shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

モノラルで聴くゼップ⑤ 「A Collection Of Mono Albums」

2013-04-29 | Led Zeppelin
 ゼップのモノラル特集ではこれまでずーっとシングル盤を取り上げてきたが、最終回の今日は稀少なモノラルLPネタでいこう。そもそもアルバムに関しては、アルゼンチン盤とかチリ盤とかウルグアイ盤といった南米盤を除けば公式にはモノラルのオリジナル盤は一切存在しないのだが、「Ⅱ」「Ⅲ」「聖なる館」の3枚にはプロモ用ホワイト・レーベルのモノラル盤が存在しており(←何故「Ⅳ」だけモノラル盤が無いんやろ???)、その稀少性から市場では目の玉が飛び出るような高値で取り引きされている。「Ⅰ」のモノラル・プロモ盤は一応存在しているということになってはいるが、グーグル画像検索でもネット・オークションでもまだ見かけたことすらない超幻盤で(←あるサイトにはその存在自体が unconfirmed と書いてあった...)、もし出品されたらどんな値段になるのかまったく想像もつかない。ごくたま~に見かける「Ⅱ」「Ⅲ」「聖なる館」のモノ盤ですら、eBay で大体1,000~1,500ドル、ディ○クユ○オン(笑)では20万円近い値付けがされており、とてもじゃないが私なんかが買えるレベルのブツではない。
 しかしそんな貧乏マニアにとっての救世主的存在がブートレッグである。最近では “コレクターズCD” などというオシャレな名前で呼ばれているが、ビートルズやゼップのマニアならこういったブート盤のお世話になっている人も多いだろう。スコーピオ・レーベルからリリースされたこの「ア・コレクション・オブ・モノ・アルバムズ」という3枚組ブートCDは、「Ⅱ」「Ⅲ」「聖なる館」のDJコピー・モノラル盤をCD化したもので、1枚10万円以上する激レア盤3枚ということで計30万円以上出さなければ聴けない貴重な音源が中古CD1枚分ぐらいの出費で聴けるのだからホンマにありがたいことだ。因みに私はこのCDをヤフオクで1,200円で買ったのでコスパは抜群に高い。ファンとしてはレコード会社が出してくれないこういったレアな音源を発掘してリリースしてくれるブート・レーベルの頑張りに感謝感謝... ホンマに西新宿方面には足を向けて寝れませんわ(^.^)
 この「ア・コレクション・オブ・モノ・アルバムズ」は3枚のDJコピー盤からそれぞれ “アナログ起こし” で作られており、原盤ディスクのスクラッチ・ノイズがそのまま入っているのだがアナログ・リスナーならほとんど気にならないレベルだし、ヘタにノイズ・リダクションを施されてノイズと共にアナログの一番おいしい周波数帯域の成分まで除去されては元も子もない。そういう意味で、このCDの音は十分満足のいくものだと言えるだろう。
 更に、ゼップのモノラル・ヴァージョンはただ単に左右のチャンネルをミックスしたものではなく、モノ再生した時にヴォーカル・トラックとインストルメンタル・トラックのバランスが自然に聞こえるようにオリジナルのステレオ・マスターをリマスタリングする CSG(Compatible Stereo Generator)プロセスを経て作られたミックスなので、いわゆるひとつの “疑似モノラル” のように音が奥に引っ込んだり籠ったりということが少ないのだが、この3枚のCDでもそんなCSG効果が存分に発揮されたナチュラルなモノラル・サウンドが楽しめて言うことナシだ。
A Collection Of Mono Albums (Heartbreaker / Bring It On Home / Immigrant Song / Celebration Day / The Song Remains The Same / Over The Hills And Far Away)


 ここまで書いてきてあるアイデアが閃いた。ステレオ盤しか存在しないアルバムでもモノ針で再生すれば迫力満点のモノラル・サウンドになるのではないか... つまり「フィジカル・グラフィティ」や「プレゼンス」といった後期ゼップ盤を世界に一つしかない “自家製モノ” 化してしまおうということだ。ただ、ステレオ盤をモノ針でかけると溝を痛めてしまうとどこかで聞いたことがあるので、どちらもUK1st プレス盤は避けて 2nd プレス盤や国内盤を使って実験してみたところ、出てきた音は期待通りのガッツのあるサウンドで大満足(^o^)丿 もちろんCSGプロセッシングと同じというワケにはいかないが、それでもオルトフォンのモノラル・カートリッジ CG25 Di の威力は絶大だ。アナログはこういう愉しみ方もできるからエエですな。参考までに2曲ほどアップしておきますので興味のある方は聴いてみて下さい。
モノラル版インマイタイムオブダイング

