shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「Twin Freaks」/ Paul McCartney

2021-05-30 | Paul McCartney
 前回「London Town」のトルコ盤を取り上げた時にBラスの「Morse Moose And Grey Goose」が中途半端な終わり方をして不満が残ると書いた。あの曲が大好きな私は気持ちをスッキリさせようとUK盤を引っ張り出してきて落とし前をつけたのだが、その時、“そう言えばこの曲には面白いマッシュアップ・ヴァージョンがあったなぁ...” とあるレコードのことを思い出し、懐かしくなってレコード棚から引っ張り出してきて何年振りかで聴いてみた。それがこの「Twin Freaks」である。
 このレコードは2005年にリリースされたもので、フリーランス・ヘルレイザーというDJにポールが依頼して作り上げたリミックス・アルバムだ。内容はポールの昔の楽曲を組み合わせてマッシュアップしたもので、ちょうどポールのライヴ開演前に会場に流れる様々な曲のリミックス・ヴァージョン・メドレーの原型みたいなものと言えば分かりやすいかも。
 このアルバムは限定2枚組LPとデジタル・ダウンロードのみでのリリースでCD化されていないこともあってか今では結構なプレミアが付いているようだが、YouTubeでタダで聴けるので未聴の方はそちらがオススメだ。因みにデジタル・ダウンロードが大嫌いな私は当然LP盤で入手。まだプレミアが付く前だったので中古盤を4,000円ほどで手に入れることが出来てラッキーだった。
 私はいわゆるひとつの “エレクトロニカ” と呼ばれるジャンルの音楽は正直言って苦手なのだが、ポールの曲となると話は別。もちろんポール公認ということで原曲が形をとどめていないようなワケのわからんダブ・ヴァージョンとは激しく一線を画す仕上がりで、「McCartney Ⅱ」を少し派手にしたくらいの穏健なリミックスとして保守的なポール・ファン、ビートルズ・ファンでも十分に楽しめる内容になっている。
 で、問題の「Morse Moose And Grey Goose」に話を移そう。このレコードの曲目を見てもどこにも「モーズ・ムース」の「モ」の字も載っていないのだが、 ちゃーんとD②「Coming Up」に使われているのである。それも効果音とかそういった類の使われ方ではなく、大胆にも「Morse Moose And Grey Goose」のバックの演奏と「Coming Up」のヴォーカルをマッシュアップさせており、それが又実に上手いこと調和しているのだから面白い。初めてこれを聴いた時、「Morse Moose And Grey Goose」の例の大仰なイントロに続いてポールの“You want a love... to last forever...♪” が聞こえてきた時に思わずイスから転げ落ちそうになってしまったのも今となっては懐かしい思い出だ。これは2004年のサマー・ツアー時に会場で流されていたようだが、論より証拠、まずは聴いてみて下さいな。
Paul McCartney - Twin Freaks: Coming Up


 このアルバムは「Coming Up」以外にも面白いトラックが満載だ。例えばB③「Temporary Secretary」、原曲そのものがバリバリのテクノ・ポップ・ナンバーなのでこのようなリミックスとの相性は抜群。同じく「McCartney Ⅱ」が出自のB①「Darkroom」も実に楽しいリミックスに仕上がっており、ついつい何度も聴きたくなる中毒性の高いトラックになっている。
Paul McCartney - Twin Freaks: Temporary Secretary

Paul McCartney - Twin Freaks: Darkroom


 私が個人的に一番気に入っているのがA②「Long Haired Lady (Reprise)」で、1stアルバム「McCartney」のB面1曲目を飾っていた隠れ名曲「Oo You」のリフを効果的に使って「Long Haired Lady」のメロディーに繋げているところがめっちゃ好き(^o^)丿  このあたりにもリミキサーであるフリーランス・ヘルレイザー氏のセンスの良さが窺える。ポール屈指の名曲をリミックスしたD③「Maybe I'm Amazed」も素晴らしい出来で、原曲の良さを壊すことなくリズムを強化した “もうひとつの”「Maybe I'm Amazed」を作り上げるのに成功している。
Paul McCartney - Twin Freaks: Long Haired Lady (Reprise)

