shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

【50's ヘレン・メリル】「The Nearness Of You」「Parole E Misica」

2024-07-07 | Jazz Vocal

 ヘレン・メリルというとデビュー作の “「ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン」だけ聴いてればそれで十分” という声をこれまで何度も聞いたことがあるが、それって “イーグルスは「ホテル・カリフォルニア」だけ、フリートウッド・マックは「噂」だけ聴いてればいい” と言っているようなものだろう。しかしイーグルスに「テイク・イット・イージー」や「ザ・ロング・ラン」が、マックに「ファンタスティック・マック」や「タンゴ・イン・ザ・ナイト」があるように、ヘレン・メリルにだって「ウィズ・クリフォード・ブラウン」以外にも素晴らしいレコードがたくさんあるのだ。ということで当ブログではヘレン・メリルの “隠れ名盤” を年代別に特集してみたいと思う。まずは1950年代から...

①「The Nearness Of You」
 ヘレン・メリルは全盛期といわれる1950年代にはエマーシー・レーベルに5枚のアルバムを残しているが、クリフォード・ブラウンと共演したデビュー・アルバムに次いで私が好きなのが5作目にあたるこの「The Nearness Of You」だ。そもそも彼女のヴォーカルはねっとりとベタつくところがあるので、ウィズ・ストリングスやスロー・バラッドはあまり好きではない。“ニューヨークのため息” と言われる彼女のハスキーなヴォーカルが引き立つのはバックの演奏が軽快にスイングする楽曲で、このアルバムにはそんなスインギーなナンバーが何曲も入っており、聴いてて実に心地良いのだ。「Bye Bye Blackbird」や「I Remember You」「All Of You」といった有名スタンダード曲から「Dearly Beloved」「This Time The Dream's On Me」といった知る人ぞ知る佳曲に至るまで、ミディアム・テンポで軽快にスイングするメリル姐さんが最高だ。ジャジーなアレンジが光る「Softly As In A Morning Sunrise」も素晴らしい。
 このレコードはB面に収録されたニューヨーク・セッションにピアノのビル・エヴァンスが参加していることも大きな魅力で、一聴してすぐに彼とわかるユニークなフレージングに耳が吸い付くし、他にも絶妙な歌伴を聴かせるフルートのボビー・ジャスパーやギターのバリー・ガルブレイスを見事に活かしたジョージ・ラッセルのアレンジも素晴らしい。尚、裏ジャケにはドラマーが Jo Jones と書かれているが、特徴的なリム・ショットやブラッシュ・ワークなど、どこをどう聴いてもこれは Philly Joe Jones の間違いだろう。まぁフィリー・ジョーも一応 ”ジョー・ジョーンズ” なので勘違いしたのかもしれないが、そもそも音楽性が全然違うやん...
 尚、このレコードは1958年にリリースされてすぐに EmArcyレーベルが倒産したために 1stプレスの“ビッグ・ドラマー・レーベル” は非常に稀少で、今ではキレイな盤は何万円もするようだ。私は25年くらい前に難波のビッグ・ピンクで7,200円で購入したのだが、そのえげつない値上がりようにビックリさせられた。
Softly, as in a Morning Sunrise (Remastered 2016)


②「Parole E Misica」
 ヘレン・メリルは1959 年に渡欧してイタリアに居を構え、1962年までそこに滞在していたのだが、この「Parole E Misica」というアルバムはその滞在中1960年の10月から11月にかけてローマでRCAに吹き込んだもので(RCA Italiana LPM-10105)、日本では「ローマのナイトクラブで」というタイトルで知られている。
 このレコードは変わった作りになっていて、各曲が始まる前にイタリア語に訳されたその曲の歌詞が朗読されるのだが(←何でもイタリアにそういう趣向のTV番組があるらしい...)、イタリア語なんて当然何を言っているのかサッパリわからないし、朗読の仕方も聞いててこそばいというか、ムズムズするというか、何だかこっ恥ずかしい気持ちになってしまうので、私はちょっと苦手。日常的にはmp3DeirectCutというソフトを使ってCDの朗読パートをカットしてCD-Rに焼いたものを聴いているし(←朗読 “無し” と “有り” で雰囲気が全然違います!)、レコードで聴く時は少々面倒臭いが1曲ごとに朗読を飛ばすようにしている。
 このように私には不要な朗読パートが入っているというデメリットはあるものの、それを補って余りあるのが彼女の歌とバックの演奏の素晴らしさだ。彼女はこのレコードでピエロ・ウミリアーニと共演しており、ウミリアーニの編曲とピアノ、ニニ・ロッソのトランペット、ジノ・マリナッチのフルートなど、名うての名手たちの演奏に乗って軽快にスイングするメリル姐さんの浮遊感のある歌声で実に粋なジャズ・ヴォーカル・アルバムに仕上がっている。
 選曲も私の大好きなスタンダード・ナンバーばかり取り上げられており、それも私がこのアルバムを溺愛している要因の一つになっている。全曲気に入っているが、一番のお気に入りは軽快にスイングするB③「I've Got You Under My Skin」で、私にはジュリー・ロンドンと並ぶフェイヴァリット・ヴァージョンだ。 “軽快にスイング” という点ではB⑥「When Your Lover Has Gone」もB③に引けを取らない名演で、ヘレン姐さんのハスキーな声質と相俟って、どちらも“クールに、軽やかに、粋にスイング” というジャズ・ヴォーカルの真にあらまほしき姿を堪能できるトラックになっている。軽快なギターとフィンガー・スナップで始まる出だしからヘレン姐さんのヴォーカルがスルスルと滑り出すA①「Night And Day」もたまらんたまらん... (≧▽≦)
 このレコードのイタリアRCAオリジナル盤は昔から超入手困難盤として知られており、ごくたまに市場に出てきても5~8万円くらいで取り引きされている。私も当初はオリジナル盤なんて絶対に無理... と諦めていたのだが、ビートルズのイタリア盤をeBay Italiaで漁っていた時にたまたまこのレコードのオリジナル盤を€120で見つけて狂喜乱舞ヽ(^o^)丿 この機会を逃したら二度とチャンスは無いと思い、Strong VG という言葉を信じて即決。届いた盤は見た目は確かにVGだったが実際に聴いてみると VGどころかExレベルの盤質で大喜びしたのを今でもよく覚えている。初めてその存在を知ってから16年経ってようやくオリジナル盤を手に入れることができた掛け替えのない1枚だ。
Helen Merrill - I've Got You Under My Skin (1961)

Helen Merrill - Night and Day (1961)

「Helen Merrill with Clifford Brown」のオランダ盤

2024-06-23 | Jazz Vocal

 「Helen Merrill with Clifford Brown」のOZ盤を首尾よく手に入れた私は勢いに乗ってオランダ盤もゲットしてやろうとネット上を色々探しまわった。まずはDiscogsだが、イタリアのセラーからVG盤3万円、ドイツのセラーからNM盤7万円と2枚出品されていたが、私の希望購入価格の上限は1万円台後半であり、まかり間違っても2万円以上は出したくないのでアウト。そもそもDiscogsは出品しているセラーにいい加減なのが多いので(←ビートルズのスペイン盤で懲りました...)余程のことがない限りここでは買いたくないというのが正直なところ。今の自分にとって Discogsはレコードを買うところではなく、価格相場を知るための情報源に過ぎない。
 ところが頼みの綱とでも言うべき eBayには出品されておらず(←オランダ盤も Holland, Dutch, Netherlands, NL, NLD と色んな表示方法があるので面倒くさい...)、レア度をPopsikeで調べてみると過去20年間で4枚しか売れてないというスーパーウルトラ稀少盤だとわかってビックリ(゜o゜) こんな時、灯台下暗しでヤフオクなんかにしれっと出てたりすることがあるのだが今回はそれもない。
 よくよく考えてみるとプレス枚数が段違いに多いビートルズですらオランダ盤はあまり出てこないのに、ビートルズの100分の1、いや1000分の1ぐらいしかプレスされなかったであろうヘレン・メリルのレコードがそう簡単に見つかるわけがないのだ。しゃあないなぁ、 オランダ盤は諦めるか... と思い始めた時にあるレコード販売サイトのことが頭に浮かんだ。これまで何度かこのブログにも書いた「CD and LP」である。
 海外からレコードを買うとなると “Discogsで調べてeBayで買う” というのが私の定番パターンなので、ついついこの CD and LP というサイトの存在を忘れてしまいがちなのだが、フランスに本部を置くこのサイトは基本的にヨーロッパ盤に強く、これまでも何度かめちゃくちゃおいしい思いをさせてもらってきたことを思い出し、あわよくばと思って「Helen Merrill with Clifford Brown」のオランダ盤を検索してみると、ラッキーなことに1枚出品されていた。それもVG+コンディションで €120(約2万円)である。送料を入れると少し予算オ―バーになってしまうが、稀少度を知ってしまった今となっては 3,000円程度の誤差など問題にならない。このサイトはストック・フォトを載せていることが多いので(←これホンマに要注意です!)念のために写真画像を送ってもらったところ、盤面もジャケットもキレイなものだったので、私は嬉々としてOrder をクリックした。
 OZ盤が期待ハズレだったので今回はあまり期待せずにいたのだが、届いた盤はフラット・エッジで重さ158g、見た目はピカピカで申し分ない。ジャケットの状態も良く、裏ジャケはUS 1st/2ndプレスと同じブルーバックなのだが、悲しいことに写真画質のクオリティーの低さは一目瞭然で、その鮮明度は明らかに粗いコピー画質のレベルだ。
 さて、一番肝心な音についてだが、独自マトによるヨーロッパらしいキメ細やかな音作りであり、US盤とは又違った端正で整ったクリアーなサウンドでヘレン・メリルの最高傑作が楽しめる。どちらが好みかと問われれば私は迷うことなくUSオリジナル盤の濃厚で鮮烈な音に軍配を上げるが、このオランダ盤の音もこれはこれで捨て難い魅力がある。こういう楽しみ方があるから各国盤はやめられないのだ。
 ということで「Helen Merrill with Clifford Brown」に関しては、US 1stプレス盤、US 2ndプレス盤、オランダ盤、オーストラリア盤、日本盤という5枚のLPに加えて例のEP盤3枚を揃え、まさに絶世の美女を何人も侍らせまくったハーレム状態を満喫しながら “今日はどの女性とデート...じゃなかった、どのレコードを聴こうかな...” と矯めつ眇めつする今日この頃だ。

