shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The River Rhine Tapes / The Beatles

2022-11-26 | The Beatles
 去年の今頃、ピーター・ジャクソン監督の映画「Get Back」を観るためにディズニープラスへの入会でスッタモンダしていたのが今となっては懐かしい思い出だが、あの映画をきっかけにしてそれまで細かいことを気にせずに気の向くままに楽しんでいたゲット・バック関連の音源を再度時系列に沿って整理して聴くようになり、そのおかげでいくつか新たな発見があった。結果として「Get Back」を観る楽しみも又倍増するという、まさに絵に描いたような好循環を経験できた。
 そもそもビートルズのゲット・バック・セッションの音源に関しては数えきれないくらいのブートレッグが出ており、初心者の頃は何が何だか分からずに手当たり次第に買っていたこともあって、私のレコード/CD棚には似たような盤が一杯並んでいる。それらの大元となった1/2~1/31までのセッションを完全収録したPurple Chickレーベルの「A/B Road」はトータルで97時間もあるらしいのだが(←何年か前にMoonchildレーベルがこれをプレスCD化した「The Complete Get Back Sessions」は何と83枚組!)、膨大な音源の中からこれぞ!というべき名演をピックアップして絶妙な編集で聴かせてくれるアイテムこそが普段聴きに相応しい。
 私の場合、日常的に聴くのはLPなら「Sweet Apple Trax」(モノラル)、CDなら「The River Rhine Tapes」(ステレオ)とほぼ決まっており、たまには他の盤も聴くように努めているのだが、結局はこの2枚に戻ってしまう。「Sweet Apple Trax」は以前このブログで取り上げたので、今回は「The River Rhine Tapes」にしよう。
 この「The River Rhine Tapes」は小型のオープンリールで録音された “ナグラ・テープ” が元になっているという点では「Sweet Apple Trax」や「Black Album」と同じであり、実際半分以上のトラックがそれらと被っているのだが、決定的な違いはスタジオ内の離れた位置に設置されたAロールとBロールの音をミックスするというチカラワザ(?)でステレオに仕上げてあることで、他の盤とは一味も二味も違う臨場感が味わえるのが何よりも嬉しい。実際私はそれまでずっとモノラルでナグラを聴いてきたこともあって、初めてこれを聴いた時はかなり新鮮に響いたものだ。
The River Rhine Tapes; Get Back sessions / The Beatles

 編集のセンスも抜群で曲の配置もかなりよく考えられており、まるでスタジオでビートルズのセッションを聴いているかのような自然な流れを生み出している。私的ベスト編集盤である「Sweet Apple Trax」に比肩する内容の濃さであり、気持ち悪いエコーが過剰にかけられた Disc2-③「Oh Darling」(1/14録音)だけが思いっ切り浮いている以外は大満足の逸品だ。とにかく理屈抜きに聴いてて楽しいので、未聴のビートルズ・ファンは是非一度聴いてみて下さい。

Revolver 2022 Super Deluxe Edition ④

2022-11-20 | The Beatles
 ディスク4は「Original Mono Master」だ。ロックであれジャズであれ、昔のモノラル音源をデジタルでCD化したものがオリジナル盤LPよりも音が良かったなんて経験はこれまで一度も無かったので正直言って今回のモノ・マスターにもあまり期待はしていなかったのだが、案の定CD版モノは良くも悪くも私の予想通りの音で、それなりに空間の広がりのようなものは感じるが、“まぁこんなもんかな...”というところ。その後届いたLP版モノは、CD版よりは音が良かったものの、オリジナル盤の足元には遠く及ばなかった。まぁ人によって音の好みはそれぞれだが、少なくとも私がモノラル音源に求めるものは一にも二にも “生々しさ” であり、“有無を言わせぬ圧倒的パワー” であるからして、少なくともモノラルに関してはUKオリジナルのアーリー・プレス盤さえあれば他は何も要らないというのが私の正直な感想だ。因みにステレオに関しては今回のニュー・リミックスLP版の音は十分合格点だと思う。
 ディスク5「Revolver EP」には「Paperback Writer」と「Rain」のステレオとモノの計4トラックが入っている。「Paperback Writer」のステレオはコーラス・ハーモニー部分の重ね方がデミックスによってかなり精緻に再構築され、メリハリ感が大きくアップしてシャキシャキした “とってもモダンな音” に生まれ変わっており、これはこれでアリやなぁという感じ。逆にギターの荒々しさはオリジナル・ミックスよりも控え目になってしまっているのが私的にはちょっと残念。まぁこのあたりはディスク1の本編ステレオと同じく、オリジナルとの優劣云々よりも “こんな音作りの「Revolver」もアリか...” と楽しむ選択肢が増えたことを喜ぶべきなのだろう。
Paperback Writer (2022 Stereo Mix)

