shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ビトゥイーン・ザ・デヴィル・アンド・ザ・ディープ・ブルー・シー / ジョージ・ハリスン

2010-11-29 | Standard Songs
 この「Between The Devil And The Deep Blue Sea」という曲は1931年にハロルド・アーレンによって書かれ、1935年にヘレン・ウォードをフィーチャーしたベニー・グッドマン楽団のレコードでヒットし、その後は主にジャズ・シンガーによって歌われてきた古いスタンダード・ナンバーだ。浮気が発覚した相手と別れたいが未練があって別れられない、どうしたらいいの???、という内容の歌で、タイトルは日本で言えば “前門の悪魔、後門の深海” みたいなニュアンスだろう。要するに “どっちへ転んでもやっかいなことになる” ということで、邦題は「絶体絶命」となっている。アップテンポでスインギーに歌われることが多く、ヘレン・ウォードを始め、アニー・ロス、ブロッサム・ディアリー、ペギー・リー、ジョニ・ジェイムズ、リー・ワイリー、ヘレン・フォレストなど、私の大好きな女性ヴォーカリスト達がこぞって取り上げている我が愛聴曲だ。

①George Harrison
 長年音楽を聴いていると “エッ、この人がこんな曲をカヴァーしてるの?!” と驚かされることが時々ある。ジョージの遺作「ブレインウォッシュト」のトラックリストの中にこの曲の名を見つけた時は本当にビックリした。元ビートルズのメンバーがアメリカの古いジャズ・スタンダード・ナンバーを? ビートルズとジャズというのは一見あまり接点が無いように思えるのだが、よくよく考えてみるとジョージはアルバム「33&1/3」の中でコール・ポーターの「トゥルー・ラヴ」を、「サムウェア・イン・イングランド」でもホーギー・カーマイケルの「ボルチモア・オリオール」をカヴァーするぐらいアメリカン・スタンダード・ナンバーにも造詣が深い。そういう意味ではこの選曲も何となく合点がいく。
 で、実際に聴いてみるとコレがもう実に肩の力の抜けた名演で、参加しているミュージシャンみんなが心から楽しんでいる様子がヒシヒシと伝わってきて “音楽っていいモンやなぁ~(^.^)” と思わせてくれるのだ。 PV の映像で実にリラックスした表情で楽しそうにこの曲を歌っているジョージを見た時は思わずジーンときてしまった。愛用のウクレレを弾きながらこの曲を慈しむように歌うジョージ... ここで見れるのは元ビートルズというよりも、人生の晩年を迎えて純粋に音楽を楽しむ達観の境地に達したかのような一人のミュージシャンとしての姿である。病魔に蝕まれた身体で枯淡な味わいのヴォーカルを聞かせる様は感動的だ。
 若くして不世出のロックバンドの一員として世界制覇を成し遂げ、ジョンとポールという二人の天才の陰に隠れながらもコツコツと独自のスタイルを築き上げて晩成し、ソロになってからはその滋味溢れるプレイでファンを魅了し続けたジョージ。私はそんな彼がたまらなく好きだ。
Between The Devil And The Deep Blue Sea


②Helen Ward with Benny Goodman Orchestra
 ヘレン・ウォードは1930年代にベニー・グッドマン楽団のバンド・シンガーとして一世を風靡した人気歌手。独特な節回しでスイングする彼女の歌声は録音から70年以上経った今でも瑞々しく響く。
ヘレン・ウォード


③Annie Ross
 アニー・ロスは後年の姉御肌のヴォーカル・スタイルも捨てがたいが、私にとってはこの初レコで聞ける蕩けるような歌声がベスト。22才にして既に貫禄が備わっており、ジャジーなくずしの妙味も聞き物だ。
アニーロス


④Modern Jazz Quartet
 ③のセッションでアニー・ロスのバックを務めていた MJQ (ピアノはブロッサム・ディアリーだったが...)はこの曲を2度レコーディングしている。私は端正なアトランティック盤(57年)よりも親しみやすいこのサヴォイ盤(51年)のヴァージョンが好きだ。
MJQ


⑤Bing Crosby
この曲は圧倒的に女性ヴォーカルが多いが、男性ヴォーカルではこのビング・クロスビーのヴァージョンがいい。あくまでも軽やかに、そして粋にスイングするホワイト・クリスマスな歌声は唯一無比だ。
Bing Crosby - Between The Devil And The Deep Blue Sea -

