shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

美しき人生 / ジョージ・ハリスン

2011-11-29 | George・Ringo
 月日の経つのは早いもので、ジョージが亡くなって今日でちょうど10年になる。厳密には日本時間で11月30日の早朝だったのだが、その2年前に暴漢に襲われて重傷を負いながらも「オール・シングス・マスト・パス」のリマスターを完成させ、さぁこれからという矢先だっただけに、58才という余りにも早すぎる元ビートルの死、しかもコバルト放射線治療で脳腫瘍と闘うという壮絶な闘病生活の末の死ということもあって、ジョンの時とは又違った意味で大きなショックを受けたのを覚えている。
 そんなジョージの10周忌に合わせるかのように、彼の生涯を綴ったドキュメンタリー映画「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」が制作された。監督はマーティン・スコセッシ、3時間30分という大作だ。私は映画には疎いので、この人に関してはマイケル・ジャクソンの「バッド」のビデオを制作したということぐらいしか知らなかったが、色々調べてみるとザ・バンドの「ラスト・ワルツ」やストーンズの「シャイン・ア・ライト」なんかも手掛けた中々の音楽通らしい。オリビア・ハリスンを始めポールやリンゴも絶賛したというこの映画、日本では2週間限定で劇場公開中なのだが、来月23日に DVD が発売されるということもあり、アマゾンで予約を済ませた私はクリスマスのお楽しみに取っておくことにした。 “以下の商品は12/25以降のお届けになる場合があります” という但し書きがちょっと気になるけど、とにかく今からクリスマスが待ちきれない。
 同映画の公式サイトで予告編を見ていて一つ気付いたのは “人生” という言葉が頻繁に出てくるということ。どうやらよくある “ロック・スターの伝記” 的な作品ではなく、物質的な豊かさよりも精神的な充足感を追い求めたジョージ・ハリスンという一人の人間の生き様を描いた映画のようだ。そこで頭に浮かんだのが “美しき人生” という言葉... 「オール・シングス・マスト・パス」からの第2弾シングルとしてヒットした「What Is Life」(←イギリスでは「マイ・スウィート・ロード」のB面だったが...)の邦題である。
 リビー姫のカヴァーでも有名なこの曲、「マイ・スウィート・ロード」の陰に隠れがちだが私的にはジョージのソロ作品中でも三指に入るくらいの超愛聴曲。どちらかというと哀しげな曲調のものが多い70年代前半の彼の作品の中で、この曲は異色と言えるぐらいポジティヴなエネルギーに満ち溢れたノリの良いストレートな作品に仕上がっている。何と言ってもスペクター・マジックによってパワーアップされたジョージの溌剌とした歌声が圧巻だし、イントロでジョージの弾くファズ・ギターに印象的なリフが寄り添うように重なっていき、やがて一気に爆発するような感じで炸裂する “ウォール・オブ・サウンド” の快感は筆舌に尽くし難い。タンバリンの入り方なんかも絶妙だ。いやぁ~スペクター先生、ホンマにエエ仕事してはりますなぁ...(^.^)
 この曲の歌詞は非常にシンプルで高校生程度の英語力があれば簡単に理解できるものだが、シンプル・イズ・ベストとはよくぞ言ったもので、ストレートに心に訴えかけてくるフレーズが心に響く。特に “君の愛が無い人生に何の意味があるのだろう? 君が傍にいないなら僕の存在理由は一体何なんだろう?” というサビのラインで顕著なように、男女間の恋愛感情にとどまらず、広く普遍的な愛、つまり家族・友人など自分にとって大切な人への愛情・思いやりの大切さについて歌われており、明るい曲調とも相まって、聴いてて心がホンワカ暖かくなってくるのだ。ポップ・ソングはやはりこうでなくてはいけない。
 今夜はこの曲の入った「オール・シングス・マスト・パス」のリマスター CD を大音響で聴きながらジョージに思いを馳せるとしよう。

『ジョージ・ハリスンLiving in the Material World』予告

What Is Life - George Harrison - (@alvar0rtega)
コメント (2)

ゴフィン&キング特集5 【本人歌唱編】

2011-11-26 | Oldies (50's & 60's)
 2週間にわたって続けてきたゴフィン&キング特集もいよいよ最終回。そもそも当初のミッションは “ゴフィン&キングの曲がたくさん聴ける盤を探せ!” だったが、残念ながらコンポーザー別に編集されたコンピ盤を私は1枚も持っていなかった。そこでアマゾンでそういう盤がないか調べてみると、現在出回っている盤はどれも選曲がイマイチなものばかりだったので、自分でテーマを決めて愛聴曲を紹介するという切り口でいくことにした。
 その後の調べで私の嗜好にかなり近い選曲がなされた「ジェリー・ゴフィン&キャロル・キング・ソングブック」という2枚組 CD を発見、今回の特集で取り上げた曲がほぼ網羅されているお徳用盤で、マイナーなニュージーランド盤ということもあってか日本アマゾンのリストには載っていないが、イーベイで NZ のセラーから買うことができた。
 とまぁこのようにゴフィン&キング関連の盤を色々と調べて楽しんできたのだが、そんな中で予想外の収穫といえる1枚がこの「ブリル・ビルディング・レジェンズ」だった。この CD はブリル・トーン・レコードという謎のレーベルが出しているコンポーザー・レア音源シリーズの1枚で(←他にバリー・マンやエリー・グリニッチなんかも出ている)、キャロルが1958~66年までの職業作家時代に他の歌手に提供した楽曲を自ら歌ったデモ音源を中心に全57曲(←ジェリー・ゴフィンやティナ・ロビン、ハニービーズらの歌もアリ)を収録したもの。うち31曲が未発表音源で、ゴフィ・キンの名曲の数々をキャロル本人の歌声で聴けるというのだからコレはエライコッチャである。厳密に言えばセルフ・カヴァーというのとはちょっと違うが、中島みゆきの「おかえりなさい」や竹内まりやの「リクエスト」のアメリカ版みたいなノリで、オリジナル・シンガーによる定番ヴァージョンとの聴き比べという楽しみも与えてくれる逸品だ。ということで最終回の今日はスペシャル企画、キャロル・キングの【本人歌唱編】です。

