shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

圭子の夢は夜ひらく / 藤圭子

2013-08-29 | 昭和歌謡・シングル盤
 真夏のポール祭りもいよいよ大詰めなのだが、大阪公演の詳細が未だに発表されないのでテンションの維持が難しい。8月ももう終わるというのに、一体いつまで待てというのだろうか。このまま生殺し状態で続けるのはさすがにツライので、ここらで祭りを一旦中断し、大阪公演のチケット入手の白黒がハッキリついた時点でその報告も兼ねて最終回をやりたいと思う。
 ということで次のブログ・ネタはどのレコードにしようかなぁと考えていたところへ、藤圭子さんが亡くなったというニュースが飛び込んできた。それもどうやら飛び降り自殺らしいという衝撃的な内容だ。彼女に関しては何年か前に “昭和歌謡特集” をやっていた時に取り上げるつもりだったのが中断してそれっきりになっており(←このブログ、私の行き当たりばったりな性格を反映して特集の中断がやたらと多いです...)いつかやろうと思っていたのだが、みながわ最高顧問からコメントをいただいたこともあり、今日は追悼の意味も込めて私が初めて買った彼女のシングル盤「圭子の夢は夜ひらく」でいきたい。
 この「夢は夜ひらく」という曲は元々1966年に園まりでヒットしたのがオリジナルで、歌詞も “赤く咲くのはけしの花~ 白く咲くのは百合の花~♪” で始まる藤圭子ヴァージョンとは違い、 “雨が降るから逢えないの~ 来ないあなたは野暮な人~♪” で始まるのがかえって新鮮に響く。まぁコレはコレで悪くはないが、私的には歌詞と歌唱がコワイぐらいにマッチした藤圭子盤の圧勝だ。
園まり - 夢は夜ひらく


 この曲がナンシー・シナトラ&リー・ヘイゼルウッドの「サマー・ワイン」と似ているというのは有名な話で、確かに「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」の一件ほど露骨ではないにせよ、出だしの部分なんかそっくりで “赤く咲くのは~♪” で歌えてしまうところが面白い。こういうのをパクリ云々と騒ぎ立てるのは無粋の極みで、音楽ファンとしては聴き比べのネタができてラッキー(^.^)と考えた方が楽しい。興味のある方は聴き比べてみてください。
Summer Wine / Nancy Sinatra & Lee Hazelwood


 「圭子の夢は夜ひらく」は彼女にとって「新宿の女」「女のブルース」に続く3枚目のシングルで、青江三奈やクールファイブといったムード歌謡全盛の1970年においても傑出した大ヒットを記録。シングル・チャートで10週連続1位、そのうち2週はチャートを再浮上した「女のブルース」を従えての1位2位独占、更にデビュー・アルバムからの3作でアルバム・チャート41週連続1位(うち18週はシングル・アルバム両チャートで1位!)と、まるで1964年のアメリカにおけるビートルズ現象を想わせる凄まじさで、街角には彼女の歌が溢れていたという。この日本音楽史上空前絶後の大記録は今後も破られることはないだろう。
 この曲の魅力は彼女を見い出しスターに育て上げた恩師である石坂まさを氏によって新たに書き下ろされたその歌詞にある。四行詩で六番まで繰り返すという構成が “流し” 出身の彼女の歌唱スタイルにピタリとハマり、聴く者に強烈なインパクトを残すのだ。特に一度聴いたら絶対に忘れられない “十五、十六、十七と 私の人生暗かった~♪” のフレーズは私の世代以上の日本人ならほぼ誰でも口ずさめるぐらい有名だし、 “昨日マー坊 今日トミー 明日はジョージかケン坊か~♪” のラインも実に秀逸。当時まだ19才にしてそんな暗~いムードの歌詞を日本人好みの翳りのあるメロディーに乗せ、ドスを効かせながら貫禄すら感じさせる歌唱でドライに歌い上げた彼女のシンガーとしての抜群のセンスと表現力には脱帽だ。 “その人の歩んできた人生が歌に表れるのが昭和歌謡だ” なんて野暮なことは言いたくないが、技法だけではどうにも説明のつかない何かがそこにあるのもまた厳然たる事実であり、この曲はまさに彼女の人生を見事に描いた歌であるゆえに多くの人々の心に深く刻み込まれ、記憶に残る名唱となり得たのだと思う。
圭子の夢は夜ひらく


 これほどの超有名曲になるとカヴァーも相当な数に上る。そんな中で私が特に気に入っているのが梶芽衣子と山崎ハコという超個性派シンガーによるカヴァーで、どちらも強烈な説得力で迫ってくる名唱だ。又、ちあきなおみが昭和歌謡の名曲をカヴァーした名盤「恋と涙とブルース」に入っていたヴァージョン(←歌詞はちあき用に新たに書かれたもの)も彼女の圧倒的な歌唱力が堪能できる素晴らしい出来で超オススメだ。
梶芽衣子 - 夢は夜ひらく

山崎ハコ

ちあきなおみ カバー6曲詰め合わせ (この曲は16分34秒から)


【おまけ】圭子姐さんによるさっちゃんカヴァー3連発!!!
 特に “死” について歌った「アカシア」は歌詞が歌詞だけに今聴くと何かこう因縁めいたものを感じさせるが、これらの歌を聴いていると我々が失ってしまったものの大きさを痛感させられる。また一人、昭和の偉大な歌手が逝ってしまった... 謹んで彼女のご冥福を祈りたい。
アカシアの雨がやむとき

