shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「Wings Wild Life」イスラエル盤

2022-03-27 | Paul McCartney
 円安がヤバい。1年ほど前は確か$1=105円台ぐらいだったように記憶しているが、ロシアのウクライナ侵攻のせいで気が付けばアッという間に122円を突破してまだまだ下がりそうな気配だ。 $1=75円という夢のような時代を知っている者としてはとてもじゃないが120円台突入だなんて悪夢としか言いようがない。ガソリンもアホみたいに高騰しとるし、誰でもエエから早よプーチンを抹殺してくれ!!!
 レコード蒐集に関して言えば、去年の秋頃からガンガン買いまくってきたイスラエル盤やペルー盤も何とか目ぼしいところは手に入れることが出来たので間一髪セーフという感じだが、ポンドも160円台を突破してしまったし、為替レートが元の正常な状態に戻るまでは今までみたいに海外から気軽にレコードを買うのが難しくなりそうだ。
 ということで今回はまだ $1が114円だった時に買ったイスラエル盤の「Wings Wild Life」だ。このレコードはポールのソロ作品の中でも五指に入る愛聴盤なので是非ともイスラエル盤ならではのごっつい重低音で聴いてみたいと思っていたのだが、結構レアらしくて中々市場には出てこず、結局ポールのイスラエル盤の中では最後の最後になってようやく手に入れることが出来たという貴重な1枚だ。
 買ったのは前回取り上げた「White Album」と同じ israeli-recordsというレコ屋さんからなのだが、ここの在庫の豊富さは特筆モノで、実際イスラエルの稀少盤を何枚もここから買っているし、盤質表記もコンサバでめっちゃ信頼できるという優良セラーなのだ。ジャケットにはステッカーが貼ってあってミミズが這ったようなヘブライ語で何か書いてあるのでひょっとするとサンプル盤か何かなのかもしれない。このレコードの盤質表記はVG+ だったが、実際に届いた盤はEXレベルのピカピカ盤でラッキーだ。
 もう一つラッキーだったのは届いた盤のA面のマト枝番がこれまたレアな9だったこと。これで UK、スウェーデン、ウルグアイに続いて4枚目の “マト9ワイルドライフ” が手に入ったわけで、それもこれも3年前に私をマト9パラダイスに引き込んで下さったB-SELSのSさんのおかげである。
 今回のイスラエル・マト9盤はレーベルに “Mfd In UK” と記されているにもかかわらずデッドワックスにはマザー・ナンバーもスタンパー・コードも刻まれていないので、UKマト9とはまた別の、輸出用マザーなのかもしれないが、何にせよ楽しみなことに変わりはない。そう言えば以前このマザー/スタンパー無しのマト9盤が “激レア他社プレス!” と称して出品されていたことがあったが、全英チャート最高11位止まりであまり売れなかったこのレコードのプレスを他社にまで依頼したというのはちょっと考えにくい。
 さて、いつものように丹念にレコード・クリーニングを施してからいよいよA面に針を落とす。1曲目は大好きな「Mumbo」だ。う~ん、何というパワフルな低音だろう! 地響きを立てて怒涛の勢いで押し寄せるポールのベースが快感そのもの(≧▽≦) A③「Love Is Strange」も実にメリハリの効いたサウンドでゴムまりのように弾むリズムが耳に心地良い。音の隅々まで力が漲っているというか、そのはち切れんばかりのパワーが一気に解放されてスピーカーからドバーッと迸り出るというか、まさにそんな感じなのだ。A④「Wild Life」でもポールの闊達なベースラインが音楽の根底をしっかりと支えており、イスラエル盤ならではのベース至上主義(?)がこのレコードの特徴であるラフな音作りと見事にマッチしているように思える。
 B面もA面同様の力強いサウンドで、マト云々関係なしにイスラエル盤らしい音作りになっており、重心の低い演奏に思わず聴き入ってしまうB①「Some People Never Know」、デニー・シーウェルの躍動感溢れるドラミングが楽しめるB②「I Am Your Singer」と、決して期待を裏切らない。B④「Dear Friend」も当時四面楚歌状態にあったポールの心情がヒシヒシと伝わってくるような緊張感のあるサウンドで、改めてイスラエル盤のクオリティーの高さを再認識させられた。
 まぁ元々大好きなアルバムなのでマトが何番であろうがどこの国のプレスであろうがそれなりに楽しめてしまうというのが正直なところだが、このイスラエル盤は手持ちの「Wild Life」の中でもかなり私好みのサウンドに仕上がっているお気に入りの1枚なのだ。

