shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

33 SINGLES MOMOE / 山口百恵

2009-04-30 | 昭和歌謡
 山口百恵がデビューしてからしばらくの間、私は彼女の良い聴き手ではなかった。ちょうど桜田淳子や森昌子らと共に中3トリオと呼ばれていた頃で、ラジオで聞いてもテレビで見ても何も感じず、言ってみれば “好きでも嫌いでもない” 状態だった。今聴いてみるとそれなりに良く出来た歌謡曲なのだが、当時は洋楽以外まったく眼中になかった。
 そんな私が「あれ?コレってちょっとエエかも(^.^)」と思えた彼女のシングルが「横須賀ストーリー」である。“今日も私は 波のように抱かれるのでしょう ここは横須賀~♪” というエンディングも他の歌謡曲とは一線を画す斬新なものだったし(というか、大仏とシカぐらいしか取り柄のない奈良に住んでる中学生にとって “横須賀” という地名の持つオシャレな響きだけでポイント高かったのかも...笑)、曲も明らかに新境地と言えるようなロック・フィーリングの薫りを湛えていた。それもそのはずで作詞作曲はあの阿木燿子&宇崎竜童の黄金コンビだったのだ。今にして思えばこれは彼女が “単なるアイドル” を超えた存在へと駆け上るターニング・ポイントになった重要な曲だと思うし、阿木宇崎コンビにとっても百恵という唯一無比の素晴らしい素材を得て新たな “歌謡ロック” の創造が可能になったのではないかと思う。
 次に私の耳を捉えたのは更にロック度をアップさせた「イミテーション・ゴールド」で、情事を暗示するような生々しい歌詞のインパクトが強烈だった。特に “くせが違う 汗が違う 愛が違う 利き腕違う ごめんね 去年の人にまだ縛られてる~♪” なんか絶対に阿木にしか書けない斬新なフレーズだと思うし、まるでエルヴィスの「ハートブレイク・ホテル」を彷彿とさせるようなブルージーな導入部からテンポアップして一気に駆け抜け、後半部をたたみかけるような展開でまとめ上げた宇崎の音楽センスもさすがという他ない。
 「乙女座宮」はその1年前に出た「夢先案内人」で先鞭をつけた軽快なファンタジー路線(?)の最高傑作で、こぼれ落ちるようなイントロから、すでに名曲だけが醸し出す品位と風格が漂う。太田裕美の「黄昏海岸」を彷彿とさせるような明るく爽やかなメロディーの奔流にツボを心得た絶妙なバック・コーラス・アレンジと、欠点が一つもない完全無欠のポップスだ。この心がウキウキするようなサウンドは、特に上記のようなロック調の曲の後に聴くと、まるでAC/DCやエアロスミスを聴きまくった直後にカーペンターズを聴いたような(←何ちゅう例えやねん!)清々しさが味わえた。
 そーいえば「プレイバック part 2」も忘れられない。歌詞の “緑の中を走り抜けてく真っ赤なポルシェ~♪” という部分をNHK出演時に “真っ赤なクルマ~♪” に変えて歌わせられた事件(何かめっちゃ違和感を感じてしまうのは私だけ?)が有名だが、確か “あくまでも中立な公共放送としての立場を貫くため1社の宣伝をするわけにはいきません” みたいな趣旨のことをNHKがほざいていたのを聞いて呆れたものだ。アレがポルシェの宣伝になるんか?この曲を聴いてメルセデスやBMWから苦情が来るとでも言いたいのだろうか?(笑) それにそんな事言うとったらスポーツ中継ひとつも出来へんやんけ!話を曲に戻すと、宇崎は歌詞の “真っ赤なポルシェ” のイメージを膨らませてこのスピード感溢れるロック曲を書いたのではないか。周りの景色がどんどん後方へと遠ざかっていくような加速感を見事に表現した音作りが圧巻だ。この曲に関してはまだまだ言い足りないが先に進まなくてはいけない。
 その後もこのツッパリ・ロック路線は更なる激しさを増していく。 “はっきりカタをつけてよ” “やってられないわ” で一世を風靡した「絶体絶命」でも阿木のシュールな歌詞とハードボイルドなサウンド・プロダクションが火花を散らす中を百恵のスリリングなヴォーカルが駆け抜ける。ヘタなロックよりも遙かに高いテンションの歌と演奏が楽しめるこの曲は、もう歌謡曲という範疇を軽く超えてしまっているように思う。
 「愛の嵐」も凄まじい。“狂うと書いてジェラシー~♪”... 女のドロドロとした情念というか、殺気すら感じさせるラインは鳥肌モノで、またもや阿木燿子の天才が爆発だ。百恵の表現力にも更に磨きがかかり、その説得力溢れるヴォーカルに圧倒される。こんなにクールでカッコイイ歌謡曲が過去にあっただろうか?エイジアのジェフリー・ダウンズみたいに上昇下降を繰り返すバックのシンセも絶妙な隠し味になっている。
 「ロックンロール・ウィドウ」はディレクターからの「ゼッペリンの“ロックンロール”みたいな曲を!」という依頼にこたえた職業作家・宇崎が “lonely, lonely, lonely...” を “カッコ、カッコ、カッコ...”というフックで見事に表現し、それだけではまだ足りないとばかりにポールの「ロッケストラ」に70's初期のストーンズが客演しているかのようなノリノリのロックンロール大会に仕立て上げたのだ。結婚を控えた百恵に“ウィドウ”(未亡人)と歌わせ、引退直前のしんみりムードを吹き飛ばすようなこのロック曲をシングルとして切ってきた制作サイドの英断も天晴れという他ない。
 今回ブログで取り上げるにあたってこの「33 SINGLES MOMOE」を一気聴きしてみて改めて阿木燿子、宇崎竜童、山口百恵という “歌謡ロック・トライアングル” の凄さを再認識させられた。単なるノスタルジーとして聴くのではなく、ロック・ファンにはぜひ一度そういう耳で聴いてほしい傑作集だ。

山口百恵 プレイバック part2 (真赤なクルマver)