旅荘カリフォルニア / 掟破り軍団, 見良津健雄 & おたっしゃCLUB

2010-11-27 | Cover Songs
 “パンクでジブリ” 、 “メタルで演歌” に続くシリーズ第3弾の今日は “ロックでフォーク(?)” である。この手のパロディー盤は、まずアーティストとしてのプライドを捨てて(笑)、どこまでオバカに徹して笑わせてくれるかが成否を分けると思うのだが、この「旅荘カリフォルニア」はそのアホらしさにおいて群を抜いており、その筋系のマニアにはこたえられないアルバムになっている。
 内容は “日本の70年代フォークと洋楽ロックの融合” という無謀なもので、演奏もめちゃくちゃチープでショボイのだが、何よりもその選曲合体センスが抜群なので細かいことはあまり気にならない。コレは真剣に演奏を聴くアルバムではなく、そのアイデアで笑わせてもらうアルバムなのだ。私としては前回の「演歌メタル」は邦楽サイドに知らない曲が多くて忸怩たる思いだったが、今回はリアルタイムで聴いてきた曲がほとんどなので全曲知っている(^_^) 素材として使われている曲は以下の通りだ;
 ①「夢の中へ」(井上陽水)+「ハイウェイ・スター」(ディープ・パープル)
 ②「22才の別れ」(風)+「ブラック・ナイト」(ディープ・パープル)
 ③「旅の宿」(吉田拓郎)+「スモーク・オン・ザ・ウォーター」(ディープ・パープル)
 ④「夏休み」(吉田拓郎)+「サマータイム・ブルース」(ザ・フー)
 ⑤「結婚しようよ」(吉田拓郎)+「ロング・トレイン・ランニン」(ドゥービー・ブラザーズ)
 ⑥「いちご白書をもう一度」(バンバン)+「呪われた夜」(イーグルス)
 ⑦「神田川」(かぐや姫)+「天国への階段」(レッド・ゼッペリン)
 ⑧「赤ちょうちん」(かぐや姫)+「いとしのレイラ」(デレク&ザ・ドミノス)
 ⑨「走れコータロー」(ソルティー・シュガー)+「アメリカン・バンド」(グランド・ファンク・レイルロード)
 ⑩「太陽がくれた季節」(青い三角定規)+「ヴィーナス」(ショッキング・ブルー)
 ⑪「精霊流し」(グレープ)+「朝日のあたる家」(アニマルズ)
 う~ん、好奇心をビンビン刺激するラインナップである。どれを取っても面白そうだが、中でも一番笑わせてくれたのが⑦⑧のかぐや姫ナンバーだ。およそロックとは縁のなさそうなこの2曲をロックの権化みたいなゼッペリンやクラプトンの曲と合体させようなんて一体どこの誰が考えたのだろう?しかも⑦⑧共に水と油のような2曲が分離不可能なぐらい見事に溶け合っており、アレンジャーの音楽的センスに脱帽させられる。コレはもう実際に聴いて大笑いするしかないだろう。特に⑦の後半部の盛り上がりはゼッペリンのオリジナルを知っている者にとっては抱腹絶倒の展開だし、⑧も “レイラァ~♪” の代わりに “赤ちょーちん!” と叫ぶところなんかもう最高だ。エンディングでクリームの「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」のリフを入れる遊び心も素晴らしい。
 伊勢正三とディープ・パープルという、ある意味対極に位置するような2曲を見事に合体させた②も素晴らしい。私は正直言って軟弱な “四畳半フォーク” はあまり好きではないのだが、この曲は実にキレイなメロディーを持った名曲中の名曲だと思うし、ヴォーカルを担当しているのが元横浜銀蝿の翔ということもあって、彼のドスの効いたヤクザなヴォーカルが良い意味で曲にザラつき感を与えている。特にイントロから “あ~なたにぃ~♪” とヴォーカルが滑り込んでくる瞬間がたまらない。イエスの「ロンリー・ハート」の出来損ないみたいなシンセはご愛敬...(^_^)
 ③④⑤の拓郎ナンバーもエエ感じ。十把一からげにフォークに分類されてはいるが、他と違って拓郎の曲にはロック・スピリットが宿っており、そのせいか何の違和感もなくロックの名曲と融合しているように思う。特に翔のヴォーカルが映える③は出色の出来で、例のリフも実に効果的に使われている。ただ、④の演歌歌手みたいな女性ヴォーカルはコブシが効きすぎてて曲とミスマッチに聞こえるし(←まぁコレはコレで印象に残るので意図的にこうしたのかも...)、⑤は間奏のブルースハープ(←ハーモニカみたいなヤツね...)が無いと「ロング・トレイン・ランニン」にならないように思う。
 ⑥はイーグルスということで、本当は知名度抜群の「ホテル・カリフォルニア」を使いたかったのだろうが、あのイントロから「いちご白書」へ持っていくのはかなり無理がある。しかしパロジャケのこともあるし、どうしても「ホテ・カリ」を使いたかったのだろう、後半部分で取って付けたように例のギター・ソロが登場するのには大笑い。この何でもアリのアホらしさがエエんよね。⑨のグランド・ファンク・レイルロードはブリティッシュ・ロック勢に比べると日本での人気はイマイチかもしれないが、ポクポクポクと木魚のような音を立てるカウベルの使用で原曲の雰囲気を巧く再現していて結構楽しめた。
 逆に期待ハズレだったのが①だ。ハードロックの定番中の定番「ハイウェイ・スター」(←しかもご丁寧に Live In Japan ヴァージョンときたモンだ!)のイントロに続いて “探しものは何ですか~♪” って凄く良いアイデアだとは思うが、実際に聴いてみるとヴォーカリストがハイトーンを絞り出すのに苦しそうで聴いてるこっちまで息苦しくなってしまう。改めてイアン・ギランの偉大さを痛感させられる1曲だ。⑩は可もなく不可もなしという感じ。⑪に関しては、私はさだまさしが生理的に無理なのでパス。このヴォーカリストも何か気持ち悪い歌い方だ。
 ひなびた和風旅館をフィーチャーし、タイトル文字の青いネオンサイン(←“旅荘”の字体がアルファベットみたいに見えます...)にまで拘ったジャケットは言わずもがなの「ホテル・カリフォルニア」のパロジャケになっており、これでもかとばかりに笑わせてくれる。70年代の洋楽邦楽を聴いて育った世代に向けて遊び心満載で作り上げられたこのアルバム、まさに笑撃のケッサクと言えるだろう。

ステァウェイトゥ神田川


レイラとレイコで赤ちょうちん


22才のブラックナイト


スモークオンザ旅の宿


呪われたいちご白書
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演歌メタル ~Metal de Enka ~

2010-11-24 | Cover Songs
 ジブリの名曲をパンクロック・スタイルで、という「ジブリティック・パンク・カヴァーズ」に続く “異種音楽合体シリーズ” 第2弾は、由緒正しい演歌の名曲をあろうことかバリバリのヘビメタ・スタイルでカヴァーするという前代未聞の珍盤「演歌メタル ~Metal de Enka~」だ。
 コレはロング・ヴァージョン、ショート・ヴァージョン、カラオケ・ヴァージョンの3トラック入り CD シングルで、メインとなるロング・ヴァージョンは8分を超える大作だ。一言でいえば演歌とメタルの有名曲をそれぞれ絶妙なアレンジで合体させたもの8曲分をメドレーにしたもののだが、コレがもう涙が出るほど面白くって腹の皮がよじれるほど笑わせてもらった。使われている曲は...
 ①「北の宿から」+「キル・ザ・キング」(レインボー)
 ②「夜桜お七」+「トランプルド・アンダーフット」(レッド・ゼッペリン)
 ③「北酒場」+「ジャンプ」「パナマ」(ヴァン・ヘイレン)
 ④「津軽海峡冬景色」+「ヴァージン・キラー」(スコーピオンズ)
 ⑤「雪国」+「ジプシー・ウェイズ」(アンセム)
 ⑥「つぐない」+「バッド・ボーイズ」(ホワイトスネイク)
 ⑦「夫婦みち」+「ルックス・ザット・キル」(モトリー・クルー)
 ⑧「天城越え」+「ハイウェイ・スター」「バーン」(ディープ・パープル)
 まず曲に入る前にワイワイ騒いでいるいかにも軽薄そうな女のセリフが入っているが、ハッキリ言ってこの部分はは不要だ。バカ丸出しというか、敢えてそういう線を狙ったのかもしれないが、ここはやはり正攻法でいきなり轟きわたるギターのイントロから入った方がずっとインパクトがあったと思う。私はこの部分はカットして CD-R に入れて楽しんでいる。
 無意味なバカ騒ぎが終わるといきなり「キル・キン」のイントロが響き渡り、リッチー節炸裂のギターに血湧き肉躍る。1曲目にレインボーというのが嬉しいが、絵に描いたようなハイトーン・ヴォイスで歌われる “あなた変わりはないですか~♪” が何気にバックのサウンドと合っていて大爆笑。これ、ホンマにオモロイわ(^o^)丿
 しかしそれ以上に笑えたのは③で、あの「ジャンプ」のイントロに続いて “北ぁのぉ...酒場通りにはぁ~♪” という歌詞が飛び出してきた時はイスから転げ落ちそうになった。とにかく歌詞とメロディーがめちゃくちゃ合ってて確実にコーヒーを吹くレベルだ。④も「ヴァージン・キラー」のイントロに乗ってアップテンポで歌われる “上野発の夜行列車降りた時から~♪” に大笑い。この選曲の妙というか融合テクニックの切れ味は天才的だ。それにしてもメタルと演歌って意外と相性抜群やねんなぁ...
 演歌の方で私が知っていたのはこれら①③④の3曲のみで、残りはタイトルすら知らない曲ばかり。パロディーというのは基本的に原曲を知らないと面白みが半減してしまうものだが、実際に聴いてみるとメタル曲と融合してあるおかげで、②⑤⑥⑦⑧もメタル曲の日本語替え歌みたいなノリで演歌に疎い私でもそれなりに楽しめた。特に⑧の「ハイウェイ・スター」は歌詞が日本語であれ何であれ、あのイントロを聴いただけで “メタル聴いてるぞ~!!!” というある種の高揚感がマグマのように湧き上がってくる。70年代ハードロックの洗礼を受けた者にとってコレはもう条件反射みたいなモンだろう。
 この CD はジャケット・センスも抜群で、女の子の開脚ポーズといい、ガラスのヒビの入り具合といい、スコーピオンズの「ヴァージン・キラー」の秀逸なパロジャケになっている。こういうユーモアのセンス、めっちゃ好っきゃわぁ(^.^) それにしてもこんなんばっかり聴いててエエンカいな?