「Helen Merrill with Clifford Brown」の OZ盤

2024-06-16 | Jazz Vocal

 ゴールデンウイークに901さんとオフ会で盛り上がった話は以前ここに書いたが、その時にやった「Helen Merrill with Clifford Brown」の1stプレスと2ndプレスの聴き比べをきっかけに私の “ヘレン・メリル熱” が再燃した。あの日以来「You'd Be So...」や「'S Wonderful」を聴いて悦に入る日々が続いたのだが、ある時ふと “このレコードの各国盤ってどんな音がするんやろ???” と私の心の中に潜む悪魔(笑)が囁きかけてきた。
 こうやってドロ沼にハマっていくのがいつものパターンなのだが、今回も例によって好奇心に勝てず、早速 Discogsで1955年~1957年の間にプレスされた「Helen Merrill with Clifford Brown」の各国盤を調べてみた。1958年以降の Mercury レーベルになってからは音質がガタッと落ちるので対象外なのだ。その結果、南アフリカ、オランダ、カナダ、オーストラリアの4ヶ国の盤が存在することがわかった。更に調べてみると、南アフリカ盤とカナダ盤は超の付くレア盤のようで滅多に市場に出てこないがオランダ盤とオーストラリア盤の方は何とかなりそうだったので、とりあえずその2枚にターゲットを絞って探すことにした。
 そもそも最高峰である US盤 1stプレスを持っているのに何でわざわざ... と思われそうだが、ビートルズの各国盤蒐集で体験したように “独自マト盤がひょっとしてとんでもなく凄い音を出すのではないか?”、あるいは “US盤を凌駕することはないにしても、US盤とは又違った独自マトならではの、これまで聴いたことがないような音でクリフォード・ブラウンのトランペットが炸裂するのではないか?(←せぇへんせぇへん...笑)” という好奇心に抗えなかったのだ。ましてやプレス枚数の極端に少ないオランダやオーストラリアとくれば、めちゃくちゃ鮮度の高い音が聴けるのではないかと思ったのだ。
 そこでまず目に留まったのがオーストラリア盤だった。最初に調べたDiscogsには3枚出品されていたが、“コンディション G/G+” “日本からは購入不可” “お値段8万円超え” ということですべて問題外。それならばと eBayで検索してみると(←オーストラリア盤って Australia, Australian, Aussie, OZ, AUS, AU と色んなパターンで検索せなアカンのが面倒くさい...)ラッキーなことにニュージーランドのセラーから Strong VG コンディションの盤が NZ$100で出品されていた。写真で見る限りは盤面に目立ったキズは無さそうだし、それより何よりドルやユーロの異常な円安にウンザリさせられている身としては 1 ニュージーランド・ドル = 95円という為替レートがありがたすぎて(笑)即決。送料込みでも日本円にして12,000円ほどで買えたのがめちゃくちゃ嬉しい。中古盤というのは値段があってないようなモノだとはよく言われるが、これに比べるとDiscogsセラーの8万円という超強気の値付けは一体何なのだと思ってしまう。
 このセラーはとてもフレンドリーな人で、取り引きメールのやり取りの中で Domo Arigato を連発したり日本の話を振ってきたりするので何故なのか訊いてみたところ、昔2000年代に数年間大阪で子供達に英語を教えていたとのこと。しかも日本滞在中は関西のレコ屋巡りをしていたらしく、 The second hand market is so good there !(日本の中古レコ屋は充実してるよね!)と懐かしそうに語ってくれたが、ひょっとするとどこかのお店で隣り合わせでエサ箱を漁っていたかもしれないと思い、何となく親近感を感じてしまった。
 2週間ほどしてレコードが届いた。非常に珍しい OZのメリルさんだ。表ジャケは US盤の青よりもかなり淡い色合いで、左上の EmArcy のロゴには “Esquire MECURY” と入っている。なるほど、オーストラリアは UK系の Esquire なのか。裏ジャケは US 1st/2ndプレスのブルーバックではなく黒色印刷だ。盤はフラット・エッジでズシリと重く、量ってみると192gもあった。盤の重さと音質が比例しないことは重々承知だが、それでもやはりヴィンテージ・レコード・コレクターの心情としては大いなる期待を抱いてしまう。因みに US 1stプレスは166g、2ndプレスは175g、そしてこのレコードの国内盤では最も音が良いとされている91年プレス盤(DMJ型番)は120gだった。
 とまぁこのように大きな期待を抱いてターンテーブルに乗せ、ワクワクしながら針を落としたのだが、スピーカーから出てきた音はハッキリ言ってイマイチ。何か薄いベールを被せたようなこもった音で高域のヌケが悪く、USオリジナル盤はおろか国内盤にすら完全に負けている。本来ならば金粉をまいたかのように爆裂するはずのクリフォード・ブラウンのトランペットが借りてきた猫のように大人しいし、オシー・ジョンソンのブラッシュのキレ味が全く感じられないのが何よりも悲しい。もちろん US盤とは似ても似つかぬ手書きの独自マトなのだが、A①「Don't Explain」の2分20秒のところで一瞬音が撚れるようなところがあるので、ひょっとしたらオーストラリアに送られたマスターテープ自体に問題があったのかもしれない。
 そういうワケでこのレコードの第一印象は非常に悪く、その後数回聴いてもそのマイナス・イメージは払しょくできなかったのだが、ある時何とかして音質を改善してやろうとプリアンプのトレブルつまみを3目盛りほど右に回してみたところ、生まれ変わったかのように活き活きと鳴りだした。私はアンプの音質コントロール機能なんて滅多に触らないのだが、今回の “音に満足できなければこっちから積極的に音作りしてやろう” という思いつきは大成功で、このレコードは隣室のレコ墓場送りをギリで回避。まぁヘレン・メリルのオーストラリア盤なんて滅多に見ないので、珍盤として手元に置いておくのも悪くはないかもしれない。

ヤフオク大決戦③

2020-04-06 | Jazz Vocal
 先週書いたように、久々のオークション大バトルは5戦して “4勝1放棄試合” という上々の結果(^.^) 発送も早くて2日後にドドーン!とLP4枚が届いた。コロナが怖くて自主隔離中(←戒厳令の大阪や京産クラスターの京都に隣接する奈良の感染者数が30人弱なワケがない... 奈良県の隠蔽体質にはウンザリやわ...)で手持ちの盤を聴きつぶしている最中の身には最高のご褒美だ。今回は早速その戦果を報告したいと思う。

①Souvenirs de Django Reinhardt Vol.2 [Swing:M. 33.315]
 このSwing盤10インチはジャンゴが新生クインテットを率いて1947年に録音したもので、エレクトリック・ギターで縦横無尽にスイングするジャンゴが圧巻だ。手持ちの英Vogue盤と聴き比べてみたが、薄皮を1枚剥いだようなリアルなサウンドという点でこちらの仏オリジナル盤に一日の長があるし、ジャケット写真に至ってはコピー写真感丸出しの英Vogue盤では全く勝負にならない。このレコードがヤフオクに出ていることを教えて下さった901さんに改めて感謝感謝である。それにしてもジャンゴのスイングはいつ聴いても強烈やなぁ... (≧▽≦)
Blues En Mineur


②Teddy Wilson And His All Stars [Dial:213]
 Dialというレーベルはジャズ・ファン、特にチャーリー・パーカー信者にとっては憧れともいえる存在だ。何百ドルもするパーカー盤を買う気は毛頭ないが、テディ・ウィルソンならいけるかもと思ってトライしたら3,000円かそこらで買えて大ラッキー(^.^) 因みにPrice Guideでは$250だからヤフオクさまさまだ。いつも元気溌剌絶好調なテディ・ウィルソンのピアノはもちろん良いのだが、A面B面でのドラマーの違いによるサウンド比較が何と言っても聴き物で、A面担当の鈍重なダニー・アルヴィンに対し(←スウィングしない「Love Me Or Leave Me」はアカンやろ...)バンド全体をスウィングさせるB面担当のシド・カトレットの圧勝だ。やっぱりジャズはリズムが命やね。

③Action / B'z [Vermillion:BMJV-8019]
 私は70~80年代ハードロックのカッコ良さに日本独自の歌謡曲的な哀愁エッセンスをプラスしたB'zの音楽が大好きで、このサウンドをアナログ・レコードで聴けたら最高やろうなぁ... と思っていたのだが、まさかその夢が実現するとは思わなんだ。しかもB'zの初アナログ体験が、彼らのアルバムでは五指に入る名作と信じて疑わない「Action」というのも嬉しい。ワクワクドキドキしながらレコードに針を落とした瞬間からCDとは明らかに違う腰の据わったサウンドに耳が吸い付く。全曲大満足だが、敢えて1曲と言われればこの「Friction」が一番好き。この疾走感こそがB'zのカッコ良さの原点だ。空耳 “シャリがうまいねぇ...♪” にも大笑いヽ(^o^)丿
B'z - Friction


