shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

関税を払って手に入れたペッパーの45回転盤LP

2019-11-29 | Jazz
 前々から欲しかったAnalogue Productions社製「Art Pepper Meets The Rhythm Section」の45回転盤2枚組LP(AJAZ 7532)を手に入れた。このアルバムは星の数ほどあるジャズ・レコードの中でも5指に入るほどの愛聴盤で、コンテンポラリー・レーベルから出たオリジナル盤に加えて1992年にAnalogue Productions社が復刻した180g重量盤(APJ 010)も持っているのだが、巨匠バーニー・グランドマンによる真空管マスタリングが生み出す厚みのあるサウンドがめちゃくちゃ気に入って、それ以来 Analogue Productions という名前には全幅の信頼を置くようになった。
 とにかくこの復刻盤の音があまりにも良かったので、このアルバムに関してはこれで十分と思って過ごしてきたのだが、同社が2003年にAcousTech Masteringと銘打って45回転盤2枚組復刻シリーズとして再びこのレコードを出していたということを3年ほど前に知り(←遅っ!!!)、もうこれ以上は望めないんじゃないかと思えるあの音を更に磨き上げたという45回転サウンドをどうしても聴いてみたくなった。私は手を尽くして中古市場を探し回ったのだが時すでに遅しで、運良く見つけても発売時には$50だったものが$300オーバーという鬼のようなプレミア付きの値段が付いており戦意喪失。半ば諦めモードながら一応 Discogsの「ほしい物リスト」に登録しておいた。
 そして11月半ばのある日のこと、Discogsから “ほしい物リストのアイテム1点が出品されています” というメールが来た。どうせまた$300~$400やろ... と思いながら見てみると、何と$120という良心的な値付けである。しかも盤質を見るとNMとなっているのだ。違う盤を間違えて出している可能性もあるので一応セラーにメールして確認したが、どうやら本物っぽい。しかもUSセラーにもかかわらず送料は$20だという。私は小躍りしながら「注文する」をクリックした。
 USPS(United States Postal Service)を使ったアメリカからの郵便物はトラッキング№で追跡ができるので、私は毎日ネットでUSPSのトラッキング・サービスをチェックしながら到着を心待ちにしていた。このレコードは購入翌日に発送され、カリフォルニアから4日で大阪に着いたので、“この調子やったら明日か明後日には来そうやな...” とウキウキワクワクだったのだが、何とそれから5日間ずっと ‟Held in Customs”(税関で止められてます) 状態が続いたのだ。〝何でやねん?” と不審に思いながら大阪での6日目(!)を迎えた日、“今日もこのままやったら大阪国際郵便局へ直接電話して抗議したろ...” と心を決めてトラッキングのページを開くとステータスが “Customs Clearance Processing Complete”(通関手続き完了)に代わっており、私は安堵の胸をなでおろしたのだった。
 しかし話はこれで終わらない。その翌日のお昼頃、家にいる母親から職場のパソコンに(←スマホは大嫌いなので持ってない...)メールが来た。曰く、“今レコードが届いてんけど、国際郵便物課税と消費税で1,400円払わされたで。” とのこと。私は何のことかサッパリ分からなかったので、その “国際郵便物課税” とやらをググってみたところ、個人輸入の場合にかけられるものらしい。えぇ~っ、今まで何千枚というレコードを海外から買ってきたのに何で今回だけ関税がかけられたんやろ??? 税金に疎い私にはまったく納得がいかないが、払わな受け取れへんのならしゃあない。でも税金の上に更に消費税をかけるシステムってホンマにムカつくわ...
 納得いかないので更に調べてみたところ、“価格が1万円を超える輸入郵便物については、個人使用の物品や贈与品(GIFT)であっても関税と消費税が課税される。” とある。もしやと思い、帰ってパッケージに貼り付けられた送付状を確認すると、案の定 value 欄にはバカ正直に$120と書いてあって、ようやく状況が呑み込めてきた。
 因みに「国際郵便物課税通知書」「領収証書」の他に「不服申し立て等について」という書面が入っており、“この処分(←何でレコード買うて「処分」されなあかんのや?)について不服がある時は(←めっちゃ不服やぞ!)大阪税関長に対して再調査の請求又は財務大臣に係る処分(←つまり消費税分200円のことか...)については国税不服審判所長(←そんな役職あったんかwww)に対して審査請求をすることができます。” と書いてあった。税金をむしり取られるのはめちゃくちゃ腹立たしいが、だからと言ってたかだか1,400円のために裁判するほどヒマではない。
 とまぁこのようにスッタモンダの末に手に入れたこのレコードだが、音質の方はさすがにAnalogue Productions だけあって文句ナシだ。マスタリング・エンジニアは手持ちの92年盤がバーニー・グランドマンだったのに対し、今回手に入れた03年盤の方はスティーヴ・ホフマン... どちらも真空管を使ったマスタリングにかけては超の付く一流エンジニアである。
 聴き比べしてみた結果は実に興味深いもので、ざっくり言うとコクの92年盤 vs キレの03年盤、という感じで、92年盤の方がナチュラルな音場感で勝り、03年盤の方が各楽器のディテールの鮮明さで一日の長があった。バーニー・グランドマンはさすがロイ・デュナンの愛弟子だけあってペッパーのアルトが実にナチュラルにふっくらと鳴るし、スティーヴ・ホフマンの方はとにかく各楽器本来の音が再現されており、結論としては “オリジナルLPの音を更にブラッシュアップして現代に蘇えらせた92年盤” と “当時の録音現場で実際に鳴っていた音の忠実な再現を極めた03盤” というのが私なりの感想で、このアルバムが好きなら両方持っていて損はないスーパーウルトラ高音質盤だと思う。まぁこれだけ良い音が楽しめたのだから、1,400円の関税など安いものだと笑い飛ばすことにしよう。
Art Pepper Quartet - You'd Be So Nice to Come Home To