ENKA DE METAL


【おまけ】この道(?)の第1人者といえば元メガデスの天才ギタリストで空耳アワーでもおなじみのこの人、マーティ・フリードマン! 琵琶を加えた石川さゆりとのコラボでも入魂のプレイで究極の演歌メタルを聴かせてくれます。やっぱりメタルは楽しいなぁ(^o^)丿
Ishikawa Sayuri with Marty Friedman Going Over Amagi Mountain Pass.flv
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ジブリティック・パンク・カヴァーズ / 6% is MINE

2010-11-22 | TV, 映画, サントラ etc
 最近ひょんなきっかけでK君という音楽好きの若者と知り合った。彼はまだ若いのに、ビートルズを始めとしてディープ・パープルやキング・クリムゾンといった昔のロックが大好きなだけでなく(←父親が筋金入りのビートルズ・マニアらしく、小さい時からそんな音楽を聴いて育ったらしい...)、私のライフワークである “面白カヴァー” にも並々ならぬ興味を示すなど、驚くほど私と感性が似ているのにビックリ(゜o゜) しかもオーディオや車も大好きということですっかり意気投合、今では私の若い衆(?)の中でも一番の話し相手だ。
 そんな彼といつものように音楽の話をしていた時のこと、ビートルズの楽曲をラモーンズ・スタイルで高速演奏するパンクルズやメタリカそっくりのサウンドでメタル化してしまうビータリカといった、いわゆるひとつの “異種格闘技” 的パロディー・バンドの話題で盛り上がり、 “めっちゃ面白いッスね。僕も色々探してみます!” とすっかりこの世界にハマッたようだった。そしてその翌日、満面の笑みを湛えて “こんなん見つけました!” と彼が教えてくれたのがこの「ジブリティック・パンク・カヴァーズ」だ。何という速攻!それでこそ我が若い衆だ(笑)
 早速 YouTube で試聴してみるとコレがもう私の嗜好のスイートスポットを直撃する面白さ!発想の原点は YouTube でついに230万ヒットを超えた “トトロック” あたりだろうが、全体の雰囲気としてはリンドバーグを想わせるガールズ・ガレージ・ロックといった感じで、「となりのトトロ」も、「カントリー・ロード」も、「いつも何度でも」も、竹を割ったようなストレートなロックンロールにアレンジされている。 “エレクトリック・ヴォイス” とでもいうのか、ヴォーカルにエフェクトがかけられていて聴きやすく加工されていることもあって、 “パンク” を期待して聴くとちょっと物足りないかもしれないが、そのソフト・フォーカスなヴォーカルとギター・ピック・スクラッチを多用したロック・サウンドのバランスが絶妙で、大人から子供まで理屈抜きに楽しめる “お茶の間ロックンロール” に仕上がっている。この手の盤に目がない私はすぐにアマゾンでゲットした。
 収録曲は①「いつも何度でも」(千と千尋の神隠し)、②「となりのトトロ」、③「テルーの唄」(ゲド戦記)、④「ナウシカ・レクイエム」(風の谷のナウシカ)、⑤「崖の上のポニョ」、⑥「カントリー・ロード」(耳をすませば)、⑦「やさしさに包まれたなら」(魔女の宅急便)、⑧「君をのせて」(天空の城ラピュタ)の全8曲で、22分31秒というからミニ・アルバムと言えるが、つまらないオリジナル曲を延々70分近く聴かされる昨今の CD よりもこっちの方がずっと密度が濃くて良いと思う。
 どのトラックも甲乙付け難い素晴らしさだが、トトロ・マニアの私としてはやはり②が一番のお気に入り。親しみやすい原曲のメロディーの良さを巧く活かしてウキウキワクワクするようなロックンロールに仕上げている。哀愁舞い散るメロディーが印象的な原曲をハードなロック・サウンドで高速化した④はその斬新な発想に目からウロコという感じ。ナウシカを見たことがない人も、コレはもう聴くシカないだろう。イントロから一気に突っ走る⑤からはロックの楽しさがヒシヒシと伝わってくるし、原作者のジョン・デンバーが聴いたらひっくり返りそうな⑥のドライヴ感も圧巻だ。
 心に沁みる癒し系の原曲を大胆不敵なアレンジでロック化した①も面白い。コアなジブリ・ファンなら怒り出すかもしれないが、私はこういうのもアリだと思う。同じ曲でこうも印象が変わるものかと広~い心で両方楽しむのが通のファンというものだろう。原曲のインパクトが強烈な⑦もアレンジに工夫を凝らしてロック化されており、ユーミンのオリジナルとの聴き比べも一興だ。③⑧は映画を見ていないので原曲との比較は出来ないが、どちらもそのメロディーだけは「ウクレレジブリ」シリーズを通して知っていた。ウクレレであれ、ロックンロールであれ、ジブリの曲って親しみやすいメロディーの曲が多いので、アレンジャーにとっては最高の素材なのだろう。
 このアルバムは全トラックが聴き応え十分な疾走系ロックンロールなので、車内 BGM としてヘヴィー・ローテーション状態になっている。ただ、唯一の難点は美的センスのかけらもない醜悪ジャケット(←パンクをバカにしてんのか!)で、中身の音楽を聴かなければ絶対に買う気の起こらないような代物だ。まぁ私のようにジャケットに拘る音楽マニアではなく、ネットで音楽をダウンロードするような若者層をターゲットにしているのだろう。それ以外の点では文句のつけようがない1枚で、ジブリの名曲をウキウキするようなロックンロールで聴けるこのアルバムは、企画良し、アレンジ良し、雰囲気良しの好盤だと思う。私の持っているジブリ・カヴァー盤の中で文句ナシの№1だ。

