shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

901さんと久々のオフ会③

2024-05-06 | Jazz

901さん:青のアルバニタス行く前にヴォーカル聴きましょか。
私:何なりと。
901さん:チンクエッティとロス・パンチョスの共演盤なんやけど、自分が持ってるメキシコ盤の状態がイマイチやったんで国内盤のキレイなのをヤフオクで1,000円で手に入れたんですわ。で、そのセラーの方とメールでやり取りしててわかったんですが、この人がチンクエッティとクリフ・リチャードの熱烈なコレクターで、このチンクエッティ盤は同じメキシコ盤でもプロモ盤と普通の盤で1曲差し替えられてるっていうんですよ。
私:チンクエッティとクリフ・リチャードという組み合わせだけでもかなりアレですが(笑)、メキシコのプロモ盤と普通の盤を両方持ってるという時点でヤバい人ですね。ディープすぎる...
901さん:でしょ? よりにもよってそんな大物コレクターに対して “メキシコ盤持ってるんですけど...” とかエラソーに言うてしもうて...(笑) 
私:それ、めっちゃ恥ずかしいやつですやん(笑)
901さん:そうそう(笑) じゃあこの「Lisboa Antigua」かけて下さい。
私:【♪~】あれ? これって自分も持ってたような気が... ピンク色のジャケットやったっけ... (レコード棚を探す)あったあった、コレですわ。
901さん:へぇ、アルゼンチン盤ですか... おっ、「ベサメ」入ってますやん! メキシコ盤にも日本盤にも入ってへんのに。
私:ひょっとして差し替えられた曲って「ベサメ」じゃないですかね? ちょっとDsicogsで調べてみましょう... え~っと、南米ではメキシコ・アルゼンチン以外にもブラジルやペルーで、ヨーロッパではイタリア、スペイン、フランスで出てて、「ベサメ」抜きの11曲入りとか「ベサメ」入りの12曲入りとか国によって微妙に違うんですね。ジャケットもそれぞれ違ってて、フランス盤なんかランボーに出てくるベトナムの村みたいな風景写真だけで肝心のオーラどこにも写ってへんし...
901さん:へぇ~、なるほど。じゃあその「ベサメ」を聴かせてもらえますか?
私:もちろん!【♪~】
901さん:まさかチンクエッティの「ベサメ」聴けるとは思わんかったですわ...ヽ(^o^)丿 じゃあ次は青のアルバニタスお願いします。【♪~】さっきの赤いのとは又雰囲気が違うなぁ...
私:確かに。ピアノトリオでリズムセクションが変わるとこうも違うモンかというエエ見本ですね。
901さん:いやぁ、貴重なレコード聴かせてもろうてありがとうございました。次はヴォーカルのシルビア・テレス。このレコードはオリジナルのモノラル盤が欲しかったんですが、やっと手に入れることが出来ましてん。
私:kAPP の白ラベルって珍しいじゃないですか! こんなん初めて見ましたわ。ヴァージニア大学所蔵のプロモ盤、ってスタンプ押してありますね。【♪~】
901さん:この人は “ブラジルの美空ひばり” 的な国民的シンガーで、アメリカでも売り出そうとしたんやけど、全然ウケへんかったみたいやね。
私:へぇ~、そうやったんですか。僕はコレ、わりと好きなんですけどね。確か持ってたはず... (レコード棚を探す)あったあった... 自分のはステレオ盤でしたわ。そうそう、モノラル盤探したけど中々見つからなかったんで、しゃあなしにステレオ盤買うてモノ針で聴いてたんです。
901さん:次はブラジル繋がりでバーデン・パウエルの「知床旅情」。
私:そうきましたか...(笑)
901さん:歌のない歌謡曲ですけど、バーデン・パウエルもよぉこんなん引き受けたなぁと思いますわ。1曲が短いので、「知床旅情」と「花嫁」の2曲続けて聴きましょう。【♪~】
私:いや、そんなに悪くないと思いますけど...
901さん:これ(Canyon: CAL-5004)の続き番号でアートブレイキーが「花嫁」やってるレコード(CAL-5005)があるんですよ。
私:それ、存在だけは知ってます。「ジャズ批評」か何かで読んだ記憶が... ひょってしてそれも持ってきはりましたん? 
901さん:いや、あまりにも酷いので...(大爆笑)
私:ハハハ...(大爆笑)
901さん:次なんですが、Shiotchさんにぜひ聴いてほしかった女性ヴォーカルがありますねん。ラジオで流れてきていっぺんに気に入ってCDを即買いしたんですよ。この Madeleine Peyroux(マデリン・ペルー)っていう人の「Careless Love」。【♪~】
私:おぉ、これはノスタルジックな雰囲気がエエですねぇ。気に入りました。
901さん:歌伴がまためちゃくちゃ上手いでしょ、何ていうか、その、乗せるのが... 
私:これは私のスウィート・スポット直撃ですわ。
901さん:この人、誰かに似てるなぁと思うたら、若い時のビリー・ホリデイなんよね。
私:ホンマや! これは大当たりですわ。
901さん:気に入ってもらえてよかったですわ。
私:たまたまラジオで流れてきた曲を901さんが気に入って、それを僕に教えて下さる... こうやってどんどん新しい世界が広がっていくのが楽しいんですよ。やっぱりオフ会はエエなぁ...
901さん:そうそう。こういう刺激があるから気持ちが元気でいられるんよね。
私:いやぁ~、これはエエもん教えてもらいました。  《つづく》

901さんと久々のオフ会②

2024-05-05 | Jazz
901さん:じゃあ次はその可愛らしいやつお願いします。
私:ヘレン・メリルの7インチですね。
901さん:それにしてもよぉ全部集めはりましたね。3枚セットで買わはったん?
私:いえいえ、1枚ずつ執念で買い集めましてん。
901さん:eBayですか?
私:え~っと、どうやったっけ... 最近ボケてきて、昔のことが思い出せへんのですよ。確かブログに書いたと思うので... ちょっと待って下さいね...(自分の過去ブログを検索...)あったあった... 最初の1枚が Discogsで、残り2枚が eBayですわ。
901さん:じゃあ「Falling In Love With Love」お願いします。【♪~】おぉ、しっかりした音してますやん。この曲、ペティフォードのセロが効いてると思うんですよ。クインシーは天才ですね。ここにセロをもってくるところが...
私:うん、めっちゃわかります、それ。で、ジミー・ジョーンズの趣味の良いピアノを挟んで、満を持してクリフォード・ブラウンの登場... いやぁもう実に考え抜かれた完璧なアレンジですね。
901さん:次は「You'd Be So...」をお願いします。【♪~】おぉ、これもエエ音しとる...
私:もののついでと言っちゃ何ですが、オリジナル1stプレスLPと2ndプレスLPとの聴き比べもやりますか?
901さん:ぜひ!(2枚のLPのセンター・レーベルを見ながら)どちらが 1stなんですか?
私:このビッグ・ドラマーで銀縁ある方が 1stです。
901さん:そう言えば昔ユニオン人が “銀縁がズレてる盤が結構あって、それは価値が下がる” って言うてはったのを思い出しましたわ。これはキレイですね。高く売れますよ。
私:売りませんて...(笑) じゃあまず 1stプレスの方から... 【♪~】
901さん: うわぁ、やっぱり全然違うわ。凄い迫力ですね。
私:あれ?前に聴いた時よりもエエ音してる気がする。何回も超音波クリーニングしたのが効いたんかな? 自分のレコードの音にビックリしてたら世話ないけど...(笑) じゃあ次は 2ndプレスいきますね。【♪~】
901さん:う~ん、これもエエ音には違いないんやけど 1stプレスの迫力には負けるね。アンサンブルの迫力が違うねぇ。2ndの方は整然としててカッチリとまとまった良い音、という感じやね。
私:ホンマにそうですよね。でも盤質がめちゃくちゃエエので、これはこれで手放せへんのです。
901さん:なるほど。
私:因みに裏ジャケットが 2ndプレスまではブルーで、3rdプレスから黒色印刷になるんです。実はその 3rdプレスも持ってたんですが、音が良くないので売っちゃいました。たったの2年の違いですが、音は天と地ほど差がありましたわ。
901さん:へぇ~、そうなんですか。じゃあ次はブラウニー繋がりでメトロノームの7インチ「Cliff Brown Art Farmer」を。これはさすがにちょっと高くて Vol.1とVol.2 の2枚セットで8,000円しましたわ。
私:おぉ、これは又貴重な盤を! でもこれで8,000円ならお買い得ですよ。
901さん:そう言っていただけると何か嬉しいですな。
私:【♪~】さすがはスウェーデンのメトロノームだけあって音もエエですね。
901さん:当たり外れはあるみたいですけど、これに関しては大当たりでした。じゃあ次はコレを。
私:おぉ、パシフィックの「Solo Flight」の7インチ!
901さん:ペッパーのこの「I Can't Give You Anything But Love」、昔ShiotchさんにCDを焼いてもらったのが気に入って、コレが入ってるオムニバスLPの「Solo Flight」が欲しくてずーっと探してたんですが中々手に入らなかったんですよ。そしたらある時この日本盤シングルがヤフオクで550円で出てて、大喜びで買ったんです。CDよりも1分長いロング・ヴァージョンでめちゃくちゃ嬉しかったなぁ...
私:「Solo Flight」のシングル盤って初めて見ました。【♪~】音、良いですね。日本盤も侮れません。オリジナル盤と聴き比べますか?
901さん:えっ、持ってはるの? ホンマにここ、何でもあるなぁ...
私:そんなことないですよ。ペッパーが入ってるからたまたま持ってただけですわ。
901さん:【♪~】やっぱりオリジナル盤の音はエエなぁ。じゃあ次もペッパーのSONET 7インチで「Art Pepper Returns」。これはヤフオクで2000円でした。
私:“タンパのペッパー” をスウェーデン盤7インチで聴くとは粋ですね。【♪~】おぉ、これ音めっちゃ良い! ジャケットもエエし、僕も買おうかな。
901さん:じゃあ次はアルバニタスの PRETORIA盤2枚を聴かせて下さい。こんなん2枚ともオリジナルで持ってる人、そんなにいてへんでしょ。
私:2枚とも確か5年ほど前に手に入れたんですが、自分でもまさか買えるとは思うてませんでしたよ。澤野の復刻盤がエエ音してて、それで十分満足してたんです。でも、ジャズで欲しい盤をほぼ買い尽くした時にあわよくばと欲が出て、ダメ元で探してるうちに段々本気になっていって、最後は執念で手に入れました。
901さん:じゃあまず赤い方、「3am」からお願いします。【♪~】ダグ・ワトキンスのベースが凄いなぁ...
私:地の底から響いてくる感じですね。
901さん:いやぁ、コレはたまらんですわ。
私:喜んでいただけて何よりですわ。赤バニタスはピアノトリオかくあるべし!と言いたくなるレコードですね。
901さん:そういえば「ソフトリー」も入ってるね。
私:B①です。昔オフ会で「ソフトリー」大会やった時に 45ヴァージョン一気聴きやったのが懐かしいですね。
901さん:アレはホンマに面白い企画やったなぁ... 思いつかへんで、ふつう(笑) しかもMJQもソニー・クラークも敢えて外しての45曲やからね。
私:その辺の拘りはハンパなかったですね。じゃあB面も聴かはりますか?
901さん:いやいや、次来る時の楽しみに取っときますわ(笑)  《つづく》

