shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Spectre Sounds / Jive Bunny Project

2014-08-25 | Wall Of Sound
 「SPECTRE SOUNDS ~歌謡曲シリーズ~」をみながわさんのブログで知り、どこか試聴できるサイトはないかいなぁとググった時のこと、画面に表示された画像検索結果には例の青いジャケットの盤とは別にもう1種類、ビーハイヴ・ヘアーにウサギ耳のヘアバンドを付けてバニーガールに扮したロネッツの3人のイラストをあしらったピンク色のジャケットの盤がいっぱい出てきた。よくよく見るとタイトルは同じ「スペクトル・サウンズ」なのだが「歌謡曲」の文字はなく、代わりに「STEPPING」「JIVE BUNNY PROJECT」とある。何じゃいコレは??? 早速クリックしてみると、曲目が「歌謡曲シリーズ」とは全く違う。どうやら「スペクトル・サウンズ」には2種類の盤が存在するようだ。アマゾンで全曲試聴できた青盤とは違い、こちらのピンク盤(?)を試聴できるサイトは残念ながら見つけられなかったが、選曲も良いし音壁関連盤ならハズレの確率は限りなくゼロに近い。ラッキーなことにヤフオクで400円で出ていたので私は試しに買ってみることにした。
 盤が届くまでの2日間で色々調べてわかったことは、はせはじむというクラブDJが今の若い世代に昔の洋楽の素晴らしさを知ってもらおうと企画したのがこの JIVE BUNNY PROJECT で、一つのテーマに基づいて過去の名曲をメドレー形式でカヴァーした盤をヴィヴィッド・サウンド・レーベルからリリースしたシリーズの1枚だということ。まず2008年に「Motor Town Beats」「Spectre Sounds」「Swing Set」の3枚にそれぞれ “Hopping” “Stepping” “Jumping” という副題を付けて発売(←なるほど、これで Stepping の謎が解けた...)、翌2009年には「Latin Slide -Dancing-」「Jungle Drums -Bumpping-」を、2010年には「Ska In The World Hits -Driving-」「50’s Swinging with Electro -Swinging-」をリリースして現在に至っているらしい。更に上記7作品中で特に評判が良かった “スペクター・サウンド” と “モータウン・サウンド” のスピンオフ的作品として2012年にリリースされたのが前出の「歌謡曲シリーズ」というワケだ。尚、「歌謡曲シリーズ」のジャケットには JIVE BUNNY PROJECT の文字もウサギ耳も無い。
 “ジャイヴ・バニー・プロジェクト” がオールディーズのヒット曲をメドレー化して80年代に一世を風靡した Jive Bunny & The Mastermixers に由来していることは明らかで、1989年の夏から秋にかけてに大ヒットした2枚のシングル「Swing The Mood」(5週連続全英1位)と「That's What I Like」(3週連続全英1位)、更にオールディーズ・メドレーをいっぱい詰め込んだ彼らのファースト・アルバムを聴きまくっていた私としては、この “ジャイヴ・バニー・プロジェクト” は “よくぞやってくれました(^o^)丿” と快哉を叫びたくなる名企画だ。
Jive Bunny And The MasterMixers - Swing The Mood (12" Version)

Jive Bunny and The Mastermixers - The real videos - That's What I Like


 全12曲中、原由子の「ハートせつなく」とシリア・ポールの「夢で逢えたら」を除く10曲が洋楽ポップスで、土屋浩美(5曲)、小島真由美(1曲)、真城めぐみ(2曲)という3人の女性ヴォーカルと辻睦詞(4曲)という男性ヴォーカルの4人がクレジットされているが、私的には出来ることなら全曲女性ヴォーカルで統一してほしかったところ。やっぱり音壁は女性ヴォーカルに限ります(^.^)
 ストロベリー・スウィッチブレイドの「シンス・イエスタデイ」をアダプトした①「イントロダクション」から②「ウー・アイ・ドゥ」(リンジー・ディ・ポール) → ③「ハートせつなく」(原由子) → ④「サングラシズ」(トレイシー・ウルマン) → ⑤「ドント・アンサー・ミー」(アラン・パーソンズ・プロジェクト) → ⑥「ディス・クッド・ビー・ザ・ナイト」(モダン・フォーク・カルテット) と続く前半部分がこのCDの白眉で、特に⑤「ドント・アンサー・ミー」(5分50秒~)はヴォーカルの土屋浩美の声質が曲にバッチリ合っていてアラン・パーソンズ・プロジェクトのオリジナル・ヴァージョンをも凌駕する屈指の名演になっている。トラックがわずか1分13秒しかないのが惜しい(>_<)
Spectre Sounds