④Helen Merrill In Tokyo [King:KC3007]
 「Helen Merrill In Tokyo」はWaveから出た再発ステレオ盤もかなり良い音でジャケットの作りなんかも非常に良く出来ていたのだが、このオリジナル・モノラル盤はそんな高音質Wave盤をも遥かに凌ぐ素晴らしさ。何よりもまず音のバランスが最高で中低域が充実しており、ヘレン・メリルのヴォーカルがゾクゾクするほど生々しい。ブラッシュの音にも立体感があり、ベースもズンズンくるからたまらない。盤質はNMといってよく、ほとんどノイズレス(←もちろん超音波洗浄済み)というのが何よりも嬉しい。まるでスタジオ・ライヴをかぶりつきの特等席で聴いているような、そんな感じのサウンドなのだ。内容の方も素晴らしく、ヘレン・メリルのリラックスしたハスキー・ヴォイスで大好きなスタンダード・ナンバーが楽しめる喜びを何と表現しよう? 猪俣毅とウエストライナーズの伴奏も出色の出来で(←このレコードは日本録音)、まさに音良し・歌良し・伴奏良しと三拍子揃ったヴォーカル・アルバムの金字塔と言っても過言ではない。大枚を叩いた価値は十分あったと大満足の、まさに “家宝” と言える1枚だ。
Helen Merrill ‎– Helen Merrill In Tokyo [ヘレン・メリル・イン・トウキョウ] (1963)

ヤフオク大決戦②

2020-04-02 | Jazz Vocal
 まずは先鋒のジャンゴ・ラインハルトの仏Swing 10インチ盤「Souvenirs de Django Reinhardt Vol.2」だが、〆切直前に5,000円でビッドすると(←ヤフオクはeBayと違って時間延長というクソしょーもないシステムのため、スナイプしても殆ど意味がないんやけど...)一気に値段が3,900円にハネ上がってビックリ。しかも他にも2人参戦してきてドロ沼のバトルロイヤル状態に突入(>_<)  結局4,800円で落札できたが、薄氷を踏むような勝利はヒヤヒヤもので、これでは先が思いやられる。
 次鋒のテディ・ウィルソンDial 10インチ盤は盤質がVG-ということでとりあえず2,000円付けて一旦トップに立ったものの、すぐに逆転されるなど一進一退の我慢比べを繰り返した結果、相手が先に投了し3,210円で落札。何とか2連勝はしたものの、この先に控える高額アイテムのことを考えると気が重い(>_<)
 しかもヤバいことにこの時点で残りの3アイテムの内、中堅B'zと大将ヘレンメリルの2つが2万円を超えてしまい、予算的にどう考えても3連勝は不可能だ。貧乏コレクターの分際で、あれもこれもは所詮無理。何かを潔く切り捨てる決断をしなければいけない。肉を切らせて骨を断つ(←この使い方であってるのかな?)しか方法はないだろう。私はここで泣く泣く中堅B'z4枚組を諦め、その分の予算を副将と大将の2枚に廻すことにした。
 そしていよいよラス前の副将 B'zの「Action」だが、B'zを聴く層がアナログ・レコードまで買ってるという事実にまずビックリ。元々定価5,093円で販売されていたものがSold Outになり、廃盤状態のところへ私を含めた10人が参戦して入札し合うという修羅場が展開されたのだが、渾身の2万円ビッドでライバルどもを蹴散らし、結局14,510円で落札。この「Action」というアルバムは大好きな曲がいっぱい入っているので、それらをアナログの生々しい音で聴けるのがめちゃくちゃ嬉しい。
 さて、いよいよ残すは大将のヘレン・メリル1枚である。このアルバムは94年にWAVEから再発されたステレオ盤(SKJ 5)しか持っていなかったので、ヘレン・メリル・マニアの私は “激レア MONO キング完全オリジナル 両面DG深溝 KC3007” というタイトルの文句に魅かれ、初めて見るレーベル写真に大コーフン! しかしこのセラーは“和ジャズ/国内独自盤企画” という謳い文句でもう1枚「ヘレン・メリル・イン・トウキョウ」を出品しており、困ったことにレーベル面の写真もそっくりだし(←ちゃーんと深溝もある...)背面も再発盤の青色ではなくオリジナル盤と同じ白色で、写真からは全く区別がつかないのだ。これって一体何なん?
 私は大いに迷ったが、オリジナル盤なら “国内独自企画盤” などという回りくどい言い方はせずにハッキリとそう書くはずだし、901さんが “このセラーは在庫も凄いけど商品知識もめっちゃ凄いで!” と仰ってたのを思い出し、きっと誤解を避けるために同時出品したんやろうなぁと推測。紛らわしいのでこの偽物盤(?)はウォッチ・リストから削除し、オリジナル盤1本で勝負だ。
 〆切まで10分を切った段階で24,000円だったので念には念を入れて4万円をブッ込んだところ、相手の闘志に火をつけてしまい(←これやからヤフオクは嫌やねん...)1対1のサドンデス・タイマン勝負に突入。この機会を逃せばこんな珍しいレコードには二度と巡り合えないかもと考えた私は全霊をかけて怒涛の5万円ビッドで勝負。相手もネチこく食い下がってきたが、49,200円で力尽きたようでようやくオークション終了となった次第。因みに同タイトルの “国内独自企画盤” の方は14,755円で終わったようだ。 (つづく)

Crazy Rhythm / 江利チエミ

2019-06-27 | Jazz Vocal
 前回に続く “ついに手に入れた垂涎盤特集” 第2弾は江利チエミの痛快無比なジャズ・ヴォーカルが聴ける10インチLP「Crazy Rhythm」だ。私はこれまで何度もこのブログに書いてきたように江利チエミの大ファンで、カヴァー・ポップスであれラテンであれ民謡であれ、その唯一無比な歌声で歌われる彼女の歌はジャンルを超越して素晴らしいと思っているのだが、そんな中でも私がこよなく愛しているのが彼女のジャズ・ヴォーカル・ナンバーであり、特にアップ・テンポの曲における圧倒的なノリは他者の追従を許さないカッコ良さである。
 私がそんな彼女の魅力に開眼したのは “KING RE-JAZZ SWING” という和モノ復刻シリーズの1枚としてリリースされた「Chiemi Sings」という CDで、その1曲目を飾っていたのがこの10インチ盤のタイトル曲「Crazy Rhythm」だった。それまで「テネシー・ワルツ」しか彼女の歌を聴いたことがなかった私は「テネシー・ワルツ」とはまるで別人のように強烈にスイングする彼女のスキャットに完全 KOされ、その時以来彼女のレコードはほとんどすべて買い集めて愛聴しているのだが、そんな中で唯一手に入れることができていなかったのがこの10インチ盤というワケだ。
 江利チエミのレコードなんてヤフオクやメルカリを探せば簡単に入手できそうなものだが、なんだかんだ言っても所詮は和ジャズのヴォーカル・アルバム。しかも60年代モノとくれば市場に出回っている数は圧倒的に少なく、ヤフオクで過去11年の間にたったの2回しかお目にかかっていない(←どっちも2万円つけて負けた...)という超レア盤なのだ。
 しかも今回私がこの盤を見つけたのはヤフオクではなく eBayである。海外オークションならさすがにライバルは少ないだろうし、自動延長がウザいヤフオクとは違ってスナイプが有効な eBayなら多分大丈夫だろうとは思ったが、万が一今回負ければ次のチャンスはいつ巡ってくるか分からない。油断は禁物なのだ。そういうワケで $200という背水スナイプを敢行したら、何とか $163で落札できた。終了直前まで $9だったことを考えると、最後の数秒での戦いが凄まじかったということがよくわかる。2位の奴がおらんかったら$25で獲れてたと思うとムカつくが、まぁコレばっかりはしゃあない。
 ということで2万円近くを出してやっと手に入れたこのレコードはアメリカのコーラスグループ、デルタ・リズム・ボーイズのメンバーだったカール・ジョーンズとのデュエット・ジャズ・アルバムで、相方のカール・ジョーンズの声質は正直って好きではないので(←なんかキモいというか、私が一番苦手なタイプの歌声だ...)彼のソロ・ヴォーカル曲A②B②はいつも飛ばして聴いているのだが、そんなマイナス・ポイントを差し引いてもこのアルバムは素晴らしい。
 私がこのレコードを愛聴している理由は彼女のスインギーなヴォーカルともう一つ、バックを務めている白木秀雄クインテットの演奏の素晴らしさにある。特にA①「Crazy Rhythm」におけるブラッシュの名手白木の変幻自在のプレイは圧巻で、いきなりブラッシュの乱れ打ちで始まるイントロなんかもう最高(≧▽≦)  持てるテクニックを惜しげもなく投入し、秘術の限りを尽くしてチエミを猛プッシュする “和製フィリー・ジョー” 白木秀雄のドラミングは鳥肌モノだ。そんな彼のブラッシュの音をこのオリジナルLPで聴くと、今まで聴いたことがないような生々しい音がスピーカーから飛び出してきて超気持ちイイ(^.^)  やっぱり60年代の録音はオリジナル盤をヴィンテージ・オーディオで聴くのが最高ですわ(≧▽≦)
Chiemi Eri with Carl Jones - Crazy Rhythm


 タイトル曲のA①以外ではB面ラストに置かれた「I Get A Kick Out Of You」が気に入っている。スインギーなA①で始まったにもかかわらずAB両面共に2曲目にカール・ジョーンズのソロ、それも激甘バラッド曲を配置するというクソみたいな構成のせいで、アルバムとして通しで聴くとストレスが溜まる構成になっているが、そんな鬱憤を晴らすかのようにBラスのアッパー・チューンで颯爽とスイングするチエミが素晴らしい。
 尚、レコードでも CDでもA①が原信夫とシャープス・アンド・フラッツでB④が白木秀雄クインテットの演奏という表記になっているが、どこをどう聴いてもスモール・コンボをバックにしたA①が白木クインテットでビッグ・バンドをバックにしたB④がシャープス・アンド・フラッツだと思うのだが...???
Chiemi Eri with Carl Jones - I Get A Kick Out Of You