 モノラルの方は比較対象が鬼ラウドカットのシングル盤なので、ハッキリ言って相手にもならない。これは上記のモノ・マスター同様、今回のミックスがどーのこーのではなく、UKオリジナル盤の音があまりにも凄すぎるのだ。特に「Paperback Writer」はビートルズの全シングル中最強と言われるスーパーウルトラ爆音盤であり、リイシュー盤の分際でそんなエグいレコードの音とタイマンを張れるワケがない。それと、私はモノ・ミックスの中盤でエコーが強くかかるところにどうしても違和感を感じてしまうのだが、今回のニュー・ミックスではそのあたりが強調されて聞こえるので余計にアウトだ。
Paperback Writer (Mono)

 「Rain」のステレオはベースが大きく前面に出て来たりヴォーカルの配置が変えられていたりで結構面白い。ただ、だからと言ってこれからこれを頻繁に聴くようになるかと問われると答えに窮してしまう。“興味深い”と“好き”とは違うのだ。モノラルの方は、「Paperback Writer」同様にアナログ・シングル盤の音に勝るものは無い。この曲のキモである混沌としたカオスな感じが強く出ていてリヴォ指数が高く感じられるからだ。あくまでも私個人の好みの問題だが、モノラル音源はやっぱりアナログのアーリー・プレス盤に限ると思う。
Rain (Mono)

 ということで4回に分けてダラダラと感想を書き散らかしてきたこの「Revolver 2022 Super Deluxe Edition」。届いてからもう3週間ほど経ったが、ずーっと頭の中がリヴォりまくりで毎日が実に愉しい。それにしても大好きな「Revolver」の珍しい音源が一杯聴けるなんて、長生きはするモンですなぁ...

【おまけ】この前の日曜に行われたF1サンパウロGPでレース前のグリッド上にサージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドが降臨! サンバとペパーズという組み合わせがいかにもブラジルという感じだ。私的にはレース結果よりもこのビートルズの巨大案山子(?)とレッドブルのチームオーダーを巡る内輪揉め(←今後めちゃくちゃ尾を引きそうで楽しみ...笑)が一番印象に残りました。
      

Revolver 2022 Super Deluxe Edition ③

2022-11-15 | The Beatles
 ディスク3の「Revolver Sessions 2」はディスク2の最後の2トラック「And Your Bird Can Sing(First version ‐Take 2)」に続く形で同曲のSecond Version ‐Take 5 から始まる。このテイクは結構面白くて、最終的にはボツになったものの、ポールとジョージの “ア~♪” というコーラスがめちゃくちゃ新鮮に響く。ビートルズってコーラスには人一倍拘りがあるようで、貪欲と言ってもいいくらい色んなアレンジを試しているのがよくわかる。まぁオフィシャル・ヴァージョンのアグレッシヴなアレンジを聴くと、確かにこのポップなコーラスの入る余地はどこにもないが、私個人としてはこの “ア~♪”コーラスが気に入っているので、コーラス入りの完成形を聴いてみたかった気もする。逆に「Anthology 2」で既出の「Taxman(Take 11)」は “anybody got a bit of money?” の早口コーラスがイマイチ曲想に合ってないように思う。ポールの尖がったギター・ソロが無いエンディングも何て言うか “気の抜けたビール” みたいで、ボツになるのは当然か。
And Your Bird Can Sing (Second Version / Take 5)