 ラスト曲の⑬「ゼイ・ドント・ノウ」(トレイシー・ウルマン) も土屋さんのヴォーカルが素晴らしく、オールディーズ・ポップスのお手本のようなドリーミーな世界を作り上げている。「ドント・アンサー・ミー」といい、この「ゼイ・ドント・ノウ」といい、丁寧に作り込んだサウンド・プロダクションとオリジナルよりも若干テンポを上げた絶妙なアレンジの勝利だろう。「歌謡曲シリーズ」と共に、音壁ファンの音壁ファンによる音壁ファンのためのカヴァー作品として一頭地抜きん出た感のあるこの元祖「スペクトル・サウンズ」は宇宙猿人ゴリもビックリのミラクルな1枚なのだ。
They Don't Know


【おまけ】こっちがオリジナル・ヴァージョン。クッサクサのアメリカン・コミック風PVが印象的な「Don't Answer Me」(←お月さんの“Ouch!”が懐かしい...)はこの曲がヒットした1984年当時は音壁の“お”の字も知らずに聴いていたが、今の耳で聴くと大瀧師匠が泣いて喜びそうなコテコテのウォール・オブ・サウンドだ。トレイシーの「They Don't Know」はラストでポールが特別出演してるのが見どころデス!!!
The Alan Parsons Project - Don't Answer Me

Tracey Ullman - They don't know (HD 16:9)
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Spectre Sounds 歌謡曲シリーズ

2014-08-19 | Wall Of Sound
 私が必ずチェックするブログの一つに、当ブログ最高顧問の(←キダ・タローみたいですんません...)みながわさんが書かれている Magical Out There Tour がある。私の音楽の嗜好はビートルズからオールディーズ、昭和歌謡、イエイエに至るまでかなり幅広く偏っている(?)ので、ジャズ友の901さん以外では音楽の話で盛り上がれる友人が身近にいないのだが、ブログで知り合ったみながわさんとは音楽の好みが非常に似通っていてお互い相通じるモノがあり、コメント欄でのやり取りを通して私の音楽生活を大いにインスパイアして下さっている。パッと思いつくだけでも「さすらいのギター特集」や「藤圭子追悼特集」、「夢逢え」や「さらシベ」の聴き比べにまで発展した「音壁祭り」など、どれもこれもみながわさんからいただいたコメントが無ければ思いつかなかったであろうネタばかりだ。
 そんなみながわさんが昨年のポール東京ドーム公演の感動を記しておこうとブログを始められた。同じ趣味嗜好を持った者としてこれほどワクワク楽しみなことはない。そんなこんなでこの数ヶ月だけでも未知の盤を何枚も教えていただいたのだが、そんな中で最近一番気に入っているのがこの「SPECTRE SOUNDS ~歌謡曲シリーズ~」である。
 みながわさんはブログの中で “ウォール・オブ・サウンドって知ってるかい? 1960~70年代に活躍した天才プロデューサー、フィル・スペクターが作り出した「ウォール・オブ・サウンド(音壁)」と称されるゴージャスなサウンドに影響を受けた古今東西の名曲をDJ MIXし、その音源を元に生演奏でカヴァーしたとんでもなくミラクルな一枚!!” というメーカーインフォを引用した上で、 “これで興味がわかなければ音壁ファンじゃない!” と喝破されている。名盤「音壁JAPAN」で私を音壁桃源郷へと導いた同志の言葉は重い。選曲も私のスイートスポットのド真ん中だ。いてもたってもいられなくなってアマゾンで検索してみるとラッキーなことに試聴可能になっている。どれも曲の断片を聴いただけで “ク~ッ、これはタマラン!!!” と思わず ! を3つも付けたくなるような素晴らしさだ(^o^)丿  私は迷うことなく買いを決めた。
 このCDは全12曲をノンストップ・メドレー形式で繋いであり、34分19秒がアッという間に過ぎ去っていくのだが、1枚のCDでこれだけカスタネットが聴ける盤を私は他に知らない(笑)  感想を一言で言えば、フィル・スペクターを知らない洋楽初心者でもJ-Pop名曲群経由の安心ラクチン格安パックツアーで “ウォール・オブ・サウンド” の真髄を垣間見ることができるという、まさにメーカーインフォ通りの “ミラクルな1枚” だと思う。
 ミラクルと言えば、この盤の選曲がコワイぐらいに私の溺愛曲と合致しており、特に大瀧師匠の「A面で恋をして」に始まり、メグミンの「見つめあう恋」、ミポリンの「世界中の誰よりきっと」、YUKIたんの「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」、タキユミ姐さんの「酸っぱい経験」、サザンの「Love Affair ~秘密のデート~」と続く前半部は私の自家製音壁CD-Rと曲順までほぼ同じだったのでビックリ(゜o゜)  どのトラックもウキウキワクワクするようなキャッチーなメロディーをウォール・オブ・サウンドでコーティングした名曲名演のオンパレードで、アレンジを担当した佐藤清喜という人のセンスが光っている。特に曲の繋ぎ方が絶妙で全12曲がまるで1曲の如く一気呵成に聴けてしまうところが凄い。
スペクトルサウンズ歌謡曲パート1


