shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「Let It Be」アイルランド盤vsシンガポール盤vsフィリピン盤

2021-12-29 | The Beatles
 eBayで落とした「Let It Be」のアイルランド盤が届いた。このブログに単品で取り上げてもいいが、どうせなら少し前に手に入れた「Let It Be」のシンガポール盤やフィリピン盤との “UKマザー 3U 聴き比べ” をSさんと一緒にやったら面白そうだと思いつき、3枚の「Let It Be」を抱えて B-SELS に行ってきた。

 私:今日は「Let It Be」の “UKマザー 3U 聴き比べ” やりませんか? Sさんやったら UK盤一杯聴いてはるでしょうからその辺の違いも指摘してもらえるかと思いまして...
 Sさん:実を言うと 3U はそんなに聴いてないんですよ...(笑) でも面白そうなんでやってみましょう。どこの国の盤ですか?
 私:アイルランドとシンガポールとフィリピンです。ただ、全曲聴いてると時間がめっちゃかかってお仕事に差し支えそうなので2~3曲に絞って聴きましょう。
 Sさん:わかりました。
 私:じゃあ曲を選んでもらえますか? B面は絶対アレとアレを選ばはると思うんですけど、A面は読めないですね。
 Sさん:と言うと...
 私:B②「One After 909」とB③「The Long And Winding Road」でしょ?
 Sさん:当たりです(笑)
 私:A面はどうします?
 Sさん:じゃあA③「Across The Universe」で!
 私:おぉ、これは興味深い! では早速お願いします。まずはアイルランド盤から...
 Sさん:コーラスがキレイですね。
 私:そうですね。そこそこエエ感じです。まずはコレを基準にして他と比較しましょうか。次はシンガポール盤で...
 Sさん:おぉ、響きが変わりましたね。奥行きが出てます。
 私:この3枚を家で聴いてきたんですけど、これが一番王道の音やと思いました。
 Sさん:とにかく音がよぉ出てますね。これが 3U のエエ音という感じ。UK盤で言えばスタンパーの若いヤツというか。とにかく響きが違いますね。
 私:倍音成分が多いんでしょう。これに比べるとさっき聴いたアイルランド盤は普通かなという感じがします。じゃあ次はフィリピン盤お願いします。
 Sさん:これは低音がよく出てて乾いた感じがしますね。シンガポール盤とはテイストが違うんでしょうね。この曲にはシンガポール盤の方が合っていると思いますが、「One After 909」はこっちの方が合いそうな気がします。
 私:じゃあその「One After 909」を、まずはアイルランド盤から行きましょか。
 Sさん:ほほぅ...
 私:めっちゃシャキシャキした音ですね。
 Sさん:仰る通りシャキシャキしてますね。元気があって良いですねぇ、アイルランドは。
 私:そういえば「Some Time In New York City」のアイルランド盤もこんな音してましたね。
 Sさん:確かにそうでした。
 私:じゃあ次はシンガポールで極上の 3U を...
 Sさん:これは上質な感じがしますね。
 私:ポールのベースの押し出し感がすごく良いです。じゃあ次お待ちかねのフィリピン盤...
 Sさん:ラウドですね。ベースもよく出てるしジョージのギターの音もちょっと乾いた感じ。3枚の中では一番ロックな音がしますね。
 私:“シャキシャキ” vs “上質” vs “ラウド” かぁ... 各国の特徴がよく出ててめっちゃ面白い結果になりましたね。それじゃあいよいよ難曲B③「The Long And Winding Road」いきましょか。
 Sさん:う~ん、これは素晴らしいですね。このどっしりしたビニールが良いのかもしれません。
 私:アイルランドがこの曲で存在感を示すとは予想外でした。じゃあ次シンガポール盤。
 Sさん:これは聴かせますねぇ...(≧▽≦)
 私:アイルランドも良かったけど、これ聴いたらやっぱりこっちかな。
 Sさん:めっちゃ上質というかレベルが高い!
 私:フィル・スペクターが一番喜ぶの、これでしょうね。
 Sさん:確かに。
 私:最後にフィリピン盤お願いします。
 Sさん:面白い音作りですね。
 私:でもシンガポールとは響きの差がありますね。この曲聴くならやっぱりシンガポールでしょう。
 Sさん:伸びやかなストリングスやコーラスが明らかに他と違いますからね。
 私:「アナログ・ミステリー・ツアー」の本ではシンガポール盤もフィリピン盤も同じように褒めてあるんですけど、実際にこうやって聴き比べてみると、それぞれの長所が明確になりましたね。特にシンガポールとフィリピンは同じアジアの国のUKマザー 3U でありながら、かなり違ったサウンドでした。いやぁ、めっちゃ面白かったですわ。

ということで今年は最後の最後に映画「Get Back」が全部持って行った感のある1年になりました。来年はビートルズのデビュー60周年ということで、まだまだ色々隠し玉が出てきそうで非常に楽しみです。それでは皆さん、良いお年をお迎え下さい。

「Let It Be Super Analog Masters」

2021-12-26 | The Beatles
 ここのところイスラエル盤やペルー盤といった各国盤アナログ・レコードばかり買っていたが、映画「Get Back」の公開を稼ぎ時と見たブート業者から色々とリリースされたブートレッグの中に1枚面白そうなのを見つけたので今日はそれを取り上げたい。タイトルは「Let It Be Super Analog Masters」といって、「Let It Be」の貴重なアナログ音源4種類を収録しているとのこと。所詮メーカーインフォなんて美辞麗句のオンパレードで全く当てには出来ないが、これまで色んなブートレッグを買ってきた経験からインフォの行間を読む術は身に付いているのでこいつは“当たり”ではないかと直感し、試しに買ってみたら結果は予想以上に興味深いものだった。

