shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ベンチャーズ・カヴァー特集⑧「シークレット・エージェント・マン」

2014-10-25 | エレキ・インスト
①RCサクセション
 原子力問題や戦争、テロといった政治的にタブーなテーマを扱った歌詞を洋楽のメロディーに乗せて歌う清志郎の替え歌プロテスト・ソング集「カバーズ」は極論すればジョン・レノンの「サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ」のように “歌詞を聴かせる” ことを意図して制作されたアルバムだが、名曲名演揃いのこのアルバムの中でも特に気に入ったトラックが大韓航空機爆破事件の事を歌ったこの「シークレット・エージェント・マン」だ。生々しい歌詞もインパクト絶大だったが、イントロに金賢姫の肉声を入れ、後にHISで共演することになる演歌の坂本冬美に3番を歌わせて(←INFを “世界通貨基金” と勘違いしてたアホな私は最初歌詞の意味がよぉ分からんかった...)そのコブシの効いた歌声で曲の展開にメリハリをつけるなど、彼のトータル・プロデューサーとしての卓越した音楽的センスに唸ってしまう。冬美姐さんの起用によって “単なるベンチャーズ・カヴァー” を超越した存在感を持つに至った大傑作だ。
SECRET AGENT MAN (金賢姫) .wmv


②Brian Setzer & Tomcats
 トムキャッツはストレイ・キャッツの前身的存在といえるロカビリー・トリオで(←まぁ例えるならブライアン・セッツァーにとってのクオリーメンみたいなもんか...)、この演奏は1980年5月30日にニューヨークのTKs Placeで行われたギグの模様を収めたオフィシャル・ブートレッグ・ライヴ・アルバム「リップ・イット・アップ」に入っていたもの。ブライアン・セッツァーはBSOのライヴ1曲目に「ハワイ・ファイヴ・オー」をもってくるほどの熱狂的なベンチャーズ・マニアであり、このベンちゃん・カヴァー祭りも元をただせば彼の「キャラバン」がきっかけになったワケだが、そんなセッツァー兄貴の若かりし頃の熱演が聴けるこのトムキャッツ版「シークレット・エージェント・マン」も竹を割ったようなストレートアヘッドなロックンロールで、ノリ一発で聴き手をノックアウトする素晴らしい演奏だ。やっぱりセッツァー兄貴は最高やでぇ~(^o^)丿
Brian Setzer & The Tomcats - Secret Agent Man


③Willie Mitchell
 このウイリー・ミッチェルという人は名前すら聞いたことがなかったのだが、大好きな「シークレット・エージェント・マン」をやっているのをYouTubeで知り、どんなんかなぁと試聴してみるとこれが中々エエ感じ(^.^)  この曲が入っているアルバム「イッツ・ホワッツ・ハプニン」には他にも「ジ・イン・クラウド」や「ア・テイスト・オブ・ハニー」、「ウリー・ブリー」といった名曲がいっぱい入っていたので迷わずゲットした。 “メンフィス・ソウル” と呼ばれるアーシーなサウンドで聴く「シークレット・エージェント・マン」は実に新鮮で、ベンチャーズを始めとするエレキ・インスト・バンドと同じようにギターを使っていながらこれほど違った雰囲気の演奏になるものかと感心させられた。顎が落ちそうな(?)このグルーヴ、たまりませんわ... (≧▽≦)
Willie Mitchell - Secret agent man


④Johnny Rivers
 私は昔から海外TVドラマの主題歌が大好きでそれらを集めたコンピレーションCDも持っているのだが、不幸なことにその盤の中にこの曲は入っておらず、又この「ザ・シークレット・エージェント」という番組を実際に見たこともなかったので、当然ジョニー・リバースのオリジナル・ヴァージョンを耳にしたこともなかった。私がこの曲を初めて聴いたのはベンチャーズのヴァージョンで、その後清志郎師匠やセッツァー兄貴の秀逸なカヴァーを聴き、最後の最後に辿り着いたのがこのオリジナル・ヴァージョンというワケだ。ジョニー・リバースというシンガーについては恥ずかしながら名前だけしか知らなかったが、調べてみると1964年にビートルズ旋風が吹き荒れる中、チャック・ベリーの「メンフィス」をカヴァーして全米2位まで行ったバリバリのロックンロール・シンガーとのこと。この曲でも持ち前のノリの良さで楽しませてくれるが、私的には初めてオリジナルの歌詞をちゃんと聴けたことが一番の収穫で、スパイの悲哀を見事に表現した “Odds are he won't live to see tomorrow♪”(奇妙なのは彼が明日を目にするために生きようとはしていないことだ...)のラインがたまらなく好きだ。
JOHNNY RIVERS - Secret Agent Man 1966