The Best Of Emerson Lake & Palmer

2009-04-29 | Rock & Pops (70's)
 久々にプログレでいってみよう。私はジャズでもロックでもジャンルに関係なくとにかくアップテンポの演奏を好む傾向があるので、イエスでは退屈で眠くなってしまうし、ピンク・フロイドはめっちゃ好きな演奏とワケの分からない演奏が半々だ(>_<) キング・クリムゾンは基本的に大好きだが、かといってアレを毎日聴いていては身が持たない。時々取り出して聴いては緩んだ精神にカツを入れるようにしている。そんなワケで、 “プログレ四天王” と呼ばれるピンク・フロイド、キング・キリムゾン、イエス、エマーソン・レイク&パーマー(EL&P)の中で私が最も愛聴しているのがEL&Pなのだ。
 彼らが精力的に活動していたのは1970~74年で、私が物心ついて音楽を聴き始めた1975年というのはちょうどその前年に集大成的な3枚組ライブを出して活動停止期間に入った頃だったので、音楽雑誌等でそのグループ名はよく目にしたものの、実際に耳にしたのは77年に出された復帰作「ELP四部作」が最初だった。各メンバーのソロをA, B, C面に配し、D面にグループとしての新曲2曲を収めた2枚組アルバムだったが、A面のキースはオーケストラ・フィーチャーの無機的なソロ・ピアノ、B面のグレッグは生気に欠けるムーディーな小品集、C面のカールはアクション映画のサントラみたいな支離滅裂なサウンドと、事前の期待が大きかっただけにソロ・サイドには心底ガッカリさせられた。しかしD面1曲目の「庶民のファンファーレ」はドライヴ感溢れるノリノリの演奏で、キーボード、ベース、ドラムスという最小限のユニットで見事なグルーヴを生み出しており、「さすがはEL&P!」と唸らされたものだ。その後グループは解散してしまったが、彼らの全盛期の音源を聴いてみたくなった私が手始めに買ったのがこの「ザ・ベスト・オブ・エマーソン・レイク&パーマー」だった。
 まず目を引くのが日本の浮世絵を上手く使ったジャケットだ。裏ジャケでは収録曲の出自がアルバム・ジャケットと共に描かれている。ファースト・アルバム「エマーソン・レイク&パーマー」から1曲、「トリロジー」から2曲、「恐怖の頭脳改革」から3曲、ライブ盤から1曲、「四部作」のVol. 1と2からそれぞれ1曲ずつ、「タルカス」と「展覧会の絵」からは選ばれずということで今考えてみると納得のいかない選曲だが、そんな中で私が一番気に入ったのが冒頭の①「ホウダウン」だった。私がプログレに対して抱いていた “難解なロック” というイメージを木っ端微塵に打ち砕いてくれた疾走感溢れる演奏で、ライブでは更にテンポを上げて悪魔的スピードで突っ走るスリリングな演奏が楽しめる。EL&Pの楽曲にはいくつかのパターンがあるが私が愛聴してやまないのはすべてこの手のイケイケ・ハイスピード・チューンばかりで、この盤には入っていないが「展覧会の絵」の「ナットロッカー」や「タルカス」の「アー・ユー・レディ・エディ」なんかまるでジェットコースターにでも乗っているかのようなカタルシスが味わえる痛快なプレイが圧巻だ。
 痛快なプレイと言えば③「悪の教典#9第1印象パート2」も引けを取らない。これこそまさにEL&Pの “プログレッシヴな姿勢” とロックの持つ “プリミティヴな肉体的衝動” が高い次元でバランスされたキラー・チューンで、私をEL&Pの世界に深く引きずり込んだ因果な1曲でもある。マンシーニの⑤「ピーター・ガンのテーマ」はライブ音源で、これまで色々なアーティストによって取り上げられてきたこの名曲をEL&Pらしいアレンジで重心の低いドライヴ感溢れるロックに仕上げている。⑥「庶民のファンファーレ」は10分近い原曲が何と3分弱の長さに編集されていてガッカリ。ケチらずにフル・ヴァージョン収録してほしかった(>_<)
 このアルバムはベスト盤にもかかわらず全米108位という悲惨な結果に終わったということで、長尺曲の多いプログレでベスト盤を編集するのはやはり無理があるということだろう。1枚のアルバムとして聴くとどうしても散漫な印象を受けてしまうが、私のように “最初の1枚” として彼らの多様性を知り、そこから気に入った曲の入ったアルバムを聴いて深みにハマッていくというのもいいかもしれない。

この疾走感、凄いです!キースの衣装、笑えます!↓


The Album / Jive Bunny & The Mastermixers

2009-04-28 | Oldies (50's & 60's)
 私が80年代にビルボード誌やラジオ&レコーズ誌といった全米ヒットチャートを毎週ほぼ欠かさず追いかけていたことは以前どこかで書いたような記憶があるが、同時にミュージック・ウィーク誌の全英チャートも追いかけていた。その週に新しく英米のチャートに入ってきた曲をラジオでいち早くチェックし、週末には大阪や京都のタワレコへ買いに走るという、ほとんど洋楽ヒット中心の生活が丸々10年続いたわけだが、今思い起こしても実に懐かしい充実した日々だった。特に日本では中々紹介されないような “自分だけのお気に入り曲” を発掘した時なんか喜びもひとしおで、毎週オムニバス・テープを作っては自室や車の中で聴きまくって楽しんでいた。
 1989年の8月のこと、ジャイヴ・バニー&ザ・マスターミキサーズという謎のアーティスト(ヨークシャーのDJ集団らしい... まぁ “イギリス版クボタタケシ” みたいなモンか...)の①「スイング・ザ・ムード」という曲が突如全英チャートに登場した。曲そのものは単なるオールディーズのサンプリング・メドレーだったのだが、ありそうでなかったその発想自体が実に斬新だったし、様々なアーティストの “どの曲のどの部分をどう繋げていくか” というあたりのセンスも抜群だった。結局イギリス人のオールディーズ好きな国民性を反映して大ヒットを記録し、5週連続で全英№1を独走したのだが、私もこの曲をちょうど80年代初頭の「スターズ・オン45」や「フックト・オン・クラシックス」の “オールディーズ版” と捉えて大いに気に入り、早速12インチ・シングルを買いに走った。曲のベースになっているのは「イン・ザ・ムード」で、古式ゆかしいグレン・ミラー・サウンドがノリノリの楽しいダンス・リミックスを施され、「ロック・アラウンド・ザ・クロック」「トゥッティ・フルッティ」「起きろよスージー」「カモン・エヴリバディ」「ハウンド・ドッグ」「シェイク・ラトル&ロール」「オール・シュック・アップ」「監獄ロック」「アット・ザ・ホップ」といった珠玉の名曲たちが現われては消え、消えては現れるという、オールディーズ、特にロカビリー好きにはたまらない6分10秒だった。
 その2ヶ月後の10月に早くもシリーズ第2弾としてリリースされた⑤「ザッツ・ホワット・アイ・ライク」もあっという間に全英を制覇、3週連続№1をマークした。今度はベンチャーズの「ハワイ-5-Oのテーマ」をベースに「レッツ・ツイスト・アゲイン」「レッツ・ダンス」「ワイプ・アウト」「グレート・ボールズ・オブ・ファイア」「グッド・ゴリー・ミス・モリー」「ザ・ツイスト」「サマータイム・ブルース」「浮気なスー」がまるで “オールディーズ組曲” のように見事に繋げられて1つの曲として成立していた。
 そして年の瀬も押し詰まった12月にこの「ジャイヴ・バニー・ジ・アルバム」のUK盤CDが発売され、私は速攻でゲットしたのだが、待った甲斐があったとはこのことだ。2大ヒット曲①⑤以外にもワクワクウキウキするような懐かし楽しいサンプリング・メドレーのアメアラレで、T.レックスやゲイリー・グリッターをフィーチャーした④「ドゥ・ユー・ウォナ・ロック」やアンドリュース・シスターズの古~いヒット曲を網羅した⑦「スウィング・シスターズ・スウィング」も良かったが、ダントツに気に入ったのがラストの⑧「ホッピング・マッド」で、「ダ・ドゥ・ロン・ロン」や「ポエトリー・イン・モーション」、「朝からゴキゲン」なんかもう、イントロが聞こえてきただけで鳥肌モノだ。正調オールディーズ・ポップス・ファンは一聴の価値アリだと思う。
 これはオールディーズ・ポップス・ファンには理屈抜きで楽しめるいわゆるひとつの “パーティー・アルバム” だが、私にとってはただ単に楽しいだけでなく、クリス・モンテスの「レッツ・ダンス」やザ・ダーツの「カム・バック・マイ・ラヴ」といった隠れ名曲を教えてくれたという意味でも、忘れられない1枚だ。