【ソース1】イタリアンカッティング・マスターリール
・インフォ抜粋:1970年イタリアに送られたマスターテープからLP盤のカッティング用に等倍コピーされたリールテープよりダイレクトトランスファー。レコード化する際にかけられてしまうコンプレッションがない為、「Two Of Us」のアコースティックギターのきらめいた伸びやかさとスネアのシャキシャキ度、「Dig A Pony」の野外ライブ感、「Let It Be」のイントロの細かい音、「I’ve Got A Feeling」の音の鮮度と中音域の密度、「The Long And Winding Road」のオーケストラセクションのポールのボーカルとの共存感、「Get Back」の迫力サウンドなど、全体を通じて今までの音源と聴いた印象がかなり違う。
・感想:“マスターリールの音”ということで期待を裏切らない高音質だ。コンプレッションのかけられていないそのサウンドはアナログレコードばかり聴いている私の耳には実に新鮮に響いた。各国盤蒐集のメリットは大好きなビートルズを様々なヴァリエーションの音で楽しめることだが、そういう意味でもこのマスターリール版は買って大正解だった。尚、テープの経年劣化のせいか曲間や静音部で僅かに走行ノイズが聞こえる箇所があるが、ほとんど気にならないレベルだ。

【ソース2】UKカセットテープ初版
・インフォ抜粋:スタジオ1インチマスターから32台のカセットデッキを使って1回32本単位でダビングをしたというこのUK初版カセット・ヴァージョンは別ミックスで、ジョージのギターの残響、ポールの響くピアノ音、軽快なリンゴのドラミング、そしてジョンの息づかいまで感じられるボーカルが生々しく再現されている。
・感想:今回の4ソースの中で一聴して明らかに違うのがこれ。ミックス違いというのもあるが、それ以上に音作りの方向性が全く違う。中低音が大きく張り出していて高音部の高いところは潔くスパッと切り落としたような感じの音になっており、ソース1から続けて聴くと最初は音がこもって聞こえるかもしれないが、それはあくまでも相対的なもので、この手の野太い音が好きな人にはたまらない “ヴィンテージな” サウンドだ。特に「Across The Universe」のマッタリ感はたまらんたまらん(≧▽≦)

【ソース3】UK初盤ボックスセット用LPマトリクス2U/2U
・インフォ抜粋:まるで別物と呼ばれるUK初回盤BOX仕様のLet It Be 2U/2U。シャープなドラムの音、クリアーな各楽器の生音、そして太いベース音はこの盤でしか味わえない。状態の良いディスクからCD化を敢行した、現在発売中の正規音源とは一線を画すアナログ音源!とにかく英国初盤は桁違いのクオリティーだということを体感できる。
・感想:私が日々聴いているのはまさにこのUK 2Uの音で、極論すれば「Let It Be」は2Uに始まり2Uに終わる(←まぁこう言っちゃ身も蓋もないが...)のではないか。まさに “王道中の王道” と言っても過言ではない究極の「Let It Be」だ。ただ、原盤の盤質は私に言わせれば VG++ ~ Ex-で、曲間で数ヶ所チリパチ音が入るのが玉にキズ。私はB-SELSで買ったスピンドル・マーク皆無のノイズレスNM盤があるのでどうしてもそちらを聴いてしまうが、コスパを考えるとこのCDはお買い得だと思う。

【ソース4】UK輸出用白盤
・インフォ抜粋:今まで音質的に語られることがなかった1978年製輸出仕様の白盤Let It Be。手書きマトでアメリカ盤や日本盤とは明らかに違うアプローチでカッティングされており、ラウドで素晴らしい音質が楽しめる。カラービニールの質の問題でバリッというノイズが何箇所か入るのが弱点だが、それを差し引いても高音質な音源。
・感想:私は一部の例外を除けば再発盤には関心がないのでこの1978年UK製エクスポート仕様ホワイトビニール盤の存在は全く知らなかったし、カラーレコードは音が悪いという偏見のせいもあって何の期待もせずに聴いたのだが、私の予想を遥かに上回る良い音でビックリ。確かにバリッというノイズが入るところもあるにはあるが、そんな些細な欠点など忘れさせてしまうくらい好バランスで気持ちの良い「Let It Be」だ。

【おまけ】YouTubeでこんなの↓を見つけました。海外にも聴き比べマニアは居てるんやねぇ... 興味のある方はヘッドフォンを用意して全問正解にチャレンジしてみて下さい。
The Beatles Let It be Stereo Showdown | Which Vinyl Pressing is The Best?

「McCartney」イスラエル盤

2021-12-21 | Paul McCartney
 去年の今頃、私は “寝ても覚めてもウルグアイ盤” 状態だったが、今年はイスラエル盤のことで頭が一杯だ。例によってビートルズ本体だけでなく各メンバーのソロ作品に至るまで、各アルバムのイスラエル盤が出ているかどうかを調べ上げてネットで買っているのだが、その存在は確認できても中々市場には出てこない盤が何枚かあって、毎日鵜の目鷹の目でそれらのレコードを探している。
 ポールの1stソロ「McCartney」のイスラエル盤もそんな入手困難盤の1枚だったが、少し前に B-SELS に入荷。ネットでいくら探しても見つからない盤をさりげなく在庫しているこのお店の仕入れルートは一体どうなっているのか興味津々だが、商品説明ポップにはいつものように “激レア!”“スゴイ音!” という煽り文句が並んでいる。これを聴かずにいられようか?