赤坂の夜は更けて

涙のかわくまで
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The McCartney Years DVD (Pt. 2)

2013-08-23 | Paul McCartney
 今日は「ザ・マッカートニー・イヤーズ」DVDのディスク2、1983年以降ののビデオ・クリップの中からお気に入りの5曲をピックアップしました。

①Press
 86年にリリースされたアルバム「プレス・トゥ・プレイ」からのリード・シングル「プレス」は時代に敏感なポールが当時流行っていた “ギターやベースよりもシンセが目立つエレクトリック・ポップ・サウンド” を取り入れようとした意欲的な作品で、ポールにしては珍しいリズム主体のアレンジながらウキウキするようなキャッチーなメロディーがキラリと光るポップ・チューンになっている。この曲には基本的に2種類のミックスがあるのだが(さらにそれぞれの短縮エディット・ヴァージョンやインスト強調ダブ・ヴァージョンが存在するのだからややこしい...)、そのサウンドの違いは一聴瞭然。一般的に知られているのはCD化されたベヴァンス&フォワード・ミックス(L4分42秒 / S3分35秒)の方だが、私が好きなのは打ち込みビートやシンセが控え目でその分ギターのサウンドが大きくフィーチャーされたヒュー・パジャム・ミックス(L4分20秒 / S3分58秒)の方で、本当はこちらがオリジナル・ミックスなのに何故かシングル盤の2ndプレスから大仰なベヴァンス&フォワード・ミックスに差し替えられ、この圧倒的に素晴らしいオリジナル・ミックスが闇に葬り去られようとしているのが納得いかない。両方貼っときますんで興味のある方は聴き比べてみて下さい。それと、この曲はビデオ・クリップも秀逸で、ポールがロンドンの地下鉄を乗り継ぎながら歌っているだけ(予算はたったの200ポンド!)の映像なのだが、一般市民の反応や駅の様子が実に面白く撮れており、まさに “アイデアの勝利” と言える作品に仕上がっている。
Paul McCartney - Press

Paul McCartney - Press (Hugh Padgham Mix Edited) [1986]


②My Brave Face
 80年代に入ってバンド活動を止めてからパートナーやプロデューサー選びで試行錯誤を繰り返し、自らが進むべき音楽的方向性に迷いが生じてセールス的にも落ち込んでいたポールが再びかつての輝きを取り戻した1989年の復活作「フラワーズ・イン・ザ・ダート」からの1stシングルがこの軽快な「マイ・ブレイヴ・フェイス」だ。新たなパートナーであるエルヴィス・コステロから受けた刺激とバンド形態によるライヴ活動再開への喜び(←ポールという人はバンドでライヴ活動をしてる時が一番活き活きしてると思う...)がポールに活を入れたのだろうが、ソロになってから敢えてビートルズ的なものと距離を置いて活動してきたポールが、ここにきて変なわだかまりもなくなったのか、自然な形でビートリィなサウンドへ回帰してくれたのが何よりも嬉しい。イントロ無しでいきなり “My brave, my brave, my brave face~♪” というポールの溌剌としたヴォーカル(←声の “張り” が違いますね!)で始まる出だしは初期ビートルズを思わせるし、跳ねるようなベース・ラインも実に印象的。やっぱりポールにはヘフナーのヴァイオリン・ベースがよく似合う。この曲ビデオ・クリップは熱狂的なポール・マッカートニー・コレクターの日本人(!)がポール関連のお宝グッズを次々と盗んでいき、ついにヴァイオリン・ベースを手に入れたところで逮捕されるという笑劇のケッサクなのだが(←当時バブル景気真っ只中だった日本に対する海外からの見方ってこんな感じやったのかも...)、レアな映像やメモラビリアがいっぱい出てきてビートルズ・ファンにとっては見所満載。ラストでパナソニック製の監視カメラが大写しになるという皮肉たっぷりのオチが好きだ。
Paul McCartney - My Brave Face


③This One
 アルバム「フラワーズ・イン・ザ・ダート」からの第2弾シングル「ディス・ワン」はポール節全開のポップなミディアム調ナンバーで、強烈なインパクトに欠けるせいか残念ながらチャート面では振るわなかったが、何度も聴くうちにサビのメロディーが頭にこびり付いて鼻歌で歌いたくなるような親しみやすさ溢れるスルメ・チューンだ。初めてこの曲のビデオ・クリップを見た時は、白鳥に乗ったハレ・クリシュナが何度も登場したり、インド風の衣装に身を包んだポールとリンダが瞑想にふけっていたり、そんな二人のバックでインド人女性ダンサーが優雅に踊っていたりと、ジョージのお株を奪うかのようなインド色の強い作りになっているのにビックリしたが、この曲は元々ポールがインドで買ったポスターに描かれていた白鳥に乗るクリシュナにインスパイアされて書いたもので、言葉遊びの好きなポールが “This Swan” と “This One” ををかけてインドを強く意識した作りにしたからだと後から知って大いに納得。どうりで白鳥が大きくフィーチャーされているワケだ。又、サウンド面でも随所にさりげなくインド風フレイバーが散りばめられており、ポール自らがシタールを弾いているというのも興味深い。それと、個人的にツボだったのがポールが瞼の上に目のメイクを描いて目を閉じたまま演技するシーン(1分15秒あたり)で、私はこれを見るたびに志村けんのコントを思い浮かべて大笑いしてしまう。リンダやヘイミッシュもこのメイクで登場するシーンがあり、天下のポール・マッカートニーの作品に影響を与えた(?)志村師匠の偉大さを痛感させられる。
Paul McCartney - This One


