shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ビートルズUKシングル盤特集⑨ 1969

2015-01-29 | The Beatles
⑲ Get Back / Don't Let Me Down (R 5777, Mono, 1969.4.11発売)
 私には1年のうちビートルズ関連の記念日(?)が何日かある。例えば2月7日は“アメリカ上陸記念日” として「抱きしめたい」を、6月30日は “日本武道館ブラックスーツ・デー” として「武道館ライヴ」を聴きながら在りし日のFAB4に思いを馳せるのだ。そして明日1月30日はもちろん “ルーフトップの日”(^o^)丿... ルーフトップとくれば何はさておき「ゲット・バック」である。
 この「ゲット・バック」は「ヘイ・ジュード」に続くアップル・レーベル第2弾シングルであり、彼らにとってイギリスで最後のモノラル盤シングルとなったレコードだ。彼らのUKシングルは「イエロー・サブマリン/エリナー・リグビー」以降はプッシュアウト・センター型(←家庭用プレーヤーとジュークボックスの両方に対応できるように中央部を4本の脚で支えてあって強く押すと取り外せるタイプ)とソリッド・センター型(←センター・スピンドルまわりの形状がLPと同じタイプ)の2種類の盤が初回盤で作られてきたが、この「ゲット・バック」の初回盤はどういうワケかプッシュアウト・センターのみのようだ。私はこの盤のプッシュアウト・センター・タイプ(1stプレス)とソリッド・センター・タイプ(2ndプレス)の両方を所有しており、何度聴き比べてみても両者の音の違いはほとんどわからないのだが、とにかくどちらもめちゃくちゃ音が良いのだ。後期ビートルズのシングル盤の中では断トツのハイ・クオリティ・サウンドだろう。
 フィル・スペクターがミックスしたアルバム・ヴァージョンの「ゲット・バック」はUKオリジナル盤や “Phil+Ronnie” 刻印入りのUS・Bell Sound盤は言うまでもなく、「ロックンロール・ミュージック」のような編集盤ですらかなり良い音で聴けるのだが、グリン・ジョンズがミックスしたこのシングル・ヴァージョンは「青盤」も「パスト・マスターズ」も東芝盤シングルも、どれもこれも “ヤル気あんのか!” と言いたくなるようなヘタレな音で大いに不満だった。
 ところがこのシングル盤の音はこれまで聴いたことがないような生々しさで、あの「ペイパーバック・ライター」以来のカッティング・レベルの高さなのではないかと邪推してしまうくらい迫力のあるサウンドが楽しめる。ジョージのシャキシャキしたリズム・ギターといい、リンゴの切れ味鋭いドラミングといい、とにかく音のシャープネスとエネルギー感がハンパないのだ。
 それはB面の「ドント・レット・ミー・ダウン」も同様で、他の盤ではどこかモッサリ聞こえるジョンのヴォーカルがキリッと引き締まり、説得力が格段に増している。モノラルなのに左右のスピーカーの間にしっかりとした定位を感じさせてくれるのにもビックリ(゜o゜)  ポールのベースもまるで弦が太くなったかのような(?)実在感で、曲の根底をしっかりと支えている。とにかくこんなに雄大なスケールで迫ってくる「ドント・レット・ミー・ダウン」は初めて聴いた。私的には文句なしにこの曲のベスト・サウンドだと断言したい。
 1st プレスは ①“Sold In UK”リマーク有りの “プッシュアウト・センター” タイプで、②レーベルB面左中央部にある出版者名クレジットが“Northern Songs”だけでその後に “NCB” の表記無し(1st:両面ともに “NCB” 表記無し ⇒ 2nd:B面のみ “NCB” 表記有り ⇒ 3rd:両面とも “NCB” 表記有り、と推移)、③マトリクス枝番は -1U / -1U 。購入価格は BUY IT NOW(即決)で£6.00(約1,080円)だった。
Get Back

