shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Hours Of Darkness (14CD BOX) / The Beatles

2023-01-29 | The Beatles
 私は毎年1月30日の “ルーフトップ記念日” が近づくとゲット・バック・セッション関連の音源を聴きまくる。映像に関しては今年は映画「Get Back」のブルーレイという極めつけのアイテムがあるので問題ないが、レコード/CDではここのところ「Sweet Apple Trax」や「River Rhine Tapes」、それにグリン・ジョンズ版「Get Back」ばかり聴いていて少しマンネリ気味だった。ところが先月 Empress Valley から出ている「Hours Of Darkness」というボックス・セットを首尾よく手に入れた。これが何とCD14枚組で、トータル15時間422曲収録という凄いヴォリュームなんである。
 このボックス・セットは長尺なゲット・バック・セッション音源を “スペクター効果排除ミックス” “トゥイッケナム・スタジオ・リハーサル” “アップル・スタジオ・リハーサル” “アコースティック・デモ” “インプロヴィゼーション主体のジャム・セッション” “オールディーズ・カバー” “ルーフトップ・コンサート” といったコンセプト別に、それぞれのハイライト、つまり聴きどころを上手くまとめてあるのが大きな特徴だ。この「Hours Of Darkness」、ヤフオクでUSBに入れられて売られているのを以前に見たことがあるが、おそらくこれはそれを音盤化したものだろう。ネット上に転がっている音源に帯やら紙ジャケやらといった無駄で大仰な装飾を施してプレスCD化し、アブク銭を稼ぐというエンプレス・バレイらしいアイテムだが、色々とゲット・バック関連のブートレッグを買い揃えて音源がダブりまくるよりは、このボックス一つで済ませる方がずっとお財布にやさしいだろう。
 私はこれを PayPayフリマというサイトで手に入れた。出品価格5,980円のところをワケのわからんクーポンと勝手に貯まってたポイントを使ってほぼタダ同然で手に入れることが出来て何か得した気分。スマホを滅多に使わない私にとっては購入手続きがめっちゃ難しかったし、ヤフーのログイン設定を無理やりスマホ認証に変えさせられたりで(←いちいちスマホを取り出すのがめっちゃ鬱陶しいので支払いが済んでからすぐに元に戻したけど...)面倒くさいことだらけだったが、使い道の無かったペイペイポイントを使って 6,000円近くも浮くのはめちゃくちゃデカい。このボックス・セットの定価がいくらだったのかは知らないが(←どーせナナキュッパぐらいやろ...)、とにかく安く手に入れるに越したことはない。
 念のために内容を列挙しておくと、
Disc 1:The De-Spector-ed Edition of the Let It Be Album
Disc 2:The Best of the Twickenham Studio Rehearsals
Disc 3:The Best of the Apple Studio Sessions
Disc 4:The Best of the Rest of the Let It Be Sessions
Disc 5:Acoustic and Demo Performances from the Let It Be Sessions
Disc 6:Famous and Infamous Let It Be Improvisations
Disc 7:More Non-Album Highlights of the Let It Be Sessions
Disc 8: More Outtake Highlights of Songs Destined For the Let It Be Album
Disc 9:The Beatles Cover The Beatles, and Other Highlights
Disc 10:More Highlights of the Beatles Covering the Oldies.
Disc 11::A Spoken Word Documentary of the Let It Be Sessions (Part One)
Disc 12:A Spoken Word Documentary of the Let It Be Sessions (Part Two)
Disc 13:SILVER APPLES. The De-Spector-ed Special Edition of the Let It Be Album
Disc 14:AERIAL BALLET. More Mixes of the Rooftop Concert.