 私:今日はこれ聴かせてもらえますか?
 Sさん:あぁ、それですか...(と何となく歯切れが悪い)
 私:えっ、何か問題でも?
 Sさん:そのレコード、音はすごく良いんですけど、ちょっとビニ焼けしててノイズが出るんですよ。
 私:折角の稀少盤やのにもったいないですね。でも B-SELS の VG++ は他の店ならEXレベルやと思いますよ。まぁとりあえず聴かせてもらっていいですか?
 Sさん:もちろんです。UKマザーの 2U で、ホントに良い音がするんですよ。
 私:(A①「Lovely Linda」がかかる...)おぉ、これめっちゃ良いじゃないですか! ノイズって言ってもこの程度なら全然問題ないですよ。
 Sさん:それはよかったです。
 私:曲間の無音部分も私的には十分許容範囲内ですよ。音圧も高いですし、アコギの音も分厚くて気持ちエエです。
 Sさん:ビニ焼けさえなかったらなぁ... って思うんですよね。
 私:確かに内周に行くにつれちょっとノイズが増えますけど、言うてもまぁAラス曲「Man We Was Lonely」だけですやん。
 Sさん:どうしても内周曲の方がビニ焼けの影響が大きく出ちゃうんです。
 私:ビニ焼けと言えば、昔厚手の半透明のレコードカバーあったでしょ。あれに入れとくと確実に中のレコードやられますよね。私なんかあれ見ただけでブツブツ出ますわ。
 Sさん:はいはい、ありましたねぇ。ジャケットを通り抜けてレコード盤のビニールが化学変化してしまうヤツ...
 私:そうそう、あいつのせいで貴重なレコードを風邪ひき盤にされましてん。でもそれに比べたらこの程度のノイズなんてチョロイもんですわ。
 Sさん:ハハハ... じゃあ次B面行きましょう。
 私:前にも言いましたけど、このB②「Mama Miss America」めっちゃ好きですねん。ホンマにエエ音しとりますねぇ。それとB③「Teddy Boy」は最近「Get Back」セッションばかり聴いてるせいもあって、どうしてもビートルズのヴァージョンと比較してしちゃうんですけど、あれ聴いた後にこのソロ・ヴァージョンを聴くと物足りなく感じますね。
 Sさん:確かに。
 私:やっぱりジョンの合いの手みたいなしゃべりがめっちゃハマってると思うんですよね。それにくらべるとこっちは単調で浅い感じがします。
 Sさん:そうそう、ジョンってああいうアドリブ・フレーズ作らせたら天才ですよね。
 私:やっぱりポールにはジョンが必要って改めて思いました。
 Sさん:ですよね。
 私:B⑤「Maybe I'm Amazed」ってやっぱり曲の格が違いますね。そんな名曲中の名曲をこの深みのある音で聴ける幸せ...
 Sさん:喜んでいただけて良かったです。
 私:これ、買いますわ。
 Sさん:えーっ、ホンマにこれ買わはるんですか???
 私:売りモンとして店に出しといて今更何を言うてはるんですか(笑)
 Sさん:いや、まさかこれが売れるとは...
 私:(大笑いしながら)どこの世界に “ホンマにこれ買わはるんですか?” 言うて物を売る商売人がいてますねん?
 Sさん:ハハハ... でもまさか売れるとは思ってなかったので...
 私:この音聴いたら “買い” ですよ。それにこの程度のサーフェス・ノイズなら全然OKです。まぁウチのシステムでどうなるかはわかりませんが、多分大丈夫やと思います。
 Sさん:ちょっと値段引かせてもらいますね。
 私:ホンマですか。ありがとうございます! エエ買い物できましたわ(^.^)

家に帰って聴いてみると、お店で聴いた時よりもノイズが気にならなかった。ひょっとするとウチの丸針との相性が良かったのかもしれないが、とにかく貴重な1枚を安く手に入れることができて大喜びだ。Sさん、どうもありがとうございましたm(__)m