オーディオ・フレッシュン・アップ!

2019-11-27 | その他
 今日はレコードではなくオーディオの話である。私は今のリスニング・システムが完成して以来この20年ほどずーっとオーディオ関係にはまったく手を付けずに放置してきたのだが、各国盤蒐集が一段落して UKオリジナルの最初期プレス盤にターゲットが移り、“量より質” 路線に舵を切ったこの夏あたりから “もっともっと良い音でレコードを聴きたい!” という思いが強くなった。そして少し前にテレビでレコード・マニアのオーディオルーム訪問みたいな番組をやっていたのを見てスイッチが入り、今回久々に自分のシステムを見直すことにしたというワケだ。
 まず最初に目を付けたのは音の入り口である。今使っているオルトフォン・カートリッジの音はとても気に入っているので、とりあえずバランス・チェックから始めようとオルトフォンの針圧計を購入。大昔に調整したきりで長いことテキトーな目分量で針圧調節してきたのだが、実際にデジタルで測ってみると結構数値が狂っていてビックリ。これではせっかく状態の良いレコードを手に入れても盤に余計な負担をかけて傷めてしまう。即刻再調整したが、これからは定期的にチェックすることにしよう。
 次は水平出しである。今回は端子をすべてクリーニングするために結線をバラしてセッティングの最適化を目指したので、この機会にオーディオの基本であるターンテーブルの水平確認をしっかりやっておこうと考えたのだ。しかしアマゾンで水準器を色々調べてみても帯に短しタスキに長しでどれが良いのかよく分からない。そこで私は一石二鳥を狙って水準器付きのスタビライザーを買うことに決め、ウィボーというメーカーのが良さそうだったのでそいつを購入。ちょうどアマゾンのマスターカード入会で5,000ポイントもらえるというキャンペーンをやっていたのでそれを利用して実質タダで水準器付きディスク・スタビライザーをゲットした。
 私が買ったのは重さが300gのものだが、重すぎず軽すぎずで手に持った時の質感もめっちゃエエ感じだ。まず最初にターンテーブルに乗せて水平を測ってみたところ、変な傾きもなく一安心。実を言うと私はこれまでスタビライザーというものを使ったことがなくてこれがスタビ初体験なのだが、音質向上効果についてはよくわからなかったというのが正直なところ。ただ、手持ちのレコードの中には少し反った盤も当然あるわけで、そういう盤の再生には有効だろう。
 そして最後はインシュレーターである。私の部屋(というか家全体)は床の作りがめちゃくちゃヤワいので床の振動については前々から気になっていたのだが、これまではレコード収集にかまけて何も手を打ってこなかった。私はやると決めたら徹底的にやる主義なのでこの機会を利用して狂信的なくらいに共振を排除しようと決意。これも全く商品知識がなかったのでアマゾンで色々調べてみたところ、ハネナイトというゴムを使った東京防音の「THI-425」とオーディオテクニカの「AT6098」が良さそうだったので、両方とも購入。4個入りの「THI-425」の方をガラード401(レコードプレイヤー)の脚に、8個入りの「AT6098」の方をアルテック・ヴァレンシア(スピーカー)の脚に使ってやろうと考えたのだ。これで先の水準器付きスタビと併せて計5,000円也(←ポイント使用で実質タダやけど...)
 まず防音の「THI-425」をガラードの脚にかまして音出ししてみたところ、音像定位が良くなってビックリ。逆に言えばこれまでいかに有害な振動を拾ったまま聴いていたかということになるのだが、とにかくたったの700円の投資でこの変わりようは凄いコスパである。インシュレーターってホンマに効くもんなんやねぇ...
 これですっかり気を良くした私は今度は巨大スピーカーの足元にも防振対策をしてやろうとテクニカの「AT6098」を手にしたのだが、ここで大問題が発生。一人で持ち上げるにはウチのスピーカーはあまりにも大きく、重すぎたのだ。しかしスピーカーの下にインシュレーターをかますだけのために助っ人を頼むワケにもいかない。しゃあないので私は渾身の力を込めてスピーカーを持ち上げ(←もうちょっとで指を挟みそうになった... 危ない危ない)、スピーカー台と脚との間に「AT6098」を設置。無理な体勢で重量スピーカーを持ち上げたので今は首の筋肉が痛いが、音質向上のためならこの程度の痛みなど些細なことである。
 これで一応セッティングが決まったので色んな盤を取っ替え引っ替えしながら音出ししてみたところ、音の解像度が上がりエネルギー感もアップするなど、しっかりと音質の向上を実感。特に「With The Beatles」や「Rubber Soul」、それにシングルの「Paperback Writer」といったUKラウドカット盤や、ドイツDMM盤のような爆裂サウンドのレコードではアルテック・ヴァレンシアの38cmコーン型ウーファーがその実力を存分に発揮し、“ズゥゥ~ン” と響く重低音が気持ち良いことこの上ない。これは明らかにテクニカの「AT6098」効果だろう。ビートルズ以外では「Led Zeppelin Ⅳ」のインド盤や「Queen Greatest Hits」のドイツ盤が凄まじい音で私を驚かせてくれた。
 これで今回のオーディオ・フレッシュン・アップ作戦は一旦終了。私としてはほとんどお金をかけずに愛聴盤の数々が更に良い音で聴けるようになって大満足だ。ただ、まだまだ改善の余地はありそうなので、これからも更なる音質向上を目指していきたいと思う。