 「I’m Only Sleeping」は彼らにしては珍しくヴィブラフォンを使ったクールな「Rehearsal Fragment」、レイドバックしたアコースティック・セッション風の「Take 2」、ドラムスが入った軽快なテンポがめちゃくちゃ気持ち良いインスト・ヴァージョンの「Take 5」、逆回転ギターの入りが最終完成形ヴァージョンと違うアンニュイな「Mono Mix RM1」と4つものテイクが入る大盤振る舞いで、この曲が出来上がるまでどのように進化&深化していったかが垣間見れてめちゃくちゃ面白い。特に3つ目の「Take 5」が生み出すグルーヴは特筆モノで、何度聴いてもクーッ、たまらん!の世界。大好きだったこの曲が益々好きになっていく...
I’m Only Sleeping (Take 5)

 「Eleanor Rigby」ではまずジョージ・マーティンがヴィブラート “有り”と“無し”の2パターンで曲のアタマ部分をストリングス隊に演奏させてポールに “違いが分かるかい? (Tell the difference?)” と尋ねたところ、“う~ん、よく分かんない...(Ummm... not much.)” という気のない答えが返ってくるところが笑える。現場では “無しの方がエエやろ...(It sounded better without)”という意見が大勢を占め(←確かに!)、そこから弦楽アンサンブルのみのインスト・ヴァージョン「Take 2」へと繋げるという実にニクイ構成になっている。このインスト・ヴァージョン自体は「Anthology 2」に入っており、ビートルズが関わってないクラシック音楽の楽器演奏なんかに何の興味もない私はいつも飛ばして聴いてきたが、こういうオモロイ前振り付きだとついついもののついでに聴いてしまう(笑)
Eleanor Rigby (Speech Before Take 2)

 「For No One(Take 10 ‐Backing Track)」はポールのピアノとクラヴィコード主体のインスト・ヴァージョンだが(←まだフレンチホルンは入っていない...)、埋もれていたリンゴのドラムスがしっかりと聞こえるのが嬉しい。伴奏のみということで、ポールが「Michelle」で味をしめたクリシェ(←伴奏を一音ずつ下げていくバロック音楽の手法)の効果が実にわかりやすいトラックになっている。
For No One (Take 10 / Backing Track)

 この「Revolver Sessions 2」で最大の発見が「Yellow Submarine」だ。私はこれまでこの曲は “ポールが作った童謡風の曲をリンゴに贈った” ものだとばかり思っていたのだが、大元となったバースは何とジョンが作った物悲しげなメロディーの断片で、ポールがそこに “黄色い潜水艦”というキャッチーなコーラス部を付け加えて曲想が大きく変化、更に色んな効果音を付け加えて大衆向けのポップ・ソングに仕立て上げたという、まさに “Lennon-McCartney” ならではのクリエイティヴな作品だったとは本当に驚きだ。この曲に関しては4トラック収録されており、「Take 4 before sound effects」や「Highlighted sound effects」も悪くはないが、やはり何と言っても曲が出来上がるまでの変化の過程がよくわかる「Songwriting work tape」の2つトラックが私にとっては最大の収穫だ。
 まず「Songwriting work tape‐Part 1」だが、これこそまさに世紀の大発見! ジョンがギター弾き語りで “僕の生まれた町では... 誰も気にかけない... 僕の名前... 誰も気にかけない...” と歌うバースのみのフラグメンツで(→仮題は「No One Cared」か???)、まだサビの “イエロー・サブマリン” のイの字も無い。「ジョンたま」期を想わせるようなホーム・デモ・レコーディングで淡々と歌うジョンの歌声が兎にも角にも素晴らしい。
 それが「Songwriting work tape‐Part 2」になるとサビの部分が登場(←ポールが Can you read that? って言ってるから、ポールが歌詞を書き換えてジョンがそれを見ながら歌ってるのかな...)、全編ジョンのヴォーカルで(←めちゃくちゃ良いっ!!!)ポールの “Look out!” “Get down!” という合いの手も実に良い味を出している。ジョンとポールの共同作業の様子が伝わってくる秀逸なトラックだ。
Yellow Submarine (Songwriting Work Tape / Part 2)