 12曲の中で私が初めて知った曲は「ファンレター」(岡本舞子)、「悲しきウェザー・ガール」(レインボー・シスターズ)、「恋はじめまして」(岡田有希子)という80年代の3曲なのだが、そのどれもが思わず一緒に口ずさみたくなるような親しみやすいメロディーに溢れていて、隠れ名曲発掘という観点からも大収穫だった。
 ヴォーカルは5人の女性シンガー(←残念ながら私の知らない名前ばかりでした...)に割り振られているのだが、それぞれの声質や歌唱法が曲想とバッチリ合っており、どのトラックもめっちゃエエ雰囲気に仕上がっている。彼女達のヴォーカルがこのCDの名盤度アップに大きく貢献していると言っても過言ではないだろう。 “スペクター” をもじって「スペクトル・サウンズ」としたアルバム・タイトルもヒネリが効いていて面白いし、とにかく論より証拠、オールディーズポップス・ファンなら一度聴いたら絶対に気に入ること間違いなしの大名盤だ。
スペクトルサウンズ歌謡曲パート2
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中森明菜のシングル盤特集③

2014-08-14 | 昭和歌謡・シングル盤
 中森明菜シングル盤特集最終回は、彼女がアイドルという次元を超えて稀代の女性ヴォーカリストとしての地位を確立した1985~86年にリリースした珠玉の3曲だ。

①ミ・アモーレ
 ラテン・フュージョン・ピアニストの松岡直也が作曲・編曲を手掛け、後に12インチ・シングルとして発売される「赤い鳥逃げた」の歌詞をより大衆にアピールするように書き直したのがこの「ミ・アモーレ」だ。「赤い鳥逃げた」がコンガの乾いた音が気持ち良いコテコテのサルサ・アレンジ(←3分20秒から始まるパーカッションのアメアラレ攻撃が快感デス!)なのに対し、歌詞の中に “リオの街はカーニバル~♪” や “サンバのリズムが~♪” といったフレーズが出てくる「ミ・アモーレ」はホイッスルが鳴り響くサンバ風アレンジになっており、同じメロディーでありながら歌詞もアレンジも違うという “一粒で二度オイシイ” 楽しみ方が出来るのが嬉しい(^.^)  明菜のヴォーカルは彼女の全キャリア中でピークにあったと言ってよく、ラストの “アモォレェェェ~♪” 3連発なんかもう圧巻の一言に尽きる。これが弱冠19歳の歌唱というのだから恐れ入谷の鬼子母神だ。
ミ・アモーレ/ 中森明菜

