shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「McCartney Ⅲ」

2020-12-28 | Paul McCartney
 2020年も残すところあと4日、このブログは音楽日記のつもりで書いているので1年の最後にはいつもその年を振り返るようにしている。今年は新型コロナウイルスのせいで日常生活の面では決して良い年とは言えなかったが、そんな悪い状況の中でも “一生もの” と言っていいレコードにたくさん巡り合えたし、新たにウルグアイ盤という高音質な各国盤コレクションを充実させることもできたしで、音楽面では決して悪くない1年だった。それもこれもすべてB-SELSとSさんのおかげなので、この機会に改めてお礼を言いたいと思う... 1年間どうもありがとうございました.. そして来年もよろしくお願いしますm(__)m
 そしてここからが本題なのだが、年の瀬も押し詰まった12月19日にポールから我々ファンに素敵な贈り物が届いた。ポールがロックダウン中に(「封鎖」を意味するLockdown に引っ掛けてロックが出来ない “Rockdown” という造語を使っている...)たった一人で作り上げた新作「McCartney Ⅲ」である。ポールが一人で曲を書き、すべての楽器を演奏した「McCartney」(1970)、「McCartney Ⅱ」(1980)の流れを汲む宅録シリーズの第3弾だ。
 最近の新作はCD、デジタル配信、アナログレコードと様々な形態で発売されるのがお約束だが、私は迷うことなくアナログレコードを選んだ。好きな音楽は出来るだけ良い音で聴きたいし、車の中で聴く分にはCDレコーダーを使ってCD-Rに焼けばいいだけのこと。ましてやデジタル配信なんて論ずるにも値しない。私はヴィンテージ・オーディオで聴くアナログ・レコードの音が一番好きなのだ。
 この「McCartney Ⅲ」を初めて聴いた時は “何か地味なアルバムやなぁ...” というのが正直な感想だった。今にして思えば、私にしてはかなり低い音量で聴いていたように思うのだが、2回目にアンプのヴォリュームを上げて聴いてみたところ印象がガラリと変わり、その後何度も大音量で繰り返し聴いてその良さを実感できた次第。そう、このアルバムを小音量で聴いても全然面白くないのだ。出来るだけ大きな音で、良いオーディオ装置で聴くとその素晴らしさが分かる仕掛けになっていると思う。
 アルバムはA①「Long Tailed Winter Bird」というインスト・ナンバーで幕を開ける。今回の「McCartney Ⅲ」は「NEW」や「Egypt Station」のように徹底的に作り込んだ “王道ポップ・ミュージック” とは一味違う素朴な内容のアルバムになるのではないかと予想していたが、いきなりザ・ファイアーマンっぽいインスト曲が来るとは思わなんだ。まぁアルバム全体のオーバーチュアという感じだが、ザクザク刻むアコギのリズム・カッティングが耳に心地よいナンバーだ。
 そして本アルバムのハイライト曲と言えるA②「Find My Way」だ。プロモ・ビデオで様々な楽器を演奏するポールの姿を見てその健在ぶりが確認できたのが何よりも嬉しいし、ドラムを叩いている姿を見るととてもじゃないが78歳には見えない。 ノリの良いキャッチーなメロディー・ラインはポールの十八番だし、ベテランならではの巧みなアレンジにも唸ってしまう。後半部のドラムの響きやギターの音色はどことなく「Mirage」期のフリートウッド・マックを想わせるものがあって気持ち良いことこの上ない。
 そして何よりも素晴らしいのがその歌詞だ。“(I Can) Find My Way”、つまり“自分の道は見つけられる” というタイトルなのだが、“I walk towards the light... Idon’t get lost at night.(僕は光に向かって歩く... 夜でも決して道に迷ったりはしない)” という前向きな歌詞、そして “Now you’re overwhelmed by your anxieties... Let me help you out... Let me be your guide... I can help you reach the love you feel inside.(今はコロナ禍で苦しんでいると思うけど、僕が手を貸して導いてあげるよ... 君の内にある愛に手が届くよう手助けがしたいんだ)” と聴く者を励ましてくれるメッセージに勇気づけられる。この曲でポールは “コロナなんかに負けんなよ... 希望を持って生きようぜ!” と私たちに語りかけてくれているのだ。フランシス・コッポラの息子さんが監督したというオフィシャル・ビデオと歌詞付きのビデオの両方を貼っときましたので、前者は元気なポールの姿を、後者はそのポジティヴな歌詞を十分堪能してください。
Paul McCartney - Find My Way (Official Music Video)

Paul McCartney - Find My Way (Lyric Video)


 いかにもポールらしいアコギ・ナンバー③「Pretty Boys」やシンプルなピアノの重苦しい響きが印象に残るA④「Women And Wives」も良いが、何と言ってもA⑤「Lavatory Lil」が個人的にはめっちゃツボ(^.^)  ちょうどB'zがアルバム「Magic」で聴かせてくれたような歌謡ロックっぽいテイストのリフが脳内リフレインを起こし、今のところA②と並ぶ愛聴曲になっている。ヘヴィーなギターのリフがカッコイイA⑥「Slidin'」でA面をしめるのは「Abbey Road」の「I Want You」みたいなモンか。
Paul McCartney - Lavatory Lil (Lyric Video)