Don't Let Me Down


⑯ The Ballad Of John And Yoko / Old Brown Shoe (R 5786, Stereo, 1969.5.30発売)
 アメリカや日本といった他の国々に比べると少々遅いようにも思えるが、イギリス本国におけるビートルズのシングルはこの盤からステレオになる。私はこれまで何度もこのブログで初期の不自然極まりないステレオ・ミックスをボロクソに言ってきたが、さすがに69年ともなるとステレオ技術も格段に進歩しており、 この「ジョンとヨーコのバラード」では “ビートルズ初のステレオ・シングル” の名に恥じない自然な音空間が楽しめる。しかも45回転パワーの成せるワザか、それまでのモノラル・シングルにひけを取らない押し出し感の強さを感じさせるパワフルな音がスピーカーから勢いよく飛び出してくるのだから嬉しくてたまらない(^o^)丿  モノは試しとこの盤をモノラル・カートリッジでかけて比較してみたが、当然ながらステレオ針で聴いた時の方が断然良かった。モノラルの時代はここに幕を閉じたのだ。
 1st プレスは ①“Sold In UK”リマーク有りの “ソリッド・センター” タイプで、②マトリクス枝番は -1U / -1U。eBayに出品される盤を見ていてもこのレコードあたりからソリッド型がプッシュアウト型をプレス枚数で完全に逆転したようで、後者のタイプはますますレアになっていく。因みに私が買ったシングル盤もこの盤以降のラスト3枚はすべてソリッド型だ。入札状況は 2 bidsで落札価格は£4.20(約750円)だった。
Ballad Of John And Yoko
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ビートルズUKシングル盤特集⑧ 1968

2015-01-22 | The Beatles
⑰ Lady Madonna / The Inner Light (R 5675, Mono, 1968.3.15発売)
 ビートルズがアップルを設立したことにより、パーロフォン・レーベルとしては最後のシングルになったのがこの「レディー・マドンナ」だ。「サージェント・ペパーズ」や「マジカル・ミルテリー・ツアー」の “絢爛豪華なポップス絵巻” 的な楽曲も好きだが、やっぱりビートルズはストレートアヘッドなロックンロールこそが最高だと信じる私にとって、この「レディー・マドンナ」は “超” の付く愛聴曲。特にこのシングル・ヴァージョンではガンガン叩きつけるように弾かれるピアノの力強い響きがこの曲のドライヴ感に拍車をかけ、ステレオ・ヴァージョンでは味わえない強烈なノリを生み出している。ハッキリ言ってこれまで聴いてきた中で最強の「レディー・マドンナ」だ(^.^)  プレスリーを彷彿とさせるポールのヴォーカルがよりワイルドに聞こえるのも45回転の成せるワザか...
 1st プレスは ①“Sold In UK”リマーク有り、②マトリクス枝番は -3 / -2 で、中でもファンクラブ・インサート付きの最初期プレス盤には鬼のようなプレミア(←ヤフオクでは18,000円!!!)が付いているが、私は英語で書かれたただの紙切れには何の興味も無いので当然パス。インサートなしの通常盤を BUY IT NOW(即決)£6.99(約1,260円)でゲットした。
Lady Madonna