「Some Time In New York City」のアイルランド盤

2019-11-22 | John Lennon
 今年の2月にジョンの「ロックンロール」でアイルランド盤の音の良さを知ってからというもの、私はビートルズ関連レコードのアイルランド盤を狙うようになった。元々プレス枚数が極端に少ないので高音質が期待できるのと、ポールの「アイルランドに平和を」のアイリッシュ・プレスにおけるアグレッシヴな音作りに見られるような、イギリス人とは又違った感性を持ったアイルランド人エンジニアのカッティングが生み出すユニークなサウンドに魅かれたからだ。
 残念ながらビートルズ本体のアイルランド盤はまだ1枚も買えていないが、ソロ・アルバムの方は何枚かゲットできた。今回手に入れたのは「サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ」で、ジョンのアイルランド盤としては「ロックンロール」「ジョンの魂」「イマジン」に次いで4枚目である。このアルバムにはアイルランド問題を扱った歌が2曲も入っているので、果たしてどんな音作りがなされているのか興味があった。
 見つけたのは eBayで、€25スタートからどこまで上がるのか不安だったのだが、アイルランド盤なんて誰も注目していないのか、それともこのアルバム自体が不人気なのか、はたまたその両方なのか、結局ライバルは誰も現れずスタート価格のまま落札できた。送料込みでも4,000円ちょっとだから、まぁとりあえずはラッキーだ。
 届いたレコードは盤もジャケットもピッカピカで申し分なしのNM状態。センター・レーベルは例のジョンの顔がヨーコの顔に変わっていくUK盤やUS盤とは違い、ごく普通のシルバー・パーロフォンだ。マトは 1/2/2/1で、字体のサイズ(マト1は大きくマト2は小さい...)もフォントもUK盤と同じだ。
 このアルバムはジョンならではのロック魂を感じさせてくれる曲がいくつも入っていて大好きなのだが、「ダブル・ファンタジー」や「ミルク・アンド・ハニー」と同じくジョンとヨーコのトラックが混在しており、ヨーコの曲の前でいちいち針を上げるのが面倒くさいのが玉にキズ。だから先の2枚とこのアルバムに関してはLPではなくヨーコ曲だけカットした自家製CD-Rを聴くことが多いので(←ヨーコのトラックはホンマに邪魔...)、LPのアナログ・サウンドで聴くのは久しぶりだ。
 音の方は期待を裏切らないというか、アイルランド盤らしいガンガンくる音作りで、特にA⑤「New York City」なんかもうめっちゃアグレッシヴ。B-SELSのSさんにも聴いていただいたのだが、“パンクっぽいというか、尖がった感じがする音ですねー!” と驚いておられた。折角なのでその場でUK盤やUS盤とも聴き比べてみたのだが、ヴォーカルとバックの演奏がハッキリしていて聴きやすいUK盤やUS盤とは明らかに異質な、ラウドでパンキッシュなその音作りは “ロックなジョン” が好きな人にはたまらないと思う。私はこの「New York City」がジョンのソロ曲の中では三指に入るほど好きなので、このカッコイイ1曲のためだけでもアイルランド盤を買って良かったと思っている。