中森明菜 赤い鳥逃げた


②SAND BEIGE -砂漠へ-
 サハラ砂漠をテーマにしたこの曲は80年代版 “飛んでイスタンブール” といった感じのエキゾチックな薫り漂うナンバーで、何度も聴くうちにサビの “星屑 私を抱きしめていてね アナーウィズ アローホ サンドベージュ♪” のメロディーが脳内リフレインを起こしてしまうスルメ・チューンだ。すっかり大人のシンガーへと成長した明菜はゆったりとした力強い歌唱で主人公の女性の心情を見事に歌い上げており、そのしっとりした歌声と見事な表現力に彼女の真骨頂を見る思いがする。
SAND BEIGE -砂漠へ-


③DESIRE
 あの阿木燿子が明菜のために書いたこの曲は “ゲラッ ゲラッ ゲラッ ゲラッ~♪” というインパクト絶大な前サビで始まる。いきなり “これっきりですかぁ~♪” という百恵の問いかけで始まる「横須賀ストーリー」の時と同じように、明菜にリエゾン全開で “ゲラッ ゲラッ♪” と歌わせて “これから一体何が始まるのか...” と聴き手の心をガッチリつかむ阿木マジック炸裂だ。バブル絶頂期を謳歌する時代の空気感を見事に描き切った歌詞と旋律の結びつきが秀逸で、要所要所でここぞとばかりに炸裂する打ち込みハンドクラッピングも実に効果的。イントロから怒涛のように押し寄せるベースに乗って明菜ビブラートも冴えわたる。特に “まっさかさぁーまぁーに♪” から “堕ちて desire” へと続くあたりのヴォーカル・コントラストの妙なんかもう完璧と言う他ない。無双状態にあった明菜の充実ぶりがよくわかるスーパー・ウルトラ・キラー・チューンだ... な~んてねッ(笑)
DESIRE
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中森明菜のシングル盤特集②

2014-08-10 | 昭和歌謡・シングル盤
 台風11号がものすごい。今朝パソコンつけたら近畿各地の被害状況写真がいっぱいアップされており、甲子園球場はプールみたいになっとるわ、駅の地下道は水没しとるわでビックリ(゜o゜)  私の住んでいる奈良市にも初の避難勧告が出たが、こんな大雨の中一体どこへ避難せえっちゅーねん(>_<)  こーゆー時は家にこもってレコード三昧しながら台風が去るのをじっと待つに限る。外はかなり静かになってきたのでもう大丈夫そうだ(-。-)y-゜゜゜ とゆーことで今日も前回に続いて個人的趣味丸出しの中森明菜シングル盤特集パート2をお届けします。

①サザン・ウインド
 安全地帯の玉置浩二が作曲したこの曲を初めて聴いた時に “明菜にしては珍しい爽やか系ポップ・チューンやけどちょっと曲想が軽すぎるかな...” とテンションが少し下がりかけていたところ、間奏の後に(←2分57秒あたり)突如現れるあのメロディーに大爆笑! イエスの「ロンリー・ハート」そのまんまではないか(笑) バックの演奏がシンセを多用した80's邦楽サウンドの典型なのも自分的には大きなマイナス要素なのだが、リゾート気分を味あわせてくれる明菜の伸びやかな歌声と取って付けたようにその後に挿入される “イエス・フレーズ” を時々無性に聴きたくなってこの盤をターンテーブルに乗せてしまう。困ったものだ。
サザン・ウインド

