shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

恋人よ我に帰れ / ミルドレッド・ベイリー

2009-07-31 | Standard Songs
 スタンダード・ソングというのは、1920年代から1950年ぐらいまでのいわゆるティン・パン・アレー・ソングや、ブロードウェイ・ミュージカル、映画音楽といった、 “古き良きアメリカン・ポピュラー・ソング” のことで、ガーシュウィンやコール・ポーター、ジェローム・カーン、アーヴィング・バーリンといった作曲家たちが書いた名曲の数々を様々なシンガーやミュージシャンによってそれぞれ独自の解釈で歌われ、演奏されてきた。つまりテンポ設定ひとつとっても急速調でいくのか、ミディアムでスイングするのか、バラッドで攻めるかによって同じ曲であっても聞いた印象がガラリと変わってくるし、ビッグ・バンドをバックにガンガン歌うかスモール・コンボを従えてジャジーに歌うか、ちょっと肩の力を抜いてボサノヴァ風に歌うかetc、アレンジによっても違いが生じやすい。だからスタンダード・ソングを聴く一番の楽しみは何と言っても “聴き比べ” にあると言える。
 そんなスタンダード・ソングの中で私の超お気に入りの一つが「ラヴァー・カムバック・トゥ・ミー(恋人よ我に帰れ)」、通称ラバカンである。YouTubeにはスタン・ゲッツやベン・ウェブスターといったインスト・ヴァージョンの目ぼしいヤツがアップされてないので、ここでは主にヴォーカルものを取り上げてみた。

①Mildred Bailey
 この曲の古典的名唱といえばミルドレッド・ベイリーだ。ラバカンは彼女の代表曲の一つで、私が知る限りでもデッカ、サヴォイ、そしてコロムビアと様々なレーベルで録音しておりそれぞれ甲乙付け難い素晴らしさなのだが、ここにアップされてるのはその中でも最も有名な1938年のコロムビア・レコーディングのもの。肩の力の抜けた自然な唱法で歌詞に秘められた女の情感を見事に表現しきっているのは凄いとしか言いようがない。3分6秒からの “Oh lover, oh lover” の独特の節回しもたまらない(≧▽≦)
恋人よ我に帰れ ~ミルドレット・ベイリー


②Nat King Cole
 ビッグ・バンドをバックにアップテンポでスイングするという、その後のスタンダードな流れを作った名アレンジはビリー・メイによるもので、そのアレンジの素晴らしさを倍増させるようなスインギーな歌声を聴かせているのが最高の男性ジャズ・シンガー、ナット・キング・コールという、これはもう絵に描いたような名演だ。彼をお手本と仰いでいた美空ひばりは「ひばりジャズを歌う」でも「ジャズ&スタンダード」でもこの曲をこれとほぼ同じアレンジで取り上げ、彼女なりのオマージュを捧げている。
Lover Come Back To Me - Nat King Cole


③Patti Page
 パティ・ペイジといえば「テネシー・ワルツ」でキマリ、みたいなイメージがあるが、実際の彼女はジャズでもポップスでも歌いこなせるバリバリの実力派シンガー。このラバカンはノリノリのビッグ・バンド・アレンジでスインギーに歌っている。リズムへの乗り方なんかもう堂々たるものだ。2分6秒から入ってくる手拍子も時代を感じさせて実にエエ感じ。70年代以降の音楽が忘れてしまった単純な楽しさが横溢しているアレンジだ。
LOVER COME BACK TO ME ~ Patti Page


④ザ・ピーナッツ
 日本が誇るスーパー・デュオ、ザ・ピーナッツがあのエド・サリヴァン・ショーに出演(1966年9月)した時の貴重な映像。こんなお宝映像まで見れるなんて、ホンマにYouTube さまさまですね(^.^) 宮川先生入魂の新アレンジ(他のアレンジはすべて却下されたらしい...)で得意の超高速シャバダバ・スキャットを披露する彼女らの堂々とした姿が実にカッコイイ(^o^)丿 
恋人よ我に帰れ


⑤美空ひばり
 1979年放送のTBS系音楽番組「サウンド・イン・S」の映像で世良譲のピアノをバックに歌い始める美空ひばり... いやはや凄い組み合わせだ。歌の途中から入ってくるしばたはつみ、その心意気は買うが、勇気と無謀とは違う。ひばりと並んで歌うというのは自殺行為に等しい。余裕の自然体で黒人顔負けのスイングを披露するひばりに対し、くずしたりリキんだりワメいたりしながら何とかして偽の感動を作ろうとしているように聞こえるその歌声は、引き立て役にすらなっていない。次元が違うとはこのことだ。
Standard medley

Let's Dance / David Bowie

2009-07-30 | Rock & Pops (80's)
 世評はもの凄く高いのに自分にはその良さが分からない、いわゆる “苦手な名盤” の話は以前にしたことがあるが、アルバムだけでなくアーティストに関しても同じことが言える。このデビッド・ボウイという人も最初聴いた時はどこが良いのかサッパリ分からなかった。
 私が音楽を聴き始めた70年代半ば、彼はすでにビッグ・ネームだった。ネットが発達している今と違い、情報はラジオと音楽雑誌のみというある意味平和な時代だったが、どのメディアも彼のことを絶賛(それは今でも同じことで、彼に対するネガティヴな評価はあまり聞いたことがない...)していた。好奇心旺盛な私は彼の代表作を色々と聴いてみた。「スペース・オディティ」、「チェインジズ」、「ジーン・ジニー」、「ジギー・スターダスト」、「レベル・レベル」、「ヤング・アメリカンズ」、そしてジョン・レノンの助けを借りて書き上げ全米№1にも輝いたユーロ・ファンク・ナンバー「フェイム」と、どれを聴いても “別に嫌いってわけじゃないけど、取り立てて惹きつけられるものもない” 曲ばかりで、 “自分にはボウイの音楽を理解する感性が欠落してるんやろ...(>_<)” と諦めるしかなかった。
 そんな私が彼の音楽と再会したのは80年夏のこと、新譜アルバムを丸ごと1枚ノーカットでかけてくれるFM大阪の音楽番組「ビート・オン・プラザ」でボウイの「スケアリー・モンスターズ」を特集しており、その中の「イッツ・ノー・ゲーム(パート1)」を聴いて全身に電気が走るようなショックを受けたのだ。日本人女性によるシュールなアジテーションが衝撃的だったこの曲はとても耳当たりの良いポップ・ミュージックとは言えなかったけれど、何と言うかリスナーの気持ちをガンガン叩くようなところがありインパクト絶大だったし、シングル・カットされた「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」もボウイにしか表現できないような退廃的な美しさを湛えていた。更にクイーンとの共演シングル「アンダー・プレッシャー」はイギリスで見事№1を獲得、サウンド自体は当然ながらクイーン色が強かったがボウイの存在感はピカイチで、フレディーと共にテンションの高いヴォーカルを聴かせていた。
 そんなボウイがシックのナイル・ロジャースをプロデューサーに迎え、限りなくポップで売れ線のサウンドを追及して生まれたのが83年リリースのアルバム「レッツ・ダンス」である。先行シングルの③「レッツ・ダンス」は、マイケル・ジャクソンの「ビート・イット」とアイリーン・キャラの「フラッシュダンス」というウルトラ・メガ・ヒット2曲の間隙を突いて1週だけながら全米№1に輝いたのだが、私は「ツイスト・アンド・シャウト」なイントロから思いっ切り分かり易いファンキー・ビートが支配するこの曲を聴いてそのあまりのハジケっぷりに “これがあのデビッド・ボウイか?” と一瞬わが耳を疑ったものだった。まぁどちらかというとボウイの音楽というよりはナイル・ロジャースのお膳立てしたサウンドに乗ってボウイが気持ち良さそうに歌いまくっているという印象が強かったけど。
 セカンド・シングル②「チャイナ・ガール」は全米10位が最高だったが、私は「レッツ・ダンス」よりもむしろこっちの方が気に入っており、MTVでヘビロテ状態にあったビデオ・クリップも面白くて(←ボウイがラーメンを頭上に投げるシーンが意味不明で笑える)、ガンガン聴きまくったものだった。サード・シングル①「モダン・ラヴ」は明るくノリの良いストレートアヘッドなナンバーでコレも全米14位まで上昇、70年代のアート・ロック路線のボウイとは別人のような快進撃だ。これらのシングル以外ではカルト・ヒーロー時代の残り香が薫る④「ウイズアウト・ユー」や②の三軒隣りに住んでいるような⑥「クリミナル・ワールド」がエエ感じだが、私が大好きなのは⑦「キャット・ピープル(プッティン・アウト・ファイア)」だ。ハイ・テンションなボウイのヴォーカルといい、当時まだ無名だったスティーヴィー・レイ・ヴォーンのラウドでブルージーなギター・プレイといい、私の感性のスイートスポットをピンポイントでビンビン刺激するキラー・チューンで、“puttin' out fire with gasoline...”(ガソリンで火を消して...)と叫ぶボウイがめちゃくちゃカッコ良かった。
 そういえばこのアルバムのキャッチ・コピーに “時代がボウイに追いついた!” というのがあったが、私に言わせればこのアルバムの成功は、ナイル・ロジャースの起用からも明白なように、その時代で最もヒップだったアメリカン・ファンク・サウンドへとボウイの方から接近していった結果ではないか。又、ボウイが大衆を意識し、メロディアスな旋律を持ったナンバーを集中投下したことも大きい。この後も彼は「ブルー・ジーン」、「ダンシング・イン・ザ・ストリート」、「ジス・イズ・ノット・アメリカ」とヒット曲を連発していくのだが、メロディー復権の時代である80年代の流れを見切ったボウイの嗅覚はさすがと言う他ないだろう。
 このアルバムを聴けば音楽とともに真空パックされた80'sの空気までもが瞬間解凍されて目の前に立ち込める、私にとってはそんな懐かしさ溢れる1枚なのだ。

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Night In Manhattan / Lee Wiley