 B面は例の“血の日曜日事件”を扱ったB①「Sunday Bloody Sunday」がどんな音作りなのか興味津々だったが、こちらの予想の遥か斜め上を行く激しいサウンドで、特にドラムの音がめちゃくちゃデカくてビックリ。UKマト1盤と聴き比べても、こちらの方が音が立体的に屹立して眼前に迫ってくる感じが強い。ちょうどポールの「Give Ireland Back To The Irish」のアイルランド盤シングルにドラムがバン!バン!とまるでアイルランド人エンジニアの怒りが乗り移ったかのような強烈な音で入っていたのと同じである。それにしてもマト2でこの音は凄いわ... (≧▽≦)
 同じくアイルランド問題について歌ったB②「The Luck Of The Irish」は “歌詞を聴かせる” ことに重点を置いたメッセージ・ソングとしての音作りで、ギターを中心にフルートやピアノが一致団結してジョンのヴォーカルを引き立てているかのようだ。
 アイルランドに直接関係のないB③「John Sinclair」もB①②からの流れからか実にダイナミックなサウンド・プロダクションで、リゾネーター・ギターの突き抜けるようにクリアーな音が実に気持ちイイ(^o^)丿 この曲はB①②と違ってヨーコという異物が混入していないのが何よりも嬉しい。
 ライヴのC①「Cold Turkey」はジョージやクラプトン入りのプラスティック・オノ・バンドによる演奏。この曲は何故かモノラル録音でイマイチ音が良くないせいもあってかUK盤やUS盤との音の違いは感じられなかったが、怒涛の勢いのようなものだけは十分に伝わってきた。
 D①「Well(Baby Please Don't Go)」はフランク・ザッパ軍団との共演で、性懲りもなくキチガイみたいな奇声をあげるヨーコがめっちゃウザいが(←ヨーコの奇声をかき消すように大音量でギター・ソロをブチかますザッパにクッソワロタwww)、そんなマイナスポイントを差し引いてもお釣りがくるくらい素晴らしいのがジョンのヴォーカルで、このアイルランド盤はジョンの翳りのある太いシャウト・ヴォイスの魅力を存分に味あわせてくれる。いつか「Live Peace In Toronto 1969」とこのディスク2の “ヨーコ抜き” ミックスを出してくれへんかなぁ... 少々値段が高くても喜んで買いまっせ!
 D③「Scumbag」はテキトーにデッチあげたようなワケのわからない曲だが、バックの演奏が思いのほか素晴らしく、バンド全体が一体となってパワー全開で突っ走る疾走感がたまらない。ヨーコがわめきちらすライヴ音源ということで敬遠されがちなD面だが、心頭滅却して(←修行僧かよwww)ヨーコの奇声を無視し、ジョンとザッパ軍団が生み出すカッコ良いロックンロールに神経を集中すれば十分楽しめるレコードだと思う。

「Magical Mystery Tour」各国盤バトルロイヤル② ~EP3種聴きくらべ~

2019-11-17 | The Beatles
「マジカル」の聴き比べパート2はUK、オーストラリア、ニュージーランドによるモノラル盤EP三つ巴戦。ここに南アフリカが加わればまさにラグビー・ワールドカップみたいな顔合わせになるのだが(笑)、ラグビーW杯ではスプリングボクスが優勝した南アも、ビートルズのレコードに関しては残念ながら眠たい音で問答無用の予選落ち。ということで今回はレッドローズ vs ワラビーズ vs オールブラックスの3者による MMT EP杯争奪戦... 果たして優勝はどこに???