「White Album」イスラエル盤

2022-03-21 | The Beatles
 イスラエル盤の「White Album」には4種類のヴァリエーションが確認されている。1stプレスのダーク・グリーン・アップル・レーベル(60年代後半)、2ndプレスのブラック・パーロフォン・レーベル(70年代初期)、3rdプレスのレッド・パーロフォン・レーベル(70年代中期)、そして4thプレスのポートレイト・レーベル(70年代後期以降)である。市場に出てくるのは2ndプレス以降の再発盤ばかりで1stプレス一点狙いの私はかなりの忍耐を強いられたが、ようやく念願のダーク・グリーン・アップル・レーベル盤がイスラエルの大手セラーから出品され、幸いなことに無競争でゲットすることができた。イスラエル盤って音が良いのにあんまり(とゆーか全然)人気無いんでホンマにラッキー(^o^)丿 とゆーことで私は早速収穫物をB-SELSに持って行った。

 私:今日はイスラエルの「White Album」どうですか?
 Sさん:聴きたいです。おぉ、オープン・トップなんですね。STEREO & MONO表記がイスラエル独特ですね。
 私:(「Back In The USSR」がかかる)いかがでしょうか?
 Sさん:いいですねぇ...
 私:自分はこの曲大好きなんですが、もうすぐ始まる GOT BACK ツアーではやっぱりセトリ落ちですかねぇ?
 Sさん:今のご時世では USSR は難しいかもしれませんね。
 私:「Give Peace A Chance」とメドレーでやればいいのに(笑)
 Sさん:今のプーチンを説得できるの、ポールぐらいじゃないですか? モスクワ・ライヴの時に赤に広場に来てたぐらいやし。
 私:あれはプーチンの政治的パフォーマンスですよ。それに、80歳近いポールにそんな責任背負わさんといたげて下さい(笑)
 Sさん:ハハハ...
 私:冗談はさておき、このレコードもやっぱりベースの音が明らかに違いますね。
 Sさん:このA②「Dear Prudence」、ベースがやたらと目立ちますね。イスラエル盤の特徴でしょう。
 私:なぜなんでしょうね?
 Sさん:マザーはUKと一緒なのでビニールの違いぐらいしか思い浮かびませんが...
 私:それとプレス・マシーンでしょうか。イスラエル盤独特の低音はホンマに謎ですね。
 Sさん:もうすぐ閉店時間なのであとはB面だけにしときましょか?
 私:そうですね。
 Sさん:B面は特に好きなので聴いておきたいんです。
 私:わかりました。
 Sさん:それにしてもB面ってポールの存在感が凄いですね。
 私:この頃のポールって「ペパーズ」、「マジカル」、そしてこの「ホワイト」と無双状態ってゆーか、天才が大爆発してる感じじゃないですか。B⑦「Why Don’t We Do It In The Road」の次にB⑧「I Will」ってもう凄すぎますよ。
 Sさん:B⑤「Rocky Raccoon」もいいですねぇ...
 私:たまらんですね、これは。
 Sさん:ラストのアコースティック2曲とイスラエルならではの低音の響きがめっちゃ合いますね。
 私:同感です。やっぱりイスラエル盤の音って自分に合うてますわ。