2009-07-29 | Jazz Vocal
 ウチのオーディオ装置は1960年代に作られた、いわゆるヴィンテージものである。私が聴く音楽の大半が1950~60年代に録音されたものなので、モノラル録音が主流だった当時のレコードを聴くには、デジタル音源の再生を念頭に置いて開発された最新鋭のオーディオ・システムは必要ない。特にエネルギーが中音域に密集している古~い女性ヴォーカルなんかはCDではなくレコードで、それも出来れば真空管アンプと小型フルレンジ・スピーカーの組み合わせで聴きたい。微かなスクラッチ・ノイズの向こうから聞こえてくる歌声は、古き良き時代を思い起こさせてくれるものだ。更に灯りを落として小音量で聴けばもう言うことなし。女性ヴォーカルは雰囲気なんである。
 リー・ワイリーは1930年代から1950年代、つまりSP全盛の時代からLP時代の黎明期にかけて活躍した白人女性シンガーで、そのせいか、彼女の歌には蓄音器の向こうから聞こえてくるような趣がある。とにかく粋で気品があり、懐古的な歌声なのだ。ソフィスティケイテッド・レディとは彼女のような人の事を言うのだろう。知的で洗練されており、それでいて人間的な温かさを感じさせてくれる不思議な歌声だ。そのヴィブラートを効かせたお涙頂戴的トーチ・ソング唱法は彼女のキャリアの初期において確立されたもので今の耳で聴けば古めかしく聞こえるかもしれないが、それが逆に幽玄の美というか、夢と現実の境目あたりから聞こえてくるような不思議な雰囲気を醸し出している。こんな歌手は後にも先にも彼女を置いて他にはいない。
 彼女の代表的な作品のほとんどはSPがオリジナルで、LP時代に突入すると発売元のコロムビア・レコードはそれらの音源を10インチLPにまとめ、更に10インチ盤に数曲追加することによって12インチ盤に仕立て上げた。彼女の作品には「ガーシュウィン集」や「コール・ポーター集」(共にリバティ・ミュージック・ショップス)、「ロジャース&ハート集」(ストーリービル)、「ヴィンセント・ユーマンス集」や「アーヴィング・バーリン集」(共にコロムビア)といった作曲家シリーズが多いが、彼女の代表作と言えばやはり「ナイト・イン・マンハッタン」に尽きるだろう。
 この粋なアルバム・ジャケットは12インチ盤のもので、50年録音のセッションによる8曲から成る10インチ盤に51年のセッション4曲⑤⑥⑪⑫を追加収録したもの。この時代のジャケット・デザイナーのセンスの良さは有名だが、それにしてもどちらもまるで音が聞こえてきそうな名ジャケットだ。女性ヴォーカルはジャケットを聴け、というのは至言である。
 そんな「ナイト・イン・マンハッタン」、アルバム全編を通して彼女の魅力であるハスキー・ヴォイスと都会的な感覚の気品に満ちた唱法が満喫できる。彼女の代名詞と言える①「マンハッタン」はロジャース&ハートが1920年代に作った都会的な曲で、古き良き時代のニューヨークを想わせるその小粋な歌声、洗練された気品がたまらない名唱だ。そんな優雅な彼女の歌声にピッタリの、もうこれ以外は考えられないというくらいの絶妙なオブリガートを付けているのがイニシエのトランペッター、ボビー・ハケット。彼のトランペットは甘く、懐かしく、温かいムードを見事に演出している。又、まるで歌伴ピアノのお手本のようなジョー・ブシュキンのセンス溢れるいぶし銀プレイもこの名演に欠かせないもので、歌・演奏共に私の持っているすべての女性ジャズ・ヴォーカル盤の中でベスト!と言っていい素晴らしさだ。
 ②「アイヴ・ガット・ア・クラッシュ・オン・ユー」は元々ブロードウェイではアップテンポで歌われていたものを彼女がセンチメンタルなミディアム・スローのバラッドにしてレコーディングし、以後そのアレンジが完全に定着したというからさすがである。聴く者の心を包み込む温かい情感がたまらない。③「ゴースト・オブ・ア・チャンス」は片思いの切々たる女心の微妙な綾をしっとりとした歌声で巧く表現している。哀しいけれど美しい... もうお見事と言う他ない。ブシュキン作の④「オー・ルック・アット・ミー・ナウ」は①の続編的な曲想を持ったナンバーで、「マンハッタン」大好き人間としてはそれだけでもう嬉しくなってしまう。ここでもハケットとブシュキンの軽妙洒脱なプレイが彼女の歌を十二分に引き立てている。
 ⑦「ストリート・オブ・ドリームス」はヴィクター・ヤング作の名曲で、情感豊かに歌い上げるリー・ワイリーのスタイルにピッタリの曲想を持ったナンバー。ハケットとブシュキンも相変わらず絶好調だ。同じくヴィクター・ヤング作の⑧「ア・ウーマンズ・インテュイション」ではほのかな気品を漂わせながら見事な歌詞の解釈を聴かせてくれるし、⑨「シュガー」は彼女お得意の懐古調ナンバーで、「ピート・ケリーズ・ブルース」でペギー・リーが歌うヴァージョンと双璧と言っていいと思う。ペギー・リーとリー・ワイリー、私はこの二人のリーが大好きだ。④同様①っぽい雰囲気を持った⑩「エニー・タイム・エニー・デイ・エニーホエア」は何とリー・ワイリーの自作曲。ミディアム・スローで気持ち良くスウィングするリー・ワイリーと歌心溢れるブシュキンのピアノが絶品で、このアルバムの中では①に次ぐ愛聴曲だ。
 別セッションから追加収録されたA面ラスト2曲⑤「ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン」、⑥「タイム・オン・マイ・ハンド」、そしてB面ラスト2曲⑪「ソフト・ライツ・アンド・スウィート・ミュージック」、⑫「モア・ザン・ユー・ノウ」の4曲は、ハッキリ言ってガクンと落ちる。トランペットやストリングスがいないという編成上の違いよりもピアニストが変わったことによるパワー・ダウンが大きい。華がないというか、改めてジョー・ブシュキンの偉大さを思い知らされる。これらの取って付けたような4曲はアルバム全体の流れから言うと不要だったように思う。
 艶やかな歌、ツボを心得た伴奏、センス溢れるジャケットと、三拍子揃ったこのレコード、“粋なヴォーカル盤” といえば何を差し置いてもこのアルバムだと思う。

Lee Wiley - Manhattan - 1951

Bay City Rollers Memorial

2009-07-28 | Rock & Pops (70's)
 昨日ダスティ・スプリングフィールドを取り上げた時に「二人だけのデート」絡みでベイ・シティー・ローラーズのことを思い出し、久々に彼らのCDを聴いてみた。いやぁ~、ホンマに懐かしいなぁ...(^.^) 好き嫌いに関わらず、私のように70年代半ばに中高生だった人間、つまり今の40代(アラフォーっていうんですか?)の音楽好きにとっては忘れられないグループの一つだろう。
 初めて彼らを聴いたのは1975年の夏のこと、当時の彼らは飛ぶ鳥を落とす勢いで、フォー・シーズンズのカヴァー「バイ・バイ・ベイビー」が全英で6週連続№1となり、日本でもラジオの洋楽チャートを席捲していた。NHKの音楽番組「ヤング・ミュージック・ショー」でもライブが放送され(確かレスリーがカラフルな風船を蹴っ飛ばしながら歌っていたような記憶が...)、「サタデイ・ナイト」も念願の全米№1になり、日本にもタータン・チェックを身にまとったローラー・マニアと呼ばれる少女達が出現した。キャーキャー叫びながら彼らを追いかけ、失神する者まで現れるというそのヒステリックなまでの狂乱ぶりは確かに10年前のビートルズ熱を彷彿とさせるものがあったが、マトモな耳を持って聴けば彼らが “第2のビートルズ” なワケがないことは一聴瞭然だった。少なくとも “第2のモンキーズ” とでも言ってあげればよかったのだ。しかしメシのタネになるものは何でも利用したいマスゴミ連中はこぞって彼らを持ち上げるだけ持ち上げた。そして彼らの人気がピークに達すると今度は一転、やれ口パクだの、やれ演奏がヘタだのとこき下ろし始めたのだ。ここでハッキリ言っておきたいが、口パクのどこがそんなに悪いのだろう?彼らはクリームやレッド・ゼッペリンではないのだ。 “第2のビートルズ” というキャッチ・コピーだってマスゴミが勝手にそう呼んでただけで、 彼らが “第2のサージェント・ペパーを作ります!” とか “今やローラーズはキリストよりも人気がある” とか言ったわけではない。ビートルズはその溢れんばかりの才能で世紀を揺るがす大傑作を連発してそういったアホバカ・マスゴミを黙らせてしまったが、悲しいかな、ローラーズにはとてもそれだけの器量はなかった。しかも度重なるメンバー・チェンジやら、音楽性のブレやらで、2年もしないうちに彼らの人気は下火になり、自らが歌ったように「イエスタデイズ・ヒーロー」になってしまったのだ(>_<)
 しかし私はそんなローラーズが結構好きだった。少なくともキャッチーなシングルを連発していた76年ぐらいまでは優れたポップ・グループとして気に入っていた。それから何十年か経ち、中古CDショップで彼らのベスト盤が捨て値同然で売られているのを見て思わず衝動買いしてしまった。それがこの「ベイ・シティ・ローラーズ・メモリアル」である。収録曲目を見れば当時の記憶が蘇ってくるような懐かしいタイトルが一杯だ。①「バイ・バイ・ベイビー」は今聴いても非常に質の高いポップ・ソングだし、彼らの代表曲と言っていい⑦「サタデイ・ナイト」も “優れた3分間ポップス” のお手本のようなキャッチーなナンバーだ。この2曲はモンキーズの「アイム・ア・ビリーバー」と「デイドリーム・ビリーバー」に匹敵するぐらいの名曲名演だと思う。これに先述のダスティ・スプリングフィールド・カヴァー⑩「二人だけのデート」(これはもう、イントロだけで名演の薫りがしてきますね!)を加えた3曲が私的ローラーズ・トップ3で、そのどれもが絵に描いたようなポップ・チューンだ。
 リアルタイムで聴いていた頃はまだ中学生でお金が無かったので、シングル盤をパラパラと買って聴いていたが、⑪「ロックンロール・ラヴレター」は確か買った記憶があるぞ。彼らの楽曲の魅力はとにかく覚え易くて鼻歌で一緒に歌えるところなのだが、これはポップスにとって一番大切なことで、この曲もそういう点では実に良く出来ていた。⑨「ロックンローラー」と⑳「イエスタデイズ・ヒーロー」は確か両A面扱いのカップリング・シングルで出たような記憶があるが、彼らがポップな魅力全開でキラキラ輝いていたのはこの辺りまでだったのではないか。これ以降では全米10位まで上がった⑭「ユー・メイド・ミー・ビリーヴ・イン・マジック」(夢の中の恋)しか知らない。わずか2年弱という短い間だったが、彼らはこのように優れたポップ・シングルを量産し続けたのだった。
 又、このCDには他にも「バイ・バイ・ベイビー」以前のイギリスでのヒット曲が収められており、ローラーズがブレイクするきっかけとなった73年のシングル⑥「リメンバー」、彼らのTVシリーズのテーマ曲で74年に全英2位まで上がった②「シャング・ア・ラング」(←この辺りの売り出し方もモンキーズしてますね)、②に続く74年の全英№3ヒット③「サマー・ラヴ・センセーション」(太陽の中の恋)と、良質ポップスのアメアラレである。シングル曲以外ではビーチ・ボーイズっぽいコーラス・ワークが楽しい④「マイ・ティーンエイジ・ハート」(ひとりぼっちの10代)やフィル・スペクター印のカスタネット波状攻撃が笑える⑤「エンジェル・ベイビー」なんかがエエ感じだ。
 彼らの残してくれた楽曲の数々は今でも我々アラフォー世代の胸をときめかせ、あの頃の甘酸っぱい思い出と共に当時の空気まで運んでくるような気分にさせてくれる。それで十分ではないか!ローラーズは見事にポップ・グループとしての本懐を遂げたのだと思う。