 「I Want To Tell You(Speech and Take 4)」は演奏前の会話からこの時点で曲名がまだ決まってないこととかリンゴが“Tell You”というアイデアを出したこととかが分かるが、肝心の演奏は40秒程度のインストだけで終わってしまうのが残念だ。「Here There And Everywhere(Take 6)」はポールのカウントから始まり、コーラス・パート無しでポールのヴォーカルがシングル・トラックで聴けるという “スッピン” ヴァージョン。メロディーの美しさが際立つ素朴な仕上がりになっている。
Here, There And Everywhere (Take 6)

 リヴォルヴァー・セッションで最後にレコーディングされた「She Said She Said」は「John's demo」と「Take 15‐Backing track rehearsal」の2トラックを収録。前者はアコギをかき鳴らしながら力強いヴォーカルを聴かせるジョンが素晴らしいし、インスト・ヴァージョンの後者はこの時点でアレンジがほぼ完成していることをうかがわせるまとまった演奏で、特にビシバシ叩きまくるリンゴのキレッキレのドラミングは圧巻だ。
She Said She Said (Take 15 / Backing Track Rehearsal)

Revolver 2022 Super Deluxe Edition ②

2022-11-11 | The Beatles
 ディスク2の「Revolver Sessions 1」は録音した時系列に沿って収録されているらしく、「Tomorrow Never Knows(Take 1)」から始まる。このヴァージョンは「アンソロジー2」で既出なのだが、めちゃくちゃ好きなので何度聴いても飽きない。才気煥発というか、テイク1でこの凄さである。私にとってはこの1曲だけで「ペパーズ」以上の衝撃を受けたという、まさに神曲の記念すべきテイク1なのだ。続いて同曲の Remix 11(←UKモノ1stプレスに入ってた回収ヴァージョン)が入っているが、手持ちのアナログ1G盤のエグい音に比べるとかなり整然とした感じに聞こえてしまう。21世紀の最新テクノロジーをもってしてもあのおどろおどろしい雰囲気は再現不可能なのだろうか?
The Beatles - Tomorrow Never Knows (Take 1 / Audio)

 「Got To Get You Into My Life」は3つのヴァージョンが収録されているが、何と言っても2つ目の Second Version ‐Unnumbered Mix のロックンロール・バンド然としたホーン・セクション抜きアレンジが新鮮でカッコ良い。「Think For Yourself」のファズ・ベースみたいな音も耳に残る。3つ目の Second Version ‐Take 8 はインスト・ヴァージョンであるが故にこの曲のそれまでの器楽アレンジの変遷が手に取るように分かって実に楽しい。
The Beatles - Got To Get You Into My Life (Second Version / Unnumbered Mix)

 同じく3つのヴァージョンが入っている「Love To You」は1つ目の素朴な Take 1 が気に入っている。タイトルはまだ Granny Smith(青リンゴ)のままだが、シタールが入ってないだけでこうも印象が違うとは...(゜o゜)  てゆーか、私は常々 “シタールは「Norwegian Wood」みたいに隠し味的に使ってこそ活きる” と思っていて、「Within You Without You」や「The Inner Light」みたいな “全身シタールまみれ” の曲がどうしても苦手なので、この「Love You To」もそれら2曲よりは幾分マシとはいえシタール全開で来られるとちょっと辛い。過ぎたるは及ばざるが如しと言うではないか。余計な装飾が一切無いこのTake 1 を聴いて “あぁこんなにエエ曲やってんなぁ...” と再発見できた。
Love You To (Take 1)