⑱ Hey Jude / Revolution (R 5722, Mono, 1968.8.26発売)
 去年の9月末から2ヶ月ほどかかってようやくビートルズのUK盤シングルを完全制覇出来たのだが、全22枚のうち最初に買った盤が他でもないこの「ヘイ・ジュード」だった。きっかけは前にも書いたようにeBayで衝動買いしたメリー・ホプキンの「悲しき天使」で、その時に「悲しき天使」とほぼ同時期に世界中のヒット・チャートを席巻していたこの曲のことがふと頭に浮かび、ものはついでと eBayで検索してみたところ £1.95という持ってけドロボー価格だったので、 “UKオリジナルのLPはめっちゃ高いけど、シングルは結構安いやん... 「ヘイ・ジュード」のモノ・ミックスはアナログ音源では持ってないし送料入れても1,000円で釣りがくるんやったら取ってみよ...(^.^)” と軽~いノリで買ってしまい、そこからズルズルと “シングル盤桃源郷” の底なし沼にハマって行ったのだった。
 とは言え、実際に聴いてみると、A面の「ヘイ・ジュード」は音質的にそれほど凄いとは思わなかった。7分を超える長さのせいで音溝的に45回転盤のメリットがそれほど活きていないためなのか、低音の低いところがイマイチ量感不足なのだ。一方、手持ちの同名アルバムに収録されているステレオ・ヴァージョンは左右への音の広がりも自然でこの曲の持つ共同体的な雰囲気にピッタリ合っており、私はそちらの方が気に入っている。ポールの闊達なベースがよりクリアに聞こえるのもポイントが高い。
 しかしB面の「レヴォリューション」は 45回転モノラル・パワー炸裂といった感じの強烈無比なサウンドで、私なんかファズをギンギンに効かせたヘヴィーなギターが轟きわたるイントロからテンションが上がりっぱなし... (≧▽≦)  やっぱりこういうゴリゴリのロックは音圧の高いシングル盤で聴くのがエエですな。ということでこのレコードの場合、45回転のご利益はB面にアリだった。
 聞くところによると、このレコードは売り上げに生産が追い付かず、デッカ、パイ、フィリップスといった他社の工場でプレスされた盤もあるみたいだが、1st プレスはすべて ①“Sold In UK”リマーク有り、②マトリクス枝番は -1 / -1 のようだ。購入価格は BUY IT NOW(即決)でたったの£1.95(約350円)だった。
Hey Jude

Revolution
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ビートルズUKシングル盤特集⑦ 1967

2015-01-18 | The Beatles
⑮ All You Need Is Love / Baby You're A Rich Man (R 5620, Mono, 1967.7.7発売)
 「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ」は「マジカル・ミステリー・ツアー」や「青盤」に入っているステレオ・ヴァージョンに耳が馴染んでいるのでアナログ盤ではこのシングル盤がモノ・ヴァージョン初体験だ。激しいロック曲じゃないので45回転盤のメリットはそれほどでもなかろうとタカをくくっていたのだが、いざ聴いてみると私の予想以上にジョンのヴォーカルが力強く迫ってきてビックリ(・o・)  スローな曲でも音のエネルギー感は大事なんだなぁと改めて実感させられた次第。ポールのベースもズシリ、ズシリと響いてきて気持ち良いことこの上ない。良い音で聴くと名曲名演度が更にアップするという典型だろう。又、ステレオ・ミックスのイントロで “Love, love, love♪” コーラスが入ってくるパートの右チャンネルの処理がめっちゃ不自然に感じられて個人的に不満だったのがこのモノ・ミックスでは気にせずに音楽に浸れるし、エンディングのフェイドアウトがステレオ・ミックスよりも長めなところも気に入っている。
 1st プレスは ①“Sold In UK”リマーク有り、②マトリクス枝番は -1 / -1 で、A面の Lennon-McCartneyクレジットの真下に “Recorded during 'Live' World Television Transmission” 表記がある盤と無い盤の2種類が存在しており、私のはよく見かける “表記あり” タイプの方だ。ただ、この盤には他にも色んなバリエーションが存在するらしく “表記なし” タイプでマトリクス枝番が -2 / -1のものが初回盤とする説もあるので正確なところはよく分からないのだが、いずれにせよ “Sold In UK” リマーク有りなら '67~'68のアーリー・プレス盤なので音が良いと考えてまず間違いなさそうだ。購入価格は BUY IT NOW(即決)で£4.00(約720円)だった。
All You Need Is Love