④Hope Of Deliverance
 80年代以降のポールの曲で私が一番好きなのが1993年にリリースされたアルバム「オフ・ザ・グラウンド」からのリード・シングル「ホープ・オブ・デリバランス」だ。一緒に口ずさみたくなるキャッチーなメロディー、ポールお得意の弾むようなアコギのコード・ストロークとパーカッションが生み出す軽快なリズム、希望に満ち溢れた前向きな歌詞、ポールの歌声に絶妙なマッチングを見せるリンダの夫唱婦随コーラス、ウキウキするようなポールの “ホッピルビルビ♪” 一人追っかけ二重唱、そして絵に描いたように美しくキマッたエンディングと、もういくら褒めても褒め足りないぐらいの素晴らしさで、聴くたびに “音楽ってエエなぁ... (≧▽≦)” と思わせてくれるキラー・チューンだ。ポール自身のコメンタリー解説によるとこの曲はドイツで400万枚という大ヒットを記録したとのことだが、ドイツだけで400万という数字はいくら何でも考えにくい(>_<)  多分ポールの勘違いだとは思うが、調べてみたらプラチナ・セールス扱いになっているのでめちゃくちゃ売れたことだけは確かなようだ。動物や自然を愛するポール&リンダらしく神秘的なケルトの森を再現したスタジオ・セットで撮影されたこの曲のビデオ・クリップも素晴らしい出来で、見事なカメラワークによって現場の楽しそうな雰囲気がダイレクトに伝わってくるのだ。特にハンド・クラッピングを織り交ぜながら曲に合わせて身体を揺する “ホープ・オブ・デリバランス踊り” がめちゃくちゃ楽しい。この理屈抜きの楽しさ... やっぱりポール・マッカートニーはこうでなくっちゃ!
Paul McCartney - Hope Of Deliverance


⑤Wanderlust
 この「ワンダーラスト」はディスク1の「ロケストラのテーマ」と同様にメイン・メニューのバックに使われているだけなのだが、ビートリィなアレンジと雄大な曲想がたまらないこの名バラッドが大好きな私としては取り上げないワケにはいかない。元々1982年のアルバム「タッグ・オブ・ウォー」に入っていた隠れ名曲で、シングル・カットされていないためオリジナル・ヴァージョンのビデオ・クリップは存在しないのだが、このDVDで使われているのは映画「ギヴ・マイ・リガーズ・トゥ・ブロード・ストリート」で再演されたヴァージョンの演奏シーンで、オリジナル・ヴァージョンの完成度には及ばないものの、ポールのピアノとリンゴのドラムス、そしてブラス・セクションだけというシンプルな編成がこの名曲の魅力を再認識させてくれる。肩の力の抜けた好演とはこういうのを言うのだろう。まぁファンとしては何よりもポールとリンゴの共演が見れるだけで嬉しいのだが...(^.^) 映像的にはこの曲のアタマの部分(3分15秒~)でリンゴがブラッシュをポイと投げ捨てスティックに持ち替えるシーンが妙に印象的。エンディングでこのメドレーの前曲「ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア」のメロディーをさり気なくハミングで織り込むポール(7分10秒~)がめっちゃ粋だ。
Yesterday - Here There And Everywhere - Wanderlust / Paul McCartney & Ringo Starr
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The McCartney Years DVD (Pt. 1)

2013-08-18 | Paul McCartney
 私がまだ学生だった70~80年代は今と違って YouTube や DVD のような便利なモノは無く、テレビで “動くポール” の映像が見れるだけでもう大喜びで、「ベスト・ヒットUSA」や「MTV」といった洋楽番組を録画してはテープが擦り切れるくらい何度も何度も繰り返し見たものだった。それらのビデオテープはまだ大切に取ってあるが、日常的に楽しむとなると不便極まりないし、今更 DVD化している時間も根気もない。そこで重宝するのがポールのソロ・キャリアにおけるビデオ・クリップを集めたこの「ザ・マッカートニー・イヤーズ」という3枚組DVDだ。
 ディスク1には1970年~1983年の、ディスク2には1983年~2005年のビデオ・クリップが収められており、又ディスク3には「ロック・ショウ」(旧画質で7曲)、「MTVアンプラグド」(4曲)、「グラストンベリー」(11曲)、「ライヴ・エイド」(1曲)、「スーパーボウル」(4曲)からのライヴ映像が収録されている。ディスク1と2のビデオ・クリップ集に関しては「ゲッティング・クローサー」や「スピン・イット・オン」が入ってないといった些細な不満はあるが、これだけのヒット曲をDVDで手軽に見れるというのは大きな魅力だし、通常再生以外にも時系列に沿って並べ替えた “年代順再生” や “ポールの副音声解説入り再生”(←これめっちゃ面白いです...)といったモードが選べるのも嬉しい。
 ということで今回は、ポールのソロ活動を集大成したこのDVDのディスク1の中から、以前の70年代ポール特集で取り上げてない曲をセレクトしてみました。