Jive bunny and the real videos In the mood

Milk Bossa Presents Marcela

2009-04-27 | Cover Songs
 夏といえばボサノヴァ、という言葉に倣ったわけではないが、去年の夏、私は “有名曲をボサノヴァでカヴァー” という企画に乗ってポンポン出されるCDにハマッていた。きっかけはネット検索でたまたま見つけた「ビートルズ・イン・ボッサ」という何とも怪しげなCDだった。グリーン地にイエローのアップルをあしらい、右下部分にビートルズのメンバーを模したシルエット(アコムのCMに出てた宇宙人じゃあるまいし、何で頭に触覚生えてんの?)を描いた安っぽい作りのジャケットが妙に気になったし、何よりも “ビートルズ・カヴァーは全部買う宣言” をしていた私は歌手がダメでも曲の良さで聴けるだろうとの計算も働いて、とりあえず買ってみることにした。届いたCDを聴いてみるとこれが大当たりで、5人の女性ヴォーカリストがビートルズの有名曲をそれぞれ自分のスタイルでボサノヴァ化、この手のオムニバス盤は最終的にそのシンガーの声質と歌い方が好きになれるかどうかですべてが決まるものだが、私はモニーキ・ケッソウズとマルセラという2人の声が気に入った。特にマルセラの⑧「ヒア・カムズ・ザ・サン」は彼女の包み込むような優しい声が程良くレイド・バックしたボッサ・アレンジと絶妙にマッチしていて、この曲のカヴァーの三指に入る素晴らしいヴァージョンだった。このCDを聴いて私の記憶の中に“マルセラ”という名前が深く刻み込まれた。
 次に彼女の名前を目にしたのは「ミルク・ボッサ」という紙ジャケCDで、今度はキャロル・キングやビリー・ジョエル、スティーヴィー・ワンダーらの名曲の数々を今度は男女7人のヴォーカリストがカヴァーしており、ここでもマルセラが抜きん出ており、中でも①「素顔のままで」のカヴァーは絶品だった。
 このシリーズがすっかり気に入った私は調子に乗って同シリーズの「ミルク・ボッサ・エイティーズ」という、80'sポップスのボサノヴァ・カヴァー盤を購入、クリス・デラノという未知の歌手の「プライベート・アイズ」や「トゥルー・カラーズ」が予期せぬ収穫だったが、ここでもやはりマルセラが他を圧して素晴らしく、特に⑦「テイク・オン・ミー」はa-haのオリジナル・ヴァージョンが霞むぐらいの心地よい品格を湛えた屈指の名演だった。もうこれは本格的にマルセラのリーダー盤を探さねば... と思っていたところに、ちょうどこちらの気持ちを見透かしたようにリリースされたのがこの「ミルク・ボッサ・プレゼンツ・マルセラ」である。
 解説によるとマルセラは本名マルセラ・マンガベイラ、ボサノヴァ界の重鎮ロベルト・メネスカルの娘さんで、この一連のシリーズはメネスカルが選りすぐりのアーティストを世界に発信するために立ち上げた “アルバトロス” というブラジルの本格的なボッサ・レーベルの音源を使用して、日本の FLAVOUR OF SOUND というレーベルが企画リリースしているとのこと。この盤はこれまでのオムニバス盤からマルセラのトラックのみをピックアップして1枚にまとめたものだが、私の持っていない音源も入っており、中でもEW&Fの④「セプテンバー」や坂本龍一教授の⑪「サイケデリック・アフタヌーン」はまるで自分のオリジナル曲であるかの如く曲を見事に自家薬籠中のものとしており、力の抜き加減も絶妙、これだけでも彼女のヴォーカリストとしての資質の高さがわかろうというものだ。
 今、私のCD棚には「マルセラ」のコーナーが出来てしまい、一連の「ミルク・ボッサ」シリーズや「○○・イン・ボッサ」シリーズがズラリと並んでいる。これらのCDをかけただけでリスニング・ルームがお洒落なカフェに早変わり... とまではいかないが(笑)、リラックス・タイムを粋に演出してくれるマルセラの洗練されたボサノヴァ・サウンドはブリリアントな午後にピッタリだ。

MilkBossa Marcela Mangabeira
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ABBA Metal

2009-04-26 | Cover Songs
 カヴァー・ソングを色々集めていると時々とんでもなく愉しい盤に遭遇することがある。まぁ王者ビートルズはルンバから童謡に至るまでありとあらゆるパターンが出尽くした気がしないでもないが、他のアーティストはまだまだ発掘の余地ありだ。素晴らしい楽曲というのは表面的にいかなる音楽ジャンルのコーティングを施そうともそのコアにある力強さは変わらない。愛情と敬意をもってカヴァーすれば必ず一聴に値する作品が出来上がる。ボッサン・ストーンズ... ブルーグラス・ゼッペリン... レゲエ・カーペンターズ... ウクレレ・イーグルス... どれもこれも色ものとして切って捨てるには勿体ないぐらいのクオリティーを持っている。そしてここで取り上げる「アバメタル」もそんな1枚なのだ。
 まずはこのCDのオビの謳い文句をご紹介:「20世紀を代表する偉大なるポップ・グループ “アバ” をシナジー、メタリウムら14組の人気メタル・アーティストがトリビュート!オリジナルに忠実なアレンジから独自の解釈による個性豊かなヴァージョンまで、アバの魅力をメタル・サイドから徹底的に追求!!」とある。シナジーってハイオク・ガソリンのこと?メタリウムってウルトラマンエースのメタリウム光線と関係あるんか?あかん、ここに収録されてる14組のヘビメタ・バンド、名前すらひとつも知らんわ(>_<) それに “独自の解釈による個性豊かなヴァージョン” ってゆーのが何か怖いよーな気もするが、同時にモーレツに興味をそそられる。まぁ百聞は一聴にしかずということでとにかく聴いてみよう。
 まずはドラムの連打から始まる①「サマーナイト・シティ」(セリオン)、重厚なリフに乗って歌われるのは確かにあのアバの名曲だ。それにしても何ともまぁオドロオドロしい雰囲気のアバ・ソングだろうか!これはハッキリ言って面白い。②「サンキュー・フォー・ザ・ミュージック」(メタリウム)はジェントルなイントロで油断させておいて0分41秒あたりからいきなりお約束のリフ攻撃開始(笑) ウルトラの父もビックリだ。③「ギミー!ギミー!ギミー!」(シナジー)はアバのオリジ・ヴァージョンに忠実なコンセプトでカヴァーされていて、一般のファンも抵抗なく受け入れれるかも... それでも間奏のギターソロは思いっ切りハードだし、3分37秒からの目も眩むようなリフの波状攻撃は快感の一言だ。④「マネー・マネー・マネー」(アット・ヴァンス)もアレンジはオリジナルに忠実ながら、ヴォーカリストのハイトーン・ヴォイスが炸裂しまくりのパワフルな仕上がりだ。⑤「ヴーレ・ヴー」(モルガナ・ルファイ)は初期メタリカのようなアグレッシヴなサウンドがエエ感じで、あのユーロ・ディスコ曲が変わり果てた姿(笑)になっているが、原曲の持っていたスピード感を上手く活かしていると思う。⑥「S.O.S.」(パラドックス)はこれぞまさに “個性豊か” なアレンジといえる凄まじいスラッシュ・メタルで、ここまで徹底的に壊してくれるともう何でもアリの世界だ...(*_*) ⑦「テイク・ア・チャンス」(ラフ・シルク)、これめっちゃ好き!ジョン・ボンジョヴィっぽいヴォーカルも、ノリノリのギター・リフも、1分34秒から入ってくる女性ヴォーカルも、何もかもが私の感性のスイート・スポットを直撃する。0分45秒と1分58秒で聞ける気合いの一声が最高だ(≧▽≦)
 ドラマティックなイントロも何のその、1分12秒あたりからエンディングまで唸り続けるラウドなギターの咆哮がたまらない⑧「チキチータ」(スパイラル・タワー)、竹を割ったようなストレートなメタル・アレンジが潔い⑨「イーグル」(サージャント・フューリー)、まるでボストンの「アマンダ」みたいな雄大な感じのハード・ロック・バラッド⑩「ワン・オブ・アス」(フローイング・ティアーズ)、ヨーロッパの「ファイナル・カウントダウン」を彷彿とさせる躍動感溢れるロックンロール⑪「ウォータールー」(ネイション)、ファイアーハウスみたいな歌心溢れるポップ・メタルがめっちゃ愉しい⑫「スーパー・トゥルーパー」(カスタード)、とにかくヘヴィーとしか言いようのない⑬「ノウイング・ミー・ノウイング・ユー」(タッド・モローズ)、ヘヴィーメタルというよりも軽快なロックンロールと言っていい⑭「ダンシング・クイーン」(グロウ)と、聴きどころ満載の楽しいメタル・トリビュートになっている。昔から “嫌い嫌いも好きのうち” って言うけれど、ひょっとして私、ヘビメタ好きなんかな?(笑)