となっている。
 それぞれのディスクはテーマ別でうまく編集してあって「ゲット・バック・セッション」を手軽に楽しむのにはぴったりのブツだと思うが、1つだけ気になったのはディスク1の「The De-Spector-ed Edition of the Let It Be Album」とディスク13の「SILVER APPLES. The De-Spector-ed Special Edition of the Let It Be Album」の一体どこが違うねん... ということ。どちらも De-Spector-ed、つまり“非・スペクター化”された「Let It Be」のアルバムということで、例のエコーやらコーラスやらオーケストラやらを取り除いてあるのだろうが、ディスク13のSILVER APPLES っていうのが何のことだかよく分からないし、Specialというのも一体どこが特別なのか何の記載も無い。ということでまず最初に “ブートレガーが作ったネイキッド” とでも言うべきこの2枚を聴き比べてみた。
 ディスク1の方は文字通りスペクターが施した余計な装飾がモノの見事に取り除かれており、モヤが晴れたようなスッキリした印象だ。そのおかげで音楽全体の躍動感がアップし、特に「Across The Universe」なんかジョンの声が近くて超気持ちイイし、ルーフトップで演奏された4曲なんかもスペクター版よりもロックンロール色が強まって聞こえ、当初ビートルズが目指していたゴールに近い仕上がりになっているように思う。うん、コレは気に入った。
 ディスク13の方は最初のうちは一体どこが違うのかよくわからなかったが、3曲目の「Across The Universe」を聴いてビックリ。女性コーラスがカットされているのは同じなのだが、何とエンディング・パートに過剰なリヴァーヴがかけられており、気持ち悪いったらないのだ。例えるなら最高の食材にクソ不味いソースをドバドバかけて料理を台無しにする三流シェフみたいなものだ。一体これのどこが “スペシャル” だというのか? ビートルズの音源で遊ぶな!
 思わず怒りの展開になってしまったが、それ以外のトラックでは「The Long And Winding Road」や「Get Back」が違うテイクを採用してたりとか、「Dig It」がオリジナルよりも遥かに長い4分のロング・ヴァージョンになっていたりとか(←これは大正解!)、曲順がオリジナルとは異なっていたりとかぐらいが目立つ違いで、特に大きなやらかしは無かったように思う。とにかく詳しい解説が無いのでこのディスクの存在意義自体がイマイチよくわからないが、まぁそれはそれとして、上記のキモい「Across The Universe」以外は気持ちよく聴けたし、音質は文句ナシに良いので、この14枚組ボックスは良い買い物だった(←実質タダやけど...)と思っている。みなさんもそれぞれ思い思いのやり方で「ルーフトップの日」を楽しんで下さいませ。

Salsa Inglesa / El Combo 5

2023-01-22 | Beatles Tribute
 ビートルズのペルー盤を漁っていて面白い物を見つけた。それがこの「Salsa Inglesa」というレコードで、eBay で“Beatles Peru” で検索していたら網に引っかかってきたのだ。これは El Combo 5 というグループが全曲サルサでビートルズをカバーするという暴挙(笑)をレコード化したアルバムで、ジャケットはありきたりなアビーロード・パロディ系(←メンバーが手に持ったマラカスや売り子のニーチャン、ヤシの木など、南米にしては芸が細かい...)なのだが、ちょうど商品説明欄に試聴用オーディオ・クリップが貼ってあったので試しに聴いてみるとこれが結構面白い。あの「All You Need Is Love」がラテンのノリでノーテンキなサルサ・ナンバーに作り変えられていたのだ。
Necesito amor - El Combo 5

 このレコードって結構マイナーな存在らしく、ネット上をくまなく探しても他のトラックの音源は見つからなかったのだが、原曲はみんなビートルズだから(←タイトルがスペイン語で書いてあるのでよくはわからないが多分そうだろう...)安心安全だし、クラシックや前衛音楽でもない限りハズレはなかろうと思ってミズテン買いを決意。結局2人のライバルをアウトビッドして $31で手に入れた。どの口が言うねん!と言われそうだが、こんな怪しいレコードでも狙ってるライバルがいたのには驚きだ。