⑤Ventures
 私が初めて買ったベンチャーズ盤はCD黎明期の1984年(!)に出た「サーフィン・デラックス」という偏った選曲のベスト盤(←CD1枚が3,500円もしたんよね...)だったため、その後20年という長きに亘って彼らのほんの一側面しか知らずに過ごして遠回りしてしまったが、「木の葉の子守唄」を聴いてコレはえらいこっちゃとばかりに買ったのが「ベンチャーズ・EPコレクション」という4枚組ボックス・セット。ベンチャーズ・マニアとしての今の私があるのはこのボックスのおかげであると言っても過言ではない。CD4枚全103曲を一気呵成に聴き通した時のメカラウロコ感は今でも忘れられないが、そんな中で強く印象に残ったキラー・チューンの1曲がこの「シークレット・エージェント・マン」だった。このベンチャーズ・ヴァージョンは持てるテクニックを駆使して縦横無尽に弾きまくるノーキーの歌心溢れるプレイに圧倒される痛快無比なロックンロールに仕上がっており、先の「木の葉」と共に私をベンチャーズ狂いにさせた思い出深いナンバーだ。尚、この曲が入っているアルバム「バットマン」はトホホなジャケット(←TV番組「バットマン」のスタートとタイミングを合わせるために大急ぎで制作されたせいであんな手抜きアートワークになったらしい...)のせいかファンの間ですら滅多に話題に上ることのない不憫な1枚だが、私的には名曲名演てんこ盛りの超愛聴盤なのだ。
THE VENTURES SECRET AGENT MAN
コメント (2)

ベンチャーズ・カヴァー特集⑦「10番街の殺人」

2014-10-19 | エレキ・インスト
①小山ルミ
 ベンチャーズ歌謡といえば何はさておき小山ルミの「さすらいのギター」だが、彼女はシングルだけでは飽き足らずにアルバム1枚丸ごとベンチャーズ・カヴァーという「小山ルミ / ベンチャーズ・ヒットを歌う!」をリリースしており、ベンチャーズ・クラシックスとカルト歌謡の邂逅が生み出すザ・ワン・アンド・オンリーな小山ルミ・ワールドが思う存分楽しめる。中でもこの「10番街の殺人」は吸引力抜群の彼女のヴォーカルが聴く者に強烈なインパクトを残し、一度聴いたら忘れられないヴァージョンに仕上がっていて言うことナシ(^.^) その完成度の高さは二匹目のドジョウを狙って全く同じタイトルでリリースされたアン・ルイス盤の比ではない。尚、この曲に日本語詞を付けたのは初期キャンディーズや山口百恵、麻丘めぐみらの一連のヒット曲の作詞を担当した千家和也で、歌謡ポップスとして違和感なしに聴ける内容になっている。
十番街の殺人


②Dr.K Project
 日本におけるベンチャーズ系エレキ・インストの第一人者であるDr. Kこと、徳武弘文(海外のミュージシャンが “トクタケ” を “ドクターK” と呼んだことからこのニックネームがついたという...)が “日本のメル・テイラー” の異名を取る三浦晃嗣と組んで結成したのが Dr. K プロジェクトだ。この演奏はエレキ・インストの楽しさを後世に伝えようと積極的にライヴ活動を行っている彼らが1997年に開催した “ベンチャーズ・ナイト” の時のもので、まるでメル・テイラーが墓場から蘇えってきたかの如き入魂のプレイでバンドをガンガンプッシュする三浦さんのドラミングに胸が熱くなる。血湧き肉躍る演奏というのはこういうのを言うのだ。ノーキー・エドワーズというよりもむしろジェリー・マギーに近いスタイルで味のあるプレイを聴かせる徳武さんも素晴らしい。それにしてもモズライトの野太い音はいつ聴いてもタマランですなぁ... (≧▽≦)
Dr.K Project ♪♪ 十番街の殺人


