shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

弘田三枝子 エッセンシャル・ベスト

2010-03-30 | 昭和歌謡
 本能の赴くままに続けてきた春の昭和歌謡大会もそろそろネタが尽きてきたので一応今日で打ち止め、最終回はカヴァー・ポップスよし、ジャズよし、歌謡曲よしと、どんなジャンルの楽曲でも軽くこなしてしまう和製ダイナマイト、ミコたんだ
 彼女のキャリアは長いが、やはり60年代がズバ抜けて素晴らしい。70年代以降はキーも下がり、歌唱もテクニックに走りすぎるきらいがあるが、60年代の声量溢れるパワフルな歌唱は本当に凄かった。小賢しいテクニックなどどこ吹く風とばかりにパワーですべてをねじ伏せるような圧倒的な歌唱力は日本音楽史上最強かもしれない。世間の評価はカヴァー・ポップスで次々とヒットを飛ばして破竹の勢いだった60年代前半の東芝時代が圧倒的に高く、 “ミコといえばまず東芝の「ヒット・キット・パレード」” という感じで、私もそれに異存はない。しかしだからといって “コロムビア時代はイマイチ... ミコは東芝で終わった...(>_<)” と早急に結論付けてしまうのはどうかと思う。確かに68年のライヴ「ミコ・ R&B をうたう」あたりになると彼女の身に一体何が起こったのかと思いたくなるぐらい歌唱法が変わってしまい、何かこねくり回すような不自然な歌い方が鼻について正直、全曲聴き通すのはキツイのだが、コロムビア移籍直後の65~67年ぐらいまでの録音では、それまでのパワー一辺倒だったものが上手く肩の力が抜けており、その軽やかな歌いっぷりが結構好きなのだ。そこで引っ張り出してきたのが、東芝時代のヒット曲の再録セルフ・カヴァーを数曲含むコロムビア時代のベスト盤「エッセンシャル・ベスト・弘田三枝子」である。
 この CD は全15曲収録でそのうち④「子供ぢゃないの」、⑤「ヴァケーション」、⑥「渚のデイト」、⑦「想い出の冬休み」、⑬「ビー・マイ・ベイビー」の5曲が再録だ。実は数ヶ月前の G3 で彼女の代表曲⑤を使って東芝盤と聴き比べをやってみたのだが、 901 さんも plinco さんも東芝盤に軍配を上げられた。曰く、東芝盤の方がストレートに歌っていて好感が持てる;コロムビア盤は小手先のテクニックが気になる、とのこと。ちょうど私が68年以降の作品に感じている違和感(74年録音の⑬は心に響くモノがない...)と同じものだろう。例えるなら東芝盤がアクセルをガバッと踏み込むと余裕のパワーでストレートをグングン加速していくシボレー・カマロ、コロムビア盤が抜群のハンドリングでワインディングをヒョイヒョイと小気味よくクリアしていくルノー・アルピーヌといった感じか。私は両方好きなのだが...(^.^) 特に④はその軽快なノリと天性のパンチ力溢れる歌声の相乗効果で屈指の名唱になっていると思う。⑤も終始楽しそうに歌っており、まるでルンルン気分のスキャットでも聴いているようなハッピーな余韻を残してフェイドアウトしていくエンディング・パートが大好きだ。
 この盤のもう一つの聴き所はカヴァー・ポップスで頂点を極めたミコたんの歌謡曲路線への転向である。彼女の歌謡曲と言えばすぐにレコード大賞を取った①「人形の家」が思い浮かぶが、名曲名唱であることは認めつつも個人的にはこういう曲想のナンバーは彼女には合わないと思う。ミコたんはやっぱり元気ハツラツ、明るく楽しい曲がいい(^.^) ⑪「私が死んだら」、⑫「ロダンの肖像」も①と同様なかにし礼=川口真コンビの曲で、どちらもイマイチ好きになれない。この路線は①だけにしときゃ良かったのに...(>_<)
 一方、橋本淳=筒美京平コンビの歌謡ポップス②「渚のうわさ」は美しいメロディーと見事なアレンジがたまらない大名曲で、上記の④⑤といった再録ナンバーと同じく彼女の軽やかな歌声が耳に心地良い。彼女の歌謡曲路線では断トツに好きなナンバーだ。⑨「可愛い嘘」も同コンビの作品で、これもあまり売れなかったらしいが、大ヒットした①なんかよりも淳=京平コンビの②⑨の方が遥かに彼女の持ち味を引き出していると思う。あと、意外な選曲が⑩「グロッカ・モーラの様子はいかが」だ。私がこのバートン・レイン作の名曲を知ったのはソニー・ロリンズのBN盤で、さすがはメロディーの人、ロリンズやなぁと唸るような名演を聴かせてくれたのだが、それを彼女が取り上げているのを知った時はビックリした。名盤「ミコ・ミュージカルを唄う」を想わせるような情感たっぷりの歌い回しに癒される名唱だ。
 コロムビア移籍後の、主に60年代の作品を中心に選曲され、カヴァー・ポップスの再録あり、昭和歌謡の名曲あり、ミュージカル・ナンバーありと、ヴァラエティーに富んだこのアルバム、東芝盤の「ミコちゃんのヒット・キット・パレード」で彼女に入門したら、その次に聴くべき1枚だと思う。

ヴァケーション (コロムビア ver.)


渚のうわさ
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栄光のグループ・サウンズ

2010-03-29 | 昭和歌謡
 中村晃子や黛ジュンといったいわゆる “ひとりGS” の懐かしさ溢れるサウンドを聴いていると今度は本家のグループサウンズの曲を聴きたくなってくる。 GS というのはごく一部のビッグネームを除いてヒット曲の数が限られているのでオムニバス盤で聴くことがほとんどだ。私の場合、GS のオムニバス CD はこの「栄光のグループ・サウンズ」を含めて3枚持っていて、それらを CD-R に編集し直して聴いている。
 私が初めて GS というものを意識し、系統立てて聞いたのは高校生の時で、当時 FM 大阪の深夜放送でやっていた「懐かしの GS 名曲リクエスト」という特番をエア・チェックしたのがきっかけだった。いわゆる曲別の人気投票である。当時の私はジュリーが元タイガース、ショーケンが元テンプターズ、ムッシュとマチャアキが元スパイダース、という程度の知識しかなく、 “リクエストベスト10なんかジュリー人気で殆どタイガースで埋まるんちゃうか?” と思いながら結果発表を聞いたのを覚えている。その時のテープは今でも大事に取ってあるので、Top 10 を書くと...
 1.ブルー・シャトウ(ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)
 2.エメラルドの伝説(ザ・テンプターズ)
 3.花の首飾り(ザ・タイガース)
 4.想い出の渚(ザ・ワイルドワンズ)
 5.長い髪の少女(ザ・ゴールデン・カップス)
 6.モナリザの微笑(ザ・タイガース)
 7.夕陽が泣いている(ザ・スパイダース)
 8.シーサイド・バウンド(ザ・タイガース)
 9.青い鳥(ザ・タイガース)
 10.小さなスナック(パープル・シャドウズ)
まぁ10位以内 に4曲も送り込んだタイガースも確かに凄いが、それ以上に私が魅かれたのが①(←エド・サリバン・ショーに出てたとは知らなんだ...)②(←タックスマンなベース・ラインに注目!)⑤(←鈴木邦彦の才気煥発!)といったコテコテの GS 歌謡ナンバーで、その哀愁舞い散るマイナー調のメロディーはあれから30年経った今でも私の心の琴線をビンビン刺激する。これら哀調曲の良さが分かる日本人に生まれてホンマに良かったなぁと思う今日この頃だ。続いて11位以下はというと...
 11.君だけに愛を(ザ・タイガース)
 12.銀河のロマンス(ザ・タイガース)
 13.白いサンゴ礁(ズー・ニー・ブー)
 14.廃墟の鳩(ザ・タイガース)
 15.スワンの涙(オックス)
 16.学生街の喫茶店(ガロ)
 17.亜麻色の髪の乙女(ザ・ヴィレッジ・シンガーズ)
 18.あのとき君は若かった(ザ・スパイダース)
 19.僕のマリー(ザ・タイガース)
 20.たどりついたらいつも雨降り(モップス)
という結果だった。⑪はタイガースの中では断トツに好きな曲で、アップテンポ曲が好きな私としては⑧はともかく何でコレが③⑥⑨みたいなバラッドより下やねんと納得いかない(>_<) ⑮は「そんなヒロシに騙されて」の元ネタっぽいメロディーが好きなのだが、さすがに間奏のセリフだけは小っ恥ずかしくて聴いていられない。この曲に限ったことではないが、曲中に歯の浮くような喋りを入れるのだけはカンニンしてほしいわ。⑳のモップスはGSの中では一番ロックを感じさせる大好きなグループで、24位に入った「朝まで待てない」と共に大好きなナンバーだ。
 順位は低いがそれ以外で個人的に大好きなのが26位のザ・ジャガーズ「君に会いたい」(←後半部で My baby won’t you, won’t you see again...と英語詞にスイッチする所が好き!)、30位のザ・テンプターズ「神様お願い」(←クワタ・バンドのカヴァーもオススメ!)と57位のザ・テンプターズ「おかあさん」(←“オ~ ママ ママァ~♪” が呪文のように脳内リピートします...)なんかがお気に入りのナンバーだ。
 テクニック面では稚拙かもしれないが、GS の甘酸っぱいメロディーとヘタウマなバンド・サウンドには、何十年経っても我々の心を惹きつけてやまないマジックが潜んでいる。GS の全盛期は1967~68年あたりだと思うが、GS であれ歌謡曲であれ、この頃の邦楽はまるで時代を映し出す鏡のように生き生きとした生命力に満ち溢れており、たまらなく魅力的だ。昭和ってホンマにエエ時代やったなぁ... (≧▽≦)