Yes - Owner of a Lonely Heart


②十戒 (1984)
 「少女A」「1/2の神話」に続く “ツッパリ3部作” の最後を飾るのが高中正義作曲の歌謡ロック「十戒(1984)」だ。“カタつけてよ~♪”(絶体絶命) や “坊や~♪”(プレイバック part 2)といった山口百恵の登録商標フレーズがポンポン飛び出してくるだけでも両者のファンである私は感涙モノなのに、更にトドメとばかりにドスの効いた声で明菜のオリジナル・フレーズ “イライラするわぁぁぁ~♪” が炸裂、「少女A」と聴き比べてみれば彼女がわずか2年で卓越した表現力を身につけ、百恵と同じく歌の世界を自分のものにして演じきれる “アクトレスシンガー” へと進化したことがよくわかる。下の動画は89年 EAST LIVE時のものだが、ミニスカであることを忘れて “蹴り” を入れてしまい、思わず “やってもうたぁ...” 的な表情を見せ、ペロッと舌を出して頭をはたくところ(3分42秒あたりから)がめっちゃ好き。イナバウアーな振り付けも最高だ(^o^)丿
中森明菜 LIVE1989「少女A」「十戒(1984)」


③飾りじゃないのよ涙は
 この1週間ほど中森明菜のシングルを集中的に聴いていて思ったのだが、歌謡曲の世界で明菜と百恵ほど曲に恵まれた歌手は他にいないのではないか? いくら歌が上手くても曲がつまらなければハナシにならない。そういう意味では自分にピッタリの曲と出会うという “運” も実力のうちと言えるだろう。この「飾りじゃないのよ涙は」は井上陽水が明菜をイメージして書いた曲で、シュールな歌詞と疾走感溢れる曲想のコンビネーションに陽水の天才ぶりが如何なく発揮されている。一段と表現力に磨きのかかった明菜のヴォーカルは何度聴いてもゾクゾクするほど素晴らしい。彼女にとって “80年代を代表する歌姫” へのターニングポイントになった記念碑的作品だ。尚、下に貼り付けた動画は「夜ヒット」出演時のもので、陽水と安全地帯という凄いメンツをバックに堂々たる歌唱を聴かせる明菜の風格に圧倒される。数多い彼女のライヴ映像の中でも私がダントツに好きなのがロック魂迸るこの「夜ヒット」ヴァージョンなのだ。
飾りじゃないのよ涙は 井上陽水 中森明菜 玉置浩二


【おまけ】こーゆーの、大好き(^.^)
「飾りじゃないのよ乳首は」 <替え歌>
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中森明菜のシングル盤特集①

2014-08-06 | 昭和歌謡・シングル盤
 今日職場でめっちゃ面白いネタを教えてもらった。幻に終わったポール公演チケット騒動の際にお世話になったH姐さんから “shiotchさん、こーゆーの大好きやろ?” と1枚の紙切れを渡されたのだが、そこには「マンボウの死因一覧」と書かれてあった。“マンボウ? 何がそんなにオモロイねん?” と思いながら読んでみるとこれがもうめちゃくちゃ面白い。おバカなネタが好きな方はぜひ「マンボウの死因一覧」でググってみてください。腹筋が崩壊しますぜ(^o^)丿

 で、ココからはいつも通り音楽の話でいこう。山口百恵→アン・ルイスとくれば次はもう中森明菜しかない(でしょ?) しかし実を言うと私はリアルタイムでは彼女をちゃんと聴いてこなかった。山口百恵の引退と入れ替わるようにして雨後のタケノコのように登場してきた80年代アイドル達の歌のほとんどは私には薄っぺらく感じられてまともに聴く気にはなれなかったし、デジタル臭いバックの演奏も曲の軽薄さに輪をかけているようで、中森明菜がシーンに登場した頃には邦楽そのものをほとんど聴かなくなってしまっていたからだ。だから私は実に残念なことに彼女の黄金時代をほとんど知らない(泣)。
 そんな私が彼女の凄さに気付いたのはその約20年後のことで(←遅いっ!!!!!)、井上陽水自らがジャズ・アレンジで歌った「飾りじゃないのよ涙は」を聴いてその素晴らしさに圧倒され、アホみたいにこの曲ばかり聴いていた時期があった。こんなクールでカッコイイ曲は古今東西探してみてもそう簡単に見つかるものではない。
【高音質High-quality sound】飾りじゃないのよ涙は(JAZY)/井上揚水ver.「Tears'm not a decoration/yousui inoue


