shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Beatles (German Record Club Issue: H 052)【Balloon Cover】

2017-03-28 | The Beatles
 リタ・ライスに続く “やっと手に入れた垂涎盤”シリーズ(?)第2弾はビートルズの Deutscher Schallplattenclub(ドイツ・レコードクラブ)イシューLP(H 052)で、ファンの間で通称 “バルーン・カヴァー” と呼ばれている1枚だ。
 レコード・マニアというのは通ぶって「〇〇カヴァー」などという、一般ピープルには意味不明の符丁を使いたがる傾向がある(でしょ?)。ビートルズだけでもかの悪名高き(?)「ブッチャー・カヴァー」(アメリカ)を始め、「ホース・カヴァー」(フランス)、「シェル・カヴァー」(オランダ)、「エスキモー・カヴァー」(デンマーク)など、挙げていくときりがないが、こうしたマニア内の仲間言葉はそれなりに有効で、これらのアルバムのどれをとってもその正式名称からはその有難味は浮かんでこない。だからここはやはりビートルマニアらしく、「ドイチェ・シャルプラッテンクラブ・イシュー」などという舌を噛みそうな名前ではなく、「バルーン・カヴァー」入手!と厳かに宣言してしまおう。
 そもそも私がビートルズの「〇〇カヴァー」なるものに興味を持ったのは友人であると同時にレコード・コレクションの師匠でもある 901さんの影響で、ちょうどビートルズのUKオリジナル・モノ盤蒐集が一段落した頃に “こんなん見つけたんやけど、めっちゃ良いジャケット・デザインやねぇ” と言いながら緑の中で乗馬を楽しむ4人の姿が眩しいジャケットの “ホース・カヴァー” レプリカCDを見せていただいたのがすべての始まりだった。当時UK盤至上主義者だった私に各国盤の意匠を凝らしたユニークなジャケットを眺めながらビートルズを聴くという愉しみ方を教えて下さったのだ。最近ちょっとご無沙汰してますが、901師匠、ホンマに感謝しとります。
 ネット・オークションの普及によって、一昔前まではレコード屋の壁面を飾る数万円の盤がその半値以下の価格で入手可能になったというのは前にも書いたが、このレコードもそんな垂涎盤の1枚で、例えばディスクユニオンのビートルズ・セールでは目玉商品として35,000円~40,000円くらいの値が付けられている。人気の秘密は一にも二にもそのカラフルでサイケ・ポップな感じがたまらないジャケット・デザインにあるようだ。
 そのせいかオークションでもセラーは強気の値段設定で、$120~$150スタートというケースが多いが、私は何としても$100以下で買うと心に決めていたので、これまで中々入手できなかった。しかし待てば海路の日和ありとはよくぞ言ったもので、eBayに €60で出たばかりの盤を発見し、BUY IT NOWで即ゲット。アメリカとは違ってドイツからは送料も安く、1万円で軽くお釣りがくる値段で買うことができてめっちゃ嬉しい (^o^)丿
 届いたブツの梱包を解いてレコードを取り出した瞬間、ジャケットのあまりの美しさにハッとさせられたのが第一の衝撃で、とにかく写真の発色がめっちゃ綺麗(≧▽≦)  フレーム枠のサイケな色遣いも絶品で、パソコンの画面で見るのと実物とではエライ違いだ。ビートルズ・ファンにとって、これはもう見ているだけで目の保養になるジャケットだと思う。
 サイケなジャケットは「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」や「ペニー・レイン」、「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ」といったナンバーを連想させるが収録曲は1963~66年までのコンピレーションで、A①エイト・デイズ・ア・ウィーク ②ロックンロール・ミュージック ③ノー・リプライ ④アンド・ユア・バード・キャン・シング ⑤グッド・デイ・サンシャイン ⑥オール・マイ・ラヴィング(ハイハット入り) ⑦アンド・アイ・ラヴ・ハー ⑧ア・ハード・デイズ・ナイト B①ガール ②エリナー・リグビー ③シングス・ウィー・セッド・トゥデイ ④イエロー・サブマリン ⑤イフ・アイ・フェル ⑥ミッシェル ⑦アイ・シュッド・ハヴ・ノウン・ベター ⑧ドクター・ロバート、という何の脈絡もない意味不明な選曲。
 そういうワケで聴く方に関しては正直あまり期待していなかったのだが、いざレコードに針を落としてみてその音の良さにビックリ(゜o゜)  大袈裟ではなくジャケットに続く第二の衝撃である。このレコードは1967年リリースのステレオ盤なのだが、この時点でドイツのステレオ技術がイギリスよりも一歩も二歩も先を行っていたということか、それともレコード・クラブ・イシューゆえの高音質なのか、そのあたりはよく分からないのだが、少なくともこのレコードに限って言えば素晴らしいステレオ・サウンドだ。この盤は美麗ジャケット目当てで買ったようなものだが、中身の方もそれに負けない音の良さで、“コレはホンマに買って良かったぁ...(^.^)” と喜び倍増の逸品なのだ。
 尚、以前ヤフオクでこの「バルーン・カヴァー」のレプリカ・ブートレッグ盤が8千円だか9千円だかのえげつない値段で出ているのを見たことがあるので、偽物にはくれぐれも気を付けましょう。本物はラミネート・カヴァーでマトリクス・ナンバーは機械打ちの 12PAL 4184-SM-1 / 4185-SM-1 です。