ヘレン・メリルのEP3枚ついにゲット!!! ②

2018-01-03 | Jazz Vocal
 3枚セットで10万円というニンピニン価格を見て “いくら何でもEP3枚でそれはないやろ...” と一旦は諦めたものの、心のどこかに “でもやっぱり欲しいなぁ... 何とかならんかなぁ...” という未練を残していたのも事実。そんな焼け木杭に火がついたのが今から数年前のことで、これらのEPが紙ジャケ3枚組の限定CDボックスで復刻され私は迷うことなく購入したのだが、精巧に復刻された紙ジャケを眺めているうちに “やっぱりコレはオリジナルの本物で手に入れたいなぁ...” という思いが沸々と湧き上がってきた。ドアーズじゃないが、まさにハートに火がついてしまったのだ。
 それからというもの、ネットを駆使してヘレン・メリルのEPを探す日々が始まった。ジャズのEPということでプレス枚数がめちゃくちゃ少なかったせいもあって見つけるのにかなり時間がかかったが、まず最初に手に入れたのが EP-1-6105(What's New / Born To Be Blue収録)で、Discogsでフランスのセラーからわずか €20で購入。盤質はG+ でちょっとヤバイかなとも思ったが一番大事なジャケットは一応VGだし、 “Permanent background noise. Scotch tape along edges. Please ask for details and pictures.” とあったので写真を送ってもらうと全然問題なさそうだったので即買いしたというワケだ。1週間ほどで届いたレコードはテープ跡も特に気にならないし盤質もG+どころかEXレベルで大喜び\(^o^)/  これが€20やなんてホンマにエエんかいな。
Helen Merrill with Quincy Jones Sextet - What's New?


 次に手に入れたのが EP-1-6103(You'd Be So Nice To Come Home To, 'S Wonderful / Don't Explain収録)で、「ユード・ビー・ソー...」が入っているせいか、あるいは身をよじるように歌うヘレンを捉えたジャケ写の風格ゆえか、これはさすがにeBayでビッドが殺到... 不退転の決意で $200つけたところ、何とか $175で手に入れることができた。嬉しいことに届いたレコードは盤もジャケットもNM状態で、ヘレンの魅惑のジャケットを見ながらブラウニーの “スピーカーから勢いよく飛び出す” トランペットを満喫している。Who can wish for more??? (^o^)丿
'S Wonderful- (Helen Merrill)


 3枚セットの中でも最難関と思われるEP-1-6103 をゲットし、いよいよ残すところあと1枚。ターゲットはもちろん EP-1-6104(Yesterdays / Falling In Love With Love)である。ビートルズ各国盤祭りの真っ只中にもかかわらず、私は最後の1枚であるこのEPをトップ・プライオリティー扱いとし、来る日も来る日も探し続けた。その甲斐あってか2ヶ月ほど経ってついにeBayで発見、盤質はVG+ だったがスリーヴの上下共に完全スプリット状態ということもあってジャケット・コンディションはGランクだ。正面から見て問題なければ上下が裂けていようが気にならないので強気の$120で入札したところ、呆気なく$79で落札。半年ほど前に落札された時の値段が $237だったことを考えると笑いが止まらない(^.^)  待てば海路の日和あり、とはこのことだ。
Helen Merrill with Quincy Jones Septet - Falling in Love with Love


 ということで夢にまでみたヘレン・メリルのEP盤3枚セットをようやく手に入れることができてめっちゃ嬉しい。3万円ちょっとで揃えることが出来たので私としては大勝利と言っていい。一昨年あたりから大物狙いに徹して私的垂涎盤を1枚また1枚とゲットしてきたが、果たして今年はどんなレコードに出会えるのか... 日課となったネット・オークション・チェックが楽しみでしようがない今日この頃だ(^.^)

ヘレン・メリルのEP3枚ついにゲット!!! ①

2018-01-01 | Jazz Vocal
 新年あけましておめでとうございます。このブログを始めたのが2008年の10月なので今年でいよいよ10年目に突入ということになるわけですが、何事にも飽きっぽくて長続きしない私が10年も続けてこれたというのはやはり大好きな音楽について書いてきたからだからだと思います。昨年はドイツに始まりフランス、オーストラリア、ニュージーランド、そしてスウェーデンと、ビートルズの各国盤蒐集に明け暮れた1年でしたが、今年は一体どんな1年になるのか、今からとっても楽しみです。まぁ何にハマるにせよ、今年もマイペースで続けていけたらと思いますので、どうぞ宜しくお願い致しますm(__)m

 私はジャズ・ヴォーカルが大好きで、特にハスキー系の女性ヴォーカルには目がない。中でも一番の愛聴盤が「ヘレン・メリルとクリフォード・ブラウン」で、“ニューヨークのため息” と呼ばれるヘレン・メリルのハスキー・ヴォイスに突き抜けるようなクリフォード・ブラウンのトランペット、そしてオシー・ジョンソンの神業ブラッシュ・ワークが愉しめるという、ジャズ・ヴォーカル史上最強の1枚だ。
 全7曲の中で私が断トツに好きなのが「帰ってくれたら嬉しいわ」というこっ恥ずかしい誤訳の邦題(←帰って “きて” くれたら嬉しいのではなく、帰って “いく” のが嬉しいのであって、全くの正反対...)で知られる「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」だ。もちろん曲そのものも大好きなのだが、何と言っても間奏部分でスピーカーから迸り出るクリフォード・ブラウンの歌心溢れるトランペットが最高で、これを全身に浴びたいがためにわざわざレコード・プレイヤーをトーレンスからガラードに買い換えたというぐらいの惚れ込みようなのだ。
 このレコードのもう一つの魅力はそのジャケットで、ヘレン・メリルのドアップにこれまた大写しになったマイクロフォンという構図がインパクト絶大で、眺めているだけで彼女の歌が聞こえてくるようだ。又、バックの鮮やかなブルーも印象的で、ヴィジュアル的にこれほど強烈にジャズを感じさせるヴォーカル・アルバムは他にないのではないかと思う。
Helen Merrill with Clifford Brown / You'd Be So Nice To Come Home To


 この「ヘレン・メリルとクリフォード・ブラウン」、一時期はアナログLPだけでも Big Drummer ロゴの 1stプレス、Small Drummer ロゴの 2nd プレス、そして Mercuryロゴの 3rdプレスの3枚所有していたほどの溺愛盤で(←この 3rdプレスは 1stプレスや 2ndプレスに比べて音が極端に悪かったので中古屋に売りに行ったらたまたま店主が外出中で、バイトの兄チャンが “これ高いヤツですよね!!!” とか言って12,000円で買い取ってくれた... 2,500円ぐらいいけば御の字と思っていたのだが... 一体いくらで店に出したんやろwww)、今でも 1stプレス盤と 2nd プレス盤はレコード棚の特等席に鎮座ましましている。
 そんな私がこの EP盤の存在を知ったのはまだインターネットのイの字も知らずに足繁く大阪京都神戸のレコ屋巡りをしていた頃のことで、大阪日本橋にあった名店 EASTの佐藤さんに見せていただいたのが EP-1-6105 だった。歌唱シーンを別アングルから捉えたジャケット写真はその小さなサイズからは考えられないような圧倒的な存在感を放っており、その魅惑のジャケットを見て私は一目惚れしてしまった。佐藤さんによるとこれはアルバムの音源を3枚の EPに分けてリリースしたうちの1枚で、市場には滅多に出てこない激レア盤なのだという。おいくらですかと訊くと売り物ではないとのことだったので、私はその麗しのジャケットを目に焼き付けてお店を出た。
 それからというもの、行く先々のレコ屋でヘレン・メリルの EP盤を探してはみたものの、関西圏にそんな激レア盤を置いているお店などなかったし、数回に亘る東京遠征でも見つけることができなかった。コレクターズにも、ノスタルジアにも、スリーリーにも、ユニオンにも置いてない...(>_<)  それから何年か経ってインターネットを始め、パソコン画面上で EP盤3枚の存在を確認することはできたものの、3枚セットで10万円(!)という目の玉が飛び出るような高値で取り引きされているのを目の当たりにし、“あぁ、これは自分みたいな貧乏コレクターが手に入れられるような代物じゃないな...” と一旦はギヴアップした。 (つづく)

ひばりジャズを歌う ~ナットキングコールをしのんで~ / 美空ひばり

2017-09-13 | Jazz Vocal
 常日頃愛聴しているというわけではないけれど、たまに取り出して聴いてみるとやっぱり凄いなぁ... と思わせるシンガーがいる。私にとって美空ひばりはちょうどそんな存在である。いわゆるひとつの “演歌” というジャンルが大の苦手な私は、「真っ赤な太陽」をはじめとする “ひとりGS歌謡” 路線の曲を除けば彼女のレパートリーの大半は聴く気になれないが、“ジャズ・シンガーとしての美空ひばり” は大好きで、スタンダード・ナンバーを歌わせたら日本人で彼女の右に出る者はいないとさえ思うぐらいその唯一無二のスイング感に惚れ込んでいる。
 私が持っている彼女のジャズ・ヴォーカル盤はナット・キング・コールへのトリビュート盤「ひばり ジャズを歌う」とコンピレーション盤「ジャズ&スタンダード」という2枚のCDで、ジャズ・ヴォーカルを聴き始めた頃にレコ屋のご主人から勧められて興味を持ったのだが、どちらも当時は廃盤状態だったこともあり、足を棒にして探し回ってやっとのことで手に入れた時の嬉しさは今でも忘れられない。
 そのCDを聴いてみて「スターダスト」や「ファッシネイション」、「慕情」のような悠揚迫らぬバラッドが上手いのは当然予想できたことなのでそれほど驚かなかったが、私が衝撃を受けたのは軽快にスイングする「ラヴ」や「ウォーキング・マイ・ベイビー・バック・ホーム」、「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」といったミディアム・テンポのナンバーで、日本人離れしたナチュラルなスイング感に耳が釘付けになったし、アップ・テンポの「ラヴァ―・カム・バック・トゥ・ミー」で聴かせるノリの良さにも圧倒され、美空ひばりという天才シンガーの凄みを再認識させられた。
IT'S ONLY A PAPER MOON(美空ひばり)