ABBA Metal - Rough Silk - Take A Chance On Me

甲斐バンド・シングル・コレクション Vol. 1

2009-04-25 | J-Rock/Pop
 私が物心ついてからこれまで聴いてきた音楽はそのほとんどがビートルズを始めとする洋楽なので、日本のロックといってもメジャーなグループしか知らないのだが、そんな私の乏しいJ-Rock 体験を語る上で絶対に外せないのが甲斐バンドである。ロック・バンドといってもキャロルのようなロッカーズ・スタイルでもなければ、サディスティック・ミカ・バンドのような“時代の先を行く”バンドでもない、例えるなら“日本人の心の琴線を震わせる昭和歌謡的要素をロック・フォーマットでカッコ良く表現した”バンドだったと思う。特に74年のデビューから80年の「地下室のメロディー」あたりまではその傾向が強く、他のどのバンドも持ち得なかった“究極の歌謡ロック性”と彼らがライブで魅せる“迸るようなエネルギーの奔流”が私を含めた若者の心をとらえたのではないか。又、音楽だけでなく、当時NHK-FM で夜10時から放送されていた「サウンドストリート」(甲斐さんは確か水曜日担当やったと思う...)でのざっくばらんなスタイルで人生を語るトークが大好きで毎週ラジオにかじりついて聞いたものだったが、この番組も確実に彼らの人気に寄与していたと思う。甲斐バンドの音楽には甲斐よしひろという一人の男の美学、生き様がさりげなく投影されていたのだ。
 私が初めて彼らの音楽に接したのはAMラジオから流れてきた彼らのセカンド・シングル②「裏切りの街角」で、もろ昭和歌謡な泣きのメロディーを奏でるギターのラインと “しとしと さみぃだぁれぇ~♪” のこそばゆいようなバック・コーラスが耳に焼き付いて離れなかった。続く④「かりそめのスウィング」は大きくフィーチャーされているヴァイオリンのヒステリックな高音が中学生だった私には珍しく感じられたものだったが、今の耳で聴いてみるとリズム・ギターのカッティングといい、間奏部のギター・ソロといい、弦をブンブンいわせながらリズム・キープに大活躍するアコースティック・ベースといい、バリバリのマヌーシュ・スウィングではないか!これには本当に驚いた。
 ⑤「ダニーボーイに耳をふさいで」はまるで甲斐バンドの魅力を凝縮したような名曲で、特にサビの “いつものように 灯りを消して~♪” の部分で噴出する哀愁は甲斐さんにしか出せない味わいだ。⑧「氷のくちびる」ではスローな前半部から一転テンポアップして一気にたたみかけるような後半部分がたまらなくカッコ良い。ストリングス・アレンジも見事だし、低音部を激しく埋めるベースのプレイも圧巻だ。⑨「そばかすの天使」では女性の視点から語られるストーリー展開が斬新な歌詞が甲斐さんのハスキーな声で歌われると何かゾクゾクするほどリアリティーがあって、まるでドラマを見ているかのように情景が浮かんでくる。この表現力は尋常ではない。甲斐さんのヴォーカルに寄り添うような “ダッ ドゥダァ~♪” というバック・コーラスも絶妙のアレンジで名曲度数を更にアップさせている。なぜこの曲が人々の口に上らないのか不思議なぐらいの名曲だと思うし、個人的には甲斐バンドの曲の中で一番好きかもしれない。
 ⑬「HERO(ヒーローになる時、それは今)」はCMタイアップ効果もあってか甲斐バンド初のチャート№1に輝いた彼らの代表曲で、当時は気付かなかったが今聴くとかなりスプリングスティーンの影響を感じさせる演奏だと思う。 “あんな~ぁ~♪” という有名な女性コーラスで始まる⑯「安奈」は上記の「そばかすの天使」と並ぶマイ・フェイヴァリット・ナンバーで、“日本屈指のストーリーテラー” 甲斐よしひろの才能が全開だ。特に0分51秒からの“そんな時 お~まえがぁ よこした たぁよりぃ~ ただ一言だけ 淋しいって綴ってた♪” のパートは何度聴いても鳥肌モノだ。尚、1980年の武道館ライブ盤「100万$ナイト」に収められたこの曲のライブ・ヴァージョンは、この「シングル・コレクション」収録のスタジオ・ヴァージョンを凌駕する素晴らしさなので是非ご一聴を!

【音】甲斐バンド「安奈」1980武道館

Neil Sedaka Best

2009-04-24 | Oldies (50's & 60's)
 日本人にとってオールディーズ・ポップス男性シンガーの東西の横綱と言えるのがポール・アンカとニール・セダカである。“街角男”デル・シャノンンはどーした、“ビキニ坊や”ブライアン・ハイランドだっているぞ、“7オクターブの声を持つ男”ジーン・ピットニーを忘れんなよ、といった声が聞こえてきそうだが、知名度から言ってもヒット曲の多さから言っても日本ではこの二人が突出している。しかもポールには「ダイアナ」、ニールには「恋の片道切符」という超特大ホームラン級の“この1曲”が存在するのだ。一定の年齢以上の人なら誰だって “き~みはボクより年上と~♪” や “チューチュー チュレェ~ン ア チャギン ダウン ザトラッ♪” のフレーズは口ずさめるだろう。現代の音楽が忘れてしまったこの “誰でも口ずさめる” 親しみやすさこそがオールディーズ・ポップスの最大の魅力なのであり、半世紀近くたった今でも人気を保っている所以なのだと思う。
 意外なことに元々はオーケストラをバックにシナトラばりのヴォーカルでスタンダード・ソングを歌っていたポール・アンカ(デビュー・アルバムではナット・キング・コールで有名な「ウォーキン・マイ・ベイビー・バック・ホーム」やベニー・グッドマンの「シング・シング・シング」なんかを歌っててビックリ!)に対し、ブリル・ビルディング直系の “理屈抜きに楽しめるアメリカン・ポップスの申し子” 的存在がこのニール・セダカである。彼の全盛期といわれる1960~62年のヒット曲の数々はキラ星のように輝く申し分のないポップスばかりで、それらを1枚にまとめたのがこの「ニール・セダカ・ベスト」なのだ。
 彼の曲は大きく分けて次の3つのパターンに集約されると思う。
Ⅰ:屈託のない明るい歌声と誰でも口ずさめるような陽気な曲調のナンバー
 いきなり“ア ラッバ ラッバ ラッバ カレンダー ガー”で始まる②「カレンダー・ガール」、空耳で little devil が“リル デブ”に聞こえて仕方がなかった③「リトル・デヴィル(小さい悪魔)」、キャロル・キングに捧げた歌詞をロッカ・ルンバ・リズムに乗せた軽快な⑪「オー・キャロル」、コニー・フランシスに贈った曲のセルフ・カヴァーで絶妙なハンド・クラッピングが楽しい⑮「ステューピッド・キューピッド(間抜けなキューピッド)」と、もう何の説明も不要なぐらいニール・セダカの魅力が全開だ。
Ⅱ:Ⅰの延長線上にある軽快な曲調に印象的なナンセンス・フレーズをまぶしたナンバー
 “カマ カマ ダン ドゥビ ドゥ ダンダン”⑫「悲しき慕情」(カーペンターズのカヴァーも必聴ですね!)、“シャンララララン ランランララ”⑯「ハッピー・バースデイ・スイート・シックスティーン(すてきな16才)」、“ドゥバ パッパー ホウ デュバッシュ ダンダン”⑰「ネクスト・ドア・トゥ・アン・エンジェル(可愛いあの娘)」、“ディンドン ディンドン クリッ クラッ カチャガチャガ”⑱「ゴーイング・ホーム・トゥ・メリー・ルー(恋の一番列車)」と、ドゥー・ワップ直伝のナンセンス・フレーズの多用がもうめちゃくちゃ楽しくてたまらない。これこそ他の誰にも真似のできないニール・セダカ・ポップスの真骨頂だ!
Ⅲ:いわゆるひとつのスロー・バラッド・タイプのナンバー
 リヴァーヴの効いたドラムといかにも古臭いストリングス・アレンジが耳に残る④「ユー・ミーン・エヴリシング・トゥ・ミー(きみこそすべて)」、リトル・アンソニー&インペリアルズの「ティアーズ・オン・マイ・ピロー」(カイリー・ミノーグのカヴァーで有名)をモディファイしたような⑥「ザ・ダイアリー(恋の日記)」など、スローな曲をあのカン高い声で歌い上げている。
 日本独自の大ヒット曲①「恋の片道切符」は彼には珍しいマイナー調のナンバーで、歌詞の中に当時のヒット曲名(「バイ・バイ・ラヴ」「ロンリー・ティアドロップ」「ロンサム・タウン」「ハートブレイク・ホテル」「ア・フール・サッチ・アズ・アイ」)をズラリと並べたセンスが素晴らしい。この曲の良さがわかる日本人に生まれて良かったと思える今日この頃だ。