I ONLY WANT TO BE WITH YOU


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風のささやき / ダスティ・スプリングフィールド

2009-07-27 | Oldies (50's & 60's)
 「風のささやき」という曲は元々スティーブ・マックイーン主演の映画「華麗なる賭け」の主題歌としてミシェル・ルグランが書き、ノエル・ハリソンが歌ったものがオリジナルとのことだが、映画を見ない私はまったく知るよしもなかった。そんな私が初めてこの曲を知ったのはその約30年後のこと(←遅っ!)、ダスティ・スプリングフィールドのベストCDに入っていた彼女のカヴァーを聴いて “めっちゃエエ曲や!” と感動し、それ以降この曲が入っていると必ず買ってしまう(←いつものパターンです...)ようになった。と言うことで今回は、選ばれし名曲だけが持つ風格に溢れたドラマチックな曲想が素晴らしいこの曲の愛聴ヴァージョンをご紹介:

①Dusty Springfield
 ダスティ・スプリングフィールドというと彼女最大のヒット曲「この胸のときめきを」を思い浮かべる人が多いと思うが、私はベイ・シティ・ローラーズの「二人だけのデート」から遡って彼女を知ったクチ(←結構多いと思うけどな...)である。で、「二人...」目当てに買ったベスト盤に入っていたこの曲にすっかりKOされてしまったというわけ。キメ細やかな女の情感を見事に表現した彼女のソウルフルなヴォーカルにグイグイ惹き込まれ、3分53秒がアッという間に過ぎ去っていく。
風のささやき(訳詞付) - Dusty Springfield


②ザ・ピーナッツ
 このブログでは毎度おなじみのザ・ピーナッツ。彼女らが私の超愛聴曲をレコーディングしていることが多いのは偶然ではなく、多分宮川先生の音楽の趣味が私と近いということだろう。伝説のさよなら公演ではなかにし礼氏が作った日本語詞で歌っていたが、初出にあたる1971年の「華麗なるフランシス・レイ・サウンド」に収録されたこのヴァージョンでは何と終始スキャットで歌い通しているのだ。当時の邦楽の状況を考えれば実に斬新かつ大胆な発想だ。透明感溢れるハーモニーを活かし切った宮川アレンジが素晴らしい。
華麗なるフランシス・レイ・サウンド


③Phil Woods
 私はジャズを聴き始めた頃、ジャズ・ミュージシャンがオーケストラと共演した、いわゆる “ウィズ・ストリングスもの” に対して偏見を持っていて、“あんな軟弱な音楽は年寄りが聴くもんや!” と決めつけ、バリバリのハードバップばかり聴いていきがっていた。それから数年後、ブヒバヒ吹きまくるパーカー派アルト・サックスの急先鋒であるフィル・ウッズがミシェル・ルグラン・オーケストラと共演したこのヴァージョンを聴いてそのアホな考え方を木っ端微塵に吹き飛ばされた。音楽はスタイルじゃない、歌心なんだということを痛感させてくれたこのレコードは私にとっては忘れられない大切な1枚なのだ。
風のささやき


④竹内まりや
 私が一番好きな日本人女性歌手、竹内まりやが2003年にリリースした全編オールディーズ・カヴァー・アルバム「ロングタイム・フェイヴァリッツ」に入っていたのがこのヴァージョン。まりや版「ナウ・アンド・ゼン」と言えるこの大傑作アルバムの中でも抜群の存在感を誇っていたこの曲、彼女の言葉を借りれば “イギリスの女性歌手の中で一番好きなダスティの足元にも及ばないことはわかっているものの、どうしても歌ってみたかった” とのこと。いやいやどうして、その艶のある歌声といい、あくまでも自然体で歌うスタイルといい、ダスティに迫る名唱ですよ、まりやさん!
風のささやき


⑤Connie Evingson
 コンテンポラリー女性ヴォーカリストの中で私の大のお気に入りがこのコニーちゃん。彼女の魅力は一にも二にもその “声” にある。ちょっと鼻にかかったようでいてシルクのように滑らかなその歌声だ。初めて彼女を聴いた時に、一瞬にして “あっ、この声だ!” と天啓のごとく好きになった。彼女の声に惚れ込んだのだ。理屈ではない。溢れんばかりの歌心も素晴らしい。そんな彼女がホット・クラブ・オブ・スウェーデンのジプシー・スウィングな演奏をバックにパリのエスプリ薫るこの曲を切々と歌うこのヴァージョン、哀愁舞い散る屈指の名演だと思う。
コニー・エヴィンソン
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A Beatles Tribute: Number One Again

2009-07-26 | Beatles Tribute
 昨日の「エキゾチック・ビートルズ」はいくらビートルズ・カヴァーものとはいえ、ちょっと色物に走り過ぎたかなぁと反省(?)している。犬猫の鳴き声で聴くビートルズ・ナンバーなんて、話のネタとしては面白いけれど、決してスピーカーに対峙して聴くようなマトモな音楽ではない(というか、音が部屋の外に漏れたら家族や近所に恥ずかしすぎる...)からだ。ということで今日は昨日の失地回復、汚名返上を期して、胸を張って万人にオススメできる格調高いビートルズ・カヴァー集をご紹介したい。
 この「ア・ビートルズ・トリビュート~ナンバー・ワン・アゲイン」はアマゾンで “beatles tribute” 検索をしていて引っ掛かってきた。残念ながら日本のアマゾンでは試聴が設定されておらず、解説に“才能に溢れる無名女性シンガーたちによるビートルズ・ナンバーのアコースティック・カヴァー集。ビートルズ・ファンはもちろんのこと、シェリル・クロウ、アニ・ディフランコ、サラ・マクラクラン、ジュエルといったコンテンポラリーな女性シンガーのファンにもアピールしそうなユニークな解釈が楽しめます。” とあるのみ。アコースティック・カヴァー集か... 要するに女性ヴォーカルによるアンプラグド物ってことやね。90年代以降の洋楽シーンは全く分からないのでシェリル・クロウ以外の名前は知らなかったが、何となく良さそうな雰囲気だ。物は試しとUSアマゾンで検索してみると、ちゃーんと試聴設定されていた。同じアマゾンやのにこの違いは一体何なん?Listen to all をクリックし、各曲30秒ずつで計6分のミュージック・サンプラーを聴いて “これはめちゃくちゃエエぞ!” と大コーフンした私は早速その場でオーダーした。
 私はこのような未知のアーティスト盤が届くとまずジャケ裏解説を見るようにしているのだが、このCDは困ったことにそういったアーティスト情報が皆無に等しい。全12曲をそれぞれ違った無名の女性シンガーが歌っているというのに、記されているのはシンガーの名前と伴奏楽器のパーソネルのみ。個々のシンガーの小さな写真すら載っていない。 Reverberations というレーベル名も、 Lakeshore Records というレコード会社名も聞いたことがないが、 Printed in the USA 2002 とあるのでUS盤であることだけは間違いない。多分小さなローカル・レーベルなのだろうが、不親切というか、ホンマに売る気あんのか、とツッコミを入れたくなるくらいシンプルなジャケットだ。
 しかし中身の音楽の方は文句のつけようがないくらいに素晴らしい。ちょうど「アイ・アム・サム」のサントラ盤に入っていた女性ヴォーカル・ナンバー(エイミー・マンやサラ・マクラクランetc)っぽい雰囲気を持った演奏を集めたようなコンピレーション盤だ。 Leslie King の①「サムシング」はしっとりと落ち着いた歌声が静謐な曲想とベストのマッチングを見せる。シンプル・イズ・ベストを地で行く名演だ。ちょっと甘ったるい声のNikki Boyer の②「抱きしめたい」は元気印な原曲を大胆にアレンジし、ピアノの弾き語りのような雰囲気でスローに迫る。ちょうどペトゥラ・クラークの同曲カヴァー・ヴァージョンみたいな雰囲気だが、これはこれでエエ感じだ。Lisa Furguson の③「ロング・アンド・ワインディング・ロード」はポールが目指した素朴な味わいを上手く表出している。可憐な声質も私の好みなのだが、エコーを効かせすぎなのと、ピアノの録音レベルが大きすぎてヴォーカルの邪魔をしているのが難点か。尻切れトンボなエンディングのアレンジももうひと工夫欲しいところだ。
 Melissa Quade の④「ヘルプ」は原曲に忠実なアレンジが大正解。アコギを駆使して曲の髄を見事に引き出したサウンドにいかにもヤンキー娘といった雰囲気の力強いヴォーカルがバッチリ合っている。一人追っかけ二重唱もたまらない。Katherine Ramirez の⑤「恋を抱きしめよう」も④と同様にシンプルで力強いアコギのストロークが曲の良さを引き出し、ちょっと鼻にかかったようなキャサリンの表情豊かな歌声が楽しめるという、アンプラグドのお手本のようなトラックだ。リズミカルな④⑤に続く Erin Arden の⑥「ハロー・グッバイ」もやはり同傾向の曲想でアレンジされており、普通なら単調に感じてくるはずが全然そんなことはなく、むしろ曲が進むにつれてこのアルバムに引き込まれていく。まるで「ナンバー・ワン・アゲイン」という曲が1曲あって、それが12楽章に分けられた組曲風の大作を聴いているかのようだ。
 Brielle Morgan の⑦「エリナー・リグビー」は重厚なストリングスにギターが絡むバックに乗ってビートルズ御用達のダブル・トラッキングによるヴォーカルで迫るというアレンジが素晴らしい。彼女のドスの効いた歌声はそんなバックに負けないぐらい存在感のあるものだ。Thee Ray の⑧「ヘイ・ジュード」では一転してそのちょっぴり舌っ足らずでフェミニンな歌声に癒される。乱発気味(?)のダブル・トラッキングも効果抜群で、スピーカーの前に分厚い音の塊が屹立するかのようだ。Jill Guide の⑨「レディ・マドンナ」はバックの演奏やコーラスなどの作り込みはさすがなのだが、ヴォーカリストがやや凡庸なのが残念。そんなにワメかずにもっとストレートに歌えばいいのに...
 Jess Goldman の⑩「レット・イット・ビー」、ゴスペルとしての本質を見抜いた彼女の歌唱スタイルはお見事という他ない。意表を突いた中間部のアコギ・ソロの歌心溢れるプレイにも脱帽だ。Hathaway Pogue の⑪「ペニー・レイン」はいきなりピアノの伴奏と共に飛び出す彼女の “ペニレェン~♪” という第一声だけでもうノックアウト、もうめっちゃ癒される(≧▽≦) 声質は違うが歌唱法はスザンナ・ホフスを想わせるキュート系だ。 Maureen Mahon の⑫「愛こそはすべて」はちょうどペギー・リーの「フィーヴァー」みたいなフィンガー・スナッピングとアップライト・ベースをフィーチャーした大胆なアレンジで、 “この手があったのか!” とその斬新な発想に思わず感心してしまった。
 さっき久しぶりにアマゾンで確認してみたらアメリカ本国ではすでに廃盤になっており、日本のアマゾン・マーケットプレイスで中古を2枚(うち1枚は10,736円というアホバカ・プレミア価格です...笑)残すのみ。こういった超マイナー・レーベル盤は再発の可能性がほぼゼロに等しいので、興味のある方は早めにゲットしましょう。