①Oh Neil [H.Greenfield-N.Sedaka-G.Goffin]
 キャロル・キングにとって4枚目のシングルにあたるこの「オー・ニール」(1959)は読んで字の如く、ニール・セダカの大ヒット「オー・キャロル」へのアンサー・ソングとして原曲のメロディーはそのままに、夫のジェリー・ゴフィンが歌詞を面白おかしく書き換えたもので、 “テネシーの田舎娘でニールの元カノ” という設定のキャロルが “ニール・セダァキィ!” と南部訛り丸出しで歌ったりとか、 “セダキ野郎のレコードなんか聴くんじゃねぇ!” とお爺ちゃんがエンディングでショットガンをブッ放したりとか、随所に洒落っ気たっぷりの仕掛けがしてあって笑ってしまう。完全に替え歌感覚で遊んでますね、この夫婦...(笑)
Carole King - OH NEIL!


②He Takes Good Care Of Your Baby [C.King-G.Goffin]
 「オー・ニール」は私の知る限り最も有名なアンサー・ソングだが、この「ヒー・テイクス・グッド・ケア・オブ・ユア・ベイビー」の存在はこの盤で初めて知った。この曲は彼女がボビー・ヴィーに提供した「テイク・グッド・ケア・オブ・マイ・ベイビー」へのアンサー・ソングとしてジェリー・ゴフィンが詞を書き換えたものをドラ・ディー&ローラ・リーがリバティ・レコードからリリースしたもので、ココに入っているのはキャロルによるデモ・テイク。 “彼女を大切にしてやってくれよ” という元歌に対し、 “彼、私のことをとっても大事にしてくれるわ... でも私はやっぱりあなたがいいの” という女の子目線の歌詞が面白い。要するに自作曲の続編というかセルフ・パロディー感覚で遊んでいるのだが、この粋なセンスこそがジェリー・ゴフィンの真骨頂なのではないかと思う。
CAROLE KING - He Takes Good Care Of Your Baby - PHILCOLD.wmv


③It Might As Well Rain Until September [C.King-G.Goffin]
 キャロル・キング5枚目のシングル「イット・マイト・アズ・ウェル・レイン・アンティル・セプテンバー」は元々ボビー・ヴィーのために書かれたものだったが、彼のプロデューサーが前作「テイク・グッド・ケア・オブ・マイ・ベイビー」と曲調が似ている(←確かに!)とボツにしたキャロルのデモ・テイクをアルドン・ミュージックのドン・カーシュナーが気に入ってシングルとして発売したところ、彼女にとって60年代で唯一のヒット曲(全米22位)になったという。 “今はあなたと離れ離れで会えないから べつに9月までずっと雨でも構わないわ” という乙女心を見事に表現した歌詞が印象的なこの曲、スローな出だしから一転アップテンポになるところなんか技アリだし、キャロルのぶっきらぼうな歌い方も良い味を出している。ヘレン・シャピロによるカヴァーもオススメだ。
Carole King - It Might As Well Rain Until September

Helen Shapiro - It Might As Well Rain Until September (1966)


④Look Who's Talkin' [C.King-G.Goffin]
 マニアックなガールズ・ポップ・ファンには「ダム・ヘッド」や「アイ・ウィッシュ・アイ・ニュー・ホワット・ドレス・トゥ・ウェア」でおなじみのジニー・アーネルが1960年にデッカからリリースした「ルック・フーズ・トーキン」もゴフィン&キングの隠れ名曲で、ビートルズ前夜の60's白人ポップスの典型と言ってもいいようなキャッチーなナンバーだ。ティーン・ポップスの王道を行くジニーちゃんの弾けるような歌声もいいが、ティーンエイジャーになりきったようなキャロルの無邪気なヴォーカルも捨て難い。オールディーズ・ファンにとってこの CD は宝の山だ(^o^)丿
Look Who's Talkin'

Ginny Arnell


⑤Breaking Up Is Hard To Do [N.Sedaka-H.Greenfield]
 これはゴフィ・キン作品じゃないけれど、大好きな曲なので気にせず紹介。初めて聴いたのはカーペンターズのヴァージョンで、出だしからいきなり “カマカマ ダンドゥビ ドゥダンダン~♪” という意味不明なフレーズの波状攻撃に “何じゃいこの曲は???” と思ったものだが、コレがいつの間にか脳内リフレインを起こして病み付きになってしまうという麻薬的な魅力を秘めており、気が付けば鼻歌気分で “カマカマ~♪” と口ずさんでいた。もちろんニール・セダカのオリジナル・ヴァージョンも大好きだが、まさかこの愛聴曲をキャロルの歌声で聴けるとは思わなんだ(≧▽≦)  彼女のヴォーカルって決して上手くはないんだけれど聴き手の心を魅きつけてやまない何かがあり、何度も何度も繰り返し聴きたくなってしまう。いわゆるひとつのヘタウマ・ヴォーカルというやつだが、いやはやまったくこれだから音楽は面白い(^.^)
Carole King - Breaking Up Is Hard To Do
コメント (4)

ゴフィン&キング特集4 【番外編】

2011-11-23 | Oldies (50's & 60's)
 山本リンダじゃないが、もうどうにも止まらないゴフィン&キング特集。第4弾は男性/女性/ソロ/グループを問わず何でもアリの【番外編】でいってみます。

①Some Of Your Lovin' / Dusty Springfield
 私はダスティ・スプリングフィールドのかなりのファンで、フィリップスのオリジナル盤を何枚も買うほどその歌声に惚れ込んでいる。初心者の頃はBCRの「二人だけのデート」のオリジナル・シンガーという認識しかなかったが、やがて「風のささやき」や「サニー」を聴くに至って聴き手の心を揺さぶるようなその歌声に完全KOされ、「クロース・トゥ・ユー」や「ジス・ガイ」といった一連のバカラック作品で更なる深みへとハマッていったのだ。そんなダスティがバカラックと並んで数多く取り上げているのがゴフィン&キングのナンバーで、中でもこの「サム・オブ・ユア・ラヴィン」では彼女の持ち味である “ソウルフルでありながら気負いのないナチュラルな感情表現” を心ゆくまで堪能できる。歌詞の一語一語に魂を込めて歌うダスティ... 心に沁み入る歌唱とはまさにこのことだ。
Dusty Springfield - Some Of Your Lovin' [HD video]


