんなん↓見つけました。最近の素人さんはレベル高いですね(←シンセは余計やけど...)。エッグマラカスを振ってる女の子の笑顔がめっちゃキュートです(^.^)
The Ronettes / Be my baby 2015 Rock version!
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ユニークなアレンジで聴く「ビー・マイ・ベイビー」カヴァー特集

2015-03-22 | Wall Of Sound
①Leslie Grace
 「ビー・マイ・ベイビー」で色々YouTube検索していて偶然見つけたのがレスリー・グレースという女性シンガーによるこのロネッツ・カヴァー。面白そうなのでオフィシャル・ビデオを視聴してみるとイントロからカスタネットが鳴り響くバリバリのウォール・オブ・サウンドで、歌詞も英語とスペイン語が交互に出てきてエキゾチックな薫りがムンムン...(^O^) これは中々エエ雰囲気やなぁと悦に入っているといきなりコンガが乱入してきて一気にラテン・ムード全開のコモエスタな世界へと突入... 何とも摩訶不思議な「ビー・マイ・ベイビー」である。
 調べてみると彼女はドミニカ系アメリカ人ということで、シュレルズの「ウィル・ユー・スティル・ラヴ・ミー・トゥモロウ」のバチャータ風カヴァー(←こっちもコンガのアメアラレ攻撃が凄まじい...)で大ブレイクしたとのこと。オールディーズのカヴァーにコンガの乱れ打ちというのは私的にはどうしても違和感を覚えるし、伸びやかな良い声してるんやから出来ることならオーソドックスなアレンジで聴いてみたいという思いもあるが、いつの間にかこのミスマッチ感覚が病み付きになりついついリピートしてしまう。困ったものだ...(-。-)y-゜゜゜
LESLIE GRACE - Be My Baby (Official Video HD)

LESLIE GRACE - Will U Still Love Me Tomorrow (Official HD Video)


②Steve Tyrell
 最近YouTubeに自動再生という機能が加わった。要するに一つの動画を見終わって10秒間放置しておくと勝手に次の関連動画が始まるというおせっかいな機能なのだが、そのおかげで知ったのがこのスティーヴ・タイレルだ。私はこれまで色んなロネッツ・カヴァーを聴いてきたが、まさかあの「ビー・マイ・ベイビー」をこんなジャジーなアレンジで聴けるとは思わなんだ。彼は60年代の終わり頃にレコーディング・プロデューサーとしてB.J.トーマスやディオンヌ・ワーウィックらと仕事をしていた人で、それが1999年にジャズ・シンガーへと転身してスタンダード・ナンバーを歌ったアルバムをリリース、その後もシナトラ集やバカラック集なんかを出しているクルーナー・タイプの歌手だ。
 この「ビー・マイ・ベイビー」カヴァーはコンコード・レーベルから先月リリースされたばかりの「ザット・ラヴィン・フィーリング」というアルバムに収録されているのだがこれが意外な拾い物で、ジャジーなギターのイントロに始まり、ジョージ・シアリング・クインテットを想わせるような軽妙洒脱なコンボ演奏(←特に1分55秒からのシアリング風サウンドにはクソワロタ...)をバックに歌うタイレルの渋~いヴォーカルがめっちゃエエ感じ...(^.^)  男の哀愁を漂わせるハスキー・ヴォイスで聴くガール・グループ・クラシックスというのもオツなモノだ。聴けば聴くほど味わい深い “大人の” 「ビー・マイ・ベイビー」カヴァーである。
Steve Tyrell: Be My Baby


③Mix Market
 あの「ビー・マイ・ベイビー」をあろうことかパンク・カヴァーするという暴挙に出たのがミックス・マーケットという日本のロック・バンドだ。私はインディーズ・シーンには何の興味関心もないので彼らの事は名前すら知らなかったが、大好きな「ビー・マイ・ベイビー」を演っているということで興味本位で購入。雰囲気としては以前取り上げた 6% is MINE によるジブリのパンク・カヴァー集に近いモノがあるが、説得力溢れるヴォーカルとアグレッシヴな演奏が鮮烈な印象を残した 6% is MINE盤に比べると、このミックス・マーケットの方はヴォーカルも演奏も軽量級でいまいちインパクトに欠ける。曲を単なる素材として扱っているだけのような感じがして、オリジナルへのリスペクトや愛情といったものがあまり伝わってこないのだ。歌詞の一言一句をしっかりと歌い、演奏の重心を下げればもっとクオリティーの高い作品になったかもしれない。まぁカタイことを言わずに「ビー・マイ・ベイビー」のパンキッシュな珍品カヴァーとしてサラッと楽しむのが正解なのかもしれないが...
Mix Market - Be My Baby
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レア盤シングルで聴く「ビー・マイ・ベイビー」カヴァー特集