「Beatles For Sale」ペルー盤

2022-03-17 | The Beatles
 ビートルズのペルー盤は同時期に買いまくっているイスラエル盤に比べるとブツの数は少ないわ、送料はバカ高いわでホンマに往生させられる。前期の盤の中ではなぜか「Beatles For Sale」だけが中々手に入らなかったが、2ndプレスにあたる通称 “電波レーベル” のVG+盤がようやくeBayに出品されたので即ゲットした。1stプレスの “黒レーベル” 盤に拘っていてはせっかくのチャンスを逃してしまうし、「With The Beatles」や「A Hard Day's Night」で “黒” と “電波” を聴き比べた限りでは全く違いがわからなかったので、ペルー盤は何よりも盤質優先で買うようにしている。
 私はたまたまこのレコードとほぼ同時期にイスラエル盤の「Beatles For Sale」も手に入れたので、同じPMC型番同士でモノラル対決をしてやろうと思ったが、届いた盤を実際に聴いてみたところ、何とこのペルー盤はPMCの名をかたるステレオ盤だった。イスラエルといい、ペルーといい、各国盤の型番は信じてはいけない。
 ただ幸いなことに音自体はとても良いステレオ・サウンドで、各楽器の音もめっちゃクリアー。中でもジョージのギターの音が煌めいて聞こえたので、これは絶対にSさんも喜ばれるだろうと思い、B-SELSに持って行った。

 私:今日はペルーの「For Sale」持って来ましたで。
 Sさん:いいですねぇ...(とすぐにレコードをターンテーブルにセット、A①「No Reply」がかかる...)
 私:あれ? ヴォーカルがえらい前に出てきますね。
 Sさん:そうそう、ジョンの声が不思議なくらい前に出てきますね。
 私:こんな音してたかなぁ...??? 何かジョン・レノンとバックバンドっていう感じですよ。
 Sさん:不思議とヴォーカルとハモリがよぉ入ってます。
 私:こんな音の出方、初めて聴きました。
 Sさん:あっ、これステレオやったんですか。PMCやからてっきりモノラルやと思ってモノ針でかけてました(汗)
 私:あ~ビックリした(笑) どうりで変な音やと思いました。これ、PMC詐称盤やって言い忘れてました。すんません。
 Sさん:ペルーの「For Sale」は初めてなんで、なぜヴォーカルがこんなに出てるのか不思議やったんです... 独自カットなんかなって思って(笑)
 私:ペルーとイスラエルのPMCは絶対に信じちゃダメですよ(笑)
 Sさん:まんまと騙されました。カタログナンバーはPMCやし、レーベルにもXEXって書いてあるし... どこがやねん!(爆笑)
 私:エエ話のネタになりましたやん。
 Sさん:じゃあもう一度最初からステレオ針でかけますね。
 私:(再び「No Reply」が店内に鳴り響く)これこれ、これこそがペルーの「For Sale」ですよ。このフワ~っと広がる感じがたまりません。
 Sさん:「For Sale」のステレオはこうあるべきっていうサウンドですね。
 私:さっきのはものすごく変やったですからね(笑)
 Sさん:A④「Rock And Roll Music」のピアノがステレオじゃないとちゃんと聞こえないですから。
 私:ですよね。
 Sさん:ビートルズのレコード、特に「For Sale」って色んな楽器が入ってますから、その響きが感じられないとダメなんですよ。ジョージのギターのキラキラした部分とか...
 私:仰る通りです。それあっての「For Sale」ですからね。
 Sさん:B②「Words Of Love」のジョージのギター、キラキラしててよろしいなぁ...
 私:B面は完全にギターが主役ですね。この“音”がないと「For Sale」が成立しない。
 Sさん:B④「パーティー」もジョージがバリバリの主役ですね。
 私:このギターの音は凄いです!!
 Sさん:ジョージのギターが最後まで耳に残ります。このレコードはステレオで聴かなあきませんね。
 私:なんか二人ともジョージのギターの話しかしてませんけど(笑)、それほど強烈なインパクトがあるってことですよね。針を替えて下さってホンマにありがとうございました!