モノラル版アキレス

モノラルで聴くゼップ④ 「Black Dog」「Rock And Roll」

2013-04-26 | Led Zeppelin
 “モノラル特集” もいよいよ終盤戦に突入だ。前にも書いたように一般に市販されているゼップのシングル盤は2枚目の「胸いっぱいの愛を」までがモノラルで3枚目の「移民の歌」からステレオに完全移行したのだが、ラジオ局に配られるプロモ・シングル、つまりDJコピーに関しては何と1976年リリースの「キャンディ・ストア・ロック」までAMラジオのオンエアー用にモノラル・ヴァージョンが作られていた。
 今日取り上げるプロモ・シングルは「ブラック・ドッグ」と「ロックンロール」の2枚なのだが、あまり市場に出てこないせいか日本では結構高値で取り引きされており、ヤフオクではシングル盤の分際で(?) “激レア★爆音mono!!” という煽り文句(笑)と共に10,000円~18,000円ぐらいで出品されているし、ディ○クユ○オンのサイトでも16,000円前後の値が付けられている。私はまだ1ドル=80円台の頃にeBayでそれぞれ $28と $20で手に入れたので何かめっちゃ得した気分だ(^o^)丿 今はもう1ドル100円を突破するのも時間の問題みたいだが、1ドル=75円だった頃がホンマに懐かしい... eBay ユーザーとしては Fuckin' Abenomics! と言いたくなってくる。
 この2枚は共にモノラル・サイドが赤/白レーベルで、裏面のステレオ・サイドは「ロックンロール」の方がオール水色レーベル、「ブラック・ドッグ」の方が赤/水色の2色レーベルになっている。しかも「ブラック・ドッグ」は両面とも3分50秒のショート・ヴァージョンが収録されており、何故か両面に “PLUG SIDE” の表示がある。これはラジオ局のDJに “こっちの面をかけてね” という、いわゆるひとつのA面表記のことなので、両面に表示しても意味がないように思うのだが...
 音の方は1枚目の「コミュニケイション・ブレイクダウン」や2枚目の「胸いっぱいの愛を」ほどの衝撃性はないが、それでもモノラル特有のエネルギー感は十分に感じられるし、ヴォリュームを上げていくとヴォーカル、ギター、ベース、ドラムスが一つの音の塊となってドドーッと襲い掛かってくるようで、イケイケのハードロックが大好きな私としては快感そのものだ。特にボンゾの一発一発がビシバシきまる「ロックンロール」は強烈で、“モノラルのゼップはボンゾを聴くためにある!” と言い切ってしまいたくなるぐらいカッコイイ(^o^)丿  残念ながら YouTube では著作権の関係から “全世界でブロック” されちゃったので、ニコ動の方にアップした音源でモノラル・サウンドを楽しんで下さいませ。