①C Moon
 この曲が入ったシングル盤を買ったのはA面の痛快無比なロックンロール「ハイ・ハイ・ハイ」が目当てで、「Cムーン」に関しては “何かほのぼのとしたノーテンキな曲やなぁ...” ぐらいの印象しかなかったのだが、何度も繰り返し聞くうちにそのレゲエチックなビートの心地良さにハマっていき、気がつけば愛聴曲の仲間入りをしていたという典型的なスルメ・チューンだ。ビデオを見て面白かったのは各メンバーの担当楽器で、ポールがピアノでデニー・レインがベースに回りリンダがタンバリンというところまでは妥当だが、何とギタリストのヘンリー・マッカロックがドラムを叩き(←変則レゲエ・ビートって結構難しいはずやのによーやるわ...)、ドラマーのデニー・サイウェルはザイロフォン(←いわゆるひとつの木琴ですね)とフリュ-ゲルホーンを演奏しているのだからビックリ(゜o゜)  シンプルなメロディーの反復を主体にしながら曲が進むにつれて楽器の数が増えていくというアレンジも秀逸で、特にエコーの効いたフリュ-ゲルホーンが後半部で絶妙な味わいを醸し出している。
Paul McCartney - C Moon


②Silly Love Songs
 この曲が流行っていた1976年というのは私がちょうど洋楽ロックを聴き始めた頃なのだが、初めて聴いた時はそのユニークなイントロに耳が吸い付き、 “この音は一体どーやって出してるんやろ?” と気になって気になって仕方がなかった。そんな “つかみはOK!”的イントロに続いてポールの歌心溢れるベースが躍動し、キャッチーなメロディーに乗せて “馬鹿げたラヴ・ソングのどこが悪いんだ?” というシンプルそのものの歌詞をポールが繰り返し歌うという、まさにマッカートニー・ミュージックの王道を行く名曲名演なのだ。アレンジも完璧そのもので、ウイングス・サウンドになくてはならないリンダの “夫唱婦随” コーラスはこの曲でも素晴らしい効果を上げているし、要所要所でここぞとばかりに飛来するブラス・セクションのサウンドも絶妙なアクセントになっている。とにかく “アイ・ラヴ・ユー♪” というシンプルそのものの歌詞がこれほど魅力的な響きを持って歌われた例を私は他に知らない。「ウイングス・オーヴァー・ザ・ワールド」のダイジェスト版みたいなビデオ・クリップも当時のウイングスの勢いをよく表しているし、この “馬鹿げたラヴ・ソング” こそ70年代のポールが作り上げた最高のポップ・ソングだと思う。
Paul McCartney - Silly Love Songs


③Mull Of Kintyre
 この「マル・オブ・キンタイア」はちょうどパンク・ロックの嵐が吹き荒れていた1977年にイギリスでリリースされて9週連続1位を記録したスコティッシュ・ワルツ曲で、ビートルズの「シー・ラヴズ・ユー」が持っていたシングル売り上げ最多記録を破ったことでも知られる大ヒット・ナンバーだ。その後、1984年にバンド・エイドの「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマスに」、更に1997年にはエルトン・ジョンによるダイアナ妃追悼曲「キャンドル・イン・ザ・ウインド」に抜かれはしたものの、どちらもチャリティーや追悼といった特殊な目的でリリースされた曲であることを考えれば、やはりこの曲こそがイギリスで最も愛されたヒット曲と言っても過言ではないだろう。ちょうど昭和歌謡のメロディーが日本人の心に沁みるのと同様に、コテコテのスコットランド民謡的旋律、ベタな “ご当地ソング” そのものの歌詞、そしてバグ・パイプを大きくフィーチャーしたサウンドがイギリス人の心の琴線を激しく震わせたことは間違いなく、イギリス中で “第2の国歌” と呼ばれるほど幅広い年齢層から支持され、逆にアメリカでは全くヒットしなかったのも大いに頷ける話だ。私が感銘を受けたのはシンプルながら深~い郷愁を感じさせるその歌詞で、特に “Smiles in the sunshine and tears in the rain still take me back to where my memories remain~♪” のラインなんかもう最高だ。曲良し、歌詞良し、サウンド良し... こういうのを絵に描いたような名曲と言うのだろう。尚、この曲のビデオ・クリップは実際にキンタイア岬で撮影されたヴァージョンⅠとエルスツリー・スタジオで撮影されたヴァージョンⅡの2種類が存在する。
Paul McCartney "Mull Of Kintyre" (Version I & II) 1977


④Coming Up
 ポールという人はその時代の流行の音に敏感で、これまでもレゲエやディスコ、ニュー・ウエイヴと様々な音楽のエッセンスを巧く取り入れて唯一無比のマッカートニー・ミュージックへと昇華させてきたことは以前「グッドナイト・トゥナイト」の時にも書いたと思うが、1980年にリリースされたこの「カミング・アップ」も当時大流行していたテクノ・ポップ風のサウンドで、前作「バック・トゥ・ジ・エッグ」とは似ても似つかない軽めの音作りに驚かされたものだった。しかし私はこの曲が大好き(^o^)丿... ポールのソロ曲の中では確実にトップ10に入れたいぐらいの超愛聴曲なのだ。評論家連中は “ポールがテクノに擦り寄った!” とか言って大騒ぎしていたが、注目すべきは曲そのものの素晴らしさで、そこにあるのはシンセを多用してテクノ・ポップのスパイスを効かせながらもキャッチーなメロディー全開で聴く者を魅了するマッカートニー・ミュージック。あのジョン・レノンがこの曲を聴いて “ポールの奴、ホンマに良い曲を書きやがる!” と悔しがったのは有名な話だ。この曲はビデオ・クリップも文句なしに素晴らしく、ポールが一人何役も演じる面白さが味わえてファンとしては何度見ても飽きない。ビデオの出来はポール史上断トツの№1ではないか。70年代のビデオ・クリップというのは普通に演奏シーンを撮って一丁上がり的な作品がほとんどだが、多重録画を駆使するというユニークな発想で細部に至るまで見所満載に仕上がったこの「カミング・アップ」は来たるべき80年代のMTV全盛時代を先取りした名作ビデオと言えるだろう。
Paul McCartney - Coming Up