6% is mine - Tonari No Totoro cover


6% is MINE - カントリーロード (Country Roads)


6% is MINE(GIRLS)_GHIBLITIC PUNK-COVERS_digest_2010.06.23
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ラモーンズの激情

2010-11-20 | Ramones
 この“ラモーンズ祭り” を始めてから何やかんやで2ヶ月近くが経った。最初は “祭り” ではなく「エンド・オブ・ザ・センチュリー」と2枚組ベストで終わらせるはずが、ミイラ取りがミイラにといういつものパターンに突入。結局10月から11月にかけてはほぼラモーンズ一色で、あまり紹介されることのないマイナー盤やトリビュート盤を中心に10枚を超えるアルバムを取り上げてきたのだが、やはり彼らの最高傑作といえるデビュー・アルバム「ラモーンズの激情」を取り上げないワケにはいかない。
 私のラモーンズ遍歴は、まずフィル・スペクターがプロデュースした 5th「エンド・オブ・ザ・センチュリー」からスタートし、次にベスト盤「ラモーンズ・アンソロジー」で全体像を把握、その後少年ナイフ経由で初期ラモーンズの魅力を再発見し、この 1st 「ラモーンズの激情」から3rd「ロケット・トゥ・ロシア」までの “イケイケ・ポップ・パンク初期三部作” を一気に購入、完全にラモーンズ中毒になったという次第。今は第2次マイブームの真っ最中だ。
 上記三部作の中で純粋に完成度の高さだけで言えば、パンクロックの攻撃性とアメリカン・ポップスの大衆性が高度な次元でバランスされた 3rd「ロケット・トゥ・ロシア」が一番だと思うが、初めて聴いた時の衝撃性という点では誰が何と言おうとロックの持つプリミティヴな初期衝動を真空パックして音溝に封じ込めたスリリングな展開に圧倒されるこの 1st アルバムだろう。
 このアルバムは全14曲でトータル時間が30分以下、つまり1曲平均約2分という短さにまず驚かされる。しかもその殆どが高速ダウンストローク主体のラウドなギターが轟きわたる疾走系ロックンロールなのだからたまらない(≧▽≦)  とにかくそのワイルドで粗削りなガレージ・サウンドは圧巻の一言で、進化の過程で複雑になりすぎたロックへのアンチテーゼとして、徹底的に贅肉を削ぎ落としたシンプルな曲構成が潔い。だからこのアルバムは曲単位でつまみ聴きするのではなく、1枚丸ごと一気聴きすることによって初めてその真価が分かるようになっている。そのハイ・テンションな演奏の波状攻撃はまるで北斗百烈拳のような凄まじさだ。
個々の曲に関して言うと、やはりアルバム1曲目を飾る①「ブリッツクリーグ・バップ」に尽きるだろう。当時流行っていたベイ・シティ・ローラーズの「サタディ・ナイト」の掛け声にインスパイアされてトミー・ラモーンが書いたというアンセム的なナンバーで、 “ヘイホー・レッツゴー” はローラーズの “S-A-T-U-R...”に勝るとも劣らないインパクトを内包している。それにしてもラモーンズとローラーズという一見水と油のような存在が実は見えない所で繋がっていたという事実が面白い。ボビー・フラー・フォーでヒットし、あのクラッシュもカヴァーしていた「アイ・フォート・ザ・ロー」を想わせるAメロも秀逸で、ラモーンズと言えばまずこの曲が頭に浮かぶファンも多いだろう。
 彼らが凡百のパンクロック・バンドと決定的に違う点は伝統的なアメリカン・ポップスへの深~い愛情が随所に感じられるところ。それを如実に表しているのがクリス・モンテス62年のヒット曲⑫「レッツ・ダンス」をカヴァーしていることで、原曲の持っていた “楽しさ” を殺さずに、誰でも口ずさめるキャッチーなロックンロールに仕上げているところが素晴らしい。メロディアスにロックするという、一見誰にでも出来そうで中々出来ないことをサラッとやってのけるラモーンズの音楽的な懐の深さに脱帽だ。
 このアルバムはアグレッシヴなサウンドやキャッチーなメロディーだけでなく、その独特な歌詞世界にも注目だ。曲目を見てまず気づくのが、やたらと「アイ・ウォナ...」(..したい)や「アイ・ドン・ウォナ...」(...したくない)で始まる曲が多いということ。④「アイ・ウォナ・ビー・ユア・ボーイフレンド」、⑥「ナウ・アイ・ウォナ・スニッフ・サム・グルー」(←シンナー吸いたい、ってか?)、⑦「アイ・ドン・ウォナ・ゴー・ダウン・トゥ・ザ・ベイスメント」(←「恐怖の地下室」っていう邦題、ホラー映画じゃあるまいし...)、⑬「アイ・ドン・ウォナ・ウォーク・アラウンド・ウィズ・ユー」(←「まっぴらさ」っていう邦題はもうちょっと何とかならんかったんか...)と、このアルバムだけでも4曲あるし、このアルバム以降も彼らには「アイ・ウォナ...」で始まるタイトルの曲がやたらと多い。まぁそれだけ彼らが自分の感情をストレートに歌にしているということなのだろう。
 それと、彼らの歌詞にはラジオで放送できそうにないくらいヤバいものが多い。上の⑥“シンナー吸いたい” は言うまでもなく、 “ガキをバットでぶん殴れ!” と繰り返す②「ビート・オン・ザ・ブラット」、客を殺してサツに追われる男娼の事を歌った⑪「53rd & 3rd」、“頼むから「ナチ」だけはやめてくれ!” というレコード会社社長の言葉をあざ笑うように “俺はナチ!” と連呼する⑭「トゥデイ・ユア・ラヴ・トゥモロウ・ザ・ワールド」など、ブラック・ユーモア連発だ。この “激ヤバ路線” の極めつけが80年代ラモーンズの最高傑作「サイコ・セラピー」の“誰かをぶっ殺してやる...”(←いくら何でもコレではラジオでかからんわ...)なのだろう。
 マッシュルーム・カットに革ジャン、ジーンズ、スニーカーでビシッとキメたモノクロ・ジャケットは、パッと見ただけで音楽が聞こえてきそうなカッコ良さだ。曲良し、演奏良し、ジャケット良しと三拍子揃ったこのアルバムは、ロックンロールを語る上で避けて通ることの出来ない金字塔的な1枚だと思う。