モノラルで聴くゼップ③ 「Stairway To Heaven」

2013-04-20 | Led Zeppelin
 キタ━━━(゜∀゜)━━━!!! 前々からずーっと欲しかった「天国への階段」のモノラル・プロモ・シングルをついに手に入れた。しかも盤質極上のピカ盤で、ジャケットもちゃーんと綺麗なのがついている。そもそも “モノラルで聴くレッド・ゼッペリン” 特集をやろうと思いついたのも、このレコードをeBayで落札できたことがきっかけなのだ。
 私がこの盤の存在を知ったのは3年ほど前のことで、YouTube で「移民の歌」のモノラル・ヴァージョンを探していた時にたまたま “Led Zeppelin Mono” で検索してみたところ、“Led Zeppelin – Stairway To Heaven 45 rpm (mono version)” というのを発見、“「階段」のモノ・ヴァージョンだとぉ???” と「移民の歌」そっちのけで大コーフンしながらもまだ半信半疑で説明に目をやると “The rare promo radio station copy with sleeve from 1972. Not released as a commercial single.” とある。要するにこれは1972年にAMラジオでのオンエアを目的に制作されたプロモーション・オンリーのDJコピー7インチ・シングル盤で、一般への販売は一切なし。更にこの種の盤には珍しくピクチャー・スリーヴが付属しており、片面に「階段」のモノラル・ヴァージョン、もう片面にステレオ・ヴァージョンが収録されているというのだ。へぇー、「階段」にそんな盤があったのか...(・o・)
 専門のサイトで詳しく調べてみると、「階段」は正式なシングル・カットはされなかったものの、アトランティック・レコードは70年代から90年代にかけて以下のように何度か「階段」のプロモ・シングルを作って主にアメリカのラジオ局に配っていたという。
  ①PR-175(1972 US):・唯一の「階段」モノ・ヴァージョン収録盤
             ・DJコピー白レーベル
             ・ピクチャー・スリーヴ付き
  ②PR-269(197? US):・両面に「階段」ステレオ・ヴァージョン収録
             ・DJコピー及びジュークボックス用薄青レーベル
             ・同じカタログ№でB面が「Hey Hey What Can I Do」の赤黒レーベル盤あり
  ③LZ-3(1990 UK):・「リマスターズ」販促用150枚限定盤
            ・スモール・センター・ホールの赤緑レーベル
            ・プロモ・レター付き
            ・裏面は「胸いっぱいの愛を」
  ④PR-4424(1991 US):・「天国への階段」発表20周年記念盤
             ・アトランティック赤黒レーベル
             ・両面にステレオ・ヴァージョン収録
             ・ピクチャー・スリーヴ付き
 私は別にコレクターでもマニアでもなくただこの曲のモノラル・ヴァージョンを良い音で聴きたいだけなので②~④には何の興味も無い。ただただ①の一点狙いである。とまぁそーゆーワケでこの3年間というもの、eBay で虎視眈々と狙っていたのだが、かなりレアなコレクターズ・アイテムだけあって中々出てこないし、ごくたまに出てきてもものすごい高値で落札されていく。所詮コレは私なんかが入手できるものではないな... と正直諦めかけていた。
 しかしたまたま去年の暮れからこのブログでゼップ祭りを始めて “やっぱりどーしても欲しい”感が強くなり、1月の半ば頃に運良く出品された際に $220を付けてみたのだが、何と$550で決着という凄まじい修羅場にあえなく撃沈(>_<) それでもめげずに粘り強く網を張っているとラッキーなことに3月に入って別のセラーから出品されたので再チャレンジ。なぜか今度は〆切直前になっても $175 表示のままだ。eBayではごくたまにエアポケット現象のようなビッド空白期があって垂涎盤を信じられないような安値で買えることがあるのだが、ひょっとするとこれは千載一遇のチャンスかもしれない。いつ取るか... 今でしょ!
 ということで林先生のCMに背中を押され(?)、今回は$60上乗せして $280で終了5秒前に入魂スナイプしたところ、$230で見事落札できたというワケだ。eBayやってる人なら分かってもらえると思うけど、勝負が決まった瞬間に目にする緑色の数字(←負けた時は数字が赤色で表示される...)は何度見てもエエもんですなぁ...(^o^)丿 カタギの人から見ればこれでも “シングル盤1枚にナンボ使ってるねん!” と思われるかもしれないが、私は好きな盤は何百回でも聴く人間なので気にならない。1回100円として200回聴けば軽~く元が取れるでしょ(笑)
 で、肝心の音の方だが、一言で言うと “芯のある音”。中低域が分厚く、ガッチリとした武骨なモノラル・サウンドだ。ボンゾの一発一発がズシリと重い。ただ、この曲のスケールの大きさを味わうなら裏面のステレオの方に軍配が上がるのだが... しかもこの45回転ステレオ・ヴァージョンとUK 1st プレスLP 収録の「階段」とでは音が微妙に、しかし確実に違っており、3者の中では LP の音が一番柔らかく感じられる。特に前半部の牧歌的な雰囲気は LP ヴァージョンの独断場で、逆に後半にかけて盛り上がるパートはモノラルに一日の長があるように思えた。シングル盤のステレオ・ヴァージョンは両者の中間といった感じで、三者三様の愉しみ方が出来るのが嬉しい。
 とにかく聴き慣れたステレオ・ヴァージョンとは又違った音で「階段」が楽しめるこのシングル、大枚叩いて買って大正解だった。まだ1年の1/3しか過ぎてませんが、私にとっての “今年のベスト・バイ” はコレでほほ決まりですわ\(^o^)/