③Shadows
 アメリカのベンチャーズ、スウェーデンのスプートニクスと並ぶ世界3大エレキ・インスト・バンドの1つがイギリスのシャドウズだ。しかし圧倒的なグルーヴと天才的なアレンジ力で “エレキ・インスト” というジャンルを軽く超越してみせたベンチャーズ、他の誰にも真似の出来ない独特の北欧サウンドで唯一無比な世界を作り上げたスプートニクスに比べると、私にとってシャドウズというのはイマイチのめり込めないところがある。悪くはないのだけれど(←クリフ・リチャードのバックでやってるヤツなんかは結構好き...)、もひとつ地味というか、渋すぎるというか、少なくとも私の心にグッと迫ってはこない。どちらかというと、エレキ・インストの “音” そのものを追及しているような印象を受けるのだ。1969年に出たこの「10番街」も原曲に忠実なアレンジの演奏で、ベンチャーズ・ヴァージョンと比べると両者の違いは一聴瞭然。やっぱり私は骨の髄までベンチャーズ派だ。
The Shadows Slaughter on 10th Avenue


④Anita O'Day
 「ウォーク・ドント・ラン」や「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」がベンチャーズのオリジナルではないと知った時の驚きは前に書いたが、この「10番街の殺人」もコテコテのベンチャーズ・オリジナルだと信じて疑わなかったので、ジャズ・ヴォーカルのアニタ・オデイのアルバム「インコンパラブル」の中にこの曲を見つけた時に “何でアニタがベンチャーズやってんねん?” と不思議に思い、あわててベンチャーズCDの解説を読み返して初めて真相を知ったという恥ずかしい思い出がある。私は字を読むのが面倒くさくてライナーノーツを滅多に読まないので、まだまだ知らないことや勘違いがいっぱいありそうだ(笑) リチャード・ロジャース作品にしては取り上げるジャズ・ミュージシャンも少なく、他にはアート・ヴァン・ダムやジミー・スミスぐらいしか知らないが、私的に一番マシだったのが持ち前のスキャットを駆使してこの単調な曲に何とか変化を付けようと試みているこのアニタのヴァージョンだ。裏を返せばあのアニタ・オデイをもってしてもこの程度ということで、ベンチャーズのロック・アレンジがいかに画期的なものだったかを逆説的に物語っているように思う。
Anita O'Day - Slaughter On 10th Avenue


⑤Ventures
 この「10番街の殺人」はアメリカの作曲家リチャード・ロジャースが1936年に「オン・ユア・トウズ」というブロードウェイ・ミュージカルのために書いたスローな劇中曲がオリジナルで、それにベンチャーズが見事なロックンロール・アレンジを施して彼らの最高傑作とまで言われるエキサイティングなエレキ・インスト・ナンバーにまで昇華させたのがこのヴァージョンだ。強烈なディミニッシュ・コードのスライド・ダウンから始まりドラムス→ベース→リズム・ギターと続くイントロ部分のカッコ良さを何と表現しよう? ベンチャーズ史上、いや、ロックンロール史上屈指の名イントロではないか! さらにAメロが始まってリード・ギターがメロディーをストレートに弾いているにもかかわらず、もはや原曲の面影はどこにもない。ブロードウェイ・ミュージカルの凡庸な劇中歌がたちまち永久不変のロックンロール・クラシックスへと変化したのだ。これこそがベンチャーズを聴く醍醐味であり、一過性音楽を持続性音楽へと変えてしまう曲の錬金術師集団としての彼らの本領が見事に発揮されたアレンジが痛快だ。又、後半1分30秒をすぎたあたりで聴けるフェイク気味の必殺フレーズもたまらんたまらん(≧▽≦)  以前BSの番組で Char がそのあたりの魅力を力説しているのを聞いて我が意を得たりと思ったが、ノーマークだった人は是非ともそこんところに注意して聴いてみて下さいな(^.^)
Ventures - Slaughter on Tenth Avenue - 45 rpm