The Ramones - "Blitzkrieg Bop" (Live) Studio Hamburg


The Ramones - Let's Dance


Ramones I Don't Wanna Go Down To The Basement

ザ・グレイト・ロックンロール・フェスティバル / ロリータ18号

2010-11-17 | J-Rock/Pop
 またまたラモーンズ絡みのネタである。彼らは被カヴァー率の非常に高いバンドで、全世界規模で様々なトリビュート盤 / カヴァー・ヴァージョンがリリースされている。特にドイツを中心とするヨーロッパと、アルゼンチンを中心とする南米では(←何かワールドカップみたいな勢力分布やなぁ...)ラモーンズ熱がめちゃくちゃ高く、彼らの母国アメリカをも凌ぐ勢いだ。
 ここ日本ではどうかというと、数だけならそこそこ出ているが、 “パンク・ロック” の意味をはき違えているような演奏も結構多い。バンド名とパロジャケのインパクトから期待して聴いたロマーンズはただわめいているだけでほとんど騒音に近い状態だったし、これまたバンド名と曲のタイトルだけは面白いサモーンズも変な女性コーラス入りのトホホな内容で、とてもじゃないがスピーカーに対峙して聴くようなものではなかった。これまで私が聴いた中で文句ナシに気に入ったのは少年ナイフの「アイ・ウォナ・ビー・セデイテッド」と「スージー・イズ・ア・ヘッドバンガー」、そしてこのロリータ18号の「ロッカウェイ・ビーチ」の3曲だけだ。
 私は日本のパンク・ロック / インディーズ・シーンには全く興味が無いのでこのロリータ18号というガールズ・バンドの存在も全く知らなかった。きっかけは YouTube でラモーンズ・ナンバーを色々検索していて彼女らの①「ロッカウェイ・ビーチ」カヴァーの PV をたまたま見たのが最初で、何とあのジョーイ・ラモーンがゲスト出演しているのにビックリ(゜o゜) 後で知ったことだが、この曲は彼がプロデュースしたロリータ18号のアルバムに収録されているという。どうりで仲良くお友達感覚で PV に出ているワケだ。それにしてもロック・スターのオーラ出まくりのジョーイは何をやっても絵になるなぁ... (≧▽≦)
 確かに見ているだけでウキウキしてくるような PV だが、それ以上に私が気に入ったのがその底抜けに楽しいロックンロール・サウンドだ。その筋では “お茶の間パンク” とか “ハードコア歌謡ロック” とか呼ばれているユニークなスタイルでラモーンズの名曲を見事に料理している。ヴォーカルは気持ちばかりが先走って何を歌っているのかイマイチ聞き取れない部分が多々あるが、ストレートアヘッドな演奏で曲の良さを殺さずに自分達のカラーを出しているところがいい(^.^)
 これは面白そうだとネットで色々試聴してみたところ、オリジナル曲には心に残る旋律が無く、逆にカヴァー曲に面白いのがいくつかあったので、全編カヴァーで固めたこの「ザ・グレイト・ロックンロール・フェスティバル ~ロックンロール・カバー大会~」を購入。イエローとピンクが際立つジャケットの色使いはセックス・ピストルズのアルバム「ネヴァー・マインド・ザ・ボロックス」を強烈に意識しているように思えるし、アルバム・タイトルもピストルズの「ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル」をパロッたものだろう。運よくネット通販で他の CD のついでに買った(←送料浮くもんね...)のだが、162円(!)という “もってけドロボー価格” だった。
 届いた CD を聴いて私が①と同じぐらい、いや、それ以上に気に入ったのが⑪「ビデオ・キルド・ザ・レディオスター」、何とあのバグルズのカヴァーだ!ジェフリー・ダウンズ入魂のシンセが唸るポップス史上屈指の名曲を換骨堕胎してキャッチーでノリノリのロックンロールに仕上げているのが凄い。特に後半部分の一気呵成にたたみかけるような展開は圧巻で、アクの強いヴォーカルとキュートな “アゥワ アゥワ~♪” コーラスのコントラストも見事なキラー・チューンだ。 PV もスピード感を活かした楽しいもので、曲想にバッチリ合っていると思う。
 ラモーンズのもう1曲⑤「ワート・ホッグ」、デイジー・チェインソウの⑦「ラヴ・ユア・マネー」、トイ・ドールズの⑨「シー・ゴーズ・トゥ・フィーノス」、ピストルズの「ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル」、チャック・ベリーの⑭「ジョニー・ビー・グッド」といったナンバーはアルバム・タイトル通りの大ロックンロール大会でめちゃくちゃサマになっているし、ジョニー・キッド & ザ・パーレーツの④「シェイキン・オール・オーヴァー」なんていう意外な選曲にも驚かされる。
 しかしロネッツの⑫「ビー・マイ・ベイビー」には参った。ピストルズ直系のパンクロック・バンドがオールディーズのガールグループ・クラシックスの大名曲をカヴァーとは何という無謀な選曲だろう!演奏、アレンジがこれまた実にユニークで、当然のことながら原曲が持っていた甘酸っぱさは雲散霧消、例えようもないような摩訶不思議な雰囲気が横溢だ。フィル・スペクターが聴いたら “オレの曲に何しやがる!” と激怒して拳銃を乱射し出すかもしれない。
 エディ・コクランの③「サマータイム・ブルース」はオリジナル・ヴァージョンが大好きだったので楽しみにしていたのだがコレがもう完全な期待ハズレ。ウシガエルの断末魔みたいなダミ声ヴォーカルで、こねくり回すようにヨタッた歌い方をされてはロックンロール・クラシックスの名曲も台無しだ。⑥「テネシー・ワルツ」はスローで始まって途中少しテンポが上がるのだが、せっかくのパンクロックなんだから、ここは思いっ切り高速化して後半一気に突っ走って欲しかったところ。酔っ払いが唸っているような歌い方もイマイチ好きになれない...(>_<)
 ボートラ扱いの⑮「バイ・バイ・ジョーイ」はこのカヴァー・アルバム中唯一のオリジナルで、急逝したジョーイへの想いが十分伝わってくる歌詞に涙ちょちょぎれるが、他のオリジナル曲と同様にメロディーが薄いのが残念。やっぱりこのバンドはカヴァーに限るわ。彼女らにはもう1枚「ヤリタミン」っていうカヴァー盤があって、水前寺清子の「365歩のマーチ」やキョンキョンの「なんてったってアイドル」なんかも演ってるらしいので、機会があれば聴いてみよう。