901さんと久々のオフ会①

2024-05-04 | Jazz
 連休初日に901さんがレコードを何枚も抱えて我が家に遊びに来て下さった。901さんと知り合ってもう25年ほど経つが、私の音楽人生にとてつもなく大きな影響を与えて下さった大恩人である。音楽に対する造詣の深さだけでなく人間的にも素晴らしい方なので、音楽談義はいつも時間の経つのも忘れてしまうほど楽しい。901さんとは 2003年から月に1回のペースでウチの家にレコードを持ち寄って一緒に聴くオフ会のようなものを行ってきており(←これも律儀にカウントして下さっていて、117回もやってたのにはビックリ...)、様々な事情で2015年の3月を最後に中断していたのだが、この前久しぶりに “又一緒にレコード聴きませんか?” と連絡したところ快諾して下さり、今回何と9年ぶりに復活したというワケだ。二人だけの再結成ということで “ペイジ&プラント” みたいなもんだが、あまりにも楽しかったのでこの至福のひとときを忘れないためにブログに書き記しておこうと思う。

901さん:いやぁ~、懐かしいねぇ...
私:ホンマにお久しぶりです。今日は腹一杯レコード聴いていって下さい。
901さん:じゃあ早速 “イントロのペッパー” から行きましょか。
私:おぉ、いきなりですか!
901さん:このレコード、ディスクユニオンの買取価格が凄いことになってますねん。
私:うわ、エグぅ...
901さん:コレが欲しくてお金貯めてたんやけど、実際に音を聴かずに10万円超えるレコードを買うのは勇気いりますやろ。やっぱりB-SELSさんみたいに自分の耳で聴いてから買えるのが安心ですな。
私:ホンマそうですよね。
901さん:かと言って国内盤のブルーノートのレーベルでは雰囲気出ぇへんからねぇ。
私:その気持ち、めっちゃわかります。
901さん:そんな時にヤフオクで 2ndプレスの SCORE盤見つけたんですよ、8,000円で。オリジナルの INTRO盤の何十分の一の値段やけど、レーベル・カラーもオリジナルにソックリなので買いましてん。
私:【♪~】材質のせいかサーッというノイズは入るけど、アルトの音はエエ感じですね。コスパよろしいやん。
901さん:じゃあ本家の音を聴かせて下さい。「When You're Smiling」を。【♪~】エエなぁ... この曲だけで10万円分ぐらいの価値あるわ。
私:ホンマに。僕もこの曲めっちゃ好きです。
901さん:それにしてもキレイな盤やねぇ... めちゃくちゃエエ音してるわ。ジャケットもピカピカやし。これユニオンに持って行ったら高ぅ売れますよ。
私:ハハハ... ありがとうございます。絶対に売りませんけど(笑)
901さん:じゃあ次はジャンゴの10インチ。ブログに書いてはったのを見てエエジャケットやなぁと思って探して見つけたのがコレですわ。同じジャケットの国内盤で、レーベルはANGEL盤ですねん。ヤフオクで800円でしたわ。
私:おぉ、コレは珍しい! 初めて見ました。これが800円て、901さんホンマに買い物の達人ですね。
901さん:じゃあ「Minor Swing」を2枚続けて聴かせて下さい。
私:【♪~】音も良いじゃないですか。エエ買い物しやはりましたなぁ...
901さん:でもやっぱり仏PATHEのオリジナルの音は違いますな。次もジャンゴ繋がりでHenri Crolla の「Notre Ami Django」。CDになってたヤツの元ネタLPです。これもヤフオクで800円。
私:【♪~】これも初めて見ました。めちゃくちゃ音良いですね。グラッペリも入ってるし、これは欲しいなぁ... やっぱり901さんと音楽の話するとめちゃくちゃ刺激受けますわ。
901さん:喜んでもらえてよかったです。じゃあ次はジミー・ジョーンズの10インチお願いします。これ聴いてみたかったんですよ。こんな激レア盤、よぉ手に入れはりましたなぁ。
私:自分でも何故買えたのか正直言ってワカランのです(笑) たまたま運が良かったとしか言いようがないですね。
901さん:わかる! レコード買うのって運が大事やもんね。【♪~】うわぁ、凄いエエ音しとるなぁ... これはロイ・ヘインズを聴くレコードやと思うけど、ブラッシュの音が凄いなぁ。国内盤の音とは全然違うわ。
私:私にとって “ジャズはブラッシュ” ですから。
901さん:ハハハ... Shiotchさんホンマにブラッシュ好きやからねぇ。じゃあ次はこんなCD持って来たんやけど、知ってはる?
私:山本玲子の「Wilton's Mood」? いや、知らないです。
901さん:ヴァイブ奏者なんやけど、いっぺん聴いてみて。とりあえず1曲目の「ボヘミア」いこか。
私:ミルト・ジャクソン系かな?【♪~】おぉ、これはユニーク。ミルト系ちゃいますね。めっちゃ新鮮!
901さん: でしょ! まだヴァイブ始めてそれほど日が経ってへんせいか、ミルトっぽくないところが逆にエエんですわ。
私:わかります。
901さん:これ聴いてほしかったんですよ。Shiotchさんヴァイブ好きやし。寺島レコードですねん。
私:寺島さんってまだ現役でやってはるんですか?
901さん:もう80歳超えてるはずやから引退しはったんちゃいますか?
私:なるほど。どうりで音にも選曲にも寺島色が出てるワケですね。コレはエエ盤教えてもらいましたわ。
901さん:次もCDで Brian Bromberg の「Wood 2」。
私:【♪~】うわぁ、めっちゃ生々しい音。キングの “低音” シリーズですね。
901さん:Shiotchさんとこのアルテックのスピーカー、ヴィンテージ物やのにこういうオーディオファイル用CDの音もバリバリに再生するのが凄いですな。
私:ありがとうございます。新旧問わず “ガツン!” とくる音の再生を追求して完成した “二刀流” システムなんですけど、愛機を褒めてもらうとやっぱり嬉しいですね。 《つづく》

【BN祭り⑤】Moanin' / Art Blakey & The Jazz Messengers

2023-08-28 | Jazz
 ほんの思いつきで始めた “真夏のブルーノート祭り” もいよいよ最終回。最後を飾るのは全ブルーノート、いや、全ジャズ・アルバムの中で五指に入るくらい大好きな「Moanin'」だ。
 私は中学に入って本格的に音楽を聴き始めてから20年以上ずーっとロック/ポップス一筋で生きてきて30代後半で初めてジャズに開眼したのだが、その段階で既に知っていたジャズ・ナンバーはわずか3曲だった。デイブ・ブルーベックの「Take Five」、カーティス・フラーの「Five Spot After Dark」、そしてアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズの「Moanin'」である。これらは3曲とも90年代初め頃にテレビCMソングとして頻繁に耳にする機会があったので多分そのせいだろうと思うが、ガンズやデフレパ、シンデレラにボンジョヴィといった80'sメタル中心に音楽を聴いていた当時の私にとってもこれら3曲はメロディーも演奏も十分に親しみやすく、ジャズという未知のジャンルの音楽を何の違和感もなく楽しめたのだった。
 グランジ/オルタナ・ロックが主流になった90年代の洋楽にウンザリし、それまで10年以上毎週欠かさず聴いてきた全米チャート番組を聴くのもやめて何かエエ音楽はないかいなぁと探していた私は渡りに舟とばかりにジャズに飛びついた。しかし当時のジャズ界には小難しくて無味乾燥な楽曲を “オリジナリティーがあって興味深い” などと言って持ち上げる傾向があり(←アホやろ...)、CMに使われるような “わかりやすい” ジャズはどちらかというと蔑視されるような風潮があった。私は他人が何と言おうと自分の感性を信じて音楽を聴くので、好きな曲を聴かれるたびに敢えて上記の3曲を挙げて周りを挑発していた(笑)のだが、中でも特に白い眼で見られていたのが「Moanin'」だった。
 この曲がリリースされた当時のエピソードとして “ソバ屋の出前持ちが口笛で吹いた” というのがあるが、流行りの歌謡曲ならともかく、ド・マイナーなジャンルであるジャズでそこまで一般ピープルに浸透するっていうのは実はものすごいことではないのか? 私は口笛で吹けたり鼻歌で歌えたりするメロディーこそ最高の音楽だと信じているのでこのエピソードには大いに納得したものだし、今でもこの考えは1ミリたりとも揺るがない。
 それにしてもこの「Moanin'」という曲の吸引力はハンパない。ゴスペルからの影響を強く感じさせるコール&レスポンス(→要するに “掛け合い” ですね)の気持ち良さが抜群の効果を発揮、伝説となったクラブ・サンジェルマンでのライヴではこの曲を書いたボビー・ティモンズの、まるで酔っ払った牧師が弾いているかのような粘っこいピアノに感極まった女性(→最前列で聴いていたピアニストのヘイゼル・スコットさん)が “Oh Lord, have mercy!” と叫んで失神したという有名なエピソードがあるくらい強烈なグルーヴを生み出すキラー・チューンなのだ。因みにこの「モーニン」とは morningの「朝」ではなく「苦しみ呻くこと(moanin')」という意味です、念のため。
Moanin' (Remastered 1998/Rudy Van Gelder Edition)