 すっかりこの曲にハマった私はどうせならオリジナル・ヴァージョンも聴いてみようと思い明菜のベスト盤をレンタル。そこには彼女が “単なるアイドル” から “80年代を代表する歌姫” へと進化していくプロセスが克明に刻まれており、その時初めて彼女の凄さを知った次第(←恥)。その後ヤフオクで彼女の主要シングルを15枚セットで600円(!)という超安値でゲットするという幸運にも恵まれ、今ではすっかり明菜フリークだ。ということで真夏の昭和歌謡祭り(?)のシメは昭和という時代が生んだ最後の歌姫、中森明菜の大特集だ。

①少女A
 私は大学に入ってほとんど洋楽しか聴かなくなっていたのだが、当時私の仲間内では「ぎゅわんぶらあ自己中心派」という麻雀漫画が流行っており、その中にこの曲の替え歌パロディーが登場、友人たちが腹を抱えて大笑いしているのを見て興味を持ち、カセットを借りて聴いて大爆笑したのがこの曲との出会いだった(←何じゃそりゃ!)。それが “おもわせぶ~りに面子を落とし 引っ掛けぐらいはこっちで作ってあ~げるぅ♪” というような感じで笑わせてくれる「雀士A」だ。作者の片山まさゆき氏は彼女のファンらしく、別の回では「1/2の神話」もパロディー・ネタとして使っており、おかげで邦楽と絶縁していた私もこの2曲だけは知っていたというワケだ。
 ということで当時はそのような不謹慎な聴き方(?)で楽しんでいたのだが、改めて今の耳で聴くと実に良い曲だ。私的には彼女の最高傑作は「飾りじゃないのよ涙は」だと思うが、少なくとも楽曲のインパクトという観点から見ればこの「少女A」こそが彼女の代表作だろう。彼女のイメージを決定づけたツッパリ路線の嚆矢となったこの曲は、突き刺さるようなイントロから一気呵成に突っ走るノリノリの歌謡ロックで、刹那的な詞の内容をを上手く表現した明菜のヴォーカル、切っ先鋭いナイフのようなフレーズを連発するギター、そのギターと激しくせめぎ合いながら緊張感を高めていくブラス・セクションなど、聴き所満載だ。唯一不満なのは極端なドンシャリ型サウンド(←低音もプアーなスカスカ・ミックスなので “ドン” のない “シャリシャリ型” と言うべきか...)のため高音がキンキン耳につくことで、とてもヴォリュームを上げて聴く気にはなれない。担当エンジニアの耳とセンスを疑いたくなるが、せっかくの名曲がもったいない限りだ(>_<)
少女A / 中森明菜


②1/2の神話
 初期の明菜は清純アイドル系スローバラッド路線の曲とツッパリ系イケイケ歌謡路線のシングルを交互にリリースしていた。前者の「スローモーション」や「セカンド・ラブ」、「トワイライト」も悪くはないが、極論すればこれらの曲が誰が歌ってもそれなりに聴ける名曲であるのに対し、後者のツッパリ系の曲の方は明菜にしか歌えない類の曲だと思うのだ。そういう意味でもこの「1/2の神話」は「少女A」の路線を更に推し進めながら彼女のオリジナリティーを上手く引き出しており、表現力が大幅にアップした明菜のヴォーカルと緩急を見事に活かした曲想の相乗効果で非の打ち所のないキラー・チューンに仕上がっている。70年代昭和歌謡の薫りを感じさせる器楽アレンジの妙も素晴らしく、一体誰やろ?と思ってクレジットを見ると、何と百恵の阿木&宇崎作品の編曲を手掛けた萩田光雄だった。やっぱりこの人のアレンジは絶品ですな(^.^)
中森明菜 '88 「1/2の神話」