恋人よ我に帰れ(美空ひばり)


 とまぁこのように音楽的には申し分なかったのだが、正直言ってCDのマスタリングはイマイチ(>_<)  90年代に発売されたCDなのでヴォーカルが平板に聞こえるのは仕方ないにしても、ひばりのヴォーカルに対してバックのシャープス・アンド・フラッツの演奏が引っ込んで聞こえるのはいくら何でもいただけない。まるで歌と演奏が溶け合わずに乖離したまま平行線を延々と走っていくような感じで、バランスの不自然さが気になって音楽に100%のめり込むことが出来ないのだ。
 それから何年か経ってこの「ひばり ジャズを歌う」はコロムビアからアナログ重量盤LPという形で再発されたが、同じ重量盤再発シリーズで手に入れた弘田三枝子の「ミコ・イン・ニューヨーク」と「ミコ・イン・コンサート」がCDとあまり変わらない中途半端な音質だったこともあって購入は見送り。ミコたんの2枚はその後オリジナル盤LPを手に入れることが出来たのだが、その音質がめちゃくちゃ良かったこともあって、ひばりのジャズ盤もいつかはオリジナル盤を手に入れてやろうと心に決めた。
 しかし60年代邦楽のオリジナルLPを見つけるのは eBayやDiscogsを駆使してビートルズの各国盤を探すよりも遥かに難しい。そもそも世に出回っている数自体が圧倒的に少ないし、もし仮にオークションに出てきたとしても鬼のようなプレミアが付くことは必至。少なくとも今までにレコ屋の店頭で現物にお目にかかったことは一度もないし、ヤフオクでも年に2~3枚出るか出ないかという、まさに文字通りの “幻の名盤” だった。
 そんな “幻盤” が網に引っ掛かってきたのが3ヶ月ほど前のことで、登録しておいたヤフオク・アラートから届いたメールを見て “ついに来たか!!!” と大コーフンしたのだが、値段を見てビックリ(゜o゜)  49,800円て...??? アホらしゅうなった私はウォッチすらせずにスルーしたのだが、それからしばらくして又々アラートが... 同じブツが今度は1万円値下げして39,800円で再出品されたのだ。更にその数週間後には29,800円と、当初の強気が嘘のような大幅値下げだが、それでもまだまだ高すぎる。顔でも洗って出直してこい!と思って見ていたら、ついにスタート価格を 19,800円まで下げてきよった。2万円台前半までやったら思い切って “買い” やな... と思っていた私は満を持して参戦し、しつこいライバルを振り切って22,800円で落札に成功(^o^)丿  今年に限って言えば「Les Beatles 1965」に次ぐ高額な出費だが、かれこれ20年近く欲しくて欲しくてたまらなかった垂涎盤をやっとのことで手に入れることが出来た喜びは筆舌に尽くしがたい。
 届いた盤をターンテーブルに乗せて早速針を落とす。う~ん、コレは素晴らしい。ハッキリ言ってCDとは比べ物にならないぐらいのスーパーウルトラ高音質だ。60年代に作れたこの美音をテクノロジーが格段に進化した21世紀の再発盤でなぜ再現できないのか理解に苦しむ。何よりもまず美空ひばりの “声” が違う。人間の声をいかにリアルに再現するか… の成否を決する “中音域” の充実ぶりが月とスッポンで、CDに入っている彼女の声が二次元的で薄っぺらいのに対し、オリジナルLPの方は声に芯があって生々しく、目を閉じれば眼前にすっくと屹立する三次元的なヴォーカルの存在感に酔いしれることが出来るのだ。バックの演奏とのバランスもまったく問題なしで、CDのような違和感は感じない。結局レコードが届いた日の晩にAB面通して3回聴いてもまだ聴き足りないぐらい気に入ったのだが、これは大枚を叩いた甲斐があったというものだ。
 分厚くて奥行きを感じさせる美空ひばりの声の魅力をあますところなく音盤に刻み込んだこのレコード、今年も残すところあと4ヶ月を切ったが、“自分へのご褒美盤2017” はどうやらコレでキマリのようだ。

チエミのスタンダード・アルバム / 江利チエミ

2017-08-26 | Jazz Vocal
 多くのレコード・コレクターがやっているように、私もWANT LIST なるものを作っている。ビートルズ関係の盤が多いが、もちろん昭和歌謡やジャズのアーティストもリストアップしており、過去にレコ屋やネットで見かけたのに買いそびれてしまって今ではどこを探しても売ってない盤だとか、オークションで何度も獲り損ねて未だに入手できていない盤だとかがネットオークションに出品されたら絶対に逃さないように寸暇を惜しんでチェックしている。その甲斐あってか前々から欲しかった昭和歌謡歌手のレコードを最近何枚か手に入れることが出来たので、今日はそんな中から江利チエミの「チエミのスタンダード・アルバム」(LKF-1025)を取り上げよう。
 このレコードは1959年にリリースされた10インチ盤で、A面は東京キューバン・ボーイズをバックにラテン・ナンバーを4曲、B面は原信夫とシャープス&フラッツをバックにジャズのスタンダード・ナンバーを4曲歌っている。楽譜をあしらったオレンジ色の背景と彼女の白いドレスのコントラストが映えるジャケット・デザインも素晴らしい。
 A①の「ベサメ・ムーチョ」はトリオ・ロス・パンチョスやアート・ペッパーのようなスロー/ミディアム・テンポのアレンジが主流だが、私が一番好きなカヴァーはビートルズのスター・クラブ・ライヴに入っている疾走系ロックンロール・ヴァージョン(←映画「レット・イット・ビー」でポールが朗々と歌い上げるヴァージョンは正直言って苦手です...)。ここで聴けるチエミ・ヴァージョンは前半部分こそ切々と歌っているが2分を過ぎたところで一気にギアを上げてペースアップ、速射砲のようなスペイン語で一気呵成に突っ走るコモエスタな展開がク~ッ、タマラン! 更に2分35秒の “which means!” で英語に切り替え、“ベッサメ ベッサメ ベッサメ ムゥ~チョ~♪” とたたみかける “ベッサメ三段攻撃” の凄まじい吸引力... (≧▽≦) ここだけでメシ3杯は喰えそうだ。とにかく初期ビートルズ・ヴァージョンの次いで私が好きなベッサメ・カヴァーが他ならぬこのチエミ・ヴァージョンなのだ。
江利チエミ Chiemi Eri - ベサメ・ムーチョ Besame Mucho


 このアルバムでは途中でテンポを変えて曲にメリハリをつけるという彼女お得意の手法が多用されており、A④の「タブー」でも2分を過ぎたところでスローな前半部分から一転して高速シャバダバ・スキャットに突入、さすがは “和製エラ・フィッツジェラルド” の異名を取るだけあって縦横無尽にメロディーを操る歌唱は凄いの一言! 彼女の塩辛い声を活かした見事な歌いっぷりは何度聴いてもスリリングだ。又、B②「ザ・マン・アイ・ラヴ」でも2分08秒から漂白されたハンプトン・ホーズみたいな(笑)中村八大のスインギーなピアノ・ソロ(←バックのドラムの叩き方がもろにスタン・リーヴィーしててクソワロタ...)が炸裂し一気にヒートアップ、ノリノリの演奏をバックに変幻自在のヴォーカルで聴く者を一気にチエミ・ワールドへと引き込む展開がめちゃくちゃカッコ良い(^.^)  まさに彼女のジャズ・シンガーとしての魅力が堪能できる1曲だ。
 B③の「ラヴァー・カム・バック・トゥ・ミー」は1955年にSPでリリースしたものとは違うヴァージョンで、曲の後半部で唐突に “三日月ほのかにかすむ夜~♪” と日本語に切り替えるSPヴァージョンに対して全編英語で歌い切ったこちらのヴァージョンの方が断然カッコいい(^o^)丿 日本人が歌う「ラバカン」としては美空ひばりがナット・キング・コール・トリビュートLPでカヴァーしたヴァージョンと双璧を成す名唱だと思う。
 B④の「スワニー」も彼女は複数回レコーディングしており、1回目がこのアルバムの半年前に出たSPヴァージョン、2回目がこのアルバムのヴァージョンで、3回目が1963年にステレオ・レコーディングされたヴァージョンなのだが、ステレオ版は “I've been away from you a long time~♪” の前半部分をバッサリとカットしていきなり“Swanee, how I love you, how I love you~♪” で始まるという奇抜なアレンジに違和感を覚えるし、ステレオ感を出したかったのかバックの演奏に過剰なエコーがかかっており彼女の歌声だけが浮いてしまっているので私的にはNG(>_<)  SPヴァージョンとアルバム・ヴァージョンはほぼ同時期の録音ということもあってかアレンジがほとんど同じだなのだが、より伸びやかで表現力豊かな歌声が楽しめるという点でアルバム・ヴァージョンに軍配を上げたい。
 ジャズ・シンガーとして取り上げたスタンダード・ナンバーの数々でスキャットを交えながらスイングする “高速スキャットの女王” 江利チエミの魅力が存分に味わえるこのアルバム、復刻CDで持ってはいたが、やはりオリジナル盤の豊潤かつ濃厚な音で聴ける喜びは格別だ。やっぱり江利チエミはエエなぁ... (^o^)丿
Swanne江利チエミ