 このアルバムが凄いのはこのA①「Moanin'」以外の曲もすべてエネルギーに満ち、キャッチーでなおかつ強烈なグルーヴを感じさせるナンバーが並んでいることだ。中でもA①と並ぶメッセンジャーズの代表曲と言えるB②「Blues March」の破壊力は凄まじく、頭でアレコレ考えるより先に思わず身体が揺れてしまうあのえげつないグルーヴは理屈抜きに快感そのものだ。話はちょっと逸れるが、初めてこの曲のイントロを聴いた時にすぐ「ゲバゲバ90分のテーマ」の間奏ドラム・ソロが思い浮かんでアッと驚くタメゴローだったのだが、あれは同じマーチということで宮川泰さんが思いついた遊び心なのだろうか? それと、ベニー・ゴルソン作のA②「Are You Real」やA③「Along Came Betty」もこのアルバムの “汗が飛び散るファンキー・ジャズ” というコンセプトにピッタリのパワフルなナンバーだ。
Blues March (Remastered)


 とまぁこのように大好きなアルバムなので、「Sonny Rollins Vol. 2」の時と同様にオリジナル1st プレス盤、“NEW YORK USA” 表記 60's プレス盤(ただしこっちは耳マークあり)、Classic Records 復刻盤の3種類のレコードを持っている。音の傾向はロリンズ盤のケースとほぼ同じだが、手持ちの 60's プレス盤は耳マークのご利益か(笑)音のスケール感が比較的大きく感じられる。点数化すると、1st プレス盤が100点満点で Classic Records 復刻盤が95点というのは変わらないが、耳あり 60's プレス盤にも同じ95点をあげてもいいぐらい良い音がしている。やっぱりブルーノートのレコードは RVG刻印と Plastylite(プラスタイライト)社プレスを示す耳マーク(本当は Pマーク)入りの盤に限りますな...

【BN祭り④】Sonny Rollins Vol. 2

2023-08-14 | Jazz
 ジャズには様々なスタイルがあるが、私が最も好きなのはハードバップである。1940年代に隆盛を極めたビーバップではリズムセクションが単なる伴奏者として背後に押しやられていたのに対し、その発展形ともいえるハードバップではドラマーが前面に出てきてフロントのソロイストを猛プッシュ。彼らと丁々発止のインタープレイを行うことによって、演奏全体の熱量が大幅にアップし、黒人ならではの粘っこいグルーヴとの相乗効果もあって、まさにモダン・ジャズの王道とでもいうべきスタイルとして完成したのだ。もちろんウエストコーストや中間派の中にも大好きなミュージシャンは一杯いるが、手持ちのレコードの枚数を数えるまでもなく、私の中では “ジャズ≒ハードバップ” なんである。そして私がそれほどまでにハードバップにハマる決定打となったアルバムこそ、何を隠そうこの「Sonny Rollins Vol. 2」なのだ。
 このアルバムとの出会いはジャズを聴き始めて2~3年ほど経った頃だったと思うが、それまでチェット・ベイカーやレッド・ガーランドといった “軽やかにスイングする” ジャズばかりを聴いてきた私にとって、「Sonny Rollins Vol. 2」というアルバムはまさに衝撃そのものだった。中でもとりわけインパクトがデカかったのがアルバムの1曲目を飾る「Why Don't I」だ。
 とにかくこの曲ほどジャズの熱気を感じさせる演奏を私は他に知らない。ハードバップを体現するドラマー、アート・ブレイキーの豪快なドラミングに煽られてフロントのロリンズとJJジョンソン(トロンボーン)が吹きまくるという理想的な展開なのだが、私が特に好きなのは、ノリにノッたロリンズがドラムとのバースを間違えて吹き始めてしまい、すぐに別のアイデアを出してそれをリカバーするところで(←まるで何事もなかったかのように演奏を続けるブレイキーも凄い!)、これをOKテイクにしてしまうあたりに “細かいことは気にせずに大きなノリを優先する” というロリンズらしさが現れているし、そういったスポンティニアスでスリリングな展開が見事に音溝に刻まれているところがジャズの醍醐味だと思う。太いトーンで響き渡るロリンズのテナーや飛び散る汗が目に浮かぶようなブレイキーのドラミングはまさに “ブルーノートのヴァンゲルダー” ならではの音作りだ。
Why Don't I


 続くA②「Wail March」も “これぞハードバップ!!!” と ! を3つも付けたくなるぐらい熱い演奏が展開されていて大好きだ。ブヒバヒ吹きまくるJJとロリンズを背後からプッシュしまくる鬼神ブレイキーの爆裂ドラミングがたまらない(≧▽≦)  まさに “ジャズ界のジョン・ボーナム” と言っても過言ではない煽りっぷりだ。
Wail March


 私が同じタイトルのレコードを何種類も買うのは超の付く愛聴盤に限るが、このレコードの場合も3枚所有している。まず最初に買ったのが60年代半ばにプレスされたと思しき “NEW YORK USA” 表記の盤で、大阪のレコ屋でニアミントなピカピカ盤を 12,000円で購入。更に Classic Records からバーニー・グランドマンのマスタリングによる 200g復刻盤が出た時にそれも迷わず購入。すっかり調子に乗った私は毒を食らわば皿までとばかりに 1stプレス盤もいったれと色々探しまくり、eBay France(!) でジャケットが G で 盤質が VG+ 表記の盤を €200でゲット。当時のレートで確か3万円ぐらいだったと思うが、ジャケットを犠牲にして盤質優先で高額盤を安く買うという手口はバド・パウエルの「The Scene Changes」の時と同じだ。
 因みにこのレコードの真正1stプレス盤を見分けるポイントは、①センター・レーベルのアドレス表記が “47 WEST 63rd NEW YORK 23” で尚且つ NOTE の Eの下に ® マーク無し、②両面 Deep Groove 有り、③デッドワックスに手書きRVG + 耳マーク 、④裏ジャケ下の BLUE NOTE RECORDS の後に INC 無し、の4点だ。
 肝心の音の違いだが、結論から言うと 1stプレスが圧倒的に素晴らしい。何よりもまず音の生々しさがハンパないのだ。“ブッ!” とスピーカーから転がり出るようなロリンズのテナーはまさに巨大な音の塊だし、ナイアガラ瀑布と呼ばれるブレイキーのドラミングのド迫力はもう言葉にできないほどのエグさで、まるでかぶりつきの特等席でこの熱気迸るセッションを聴いているかのような錯覚に陥ってしまう。ビートルズで言えば金パロの 1G盤を聴いた時の衝撃に近いだろう。ブルーノートのリアル 1stプレス盤はその人気と稀少性から最低でもウン万円、下手をするとその10倍いくケースも少なくないので通常は買おうという気すら起きないが、パウエルの「The Scene Changes」やロリンズのこのレコードに関しては苦労して手に入れて本当に良かったと思っている。
 それに比べると60年代プレスの “NEW YORK USA” 表記盤の方は絶対的なエネルギー感と演奏の空気感でどうしても差をつけられてしまう。盤質がめちゃくちゃ良いのでヴォリュームを上げていけばそれなりに満足のいくド迫力サウンドが楽しめるのだが、それでもやはり紙一重、いや二重くらいの差がある。今のF1で言えば、フェルスタッペンとペレスぐらいの差(笑)は確実にあると思う。このタイトルはかなり売れたのか60年代前半だけでも何度もプレスされたようなので、“耳” マーク無しで RVG刻印も機械打ちの私のレコはおそらく “NEW YORK USA” 表記盤の中でもレイター・プレスにあたるのだろう。
 最後にバーニー・グランドマンのマスタリングによる Classic Records 復刻盤だが、こいつは私の予想した以上に良い音がしていてビックリ。音の厚み・迫力とクリアネスが非常に高い次元でバランスした素晴らしい音である。F1に例えると(←他のスポーツはあまり詳しくないので申し訳ない...)開幕数戦調子の良かったアロンソのアストンマーチン、あるいはここ数戦の絶好調マクラーレンといったところか。決してレッドブル... じゃなかった、1stプレスの音にはかなわないにせよ、コスパで言えば №1だろう。敢えて点数化すると、1stプレス盤が100点満点として、耳なし60'sプレス盤が85点、Classic Records復刻盤が95点といったところ。バーニー・グランドマン恐るべしだ。

【BN祭り③】At the Hickory House / Jutta Hipp

2023-08-06 | Jazz

 ブルーノート・レーベルの本流は2管3管のハードバップ・ジャズであり、ピアノトリオはどちらかというと傍流的な存在である。しかしそれらピアノトリオ盤のレベルは非常に高く、前出のパウエル「The Scene Changes」を始め、Horace Parlanの「Us Three」やSonny Clarkの「Sonny Clark Trio」など、珠玉の名盤が目白押し。今回取り上げる「Jutta Hipp at the Hickory House」(Vol.1とVol.2の2枚に分けてリリースされている)も知名度はやや低いものの、ピアノトリオ好きにはたまらないレコードだ。
 このアルバムは元々愛聴曲の「Dear Old Stockholm」目当てでCDを購入したのだが、いきなりA①「Take Me In Your Arms」の凄まじいまでのノリに完全KOされた。エド・シグペンの変幻自在のブラッシュ・ワークが生み出す強烈無比なスイングが超絶気持ち良くて私のスイートスポットを直撃したのだ。逆にA②「Dear Old Stockholm」はスウェーデン民謡である原曲通りのスロー・テンポな演奏でちょっと肩透かし。もう少しテンポを上げてパウエルの「イン・パリ」みたいにガンガン弾いてくれたらよかったのに... しかし収録曲の大半はミディアム以上の小気味よいテンポで軽快にスイングするピアノトリオ・ジャズが楽しめて言うことナシだ。続編といえる「Vol.2」も「Vol.1」同様の素晴らしさで、A①「Gone With The Wind」やB①「I Married An Angel」なんかもうエド・シグペンの “ブラッシュ・パラダイス”(笑)という感じで、ブラッシュ大好き人間の私は顎が落ちそうだ(≧▽≦)
Take Me In Your Arms - Jutta Hipp