「Dig It」の思い出

2021-12-19 | The Beatles
 私は中学に入ってすぐビートルズと出会い、彼らの曲の歌詞を通じて英語を学んだ人間である。学校で習うワケのわからん文法やら何やらは気にせずに(←私の世代はみんな “クジラが魚でないのは馬が魚でないのと同じ” とかいうアホみたいな英語を覚えさせられたトラウマがあるでしょ?)、とにかく彼らの歌や映画、インタビューを何度も何度も聴いているうちに何となく英語がわかるようになったのだ。当時の私にとっての教科書的存在がビートルズ国内盤(主にEAS-で始まる国旗帯)に付いていた歌詞カードで、学校の勉強そっちのけで歌詞と対訳を徹底的に読み込み、来る日も来る日も歌詞カードを見ながらビートルズを聴いていた。
 十代前半の頃の私は今と違って疑うということを知らない世間知らずのおバカさんだったので歌詞カードは絶対に正しいものだと信じ切っていたのだが、そんな私が最初に “あれ、ちょっと変やぞ???” と思ったのが「yestderday」の “Love was such on easy game to play” という部分で、当時まだ中学生だった私ですら “何でsuchの次に前置詞onが来るんやろ?” と納得がいかなかった。
 そしてそんな私の疑念が更に大きくなったのがアルバム「Hey Jude」収録のB④「The Ballad Of John And Yoko」の歌詞で、“死んでしまったらあの世に持って行けるのは魂だけ...” のラインに続いて歌詞カードには “Sing” と書いてあったが、ビートルズ復活祭(←懐かしい!!!)の時に見たプロモ・ビデオにはハッキリと “Think” という文字が映し出されており、“歌詞カード間違うとるやんけ...” と東芝EMIの仕事に対して大いなる不信感を抱いたのだった。
 他にも「Maxwell's Silver Hammer」の “B.C.31”(←紀元前かよ!)は “P.C 31”(←これって巡査 Police Constable やろ!)だし、“studied by the physical, sign in the home” という意味不明の文章も “studied pataphysical science in the home” だ。しかし数ある歌詞カード間違いの中で群を抜いて私の印象に残っているのが他でもない「Dig It」だ。
 実はこの文章を書こうと思ったきっかけが最近毎日観ている映画「Get Back」の1/24(金)セッションにおける同曲のエンディングで(2:13:32)、ジョンが例の裏声で That was “Can You Dig It?” by Georgie Wood, and now we'd like to do “Hark, the Angels Come.” (ジョージ-・ウッドの「キャン・ユー・ディグ・イット」でした。次は「聞け、天使が来る」です。) と言ってるのを聞いて、国内盤歌詞カードの笑える聞き取り間違いを思い出したからだ。
 その歌詞カードには、That was come here, dig it. By George, he wouldn't. And now we'd like to do “Hark, the Angel's come.”(さあ、始めようぜ! ジョージがやらないっていうんで、ここらで「ホラ、天使がやってきた」っていうのをやります。)と全くデタラメな聞き取り歌詞と訳が載っていた(笑)  当時の私は映画「Let It Be」での例のポールとジョージの大ゲンカがずーっと頭にあって、“やらないって、ジョージ相当頭にきとるんやなぁ... でもジョージがやってへんのやったらあのギターは誰が弾いとるんや?” などと頓珍漢なことを考えていたのが今となっては懐かしい思い出だ。それにしても That was come here とか Angel's come とか、今どき高校生でもやらんレベルの文法破壊やな...(笑)
 それと「Dig It」絡みでもうひとつ、歌詞カードには FBI、CIA、BBCに続いてPBKという聞いたこともない略語があり、対訳も “BBCやPBKやドリスデイみたいに” としれーっと誤魔化してあるのだが、その箇所をよくよく聞いてみると何のことはない B.B.King だった(笑) 対訳は山本安見という人で(←洋楽訳者のくせに B.B. King も知らんのかい!)、私がビートルズを聴き始めた頃はこの人の訳詞が大半を占めていた気がするのだが、こんなエエ加減な仕事でお金がもらえるって、ホンマに大らかな時代やってんなぁと呆れてしまう。まぁ今となっては面白いお笑いネタを提供してくれてるということで良しとしよう(笑)
 最後に「Get Back」関連の耳寄りな情報を... この映画がディスク化されるまで半年か1年かかると思うのだが、半年で6,000円、1年で12,000円もディズニーに課金するのは嫌なので何とかパソコンにダウンロードできないか色々研究して、StreamFABというのを見つけた。このソフトの利点は3本まで無料でお試しできることで、ちょうど「Get Back」3話を丸々パソコンに取り込めることになる。
 早速試してみたところ、実に簡単に3話ともダウンロードできて大喜びしたのだが、ひとつ重大なミスを犯してしまった。音声の選択で何も考えずに Englishを選んだつもりだったのに、再生してみると目の不自由な人用の英語音声解説が入っててビックリ。よくよく見るとEnglish音声には2種類あって、私は English (Audio Description)っていうアカンやつ(←こっちがデフォルトに設定されてる...)を選択していた模様。もし試される方は気をつけてシンプルに“English” っていう方を選んで下さい。それと、再生する場合にWindows Media Playerでは日本語字幕が出ない場合があるので、そんな時は VLC Player っていう再生ソフトを使うと字幕が見れます(←ちょっと文字化けするけど...)。
 結局私は別のパソコンを使って何とかダウンロードに成功。1ヶ月間「Get Back」を堪能したし、12/24でディズニープラスを退会してディスク発売まで何とかこれで乗り切ろうと思っていた矢先、ディズニーは新たにこんなの↓をブッ込んできやがった。う~ん、参った... もう1ヶ月延長決定やな。
「マッカートニー3,2,1」|予告編|Disney+ (ディズニープラス)


※ディズニー・プラスのようなストリーミング放送をDLするソフトをいくつか見つけて試してみたが、上手く機能しなかったり、1080ピクセル保証と謳っておきながら実際は720ピクセルだったり、有料コースは解約手続きが複雑すぎて勝手に課金されそうになったりとか、詐欺まがいのサイトも多いので(→FlvtoのMySrreamとか結構悪質...)絶対に無料お試しだけにしておくのがいいと思う。

「Let It Be」イスラエル盤

2021-12-15 | The Beatles
 前回の「Let It Be」ペルー対決を終えた後、まだ時間があったので今度は私のイチオシのイスラエル盤を2人で一緒に聴くことにした。