 B①「Deep Deep Feeling」は8分を超える長尺曲だが、やや単調でメロディーが薄いように感じられて私的にはイマイチ。B②「The Kiss Of Venus」は安心安定のポールなアコギ・バラッドなのだが、高音部で声がややキツそうなのがファンとしては聴いてて辛いところ。B③「Seize The Day」はビートリィな雰囲気が横溢で結構気に入っている。やっぱりポールはこういう曲を作らせたら上手いですな。B④「Deep Down」のソウルフルなヴォーカルは “ポール、攻めてるなぁ...” の想いを強くさせてくれるグルーヴィーなナンバーで、聴き込めば聴き込むほど味わいが増すスルメ・チューン。B面ではこの曲と次のB⑤「When Winter Comes」が気に入っている。
 A①のギター・リフをリプリーズっぽくアタマにくっつけた(←ちょうどBラス前に置かれた「Ram On」の、あの感じ)B⑤「When Winter Comes」は何と1992年にジョージ・マーティンとの共同プロデュースでレコーディングした未発表曲をそのまま使っており、28年前の録音ということもあってポールの歌声の艶やかさに惚れ惚れしてしまう。SさんもB-SELSの日記コラムで絶賛されていたが、これはホンマにたまりませんな...(≧▽≦)  ビートルズ・ファンは、仮に歌っているのが「森のくまさん」や「どんぐりころころ」のような童謡であったとしても、ポールのこの “声” を聴いただけでフニャフニャと腰砕け状態になってしまうのである。
Paul McCartney - Winter Bird / When Winter Comes (Lyric Video)


 最後になるが、「McCartney」と「Mccartney Ⅱ」の次に出たアルバムをそれぞれ思い出していただきたい。そう、完全無欠のポップ・アルバム「Ram」と「Tug Of War」である。ポールがソロで好き放題やってガス抜き(?)をした後には必ず音楽史上屈指のスーパーウルトラ大名盤が生まれているのだ。歴史は繰り返すと言うが、コロナ禍終息後にワールド・ツアーに向けてリリースされるであろうポールの次作が今から楽しみになってきた。

ということで、2020年最後のブログはポールの「McCartney Ⅲ」でした。そして来たる2021年にはいよいよピーター・ジャクソンが監督した映画「Get Back」が劇場公開されますね。私が蛇蝎のごとく嫌っているディズニーが絡んでいることに一抹の不安がありましたが、先週YouTubeにアップされた公式の映像を見て、今はウキウキワクワク感がハンパないです。あ~楽しみじゃあ... (≧▽≦)   それでは皆様もどうぞ良いお年をお迎えください。
「ザ・ビートルズ:Get Back」先行特別映像|2021年8月27日(金)世界同時劇場公開!

ウルグアイ盤特集⑥「Ram」「McCartney」

2020-12-24 | Paul McCartney
 ウルグアイ盤の「Ram」を買ったら中身違いのチリ盤が届いた話は前に書いたが、その後セラーに “どーなってるねん!” と怒りのメールを送ったところ、“ごめんなさいm(__)m  私が中身を入れ間違えたみたいです。今、手元にチリ盤のジャケットに入ったウルグアイ盤「Ram」がちゃんとあるので大至急送ります。チリ盤はお詫びのしるしに取っておいて下さい。” と平謝りされ、 それから2週間ほどして本物の「Ram」が送られてきた。
 本来ならばこれでメデタシメデタシとなるはずなのだが、物事はそううまくは運ばなかった。“おぉ、エエ音しとるやないか... やっぱり70年代プレスのウルグアイ盤はエエわ(^.^)” と嬉々としてA面を聴き終えB面にいくと、B①「Heart Of The Country」でいきなり針飛び... “あちゃ~ またかよ...(>_<)” と思って盤をチェックしようと立ち上がった途端に更に畳み掛けるように針が飛びまくる... 前にも書いたと思うが、まるで“水切りショット”のように針が横滑りしていくのである。更にB②「Monkberry Moon Delight」とB③「Eat At Home」でもそれぞれ1ヶ所ずつ針飛びがあり、これではとてもじゃないが音楽を聴けたものではない。
 私は “困った時のSさん頼み” でこのレコードをB-SELSに持って行って一緒に聴いてもらったところ、“これは酷いですねぇ... 私の知る限りでも最もタチの悪いキズです。直せるかどうか分かりませんが、出来るだけやってみましょう。” と言って下さったので、そのお言葉に甘えて「Ram」をB-SELSに入院させた。果たして満身創痍の我がラムちゃんは無事社会復帰できるのだろうか???  それから1週間経って、私は再びB-SELSを訪れた。

 私:こんばんは。ラムちゃんの具合いはどうですか?
 Sさん:一応直しましたよ。かなりやっかいなキズでしたけど... 一緒に聴きますか?
 私:はい、お願いします。(B①から聴き始めるが、問題の箇所で針飛び...)やっぱりちょっと無理っぽいですね。
 Sさん:あれ? さっき聴いて確認した時は飛ばなかったのに... (とルーペで盤面をチェックしながら)ちょうど音溝に平行に細かいキズが無数に入ってるんですよ。で、1つの箇所を直すとそれで又別の箇所が飛ぶという悪循環なんです。
 私:レコード針で変な擦り方したんですかね?
 Sさん:いや、あれは針ちゃいますよ。砂です。
 私:えっ、砂???
 Sさん:そうそう、めっちゃ細かい砂が音溝につまってて、それを布か何かで拭いた時にできたようなキズです。
 私:ひょえ~、砂ですか。それって盤面削ってるようなもんですよね。そういえばジャケットを包んでるビニール、どれもこれも茶色く汚れてますけど、あれってひょっとして泥の汚れなんか...
 Sさん:そうですね。ウチではティッシュを濡らして拭き取ってます。
 私:なるほど! それはエエこと聞きました。今度ウチのも試してみます。(←家に帰ってやってみると効果テキメンでティッシュが瞬く間にまっ茶色に!!! もちろん同じサンドイッチ式ジャケットのブラジル盤のクリーニングにもオススメです) 日本に住んでたらレコード溝に砂が入り込むなんて全く想像つきませんが、ウルグアイってバーレーンみたいに空気中に砂が舞ってるのかもしれませんね。各国盤集めるのも大変ですわ(笑)
 Sさん:ハハハ... たしかに。でも悔しいなぁ... もう1回やらせてもらっていいですか?
 私:えっ、いいんですか? 私としてはありがたいお話しですけど...
 Sさん:(メガネの奥の眼をキリッと光らせながら)プロの意地がありますから。
 私:わかりました。よろしくお願いします。