Gone With The Wind - Jutta Hipp


 そういうわけで本当ならレーベル表記が Lexington の1stプレス盤が喉から手が出るほど欲しかったのだが、激レアすぎて(←おそらくあまり売れなかったのだろう...)めったに市場に出てこないし、出てきたとしても10万円超えという無慈悲な値付けがほとんどで、貧乏な私には到底手が出ない。ブルーノートには前回取り上げた「J.R.Monterose」を始めとして、グリフィンの「A Blowing Session」やソニー・クラークの「Dial S For Sonny」など、“50年代にリリースされた後、なぜか60年代には再発されず、70年代に入ってようやくUA表記で2ndプレス盤が出た” という恨めしいレコードが何枚もあるのだが、悲しいことにユタ・ヒップのこのライヴ盤もそんなコレクター泣かせの1枚なのだ。
 私はブルーノートが1966年にLibertyに買収された後の “Liberty”表記盤や “United Artists” 表記盤には強い偏見を持っていて、基本的には購入対象になりえない。しかし上記のような “UAが2ndプレスの盤” に関しては背に腹は代えられず、“70年代プレスでもモノラル盤やったらひょっとして大丈夫かも...” という希望的観測でもって何枚か購入。このユタ・ヒップ盤もそんな1枚で、RVG刻印はないものの私が予想していた以上の良い音で鳴ってくれてホッと一安心。音の鮮度や空気感のようなものはイマイチだが、モノラル音源特有のエネルギー感はそれなりに伝わってきて、もっと薄っぺらくてショボい音を予想していた私は “値段を考えたら上等やん...” と喜んでいた。
 それからかなり経って例の “プレミアム復刻シリーズ” がディスクユニオンから発売され、前回取り上げた「J.R.Monterose」と一緒にユタヒップ盤も購入したのだが、JR盤が “ハズレ” だったのに対し、2枚のユタヒップ盤は “当たり”。何よりもまず音の情報量がハンパなく、トリオのスイング感が加速されているように思えたほど。私が買った “プレミアム復刻シリーズ” には “ハズレ” が少なくないが、それはフラット・トランスファーによってRVGが得意とする2管3管のハードバップ・ジャズにかけた “音の魔法” が解けてしまったからなのではないかと思っている。逆にブラッシュ主体のピアノトリオには “プレミアム” の音作りが上手くハマったのだろう。
 ということで、今回の聴き比べは全く異なる音作りの方向性がそれぞれの音に反映されており優劣付け難い。このレコードにクリアネスを求めるならプレミアム復刻盤、モノラルらしいエネルギー感を求めるならUA盤ということになるだろうか。結果として2種類の異なった音作りで大好きなピアノトリオが楽しめるので、このユタ・ヒップ盤に関しては両方買って正解だったと思っている。もちろんチャンスがあればオリジナル1stプレス盤の音を聴いてみたいが、宝くじでも当たらん限りちょっと無理っぽいなぁ...

【BN祭り②】J. R. Monterose

2023-07-30 | Jazz

 J.R.モンテローズのテナーはクソカッコ良い。ノリ一発で有無を言わさぬ豪快なアドリブがたまらないソニー・ロリンズや圧倒的なドライヴ感が快感を呼ぶジョニー・グリフィン、温かみのあるスモーキーなトーンで味わい深いプレイを聴かせるハンク・モブレイと、ブルーノート・レーベルはテナー・サックスの名演の宝庫だが、そんな中にあって独特のスタッカートを活かした果敢な突っ込み奏法(?)で異彩を放っているのが J.R.モンテローズだ。
 J.R. はコアなファンの間で根強い人気があるのだがリーダー作は驚くほど少なく、1950年代ではブルーノートに吹き込んだ「J.R. Monterose」(1956)とJARO(←ジャロって何じゃろ?レベルの超マイナー・レーベル)からリリースした「The Message」(1959)の2枚しかない。サイドメンとして参加した作品にしても、彼を一躍有名にしたミンガスの「直立猿人」、それに相性の良いケニー・ドーハムの「ジャズ・プロフェッツ」や「カフェ・ボヘミア」など数えるほどしかないという、ジャズ・ミュージシャンとしては珍しいくらいの寡作家なのだ。
 私はブルーノート盤をRVGリマスターCDで聴いていっぺんに彼のテナーが好きになった。中でもA面2曲目の「The Third」は “曲良し・演奏良し・スイング良し” と3拍子揃った出色の一曲だ。その後アナログ・レコードを買い始めてからは何とかJ.R.のオリジナル盤を手に入れようと頑張ったのだが、片や超人気レーベルのブルーノート、片や超マイナーレーベルのジャロということで大苦戦。結局ジャロ盤の方はなんとか入手出来たが、ブルーノート盤の方は中々買えずじまいで悶々としていた。
The Third - J.R.Monterose


 1950年代半ばに出たブルーノートのレコードは、1stプレスのセンター・レーベル表記が “767 Lexington Ave NYC” で、その後 “47 West 63rd - New York 23”→“47 West 63rd - NYC”→“New York USA”→“A DIVISION OF LIBERTY RECORDS, INC”→“A DIVISION OF UNITED ARTISTS, INC”と変わっていくのがデフォルトだった。私は1stプレス盤が10万円を超えるような激レア人気盤は60年代前半に出た“63rd”や“New York”表記の2nd/3rdプレス盤(→20年前は2~3万円くらいで買えたが、さっき見たらめっちゃ高くなっててビックリ...)を買ってお茶を濁していたので、50年代にリリースされた後、60年代に再発されなかったこの「J.R. Monterose」に関しては、薄っぺらいUA盤で我慢するか、あるいはオリジナル盤に近い高音質のリマスター盤が出るのを辛抱強く待つかの2択を迫られたのだった。
 結局、堪え性の無い私は “RVG刻印はないけど一応モノラルやし、国内盤よりはマシな音してるやろ...” と自分に言い聞かせて UA盤を4,000円で購入。デッドワックス部には RVG の代わりに Eck という 謎の刻印があって、音の方は結構粗削りながらも予想していたよりは遥かに良い音だった。音の傾向としては初期のビートルズのフランス盤に近い感じ。私は “UAって今までバカにしてきたけど、めっちゃコスパええやん!” とそれなりに満足していた。
 しかしその後、Classic Recordsから再発されたリマスター重量盤がヤフオクで安く出ていたのを見て好奇心を抑えられなくなり購入。出てきた音はUA盤を凌ぐ情報量と迫力で、それが名匠バーニー・グランドマンのマスタリングによるものなのか、200g重量盤のせいなのか、Quiex SV-P という高級ビニール材質のおかげなのかはわからないが(←これらすべての相乗効果なのかも...)、この盤以降私はClassic Recordsの再発盤をガンガン買うようになった。
 それから更に何年か経って、今度はディスクユニオン主導の “プレミアム復刻シリーズ” というリイシュー盤が発売された。普段なら国内盤なんぞには目もくれない私だが、“1950年代当時のプレスマシーンを使用した米国プレスの輸入盤”で、“~From The Original Master Tapes~というサブタイトルが示す通り、あえてRVGサウンドに近づけようとはせず、素のマスターテープに記録された音をそのまま円盤に刻み込むことにより、録音現場のそのままの生々しい音の記録をリアルに再生可能になりました。” という煽り文句を見てまたまた好奇心を抑えられなくなり購入。しかしスピーカーから出てきた音は良く言えばフラット、悪く言えば何の面白味もない淡白な音で、ハッキリ言って私の好みとは正反対のサウンドだ。オーディオ・マニアならこっちに軍配を上げるかもしれないが、ラウドカットや轟音爆音が三度のメシよりも好きな私としては、積極的に音を創り込んでジャズらしいサウンドに仕上げたRVGの偉大さを再認識させられる結果となった。ユニオンの企画らしく、溝、アドレス、®無しといった要素がオリジナルに忠実に再現されている拘りっぷりにはさすがと感心させられたが、それでもジャケットが数ミリ程度小さくて中にレコードを入れるとブサイクに膨らんでしまう点は気に入らなかった。
 ということで、聴き比べた結果としては Classic Records盤 > UA盤 >>> プレミアム復刻盤 となり、聴かへんレコードを持っててもしゃあないのでプレミアム復刻盤は即売却... 今ではClassic Records盤をメインにして、たまに気分を変えたい時にUA盤を聴くことにしている。

【BN祭り①】The Scene Changes / Bud Powell

2023-07-25 | Jazz
 今日は何と言ってもまずコレでしょう。特に最後のKOシーンはスカッとしまっせ\(^o^)/ 野球の大谷選手といい、この井上選手といい、ホンマに日本の誇りですわ!!!
井上尚弥 vs. スティーブン・フルトン WBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ


 さて、ここからはいつものように音楽の話。ブルーノート祭りのトップバッターはバド・パウエルの「The Scene Changes」だ。ブルーノートというとどうしても2管3管ハードバップ / ファンキー・ジャズのイメージが強いが、このアルバムはそういったことを遥かに超越した次元でブルーノート・レーベルに、いやジャズ界にドーンと屹立しているのだ。
 バド・パウエルは私が最も好きなジャズ・ピアニストで、曲単体でいえば凄まじい疾走感に圧倒される初期の「Tempus Fugit」や哀愁舞い散る名曲名演に涙ちょちょぎれる後期の「Dear Old Stockholm」が真っ先に頭に浮かぶが、アルバム全体の完成度の高さで言えばこの「The Scene Changes」が断トツに素晴らしい。
 そもそもジャズメン・オリジナル曲というのはメロディーが薄っぺらくて心に残らないものが大半で、心を鷲づかみにするような美旋律を持ったキャッチーな曲は1割にも満たないというのが長年の経験に基づく私の考えだが、全9曲すべてをパウエルのオリジナルで固めたこのレコードは奇跡的に駄曲が1曲もない “打率10割” レベルの神アルバムで、一度聴いたら忘れられないようなキャッチーなメロディーに溢れているのだ。
 A①「Cleopatra's Dream」(クレオパトラの夢)は一時期サッポロビールのTVCMソングとして日本全国のお茶の間(←今ではもう死語ですな...)に流れていたくらいの大名曲なのだが、残りの8曲も負けず劣らずエキゾチックなメロディーが出るわ出るわのわんこそば状態で甲乙付け難い。これほどまでにクオリティーの高い楽曲がいくつも生まれた理由としては、人種差別のえげつないアメリカを離れて住みやすいパリへ移住する直前のレコーディングだったことが大きいのではないか。それが証拠にB面の曲名を見ても、海峡を渡って(Crossin' The Channel)ヨーロッパにやって来て(Comin' Up)そこに着く(Gettin' There)と景色が変わる(The Scene Changes)と、海外移住を目前に控えてまさに心ウキウキ状態のパウエルの気持ちが伝わってくるようだ。だからこんなに楽し気なメロディーが次から次へと浮かんできたのだろう。
Cleopatra's Dream
 