モノラルで聴くゼップ② 「Whole Lotta Love」

2013-04-13 | Led Zeppelin
 去年の4月に今の職場に転勤して1年が過ぎ、大嫌いだった前所長が定年退職でいなくなって大喜びしたのも束の間、この4月の職場内配置転換で私が蛇蝎の如く嫌っていたインターナショナル・セクションとやらに入れられてしまった。何でこの私が??? 例えるなら無理やり聖歌隊に入れられたオジー・オズボーンみたいな感じ(?)で、居心地悪いことこの上ない。これは何かの罰ゲームなのか? とにかく何から何までイヤな事だらけなのだが、一番ムカつくのがアホの一つ覚えみたいに “グローバル” とか “インターナショナル” とか言って自己満足に浸ってる連中だ。一体何が悲しゅーて日本人同士が英語で会議せなアカンねん! アホちゃうか? とにかくそういったおめでたい連中の現実離れしたタワゴトに付き合わされてストレス溜まりまくりの毎日だ。おかげでブログの更新が停滞してしまったが、めげずにゼップ祭りを続けよう。

 “モノラルで聴くレッド・ゼッペリン” 特集パート2は「胸いっぱいの愛を」である。前回取り上げた「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ / コミュニケイション・ブレイクダウン」のUSモノラル盤に出会うまで私はゼップを100%アルバム単位で聴いていたので、改めてシングル・ディスコグラフィーを調べてみたところ、非売品のプロモ盤を除けば 2nd シングルの「胸いっぱいの愛を」までがモノラルで、1970年リリースの 3rd シングル「移民の歌」からステレオに変わったとのこと。いったん火が付いたら徹底的に極めないと気が済まない性分の私は、次のターゲットをその「胸いっぱいの愛を」に絞った。
 「グッド・タイムズ...」の時に焦って再発盤をつかむという大ポカをやったので、「胸いっぱいの愛を」のシングル盤に手を出す前に更に詳しくレーベル面の違いをチェックしてみると、ややこしいことにレーベル面左側に記されているマトリクス・ナンバー末尾のアルファベットが -PL、-MO、-LY、-SPと、私が調べただけでも4種類違った盤が存在している。どれの音が良いのか、あるいはみな同じ音なのかサッパリわからない。悩んだ挙句、音の良かった「グッド・タイムズ...」盤のマトリクス末尾が-MO だったので、「胸いっぱいの愛を」も同じ -MOの盤をeBay で探して $20でゲットしたのだが、結果的にこれで正解だったようで音溝には期待通りの生々しい音が刻まれていた。
 尚、後で分かったことだが、これらのアルファベットはプレス工場のコードIDで、
  MO: Monarch Records, Los Angeles, California
  PL: Plastic Products, Memphis Tennessee
  LY: Shelly Products, Huntington Station, New York
  SP: Specialty Records Corp.; Olyphant: Pennsylvania
ということらしい。だから私が買ったのはロサンゼルスにあるモナーク・レコードの工場でプレスされた盤ということになる。どうやら 1st プレス云々とは関係が無いようだ。
 更にネットで調べると、あるサイトに日本盤シングルに関する記述があり、何と日本で最初にリリースされたゼップ・シングル2枚はワーナーパイオニアではなく日本グラモフォンから出ていて(←カタログ№が DT- で始まるヤツです)、US盤と同じくモノラル・ミックスを使用しているというのだ。これはエライコッチャである。私はかなり長い間 “日本盤=音が悪い、オリジナル盤=音が良い” という迷信を信じて生きてきたのだが、音聴き会G3で音の良い日本盤や逆に音の悪いオリジナル盤を聴かせてもらっていたこともあってかえって興味がわき、“可能ならグラモフォン盤のシングルも聴いてみたいなぁ...(^_^.)” と思うようになった。
 こーなったら善は急げである。さっそくヤフオクで網を張ってみたところ、ラッキーなことにそれから数日してそのグラモフォン盤「胸いっぱいの愛を」が出品された。ゼップのグラモフォン盤というのは出るところに出れば結構高くて諭吉さん一人分ぐらいはするらしいのだが、この時は何故か無競争で800円で手に入れることが出来た。ジャケットにウォーターダメージがあってブヨブヨ(笑)だったが盤質はかなり良かったので大満足だ。
 で、US盤と日本盤の音の違いだが、US盤の方がわずかにハイ上がりかなという程度でほとんど差は感じない。60年代プレスの日本盤でたまに凄い音のレコードに出会うことがあるが、これなんかまさにその典型と言っていいだろう。とにかくボンゾの豪快なドラミングがズンズン腹に来るし、ゴリゴリくるペイジのリフもめっちゃ気持ちイイ(^o^)丿 プログレちっくな中間部は音が右往左往しないのでステレオ・ヴァージョンに軍配が上がるが、その混沌パート後の例の切っ先鋭いギターソロは圧巻のド迫力だ。
 B面はUS盤が「リヴィング・ラヴィング・メイド」で国内盤が「サンキュー」とそれぞれカップリング曲が違っているのだが、モノラルの良さが堪能できるのは前者の方で、前回の「コミュニケーション・ブレイクダウン」もそうだったが、やはりアップテンポで押し出しの強いプリミティヴなロックンロールにモノラルの武骨なサウンドが合うのだなぁと実感した。
Led Zeppelin - Whole Lotta Love - 45 RPM Original HOT Mono Mix