①UK盤(1/1/1/1)
 私:本家本元のUKなのに何かシャキッとしませんね。低音も締まりがないというか...
 Sさん:ビートルズのEPはコレに限らず音がイマイチなのが多いですよね。45回転の良さが出てないです。まぁあの幅に2曲詰め込んでるんですからしゃあないのかな。US盤のA①「Magical Mystery Tour」なんて、外周というのもあるんでしょうけど迫力が抜群ですからね。
 私:やはり低音がブーミーなのが気になりますし高音の抜けもいま一つ。レンジが狭いですね。
 Sさん:B面の方が音が良いですね。まぁ1曲しか入ってないというのもあるんでしょうけど...
 私:お店にあるシングル盤の「I Am The Walrus」と比べてみていいですか? かけ替えるの面倒くさいのにわがまま言うてすんません。
 Sさん:いえいえ、シングル盤って元々そういうもんですから...(笑)
 私: (シングル盤を聴きながら)全然ちゃいますやん! こっちの方がドラムが生々しいですね。同じ7インチ45回転なのに、何でこーなるのか... 現時点では「シングル>B面>A面」ですね。じゃあ次ディスク2にいってみましょう。
 Sさん:ディスク1よりも音が良いですね。
 私:確かに。しかもこっちが solid centre でさっきのは push-out centre という... こんなことってよくあるんですか?
 Sさん:さぁどうでしょう... 中古やから入れ替えられた可能性はありますね。
 私: まぁ音さえ良ければどっちのタイプでもエエんですけど。
 Sさん:D面の「Blue Jay Way」、これエエ音ですね。マザーが1というのもあるかもしれませんし、曲としてあまり聴かれなかったのかもしれませんね(笑)
 私:ハハハ... 確かに。

②OZ盤(1/1/1/1)
 私:じゃあ次はオーストラリア盤で。
 Sさん:マト書体はUKと同じか...
 私:A①「Magical Mystery Tour」はこっちの方がUKよりもエエですね。
 Sさん:細部までよく出てますね。スタンパーが若いっていう感じです。
 私:プレス枚数が全然ちゃいますからねー
 Sさん:そうですね。
 私:B面の「I Am The Walrus」もエエ感じ。コレやったらシングルと勝負できるかも...
 Sさん:鮮度の違いは大きいなぁ...と実感しました。
 私:ディスク2のC①「Fool On The Hill」もポールの声がクリアです。
 Sさん:C②「Flying」もエエですね。
 私:この曲はモノラルの大音量で聴くと良さが分かりますね。小さな音で聴いても面白くも何ともない。音の海の中に身を投げ出すようにして聴くと凄く良いんですよ。
 Sさん:そうそう、いろんな音が入ってますからね。
 私:D面の「Blue Jay Way」もリンゴのドラムの切れ味が抜群ですよ。
 Sさん:これは良い音です。

③NZ盤(枝番なし)
 私:最後にニュージーランド盤いきましょう。
 Sさん:マトは手書きか... 3枚の中でNZだけ独自マトなんですね。
 私:おぉ、これはさっきまでのUK、OZとは明らかに音作りの方向性が違いますね。
 Sさん:音、キレイですね。
 私:でもちょっと音が小さいので、音世界が狭い感じがします。
 Sさん:A②「Your Mother Should Know」のベースなんかエエ音してるんですけどね。全体的に迫力不足ですけど、キレイな音は出てると思います。B面の「I Am The Walrus」も上品な音ですよ。
 私:ストリングスの響きがエエですね。
 Sさん:この曲はNZ盤が一番合ってる感じがします。C①「Fool On The Hill」もキレイな音してますね。何か室内楽を聴いてるみたいです。
 私:違いで言えばピアノの音が一番わかりやすいかな...
 Sさん:何かクラシックっていう感じです。
 私:D面の「Blue Jay Way」にも合うんじゃないですか? ストリングス入りの曲に強そうですから。
 Sさん:UK、OZに比べると低音が弱い気がしますが、良い音ですよ。
 私:三者三様で面白い聴き比べになりましたが、Sさんはどれが一番気に入りましたか?
 Sさん:私はNZ盤をアンプのヴォリュームを上げて聴きたいですね。
 私:なるほど。私はキレイさよりも迫力重視の人間なので、この3枚から選ぶならOZかな。まぁそのへんは優劣というよりは音の好みの問題でしょうね。

「Magical Mystery Tour」各国盤バトルロイヤル① ~US vs カナダ~

2019-11-12 | The Beatles
 久々の各国盤バトルロイヤルはISR盤グリーン・カバーからの流れで「Magical Mystery Tour」をやります。パート1はUS vs カナダのキャピトル・モノラル盤対決です。

①USモノラル盤(G4/F3#2 ジャクソンビル・プレス, 131g)
 私:それじゃあまずUS盤からいってみましょか。
 Sさん:(デッドワックス部分を見ながら)ジャクソンビル・プレスですね。
 私:US盤のビートルズってどのレコードを聴いても私の好みとは正反対のヘタレな音で全然好きじゃないんですが、この「Magical Mystery Tour」モノラル盤だけは好きなんですよ。
 Sさん:私も「Magical Mystery Tour」はモノラルが好きですね。特にA③「Flying」とA④「Blue Jay Way」はステレオではイマイチなんだけれど、モノラルで聴くとその良さがよく分かります。
 私:このUSモノはリンゴのドラムがめっちゃシャープで気持ちエエんですよ。
 Sさん:A面は文句なしですね。ただ、B面になるとちょっと音がこもった感じがします。
 私:A面に比べると明らかにクオリティー・ダウンしてますね。決して悪い音というワケじゃないんだけれど... まぁそれだけA面の音が優れているということでしょう。
 Sさん:このレコードは何と言ってもA面に価値ありですから。
 私:ただ、B⑤「All You Need Is Love」でベースがドーン!とくる感じはさすがですよ。他のタイトルのUS盤とは明らかに違います。US盤嫌いの私が「マジカル」だけ別格に感じるのはこういうところなんですよ。