Gettin' There


 1stプレス盤(1959年)は47 West 63rd - NYC表記で両面溝あり、2ndプレス盤(1962年)ではINC - NEW YORK USA表記になって片溝のみ、3rd~4thプレス盤(1962~66年)では同じINC - NEW YORK USA表記ながら、それまであったデッドワックス部の Plastylite P(←いわゆるひとつの“耳”マーク)や 9M 刻印、そしてDeep Grooveも無くなってしまう。
 このレコードは超の付く人気盤で、状態の良い1stプレス盤は10万円近くするため、最初はピカピカの4thプレス盤を1万円で手に入れて満足していたのだが、やはりどうしても1stプレスの音を聴いてみたくなって、ジャケットがGで 盤質がVG+表記の盤を28,000円でゲット。実際に聴いてみるとほぼノイズレスのNM状態で大ラッキーしたが、何よりも驚いたのはそれまで聴いてきた4thプレス盤との音の違いだ。
 4thプレス盤の方は音像はやや小ぶりながらカチッとまとまっていて平均点が高く、聴き比べなければ十分満足いく音で、車に例えるなら非常に優秀な日本車という感じ。一方、1stプレス盤の方はとにかく音場が雄大で、演奏を包み込む空気感みたいなものまで生々しく伝わってくるのだ。おぉ、これが1stプレスの威力なのか... 車で言うと大排気量のアメ車という感じで、アクセルをガッと踏み込めばドバーッと余裕で加速していくあの圧倒的なスケール感に似ているように思う。
 最初に買った4thプレスの盤質が良かったこともあって正直 “これで十分やろ...” と思っていたが、一度1stプレス盤の音を聴いてしまうとどうしてもそっちばかり聴きたくなってしまう。今回ブログに書くにあたって久々に聴き比べてみたが、ビートルズで言うと「Please Please Me」の “金パロ” と “黄パロ” 以上の開きがある。この違いがプレス時期から来るものなのか、それとも “耳” マークの有無から来るものなのかはわからないが、とにかくこのレコードが好きなら無理してでも1st プレス盤を買う価値は十分にあると思う。いやぁ、パウエルさんホンマにゴキゲンやわ... (≧▽≦)

真夏のブルーノート祭り

2023-07-23 | Jazz

 この土日は久々に映画を一杯観た。前回取り上げた「ジョン・ウィック」シリーズに加えて「ミッション・インポッシブル」の旧作や「トップ・ガン・マーヴェリック」といったお気に入りの映画を一気観したのだ。やっぱりキアヌ・リーブスやトム・クルーズはめちゃくちゃカッコエエのぉ...(≧▽≦) ということでとりあえず映画は十分満喫したので、明日からは又今まで通りの音楽漬けの日常に戻ろう。
 その音楽だが、スピーカーのネットワーク交換によって今まで以上にパワフルな音が聴けるようになったこともあって、ロックではラウド・カット盤、ジャズではRVG、すなわちルディ・ヴァン・ゲルダーが録ったブルーノート盤がターンテーブルに乗る回数がこれまで以上に増えた。ジャズに関しては私はどちらかと言うとスタン・ゲッツやアート・ペッパーのようなレスター・ヤング系の流麗な音が好きなのだが、今の気分はゴリゴリのサックスがスピーカーから迸り出るブルーノートのRVGサウンドなんである。まぁこれにはスピーカー云々以外にも、今の仕事が面白くなくてストレスが溜まっているせいで身体が暴力的なサウンドを欲しているせいもあるかもしれない。そんなこんなで自分のブログで真夏のブルーノート祭りをやろうと思いついたのだ(←“祭り” 好きやなぁwww)。
 ウチのレコード棚のジャズのコーナーはこれまでシンプルに楽器別に並べていたが、先日気分転換のつもりで “ブルーノート・コーナー” を新設、オリジナル1stプレス盤はもちろんのこと、2ndプレス盤や3rdプレス盤、それに名匠バーニー・グランドマンがマスタリングした超高音質&ド迫力の復刻盤であるClassic Records のMONO 200gシリーズに至るまで、手持ちのBN盤をかき集めてレコード番号順に並べてみたところ、結構な枚数があってビックリ...(゜o゜)  今までは楽器別に分散していて気付かなかったのだ。
 とまぁこのように私はブルーノートというレーベルが大好きなのだが、かと言って “ブルーノートなら何でも好き!” という博愛主義者ではない。まず4100番台に入ってからちらほら顔を出す “新主流派”(←結局BNというコップの中の嵐で、“主流” とは程遠い “亜流” のまま終わった...)ミュージシャンによる無味乾燥なモード・ジャズは生理的に受け付けない。初心者の頃に一度アンドリュー・ヒルというキモいピアニストを無理やり聴かされたことがあって、そのあまりのつまらなさにマジで吐きそうになったトラウマがある。ましてや騒音・雑音の類に過ぎないフリージャズなど論ずるにも値しない。私が蛇蝎の如く忌み嫌っているこの手のジャズが増えてくる4100番台半ば以降のレコードはほとんど持っていない。
 私が愛してやまないのは1500番台、そして4000番台にキラ星の如く並んでいるハードバップ/ファンキー・ジャズの名盤たちだ。アート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズを始めとしてソニー・ロリンズやハンク。モブレイ、ソニー・クラークにリー・モーガンと、このあたりはまさにモダン・ジャズの王道とでも言うべき充実ぶりなのだ。
 1500番台、そして4000番台のブルーノート盤が凄いのは、音楽自体の素晴らしさに加えて名エンジニアのRVGによる迫力満点の音作り、そしてセンスの塊と言うべきデザイナー、リード・マイルスが作り上げた超カッコ良いジャケット・アートワークという三位一体攻撃によって、 “商品” として完璧なパッケージに仕上げられているところだ。ジャズの世界におけるブルーノートは、レーベルとグループという違いはあれど、ロック/ポップスの世界におけるビートルズのような、まさに唯一無二の存在なんである。ストーンズやビーチ・ボーイズがいくら頑張ってみたところでビートルズに敵わないように、プレスティッジやリバーサイドが束になってかかってもブルーノートの比ではないのだ。
 これから数回にわたってそんなブルーノートのレコード群の中から選りすぐりの愛聴盤を取り上げて「1stプレス盤 vs 2nd/3rdプレス盤」や「ベスト・オブ・ザ・レスト:リイシュー盤バトルロイヤル」みたいなマニアックな視点から聴き比べをやっていきたいと思っている。
【検証】BlueNote プレミアム復刻盤・USオリジナル盤の聴き比べ

「タンパのペッパー」ゲット!

2023-01-09 | Jazz
 私はジャズのアルト奏者では哀愁舞い散る音色で軽やかにスイングするアート・ペッパーが一番好きで、50年代に出た彼のアルバムで入手可能なものは大体オリジナル盤で持っている。困るのは出来の良いアルバムに限って超の付くマイナー・レーベルから出ていることで、そのせいかオリジナル盤は滅多に市場に出てこないし、仮に出てきたとしても状態の良いものは目の玉が飛び出るようなプレミア価格で取り引きされている。もちろんCDで聴けるっちゃぁ聴けるが、やはり彼の艶めかしいアルトは無味乾燥なCDではなくオリジナル盤の濃厚な音で聴きたい。
  “タンパ” というマイナー・レーベルから出ている彼のレコードは有名な「Besame Mucho」入りの “RS-1001” とマーティ・ペイチ名義の “TP-28” の2枚で、通称「タンパのペッパー」と呼ばれておりマニア垂涎の存在である。その1stプレス盤はどちらにも10万円を軽く超える値段がつけられていて、ちょっとやそっとでは手が出ない。
 私の場合 1stプレス盤が高すぎて買えない場合は音質が近い 2ndプレス盤、例えばブルーノートの “47 WEST 63rd NYC”盤なら “NEW YORK USA”盤、という感じで手を打つことが多い。「タンパのペッパー」は2枚ともピンク色のセンター・レーベルで有名な1年落ちの2ndプレス盤があるのだが、悲しいことにビニールのクオリティが劣悪なせいかノイズが酷いカゼヒキ盤ばかりで(→初心者の頃、何も知らずに購入してその音の酷さに愕然とし、即刻売り飛ばした...)ハッキリ言って論ずるにも値しない。
 はてさてどうしたものかと考えていた時に偶然見つけたのがロンドン・レコードから出ているUK盤だった。このレコードは収録時間自体が短いせいか10インチ盤で出ており、US盤とほぼ同時期の1957年リリースでありながら値段が結構安かった(6,000円ぐらい)こともあって、「タンパのペッパー」は2枚ともUK盤10インチを買って満足していた。
 ところがその後、大阪にあった廃盤専門店「EAST」でUS盤1stプレスを聴かせてもらった時にその音圧の高さとペッパーのアルトの音色が手持ちのUK盤よりも遥かに艶めかしく聞こえたことにショックを受け、いつか「タンパのペッパー」のUSオリジナル盤を手に入れてやるぞと心に決めた。そしてそれから約20年経ち、昨年ようやく “TP-28” の方を入手したのだ。
 この “TP-28” の正式名称は「Marty Paich Quartet featuring Art Pepper」という。最初期プレスにあたるのはRED WAX(赤盤)で、まともな盤質のものは十数万円で取り引きされているので、現実主義者の私は0の桁が一つ違うノーマルな黒ビニール盤の方を探していた。更にこの黒ビニール盤にもセンター・レーベルのデザイン違いの2種類のヴァージョンが存在し、当然RED WAX盤と同じレーベル・デザイン盤の方がウン万円高くなるのだが、音さえ良ければレーベル・デザインなんてどーでもいい私としてはこのディフ・レーベル盤(←スタンパーは1stプレスと同じでレーベル・デザインだけが違うので、1stと2ndの中間プレス?みたいなモン...)にターゲットを絞ってネットで網を張っていた。結局ヤフオクでVG+盤が11,500円と、ちょっと拍子抜けしてしまうぐらい安く買えたのだが、あまりの人気の無さに “ひょっとしてコイツもピンク・レーベルみたいなカゼヒキ盤ちゃうやろな...” と、レコードが届くまで正直不安だった。
 いつものように届いた盤を丁寧にクリーニングし、ドキドキしながら盤に針を落とす。2ndプレス盤で不愉快極まりなかった “サーッ” というあの忌々しいサーフェス・ノイズは... ない!!! よかったぁ... カゼヒキ盤じゃなくて。NMじゃないので無音部分に多少のチリパチはあるが、音圧が高いので音楽が始まってしまうとノイズはほとんど聞こえない。モハメド・アリではないが、まさに “蝶のように舞い、ハチのように刺す” という感じで縦横無尽のプレイを聴かせるペッパーのアルトの音がこれまで聞いたことがないくらい瑞々しい音でスピーカーから飛び出してきて嬉しいったらありゃしない!
 ジャケット上下にセロテープ補修がしてあったり裏ジャケにデカデカと前所有者の名前が書いてあったりで(←このパターン多いよな...)ちょっと痛々しいが、私は全く気にならない。ジャケットを聴くわけではないのだ。それより何より、ペッパーの艶々したアルトが天衣無縫なアドリブを聴かせてくれるこのレコードを安く買えたのがめっちゃ嬉しかった。
Marty Paich Quartet featuring Art Pepper - You and the Night and the Music