⑯ Hello Goodbye / I Am The Walrus (R 5655, Mono, 1967.11.24発売)
 これまで再三書いてきたように私は自他ともに認める “モノラル盤至上主義者” なのだが、だからといって別にステレオが嫌いというワケではない。ただ、60年代前半に横行した、音楽性を損なうような稚拙なステレオ・ミックスが嫌いなだけだ。実際、60年代も後半に入るとステレオ・ミックスの左右バランスの不自然さも徐々に解消され、曲によってはモノラルよりステレオの方が合っているケースも増えてくる。サウンド・プロダクションやミックス、カッティングの違いによるものかもしれないが、例えばこの「ハロー・グッバイ」のような煌びやかなポップス・タイプの曲は、音が気持ち良く広がるステレオ・ヴァージョンの方が断然合っている。このシングル・ヴァージョンも悪くはないが、全体的にサウンドがこじんまりと小さくまとまってしまっている感じで、ステレオ・ヴァージョンに比べると躍動感に欠けるのだ。アルバムで言うと「イエロー・サブマリン」のサントラ盤から完全にステレオ盤体制に移行するビートルズだが、音楽的にはこの曲から「ヘイ・ジュード」あたりの1年間がモノとステレオの分水嶺と言えそうだ。
 1st プレスは ①“Sold In UK”リマーク有り、②マトリクス枝番は -1 / -1。不思議なことにこのレコードのキレイな盤(EX以上)はあまり市場に出てこないので他の盤よりも競争が激しく、入札状況は 5 bidsで落札価格は£7.92(約1,430円)だった。
Hello Goodbye

Hello Goodbye [Stereo]

Twist And Shout [EP] / The Beatles

2015-01-12 | The Beatles
 私はレコードを買う時、人一倍ジャケット・デザインを重視する。「アビー・ロード」は言うに及ばず、「ラバー・ソウル」も「リヴォルヴァー」も「サージェント・ペパーズ」も、すべてあのジャケット・デザインが醸し出す独特な雰囲気が中身の音楽と密接に結びついて初めてひとつの作品として完成するのではないだろうか。だからそのジャケットを見ただけで音楽が聞こえてくるような、そんな意匠を凝らしたデザインのレコードを見ると、手持ちの盤と曲がいくらダブっていようがついつい買ってしまうのだ。今日取り上げるEP盤「ツイスト・アンド・シャウト」もそんな1枚だ。
 私はeBayオークションでレコードを取る際にはそのセラーが出品している他のアイテムもチェックして、もしその中に欲しい盤があれば一緒に取って同梱してもらい送料を安く上げるようにしているのだが、かなり前にビートルズ関連のブツをメインに扱っているUKのセラーから「アット・ザ・ハリウッド・ボウル」を取った時のこと、同時出品されていた様々なレコードを見ていて思わずジャケ買いしてしまったのが前々回取り上げた「ノーウェア・マン」とこの「ツイスト・アンド・シャウト」だった。どちらの盤も音源的には目新しいものはなかったが、£0.99で目の保養になれば安い買い物だと思い、「ハリウッド・ボウル」のオマケ感覚で取ったのだ。
 それにしても何とまぁカッコ良いジャケットだろう! 4人のジャンプ・ポーズはアイズレー・ブラザーズのRCA盤「シャウト」のパロディーだが、若さ溢れる4人の姿をフィーチャーしたビートルズ盤のジャケット写真はオリジナルにはなかった躍動感を見事に表現している。盤に針を落とす前からエネルギーに満ち溢れた荒削りなロックンロールが聞こえてくるようだ。モノクロ写真に赤いタイトル文字を組み合わせたセンスも素晴らしい。
 届いた2枚のEP盤は GRAMOPHONEリムで “SOLD IN U.K....” リマーク無し69年製再発盤だったのだが、不思議なことに3rd プレスの「ノーウェア・マン」の音が薄っぺらかったのに対し、6th プレス(!)にあたる「ツイスト・アンド・シャウト」の方は結構野太いサウンドが入っていたのだ。今回ブログで取り上げるに当たり、せっかくなので自分のコレクションの中から「ツイスト・アンド・シャウト」入りのモノラル盤を何枚か選んで聴き比べをしてみることにした。選んだのは次の4枚だ:
  ①EP盤 [UK 1969]
  ②Gold Parlophone LP盤 [UK 1963]
  ③Yellow Parlophone LP盤 [UK 1963]
  ④Vee Jay LP盤 [US 19??]
 まずは①のEP盤だが、初回盤から6年落ちの再発盤にしては結構生意気な音をしている。このEPの1stプレス盤を持っていないので残念ながら比較することはできないが、69年製の6thプレス盤だというのに音圧はかなり高く、鮮烈な音がスピーカーから飛び出してくる。一言で言えば “ラウドでありながらクリアー&クリスプなサウンド” で、普通にアナログ音源を楽しむだけならこれで十分かもしれない。
Twist And Shout EP