The Complete Rooftop Soundboard / The Beatles

2022-03-13 | The Beatles
 ビートルズの「ルーフトップ・コンサート」は連日の大盛況でIMAX上映が再延長されるなどして大いに盛り上がっているが、機を見るに敏な日本のブート屋さんがそんなオイシイ状況をみすみす見逃すわけがない。私がブートレッグをよく買っているライトハウス(略してLH)も今回の「Get Back」ブームに便乗して新たにルーフトップものの究極版といえるCDをリリースした。それがこの「The Complete Rooftop Soundboard」である。
 ルーフトップ・コンサートに関しては、以前から「Let It Be」の映画撮影班によるナグラ社のモノラルレコーダー音源をベースにしたブートレッグが色んなレーベルから出ていたが、LHは2019年にこのモノ音源をベースに当時利用可能だった他の音源をかき集め、演奏の合い間のやり取りなども含めて最大限ステレオで完全再現するという野心的な企画に挑戦、ルーフトップ・コンサート50周年にかこつけて同ライヴ全編をステレオで再現した「The Rooftop Concert」の「Definitive Edition」(黒盤)をリリースした。
 更にこれが瞬く間に売り切れると今度は「Anthology」のDVDや「Let It Be Naked」のアルバムなどからかき集めたせいでミックスがバラバラだった黒盤の音源をHMCリリースの1992年版「Let It Be」映画のステレオ音声に差し替えて聴感上の統一感を高めたアップグレード版の「Second Edition」(白盤)をリリース。映画用にミックスされた音声で統一したのは大正解で、ヴォーカルの生々しさや演奏の臨場感などが大幅に向上しており、私もルーフトップ関連音源の決定版としてこの3年間ず~っと愛聴してきたのだった。
 そして今年の2月、LHは映画「Get Back」のマルチトラック音源を駆使して作り上げた「The Complete Rooftop Soundboard」をリリースし、あっという間に完売したらしいのだが、その頃私は例の「Rubber Soul」と「With The Beatles」のラウドカット1G盤のことで頭が一杯で、とてもじゃないがブートレッグどころではなく、Kentから毎週送られてくるリリース情報メールを見逃してしまっていた。
 そして3月に入り、首尾よく手に入れたラウドカット1G盤2枚の爆音に浸りながらメールをチェックしていると、“BEATLES-THE COMPLETE ROOFTOP SOUNDBOARD (2CD):海外より100セットが特別に再入荷。これ以上の在庫は海外にも一切無く、セカンド・プレスの予定もありません。” という新着情報に目が留まった。え~っ、ちょっと目を離した隙にこんなん出とったんか...と慌てた私は即オーダーして何とか間に合ったというワケだ。
 このCDのディスク1(44:23)は映画「Get Back」で公開されたコンサートのマルチトラック・パートに撮影班のモノラル音源(→例えばライヴ開始前の「Get Back Warm-Up」の場面はマルチトラック音源が存在しないので、映画ではTake2を加工して映像に被せていた...)を合わせたルーフトップの完全版ライヴ・アルバムへとまとめ上げたもので、上記の黒盤白盤2枚と聴き比べると音圧面でも音の質感の面でもたった3年の違いで隔世の感があり、考え得る限り現時点で最高の音質でルーフトップ・コンサート全貌を、“何のつもりなの!” とヒステリックに叫ぶ昼寝ババアに邪魔されずに楽しむことが出来るのだ。
 ディスク2(37:52)は Original Multitrack Reels となっており、ディスク1とは違って余計なお喋りとか無しで音楽に浸れるので完全なライヴ・アルバムとして楽しめ、私としてはディスク1よりもむしろこっちの方を愛聴している。尚、メーカー・インフォには “ハイレゾ版をベースに音盤化した” と書いてあるのだが、これってひょっとしてオフィシャル配信用の「Rooftop Concert」と基本的に同じってこと??? 私はストリーミングとか配信とかサッパリわからないので、先月 “ビートルズのルーフトップコンサートが完全版で音楽配信開始!” というニュースを見て忸怩たる思いだったのだが(→ビートルズ・ファンには私のように昭和で時が止まってる人間も少なくないと思うので “デジタル配信オンリー” などという愚策はやめてもらいたい!)、もしこれがオフィシャルのパクリなら大ラッキーだ。
 メーカーが言うように、まさに “一家に一枚の文化遺産レベル” と言えるこのアルバム、「Get Back」のブルーレイ/DVD発売を首を長~くして待っているビートルズ・ファンにはたまらない逸品だと思う。
The Beatles - The Rooftop Concert (Full Concert, 1969)

Pat Benatar特集③

2022-03-11 | Rock & Pops (80's)
パット・ベネター特集パート3は何かが吹っ切れたかのようにロックに回帰した1985年から最後のトップ20ヒットを放った1988年まで。