Portrait In Jazz (Stereo) / Bill Evans

2022-12-17 | Jazz
 今日は久々にジャズ・レコードのお話。そもそも私がアナログ・レコード、それもオリジナル盤を買い始めたのはグランジ / オルタナやR&B / ヒップホップまみれの90年代洋楽チャートに嫌気がさしてコンテンポラリーなロック・ポップスと決別し、他ジャンルを模索している中で聴き始めたモダン・ジャズがきっかけで、同じ演奏をCDとオリジナルLPで聴き比べてそのあまりの音の違いに衝撃を受け、ブルーノートやプレスティッジ、ベツレヘムといったレーベルを中心に、CDで聴いて特に気に入った盤をオリジナル盤で買うようになったのだった。あれから20年以上が経ち、欲しかったジャズのオリジナル盤はほとんど手に入れることが出来たが、未だに買えてない盤が数枚あって、何とかゲットしようと根気強くネットで網を張っていた。そして先日ついにその中の1枚をめでたく入手できたのだが、そのレコードこそ今日取り上げるビル・エヴァンスの「Portrait In Jazz」ステレオ1stプレス盤なのだ。
 このレコードは音の悪いオルフェウムのリイシュー盤なら簡単に手に入るが、オリジナルであるリヴァーサイドの黒レーベル盤となると中々市場に出てこないし、ごくたまに出てきても$300を超える超高値で、私なんかには手も足も出ない。今の時代、確かに金さえ出せば大抵の物は買えると思うが、それではそのレコードを聴くたびに毎回 “ぼったくられたなぁ...” という忸怩たる思いが頭をよぎることになって、音楽を聴く喜びよりも不愉快な気持ちが先に立ってしまう。私はいくらそのレコードが欲しくても、自分が考える適正価格以上の値が付いたレコードは絶対に買わない主義なので、「Portrait In Jazz」のステレオ1stプレスを中々手に入れることができなかったのだ。
 今年に入って狂ったような円安に突入したのと、Discogsの改悪に愛想が尽きて絶縁処分にしたことのダブルパンチで海外からレコードを買うペースがガクンと落ち、エヴァンス遠のいてしもうたなぁ... と半ば諦めていたのだが、先月 Discogsの代わりにチェックするようになった CD and LP というサイトに「Portrait In Jazz」ステレオ黒レーベル盤が出品されているのを発見。値段を見ると驚いたことに $75という嘘みたいな低価格。慌てて商品説明を読むと、盤質は VG(plays with some crackle)なのだがジャケットに難ありということで G+ が付けられている。私は盤質さえOKなら余程のことがない限りジャケットのダメージは気にならないので、送料込みで VG盤が1万円ちょいで手に入るなら安いモンと思い、ダメ元の値下げ交渉も成功して$70でゲット。まさかこの円安の逆境の中でビルエバはんの垂涎盤がこんなに安く手に入るとは夢にも思わなんだ。人生とは不思議なモンである。
 届いた盤はスパイン部分に貼られたセロテープが茶色く変色してパラパラと剥がれてたり、ジャケットの底が完全に抜けてたり、裏ジャケに前所有者の名前が太いマジックでデカデカと書かれてたりで、これなら確かに由緒正しいコレクターには見向きもされないだろうという満身創痍ジャケだったが、盤の方はパッと見は大きなキズも無く一安心。最近の私的デフォルトになった3回連続超音波洗浄(←効果のほどは分からんけど1回きりよりは何かキレイになる気がする...)を施してからいよいよターンテーブルに乗せる。少なくとも見た目上はピッカピカのNM盤だ。
 実際に音出ししてみると、曲によって VG になったり VG+ になったり Ex になったりという感じだが、一番チリパチの大きな箇所でもリスニングの邪魔になるというほど酷くはない。特に大好きな「枯葉」「ウィッチクラフト」「ペリズ・スコープ」が Ex レベルの再生音で聴けるのがホンマにラッキーだ (^o^)丿 サックスやトランペット入りのにぎやかなジャズとは違い、ピアノ、ベース、ドラムスだけのピアノトリオ盤は繊細さこそが命なので盤質がめちゃくちゃ重要なんである。
 このレコードはオリジナル・モノラル盤(青レーベル)も持っているが、A②「枯葉」がモノとステレオで別のテイクが入っているということで、是非ともステレオのオリジナル盤を聴いてみたかったのだ。で、聴いてみた感想としては、しっかりとした芯のある音で特にエヴァンスのピアノの音が太く入っていて “ピアノが主役のトリオ” としての丁々発止のインタープレイが楽しめるモノ盤(←モチアンのブラッシュもしっかりした音で入っているが、ラファロのベースは何故か少しこもって聞こえる...)に対し、ステレオ盤の方はラファロのベースのキレが圧倒的に素晴らしく(←相対的なものかもしれないがピアノやシンバルの高域のヌケはイマイチ)、ベース中心の三位一体プレイが生み出す躍動感を存分に味わえる。極論すれば、エヴァンスを中心に聴くならモノ、ラファロを中心にトリオとしての進取性を楽しみたければステレオ、と言えるかもしれない。個人的な好みで言うと、ピアノのイントロの後に入っているラファロの“グィ~ン” というチョーキングがたまらないモノ・ヴァージョンに軍配を上げたい。
Autumn Leaves (Mono)

Autumn Leaves (Stereo)

 レコード・コレクションをしている人間にとって、長い間ずーっと欲しかったレコードをついに手に入れた時の喜びというのは筆舌に尽くし難いものがあるが、そういう意味でこの「Portrait In Jazz」ステレオ黒レーベル盤の入手はめちゃくちゃ嬉しい出来事だった。入手困難盤ゲットの秘訣は焦らずにただひたすら待つ... これに限りますな。

関税を払って手に入れたペッパーの45回転盤LP

2019-11-29 | Jazz
 前々から欲しかったAnalogue Productions社製「Art Pepper Meets The Rhythm Section」の45回転盤2枚組LP(AJAZ 7532)を手に入れた。このアルバムは星の数ほどあるジャズ・レコードの中でも5指に入るほどの愛聴盤で、コンテンポラリー・レーベルから出たオリジナル盤に加えて1992年にAnalogue Productions社が復刻した180g重量盤(APJ 010)も持っているのだが、巨匠バーニー・グランドマンによる真空管マスタリングが生み出す厚みのあるサウンドがめちゃくちゃ気に入って、それ以来 Analogue Productions という名前には全幅の信頼を置くようになった。
 とにかくこの復刻盤の音があまりにも良かったので、このアルバムに関してはこれで十分と思って過ごしてきたのだが、同社が2003年にAcousTech Masteringと銘打って45回転盤2枚組復刻シリーズとして再びこのレコードを出していたということを3年ほど前に知り(←遅っ!!!)、もうこれ以上は望めないんじゃないかと思えるあの音を更に磨き上げたという45回転サウンドをどうしても聴いてみたくなった。私は手を尽くして中古市場を探し回ったのだが時すでに遅しで、運良く見つけても発売時には$50だったものが$300オーバーという鬼のようなプレミア付きの値段が付いており戦意喪失。半ば諦めモードながら一応 Discogsの「ほしい物リスト」に登録しておいた。
 そして11月半ばのある日のこと、Discogsから “ほしい物リストのアイテム1点が出品されています” というメールが来た。どうせまた$300~$400やろ... と思いながら見てみると、何と$120という良心的な値付けである。しかも盤質を見るとNMとなっているのだ。違う盤を間違えて出している可能性もあるので一応セラーにメールして確認したが、どうやら本物っぽい。しかもUSセラーにもかかわらず送料は$20だという。私は小躍りしながら「注文する」をクリックした。
 USPS(United States Postal Service)を使ったアメリカからの郵便物はトラッキング№で追跡ができるので、私は毎日ネットでUSPSのトラッキング・サービスをチェックしながら到着を心待ちにしていた。このレコードは購入翌日に発送され、カリフォルニアから4日で大阪に着いたので、“この調子やったら明日か明後日には来そうやな...” とウキウキワクワクだったのだが、何とそれから5日間ずっと ‟Held in Customs”(税関で止められてます) 状態が続いたのだ。〝何でやねん?” と不審に思いながら大阪での6日目(!)を迎えた日、“今日もこのままやったら大阪国際郵便局へ直接電話して抗議したろ...” と心を決めてトラッキングのページを開くとステータスが “Customs Clearance Processing Complete”(通関手続き完了)に代わっており、私は安堵の胸をなでおろしたのだった。
 しかし話はこれで終わらない。その翌日のお昼頃、家にいる母親から職場のパソコンに(←スマホは大嫌いなので持ってない...)メールが来た。曰く、“今レコードが届いてんけど、国際郵便物課税と消費税で1,400円払わされたで。” とのこと。私は何のことかサッパリ分からなかったので、その “国際郵便物課税” とやらをググってみたところ、個人輸入の場合にかけられるものらしい。えぇ~っ、今まで何千枚というレコードを海外から買ってきたのに何で今回だけ関税がかけられたんやろ??? 税金に疎い私にはまったく納得がいかないが、払わな受け取れへんのならしゃあない。でも税金の上に更に消費税をかけるシステムってホンマにムカつくわ...
 納得いかないので更に調べてみたところ、“価格が1万円を超える輸入郵便物については、個人使用の物品や贈与品(GIFT)であっても関税と消費税が課税される。” とある。もしやと思い、帰ってパッケージに貼り付けられた送付状を確認すると、案の定 value 欄にはバカ正直に$120と書いてあって、ようやく状況が呑み込めてきた。
 因みに「国際郵便物課税通知書」「領収証書」の他に「不服申し立て等について」という書面が入っており、“この処分(←何でレコード買うて「処分」されなあかんのや?)について不服がある時は(←めっちゃ不服やぞ!)大阪税関長に対して再調査の請求又は財務大臣に係る処分(←つまり消費税分200円のことか...)については国税不服審判所長(←そんな役職あったんかwww)に対して審査請求をすることができます。” と書いてあった。税金をむしり取られるのはめちゃくちゃ腹立たしいが、だからと言ってたかだか1,400円のために裁判するほどヒマではない。
 とまぁこのようにスッタモンダの末に手に入れたこのレコードだが、音質の方はさすがにAnalogue Productions だけあって文句ナシだ。マスタリング・エンジニアは手持ちの92年盤がバーニー・グランドマンだったのに対し、今回手に入れた03年盤の方はスティーヴ・ホフマン... どちらも真空管を使ったマスタリングにかけては超の付く一流エンジニアである。
 聴き比べしてみた結果は実に興味深いもので、ざっくり言うとコクの92年盤 vs キレの03年盤、という感じで、92年盤の方がナチュラルな音場感で勝り、03年盤の方が各楽器のディテールの鮮明さで一日の長があった。バーニー・グランドマンはさすがロイ・デュナンの愛弟子だけあってペッパーのアルトが実にナチュラルにふっくらと鳴るし、スティーヴ・ホフマンの方はとにかく各楽器本来の音が再現されており、結論としては “オリジナルLPの音を更にブラッシュアップして現代に蘇えらせた92年盤” と “当時の録音現場で実際に鳴っていた音の忠実な再現を極めた03盤” というのが私なりの感想で、このアルバムが好きなら両方持っていて損はないスーパーウルトラ高音質盤だと思う。まぁこれだけ良い音が楽しめたのだから、1,400円の関税など安いものだと笑い飛ばすことにしよう。
Art Pepper Quartet - You'd Be So Nice to Come Home To