Jazz Pictures / Rita Reys

2017-03-19 | Jazz Vocal
 自分で言うのも何だが私はめちゃくちゃセコい貧乏コレクターなので、たとえどんなに欲しいレコードであっても自分が設定した予算を少しでも超えたらその盤は見なかったことにしてスパッと諦めるようにしている。逆にそうやって泣く泣く諦めた盤をどこか他所でめちゃくちゃ安く買えた時の嬉しさは筆舌に尽くしがたい。つい最近もそういう経験をしたので今日はそのレコードについて書こうと思う。そのレコードというのはリタ・ライスの「ジャズ・ピクチャーズ」オランダ・フィリップス・オリジナル盤(P 08062 L)である。
 リタ・ライスは1950年代後半から60年代にかけて活躍したオランダのジャズ・シンガーで、英語の発音がちょっとオランダ訛りなのが気になるが、その歌声自体は癖が無く、アルバムの選曲も有名なスタンダード中心なので非常に聴きやすい。私的には逆にその “癖の無さ” がちょっと物足りない感じで、もうちょっと強い個性があった方がエエのになぁ... というのが正直なところだが、スタンダード中心主義なのは大歓迎だ。
 そんな彼女の代表作と言えるこの「ジャズ・ピクチャーズ」を初めて聴いたのはオリジナル盤を集め始めて間もない頃で、難波にあったジャズ・レコード専門店「しゃきぺしゅ」の壁面を誇らしげに飾っていたこのレコードを店主の方が聞かせて下さったのだ。彼女のヴォーカルはハッキリ言ってあまり印象に残らなかったが、バックの演奏、特にドラムから白煙を上げそうな(?)勢いで強烈にスイングするケニー・クラークのブラッシュに完全KOされ、そのレコードがめちゃくちゃ欲しくなった。
 しかし、値札を見ると何と32,000円である。まぁレコ屋の壁を飾るぐらいやから安くはないとは思っていたが、ブルーノートやプレスティッジならまだしも、数千円がほとんどのヴォーカル物でウン万円となるとさすがに腰が引けてしまう。私は “やっぱりヨーロッパ盤は高すぎて手ぇ出ぇへんわ...(>_<)” と思いながら後ろ髪をひかれる思いでお店を出た。
 その後、この盤のことは高嶺の花とすっかり諦めていたのだが、あれから15年以上たった先月のこと、たまたまディスクユニオンの検索でこの盤を見つけたので値段を確認してみると、両面スレ多めでチリノイズありにもかかわらず21,600円だという。 “やっぱりハナシにならんな...” と思いながら興味本位に他のサイトでも検索してみると、何とDiscogsに €25で出ているではないか! しかも商品説明には “Plays nice VG+” とある。日本で何万円もする盤が送料込みでも3,000円台で買えるなんてホンマかいな??? 私は変な再発盤をつかまされるのだけは絶対に嫌だったので、念のためセラーにメールしてレーベルの写真を送ってもらったところ青銀レーベルに内ミゾありで、どこをどう見ても本物だ。私は小躍りしながら “注文する” をクリックした。
 届いた盤は nice VG+ どころかピッカピカの NM盤。ほとんどノイズなしでケニー・クラークのブラッシュが思う存分堪能できるのがめっちゃ嬉しい(^o^)丿  手持ちのCDと聴き比べてみても音の厚みが段違いで、改めてオリジナル盤の凄さを再認識させられた。特に強烈だったのは「チェロキー」と「アイ・ゲット・ア・キック・アウト・オブ・ユー」における超高速ブラッシュ・ワークで、そのめくるめくようなスピード感は圧巻の一言に尽きる。又、「アイム・ゴナ・シット・ライト・ダウン・アンド・ライト・マイセルフ・ア・レター」での盤石と言えるリズム・キープも流石と言う他ない。この人やっぱり名手やわ(≧▽≦)
 ケニー・クラークの名演の陰に隠れがちだが、歌伴に徹するピム・ヤコブス・トリオのプレイも素晴らしい。特に「枯葉」や「プア・バタフライ」におけるルウト・ヤコブスの闊達なベースはこのアルバムの聴きどころだと思う。ツボを心得たピム・ヤコブスのピアノも軽快そのもので、ややベタつく感のあるリタのヴォーカルも強烈にスイングするバックの演奏のおかげで気持ち良く聴けるのだ。
 ジャズはスイング!を明快に物語るこのアルバムを15年越しで、しかも安く手に入れることが出来てめっちゃ嬉しい。ジャズに限らずロックや昭和歌謡でもまだ手に入れていない垂涎盤が何枚かあるので、これからは一枚一枚、一撃必殺の気合いで獲りにいくとしよう。

夜のアルバム / 八代亜紀

2012-12-13 | Jazz Vocal
 今日は久々に八代亜紀だ。今年の夏は音壁→さらシベ→小林旭→坂本冬ミン→八代亜紀という流れで一時期演歌ブログ化していたのだが、そんな彼女がこの10月にリリースしたばかりの本格的なジャズ・アルバムがこの「夜のアルバム」である。「八代亜紀と素敵な紳士の音楽会 ~LIVE IN QUEST~」のところでも書いたように、彼女はそのルーツにブルースやジャズが混じっているせいもあって有象無象の正統派演歌歌手とは激しく一線を画す存在で、その唯一無比なハスキー・ヴォイスはまさにジャズ・ヴォーカルにうってつけなので、こういう企画は私としては大歓迎(^o^)丿 CD発売前から YouTube にアップされた「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」を聴いて大いに盛り上がっていたのだが、一つだけ引っ掛かることがあった。プロデューサーがよりにもよって私の大キライな小西康陽なのだ。八代亜紀の大ファンである私にとってコレは由々しき問題である。
 森丘祥子タンの「夢逢え」の時にも彼の事をボロクソに書いたが、とにかく私は彼の作るピント外れで押しつけがましいサウンドが生理的に無理。音楽ファンなら誰でも “こいつの作る音はどうしても好きになれへんな...” というプロデューサーが一人や二人はいると思うが、私の場合は彼がまさにその天敵なのであり、よりにもよって亜紀姐さんのアルバムに関わっているとは...(>_<)  ということで私は期待半分不安半分の複雑な気持ちでこのCDを購入した。
 まず目を引くのはそのジャケットだ。中央に大きく写った真空管マイクといい、右上に配された EmArcy のドラマー・ロゴといい、ジャズ・ヴァーカル史上屈指の大名盤「ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン」のパロディーであることは一目瞭然である。モノクロのジャケットというのも強烈にジャズを感じさせるし、女囚さそりみたいな表情(?)で佇む姐さんも雰囲気抜群だ。ただ、ここまでやるならヘレン・メリルみたいに苦悶の表情を浮かべて大口を開けて歌っている姿をフィーチャーして欲しかったところ。めっちゃ絵になると思うねんけどなぁ...
 アルバムの1曲目を飾るのは①「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」だ。ジャズ・スタンダードの中で一番の得意曲をトップに持ってきたわけだが、彼女がこれまで歌い慣れてきたジュリー・ロンドン・ヴァージョンの高速アレンジとは趣きをガラリと変え、テンポをグッと落としてダブルベースとフィンガースナップをバックに渋~い歌声を聴かせてくれる。コレ、めちゃくちゃカッコエエわ(^o^)丿 ブルージーな味わいを醸し出すハスキー・ヴォイスが曲にバッチリ合っているし、演歌歌手とは思えない抜群のリズム感にも唸ってしまう。ただ、0分45秒から彼女のヴォーカルに覆いかぶさるようにまとわりついてくるアルト、いくら何でも歌伴でこの入り方はないわ(>_<) ハッキリ言って邪魔である。間奏のアルト・ソロまで待てんかったんか...
八代亜紀 - フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン (short clip)


 この後は②「クライ・ミー・ア・リヴァー」、③「ジャニー・ギター」、④「五木の子守唄~いそしぎ」、⑤「サマータイム」、⑥「枯葉」と暗~い雰囲気のスロー曲が続くのだが、いくら「夜のアルバム」というタイトルでも、こんなネクラな曲を立て続けに5曲も聴かされたらウンザリしてしまう。以前音聴き会G3で「ラウンド・ミッドナイト」の名演を探せ!と題して各自持ち寄った音源を9曲連続で聴いてゲンナリした覚えがあるのだが、まさにあの時と同じような感覚だ。とにかく一体何なん、この単調な流れは??? いっその事、お香でもたいてチーンと鐘でも鳴らしたろかと思ってしまうようなアホバカ選曲配列だ。
 おそらくジュリー・ロンドンの代表曲②、ペギー・リーの代表曲③、更にヘレン・メリルの「シングス・フォーク」に入ってた「五木の子守唄」と松尾和子の「夜のためいき」(←アルバム・コンセプトの元ネタか???)の1曲目に入ってた「いししぎ」のメロディーが何となく似てるから強引にくっつけてメドレー④に仕立て上げ(←取って付けた様なイントロとアウトロの安っぽいストリングス・アレンジが最悪...)、後は超有名スタンダードの⑤⑥と並べてA面一丁上がり、という感じなのかもしれないが、もしそうだとしたら小西はリスナーをナメてるとしか思えない。亜紀姐さんの出来が良いだけにプロデューサーの人選ミスが本当に悔やまれる。
 しかし、ジュリー・ロンドンの「ラテン・イン・ア・サテン・ムード」に入っていた隠れ名曲⑦「スウェイ」でこのアルバムは一気に生気を取り戻す。八代亜紀とラテンっていうのも意外な組み合わせだが、これがもう相性抜群でめっちゃエエ感じなのだ。まぁ彼女はマーティ・フリードマンとヘビメタ共演してしまうほどの懐の深さを持った偉大なシンガーなのだから驚くにはあたらないのかもしれないが、それにしてもコンガをフィーチャーしたバックの演奏にのってしなやかにスイングする姐さんは最高にクールでカッコイイ(^o^)丿