それから1週間後...
 私:まいど(^.^)
 Sさん:「Ram」今度こそ大丈夫やと思います。まぁ聴いてみて下さい...(とB面に針を落とす)
 私:おっ、直ってますね。凄いなぁ...
 Sさん:多分これで大丈夫やと思いますが、もしまた次飛んだら諦めて下さいね。
 私:もちろんです。ホンマにありがとうございます。Handle with Care します。
 Sさん:じゃあ改めてA面から聴きましょうか。(A①「Too Many People」が流れる...)いいですね。しっかりとした良い音です。さすがウルグアイ!
 私:めっちゃ鳴りが良いですよね。ギターの高音部の伸びが気持ち良いです。
 Sさん:音がクッキリしてますね。少し前に聴いたインド盤「Ram」は音がまろやかでしたけど、こっちはクッキリ。いやぁ、面白いですね。
 私:メリハリがあってとっても力強い「Ram」ですね。同じウルグアイ盤「Wild Life」の場合と同じでUKマザーですが、ウルグアイならではの音になってます。針飛び直してくださってホンマにありがとうございました(^.^)
 Sさん:いえいえ、お安いご用です。
 私:もう1枚、ウルグアイの「McCartney」持って来たんですけど、聴きます?
 Sさん:聴きます聴きます!
 私:(A①「Lovely Linda」を聴きながら)良いでしょ?
 Sさん:良いです良いです、めっちゃ良いです!!!
 私:針が飛ばへんウルグアイ盤は怖いモンなしですわ(笑)
 Sさん:安心安定のウルグアイ、っていう感じですね。このレコードは溝の状態もかなり良いですよ。素晴らしい音です。
 私:マトはA面が2UでB面が3Uか...
 Sさん:そういうマトの違うマザーがウルグアイに送られたということですね。
 私:これも “当たり” ということは、現時点でウルグアイ盤のポールのソロは「McCartney」から「McCartney II」まで全部音が良いということですね。
 Sさん:確かにそうなりますね
 私:ウルグアイのチューブ・カッティングの音って「Tug Of War」にピンズドやと思うんです。絶対に手に入れたるぞ...
 Sさん:それは楽しみです。
 私:でも針飛び盤だけはもう堪忍してほしいですわ。

        

インド盤「Van Halen」の衝撃 (≧▽≦)

2020-12-19 | Hard Rock
 私が洋楽を聴き始めた1970年代半ば、“ロック・ギターと言えば何はさておきクラプトン、ベック、ペイジの3大ギタリスト” という風潮が強かったが、クラプトンは「I Shot The Sheriff」で私の超苦手ジャンルであるレゲエを演っとるし(←まだ「Crossroads」も「Layla」も知らないド素人だった...)、ベックはこれまた私の大嫌いなフュージョンっぽいアルバムを出しとるしで、“こんなんのどこがロックやねん???” と悶々とした日々を過ごしていた。
 そんな時、突如彗星の如くシーンに現れたのがエディ・ヴァン・ヘイレンだった。ラジオで初めて彼らのデビュー・アルバムを聴いた時の衝撃は今でもハッキリと覚えているが、エディのめくるめくようなギター・ソロのアメアラレ攻撃に完膚なきまでにKOされ、その瞬間からエディこそが私にとってリアルタイムのギター・ヒーローになったのだ。
 だからヴォーカルがデヴィッド・リー・ロスなのかサミー・ヘイガーなのかというのは私には大した問題ではなくて(←まぁバンドの音楽性はかなり違うが...)、エディが縦横無尽にギターを弾き倒してくれさえすればもうそれだけで大満足だった。サミーが抜けたりエディが体調を崩したりで新作が出なくなって以降も彼らの昔のアルバムを聴いては “やっぱりエディのギターは別格やのぉ...(^.^)” とよがっていた。
 そんなエディがこの10月に急逝してしまった。当然ながら私は大きなショックを受け、昔のアルバムを取っ替え引っ替え聴きまくって在りし日のエディを偲んでいたのだが、そんな時ふと “エディのギターをインド盤のチューブ・カットで聴いてみたいなぁ...” という考えが頭をよぎった。ちょうど B-SELSで立て続けにインド盤を購入してSさんと二人で盛り上がっていた頃のことである。早速ネットで探してみたところ、eBayにデビュー・アルバムが1枚だけ出品されていたのだが、何とそれが$300を超えるボッタクリ価格(゜o゜)  確かに激レア盤には違いないが、ものには限度というものがある。
 というワケで “やっぱりアカンか...” と一旦は諦めかけたのだが、そんな時たまたま cd and lp というレコード通販サイトのことを思い出した。ちょうど3年ほど前にフランス盤「Les Beatles」を激安で手に入れた、あのサイトである。“まぁ多分無理やろうけど、ひょっとするとひょっとするかも...” という淡い期待を抱きながら “プレス国:India” でサイト内を検索すると、ラッキーなことに1枚だけ売りに出ていたのである。そのレコードと言うのがやはり例のデビュー・アルバムで、しかも値段を見ると€100... eBayセラーよりも遥かに安い。
 このサイトは他と比べてヨーロッパのセラーの割合が多いのだが、このインド盤もやはりハンガリーのセラーからの出品である。私は世界史に疎いのでインドとハンガリーのつながりはよくわからないのだが、インド盤を買うならインドよりもハンガリーのセラーからの方が盤質が良い場合が多いということは体験上知っている。盤質表記がVG+なら多分EXレベルの音が楽しめるだろうと考え、私は迷わず ORDER をクリックした。
 注文してからちょうど2週間してレコードが届いた。インド盤は当たり外れが大きく、当たった場合はオリジナル盤に勝るとも劣らない凄い音を聴かせてくれるが、ハズレた場合は “何じゃいこれは???” と盤をぶち割りたい衝動に駆られるくらいクソつまらん音を出すので実際に音を聴くまでは油断できない。
 で、€100で買ったこの「Van Halen」はどうだったかというと、これが最高に当たったのであるヽ(^o^)丿  盤質の見た目はVG+どころかVGぐらいの酷い汚れ方だったが、丁寧に水洗いをしてじっくり超音波クリーニングを施すと盤は別物のようにピッカピカになり、実際に針を落として確認するとサーフェス・ノイズの少ないEXレベルのコンディションへとグレードアップしたのだ。
 そんな極上盤質のインド盤で聴く「Van Halen」の音はもう凄いの一言! “当たり”のインド盤の一番の特徴である豊饒な倍音成分の効果はテキメンで、A②「Eruption」なんかもうこれまで聴いたことがないような万華鏡サウンドのギター・ソロがスピーカーから勢いよく飛び出してくる。音圧もかなり高くてUSオリジナル1stプレス盤に勝るとも劣らない爆裂ぶり。続いてA③「You Really Got Me」になだれ込むところなんかもう鳥肌モノの素晴らしさで、エディのギターもキレッキレのツヤッツヤ...(^.^) これだけでもう“買ってよかったぁ... (≧▽≦)” と大喜びだ。
 更にA④「Ain't Talkin' 'Bout Love」、A⑤「I'm The One」と、これだけカッコいいアッパー・チューンを立て続けに聴かせてくれるアルバムを私は他に知らない。スピード感溢れるリフがたまらないB②「Atomic Punk」といい、アコギからエレキに変わる瞬間から一気呵成に加速していくB⑤「Ice Cream Man」といい、バンドが一体となって疾走するこの高揚感は筆舌に尽くし難い。そんなロック史上屈指の大名盤をUS盤ともUK盤とも違う倍音たっぷりの独自サウンドで聴く者を魅了するインド盤で体験できる喜びはまさに priceless だ。