 落札してからレコードが届くまでの間に色々調べてみたところ、このEl Combo 5 というグループに関する情報は得られなかったが、このアルバムに関しては少しだけわかってきた。まず1989年にペルーで「Latin Road」というタイトルで出たのがオリジナルで、翌1990年にはメキシコで「Salsa Inglesa」というタイトルに変えられて Musart レーベルからリリースされ、更にコロンビアでも発売されたようだが詳細は不明だ。因みに過去15年間のeBayのデータによるとメキシコ盤が圧倒的に多く落札されており(14枚)、ペルー盤(2枚)コロンビア盤(3枚)はめっちゃレアなようだ。私が手に入れたのも当然メキシコ盤だが、試聴した限りでは盤質がめっちゃ良さそうだったので届くのがすご~く楽しみだった。
 メキシコからレコードを買うのはホンマに久しぶりなのだが、約1ヶ月かけてようやく到着。早速盤面をチェックしたら、キズは無さそうだけど指紋がベタベタ付いていたので丁寧に洗浄してから盤に針を落とす。サルサということでラテン・フレーバーの強い演奏をある程度予想はしていたが、いきなり高速化されたA①「Girl」がスピーカーから飛び出してくると笑えてくる。原曲を換骨奪胎してイケイケのサルサに生まれ変わった「Girl」は、まるで由緒正しい名家の令嬢に無理やり酒を飲ませて酔っぱらわせ、リオのカーニバルに連れて行ってで踊らせたかのような面白さ。間奏のピアノ・ソロもノリノリだ(笑) こんなはっちゃけた「Girl」はちょっと他では聴けないだろう。
 コンガが乱舞するA②「Something」もめっちゃファンキーで、ラテンのノリでグイグイ迫ってくる。今まで色んなビートルズ・カバーを聴いてきたが、こんなパーカッシヴな「Something」は初めてだ(笑) アドリブのコール&レスポンス・パートで「A Hard Day's Night」や「In My Life」、「If I Fell」に「Yesterday」と、色んなビートルズ・ナンバーのメロディーの断片が絶妙に織り込まれているところにも唸ってしまう。“Something in the way... she loves you yeah yeah yeah~♪” と「She Loves You」までブッ込んでくるアレンジャーのビートルズ愛が最高だ。
 A③「Lucy In The Sky With Diamonds」もサイケのサの字も感じられないラテン・ナンバーに早変わり。アレコレ考えずにアタマの中を空っぽにして聴くといいかもしれない。A④「All You Need Is Love」は私が試聴して買いを決めたトラックだが、やっぱりコレめっちゃ好きやわ。A⑤「Here There And Everywhere」もこれしかない!という絶妙なスピードにまで高速化されており、このあたりにもアレンジャーの音楽的なセンスが光っている。敢えてスローなナンバーばかりをチョイスしてサルサに仕上げているのは自信の表れなのかもしれない。
 B①「Fool On The Hill」あたりまでくると何となくアレンジの癖が分かってきて、おぉやっぱりそうきたか... という感じ。基本的には典型的なラテンのノリのワン・パターンで攻めてくるので、聴く人によってはそろそろ飽きてくる頃かもしれないが、そういう意味ではこのアルバムは2~3曲つまみ食い的に聴くのが極意と言えるかも。B②「A Day In The Life」はまずその攻めた選曲に驚かされるが、テンポやリズム・パターンのアレンジに工夫が凝らしてあり、聴いてて中々楽しめるトラックに仕上がっている。
 しかし好事魔多しというべきか、続くB③にビートルズとは何の関係もないボビー・ゴールズボロの「Honey」が入っているのだが(←関係ありましたっけ?)、これが長尺でしかもつまらないときているから困ったものだ。折角ここまでエエ感じできたのに、なぜこんなしょーもない曲を入れたのか理解に苦しむ。B④は再びビートルズに戻って「Till There Was You」なのだが、それまでのトラックとは違ってスロー・テンポで淡々と演奏されており、何かちょっと拍子抜けしてしまう。B②まで快調に飛ばしてきただけに、余計にB③④の失速感というか尻すぼみ感が強調されてしまっているのだ。
 とまぁこのようにラスト2曲は大ハズレだったが、A面とB面前半だけでも十分元は取れたので良しとするか...