②Go Away Little Girl / Steve Lawrence
 日本でスティーヴ・ローレンスと言えば、竹内まりや姐さんが「ロングタイム・フェイヴァリッツ」でカヴァーした「フットステップス」(邦題は「悲しき足音」)が有名だが、彼の最大のヒット曲はゴフィン&キングにとってシュレルズ、ボビー・ヴィー、リトル・エヴァに続く通算4曲目の、そしてスティーヴ自身にとって唯一の全米№1に輝いたこの「ゴー・アウェイ・リトル・ガール」(1963)だ。この曲は1971年にもダニー・オズモンドによるカヴァーで全米№1になっているが、私的には渋~い男の魅力溢れるスティーヴのオリジナル・ヴァージョンが一番好きだ。派手さはないけれど、何度も聴いているうちに病み付きになるという、ゴフィン&キング作品中屈指のスルメ・チューンだ。
Steve Lawrence - "Go Away Little Girl" (1962)


③Wasn't Born To Follow / Byrds
 バーズというとすぐにフォーク・ロックがスベッただの、サイケデリック・ロックがコロンだだの云々されるが、私的にはあのジョージ・ハリスン直系のリッケンバッカー12弦ギターと独特の浮遊感を誇るコーラスさえ聴ければ大満足。1968年のアルバム「ザ・ノトリアス・バード・ブラザーズ」に入っていたゴフィン&キング作のこの「ワズント・ボーン・トゥ・フォロー」は後に映画「イージー・ライダー」の挿入歌として使われたことでも有名な曲で、カントリー・フレイバーのかかった S&G (?)にモンキーズのポップさを注入し、ピリリと辛いサイケなアレンジでスパイスを効かせてみました、といった感じの面白いナンバーに仕上がっている。それにしてもゴフィン&キングってホンマに色んなスタイルの曲を書きますね。
The Byrds- I Wasn't Born To Follow


④This Little Girl / Dion
 ディオンは1958年にデビューして以降、ベルモンツを従えた「ティーンエイジャー・イン・ラヴ」や「ホェア・オア・ホェン」、デル・サテンズを従えた「ラナラウンド・スー」(全米№1!)や「ワンダラー」とヒット曲を量産していたが、1962年末にそれまで5年間在籍していたローリー・レコードを離れ CBSコロムビアへと移籍、全米2位まで上がった移籍第1弾「ルビー・ベイビー」に続くシングルがゴフィン&キングの「ジス・リトル・ガール」で、バックはデル・サテンズが務めている。ローリー時代のホワイト・ドゥー・ワップ路線を引き継いだようなこの曲ではドゥー・ワップ・ソングの聖典とでも言うべきデル・ヴァイキングスの「カム・ゴー・ウィズ・ミー」を彷彿とさせるような洗練されたコーラスが楽しめて言うことナシ。レコード会社は変わっても “ディオンに駄作なし” なのだ。
This Little Girl - Dion


⑤悪口はやめて / 木の実ナナ
 日本人によるゴフィン&キング・カヴァーの第一人者は「ロコモーション」「オールド・スモーキー・ロコモーション」「ターキー・ダンス」「アイ・キャント・ステイ・マッド・アット・ユー」と4曲も取り上げた伊東ゆかりだろうが、それでは当たり前すぎて面白くないので、珍盤好き(笑)の当ブログとしてはかなりの変化球であるのを承知の上で、若き日の木の実ナナがカヴァーしたクッキーズの「ドント・セイ・ナッシング・バッド・アバウト・マイ・ベイビー」(邦題:「悪口はやめて」)にしよう。彼女に関しては長い間 “女優” のイメージしかなかったので、数年前にジャンニ・モランディの「サンライト・ツイスト」繋がりで彼女の1963年のヒット曲「太陽の下の18才」を聴いた時はビックリ。中々エエやん(^.^) その2ヶ月後に出たシングル「サタデイ・ナイト」のB面に入っていたこの曲でもコーラスのジャニーズとのホノボノした掛け合いの端々に “キカンボ娘” な歌唱が炸裂して聴き手の頬を緩ませる。彼女の場合、ザ・ピーナッツやミコたんカヨたんのような優秀なブレーンに恵まれなかったせいかアレンジも作り込みも中途半端なカヴァー曲が多い中で、この曲はよく出来ている部類に入ると思う。まぁオリジナルのクッキーズには遠く及ばないにしても...(>_<)  尚、バックの演奏は寺内タケシとブルージーンズだ。
悪口はやめて

The Cookies - Don't Say Nothing Bad About My Baby

ゴフィン&キング特集3 【ビート・グループ編】

2011-11-19 | Oldies (50's & 60's)
 まだまだ続くゴフィン&キング特集、第3弾は怒涛の【ビート・グループ編】です。

①Keep Your Hands Off My Baby / Beatles
 この「キープ・ユア・ハンズ・オフ・マイ・ベイビー」はリトル・エヴァの「ロコモーション」に続く2ndシングルで、ヘレン・シャピロやスキーター・デイヴィスなんかもカヴァーしているが、この曲の決定的名演は何と言ってもビートルズの BBC ライヴに尽きるだろう。まるで鼻歌でも歌うかのように気持ちよさそうに歌うジョンのヴォーカルは “一人 GS ” ならぬ “一人ガール・グループス(?)” といった按配で、原曲の魅力を最大限に引き出して聴かせるあたり、さすがは天才ヴォーカリスト、ジョン・レノンである。彼の歌声の前にはリトル・エヴァを始めとする有象無象の同曲他ヴァージョンが瞬時にして砕け散る。しゃあない。何しろ相手はジョン・レノンなのだ。砕け散ってこそ本望と言うべきだろう。バックのコーラス・ワークにもガール・グループ・クラシックスを聴き込んだ者にしかできないワザが散りばめられており、彼らのゴフィン&キングへの傾倒ぶりがよくわかる名演になっている。
The Beatles "Keep Your Hands Off My Baby"

