八代亜紀の「夜のつづき」アナログLPを手に入れた。このアルバムは既にCDで持ってはいたのだがアナログ盤を買いそびれていて、気がついた時には定価の倍をゆうに超える1万円以上のプレミアが付いてしまっていて手が出なかったのだ。こういう場合は無理をせずに状態の良い中古盤が市場に出るまで辛抱強く待つことにしているのだが、先月アマゾンのマーケットプレイスにこのレコードのデッドストックが「新品」として4,800円という良心的な値段で出品されているのを見つけて即決。ヤフオクやメルカリでごく普通の中古盤が12,000円~20,000円という高額で取り引きされていることを考えると大ラッキーだ。
このレコードはタイトルが示す通り2012年に出た彼女の本格的ジャズ・アルバム「夜のアルバム」の続編で、コアなジャズ・ファン向けにアナログ盤が数量限定で製作されていたが、どちらの盤も即完売。特に1作目にあたる「夜のアルバム」はある意味待ち望まれていた “八代亜紀のジャズ・アルバム” ということでインパクトも絶大で、HMVが2度再発して現在は3rdプレスまで出ているという人気ぶりだ。
この1作目に関しては幸いなことに1stプレスLPを首尾よく手に入れて喜び勇んで聴き始めたのだが、全収録曲中で「Sway」と並んで最も出来の良かった「私は泣いています」(←りりぃのカバー曲)が “収録時間の関係で未収録” となっていてめちゃくちゃガッカリしたのを覚えている。これって例えるならドジャーズのスタメンから大谷を外すようなものだろう。救いはアナログ盤の一番の長所である中低域の分厚さがハンパないサウンドだったことで、これに比べると世評の高いらしいSHM-CDの音(←私はどこがエエのかサッパリわからんのやけど...)が薄っぺらく聞こえてしまう。
Watashiwa Naite Imasu
そういうワケで「夜のつづき」のアナログ盤も是非とも聴いてみたいと楽しみにしていたので、今回適正価格でゲット出来て嬉しかった。実際に聴いてみた感想は、期待にたがわぬ、いや、期待を上回る“濃厚一発官能二発”なサウンドで大喜び\(^o^)/ やっぱり音楽はアナログ・レコードが最高ですな。ハッキリ言ってCDはカーステレオ用と割り切って買っている。
このアナログ盤はA面B面を意識したのかCDとは大きく曲順が変えられていて、A面1曲目と5曲目に「夜のつづき」というタイトルのインスト曲を配置してコンセプト・アルバム風になっているのだが、八代亜紀のリスナーは “なんちゃってコンセプト・アルバム” なんか求めてはいない。ただ、彼女の歌が聴きたいだけなのだ。私としてはインスト曲自体が不要と思っているのでCDではいつもスキップ・ボタンを押しているが、LPではいちいち針を上げるのが面倒くさいので適当に聞き流している。まぁ「夜のアルバム」みたいに曲をカットしてないだけまだマシと言えるが...
内容に関しては、私的には前作「夜のアルバム」よりも断然こっちの方が好きだ。敢えて点数をつけるとすれば「夜のアルバム」が70点でこの「夜のつづき」は95点といったところ。「夜のアルバム」は初めての本格的ジャズ・アルバムということで力が入りすぎたのか、「枯葉」や「サマータイム」「オーバー・ザ・レインボー」といった超有名スタンダード・ナンバーが並んでいて何だかなぁ...という感じだったが、この「夜のつづき」は有名スタンダード曲に拘らずにジャンルを超えた、ある意味 “攻めた選曲” がされており、彼女の持ち味を存分に引き出すようなアレンジが施されているところが一番の魅力だ。
具体的に言うと、エミー・ジャクソンのA④「涙の太陽」や日吉ミミのA⑦「男と女のお話」、そして何と浅川マキのB⑦「夜が明けたら」といった錚々たる昭和歌謡の名曲を見事にジャズ化しているのだ。特に「夜が明けたら」で聴かせる抑制の効いたクールなヴォーカルにはゾクゾクさせられた。又、ナンシー・シナトラのB⑤「にくい貴方」やサーチャーズで有名なB⑥「ラヴ・ポーション№9」といったポップスも「サイドワインダー」を想わせるアレンジで真っ当なジャズ・ロックに仕上がっており、聴きごたえ十分だ。
Yoga Aketara
王道中の王道と言えるA②「フィーヴァー」とB①「ユード・ビー・ソー...」はどちらもさすが八代亜紀と言いたくなるようなハスキーなヴォーカルが満喫できるトラックだ。惜しむらくは日本語詞で “You’d be so...♪” のパートを “指をからませ~♪” とか、“You give me fever~♪” のパートを“熱い火が~♪” といったようにウケ狙いのライミングにしているところ。こういうのをかっこいいと勘違いしている製作者サイドのレベルの低さが情けない。八代亜紀という屈指のヴォーカリストを起用してアルバムを作るのだから、ヘタな小細工はせずに英語で直球勝負に徹したらいいのにと思う。まぁ彼女の歌自体は文句なしの出来なので、大した問題ではないのだが...
Fever
このように名曲名唱の宝庫のようなアルバムなのだが、そんな中でも私がとりわけ気に入っているのがA⑥「赤と青のブルース」とB③「ワーク・ソング」だ。前者はマリー・ラフォレのオリジナル・ヴァージョンとタイマンを張れるくらいクールな歌唱にシビレるし、バックのヴァイブやギターのアレンジもカッコ良さがハンパない。後者では全編英語で貫録十分なヴォーカルを聴かせてくれるのだが、その堂々たる歌いっぷりにはもう参りましたとひれ伏すしかない。やっぱり八代亜紀は最高っすなぁ~ (^o^)丿
Saint-Tropez Blues
Work Song
【おまけ】八代亜紀といえば何と言ってもマーティ・フリードマンとのメタル共演が忘れられない。彼女こそ間違いなく日本が生んだ最高の歌手の一人だと思う。
MARTY FRIEDMAN - 【マーティ】 ヘヴィメタ・メドレー 【八代亜紀】