【追悼】チャック・ベリーよ、永遠なれ

2017-03-22 | Oldies (50's & 60's)
 昨日は侍ジャパンの練習試合を見るために休みの日にもかかわらず早起きしたのだが、試合の途中で中継が終了したのでそのままテレビをつけっ放しにして朝飯を食べていた。テレビでは豊洲がスベッたとか森友がコロンだとか相も変わらずクソしょーもないニュースを延々と垂れ流していたので鬱陶しくなり消そうとしたところ、“それでは次のニュースです。ロックンロールの神様と呼ばれるチャック・ベリーさんが亡くなりました。90歳でした。” というキャスターの言葉が耳に飛び込んできた。え~、チャック・ベリー死んだん??? これはエライコッチャの大ニュースである。練習試合なんか見てる場合ではない。
 もう今から40年以上も前の話になるが、中学に入って「赤盤」でビートルズに入門した私は少ないお小遣いをやりくりして他のアルバムを1枚ずつ買っていくことにした。当時は毎月3,000円もらっていたのでちょうど月1枚のペースになる計算だが、LPレコードを買えるだけのお金が貯まるのが待ちきれなかった私は(←こういうとこは今も昔と全然変わってへんな...)「赤盤」に入っていなかった初期のロックンロール・ナンバーをシングル盤で何枚か買って渇きを癒そうと考えた。そんなこんなで最初に買ったのが「ロール・オーヴァー・ベートーベン」と「ロックンロール・ミュージック」の2枚だった。
 もちろん当時の私はチャック・ベリーのチャの字も知らないド素人。オリジナルとカヴァーの違いすらよく分からず、数あるシングル盤の中からただただ本能の趣くままに一番気に入ったものを2枚選んだ結果がたまたまチャック・ベリーのカヴァーだったのだ。どちらも最初の数秒で心をわしづかみにされる “曲良し歌良し演奏良し” のスーパーウルトラ大名演でロックンロールにとって一番大切なカッコ良さに溢れているが、チャック・ベリーが原曲に封じ込めたロックンロール魂がビートルズにこんな凄い演奏をさせたのかもしれない。
The Beatles Roll Over,Beethoven[lyrics]

The Beatles - "Rock and Roll Music"


 チャック・ベリーはビートルズに最も大きな影響を与えたアーティストである。もしも彼がいなければビートルズがあのような形で世界を変えることはなかったかもしれないし、それはすなわちロックの、いや現在のポピュラー・ミュージックそのものの形態が大きく変わってしまうことを意味している。
 私は2年ほど前、シングル盤をガンガン買いまくっていた時にチャック・ベリーにハマってこのブログでも特集をやったが、USオリジナル・シングルで聴く彼の音楽は何十年もの時を超えて心にビンビン響いてくる。生きていることの喜びがダイレクトに伝わってくる。ロックンロールとは、その喜びの表現である。だから私は今もロックンロールが大好きなのだ。
 偉大なるロックンロールの創始者、チャック・ベリー... ここに心より彼の冥福を祈りたいと思う。 R.I.P. Chuck Berry, your music will live on forever.
Roll Over Beethoven - Chuck Berry LIVE