Neil Sedaka en Vioa "Got a one way ticket to the Blues"

Best Shots / Pat Benatar

2009-04-23 | Rock & Pops (80's)
 ジャズやポップスの世界には女性ヴォーカリストはゴマンといるが、本格派の女性ロック・ヴォーカリストとなるとその数は激減する。私にとっては以前紹介したジョーン・ジェットが№1だが、彼女の場合は単なる “ロック・ヴォーカリスト” というよりもむしろバンドを率いるリーダー兼ヴォーカリスト兼ギタリストという存在で、言葉の純粋な意味での“女性ロック・ヴォーカリスト”となると、このパット・ベネターが真っ先に頭に浮かぶ。
 彼女のデビューは1979年、デビュー・シングル「Heartbreaker」は疾走感溢れるハードなバックのサウンドに負けないぐらいのハイノートが炸裂する必殺のナンバーで、あの華奢な身体のどこにそんなパワーを秘めてるのか不思議なくらい迫力のあるシャウトがカッコ良かった。ブリティッシュ・ハード・ロックを愛し、ゼップのロバート・プラントやザ・フーのロジャー・ダルトリーのような歌唱スタイルを目指していたというのだから凄い。セカンド・シングル「We Live For Love」は当時全盛を極めていたブロンディーのデボラ・ハリーの二番煎じみたいで私的にはイマイチ。シャウトせずに何のパット・ベネターか?
 このアルバムはそんな彼女のヒット曲を集めたベスト盤で、改めて良い曲が多いことを再認識させられる。選曲に何の創意工夫も見られなかったり、「Love Is A Battlefield」が中途半端なショート・ヴァージョンだったりとかでファンとしては不満の残るところだが、パット入門にはかえってこの方がいいかもしれない。
Pat Benatar...'Heartbreaker'..'LIVE'

Swing Easy! / Frank Sinatra

2009-04-22 | Jazz Vocal
 先週末以来私を苦しめていた無線LANルーター問題がやっと解決した。結局根本的な原因が分からず、原因の特定のための“切り分け”を考えててアタマの中がショートしてしまった私は “初期化リカバリ” という荒ワザで何とか危機を乗り切った。やっぱり困った時はチカラで押し切るに限るわ。もう一度最初からややこしい設定を色々するのはイヤやけど、“ネット繋がらない地獄” よりは遥かにいい。
 私は元々パソコンなんか見るのもイヤなほど毛嫌いしていたし、何よりもIT用語がチンプンカンプンだった。職場で「コンピューター立ち上げといて」と言われて何のことか分からず、座ってたのを立ち上がって大笑いされたぐらいだ。ましてや自分でパソコンを買うなんて論外、いつも「パソコンだけは堪忍して!」と逃げ回っていた。そんなある日、職場研修の一環として「初めてのパソコン」講座というのを受けさせられることになった。「鬱陶しいなぁ...」とムクレている私を尻目に講座が始まった。講師のオネーサンが「堅苦しく考えないで、インターネットに親しみましょう。どのサイトでもいいから自由にクリックしてどんどん見てみて下さいネ(^.^)」と仰ったので私は“ヤフーオークション”→“音楽”→“レコード”→“ジャズヴォーカル”と進んでみた。するといきなり「ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン」オリジナル盤 58,000円が出てきた。これに大コーフンした私はパソコンへの積年の恐怖心も忘れ、講師のオネーサンの指示を一切無視してレコードやCDを見まくった。結局、講習が終わっても居残りで熱心に(笑)ヤフオクを見まくり、その日以来パソコンは私にとって「探しているレコードやCDが簡単に見つかる魔法の箱」となった。
 その2ヶ月後、夏のボーナスが出た日に私は電機屋に直行しパソコンを購入、数日してネットが開通するとすぐに海外のオークション eBay に参入し、欲しかったレコードを片っ端から検索し始めた。すると日本中のどこのレコ屋を探しても見つからなかった盤が出るわ出るわの宝の山状態(@_@;) しかもビックリするほど安いのだ!!! 特に衝撃的だったのが、数ヶ月前に横浜の廃盤専門店 “ディービーズ” で見つけたものの 18,000円という “ボッタクリ価格” のため泣く泣く諦めたフランク・シナトラの10インチ盤「スイング・イージー」で、それが何と3ドル、つまり360円だったのだ。結局他に誰もビッドせずスタート価格で落札!当時のレートで計算しても送料込みで2,000円以下という信じられない安さである。もうアホらしくて日本のレコ屋でなんて買えやしない。それ以降、LPもCDもほぼすべての盤をネットで買うようになった私にとってこのレコードは “海外オークション第1号” として忘れられない思い出盤となった。
 そして約3週後にブツが届いた。梱包を開けると中から出てきたのはピカピカの10インチ盤。横浜で見たのと全く同じものが超格安で入手できたのだ。早速ドキドキしながらターンテーブルに乗せる。これらの10インチ盤が作られていた50年代前半というのはステレオ技術なんてものはなく、モノラル特有の濃厚な音が塊りになってスピーカーから飛び出してくる。特にシナトラのリッチでゴージャスなヴォーカルは中域に強いモノ録音にピッタリだ。両面併せても8曲、20分にも満たないが、内容はめちゃくちゃ濃い。①「ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングス」、②「アイム・ゴナ・シット・ライト・ダウン・アンド・ライト・マイセルフ・ア・レター」、③「サンデイ」、④「ラップ・ユア・トラブルズ・イン・ドリームズ」、⑤「テイキング・ア・チャンス・オン・ラヴ」、⑥「ジーパーズ・クリーパーズ」、⑦「ゲット・ハッピー」、⑧「オール・オブ・ミー」と、私の大好きな曲ばかり選ばれているのも嬉しいし、それらの名スタンダードをシナトラがこれ以上ないと言えるぐらいスインギーに歌っているのがたまらない。ジャズ特有の“スイング”という概念は知らない人に説明するのが難しいものだが、私ならこのレコードを聴かせて「これがスイングっちゅーモンや!」と断言するだろう。とにかく男性ジャズ・ヴォーカル盤ではナット・キング・コールの「アフター・ミッドナイト」と双璧をなす最良の1枚だと思う。

