「バレリーナ」を観に行ってきた... と言ってももちろんクラシック・バレエではない。「ジョン・ウィック」シリーズのスピンオフ作品として先週公開されたばかりのアクション映画のことだ。このブログでこれまで何度も取り上げてきたように、私は一連の「ジョン・ウィック」作品が大好き。このシリーズの一番の魅力はリミッター解除というか、とにかく戦闘シーンのインパクトに全振りした思い切りの良さにあると思うのだが、ほとんどゲーム感覚で次々と敵を倒していく爽快感は筆舌に尽くしがたい。
シリーズの原点と言うべき「ジョン・ウィック」では銃器とカンフーを組み合わせた “ガン・フー” と呼ばれる独特の戦闘スタイルが中心だったものが、「2」「3」「4」と回を重ねるごとに武器のヴァリエーションが増えて戦闘シーンも過激になってきており(←「4」で焼夷弾を人間相手にぶっ放したのは凄かった...)、今回の「バレリーナ」もハンパない暴力シーンがてんこ盛りで、女性が主人公のスピンオフ作品だからと甘く見てたらブッ飛ぶこと間違いなし。映画本編はちょうど2時間くらいだったが、中だるみするようなシーンがほとんどなかったせいもあってか、エンディングを迎えた時に “えっ、もう2時間経ったんか?” という感じで、時の経つのも忘れてスクリーンに引き込まれてしまった。
本家の「ジョン・ウィック」と同様に、この「バレリーナ」もヴァラエティーに富んだ多彩な武器を使った戦闘シーンが次から次へと出てきて一瞬たりとも目が離せない。「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」で注目され、最近ではトム・クルーズとの手繋ぎデートで話題のアナ・デ・アルマスが演じる主人公のイヴが、襲ってくる敵とのフィジカル差をものともせずに、武器として使えそうなものは何でも手当たり次第に利用して暴れまくるところがめちゃくちゃインパクト大。渾身の力を込めて倒れた相手の股間を踏みつけるわ(←下からの股間撃ちもヤバかった...)、銃に包丁をガムテープでグルグル巻きにして撃って刺してやりたい放題するわ、スケート靴を手にはめてブレード部分で切りつけるわと、まぁ数え上げたらキリがないが、そんな中でも一番気に入ったのは、敵の口の中に手榴弾を突っ込んでそのまま鋼鉄製のドアで挟んで爆死させ、挙句の果てにはもう面倒くさいとばかりに手榴弾の詰まったケースごとブン投げて大爆発させるというシーンで、ハッキリ言って“狂犬”のような暴れっぷり(笑)なのだ。父親を殺された怒りを倍返しで敵にぶつけるその闘いっぷりは、まさに「この女、凶暴につき」という言葉がピッタリの熱演で、目の前で姉を爆殺されてブチギレた彼女が乗り込んできた敵を日本刀でメッタ刺しにするシーンなんかもう痛快そのものだった。
Ballerina Destroys A Town Full Of Assassins Scene | BALLERINA (2025) Movie CLIP HD
どんな態勢から撃ってもワイアット・アープみたいに眉間に一発で仕留めたりとか、斧を投げたら必ず脳天にぶっ刺さるとか、良い意味でのジョン・ウィック・ワールド全開でエンタメに振り切っているところが見ていてめっちゃ楽しいのだが、特にラストの火炎放射器バトル・シーンなんかはそこまでやるか!という凄まじさで、世界屈指の美女が撃って、殴って、蹴って、斬って、刺しまくるだけでも凄いのに、火炎放射器までぶっ放して敵を燃やし尽くすという地獄絵図にはもう笑うしかない。途中イヴが放水ホースに持ち替えて “火炎放射器vs放水ホース” という前代未聞の戦いが始まった時には “よぉこんなアイデア思いついたなぁ...” と心底感心させられた。
火炎放射器だけで106人キル!ジョン・ウィックのガン・フーに続く炎・フーほか3連フー!映画『バレリーナ:The World of John Wick』特別映像
キアヌ演じるジョン・ウィックが登場して「パラベラム」で彼がルスカ・ロマの劇場を訪れたシーンが別アングルで出てきた時は、本編と見事にリンクさせたストーリー展開の巧妙さに感心させられたが、ラストでジョンに戦いを挑もうとする教団メンバーに対して仲間が言った「死にたいのか、相手はジョン・ウィックだぞ」というセリフからもわかるように、この映画におけるジョン・ウィックは戦闘シーンそのものよりもその圧倒的な “存在感” でもって狂言回し的な役割を果たしているように思えた。