Paul McCartney - Twin Freaks: Maybe I'm Amazed


 今回はポールのトルコ盤繋がりで、長いこと埃をかぶっていたこのレコードを棚から引っ張り出してきて聴いたのだが、久々に聴くポールのリミックス盤は実に新鮮で大いに楽しめた。レコード棚にはまだまだこのようなレコードが眠っていると思うので、コロナ禍や雨続きで外に出れないこの時期にこそじっくりとレコード棚の整理をしてお宝盤を発掘するとしよう。

「London Town」トルコ盤

2021-05-23 | Paul McCartney
 トルコでLPとして出ている元ビートルズのソロ・アルバムは、私の調べた限りではジョージとリンゴがゼロで、ジョンも「Double Fantasy」1枚きりだ。ポール1人が6枚と突出しており、例の “鼻ホジ・ジャケ” でえげつないプレミアが付いている「McCartney」以外は首尾よく手に入れることが出来た。今日はその中から「London Town」を取り上げたい。
 前にも書いたように、「London Town」は私がトルコ盤にハマるきっかけとなった思い出深い1枚で、B-SELSで聴かせていただいたその日のうちにDiscogsで VG+ の盤を €15でゲット。一緒に買った「Let It Be」と「Wild Life」はどちらかというと VG 寄りの VG+ だったが、この「London Town」は NM で十分通用するぐらい盤質が素晴らしく、トルコ盤ならではの高音質を安心して楽しめる。ジャケットは下辺の糊が完全に剥がれて全開状態だったので両面テープで丁寧に補修して見映えが良くなった。これで €15なら超お買い得と言えるだろう。
 音の方はB-SELSで聴かせていただいたのと同じ重心の低いサウンドで(←違うかったらえらいこっちゃですわな...)、手持ちのUK盤ともUS盤とも違うトルコ独自の音作りが楽しめる。デッドワックス部分には手書きで“PAS10012/1”“PAS10012/2” と刻まれているいわゆるひとつの独自マト盤なのだが、特筆すべきは盤の重さで、手に持った感触がズシリと重い。試しに量ってみると168gもあってちょっとビックリ。UK盤が120g、US盤が134gなのを考えればこのトルコ盤が桁外れの重量盤であることがよくわかる。Sさんが仰ったように、おそらくクオリティーの高いビニールを使っているのだろう。
 そんなトルコ盤で聴く「London Town」だが、アルバム・タイトル曲のA①「London Town」が醸し出すロンドンのくすんだ空のイメージと独自カットの質実剛健(?)なサウンドが上手くマッチしており思わず聴き入ってしまう。A②「Cafe On The Left Bank」やA⑦「I've Had Enough」(←何故かセンター・レーベルでも裏ジャケでもこの曲だけ記載漏れしてる...)のようなロック色の濃いナンバーがUK盤とは一味違う腰の据わった分厚い音で聴けるのも面白い。UK盤をキレッキレのナイフとすれば、このトルコ盤はごっついナタという感じだ。
 B①「With A Little Luck」がこのレコードならではの低重心サウンドで聴けるのも◎。ウイングスの魅力の一つでもある心地良いコーラス・ワークが実にシックで落ち着いた雰囲気を醸し出しており、その独特のコクと余韻は他の盤では聴けない類のものだ。
 このアルバムの特徴の一つはブリティッシュ・トラッド全振りのアコースティック色の強い曲が何曲か含まれていることだが、B②「Famous Groupies」といい、B③「Deliver Your Children」といい、B⑤「Don't Let It Bring You Down」といい、トルコ盤独特の重厚なサウンド・プロダクションで聴く分厚いアコギの音が実に気持ち良い。「London Town」というアルバムの性格とトルコの独自カッティングの相性は抜群だ。
 ただ一つ残念なのは、B面ラストに置かれた6分を超える大作「Morse Moose And Grey Goose」が3分少々でフェイド・アウトして終わってしまうこと。スケールの大きなアップテンポの長尺曲をアルバムのラストに持ってきて強烈なインパクトを与える手法は「Ram」の「Back Seat Of My Car」や「Band On The Run」の「Nineteen Hundred And Eighty-Five」でも見られたもので、私としてはこのアルバムの中でも非常に重要視している曲なのだが、よりにもよってその曲をこのようにぞんざいに扱って涼しい顔のトルコ人エンジニアの感性には呆れてしまう。
 そもそもこの曲は前半がハードでラウドな“モーズ・ムース”パート、中盤がアコギ全開の“グレイ・グース”パート、そしてエンディングで再び“モーズ・ムース”パートが登場するという三部構成になっているのだが、あろうことか中盤の“グレイ・グース”パートに入ってすぐにフェイド・アウトするのである。これではこの曲の良さが全く伝わってこないばかりか、それまで良い感じで来たアルバム全体の流れをブチ壊して中途半端な後味の悪さを残して終わってしまう。音が良いだけにこの曲のズサンな処理が返す返すも残念だが、それもひっくるめて清濁併せ呑むというか、広~い心で受け入れるところに各国盤蒐集の面白さがあるのかもしれない。