「White Album」ペルー盤

2023-01-15 | The Beatles
 私は苦労して手に入れた垂涎盤がネット・オークションに出ているのを見つけると、ビッドするわけでもないのにウォッチして最終結果を見たくなる。そのレコードに対する最新の世間の評価がわかって興味深いというのもあるが、やはり一番の理由は自分の購入価格と比べて高く落札されれば得した気分になり、安く落札されれば悔しがるという、卑しいコレクター根性によるところが大きい。
 つい先日もヤフオクで東京の ELLA RECORDS というお店(ID:vintageking2005)から大量にビートルズのペルー盤が出品され、“おぉ、これは凄いやん... ペルー盤って今の日本でどれくらい人気あるんかいっぺん見たろ...” と思って14枚すべて(!)ウォッチしてみた。結果は私の想像を遥かに超える激戦で、ペルー盤人気をまざまざと見せつけられた。落札価格が高い順に列挙すると;
 White Album(50,930円、入札57、8人)
 Revolver(24,200円、入札36、7人)
 Let It Be(23,650円、入札35、5人)
 Sgt. Pepper's(23,100円、入札24、7人)
 Magical Mystery Tour(19,679円、入札27、8人)
 Beatles For Sale(16,500円、入札18、8人)
 Hey Jude(16,060円、入札18、6人)
 Abbey Road(15,950円、入札11、6人)
 Help! (14,850円、入札22、5人)
 Let It Be(14,190円、入札18、7人)
 Yellow Submarine(13,200円、入札8、5人)
 Hey Jude(12,210円、入札15、5人)
 Please Please Me(12,100円、入札12、8人)
 Rock 'n' Roll Music(11,550円、入札14、4人)
という具合。へぇ~、ペルー盤探してるコレクターって意外とおるんやなぁ... と驚かされたが、中でも突出した落札額になった超激戦盤が「White Album」(←“マトほぼ1” って何やねん... ちゃんと書けや...)だった。たまたまヒマだった私はその一部始終をライヴで見学させていただいたのだが、ハッキリ言って自分が参戦しないオークションほど気楽なモノは無い。それはまさにドッグ・ファイトと呼ぶに相応しい延長に次ぐ延長戦で、決着がついたのが終了予定時刻から約40分後という壮絶な闘いだったが、いくら何でもペルー盤に5万円って... UKのアーリー・プレス盤が買えますやんwww
 しかしかく言う私も一歩間違えばここに参戦を余儀なくされていたかもしれないのだ。実際、ビートルズのペルー盤蒐集で私が最後の最後まで苦労したのが他ならぬ「White Album」で、1年以上探しまくったにもかかわらず、滅多に市場に出てこなかったし、やっと出てきたかと思えば送料込みで5万円とか人をバカにしたような値付けで手も足も出ない。どうしたものかと考える日々が続いたある日のこと、妙案を1つ思いついた。ネット・オークションがダメなら現地のセラーに直接探してもらえばいいのだ。幸いなことに、以前ウルグアイ盤を買いまくっていた時に仲良くなったセラーが南米に何人かいるので彼らに訊いてみることにした。
 まずは一番親しいウルグアイのダニエルさん(←去年「Band On The Run」のボリビア盤を買ったセラー)にメールして “「White Album」のペルー盤を探してるんですけど、ないですか?” と尋ねると“商品としては無いけど、私個人のコレクションとして持ってるよ。shiotchさんなら売ってあげてもいいけど...” という返事。“もちろん買いたいけど、いくらぐらいで売ってくれるの?” と恐る恐る訊くと “音が良いんでちょっと高いよ... $120 でどう?” と言ってきたので内心ガッツポーズしながら “Deal!(買った!)” でペルーの「ホワイト」があっけなく我が手中に落ちたというワケだ。まだ$1=120円ぐらいの頃だったので(←最近円が127円台まで戻してきたの、めっちゃ嬉しい... もうひと踏ん張りして110円台まで戻してくれぇ!!!)、送料込みでも2万円でお釣りがくる計算だ。半年後に日本のネット・オークションでその3倍以上の値段で落札されたと知ったら腰を抜かすほどビックリするやろなぁ...