②カナダ盤(2/2, 151g)
 私:じゃあ次カナダ盤いってみましょか。
 Sさん:カナダは独自マトなんですね。
 私:ステレオもそうでしたが、同じキャピトルなのに不思議ですよね。それと、センター・レーベルに溝(Deep Groove)があるというのもカナダ盤ならではです。
 Sさん:音良いですね。ベースがボーン!ときますね。
 私:そうそう、ベースがエエんですよ、これ。
 Sさん:さっきのUS盤も力強かったですけど、こいつはグイグイきますね。音の粒立ちはこっちが上ですね。
 私:US盤との違いを言葉で言い表すとどうなりますかね?
 Sさん:US盤の方が若干音が大きいですから “迫力のUS、粒立ちのカナダ” という感じでしょうか。
 私:さすがはレコードのプロ、実に上手いこと言わはりますね。確かにUS盤の方がシャキシャキしてる感じが強いですよね。でも私はカナダ盤の方が聴いてて気持ちエエんですよ。US盤の方は元気なんだけれどちょっとドライすぎてデリカシーに欠けるというか... あくまでも2枚を聴き比べてのことで、US盤単品でいえば十分良い音だと思いますけどね。
 Sさん:おぉ、このB③「Penny Lane」のトランペットの音、すごく良いですね! B面の方が更に音が良くなってませんか、これ?
 私:私もそう思います。絶品ですよね、この音。ヴォーカルもさっきのUS盤と比べると明らかに前に出てくる感じがします。まぁここまでくると後は音の嗜好の問題になってくると思うんですが、「マジカル」に関してはモノもステレオもカナダ盤の音が一番好きですね。

③USモノラル盤(F9/F9 スクラントン・プレス)
 Sさん:うちの店に状態の良いスクラントン・プレス盤があるんですが、ついでに聴いてみますか?
 私:ぜひお願いします。US盤のプレス工場別聴き比べなんてもうワクワクしちゃいますよ。「アナログ・ミステリー・ツアー」の本にも書いてありましたけど、US盤「マジカル」はプレス工場によって音の傾向が違うみたいなんで、実際にこの耳で確かめられるのはホンマにラッキーですわ。
 Sさん:これ、両面共にF9の後の#、つまりスタンパー№が無いヤツなんですが、#2や#3って付いてるヤツよりも音が良いです。
 私:へぇ~、US盤のスタンパー識別法って初めて知りました。勉強になります。
 Sさん:実際に聴いてみて、どうですか、この音?
 私:これは凄いですね。私のジャクソンビル・プレスも元気な音やと思うんですが、上には上があるというか、こっちの方が更にパワフルですね。
 Sさん:大雑把な音の傾向としては、LAプレスやスクラントン・プレスが元気な音で、ジャクソンビル・プレスはどちらかと言うと大人し目ですね。
 私:なるほど、そう言えば以前こちらで聴き比べさせて頂いた「Wings Over America」も確かLAプレス盤が元気な音でジャクソンビル・プレス盤が大人しい音でしたね。それにしてもこのA③「Flying」はえげつない音しとるなぁ...(笑)
 Sさん:この「マジカル」は音が抜群に良いんで、うちの店の自慢の1枚なんです。商売なので、もちろん売れてほしいですけど、ずっと手元に置いておきたい気持ちもありますね。
 私:わかるなぁ、その気持ち。いやぁ~、今日はエエもん聴かせてもらいました。感謝感謝です。