2015-02-23 | Wall Of Sound
 私は基本的にアーティストよりも曲を中心に音楽を聴くので、気に入った曲のカヴァーは草の根を分けてでも探し出して手に入れるようにしている。CD化されている音源に関してはネット検索すれば簡単に見つけることができるので問題ないのだが、厄介なのはアナログ、それもシングル盤でしか聴くことのできないマイナーなアーティストによるカヴァー・ヴァージョンだ。そういったレア盤を見つけるのに役立つのが YouTube と eBay で、YouTube 検索で偶然見つけたのが前回取り上げたマーベルズだが、今日は eBay で検索して見つけた「ビー・マイ・ベイビー」のレアなカヴァー・ヴァージョンを3つご紹介したい。

①Georgettes
 ジョージェッツは1957年にEbbレーベルから「Love Like A Fool / Oh Tonight」(←何とあのエディー・コクランがギターで参加してます!!!)でデビューしたアメリカの3人組コーラス・グループで、中心メンバーだったリッキー・ペイジの夫の名前ジョージに “女の子たち” という意味を表す接尾辞 -ettes(←マーべレッツやコーデッツ、ロネッツなんかもみんな -ettesですね...)をくっつけてジョージェッツという名前にしたらしい。
 彼女らはシングルを数枚出したがヒットせず、その後自然消滅状態になっていたのだが、1963年にリッキーがナッシュビルに移り住んだのを機にジョージェッツの名前を復活させて、ヒット曲をリアルタイムで無名アーティストにカヴァーさせるカヴァー曲専門レーベル(←英語では Cover Factory “カヴァー工場” というらしい...)の HIT から当時大ヒットしていたロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」のカヴァー・シングルをリリースしたというワケだ。
 で、そのジョージェッツ版「ビー・マイ・ベイビー」だが、リッキーの歌い方からバック・コーラス、その他諸々の器楽アレンジに至るまでロネッツのオリジナル・ヴァージョンを忠実に再現することを目指したカヴァーに仕上がっており、それが単なる完コピ・カヴァーではなくオリジナルへの愛情とリスペクトに溢れたキュートな王道ガール・ポップとして楽しめるところがいい。こんなん聴くぐらいならオリジナルを聴くよ、と言われればそれまでだが、私的にはこういうカヴァーも大いにアリだと思う。
The Georgettes - "Be My Baby"


②Suzanne Doucet
 ウォール・オブ・サウンドのファンはアメリカ、イギリス、日本にとどまらず世界中にいるようで英語以外の言語でもカヴァーされているが、ドイツ語のカヴァーではスザンヌ・ドゥーシェのヴァージョンが有名だ。日本では「私の可愛い子ちゃん」という邦題で(←本家ロネッツに付けられた邦題「あたしのベビー」にはワロタ...)UNIONレコードから「ソー・ロング・ソー・ロング」のB面として出されていたが、オリジナルは独Metronomeレーベルから1963年にリリースされたもので、タイトルは「Sei mein Baby」だ。
 一聴して感じたのはとにかくエコーが深いということ。いきなりイントロのドラムの響きからしてスーパーヘビー級で、“お風呂場エコー” そのものの強烈な残響音に度肝を抜かれる。しかもドイツ語というのはスウェーデン語と並んでキツく響く言語らしく(←モニカ・ゼタールンドのアルバムなんてまるでサディスティックな女の先生に叱られているみたいだった...)、原曲の “あたし(笑)の愛しい人になって” という甘酸っぱいセンチメンタリズムは雲散霧消し、“私の下僕におなりッ!!!” とムチでシバかれているかのような錯覚に陥ってしまう。ドMな音壁ファンに超オススメの逸品だ。
Suzanne Doucet, Sei mein Baby, Single 1963 (German Version "Be my baby)