 私:「Let It Be」2枚聴いた後なんですけど、よろしければイスラエル盤も一緒に聴きませんか?
 Sさん:もちろんです。
 私:じゃあこれお願いします。
 Sさん:うわぁ、めっちゃ重いじゃないですか!
 私:盤も分厚いし、209gもあるんですよ、これ。
 Sさん:重量盤ですね。おっ、A面のマトが 3UでB面は 2Uなんですね。これは珍しい。
 私:音も期待を裏切らないと思いますよ。
 Sさん:(A①「Two Of Us」を聴いて)立ち上がりから明らかに違いますね!
 私:でしょ? 実は今日これで7枚目の「Let It Be」なんですけど(笑)、断トツでこれがベストです。
 Sさん:とても 3Uとは思えないような力強さですね。
 私:そうなんですよ。(2人で黙ってA面を聴き通してから)じゃあいよいよ2UのB面!
 Sさん:うわぁ~、やっぱり 2Uの方は更に音が良いですね。う~ん、期待を裏切りません!
 私:喜んでいただけて何よりです。
 Sさん:このB②「One After 909」なんかもうギターとベースのバランスが最高ですよ!
 私:さあ、いよいよ再生する側にとって最難関のB③「The Long And Winding Road」です。
 Sさん:(目を瞑って1曲聴き終えてから)このエンディングの余韻、このふわ~っとした広がりですよ、フィル・スペクターは!(とコーフン気味)
 私:力強さと繊細さの両方を兼ね備えてそれらをめちゃくちゃ高い次元で両立させた王道中の王道サウンドですね、これは。
 Sさん:そういう意味でもB④なんてすごく難しいと思うんですけど...
 私:そこのところを余裕でクリアしてバッチリ再現しているのがこのイスラエル盤の凄さですね。
 Sさん:確かに。
 私:ご満足いただけたようで...
 Sさん:いやぁもう何ていうか、“こうでなくっちゃ!” という音ですね。盤の重さもこの音に関係してるように思います。
 私:なるほど。
Sさん:3Uの音って悪くはないんですけど、2Uに比べるとちょっと薄いように感じるんですよ。普通の 3Uであの出だしの音は出ませんよ。ホントこの3Uは聴かせますね。
 私:そしてB面の 2U...
 Sさん:さっきも言いましたけど、各楽器のバランスが絶妙です。例えばB⑤「Get Back」なんて音の強弱が決め手の曲ですけど、それを実に上手く出してますよね、この 2Uは。
 私:そこまで褒めていただいて私も嬉しいです。イスラエル盤の「Let It Be」って再発のポートレート・レーベルのはよく見かけるんですけど、この赤リンゴ・ジャケの初版アップル・レーベルは滅多に出てこないので、やっとのことで手に入れた時は大喜びしたんですが、この音はホンマに苦労した甲斐がありましたわ。
 Sさん:素晴らしい音ですよ、これは。
 私:ありがとうございます。イスラエル盤って他の各国盤と比べてもほとんどハズレ無しなのが良いですね。これからも頑張ってイスラエル盤を極めますわ。

「Let It Be」ペルー盤 2種聴き比べ

2021-12-10 | The Beatles
 私はここのところずーっと「Get Back」祭り状態で、「Let It Be」の各国盤を取っ替え引っ替え聴きまくっている。特に今年になってから手に入れた盤はそれぞれ個性的な音がして面白いので、これはぜひともSさんと一緒に楽しもうと思い、とりあえずペルー盤とイスラエル盤の2枚をB-SELSへと持って行った。
 お店に着いて壁に飾ってあるレコードを見ていたらたまたまそこに同じペルー盤の「Let It Be」が飾ってあった。“この店はホンマに何でもあるなぁ...”と感心しながらレコードを見ていた時、ジャケットがコーティングしてあることに気が付いた。あれ?ペルーの「Let It Be」ってコーティングしてたっけ?と不思議に思いながら自分のレコードを確認するとやはりノン・コーティングのザラザラ・ジャケである。
 “これってひょっとしてプレス時期がちゃうのんか?” と好奇心を抱いた私は “ペルー vs イスラエル” という当初の予定を変更し、ペルー盤の 1stプレスと2ndプレスの聴き比べをさせてもらうことにした。

 私:今日は私が持ってきたペルー盤「Let It Be」とあそこに飾ってあるヤツを聴き比べたいんですけどいいですか?
 Sさん:いいですよ。(私の差し出したレコードを細かくチェックして)あれ? これ独自カットじゃないですか。ウチのはUKマザーの3Uですよ。
 私:そうなんですか。UKマザーと独自カットの両方出てるというのはインドと同じパターンですね。
 Sさん:いやぁ、ペルー盤の「Let It Be」に独自カットがあるとは知りませんでした。
 私:面白そうですね。確かにデッドワックスの幅も違いますね。じゃあ音を聴かせて下さい。
 Sさん:(2枚のA①「Two Of Us」を聴き比べて)いいですね。独自カットはやっぱり音が違いますね。
 私:個性ありますよね。でもマト3Uの方が安心安定の音という感じがします。
 Sさん:(A面の他の曲も聴き終えて)A面に関しては3Uの方がダイナミックに聞こえます。
 私:そうですね。じゃあB面いきましょか。
 Sさん:(独自カットののB①「I’ve Got A Feeling」を聴いて)独自カットのB面は良いですね。これは素晴らしい!
 私:強烈ですね。でもこれってB面全体が良いのか、それともカッティングとルーフトップ曲との相性がたまたま良かったのか、どっちなんでしょうね?、
 Sさん:(B③「The Long And Winding Road」を聴きながら)この曲ではちょっと繊細さに欠けますね。ペルーの独自カットはきっと曲との相性の合う合わんが大きいんでしょう。
 私:こうやって聴いてくると、独自カットの方は出来不出来にバラツキがありますね。
 Sさん:B④「For You Blue」もB⑤「Get Back」も同じで、ガツン!とくるパートが得意で、繊細なパートは苦手ですよね。全体を通して聴いたらUKマザー盤の方が安定してるんですけど、逆に言うとそのあたりが独自カットの面白さでもあるんですよね。
 私:それにしてもカッティングと曲の相性って結構デカいですね。
Sさん:独自カットってホンマに色々あるんですよ。例えばブラジルのモノラル盤「Let It Be」ですけど、マトに枝番の付いてるヤツと付いてないヤツがあって、付いてない方が明らかに音が良かったんです。ほら、前ここで聴かせていただいたヤツ。枝番付きの方は再発やと思います。
 私:へぇ~、それは全然知りませんでしたわ。各国盤なんて普通はみんな1種類しか買いませんから、当たり盤をつかむかハズレ盤をつかむかで天国と地獄ほどの違いがありますね。
 Sさん:ハハハ...
 私:でも各国盤でプレス違いまでいっちゃうと、もう底なし沼ですよ(笑)