 しかし①を聴いた後に②の金パロ盤を聴くとその差は歴然... わかりやすく言うと、①は感心する音、②はブッ飛ぶ音、なんである。金パロ盤ではビートルズが音溝に刻み込んだ凄まじいエネルギーを実に生々しいサウンドで体感できるのだ。ギターもエッジの効いた音でバリバリ弾きまくっている感じがよく出ているし、リンゴの爆裂ドラミングも圧巻だ。とにかくこのリアルな臨場感はとても言葉では表現できない。私の知る限り最強の「ツイスト・アンド・シャウト」である。
Twist And Shout Gold Parlophone


 ③の黄パロ盤は金パロと同じ1963年プレス盤ということもあるのだろうが、音の差はほとんど感じられない。注意深く聴き比べれば、金パロの方が低域の低~いところまで伸びていて(←ズウウウゥ~ンと床を這って伝わってくる感じ...)それがサウンド全体のド迫力に拍車をかけているのに対し、黄パロの方はやや中高域が強くてその分ヴォーカルが前に出てくる感じがするが、目隠しテストで正確に違いを言い当てることは至難のワザだと思う。
 「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」が何かの手違いで冒頭のカウント “ワン、トゥー、スリー” をすっ飛ばしていきなり “ファッ!” から始まることで悪名高い④のヴィー・ジェイ盤はアーリー・プレスのカラーバンド・レーベルではなくレイター・プレスのブラック/シルバー・レーベルなのでUK盤との比較対象にはならないが、それを差し引いても情けないプアーな音だ。例えるならAMラジオを聴いているかのようなこもった音で、音像が奥の方に引っ込んでしまっている感じ。スピーカーから音が元気よく呼び出してくる①②③とは大違いだ。ものはついでとばかりに私が中学生の時に買った東芝のシングル盤も引っ張り出してきて比べてみたが、このヴィー・ジェイ盤は悲しいことに70年代中期プレスの国内盤にすら遠く及ばなかった。
 ということで「ツイスト・アンド・シャウト」に関しては②金パロ盤と③黄パロ盤が圧倒的№1だったが、コスパを考えれば£1.00以下で買えた①のEP盤もバカにできない。今は£1.00=180円を超える超円安なのでしばらくはおとなしくしているつもりだが、そのうちアベノミクスが破綻してまた一昔前のように£1.00=130円ぐらいになったらぜひともこのEPの1stプレス盤を取ってどんな音がするのか聴いてみたいと思う。
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Long Tall Sally [EP] / The Beatles