ペニー・レイン

The Exotic Beatles - Part One

2009-07-25 | Beatles Tribute
 英語に “exotic” という単語がある。辞書で引くと(1)外来の、外国産の (2)異国風の、エキゾチックな (3)珍しい、風変わりな... とある。つまりこのCDのタイトルである「エキゾチック・ビートルズ」というのは、イギリス人から見て外国産、又は異国風でなおかつチョット変わったビートルズ・カヴァー集ということだ。まぁ収録曲の数々を見れば “チョット変わった” どころかよくぞここまで集めたよなぁ... と感心するくらいの選りすぐりの珍品ばかりなのだ。
 そんなクセモノ揃いのこのアルバムはいきなりワケのわからないトラック①からスタート、ハッキリ言って酔っぱらいのオッサン(イギリスの下院議員らしい...)の鼻歌である。先が思いやられるわ...(>_<) ②「イエロー・サブマリン音頭」は日本が世界に誇れるモンド・カヴァーの傑作で、Wikipediaによると80年代以降はビートルズの楽曲著作権保護が強化され、それまでOKだった替え歌が認められなくなった(だから王様は「カブトムシ外伝」であぁするしかなかったのね...)らしいが、この曲を聞いたポールが例外的に歌詞の変更を伴ったカヴァーを許可してくれたとのこと。さすがはポール、人間の器がデカイわ(^o^)丿 尚、裏ジャケには“Yellow Submarine Ondo – In the Japanese Folk Style” と紹介されている(笑)
 ③「ルーシー・イン・ザ・スカイ」は初代スタートレックのカーク船長(ウイリアム・シャトナー)による芝居がかった朗読だ。
 スポック:“船長、おやめになった方がよろしいのではないかと...”
 カーク:“やかましい、この耳のとがった化け物め!副長を解任してやる!”
などというやり取りがあったかどうかは知らないが、とにかくスタートレック・ファンとしては穴があったら入りたいくらい恥ずかしくなる1曲だ。尚、この曲のビデオクリップ(作るなよそんなもん!)はめちゃくちゃ面白いパロディーの傑作なのだが、YouTubeでは残念ながら “著作権者の申し立てにより” 音声トラック部分が削除された無音のクリップしか見れない。親会社のGoogle 動画では見れるのに、一体どーなってるねん?著作権法だか何だか知らんけど、特にUMG(ユニヴァーサル)系は全部アウトっぽい。そんなことやってるからCD売れへんねん。タダで宣伝できるのに... アホな会社や。
 ④「恋する二人」は初めてまともな歌と演奏が聴けてホッとさせられる。イタリア語で歌うビートルズ・カヴァー・バンドなのだが、オラオラ系の女性バック・コーラスがチープな薫りをプンプンさせててエエ感じだ。⑤「彼氏になりたい」は英語による歌詞の解説に続いて様々な国のカヴァーバンドの演奏の断片が挿入されており、そのアタマにあの東京ビートルズの「キャント・バイ・ミー・ラヴ」が入っていたのにはビックリ(゜o゜) 各国語で聴くビートルズ・カヴァーもオツなもん... かな???
⑥「ペニー・レイン」はかなりポップで楽しい歌と演奏で、さりげないサイケな味付けも◎。⑦「シー・ラヴズ・ユー」は聴いてビックリの本格的フラメンコで原曲を見事なまでに換骨堕胎、かきならされるギターと響き渡る手拍子でスパニッシュな雰囲気が濃厚に立ち込める。⑧「カム・トゥゲザー」は完全なレゲエ・ヴァージョンで、少し前に雨後のタケノコのように量産されていた “レゲエ・ビートルズ” (←どの曲を聴いてもみんな同じに聞こえるんよね...)の先駆的作品だ。
 クルーナー・スタイルの⑨「ステップ・インサイド・ラヴ」、自動演奏オルガンによる⑩「イン・マイ・ライフ」、どっかのアマチュア・グリー・クラブみたいな男性コーラス隊による⑪「ホエン・アイム・64」と徹底的に忍耐力を試されたところで、やっとスペインのロス・ムスタングスによるストレートアヘッドな解釈の⑫「プリーズ・プリーズ・ミー」でホッと一息つける。普通のコピー・バンドの演奏がこんなに素晴らしく聞こえるなんて...(笑)
 マダガスカル(ってどこ?南米?アフリカ?アジア?)の子供バンドによる⑬「ゼアズ・ア・プレイス」はともかく、ポルトガル語で聴くビートルズが妙に耳に残る⑭「今日の誓い」やカテリーナ・ヴァレンテの正統派ヴォーカル(イタリア語)による⑮「フール・オン・ザ・ヒル」の2曲は十分聴くに値するマトモなトラックだと思う。⑯「ペイパーバック・ライター」は L⇔R という日本のバンドらしいが、あれば聴くが無くてもさして困らない類の1曲。演奏にイマイチ惹きつける力が足りないように思う。⑩と同じオルガンによる⑰に続いて⑱「抱きしめたい」はシタールによるアップテンポな演奏(笑)で、さすがにこれはインパクトが大きい。ただ、2回3回と繰り返し聴きたくなるかどうかは疑問だが...(笑)
 オッサンのしゃべり⑲、スペイン語による凡庸な歌唱⑳に続いていよいよ本盤最大の衝撃、もとい笑撃がやってくる。犬、猫、ニワトリの鳴き声によって歌われ(?)る (21)「恋を抱きしめよう」だ。人呼んでビートル・バーカーズ(“吠える” は英語で bark)だとぉ?ナメてんのか?こんなん聴いてたらホンマのバカになってしまう。以前ビートル・バーカーズのCD-Rを車内に持ち込んで運転しながら聴いたことがあったが、ドライヴィングに集中出来ずにすぐにやめてしまった(>_<) こんなことで事故ったらそれこそバーカだ(笑)
 めっちゃ訛ったラップくずれみたいな(22)「アイ・アム・ザ・ウォルラス」、オルガン再々登場の(23)、マレーシアの完コピ・バンド(何語かワカラン)による(24)「アイル・ビー・バック」、モーグ・シンセサイザーが奏でる(26)「グッド・ナイト」と、もうこの文章を書く気も萎えてくるようなトホホなエンディングだ。それと、アルバム・ジャケットのリンゴのイラスト、もーちょっと何とかならんかったんか?
 このように変わった音源ばかり収録されているけれど、ゲテモノという一言で片付けてしまうのはちょっともったいない。これはものすごーく心が広くてシャレのわかる超ビートルマニア向けの、かな~り笑えるモンド・カヴァー・アルバムだ。

↓こんなアホなもん、よぉ作るわ(>_<)
Beatles Barkers - We Can Work It Out
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タミー / デビー・レイノルズ

2009-07-24 | Oldies (50's & 60's)
 毎日色々な曲を聴いていると、その曲の出自が何となく想像出来るようになってくる。これはあの曲をベースにしてるなぁとか、ギターでジャムってて出来たような曲やなぁとか、これは無理やりくっつけてでっち上げたような感じやなぁとか、まぁ色々である。少し前に “J-Popsの世界には日本人好みの王道コード進行がある云々...” という話をネットで見た記憶があるが、最近の曲なんてまぁ大体そんなもんだろう。
 それに比べ昔の曲、特にオールディーズの楽曲には作曲したというか、あまり “考えた” ような形跡は見当たらない。例えばこの「タミー」という曲、まるで最初からそこにあったかのような、そんな錯覚に襲われるほど自然なメロディの洪水である。聴いているだけで心が洗われるような美しいメロディだ。さすがはshoppgirl姐さんご推薦の大名曲である。オリジナルのデビー・レイノルズを筆頭に、どのカヴァー・ヴァージョンも名唱なのだが、それもこれもこの「タミー」という曲の持つチカラのなせるワザなのだろう。

①Debby Reynolds
 ジーン・ケリーの「雨に唄えば」でブレイクした女優デビー・レイノルズが1957年の「タミーと独身者」の主題歌として歌ったのがこの曲で、プレスリーやポール・アンカを始めとする男性ヴォーカルの天下だった56年夏から58年冬までの2年半で唯一の女性歌手による全米№1ソング。思春期の淡い恋心を歌ったデビーの甘酸っぱい歌声にはオールディーズ・ポップスのエッセンスが詰まっている。特にストリングスのイントロに続いて滑り込んでくる彼女の “アイ ヒア ザ カァトゥンウッズ ウィスパリィ ナバァ~ヴ♪” は胸キュンものだ(≧▽≦)
Debbie Reynolds : Tammy


②Teddy Bears
 あのフィル・スペクターがハイスクール卒業後に結成した男女混成3人組グループが「会ったとたんに一目ぼれ」の全米№1で有名なこのテディ・ベアーズ。彼らがインペリアル・レーベルからリリースした唯一のアルバム「テディ・ベアーズ・シング!」でカヴァーしていたのがこのヴァージョンで、ヴォーカルのアネット・クラインバードの初々しい歌声、そしてそのひたむきな歌い方に好感が持てる。
テディ・ベアーズ タミー