「Hey Jude」UK シングルの Philips プレス盤

2019-11-07 | The Beatles
 この前 B-SELS でいつものようにビートルズ談義で盛り上がった後でちょうど話が一区切りついた時のこと、Sさんにお願いしてお店HP 10/17付の「日記」で “とても音が良い” と書いておられた “Hey Jude” の Philipsプレス盤を聴かせていただいた。中央部分が通常の4本プロングと違って3本プロングになっている珍しいシングルである。Sさんが盤に針を落とすと、ほとんどチリパチ音無しの無音状態からいきなりポールの “ヘイ ジュ~、ドンメイキッバ~ッ♪” という歌声がお店に響き渡った。おぉ、何というクリアネス! ポールの声がめっちゃ瑞々しい。しかしそれ以上に驚いたのはピアノ一音一音の響きだった。それはピアノという楽器本来のナチュラルな音で、明らかに自分が今まで聴いてきた「Hey Jude」のピアノよりも良い音だった。
 実を言うと私はコントラクト・プレスに関してはめちゃくちゃ疎くって、“確か「With The Beatles」にDecca プレスがあったっけ。” “イギリスでビートルズの人気が大爆発した「She Loves You」や「I Want To Hold Your Hand」でも他のレコード会社にプレスを依頼してたよな。” “「Hey Jude」もメチャクチャ売れたからプレスが追い付かなくって色んなプレスが出とったような気がする...” 程度の知識しかなかった。それもこれも“他社プレスが本家本元のEMIプレスよりもエエ音するわけないやろ...” と勝手に決めつけていたからだったが、実際にこの Philipsプレスの音を聴いてしまうとそれがいかに根拠のない浅はかな思い込みだったかがよくわかる。
 “めっちゃエエ音ですやん!” とコーフン気味に言うと、“でしょう?” とSさんも我が意を得たりという感じで嬉しそう。当然B面の「Revolution」もお願いして聴かせていただいたが、こっちも負けず劣らず凄い。この曲はギンギンに歪んだラウドなギターが全体を支配するヘヴィーなナンバーだが、このPhilipsプレスでは混沌の中にも秩序があるというか、スッキリと見通しが良くてカオスに陥ることなくこの曲が持つグルーヴ感を存分に堪能できるところが凄い。いやぁ、さすがは世界に冠たるオーディオ・カンパニーの Philipsである。そういえば半年ほど前にSさんに教えていただいた例の「Band On The Run」のUKマト3盤もPhilipsプレスだったっけ。う~ん、Philipsおそるべし... (≧▽≦) そしてそれらを体験的に見つけて教えてくださる Sさんは私にとってかけがえのないレコード師匠的存在だ。
 私はこのレコードを手に入れたいと思ったが、あいにくその日はキャッシュの持ち合わせが無かったし(←てゆーか、基本的に私はクレジットカードでしか買い物をしないのでキャッシュは一切持ち歩かない...)Philips盤の相場もよくわからなかったので、“まぁ帰ってからeBayやDiscogs で探せば簡単に見つかるやろ...” とタカをくくっていた。
 しかし家に帰ってからいざ実際に自分で探してみると、コレが中々難しい。まず出品されている数自体が少ないのだ。しかもeBayのは$50~$180と値段が高すぎてお話しにならないし、Discogsのは Gとか VG がほとんどでリスクが大きい。私はとりあえずその中から一番マシそうな VG+で£7.99というブツを買ってみることにした。
 しかしいざレコードが届いてみると盤面を一目見ただけで溝がヘタってるのがわかる満身創痍盤で、かけてみると案の定ジリジリチリチリというノイズがひっきりなしだ。しかも悪いことにエンディングが近づいて楽音がフェイドアウトしていくところでボツ、ボツと結構デカいノイズが入るのも気に障る。もちろん Philipsプレスならではのナチュラリズムの片鱗は随所に聴き取れるものの、B-SELS で聴かせていただいたあの美音には遠く及ばない。
 私は自力でのネット購入を諦め、B-SELSにあるあのピカピカ盤を買ってしまおうと決意。買うと決めたら善は急げである。ちんたらしていて売れてしまっては元も子もない。明日仕事から帰ったらすぐに B-SELSに買いに行こう... そう考えると何だか急にコーフンしてきて夜中の3時を過ぎているというのに頭の中で「Hey Jude」が延々リフレインして(笑)中々寝付けなかった。
 その翌日、仕事を速攻で切り上げてATMでキャッシュをおろしB-SELSへと直行。平日の晩にいきなり現れたものだからSさんも “仕事はどうされたんですか?” と驚かれていたが、“仕事よりもビートルズですよ。Philipsの「Hey Jude」くださいっ!!!” と言うと大笑いされた。以下、その時の会話;
 私:いやぁ~、やっぱりこの音最高ですね。私が今まで聴いてきた「Hey Jude」の中で文句ナシの№1です。
 Sさん:そう仰っていただけると嬉しいです。
 私:Philipsのプレス技術も凄いと思いますが、その高音質を楽しめるだけのこの盤質の良さが大きいと思うんですよ。こんなキレイな盤、どこを探しても無いですもん。
 Sさん:それは言えるかもしれませんね。傷だらけではただのレア盤になっちゃいますから。
 私:そうそう、まさに盤質こそが大正義ですよ。それにしてもこのピアノの音は何度聴いても痺れるなぁ...
 Sさん:ジョンの弾くギブソン J-160Eの音が他の盤とは違ってすごくよく聞こえるところもたまりません。
 私:「Hey Jude」には他にもDeccaやPyeのプレスがあるそうですが、音質的にはどうなんですか?
 Sさん:EMIプレスとあまり変わらないと思います。私が “これは凄い!” と思ったのはこの Philipsプレスだけですね。もちろんEMIプレスのスタンパー1桁台の盤とか聴いたらそっちの方がもっと凄いかもしれませんが...
 私:そんなん滅多に出てきませんで...(笑) 私はこのPhilipsプレスの音で大満足ですわ。