インドの「With The Beatles」スタンパー両面G美盤ゲット

2020-12-13 | The Beatles
 ここのところ商品未着や中身違い、盤質詐欺といったネット・オークションのトラブルが結構続いていて、正直 eBayやDiscogsでレコードを買おうという気があまり起こらない。その点 B-SELS は実際の音をしっかり聴いて納得してから買えるし何よりも店主のSさんが絵に描いたような“良い人”なので気持ち良く買い物が出来て良いことずくめである。ハッキリ言って海外のアホバカ・セラーどもの相手はもうウンザリだ。
 ということで今回もB-SELS関連のネタである。先週「最高のHEY JUDE」で盛り上がったのも束の間、今度はインド最初期モノラル盤を2日連続で出品したという話がB-SELSの日記コラムに書かれていた。次から次へとよくもまぁこれほどレア盤・貴重盤の類を出せるものだ。B-SELSの仕入れ/在庫は一体どうなっているのだろう? いや、そんなことで感心している場合ではない。インド盤は当たり外れが激しいが、Sさんが日記に書かれる盤は100%“当たり”なので、これは是非とも売れてしまう前に聴いてみたい。というワケで、「HEY JUDE」からまだ2日しか経っていないというのにまたまたB-SELSにレコードを聴かせてもらいに行った。

私:こんばんは。今日は日記に書かれてたインド盤2枚聴かせてもらいに来ました。
 Sさん:どーぞどーぞ、是非聴いていって下さい。じゃあまずは「For Sale」からいきましょうか。
 私:A①「No Reply」の出だしにキズって書かれてましたけど、ほとんど問題ないじゃないですか。相変わらずご自分に厳しいですねぇ。音はUKの音そのものですね。
 Sさん:そうですね...(そのまま二人とも黙ったままA面を聴き終えてB面へ)
 私:おっ、B面の方が音圧高いですね。A面よりも音が活き活きしてる...
 Sさん:そうそう、この音なんですよ!
 私:ジョージのギターも艶々してますね。これは見事ですよ。
 Sさん:(B面が終わった後)もう一度A面かけてみていいですか?
 私:もちろんです。(Sさんが再びA面に針を落とす...)あれ? さっきとエライ違いますやん。音圧もB面と遜色ないですし、音もクリアーになってます。
 Sさん:恥ずかしながら、針先にホコリがこびり付いてたみたいなんです。その前にかけてたレコードの汚れが付いたままかけちゃったみたいで...
 私:そうやったんですか。いやぁ、それにしてもエライ変わりようですね。
 Sさん:針先のクリーニングの大切さを改めて思い知らされました。
 私:スタンパー 3R/2R の良さが十分出てましたね。じゃあ次はもう1枚の「With The Beatles」お願いします。スタンパー両面Gって聴いただけでワクワクしちゃいます。
 Sさん:マザー/スタンパーは 10G/9G です。7とか8とかっていうマザーは見たことないんですけどね。じゃあいきますよ... どうです?
 私:うわぁ、これは凄いですやん!!!
 Sさん:盤質もエエでしょう?
 私:今まで聴いた 7Nの中で最高の音ですよ。参ったなぁ...
 Sさん:気に入ってもらええて良かったです。
 私:気に入ったなんてもんじゃないですよ... 凄いですよ、これ! この音の秘密は日記に書かれてたように UK 7Nの音とインド・プレスがベスト・マッチというのももちろんあるんでしょうけど、盤質の良さもめっちゃ効いてるんでしょうね。
 Sさん:それと、スタンパーGの力でしょう。
 私:それそれ。その辺を確かめたくて実は手持ちのインド盤「With The Beatles」を持って来たんです。スタンパーは 10A/9P なんで、Gと聴き比べてみるのも面白いかなぁと思いまして... B面に行く前に先にA面同士で比べてみませんか?
 Sさん:いいですね。やってみましょう。
 私:(A①「It Won't Be Long」を聴きながら...)音圧は負けてないですけど、やっぱり微妙な差がありますね。
 Sさん:メインの音はそれほど変わりませんが、バックの音の細部に違いが出ますね。
 私:音のキメ細やかさですね。スタンパーAの方はバック・コーラスの微妙なところが演奏の中に埋没しちゃってるんですが、Gの方はその辺がしっかりと再現されてますもんね。やっぱりスタンパーGの盤は倍音が絶品ですわ。
 Sさん:shiotchさんの盤もAでたった2番しか違わないのに、GとAで差が出ましたね。これ、125番目と126番目だったらほとんど違いは出ないんでしょうけど、1番目と3番目で違いが出るっていののがアナログの奥深さであり面白さなんでしょうね。
 私:スタンパーが進むにつれてまず微妙な倍音から失われていくっていうことですね。いやぁ、勉強になります。それと、裏ジャケのアートワークも微妙に違ってますね。コーティングの有無も違いますし...
 Sさん:本当ですね。
 私:それにしてもインド盤って1stプレスと2ndプレスの差がめちゃくちゃデカいですね。もう私の盤はいいですから、スタンパーGのB面を聴かせて下さい。
 Sさん:じゃあいきますよ。
 私:うわぁ、B①「Roll Over Beethoven」めちゃくちゃエエですやん! 1Nのラウド・カットじゃないですけど、これでも十分ラウドな音で鳴ってますし、アンプのヴォリュームをちょっと上げるだけでエグい音で鳴りますよ、これは。
 Sさん:確かに、音圧が凄いですね。
 私:それでいて音の密度がめちゃくちゃ濃くって倍音の響きも美しい... 今日は聴きに来て大正解でした。
 Sさん:そんなに喜んでいただけるとは...(^.^)
 私:これ、買います!!!
 Sさん:えっ、買っていただけるんですか?
 私:もちろんです。この音を聴いて買わずにいられますかいな。実はこの前ネットで7NのUK 1G/1G盤を買い逃して悔しい思いをしたんですけど、こっちの方が断然エエですわ。あっちは VGやったんで盤質は雲泥の差ですし、今後もネット・オークションでこれだけ盤質の良いのを買える確率はめちゃくちゃ低いでしょうからね。
 Sさん:ありがとうございます。
 私:いえいえ、こちらこそ、究極の7Nの音を手に入れることができて万々歳です。この後もまだまだ大物の出品が控えてるんでしょうね。
 Sさん:ええ、まぁ... 楽しみにしていて下さい。
 私:これからも「日記」から目が離せませんね。でもこんなことしとったらそのうち自己破産しちゃいそうです...(笑)