③Joni James
 デビー・レイノルズの「タミー」のようにオリジナル・ヴァージョンが完璧と言っていいほど素晴らしいとカヴァーする方は辛い。ましてや同じソロ・女性ヴォーカルというフォーマットでは尚更だ。そんな中で健闘しているのが “アメリカの恋人” ジョニ・ジェイムス。自らの持ち味であるコケットリーな魅力全開で迫るジョニの愛くるしい歌声がたまらない。
Joni James - Tammy


④Beverley Sisters
 “お姉さま声” が主流の女性コーラス・グループ界において “唯一のキュート派コーラス” といえるのが、このベヴァリー・シスターズ。ヴォーカル通から“3人ペット・クラーク” と絶賛されるのも頷ける素晴らしさで、私は一聴してそのドリーミーなコーラス・ハーモニーにハマッてしまった(≧▽≦) デビー・レイノルズで聴き慣れたメロディが、まるで天上の音楽のように優雅に優しく私を包み込んでくれて、寝る前に聴くと心地良い眠りが約束される。夢見心地とはこのことだ。
ベヴァリー・シスターズ


⑤ザ・ピーナッツ
 ザ・ピーナッツ63年のアルバム「ピーナッツのポピュラー・スタンダード」に入っていた名唱で、④のベヴスといい、このザ・ピーナッツといい、この曲は美しいコーラス・ハーモニーで更に映えるように思う。そして当時の日本でこの曲をこれほど見事に歌いこなせるのはザ・ピーナッツをおいて他にはいなかった。宮川先生もその辺のところを十分承知されていたのか妙な小細工をせずに実に自然なアレンジで、ザ・ピーナッツの魅力を存分に引き出していると思う。
タミー
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Ray Bryant Trio

2009-07-23 | Jazz
 私は仲間内でも職場でも大の車好きで知られている。しかし車といっても今話題のエコ・カーやハイブリッド・カーには何の興味もない。高級セダンやワゴン車もNGだ。単なる移動手段としてではなく走りを楽しめなくては意味がない。車会社のキャッチ・コピーではないが、Fun To Drive なのだ。だから私にとってドライヴとは、時代に逆行しているが、スポーツカーでガンガン飛ばすこと、コレしかない。阪奈道路で一般車スラローム(笑)をし、信貴スカのワインディングをひょいひょいとクリアしていくのがストレス解消にピッタリなのだ。今の愛車はRX-7、燃費は驚異のリッター4km(笑)という前時代の遺物に乗ってブイブイいわしている。その前はスプリンター・トレノを改造しまくって(笑)乗っていた。あの頃は “毎日がモナコ・グランプリ” だったなぁ。まぁ友人に言わせると “実に分かりやすい単純な脳ミソの持ち主” らしいが、要するに人生何事も楽しけりゃそれでエエのだ。
 しかしいくらハイスピードでかっ飛ばしていても、そこに音楽が鳴っていないと楽しさも半減する。だから私のドライヴにはノリの良い音楽が欠かせない。当然、自宅のオーディオ・システムの時と同様にカーステにもそれなりの良い音を求めてしまう。カー・オーディオというのは様々な悪条件の下、かなり劣悪な環境で音楽を再生することだと頭で分かってはいても、実際に出てきた音が酷いとかえってイライラしてしまい、ドライヴィングに集中出来ない。高域はまだいくらかゴマカシが効くが、ブーミーな低音だけはどうしようもない。トレノ改に乗っていた時はオシャレなイルミネーションに釣られて(←アホ!)付けたパイオニアのカロッツェリア・シリーズをそれなりに気に入っていたのだが、90年代に入ってジャズも聴くようになるとシステムの最大の弱点であるヘタレな低音が露わになってしまった。ロックやポップスのエレキ・ベースがシンセを始めとする様々な音の中に埋没してしまいがちなのに対し、ジャズのアコースティック・ベースはピアノ・トリオなんかではかなり目立つ重要な役割を果たしており、システムの脆弱さを容赦なく暴き出してしまうのだ。そんなカロッツェリアに引導を渡したピアノ・トリオ盤がこの「レイ・ブライアント・トリオ」である。結局、トレノ改からRX-7への買い替えを機に、カー・オーディオ専門店に車を持ち込んで “このCDのベースがちゃんと鳴るシステムを組んで下さい!” と泣きつき、 “アルパインのプロ・シリーズ+ドアの内張りの徹底防振補強” によってやっと車の中でもマッシヴな低音が楽しめるようになった。
 ということで、このCDは私の重要なオーディオ・チェック盤の1枚なのだが、家で聴いても車で聴いても、まるで地の底から響いてくるかのようにグゥ~ンと下まで伸びた重い音を出すアイク・アイザックスのベースは凄まじいの一言に尽きる。 “ズン、ズン” という響きが何とも腹に心地良く、あしたのジョーではないがまるでスピーカーの前でコークスクリュー・パンチ(←懐かしいっ!)の連打を浴びているような錯覚に陥るのだ。CD1枚聴き終われば立派なアコベ・パンチドランカー(笑)の出来上がりだ。
 なんだか音の話ばかりになってしまったが、この盤は肝心の音楽の方も素晴らしい。特に①「ゴールデン・イヤリングス」は日本人の心の琴線をビンビン震わす哀調曲の極北に位置するといっても過言ではないくらいの大名曲で、1940年代にペギー・リーやダイナ・ショアが切々と歌い上げたジプシー民謡を “モダン・テディ・ウィルソン” の異名をとる名手レイ・ブライアントが歯切れの良いタッチと淡々と綴っていく... その絶妙なテンポ設定といい、哀愁がナンボのモンじゃいとばかりに唸りまくるベースのビッグ・トーンといい、これ以上の名演があったら教えてほしいぐらいだ。
 ①の物哀しさをそのまま引き継いだような②「エンジェル・アイズ」はブライアントのソロ・ピアノ。私はリズムのないソロ・ピアノは嫌いなのだが、この演奏にはいやおうなしに引き込まれてしまう。巧いなぁ... (>_<) ③「ブルース・チェンジズ」は①の哀愁成分を抜き取り、代わりに典雅なフレイヴァーで薄味に仕上げたような感じの品格溢れる曲想を持った曲。④「スプリッティン」はこのアルバム中最も急速調のナンバーで、スペックス・ライトのめくるめくようなブラッシュ・プレイが圧巻だ。それにしてもこのアルバムは実にヴァラエティに富んだ作りになっていて聴いてる者を飽きさせない。
 MJQの大名曲⑤「ジャンゴ」はイントロのボォ~ンというベース音一発が底知れず深い。これはもう①とタイマンを張れるぐらいの哀愁舞い散るキラー・チューンで、LPなら両面の頭にこの2大名曲がそれぞれ配置されていたというからいやはや凄いアルバムだ。続く⑥「ザ・スリル・イズ・ゴーン」はA面の①→②の流れを踏襲するように長~いピアノ・ソロによるイントロの後、おもむろにブラッシュとベースが滑り込んでくる瞬間がたまらない。この緊張と寛ぎの微妙なせめぎ合いがめっちゃスリリングだ。⑦「ダホード」ではテンポを上げてスイングするブライアントのプレイがエエ感じ。この明快なメロディ・ラインこそが彼の大きな魅力だろう。続く⑧「ソーナー」も⑦と同傾向の曲想とプレイで、ブギウギに通じるポロポロと短く切った音でメロディアスにスイングするのが聴いてて実に気持ちがいい。ということで全8曲35分がアッという間に終わってしまう。
 私にオーディオにおける低音の奥深さを教えてくれたこのアルバム、「ゴールデン・イヤリングス」の決定的名ヴァージョンを筆頭に気品溢れる珠玉の名演が並ぶピアノ・トリオ・ジャズの金字塔といえる1枚だ。