ブルーシャトー(ブルーコメッツ)


ザ・テンプターズ/エメラルドの伝説


ザ・ゴールデン・カップス 長い髪の少女

小山ルミ ヒット・コレクション

2010-03-28 | 昭和歌謡
 3月は仕事がヒマなので先週の水曜に有休を取って大阪・神戸へ “ガールズ歌謡発掘ツアー” に出かけた。ネットでは出品する方も商品知識が豊富でしかもライバルも全国区だから掘り出し物に出会う確率は非常に低い。どっかのレコ屋のエサ箱に稀少盤が眠っているのではないか、身悶えしながら私を待っているのではないかと自分に都合の良い妄想を膨らませ、早起きして大阪・神戸に向かった。しかし現実はそんな甘いモンではなく、特に CD に関しては惨憺たる状況で、ガールズ歌謡どころか昭和の歌謡曲自体がほとんど置いてない。あるのはワケのワカラン演歌ばかりでガッカリ(>_<) どのお店も閑古鳥が鳴いていたが、あんな旧態依然とした値付けと貧相な品揃えではアホらしくてレコ屋廻りなんかやってられない。元町のハックルベリーや梅田第2ビルの名曲堂みたいに “品揃えに拘りがあって値付けも良心的な” お店以外は淘汰されて数年以内に姿を消すのではないか? まぁ久々に歩き回ってエエ運動にはなったけど(笑)
 そんな大阪・神戸遠征で私が狙っていた一人がカルト歌謡の最高峰こと、小山ルミだった。彼女のCDは以前取り上げた「ベンチャーズ・ヒットを歌う」を含む3枚しか持っていないので、昭和歌謡で盛り上がっている今のうちに残りの盤もゲットしてしまおうと目論んだのだが、結局は小山ルミの “こ” の字もなく空振りに終わってしまい、まぁしゃあないか、と諦めかけていた。ところが人生どこに幸運が転がっているか分からない。実はこの4月から新しい職場に転勤が決まり、奈良県を北から南まで縦断して通勤することになったのだが、先日初めてそこへ顔合わせに行った帰りに立ち寄った “開放倉庫” という大型リサイクル・ショップで「小山ルミ ヒット・コレクション」を見つけた。ネット上では4,000円以上で取り引きされている稀少盤が何と1,500円、これはもう笑いが止まらない。以前 901 さんが “ブックオフや開放倉庫って案外狙い目かも...” と仰っていたが、確かにレコードや CD の専門店じゃないので法外なプレミアも付いてないし、その道の猛者たちの盲点になっているここは大きな穴場かもしれない。これからも時々覗いてみよう(^.^)
 この「小山ルミ ヒット・コレクション」は渡辺プロの企画によりレコード・レーベルの枠を超えた選曲がなされており、他のベスト盤とは一味違った内容になっているところがミソ。手持ちの盤との重複は①「さすらいのギター」、②「二つのギター」、⑩「北国の青い空」の3曲のみで後は初めて聴く曲ばっかりだ。中でも一番インパクトが大きかったのが⑦「グット,, がまんして」で、いきなり “シュビドゥビドゥビ ドゥ ドゥビドゥ~バ♪” ときて “パッパッパヤ パッパッパパヤパ~♪” と続くあたりでまずイスから転げ落ちる。何とか起き上がろうとしたところへ “みっともなーいモン♪” とくる(笑) 何なん、このおバカな曲は?と思いながらももう一度リピート・ボタンを押してしまう麻薬のような中毒性をこの曲は秘めている。 “カルト歌謡の最高峰”の看板に偽りなしのエキセントリックな妖しさがたまらない。 “叫んじゃおーかなー♪” って... 聴いてるこっちが叫びたくなるようなアホらしい曲だが、ぐっとガマンして繰り返し聴いているうちにこの曲の魅力にハマってしまい、気がつけば脳内リピートしてしまっている今日この頃だ(笑)
 平山みきの⑪「フレンズ」、欧陽菲菲の⑫「恋の追跡(ラヴ・チェイス)」、そして彼女自身のシングル曲⑬「ブルー・ジーン」と続く筒美京平ナンバー3連発も聴きものだし、鈴木邦彦が作曲した⑤「たずね人」でブンブン弾むベースに乗って哀愁のメロディーを切々と歌う彼女のコケティッシュなヴォーカルもたまらない(≧▽≦) ジャンニ・モランディの⑱「恋のサンライト・ツイスト」は木の実ナナや安西マリアのカヴァー・ヴァージョンを愛聴してきたが、おふざけ歌謡⑦とは打って変わってしっかりしたヴォーカルを聴かせるこのルミちゃん・ヴァージョンも大好きだ。ジャネット・サイデルの名唱でその存在を知った⑰「恋のマイアミ・ビーチ・ルンバ」、まさか40年前にルミちゃんがカヴァーしていたとは...(゜o゜) 可憐な胸キュン・ヴォーカルが新鮮だ。それにしてもこの人、曲に合わせて器用に歌い方を変えてくるなぁ...(^.^) 
 60年代後半から70年代初めにかけてキラ星のように登場した女性ポップ・シンガー達の中でも断トツの存在感を誇る小山ルミのキュートな魅力が満喫できるこのアルバム、カラフルでポップなジャケットも含め、ずっと手元に置いておきたい1枚だ。

グット、、がまんして!!(モノラル)小山ルミ


恋のサンライト・ツイスト
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ロック天国 / 中村晃子

2010-03-27 | 昭和歌謡
 私にとって60年代邦楽の狙い目の一つは “GS歌謡” と呼ばれるジャンルで、当時人気のあったGSサウンドをバックに女性シンガーがリズミカルに歌う、いわゆる “ひとりGS” が大好きだ。女王美空ひばりがブルーコメッツを従えて歌った「真っ赤な太陽」を始め、先日取り上げたあゆの「太陽は泣いている」や黛ジュンの「恋のハレルヤ」など、ある意味歌謡ロックの先駆けとも言えるヒット曲の数々が私の感性のスイートスポットを直撃する。そんな “ひとりGS” の中で最近ハマッているのが中村晃子である。
 もちろんつい最近まで彼女のことはその名前すら知らなかった。たまたま奥村チヨちゃん絡みの映像を YouTube で色々見ていた時に(←最近このパターン多いよな...)偶然見つけたのが “ゴールデンハーフ・中村晃子・奥村チヨ” と題された2分弱の映像で、彼女が何かの映画(←多分、「進め!ジャガーズ敵前上陸」やと思います...)の中で歌っている場面はわずか十数秒ほどしか流れなかったし曲名の記載もなかったのだが、まるで私のために作られたかのような(笑)マイナー調の哀愁舞い散る旋律と懐かしさ溢れるGSサウンドが見事に融合しており、その十数秒の旋律が頭から離れなくなっていた。
 私は早速 “中村晃子” で検索・試聴してその曲が「虹色の湖」であることを突き止め、アマゾンでこの曲が入っているアルバムを調べ「ロック天国」という盤が一番良さそうだったので値段を見ると7,500~8,000円だ。要するに廃盤プレミアなんである。いくら何でも CD 1枚にそれだけも出せるワケがないので、ヤフオクをチェックしてみて更にビックリ。値段は驚異の39,000円(゜o゜)... ビートルズのモノ・ボックスが買える値段だ。商品説明欄に “価値の判る方の入札をお待ちしております” とあるが、その “価値の判る方” とやらの貨幣価値感を訊いてみたいものだ(笑) 結局私は毎日コマメにネットでチェックするという持久戦に持ち込み辛抱強く待つことにしたのだが、その甲斐あって先週末アマゾン・マーケットプレイスに3,800円で出品されたのを見つけて速攻でゲット、“ケースにキズあり” の “良い” でこの値段なら御の字だ。
 CDは全24曲入りのお徳用盤で、これが同じシンガーかと思えるぐらい違ったタイプの曲が色々と収められているが、やはり狙い目は「虹色の湖」を始めとする “ひとりGS” 路線の楽曲だ。彼女のデビューは1965年で、当初は高音まで伸びる歌声が特徴的な青春歌謡路線の曲が多かったがそれらは全くヒットせず、1967年に “コレが売れなかったら引退” という覚悟で津々美洋とオールスターズ・ワゴンの演奏をバックにレコーディングしたのが「虹色の湖」だった。ブルーコメッツやテンプターズっぽい雰囲気のGS歌謡サウンドと彼女のドスの効いた歌声が絶妙にマッチしてチャート3位にまで上がる大ヒット。バラけたドラムにベースが寄り添い、お約束なマイナー・メロディーを奏でるギターに胸をかきむしる様なストリングスが絡みつき、 “幸せがぁ 住むという 虹色の湖~♪” とやさぐれた彼女の歌声が炸裂する瞬間のゾクゾク感!コーラス付きで盛り上がるパートもめっちゃ60'sしていてタッ、タマラン(≧▽≦) ピンキラの「恋の季節」を先取りしたような曲想も秀逸な、曲良し・歌良し・演奏良しのキラー・チューンだ。
 ⑦「涙の森の物語」も一度聴いたら忘れられないようなナンバーで、何と言っても彼女の歌い方がめちゃくちゃ面白い。 “その朝はわぁんぁ 野あざみがぁんぁ~♪” と語尾を全て上げ、やさぐれ感全開なのだ。曲の方もユニークで、イントロに「白鳥の湖」を引用し静謐な雰囲気で始まったなぁと油断していたらいきなりドラムのフィルが炸裂、彼女のヴォーカルに怪しげなワウワウ・ギターが軽く添い寝するというたまらない展開だ。それと、この頃の歌詞ってやたらと “湖” とか “森陰” とか出てくるような気がするのだが、考えすぎかな?
 これら2曲と同じ GS 歌謡の⑧「砂の十字架」ではドタバタと荒れ狂うドラムが圧巻で、ハッキリ言って彼女のヴォーカルとドラムのデュオを聴いているかのような錯覚に陥るぐらい凄まじいグルーヴを生み出している。お約束のマイナー調 GS メロディーにも涙ちょちょぎれるナンバーだ。71年にシングルのB面としてリリースされた②「気まぐれ列車」も彼女のズベ公節全開ヴォーカルがグルーヴしまくりで、やさぐれ歌謡の隠れた名唱の一つに挙げたいカッコ良さだ。
 カヴァー曲もエエ感じで、オリジナルのPPMよりも遥かにロックしている③「ロック天国」(←絶妙なタイミングで飛来するハンド・クラッピングが最高!)や伸びやかな高音を活かした④「花のサンフランシスコ」(←怒涛のタンバリン攻撃が凄まじい!)、ダニエル・ビダルとは一味違ったパワフルな⑤「天使のらくがき」、チンクエッティやバルタンとの聴き比べも一興の⑥「ズン・ズン・ズン」など、聴き所も満載だ。
 ザ・ワン・アンド・オンリーな中村晃子のやさぐれヴォーカルが存分に楽しめ、懐かしさ溢れる “あの時代の音” が一杯詰まったこのアルバム、私のような GS 歌謡好きにとってはこたえられない1枚だ。