ウルグアイ盤特集⑤「Mind Games」「Rock 'N' Roll」「Shaved Fish」

2020-12-08 | John Lennon
 チューブ・カットのウルグアイ盤で一番美味しい要素は何と言ってもヴォーカルだ。真空管ならではの太くねっとりした音で再生される人間の声の生々しさが何とも気持ちエエのである。で、ヴォーカルと言えばジョン・レノン! ということで今日はウルグアイ盤で聴くジョンのソロ3連発をいつものようにB-SELS店主Sさんとの会話形式でお届けします。
 Sさん:「Mind Games」の針飛び、直しておきましたので聴いて下さい。
 私:ありがとうございます。(お店のスピーカーからA①「Mind Game」の針飛びのあった箇所が流れる...)あれ? 飛ぶどころか、“ポン!” というポップ音すらしませんやん。一体どーなってますの?
 Sさん:何でもかんでもこうはいきませんけど、これはホンマに上手いこと直せたんですわ。会心の出来です。
 私:へぇ~、ビックリです。まるで魔法を見ているみたいですよ。ホンマにありがとうございました。
 Sさん:いえいえ、喜んでいただけるのが何より嬉しいです(^.^)
 私:それにしてもエエ音してますね。「Mind Games」ってこんなにええアルバムやったんかと思わされましたわ。
 Sさん:内容がこの音に合ってますよね。どこまでも伸びていく音というか...
 私:これはもう間違いなく真空管の音ですね。
 Sさん:A②「Tight A$」のギターの音が良いですねぇ... 「Mind Games」ってこんなにギターを聴かせるアルバムでしたっけ(笑)
 私:A⑤「Freda People」の音が分厚いですね。
 Sさん:何かもうたまりませんね。温かいですよね。(2人ともしばらく黙って音に聴き入る...)B③「Only People」で音が気持ち良いくらいにフワーッと広がりますね。
 私:B⑥「Meat City」 キター!!! これぞジョンのロックンロール!!!
 Sさん:ホンマにカッコ良いですね。アルバムの最後が「Meat City」で終わるところが良いんですよ。初期ビートルズの「Twist And Shout」や「Money」のように、最後をジョンの豪快なロックンロールでシメるというのがたまりません。
 私:コレ、実はアウターのビニール・カヴァーが無いせいか、たったの$18でしてん。じゃあ次は「Rock 'N' Roll」いきましょか。
 Sさん:UKマトですね... さて、音の方は、と...
 私:ガッツありますねぇ... (≧▽≦)
 Sさん:ウルグアイはUKマトの音も良いですねー
 私:プレスが良いというのもあるんでしょうね。
 Sさん:ダイナミックな音ですねぇ...(と感心しきりのご様子)。
 私:やっぱりUK盤と音が違いますね。
 Sさん:私もそう思います。ちゃーんとウルグアイの音になってますね。
 私:機材とかコード類で音が変わるんでしょうね。
 Sさん:同じUKマトなのに、不思議ですねぇ。
 私:この音でジョンのヴォーカルが聴ける喜びヽ(^o^)丿
 Sさん:この声は無形文化財ですからね。イギリスの人間国宝ですよ。
 私:B⑤「Ya Ya」、ドラムの響きが良いですねー(^.^)  ヴォーカルは言うまでもないですが、演奏もキリッと屹立して聞こえるので圧が凄いんですよね。
 Sさん:バスドラの音とか凄いです。音そのものはUKの方が洗練されてるんですけど、ウルグアイの方は何とも言えない手作り感があって、その何とも言えない温かみがジョンの声とめちゃくちゃ合ってるんですよね。
 私:「Rock 'N' Roll」の各国盤の中では一番のお気に入りです。じゃあ最後はこの「Shaved Fish」で。
 Sさん:おぉ、これはディフ・ジャケですね。
 私:カッコエエでしょ?
 Sさん:ええ、それに独自マトなんですね。変わったマトですねぇ...
 私: それと、センター・レーベルのリンゴの白い切り口の方がA面で、グリーンの方がB面なんですよ。最初はビックリしました。
 Sさん:ホンマですね。これは珍しい...
 私:これね、ウルグアイのセラーがNMやて言うから買ったら盤にシミがあって、最初鳴らした時はその部分で結構ノイズが出たんですよ。で、めっちゃ腹が立って、例の超音波洗浄機で盤を回転させずにシミの箇所を集中的に1時間ほど超音波攻撃したったんです(笑) そしたらほとんどノイズが出ぇへんようになりましたわ。
 Sさん:よかったですねぇ... 盤をクリーニングしてノイズが取れた時の嬉しさといったらないですもんね。
 私:そーなんですよ。じゃあ聴きましょか。音よろしいで...(^.^)
 Sさん:音の伸びが違いますね。スネアの音なんか最高ですよ。
 私:ジョンの声もエエでしょ?
 Sさん:音にチカラが漲ってますね。
 私:この音はB面の曲に特に合うんですよ。
 Sさん:音に隙間がないというか、聴いていてとても気持ちの良い音です。
 私:でしょ? 今日聴いた3枚共にジョン・ソロの各国盤の中では一番好きな音なんですよ。この3枚に出会えただけでもウルグアイ盤にハマった甲斐があったっちゅーモンですわ。