⑤Rockestra Theme
 「ロケストラのテーマ」はこのDVDの正式な収録曲ではなく、ただメイン・メニューのバックにこの映像が流れているだけなのだが、個人的に大好きな曲なので気にせず紹介。ウイングスのメンバーに加え、ゼップのボンゾとジョーンジー、ザ・フーのピート・タウンゼンドとケニー・ジョーンズ、フロイドのデイヴ・ギルモアといった錚々たるメンツが一堂に会して生み出すド迫力サウンドが、単調なメロディーの繰り返しに過ぎないこの曲を聴き応え十分なものにしている。特にヒグマのような図体で圧倒的な存在感を誇るボンゾのプレイは必見だし、オールスターを指揮する “コンダクター・ポール” の雄姿もめちゃくちゃカッコイイ(^.^)  尚、この曲のコンプリート・ビデオ・クリップはポール&リンダのアンソロジー的ドキュメンタリー作品「ウイングスパン」DVDにボートラとして収録されている。
Paul McCartney - Rockestra Theme


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Paul McCartney In Complete Red Square DVD (Pt. 2)

2013-08-12 | Paul McCartney
 ディスク2に入ってコンサートもいよいよ後半戦に突入、ポールはアコギから再びヴァイオリン・ベースに持ち替えて「バンド・オン・ザ・ラン」を歌い出す。ビートルズ時代に負けないぐらいポールが輝いていた70年代の曲を演ってくれると私的にはめっちゃ嬉しい。学生時代にリアルタイムで聴いて育ったウイングス・ナンバーには思い入れがたっぷりあるので、それを21世紀に入って再び聴けるというのは感慨もひとしおだ。
Paul McCartney - Band On The Run ( In Red Square )


 そしてキタ━━━(゜∀゜)━━━!!! 待ちに待ったあのジェット音。これを歴史的瞬間と言わずして何と言おう? 赤いシャツを着たポールがモスクワの赤の広場で10万人の大観衆を前に「バック・イン・ザUSSR」を歌う... 最高ではないか! ビーチ・ボーイズをパロッたコーラス・ワークも見事に再現されているし、ハイ・テンションで “Moscow girls make me sing and shout♪” と叫ぶポールの姿はこの赤の広場公演のハイライトの一つと言えるだろう。
 続いてピアノの前に座ったポールが歌い始めたのは「メイビー・アイム・アメイズド」。「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」を聴けば分かるように、この曲は何と言ってもライヴ・ヴァージョンに尽きると思うのだが、ここでも赤の広場に響き渡るポールのソウルフルなヴォーカルが存分に楽しめて言うことナシだ(^.^)
Paul McCartney – Maybe I'm Amazed (Live)


 ポールが所々でフェイクを交えながら軽快に歌う「レット・エム・イン」、 “〇△×■◆※リンダ... 会場にいるすべての恋人たちに捧げます...” と言って歌い始める「マイ・ラヴ」と70年代ウイングスのヒット曲が続く。至る所でライターや線香花火(?)が灯され、会場全体がポールの歌声に酔っているかのようだ。
 “次は60年代にポールがレコーディングした曲だけど、ライヴで演るのはこのツアーが初めてなので、この曲をコンサートで聴くのはみなさんが最初です。” というポール・ウィックス・ウィケンズのMCで始まるのは何と「シーズ・リーヴィング・ホーム」、かつては “ライヴでは再現不可能” と言われたペパーズ曲もどんどんセットリストに加えていくポールの意欲的な姿勢が嬉しい。
Paul McCartney - She's Leaving Home [Red Square '2003]


 ここからはノリの良いアップテンポなナンバーが続く。まずは「キャント・バイ・ミー・ラヴ」... ポールがこの曲を歌い出すと会場全体から大歓声が上がり、オーディエンスは総立ちで手拍子を打ったり踊り始めたりともう大コーフン状態だ。バックのスクリーンに映画「ハード・デイズ・ナイト」のシーンを映し出す演出もニクイですなぁ... (≧▽≦)
Paul McCartney - Can't Buy Me Love (Live)


  続いて “次の曲はみなさんの中で今日誕生日を迎えた人に贈りたいと思います... ハッピー・バースデー・トゥ・ユー!” というMCで始まった「バースデー」、とても還暦とは思えない元気な歌声を聴かせるポールとそれに手拍子で応える大観衆。もうノリノリである。やっぱりビートルズはロックンロールが最高やね(^.^)
Paul McCartney - Birthday [Red Square, Moscow '2003]