中村晃子 虹色の湖


砂の十字架


涙の森の物語
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西田佐知子 全曲集

2010-03-26 | 昭和歌謡
 西田佐知子は1960年代を代表する女性歌手の一人である。1956年にレコード・デビューし、1961年に「コーヒー・ルンバ」が大ヒット、翌62年には「アカシアの雨がやむとき」でその地位を不動のものとし、71年に関口宏と結婚するまで、流行り廃りの激しかった60年代に約10年の長きにわたってコンスタントにヒットを飛ばし続けたのだからコレはもう凄いとしか言いようがない。
 私のように洋楽中心に音楽を聴いてきた40才台の人間にとって、彼女の存在はまさに盲点と言えるものだった。ビートルズやレッド・ゼッペリン、マイケル・ジャクソンばかり聴いていては彼女の曲を耳にする機会などあろうはずがない(笑) そんな私が彼女の歌声を初めて聴いた(←実際はもっと以前から菊正宗の CM ソングで耳にしていたということが後になって発覚...)のは数年前、901 さんが持参された⑦「コーヒー・ルンバ」の醸し出す独特のムードが気に入り、“こんな歌手いてたんや...何かワカランけど、妙に心に残る歌声やなぁ...” と思いながら彼女がまだカヴァー・ポップスを歌っていた頃の曲を集めた「アーリー・デイズ」という CD をアマゾンで購入、もちろんお目当ては「コーヒー・ルンバ」に匹敵するようなポップス曲の発掘だったのだが、その中で断トツに気に入ってしまったのが当初の狙いと全く正反対な路線の①「アカシアの雨がやむとき」だった。それまでの私は、正直言ってこのような “コテコテの歌謡曲” は露骨に敬遠していたのだが、この曲を切々と歌う彼女の歌声の前に私は胸に熱いものが込み上げ、すっかり心を奪われ、頭を垂れて聴き入ってしまった。 “彼女の歌う歌謡曲はどこか違う!” と感動した私はちょうどその頃開催されていた阪神百貨店レコード・バーゲン・セールで運よく彼女のオールタイム・ベスト盤を発見、喜び勇んでレジへ持っていったのがこの「西田佐知子 全曲集」だった。全20曲、一騎当千の名曲満載で1,180円なんてホンマにエエんかいな?
 もちろん1曲目は昭和歌謡史上屈指の名曲名唱①「アカシアの雨がやむとき」である。そういえばこのアルバムにはこの①を始め、③「赤坂の夜は更けて」、⑥「東京ブルース」、⑧「女の意地」、⑨「涙のかわくまで」と、ちあきさんが初期のアルバムでカヴァーしていた曲が多いが、聞くところによると彼女がデビュー前に師匠の鈴木淳氏から猛レッスンを受けていた時に氏が教材として選んだのが西田佐知子の楽曲群だったという。前座歌手としてキャバレー回りをするうちに身についてしまった演歌唱法のこぶしという厄介な癖を取り除き、まっすぐな発声に戻すためにちあきさんは来る日も来る日も「アカシア...」を歌わせられたとのこと。彼女にとって最高のお手本が西田佐知子だったというわけだ。そんな考えを巡らせながら2人のヴァージョンの聴き比べをするのも昭和歌謡ファンに許された最高の贅沢というものだろう。特に⑨の歌い出しなんて一瞬美空ひばりを想わせるような歌唱でもうゾクゾクしてしまう(≧▽≦)
 バカラックなイントロに耳が吸いつく筒美京平の隠れ名曲⑤「くれないホテル」も素晴らしい。彼女のちょっと鼻にかかった乾いたハスキー・ヴォイス、そしてそのけだるい雰囲気を醸し出す歌唱スタイルが合わさって、他の歌手には真似のできない垢抜けた世界を作り上げている。ジャズ・ファンに彼女がウケるのもそのあたりに秘密があるように思う。⑳「初めての街で」はこの CD で初めて聴いたのだが、コレって菊正宗のCMソングやん!“初めての街でぇ いつものぉ酒ぇ... やぁっぱりぃ 俺はぁ~♪” のフレーズは日本人なら誰でも一度は耳にしたことがあると思う。それまでは誰が歌ってるのかなんて考えたこともなかったが、さっちんやったんや...(^.^) ⑤同様彼女のザ・ワン・アンド・オンリーな歌声が絶品だ。
 とにかくこのアルバムには彼女の代表的なヒット曲は殆ど網羅されているし、上記の曲以外にもブレンダ・リー・ヴァージョンで取り上げた⑪「ワン・レイニー・ナイト・イン・東京」やジャジーな雰囲気横溢の⑫「ベッドで煙草を吸わないで」といった昭和を彩る名曲群もしっかり収録されていて、コスト・パフォーマンスは抜群に高い。ちあきさんやあゆといった私の大好きな女性シンガーのルーツと言える昭和の大歌手、西田佐知子。彼女の魅力が一杯詰まったこのアルバムは昭和歌謡を語る上で絶対に外せないスーパーウルトラ大名盤なのだ。

西田佐知子「アカシアの雨が止む時」


涙のかわくまで・・・西田佐知子


くれないホテル SACHIKO NISHIDA 1969 (海外向け最高音質版/220)
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涙の太陽 ~ザ・エミー・ジャクソン・アルバム~

2010-03-25 | 昭和歌謡
 これまで何度か書いてきたように私は「涙の太陽」コレクターである。スプートニクスに始まり、安西マリア、田中美奈子、山本リンダ、三東ルシア、青山ミチ、寺内タケシ、サンディー&ザ・サンセッツ、エド山口と東京ベンチャーズ、Mi-Ke、渚ようこ、愛内里菜、メロン記念日に至るまで、この曲が入っているCDは片っ端から買ってきたが、やはりオリジナルに勝るものはない。このCDは彼女唯一のLP「涙の太陽 ~ザ・エミー・ジャクソン・アルバム~」(←彼女のアナログ・オリジナルLPは現物はおろか、ヤフオクでもこれまで1度もお目にかかったことはないのだが、ホンマに存在するんかいな?)の12曲にシングル4枚分の音源を追加して復刻したもので、これ1枚でエミー・ジャクソンが60年代に残した全音源を聴けるという超お徳用盤である。
 ライナーによると、彼女はイギリス人を祖父に持つ日系2世で、本名はエミー・イートン(←ジャクソンという芸名は多分彼女のアイドルだったワンダ・ジャクソンから取ったものかもしれない...)。修道院付属学校在学中にその英語力を買われて(←日本語の字は全く読めなかったというし、⑲を聴いたら喋りもカタコトっぽい...)湯川れい子さんのDJ番組のアシスタントに抜擢され、その歌の上手さに目を付けた湯川さんがコロムビア洋楽部のディレクターに紹介し、デビューすることになったという。デビュー前には「涙の太陽」を作曲した中島安敏による猛レッスン(毎回発声練習前に腹筋50回(!)やらされたらしい...)でコッテリ絞られたというが、今にして思えば彼女のあのパンチのあるダイナミックなヴォーカルはこのレッスンの賜物だろう。
 全20曲聴いて思ったのは、楽曲のベースになっているのは「アメリカン・グラフィティ」路線の甘酸っぱいヒット・ポップスで、それらを1965年当時日本を席巻していたベンチャーズ・ブームの影響大なエレキ・サウンドで武装強化したようなサウンドになっているということ。その典型が和製ポップス第1号と言われる①「涙の太陽」だろう。テケテケ・ギターが唸りを上げ、スマッシュメンという架空のグループ(←フィリピン人らしい...)が怪しいコーラスで盛り上げる。エエなぁ、この何でもアリのおおらかさ(^.^) この曲は色々集めたが、やっぱりコレが一番好きだ。
 それ以外で気に入ったのは②「プリテンド」。ナット・キング・コールやブレンダ・リーの名唱で有名なナンバーだが、ここでは意表を突いたロカビリー仕立てが実に新鮮で、何度聴いてもウキウキした気分にしてくれる。⑮「涙のゴーゴー」も面白い曲で、サム・ザ・シャム&ザ・ファラオズの「ウリー・ブリー」を想わせる怪しげなイントロから寺内タケシみたいなギターが爆裂、オルガンと組んず解れつしながら怒涛のようなバニーズ・サウンド(?)へとなだれ込む様は圧巻だ。バニーズ・サウンドと言えば⑨「涙がいっぱい」なんかもうパロディーかいなと思うぐらいギター・フレーズや全体の音作りが寺内タケシしていて実に楽しい。テケテケ・エレキ・サウンドで武装したアメリカン・ポップスという趣きの⑥「涙のハート」もそうだが、この徹底ぶりを私は買いたい。3分間ポップスの要諦はその楽しさにあり、という王道を行くサウンド・プロダクションだ。
 テケテケ系以外では④「涙のチャペル」がエエ感じ。元々はサントラ盤「アメリカン・グラフィティ」に入っていたソニー・ティル&オリオールズがオリジナルだが、私はこの曲を聞くとエルヴィスのヴァージョンを思い出す。ややテンポを上げてエミー・ジャクソン・スタイルで歌ったのが大正解で、ノリノリの楽しいナンバーに仕上がっている。⑭「ママがサンタにキッスした」では大排気量のアメ車のような余裕のヴォーカルが楽しめるし、⑲「天使のいたずら」ではこのアルバム中で唯一の日本語詞が楽しめる。様々な楽曲のオイシイとこ取りみたいな⑰「恋のエンジェル・フィッシュ」はクセになる1曲。どこかで聴いたことがあるけどそれがどーしても思い出せない、みたいなフラグメンツが現れては消え、消えては現れる。実に巧妙な作りのナンバーだが、ブクブクブク...という泡音の効果音には笑ってしまう。
 とにかくあれこれ難しいことを考えずに楽しんじゃった方が勝ち、みたいなノリのこのエミー・ジャクソン盤を私はこよなく愛しているのだが、今では既に廃盤になっているようで、 “オンデマンド CD ” という名称で受注生産 CD-R として販売されているらしい。アマゾンではオリジCDに8,000円のプレミアが付いていた。60'sファン、昭和歌謡ファンにとっては何とも住みにくい世の中になったものだ(>_<)