③禁区
 この「禁区」という曲はイエローマジックオーケストラの細野晴臣が作曲した、いわゆるひとつの “テクノ歌謡” だ。私はシンセサイザーの軽薄な音が嫌いでテクノポップの無機質なピコピコ音を聴くと虫唾が走るのだが、この曲はそんなハンデ(?)を軽く一蹴して更に倍返しのおつりがくるぐらい素晴らしい。名曲目白押しの明菜ナンバーの中でも「飾りじゃないのよ涙は」と一二を争うスーパーウルトラ愛聴曲だ。サビの “戻り~たい 戻れ~ない 気持ちうらはぁらぁ~♪” のフレーズが強烈なフックとなって脳内リフレインを誘発、明菜の類稀なる表現力を極限まで引き出す流れるようなメロディー展開に唸ってしまう。そんな「禁区」の名曲度を更にアップさせているのが萩田光雄のツボを心得た絶品アレンジで、ストリングスの大量投下や絶妙なタイミングで飛来する女性バックコーラスなど、匠の技が随所で炸裂(≧▽≦)  まさに歌謡ポップスの王道を行く大名曲だ。
中森明菜「禁区」


④北ウイング
 この「北ウイング」は中森明菜には珍しい正統派歌謡曲だ。ジュディ・オングあたりが歌えばぴったりハマりそうな哀愁のメロディーを持った前サビでつかみはOK、しっとりとしたヴォーカルで聴き手を唸らせ、印象的な女性バックコーラスとくんずほぐれつしながらサビでは伝家の宝刀 “明菜ビブラート” でたたみかけるという、明菜のシンガーとしてのポテンシャルが存分に発揮された、“昭和最後の歌姫ここにあり!” と声を大にして言いたくなる圧倒的名唱であり、昭和歌謡のエッセンスを凝縮したようなドラマティックな展開に涙ちょちょぎれる。この曲のタイトルは元々「ミッドナイト・フライト」(←アースシェイカーかよ...)か「夜間飛行」(←これではちあきなおみになってしまう...)になる予定だったものを、ユーミンの「中央フリーウェイ」にインスパイアされた明菜の提案で「北ウイング」に変更したという有名なエピソードを聞いた時、 “単なる歌い手ではないアーティストとしての” 明菜の才能に感心したものだ。尚、この曲の続編である「ドラマティック・エアポート -北ウイング Part II-」(アルバム「POSSIBILITY」に収録)も実に良い曲なので未聴の方は要チェックだ。
中森明菜 北ウイング

ドラマティック・エアポート【 北ウイングPartⅡ 】
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80年代アン・ルイスの傑作シングル盤特集

2014-08-01 | 昭和歌謡・シングル盤
 暑くて暑くて脳みそが溶けそうな今日この頃、みなさんいかがお過ごしですか? 私は暑いのが超苦手なのでこの2週間ほどテンション下がりまくりでグッタリしている(;´Д`)ノ “暑い時は熱い食べ物を” というワケではないが、こんな時はノリの良い曲を大音量でガンガン聴いて元気を出すのが私流だ。ということで今日は暑苦しい歌謡ロック(笑)の極めつけ、アン・ルイスの傑作シングル4連発だ。

①ラ・セゾン
 アン・ルイスといえば「リンダ」や「チーク」の甘ったるいヴォーカルというイメージが強かったので、この産休明け復帰シングル「ラ・セゾン」を聴いた時はホンマにビックリした(゜o゜)  めちゃくちゃカッコイイ歌謡ロックではないか! 音楽活動再開にあたって何かインパクトのあるシングルを作ろうということで、アンの親友である三浦百恵さんに作詞を、当時ド派手路線まっしぐらだったジュリーに作曲を依頼(←アンは常日頃から “女ジュリーになりたい” と公言していた...)、ある意味これ以上は考えられない超豪華な組み合わせが実現したのだ。かなり後になって知ったが、歌詞に出てくるフランス語のフレーズ “ラ・セゾン・ダムール” とは “愛の季節”、つまり“発情期”という意味らしい。阿木さんに鍛えられただけあって百恵さんもキワドイ歌詞を書くなぁ... “ひと夜ひと世の波に呑まれ溺れる~♪” の語呂合わせフレーズも秀逸だ(^o^)丿 伊藤銀次によるストレートアヘッドなアレンジで水を得た魚のようにロックするアンのヴォーカルも素晴らしい。ジャケットに写るアンは髪を金色に染め、さながらJAPANのデビッド・シルビアンを想わせるニューロマンティックなイメージだ。尚、このシングルは初版のみハードカヴァー・ジャケットで、盤もアダプターの要らない非ドーナツ・タイプになっている。
La Saison - Ann Lewis