Little Eva - Keep Your Hands Off My Baby


②Don't Ever Change / Beatles
 そもそも今回のゴフィン&キング特集の引き金になったのがみながわさんにとっての“特別な曲”であるこの「ドント・エヴァー・チェンジ」だ。オリジナルはバディー・ホリーのバックを務めていたクリケッツの1962年のヒット曲で、小気味よいシャッフル・ビートを活かした演奏は、彼らの持ち味である “ロックンロールと C&W の融合” の完成形と言えるもの。ビートルズの BBC ライヴではジョージとポールのツイン・リード・ヴォーカルが実にエエ味を出しており、そのまま「ウィズ・ザ・ビートルズ」か「ビートルズ・フォー・セール」のB面真ん中あたり(?)にピッタリ収まりそうなくらいビートリィな雰囲気を湛えている。ゴフィン&キングのポップ・センスがどれほど初期ビートルズに影響を与えたか分かろうというものだ。純真な男心を綴った “どうか変わらずにいて 今のままの君が好きなんだ” という歌詞(← I kinda like you just the way you are というフレーズまで登場!)はビリー・ジョエルの「素顔のままで」を15年先取りしている。
The Beatles "Don't Ever Change"

The Crickets.......Don't Ever Change


③Take Good Care Of My Baby / Silver Beatles
 今日はビートルズ3連発だ。この「テイク・グッド・ケア・オブ・マイ・ベイビー」(邦題は「サヨナラ・ベイビー」)はボビー・ヴィーの1961年の全米№1ヒットで、ディオン&ザ・ベルモンツによるカヴァーなんかも捨てがたいのだが、一番好きなのはやっぱりビートルズのヴァージョンだ。これはシルヴァー・ビートルズ時代に1962年1月のデッカ・オーディションで演奏したもので、リード・ヴォーカルはジョージ。 “僕の涙が落ちている。なぜって君が僕の彼女を奪ってしまったから...” というイントロの語りに続いて “大切にしてやってくれよ...” と男としての度量の広さを感じさせる歌詞をジョージが歌うというのは、その後のパティ、クラプトンとの関係を暗示しているかのようで運命の皮肉を感じさせるが(←考えすぎか...)、それはともかくとして、同オーディションで演奏された「スリー・クール・キャッツ」や「クライング・ウエイティング・ホーピング」etcと同様に原曲の持つ甘酸っぱい雰囲気がジョージにピッタリで、ピート・ベストのスカスカなドラムのマイナス分を差し引いても聴き応え十分なカヴァーになっている。この良さが理解できずにビートルズを不合格にしたデッカのオーデション担当者は後になって大魚を逃がした責任を取らされたということだが、やっぱりクビでっか?
Take Good Care Of My Baby - The Silver Beatles

Bobby Vee - Take Good Care Of My Baby


④I'm Into Something Good / Herman's Hermits
 この「アイム・イントゥ・サムシン・グッド」(邦題は「朝からゴキゲン」)は元々クッキーズのリード・ヴォーカリストからソロに転向したアール・ジーンの為にゴフィン&キング夫妻が書いたものだが、有名なのはハーマンズ・ハーミッツがデビュー・シングルとしてカヴァーしたこのヴァージョンだ。私見だが、ハーミッツは「ミセス・ブラウンのお嬢さん」や「ヘンリー8世君」のようなミュージック・ホール・ソングよりも、「見つめあう恋」やこの「朝ゴキ」のようなバブルガム・ポップ・ナンバーの方が断然合ってると思う。彼らの 2nd シングル「ショウ・ミー・ガール」もゴフィン&キングの作品で、この曲の三軒隣りに住んでいるようなキャッチーなナンバーなのだが、このあたりの選曲はプロデューサーであるミッキー・モストの好みらしい。全然関係ないけれど、ヴォーカルのピーター・ヌーンの笑顔ってどことなくセバスチャン・ベッテルに似てるような気がするのは私だけ?
Herman's Hermits - I'm Into Something Good (1965)_HQ

The Cookies/Earl Jean I'm Into Something Good (ORIGINAL SONG)


⑤Star Collector / Monkees
 ビートルズの登場によってゴフィン&キングやバリー&グリニッチのような職業作家チームによる “ヒット曲製造工場” システムは崩壊し、ブリル・ビルディング時代はあっけなく終焉を迎えたのだが、ブリビルでキャロル・キングが所属していた音楽出版社スクリーン・ジェムズ(元のアルドン・ミュージックです)のボスであるドン・カーシュナーがビートルズへの対抗馬として売り出したのがこのモンキーズ。当然ゴフィン&キングも「テイク・ア・ジャイアント・ステップ」や「プレザント・ヴァリー・サンデー」etc 何曲か提供しているのだが、案外知られていない隠れ名曲がこの「スター・コレクター」だ。この曲は日本のみでシングル・カットされてヒットしたが、シンセを駆使したポップなサウンドといい、ビートルズ直系のコーラス・ワークといい、私のお気に入りの1曲だ。3分20秒を過ぎたあたりから始まるプログレっぽいカオスなサウンドも面白い。尚、この曲のイントロは湯川れい子のアメリカン・トップ40の中でジングルとして使われてたような記憶があるのだが、そういう意味でも個人的に忘れられないナンバーだ。
Monkees- Star Collector
コメント (4)

ゴフィン&キング特集2 【ガール・グループ編】

2011-11-16 | Wall Of Sound
 ゴフィン&キング特集のパート2は【ガール・グループ編】です(^.^)