「In The Court Of Crimson King」トルコ盤

2021-05-15 | Rock & Pops (70's)
 ビートルズやポールのソロ・アルバムのトルコ盤を数枚買ってその独特の音作りがすっかり気に入った私は他のアーティストのレコードもトルコならではの重低音爆裂サウンドで聴いてみたいと思うようになり、信頼できるトルコのセラーの出品リストをこまめにチェックして、これぞ!というアルバムを何枚か入手した。どのアルバムもビートルズの時と同様に重心の低いガッチリしたサウンドが楽しめて大喜びなのだが、中でも特に気に入っているのがキング・クリムゾンの「宮殿」だ。
 このアルバムは10年くらい前にUK 盤1stプレス、通称 “ピンク i レーベル” 盤(マト A2/B2 )を手に入れ、それ以来その鮮烈な音にすっかり満足していたのだが、セラーの販売リストの中に「宮殿」を見つけた私は “トルコ独自カットの音で「宮殿」を聴いてみたい!” という好奇心から購入を即決。€32というのが高いのか安いのか、トルコ盤の相場なんて全く分からないが、盤質VG++ ジャケVGで4,000円ならお買い得だと思うし、他のアルバムと5枚併せ買いして送料€22だったので1枚当たり600円というのも嬉しい。良い品をより安く手に入れるというのが買い物の醍醐味だ。
 届いた盤を手に取ってまず気が付いたのが、全体の色合いがUKオリジナル盤とかなり違っていることで、赤っぽいUKに比べトルコ盤の方はどちらかというと橙色に近い感じ。ジャケット左下にある白いステッカー風の “This album contains the hit single EPITAPH” が実は印刷というのもユニークだ。
 しかし一番ビックリしたのはA①「21世紀の精神異常者」のイントロ部分で、レコードに針を落とすと冒頭に30秒ほど入っているはずの “ボー” という列車の警笛のようなノイズがバッサリとカットされており、いきなり例の “ジャーン!” から始まったのだ。まぁポールの「London Town」のトルコ盤でBラスの長尺曲「Moose Moose And The Grey Goose」が3分ほどでフェイドアウトした時の驚きに比べると可愛いモンだが(笑)、それにしてもこの「スキッツォイド・マン」には度肝を抜かれた。
King Crimson - 21st Century Schizoid Man (Radio Version)