Chuck Berry - Rock And Roll Music

Jazz Pictures / Rita Reys

2017-03-19 | Jazz Vocal
 自分で言うのも何だが私はめちゃくちゃセコい貧乏コレクターなので、たとえどんなに欲しいレコードであっても自分が設定した予算を少しでも超えたらその盤は見なかったことにしてスパッと諦めるようにしている。逆にそうやって泣く泣く諦めた盤をどこか他所でめちゃくちゃ安く買えた時の嬉しさは筆舌に尽くしがたい。つい最近もそういう経験をしたので今日はそのレコードについて書こうと思う。そのレコードというのはリタ・ライスの「ジャズ・ピクチャーズ」オランダ・フィリップス・オリジナル盤(P 08062 L)である。
 リタ・ライスは1950年代後半から60年代にかけて活躍したオランダのジャズ・シンガーで、英語の発音がちょっとオランダ訛りなのが気になるが、その歌声自体は癖が無く、アルバムの選曲も有名なスタンダード中心なので非常に聴きやすい。私的には逆にその “癖の無さ” がちょっと物足りない感じで、もうちょっと強い個性があった方がエエのになぁ... というのが正直なところだが、スタンダード中心主義なのは大歓迎だ。
 そんな彼女の代表作と言えるこの「ジャズ・ピクチャーズ」を初めて聴いたのはオリジナル盤を集め始めて間もない頃で、難波にあったジャズ・レコード専門店「しゃきぺしゅ」の壁面を誇らしげに飾っていたこのレコードを店主の方が聞かせて下さったのだ。彼女のヴォーカルはハッキリ言ってあまり印象に残らなかったが、バックの演奏、特にドラムから白煙を上げそうな(?)勢いで強烈にスイングするケニー・クラークのブラッシュに完全KOされ、そのレコードがめちゃくちゃ欲しくなった。
 しかし、値札を見ると何と32,000円である。まぁレコ屋の壁を飾るぐらいやから安くはないとは思っていたが、ブルーノートやプレスティッジならまだしも、数千円がほとんどのヴォーカル物でウン万円となるとさすがに腰が引けてしまう。私は “やっぱりヨーロッパ盤は高すぎて手ぇ出ぇへんわ...(>_<)” と思いながら後ろ髪をひかれる思いでお店を出た。
 その後、この盤のことは高嶺の花とすっかり諦めていたのだが、あれから15年以上たった先月のこと、たまたまディスクユニオンの検索でこの盤を見つけたので値段を確認してみると、両面スレ多めでチリノイズありにもかかわらず21,600円だという。 “やっぱりハナシにならんな...” と思いながら興味本位に他のサイトでも検索してみると、何とDiscogsに €25で出ているではないか! しかも商品説明には “Plays nice VG+” とある。日本で何万円もする盤が送料込みでも3,000円台で買えるなんてホンマかいな??? 私は変な再発盤をつかまされるのだけは絶対に嫌だったので、念のためセラーにメールしてレーベルの写真を送ってもらったところ青銀レーベルに内ミゾありで、どこをどう見ても本物だ。私は小躍りしながら “注文する” をクリックした。
 届いた盤は nice VG+ どころかピッカピカの NM盤。ほとんどノイズなしでケニー・クラークのブラッシュが思う存分堪能できるのがめっちゃ嬉しい(^o^)丿  手持ちのCDと聴き比べてみても音の厚みが段違いで、改めてオリジナル盤の凄さを再認識させられた。特に強烈だったのは「チェロキー」と「アイ・ゲット・ア・キック・アウト・オブ・ユー」における超高速ブラッシュ・ワークで、そのめくるめくようなスピード感は圧巻の一言に尽きる。又、「アイム・ゴナ・シット・ライト・ダウン・アンド・ライト・マイセルフ・ア・レター」での盤石と言えるリズム・キープも流石と言う他ない。この人やっぱり名手やわ(≧▽≦)
 ケニー・クラークの名演の陰に隠れがちだが、歌伴に徹するピム・ヤコブス・トリオのプレイも素晴らしい。特に「枯葉」や「プア・バタフライ」におけるルウト・ヤコブスの闊達なベースはこのアルバムの聴きどころだと思う。ツボを心得たピム・ヤコブスのピアノも軽快そのもので、ややベタつく感のあるリタのヴォーカルも強烈にスイングするバックの演奏のおかげで気持ち良く聴けるのだ。
 ジャズはスイング!を明快に物語るこのアルバムを15年越しで、しかも安く手に入れることが出来てめっちゃ嬉しい。ジャズに限らずロックや昭和歌謡でもまだ手に入れていない垂涎盤が何枚かあるので、これからは一枚一枚、一撃必殺の気合いで獲りにいくとしよう。