Frank Sinatra - Wrap Your Troubles In Dreams
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Working Class Dog / Rick Springfield

2009-04-21 | Rock & Pops (80's)
 今日もオーストラリアのロックでいこう。別にオージー・ロックを続けてやろうと意識したわけでも何でもなく、さっきたまたまソフトバンクのケータイCMに出てくる “お父さん”犬(←しかしまぁあの北大路欣也が犬の声優をやってるなんてオドロキですわ!)を見て、この「ワーキング・クラス・ドッグ」のジャケットが頭に浮かんだという、何ともええかげんな理由でのチョイスである。“明日なき暴走” のブログ・タイトルでお分かりのように、選盤のきっかけなんて思いつくまま気の向くまま、何の脈絡もありませんので軽く読み流してくださいな(笑)
 私の80'sポップス体験はそのほとんどすべてが小林克也さんの「ベスト・ヒットUSA」を中心に回っており、このリック・スプリングフィールドを初めて聴いたというか見たのもその番組だった。曲は②「ジェシーズ・ガール」で、それも普通のビデオクリップとは違い、アメリカの「ソリッド・ゴールド」という音楽番組でのライブ映像だった。もちろん口パク・ライブながら、長身を左右に振りながらギターをかき鳴らし歌うリック・スプリングフィールドの姿は男の私の眼から見てもめちゃくちゃカッコ良かった。ブルース・スプリングスティーンと間違いそうな名前が紛らわしかったが、デヴィッド・キャシディを更にハンサムにしたようなルックスの良さとその独特の身体の揺らし方(笑)は一度見たら忘れられないくらいインパクトがあった。「ジェシーズ・ガール」という曲そのものもとてもキャッチーで、特に “ユノゥ アィウィッシ ザッ アィハド ジェシーズガール~♪” のサビの部分は鼻歌で簡単に歌えそうなくらい親しみやすい完全無欠の3分間ポップスだった。その数週後、この曲は同じオーストラリア出身のエア・サプライ(←この名前も懐かしいなぁ...)の「シーサイド・ラヴ」を蹴落として全米№1に輝いた。
 セカンド・シングル⑤「アイヴ・ダン・エヴリシング・フォー・ユー」もやはり「ベスト・ヒットUSA」の「ソリッド・ゴールド」ヴァージョンで見たのだが、鮮やかなブルーのスーツを着たリックはやはりその長身を左右に振りながら(笑) “アーィヴダン エーヴリィ シーン フォーユー♪” と歌っていた。サミー・ヘイガー作のこの曲はアップテンポで迫る小気味よいロックンロールで全米8位を記録、私は「ジェシーズ・ガール」よりもこっちを気に入ってしまい、すぐにレコードを買いに走った。
 実際にLP1枚を通して聴いてみると、全10曲32分があっという間に過ぎていく、捨て曲なしの傑作アルバムで、ワクワクするようなパワー・ポップが満載だ。④「キャリー・ミー・アウェイ」も、⑥「ザ・ライト・オブ・ラヴ」も、⑦「エヴリバディーズ・ガール」も、みんなウキウキするような楽しい曲想で、一歩間違えば一本調子のワン・パターンに陥るところを楽曲の良さが見事にカヴァーしている。勢いに乗ってカットされたサード・シングル①「ラヴ・イズ・オールライト・トゥナイト」では、再度「ソリッド・ゴールド」に登場、曲そのものは⑤にそっくりだったが、鮮やかなピンクのスーツ(笑)に身を包み、やはりその長身を左右に振りながら熱唱するリックを見れただけで満足だった。
 これでスターダムにのし上がったリックはお昼の人気メロドラマ「ジェネラル・ホスピタル」に出演し高視聴率をマーク、その後もヒットを連発していくのだが、収録曲の親しみ易さとジャケットで健気にカメラ目線でポーズをとるワンちゃんの可愛らしさ(shiotch7はこう見えても愛犬家ですねん!)からこのアルバムを一番愛聴している。

Rick Springfield - I've Done Everything For You

Back In Black / AC/DC

2009-04-20 | Hard Rock
 オーストラリアのバンドといえばメン・アット・ワークやインエクセス、リトル・リヴァー・バンドなどが思い浮かぶが、世界に通用するスーパースター・レベルのロック・バンドとなると私の知る限りでは1つしかない。ハードロックが “前時代の遺物” 的扱いを受け、イギリスではニューウェイヴ/パンク・ロックが、アメリカではディスコ/AORがそれぞれ全盛を極めていた70年代後半においてもその凄まじいまでのライブ・パフォーマンスでオーディエンスを圧倒し続け、更にリード・ヴォーカリストの不慮の死というバンド存続の危機をも乗り越えて80年代初頭にウルトラ・メガ・ヒット・アルバムを連発して全世界を制覇した偉大なるハードロック・バンド、AC/DCである。
 今私はあえて “ハードロック” という呼び方をしたが、“ヘヴィーメタル” と一体どこが違うねん?と思われた方もおられるかもしれない。人によってその定義は様々で曖昧なところもあるので一概には言えないが、私の中では「ブルースを基本にしたラウドなロックンロール」がハードロックで、「○イアン・○イデンや○ューダス・○リーストらに象徴される、超高音を強調した金属的な音が特徴のハイスピード・ロック」がヘヴィーメタル... もっと分かり易く言い換えれば、演奏がいくらハードでラウドになろうともメロディーや歌心を大切にしているのがハードロックで、どれを聴いてもみな同じに聞こえるただウルサイだけの騒音(ファンの方、ごめんなさい...)がヘヴィー・メタルだと思っている。
 AC/DCの音楽はブルースをベースにブギーのエッセンスを加えたストレートなロックンロールなのだが、他のバンドとの一番の違いは激しいヘッド・バンギングを誘発するリフ攻撃を主体とした縦揺れ型のグルーヴを得意としている点だ。ディープ・パープルを始めとする多くのブリティッシュ・ハードロック・バンドが起承転結のはっきりしたドラマティックな構成の中で延々と流麗なギター・ソロが繰り広げられるような定型パターンに則った演奏を展開するのに対し、AC/DCのロックンロールはプリミティヴなパワーでひたすら直線的に押しまくり、その圧倒的なノリで聴き手の身体を揺らしてしまうのである。これこそまさにロックンロールの原点と言えるのではないだろうか?
 彼らの最高傑作は何と言っても80年リリースの「バック・イン・ブラック」だろう。全曲ハガネのようにストレートなロックンロールで、まさに “シンプル・イズ・ベスト” を地でいくような名リフの宝庫なのだ。中でも強烈無比なドライヴ感を誇る④「ギヴン・ザ・ドッグ・ア・ボーン」の凄まじいノリは私の知る限り史上最強のハードロック・ナンバーの一つに挙げられるし、⑨「シェイク・ア・レッグ」の異常なまでのテンションの高さも圧巻だ。重厚な鐘の音に歪んだアルペジオが絡んでくるイントロを聴いただけで鳥肌モノの①「ヘルズ・ベルズ」のドラマティックな展開もたまらない。無駄な音を一切排し、隙のないハイ・テンションなサウンドに仕上げたロバート・ジョン・マット・ラングのプロデュース・ワークもさすがという他ない。
 このアルバムはアメリカ国内だけの売り上げでもマイコーの「スリラー」、イーグルスの「グレイテスト・ヒッツ」、ゼッペリンの「Ⅳ」、フロイドの「ザ・ウォール」に次ぐ第5位の売り上げを誇り、これが世界規模での総売り上げとなると「スリラー」に次ぐ第2位というからまったくもって恐れ入る。骨太なリフと鉄壁のグルーヴで全世界をヘッド・バンギングさせたAC/DC こそ史上最強のハードロック・バンドなのだ。