Led Zeppelin - Living Loving Maid, Mono 1969 Atlantic 45 record.


モノラルで聴くゼップ① 「Communication Breakdown」

2013-04-07 | Led Zeppelin
 レコードの再生方式には大きく分けてモノラルとステレオの2種類がある。私が音楽を聴き始めた1970年代半ばというのはもう完全にステレオの時代で、モノラルというと “古くさい” “奥行きや臨場感がない” → “音が悪い” というネガティヴなイメージしかなかった。当時買ったLPレコードの中に「プリーズ・プリーズ・ミー」のジャケ違い日本盤「ステレオ!これがビートルズVol.1」というのがあり、“ステレオ”という4文字が神々しく輝いて見えたものだ。1980年代に入ると私の音楽生活は80'sポップス中心となり、いつしか“モノラル”という言葉に出会うことすらなくなった。
 しかし1990年代の半ばにジャズを聴き始め、行きつけのレコード屋で “50~60年代の古い音源はモノラルに限りますよ...” とブルーノートのオリジナル盤LPを聴かせてもらって私のモノラルに対する偏見は木端微塵に打ち砕かれた。目からウロコとはまさにこのことで、ステレオがなんぼのもんじゃいとばかりにスピーカーの中央に凝縮されたエネルギーがドーンと鉄砲水のように襲いかかってきて気持ちイイのなんの...(≧▽≦)  続いて聴かせてもらったペギー・リーやドリス・デイのような古いヴォーカル物も中音域の密度感がハンパない。これがきっかけで私は “ジャズやヴォーカル物のLPはモノラルのオリジ盤に限る” を信条とするようになった。
 ジャズ関係で欲しい盤はほぼ手に入れて一息ついた2004年頃、 “ジャズでこれやったらひょっとしてロックやポップスも凄いんちゃうの?” と思いつき、手始めにeBayでプレスリーやロネッツといったオールディーズのモノラル盤を取って聴いてみるとこれがもうビックリするくらいの生々しさだ。すっかりモノラル教(?)信者と化した私は死力を尽くして最大の難関であるビートルズにトライ、紆余曲折を経ながらも「金パロ」から「ホワイト・アルバム」まですべてUKパーロフォンのモノラル盤で手に入れた。
 ビートルズで言うとちょうどアルバム「イエロー・サブマリン」からステレオ盤がメインの時代に入るので、ロックの世界におけるモノラルとステレオのチェンジオーバーは1968/1969年と見ていいだろう。クリームなら「ホイールズ・オブ・ファイアー」(1968)と「グッバイ」(1969)がモノラルとステレオの分かれ目というワケだ。だからレッド・ゼッペリンにモノラル盤が存在するなどとは夢にも思わなかったし、実際カタログに載っていたゼップのオリジナルLPにモノラル盤は無かったので、彼らのアルバムはすべてUKオリジナルのステレオ盤で手に入れて満足していた。