Waltz For Debby 聴き比べ (Analogue Productions編)

2017-03-12 | Jazz
 ちょっと油断して目を離した隙にリリースされたレコードがたまたま運の悪いことに限定盤で、気付いた時には時すでにお寿司...(>_<) どこを探しても中々見つからずに悶々とした、という経験はレコード・マニアなら誰でも一度は覚えがあると思う。逆にそんなブツをやっとのことで手に入れた時の喜びはひとしおで思わず飛び上がりたいたいぐらい嬉しいものだが、私にとってそんな1枚が Analogue Productions から45回転盤の2枚組LPという形でリリースされたビル・エヴァンス・トリオ屈指の名盤「ワルツ・フォー・デビィ」である。
 このレコードが45回転盤で出ていることを知ったのは去年の暮れで(←遅っ!!!)、血眼になって eBay、MusicStack、CD and LP、ヤフオクとネット上のどこを探しても見つからなかったのだが、先週たまたまディスクユニオンの通販検索をしていて池袋店に中古で入荷したことを知り、即ゲット。やはり常日頃からマメにネットで網を張って情報収集を怠らないことが充実したコレクター人生を送るのに欠かせないのだなぁと実感した次第。
 私はこのアルバムをすでにCDで4種類、LPでもオリジナル・モノ盤と1990年代に同じAnalogue Productions から33回転で出たステレオ盤の2種類持っていて今回のが7種類目の「ワルツ・フォー・デビィ」になるのだが、すべてのジャズ・レコードの中で私が最も愛する1枚を音質的に有利な45回転盤で聴けるチャンスを逃す手はない。音の良さで私が絶大な信頼を置いている Analogue Productions 盤同士の聴き比べというのも興味をそそられるところ。因みに33回転盤はダグラス・サックスが、45回転盤はスティーヴ・ホフマンとケヴィン・グレイがマスタリング・エンジニアとしてクレジットされている。
 実際に前から持っていた33回転盤(APJ009)と今回手に入れた45回転盤(AJAZ9399)とを聴き比べてみたところ、どちらも同じ Analogue Productions 盤なのに音の傾向はかなり違っていてビックリ(゜o゜)  33回転盤の方はドラムスの音がグイグイ前面に出てきてモチアンが刻むリズムがチョー気持ちいいのに対し、45回転盤の方はリーダーであるエヴァンスのピアノが主体でありドラムスはあくまでも従者という感じで控え目に後ろからトリオを支えているような印象を受けた。良識あるピアノトリオ・ファンなら後者に軍配を上げるかもしれないが、ブラッシュが刻むリズムを中心にピアノトリオを聴くことを無上の喜びとする私としては断然前者の方が好み(^.^)  この違いは回転数というよりはおそらくマスタリング・エンジニアが意図した音作りによるものだと思うが、CDも含めて私が所有している全ての「ワルツ・フォー・デビィ」盤の中で最も鮮烈な音が楽しめるのがダグラス・サックスのミックスによるこの33回転盤なのだ。
 そもそもこのレコードの一体何が私をそれほどまでに魅きつけるかというと、一にも二にもA面2曲目に置かれたタイトル曲の圧倒的なスイング感、これに尽きる。もちろん1曲目の「マイ・フーリッシュ・ハート」でのリリカルで繊細なプレイにも心を揺さぶられるが、やはりその次に入っているタイトル曲が一番の聴きものだ。ポール・モチアンがあらん限りのテクニックを駆使しながら刻んでいく軽快なリズムがえもいわれぬスイング感を生み出し、それに乗せられるような形でエヴァンスが必殺のフレーズをキメまくり、そんなエヴァンスに対してスコット・ラファロがブンブン唸るベースで挑みかかるのだ。愛らしいメロディーに凄まじいスイング、そして火の出るようなインタープレイと、まさに言うことなしのスーパーウルトラ大名演だ。
【JAZZ】Bill Evans Trio Waltz for Debby sideA ANALOGUE PRODUCTIONS【レコード】