 ⑦と並ぶ最愛聴トラックがりりィのカヴァー⑧「私は泣いています」だ。アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズやホレス・シルバー・クインテットのような往年のファンキー・ジャズを想わせるイントロ、ドスドスと大股で切り込んでくる剛音ベース、絶妙なタイミングでヴォーカルに絡みつくオブリガートと、まさにいいことずくめの1曲なのだ。彼女のヴォーカルも強烈にスイングしており、これが八代亜紀のジャズだ!と啖呵の一つでも切りたくなるようなキラー・チューンになっている。ジャズ・ファンは陰々滅々たるスロー曲を飛ばして①→⑦→⑧の順で聴くと幸せな気分になれること請け合いだ。


 ⑨「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」は小西お得意のサバービアなアレンジが鼻につくが、この昭和歌謡屈指の名曲を水を得た魚のようにスイングさせる姐さんのヴォーカルが痛快だ。青江三奈のアルバム「グッド・ナイト」収録ヴァージョンとのハスキー比べも楽しい。⑩「再会」はさっき書いたようにアルバム・コンセプトを拝借した松尾和子へのオマージュだろう。ところで今気付いたのだが、B面(?)に入って昭和歌謡の名曲が続くのは由紀さおり&ピンク・マルティーニの「1969」を意識してのことだろうか? 笠井紀美子のボッサ歌謡⑪「ただそれだけのこと」は完全に換骨奪胎され、グルーヴ感溢れる “八代亜紀のジャズ” になっているところがいい。聴く者の心にビンビン響くその歌声はまさに “ザ・ワン・アンド・オンリー” だ。そして“歌謡サイド(?)” のシメは何故か⑫「虹の彼方に」という、最後まで迷走しまくりの選曲だが、そんなハンデをものともせずに貫禄のヴォーカルを聴かせる姐さんはもうさすがという他ない。
 今回のアルバムは私にとって愛憎相半ばする1枚になってしまったが、次は是非ともジャズ・ヴォーカルの何たるかを熟知したマトモなプロデューサー / アレンジャーを起用して “本物の” ジャズ・ヴォーカル・アルバムを作って欲しい。ニューヨーク録音で、本場のクリスプなピアノトリオをバックに縦横無尽にスイングする八代亜紀を聴いてみたいものだ。
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八代亜紀と素敵な紳士の音楽会 ~LIVE IN QUEST~

2012-08-30 | Jazz Vocal
 坂本冬ミン怒涛の3連発に続くのは、みながわ最高顧問との演歌談義で盛り上がった八代亜紀だ。とは言ってももちろん演歌のレコードではない。冬ミンのは “演歌の歌手がJ-POP の名曲を歌う” という企画だったが、アッキーナ(笑)の方は持ち前のハスキー・ヴォイスを活かしてジャズのスタンダードを歌ったライヴ盤。どことなく同じハスキー系ヴォーカルの青江三奈がジャズを歌った「ザ・シャドウ・オブ・ラヴ」や「パッション・ミナ・イン・NY」に相通じるものを感じさせるアルバムだ。
 八代亜紀というと演歌一筋というイメージが強く、ジャズというと意外に聞こえるかもしれないが、彼女のルーツを知れば意外どころかむしろ必然というか、やっと出たか... という感じすらする。実は彼女は幼い頃自分のハスキー・ヴォイスに若干のコンプレックスを持っていたらしいのだが、ある時父親が買ってきたジュリー・ロンドンのレコードを聴いてその歌声に憧れ、自分も歌手になろうと決意して熊本から上京、レコード・デビューする前はクラブ・シンガーとしてジャズやポップスを歌っていたというのだ。
 又、当時流行っていたボサノヴァも大好きだったらしく、 “10代の頃は歩きながらボッサのリズムを練習していた” と語っているのを聞いたことがある。彼女の歌唱法は演歌独特の “クサさ” が希薄で凡百の演歌歌手とは激しく一線を画すソフィスティケーションを感じさせるのだが、演歌が苦手な私でも彼女の歌は抵抗なく聞けるというのはそのあたりに理由があるのかもしれない。
 そんな彼女にとっての “人生を変えた曲” がジュリー・ロンドンが歌う「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」で、最近はテレビでもステージでも事あるごとにこの曲を歌っているようだ。中でも一番印象に残っているのが「ミューズの晩餐」というテレビ番組に出演した時のもので、ヴァイオリンとのコラボでリズミカルに歌っている姿を見てビックリ(゜o゜)  ジュリー・ロンドンからの影響を随所に感じさせながらもそれを見事に消化し、彼女独自のスタイルで歌いこなしているところが凄い。
八代亜紀 - Fly Me To The Moon


 そんな彼女がデビュー27年目にして初めてリリースしたジャズ・アルバムがこの「八代亜紀と素敵な紳士の音楽会 ~LIVE IN QUEST~」。1997年に原宿のクエストホールで行われたワンナイト・コンサートのライブ盤で、世良譲(p)、水橋孝(b)、ジョージ川口(ds)に北村英治(cl)という豪華なメンツをバックに、クラブ・シンガー出身の彼女がジャズのスタンダード・ナンバーを生き生きと歌っている。
 そもそも演歌とは何の接点のない私がこの盤の存在を知ったのは、アマゾンの曲目検索で大好きなスタンダード・ナンバーの入っている盤を色々調べていたのがきっかけで、⑥「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」と⑫「バイ・ミア・ビスト・ドゥ・シェーン(素敵なあなた)」という超愛聴曲が2曲もこの盤に入っているのを発見して大コーフン(^o^)丿  八代亜紀のハスキーな声ならきっとカッコ良いジャズ・ヴォーカルになってるだろうと確信して即買いしたのだが、期待を裏切らない素晴らしい内容だ。
 まずは⑥だが、 “ニューヨークの青江三奈” の異名を取るヘレン・メリルの名唱で知られるこの曲をハスキーな歌声が売りの八代亜紀が歌うのだからこれ以上の選曲はないだろう。バックの演奏も秀逸で、百戦錬磨のベテランらしいツボを心得たプレイの連発には唸ってしまう。欲を言えば水橋孝のベース・ソロのパートをもっと迫力ある野太い音で録って欲しかった気もするが、コレばっかりはしゃあないか...(>_<)
You'd Be So Nice To Come Home To


 ⑫は薬師丸ひろ子の映画「メインテーマ」の中で桃井かおりが歌っているのを聴いてその哀愁のジューイッシュ・メロディの虜になり、それ以来アンドリュース・シスターズやマーサ・ティルトンを始めとしてこの曲の名演はすべて手に入れると心に決めているのだが、この八代亜紀ヴァージョンも聴き応え十分で、元クラブ・シンガーという経歴に偽りナシのジャジーな歌唱が楽しめる。知らない人が聴いたら絶対に演歌歌手だとは分からないのではないだろうか?
Bei Mir Bist Du Schon


 ⑥⑫と並んで気に入っているのが⑩「荒城の月」だ。ジャズ・ファンにはセロニアス・モンクの名演でお馴染みの曲だが、ここでも瀧廉太郎の名曲が見事にジャズ化されており、1分15秒を過ぎたあたりからのスインギーな展開がめちゃくちゃカッコイイ(≧▽≦) 歌心溢れる北村英治のソロ、変幻自在にヴォーカルにからみつく世良譲のオブリガート、そして貫録十分のアッキーナのヴォーカルと、絵に描いたような名曲名演に仕上がっている。
 又、②「雨の慕情」や⑪「舟歌」といった彼女の持ち歌もジャジーなアレンジで一味違う仕上がりになっており、ジャズ・ヴォーカルを愛する人なら気に入ること間違いなし。久々にジャズを歌うということでテンションが上がっているのか、ちょっとはしゃぎ過ぎな面もあるが、スタンダード・ナンバーを歌うのが楽しくって仕方がないという様子がヒシヒシと伝わってきて好感が持てる。 “演歌歌手のジャズ・ヴォーカル・アルバムなんて...” と聞かず嫌いを決め込むと損をする、八代亜紀の魅力爆発のカッコイイ1枚だ。
荒城の月
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Fly Me To The Moon / Doris Day

2012-05-04 | Jazz Vocal
 断続的に続けてきた “ドリス・デイ祭り” もいよいよ最終回。今日は1961年以降の作品ということで、まずはアルバム・ディスコグラフィー・パート3だ。

【Doris Day Discography Pt.3: 1961- 】
61 Bright And Shiny
   I Have Dreamed
62 Duet
   You'll Never Walk Alone
   Billy Rose's Jumbo [Soundtrack]
63 Annie Get Your Gun [Soundtrack]
   Love Him!
64 The Doris Day Christmas Album
   With A Smile And A Song
65 Latin For Lovers
   Sentimental Journey

1994 The Love Album (1967年にレコーディングされ、その後ずっとお蔵入りしていたもの)
2011 My Heart (1980年代半ばにレコーディングされた未発表音源集)

 1960年代の彼女はまさに歌手としての円熟期と言ってよく、ポピュラーなヒット曲よりもジャズやラテンを歌ったものに傑作が多いように思う。そんな中でも特に気に入っている5曲をピックアップしてみた。