 で、私が手に入れたペルー盤の「White Album」だが、ダニエルさんの保管状態が良かったらしく、実に良いコンディションだ。興味深かったのはディスク1がUKマザーのマト -1/-1 で、ディスク2が独自マトということ。その独自マトの盤に関して言うと、音圧は普通ながら倍音が実によく聞こえるし、ちょっとヴォリュームを上げれば「Everybody's Got Something To Hide...」や「Helete Skelter」なんかもう凄まじい美爆音で鳴り響く。音質的には大満足だ。
 ただ、一つ残念だったのは「Good Night」が2:35あたりでシレッとフェイド・アウトしてしまうこと。初めて聴いた時は一瞬真空管が逝ってしまったのかと肝を冷やしたものだ。気持ち良~く聴いてきた「White Album」の最後の最後で「Good Night」が盛り上がる前に終わってしまうガッカリ感を想像してくれい! デリカシーの欠如にも程があるというものだろう。「Good Night」を中途半端にフェイド・アウトするぐらいなら、その前の「Revolution 9」を一部編集して短くするか(→どうせムチャクチャなんやからテキトーに切り貼りしても聴いてる方は気付かんやろ...笑)いっそのこと丸ごとカットすればよかったのにと思ってしまう。まぁ各国盤のこのようなやらかしは、イタリア盤「Abbey Road」の「I Want You」やトルコ盤「London Town」の「Morse Moose And Grey Goose」で免疫が出来ているとはいえ、興醒め感は否めない。針を上げるまで各国盤に油断は禁物なのだ。

「タンパのペッパー」ゲット!

2023-01-09 | Jazz
 私はジャズのアルト奏者では哀愁舞い散る音色で軽やかにスイングするアート・ペッパーが一番好きで、50年代に出た彼のアルバムで入手可能なものは大体オリジナル盤で持っている。困るのは出来の良いアルバムに限って超の付くマイナー・レーベルから出ていることで、そのせいかオリジナル盤は滅多に市場に出てこないし、仮に出てきたとしても状態の良いものは目の玉が飛び出るようなプレミア価格で取り引きされている。もちろんCDで聴けるっちゃぁ聴けるが、やはり彼の艶めかしいアルトは無味乾燥なCDではなくオリジナル盤の濃厚な音で聴きたい。
  “タンパ” というマイナー・レーベルから出ている彼のレコードは有名な「Besame Mucho」入りの “RS-1001” とマーティ・ペイチ名義の “TP-28” の2枚で、通称「タンパのペッパー」と呼ばれておりマニア垂涎の存在である。その1stプレス盤はどちらにも10万円を軽く超える値段がつけられていて、ちょっとやそっとでは手が出ない。
 私の場合 1stプレス盤が高すぎて買えない場合は音質が近い 2ndプレス盤、例えばブルーノートの “47 WEST 63rd NYC”盤なら “NEW YORK USA”盤、という感じで手を打つことが多い。「タンパのペッパー」は2枚ともピンク色のセンター・レーベルで有名な1年落ちの2ndプレス盤があるのだが、悲しいことにビニールのクオリティが劣悪なせいかノイズが酷いカゼヒキ盤ばかりで(→初心者の頃、何も知らずに購入してその音の酷さに愕然とし、即刻売り飛ばした...)ハッキリ言って論ずるにも値しない。
 はてさてどうしたものかと考えていた時に偶然見つけたのがロンドン・レコードから出ているUK盤だった。このレコードは収録時間自体が短いせいか10インチ盤で出ており、US盤とほぼ同時期の1957年リリースでありながら値段が結構安かった(6,000円ぐらい)こともあって、「タンパのペッパー」は2枚ともUK盤10インチを買って満足していた。
 ところがその後、大阪にあった廃盤専門店「EAST」でUS盤1stプレスを聴かせてもらった時にその音圧の高さとペッパーのアルトの音色が手持ちのUK盤よりも遥かに艶めかしく聞こえたことにショックを受け、いつか「タンパのペッパー」のUSオリジナル盤を手に入れてやるぞと心に決めた。そしてそれから約20年経ち、昨年ようやく “TP-28” の方を入手したのだ。