ウルグアイ盤特集④「Hollywood Bowl」「Rock 'n' Roll Music」

2020-12-07 | The Beatles
 「赤盤」と「Mind Games」を入院させた後、私はこの日B-SELS に持ち込んだウルグアイ盤の中から2枚ほど選んでSさんと一緒に楽しむことにした。選択肢はビートルズの「Let It Be」「Rock 'n' Roll Music」「At the Hollywood Bowl」「Magical Mystery Tour」、ポールの「Ram」「London Town」、ジョンの「Rock ‘n’ Roll」の7枚である。
 私:今日はどれ聴きます?
 Sさん:「Ram」!
 私:やっぱり...(笑) Sさんは「Ram」好きですもんね。私も人のこと言えませんけど。
 Sさん:これ聴いてみたかったんですよ。(しかしレコードをジャケットから取り出してセンター・レーベルをチェックしていたSさんの動きが止まる...)あれ? shiotchさん、これウルグアイ盤じゃないですよ。
 私:えっ?
 Sさん:チリ盤です。ジャケットはウルグアイですけど、中身は店にあるチリ・プレス盤と同じです。ほら、ここを見て下さい。CHILEって書いてあるでしょ。
 私:ホンマや... 針飛びの次は中身違いかよ... まいったなぁ...(*_*)
 Sさん:海外から買うと時々ありますよね。まぁチリ盤の音も悪くはないですよ。それに超レアですし。
 私:すっかりウルグアイ盤やと信じてたのでレーベルちゃんと見てなかったんですわ。私としたことが、情けない。あ~、めっちゃショック(>_<)
 Sさん:まぁこれでも聴いて元気出してください...(と言いながら「At the Hollywood Bowl」をジャケットから出してターンテーブルにセット。お店のスピーカーからファンの絶叫を突き破るように「Twist And Shout」が流れ出す。)おぉ、中々いいじゃないですか!
 私:ライヴに合いますね、ウルグアイの音は。盤質の良さも効いてるんでしょう。これはアメリカのセラーから買ったんで盤はピッカピカです。
 Sさん:ホンマに盤質良いですね。それにUKよりエコーが効いてる感じでライヴにピッタリですよ。うん、これは良い! (「Things We Said Today」を聴きながら)この曲でこんだけ盛り上がるのがスゴイ...(笑)
 私:(「Help!」を聴きながら)たまらんですなぁ、このノリ(≧▽≦)
 Sさん:まさしく超一流のライヴ・バンドですね。
 私:日本公演の時とは全然ちゃいますね(笑) ヤル気に満ちてます。
 Sさん:いやぁ、素晴らしい!!! ベースの出方がUKとは違いますね。
 私:ホンマのライヴに行ったらこんな感じの音ですよね。
 Sさん:これは楽しめました(^.^)  次は「Rock 'n' Roll Music」にいきましょう。
 私:70年代中期プレスのウルグアイ盤にハズレ無し(笑)
 Sさん:これはUKマトか...
 私:音どうですか?
 Sさん:UKとそれほどは違いませんね。良い音です。
 私:堂々たる音ですよね。
 Sさん:盤の状態も良いし、プレスも良い感じですね。
 私:特に中高域のエネルギーが強いです。
 Sさん:そういう感じですね。
 私:まさにド派手なロックンロール大会という感じの音作りになってます。
 Sさん:上手い音作りやと思いますよ。音に張りがある。
 私:それにしてもジョンのロックンロール・シャウトはタマランですな(^.^) ここ一番に咆えるところなんてもう鳥肌モンですよ。
 Sさん:他の人がやったらダサくなりそうなのに、ジョンがやるとめっちゃカッコイイ!
 私:盤質のおかげで音が良いのもプラスに働いてますね。
 Sさん:あまり聴かれずにずーっと残ってたように見えますね。
 私:これは当たりでした。今後ウルグアイ盤はなるべくアメリカのセラーから買うようにしますわ。