涙のゴーゴー・・・エミー・ジャクソン


恋のエンジェル・フィッシュ・・・エミー・ジャクソン
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人の気も知らないで / 沢 知美

2010-03-24 | 昭和歌謡
 今日はちょっとコアでディープな歌謡曲番外地へとご案内... 60年代終わりから70年代初めにかけてファッションモデル、女優、そして歌手として活躍した沢知美である。彼女を知ったのはごく最近で、例によって YouTube サーフィンしていて偶然見つけたのが “60s昭和お色気キューティ ポップ やさぐれ ビート歌謡” という物凄いタイトル(笑)が付けられた10曲入りメドレーのクリップだった。その歌声といい、醸し出す雰囲気といい、めちゃくちゃ私の好みだったので “コレは絶対欲しいっ!!!” と思ったのだが、不思議なことにどこにも歌手の名前が書かれていない(>_<) 仕方なく “歌詞を聴き取って題名を想像しアマゾンの曲名検索にかける” という荒技を敢行し、ラッキーにも突きとめたのがこの「人の気も知らないで」だった。
 届いた CD でまず目を引くのがその美麗ジャケットだ。グリーンをバックに同じグリーンのドレスからスラリと伸びた腕の線が実に美しい。いわゆるひとつの腕美人である。もちろん顔もスタイルも抜群で、まるで50年代アメリカの女性ヴォーカル・アルバム・ジャケットを想わせる素晴らしさだ(≧▽≦) LPはヤフオクでも滅多に出てこない激レア盤らしいが、コレは何としてもLPサイズで手に入れたいジャケット名盤だ。
 とまぁこう書いてしまうとただのお色気歌謡のように聞こえるかもしれないが、聴いてビックリ、その内容は聴き応え十分で、何よりも歌が上手いのだ。 “女優の余技” というレベルを遥かに超えた、バリバリのヴォーカル・アルバムなんである。もちろんお色気はアルバム全体に横溢しているが、決して過剰にならず、そのサジ加減が絶妙なのだ。これって一見簡単そうで中々難しいことだと思う。
 この CD はオリジナル・フォーマットの全12曲にボートラとしてシングル8曲を加えた超お買い得盤で、アルバム曲の方は一言で言えば “大人の歌謡曲路線” のムーディーなナンバーがメインになっており、モロ歌謡曲といった感じのバックの演奏と、彼女の上品なお色気を感じさせるヴォーカルの対比が面白い。何と言ってもアルバムの副題が「沢知美とあなたの夜」なのだから推して知るべしだ。そんな中、特に私が気に入ったトラックは②「つめ」、④「すてきなあなた」、⑩「ウナ・セラ・ディ東京」、⑫「あいつ」といったナンバーで、バタ臭さを微塵も感じさせない洗練された音作りが彼女のアンニュイなヴォーカルと絶妙に溶け合い、都会的なサウンドとして屹立している。特にティナ・ルイスを彷彿とさせるほのかな色気がたまらない②やアンドリュース・シスターズで有名なスタンダードをユル~くボッサ化した④なんかもう絶品だ。
 ボートラの方はバラエティーに富んだナンバーが並んでいるが、まずは何と言っても⑳「ブルー・モーニング・ブルース」である。今回このアルバムを知るきっかけとなったサビの “ブルー モーニング ブルース~♪” というラインが耳に残るキャッチーな旋律を持ったナンバーだ。次から次へとテンポよく場面が切り替わっていく映像を見ているかのような、一気呵成にたたみかけるメロディー展開がたまらない。
 突き離したような歌い方が曲想と見事なマッチングを見せる⑰「私はかもめ」や、流れるようなメロディー展開でTVドラマのテーマに使うとぴったりハマりそうな⑲「夏の女」なんか結構エエ感じの歌謡ポップスに仕上がっている。又、⑭「アンブレラのブルース」では西田佐知子、⑱「罪ある女」ではいしだあゆみそっくりの歌い方に大爆笑。よぅ特徴つかんでるなぁ...(^.^) イメージとしてはフェロモン歌謡でも、歌唱のベースがしっかりしているからこその芸当だろう。昭和歌謡ファンはコレを聴いてイスから転げ落ちて下さいな(^.^)
 ⑯「モーニング・ブルース」はタイトルだけではピンとこなかったが、このメロディーは知ってるぞ。ちあきさんが 3rd アルバム「愛はさりげなく ~ヒット・ポップスをうたう~」でカヴァーしていた曲ではないか!何たる偶然(゜o゜) 早速聴き比べてみたが、ちああきさんの歌唱は完璧といえる素晴らしさで、他のカヴァーと同じくご自身のオリジナル曲のように響く。しかし沢知美の歌声も絶妙なやさぐれ具合で、彼女にしか出せない味わいがたまらない。
 歌良し、曲良し、ジャケット良しと3拍子揃ったこのアルバム、知名度は低いかもしれないが、大人のムードの美人女性ヴォーカルを好むご貴兄にイチ押しの溺愛盤だ。

ブルー・モーニング・ブルース


素敵なあなた
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センチメンタル・ジャーニー / いしだあゆみ

2010-03-23 | 昭和歌謡
 最近すっかり美人女性ヴォーカル専門ブログ化してきたこの “明日なき暴走” だが、 “お得意のロックンロールはどーした?” とか “ジャズはもう忘れたんか?” とか “もう空蝉状態になってるやろ~(^.^)” などといった声にもめげず(笑)、昨日に続いて今日もあゆを取り上げたい。それも彼女お得意の鼻歌歌謡ではなく、ポピュラー・ソングのカヴァーというレア音源ですぜ~(^o^)丿
 事の始まりは私が昭和歌謡にハマッてザ・ピーナッツや弘田三枝子、江利チエミ、青江三奈らのCDを買いまくり、彼女らの代表曲を一通り聴いて一段落した頃、ボッサ・マニアの 901 さんから “いしだあゆみのボサノヴァってないんかなぁ?” と聞かれ、彼女のディスコグラフィーを色々調べていた時に偶然見つけたのがこの「青いカナリア/センチメンタル・ジャーニー」というシングル盤だった。これは当時コロムビア・レーベルに所属していた歌手たちがポピュラー・ソングのカヴァーを競い合った企画物アルバム「ポピュラー・ヒット25年史」(上・下巻それぞれ2枚組)に彼女が参加した時の音源で、彼女は上記2曲の他に「ガイ・イズ・ア・ガイ」と「カラーに口紅」の計4曲を提供、そこから一連の歌謡曲シングルとは違う “ディスカヴァー・ポップス” シリーズとして1971年7月にシングル・カットされたのがこの「青いカナリア/センチメンタル・ジャーニー」というカップリングだったらしい。私は昭和歌謡だけでなく、アメリカの古き良き時代のポピュラー・ソングが大好きなので、愛するあゆが大好きなドリス・デイやコニー・フランシスのヒット曲をカヴァーしていると知った時は狂喜した。
 その後、ヤフオクでこのシングルをゲット、更に彼女の6枚組CDボックス「いしだあゆみ・これくしょん」を買ったら Disc-6 の最後にちゃーんと4曲とも入っていて大喜び、演奏とコーラスはジャッキー吉川とブルー・コメッツだ。
 まずは何と言ってもドリス・デイの代名詞「センチメンタル・ジャーニー」だろう。1944年にレス・ブラウン楽団のバンド・シンガーとしてレコーディングしたものが初演で翌45年には全米№1になっており、更に1965年に「センチメンタル・ジャーニー」というアルバムでも再演している。私的には後者のアレンジが好きなのだが、あゆは万人に知られた初演ヴァージョンのアレンジでしっとりと歌っている。凄いのは歌詞をすべて英語で歌っていながら全く違和感を感じさせずにジャジーな分囲気抜群のヴォーカルを聴かせていることで、凡百の日本人ジャズ・シンガー達よりも遥かに上手いと思う。
 「ガイ・イズ・ア・ガイ」も1952年にドリス・デイのヴァージョンで大ヒットした曲だが、日本では何と言っても江利チエミのヴァージョンが有名だ。歌い出しの “私のママが言いました~♪” からまるでチエミ姐さんが憑依したかのような軽やかなノリでちゃきちゃきした歌声を聴かせるあゆは只者ではない。ホンマに器用やねぇ(^.^)
 清楚を絵に描いたようなダイナ・ショア1953年のヒット曲「青いカナリア」は雪村いづみの代名詞のようなナンバーだが、この人の声はイマイチ私には合わないので、断然あゆ・ヴァージョンの方が好き。ヴォーカル物というのは最終的にそのシンガーの声が好きかどうかで決まるようなところがあるが、コレなんかまさにその典型と言えるだろう。
 「ヴァケーション」と並ぶコニー・フランシス1959年の大ヒット曲「カラーに口紅」は弘田三枝子や森山加代子らがカヴァーしている超人気曲だが、すべて英語で歌い通すこのあゆ・ヴァージョンもかなりイケてると思う。特に彼女の声が少しハスキーにかすれるところなんかもうタマランですわ(≧▽≦) 一応2曲アップしてみたんで興味のある方は是非聴いてみて下さいな(^o^)丿