①Will You Love Me Tomorrow / Shirelles
 私とシュレルズとの出会いはビートルズがきっかけだった。デビュー・アルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」で彼女たちのヒット曲「ベイビー・イッツ・ユー」と「ボーイズ」をビートルズがカヴァーしていたのだ。それから何年か経ち、オールディーズのガール・グループにハマッて色々と聴き漁っていくうちに再会したのがこの「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ」。その甘いメロディーと “明日もまだ愛してくれるのかしら?” と問いかける切ない乙女心を見事に表現した歌詞はまさにドリーミィなポップスの王道と言えるもので、ガール・グループとしては初の全米№1に輝いたというのも十分頷ける名曲だ。キャロル・キングが1971年のアルバム「タペストリー」でセルフ・カヴァーしたヴァージョン(←曲名表記に still が加わります)の素朴な味わいも捨て難い。
The Shirelles - Will You Love Me Tomorrow (Live, 1964)

carole king will you still love me tomorrow lyrics


②One Fine Day / Chiffons
 私とシフォンズとの出会いもやはりビートルズ絡みだった。例の「マイ・スウィート・ロード」の盗作問題から元ネタとされる彼女たちのヒット曲「ヒーズ・ソー・ファイン」に興味を持ち、FM番組の特集をエアチェックしたのがそもそもの始まりで、「ヒーズ・ソー・ファイン」の他にも「スウィート・トーキング・ガイ」やこの「ワン・ファイン・デイ」など、“ガール・グループ・ポップスかくあるべし!!!” と叫びたくなるようなウキウキワクワク感溢れるキラー・チューンのアメアラレ攻撃に完全 KO されたのだ。そんな名曲名演揃いの中でも一番好きなのがこの「ワン・ファイン・デイ」で、思わず口ずさみたくなるようなキャッチーなメロディー、爽快な気分にさせてくれるコーラス・ハーモニー、躍動感あふれるピアノ(←キャロル・キングがデモ録音用に弾いたものをそのまま流用したらしい...)、弾むようなハンド・クラッピングと、すべてが完璧にキマッている。ブリッジのサックスとコーラスの絡みなんかもう鳥肌モノだ。私的にはゴフィン&キングの全作品中ベスト・オブ・ベスト、これ以上の名曲名演があったら教えを乞いたい。
The Chiffons - One Fine Day - 1963

Carole King / One Fine Day


③Chains / Cookies
 私とクッキーズとの出会いは当然ビートルズがカヴァーした「チェインズ」である(笑) デビュー当時に “イギリスのゴフィン&キングになりたい” と語っていたジョンとポール(←“レノン=マッカートニー” という表記もそこからきているらしい...)がアルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」で彼らの作品を取り上げたのは当然といえば当然だが、それにしても先のシュレルズやマーベレッツ、そして超マイナーなドネイズに至るまで、ビートルズのガール・グループ好きはハンパない。このクッキーズはスタジオ・コーラス隊からの叩き上げ(?)で、リトル・エヴァの「ロコモーション」やニール・セダカの「悲しき慕情」、イーディ・ゴーメの「恋はボサノバ」のバックコーラスを担当したのも彼女たち... まさにゴフィン&キング夫妻の秘蔵っ子といえるガール・グループだ。ただ、コーラスは上手いのだが、グループとしての強烈な個性というか、決定的な吸引力に欠けているように感じられるところがあり、そのあたりがグループとしてブレイクしきれなかった原因かもしれない。
The Cookies - Chains - 1962 - Original Version - Later Done by The Beatles


④Ronettes / Is This What I Get For Loving You
 1965年にリリースされたロネッツ末期のシングルがこの「イズ・ジス・ホワット・アイ・ゲット・フォー・ラヴィング・ユー」で、前年までのロネッツらしさは影を潜め、この時期フィル・スペクターが執心していたライチャス・ブラザーズっぽいサウンドになっている。私的にはヴェロニカの “ウォッ オッ オッ オー” という掛け声がないとロネッツを聴いた気がしないので少々不満の残る出来なのだが、一説によるとロニーがこれ以上成功すると自分が捨てられるのではないかと恐れたスペクターがロネッツに力を注がなくなったということらしい。そういう意味では重厚なロネッツよりも、シンプルなアレンジで曲の魅力を上手く引き出したマリアンヌ・フェイスフルのラヴリーなヴァージョンの方が堅気のポップス・ファンには聴きやすいかも。
The Ronettes - Is This What I Get For Loving You

Marianne Faithfull - IS THIS WHAT I GET FOR LOVING YOU


⑤Crystals / He Hit Me (And It Felt Like A Kiss)
 クリスタルズが1962年にリリースした 3rd シングル「ヒー・ヒット・ミー」は、心ウキウキするような素敵なポップスを生み出すゴフィン&キングの作品とは思えないような暗い内容の曲で、夫妻のベビーシッターだったリトル・エヴァの実体験を元に書かれたもの。 “彼は私を殴ったわ。でも嬉しかったの...” というまるでデート DV そのもののマゾヒスティックな歌詞に抗議が殺到し、すぐに市場から回収されたという曰く付きのナンバーだ。この曲の登場人物に共感するというフィル・スペクター(←怖っ!)のアレンジも歌詞と同様にラジカルで、過剰なエコーのかかったドラムとベルのサウンドはまるで女を殴る拳のようだし、突き刺さるようなストリングスにも、ロニーを虐待し続けた狂気の人、フィル・スペクターの心のダーク・サイドを垣間見る思いがする。
The Crystals - He Hit Me (And It Felt Like A Kiss)
コメント (4)

ゴフィン&キング特集1 【女性ヴォーカル編】

2011-11-13 | Oldies (50's & 60's)
 先日、みながわさんから “ゴフィン&キングの曲がたくさん聴ける盤を紹介してほしい” とのリクエストをいただいた。基本的に私はこれまでずっとアーティストを軸に音楽を聴いてきたが、中村八大や筒美京平といった作曲家に注目することによって昭和歌謡の楽しみ方が広がったように、オールディーズに関してもコンポーザーを視点の中心に据えてみるのも面白そうだ。ということで、唐突ですがゴフィン&キングの特集です。第1回は王道中の王道、【女性ヴォーカル編】から...(^o^)丿