又、ニューヨーク・コンチネンタルの支配人ウィンストン(←イアン・マクシェーンってホンマにエエ味出してるなぁ...)やシャロン(←演じてるランス・レディックさんが一昨年に亡くなられてこの映画が遺作になってしもうた...)、そしてルスカ・ロマの女ディレクターといった、本編の登場人物が続々と出てくるのもシリーズのファンとしては嬉しいところだ。特にイヴの復讐を見届けたジョンがその場でこの女ディレクターに電話して交わした“It’s done.(終わった)”“So she is dead?(彼女は死んだの?)”“HE is dead.(彼が死んだ)” というやり取りがめっちゃクールでカッコ良かった。
この映画は基本的にバイオレンス満載で結構えげつない描写のオンパレードなのだが、その一方で笑えるポイントが随所に散りばめられているおかげでエグさが上手く中和され、R指定でありながらもマンガ感覚で面白おかしく観れるところがいい。例えばイヴがカルト教団の本拠地のハルシュタット村(←村人全員が殺し屋で、事が起こると老若男女みんなが銃を持ってゾロゾロ出てくるのにはクッソワロタwww)に単身乗り込んでいくシーンで、最初にダイナーに入った時にそれまで食事していた親子連れがヤバそうな空気を察知してそそくさと出ていくのだが、いざ戦闘が始まるとさっき出て行った母ちゃんが武装して戻ってきたりとか、そのダイナーの女主人(←この人ももちろん殺し屋)と床に散らばった皿で頭をどつき合うところとか(←めっちゃコミカルでまるでコントでも観てるみたいだったwww)、作り手側の遊び心が伝わってきてめっちゃ笑わせてもらったし、イヴがプラハ・コンチネンタルのパインの部屋で襲ってきた女殺し屋をテレビのリモコンでメッタ打ちしてるシーンでは、殴るたびに後ろのテレビ画面のチャンネルが変わっていくという芸の細かさにニヤリとさせられた。
Ballerina (2025) | Eve vs Female Assassin Fight Scene
とまぁこのように見所満載で大満足の「バレリーナ」だったが、ただ一つ物足りなかったのはイヴの敵のインパクトがイマイチ弱かったこと。ジョン・ウィック・シリーズ「1」のヴィゴ・タラソフ、「2」のサンティーノ・ダントニオ、「3」の女裁定人、そして「4」のグラモン侯爵のような憎たらしさというか、視聴者のヘイトを溜めまくって “コイツ絶対に許せへん!” と感情移入させるくらいのラスボス感がこのカルト教団にはあまり感じられなかったのだ。せめて主宰の部下にアクの強いキャラが一人でもいればラストがもっと盛り上がったのではないかと思うのだが...
ルスカ・ロマからの依頼でイヴを阻止しにやってきたジョンがイヴに真夜中まで28分間の猶予を与えたところはウィンストンがジョンに1時間与えた「ジョン・ウィック・チャプター2」の浪花節的な展開を思い起こさせるし(←“They killed my father!”と叫ぶイヴを見て、愛犬を殺されて復讐の鬼と化した昔の自分を思い出したような何とも言えない表情を浮かべるキアヌの名演が光る!)、イヴの首に$500万の懸賞金がかけられて劇場の観客たち(←みんな殺し屋www)の携帯電話が一斉に鳴り出すシーンも「チャプター2」のラストの公園のシーンと被ってくる。
ここからは私の希望的観測だが、この映画の続編として「バレリーナ2」が作られて、そこで「ジョン・ウィック・パラベラム」のように殺し屋たちに追われるイヴと、彼女に娘を救ってもらったダニエル・パイン(←死んだはずが実は生きていたというのは次回作への伏線か???)がそこに何らかの形で絡んでいく物語が描かれるんじゃないかと、何となくそんな気がしている。
今回はイオンシネマの半額サービス・デイをハシゴして今週だけで2回観たが、日本版ブルーレイが出るのは早くて半年後くらいだろうからとてもじゃないが待ちきれないので、「ジョン・ウィック4」の時と同じくUSアマゾンで来週発売予定のブルーレイをプレ・オーダーしてしまった。「ジョン・ウィック4」と言えば、ドニー・イェンが演じる盲目の殺し屋ケインを主人公にした作品も製作中らしいのだが、まぁ何にせよ、スピンオフも含めてどんどん広がっていくジョン・ウィック・ワールドの今後が大いに楽しみな今日この頃だ。
Ballerina (2025) Kill Count