 「Paperback Writer(Takes 1 &2 ‐Backing Tarck)」はヴォーカルの入ってないインスト・ヴァージョンなのだが、これがもう鳥肌が立つくらいのカッコ良さ。そういう意味では後で出て来る「Doctor Robert(Take 7)」も甲乙付け難いくらい素晴らしいのだが(←リンゴのドラミングがめっちゃ巧い!)、聴いてて思わず身体が揺れてしまうグルーヴは唯一無比だ。これらの凄まじいまでのドライヴ感を前にすれば他のロックンロール・バンドなど瞬時にして砕け散ってしまう。何しろビートルズなのだ。砕け散って本望と言うべきだろう。
Paperback Writer (Takes 1 & 2 / Backing Track)

Doctor Robert (Take 7)

 ディスク2で一番興味を引かれた音源が「Rain(Actual speed)」だ。アップテンポで演奏・録音したバック・トラックのテープ・スピードを下げてこの曲を完成させたという経緯は知識として知ってはいたが、まさかその超高速ヴァージョンを実際にこの耳で聴けるとは思わなんだ。メロディーは同じでもテンポ / キーが違うだけでこれほどイメージが変わるとは驚きだが、リヴォってない「Rain」なんか「Rain」じゃない!と言いたくなるくらい強烈な違和感だ。それにしても、リンゴといい、ポールといい、よくぞまあこんな超高速で演奏できるもんやなぁと感心させられた。続きに収録されている「Rain(Slowed down for master tape)」(←まだADT処理前のジョンのヴォーカルがガチのダブル・トラックで聴ける!)と併せて聴くことによって当時のレコーディング・プロセスがわかるところがファンとしては嬉しかった。
Rain (Take 5 / Actual Speed)

Rain (Take 5 / Slowed Down For Master Tape)

 「And Your Bird Can Sing」には「Anthology 2」で有名になった “Giggling(くすくす笑う)”ヴァージョンというのがあるが、ここではそれとはまた別の “Giggling”ヴァージョン(←First version / Take 2となっていてAnthologyのとは笑い方が違う...)が収録されており、Giggling Vocalを重ねるまでのビフォー/アフター2トラックが並んでいる。演奏そのものは最終完成形のテイクよりも軽やかでポップな感じだ。それにしても大麻ラリパッパ状態(?)でバカ笑いしながら歌ったテイクでもロックンロールとして立派に聴かせてしまうあたり、ビートルズってホンマに凄いバンドやなぁと感心してしまった。
And Your Bird Can Sing (First Version / Take 2 / Giggling)

Revolver 2022 Super Deluxe Edition ①

2022-11-06 | The Beatles
 「Revolver」のスーパー・デラックス・エディションを手に入れてからこの1週間というもの、毎日毎日アホみたいに聴きまくっている。ビートルズの全アルバム中でも三指に入るスーパーウルトラ愛聴盤の「Revolver」が最新技術によってピッカピカに磨き上げられてドカーン!と届いたのだからコーフンするなという方が無理。家に居る時や車の中はもちろんのこと、仕事中でもパソコンに向かって書類を作っているふりをしながら(笑)イヤホンで聴きまくっているせいか、カモメのテープループ音が脳内リフレイン状態だ。
The Beatles REVOLVER Special Editions - Official Trailer