①The Loco-Motion / Little Eva
 “ゴフィン&キング” という名前は知らなくても「ロコモーション」は知ってるぞ、という音楽ファンは多いだろう。この曲こそまさに “ジェリー・ゴフィン&キャロル・キング” の代表作であると同時に、ブリビル・サウンドのもう一方の雄である “ジェフ・バリー&エリー・グリニッチ” の作品「ビー・マイ・ベイビー」と並ぶガールポップ・クラシックスの最高傑作。元々は「マッシュド・ポテト・タイム」をヒットさせたディー・ディー・シャープ用に作られた新曲で、結局は不採用になったのだが、ゴフィン&キング夫妻のベビーシッターだったリトル・エヴァに歌わせたデモ・テープをアルドン・ミュージック出版のドン・カーシュナーが気に入って、自分が作ったディメンション・レーベルからリリースしたところ、爆発的にヒットして全米№1になったというエピソードは有名だ。グランド・ファンク・レイルロードやシルヴィ・バルタン、伊東ゆかり、カイリー・ミノーグといった様々なジャンルのアーティストにカヴァーされている不朽の名曲である。
Little Eva The Locomotion


②Up On The Roof / Julie Grant
 ジュリー・グラントは “イギリスのバカラック” の異名を取る天才プロデューサー、トニー・ハッチ(←ペトゥラ・クラークの「ダウンタウン」の作者としても有名ですね...)が売り出した女性シンガーで、1963年に全米5位まで上がったドリフターズのヒット曲(←邦題を「屋根の上」(笑)ではなく「小さな幸せ」としたセンスはお見事!)を彼女がカヴァーしたのがコレ。この人のことは全く知らなかったので、今回の “ゴフィン&キング” 特集で一番の収穫といえる1曲だ。こういう隠れ名演との出会いこそが音楽ファンにとっての小さな幸せであり、きっかけを作って下さったみながわさんに感謝感謝である。筒美京平先生にも影響を与えたと思しきトニー・ハッチお得意の軽快なストリングス・アレンジが絶品やし、 “この世界にウンザリした時は屋根の上に登ると悩み事なんて宇宙の何処かへ消えてしまう... ここはとっても平和で下界の煩わしさを忘れさせてくれる素敵な場所... 二人分のスペースは十分あるわ” という歌詞なんかもう最高デス(^.^)
Julie Grant - Up On The Roof


③I Can't Stay Mad At You / Skeeter Davis
 「エンド・オブ・ザ・ワールド」一発でオールディーズ・ファンを虜にしたカントリー・ポップ・シンガー、スキーター・デイヴィス。あの曲のイメージが強すぎたのか、はじめてこの曲を聴いた時はビックリした。ニール・セダカの「ブレイキング・アップ・イズ・ハード・トゥ・ドゥ」、あるいはそのセルフ・イミテーション「ネクスト・ドア・トゥ・アン・エンジェル」にそっくりではないか! イントロに続いて “Don't take your love away from me~♪” とセダカの甲高い歌声が流れてきてもほとんど違和感の無いレベル(笑)  筋金入りのセダカ・マニアを自負し、「オー・キャロル」へのアンサー・ソング「オー・ニール」まで作ってしまったというキャロル・キングらしい1曲だが、私はこの曲が大好き(^.^) 彼女のニール・セダカに対する深い愛情とリスペクトに溢れたオマージュとして愛聴している。
Skeeter Davis - I Can't Stay Mad at You


④Dreamin' About You / Annette
 「パイナップル・プリンセス」や「トレイン・オブ・ラブ」でチャーミングな歌を聞かせるオールディーズ・ポップス界のアイドル、アネットが1961年にリリースしたシングルがこの「ドリーミン・アバウト・ユー」。オリジナル・アルバムには未収録の貴重な音源で、私の知る限りでは彼女が歌う唯一の “ゴフィン&キング” 作品だが、タイトル通り、彼女の持ち味を十分に活かした夢見るようなガールポップに仕上がっている。やっぱりオールディーズはエエなぁ...(^.^)
ANNETTE DREAMIN' ABOUT YOU


⑤The Old Crowd / Lesley Gore
 クインシー・ジョーンズのプロデュースによるデビュー曲「イッツ・マイ・パーティー」がいきなり全米№1に輝き、続く「ジュディーズ・ターン・トゥ・クライ」も全米5位まで上がったレスリー・ゴーアの3rd シングル「シーズ・ア・フール」(邦題は「ラッキー・ガール」)のB面にヒッソリと収められていたのがこの「ジ・オールド・クラウド」。ノリノリのバック・コーラスと弾けるようなハンド・クラッピングがウキウキワクワク感をかき立てる、まさに絵に描いたようなガール・ポップスだ。コレほどの名演がB面というのはもったいない気もするが、60's前半というのはそれだけ楽曲面で充実した凄い時代だったのだろう。
Lesley Gore - The Old Crowd w/ LYRICS
コメント (2)