センチメンタル・ジャーニー


カラーに口紅
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いしだあゆみ・筒美京平ウルトラ・ベスト・トラックス

2010-03-22 | 昭和歌謡
 以前このブログでも書いたが私はいしだあゆみの大ファンである。彼女の「ブルー・ライト・ヨコハマ」を抜きにして昭和歌謡を語るのはビートルズを抜きにして20世紀の音楽を語るようなものだ。この曲も含め彼女の大ヒット曲は1968年~71年に集中しているので、残念ながら私にはリアルタイムの記憶がほとんど無いのだが、この曲だけは別。何と言っても9週連続№1を独走し、まだレコードが貴重品だった時代に100万枚を売り上げた国民的ヒット曲である。この “街の灯りがとてもきれいね ヨコハマ~♪” で始まる橋本淳=筒美京平コンビが生んだ日本音楽史上屈指の大名曲は、その歌詞もメロディーも、まだ子供だった私の心にしっかりと刻み込まれた。だから私はその後 “いしだあゆみ=「ブルー・ライト・ヨコハマ」の懐メロ歌手” という認識でずーっと生きてきたのだが、数年前に昭和歌謡に開眼して色々買い集めたCDの中の1枚「筒美京平ウルトラ・ベスト・トラックス」を聴いて私はその認識を改め、すっかり彼女の虜になってしまった。
 私は何度も言ってきたように女性歌手はジャケ買いすることも多いのだが、ミニスカ姿で膝をつきニッコリ微笑むあゆの何とキュートなことか!口の悪い世間はすぐに整形がどーのこーのと陰口をたたくが、そのようなタワゴトは彼女の美しさの前には一瞬にして砕け散る。女性ヴォーカルはジャケットを含めてトータルでその雰囲気を楽しむもの。何と言われようと私はコロムビア時代の華麗なあゆが大好きだ。このCDはそんなあゆの筒美作品を完全網羅した2枚組で、シングルB面やライヴ・ヴァージョンなんかも収録した逸品なのだ。
 Disc-1 はやはり①「ブルー・ライト・ヨコハマ」からスタート。鼻歌歌謡の最高傑作と言っていい名旋律、情景が目に浮かぶような見事な詞、そして曲の良さを最大限に引き出すゴージャスなバックのサウンドと、制作陣も最高の仕事をしているが、この曲は彼女の鼻から抜けるようなあの声を得てこそ人々の心に残る名曲になったのだと思う。とにかく私にとって筒美メロディーの、いや昭和歌謡の究極がこの曲なのだ。
 続く②「太陽は泣いている」こそコロムビアにおける彼女の 1st シングルなのだが、エミー・ジャクソンの「涙の太陽」を彷彿とさせるアップテンポなナンバーでノリノリの歌声を聴かせるあゆにビックリ(゜o゜) 「ブルー・ライト・ヨコハマ」のイメージが強すぎたせいもあるが、風雲急を告げるようなイントロからリズムに乗って気持ち良さそうに歌いまくるあゆはまさに “ひとりGS” 状態で、この手の音楽が大好きな私にはたまらない1曲だ(^o^)丿 
 ①の大ヒットの余韻冷めやらぬうちにリリースされた④「涙の中を歩いてる」も彼女のアンニュイな魅力が横溢する佳曲でスマッシュ・ヒット。続く⑬「今日からあなたと」も①で確立した “あゆみ節” を存分に味わえるあゆファン御用達の隠れ名曲。特に “口づけしたいの したいのぉ~♪” と繰り返すところがめっちゃ可愛い(≧▽≦)
 CMソングにもなった⑰「あなたならどうする」は一度聴いたら忘れられないようなサビのメロディーと、なかにし礼の十八番である「恋の奴隷」や「人形の家」路線のドMな歌詞が強烈だ。 “捨てられてしまったの 紙クズみたいに~♪” って、どんなヒドイ捨て方やねん! “泣くの 歩くの 死んじゃうのぉ~♪” って、何も死ぬことはないやろ(>_<) そんな歌詞とメロディーが見事に融合してインパクト抜群のキラー・チューンが生まれたのだ。しかし何回聴いても凄い曲やなぁ(≧▽≦)
 これら超有名曲以外にも、浅田美代子もカヴァーしていた単純明快なアイドル系歌謡⑤「恋はそよ風」、アンニュイな歌声に身も心も蕩けそうになるボッサ歌謡⑨「ひとりにしてね」、彼女のどこか投げやりな歌い方が絶妙な味わいを醸し出す⑭「ある日街角で」、ポップな曲を軽やかに歌うあゆがキュートな⑮「誘惑的な午後」、あゆのしっとり癒し系ヴォーカルがたまらない⑯「ブルー・パール」、西田佐知子の「アカシアの雨がやむとき」を筒美京平スタイルでアレンジしたような⑱「何があなたをそうさせた」など、佳曲が揃っている。
 Disc-2 では何はさておき⑮「ブルー・ライト・ヨコハマ」、⑯「涙の中を歩いてる」、⑰「太陽は泣いている」、⑱「ブルー・パール」というヒット曲のライヴ・ヴァージョンに大注目。以前このブログでも取り上げた彼女の「いしだあゆみリサイタル」からの音源で、アルバムとしては未CD化だけに非常に貴重なトラックだ。
 それ以外では同じ筒美京平門下生の平山ミキティーが「マジック・ロード」というタイトルで歌った①「さすらいの天使」、独特の浮遊感を持った歌声がたまらない⑥「愛よ行かないで」、モロ歌謡曲なイントロと気だるい歌声が印象的な⑨「待ちわびても」、彼女の突き離したような歌唱スタイルが小唄調の曲と絶妙なマッチングをみせる⑩「時には一人で」、中島みゆきっぽい歌唱が新鮮な⑫「ちょっと淋しい春ですね」など聴き所満載だが、どれか1曲と言われれば、クロディーヌ・ロンジェを彷彿とさせるウィスパー・ヴォイスにメロメロになりそうな⑭「絵本の中で」が最高だ。やっぱり女性ヴォーカルは雰囲気やねぇ... (≧▽≦)