 そんなある日のこと、ネットでたまたま目にしたゼップ関連の掲示板に彼らのアメリカにおけるデビュー・シングル「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ / コミュニケイション・ブレイクダウン」のUS盤はモノラルだという記述があり、raw power(生々しいパワー)とかoverwhelming sound(圧倒的な音)とかいう表現で絶賛されていたのだ。レッド・ゼッペリンにモノラル盤が存在するのか... ボンゾの爆裂ドラミングをモノラルの凄まじい音圧で浴びるように聴いてみたい!!! いてもたってもいられなくなって eBay で検索すると BUY IT NOW $3.00 という嘘のような値段で出ていたので即決。しかし “一体どんな凄い音が出てくるんやろ?” とワクワクドキドキしながら届いた盤をかけてみると “これのどこが overwhelming やねん???” と盤をブチ割りたくなるような薄っぺらい音だ。これは一体どーゆーことなのだろうか?
 納得いかない私が上記のサイトでもう一度確認してみると、レーベルのデザイン表記が微妙に違う。私が買った盤のレーベル面右下部にはワーナー・コミュニケーションズの “Wロゴ” が表示されているのだが、それは1974年以降にリリースされた盤についているもので、ゼップに関しては右下に “1841 BROADWAY, NEW YORK, NY” という所在表示がある1968~1973年頃までの盤がアーリー・プレス。つまり私のは1970年代半ばにプレスされた再発盤だったというワケだ(→詳細はココ)。LPを買う時はレーベル面の画像を細かくチェックするのだが、シングル盤ということで油断していた私が甘かった。
 しかしこの程度のことでめげる私ではない。今度は画像をしっかり確認してから正真正銘のファースト・プレス盤をゲット、シングル盤ということで人気がないのか無競争で$9.99 だった。盤が届き、はやる心を抑えながら “多分こっちの方が凄いやろな...” とあたりを付けて「コミュニケイション・ブレイクダウン」の方に針を落とすと、いきなり雷鳴のようなギター・リフの轟音が部屋中に響き渡り、ボンゾのバスドラが大地を揺るがす。まるでガレージ・パンクのような荒々しさだ。予想通り、いや予想以上に野太い音の塊がセンターからドドドーッと押し寄せてきて気持ちエエことこの上ない。
 もう片面の「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」は押し出し感よりも立体感が重要なのでステレオ・ミックスの方が合っているように思うが、それでもイントロの バンバン♪ のド迫力にはブッ飛んだ。モノラルのガツン!とくるアナログ・サウンドでレッド・ゼッペリンを味わい尽くす... これってハマると結構病み付きになりますぜ(^_^.)
コミュニケイション・ブレイクダウン [モノラル]

グッド・タイムズ・バッド・タイムズ [モノラル]
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Great Zeppelin / Great White