2015-01-06 | The Beatles
 私はビートルズのレコードに関してはUKオリジナルの、それもモノラル盤至上主義者である。何故か音の悪い「オールディーズ」(←モノラル盤は輪郭がボヤけたようなモコモコした埃っぽい音だったので、ステレオ盤を買い直すハメになってしまった...)を除けば、変なエコーがかかったUS盤や音が痩せた感じの日本盤とは次元の違う生々しいサウンドが楽しめるからだ。 “良い音” というのはあくまでも主観的なもので聴く人によって十人十色だが、「ラバー・ソウル」ラウドカット盤や「プリーズ・プリーズ・ミー」赤パーロフォン・シングル盤の時に書いたように、私の場合はとにかく音が近くて迫力があるサウンドが好みなので、そういう音作りがなされているUK盤を極めようと決めたのだ。
 そんなこんなで10年ほど前にビートルズの全オリジナル・アルバムをUK 1stプレス盤でせっせと買い揃えたのだが、シングル曲を始めとするアルバム未収録音源は残念ながら盤も音も薄っぺらい「パスト・マスターズ」(1988年)で聴くしかなかった。ステレオ盤をモノラル・カートリッジで聴くという荒ワザは音溝を痛めるし、2009年リリースのモノCDではアナログ盤に比べるといまいちパワー不足だったので、アルバム未収録曲を私が理想とするモノの大迫力で聴くのは不可能と半ば諦めていた。当時はジャケットの無いシングル盤など全く眼中になかった。
 しかし昨年ふとしたことからシングル盤に開眼してビートルズUKシングル・コンプリート作戦を敢行、22枚すべてを手に入れて一服ついていた時に例の “悪魔のささやき”(笑)に触発され、EP盤リストを眺めていてふと気がついた... これってひょっとすると「ロング・トール・サリー」のEP盤を取れば(ドイツ語ヴァージョン2曲を除いて)ビートルズの全レコーディング曲をUKオリジナルのリアルなサウンドで聴けるっていうことやん... 私のテンションは一気にMAX状態にハネ上がり、速攻でeBayチェックした。
 するとラッキーなことにSold In UKリマーク有りの1stプレス盤が£5.99で出ているではないか! しかも残り1日でまだゼロ・ビッドだ。商品説明には “The title track literally jumped out of the speakers when I listen to this. Wow. This was how the Fab Four were meant to sound. Glorious Mono vinyl. Vinyl. VG. Surface marks both sides but it play great. Barely any unwanted noise. No pops, crackles or skips.(タイトル曲は文字通りスピーカーから怒涛の如く飛び出してくる感じ。ワオ! これこそまさにビートルズ・サウンドだ。とにかく凄いモノラル盤。盤質はVGで表面にスレ有りだが凄く良い音で鳴る。不快なノイズはほぼ無し。ボツ音・チリ音・針飛びなし。)とある。ワオ!と叫びたいのはこっちである。このまま誰も来ませんようにと祈るような気持ちで最終日を迎えた。
 このオークションはイギリスのセラーにしては珍しく、〆切は日本時間の夜8時40分というラクチンな時間帯、裏を返せばアメリカは真夜中という願ってもない好条件での余裕のスナイプ... 結局ライバルは誰も現れず、無競争£5.99でこのEP盤を手に入れることが出来た。プライス・ガイドには£18.00と書いてあったので何かめっちゃ得した気分だ。
 届いた盤はVGどころかNMと言ってもいいぐらいのグッド・コンディション(^.^)  海外オークションでアナログ・レコードを取った時は実際に音出しするまで油断は禁物だが、商品説明通りサ-フェス・ノイズがほとんど気にならないレベルでホッと一安心だ。それにしてもA面1曲目のタイトル曲「ロング・トール・サリー」の凄いこと... (≧▽≦)  喉が張り裂けんばかりにシャウトするポールのヴォーカルの凄まじさはこれまで聴いてきた盤の中で文句なしに最強だ。力感みなぎるジョージのギターもたまらんたまらん! ひとつひとつの楽器のエネルギー感が桁違いで楽曲全体の躍動感を高めており、それこそロックンロールを聴く喜びここにありである。
 B面ではアップテンポな「スロー・ダウン」が出色の出来。ジョージ・マーティンがガンガン叩きつけるように弾きまくるピアノをバックにノリノリで歌うジョンのヤクザなヴォーカルが圧巻なのだが、そんなジョンの歌声がスピーカーからドバーッと飛び出してきてこの曲の生命線である “疾走感” に拍車をかけているのはモノ・ミックスならではのチカラワザだろう。アンプのヴォリュームを数ミリ上げるだけで音の風で全身をくまなく包まれる快感は筆舌に尽くし難い。
 一応モノとステレオを比較するために1976年リリースのコンピレーションLP「ロックンロール」収録のステレオ・ヴァージョンを一緒に貼り付けてみたが、私的にはモノ・ミックスの圧勝だ。初期ビートルズの火の出るようなロックンロールをヴォーカルが右チャンネルに偏った不自然極まりないステレオ・ミックスで聴いて幸せ、などというリスナーが果たして何人いるのだろう? ロックンロールはチカラである... そのことを如実に示しているのがこのEPなのだ。
Long Tall Sally [EP]