「最高のHEY JUDE!」を聴きに行ってきた (^o^)丿

2020-12-03 | The Beatles
 一昨日、いつものようにB-SELSの「日記」コラムを見ると、そこには「最高のHEY JUDE!」というタイトルが踊っていた。ビートルマニアのアナログ・コレクターにとってこれ以上の煽り文句はないだろう(笑) 中身を読んでみると、“PAPER BACK WRITER” と “REVOLUTIONS” という2つの誤表記がある例の「HEY JUDE」UKエクスポート盤LP の話なのだが、マザー/スタンパーが何と 1G/1A という最初期盤だというのだからこれはエライコッチャである。
 Sさんの言葉を借りると “1G/1Aの音は信じられないくらいに素晴らしい。私自身が信じられないくらいだから、お客さんには実際にご自身の耳で聴いていただくしかない。おそらく最高の、今まで聴いたことのない"HEY JUDE"を、聴くことができる。” とのこと。これは絶対に聴かねばならぬ! いや、是非とも聴いてみたい!
 12月に入ってようやく仕事が一段落して本業(笑)のレコード蒐集に本腰を入れれるようになった私は早速昼から有休を取ってB-SELSに行くことにした。前回の「Hey Bulldog最強決定戦」の時にならい、比較対象として手持ちのUKエクスポート盤「Hey Jude」(スタンパーは2A/1M)とウルグアイ盤「Hey Jude」を携えて...
 私:まいど。今日は「最高のHEY JUDE」を聴かせてもらいに来ましたで。
 Sさん:これはこれは... 是非とも聴いていって下さい。
 私:それにしてもこの前の「Yellow Submarine」といい、ピッカピカの「White Album」といい、次から次へとよぉこれだけ凄い盤を出さはりますなぁ...
 Sさん:ハハハ...(と照れ笑いしながら)A面、B面、どっちから聴かはりますか?
 私:そりゃあもう、“最高”の「Hey Jude」から聴きたいんでB面からお願いします。
 Sさん:わかりました...(と言ってレコードに針を落としながら)どうですか?
 私:うわぁ、これは凄い!!! いきなり立ち上がりのピアノの音からして違いますね。何て言うか、質感まで伝わってくるような感じの音です。こんなん初めて聴きましたよ(≧▽≦)
 Sさん:倍音の出方が違うでしょ。ピアノの響きやポールの歌声が...
 私:そうそう、ポールの声がすごく優しいというか、柔らかく包み込んでくれるような感じですよね。これは凄いわ... さすがに日記に書かはるだけありますね。
 Sさん:喜んでいただけてよかったです。
 私:じゃあ一旦ここで針を上げて私が持ってきたこの2A/1M盤のと比べてみませんか。AとMということでスタンパーは1番違いなだけですが、どんな違いがあるか興味をそそられるんです。
 Sさん:面白そうですねぇ... やりましょう。(と言って今度は私が持参した 2A/1M盤に針を落とす)
 私:うわぁ、やっぱり違う... 低音はかなり出てると思うけど、ピアノのあそこまでの質感を出すのってホンマに難しいんですね。
 Sさん:スタンパー1番違いでこの差ですか...(と感慨深げ)
 私:売れてしまう前に聴きに来て大正解でしたよ。因みに私の2A/1M盤に点数付けるとしたら何点いただけますかね? 「Hey Bulldog」の時は惨敗でしたけど...(笑)
 Sさん:98点ぐらいいくんじゃないですか。盤質めちゃくちゃ良いのが効いてますね。
 私:でもその2点差って永遠に埋められない“紙一重”の差ですよね。麗しい倍音の響きという...
 Sさん:ですよね。
 私:じゃあ 1G/1A盤の残りの曲も聴かせて下さい。
 Sさん:もちろん!
 私:B③「Don't Let Me Down」のキーボードの音色が実にまろやかですね。これは素晴らしい!
 Sさん:良いですよね~ (^.^)
 私:B④「The Ballad Of John And Yoko」のベース太っ!!! 何かもう“ノリのオバケ” っていう感じですよ。これは凄すぎる!!!
 Sさん:ポールのドラムが最高です。リズム感の鬼ですよ。
 私:確かに... 「Back In The USSR」もそうでしたね。
 Sさん:そうそう... 「Band On The Run」もです。ホンマにポールって凄いですよ。じゃあ次はA面いきましょう。
 私:さすがは 1Gの音ですね。これ以上の音はないんじゃないでしょうか。
 Sさん:1Gなんで当然と言えば当然なんですけど、やっぱりこれは凄いです。
 私:特にA④「Rain」はエグいわ(笑) これ最強でしょ!
 Sさん:ハハハ...
 私:A⑤「Lady Madonna」も音の密度がハンパないですね。さすがは 1Gですよ。
 Sさん:でも私個人としては 1AのB①「Hey Jude」が凄すぎて 1Gが霞んでしまいそうなくらいなんです。
 私:それ、めっちゃわかります。A面って結構アッパーでラウドな曲が多いので、むしろ倍音の響きで差が出やすい「Hey Jude」のインパクトの方が強烈やったということでしょうね。
 Sさん:そうですね。
 私:“倍音”って何? と訊かれたらこれを聴かせれば一発でわかる、そんなレコードですよ。いやぁ、これはエエもん聴かせてもらいましたわ。比較ついでにウルグアイ盤の「Hey Jude」も聴いてみます?
 Sさん:出ましたね、ウルグアイ(笑) 
 私:いやぁもう最近こればっかりで...(^.^)
 Sさん:これはUKエクスポートのマトですね... (音を聴いて)おぉ、さすがはウルグアイ、エエ仕事してますね。
 私:もちろんさっきの 1G/1A盤には負けてますけど、$16でこの音やったらコスパめちゃくちゃエエでしょ?
 Sさん:その値段で聴ける音じゃないですよ、これは。
 私:この盤はアメリカのセラーから買ったんですが、現地ではウルグアイ盤の価値なんてその程度なんでしょうね。
 Sさん:まぁこれはホンマにハイコスパですよね。
 私:音の評価としては何点いただけますか?
 Sさん:95点ぐらいかな... さっきの2枚のUK盤に比べるとちょっとスタンパーが進んでるっちゅー感じです。
 私:これ、A面の方が音エエですね。B面よりも溝の状態がエエんかな。何やかんや言うても最後は盤質ですからね。
 Sさん:盤質もエエですし、ひょっとするとメタルマザーもA面の方がエエのかもしれませんよ。うん、このA面は凄く良い!
 私:この前の「Hey Bulldog」に続いて今日もめっちゃ興味深い聴き比べが出来ましたね。
 Sさん:いやぁ、アナログってホンマに面白いです。
 私:同感です。早くも次の「日記」が楽しみになってきましたよ(笑)