映画「Get Back」最高でした!④

2021-12-05 | The Beatles
 ルーフトップ・コンサートの当日(Day 21: 1/30)はスタッフが屋上でせわしなくカメラのセッティングをしているシーンから始まるが、それを見てこちらも “いよいよ始まるのか...” と気持ちが盛り上がってくる。屋上以外にも向かいのビルや通り、そして受付にも隠しカメラ(←この前の隠しマイクといい、リンゼイホッグ監督はホンマに隠し撮り好っきゃなぁ...)を設置してこのレジェンダリーなライヴの一部始終を記録に残そうというのだ。これから歴史的なライヴが始まるとも知らず、通りを行く人たち...
 やがてポールを先頭にメンバー達が屋上に姿を見せる。この光景はこれまで数えきれないくらい見てきたが、アングルも画質も違うのでめちゃくちゃ新鮮に映るし、ノーカットということでこれまでブートレッグの音声でしか知らなかったパートの映像が実際に見れると思うとワクワクドキドキが止まらない(≧▽≦)
 演奏は「Get Back」からスタート。別アングルを効率的に観れる横並び画面がすごく良いし(←生まれて初めて横長のアスペクト比を良いと思った...)カメラを切り替えるスピードも自然で実に見やすい。アタマおかしいんちゃうかと思うくらいハイスピードでカメラを切り替えるアホバカ編集がウザい昨今のライヴ・ビデオとはエライ違いで、さすがはジャクソン監督と感心してしまった。
 この「Get Back」にはリンゼイホッグ版「Let It Be」でお馴染みの通行人インタビューもバッチリ入っているが、私的に一番面白かったのは “意味が分からないわ!” と激オコだったオバハンのブチギレ理由が実は “寝てたのに起こされた” からという笑撃の事実。このライヴって確かお昼の1時頃に行われたと思うのだが、一体何時まで寝てるねん!と思わず突っ込みを入れたくなってしまう。
 ジャクソン版「Get Back」のクライマックスはもちろんルーフトップ・コンサートの模様がそれまで見たこともなかったアングルから、しかもとびきりの高画質で観れることだと先ほど書いたが、もうひとつの(いや、それ以上の、と言えるかも...)見どころは何と言っても騒音の苦情を受けてやってきた例の警官たちとアップル・スタッフとの生々しいやり取りが聞けること。最初にやってきた2人の警官(グローブをブンブン振り回してる色白で背の高い方がレイ・タグ巡査で、黙って見てる方がレイ・シェイラ―巡査)とドアマンのジミーとの会話がバッチリ聞けるのがめちゃくちゃ面白い。藤本さんの本によるとリンゼイホッグ監督の指示で女性スタッフはスカートの上に隠しマイクを付けたそうだが、さすがは盗聴のスペシャリスト(笑)である。おかげで51年経ってホンマにおもろいモンが見れますわ(^.^)
 ダグ巡査が “音を下げないなら逮捕します。” とかなり強硬にライヴを止めるように迫っている場面(←受付で待たされていて「One After 909」が始まった時の表情の変化が絶妙... この人、キャラ立っててエエな...)なんかめっちゃリアリティーがあって大いに楽しめたが、盗聴はともかく、二人の警官の表情をカメラで実によく捉えてるなぁと感心せざるをえない。これって隠しカメラだけでは撮れそうにない映像なのだけど、一体どうやって撮影したのだろう?
 ロード・マネージャーのマル・エヴァンスが降りてきて “脅しではなく、中止しないと本当に逮捕者が出ますよ” と迫るダグ巡査の追及をのらりくらりとかわしながら時間稼ぎをし、“とりあえずPAを切って様子を見ましょう” ということになるのだが(←ダグ巡査の “参ったな...” がめっちゃリアルに響く)、その後 “防音じゃないんですか?” “屋上ですよ。” “えっ?” “映画と言いましたよ!” とダグ巡査をやり込め、“映画なら音はダビングできるでしょ” と初めて口を開いたシェイラ―巡査に対しても “撮るのはライヴなんです。生で演奏しないと。” とピシャリと言い放つ受付のデビー嬢(←最初のうちは “私は事情を知りません” とか言ってたのに... 笑)も実に腹が据わった女傑やなぁと感心してしまった。
 マルの “PAの大半は切りました。地下へのコードも切ります。” という大嘘に笑わせてもらった後、いつまでたっても音楽がやまないのに痺れを切らせたダグ巡査がマルに “屋上へ連れて行ってもらえるかな” と言ってラス前「Don't Let Me Down」で屋上に警官2人が姿を現す。さぁ、盛り上がってまいりました...(^.^) 屋上でマルが2人の巡査に必死の防戦を試みている間に階下では例のヒゲの巡査部長が登場、デビー嬢に軽くあしらわれながらも何とか屋上にたどり着く(←知らん間に3人目も屋上に上がっとる...)。とにかくこのパート3の準主役(?)は間違いなくこの警官たちだと言えるだろう。
 ラスト曲「Get Back」でついに警官の圧力に屈したマルがジョンとジョージのアンプの電源を切る有名な場面で、ポールの方を見て “切られたけど、どーする?” みたいなしぐさをするジョン、ためらうことなく瞬時にスイッチを入れなおすジョージ、淡々とリズムをキープするリンゴ、そして警官の方に向かって左手で指さしながら“Get back!(帰れ!)” と歌うポールと、メンバー四者四様のリアクションが見れて実に面白い。
 それと、演奏終了後にみんなでプレイバックを聴くシーンがあるのだが、あれほどライヴは嫌だ屋上なんかに行きたくないと渋っていたのが嘘のように晴れ晴れとした表情で楽しそうにリズムを取りながら聴いている4人を見てとてもハッピーな気持ちになれた。
 ルーフトップ・コンサート翌日の Day22: 1/31は屋上では演らなかったアコースティック系の曲のレコーディングで、エンドロールが流れる横でオマケ映像的に扱われており、“つわものどもが夢のあと” 的な余韻を醸し出している。
 この「Get Back」は神に選ばれし4人の天才たちが作り上げた極上の音楽を伴う人間ドラマであり、筋書きもゴールもないところからスタートして様々な紆余曲折を経ながらも最後はこれ以上考えられないドラマチックなフィナーレで締めくくった究極のリアリズム映画と言える。57時間にも及ぶ未公開映像と150時間以上もある未発表音源を整理して1本の映画を作り上げるという大仕事を引き受けて素晴らしい作品に仕上げてくれたピーター・ジャクソン監督にはいくら感謝してもしきれない。
 この映画が劇場公開ではなく配信、しかもよりにもよってディズニー絡みと聞いた時はめちゃくちゃ不満でがっかりしたが、不安があったディズニープラスへの登録もわりと簡単にできたし、実際にこうやって映画全編を毎日見返せるというのは大きなメリットだった。ただ、早送り巻き戻しやチャプターによる頭出しが出来ないのはやっぱり不便なので、1日も早くブルーレイで出してもらいたいと思う。スーパーウルトラデラックス・エディションは出来ればリンゼイホッグ版「Let It Be」もボーナス・ディスクとして付けてくれたら嬉しいな...(^.^)