①Fly Me To The Moon
 数多いドリス・デイのアルバムの中で私が最高傑作と信じて疑わないのが1965年にリリースされた「ラテン・フォー・ラヴァーズ」。ラテン曲集という企画自体は当時の世界的なボサノバ・ブームに便乗したような安直なものだが、ボッサの美しいメロディーと彼女のナチュラルな歌声がベストのマッチングを見せ、ドリス・デイの、いや、星の数ほど存在する女性ヴォーカル・アルバムの中でも屈指の大名盤に仕上がっている。
 A面1曲目の「コルコヴァード」からもう彼女の他のアルバムとは違う一種独特なムードに支配されていて驚かされるが、それに続くこの「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」を初めて聴いた時の衝撃は今でも忘れられない。必殺のテンポ設定でこれ以上ないというぐらい物憂い雰囲気をバッチリと表現したドリス・デイのヴォーカル、絶妙なタイミングで絡んでくるピアノのオブリガート、哀愁舞い散るフルート・ソロ、バックでしっかりとボッサ・リズムを刻むギター... そのすべてが音楽的・必然的・有機的に結びつき、一体となって響いてくるこの快感は筆舌に尽くし難い(^o^)丿
 ノスタルジックな「センチメンタル・ジャーニー」やスインギーな「ブロードウェイの子守唄」とは又違ったドリス・デイのヴォーカルの奥深さを私に教えてくれたのが、他でもないこの曲なのだ。
Doris Day - Fly me to the moon


②How Insensitive
 アルバム「ラテン・フォー・ラヴァーズ」は全12曲、どれを取っても捨て曲ナシの愛聴盤なのだが、そんな中で上記の「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」と並ぶキラー・チューンがこの「ハウ・インセンシティヴ」だ。まるで身をよじるかのような情緒纏綿たる歌い方ながら決してベトつかないというか、官能的でありながらあくまでもナチュラルな彼女の歌声は聴いていてとても気持ち良く、女性ヴォーカル・ファンにとってはまさに悦楽の世界である。緑の草原をバックに、彼女のブロンドの髪とナチュラルな風合いの白シャツのコントラストが目に眩しいジャケットもエエ感じだ。
 たまたま先々月のG3でこの曲を取り上げた時、plincoさんが “昔、よみうりテレビの深夜番組の映画紹介のバックでこの曲がかかってた...” とおっしゃったので早速ネットで調べてみたら、「CINAMA だいすき!」という番組のBGMとして使われていたらしく、しかも多くの方がブログで取り上げておられたのにはビックリ(゜o゜) 今とは違ってテレビ番組のクオリティーも格段に高かったということだろう。YouTube にもアップされてたので貼っときます↓
CINEMAだいすき!OP(第7集 第1夜『アトミックカフェ』) 【←冒頭の高砂殿のCMに時代を感じますね】


③Close Your Eyes
 以前「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」特集の時にも取り上げたアルバム「デュエット」は、アンドレ・プレビン・トリオの伴奏でドリス・デイのヴォーカルが楽しめるジャジーな1枚。ピアノとのデュオでスローな曲を淡々と歌うトラックはハッキリ言って苦手だが、アルバム冒頭を飾るこの「クローズ・ユア・アイズ」はピアノ・トリオがスイング全開で彼女をサポート! いきなりレッド・ミッチェルのベースがドスドスと切り込んできて、そこにドリス・デイのヴォーカルが寄り添い、やがてブラッシュがスルスルと滑り込んでくるのを待ちかねたかのようにアンドレ・プレビンのピアノが演奏に絡んでいくイントロ部分がめちゃくちゃカッコイイ(^o^)丿 絶妙なタイミングで楽器が一つずつ加わっていくこのスリリングな瞬間こそがジャズを聴く醍醐味だ。ただ、CDは左右泣き別れの不自然なステレオ・ミックスなので、このアルバムはモノラルのオリジナル盤で聴くことにしている。
Doris Day Photos, "Close Your Eyes"


④You're Good For Me
 この「ユアー・グッド・フォー・ミー」は上記のアルバム「デュエット」でのプレビン・トリオとの一連のセッションでレコーディングされたアウトテイクで、再発CDのボーナス・トラックの1曲として初めて陽の目を見たのだが、コレがもう何でアルバムに収録されなかったのか不思議なぐらいの逸品なのだ。多分スロー主体の他の曲とのバランスを考えてのことだろうが、奮然とスイングするプレビン・トリオをバックにドリス・デイのヴォーカルが冴えわたるスリリングな歌と演奏で、この路線でアルバム1枚まるごとやってくれていたらとんでもなく凄いことになっていただろう。とにかく彼女の事をノスタルジックなイージー・リスニング歌手と勘違いしている人はコレを聴いたら驚倒すること間違いなし(^.^)  「デュエット」のCDを買うなら12曲入りの正規盤よりもこの曲を含めた5曲のボートラを含むCollectablesレーベルの再発盤(2001年)の方が断然お買い得だ。
Doris Day sings You're Good For Me


⑤My Romance
 最近 YouTube でドリス・デイ関係の映像を色々漁っていて偶然見つけたのがコレ。彼女が私の大好きな「マイ・ロマンス」を歌っていたとは知らなんだ... shiotch7一世一代の不覚である(←そんな大袈裟な...)。調べてみると1962年に公開された「ビリー・ローズのジャンボ」というミュージカル映画にドリス・デイが出演していてそのサントラ盤の中に入っていたものらしいが、これがもう蕩けるような歌声で心に沁みる名唱なのだ。たかがサントラ盤と侮って無視していた自分の不明を恥じ、慌ててアマゾンで購入した次第。ジャンルを問わずもう新譜を聴く気はサラサラないが、古い音源の中にまだまだこういう新発見があるから音楽ファンはやめられませんな。
Doris Day and Stepehn Boyd - My Romance-Billy Rose's Jumbo Movie-1962

Everybody Loves A Lover / Doris Day

2012-04-30 | Jazz Vocal
 悪夢のような4月もやっと今日で終わり。プライベートで色々あってゆったりと音楽に浸れるような状況ではなかったのでこのブログも更新頻度がガクッと落ちてしまったが、“ドリス・デイ祭り” はしぶとく継続中... 今日は50年代後半の作品群だ。まずは例によって、1956年から1960年までの12インチLPのディスコグラフィーから;

☆Doris Day Discography Pt.2: 1956-1960
 56 Day In Hollywood
    Day By Day
 57 Day By Night
    The Pajama Games [Soundtrack]
 58 Hooray For Hollywood
    Doris Day's Greatest Hits
 59 Cuttin' Capers
 60 What Every Girl Should Know
    Show Time
    Listen To Day

 この時期の彼女はまさに “アメリカの国民的歌手&女優” として大活躍しており数々の名唱を残しているが、そんな中からお気に入りの5曲をピックアップしてみた。

①Everybody Loves A Lover
 1958年にシングルとしてリリースされて全米で大ヒットしたこの曲はオリジナル・アルバムには未収録。同年にリリースされた「グレイテスト・ヒッツ」の1曲目を飾っていたことでもわかるように、歯切れの良いヴォーカルで弾むようにスイングするドリス・デイの魅力をギュッと濃縮還元したようなナンバーだ。特に1分45秒から始まる “一人追っかけ二重唱” のパートはタマランなぁ... (≧▽≦)
Doris Day-Everybody Loves A Lover + Lyrics


②The Gypsy In My Soul
 ポール・ウエストンによる編曲&指揮で1956年にリリースされたアルバム「デイ・バイ・デイ」はスロー・テンポのアレンジが主流の落ち着いたスタンダード集だが、そんな中でミディアムで軽やかにスイングする彼女の歌声が楽しめるのがこの「ジプシー・イン・マイ・ソウル」。間奏のブラス・アンサンブルとそれに続くテッド・ナッシュのソロもゴキゲンだ。
Doris Day ~~~~~ The Gypsy In My Soul


③Wrap Your Troubles In Dreams
 1957年にリリースされたアルバム「デイ・バイ・ナイト」はそのタイトルからも分かるように上記の「デイ・バイ・デイ」の姉妹編的な位置付けで、編曲&指揮も同じポール・ウエストン。こちらはタイトルの “ナイト” に引っ掛けたのか、 “夜” “夢” “月” “星” をテーマにしたバラッドを中心に選曲されている。この「苦しみを夢に隠して」(←邦題です)は私の大好きな曲で、ミディアム・スローで歌詞の一語一語にニュアンスを込めて歌い込むドリス・デイのヴォーカルが説得力抜群だ。
Doris Day sings Wrap Your Troubles In Dreams


④The Way You Look Tonight
 歌手としても女優としても脂が乗り切っていた1958年にリリースされた2枚組アルバム「フーレイ・フォー・ハリウッド」の中で私の一押しがこの「ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト」だ。編曲・指揮は以前「ザ・グローリー・オブ・ラヴ」関連で取り上げたフランク・デ・ヴォール(←映画「招かれざる客」の音楽を担当した人)で、良くも悪くもハリウッドらしい装飾過多のアレンジだが、ドリス・デイの歌声はそれを補って余りある素晴らしさだ。
Doris Day - The way you look tonight


⑤When You're Smiling
 1960年にリリースされたアルバム「ホワット・エヴリ・ガール・シュッド・ノウ」は知っている曲も少なくウィズ・ストリングス系のバラッド曲中心ということもあってターンテーブルに乗る機会はほとんど無いが、その中で唯一例外的に愛聴しているのがこの「君微笑めば」だ。 “笑う門には福来たる” という内容の歌詞はドリス・デイが歌うのにピッタリで、彼女のハートウォーミングな歌声にはいつ聴いても励まされる。 shoppgirl姐さんがご自身のブログで “ドリス・デイで「ケ・セラ・セラ」の次に好きな曲” と書いておられるのを見て、“さすがは姐さん、エエ趣味してはるわ(^.^)” と嬉しく思ったものだ。
Doris Day - When You're Smiling
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