ということで “最高のHEY JUDE!”は看板に偽りナシの凄い音でした。どれほど凄いのか興味を持たれた方は売れてしまう前に(←今日私が滞在してた間にも1件問い合わせの電話が入ってました...)B-SELSに急いだ方がいいです。スタンパーに徹底的に拘ってビートルズ・アナログ道を極めるB-SELSの “極道”高音質盤シリーズ... コレクターはこれからも目が離せませんな。

ウルグアイ盤特集リターンズ!

2020-12-02 | The Beatles
 おそらく他のレコード・コレクターの方々も同じだと思うが、私は仕事が終わって家に帰った時にレコードが届いているとアドレナリンがドバーッと出て、一気にその日の疲れが吹き飛ぶ。ウチは昼間に届いた郵便物は全部オカンがリビングのテーブルの上に置いといてくれるので、帰宅したらイの一番にテーブルに目が行く習性が身についてしまった。まさに551蓬莱のCMみたいな感じで、テーブル上に “レコードがある時” と “ない時” で幸せ度が天と地ほど違うのだ。
 先日、いつものように仕事から帰ると、テーブルの上にレコードのパッケージが山積みになっていた。うわぁ、何じゃこりゃ~と一瞬ビックリしたが、よくよく考えてみると前の週末に買いまくったウルグアイ盤がドドーッと一気に届いたということだ。私はオカンに “何ヘラヘラ笑うてんの、ホンマに気持ち悪いわ...” とおちょくられながらルンルン気分で梱包を解き、届いた大量のレコードを抱えてリスニングルームへと上がっていった。
 早速レコードにヒドいキズがないかを1枚ずつ目視で確認。一応大丈夫そうだったので順番に聴いていく。個々のレコードの詳細は別の機会に書くとして、全体的な印象として、まず良かった点はウルグアイ盤はやっぱり音が良いと再確認できたこと。今回届いた10枚はすべて70年代プレスの盤だが、「1962-1966」('73)「At the Hollywood Bowl」('77)といった本家ビートルズのレコードから、ポールの「McCartney」('70)やジョンの「Rock 'n' Roll」('75)のようなソロ作品に至るまで、70年代のどの時期にプレスされたレコードもウルグアイ盤ならではの濃厚な音が楽しめて大満足だ(^o^)丿
 逆に困った点は、セラーのコンディション表記が非常にエエ加減だということ。私は基本的にVG+ 以上のコンディションの盤しか買わないようにしているのだが、今回届いた10枚中2枚で針飛びが起きてしまいガッカリ(*_*)  それら2枚のコンディション表記は VG++ とEXで、ご丁寧に “Plays great” と書いてあったので安心して買ったのだが、まるで水切りショットのように針が飛びまくるレコードの一体どこが great だと言うのか??? 片方はウルグアイの、もう片方はアルゼンチンのセラーなのだが、南米のセラーは信用できないということが改めてよーく分かった。因みに現時点で南米ルートで買った20枚(←すべてVG+以上)の内で針飛び盤が5枚... 4枚買うとその内1枚は飛ぶという計算になる。針飛び率25%だなんて、とてもじゃないが怖くて買えたモンじゃない。
 一方アメリカのセラーから買った盤はどれも説明通り(or 以上)の抜群のコンディションのブツばかりで針飛びはゼロ。送料を考えてもバカ高い南米ルートで買うよりはアメリカからの方が圧倒的に賢い買い方だとわかった。因みにUSルートの送料が大体$28ぐらいなのだが、ウルグアイ・ルートは$35とか、酷いのになると$45~$55の送料を請求してくる厚かましいセラーもおって呆れてしまう。
 しかしウルグアイ盤蒐集という “道なき道” に踏み迷うそんな私に親身になって相談に乗って下さるのがご存じB-SELS店主のSさんだ。この前お店に行った時にこの針飛び盤のことを言うと “少々の針飛びなら直せるかもしれませんよ。よかったら持ってきて下さい。” とのことだったので藁にもすがる思いで針が飛んだ「赤盤」と「Mind Games」の2枚を持って行くと、ルーペを使って盤面を舐めるように見た後 “う~ん、これはちょっと性質の悪いキズですねぇ。斜めにキズが走ってるんです。でも多分直せると思いますよ。できれば明るい昼間にやりたいのでしばらくお預かりできますか?” とのこと。私は大喜びで “ぜひお願いしますm(__)m” と2枚の針飛び盤をB-SELSに入院させることにした。
 “ホンマに何から何までお世話になり、お礼の言いようもありません。” と言うと、“いえいえ、私はお客さんに喜んでもらえるのが何よりも嬉しいんです。” とえびす様のような笑顔でおっしゃる。ホンマに何ちゅうエエ人やねん! 日本中からビートルズ・コレクターの方々がこのB-SELSに集うのはレコードの品揃えやコンディション表示の正確さ、それにしっかりと試聴してから買える安心感といった要素も確かにあるだろうが、何よりも “カスタマー・ファースト” を信条とするSさんのお人柄に負うところが大きいのではないかと改めて感じ入った次第。
 そんなこんなで2枚の針飛び盤をお預けした後、私はいつものように持参したレコードをSさんと一緒に楽しむことにした。さあ、ウルグアイ祭りの始まりだ。 (つづく)