③Les Surfs
 レ・サーフスは60年代にフランスの Festival レーベルから何枚もEP盤をリリースしたマダガスカル出身の男女混成黒人兄弟姉妹コーラス・ユニットで、この「ビー・マイ・ベイビー」以外にも同じロネッツの「ベイビー、アイ・ラヴ・ユー」を始め、ダスティ・スプリングフィールドの「二人だけのデート」やウィルマ・ゴイクの「花のささやき」、スプリームズの「恋はあせらず」、トイズの「ラヴァーズ・コンチェルト」、そしてビートルズの「ゼアズ・ア・プレイス」といった古今東西の名曲を片っ端からフランス語でカヴァーしまくっているのだが、このEP盤はスペインの HISPA VOXレーベルから1964年にリリースされた超珍しいスペイン語版「ビー・マイ・ベイビー」だ。
 イントロはエコー控えめのあっさり系ウォール・オブ・サウンドなのだが、 “シン プレグンタ キェネーラス メェ ナァモォレェ~♪” とスペイン語のヴォーカルが入ってくると何とも不思議な感覚に襲われる。これまで何百回何千回と聴き込んできた超愛聴曲だけに最初はこの違和感に戸惑ってしまったが、何度も繰り返し聴いているうちに意味の分からないスペイン語が脳内リフレインを起こし、気がつけば “トゥ セラスミ ベイベェ~ ソロトゥミ ベイベェ~ ベイベデミア~モ~♪” とサビメロを口ずさんでいた(笑) いやぁー、カヴァー・ヴァージョン探求って本当に楽しいですねー
Les Surfs - Tú serás mi baby (Be my baby)
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Spectre Sounds / Jive Bunny Project

2014-08-25 | Wall Of Sound
 「SPECTRE SOUNDS ~歌謡曲シリーズ~」をみながわさんのブログで知り、どこか試聴できるサイトはないかいなぁとググった時のこと、画面に表示された画像検索結果には例の青いジャケットの盤とは別にもう1種類、ビーハイヴ・ヘアーにウサギ耳のヘアバンドを付けてバニーガールに扮したロネッツの3人のイラストをあしらったピンク色のジャケットの盤がいっぱい出てきた。よくよく見るとタイトルは同じ「スペクトル・サウンズ」なのだが「歌謡曲」の文字はなく、代わりに「STEPPING」「JIVE BUNNY PROJECT」とある。何じゃいコレは??? 早速クリックしてみると、曲目が「歌謡曲シリーズ」とは全く違う。どうやら「スペクトル・サウンズ」には2種類の盤が存在するようだ。アマゾンで全曲試聴できた青盤とは違い、こちらのピンク盤(?)を試聴できるサイトは残念ながら見つけられなかったが、選曲も良いし音壁関連盤ならハズレの確率は限りなくゼロに近い。ラッキーなことにヤフオクで400円で出ていたので私は試しに買ってみることにした。
 盤が届くまでの2日間で色々調べてわかったことは、はせはじむというクラブDJが今の若い世代に昔の洋楽の素晴らしさを知ってもらおうと企画したのがこの JIVE BUNNY PROJECT で、一つのテーマに基づいて過去の名曲をメドレー形式でカヴァーした盤をヴィヴィッド・サウンド・レーベルからリリースしたシリーズの1枚だということ。まず2008年に「Motor Town Beats」「Spectre Sounds」「Swing Set」の3枚にそれぞれ “Hopping” “Stepping” “Jumping” という副題を付けて発売(←なるほど、これで Stepping の謎が解けた...)、翌2009年には「Latin Slide -Dancing-」「Jungle Drums -Bumpping-」を、2010年には「Ska In The World Hits -Driving-」「50’s Swinging with Electro -Swinging-」をリリースして現在に至っているらしい。更に上記7作品中で特に評判が良かった “スペクター・サウンド” と “モータウン・サウンド” のスピンオフ的作品として2012年にリリースされたのが前出の「歌謡曲シリーズ」というワケだ。尚、「歌謡曲シリーズ」のジャケットには JIVE BUNNY PROJECT の文字もウサギ耳も無い。
 “ジャイヴ・バニー・プロジェクト” がオールディーズのヒット曲をメドレー化して80年代に一世を風靡した Jive Bunny & The Mastermixers に由来していることは明らかで、1989年の夏から秋にかけてに大ヒットした2枚のシングル「Swing The Mood」(5週連続全英1位)と「That's What I Like」(3週連続全英1位)、更にオールディーズ・メドレーをいっぱい詰め込んだ彼らのファースト・アルバムを聴きまくっていた私としては、この “ジャイヴ・バニー・プロジェクト” は “よくぞやってくれました(^o^)丿” と快哉を叫びたくなる名企画だ。
Jive Bunny And The MasterMixers - Swing The Mood (12" Version)