...というワケで私は今、B-SELSでゲットしてきた「Hey Jude」の最強シングル盤を聴きながら次のターゲットに向けての資金繰りに頭を悩ませている。早よボーナス出ぇへんかな...

「Magical Mystery Tour」イスラエル盤vsカナダ盤

2019-11-04 | The Beatles
 私は珍しいレコードを手に入れるといつもB-SELSへ持って行ってSさんと一緒にレコード談義に花を咲かせる。今回のMMTグリーン・カヴァー盤も手に入れたその週末に持って行ったのだが、何か比較対象があった方が話が盛り上がると思い、同じMMTステレオ盤の中でも一番気に入っているカナダ盤を一緒に持参した。“USスクラントン・プレス刻印入りのイスラエル盤” vs “同じキャピトルなのに何故かUS盤とは音が違うカナダ盤” という同門対決(?)の結果は如何に...

①イスラエル盤(SMAL-1-2835-A23/SMAL-2-2835-B22, 196g)
 私:今日は珍しい盤を持ってきました。緑色の「マジカル」です。
 Sさん:(ジャケットには興味を示さず食い入るようにデッドワックス部分を見つめながら)スクラントン・プレスのイエロー・パーロフォンですか... これは珍しい!
 私:それ、実はイスラエル盤なんですよ。
 Sさん:へぇ~、初めて見ました。
 私:センター・レーベルを見てもジャケット裏を見ても “Made in ...”っていう記載がどこにもないんですけど、ビニールの材質が明らかにUSキャピトル盤とは違うので、多分イスラエルでプレスしたんだろうと思います。でも外国の盤にアメリカのプレス工場の刻印が入ってるのって珍しいですよね。
 Sさん:おそらく US盤のスタンパーをそのまま空輸して使ったんじゃないですか。
 私:なるほど。これってもろにUSの音ですもんね。届いた時は針飛びはするしチリパチ・ノイズは結構出るしでどないしよかと思いましてん。まぁ何とか聴けるレベルまで修復したんですけど、どうですか?
 Sさん:言うてはるほど音悪くないじゃないですか。イキイキとした感じが伝わってきて、何ていうか元気の出る音です。イエロー・パーロフォン盤で聴く「マジカル」っていうのもオツなもんですね。
 私:まぁちょっと潤いに欠けますが、竹を割ったようなドライな音作りで、これはこれでエエと思います。

②カナダ盤(ST1-2835-B26/ST2-2835-A25, 141g)
 私:じゃあ次はカナダ盤ステレオいってみましょう。ジャケット右上にキャピトル・ロゴがあるのがUS盤とは違うところですね。
 Sさん:(A①「Magical Mystery Tour」が始まるとすぐに)おぉ、これは違いますねー!!! 明らかに一皮むけた感じがします。
 私:これ、エエでしょ? 「マジカル」はカナダ盤の音が一番好きなんです。ヌケの良さがめっちゃ気持ちエエんですよ。
 Sさん:さすがカナダですね。キレが素晴らしいです。すごく良い音してる... 特にA面が良かったですね。
 私:まぁB面後半の3曲は疑似ステですからねぇ...
 Sさん:最初にリアル・ステレオが出たのは71年のドイツ盤でしたよね。
 私:B面に関してはアレがベストの音でしょう。
 Sさん:それにしてもこのA面の目の覚めるような音は本当に素晴らしいです。
 私:同じキャピトルなのにUS盤とはどうしてこうも違う音になるんでしょう?
 Sさん:やっぱりプレス枚数が少ないというのが大きいんとちゃいますか? US盤は比べ物にならないくらい大量生産せなあきませんからね。
 私:確かに...
 Sさん:それと、ビニールの質とかエンジニアの腕とかでも音はコロコロ変わりますからね。
 私:そうですね。「マジカル」のカナダ盤って状態の良い盤はあまり出てこないんですが、キレイなのを見つけたら間違いなく “買い” やと思います。
 Sさん:「マジカル」は大好きなレコードなので今日は楽しかったです。
 私:喜んでいただけて何よりです。何か面白いレコード買うたら又持って来ますわ。