⑦Seven The Hard Way
 彼女の全アルバム中で私がベストと思うのは2ndの「Crimes Of Passion」とこの「Seven The Hard Way」だ。前作の「Tropico」は「We Belong」という名曲を含んではいたものの、アルバム全体の印象としてはヌル過ぎて、彼女にバリバリのロックンロールを求めてしまう私には退屈な内容だった。
 しかしこのアルバムからの先行シングルとしてリリースされたB③「Invincible」を聴いた時はその緊張感溢れるスリリングな歌いっぷりに “おぉ、めちゃくちゃロックしとるやん!” と大喜びで毎日毎日アホみたいに聴きまくった。表現力に深みを増して女性ヴォーカリストとしてさらに高い次元に到達したパットのヴォーカルと初期のハードロック・スタイルへの回帰によるアグレッシヴなバックの演奏の組み合わせは文字通りインヴィンシブル(無敵)と言えるもの。まさに “ロックンロール・クイーンの帰還” と言いたくなる1曲だ。
Pat Benatar - Invincible (Official Video)


 アルバムの発売と同時にシングル・カットされたのが、曲名を人前で口にするのも恥ずかしいA①「Sex As A Weapon」だ。最初にこのタイトルを聞いた時は我が耳を疑ったが、実際に曲を聴いてみるとその前に “Stop use the...” が付いており、要するに “性を武器として使っちゃダメ!” という至極真っ当な歌詞で一安心。私は当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったマドンナへの痛烈な皮肉と受け取ったが、キャリアの初期にセクシー系シンガーとして売り出そうとしたレコード会社(←そういえば黒のレオタード姿で歌っとったなぁ...)への当てつけ説(笑)もあるようだ。曲の方は地味なAメロから一転してサビで大いに盛り上がり、そのまま一気に畳み掛ける展開がたまらんたまらん(≧▽≦)  要所要所でここぞとばかりに必殺のフレーズをキメまくるニールのギター・プレイも痛快そのものだ。
Pat Benatar - Sex As A Weapon


 私が考える名盤というのはシングル曲以外にもいわゆる “隠れ名曲” がいっぱい入っているアルバムのことだが、このアルバムは上記のシングル曲以外の曲のクオリティーも非常に高い。そんな中でも特に気に入っているのがB①「7 Rooms Of Gloom」で、ハードでありながらメロディアスにロックするという難題を軽くクリアしているところが凄い。彼女の疾走系チューンの中でも三指に入ると言っていいくらいスリリングなナンバーだ。一転してB②「Run Between The Raindrops」は文句なしに彼女のスロー・バラッドの最高傑作と言えるキラーチューンで、映画の印象的なシーンの BGM とかに使ったらピタリとハマりそうなくらい流麗なメロディーが心に響く名曲だ。
Pat Benatar - 7 rooms of gloom

Pat Benatar - Run Between The Raindrops - Video


⑧All Fired Up
 今回のパット熱再燃のきっかけとなった「All Fired Up」は1988年に出た彼女の8thアルバム「Wide Awake In Dreamland」からのファースト・シングルで、ラジオで初めて聴いて一目惚れならぬ一耳惚れするくらい気に入ったのだが、アルバムの方はこの曲以外パッとしなかった(←ダジャレじゃないです...)こともあって、アルバムの代わりにこの12インチ・シングルを買って何度も何度も繰り返し聴いていた。やっぱりパットにはこの曲のようにライヴで盛り上がる疾走系ナンバーが一番合っている。ロックンロールは小難しい理屈抜きに一にも二にも “ノリ” を楽しむ音楽だと信じる私の嗜好のスイートスポットを直撃するアッパー・チューンで、パワー全開で突っ走るパットの一人追っかけ二重唱が音楽を前へ前へと押し進めていくドライヴ感を生んでいる。30年以上経った今でも我がロック魂を激しく揺さぶる名曲名唱だ。
Pat Benatar - All Fired Up (Official Video)