②六本木心中
 “歌謡曲とロックの融合” を旗印に「ラ・セゾン」から始まったアン姐さんの歌謡ロック路線の完成形といえる極めつけのナンバーがこの「六本木心中」だ。湯川れい子が作詞し、矢沢永吉のバックを務めたこともあるnobodyの二人が作曲したこの曲は、ゼップやクリームを聴いて育った彼女がアッパーなハードロック・サウンドに乗せて哀愁舞い散る昭和歌謡メロディーを歌うという、まさに80's版「涙の太陽」といえる逸品に仕上がっている。この曲はシングル・リリース後しばらくして更に派手なリミックスを施したヴァージョン(←イントロで姐さんの“ワン、トゥー、スリー、フォー!というカウントが入ってるヤツ...)のグラサン・ジャケット盤にに差し替えられているので、両者の違いを聴き比べて楽しむのも一興だろう。
 それとアホな話で恐縮だが、私はこれまで女性から “まつ毛が長いですねー” って言われたことが何度もあって、そのたびにこの曲の歌詞 “長いまつ毛がヒワイね、あなた~♪” というフレーズを思い出し、どう反応していいのか分からず困ったものだった。女性の目から見ると長いまつ毛ってやっぱりヒワイなんでしょーか???
 ここに貼り付けたのは86年にアンがTV出演した時のもので、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった中森明菜とのコラボが見れるという超お宝映像だ。気合い十分で伸びやかなヴォーカルを聴かせる明菜(←“だけど心なんてぇ♪” の語尾の跳ね上げ方なんかとてもアイドルとは思えないカッコ良さ...)圧倒的な声量で貫録を示すアン、予想に反して(←失礼!)ロックを見事に歌いこなす研ナオコと、まさに三者三様のパフォーマンスが楽しめて言うことナシ。バックバンドの演奏もノリノリやし、コレは何度見ても痺れますわ(≧▽≦)
中森明菜 「六本木心中」 アン・ルイス  1986)2


③あゝ無情
 湯川れい子&NOBODYのコンビで「六本木心中」の2匹目のドジョウを狙った「ピンクダイヤモンド」はヘヴィーすぎてシングル曲向きではなかったためヒットしなかったが、それに続く「あゝ無情」は「ラ・セゾン」や「六本木心中」の流れを汲むキャッチーなマイナー調メロディーとビート感溢れるダイナミックなギター・サウンドが見事に融合した歌謡ロックの傑作に仕上がっており、“やっぱりアン・ルイスはイケイケのアッパー・チューンに限るわ!” という感じ。手拍子のタイミングも絶妙で、カラオケなんかで盛り上がるにはピッタリの1曲だと思う。
アン・ルイス - あゝ無情-STUDIO LIVE 1986


④天使よ故郷を見よ
 「あゝ無情」の次のシングル「天使よ故郷を見よ」はヘビメタバンド、アースシェイカーのヴォーカル西田昌史が書いたキャッチーなナンバーで、銀座ジュエリーマキ(カメリアダイヤモンド)のCMソングとしてTVでガンガン流れていたこともあってサビのメロディーだけは知っているという人も少なくないだろう。名フレーズ “Don't let me be misunderstood~♪” の挿入の仕方も実に巧い。前の「あゝ無情」もそうだったがこの頃のシングル盤のジャケットには堂々とバーコードが印刷されており、全体のデザインを台無しにしているのがすごく嫌だ。
アン・ルイス 天使よ故郷を見よ


【おまけ】アン・ルイスの動画を探していて「イミテイション・ゴールド」のオリジvsカヴァー聴き比べを発見! 改めてその偉大さを痛感させられる百恵ヴァージョン、ゴリゴリにロックするカッコ良さ満点のアンルイス・ヴァージョン、意表を突くアレンジで聴かせるスインギーな宇崎竜童ヴァージョンの中で、公開処刑にも等しい恥辱に耐えている倉木麻衣ヴァージョンが私は不憫でなりません...
イミテーションゴールド
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