Long Tall Sally Stereo Mix


Slow Down [EP]

Slow Down Stereo Mix
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Nowhere Man [EP] / The Beatles

2015-01-01 | The Beatles
 新年あけましておめでとうございます。今年も好きな音楽を好きなだけ聴いて、その感想を好きなように書き散らかしていきますので、どうぞよろしくお付き合いください。

 私は去年の後半からずっとシングル盤にハマっており、このブログでも “ビートルズUKシングル盤特集” を継続中なのだが、ピクチャー・スリーヴの無いシングル盤ではお正月には地味すぎて面白くないので、今日は少し趣向を変えて同じ45回転盤でもピクチャー・スリーヴのあるEP盤でいってみたい。
 EP盤というのはいわゆるひとつの “4曲入りコンパクト盤” のことで、ティーンエイジャーにとってLPが高級品だった60年代には結構ポピュラーな存在。日本盤は何故か33回転なので音質的メリットはゼロに等しいが、本国イギリスでは片面2曲入りで45回転盤としてリリースされており、片面1曲のシングル盤には及ばないまでも少なくとも理論的には33回転盤よりは音が良いはずだ。
 実を言うと、10年ほど前にUKオリジナルLPを集めていた時に、ピクチャー・スリーヴがカッコ良いEP盤も何枚かジャケ買いしたことがあるのだが、当時はEP盤の識別法に関して全く無知だったので、GRAMOPHONEリムで “SOLD IN U.K....” リマークの無い69年製の再発盤をそれとは知らずに買ってしまい、届いた盤が見た目も音も薄っぺらかったので “あちゃー、再発盤を取ってしもうた...” とガッカリし、それ以降は時々眺めて楽しむだけの目の保養盤になっていた。
 今回私がシングル盤特集を始めた時にfab-forさんやchusanさんから “EP盤もいったらどうですか?” という悪魔のお誘い(笑)を受け、“先のお楽しみに取っておきます” と答えはしたものの、実際はお二人の言葉が私の心の奥底に眠っていたEP盤への想いを呼び覚まし、 “今度は再発盤ではなく1stプレス盤の音を聴いてみたい!” という気持ちが日に日に高まっていって、気がつけば毎日 eBayでチェックするようになっていた。メイン・ターゲットはサイケなジャケットがめちゃくちゃカッコ良い「ノーウェア・マン」と、4曲すべてオリジナルLP未収録という「ロング・トール・サリー」の2枚だ。
 まず驚いたのが「ノーウェア・マン」の実勢価格で、私がアホみたいな安値で買った再発盤ですら£40~£50、今回狙っている1stプレス盤に至っては最低でも£100(約18,500円)以上はする。海外がダメなら国内があるわいと今度はヤフオクで検索してみると、更に厳しい現実が私を待っていた。即決価格60,000円だ。ろくまんえん??? マジか??? 説明書きには“英国オリジナルEPの中で最もレアで人気がある” だとか “英国オリジナルEPの最高峰” だとかいった美辞麗句が並んでいる。果たしてEP盤1枚に6万円も払う阿呆がこの世にいるのだろうか? ということでヤフオクは論外、やっぱりeBayで安い開始価格で出品された時に入札しようと網を張って虎視眈々と待ち続けた。
 それから約2週間後、私が狙っている1stプレス盤が開始価格£10.00で出品された。盤のコンディションはVG+... こいつは狙い目だ。〆切時刻は平日早朝の4時半ということでイギリス時間に合わせた早起きは約1ヶ月ぶりだがそんなことは気にしない。仕事よりも趣味が優先である。どうやら今年最後の大勝負になりそうだ。そして決戦当日、眠い目をこすりながらも〆切3秒前に入魂の£50.02(←.02がセコイでしょ)ビッド... ドキドキしながらF5を押して画面を更新するとそこには緑色の文字で£46.00と表示されていた。やったー、無事落札だ(^o^)丿 日本円に直すと8,500円ぐらいだが、今年1年頑張った自分へのご褒美盤としてはこれ以上の物はない。