 私はこれまでの50周年ニュー・リミックス・シリーズ4タイトルの時と同様に今回の「Revolver」も輸入盤CD5枚組スーパー・デラックス・エディションと輸入盤LP(1枚単独のヤツ)の両方をHMVで予約しており、CD版の方は発売翌々日の10/30に無事到着。マルチバイなんちゃらとかいうキャンペーンを利用して16,500円で買えて嬉しかったが、単品LPの方は何故か発売が2度も延期されるというグダグダぶり。同じアナログでも “4LP+EP”版の方はちゃんと発売日にリリースされとるというのに、メーカーは一体何をしておるのだ? 一刻も早くアナログの音でニュー・ミックスの音を楽しみたかった私は単品LPをキャンセルし、思い切って“4LP+EP”版の方を買うことにした。予定よりも出費はかさむことになるが、知らないうちに貯まっていたHMVのポイントをフルに使って18,700円で買うことができた。こちらはまだ手元には届いてないので、今日はCD版を聴いた感想を書いていきたい。
 まずはメイン・ディッシュとでも言うべきディスク1の「ニュー・ステレオ・ミックス」から。これはジャイルズ・マーティンとサム・オケルが例のデミックス・テクノロジー(←映画「Get Back」でピーター・ジャクソン監督のサウンド・チームが開発した新技術)を駆使して、ギター、ベース、ドラムスが1つの同じトラックに入っている4トラック・テープから各楽器の音を分離し、定位などをしっかりと整えて聴感上自然なステレオ・ミックスに仕上げたものだ。
 「Revolver」には色んなタイプの曲がごった煮状態で詰め込まれており、そのアレンジやレコーディングにおいてそれぞれ先鋭的かつ野心的な試みがなされているにもかかわらず、絶妙な緊張感を湛えながら1枚のアルバムとして成立しているという凄いレコードなのだが、中でも要所要所をピリッと引き締めているジョンのサイケ色の強い曲のインパクトは特筆モノ。今回のニュー・ミックスではそういった “リヴォッた”曲たちがデミックスによって換骨奪胎→クリアーな音で再構築されており、新鮮な感覚でこの稀代の傑作アルバムを楽しむことが出来るのだ。
 例えば「I'm Only Sleeping」では逆回転ギターを中央に定位させることによって、「She Said She Said」では左chで埋もれていたジョージのリードギターがクリアーに聴かせることによって、それぞれ曲のイメージが変わったし、我が最愛の曲「Tomorrow Never Knows」でもより奥行き感を出すことによってリヴォ指数が格段にアップ、轟きわたるポールのベースの重低音との相乗効果で凄まじいグルーヴを生み出している。う~ん、カ・イ・カ・ン... (≧▽≦)
The Beatles - I'm Only Sleeping

The Beatles - She Said She Said

The Beatles - Tomorrow Never Knows

 ポールの曲では「Eleanor Rigby」出だしの例のミキシング・ミスが修正されたのが喜ばしいが、私が一番感心したのは「Got To Get You Into My Life」で、ブラスがクリアーな音で左右にバランスよく振り分けられたことによってよりダイナミックに、そして包み込まれるような感じで楽しめるようになったことで、デミックス・テクノロジーが効果テキメンという感じ。リニューアルされた「For No One」も絶品で、オリジナル・ステレオ・ミックスに比べてより品格が漂うというか、気品すら感じさせる見事なミックスに仕上がっている。又、「Here There And Everywhere」のコーラスの定位配置も見事という他なく、この曲の比類なき美しさに拍車をかけているようだ。
 ジョージの「Taxman」もそれまで他の楽器と一緒くたに片チャンネルで鳴っていたギターの音を分離してセンターに定位させ、クリアーで切れ味鋭い音に仕上げることによって、曲が活き活きと躍動しているように感じられるのだ。「ペパーズ」から始まったこのニュー・リミックス・シリーズだが、私的には今回の「Revolver」が一番満足度が高い。
The Beatles - Got To Get You Into My Life

The Beatles - For No One

The Beatles - Taxman

 初期~中期ビートルズのオリジナル・ステレオ・ミックスに関しては例の悪名高い “左右泣き別れ”ミックスが不自然極まりないこともあって(→「Revolver」はまだマシな方だったが...)何かと言えばモノラル盤ばかり聴いてきた。今回のニュー・ミックスでは楽器やコーラス・ハーモニーの定位がドラスティックに変えられ、バランスが良くて立体感すら感じさせるような見事な音像定位になっており、ステレオも悪くないなぁという気にさせられた。ジャイルズとサム、ホンマにエエ仕事しますなぁ...  今後「Rubber Soul」→「Help!」と時を遡ってニュー・リマスター・シリーズがリリースされそうなので、そちらも大いに楽しみだ。