Pat Benatar特集②

2022-03-09 | Rock & Pops (80's)
パット・ベネター特集パート2はある意味最も80'sらしい楽曲が並ぶ1982年から1984年まで。

④Get Nervous
 デビュー・アルバムで己のスタイルを確立し、全米№1獲得まで順風満帆できたパットの4thアルバム「Get Nervous」はよりポップな方向へと舵を切り、80'sらしくシンセを活用して表現の幅を広げようという試みの跡が随所に見られる。B④「Tell It To Her」のシンセなんかめっちゃフォリナーの「4」っぽくて思わず笑ってしまうが、一番成功しているトラックはアップテンポのA③「Anxiety」で、この曲の持つ疾走感に拍車をかけるようにシンセを隠し味的に使っているところが◎。この“隠し味”のサジ加減が絶妙なのだ。
 シングル・カットされたA①「Shadows Of The Night」も正統派のポップロックで、彼女の力強いヴォーカルがこの曲をより魅力あるものにしているし、緊張感漲るA⑤「The Victim」やブロンディーっぽいB①「Little Too Late」など、多彩な楽曲が並んでいて聴き応え十分なアルバムになっている。
Pat Benatar - Anxiety - live - best performance - HQ


⑤Live From Earth
 このレコードは彼女にとって初のライヴ・アルバムながらB面のラスト2曲はスタジオ新録という、ちょうどキッスの「Alive Ⅱ」みたいな変則的な作りになっている。ライヴの方がスタジオ録音よりも彼女の持ち味を活かせると思うので、どうせなら1枚丸ごとギンギンのロックンロール一気通貫のライヴ・アルバムを作ってほしかったというのが正直なところ。特にB③「Heartbreaker」なんかもう言葉を失うカッコ良さだ。
 スタジオ録音のB④「Love Is A Battlefield」は表現力に磨きのかかった彼女のクールなヴォーカルが冴えわたる名曲名演で、全米シングルチャートで5位という、彼女にとって「We Belong」と並ぶ最大のヒット曲になったのもうなずけるが、パットがバックダンサーを従えて踊る例のビデオクリップは今となっては陳腐というか失笑を禁じ得ない。てゆーか、ロッカーは基本的に踊ったらアカンと思うのだが、みなさんはどう思いますか?
Pat Benatar - Love Is A Battlefield (Official Music Video)


⑥Tropico
 スタジオ録音盤としては「Get Nervous」から2年ぶりとなるこの「Tropico」は彼女のキャリアの中で最もソフィスティケートされた作品で、このアルバムの第一印象は “ロックンロールはどこへ行ったんや???” という失望感だった。確かにシングル・カットされたA②「We Belong」とB①「Ooh Ooh Song」はすごく良い曲だと思うが、それ以外に印象に残るメロディーを持った曲が無いし、演奏の方もロック魂が感じられない平凡なポップスに堕してしまっているように思う。
 私がパットに求めるのは一にも二にも “ハードにロックする” こと。“シャウトせずに何のパット・ベネターか!” と信じてそれまで生きてきた私にとってはアルバム1枚通して聴くのはキツいので、いつも上記のシングル2曲をつまみ聴きしている。特に「We Belong」(←イントロに彼女のヴォーカルを被せたシングル・ヴァージョンのアレンジの方が数段上だが...)という曲はそんなロックンロール・ジャンキーの私ですら思わず平伏して頭を垂れて聴き入ってしまうほど洗練された作品に仕上がっており、音楽のジャンルやスタイルを超越した “名曲名演” として激しく胸を打つ。バックの合唱隊を向こうに回して圧倒的な存在感を見せつけるパットの女性ヴォーカリストとしての成熟を感じさせる屈指の名唱だと思う。
Pat Benatar - We Belong (Official Video)

Pat Benatar特集①

2022-03-08 | Rock & Pops (80's)
 私は何の前触れもなく突然ある曲が頭の中で鳴り出して止まらなくなることがよくあるのだが(←ないですか?)、先週の土曜日にふとしたことからパット・ベネターの「All Fired Up」が脳内リフレインを始めた。ちょうどヒマだったのでオトシマエをつけようと手持ちのパットのレコードを片っ端から聴きまくったところ、すっかり気分は80'sへとトリップ。久々に聴くパット・ベネターのカッコ良さにすっかりやられてしまい、やっぱり80'sの曲はキャッチーでエエなぁ...などと感心しながら週末はずーっとパット・ベネター祭りで盛り上がった。早速このブログでも彼女を大特集... まずはデビュー・イヤーの1979年から全米を制覇した1981年まで。