 ロシアと言えばスパイ、スパイと言えば007、007と言えばもちろん「リヴ・アンド・レット・ダイ」である(←何じゃそりゃ...)。凄まじい爆裂音と火柱の演出はこの曲のお約束だが、 “来るぞ... 来るぞ...” と分かってはいてもやっぱりコーフンしてしまう。ピアノを激しく連打しながら歌うポールがめちゃくちゃカッコイイ(^o^)丿 血湧き肉躍る演奏とはこういうのを言うのだ。
Paul McCartney - Live And Let Die (Live Red Square Moscow)


 次は一転してポールのライヴ定番中の定番「レット・イット・ビー」でスロー・ダウン。アップになったオーディエンスはみんな幸せそのものという表情でポールの歌声に酔いしれている。ソウルフルなバック・コーラスがこの曲のゴスペル・フィーリングに拍車をかけているのも◎。そしてライヴ本編のラストを飾るのは「ヘイ・ジュード」だ。 後半のリフレイン・パートではお約束の男女対抗コーラス大会に突入し、最後は赤の広場を埋め尽くしたオーディエンス全員での大合唱... あの冷徹なプーチン大統領ですら無意識に身体でリズムを取ってしまう(←5分30秒~42秒あたり)圧倒的なグルーヴが会場全体を包み込むさまは実に壮観だ。
Paul McCartney - Hey Jude Live Red Square HQ


 アンコール1で登場したポールはステージ中央に設置されたキーボードに座って「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」を歌う。フィル・スペクターのオーケストラ・アレンジを絶妙なプレイで再現するラスティ・アンダーソンのギターが素晴らしい。 “ロックしようぜ!” の言葉と共にポールが弾き始めたのはご存じ「レディ・マドンナ」、思わず身体が揺れるこの感覚こそまさにロックンロールそのものだ。曲が終わるとポールは再びヴァイオリン・ベースを手にし、 “まだ十分エネルギー残ってるだろ?” と叫んで「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」がスタート、60年代ビートルマニアの熱気が赤の広場を包み込む。ポールのヴォーカルも絶好調だ。ただ、ラスティのソロが流暢すぎるのが玉にキズ...(>_<)  この曲はオリジナルのあの引っ掛かる様なギター・ソロでないと... と感じるのは私だけかな?
Paul McCartney - I Saw Her Standing There (Live)


 アンコール2ではまずアコギを抱えたポールが一人で登場し「イエスタデイ」を歌う。う~ん、何回聴いても心に沁みる名曲中の名曲やねぇ~(≧▽≦) 曲に酔いしれる人々の表情がめっちゃエエ感じ。 “次の曲は今夜赤の広場に集まってくれたみんな、そしてロシアの人達すべてのために歌います。” というポールの言葉に続いて響き渡るジェット音... そう、この日2回目の「バック・イン・ザUSSR」だ。カメラを意識して(?)背筋をピシッと伸ばしながらも小刻み身体を揺らすプーチン大統領の姿が微笑ましい(笑) 
 ヴァイオリン・ベースからレスポールに持ち替え、“そろそろ家に帰る時間だ... 僕らも君たちもね。” とポールが言うと大観衆は “NO!!!!!”... ポールの“Oh Yeah!” vs オーディエンスの“NO!” の掛け合いが数回続いた後、サンクトペテルブルク公演と同じ「サージェント・ペパーズ(リプリーズ)~ジ・エンド」でこの歴史的コンサートは無事終了。いやぁ~、このDVD買ってホンマに良かったですわ。「ロック・ショウ」でも明らかなように、やっぱりライヴDVDは小賢しい編集をせずにノーカットで完全収録したものに限りますな...(^.^)
Paul McCartney -Back In The USSR Live Red Square
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Paul McCartney In Complete Red Square DVD (Pt. 1)

2013-08-07 | Paul McCartney
 前回書いたように「ポール・マッカートニー・イン・レッド・スクエア」のオフィシャルDVDはポールのコンディションも良くオーディエンスのノリもハンパない好ライヴにもかかわらず、くだらんインタビューが随所に挿入されたアホバカ編集のせいで見るたびにイラッとくる。最初のうちはDVDプレイヤーのCMスキップボタンを押して飛ばし見していたのだが、それも段々面倒臭くなってきたので、ウザッたいインタビューを全てカットして演奏シーンのみに編集した自家製DVD(約60分)を作って問題解決し、気持ち良くポールのライヴを楽しんでいた。そんなある日のこと、ヤフオクでこの「コンプリート・レッドスクエア」DVDを偶然発見、オフィシャル版でカットされた17曲を含む全37曲を完全収録してあることもあって迷わずゲット。ブートDVD-Rだが画質は十分鑑賞に耐えるレベルだし、オフィシャル版とは別ショットの映像が使われているので、送料込みで1,000円ならかなりお買い得だ。
 ディスク1にはコンサート前半部分にあたる20曲(約90分)が収録されている。コンサートのセットリストは2002年のツアーの流れを踏襲しており、日本公演の時と同じようにスクリーンにヘフナーのヴァイオリン・ベースのシルエットが映し出されてポールが登場し「ハロー・グッバイ」でスタート、すでに夕刻のはずだがまるで昼間のように明るい。さすがは白夜の国である。間髪を入れずに「ジェット」をブチかました後、 “赤の広場をロックさせに来たぜぇ~” と叫んで「オール・マイ・ラヴィング」へとなだれ込むカッコ良さ。いやぁ~、もうたまりませんわ(≧▽≦)
All my loving