Charが語るベンチャーズ

Vera Zorina in Slaughter on Tenth Avenue
コメント (2)

ベンチャーズ・カヴァー特集⑥「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」

2014-10-14 | エレキ・インスト
①加山雄三&ハイパーランチャーズ
 ベンチャーズの「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」(原題:「Ten Seconds To Heaven」)はめちゃくちゃカッコイイ曲なのになぜかカヴァー・ヴァージョンは数えるほどしか存在しない。手持ちの盤を調べてみても、井上宗孝とシャープ・ファイブやザ・スペイスメンといった60年代の日本のエレキ・エンスト・バンドがリアルタイムで取り上げているぐらいで、海外のエレキ・インスト・バンドによるカヴァーは1枚もないというお寒い状況だ。ひょっとするとベンチャーズのヴァージョンがあまりにも素晴らしすぎておいそれと手が出せないのかもしれない。そんな数少ないこの曲のエレキ・インスト・カヴァーの中で私が最も気に入っているのが加山雄三&ハイパーランチャーズのヴァージョンで、ヘタな小細工をせずに真っ向勝負でストレートにカヴァーしているところがいい(^.^)  一音一音にベンチャーズへの愛とリスペクトが感じられるのだ。還暦を過ぎてなおこれだけのプレイを聴かせる加山雄三こそ “永遠のギターキッズ” の名に相応しいと思う。
パラダイス・ア・ゴー・ゴー


②Caterina Valente
 「Ten Seconds To Heaven」のオリジナルは1953年のブロードウェイ・ミュージカル「キスメット」の挿入歌「ストレンジャー・イン・パラダイス」で、トニー・ベネットのヴォーカルで全米2位の大ヒットになり、めでたくスタンダード・ナンバーの仲間入りを果たしたとのこと。私が好きなヴォーカル・ヴァージョンはカテリーナ・ヴァレンテのもので、ウェルナー・ミューラー編曲指揮のオーケストラをバックに持ち前の伸びやかな歌声を聴かせてくれる。彼女は数か国語を駆使して世界中の歌をオリジナル言語で歌ったことから “歌う通訳” などと呼ばれているが、その最大の魅力は大排気量のアメ車を想わせるようなパワフルなヴォーカルに尽きるのではないか。この曲はクラシックの有名曲を歌った「クラシックス・ウィズ・ア・チェイサー」というアルバムに収録されているが、スタンダード・ソングを集めたCD「スーパーフォニックス」のボートラにも入っているので、女性ヴォーカル・ファンにとってはそっちの方が断然お買い得だ。
Stranger In Paradise (Caterina Valente)


③ Johnny Smith
 「ストレンジャー・イン・パラダイス」はヴォーカルだけでなくティナ・ブルックスやバリー・ハリス、ケニー・ドリューといったインストのミュージシャン達も取り上げているが、そんな中で私が一番気に入っているのがまたまた出ましたジョニー・スミス。この曲はブルーのジャケットが美しい10インチ盤「イン・ア・メロウ・ムード」に入っており、初めて聴いた時は「ウォーク・ドント・ラン」のこともあったので “ひょっとして「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」もジョニー・スミスがオリジナルなんか???” と思ったが、曲名を見ると「ストレンジャー・イン・パラダイス」となっており、色々調べてベンチャーズの方がこのスタンダード・ソングをロック・アレンジしたのだと知った次第。ドン・ラモンドの瀟洒なブラッシュに乗って軽快にスイングするジョニー・スミスが素晴らしい。
Johnny Smith Quartet - Stranger in Paradise