Rockaway beach M/V


Lolita n° 18 Video kill the radio Star

Hell Freezes Over / Eagles

2010-11-13 | Rock & Pops (70's)
 私がこの4月に転勤して新しい職場で働き始めてもう半年以上が経った。私は音楽の話が出来る人としか友達にならないので職場環境が変わるといつも虎視眈々とロック/ポップス・ファンを探すのだが、ロックンロール偏重主義の自分とテイストが似通った人に出会える確率は極端に低い。少なくとも今の職場にそういう人はいないように思えたし、無理して音楽以外の話題に付き合いぐらいなら独りでいる方がマシ、とばかりに “男は黙ってサッポロビール” (←懐かしい!)を決め込んでいた。
 しかし世の中どこに縁が転がっているかわからない。私は週一でウチへ派遣されてくるサマンサというオーストラリア人女性とペアで仕事をすることになったのだ。 “英語なんか喋れるかよ...” と不安に思いながら彼女に会ってみると実に気さくで楽しそうな感じの人だ。そこで “オーストラリア” を突破口にしたれと一計を案じた私は、“I love AC/DC. Do you like them?” と訊いてみた。初対面でいきなり “AC/DC 好きか?” と訊いてくる日本人なんて私ぐらいのモンだろうが、敵もさるものひっかくもの。何とこの3月のAC/DC 京セラドーム大阪公演に行ってきたというからオドロキだ(゜o゜)
 “おぉ、こいつ、バリバリのロック・ファンやんけ!” とすっかり嬉しくなった私は仕事そっちのけで音楽談義に突入!もちろんルー大柴みたいに英語と日本語のチャンポンだが...(笑) 彼女は外国人とは思えないぐらいに関西人のノリでツッコミを入れてくるのでめちゃくちゃ面白い。もうコテコテである。それから半年、今では何でも話せる無二の親友... ケンシロウ流に言えば我が朋友だ。
 先週の火曜日のこと、いつものように仕事の打ち合わせのふりをしながらロックの話をしていて話題がイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」になった時、彼女が “例のイントロに入る前にスパニッシュ・ギターっぽいソロがあるライヴ・ヴァージョンが最高!” と言った。私の知っている「ホテル・カリフォルニア」のライヴは確か「ロング・ラン」の後に出た例の2枚組ライヴ「イーグルス・ライヴ」だけだが、 “スパニッシュ・ギターっぽいソロ” なんてあったっけ???
 私がそんなん知らんでぇ~と言うと、彼女は今週、そのテイクの入った CD-R を持ってきた。友人が焼いてくれたというコンピ CD-R だ。早速聴いてみると初めて耳にするアコースティック・アレンジ・ヴァージョンだ。しかもそれが又めちゃくちゃ心に響いてくるのである。コレは何としても出自を突き止めなければならない!こういう時は Amazon と YouTube で検索するに限るが、私はものの5分と経たないうちに同じヴァージョンを見つけ出した。それがこの「ヘル・フリージズ・オーヴァー」収録のニュー・アコースティック・アレンジ・ヴァージョンというわけ。この「ホテ・カリ」1曲だけでも十分価値があると思った私はその日のうちにアマゾンでこの盤を注文した。ということで、今日は “ラモーンズ祭り” (←まだまだ続くよ...たぶん)をお休みして “朋友に捧げる緊急特別企画(?)” のイーグルス、届いたばかりのホヤホヤ盤だ。
 このアルバムは1994年にリリースされたもので、彼らにとっては14年ぶりの再結成ということになる。94年と言えば私はグランジ、オルタナ、ラップまみれの洋楽シーンとは絶縁していたのでこの盤の存在を知らなかったのも無理はない。以前取り上げたフリートウッド・マックといい、このイーグルスといい、70年代に一世を風靡した大物が揃って90年代に再結成して素晴らしいライヴ盤を残しているというのも面白い偶然だ。
 「ヘル・フリージズ・オーヴァー」というのは、80年代初めにバンドが崩壊した時に再結成の可能性について訊かれたドン・ヘンリーが答えた言葉 “When Hell freezes over” (←“地獄が凍てついたらね”... 地獄の炎は永遠に燃え続けるとされるから、要するに“再結成なんて絶対にありえないよ!” という意味)で、それをこの再結成アルバムのタイトルに使うとは中々洒落たことをしてくれる。こういうユーモアのセンス、好っきゃわぁ...(^_^)
 アルバムの構成は前半4曲が新曲で、残りの11曲は「MTV アンプラグド」の模様を収録。私としてはソロ作品とあまり変わり映えのしない新曲群よりも中盤以降の “アンプラグド・ライヴ” 音源に魅かれてしまう。①②③④と聴いてきてライヴの1曲目⑤「テキーラ・サンライズ」が始まると、何か目の前がパァ~っと開けたような感じがするのは私だけだろうか?
 この盤を知るきっかけとなった⑥「ホテル・カリフォルニア」は “オレ達は解散したんじゃなくて、14年間のヴァケーションを取ってただけさ...” というグレン・フライの前ふりに続いてラテンっぽいアレンジの物憂げなガット・ギター・ソロで始まり、やがてそこにパーカッションが合流、一瞬 “何の曲やろ?” と思わせておいて絶妙のタイミングであの必殺のイントロが現れる瞬間が鳥肌モノだ。あの屈指の名曲が20年近い時を経て熟成され、実に渋くてカッコ良いヴァージョンに仕上がっている。この1曲だけでも “買って良かった!” と思えるキラー・チューンだ。
 ドン・ヘンリーのやるせないヴォーカルがクセになる⑦「ウエステッド・タイム」、昔と全然変わらないティモシー・シュミットのハイトーン・ヴォイスとそれに絡む美しいコーラス・ハーモニーに涙ちょちょぎれる⑨「アイ・キャント・テル・ユー・ホワイ」、ドン・ヘンリーの “声” が持つ吸引力の凄さに平伏してしまう⑪「ラスト・リゾート」と、心が洗われるようなバラッドの名演が続く。イーグルスって高い演奏後術もさることながら、やはりヴォーカル/コーラスが最大の武器なんだと再認識させられた。そんな彼らの魅力ここに極まれりと言える⑫「テイク・イット・イージー」は数あるイーグルス曲の中で理屈抜きに一番好きなナンバーだ。
 ラストの⑮「デスペラード」のオーケストラ・アレンジも曲の魅力を引き出す見事なもので、ドン・ヘンリーの艶のあるヴォーカルを更に際立たせている。誰にも真似のできない彼の歌声はまさに人間国宝級で、聴く者の心に沁みわたる。私の知る限りでは、この曲のベスト・ヴァージョンと言っていいだろう。やっぱりイーグルスはエエなぁ...(≧▽≦)
 この素晴らしい盤との出会いのきっかけを作ってくれて私の音楽遍歴のミッシング・リンクを埋めてくれたサムに大感謝、やはり持つべきものは音楽の話ができる朋友だ。Thank you, Sam!!!