Kenny Burrell (BLP-1543)

2019-06-25 | Jazz
 私には長いこと探してるのに中々見つからない垂涎盤が何枚かあって、毎日そんなレコードのことばかり考えて過ごしているのだが、そういう入手困難盤を数年越し、ヘタをすれば十数年越しでついに手に入れることができた時の嬉しさはもう筆舌に尽くし難い。つい最近も長いこと欲しくて欲しくてたまらなかったレア盤を一気に何枚か買えて大喜びしたので、今日はその内の1枚を取り上げようと思う。
 そのレコードというのはハードボイルドな音色でカッコ良くスウィングするジャズ・ギタリスト、ケニー・バレルのブルーノート・レーベルにおける2枚目のアルバム(BLP-1543)で、その内容の素晴らしさもさることながら、ポップ・アートの巨匠アンディ・ウォーホルが描いたイラストをフィーチャーしたカッコいいジャケット・アートワークのせいでとてつもないプレミア付きで取り引きされているレコードなのだ。
 アンディ・ウォーホルといえば何と言ってもストーンズの「Sticky Fingers」(←例のジッパー付きジャケットのヤツね...)が断トツで有名だが、他にも同じストーンズの「Love You Live」やルー・リードの「The Velvet Underground & Nico」(←有名なバナナ・ジャケのヤツ)、ビートルズ関連ではジョン・レノンの「Menlove Ave」といったアルバムのジャケット・アートワークを手掛けており、その唯一無比と言えるデザイン・センスでレコード・コレクターの間でも抜群の人気を誇っている。
 このようにウォーホルのデザインしたロック・アルバムのジャケットは主に60年代後半以降のものになるが、それ以前の、ウォーホルがまだ “ごくごく普通のイラストレイター” だった頃に手掛けていたのは50年代ジャスのアルバム・アートワークだ。中でもジョニー・グリフィンの「The Congregation」とケニー・バレルの「Blue Lights Vol. 1」「Blue Lights Vol. 2」、そしてこの BN1543番「Kenny Burrell」(← Goldmine の Price Guide では「Kenny Burrell, Volume 2」となっているが、正式には self-titled abbum だ...)はかなり有名で、もちろん中身の音楽も素晴らしい。
 私はケニー・バレルの大ファンで、彼のアルバムはほとんどすべてオリジナル盤で持っているのだが、そんな中で唯一この1543番(← BNの1500番台は紛らわしいタイトルのアルバムが多いので、レコード№で呼ぶ方がかえってわかりやすいケースがある...)だけがどうしても手に入らなかった。まぁそれもこれもジャズ・レコードゆえのプレス枚数の少なさ、ブルーノート・レーベル人気による価格高騰、そしてそれに輪をかけるウォーホル・プレミアの3つの要因が重なったせいなのだろう。
 そういうワケでこのアルバムは滅多に市場に出てこず、たまに出てきたとしても1957年に出た Lexington Ave. アドレスの1stプレス盤は大体 $1,000~$1,500ぐらいで取り引きされていて全く手が出ないので、それと音がほとんど変わらないであろう New York, USA アドレスの2nd プレス盤(1963年リリース)に的を絞って何とか3万円以内で手に入れたいと思って虎視眈々と狙っていた。思えば私が eBayを始めてから今年でちょうど17年になるのだが、それより前の数年も入れると約20年越しということになる垂涎盤だ。
 そんな New York, USAの1543盤が eBayに出品されたのは先月の半ばで、ちょうどペパーズのニンバス盤の件でモヤモヤしていたこともあって、その鬱憤を晴らしてやろうと不退転の決意でスナイプ、終了直前まで $113だったところに $320を突っ込み(笑)結局 $213で落札できた。送料込みでも25,000円程度でゲットできて大満足だ。
 届いた盤は結構スリキズがあるものの、傷に強い BN盤とオルトフォンのモノ・カートリッジの相乗効果のおかげでチリパチ音が音楽の邪魔をすることはなく、コスパは上々と言えるレベル。演奏内容の方は CDでイヤというほど聴いてきたので隅々まで分かっているつもりだったが、やはりオリジナル・アナログ盤で聴くと音の厚みが段違いだし、ウォーホルのジャケットを見ながら聴くと更に音楽に深みが増すような錯覚すら感じてしまう。CDや配信ではこうはいかない。
 1956年3月に NYで行われたブルーノート・レーベルにおけるバレルの初セッションから5曲(トミフラのピアノ入りカルテットが A④B①の2曲+フランク・フォスターのテナー入りクインテットが B②③④の3曲)、同年5月に行われたデビュー盤「Introducing Kenny Burrell」(BLP-1523)用セッションからキャンディドのコンガが入った A①、ソロでガーシュウィンの名曲を美しくつま弾いた A②、そしてカフェ・ボヘミアでのケニー・ドーハムとのライヴ音源からの A③(←ドーハム名義の「Round Midnight At Cafe Bohemia」に入ってる同曲とは全くの別テイクで、こっちの方は曲の前半部でバレルのソロが大きくフィーチャーされている!)の計8曲で構成されており、様々なフォーマット、メンツの中で粋にスウィングするバレルの魅力が全開だ。
 中でも私が一番気に入ってるのが A④「Moten Swing」で、まさに“間”の芸術としか言いようのない絶妙なテンポ設定でバレルが淡々とこの曲を料理していくところが超カッコイイ(≧▽≦)  オリジナル・モノLPならではの轟音でドスン、ドスンと腹に響くオスカー・ペティフォードのベースに歌心溢れるトミー・フラナガンのピアノと聴き所が満載だ。それにしてもヴァンゲルダー・カッティングの LPはホンマに音がエエなぁ... (≧▽≦)
Moten Swing