いしだあゆみ/太陽は泣いている


いしだあゆみ ブルー・ライト・ヨコハマ


あなたならどうする
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森山加代子・しんぐるこれくしょん

2010-03-21 | 昭和歌謡
 ベンチャーズ歌謡は昨日で一区切り付いたのだが、昭和ガールズ歌謡は止まらない(笑) キュートでビートが効いていてお色気もばっちり... CD のシリーズ名にもなっている “歌謡曲番外地” 路線の女性シンガー達が醸し出す濃厚な薫りがたまらない。今日取り上げる森山加代子もそんな愛聴シンガーの一人である。
 彼女は60年代初めにカヴァー・ポップスでヒットを連発して一世を風靡した人で、言うなればミコちゃんと同じ路線の “ヒット・キット・パレード” シンガーだった。やがてカヴァー・ポップスのブームが去ると低迷期に入ってしまうが、1970年に東芝からコロムビアへ移籍して心機一転、起死回生の一発として①「白い蝶のサンバ」をリリース、一度聴いたら忘れられないようなキャッチーな歌詞とメロディーを持ったこの曲は3週連続№1の大ヒット、見事なカムバックを果たしたのだ。特にのっけから舌っ足らずな早口口調で “あなたに抱かれて私は蝶になるぅ~♪” と一気にたたみかける展開はインパクト抜群で、当時小学生だった私も、歌詞の意味も分からずに(←当たり前やん!)この曲をよく口ずさんでいたものだ。そういえば以前 plinco さんにこの曲の替え歌 “あなたに抱かれて私はママになるぅ~♪” というのを聞かされてコーヒー吹いたのを思い出した。まぁそれだけ世間に深く浸透した国民的ヒット曲だったということだろう。そんな懐かしさも手伝って去年買ったのがこの「森山加代子・しんぐるこれくしょん」で、コロムビア時代の全音源に他レーベルの4曲をも含めた、復帰後のパーフェクト・コレクションなんである。
 Disc-1 では①「白い蝶のサンバ」がもちろん素晴らしいが、それにも増して私が気に入っているトラックが⑧「火遊びのサンバ」、コレである。作曲したのは奥村チヨちゃんの “恋シリーズ3部作” でその才能を遺憾なく発揮した鬼才、鈴木邦彦。この人は他にも黛ジュンの「恋のハレルヤ」やゴールデン・カップスの「長い髪の少女」など、聴く者の心の琴線を震わせまくるメロディーを書く人で、昭和歌謡のエッセンスを濃縮還元したような哀愁舞い散る旋律といい、ローゼンバーグ・トリオを彷彿とさせるようなジプシー・メロを奏でるギターといい、ツボを心得た絶妙なストリングス・アレンジといい、もうこれ以上の名演があったら教えを乞いたいぐらいのキラー・チューンだ。私はこの1曲だけでもこの CD を買う価値があると思っている。
 それ以外では彼女の甘ったるい声質が曲想と見事にマッチしたコロムビアでの2nd シングル②「ふりむいてみても」やそのB面に収められたムーディーな⑦「あなたに酔いしれる」、かよチャン節炸裂の④「花喰う蟲(←コレで“むし”と読むらしい...)のサンバ」や⑪「誘惑してね」、彼女なりに昭和歌謡を咀嚼した⑭「悲しみは女にだけ」なんかが気に入っている。又⑮「月影のナポリ」、⑯「悲しきインディアン」、⑰「じんじろげ」、⑱「ジョニー・エンジェル」、⑲「月影のキューバ」、⑳「メロンの気持ち」など、東芝時代のヒット曲をセルフ・カヴァーしたトラックも楽しい。特にコミカルで意味不明な歌詞が面白いナンセンス・ソングの傑作⑰は一聴の価値アリだ。
 Disc-2 はコロムビア時代後期のシングル3枚分、当時のヒット曲のカヴァー、そしてコロムビア離脱後のシングル2枚分の音源が収められている。この頃になると声質や歌唱法が「白い蝶のサンバ」の頃とは少し変わってきており、③「恋の魔法使い」なんか低い声で力強い歌声を聴かせる彼女に驚かされる。低音の魅力で迫るかよチャンもエエですなぁ(^.^) 欧陽菲菲のカヴァー⑱「雨のエアポート」でもややかすれ気味のハスキーな歌声が魅力的に響くし、失速寸前のスロー・テンポで歌う吉田拓郎のカヴァー⑧「旅の宿」はピアノのオブリガートやむせび泣くサックスなども相まってジャジーなムード横溢の超愛聴トラックだ。
 このようなレア音源が1枚のCDにまとめられて簡単に手に入るようになったのだから昭和歌謡ファンとしてはありがたい限りなのだが、欲を言えば60年代の東芝イヤーズに未CD化音源が一杯あるし、名盤「ヒット・キット・パレード」も廃盤になって久しい。レコード会社は下らない J-Pops をせっせと出す暇があったらこの手の名盤をしっかりと復刻し、廃盤にならないようにしてほしいものだ。

白い蝶のサンバ


火遊びのサンバ


じんじろげ     森山加代子 1995
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ベンチャーズ・ヒットを歌う! / 小山ルミ

2010-03-20 | 昭和歌謡
 ベンチャーズつながりで70年代初めのガールズ歌謡を最近よく聴いているが、そんなお気に入りシンガーの一人が小山ルミである。残念ながらリアルタイムではまったく記憶になく、彼女の存在を知ったのは数年前にビートルズ・カヴァーを集めている時に遭遇した「ビートルズを歌う」だった。その時は、 “ただ歌ってみました” という感じでカヴァーの仕方が何となく中途半端で、何よりもビートルズの曲自体が英語のリズムで完璧に仕上げられているので日本語では座りが悪かったのだろうが、彼女に関してはそれっきりになっていた。その後ネットで “小山ルミ” という名前を何度か目にし、 “カルト歌謡の女王” と言われていることを知り、濃厚な昭和歌謡の中でも最後の秘境と言われる “カルト歌謡” に興味津津だった私は “もう1枚買ってみて、それでダメなら小山ルミは諦めよう” とアマゾンを検索、どうせなら知ってる曲の多いヤツがエエわいと思って選んだのがこの「ベンチャーズ・ヒットを歌う!」だった。
 届いた CD は実にしっかりした作りの紙ジャケで、アトランティックのオリジナル盤LPを想わせるソリッドな感触が嬉しい。製造販売はウルトラ・ヴァイヴという聞いたことのない会社だが、エエ仕事しとるなぁ...(^.^) で、肝心の内容だが、コレは買って大正解(^o^)丿 ビートルズの時とは違い、ベンチャーズはインスト・バンド。比較対象は渚ゆう子、欧陽菲菲、奥村チヨらが歌う日本語詞の歌である。これなら何とか同じ土俵で勝負できるし、山内賢 & 和泉雅子なら楽勝だ(笑) しかも「10番街の殺人」や「ウォーク・ドント・ラン」といった純粋なインスト曲も千家和也氏の日本語詞で歌っているのが興味を引く。
 まずは何と言ってもアルバム冒頭を飾る彼女の代名詞とも言うべき①「二つのギター」、コレである。ロシア民謡の専売特許とも言える哀愁舞い散るイントロから昭和歌謡のエッセンスを濃縮還元したようなテーマ部へと突入、ディープな旋律のアメアラレ攻撃が圧巻で、 “オ~ンナはいつもぉ~ オ~トコで決まる~♪” の高揚感が凄まじい!!! キュートな外見とは裏腹の芯のしっかりしたヴォーカルにタジタジだ。B面1曲目に置かれた⑦「さすらいのギター」も彼女の代表曲の一つで、こーやって聴いてみると歌は上手いし、ロック・スピリット溢れるベンチャーズのヴァージョン(オリジナルはフィンランドのザ・サウンズ)を見事なビート歌謡に仕上げている。尚、原題の Manchurian Beat とは「満州のビート」という意味で、20世紀初めにロシア人が作曲したメロディーが元になっているという。①と共に以前私がパルナスで指摘した “哀愁のロシア民謡最強伝説” (←最強って...カオルちゃんじゃあるまいし...)の一翼を担うナンバーだ。
 歯切れの良いギター・カッティングが印象的なイントロから始まる②「雨の御堂筋」は歌もアレンジも文句ナシ。欧陽菲菲に次ぐこの曲の名唱だろう。渚ゆう子のカヴァー③「京都慕情」、⑥「京都の恋」にはビックリ(゜o゜) まるで彼女が憑依したかのようにしっとりと歌い上げているのは見事という他ない。山内賢 & 和泉雅子の⑤「二人の銀座」、⑪「東京ナイト」では声色を微妙に変えてデュエットを再現、ただのカワイコチャン・シンガーとは激しく一線を画す表現力だ。彼女の盤が中古LP市場でウン万円で取引されているのはもちろん稀少性もあるが、それ以上に内容が優れているからなのだろう。⑪の歌詞 “モノレール、エアポート~♪” や “東京タワー、高速道路~♪” がいかにも60年代という感じで微笑ましい。⑫「北国の青い空」では何とチヨちゃんのヴィブラート唱法をしっかりとコピーし、曲を自分のものとしてしっかりと歌い上げている。実力がなければとても出来ない芸当だ。
 ベンチャーズのインスト・ナンバー⑧「10番街の殺人」(←0分45秒で炸裂する “あ~あぁ♪” には萌えてしまう...)と⑩「ウォーク・ドント・ラン」には歌詞を付けて歌っているが、これがまたメロディーとピッタリ合っていて、めちゃくちゃサマになっている。新たなベンチャーズ歌謡誕生の瞬間だ。一方、④「霧のめぐり逢い」や⑨「異国の人」はイマイチ彼女の歌唱スタイルに合っていないようで、印象が薄い。
 彼女のアルバムはCDで「ビートルズを歌う」、「ロックンロール・ミュージック」、そしてこの「ベンチャーズ・ヒットを歌う!」の3枚しか持っていないのだが、その中では断トツの素晴らしさを誇るこのアルバム、ベンチャーズ・ファン、そしてカルト歌謡ファンにとって必聴と言える1枚だ。

Rumi Koyama-- 小山ルミ -- 二つのギター Two Guitars


小山ルミ さすらいのギター


10番街の殺人
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コケティッシュ爆弾 (Pt. 2) / 奥村チヨ