EAGLES hell freezes over


Eagles -Hell Freezes Over- Tequila sunrise (live)


Milenium en Concierto - Eagles - I can´t tell you why
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All Good Cretins Go To Heaven ! ~a tribute to the RAMONES~

2010-11-08 | Ramones
 ラモーンズのアルバムは中身の音楽はどれも素晴らしいのだが、ジャケットはイマイチ、というものが少なくない。“スポットライトの中に浮かび上がる黒い影” を描いたマンガチックな「プレザント・ドリームズ」なんて全然ロックンロールを感じさせないし、「ブレイン・ドレイン」や「アシッド・イーターズ」、「ウィーアー・アウタ・ヒア」なんかもジャケットを見ただけでパスしたくなるような代物だ。「アニマル・ボーイ」や「ハーフウェイ・トゥ・サニティ」に至ってはすぐに思い出せないぐらい影が薄い。文句なしにカッコイイ!と思えるのは「ラモーンズの激情」、「ロード・トゥ・ルーイン」、そして「トゥー・タフ・トゥ・ダイ」ぐらいだ。音楽パッケージとしてのジャケット・アートワークを重視している私にとってコレは結構大きな問題だ。
 ジャケット軽視(?)の傾向は彼らのトリビュート盤に関しても同じで、奈良美智のイラストがインパクト抜群の「電撃バップ!」や女性のヘソ出しジャケが魅力の「ボッサン・ラモーンズ」を除けば印象に残らない凡庸なものばかりだ。そんなお寒い状況の中、最近 eBay で偶然見つけて思わずジャケ買いしてしまったのがこの「オール・グッド・クリーティンズ・ゴー・トゥ・ヘヴン」だ。 A.J.B.Hangover という人(←二日酔い??? 変わった名前やね...)が描いたこのイラスト、遠近法を用いた抜群の構図センスといい、星条旗をあしらった絶妙な色使いといい、実に見事なアートワークだ。もうジャケットを見ただけで音楽が聞こえてきそうではないか!
 このタイトルは名曲「クリーティン・ホップ」の歌詞から取ったもので “愛すべきバカ者たちはみんな天国へ行く” とでも訳せばいいのか、ジョーイ、ディーディー、そしてジョニーとフロントメン3人が既に亡くなってしまったラモーンズに捧げるアルバムにはピッタリだ。尚、これも前回の「ブリッツクリーグ・オーヴァー・ユー」と同じくドイツ編集のコンピ盤で、全28トラック中何と19組までがドイツのバンドで占められている。そういえばベルリンにはラモーンズ・ミュージアムもあるし、ドイツ人ってラモーンズが大好きなんやね(^.^)
 このアルバムは最初の10曲ぐらいはオリジナルに忠実なアレンジの、いわゆるひとつの “完コピ” に近い演奏が多く、中盤以降は各バンドの個性を生かしたユニークなヴァージョンが目白押しだ。前半の “完コピ” 系では AC/DC みたいなリフがカッコイイ FreeZeeBee の①「アイ・キャント・ギヴ・ユー・エニシング」、オリジナルを更に高速回転させた Gutbucket の②「サムバディ・プット・サムシング・イン・マイ・ドリンク」、ロックの初期衝動爆裂といった感じがたまらない The Commandos の④「コマンド」、ポップスをハードロックでビシッとキメるとこうなるという絶好のお手本のような Oklahoma Bomb Squad の⑤「ドゥー・ユー・ウォナ・ダンス」、メタリカの「エンター・サンドマン」みたいなサウンドがめっちゃカッコ良い Treekillaz の⑨「ガーデン・オブ・セレニティ」あたりが気に入っている。
 しかし何と言っても一番の聴きものは Wax.On Wax.Off というバンドによる⑦「ザ・ナイト・ザット・ジョーイ・ダイド」だろう。これはタイトルが示す通りジョーイへの追悼ソングだが、曲調はラモーンズらしさ丸出しのアップテンポなもので、特に「アイ・ウォナ・ビー・セディテッド」を想わせる “バァー バァー ババァ~♪” フレーズの折り込み方には唸ってしまう。又、ポジティヴな歌詞からも彼らのジョーイへの深い愛情が伝わってきて涙ちょちょぎれる。辛気臭い追悼ソングはラモーンズには似合わない。
 The Popzillas の⑫「ロッカウェイ・ビーチ」は囁くような女性ヴォーカルにハード・エッジなギターが絡んでいくところがたまらないし、ヒューマン・リーグみたいな無機質エレクトロ・ポップ・サウンドで味付けされた Electric Hippie feat. Rebella Jane Doe の⑬「ブリッツクリーグ・バップ」も面白い。このアルバムのためにフィンランドで結成されたプロジェクト・バンド Snails Of Finland の⑯「スラッグ」は60'sポップ・バンド風アレンジが耳に心地良いし、Hens Hensen の⑰「アイ・ウォント・ユー・アラウンド」は “アンプラグド・ラモーンズ” っぽいフォーキーなサウンドが新鮮だ。ロクセットみたいなスウェーデンの男女2人組 Waver が歌う⑱「ダニー・セッズ」は女性ヴォーカルの吸引力がピカイチで中々味わい深いスロー・バラッドに仕上がっている。
 Ya*Hoo の⑲「アイ・ウォナ・ビー・セディテッド」は何とカントリー&ウエスタン・スタイルだ!パッと見は奇を衒ったような大胆なアレンジだが、以前取り上げたロカビリー・アレンジのラモーンズ・カヴァー盤でも明らかだったように、ロックンロールとカントリー / ロカビリーは異母兄弟みたいなモンなので意外なほど相性は良く、このヴァージョンも違和感なく聴けてしまう。
 Senzabenza という風邪薬みたいな名前のイタリアのバンドがカヴァーした⑳「ボンゾ・ゴーズ・トゥ・ビッツバーグ」は小型スポーツカーでワインディングを軽快に駆け抜けていくような爽快感溢れるロックンロール。こーゆーの、大好きです(^.^)  Joe Leila の(22)「サーフィン・バード」も初期ラモーンズが持っていた弾けるようなポップ感覚を見事に再現、1分17秒から炸裂する “ヘイホー・レッツゴー!” がたまらない。
 このアルバムは他のトリビュート盤ではちょっと聞けないようなユニークな選曲も魅力の一つで、中でも「ブレイン・ドレイン」収録の隠れ名曲 (27)「ゼロ・ゼロ・UFO」なんか実にマニアックな選曲だ。コレは Körperwerk というドイツのバンドの演奏だが、この曲のカヴァーなんて他にちょっと思い当たらない。ただ、 “嫁ブサイクでしたぁ~♪” の空耳で有名(?)な Alexisonfire の「Mailbox Arson」みたいなスピード・メタル・サウンドはちょっとしんどいけど...(>_<)
 ラモーンズってレコード・セールスやヒット・チャートの成績だけを見れば全然たいしたことはないのに、トリビュート・アルバムの数で言うと私の知る限りではビートルズに次ぐ多さで、ひょっとするとゼッペリンよりも多いかもしれない。既に解散してから15年近くが経ち、4人のメンバーのうち3人はこの世にいないというのに未だに世界中で愛され、リアルタイムで彼らを知らない新しいファンを次々と生み出している。これこそまさに “記録” よりも “記憶” に残るバンド、ラモーンズらしい現象と言えるだろう。