 この “TP-28” の正式名称は「Marty Paich Quartet featuring Art Pepper」という。最初期プレスにあたるのはRED WAX(赤盤)で、まともな盤質のものは十数万円で取り引きされているので、現実主義者の私は0の桁が一つ違うノーマルな黒ビニール盤の方を探していた。更にこの黒ビニール盤にもセンター・レーベルのデザイン違いの2種類のヴァージョンが存在し、当然RED WAX盤と同じレーベル・デザイン盤の方がウン万円高くなるのだが、音さえ良ければレーベル・デザインなんてどーでもいい私としてはこのディフ・レーベル盤(←スタンパーは1stプレスと同じでレーベル・デザインだけが違うので、1stと2ndの中間プレス?みたいなモン...)にターゲットを絞ってネットで網を張っていた。結局ヤフオクでVG+盤が11,500円と、ちょっと拍子抜けしてしまうぐらい安く買えたのだが、あまりの人気の無さに “ひょっとしてコイツもピンク・レーベルみたいなカゼヒキ盤ちゃうやろな...” と、レコードが届くまで正直不安だった。
 いつものように届いた盤を丁寧にクリーニングし、ドキドキしながら盤に針を落とす。2ndプレス盤で不愉快極まりなかった “サーッ” というあの忌々しいサーフェス・ノイズは... ない!!! よかったぁ... カゼヒキ盤じゃなくて。NMじゃないので無音部分に多少のチリパチはあるが、音圧が高いので音楽が始まってしまうとノイズはほとんど聞こえない。モハメド・アリではないが、まさに “蝶のように舞い、ハチのように刺す” という感じで縦横無尽のプレイを聴かせるペッパーのアルトの音がこれまで聞いたことがないくらい瑞々しい音でスピーカーから飛び出してきて嬉しいったらありゃしない!
 ジャケット上下にセロテープ補修がしてあったり裏ジャケにデカデカと前所有者の名前が書いてあったりで(←このパターン多いよな...)ちょっと痛々しいが、私は全く気にならない。ジャケットを聴くわけではないのだ。それより何より、ペッパーの艶々したアルトが天衣無縫なアドリブを聴かせてくれるこのレコードを安く買えたのがめっちゃ嬉しかった。
Marty Paich Quartet featuring Art Pepper - You and the Night and the Music

イスラエルの「赤盤」「青盤」

2023-01-04 | The Beatles
 私が各国盤を買う場合、オリジナル・アルバム12枚に加えて「Magical Mystery Tour」「Hey Jude」「赤盤」「青盤」の計16枚すべて揃えるのをマストにしている国がいくつかあるが、そんな “重要国” の中で先日ようやくイスラエルの「赤盤」と「青盤」をゲットし、ますます各国盤のコレクションが充実してきた。
 ここまで読んで “「赤盤」と「青盤」なんてちょろいやろ...” と思われた方もおられるかもしれないが、そもそもイスラエルの「赤盤」「青盤」には73年に出たシルバー・パーロフォン・レーベル盤(1stプレス)、70年代半ばにプレスされたレッド・パーロフォン・レーベル盤(2ndプレス)、そして70年代終わりから80年代にかけてプレスされたポートレイト・レーベル盤(3rdプレス)の3種類があって、eBayその他のオークション・サイトでよく見かける(つまりず~っと売れ残っている)ブツのほとんどはこのポートレイト・レーベル盤だ。
 私は当然 “銀パロ盤” しか眼中になく、色んなサイトで探してみたのだが、これが結構レアらしく中々市場に出てこない。「赤盤」と「青盤」の入手が最後になったのは、もちろんオリジナル・アルバムを優先して買っていったというのもあるが、実際にこの2枚の “銀パロ盤” が入手困難だったというのが一番の理由なのだ。