 ブツが届いたのは12月25日... 自分から自分への(笑)最高のクリスマス・プレゼントだ。ピクチャー・スリーヴは再発盤とは違ってしっかりとコーティングされ、艶々と輝いている。やっぱり本物はエエなぁ... (≧▽≦)  サイケな雰囲気横溢のジャケットのカッコ良さがハンパない。ワクワクしながら早速ターンテーブルに乗せる。ちょうどその2日前に45回転盤ならではの迫力満点サウンドを更にパワーアップさせてやろうと思い、オーディオ機器の端子やピンプラグに接点復活剤を塗布して汚れや酸化被膜を取り除き、システムの完全クリーニングを行ったばかりだったのだがその効果はてきめんで、イントロ無しでいきなり “ヒィザァ リィアァ ノォウェァ マ~ン♪” と分厚いコーラスがスピーカーから飛び出してきた時は腰を抜かしそうになった。松田優作ではないが、まさに “何じゃこりゃぁ...(゜o゜)” である。続く「ドライヴ・マイ・カー」も凄い音だ。B面の「ミッシェル」や「ユー・ウォント・シー・ミー」にしたって音に芯があるのでヴォーカルの説得力が違う。
 ここまで書いてきて、ひとつ面白い考えが閃いた。これは「ラバー・ソウル」の音源だ... 「ラバー・ソウル」と言えば、私がビートルズLP史上最強のサウンドと信じて疑わない UK 1st プレスのラウドカット盤が存在する... 「プリーズ・プリーズ・ミー」対決ではあのゴールド・パーロフォンLPですらレッド・パーロフォン・シングル盤の轟音には及ばなかったが、今回はどうだろう...(-。-)y-゜゜゜ ということで、お正月ならではの特別企画、“45回転パワー vs 究極のラウドカット” の聴き比べ対決をやってみた。
 まず先にEPをかけ、続いて同じ曲をLPで聴くといういつものパターンで比較。昨年末にやった「イエロー・サブマリン」や「エリナー・リグビー」の時はシングルの後に「リヴォルヴァー」ヴァージョンをかけると音像が小さくなり音が奥へ少し引っ込んだ感じになったのだが今回は立場が逆転、「ノーウェア・マン」ではコーラスの分厚さとそれがスピーカーから迸り出てくる勢いを、「ドライヴ・マイ・カー」ではギターのキレ味とベースの重低音を比較ポイントの中心に置いて聴いたのだが、後からかけたLPの方が音圧・迫力の点でも7対3かヘタをすれば8対2ぐらいの大差で勝っている。EPも確かに凄い音をしているのだが、上には上がいたというべきか、さすがは901さんがポールのベースの重低音に腰を抜かした史上最強のラウドカット盤だ。今もあまりの轟音にコーフンし、思わずヴォリュームを上げて3回連続で同じトラックを聴いてしまったではないか! 新年早々俺は一体何をやっとるんや... (≧▽≦)  下に両方アップして貼り付けておきましたので興味のある方はご自分の耳で違いを聴き比べてみてくださいな。
 ということで、さすがにラウドカットLPには及ばなかったものの、音良し、ジャケット良し、選曲良しと3拍子揃ったこのEP盤は私にとってかけがえのない宝物。特にこの雰囲気抜群のジャケットは最高だ。去年取りまくったシングル盤にはカンパニー・スリーヴしか付いてなくてめっちゃ味気ないので、このお正月はパソコンとプリンターを駆使してUKシングルのオリジナル・ジャケットでも作ってみることにしよう。
Nowhere Man EP

Nowhere Man Loud Cut


Drive My Car EP

Drive My Car Loud Cut
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