Jive Bunny and The Mastermixers - The real videos - That's What I Like


 全12曲中、原由子の「ハートせつなく」とシリア・ポールの「夢で逢えたら」を除く10曲が洋楽ポップスで、土屋浩美(5曲)、小島真由美(1曲)、真城めぐみ(2曲)という3人の女性ヴォーカルと辻睦詞(4曲)という男性ヴォーカルの4人がクレジットされているが、私的には出来ることなら全曲女性ヴォーカルで統一してほしかったところ。やっぱり音壁は女性ヴォーカルに限ります(^.^)
 ストロベリー・スウィッチブレイドの「シンス・イエスタデイ」をアダプトした①「イントロダクション」から②「ウー・アイ・ドゥ」(リンジー・ディ・ポール) → ③「ハートせつなく」(原由子) → ④「サングラシズ」(トレイシー・ウルマン) → ⑤「ドント・アンサー・ミー」(アラン・パーソンズ・プロジェクト) → ⑥「ディス・クッド・ビー・ザ・ナイト」(モダン・フォーク・カルテット) と続く前半部分がこのCDの白眉で、特に⑤「ドント・アンサー・ミー」(5分50秒~)はヴォーカルの土屋浩美の声質が曲にバッチリ合っていてアラン・パーソンズ・プロジェクトのオリジナル・ヴァージョンをも凌駕する屈指の名演になっている。トラックがわずか1分13秒しかないのが惜しい(>_<)
Spectre Sounds


 ラスト曲の⑬「ゼイ・ドント・ノウ」(トレイシー・ウルマン) も土屋さんのヴォーカルが素晴らしく、オールディーズ・ポップスのお手本のようなドリーミーな世界を作り上げている。「ドント・アンサー・ミー」といい、この「ゼイ・ドント・ノウ」といい、丁寧に作り込んだサウンド・プロダクションとオリジナルよりも若干テンポを上げた絶妙なアレンジの勝利だろう。「歌謡曲シリーズ」と共に、音壁ファンの音壁ファンによる音壁ファンのためのカヴァー作品として一頭地抜きん出た感のあるこの元祖「スペクトル・サウンズ」は宇宙猿人ゴリもビックリのミラクルな1枚なのだ。
They Don't Know


【おまけ】こっちがオリジナル・ヴァージョン。クッサクサのアメリカン・コミック風PVが印象的な「Don't Answer Me」(←お月さんの“Ouch!”が懐かしい...)はこの曲がヒットした1984年当時は音壁の“お”の字も知らずに聴いていたが、今の耳で聴くと大瀧師匠が泣いて喜びそうなコテコテのウォール・オブ・サウンドだ。トレイシーの「They Don't Know」はラストでポールが特別出演してるのが見どころデス!!!
The Alan Parsons Project - Don't Answer Me

Tracey Ullman - They don't know (HD 16:9)
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Spectre Sounds 歌謡曲シリーズ