George Wallington Quintet at the Bohemia

2018-06-16 | Jazz
 先日、仕事の関係で久々に神戸に行く機会があった。仕事といってもただクライアントを三宮まで連れて行き、用事が済めば連れて帰ってくるだけというラクチンなミッションで、しかもありがたいことに3時間ほどの自由時間があったので、これ幸いとばかりにレコ屋巡りをすることにした。
 神戸のレコ屋と言えば何はさておきハックルベリーである。このお店では過去に何度も掘り出し物を見つけてオイシイ思いをしているし、値段設定も極めて良心的なので秘かに期待していたのだが、残念ながら今回は目ぼしいブツは無し。以前と比べると店内在庫における国内盤の比率が高くなっているようだ。やはり今の時代、オリジナル盤が欲しければネットオークションで手に入れるしかないのだろうか?
 一番期待していたハックルベリーで収穫が無かったので、他に予定していたワイルドハニーパイやりずむぼっくすも多分アカンのちゃうかという不安が頭をよぎる。脚を棒にして雨の中を歩き回って収穫ゼロではやりきれない。しかし時間はまだ2時間ほど残っている。そこで “ほんならいっそのこと梅田まで足を延ばしてディスクユニオン行ったろか...” という大胆なアイデア(笑)が思い浮かんだ。もし何かのアクシデントがあって2時間以内に戻ってこれなければエライことになるが(←一応仕事で来てるのでね...)不測の事態が起きなければ往復1時間半を差し引いてもギリギリ間に合う計算だ。ユニオン行ったら何かあるんちゃうか... という直感に背中を押されるように私は梅田行きの特急に飛び乗った。
 電車を降りて降りしきる雨の中を急ぎ足で歩き、ディスクユニオン大阪店に到着。最近ネットでしかレコードを買ってないのでここにくるのはホンマに久しぶりだ。まずビートルズのコーナーに直行するが、ハッキリ言ってロクなものがない。稀少盤は“ビートルズ廃盤セール”のために取ってあるんかな... などと考えながら他のロックの棚も見てみたがやはりダメ(>_<)  せっかく梅田くんだりまで来たのに収穫なしか... と半ば諦めモードに入りなりながら、最後に一番奥のジャズのコーナーに足を踏み入れた。
 壁にはマイルスの「クッキン」やガーランドの「グルーヴィー」といったモダンジャズのオリジナル盤が所狭しと飾られており、 “ネットの時代になってもやっぱりユニオンだけはオリジナル盤天国やなぁ...” などと感心していたのだが、そんな中の1枚に私の目は釘付けになってしまった。それが「ジョージ・ウォーリントン・クインテット・アット・ザ・ボヘミア」で、もちろん赤白プログレッシヴ・レーベルのオリジナル盤。ずーっと欲しかったけど値段が高くて手が出なかったこのレコードが何と44,000円の値札を付けて目の前の壁に掛かっているのだ!
 ウォーリントンの「ボヘミア」はプログレッシヴというマイナー・レーベルのせいで “幻の名盤” 扱いされており、EX盤ならeBayで $500以上、ヤフオクでも7万円前後で取り引きされている超稀少盤である。ネットオークションにはだいたい年に数回ぐらいの頻度で出品されており、そのたびにウォッチリストに入れてはみるものの、ラスト数分のビッドの応酬による値段の爆上げに毎回戦意喪失して苦汁をなめ続けてきた恨めしい盤なのだ。そんな垂涎盤が今、“私を手に取って! ” とばかりに抗しがたいオーラを放ちながら誘惑してくるのだからこれでコーフンしない方がおかしい。
 状態は“中古品B”で、“ジャケ傷み、盤スレキズ(チリノイズ箇所有り)”となっているが、ジャケットの方は右上隅の部分がわずかに傷んでいるぐらいで全く気にならない。問題は盤質、それも見た目のヴィジュアル・グレードではなく実際に音を鳴らした時のプレイ・グレードだ。私はチリノイズの程度を知りたかったので早速試聴コーナーで盤質をチェック。確かにそこかしこに軽いスリキズはあるが、実際に聴いてみると微かにチリパチいう程度で、一般的なコンディション表記なら VG++ か EX− といったところ。先月ゼップの青ロゴ盤を購入して緊縮財政を余儀なくされてはいるものの、この千載一遇のチャンスを逃せば次は無いかもと考えた私は “カード2回払い” という伝家の宝刀を抜き(←手数料ゼロやもんね...)、ついにこのレコードを手に入れることができた。リスクを冒して梅田まで来た甲斐があったというものだ(^.^)
 その日の晩、ルンルン気分で仕事を済ませて帰宅した私は、シャワーも晩メシも後回しでレコードをターンテーブルに乗せた。スピーカーから飛び出してきたサウンドは、さすがはルディ・ヴァンゲルダー録音!と言いたくなるような野太い音で、ユニオンの試聴用ヘッドフォンでは気付かなかった中低域の張り出しがライヴ会場にいるようなリアリティーを感じさせてくれる。とにかく今まで聴いてきたCDの「ボヘミア」とは激しく一線を画す、臨場感溢れるダイナミックなサウンドが気持ち良くて、これなら44,000円の価値は十分にあると思った。
 このレコードの一番の魅力は何と言ってもジャッキー・マクリーンのせっつくようなアルトのプレイだろう。中でも特に気に入っているのがB②の「ジェイ・マックス・クリブ」で、原曲の「朝日のように爽やかに」を絶妙にひねった旋律を “ペック奏法” で一気呵成に吹き切るその哀愁舞い散るプレイに涙ちょちょぎれる。続くB③「ボヘミア・アフター・ダーク」でドナルド・バードと繰り広げる二管ジャズのお手本のようなノリノリのプレイも聴き応え十分! ソニー・クラークの「クール・ストラッティン」と同じく、マクリーンの存在こそがこのレコードをハードバップの名盤たらしめているのだ。
 このレコードはブルーを基調としたジャケットも素晴らしく、ワシントン広場の凱旋門の下にクインテットのメンバーが佇んでいる写真が雰囲気抜群だ。見ただけで音が聞こえてきそうなジャケットとはこういうのを言うのだろう。ウォーリントンの顔のアップ写真(←それも目ぇ瞑っとるで...)を使った初CD化時のジャケは私的にはNGだ。モダン・ジャズのオリジナル盤は色使いや構図も含めてジャケット・アートとして愉しめるところが良いのであり、オリジナル・デザインを改悪したり差し替えたりした再発盤の偽物ジャケは作品に対する冒涜以外の何物でもない。
 ウォーリントンの代表作というとプレスティッジの「ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード」を挙げているジャズ・ガイド本が多いように思うが、お上品なウエストコースト・ジャズみたいにカチッとまとまったアンサンブルが鼻につく「キャリッジ・トレード」なんかよりもライヴの熱気溢れるこの「ボヘミア」の方が断然カッコ良いと思う。ジャズはハードバップ、そしてハードバップは “熱盛!” に限るのである。
George Wallington Quintet at the Cafe Bohemia - Jay Mac's Crib

George Wallington Quintet at the Cafe Bohemia - Bohemia After Dark

「Relaxin'」のイタリア盤とオランダ盤 ~寛ぐ美女たち~

2018-04-15 | Jazz
 私はネットオークションを始める前はレコ屋の通販でレコードを買っていた。関西のレコ屋巡りだけでは滅多に手に入れることができないような稀少盤が載っているリストを見るのが楽しくて色んなレコ屋のHPを覗いていたが、そこで偶然目にしたのがマイルス・デイヴィスの名盤「リラクシン」のイタリア盤とオランダ盤の “ディフ・ジャケ” 2枚で、どちらも寛いだ美女が寝そべっているアートワークがオリジナルUS盤とは一味違う妖艶な魅力を湛えていた。その時は他に欲しい盤がいっぱいあったこともあって “へぇ~、こんな盤もあるんか... ” と感心しただけだったが、その2枚の存在は “美女ジャケ好き” の私の脳裏にしっかりと刻み込まれた。
 昨年ビートルズの各国盤蒐集が一段落した時にたまたまこの2枚のことを思い出して Discogs を覗いてみたところ、イタリア盤の方は$600というボッタクリ価格のが1枚出ているだけで論外だったがオランダ盤の方で盤・ジャケ状態共にVG+で €60という出物を発見。“Sleeve is very nice, just a small writing on the front...” と書いてあったので念のためにセラーにメールして写真を送ってもらったところ、問題なさそうだったので即ゲットした。
 このレコード(PPR 075)はUSオリジナル盤から8年遅れの1966年にオランダでリリースされたモノラル盤で、ジャケットは綺麗にコーティングされたフリップバック仕様だ。ソファーに横たわって寛ぐ女性(←地べたにワイン置くんか...)についつい目がいってしまうが、さりげなく手前のテーブル上に置かれたトランペットがジャジーな雰囲気を醸し出している。ジャケット右上に青ペンでMBと書かれているのが玉にキズだが部屋の壁の落書きと考えれば(笑)ほとんど気にならない。ランアウト部分にはUSオリジナル盤と同じく機械打ちでRVGの刻印が刻まれているので、ひょっとするとオリジナルと同じ原盤から作られたスタンパーを使ってオランダでプレスしたのかもしれない。盤質はVG+そのもので微かなサーフェス・ノイズはあるものの、普通に聴く分には全く問題のないレベルだ。
 首尾よく「リラクシン」のオランダ盤を手に入れた私は今度はイタリア盤に的を絞り、MAX €150まで出す覚悟でネット上に網を張ってみたのだが、こちらの方は中々出てこない。試しにpopsikeで調べてみると、過去10年間でオランダ盤15枚に対してイタリア盤はわずか4枚という激レア盤だった。これはちょっと時間がかかりそうやなぁ... と思いながら毎日ネットでチェックすること約1年、ビートルズのイタリア盤狙いでこまめにチェックしていた eBayイタリアのオークションに何とこの「リラクシン」イタリア盤が出品されたのだ。ビートルズの網にマイルスが引っ掛かってくるとは...
 “イタリアのローカル・サイトやからあんまり激しい競争にはならんやろ...”という私の甘い予想を裏切って €12.99からスタートしたオークションには12人がビッド、結局 €124で辛くも落札できたが、自分みたいな “美女ジャケ好き” コレクターは世界中におるんやということがよーく分かった。まぁレコード・コレクターなんてほとんど男ばっかりなんやから、“美女ジャケ” にビッドが集中するのは当然と言えば当然ですな(^.^)
 それにしてもこのイタリア盤「リラクシン」(LPM 2059)のジャケットは現物で見るとネット上の小さな写真で見る何十倍も素晴らしい。オランダ盤も良かったが、私的にはこっちの方が好み(^.^)  ハンモックで寛ぐセクシーな女性が醸し出すえもいわれぬ開放感がたまらんのですわ。大袈裟ではなく、この魅惑のジャケットだけで €100以上の価値があると思う。ジャケットの作りはフリップバック仕様のペラジャケで、盤のランアウト部分にはオランダ盤と同様に機械打ちでRVGの刻印が刻まれている。盤そのものはバリバリのNMコンディションだ。
 で、実際に3枚の音を聴き比べてみるとイタリア盤もオランダ盤もかなり良い音では鳴るが、やはり音の鮮度の点でUSオリジナル盤がアタマ一つ抜けている。一番顕著なのが重低音で、US盤はA①「イフ・アイ・ワー・ア・ベル」やA③「アイ・クッド・ライト・ア・ブック」で躍動するポール・チェンバースのベースの音が凄まじく、まるでヘビー級ボクサーのボディー・ブローをガンガン受けているような感じなのだ。ただ、イタリア盤はプレス時期がUS盤とほぼ同じ1958年ということもあってかモノラル盤ならではのゴツゴツした武骨な音が愉しめるし、オランダ盤も60年代中期プレスということを考えればコレはコレでかなりエエ線いっていると思う。US盤を10点とするとイタリア盤は9点、オランダ盤は8点という感じ。因みに盤の重さはUS盤174g、イタリア盤169g、オランダ盤134gだった。まぁこの2枚に関してはジャケット目当てで買ったので音を云々してもしゃあないのだが...
Miles Davis - I Could Write A Book