 サウンド自体は私が期待していた通りの芯の強いマッシヴなサウンドで、UK盤に負けないスキッツォイド指数の高い演奏(?)が楽しめて大喜びヽ(^o^)丿  今のところトルコの独自カット盤にハズレ無しである。A③「エピタフ」のメロトロンの重厚なサウンドは快感そのものだし、B②「クリムゾン・キングの宮殿」で聴けるダイナミックな音の洪水も圧巻だ。
 ふとしたきっかけで始めたトルコ盤蒐集だが、ウルグアイ盤に続く大当たりの予感がする。まぁトルコ盤で大騒ぎしているレコード・コレクターなんて他にそんなにいないと思うので、今のうちに目ぼしい盤を徹底的に買い漁ってやろうと思っている。トルコのロックダウン解除まであと2日、次はどのレコードを買おうかな...(^.^)
King Crimson - Epitaph


トルコの Unofficial「赤盤」「青盤」

2021-05-08 | The Beatles
 これまで「Let It Be」「Hey Jude」「Abbey Road」と後期ビートルズのトルコ盤を立て続けにゲットして楽しんできたが、こーなってくると初期や中期の作品もトルコ盤の重低音サウンドで聴いてみたいと思うのが人情というもの。というわけで当初は全く眼中になかった例の “アンオフィシャル” 「赤盤」と「青盤」に手を出すことにした。
 トルコの「赤盤」「青盤」はどちらも2枚組を1枚に再編集した内容で、Ronnex という怪しげなレーベルからリリースされている。Discogsではアンオフィシャル、つまり正規盤ではないレコードは買えない仕組みになっており、「青盤」の方は取扱い不可なのだが、何故か「赤盤」の方は“Unofficial Release”となっているにも関わらず正規盤と同じように普通に買えてしまうのだ。最近送料の表示も間違いだらけやし、何か Discogs めちゃくちゃやな...(゜o゜)
 ということでまず eBay で検索すると、アンオフィシャルの分際で「赤盤」「青盤」共に $100オーバーというふざけた値が付けられており開いた口が塞がらないが、1週間ほど網を張っていたところ送料込みで$30という格安物件の「青盤」が出品されたので BUY IT NOW で即決。盤質NMとのことなのでまさに “待てば海路の日よりあり” を実感した。
 しかし「赤盤」の方は中々リーズナブルな値段のブツがeBayに出てこなかったので Discogs に出品されている中から盤質VG+ で€12のブツを買うことにした。同じセラーから他にも2枚レコードを買ったので1枚当たりの送料単価は €5と超お買い得(^.^)  音質に確信が持てないアンオフィシャル盤は安く買うに越したことはない。
 先に届いたのは「青盤」の方で、アンオフィシャルのくせにジャケットはピカピカにコーティングされている。盤は見た目キレイだったが実際に針を落としてみると結構チリパチ音があってガッカリ。盤起こしっぽかったので元になったレコードのノイズなのかもと思ったが、超音波洗浄で30分間じっくりクリーニングしてみるとウソのようにチリパチ音がなくなり、見違えるようなクリアーなサウンドになって大喜びヽ(^o^)丿  やっぱりクリーニングって大事やね。Sさんに「またトルコか...」と思われそうだが(笑)4月はトルコ盤しか買っていないのでこれしか持って行くものがないのだ。

 私:まいど(^o^)丿 新しく買ったレコード持って来ましたで。
 Sさん:トルコですか?
 私:トルコです(笑) 今日は「青盤」持って来ましてん。アンオフィシャルなんですけど、トルコ盤のビートルズではこいつが一番ポピュラーみたいなんで...
 Sさん:変わったレーベルですね。
 私:そのRonnexっていうレーベル、フロイドの「Wish You Were Here」も出しとるんですよ。それもオフィシャルでね。もちろん独自カットですけど。
 Sさん:へぇ~そうなんですか。
 私:トルコは分からんことだらけですわ。とにかくまぁこれを聴いてみて下さい。
 Sさん:(A①「Hey Jude」が流れる...)全然悪くないですね。オフィシャルやと言われたら信じちゃいますよ。
 私:でもこれ、盤起こしなんですよ。よくよく聴くとブーンていう音がするでしょう?
 Sさん:確かに... でも盤起こしには違いないですけど、元になったレコードの音が良いんでしょうね。トルコはビニールの材質が良いですから、盤起こしでもこれほどの音がするんでしょう。
 私:まぁ海賊盤(←懐かしいなぁこの呼び方...)でこれだけの音が聴けたら上等でしょうね。
 Sさん:普通に聴く分には十分楽しめます。
 私:わぁ、A⑥「Back In The USSR」のイントロのジェット音のフェイド・イン処理がめっちゃズサン...(笑)
 Sさん:もろにディスク・ダビング跡がわかりますね。これはこれで中々面白いですけど...(笑)
 私:珍盤でしょ?
 Sさん:マトの書き方もめっちゃエエ加減ですね。
 私:76年にカッティングしたようです。
 Sさん:ブートであっても、76年に真空管を使って切ってるから音が良いのかもしれませんね。ソリッドを真空管でカットし直してるのか...(笑)
 私:ハハハ、なるほどね。トルコってホンマにオモロイですわ。