 先に手に入れたのは「赤盤」の方で、CD and LP というヨーロッパの通販サイトにVG+盤が $50で出ているのを見つけ、センター・レーベル確認のメールを送ったところ、“Silver/Black” という返事だったので即決。送料込みで $66ならまぁ許せる範囲内だ。
 届いたレコードはマトが -1/-1/-3/-1 のUKマザー盤で重低音マニア御用達の“Q”刻印も4面全部に刻まれており、イスラエル盤ならではのガッチリした低音が気持ちいい痛快なサウンドで初期~中期ビートルズの名曲群が楽しめる。いきなりA①「Love Me Do」のベースからして低音クオリティーの高さが一聴瞭然だし、A②「Please Please Me」の爆発的なエネルギーにも圧倒される。A⑤「I Want To Hold Your Hand」なんかもう形容しがたい凄まじさで、血湧き肉躍るとはまさにこういう音を指すのだろう。B①「A Hard Day's Night」の “ジャーン!” もリスニングルームの床が鳴動するような感じで(←どんな大音量で聴いてんねん!)超気持ちイイし、B⑤「Ticket To Ride」のリンゴのドラミングも強烈そのもの。D④「Girl」のブラッシュの音は他の盤では味わえないような凄味すら感じさせるし、D⑤「Paperback Writer」のアグレッシヴな音はあのペルー赤盤と並ぶ双璧と言っていい轟音だ。う~ん、これは買って大正解だった。
 さて、イスラエルに関してはこれでいよいよ残すところ「青盤」のみとなったワケだが、私は「青盤」には「赤盤」に対するような特別な思い入れはないし、「青盤」に入っている後期の楽曲はすべてオリジナル・アルバムで入手済みなので別に買わんでもエエかなぁとも思ったが、お気に入り国の中でイスラエルの「青盤」だけ持ってないというのもなんだし、ひょっとするとオリジナル・アルバムよりも良い音で入っている可能性も捨てきれないので、“毒を食らわば皿まで”のノリで(←使い方あってる???)「青盤」の銀パロ・ヴァージョンを探すことにした。
 そこでしばらくの間、色んなサイトで探してみたが、そう簡単に見つかるワケがない。はてさて、どーしたものかと思いながら、ある時ちょっとした気まぐれで eBayでの検索ワードを変えてみたところ、何と銀パロの「青盤」が出てきたではないか! 検索ワードの変更による辻褄の合わない検索結果の違いはeBayに限らず、メルカリやヤフオクでも時々起こる現象なのだが、兎にも角にも念願の銀パロ盤を見つけることが出来たのだからラッキーだ。こちらもEx+で €45とリーズナブルなお値段だったので即購入。これでめでたくイスラエル盤コンプリートと相成った。
 届いた盤はグレーディング通りのピカピカ盤で、これで良い音がしないワケがない。マトは -1/-3/-3/-1 のUKマザーだ。私が「青盤」の音を評価する時にイの一番に聴くのがD①「Here Comes The Sun」なのだが、盤に針を落とすと軽快にメロディーを奏でるアコギのクリスプな音がスピーカーから流れてきて “おっ、これはエエやん!” と思った瞬間に地を這うような重低音ベースが鳴り響いてビックリ(゜o゜)  “低音” ではなくまさに “重低音” という言葉がピッタリの凄い音で、まるで井上尚弥のボディー・ブローのように(?)ズンズン腹に響いてくる。いやぁ、これは最高やわ... たまらんなぁ... とよがっていると続くD②「Come Together」でまたまた重低音ベースが爆裂! このD①②連続コンボで完全KO間違いなしだ。とにかく音が下の下まで出ている感じで、“重低音のイスラエル盤” の看板に偽りナシの強烈さなのだ。