映画「Get Back」最高でした!③

2021-12-03 | The Beatles
 パート3はDay 17: 1/26からスタート。クライマックスのルーフトップ・コンサートを目前に控え、休日返上で頑張るビートルズである。日曜日ということでポールはリンダの娘ヘザーをスタジオに連れてきたのだが、この娘がまた天真爛漫そのものでやりたい放題。リンゴの横で一緒にドラムを叩く姿なんかもめっちゃ可愛いが、一番可笑しかったのは奇声を上げるヨーコを “何やこいつ...???” とでも言いたげな表情でじーっと見つめた後、自分も真似をして奇声を上げるところ。子供ってホンマに正直な生き物なんやなぁとこのシーンを見て大爆笑してしまったが、とにかくスタジオ内を所狭しと跳ね回るヘザーちゃんこそ文句なしにこの日のMVP(?)だ。
 そんな彼女がグルグル回ったりポールに高い高いをしてもらう映像が楽しい「Dig It」は凄まじいグルーヴがめちゃくちゃカッコ良い演奏で、出来ることならこれの全長版の映像を観てみたかったが、ここでもビリー・プレストン効果は絶大だ。続く「Blue Suede Shoes」と「Shake Rattle And Roll」はもう最高! 50'sのロックンロール・クラシックスを演らせたらビートルズの右に出る者はいない。とにかくみんなノリノリで実に楽しそうだ。
 その後、みんなで集まって「The Long And Winding Road」のアレンジを話し合うシーンも実に和やかな雰囲気で、あれほど(音楽的にというよりも物事の進め方の点で...)対立していたポールとジョージがお互いをリスペクトしながらポジティヴな意見を交わしているシーンを見てとても幸せな気分になれた。これこそがオリジナル映画「Let It Be」に欠落していた視点であり、ジャクソン監督が今回一番見せたかったものだろう。
 Day 18: 1/27は前日のロックンロール・メドレー(←「Blue Suede Shoes」をバックにジョンとポールが2人で楽しそうに踊りまくる映像が最高だ!)のプレイバックを聴いた後、ジョージの「Old Brown Shoe」を演っている映像になるのだが、最初はブラッシュでドラムを叩いていたポールが今度は右利き用のギターを逆にして弾きまくるシーン(←これはもう凄いとしか言いようがない...)やビリー・プレストンが6弦ベースを弾くシーン(←こんなん初めて見た...)など、お宝映像が満載だ。それと、ジョンがおらへんなぁと思って見てたら何と機材搬入の手伝いをしていてビックリ。天下のジョン・レノンが引越センターの兄ちゃんみたいなことをやってるのが可笑しかった。
 次はメンバーがランチに行っている間にスタッフ連中が即興でジャム・セッションをやっているシーンが見れるのだが、ギターがグリン・ジョンズでエレピがアラン・パーソンズ、6弦ベースがクリス・トーマスという濃いメンツで(←ドラムとヴァイオリン・ベースは名前わからん...)ロックンロールではなく4ビート・ジャズを演奏しているのも実に興味深い。とにかくこの映画は見返せば見返すほど新たな発見があるので今週は他のことが全く手につかない。
 午後のセッションでは「Get Back」を何度も繰り返して演奏して曲を作り込んで行こうとするビートルズと“やりすぎると悪くなるから他の曲にしろ” というジョージ・マーティンの意見の対立が見れるのが興味深いところ。出来の良いテイクを編集で繋げようというマーティンにジョンが異を唱えると、グリン・ジョンズが “ということは全曲納得いくまでやる気なの?(意訳:ホンマええかげんにしてくれよ)” と突っ込むところが面白かった。
 Day 19: 1/28は悪天候の予報で1日延期を余儀なくされたルーフトップ・コンサートまで残すところあと2日。ジョンの “まだまとまってない曲をやろう。” という提案でジョージの新曲「Something」が登場。“Something in the way she moves...♪” に続ける歌詞が浮かばないと悩むジョージに対して “とりあえず Attracts me like a cauliflower...(カリフラワーのように僕を魅了する)とかテキトーに入れといて後で考えればいいじゃん” とアドバイスするジョン。ジョージも “じゃあザクロにしとこーか...” とか、このあたりのやり取りも実に面白い。
 この後ジョンがジョージに向かってアラン・クラインの素晴らしさを力説するシーンが出てくるのだが、詐欺師クラインに見事に丸め込まれてしまっているのがよくわかる話しっぷりだ。このセッション終了後、4人はクラインと初めて会うことになるのだが、これがビートルズ解散への引き金を引いたのだと思うと無性に腹が立つ。ビートルズ・ファンにとって、八つ裂きにしても足りない奴はマーク・チャップマンとこいつではないか。
 Day 20: 1/29はグリン・ジョンズがジョンに “クラインは詐欺師だから気をつけた方がいい...” と忠告するシーンがあるがジョンは耳を貸そうともしない。ジョンはロックンローラーとしては不世出の天才だが、世間知らずすぎて邪悪な人間からしたらカモなのかも...(>_<) その後、テレビ特番がどーとかライヴ・ショーがこーとかグループ内で延々議論が始まるのだが、私の理解力が乏しいせいか誰が何を望んでいるのかイマイチよくわからなくなってきた。結局すったもんだの末に屋上でやることに決定。候補曲のタイトルを「Dig It」のリズムに乗せて歌っていくジョンとポールが面白かった。
 それと、ジョンがキング牧師の「I Have a Dream」の演説を「I Want You」の替え歌にして歌っているシーンがあるが、歌詞がメロディーにバッチリ合っていて実に面白い。そういえばパート2のDay13でもジョンは「I've Got A Feeling」を歌いながらアドリブで“I had a dream this afternoon.” というフレーズを入れてみたり、キング牧師のモノマネまで披露して “素晴らしい... まるでテニスンの詩のようだ。” とベタ褒めしたりしていたっけ。まぁそんなこんなでこの日のリハは終了。明日はいよいよルーフトップ・コンサートだ。 (つづく)