 「ゲッティング・ベター」では最初ギターのプラグが入っておらず音が出ないというアクシデントが発生するも、すかさず “生で演ってるとこういうこともあるさ” とおどけてみせる。オーディエンスはやんやの大喝采だ。「レット・ミー・ロール・イット」はエンディングをお約束のジミヘン・ナンバー「フォクシー・レディ」でビシッとキメる。それにしてもさすがはポール、ビートルズにウイングスにロック・クラシックスのカヴァーと、のっけから名曲が出るわ出るわのワンコソバ状態だ(^o^)丿 
Paul McCartney - Getting Better (Live)


 「ロンリー・ロード」「ユア・ラヴィング・フレイム」という新曲2曲を披露した後、ステージはアコギを手にしたポール一人に。ポールはMCで英語に時折ロシア語を交えながらしゃべるのだが、ここモスクワでも日本公演で使われた例のトランスレーション・システムが大活躍。ポールは “翻訳システムがちゃんと働いてるかちょっと試してみよう” と言って茶目っ気たっぷりに “The red dog flew in the yellow balloon.(赤い犬が黄色い風船で空を飛んだ。)” をロシア語に訳させ大ウケ。ステージ裏で頑張ってる同時通訳タイピストのオネーさんも大変ですな。
 そんなこんなで一息入れた後、ポールが“60年代のアメリカで差別と闘う黒人女性のことを思い浮かべて書いた歌です。” と言って「ブラックバード」のイントロを弾き始めると大歓声が上がる。それにしてもポールっていくつになってもホンマに歌上手いなぁ... (≧▽≦) 同じアコギの「エヴリナイト」も心に沁みる。続いてイントロでフェイクを一発かました後、おもむろに「ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト」を歌い出すポール。アコギ1本で歌うポールの雄姿もカッコイイし、手拍子とサビの大合唱で応える大観衆もめっちゃエエ感じ。やはり東西を問わずビートルズ・ナンバーはオーディエンスの食いつきが違います(^.^)
Paul McCartney - We Can Work It Out (Live)


 続いてはステージに運び込まれたマジック・ピアノの弾き語りで「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー~キャリー・ザット・ウエイト」、「フール・オン・ザ・ヒル」を歌う。特に「フール・オン・ザ・ヒル」の “See the sun going down~♪” の歌詞の所で赤の広場の向こうに沈んでいく夕陽が映し出される粋なカメラ・ワークには唸ってしまった。
Paul McCartney - Fool On The Hill (Live)


 ジョンとジョージへの追悼コーナーでは二人への想いを込めて「ヒア・トゥデイ」と「サムシング」を歌うポールに目頭が熱くなるが、その姿からは “歌い続けることこそが生き残った者の使命” とでも言わんばかりのポールの不退転の決意のようなものがヒシヒシと伝わってくるし、バックのスクリーンに映し出される映像にも涙ちょちょぎれる。ビートルズ・ファンとしては万感胸に迫る時間帯だ。
 続いてストリングスのオケをバックにアコギ1本で歌う「エリナー・リグビー」、ポール・ウィックス・ウィケンズのアコーディオンが実にエエ味を出してる「ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア」、エイブ・ラボリエル・ジュニアのドライヴ感溢れるブラッシュ・プレイがたまらない「アイヴ・ジャスト・シーン・ア・フェイス」、あのプーチン大統領も笑顔で聴き入る美しいメロディーの「カリコ・スカイズ」、バンド・サウンドからコーラス・ワークに至るまでビートリィな薫り横溢の「トゥー・オブ・アス」、 “〇△×■◆※ フランスゥー” というポールのロシア語による曲紹介で始まる「ミッシェル」と珠玉の名曲の数々が次から次へと登場、夕闇が迫る中繰り広げられたこのアコースティック・セットは前半最大の見所だと思う。 (つづく)
Paul McCartney - I've Just Seen A Face (Live)

Paul McCartney - Two Of Us [Red Square, Moscow '2003]
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Paul McCartney In Red Square DVD