 話がタイトル曲一辺倒になってしまったが、もちろんB面も素晴らしい。特にB面1曲目に置かれた「マイ・ロマンス」のスイング感は最高だ(^o^)丿  この曲は元々スローなラヴ・バラッドで、インストであれヴォーカルであれ原曲に忠実なスロー・テンポで演奏されるケースがほとんどなのだが(←実際、この日のイヴニング・セットで演奏されたテイク2は少しテンポが落とされていた...)、レコードの本テイクに採用されたアフタヌーン・セットのテイク1ではアップテンポでスインギーに演奏することによってひょっとすると作曲者のリチャード・ロジャースですら気づいていなかったかもしれないこの曲の新たな魅力を見事に引き出すことに成功している。そしてその絶妙なスイング感を生み出しているのがやはりポール・モチアンの変幻自在なドラミングなのだ。世間ではエヴァンス・トリオというと猫も杓子もエヴァンスとラファロのインタープレイのことしか言わないが、少なくともこの日のモチアンのプレイは私にとってはリーダーのエヴァンスやラファロをも凌ぐ大名演で、今どきの言葉で言うと “神ってる” プレイと言っていいと思う。
 私がジャズに求めるのは “クールで、軽やかで、粋なスイング” なのだが、この「マイ・ロマンス」やタイトル曲「ワルツ・フォー・デビィ」でエヴァンス・トリオが一体となって生み出す極上のスイングこそが私にとっての理想的なピアノ・トリオ・ジャズであり、そういう意味でもこのレコードはその美しいアルバム・ジャケットと相まって私が愛してやまない1枚なのだ。
【JAZZ】Bill Evans Trio Waltz for Debby sideB ANALOGUE PRODUCTIONS【レコード】