2010-03-19 | 昭和歌謡
 今日は「コケティッシュ爆弾」のパート2、ジャケットは裏ジャケの裏(?)に載ってた写真をアップしてみた。昨日書いたようにチヨちゃんは声量、リズム感、歌唱力とも文句なしの実力派シンガーなのだが、時代の流れか、レコード会社の方針か、はたまた事務所の圧力か、セクシーお色気路線へと舵を切り、コケティッシュなフェロモン・シンガーとして一世を風靡することになる。そんなエロ、じゃなかった艶っぽい歌声が満喫できるのが Disc-1 の各トラックだ。
 まずは①②に続く③「くやしいけれど幸せよ」、④「証拠」、そして⑤「甘い生活」へとつながるフェロモン歌謡(?)3連発がたまらない。③は “3部作” に続くシングルで、“だけぇどぉ 今日ぉぉもまたぁぁ~♪” と声を震わせながら歌うなど、お色気路線継続中だ。甘口ソングには辛口の演奏をということだろうか、ここぞという所でバシン!と入るブラッシュのアクセントが効いている。巧いなぁ...(^.^) 絵に描いたような昭和歌謡的なイントロから入る④は囁くような “恋人なんでしょッ♪” の繰り返しが耳に残るチャーミングな曲だが、何と言っても曲間に挿入される彼女のセリフがたまらなくセクシー。とてもじゃないが恥ずかしくってリスニングルームで大音響では聴けない(笑) こっそりヘッドフォンで聴いてニンマリしたい1曲だ。
 私がセクシー路線屈指の隠れ名曲として愛聴しているのが⑤だ。まずは何と言っても曲そのものが良い。いくらチヨちゃんがセクシーに迫っても曲がイマイチではただのスケベ・ソングに堕してしまう。変幻自在のヴォーカルで流れるような美旋律を歌いこなすチヨちゃんに萌え萌えだ。左チャンネルから聞こえてくる涼しげなヴァイブの音色が名曲名演度数を更にアップさせているが、そんなことよりもラストの “やぁさしくぅ~ あっあっ はぁんあっ 引き寄せてぇん♪” と彼女が官能的な声で迫るパートには理性も吹っ飛ぶ。く~っ、たまらん!!! 
 ①②と並ぶ “恋シリーズ3部作” のひとつ、⑨「恋泥棒」は3部作中では一番地味に聞こえるが、彼女の歌い方はきめ細やかな女の情感を見事に描写しており、 “いぃ~ちどぉだけ♪” のラインなんかめちゃくちゃ色っぽい。⑪「あなたが好きなの」は彼女のしっとりした歌声にジャジーなピアノのオブリガートが絡み、哀愁をまき散らすフルートやギターが曲に絶妙な色づけをするという、川口真氏の器楽アレンジが素晴らしい。あまり指摘されないことだが、この頃の歌謡曲ってバックの演奏もアレンジもめっちゃレベルが高いと思う。⑱「嘘でもいいから」は①を裏返しにしたような正統派セクシー路線のナンバーで、彼女の歌い方も①を彷彿とさせるものがある。特に“うぅ~ん 嘘でもいいからぁ~♪” でお色気指数がメーター振り切ってレッド・ゾーンに突入だ。そしてDisc-1 のシメはやはり⑳「恋の奴隷」、今度はスタジオ録音ヴァージョンで萌えて下さいな。
 Disc-2 は①「ごめんね ジロー」、④「云えなかったの」、⑯「赤鼻のトナカイ」といった実に初々しい歌声に、これがあの「恋の奴隷」と同一人物かと愕然としてしまう。そんな中、私が惹かれたのはオックスやテンプターズといった GS の カヴァー⑥「スワンの涙」、⑦「エメラルドの伝説」で、彼女の華奢な身体からは想像もできないくらい声量のあるダイナミックな唱法によってオリジナルとはまた違った魅力に溢れるヴァージョンに仕上がっている。ベンチャーズ歌謡⑧「北国の青い空」では彼女お得意のヴィブラート唱法でスケールの大きなナンバーに昇華されているし、ノリノリのリズム歌謡⑨「砂の慕情」では彼女の音感の良さを再認識させられる。彼女の様々なスタイルが楽しめる見事な選曲だ。彼女の代表作と言われる⑬「終着駅」はアダルトなムード横溢のしっとりした歌唱が楽しめるのだが、私は次の⑭「オー・シャンリゼリゼ」の肩の力の抜けた歌声の方により魅力を感じてしまう。植木等とのデュエット⑮「白日夢」では色っぽいけどフェロモン過剰にならない絶妙なサジ加減の歌声がたまらない(^o^)丿 そしてこの2枚組のラストを飾るのが⑰「愛のさざなみ」。何とまぁニクイ選曲配列だろう!寄せては返す波のようなリズムに乗ったチヨちゃんの歌声が耳に心地良い。
 いやぁ~まいりました(≧▽≦) 彼女こそまさにフェロモン菩薩、こんなんばっかり聴いてたらフヌケになっちゃいそうでコワイが、そうと分かっていてもコレはちょっとやめられない(^o^)丿 その筋系が大好きなご同輩のみなさん、健康のため聴き過ぎには十分注意しましょう。

甘い生活・・・奥村チヨ


スワンの涙 奥村チヨ
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コケティッシュ爆弾 (Pt. 1) / 奥村チヨ

2010-03-18 | 昭和歌謡
 この2日間、ベンチャーズつながりということで渚ゆう子と欧陽菲菲という、キャラも歌唱スタイルもある意味対照的な二人の歌姫(菲菲は姫というよりディーヴァという称号が相応しい...)を取り上げてきたが、もう一人忘れてならないのが奥村チヨである。
 彼女の歌を初めて聴いたのはベンチャーズの「ライヴ・アゲイン」に入っていた1曲「北国の青い空」だったが、アルバム中唯一の歌入りでしかもどこか演歌っぽく聞こえるコブシの効いた歌唱にイマイチ馴染めなかったこともあって(←その次に入っているのが「ブラック・サンド・ビーチ」やから落差激しすぎますわ...)、ベンチャーズ絡みではチヨちゃんをスルーしてしまった。何とも不幸なファースト・コンタクトである。
 そんな私が次に彼女の名前を目にしたのは今年に入ってからのこと。ちあきさんにハマって色々聴き漁っていくうちに「ちあきなおみ ヒット・ポップスをうたう」に入っていた「恋の奴隷」という曲が気に入り、オリジナルを調べようと YouTube で検索するとオートコンプリートで “奥村チヨ” という名前が出てきた。奥村チヨって確かあの「北国...」の歌手かいな?と思いながらまずクリックしたのが1969年当時の映像で、その小悪魔的な魅力を振りまきながら歌う姿に私の目は釘付けになってしまった。
 大コーフンした私は他の映像も見ようと次々とクリックしていったのだがその多くは1990年代以降のかなり最近の映像だ。私の経験ではこういう場合、洋の東西を問わず “見ぃひんんかったらよかった...(>_<)” 的なパターンが殆どで、若かった頃の美しさが際立っていればいるほどその落差の激しさにショックを受けるものだが、彼女は違った。1965年のデビューだからもう50才代後半のはずなのに、何という美しさ(゜o゜) 歌っている時の仕草もめちゃくちゃキュートで、熟女フェチ&小悪魔萌え~の私は一発で彼女の “恋の奴隷” になってしまった(笑) そして更に凄いのはその美貌だけでなく圧倒的な声量と深いヴィブラート唱法も健在だったこと。ヴォイス・トレーニングとかもキッチリ続けているのだろうと思うとそのプロ根性に頭が下がる。それにしても還暦前の小悪魔って... タッ、タマランなぁ(≧▽≦)
 よく知らないアーティストの最初の1枚のチョイスは重要である。特に彼女のような美人シンガーの場合、選曲、ジャケット共に満足のいく盤を見つけなくてはならない。私はいつものようにアマゾンで検索し、最初の1枚に選んだのがその名もズバリ「コケティッシュ爆弾」だ。解説を見ると何とあのみうらじゅん氏プロデュースの一連のシリーズの1枚で、 “小悪魔的キュートさをテーマにした選曲” だという。コレを買わねば男がすたるというものだ。
 このアルバムは2枚組で全37曲、トータル2時間弱という超お徳用盤で、Disc-1 にはライヴ音源を含む “恋シリーズ3部作” を中心としたお色気セクシー路線の作品を、Disc-2 には “和製シルヴィ・バルタン” と呼ばれていたデビュー当時の瑞々しさ溢れる清純派路線の作品や “恋シリーズ” の対極に位置する「終着駅」のようなしっとり系の作品を選んである。どの曲も彼女の歌っている姿を想像しながら聴くだけでもうタマランのだが、どっぷり煩悩にまみれた俗物の塊のような私はやはり Disc-1 ばかり聴いてしまう。もちろんインタビューなどからこの路線が彼女の志向したものでないことは分かっているが、やはり好きなモンはしゃあない。
 みうらじゅん氏選曲・配列コンピ盤の一番の特徴は、出し惜しみをせず冒頭からいきなりガツーンと強烈パンチを食らわせて一気に流れを作ってしまうところにある。ここではそれが “恋シリーズ” の①「恋の奴隷」と②「恋狂い」のライヴ・ヴァージョン2連発だ。場所が京都の高級ナイトクラブ “ベラミ” (←田岡組長狙撃事件があった有名なクラブ)ということもあって、スタジオ録音ヴァージョンを遥かに凌ぐフェロモンをまき散らしながら、彼女お得意のヴィブラートをバンバン効かせた “お座敷小唄唱法” が全開だ。特に②なんか当時としてはかなり先進的なリズムの冒険をしており、それが彼女の悶絶ヴォイスと結びついて実に妖しい輝きを放つカッコ良いトラックになっている。私なんか何度聴いても “萌えるぅのよ 萌えるのよぉ~♪” とメロメロ状態だ。当時の歌謡ショーのアットホームな雰囲気が伝わってくるような録音も昭和歌謡の濃厚な空気感を上手く再現している。とにかく奥村チヨは何はさておきこの2曲から、なのだ。 (つづく)

koi の奴隷・奥村チヨ^^


恋の奴隷~恋狂い(京都ベラミにて収録・Live Version)・・・奥村チヨ
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ソウル・フィーフィー / 欧陽菲菲