①In The Heat Of The Night(CHE-1236)
 1979年、イギリスでは見かけ倒しのロンドン・パンクが、アメリカでは中身のない軽薄ディスコが流行っていて、真正ロックンロール好きの私はヴァン・ヘイレンやボストンを聴いて渇きを癒していたのだが、そんな中、彗星のように現れたのがパット・ベネターだった。“女性版ロバート・プラント” と言っても過言ではないハイトーンのシャウトをブチかます彼女に惚れ込んだ私は速攻でデビュー・アルバム「In The Heat Of The Night」を買いに洋盤屋へと走った。同じ系統の女性ヴォーカリストとしてはハートのアン・ウィルソンがいたが、声質の違いなのかパットのヴォーカルはキンキンこないので私はパットの方が好きだった。何はさておきA①「Heartbreaker」のアグレッシヴなサウンドをアンプのヴォリュームを上げて全身で受け止めるべし。泰平の眠りを覚ます衝撃のデビュー・アルバムだ。
Pat Benatar - Heartbreaker - live - best performance - HQ


②Crimes Of Passion(CHE-1275)
 パットの2ndアルバム「Crimes Of Passion」はリリースと同時にすごい勢いで売れまくり、全米アルバム・チャートでは5週連続で2位を記録、当時1位を独走していたジョンの「Double Fantasy」に阻まれて惜しくも1位獲得はならなかったものの、前作を超えるトリプル・ミリオンを記録する大ヒットとなった。その勢いを支えたのがシングル・カットされた「Hit Me With Your Best Shot」で、彼女の代表曲と言っても差し支えないこの曲が洋楽系ラジオ番組でガンガンかかっていたのを思い出す。他にも攻撃性むき出しのA⑤「Hell Is For Children」やダンナのニール・ジェラルドのギターが大活躍するB①「Little Paradise」B⑤「Out-A-Touch」など、ロック魂を煽るようなアッパーな曲が多く入っており、私のようなロックンロール中毒者にはたまらない1枚だ。そんな中で異彩を放っているのがケイト・ブッシュで有名なB③「Wuthering Heights」(嵐が丘)で、ニールのエモーショナルなギター・ソロが聴き所だ。
Pat Benatar - Hit Me With Your Best Shot (Live)


③Precious Time(CHR-1346)
 パットが前作で果たせなかった全米№1をついに獲得した記念すべきレコードが3rdアルバムの「Precious Time」だ。内容の方は1stと2ndアルバムで確立したスタイルを踏襲したハードでポップなアメリカン・ロックで、その手堅い作りが功を奏したと言えそうだ。とにかくあの小さな身体のどこにそんなパワーが潜んでいるのか不思議に思えるぐらいよく通るハイノートは痛快そのもので、ニールのギターも絶好調。ライヴ映像を見ればわかるようにこの人は曲に合わせて様々なスタイルで弾けるギターの名手なのだが、やはり小気味よいロックンロールがこの人には一番よく似合う。シングル「Fire And Ice」で聴けるように、必要最小限の短いフレーズで言いたいことを言いきってしまうところが凄いと思う。Bラスにビートルズの「Helter Skelter」のカヴァーが収録されているのもポイント高しで、パットの歌い方といい、バックの演奏といい、オリジナルへのリスペクトが強く感じられる名カヴァーだと思う。
Helter Skelter (Bonus track)

各国盤頂上決戦⑤「A Night At The Opera」

2022-03-04 | Queen

 クイーンの各国盤は「Queen Greatest Hits」大特集をやる半年ほど前に「The Game」を取り上げたのが最初だが、その後「オペラ座の夜」の面白いヤツを手に入れたので、今回はそれも含めて「オペラ座」の各国盤を特集しようと思う。エントリーはUK盤の他にはビートルズの各国盤で実績抜群(?)のインド盤、ウルグアイ盤、イスラエル盤の4枚。US盤は音がショボすぎて各国盤の“頂上”を決める戦いに相応しくないのであえなく予選落ちとなった(笑)