 それから数日して今度は「赤盤」が届いた。こちらも盤質は申し分なしで、音の傾向も「青盤」と同じく伸びやかで艶のあるサウンドだ。アンオフィシャルの盤起こしでありながらこれだけ芯のある腰の据わったサウンドが楽しめるのだからトルコ盤恐るべしである。
 この「赤盤」はコンピレーション盤の宿命というべき個々のトラックにおける音質差が先の「青盤」よりも顕著で、例えば A②「From Me To You」、A④「I Want To Hold Your Hand」、B①「Help!」、B⑤「Girl」、B⑥「Paperback Writer」、B⑦「Eleanor Rigby」なんかもうエグいぐらいにキレッキレな音がするのに対し、A⑤「All My Loving」やA⑦「Can't Buy Me Love」、B⑧「Yellow Submarine」あたりはやや大人しめ。B③「Eight Days A Week」(←「Yesterday」をAラスに持って来るために弾き出されたのか「We Can Work It Out」と「Michelle」の間で居心地悪そうにしてる... 笑)のハンド・クラッピングも脆弱な感じがする。
 とは言え、そういった細かいことを気にしなければ音質面では十分合格点を付けられるレコードであり、「赤盤」「青盤」2枚併せて6,000円弱の出費で手に入れることができて大ラッキーヽ(^o^)丿  残念ながらトルコ本国は新型コロナの感染爆発によって4月の末から3週間のフル・ロックダウンに突入しており今はレコードを買えない状況なのだが、解除されたら是非とも他のアーティストのトルコ盤も買って聴いてみたいなぁと心待ちにしている今日この頃だ。