Shogun's Samurai DVD

2017-03-04 | TV, 映画, サントラ etc
 前回に引き続き今回も映画のDVDだ。私は映画に関しては音楽と違ってほとんど何も分からないド素人だが、そんな私が例外的に大好きなのが深作欣二監督の作品で、前回取り上げた「仁義なき戦い」に衝撃を受けてからというもの、彼の作品だけは欠かさず見るようにしてきた。その大半は私が大好きなヤクザ/アクション系の作品なのだが、そんな中で異色中の異色と言えるのが深作監督にとって初の時代劇である「柳生一族の陰謀」だ。
 時代劇といえばヘビメタも顔負けの様式美が当たり前の世界だが、深作監督はヤクザ映画で培ったノウハウを大量投下、千葉真一や松方弘樹、成田三樹夫に室田日出男といった「仁義...」の役者を配し(何と金子信雄まで出とるwww)、陰謀と裏切りの連続で観る者をグイグイ引き付け、迫力とスピード感に溢れた映画に仕上げている。その手法はまさに「仁義なき戦い」の時代劇版で、家光vs忠長の家督争いはさしずめ “小田原死闘篇” と言ったところか。
 私が「仁義なき戦い」のUS版ブルーレイ・ボックスを買った時にふと “他の深作映画もUS版出てへんかな~” と考え、真っ先に頭に浮かんだのが「仁義なき戦い」同様に数々の名セリフが飛び出すこの「柳生一族の陰謀」だった。早速eBayで検索してみるとアメリカ人に分かりやすい “Shogun's Samurai” というタイトル(副題は直訳の “The Yagyu Clan Conspiracy”)が付けられたDVDを発見、リージョン1なのが玉にキズだが$4.99という安値に釣られて即決。届いた盤はそのままでは観れないのでパソコンを使ってリージョンフリー仕様にシュリンクし、DVD-Rに焼いた。DVDのリージョンってホンマに鬱陶しいわ。
 この映画が封切られたのは私が高校生の時だったが、予告編のCMスポットで使われた秀逸なキャッチコピー「我につくも、敵に回るも、心して決めい」はめっちゃ流行ったように記憶している。DVDに特典映像として入っている Trailerで英語字幕を見てみると(←このセリフのシーンは予告編用に撮ったらしく、映画本編には出てこない...)“Take my side, or be my enemy... it's your decision.” となっていた。なーるほど、うまいこというなぁ...
 この映画の主役は柳生但馬守を演じる萬屋錦之介で、ラストの “これは夢じゃ。夢でござ~る!” を始めとしてその大仰なセリフ回しはこの濃すぎるぐらい濃いキャストの中でも一人だけ浮いている感が強い。私なんか逆にそのあたりに可笑しみを見い出して楽しんでいるが、やはり記憶に残るのはよろきんではなく私のお気に入りの役者たちが出てくるシーンだ。
 仁義なき戦いで強面のヤクザを演じた松方弘樹はこの映画では顔に醜いあざがあってしかもどもりというハンデを背負った徳川家光を熱演しているのだが、中でも一番印象に残っているのが謀略の限りを尽くしてついに将軍になった時に父親の遺影に向かって「親に逢うては親を殺し、仏に逢うては仏を殺す。」(I'll kill my parents if they stand in my way. I'll defeat Buddha if he interferes.)とドモリながら語りかけるシーン。その迫真の演技はさすがの一言で、一見の価値アリだ。まぁその直後に千葉真一扮する柳生十兵衛に首をハネられてしまうのだが...
 松方と同じく「仁義なき戦い」に出ていた成田三樹夫も私が大好きな役者さんで、そのザ・ワン・アンド・オンリーなキャラクターは主役を食ってしまうぐらい強烈なインパクトを残すことも多かったが(←服部刑事役で出ていた「探偵物語」では松田優作との絶妙な絡みは最高だった...)、何とここでは烏丸少将綾麿という剣豪の公家(←白塗りお歯黒でホホホと笑いながら武士たちを切りまくる姿はインパクト絶大!)を演じているのだ。JAC所属の志穂美悦子に向って、「去れ! 麻呂はオナゴを斬る剣は持たん。」(Go away, I won't kill girls.)と言い放つシーンも面白いが、やはり何と言ってもJACの親玉、千葉真一扮する柳生十兵衛との対決シーンでの「出ておじゃれ!... 姿は隠しても獣はニオイでわかりまするぞ。」(Come out!... Beasts smell even if they hide.)が一番好きでおじゃるよ(^_^)
 この二人以外ではカリスマオーラがハンパない三船敏郎や妖艶な美しさが際立つ大原麗子が良かったが、私的には徳川忠長役の西郷輝彦の意外な好演が一番の拾い物。西郷どんといえばどうしてもリズム歌謡御三家のイメージが強くて役者としてはまったく期待していなかったので、そのケレン味のない演技には感心させられた。特に駿府城での軍議の席で言い放った「もう遅い!... 手ぬるい!... 愚策!」(Too late! Passive! No good!)の3連コンボがめっちゃ気に入り、一時期職場でギャグとして使っていたほどだ。
 このように、ともすればマンネリ&ワンパターンに陥りがちな時代劇も深作監督が撮るとセオリーを無視した荒唐無稽なストーリー展開にグイグイ引き込まれ、ついつい時間の経つのを忘れてしまう。個々のシーンでも見どころが満載なこの映画、何回観てもホンマにオモロイわ(^.^)
Shogun's Samurai: The Yagyu Clan Conspiracy