①UK盤(YAX 5063-2 BLAIR'S / YAX 5064-3 BLAIR'S)
 「オペラ座」の UK 初版は両面マト2らしいが、私の持っているのは2/3盤。両面ともスタンパーは3桁だが、盤質がめちゃくちゃ良いせいもあってかなり凄い音で鳴ってくれる。例えばA①「Death On Two Legs」の出だしなんか色んな楽器が入れ代わり立ち代わり登場するので比較試聴には最適なパートだと思うのだが、このUK盤は “おぉ、これは凄いやん!” と思わず唸ってしまうくらいクリアーでクリスプなサウンドが楽しめるのだ。又、B④「Bohemian Rhapsody」のイントロ部分なんか “盤質こそが大正義” の最たるものだと思うが、この盤は余程音溝の状態が良いのか、チリパチ音のほとんど無い状態で(←これ結構貴重です!)あの万華鏡のようなコーラス・ワークを堪能できるのが嬉しい。

②インド盤(YAX 5063-1 / YAX 5064-1)
 インドの「オペラ座」のマトは UK 盤とは違うフォントの独自カッティング。ビートルズでこれまで何度も経験してきたようにインド盤の独自マトというのは大当たりか大ハズレかのギャンブル的な要素が強いのだが、この「オペラ座」に関する限りは最高に当たったのである\(^o^)/  まず手に持った感触がズシリと重く、“おぉこれは!” と思って重量を測ると、何と169gもあったのだ(→UK:122g、URY: 151g、ISR:115g)。次に盤面をパッと見て気が付くのはデッドワックスの狭さで、試しにA面の音溝の幅を測ってみると8.5cm(→他はすべて8cm)もあって、もうそれだけで期待が高まってくる。実際に聴いてみた音はと言うと、とにかく音圧が高く、各楽器のアタック音の強いことといったらオリジナルの UK 盤をも凌駕するほどで、ヴォーカルはめっちゃ近いし、ギターは切っ先鋭いナイフの如しだし、ドラムは豪快に爆裂するし、ベースはちゃんと存在を主張してるし、コーラスは分厚いしで、こんな凄い「オペラ座」はこれまで聴いたことがない。インド人もびっくりのスーパーウルトラ高音質盤だ。

③ウルグアイ盤(YAX-5063 / YAX-5064)
 ウルグアイ盤の「オペラ座」はジャケットにメンバー4人の星座をあしらった例の紋章ロゴが無く、白地にバンド名とタイトルだけというシンプル極まりないディフ・ジャケで、“クイーンのサージェント・ペパーズ” と言っても過言ではない絢爛豪華な中身を考えるとどうしても違和感を覚えてしまう。ウルグアイ人には理解できないかもしれないが、少なくとも私にとってアルバムというのはパッケージングも含めてのトータル作品なのだ。
 盤の方は UK とも US とも違う独自マトで、そのウォーミーで骨太なサウンドから判断するにおそらくチューブ・カッティングだろう。ブライアンのギターが目立っているものの、ジョンのベースはややおとなし目でロジャーのドラミングも律儀そのもの。基本的にバックの演奏とコーラスワークでフレディーのヴォーカルを引き立て、そこにブライアンが切り込んでいくという感じの音作りになっている。独自マトらしいユニークなサウンドと言えるが、そのあたりは好き嫌いがわかれるかもしれない。音圧も十分あるし他では聴けない音なので私的にはこれはこれで大いにアリだと思う。

④イスラエル盤(YAX 5063-4 Q BLAIR'S / YAX 5064-3 Q BLAIR'S)
 ウルグアイ盤「オペラ座」のジャケットは私的には NG だが、同じディフ・ジャケでもこのイスラエル盤「オペラ座」のジャケットは文句なしにカッコイイ(^o^)丿 これは UK 盤のインナー・スリーヴに使われた写真に例のロゴとアルバム・タイトルを組み合わせたもので(←よく見るとアルバム・タイトルの下にミミズが這ったようなヘブライ語が書いてある)、ジャケット・デザイナーのセンスの良さに感心してしまう。私なんかこのジャケットだけで買いを決めたほどだ。中身のサウンドも期待以上で、基本的にはUKマザーの音ながらベース・ラインがよく出ており、Q刻印が効いているのか(←他アーティストの盤にもあるので Queen の Q ではなさそうだ...)、イスラエル・プレスならではのタイトで引き締まった音が楽しめる。

【 最終結果:IND > UK > ISR > URY 】