月影のキューバ / 森山加代子

2011-11-10 | 昭和歌謡・シングル盤
 今日も大好きなカヨちゃんでいこう。曲は「月影のキューバ」。実はこの曲、私は長い間「月影のナポリ」とごっちゃになっていて、どっちがどっちか中々覚えられなかった。「月影の」+「地名」という組み合わせがモロにかぶってしまうし、原題が英語じゃないので luna 以外は何のこっちゃサッパリ分からない。ビートルズで育った私は曲の名前は英語で覚えるクセがついているので、フレンチやイタリアン・ポップスは曲名の区別がつかず、邦題に頼るしかないのだ。
 しかもカヨちゃんは「キューバ」と「ナポリ」の両方ともシングルとして出しており、紛らわしいことこの上ない(←そういえば、ザ・ピーナッツも「キューバ」と「ナポリ」の両方とも歌っているが、カヨちゃんとザ・ピーナッツって競作が多いように思うのは気のせいか...)。シングル盤を手に入れてからはジャケットと曲が頭の中でリンクしたみたいで、 “「キューバ」はグレーに黄色いタイトル文字の方、「ナポリ」は赤っぽい方” (←彼女がかぶってる帽子は同じやけど...)という風に識別できるようになったが、それでもちょっと油断すると間違えそうになるから困ったものだ(>_<)
 この曲のオリジナルはキューバの人気歌手セリア・クルスが1960年に歌って大ヒットした「Magica Luna(マヒカ・ルナと読むらしい...)」という曲で、いかにも日本人ウケしそうなエキゾチックなメロディーがたまらない。私はサザンの桑田師匠が得意とする “ラテン歌謡” 路線のルーツはこのあたりにあるのではないかと密かに考えている。語感重視で意味不明のコトバを並べて歌詞を空洞化する手法もひょっとするとカヨちゃんの影響だったりして...
 カヨちゃんの歌声はイントロの “パィヨ パィヨ パッパラララ~♪” から蒼白い月の光を想わせるクールな雰囲気に溢れ、他の曲で聞けるのとは違って少し抑制されたような歌い方ながら、時々我に返ったように高音で声がひっくり返る “カヨちゃん節” (←アイドルの基本ですね...)がチラリとのぞくあたりが実に微笑ましい。「白い蝶のサンバ」で華麗な復活を遂げた70年代のねっとりした厚化粧熟女唱法(?)も捨てがたいが、やっぱり森山加代子はもぎたてのフルーツのような魅力に溢れていた60's前半のアイドルお姉さん時代が最高やね!
 カヨちゃん以外でこの曲をカヴァーしているのがザ・ピーナッツと西田のさっちゃん。私の贔屓のアーティストがこぞってこの曲を取り上げているというのが興味深いが、まさに三者三様というか、曲の髄を見事に引き出す中村八大アレンジで水を得た魚のようにノビノビと歌うカヨちゃん、史上最強のコーラス・ハーモニーと宮川センセのコモエスタなラテン・アレンジが絶品(←“ムッチョ ムッチョ ベッサメ ムーチョ~♪” のフレーズを挿入するアイデアなんか最高やね...)なザ・ピーナッツ、 “西田佐知子” としての歌唱スタイルを完成させる直前の生硬な歌声を聴かせるさっちゃんと、それぞれの持ち味を生かした「キューバ」に仕上がっているのが面白い。
 歌詞もそれぞれ全くの別物で、 “月のキューバの夜のことよ 甘い恋の想い出~♪” で始まるホセ・しばさき版がカヨちゃん、“月影青いヤシの下 可愛いキューバの娘が~♪” で始まる音羽たかし版がザ・ピーナッツ、そして “青い夜はキューバ娘 お月様に祈るよ~♪” で始まる松坂直美版がさっちゃんだ。このように歌詞もアレンジも歌唱スタイルもかなり異なっているので、私のような聴き比べ好きは楽しくってしょうがない。あなたはどの「キューバ」がお好きですか?

森山加代子 月影のキューバ


ザ・ピーナッツ 月影のキューバ


西田佐知子 月影のキューバ

パイのパイのパイ / 森山加代子

2011-11-06 | 昭和歌謡・シングル盤
 今年の7月頃から始めた昭和歌謡シングル盤蒐集も既に目標の95%以上を達成し、残すはプレミアの付く希少盤のみ。私はシングル盤に1,000円以上出すのには抵抗を感じる貧乏コレクターなので、ここから先は辛抱強く入札の谷間を狙うしかない。歌謡曲のシングル盤の大半は数百円で買えるのだが、中には常識を遥かに超えるような高値が付く盤があって困ってしまう。
 この数ヶ月のヤフオク・ウォッチングで一番ビックリしたのが私の大好きな小山ルミのグルーヴ歌謡「グッと..がまんして」で、何と28,800円で落札されたのである。この盤はほとんど売れなかったらしく、世間に出回っている数が極めて少ないとはいえ、アルバムではなく、シングル盤1枚でこの値段というのが凄い。ネット・オークションで入手することはほぼ不可能に近いので、コレに関してはどこかの古道具屋の片隅で二束三文で売られているのを見つけるしかないと半ば諦めている。
 今日取り上げるカヨちゃんの「パイのパイのパイ」もそんな入手困難盤の一枚で、小山ルミ盤のような異次元の高値ではないにせよ、2,500~5,000円ぐらいで取り引きされているレコードだ。私にとってこの曲は「じんじろげ」、「月影のキューバ」と並ぶ60年代カヨちゃん三大名曲のひとつなので何とかならんかなぁ...と思いながら息をひそめて網を張っていたところ、先月ついに念願叶ってめでたくゲット(^o^)丿 新規の出品者で盤質表記がVGスレ有りということでコレクター連中から敬遠されたのか、無風状態で1,000円で買えたのだが、届いた盤には大きなダメージは無く、プチパチ音もほとんど出ないNM盤だった\(^o^)/
 この曲は1961年5月に「じんじろげ」(1月)、「ズビズビズー」(4月)に続く同年3枚目のシングルとしてリリースされたもので、前年の「メロンの気持ち」あたりから始まった “言葉遊び系コミカル歌謡” 路線の集大成といえる楽しいナンバー。ドリフもカヴァーしたことで有名なこの曲、私はてっきり彼女のオリジナル曲だと思っていたのだが、YouTube の関連動画に「東京節」という曲がゾロゾロ出てきたのでもしやと思って調べてみると、この曲はアメリカ南北戦争時代に作られた「Marching Through Georgia」という曲を元にして神長瞭月(←添田さつきという表記もあるらしい...)という人が大正時代に作った「東京節」というコミック・ソングがオリジナルとのこと。いやはや、音楽ブログやってるとホンマに勉強になりますわ(^.^)
 カヨちゃん・ヴァージョンの歌詞は「じんじろげ」を書いた渡舟人が新たに書き下ろしたもので、 “お山で育った山ざるが 東京の空に憧れて 出てきたまではよいけれど~♪” とか “かぼちゃが八百屋の店先で テレビを見ながら言いました~♪” とかいった童謡風のストーリーにオリジナル「東京節」の意味不明リフレイン“ラーメチャンタラ ギッチョンチョンデ パーイのパイのパイ パリコト パナナデ フライ フライ フライ♪” をくっ付けて見事な作品に仕上げている。食べ物を一気に羅列する3番の歌詞 “ラーメン ぎょうざに 肉まんじゅう おしるこ あんみつ ところてん クリームソーダに レモネード コーヒー 紅茶に アップルパイ~♪” のラインも子供達にウケそうだ。
 編曲も「じんじろげ」と同じ中村八大で、イントロにさりげなく「アルプス一万尺」のメロディーを引用し、そこから一気に40年代ビッグバンドのようなジャジーなムード横溢の展開に持っていくという意表を突いたアレンジはもう見事という他ない。童謡風の無邪気な歌詞とジャジーなアレンジが織りなすアンビバレントな味わいこそ、カヨちゃん・ヴァージョンの一番の魅力であり、聴けば聴くほど中村八大という音楽家の懐の深さというか、改めて彼の天才を見る思いがする。もちろんそれを歌いこなすカヨちゃんのシンガーとしての表現力も特筆モノだ。
 コミック・ソングの王道を行くドリフ・ヴァージョンや植木等が映画「日本一のショック男」で歌った “パイのパイの日本” ヴァージョンなど、この曲には他にも捨て難い名演が色々あるが、私は歌詞・アレンジ・ヴォーカルが高い次元で絶妙なバランスを保っているカヨちゃん・ヴァージョンが一番好きだ。