④Natasha Morozova
 私はジョニー・スミス盤を聴いて以来 “「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」の原曲はスタンダードの「ストレンジャー・イン・パラダイス」” だと信じて生きてきたのだが、何と「ストレンジャー・イン・パラダイス」には更なる元ネタがあった。それがロシアの作曲家アレクサンドル・ボロディンが作った「ダッタン人の踊り」(原題「Polovetsian Dances」)という曲で、何でも「イーゴリ公」という有名なオペラの一節らしい。YouTubeで検索してみると合唱やら管弦楽やら色んなのがゾロゾロと出てきたのだが、どれもこれも眠たくなるような代物で辟易し、見るのやめよーかなーと思い始めていたところで偶然見つけたのがこのナターシャ・モロゾワという人。名前からしてロシア人らしいということ以外は何も分からないが、オペラ臭さを微塵も感じさせないエキゾチックなムード横溢の妖しげなヴォーカルが気に入った。どうやらCDは出ておらずDL販売のみのようだが、たまたまアマゾンの無料クーポンがあったので、彼女の「ロシアン・エニグマ」からこの「ポロヴェツィアン・ダンシズ」(英題:「Fly Away On The Wings Of The Wind」)をダウンロード。何度も聴いているうちに彼女の歌声にハマってしまう中毒性をはらんだヴォーカルだ。あぁおそロシア...
Polovtsian Dances -Borodin - Prince Igor - Natasha Morozova -"Russian Enigma"


⑤Ventures
 まるでベンチャーズのために書かれたような、エレキ・インストの魅力全開のこの曲を初めて聴いた時、私は「ウォーク・ドント・ラン」や「10番街の殺人」の時と同じくベンチャーズのオリジナルだと信じて疑わなかった。その後、スタンダードの「ストレンジャー・イン・パラダイス」をロックにアレンジしたものだと知ってビックリしたのだが、同時に長いこと不思議に思っていた邦題の謎が解けたような気がした。つまり東芝の担当者が元歌の「ストレンジャー・イン・パラダイス」から「パラダイス」を拝借し、そこに当時流行していた「ゴー・ゴー」をくっ付けて「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」になったのではないか。もしそうなら実に安直な発想から生まれた邦題なワケだが、原題をそのままカタカナ表記にして「テン・セカンズ・トゥ・ヘヴン」とやるよりもずっといい。何よりも言葉の響きがカッコイイではないか(^o^)丿 やはり洋楽の邦題はこうでなくてはいけない。
 演奏の方はもう文句の付けようのない素晴らしさで、ベンチャーズ史上屈指の大名演と言い切ってしまおう。イントロのマラカスにリバーブを深くかけたドン・ウィルソンのリフが絡んでいくところなんかもうゾクゾクしてくるし、ノーキーのリード・ギターに影のように寄り添うエレピも実に効果的。メルとボブのコンビが生み出すタイトなリズムも完璧だ。余談だが、この曲がなかったら「ウルトラQ」のあの有名なテーマ曲は生まれなかったんじゃないか... と考えてるのは私だけかな? 尚、この曲は65年にシングル・カットされているがオリジナル・アルバムには未収録で、67年にリバティ・レコーズ・クラブから通販のみで発売されたアルバム「The Versatile Ventures」にのみ収録されているのでアナログ・ファンは要注意だ。
ザ・ヴェンチャーズ - パラダイス・ア・ゴー・ゴー
コメント (2)

ベンチャーズ・カヴァー特集⑤「ラップ・シティ」

2014-10-09 | エレキ・インスト
①Marksmen
 1961~1962年頃、ノーキー・エドワーズは一時的にベンチャーズを離れて活動していた時期があり、その時にジーン・モールズというギタリストと組んで結成したバンドがマークスメンだ。しかしこのグループは長続きせず、結局ブルー・ホライズン・レーベルからシングル盤を1枚出しただけでノーキーはベンチャーズに戻ることになるのだが、その彼らが唯一残したレコードというのが「ナイト・ラン」という曲で、何と「ハンガリー舞曲第5番」をロックンロールにアレンジした、いわば「ラップ・シティ」の前身と言えるナンバーなのだ。この「ナイト・ラン」は時流を反映してか、ハンド・クラッピングを上手く使って思わず踊りだしたくなるような楽しいツイスティン・ロックンロール・チューンに仕上がっており、3年後にベンチャーズとして別アレンジでレコーディングされた緊張感漲る「ラップ・シティ」と聴き比べてみるのも面白い。尚、このシングル盤は超稀少でコレクターの間ではかなりの高値で取引されているらしくヤフオクでも4万円の値がついていてビックリしたが(←某サイトに “博物館級のお宝レコード” と書いてあったがいくら何でもそれは言い過ぎ...)、そんな激レア盤の白レーベル、つまりプロモ盤をeBay で$35で落札した時はホンマに嬉しかった。CDではレア・トラック・コンピ集「イン・ザ・ヴォールツ」のVol.4に入っているのでベンチャーズ・ファンは要チェックだ。
The Marksmen - Night Run - 1960 guitar instrumental Ventures.wmv