2014-08-19 | Wall Of Sound
 私が必ずチェックするブログの一つに、当ブログ最高顧問の(←キダ・タローみたいですんません...)みながわさんが書かれている Magical Out There Tour がある。私の音楽の嗜好はビートルズからオールディーズ、昭和歌謡、イエイエに至るまでかなり幅広く偏っている(?)ので、ジャズ友の901さん以外では音楽の話で盛り上がれる友人が身近にいないのだが、ブログで知り合ったみながわさんとは音楽の好みが非常に似通っていてお互い相通じるモノがあり、コメント欄でのやり取りを通して私の音楽生活を大いにインスパイアして下さっている。パッと思いつくだけでも「さすらいのギター特集」や「藤圭子追悼特集」、「夢逢え」や「さらシベ」の聴き比べにまで発展した「音壁祭り」など、どれもこれもみながわさんからいただいたコメントが無ければ思いつかなかったであろうネタばかりだ。
 そんなみながわさんが昨年のポール東京ドーム公演の感動を記しておこうとブログを始められた。同じ趣味嗜好を持った者としてこれほどワクワク楽しみなことはない。そんなこんなでこの数ヶ月だけでも未知の盤を何枚も教えていただいたのだが、そんな中で最近一番気に入っているのがこの「SPECTRE SOUNDS ~歌謡曲シリーズ~」である。
 みながわさんはブログの中で “ウォール・オブ・サウンドって知ってるかい? 1960~70年代に活躍した天才プロデューサー、フィル・スペクターが作り出した「ウォール・オブ・サウンド(音壁)」と称されるゴージャスなサウンドに影響を受けた古今東西の名曲をDJ MIXし、その音源を元に生演奏でカヴァーしたとんでもなくミラクルな一枚!!” というメーカーインフォを引用した上で、 “これで興味がわかなければ音壁ファンじゃない!” と喝破されている。名盤「音壁JAPAN」で私を音壁桃源郷へと導いた同志の言葉は重い。選曲も私のスイートスポットのド真ん中だ。いてもたってもいられなくなってアマゾンで検索してみるとラッキーなことに試聴可能になっている。どれも曲の断片を聴いただけで “ク~ッ、これはタマラン!!!” と思わず ! を3つも付けたくなるような素晴らしさだ(^o^)丿  私は迷うことなく買いを決めた。
 このCDは全12曲をノンストップ・メドレー形式で繋いであり、34分19秒がアッという間に過ぎ去っていくのだが、1枚のCDでこれだけカスタネットが聴ける盤を私は他に知らない(笑)  感想を一言で言えば、フィル・スペクターを知らない洋楽初心者でもJ-Pop名曲群経由の安心ラクチン格安パックツアーで “ウォール・オブ・サウンド” の真髄を垣間見ることができるという、まさにメーカーインフォ通りの “ミラクルな1枚” だと思う。
 ミラクルと言えば、この盤の選曲がコワイぐらいに私の溺愛曲と合致しており、特に大瀧師匠の「A面で恋をして」に始まり、メグミンの「見つめあう恋」、ミポリンの「世界中の誰よりきっと」、YUKIたんの「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」、タキユミ姐さんの「酸っぱい経験」、サザンの「Love Affair ~秘密のデート~」と続く前半部は私の自家製音壁CD-Rと曲順までほぼ同じだったのでビックリ(゜o゜)  どのトラックもウキウキワクワクするようなキャッチーなメロディーをウォール・オブ・サウンドでコーティングした名曲名演のオンパレードで、アレンジを担当した佐藤清喜という人のセンスが光っている。特に曲の繋ぎ方が絶妙で全12曲がまるで1曲の如く一気呵成に聴けてしまうところが凄い。
スペクトルサウンズ歌謡曲パート1


 12曲の中で私が初めて知った曲は「ファンレター」(岡本舞子)、「悲しきウェザー・ガール」(レインボー・シスターズ)、「恋はじめまして」(岡田有希子)という80年代の3曲なのだが、そのどれもが思わず一緒に口ずさみたくなるような親しみやすいメロディーに溢れていて、隠れ名曲発掘という観点からも大収穫だった。
 ヴォーカルは5人の女性シンガー(←残念ながら私の知らない名前ばかりでした...)に割り振られているのだが、それぞれの声質や歌唱法が曲想とバッチリ合っており、どのトラックもめっちゃエエ雰囲気に仕上がっている。彼女達のヴォーカルがこのCDの名盤度アップに大きく貢献していると言っても過言ではないだろう。 “スペクター” をもじって「スペクトル・サウンズ」としたアルバム・タイトルもヒネリが効いていて面白いし、とにかく論より証拠、オールディーズポップス・ファンなら一度聴いたら絶対に気に入ること間違いなしの大名盤だ。
スペクトルサウンズ歌謡曲パート2
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「ゼン・ ヒー・キスト・ミー」特集

2012-10-25 | Wall Of Sound
 前回 “キッス版音壁” として取り上げた「ゼン・シー(or ヒー)・キスト・ミー」はフィレス・レーベルの中でも三指に入る愛聴曲。ちょうどいい機会なので今回はこの曲の聴き比べ特集をやることにした。