2010-03-17 | 昭和歌謡
 ベンチャーズ→70年代→昭和歌謡→渚ゆう子、とくれば、次はもう欧陽菲菲しかない...(でしょ?) 私にとって、渚ゆう子の「京都の恋」、「京都慕情」と並ぶ “ベンチャーズ歌謡私的3大名演” の一つが欧陽菲菲の「雨の御堂筋」なのだ。
 昨日渚ゆう子の時にも書いたように私がベンチャーズ歌謡に目覚めたのは遅かった。当然この「雨の御堂筋」も同じである。恥ずかしながらそれまでの私は欧陽菲菲と言われても “中国か台湾から来た演歌歌手” というとんでもない誤解をしており、もっと酷いことにテレサ・テンやジュディ・オングとの区別すらつかなかった。今から考えると何とも恥ずかしいハナシである。
 そんな私の誤解を正してくれたのもやはり YouTube だった。最近は試聴やら関連動画探索やらで、私の音楽生活に YouTube は欠かせない存在になっているが、この時もベンチャーズ関係から菲菲の「雨の御堂筋」へと辿り着き、圧倒的なノリで爆走するその熱い歌唱に惹き込まれ、彼女に関する認識を改めるとともにすっかりハマッてしまった。後はいつものお決まりパターンで、アマゾン、HMV、ヤフオクで色々検索して、直感的に良さそうだと思って買ったのがこの「ソウル・フィー・フィー」だった。
 CDが届いてビックリしたのは、この盤も昨日の渚ゆう子盤と同じくみうらじゅん氏の責任編集だったこと。どうやら氏とは好みが合いそうだ。全15曲中9曲が筒美京平作品で占められており、そのどれもが傑作というのだから恐れ入る。70年代前半の京平氏の充実ぶりを示す素晴らしい選曲だ。又、ボートラ(?)として39秒の「フィーフィーMCコレクション」(←コレ、めっちゃオモロイです...)まで入っているところが嬉しい。
 まずは何と言っても①「愛の報酬」、②「恋の追跡(ラヴ・チェイス)」の連続パンチが凄まじい。持ち前のダイナミックなヴォーカルでグイグイと聴き手を惹きつける菲菲に圧倒されっぱなしで、この2曲をアタマに持ってきたみうらじゅん氏の見識に脱帽だ。彼女の魅力はもう一つ、その怪しげな日本語のイントネーションにあると思うのだが、①の冒頭のMC “ワタシハ オーヤンフィフィデス。台湾カラ キタネ。ドーゾ ヨロシク オネ ガイシマス。Thank you !” なんか最高のイントロの役割を果たしている。それに続いて爆裂する彼女のパワフルなヴォーカルと自然に身体が動いてしまうような躍動感みなぎるエネルギッシュなサウンドの波状攻撃に私は一発でKOされてしまった。②は筒美京平の天才が存分に発揮されたソウル歌謡の最高傑作で、パンチの効いたノリノリ・ヴォーカル(←特に “アァ!!!” のカッコ良さは鳥肌モノ!)に血湧き肉躍るキラー・チューンだ。ブンブン唸るベース、踊るパーカッション、そして切れ味抜群のホーン群と、バックの演奏も負けず劣らずファンキーだ。コレを聴いてじっとしていられる人はポップス・ファンではない。それにしても下に貼った YouTube の映像、多分紅白だと思うが、目も眩むような超高速で飛ばす菲菲のド迫力が圧巻だ。
 アン・ルイスあたりがカヴァーしたら面白そうな③「火の鳥」、何となく加山雄三の「旅人よ」を想わせるような哀愁のメロディーに涙ちょちょぎれる④「夜汽車」と、②と同じ “橋本淳=筒美京平” コンビの作品が続く。この流れ、たまらんなぁ... (≧▽≦)  ⑦「海鴎(かもめ)」、⑨「恋は燃えている」、⑫「星は知っている」と、絶好調の筒美メロディーが炸裂、昭和歌謡が最も美しかった時代の空気を真空パックしたような濃い音が心と身体に心地良い。ザ・ピーナッツのカヴァー⑪「情熱の砂漠」も彼女にピッタリの選曲で、まるで自分のオリジナル曲であるかのように貫録十分な歌声を聴かせてくれる。
 シメは “雨シリーズ” 3連発と、これまたニクイ選曲・配列だ。もし仮に私が CD-R に編集するとしてもほぼ同じ流れを作るだろう。まずは私にとって菲菲入門のきっかけになったベンチャーズ歌謡屈指の名曲⑬「雨の御堂筋」だが、絵に描いたような昭和歌謡メロディーをアメリカ人のベンチャーズが書いたというのが凄い。歌詞も雨に濡れる御堂筋の情景が目に浮かぶようで、 “梅田、新道、心斎橋とぉ~♪” のラインなんかもうたまらない(≧▽≦) 昭和歌謡では私的トップ3に入るバリバリの愛聴曲だ。因みに下に貼り付けた YouTube の映像は何とベンチャーズとの夢のコラボで、若い頃よりもややハスキーになったその歌声がこの名曲に更なる深みを与えているように思う。スラリと伸びた脚が美しい菲菲はティナ・ターナーももブッ飛ぶカッコ良さだ。
 イントロだけでメシ3杯は食えそうな⑭「雨のエアポート」は京平さんがベンチャーズ歌謡を意識して書いたような名曲で、職業作家に徹した彼の懐の深さが遺憾なく発揮されており、まさに向かうところ敵なしといった感じがする。 “I love you と言えないでぇ~♪” の繰り返しが胸に切なく、哀愁をまき散らしながら流れるように展開していく曲想に涙ちょちょぎれる。⑮「雨のヨコハマ」も⑬⑭の流れを汲んだ筒美メロディーが楽しめて言うことナシだ。
 このフィーフィー、ホント スゴイよ。彼女、ホンモノのシンガーね。ソウル感じるよ。ワタシ、彼女の大ファンね。ミナサンにもフィーフィー、超オススメあるよ(^o^)丿

欧陽菲菲「雨の御堂筋」withザ・べンチャーズ


「恋の追跡」  欧陽菲菲


欧陽菲菲 雨のエアポート

京都フェロモン菩薩 / 渚ゆう子

2010-03-16 | 昭和歌謡
 今まで何度か書いてきたベンチャーズ CD ハンティング・ツアーだが、大漁でホクホクの中、1枚だけ迷った挙句買うのをやめ、後になって激しく後悔した盤がある。「ベンチャーズ歌謡大全」という CD で、ベンチャーズが書いた昭和歌謡の名曲の数々をレーベルの枠を超えてオリジナル音源で収録しており、それが何と日本橋の Disc JJ に1,100円で出ていたのだ。今となっては勿体ないことをしたと思うが、当時はまだ本家ベンチャーズの音源で手一杯だったのと、唯一聴いたことがあった山内賢&和泉雅子の「二人の銀座」のトホホな歌声が頭をよぎってついつい腰が引けてしまったのだ。あの時アレを買っておけばもっと早くベンチャーズ歌謡の素晴らしさを知ることが出来ていたと思うと悔しくてたまらない。やはり “迷ったら買え!” というコレクターの鉄則は絶対だ。
 結局、ベンチャーズ歌謡に入門したのはそれからかなり経ってから、たまたま YouTube でベンチャーズを見ていてその関連動画に渚ゆう子の「京都の恋」を見つけ、クリックしたのがキッカケだった。何コレ、めっちゃエエやん(≧▽≦) エレキ・シタールの音色がたまらないベンチャーズのオリジナル・ヴァージョンとは又違った味わいがあって、見事な昭和歌謡に昇華されている。感激した私は続いて「京都慕情」もクリック、これまた素晴らしい歌声とアレンジで、どこをどう聴いても京都の街並みが瞼の裏に浮かんできそうな名唱だ。オリジナル・ヴァージョンを遥かに凌駕するその素晴らしさに感激した私は、とりあえず彼女の CD を1枚買ってみることにした。
 早速アマゾンで検索してみるとベスト盤ぽいのが数枚ズラズラと出てきたが、どれもこれもジャケットがイマイチだ。 LP ならもちろんのことだが、たとえ絵柄が小さい CD であっても、女性シンガーはジャケットにも拘りたい。ということで目に留まったのが「京都の恋」という盤で、五重の塔をバックに彼女の美しい写真がフィーチャーされていたが、先の2曲以外は全く知らない曲ばかりで、その曲名にも “ちょっと違う感” が漂っていたのでパス。更に見ていくとそれとそっくりなデザインのイラストが描かれたジャケットの盤を見つけた。アルバム・タイトルは何と「京都フェロモン菩薩」!!! フェロモン菩薩ってアンタ、凄いタイトルやん(^.^) 曲目を見ると京都ゆかりの曲ばかりが並んでおり、しかも「京都慕情」と「京都の恋」の2曲ともベンチャーズ・ヴァージョンまで収録し、後者に至ってはライヴ・ヴァージョンも入れると3テイクが収められていることになる。このような発想のコンピが大好きな私は早速買いを決めた。
 届いた CD には “みうらじゅん責任選曲・編集” とある。ジャケットのイラストもこの人らしいが、選曲とその配列が実に見事で、効果音①(21)とベンチャーズ②⑳で彼女の17曲を挟むという構成もよく考えられている。60分弱の CD 1枚がトータル・アルバムの如く一気通聴でき、まるで “京都組曲” と言っていいような雅な雰囲気を醸し出しているのだ。レコード会社のディレクターが選曲したと思しき他のベスト盤と激しく一線を画す素晴らしいコンピレーション盤である。
 全21トラック中、上記の2曲のオリジやライヴ・ヴァージョンを除く13曲の中にも聴きどころは多い。私が特に気に入ったのはチェリッシュ(←懐かしい!)のカヴァー⑭「なのにあなたは京都へゆくの」で、品格滴り落ちる曲想と彼女の透明感溢れる歌声がベストのマッチングを見せるキラー・チューンだ。情景が目に浮かぶような見事な表現力に言葉を失う⑤「京都・北山・杉木立」、懐かしいメロディーを慈しむように歌う⑧「女ひとり」、「京都の恋」を裏返しにしたような哀愁漂う⑨「京のにわか雨」、コテコテのムード歌謡がたまらない⑫「京都・神戸・銀座」と、昭和の濃い音が一杯詰まっている。
 ベンチャーズ歌謡を代表する屈指の名曲「京都の恋」と「京都慕情」の2曲を目当てに買ったこの CD だったが、予想を遥かに上回る素晴らしい選曲・編集で、心に沁みいる名曲を一杯再発見することができた。この頃の昭和歌謡の音源は宝の山なはずだから、他のレコード会社もみうらじゅん氏のような “音楽のわかってる” 人にプロデュースを依頼してお宝コンピ盤をどんどんリリースしていってほしいものだ。

京都の恋(Kyoto Doll)・・・ザ・ベンチャーズ (The Ventures)


渚ゆう子 京都の恋 1970


渚ゆう子 京都慕情