GOLDEN EARRINGS Ray Bryant

永遠のギターキッズ LIVE Vol. 2 / 加山雄三

2009-07-22 | エレキ・インスト
 言うまでもなく第一印象というのは重要である。ファースト・コンタクトで間違ったイメージを持ってしまうと、後々までその先入観が邪魔をして真の姿が見えてこない。私の場合、そういった偏見がもとで長いこと加山雄三というアーティストを誤解していた。いや、アーティストどころか、私は数年前(!)まで彼をただのヤニさがったオッサン歌手だと思っていたのだ。それもこれも初めて彼の歌を聞いた時(かなり昔の話だが...)にいきなり極度の嫌悪感を抱いてしまったからだ。その歌とは「君といつまでも」である。例の “二人を 夕闇がぁ~♪” で始まる彼の代表曲だ。あの歌の中の “幸せだなぁ... 僕は死ぬまで君を離さないぞ...云々” という語りの部分がもうブツブツが出るほど嫌いで、あんなキモいセリフを公共の電波に乗せんなよ!とラジオでかかるたびに音を消していたくらいだ。
 そんな先入観が吹き飛んだのが数年前のこと、ベンチャーズにどっぷりハマッて聴きまくっていた時、「EPコレクション」という4枚組CDの中に入っていた「夜空の星」という曲がめちゃくちゃカッコ良く、ライナーの解説を読むと “加山雄三の自作自演曲” とあったのでビックリ(゜o゜) 何であんなオッサンがこんなカッコエエ曲を??? と不思議だった。そのすぐ後、今度はアルバム「ポップス・イン・ジャパン」に入っていた「ブラック・サンド・ビーチ」がカッコエエなぁと思っているとこれまた “加山雄三とランチャーズ” がオリジナルだという。天下のベンチャーズが加山雄三の曲を何曲もカヴァーしているなんて... ここにきて初めて自分がとんでもない誤解をしていたことに気づいた私は慌ててヤフオクで彼のCDをゲット、それでやっと彼が日本のテケテケ黎明期のパイオニアだったということを知った次第。いやはやホントにお恥ずかしい(>_<)
 それ以降、私は加山雄三という名前に対してはリスペクトの念を持って接するようになり、「夜空の星」は私の中で “この曲が入ってるCDは全部買う” レベルの、いわゆるスーパー愛聴曲のリストに加わった。ということでネットで「夜空の星」検索をしていて偶然見つけたのがこの「永遠のギターキッズ LIVE Vol. 2」である。曲目を見ると愛聴曲ばっかりだ。試聴はできなかったけど、このメンツでこの選曲なら悪かろうはずがないという確信を持ってポチッとオーダーした。
 このCDは1999年の東京中野サンプラザホールでのライブ盤で、加山雄三&ハイパーランチャーズが①②⑨⑩⑪の5曲、Dr.K Project が③④の2曲、ノーキー・エドワーズ& Dr.K Project が⑤⑥⑦⑫⑬の5曲、加山雄三&ハイパーランチャーズ with ノーキー・エドワーズが⑧1曲、そして⑭⑮はこの日の出演者全員で演奏している。
 コンサートはデル・シャノンの①「悲しき街角」でスタート、もう1曲目からノリノリである。本家ベンちゃんのカヴァー・ヴァージョンに迫る勢いの疾走感溢れる演奏だ。続く②「ナッティ」はチャイコフスキーの「くるみ割り人形」をベンチャーズが見事にテケテケ化したもので、ELPの「展覧会の絵」に入っている「ナットロッカー」はこのベンちゃんアレンジをアダプトしたものだと思うのだが、加山雄三&ハイパーランチャーズは①に続いて絶好調なプレイを聴かせてくれる。ドラムスがメル・テイラーよりもカール・パーマーしちゃってるのが笑えます...(^.^)
 ③「カンダリバー・ツイスト」はかぐや姫の「神田川」をインスト化したもので、「木の葉の子守唄」なイントロから、現われては消え、消えては現れる珠玉のベンちゃん・フレーズに彩られながら、日本人なら誰でも知っている四畳半フォークの名曲が見事なアレンジ(テケテケテケ~♪が絶妙なタイミングで炸裂!)でエレキ・インスト化されている。これはめちゃくちゃ面白い(^o^)丿 Dr.K Project のリーダー、徳武氏の音楽的センスには脱帽だ。続く④「萌え萌えのテーマ」は徳武氏のオリジナルで、ベンチャーズのエッセンスをギュッと凝縮したような曲想が楽しい。さすがは日本におけるベンチャーズ研究の第一人者である。
 ここからノーキーが加わって再びデル・シャノンの名曲⑤「キープ・サーチン」だ。ベンチャーズがリアルタイムで取り上げていてもおかしくないほど(「ファビュラス・ベンチャーズ」あたりのサウンドにピッタリ!)しっくりくるテケテケ・ヴァージョンに仕上がっている。演奏といい、アレンジといい、こういうのを匠の技というのだろう。我が超愛聴曲⑥「秘密諜報員」は水を得た魚のようなノーキーのプレイに息をのむ。ノーキー + Dr.K の組み合わせは強力にして完璧だ。間髪を入れずに始まる⑦「京都の恋」、いやぁ~この日本的メロディを超絶エレキ・インストで聴ける幸せをどう表現すればいいのだろう?それにしても好きな曲ばかりこうも立て続けに出てくると嬉しくって仕方がない(^o^)丿 名曲名演のつるべ打ちとはこのことだ。
 のどかな感じのするミディアム・テンポの⑧「WANNA BE CHET」は初めて聴く曲だが、それまでの曲に比べると印象が薄くなるのはしゃあないか。加山さんのヴォーカル入り⑨「旅人よ」、⑩「ブーメラン・ベイビー」の2曲ではそれまでのテケテケ路線はすっかり影を潜めて大ナツメロ大会に早変わり。そしてキタッ!!! 日本生まれのテケテケ・スタンダードの大傑作⑪「夜空の星」だ。何回聴いてもエエもんはやっぱりエエなぁ... (≧▽≦)
 続いて再びノーキー + Dr.K の演奏で、泣く子も黙る⑫「十番街の殺人」へと突入、例のイントロからドラムソロ、そしてテケテケテケ... とベンちゃんファンには涙ちょちょぎれる演奏で、2分11秒があっと言う間に過ぎ去っていく。⑬「オレンジ・ブロッサム・スペシャル」は私の知っているスプートニクスの曲とは同名異曲で、いかにもノーキーが好きそうなカントリ・フレイバー溢れるナンバーだ。
 ラスト2曲⑭「お嫁においで」と⑮「ワイプ・アウト」はアンコール・ナンバーで、特に⑮での日米スーパー・ギタリスト総出演による大テケテケ大会はこの素晴らしいコンサートの締めくくりに相応しい夢の饗宴だ。長嶋さんじゃないが “テケテケは永遠に不滅です!” って言いたくなるような楽しさ溢れるライブ盤だと思う。

カンダリバー・ツイスト

I Feel A Song Coming On / Joni James

2009-07-21 | Jazz Vocal
 私の “女性ヴォーカル好き” はジャズ仲間内では有名で、インスト・オンリーよりもむしろヴォーカル入りを好む傾向が強い。人間の声こそ最高の楽器だと思うからだ。それと、ポップスやロックを聴いて育った私は1曲3~4分というリズムが身体に染みついており、一部の例外を除いてどうもインスト長尺曲にはなじめない(というか聴いてるこっちの集中力がもたない...)ので、濃い内容を短くビシッとキメてくれる古いの歌モノが大好きなのだ。
 私の好きな女性ヴォーカリストには2つのタイプがある。小さなクラブでスモール・コンボをバックに歌っているような、ハスキー・ヴォイスで “クールに軽やかに粋にスイング” するジャジー系ヴォーカリストと、古き良きアメリカを想わせるノスタルジックな歌声が心の中にス~ッと染み入ってくるような癒し系ヴォーカリストである。前者はクリス・コナーやアニタ・オデイ、ヘレン・メリルといったジャズ・ヴォーカル・レジェンドからジェニー・エヴァンス、クレア・マーティンといった現役シンガーまで、バックの演奏も含めてとにかくスイングしまくる “ジャズ・ヴォーカルの鏡” のようなディーヴァたちだ。後者はペギー・リー、ドリス・デイ、マーサ・ティルトンといった大御所から最近ではジャネット・サイデルに至るまで、そのナチュラルで素直な唱法に癒されるのだが、このジョニ・ジェイムスもそんな正統派ヴォーカリストの一人といえるだろう。
 彼女は1950年代前半には “アメリカの恋人” といわれ、MGMレコードのドル箱スターだったポピュラー・シンガーである。彼女のアルバムには企画モノが多く、ハワイアン、フレンチ、イタリアン、アイルランド民謡といった世界各国のご当地ソング集、ヴィクター・ヤング、フランク・ロサー、ジェローム・カーン、ハリー・ウォーレン、ガーシュウィンといったコンポーザー・シリーズ、カントリー、ジャズ、ボサノヴァ、ストリングス物といった音楽スタイル別コンセプト・アルバムと、実に幅広いジャンルの歌を歌っている。つまりそれだけの人気と実力を兼ね備えたシンガーだったということだ。又、彼女のアルバム・ジャケットには彼女のイラストが描かれたものと彼女の写真を使ったものがあり、どちらも大変魅力的なのだが、特にイラスト・ジャケの方は50年代という時代の薫りを見事に表現した芸術品レベルのものばかりなので、私は彼女を聴く時は必ずLPジャケットを眺めながらノスタルジーに浸るようにしている。
 今日取り上げた「アイ・フィール・ア・ソング・カミング・オン」は「アフター・アワーズ」、「ジョニ・スウィングス・スウィート」、「ザ・ムード・イズ・スウィンギン」といった “ジョニ、ジャズ・スタンダード・ナンバーを歌う” シリーズの中で最もスイング感に溢れており、選曲から伴奏に至るまで、全部で40枚近く出ている彼女の全アルバム中でも一番気に入っている1枚なのだ。
 歯切れよくスイングするイントロからいきなり全開で飛ばしまくるといった感じの①「ディード・アイ・ドゥ」にまずは圧倒される。ジャズはスイング、それを体現するかのようにジョニも軽快なテンポで歌う。この盤はスタジオ・ライブ形式でA、B面それぞれ6曲ずつを続けてワン・テイクで録っているので、ドラム・ソロから切れ目なく②「ユー・ケイム・ア・ロング・ウェイ・フロム・セントルイス」へと続く。ペギー・リーのブルージーな歌唱で有名なこの曲をミディアム・テンポでサラッと歌っており、2分25秒あたりの捨てゼリフ・パートが面白い。③「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」はボサノヴァ化される前のスロー・バラッド的解釈でしっとりと歌う。彼女のしなやかで優しい唱法にピッタリの曲だ。アルバム・タイトル曲の④「アイ・フィール・ア・ソング・カミング・オン」は一転してアップテンポで疾走するように歌う。⑤「ララバイ・オブ・バードランド」は華麗なピアノのイントロに続いてドラムが加わり、そしてブラスが順に入ってくるあたりに強烈にジャズを感じる。大好きなこのアルバムの中でも特に気に入っているナンバーだ。
 クラリネットをフィーチャーしたスイング・スタイルの⑥「ユー・ドゥ」に続く⑦「オン・ザ・サニーサイド・オブ・ザ・ストリート」はトロンボーンを加えたディキシーランド・スタイルで、ジョニは気持ち良さそうに軽やかに歌っている。⑤と並んで私が気に入っているトラックだ。失速寸前といった超スローテンポで歌い込んだ⑧「マイ・メランコリー・ベイビー」は彼女の愛くるしい歌声がたまらない。控えめなリズム・ギターのサポートも絶妙だ。再びディキシーランド・スタイルに戻って⑨「ベイズン・ストリート・ブルース」、甘いソプラノの彼女がちょっと声をひねって歌うブルースもオツなものだ。
 ジョニが淡々と歌い綴る⑩「アイ・ガット・イット・バッド」ではマイルス降臨といった感じのミュート・トランペットのプレイが聴き所。愛らしい歌声で温か味溢れる⑪「バイ・ザ・ウェイ」はベース主導のイントロとピアノのオブリガートが渋いなぁ。⑩⑪のようにメロディーが薄味の曲でも歌声と演奏で楽しめるのがこの盤の良い所だと思う。ラストの⑫「九月の雨」はこのジャジーで楽しいセッションを締めくくるに相応しいノリノリの歌と演奏で、特にドラムス(クレジットはないが、多分シェリー・マン)が大活躍、 “明るく、楽しく、スインギー!” と三拍子揃った名演だ。
 その優しい人柄がにじみ出たようなジョニ・ジェイムスの歌声は、温か味に溢れ、聴く者の心を癒してくれる。そんな彼女の甘~いヴォーカルとバックを務めるバリバリのジャズメンのピリッと辛いプレイが絶妙に溶け合って生まれた旨口ヴォーカル盤がこのアルバムなのだ。

ジョニ・ジェイムス バードランドの子守唄
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ディア・オールド・ストックホルム / スタン・ゲッツ