2013-04-03 | Led Zeppelin
 今日はグレイト・ホワイトが1999年にリリースしたゼップ・カヴァー・アルバムの最高傑作、「グレイト・ゼッペリン」だ。レッド・ゼッペリンのトリビュート・アルバムというのは数多く存在するが、そのほとんどは様々なアーティストによるカヴァーを寄せ集めたコンピ盤か、あるいはインディーズ系のゼップ専門トリビュート・バンドによるものであり、第一線で活躍しているロックバンドによる1枚丸ごとゼップ・カヴァー・アルバムというのは私の知る限りではこの盤しかない。しかもパーシーそっくりの声質を持つジャック・ラッセルの歌と “これぞプロフェッショナル!” と言いたくなるような高い演奏力でもって、ゼップ以上にゼップらしく聞こえるぐらい(?)ハイレベルな完コピを聴かせてくれるのだ。
 そもそもバンド名のグレイト・ホワイトとは Great White Shark、つまりホオジロザメのことで、そのせいか彼らのアルバム・ジャケットにはサメの背びれが登場することが多いのだが、この「グレイト・ゼッペリン」ではゼップの 1stアルバムのデザインを堂々とパロッて飛行船の代わりに巨大な白鮫を登場させており、ビンデンブルグ号ならぬ “ホオジロザメ号” が爆発炎上するという遊び心溢れるジャケット(←爆発部分は前回のレズ・ゼッペリンのと同じ写真使ってる...)がめちゃくちゃ気に入った私はネットで見つけて即ゲット、ロクに試聴もせずにジャケ買いした1枚だ。
 中身の方は1996年12月にサンタ・アナのギャラクシー・コンサート・シアターで行われた “レッド・ゼッペリン・プロジェクト”、つまりワン・ステージ全てをゼップのカヴァーで固めたコンサートの模様を収録したライヴ盤で、まず目に付くのがその渋~い選曲だ。超有名曲は「移民の歌」と「天国への階段」ぐらいのものでそれ以外はある意味マニアックと言っていいようなマイナーな曲が選ばれており、このあたりにも “単なるヒット曲集にはしねぇぞ!” というゼップ・マニアとしての彼らの拘りが強く感じられる。コンサートの1曲目が①「イン・ザ・ライト」というのも超の付く変化球だし、本家がライヴで演らなかった②「リヴィング・ラヴィング・メイド」(←聞くところによるとペイジはこの曲が好きじゃなかったらしい...)が聴けるというのがこのアルバムの大きな魅力だ。私はこのキャッチーなロックンロール曲が大好きなので、グレイト・ホワイトが全盛期のゼップさながらに力強く歌い演奏する②が聴けて大喜びしたものだ。
Living Loving Maid


 ④「シンス・アイヴ・ビーン・ラヴィング・ユー」も絶品だ。声質は言わずもがな、緩急織り交ぜながらパーシーの歌い方の特徴までも巧くとらえたジャック・ラッセルのヴォーカルがもう鳥肌モノの素晴らしさだし、ペイジが憑依したかのようにあの雰囲気を見事に再現したマーク・ケンドールのクリソツ・プレイにもゼップ・ファンなら涙ちょちょぎれること間違いなしだ。
Great White - "Since I've Been Loving You" - The Ritz 1988


 「イン・スルー・ジ・アウトドア」は新譜としてリアルタイムで体験した唯一のゼップ盤なのでかなり愛着のあるアルバムなのだが、世評はイマイチだし収録曲のカヴァーも非常に少ない。だからトラックリストの中に⑧「オール・マイ・ラヴ」を見つけた時はめっちゃ嬉しかったし、ヘタしたら本家ゼップよりも上手いんちゃうの... と思えるような(←ドラムは完全に負けてるけど...)手堅い演奏にも大満足。そしてそんなシニアなバラッドの後に超体育会系の⑨「移民の歌」を持ってきて一気に盛り上げるところもさすがという他ない。本家のパーシーが72年に喉を痛めたせいでセットリストから外されたこともあって、この曲をオリジナル・キーで歌い切るジャック・ラッセルの凄さを再認識させられた。
GREAT WHITE ALL MY LOVE.wmv

Great White - Immigrant Song


 「フィジカル・グラフィティ」収録の隠れ名曲⑬「ザ・ローヴァー」も圧巻だ。この曲も本家ゼップのライヴ・ヴァージョンを聞いたことがなかったので②や⑧と同じく大喜び\(^o^)/したトラックなのだが、何にせよ、ヘヴィーなリフの積み重ねが生み出す後期ゼップ特有のうねるようなグルーヴをライヴでこれほど見事に再現できるバンドは彼ら以外にいないだろう。
 グレイト・ホワイトがレッド・ゼッペリンへの限りない愛情と拘りでもって作り上げたこの素晴らしいカヴァー・アルバムはまさに空前絶後の偉業と呼べるもの。ゼップ・ファンなら絶対に “買い” でしょう。
Jack Russell's Great White Marquee 15 Led Zepplin The Rover.wmv