shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Beatles Live ! at the Star-Club 1962

2009-10-05 | The Beatles
 昨日ご紹介した「ザ・ビートルズ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」がリリースされた1977年には、ほぼ同時期にもう1枚ビートルズのライブ盤が発売された。それが今日取り上げる「ライブ!アット・ザ・スター・クラブ・イン・ハンブルグ・ジャーマニー 1962」である。「ハリウッド・ボウル・ライブ」が全盛期のビートルズ・コンサートの様子を収めた64・65年のライブで他のビートルズ盤と同じように東芝から出たのに対し、「スター・クラブ・ライブ」の方はビートルズがレコード・デビュー直後の1962年12月に行ったハンブルグ公演の模様を家庭用テープ・レコーダーで録音したもので、契約の関係からか、ビクターから発売された。そういうことなので録音状態はイマイチ良くないのだが、音質的なハンデを補って余りある若さや勢いというものが十分に伝わってきて圧倒されるのだ。それほどこの盤にはデビュー直後のビートルズの躍動感溢れる演奏が詰まっている。ビートルズの 1st と 2nd アルバムがほとんど一発録りに近いスタジオ・ライブ形式で録音されたのは有名な話だが、その原点はまさにこのような下積み時代のステージにあったことがよく分かる熱いライブなのだ。
 このアルバムはアナログ2枚組でウエイターに歌わせた2曲を除く全24曲中、ビートルズとして後に公式録音する曲が10曲で、残りは古い曲のカヴァーが大半を占めている。A面は①「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」でスタート、アルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」のヴァージョンに迫る勢いで飛ばす4人がカッコイイ!!! ②「ロール・オーヴァー・ベートーベン」ではイントロでジョージが一瞬ミスるものの、気にせず一気に弾き切り、後は破綻もなくどんどん加速していく。チャン・ロメロのカヴァー③「ヒッピー・ヒッピー・シェイク」はスウィンギング・ブルージーンズの1年先を行くカヴァーで、ポールがノリノリで歌っている。チャック・ベリーの④「スウィート・リトル・シックスティーン」はジョンのヴォーカルがグイグイ演奏を引っ張り、実にドライヴ感溢れるプレイが楽しめる。後にジョンのソロ・アルバム「ロックンロール」でも再演されるナンバーだが、私はこちらのヴァージョンのノリの方が断然好きだ。カール・パーキンスの⑤「レンド・ミー・ユア・コム」をかヴァーしてるのはよく分かるが、ファッツ・ウォーラーの⑥「ユア・フィーツ・トゥー・ビッグ」を取り上げているのにはビックリ(゜o゜) 彼らの懐の深さが垣間見れる選曲だ。
 B面はおなじみの①「ツイスト・アンド・シャウト」、②「ミスター・ムーンライト」と続くのだが、どちらもアルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」や「フォー・セール」のヴァージョンよりもアップテンポの演奏が楽しめる。①なんか息もつかせぬ圧倒的な名唱だし、②もテンポが違うだけでこれほど印象が変わるのかと思うぐらい颯爽とした演奏だ。コレ、超オススメです(^.^) ここからはポールのスタンダード・ナンバー・コーナーで、アルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」収録の③「ア・テイスト・オブ・ハニー」と映画「レット・イット・ビー」でこの曲を朗朗と歌うポールが印象的だった④「ベサメ・ムーチョ」の2連発。特にこの「ベサメ」はスローなラテンの名曲を思いっ切りテンポを上げて火の出るようなロックンロールとして処理したのが大正解で、数ある「ベサメ」の中でも私が一番好きなヴァージョンだ。バディ・ホリーのカヴァー⑤「レミニシング」はジョージのヴォーカルが弱いせいか印象が薄い。まぁ先の「ベッサメ・ムーチョ」とポールの絶叫ナンバー⑥「カンザス・シティ」に挟まれてるからしゃあないか。⑥のアレンジは「フォー・セール」に繋がるハードボイルドなものだ。ホンマ、たまらんわぁ(≧▽≦)
 C面アタマの①「エイント・ナッシング・シェイキン」はエディー・フォンテーンのカヴァーで、日本ではイマイチ知名度は低いかもしれないが、私の大好きなノリノリのロックンロール。こんな曲をさりげなくレパートリーに入れるビートルズって改めて凄いと思う。②「トゥ・ノウ・ハー・イズ・トゥ・ラヴ・ハー」はあのフィル・スペクターがテディ・ベアーズ名義で出した名曲だが、私としてはもうひとつビートルズに合ってないような気がする。何となく窮屈そうに歌っているように聞こえるのだが...(>_<) それに比べてチャック・ベリーのカヴァー③「リトル・クイニー」での水を得た魚のような活き活きしたプレイのカッコ良さ!!! ジョージのギター・ソロが圧巻だ。ポールが歌うマレーネ・デートリッヒ映画の挿入歌④「フォーリング・イン・ラヴ・アゲイン」は②と同様、ちょっと場違いな感じがする。彼らのオリジナル曲⑤「アスク・ミー・ホワイ」はこの後アルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」に入ることになるが、ここでも素晴らしいコーラス・ハーモニーを聴かせてくれる。
 D面は有名曲のカヴァーを連発、ファッツ・ドミノの①「レッド・セイルズ・イン・ザ・サンセット」、カール・パーキンスの②「エヴリバディーズ・トライング・トゥ・ビー・マイ・ベイビー」と③「マッチボックス」(←リンゴではなくジョンが歌ってる渋いヴァージョン!)、チャック・ベリーの④「トーキン・バウト・ユー」、ジョー・サウス&ビリー・ランドの⑤「シミー・シェイク」、リトル・リチャードの⑥「ロング・トール・サリー」と、もう大ロックンロール大会である。特に⑥は後の公式ヴァージョンに匹敵する凄まじさで、彼らのロックンロール・スピリットが大爆発だ。ラストの曲は一転して⑦「アイ・リメンバー・ユー」というチェット・ベイカーやチャーリー・パーカーの名演で知られるスタンダード・ナンバーで、ポールの呑気なヴォーカルとジョンののどかなハーモニカがほのぼのとした空気を運んでくる。さっきまでの大騒ぎはどーなったん?と言いたくなるぐらいの変わり身の早さはさすがビートルズだ(笑)
 このアルバムが発売された1977年というのは奇しくもイギリスでパンク・ロックが大ブレイクした年なのだが、ここに刻まれたビートルズの野性味溢れるサウンドはパンク・バンドもブッ飛ぶカッコ良さで、ラウドにロックしながらも高い音楽性を感じさせるのが凡百のバンドとの決定的な違いだろう。このアルバムはプアーな音質をものともせずに聴く者をグイグイ惹きつける魔力を持った、ビートルズのライブ・バンドとしての実力を知らしめる痛快な1枚だ。

Sweet Little Sixteen/ The Beatles Live At The Star Club

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