2009-07-20 | Standard Songs
 民謡と言うと日本人にとっては「佐渡おけさ」や「ソーラン節」、「おてもやん」といったイメージが先行してしまい誤解を招きかねないが、あれはあくまでも日本の民謡であり、英語でいえば Folk Song、つまり民衆の間で昔から親しまれてきた歌のことを指している。だから外国の民謡と言うのは当然日本のものとは全く違う、そのお国柄を反映したものになる。
 私はジャンルを問わず、哀愁を感じさせてくれるマイナー調の曲が大好きで、このブログでもこれまで「悲しき天使」や「パルナスの歌」(笑)、「素敵なあなた」といった哀愁舞い散るロシア民謡やユダヤ民謡を取り上げてきた。しかしもう一つ、ロシア、ユダヤと並ぶ世界三大民謡(←ウソです!)であるスウェーデンを忘れてはいけない。そんなスウェーデン民謡の中でもダントツに好きな曲がこの「ディア・オールド・ストックホルム」(原題は “Ack Varmeland, Du Skona”)。この曲は51年にテナー・サックスのスタン・ゲッツが取り上げて以来ジャズ・スタンダードとして定着、数々の名演を生み出してきた屈指の名曲で、私の “この曲は全部集めたる!” 癖の第1号となった記念すべきスタンダード・ナンバーなのだ。

①Stan Getz
 “ディア・オールド・ストックホルムの2大名演” といえば、聴く者の魂を震わせる「バド・パウエル・イン・パリ」と、哀愁舞い散るゲッツのこのヴァージョン。零れ落ちるようなピアノのイントロからもう名演の薫りが立ち込めている。テーマとアドリブの境界を全く感じさせずに伸びやかで美しいフレーズを紡ぎ出していくゲッツの歌心溢れるプレイが最高だ。
Dear Old Stocholm


②Miles Davis
 スタン・ゲッツがジャズ界に紹介したこのスウェーデン民謡をカッコ良いモダン・ジャズに仕立て上げたのが当時最高のジャズ・コンボの一つだったマイルス・デイビス・クインテット。特に前半のフィリー・ジョーのブラッシュ・ソロはカッコ良すぎてもう鳥肌モノ。KYなコルトレーンを自らの引き立て役として活用したマイルスの繊細なソロが絶品だ。
Miles Davis - Dear Old Stockholm


③Donald Byrd
 ②が世に出て以降、この曲を演奏するジャズメンは大なり小なりアレンジ面でマイルス・ヴァージョンの影響を受けているように思うのだが、ドナルド・バードのこのパリ・オリンピアでのライブもその傾向が強い。特にダグ・ワトキンスの力強いベース・ソロが聴き所。ボビー・ジャスパーが奏でるテナーの音色は低音の魅力が横溢だ。
Donald Byrd - Dear Old Stockholm (Short Version)


④西条孝之助
 スタン・ゲッツをリスペクトする西条孝之助の2004年赤坂bフラットでのライブ。プレイの端々にゲッツからのダイレクトな影響を感じさせるフレーズが多発するが、そこが逆にこの人の良いところ。ゲッツの初演から半世紀を過ぎ、遠く離れたこの日本で淡々と “ストックホルム” を演奏する西条の心に去来するものは何なのだろう?
Dear Old Stockholm@西条孝之助


⑤Monica Zetterlund
 スウェーデンを代表する№1美人歌手モニカ・ゼタールンドがスウェーデン語でスウェーデン民謡のこの曲を歌うという、もうこれ以上は考えられない “究極のストックホルム”。 彼女の歌唱からは言葉の壁を越えて伝わってくるモノがありゾクゾクさせられる。この曲のヴォーカル・ヴァージョンは非常にレアで、私はモニカしか知らない。
Monica Zetterlund - Ack Varmeland, Du Skorna
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Honky Tonkin' The Beatles

2009-07-19 | Beatles Tribute
 “ホンキー・トンク” という言葉を聞いて、私も含め普通のロック/ポップス・ファンが思い浮かべるのは多分ストーンズの「ホンキー・トンク・ウイメン」だろう。しかし“ホンキー・トンク” ってどーゆー意味?って訊かれると答えに詰まるのではないだろうか?私も “ラグタイムやブギウギを崩したようなピアノ奏法” という大雑把なイメージしかなかったので色々調べてみると、元々は20世紀初頭のアメリカ南部にあった、ビヤ樽が設置された安酒場(バレルハウス)のことで、そこは人々がビールを飲んで音楽に合わせて踊るための騒々しい場所だった。それがいつからか、そんな酒場で騒音に負けないようにラウドに演奏されていた音楽の事を指すようになったらしい。当初はカントリー色の濃い演奏スタイルだったが音量を上げるために通電した楽器を使うようになり、今では “ロックンロール色の濃いカントリー・ミュージック” みたいな感じのサウンドを総称して “ホンキートンク” と言うらしい。そう考えると先のストーンズ「ホンキー・トンク・ウイメン」の演奏スタイルも何となくわかるような気がしてくる。
 この「ホンキー・トンキン・ザ・ビートルズ」はUSアマゾンをブラウズしていて偶然見つけた。 “ホンキー・トンク版ビートルズ” って... 本気かいな?試聴してみるとカントリー風あり、サザンロック風ありで面白そうだ。ただしVARIOUS ARTISTS というのは看板に偽りアリで、全10曲をザ・ドランク・カウボーイ・バンドというふざけた、でも“ホンキー・トンク” を見事に言い表した名前のグループが演奏しているのだが、音楽さえ素晴らしければ別に嘘つきでも酔っ払いでも構わない。
 CDの表、裏、中ジャケすべてに描かれているカウボーイ・ハットをかぶったグリ-ン・ペッパー(しかも影つき)のロゴがいかにも南部しているし、見開きで載っている “ドランク・カウボーイ・レコード” の宣伝もめちゃくちゃローカル色豊か。更にレコーディングもマスタリングもすべてテネシー州ナッシュビル、もうそれだけで音が聞こえてきそうな気がする。
 いきなりペダル・スティール・ギターのカントリーちっくなイントロで始まる①「アイ・フィール・ファイン」は、イーグルスのグレン・フライが風邪を引いて鼻声になったようなヴォーカルがバックのテイクイットイージーなサウンドとピッタリ合っていて中々エエ感じ。 “I’m so glad...” でハモるコーラス・ハーモニーもニューキッドインタウンしており、70年代初期のイーグルスがビートルズをカヴァーしていたら恐らくこんなサウンドになってたんやろなぁと思うと中々楽しい(^o^)丿 ②「チケット・トゥ・ライド」は①とは別人のあまり特徴のないヴォーカリストが歌っており、前半はアレンジも平凡で何の面白味もないのだが、“My baby don’t care...” のリフレインが始まる2分45秒あたりからカントリー・フレイヴァー溢れる盛り上がり方で、これでこそホンキー・トンキン・ビートルズだ。③「デイ・トリッパー」、④「ドライヴ・マイ・カー」と②と同じ平凡な歌声のシンガーがヴォーカルを取っているがアレンジにも演奏にも目を見張るような工夫がなく、これならわざわざカヴァーを聴く意味がない。しっかりせえよ(>_<)
 ⑤「エイト・デイズ・ア・ウィーク」は初登場の女性ヴォーカルだ。いかにもテンガロン・ハットにジーンズ姿が似合いそうなこの女性シンガー、声も歌い方も曲想にバッチリ合っていて③④で感じた失望を一気に打ち消してくれる。バックの演奏も適度にレイドバックしたサザンロックでめっちゃ快適だ。⑥「マネー」はストレートなアレンジだが、フィドルが巧く取り入れられていたりとか、いかにもホンキー・トンクという感じのピアノの弾み方とか、他ではあまり聞けないユニークな解釈だ。
 ⑦「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」はアレンジをあまりいじらずに元々この曲が持っているノリの良さを上手く活かしたのが大正解。 “カントリー・ロックで聴くビートルズ” のお手本のような軽快でスピード感溢れる演奏が素晴らしい。⑧「ア・ハード・デイズ・ナイト」は③④と同じく可もなし不可もなしという演奏。⑨「キャント・バイ・ミー・ラヴ」は⑤と同じ女性シンガーが再登場、演奏もノリノリで、1分9秒で聞ける彼女の “No, no!!!” の掛け声とともにギター・ソロが始まるところなんか音楽の楽しさがダイレクトに伝わってくる(^.^) ラストの⑩「ホワイ・ドント・ウィー・ドゥー・イット・イン・ザ・ロード」は意外な選曲だが、気持ちの重心を下げてブルージーに迫るバックの演奏はまさにサザンロックの王道と言えるサウンドだ。例えるなら、リトル・フィートの「ダウン・オン・ザ・ファーム」をストーンズの「イッツ・オンリー・ロックンロール」の精神でなぎ倒し、その顔面にアランナ・マイルズの「ブラック・ベルベット」をまぶしたような感じ。男性ヴォーカルと女性ヴォーカルが交互にリードを取る掛け合い形式の構成もユニークで、そういった要素が混然一体となって生み出されるグルーヴがたまらない(≧▽≦) 
 カントリーありサザンロックありブルースありと手を変え品を変えアメリカン・ル-ツ・ミュージックの粋を凝らしてビートルズの楽曲を料理したこのアルバム、あれこれ難しいことを考えずに気軽に聞けるビートルズ・カヴァー集だ。
 