「Abbey Road」トルコ盤

2021-05-02 | The Beatles
 「Let It Be」や「RAM」、「Hey Jude」ですっかりトルコ盤の重低音が気に入った私は “「Abbey Road」のトルコ盤って一体どんな音で鳴るんやろ???” という好奇心で頭が一杯になり、何とか手に入れてやろうと本気を出して探し始めた。このレコードはめちゃくちゃレアらしくeBayには出ていないし、ヤフオクに1枚だけ出ている盤はVG-でありながら7万円近い値段が付いている。最後の頼みの綱とでも言うべき Discogs には2枚出ていたが、片方は盤質Fで問題外だし、もう片方は “Japanでは利用不可” となっている。
 やっぱり無理か... と一旦は諦めかけたが、一縷の望みをかけて “利用不可” になってるセラーの詳細を調べてみると、別に “日本へは送りません” というような地域制限ではなくてただ日本への配送ポリシー設定していないだけっぽい。まぁわざわざトルコのレコードを買いたいなどという奇特な日本人バイヤーなんておらんから当然と言えば当然だろう。盤質はVG+ で “ちょっと反ってるけど音に影響なし。クリーンで力強い音で鳴ります。” とのことなのでダメ元で “日本に送ってくれませんか?” とメールするとすぐにOKの返事が来たので即決。お値段は何と$90で、送料込みでも1万円ちょっとでこの稀少盤を手に入れることが出来た。
 レコードが届いたのはGW前の金曜日。トルコから一気に荷物が4つもドドーン!と届いたので郵便屋さんがビックリしてたとオカンが言ってたが、私の一番のお目当ては当然この「Abbey Road」だ。しかしイの一番に梱包を解き喜び勇んでレコードを取り出した私の目に飛び込んできたのは盤一面が曇ったいわゆるひとつの “風邪ひき盤” で(←ヤフオクに出ている7万円盤も盤面曇りということなのでひょっとするとトルコの「Abbey Road」は風邪ひきがデフォルトなのかもしれない...)しかも盤の反りも私が想像していたより大きい(*_*)  あちゃー、ハズレを引いてもうたか... と凹みかけたが、実際に音を聴くまでは諦めまいと一応気休めに超音波洗浄を施してからレコードをターンテーブルに乗せた。もちろんスタビライザーは必須だ。
 スピーカーから出てきた音は確かにチリパチ音はあるものの見た目ほど酷くはないし、セラーの言うように反りによる音への影響もなさそうで一安心。まぁVG+ は過大評価でせいぜいVGがいいところだが値段を考えればしゃあないか。モノクロのジャケットは取り出し口が少し傷んでいたのでVGとのことだったが、前回取り上げた「Hey Jude」の書き込みやセロテープ跡によるダメージに比べると遥かに良い状態で、余裕でVG++ かEX− ぐらい付けれるレベルだ。さて、Sさんはこの音をどう評価されるだろうか?

 私:ついにトルコの最難関「Abbey Road」を手に入れましたで。
 Sさん:おぉ、これですか!
 私:ただ、盤質がねぇ...
 Sさん:曇ってますね。それにちょっと反ってるし...
 私:そうなんですよ。「Hey Jude」も盤面の光沢はありませんでしたけど、こいつはちょっと酷いでしょ? 材質なのかな?
 Sさん:温度とかが関係してるのかもしれませんね。
 私:まぁとにかく聴いてみて下さい。
 Sさん:(A①「Come Together」を聴きながら)良いと思いますね。ノイズも見た目ほど酷くないし。
 私:一応UKマザーです。
 Sさん:確かにUKらしい音ですが、ちょっと変わってますね。音そのものが伸びやかです。
 私:これで曇りがなかったらいいんですけどね。
 Sさん:(A面を聴き終えて)でもA面の途中あたりからかなり良くなってきてますよ。さっきのホワイトノイズのとこなんかすごく良かったですもん。
 私:確かに。いつの間にかノイズが気にならんレベルになってますね。
 Sさん:(B①「Here Comes The Sun」を聴きながら)この低音は凄いですね。
 私:B面の方がノイズ少ないのもあるでしょうね。
 Sさん:いやぁ、凄いベースの音ですよ。
 私:(後半のメドレーを聴きながら)こんなド迫力の「Carry That Weight」は他ではちょっと聴けませんね。
 Sさん:B面後半のベース、何かズゥゥ~ンという感じで響いてきます。
 私:「Abbey Road」でこの低音は凄いでしょ。
 Sさん:こないだの「Hey Jude」に通じるものがありますよね。
 私:いや、ホンマに仰る通りです。
 Sさん:スタンパーはA面がEでB面がMですか。確か「Let It Be」と「Hey Jude」は両面Eでしたから、ひょっとしてスタンパー・コードは EMI ですかね?
 私:なるほど!
 Sさん:まぁプレス枚数が相当少なかったんでしょう。EとMとIで足りるぐらいに(笑)
 私:ハハハ...
 Sさん:でもほとんどのコレクターは盤や音じゃなくてジャケットに価値を見い出すでしょうね。
 私:「Let It Be」はちゃんとカラーでしたからね。「Hey Jude」とこの「Abbey Road」だけが特異なモノクロ・ジャケですもんね。でも私にとっては音こそがすべてです。重低音が響き渡る「Abbey Road」っていうのも中々エエもんですよ(笑)