②寺内タケシとバニーズ
 私は長いことクラシックを “退屈で高尚ぶってていけ好かない音楽” として敬遠してきた。フリージャズのようにブツブツが出るほど不快感を覚えるというワケではないのだが、無味乾燥で聴いているうちに眠たくなるツマラン音楽として無視してきたのだ。そんな私の偏見を木っ端微塵に打ち砕いたのが寺内タケシとバニーズの「レッツゴー運命」で、“クラシックにもこんな魅力的な旋律があったのか…” と瞠目させられたものだ。とにかくベートーベンがナンボのモンじゃいとばかりにファズをバリバリに効かせてガンガンギュンギュン弾きまくる寺内御大のプレイは痛快そのもの。この「ハンガリー舞曲第5番」でもあえてベンチャーズ・ヴァージョンを模倣せずに独自のアレンジで勝負したのが大正解で、実にユニークでカッコ良いカヴァーになっている。それにしても合いの手まで弾き切ってしまう御大の気合いの入り方はホンマに凄いですわ(≧▽≦)
Hungarian Dance No 5


③European Jazz Trio
 ヨーロピアン・ジャズ・トリオがこの曲を演ってると知った時、ハッキリ言って全く期待していなかった。というのもジャズ初心者の頃に買った同ユニットのデビュー・アルバム「ノルウェーの森」のあまりの軟弱さにウンザリして即刻売り払った苦~い過去があるからだ。その後数回メンバーチェンジをしたらしいが詳しいことは全く知らない。しかしこの「Ungarische Tanze Nr. 5」(←ドイツ語で「ハンガリー舞曲」の意)を聴いてみると、“リリカル” で “ロマンチック” が売りのこのトリオとしては珍しく(←失礼!)スインギーなピアノトリオ・ジャズになっており、十分傾聴に値する演奏だ。特にドラムスが大張り切りでピアノをガンガンプッシュしていることろが◎。クラシックの名曲をジャズ化したアルバム「幻想のアダージョ」の中では最上のトラックと言っていいと思う。
European Jazz Trio - Ungarische Tanze Nr. 5


④David Garrett
 上で書いたように私はクラシック音楽には何の興味も無いが、去年ゼップの「カシミール」の絶品カヴァー(←関係ないけど、スーパーでZEPPINカレーのパッケージを見た時、一瞬ZEPPELINに見えてしまった...)を探していた時に知ったデヴィッド・ギャレットというヴァイオリニストはその数少ない例外で、ドラムやギターを入れてゼップ以外にもポールの「死ぬには奴らだ」やマイコーの「スムーズ・クリミナル」、エアロの「ウォーク・ディス・ウェイ」といったロック/ポップスの名曲をスリリングに演奏していたので迷わず購入。クラシック臭さを全く感じさせないアグレッシヴなプレイは私のようなロック・ファンでも十分楽しめる内容だった。この「ハンガリー舞曲第5番」は私にとっては “ブラームスの書いたクラシック曲” ではなく “ベンチャーズの「ラップ・シティ」” として刷り込まれているので、上記のロック曲と同様に違和感なく楽しむことが出来た。これがクラシックではもったいない。ロックとして聴きたい逸品だ。
Hungarian Dance No.5 - david Garrett