映画「Get Back」最高でした!②

2021-12-01 | The Beatles
 映画「Get Back」のパート2はDay8: 1/13からスタートするのだが、前日の関係修復ミーティングが決裂したせいかめっちゃ重苦しい雰囲気だ。驚いたのはスタジオの食堂で行われたジョンとポールの話し合いの場にリンゼイホッグ監督が隠しマイクを仕掛けていて(←スパイ映画みたいやな...)2人の生々しいやり取りがばっちり聞けること。藤本さんの本「ゲット・バック・ネイキッド」を読んで大体の内容を知ってはいたが、実際にジョンとポールの肉声で聞くとリアリティがハンパない。今回の映画はかなり濃い内容のものになるだろうと期待はしていたが、まさか隠し撮りの音声まで聞けるとは思わなんだ。それにしてもポールもポールでよくぞ許可を出したものだと思う。
 ジョージが復帰するまで3人でのリハーサルが続くが、「Get Back」の歌詞をポールとジョンであーでもないこーでもないと推敲しながら作り上げていくところは実に興味深い。尚、この日の帰り際に翌日も来る証として2人が自分のお気に入りの楽器を置いて帰るシーンがあるが、ポールのヴァイオリン・ベースに貼り付けてあった “演奏曲目リスト” は「Rock And Roll Music」で始まり「I'm Down」ではなく「Long Tall Sally」で終わっていたので、多分1966年最後のライヴ・ショーであるキャンドルスティック・パークの時のものだろう。
 トゥイッケナムからサヴィル・ロウのアップル・スタジオへリハーサルの場所を移したDay 12: 1/21 から場の雰囲気が俄然良くなりメンバーも和気あいあいという感じになるのが画面からも伝わってくるが(←マジック・アレックス作のネック回転ギター/ベース、めっちゃウケるwww)、中でもトゥイッケナムではずっと苦虫をかみつぶしたような顔だったジョージに笑顔が戻ってファンとしてもホッと一安心。ポールがかなり気を遣っているのがわかるし、ジョンも別人のようにやる気まんまん。前の週までのグダグダぶりとは打って変わってカチッとまとまった演奏を繰り広げるあたりはさすがビートルズである。やっぱり人間関係って大事なんやね。
 Day 13: 1/22のビリー・プレストンが登場する場面で “キーボード奏者を求めていたとは知らずにたまたま挨拶に立ち寄った” というテロップが出るが、私は場の雰囲気を良くするためにジョージが誘ったという通説を信じていたので(←「アンソロジー」のビデオでジョージがそんなことを言ってたような気がするんやけど...)ちょっとビックリ。要するにビリーの参加は偶然の産物だったということになるのだが、そのような偶然ですら必然となってしまうのがビートルズの凄いところ。「Get Back」や「I've Got A Feeling」、「One After 909」といった “ルーフトップ曲” の圧倒的なグルーヴはビリー・プレストン抜きには考えられない。
 Day 14: 1/23の白眉は何と言っても15分以上にわたる「Get Back」のリハだろう。メンバー間のコミュニケーションもバッチリで、全員が “良い音楽を作ろう” というポジティヴな姿勢で臨んでいるのが画面を通してハッキリと伝わってくる。4人で協力しながらアレンジを煮詰めていく様はまさに “The Making of GET BACK” と言えるもので、名曲名演誕生の歴史的瞬間を覗き見ることが出来て大感激だ。いやぁ、ホンマにこれは神映画ですわ(≧▽≦)
 Day16: 1/25にはショーのプランの落としどころとしてリンゼイホッグ監督とグリン・ジョンズがアップルビル屋上でライヴを行うことをポールに提案し(←この時のポールの表情が実に面白い...)、ポールとリンゴが監督たちと屋上の下見をするシーンがあって “問題は機材の重量に屋上が耐えるかだ” というテロップが出るのだが、これまでそんなことを考えたことすらなかった私は “イギリスのオフィス・ビルの屋上ってそんなに脆いんか?” と不思議に思った。しかしパート3でベコベコの足場を見て確かにこれはヤバいと大いに納得。受付のデビー嬢が屋上へ上がろうとするヒゲの巡査部長に “屋上はご遠慮を... 重量制限が...” と言うシーンには笑ってしまった。
 結局その4日後に屋上ライヴをやることに決まったところでパート2は終了。パート3ではいよいよルーフトップ・コンサートの完全版が見れる... しかもジャクソン監督のことだからきっと貴重な映像を出し惜しみせずにガンガン見せてくれるだろうとそのことばかり考えて前日は中々寝つけなかった。 (つづく)