2013-08-01 | Paul McCartney
 ポール大阪公演の詳細が中々発表されない。会場すら未定とは一体どーなっておるのか! よりにもよって何故大阪だけが決まらないのか... と悶々としながらポールのライヴDVDを取っかえ引っかえ見る毎日だ。ということで今日はそんな中から「ポール・マッカートニー・イン・レッド・スクエア」を取り上げよう。
 このDVDは2部構成になっており、第一部には2003年にモスクワの赤の広場で行われたポール初のロシア公演の模様が、第二部には翌2004年のサンクトペテルブルク公演の模様が収められている。 “赤の広場コンサート” の方はDVD発売前にNHKで放送されたものとほとんど同じ内容だが、サンクトペテルブルク公演の方は持ってなかったので迷わず購入。
 まず第一部の “赤の広場コンサート” だが、これはライヴ・コンサートの映像というよりは “ライヴの映像を細切れにして散りばめたドキュメンタリー作品” と言うべきもので、ちょうど「バック・イン・ザ・US」や「ザ・スペース・ウィズイン・アス」みたいに曲と曲の間に余計なインタビューや映像がガンガン挿入されるのだが、コレがもう鬱陶しくて仕方がない。旧ソ連の共産主義社会崩壊にビートルズが果たした役割がいかに大きかったかという趣旨の話がロシアの社会学者やらローカル・ミュージシャンやらへのインタビューでしつこく語られるのだ。音楽以外には何の関心も無い私は “そんなことどーでもエエから早よステージに戻れよ!” とイライラしっぱなし<`ヘ´>  肝心の演奏シーンもくだらんインタビューでバラバラにされた上に夜のシーンの次に昼のシーンが出てくるという時系列を無視したアホバカ編集で、見ていてめっちゃ違和感を感じてしまう。ポールのロシア初ライヴという最高の素材を最悪の編集で台無しにしてしまっているのが残念だ。
 ただ、プーチンやゴルバチョフと対面するシーンとか音楽院や孤児院を訪問するシーンといった興味深い映像もあってそれはそれで結構楽しめる。出来ることなら本編ディスクはライヴ演奏だけを演奏順にノーカットで収録して、それとは別に “ポールのロシア滞在記” みたいなノリで(← ヘザー“銭ゲバ”ミルズの存在が目障りやけど…)こういった貴重な映像だけをまとめてボーナス・ディスクとして付けてくれた方がファンとしては遥かに嬉しかったのだが...(>_<)
 しかしそーいったマイナス・ファクターを差し引いても十分にお釣りがくるぐらい演奏シーンは素晴らしく、ビートルズ・ファンとしてはポールが赤の広場で大観衆を前にあの「バック・イン・ザ・USSR」を歌うという、もうこれ以上は考えられないシチュエーションに大感激! ロシアのファンの熱狂ぶりも目を見張るものがあり、特にこの曲のイントロが会場に響き渡った瞬間の盛り上がりようは凄まじく、人人人で埋め尽くされた赤の広場がお祭り騒ぎ状態だ。
 他にも「キャント・バイ・ミー・ラヴ」や「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」、「バースデー」など、これでもかとばかりに繰り出されるビートルズ・ナンバーのカッコ良さに大コーフン(ノ^^)八(^^ )ノ 途中からプーチン大統領まで会場に駆けつけた(←まぁあのプーチンのことやから西側への絶好のプロパガンダとしてポール利用したんやろうけど…)この歴史的な “赤の広場” ライヴを見るたびに、ポールの圧倒的存在感、そして彼の作品の重みをヒシヒシと感じるのだ。
Paul McCartney Back in the U S S R from Concert In Red Square editor Candace Corelli

 
 第二部はモスクワに次ぐロシア第二の都市であるサンクトペテルブルグのパレス・スクエアで行われた2004年のライヴ全33曲の中から “赤の広場コンサート” と曲目が被らないように(←ただし当然のことながら「バック・イン・ザ・USSR」だけは例外!)11曲が選ばれて収録されており、 “赤の広場” のライヴ映像に比べて画質は少し落ちるものの、余計なインタビューをはさまずに演奏シーンのみで構成されたコンサート映像なので気持ち良く鑑賞できるのが嬉しい。やっぱりライヴDVDはこうでなくっちゃ(^o^)丿
 収録された曲の中では何と言っても “ハードロックの原型” と言われる「ヘルター・スケルター」が圧倒的に素晴らしい。私なんかパレス・スクエアに響き渡るあのイントロを聴いただけでもう鳥肌モノなのだが、とても60代前半(!)とは信じられないぐらいのパワフルなシャウトを聴かせながら原曲のキーのままでこの難曲を歌い切るポールのカッコ良さに惚れ惚れする。
Helter Skelter


 「ヘルター・スケルター」以外では、「フレイミング・パイ」の心地良いグルーヴ感や「レット・ミー・ロール・イット」の演奏後にポールがジミヘンの「フォクシー・レディー」のイントロを弾いて大喝采を浴びるシーンなんかが個人的にはツボなのだが、ビートルズ・ナンバーではドライヴ感抜群の「ゲット・バック」やポールの力強い歌声が堪能できる「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」、そしてコンサートのシメにこれ以上相応しい構成は考えられない「サージェント・ペパーズ(←当然 “We hope you have enjoyed the show♪”や“We're sorry but its time to go♪” のリプリーズ・ヴァージョンだ!)~ジ・エンド」なんかが印象的だった。
Paul McCartney - Get Back (Live in St. Petersburg 2003)

Paul McCartney - SGT Pepper's Lonely Hearts Club Band / The End (Live in St. Petersburg 2003)


 このようにいいことずくめのサンクトペテルブルク公演だが、敢えて不満を言えば、「ユー・ウォント・シー・ミー」、「シーズ・ア・ウーマン」、「アイル・フォロー・ザ・サン」、「フォー・ノー・ワン」のように “赤の広場コンサート” でも演っていない曲がカットされてしまったこと。特に「シーズ・ア・ウーマン」は、あの突き刺さるようなイントロを聴いただけで武道館コンサートを思い出してしまう超愛聴曲なので、ぜひとも収録して欲しかった...(>_<)  ポールの記念すべきロシア公演をストレス無しに見れるという点で、私は “赤の広場” よりもこの “サンクトペテルブルク” の方を気に入っているので、これの “ノーカット完全版” も見てみたいなぁ... (≧▽≦)
Paul McCartney - She's A Woman [live in St. Petersburg, Russia 2004]

Paul McCartney - You Won't See Me [live in St. Petersburg, Russia 2004]
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