⑤Ventures
 ①でも書いたように、この「ラップ・シティ」の原曲はブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」であり、1961年にまずノーキー・エドワーズがロックンロールにアレンジしてマークスメンのシングル「ナイト・ラン」としてリリースし、その3年後の1964年に今度はノーキー再加入後のベンチャーズが4人で再アレンジして「十番街の殺人」とのカップリングで両A面シングルとしてリリース。この曲を聴くまではベンチャーズをギター・テクニックが売りのエレキ・インスト・バンドだと誤解していたのだが、何となくメロディーだけは知っていたこのクラシック・ナンバー(←もちろん曲名も作曲者も知らんかったが...)をこんなにスリリングなロック・チューンにしてしまうベンチャーズってホンマに凄いわ!!!と驚倒し、彼らの真価はどんな素材でもその抜群の音楽センスで唯一無比な “ベンチャーズ・ミュージック” へと昇華させてしまうところにあるのだと痛感した次第。速弾きで正確にピックのアップダウンを繰り返すノーキーの鬼気迫るプレイが圧巻だ。尚、この曲のシングル・ヴァージョンはアルバムとは違うミックスで、リード・ギターが2本ダビングされていて圧倒的な音圧のサウンドが楽しめるらしいので、近いうちにぜひとも手に入れて聴いてみたいと思う。
THE VENTURES - RAP CITY
コメント (2)

ベンチャーズ・カヴァー特集④「ウォーク・ドント・ラン」

2014-10-03 | エレキ・インスト
①Steve Howe
 今回の特集を組むにあたって何か面白いカヴァーはないかいなぁ... とYouTubeで色々と検索していた時に偶然見つけたのがコレ。あのスティーヴ・ハウが「ウォーク・ドント・ラン」演ってんのか... 私は好奇心にはやる心を抑えて早速試聴を始めたのだが、スパニッシュなムード横溢のイントロに続いてエイジアで耳に馴染んだあのギターの音が響き渡った瞬間、“おぉ、コレめっちゃエエわ!!!” と快哉を叫んでいた。私にとってのスティーヴ・ハウは、難解なイエスではなくポップなエイジアでの数々の名演が脳に刷り込まれているので、「ドント・クライ」を想わせる大仰なソロや彼お得意のスパニッシュ・アレンジ(←絶妙のタイミングで鳴り響くカスタネットがたまらんたまらん...)が出てくるたびに大コーフンしてしまう(≧▽≦) 大袈裟に聞こえるかもしれないが、「ウォーク・ドント・ラン」という曲が身悶えして歓喜に打ち震えている... といった感じの、名旋律・名アレンジ・名演奏と三拍子揃ったスーパーウルトラ大名演だ(^o^)丿 こんなカッコイイ「ウォーク・ドント・ラン」に巡り合えただけでも今回の特集を思いついた甲斐があったというものだ。
Steve Howe - Walk Don´t Run


②Chet Atkins
 ビートルズ・ファンである私にとってチェット・アトキンスという名前は “ジョージ・ハリスンに大きな影響を与えたギタリスト” として記憶にインプットされてはいたが、チャック・ベリーやリトル・リチャードのようにラジオでかかることは滅多になく、かなり長い間 “「ビートルズ・フォー・セール」で聴けるカントリー・フレイバーたっぷりの奏法=チェット・アトキンス奏法” という活字情報を鵜呑みにして何となく分かった気になっていた。やがて21世紀に入ってベンチャーズの「ウォーク・ドント・ラン」をアトキンスが演っていると知り、その頃始めたばかりのeBayで$5.00ポッキリで手に入れたのが「ウォーク・ドント・ラン」入りの名盤「ハイファイ・イン・フォーカス」(1958年)だった。そのサウンドは耳に馴染んだベンチャーズともオリジナルのジョニー・スミスとも違うユニークなもので、ミディアム・テンポで軽やかにスイングするその変幻自在のフィンガー・ピッキングにすっかり魅了されてしまった。因みにドンとボブはこのアトキンス・ヴァージョンを聴いてすっかり気に入り、ベンチャーズでも録音しようと思い立ったのだという。まさにベンチャーズの原点とでも言うべき演奏だ。
Chet Atkins - Walk, Don't Run