 「Abbey Road」のイスラエル盤は無慈悲なくらいのド迫力サウンドだったので、後半の「Let It Be」関連のトラックはどうだろうと思って聴き進めていったところ、「Let It Be」「Across The Universe」「The Long And Winding Road」というスロ-・バラッド3連発にもかかわらず、力強い音が聴けて大満足。続けて聴いた他の3面も同様で、一言で言えば “全編パワー漲る力強い音” という感じ。特にリンゴのドラミングなんかもう “ユンケル飲んだ?” と訊きたいくらいの絶倫プレイで、B②「Hello Goodbye」がこんな音で聴けるとは思わなんだ。とにかくこれほど「青盤」を気持ち良く聴き通したのはちょっと記憶にないくらいだ。う~ん、イスラエル盤恐るべし(≧▽≦)  轟音爆音好きのビートルズマニアに超オススメの逸品だ。

「Help!」ウルグアイ盤

2023-01-01 | The Beatles
 新年あけましておめでとうございます。いきなり私事になりますが、今年で一応今の仕事を定年退職して4月から仕事も勤務形態も変わる可能性があるので、今は “一寸先は闇” という心境です。まぁ私にとっては仕事なんて所詮レコード買うためにやってるようなもんなので、どうなろうとあんまり変わらんとは思いますが。このブログに関して言うと、始めてから15回目のあけおめ投稿ということで、よくもまぁここまで続けてこれたなぁと我ながら驚いてますが、とりあえず今年も好きな音楽について感じたことをそのまま書いていこうと思いますので好みが合う方はお付き合い下さい。

 一般的に言って、ディフ・カヴァーというのはレコード・コレクターの好奇心を刺激する。私の場合は何よりもまず爆音・轟音優先(笑)でジャケットは二の次三の次なのだが、プレミアがついて値段が上がるようなことがなければ十分購入対象になるのだ。
 60年代にプレスされたビートルズのウルグアイ・オデオン盤を集め始めたきっかけについてはこの前ここに書いたが、eBayでビートルズのウルグアイ盤を検索していて真っ先に目に留まったのが「Help!」のウルグアイ最初期プレス盤だった。ジャケット・デザインは基本的にUK盤と同じなのだが、大きな違いは “Help!” の代わりにスペイン語でデカデカと“Socorro!”と書いてあることと、もう一つ、4人が着ているマントの色がオリジナルの青ではなくモス・グリーンなことだ。これまでいろんなビートルズのレコードを見てきたが、「Help!」のこんな色違いジャケは初めて見た。各国盤でこういう色違いジャケと言えば真っ先に思い出すのがイスラエル盤「Magical Mystery Tour」だが(←あれも緑がかっててかなりインパクトあったなぁ...)だが、このウルグアイ盤「Help!」も負けず劣らず印象的だ。
 色々調べてみたところ、どうやらこれが数少ない最初期プレスで、発売されてすぐにノーマルな青いマント・ジャケに変わったらしい。モノラルでマトは -2/-2のUKマザーだ。ありがたいことに盤質VG+ で何のプレミアも付いてない $39というお買い得価格だったので即決した。
 届いたレコードをパッケージから取り出して改めてジャケットを確認したが、見れば見るほどユニークな色遣いだ。これって意図的なものではなく単なる偶然(ミス?)のせいだと思うのだが、このように一筋縄でいかないところが各国盤の面白さだ。
 実際に聴いてみた印象としては残念ながらごくフツーのUK盤と変わらなくてちょっと肩透かしを食らった感じ。特に鮮度が高いでもなく、何らかの際立った特徴があるでもなく、フツーすぎるくらいフツー(笑)の音なのだ。B-SELSに持って行ったところ、ジャケットを見てSさんも “おぉ、これは珍しい!” と驚いておられたが、音に関しては “典型的なUKマザーの音ですね...” 以外の言及はなかったと記憶している。
 この前の「Revolver」(マト-2/-2)とこの「Help!」(マト-2/-2)、そして同時期に手に入れた「Rubber Soul」の濃青ラベル盤(マト-4/-4)も含め、少なくとも私の印象としてはビートルズのウルグアイ盤で音が良いのは68年プレスの「White Album」以降で、それ以前のプレスに関しては余程のマニアでもない限り、目の色を変えて探すようなレコードではないと思う。