パイのパイのパイ 森山加代子


Marching through Georgia


ドリフのバイのバイのバイ


日本一のショック男挿入歌
コメント (2)

Airwolf Themes

2011-11-02 | TV, 映画, サントラ etc
 shoppgirl姐さんからいただいたコメントをきっかけに軽~い気持ちで取り上げたテレビ主題歌盤だったが、「キイハンター」→「プレイガール」→「時代劇主題歌」と回を重ねるうちに段々本気になってきて(←いつもこのパターンやな...)、とうとう自家製コンピ盤 CD-R まで作ってしまった。題して「TV ヒッツ・コレクション《日本編》」。上記の番組に加えて「ザ・ガードマン」や「ウルトラQ」、「ルパン三世」から「松田優作の探偵物語」に至るまで、私がまだバリバリのテレビっ子だった60~70年代に親しんできた古き良きテレビ主題歌をギュッと詰め込んだ超パーソナルな1枚だ。
 最近では森山加代子や黛ジュンに混じって通勤時のドライヴ BGM として愛聴しているのだが、《日本編》を作ったら《海外編》も作りたくなるのが人情というもの。カセット時代はオムニバス・テープ(←懐かしいなぁこの言葉...)を作って楽しんでいたが、CD-R の海外ドラマ・コンピ盤はまだ作っていない。ということで早速選曲に取り掛かったのだが、70~80年代の海外ドラマ主題歌はどれも皆クオリティーが高く、「スタートレック」シリーズを始めとして「ダラス」、「ナイトライダー」、「バビロン5」など、《日本編》に負けず劣らず充実した内容の盤に仕上がった。そんな名曲群の中でもとりわけ素晴らしいのが「超音速攻撃ヘリ・エアウルフ」のテーマ曲だ。
 この番組は1987年頃に読売テレビで毎週水曜の夜にレギュラー放送していたのを見て大ファンになったのだが、当時は地上波のゴールデンタイムでも海外ドラマを放送しており、月8の「ナイトライダー」と水9の「エアウルフ」は何があろうと欠かさずテレビにかじりついて見たものだった。ケーブルテレビに加入後はスーパーチャンネルで全エピソードを完全制覇、今ではバリバリのエアウルフ・マニアだ。
 ストーリー展開は、東西冷戦時代の米ソ・スパイ戦を背景に超音速攻撃ヘリ・エアウルフが活躍して毎回毎回アメリカ側が勝利するという勧善懲悪ワンパターンものだったが、私としては KGB がスベッただの、ナチスがコロンだだのといった筋書きはどうでもよく、要するにエアウルフが縦横無尽に暴れ回って最後には敵機を撃墜するシーンが見れればそれで大満足だった(←単純)。特に好きだったのがエアウルフ高速飛行中のハウリング音で、このクォォォーン!という飛行音を聞かないとエアウルフを見た気がしない。ターボを吹かして猛スピードで加速するシーンや地上スレスレを高速飛行するシーンなんか最高にカッコ良かったし、ホークのヘルメットのバイザーが下りてターゲット・ロックオンした時のオレンジ色の照準点(←マニアックな話ですんません...)が表示されるところなんか何度見てもゾクゾクする。赤外線追尾式ミサイルを引き付ける太陽弾ことサン・バーストも他では中々見れない斬新な武器だった。
 そんな「エアウルフ」だが、戦闘シーンだけでなくオープニング・テーマ曲のカッコ良さもハンパない。私は基本的にシンセサイザーの音色はあまり好きではないのだが、こういう使い方なら大歓迎(^o^)丿 イントロからしてグッとくるモノがあるし、躍動感溢れるテーマ・メロディーにはウキウキワクワクさせられる。超音速ヘリの名に恥じないそのドライヴ感は圧巻の一言だ。私なんかこの曲を聴くたびに大空を飛び回るエアウルフの雄姿が瞼に浮かび、相乗効果でアドレナリンが逆流して “よっしゃ、一丁やったろか!” と心が奮い立つ、まるでユンケルみたいな1曲なのだ。
 この「エアウルフ・シームズ」という2枚組CDは、1999年にマークJケアンズという筋金入りエアウルフ・マニアが版権元より権利を得て1000枚限定(!)で自主制作したアルバムで、私のはヤフオクでゲットした1,000円のブート盤だが、正規盤はイーベイでは超高値で取り引きされ、ウィキペディアによると2006年には $981.74 (当時のレートで約11万円!!!)という鬼のようなプレミア価格で “最も高価なテレビ・サントラ盤” の新記録を作ったというから凄まじい。因みに今では MP3 でウェブサイトからのダウンロード販売になっているようだ。
 とにかくエアウルフ・ファンにとっては垂涎モノのこのアルバム、車の運転中に聴いたら間違いなくアクセルを床までベタ踏みしたくなること間違いなし。目の前をマイペースでトロトロ走る迷惑車にはミサイルでもブッ放したくなるが(笑)、ストリングフェロー・ホーク気分でカッ飛ばしたい時のお供にはピッタリの1枚だ。

Airwolf Season 3 Intro HD


Airwolf Briefing


【おまけ】凄いなこの職人さん... まるで本物みたい(゜o゜)
Airwolf VS Knight rider: エアーウルフ対ナイトライダー