③Neil Andersson
 何年か前にジプシー・ジャズにハマっていた頃、ジャンゴ・ラインハルト屈指の名曲「ドゥース・アンビアンス」が入っているCDを手当たり次第に買いまくっていた時に知ったのがこのニール・アンダーソンというギタリスト。アメリカ北西部出身ということもあってか本場ヨーロッパの王道マヌーシュ・ギタリスト達とは又違ったユニークな音楽性の持ち主で、ジャンゴの曲を演りながらジョージ・シアリング・クインテットのような軽妙洒脱な味わいも感じさせて中々面白い盤だった。そんな彼が新たに結成したマリブ・マヌーシュというプロジェクトがリリースしたのが「サーフ・ジャズ」というアルバムで、ビーチ・ボーイズの「サーファー・ガール」やベンチャーズの「アパッチ」「テルスター」「パイプライン」そしてこの「ウォーク・ドント・ラン」といった一連のサーフィン・ミュージックをリラクセイション溢れるスインギーなプレイでジャズ化しており、エレキ・インストとマヌーシュ・スイングを絶妙にブレンドさせたノリの良い演奏が楽しめる。カタイことは抜きにして60'sの名曲を一緒に楽しみましょうや!といった感じの親しみやすいヴァージョンだ。
マリブ・マヌーシュ


④Johnny Smith
 ベンチャーズ・クラシックスとして知られている曲の多くはスタンダード・ナンバーや他アーティストの楽曲をカヴァーしたものなのだが、ベンチャーズ・ヴァージョンのインパクトがあまりにも強すぎて、ついつい彼らのオリジナル曲だと勘違いしてしまうことがよくある。この「ウォーク・ドント・ラン」という曲も実はジョニー・スミスの演奏がオリジナル。何でもジャズ・スタンダードの「ソフトリー・アズ・イン・ア・モーニング・サンライズ」のコード進行を借用して作ったらしい(←オイゲン・キケロの「ソフトリー」がもろに「ウォーク・ドント・ラン」そっくりなのはそのせいなんだろう...)。
 ジョニー・スミスは私が大好きなジャズ・ギタリストの一人で、今から10年ほど前に買った彼のアルバム「イン・ア・センチメンタル・ムード」の中にたまたまこの曲が入っており、 “何でジョニー・スミスがベンチャーズのカヴァーやってんねん???” と不思議に思ったのだが、1954年に出たジョニー・スミス盤に1960年のベンチャーズのヒット曲が入っているというのはどう考えてもおかしい。慌ててベンチャーズ盤のクレジットを見ると、何と作曲者はジョニー・スミスになっているではないか! いやはやまったく、目からウロコとはこのことだ。
 両ヴァージョンを比べてみると、ベンチャーズが8ビートにアレンジしてアップテンポで演奏しているのに対し、ジョニスミの方は実に落ち着いたソフトな演奏で、ハラハラと舞い落ちる木の葉のようなメロウな音色で非常に繊細な表現をしているのが大きな特徴だ。彼の幽玄な音世界で楽しむ「ウォーク・ドント・ラン」もベンチャーズとは又違った味わいがあっていいものだ。
JOHNNY SMITH

オイゲン・キケロ バッハのソフトリー サンライズ


⑤Ventures
 ベンチャーズの「ウォーク・ドント・ラン」には2種類のスタジオ・ヴァージョンが存在する。1960年のデビュー・シングル「ウォーク・ドント・ラン」(全米2位)と、サーフィン・アレンジを施した再演ヴァージョン「ウォーク・ドント・ラン'64」(全米8位)だ。前者はボブ・ボーグル(リード・ギター)、ドン・ウィルソン(リズム・ギター)、ノーキー・エドワーズ(ベース)、そしてスキップ・ムーア(ドラムス)というメンツでレコーディングされたもので、ノーキーがリード・ギターを担当しメル・テイラーがドラムを叩いている後者と聴き比べてみるとそれぞれのプレイの特徴がハッキリと聴きとれて実に面白い。私はメル・テイラーこそがベンチャーズ・サウンドの要だと思っている人間なので、スキップ・ムーアのプレイも捨て難いが(←特にあのイントロは当時としては斬新だったと思う...)どちらか一方を選べと言われればやはり後者ということになるだろう。ドン・ウィルソンのトレモロ・グリッサンド(←要するにテケテケですな...)も冴えわたっていて言うことナシだ (^o^)丿 それにしても2度もトップ10に入る大ヒットを出してもらった原作者のジョニー・スミスは印税がガッポリ入って笑いが止まらんかったやろなぁ...(-。-)y-゜゜゜
The Ventures - Walk -- Don't Run (original) - [STEREO]

The Ventures - Walk Don't Run '64
コメント (4)