エイト・デイズ・ア・ウィーク

Beatles Uke / Greg Hawkes

2009-07-18 | Beatles Tribute
 以前にも書いたことがあるが、新聞、テレビ、雑誌の類を見ない私は非常に情報に疎い。新譜情報から来日情報、訃報に至るまで、何か余程の偶然が重ならない限り他人様よりも確実に後れを取っている。まぁそれで死ぬわけじゃなし、と半ば諦めているのだが、音楽中心生活で新譜情報に疎いのは辛い。まぁビートルズやレッド・ゼッペリン級のビッグ・アーティストになれば放っておいてもアマゾンやHMVのトップ・ページを飾ってくれるので安心なのだが、問題なのは私が追い求めている “面白ビートルズ・カヴァー” 盤である。こういった超マイナー盤はトップ・ページはおろか活字にすらならないことが多い。そこで私は去年あたりからアマゾン・ジャパン、アマゾンUS、HMV、そしてヤフオクで定期的に “ビートルズ・カヴァー・サーチ” を実行している。何のことはない、ただ検索BOXに “Beatles” と打ち込んでサーチするだけなのだが、これが結構うまい具合に機能して、例の “この商品を買った人はこんな商品も買っています” と併用すればほぼ無敵(笑)、これまで掘り出し物を何枚も見つけることが出来たのだ。この「THE BEATLES UKE」も最新の検索で網に引っ掛かってきた1枚である。
 THE BEATLES UKE??? 何じゃそれはぁ~、と思われた方も多いだろう。 UKE とは “ユーケー” でもなければ “ウケ” でもなく、 “ウキ” と読む。英語でウクレレの愛称のことである。ビートルズとウクレレと言えば日本制作のアホバカ盤「ウクレレ・ビートルズ」が脳裏をよぎり不吉な予感がしたが、サイトで試聴してみるとこれがもう文字通りウキウキするような演奏だったので早速オーダーした。
 届いたCDの裏ジャケットに写っている人物にはどこか見覚えがあるぞ... グレッグ・ホークスって、もしや... いやそんなバカな... と思って恐る恐る英文を読むと “ザ・カーズの音の魔術師が複数のウクレレとスタジオ・テクノロジーを駆使してビートルズ・クラシックスの数々のめくるめく新解釈の世界を生み出しています” とある。やっぱり... カーズでシンセサイザーを担当し、その近未来ポップンロール・サウンドの立役者だったと言っていい人だ。キーボードを弾いてる姿しか思い浮かばないのだが、そんな彼がウクレレでビートルズを弾いているとは... 期待に胸が高鳴る(^.^)
 曲目を見てまず思ったのは青の時代(後期)の曲が15曲中11曲と圧倒的に多いこと。何かワケがあるのだろうか?①「ペニー・レイン」は素朴なウクレレの持ち味をストレートに表現した演奏だが、ラスト5秒のテープ逆回転のようなサイケなサウンドは何なのだろう?何かワカランけど、最後の最後でゾクゾクッときてしまった(>_<) ②「アンド・アイ・ラヴ・ハー」は原曲がアコースティックな作りだっただけあって殆ど違和感を感じずにスムーズに聴ける。③「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」、ウクレレの歪んだような音色がサイケな薫りを増幅させる。特に後半部の音作りには目も眩む。こんなに凝りまくった “イチゴ畑” カヴァー聞いたことないわ... (゜o゜) ④「ヒア・カムズ・ザ・サン」は②と同様にアコースティックな原曲に忠実なアレンジがなされていて心にすんなり入ってくる。それにしてもウクレレだけでこんなサウンドよう作るなぁ...(^.^)
 ⑤「エリナー・リグビー」、コレめっちゃカッコイイ!!!!! メロディーを爪弾くリード・ウクレレ(?)も正確無比にリズムを刻み続けるリズム・ウクレレ(?)も全てが完璧だ。この曲はなぜかカヴァーの名演が多発するのだが、このヴァージョンはそんな中でもかなり上位にランクされるべき素晴しい演奏だと思う。⑥「ビーング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト」はある意味このアルバム中一番ビックリしたというか感心したというか、とにかく当時のスタジオ技術の粋を集めたあのペパーズ・サウンドをウクレレを駆使することによって再現しているのだ。とくにサーカスの効果音のくだりには唖然とする。グレッグはライナーの中でウクレレを何本も使ってマルチトラックで録音するこの方法を “ウキシンフォニック・スタイル” と呼んでいるが、まさにこれはウクレレ・オーケストラと言っていい音作りだ。
 珠玉のメロディーを淡々と綴っていく⑦「フール・オン・ザ・ヒル」、まるでオモチャの潜水艦といった風情の⑧「イエロー・サブマリン」に続く⑨「ピッギーズ」はマルチトラックで響きわたるウクレレのユニゾンがめちゃくちゃカッコ良い、予想外の大名演!正直ウクレレがこの曲にこんなに合うとは思わなんだ。エンディングのブタの鳴き声にもワロタ(^o^)丿 ⑩「シーズ・リーヴィング・ホーム」では何と言ってもジョンとポールがハモるパートやバックのストリングスまでウクレレで再現しているところがニクイ。あのイントロもウクレレにピッタリやし、この人、相当なビートルマニアやね(≧▽≦) 
 ⑪「ハニー・パイ」はウクレレならではの軽妙洒脱な味わいが絶品だし、⑫「フォー・ユー・ブルー」もビートルズ好きには堪えられないアレンジで、何本ものウクレレを駆使して紡ぎ出されるサウンドが圧巻だ。ある意味選曲の勝利と言ってもいいかもしれない。⑬「イエスタデイ」は奇をてらわないシンプルな演奏が好感度大。ホンマに音楽を知り尽くした人やということがよ~く分かる。⑭「ブルー・ジェイ・ウェイ」はストレートに旋律を弾きながらも随所で炸裂するサイケな音作りが嬉しい。ラストの⑮「グッドナイト」はシメに相応しい素朴な演奏で、それぞれ違った音色を奏でる何本ものウクレレが絡み合う様はもう見事という他ない。
 何度も槍玉にあげて申し訳ないが、どこぞの国の「ウクレレ・ビートルズ」なんか足元にも及ばないくらい素晴らしいこのアルバム、真のビートルズ好きに自信を持ってオススメしたい1枚だ。

Greg Hawkes' Eleanor Rigby
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Carpenters In Bossa

2009-07-17 | Cover Songs
 私は何らかのきっかけで曲のメロディーの断片が急に頭の中で鳴り出したりすることがよくある。この前も街でランドセルを背負った半ズボンの小学生を見かけ、あっ、アンガスや!と思った瞬間、AC/DC の「シェイク・ユア・ファウンデイション」が頭の中で鳴り始め、車を運転しながら知らぬうちにヘッドバンギングしてたりとか(笑)、それがいつの間にかB'zの「リアル・シング・シェイクス」へと脳内メドレーしてたりとか、そんな感じでどんどん “音楽数珠つなぎ的妄想” が広がっていった。そして家に帰るとB'zの新曲「DIVE」をYouTube で聴き、“このグルーヴ、やっぱりウォーク・ドント・ランしてるなぁ...” と感心していると無性にベンチャーズが聴きたくなり、今度はベンちゃんの「夜空の星」を聴いて “そーいえばこの曲、確かキャンディーズの蔵前ライブに入っとったなぁ...” となってキャンディーズを聴く。 “う~ん、やっぱり女性3人っていうのが見た目一番映えるよなぁ... オールディーズのガール・グループも3人組が多いし、シスターズもそうやし... せや、久しぶりにアンドリュース・シスターズでも聴こっと(^.^)” と、そういう感じなのだ。まぁ節操がないというか、行き当たりばったりというか、もうムチャクチャである。要するに私の音楽の聴き方はいわゆる “芋づる式” というやつなのだろう。
 このブログにも同じことが言え、自分がたまたまその時の気分や思いつきで取り上げた曲やアーティストのつながりでどんどん世界が広がっていき、小さなマイ・ブーム状態になることが多々ある。数日前にコニー・フランシスが子供達と歌う「ビキニスタイルのお嬢さん」を取り上げ、それを聴いて「シング」を思い出し “カーペンターズ聴きたいっ!” という衝動に駆られ、“ついでにカヴァーも聴こ(^.^)” となった結果が昨日の浪花可憐であり、今日の「カーペンターズ・イン・ボッサ」(←クリックすると全曲フル・ヴァージョン試聴できるサイトへ飛びます!)というわけだ。
 このCDはマルセラをフィーチャーした一連の「ミルク・ボッサ」シリーズ 、それにビートルズやマイケル・ジャクソン、エルヴィス・プレスリーにフランク・シナトラといった超大物アーティストの楽曲をボッサ化した「イン・ボッサ」シリーズで有名なロベルト・メネスカル・ファミリーの “アルバトロス・ミュージック” レーベルからリリースされた “カーペンターズのユルユル・ボッサ集” なのだ。
 全体の構成としては男性シンガー2人、女性シンガー2人の計4人で14曲を歌うというコンピレーション・アルバムになっており、どこをどう聴いても女性シンガー2人の方が出来が良い。カーペンターズの曲というのはあのカレンの歌声で刷り込みがなされてしまっているので、どうしても “男性ヴォーカルで聴くカーペンターズ曲” には違和感を感じてしまう。
 まず①「トップ・オブ・ザ・ワールド」、②「イエスタデイ・ワンス・モア」、③「スーパースター」、④「チケット・トゥ・ライド」(涙の乗車券)と続く冒頭の4曲がタリン・スピウマンという女性シンガーだ。特にジャジーな雰囲気も湛えながら軽快なテンポで歌う①が良い。オリジナルに忠実なアレンジの②に対し、スローな原曲をボッサのリズムに乗せて高速化した掟破りの③④も面白い。彼女の投げやりな歌い方はユニークなスタイルだが、ハマるとクセになりそうだ。
 ⑤「レイニー・デイズ・アンド・マンデーズ」(雨の日と月曜日は)、⑦「クロース・トゥ・ユー」(遙かなる影)、⑧「ディス・マスカレード」はペリー・ヒベイロ、⑥「イッツ・ゴーイング・トゥ・テイク・サム・タイム」(小さな愛の願い)、⑩「プリーズ・ミスター・ポストマン」、⑫「ウィーヴ・オンリー・ジャスト・ビガン」(愛のプレリュード)はボブ・トステスという男性シンガーが歌っており、特に⑩⑫は女性ヴォーカルと交互に出てくるのでアルバムとしての統一感が感じられない。私はパソコンで曲順を自分用に編集して聴いている。
 そして “アルバトロス・ミュージック” と言えばやはりこの人、マルセラ・マンガベイラ姫である。この盤では⑨「グッバイ・トゥ・ラヴ」(愛にさよならを)、⑪「アイ・ニード・トゥ・ビー・イン・ラヴ」(青春の輝き)、⑬「ハーティング・イーチ・アザー」、⑭「シング」の4曲を歌っているがもう全曲彼女に歌ってもらいたかったぐらいの素晴らしい歌声だ。⑭は「ミルク・ボッサ・プレゼンツ・マルセラ」で既に聞いたことがあったが、残りの3曲はこの盤にしか入っていない。⑨は原曲の印象はやや弱かったのだが、マルセラ姫によって見事に換骨堕胎され美しいボッサに早変わり、その絶妙な脱力具合いがたまらない(≧▽≦) ⑪はカーペンターズ屈指の名バラッドで私の超愛聴曲なのだが、さすがは姫、こちらもお色直しをすませ実に快適なボッサへと変身している。素晴らしいの一言に尽きる名演だ。⑬は逆に原曲をややスロー化して癒しの要素が大きくアップ、曲によってテンポを変えて彼女の魅力を引き出す変幻自在のアレンジがなされている。私にとってこのアルバムは、大好きなカーペンターズの楽曲を大好きなマルセラ姫の癒し系ボッサ・ヴァージョンで聴けるだけでも貴重な1枚なのだ。

アイ・ニード・トゥ・ビー・イン・ラヴ