AC/DC - Givin The Dog A Bone


ACDC-shake a leg

War / U2

2009-04-19 | Rock & Pops (80's)
 ロック・ファン同士が顔を合わせると “好きなバンド” や “愛聴盤” の話題になることが多い。これは言ってみれば名刺代わりみたいなもので、相手の答えによって話が大いに盛り上がったり、逆に気まずい雰囲気になったりする。趣味嗜好がぴったり合って意気投合すれば “無人島ディスク” にまで話が及ぶこともあるだろう。しかし、この “好きなバンド”→“愛聴盤”→“無人島ディスク” という流れとは別に、“好きなギタリスト” が話題に上ることがある。何と言ってもギターはロック・バンドの中ではサウンドの要ともいえる存在だし、他の楽器よりも遥かに個性的なプレイヤーが多いからだ。しかも必ずしも好きなバンドのギタリストが一番とは限らないところが面白い。ギタリストというのはそれくらい “別格” な存在なのだ。
 私の場合、「好きなギタリストは?」と聞かれても即答に困るというか、一人に絞ることは不可能だ。思いつくままに挙げていくと、ライトハンド奏法が生み出す万華鏡のような音世界に目も眩むエディー・ヴァン・ヘイレン、レッド・スペシャルの丸みを帯びた音色で歌心溢れるフレーズを弾くブライアン・メイ、野太い音でガッツ溢れるソロを連発するスティーヴィー・レイ・ヴォーン、全身全霊のプレイで聴く者を圧倒するアンガス・ヤング、フライングVの流れるような高速フレーズがたまらないマイケル・シェンカー、アグレッシヴなケンカ・リフが病み付きになるリッチー・ブラックモア、泣きのスライド・ギターに涙ちょちょぎれるジョージ・ハリスン、問答無用のリフ攻撃が快感を呼ぶジミー・ペイジ、説得力溢れる入魂のプレイに圧倒されるゲイリー・ムーアといったところか。みんなそれぞれが “その人にしか出せない音” を持っており、そのギター・サウンドを聴きたいがためにレコードをかける、そんなギタリストが好きなのだ。単なる速弾きギタリストに興味はない。そういう意味ではその鋭利な刃物のようなサウンドに一旦ハマると病みつきになるU2のエッジも大好きなギタリストの一人と言える。
 U2との出会いは1983年のこと、小林克也さんの「ベスト・ヒットUSA」で③「ニュー・イヤーズ・デイ」のビデオクリップを見たのがすべての始まりだった。雪の降りしきる中、白い旗を背負い馬に乗って颯爽と駆け抜ける4人の姿はまさに“北欧の騎士”のイメージそのもので、まっ白い雪原で歌い演奏するシーンがめちゃくちゃカッコ良かったし、何よりも楽曲そのものが素晴らしかった。ボノの気迫に満ちたヴォーカルが熱く胸を打ち、エッジのシャープなギター・サウンドが凍てついた空気を切り裂く... 何という見事なコントラストだろう!粘っこいグルーヴを生み出すベースとどっしりとしたドラムスがビートを刻み、疾走感溢れるキーボードも曲のイメージを決定づけるぐらい印象的に使われている。このメロディアスでありながらシンプルで力強いロック曲に完全KOされた私は早速この曲が入ったアルバム「ウォー」を購入、改めてその緊迫感溢れる演奏の凄みを味わった。
 ジョンが「ラック・オブ・ジ・アイリッシュ」で、ポールが「アイルランドに平和を」で取り上げていた “血の日曜日事件” を歌った①「サンデイ・ブラッディ・サンデイ」は歌詞の持つシリアスなメッセージ性に負けないぐらいの重厚で躍動感に溢れるロック曲として屹立しており、聴く者の心を激しく震わせる。④「ライク・ア・ソング」や⑦「トゥー・ハーツ・ビート・アズ・ワン」での胸のすくようなスピード感は、この4年後に世界を制覇することになる「ジョシュア・トゥリー」収録の「ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネーム」や「イン・ゴッズ・カントリー」の爽快感を彷彿とさせる。やっぱりU2は駆け抜けるようなハイスピード・ロックンロールが最高だ。
 これはまだ超大物になる前の、4人の怒れる若者たちがその熱きアイリッシュ魂を注ぎ込んで作り上げた最高にイカすロック・アルバムだと思う。あなたも (you too) そう思いませんか?


Candy-O / The Cars

2009-04-18 | Rock & Pops (70's)
 昨日の晩から急にインターネットに繋がらなくなった。どうやら無線LANのルーターがおかしいらしい。こういう時、私のようなパソコン初心者は辛い、というか無力である。今朝サポセンに電話してとりあえず一時的にルーターを通さずに繋げることに成功、何とかネットは見れるようになったが、めちゃくちゃ疲れてしまった。IPアドレスとか、なんたら接続とか、なんでそんなややこしいシステムになってんねん!こんなメカごときに振り回されるのはホンマに気分が悪い(>_< こんな時は気分をアゲるためにお気に入りのレコードを聴くのが一番だ。ということで今日はカーズの「Candy-O」にしよう。
 まずはこの色っぽいジャケット、めっちゃエエでしょ(笑) 彼らのイメージである “車と女” をこれ以上ないといえるくらい見事に表現しており、このLPを買った当時高校生だった私にはかなり刺激的だった(笑) 中身の方も期待以上の素晴らしさで、外見はシンセを多用した “近未来ポップンロール” といえるクールな音作りながら、そのコアにあるのはまさしく熱いロックンロール・スピリット。チープなピコピコ音もリック・オケイセックのユニークなヴォーカルも、すべてが混然一体となって “カーズのロックンロール” として屹立している。全11曲がまるで1つの大きな組曲のように繋がっており、アルバム1枚が一気呵成に聴けてしまう。
 曲単位で言えばカーズ開眼のきっかけとなった①以外では、疾走感に溢れる⑩「Got A Lot On My Head」がめちゃくちゃカッコ良い。彼らのアルバムには必ずこういったハイスピード・ロックンロール・ナンバーが入っている(→3rdの「Gimme Some Slack」とか4thの「Shake It Up」とか...)のが嬉しい。さすがカーズと名乗るだけあって、高速コーナーを全開で駆け抜けていくような爽快感が心地良い。②「Since I Held You」で聴けるコーラス・ワークの根底にはクイーンあたりのポップ・センスに通じるものがあると思うし、パンク色の強い⑥「Candy-O」のハードな演奏におけるテンションの高さも特筆モノだ。
 高校時代に出会った5人のポップ・マイスター達の奏でるモダン・タイムズ・ロックンロールは30年の時を経ても私の心を熱くさせてくれる。まるでポップスのタイム・カプセルのように今なお新鮮で古さを感じさせない。ビートルズしかり、レッド・ゼッペリンしかりである。音楽って人類が生み出した最高の文化やなぁと改めて実感させられた。
Let's Go