①Beach Boys
 私がこのビーチ・ボーイズ・ヴァージョンの存在を知ったのは90年代の半ば頃のこと。東芝から出ていた 2 in 1 CDシリーズの「ビーチ・ボーイズ・トゥデイ&サマー・デイズ」を聴いていた時にいきなり例のイントロが流れてきてビックリ(゜o゜)  曲名を見ると「ゼン・アイ・キスト・ハー」とある。 “彼女が私にキス...” が “僕が彼女にキス...” というようにタイトル中の代名詞が逆なので気付かなかったが、まさしく “あの曲” である。目からウロコとはまさにこのことで、それまで自分が親しんできたキッス・ヴァージョンがこのBB5版のアレンジを下敷きにしていたと知り、フィル・スペクターの遺産がビーチ・ボーイズ(ブライアン・ウィルソン)を通してキッスにまで受け継がれていたことにアメリカン・ポップスの奥の深さを思い知らされた。
 このBB5ヴァージョンもキッスと甲乙付け難い名カヴァーで、彼らお得意のコーラス・ハーモニーが優しく寄り添ってくるところなんかマジで鳥肌が立つぐらいゾクゾクさせられるし、筋金入りのスペクター・マニアとして知られるブライアンだけあって、カスタネットの使い方などその見事なアレンジ&サウンド・プロダクションには唸ってしまう。ビーチ・ボーイズというとどうしても “車”“サーフィン”“女の子” をテーマにしたノーテンキなヒット曲か、あるいは「ペット・サウンズ」のようなシリアスなアルバムばかりに注目が集まりがちだが、この曲のようにアルバムの中にひっそりと(?)収められているカヴァー曲を原曲と聴き比べてみるのも一興ではないだろうか?
The Beach Boys - Then I Kissed Her


②Rachel Sweet
 レイチェル・スウィートは70年代後半にイギリスのスティッフ・レーベルからリリースした作品が有名だが、私的には80年代初めにコロムビアに移籍して発表した「アンド・ゼン・ヒー・キスト・ミー」が一番好き。彼女の激甘ロリータ・ヴォイスはスペクター・サウンドとの相性も抜群で、この曲を「ビー・マイ・ベイビー」との豪華メドレーで歌う様は水を得た魚のようだ。彼女にはトレイシー・ウルマンみたいな感じでもっとこのキュートでレトロな “60'sアメリカン・ポップス路線” を極めてほしかったな...
Rachel Sweet - And Then He Kissed Me, Be My Baby (Ronettes,Crystals) (1981) HD


③Asobi Seksu
 この曲のカヴァーを色々と集めていて出会った中でも異色中の異色がこのレコード。Asobi Seksu って口に出すのも恥ずかしいユニット名だが(笑)、そのサウンドは実にユニークで面白い。深く歪ませたギターのフィードバック・ノイズと洗練された囁き系女性ヴォーカルのコントラストが生み出す浮遊感のあるサウンド(←こういうスタイルの音楽をシューゲイザーというらしい...)がとても耳に心地良く、ほのぼのとした原曲のメロディーとの出会いによって、クールでありながらどこか温か味を感じさせるカヴァーになっている。
Asobi Seksu - And Then He Kissed Me


④Martha & The Vandellas
 マーサ&ザ・ヴァンデラスといえばリンロンがカヴァーした「ヒート・ウェイヴ」やミック・ジャガー&デヴィッド・ボウイがカヴァーした「ダンシング・イン・ザ・ストリーツ」、そしてアルバム「カム・アンド・ゲット・ジーズ・メモリーズ」のゆるかわいいジャケットがすぐに思い浮かぶが、彼女らがこの「ゼン・ヒー・キスト・ミー」を歌っているのはYouTubeを見るまで知らんかった(>_<) オリジナルのクリスタルズと聴き比べてみると、音作りの点でフィレスとモータウンというそれぞれのレーベル・カラーの違いがハッキリと出ていて面白い。
MARTHA and THE VANDELLAS then he kissed me


⑤Crystals
 最後はやはりフィル・スペクターがプロデュースしたクリスタルズのオリジナルで締めたい。1963年8月にリリースされたこの曲は最高位が3週連続全米6位というチャート成績だったが、私は全米1位になった「ヒーズ・ア・レベル」よりも断然こっちの方が好き。アンプのヴォリュームを上げると文字通りまるで壁のように屹立して聴く者に迫ってくるこの音の厚み、最高ではないか! リヴァーブの効いたドラム・サウンドの深~い響きといい、激しく打ち鳴らされるカスタネットの波状攻撃といい、私はこの曲にフィル・スペクターによる “ウォール・オブ・サウンド” の完成形を見る思いがする。やっぱり本家本元の音壁は最高だ(^o^)丿
Then He Kissed Me - The Crystals


【おまけ】YouTubeで偶然見つけたこの動画、歌ってるのは日系イタリア人シンガーの Sayaka Alessandra嬢。ルックスも声も私のストライクゾーンやん!と思いながら見ていると、0分29秒あたりから何やら彼女の後ろでチョロチョロする姿が...(笑) このワンちゃんの動き、めっちゃ可愛いなぁ... o(^-^)o
Then He Kissed Me (The Crystals cover)
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