NME Poll-Winners All-Star Concert 1964 & 1965

2022-11-03 | The Beatles
 ビートルズのカラー化DVDシリーズの中で私が「A Hard Day's Night」と同じくらい興味を引かれたのがメロディ・メーカー誌と並ぶイギリスの音楽雑誌だったNME(ニュー・ミュージカル・エクスプレス)誌主催のPoll-Winners All-Star Concert の模様を収めたDVDだ。これらはモノクロの断片的な映像しか持っていなかったこともあって、1964年版と1965年版を両方買うことにした。
 まず1964年版の方だが、ビートルズは「She Loves You」「You Can't Do That」「Twist And Shout」「Long Tall Sally」「Can't Buy Me Love」の5曲を演奏している。このライヴ映像で一番印象に残るのは何と言っても右側のジョン用マイクの不安定さ(笑)。私なんかそっちの方が気になって歌や演奏の鑑賞に集中できない。ちょうど6・30日本公演でのポールのマイクスタンドが揺れまくってた例の一件を思い起こさせるレベルのグダグダぶりなのだ。
 1曲目の「She Loves You」が始まってすぐにジョンが歌いにくそうに何度も何度もマイクの向きを変えているが一向に直らないし、そもそもマイクスタンド自体がグラグラ揺れているのだから話にならない。続く「You Can't Do That」でも事態は改善されず、「Twist And Shout」ではメンバーが立ち位置をスワップしてジョンが左側のマイクで歌い、ポールとジョージが右側のグラグラ・マイクでコーラスを付けている。「Long Tall Sally」ではそんなマイクスタンドなんて倒れてしまえとばかりにリッケンをガンガン弾き倒すジョンが面白い。全5曲わずか15分足らずのステージだが、ビートルズの演奏自体は圧巻そのもので、めちゃくちゃ気合いの入ったロック魂溢れる名演と言っていいと思う。
 ただ、この64年版はメンバーの顔色が濃くなったり薄くなったりと色調が不安定で、もちろん白黒よりはマシなものの、点数化するとしたらせいぜい60点ぐらい。カラー化の出来に関しては「可」という評価が精一杯だろう。
The Beatles live at the 1964 NME readers poll awards - AI Colorized and Upscaled
 
 1965年版のセトリは「I Feel Fine」「She's A Woman」「Baby's In Black」「Ticket To Ride」「Long Tall Sally」の5曲で、冒頭でジョンがマイクの向きを調整するのに手こずっていて“またかよ...” と不安がよぎるが、演奏が始まるとマイクがグラグラすることもなくステージは順調に進行する。ただし「I Feel Fine」の前半は左側のマイクがオフになっていたようで、ポールとジョージのコーラスが聞こえない。前年の熱気迸るようなステージも良かったが、この年の余裕すら感じさせる落ち着いた演奏も又素晴らしい。2年連続でラストは同じ「Long Tall Sally」だが、比較視聴すれば1年間でビートルズがどれだけ成長したかがよくわかる。カラー化の出来は上々で、80点あげてもいいんじゃないかと思えるくらい色調は安定している。
Beatles Full NME 1965 Concert Colorized

 このDVDではビートルズ以外にもストーンズやアニマルズ、ハーマンズ・ハーミッツなど様々なグループが見れるが、私的には「Georgy Girl」で有名なシーカーズが見れたのが予想外の大収穫。しかも「I'll Never Find Another You」「A World Of Our Own」という屈指の名曲を演ってくれているのだから涙ちょちょぎれる。こんな名曲がゴロゴロしてた60年代ってホンマに凄い時代やってんなぁと思う。私は基本的にコンピレーション物はあまり買わないのだが、このDVDに関しては買って大正解だったと思っている。
The Seekers - A World Of Our Own (1965)