Here's To Ben / Jacintha

2009-04-17 | Jazz Vocal
 ジャシンタとの出会いは約10年前のことだった。ちょうどスピーカーの買い替えを考えており、オーディオにハマッていた時期である。JBLのバカでかいスピーカーで音楽を全身で浴びるように聴けたら最高やなぁ... なんて考えながら毎日を過ごしていた。そんなある日、たまたま雑誌でオーディオ・フェアの記事を見つけ興味を抱いた私は行ってみることにした。
 会場に着き、アキュフェーズやマッキントッシュといった高級ブランドのブースを廻り終えてブラブラしていると、「JBLスピーカーでのアンプ聴き比べ」をやるというイベント・ルームを見つけたので、早速中に入ってスピーカーの真ん前に座った。正直、アンプによる違いはほとんど分からなかったが、解説のオーディオ評論家が持ってきた試聴用ディスクが凄かった。北斗剛掌波の如き凄まじい音圧に圧倒されたカウント・ベイシー・オーケストラ、ギリギリ軋むベース弦の音が生々しい鈴木勲のスリー・ブラインド・マイス盤復刻xrcd、そしてジャシンタという未知の女性ヴォーカル盤の3枚である。女性ヴォーカルはかなり聴き込んでいたつもりだったが、そんな名前は聞いたこともない。解説氏が言うにはシンガポールを中心に活動しているアジア系ハーフとのこと。タイトルは「ヒアズ・トゥ・ベン」で選曲は「ダニー・ボーイ」だ。なるほど、ベン・ウェブスターへのトリビュートか、などと考えているといきなり無伴奏で「オゥダニボォ~イ」ときた。その後約3分弱アカペラで歌い通すのだが、口中の唾液の動きが聞き取れるほどリアルで鳥肌が立つほどゾクゾクしたのを今でもハッキリと覚えている。そして途中からベースと、ほんの少し遅れてブラッシュが満を持したという感じで入り込んでくる、そのピンと張りつめた緊張感が一瞬フッと宙に消えいくような瞬間がたまらない。歌唱力も抜群で、例えるならホイットニー・ヒューストンの「オールウェイズ・ラヴ・ユー」(映画ボディーガードのテーマ)のジャズ・ヴォーカル版といった感じだった。
 イベント会場を出たその足でミナミとキタのレコード屋を探しまくり、梅田の今はなきLPコーナーでようやく入手。ここは中学の時からビートルズ関係の海賊盤(←懐かしい響き!)でお世話になった大阪の老舗レコード店で、値段が高いのが玉にキズだったが結構掘り出し物にも出会えた貴重なお店だった。毎週レコ屋巡りをしていた頃が懐かしい。ネット時代になってすっかり足が遠のいているうちに気がつけば関西のレコ屋は半減、これも時代の流れなんだろうか?いけない、話が横道にそれてしまった(>_<) このように苦労して手に入れたジャシンタ盤、帰って聴いてみて改めてその素晴らしさを実感した。全9曲中7曲がバラッドなのだが、まったくダレない。①「ジョージア・オン・マイ・マインド」や④「サムホエア・オーヴァー・ザ・レインボウ」で、ローレンス・マラブルがひっそりと擦るブラッシュとテディ・エドワーズの枯れたテナーをバックに水も滴るようなしっとりヴォイスでじっくりと歌い上げるジャシンタがたまらない。そのソフトでシルキー・タッチの歌声はアップ・テンポの②「アワ・ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ」と⑧「ペニーズ・フロム・ヘヴン」の2曲でも心地よく、めっちゃハッピーな気分にさせてくれる。もしあのイベントに行かなければ彼女のことを知らずにいたかもしれないと思うと、愛聴盤との出会いというのは何とも不思議な巡り合わせやなぁと改めて考えさせられた。

別のアルバムからの音源で、「ワン・レイニー・ナイト・イン・東京」の元ネタとなった「ブールヴァード・オブ・ブロークン・ドリームズ」をどうぞ↓

Jacintha - THE BOULEVARD OF BROKEN DREAMS

沢田研二 A面コレクション

2009-04-16 | 昭和歌謡
 私が好きな昭和歌謡の歌手はほとんどが女性である。彼女らは抜群のリズム感に恵まれ、ある者はジャズのスイングを、またある者はカヴァー・ポップスで培ったノリを血や肉とし、自らのアイデンティティーを確立していった。だから彼女らの歌うリズム歌謡が私のような “ジャズ&ロック好き” でも十分楽しめるものになったのは今になって考えれば当然の成り行きだった。一方、邦楽の男性歌手はその大半が演歌かアイドル系(いわゆる“御三家”ってヤツね)でどこをどう聴いても自分とは無縁の世界だったが、ただ一人だけロックのフィーリングを感じさせる歌手がいた。ジュリーこと、沢田研二である。
 彼は60年代にGSの人気バンド “ザ・タイガース” のヴォーカルを務め、ソロになってからも他の歌手にはない “スーパースターのオーラ” を発散しながらヒット曲を連発していった。当時の私はまだ中学生で、ビートルズやカーペンターズといった洋楽一色の音楽生活だったにもかかわらず、ジュリーの歌だけは “邦楽” とか “歌謡曲” が持つダサイ感じがなく、ノリの良い “歌謡ポップス” みたいな感覚でスンナリと受け入れていた。彼には “天性の声” という最大の武器があり、又充実した楽曲群に恵まれたこともあって、当時の邦楽男性歌手の中ではまさに “ザ・ワン・アンド・オンリー” といえる存在になっていた。特に77~82年あたりの怒涛のような快進撃は凄まじく、新曲を出すたびに大反響を巻き起こしていた記憶がある。
 その約20年後、京都へCDハンティングに行った時のこと、河原町のビーバーレコードで彼のシングルA面を年代順にコンプリート収録したこの3枚組CD「A面コレクション」を見つけた私は懐かしさのあまり衝動買いしてしまった。Disc 1 が71~76年、Disc 2 が76~80年、Disc 3 が80~85年という構成だ。
 Disc 1では、何といっても印象的なギター・リフが耳に残る⑥「危険なふたり」のインパクトが大きい。私が初めて聴いたジュリーであり、例の振り付けもよくマネしたものだ。あの艶のある声で声量一杯に “オォォ~ ニーナ、忘れられない~♪”と歌うサビの部分の盛り上がりに圧倒された⑩「追憶」も忘れられないし、井上堯之氏の哀愁舞い散るギターのイントロから “あなたは~ すっかり 疲れてしまい~♪” とジュリーのヴォーカルが入ってくるだけで鳥肌モノの⑭「時の過ぎゆくままに」なんて、昭和歌謡史上屈指の名曲名演だと思う。
 Disc 2では時代を代表する名曲③「勝手にしやがれ」が素晴らしいのは当たり前だが、それを更にリファインしたような⑦「ダーリング」の疾走感もたまらない。 “春が来ても~ 夏が来ても~♪” とたたみかける後半部での押し寄せるようなパワーは圧巻だ。⑬「TOKIO」を歌うジュリーを初めてテレビで見た時は正直ぶっ飛んだ。スーパースターのジュリーが電飾付きのミリタリー・ルックにパラシュートまで背負って歌っていたのだ(゜o゜) こんな姿で歌ってサマになるのはジュリーしかいない。これぞ真のプロフェッショナリズム、ホンモノのエンターテイナーとしての存在感がお茶の間で見ている我々にもヒシヒシと伝わってきて圧倒されたものだ。
 Disc 3では④「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」がストレイ・キャッツからの、⑨「晴れのちBLUE BOY」がアダム&ジ・アンツからの影響をストレートに表出していることからもわかるように、当時ロンドンで流行の最先端をいっていた音楽を積極的に取り入れていたジュリーのアグレッシヴな姿勢に共感を覚える。それでいて楽しく聴ける歌謡ロックになっているところが凄い。キャッチーでフレンドリーなジュリーの決定版といえる⑥「おまえにチェック・イン」、ユニークなイントロと “毎日 僕 眠れなぁい やるせない~♪ (ha! ha! ha!)” の部分が妙に耳について離れない⑦「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」と、時代を牽引するヒットメイカーとしてのジュリーも健在だった。
 30年以上経った今でも全44曲のほとんどは題名を見ただけで頭の中でイントロが鳴り出すくらいよく覚えている。どんなに時が経っても風化しないジュリーの歌声とヒット曲の数々... 彼の全盛期をリアルタイムで経験できてホントにラッキーだった。

TOKIO