アイ・キャント・ギヴ・ユー・エニシング


ザ・ナイト・ザット・ジョーイ・ダイド


ロッカウェイ・ビーチ


senzabenza - bonzo goes to bitburg.wmv

Blitzkrieg Over You ~ A Tribute to the Ramones ~

2010-11-06 | Ramones
 性懲りもなく11月に突入した “ラモーンズ祭り” だが、やればやるほど新発見・再発見があって楽しーなったら楽しーな(^o^)丿 もうパンクしか聴けない身体に...なるワケないか(笑) 冗談はさておき、今日は数多いラモーンズ・トリビュート・コンピレーション・アルバムの中でも一二を争う愛聴盤「ブリッツクリーグ・オーヴァー・ユー」だ。 NASTY VINYL というドイツのレーベルから出ているせいか、全26トラックの半数を超える14組がドイツのバンドということで、怪しいドイツ語が乱舞する面白いコンピ盤になっている。
 アルバムの冒頭を飾る Die Toten Hosen (←読み方わからへん...)の①「ブリッツクリーグ・バップ」は何とフィーチャリング・ジョーイ・ラモーンだ。いきなり本家の登場である。その辺りの経緯も含めてこのバンドのことは全く知らないが、ドライヴ感溢れる弾むような演奏が圧巻で、バンドが一体となって生み出す高揚感がたまらない(≧▽≦) この曲のカヴァーでは間違いなくベスト!と思える痛快なヴァージョンだ。
 この盤で私が知っていた数少ないアーティストが②「R.A.M.O.N.E.S.」のモーターヘッドと⑭「Lass' Mich In Ruhe」のニナ・ハーゲンだ。②は彼らが作ったラモーンズ賛歌で、これぞモーターヘッド!と快哉を叫びたくなるような轟音にシビレてしまう。彼らの持ち味である猥雑なエネルギーに満ち溢れたアグレッシヴなサウンドにアドレナリン大爆発だ。因みに本家のラモーンズもこの曲を逆カヴァー(?)しており、アルバム「グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」のボートラでスタジオ録音ヴァージョンが、ラスト・ライヴの模様を収めた「ウィーアー・アウタ・ヒア」ではゲストのレミーが CJ とヴォーカルを分け合っているライヴ・ヴァージョンが楽しめる。⑭のニナ・ハーゲンはゴリゴリのパンク・ナンバーで彼女とディー・ディーの共作というのが興味深いが、聴けば聴くほどクセになるスルメ・チューンだ。彼女のアクの強いヴォーカルは好き嫌いが分かれそうだが私は結構気に入っている。
 Gigantor feat. Leonard G. Phillips の④「シーズ・ザ・ワン」はドイツ訛りの強いヴォーカルがちょっとアレだが軽快なリズムが耳に心地良いし、Rasta Knast の⑤「ティーンエイジ・ロボトミー」も高速で飛ばしながらも原曲のメロディーを崩さずに演奏しているところがエエ感じ。 Die Arzte の⑦「Die Wikingjugend hat mein Mädchen entführt」はタイトルを見た時は一瞬ドイツ語のオリジナル曲かと思ったが、曲を聴いてビックリ... この親しみやすいメロディは「KKK」だ!歌詞はサッパリわからないが、ゴツゴツしたドイツ語で聴く「KKK」も中々味があって乙なモンだ。
 Scattergun の⑧「アイム・アゲインスト・イット」は曲に入る前の“I don’t like ○○, I hate ××...” という呟きが絶妙なイントロの役割を果たし、ハイハットのカウントから一気呵成に突っ走る流れがカッコイイ(≧▽≦) Sigi Pop の⑨「Seppi War A Punk Rocker / Kumm Danz」は「シーナ...」と「ドゥー・ユー・ウォナ・ダンス」のメドレーをスラッシュ・メタルっぽいサウンドで聴ける面白いトラックだ。この手の演奏は曲がつまらないとタダの騒音になってしまうものだが、さすがは名曲2連発、コレは十分傾聴に値するヴァージョンになっている。唐突に挿入されるヨーデル(?)みたいな雄叫びは意味不明だが...
 ⑪「ロッカウェイ・ビーチ」をカヴァーしているのはイギリスの Action Pact feat. Steve Drewett。底抜けに楽しい曲想のせいか、この曲はラモーンズ・ナンバーの中で「シーナ...」と並んで被カヴァー率が最も高いんじゃないかと思うぐらいよく取り上げられている。ここでも期待を裏切らないノリノリの演奏が楽しめ、まさに “名曲は名演を呼ぶ” の典型のようなヴァージョンに仕上がっている。PATARENI というクロアチアのバンドの⑮「エンドレス・ヴァケイション」はチェーンソーみたいなギターの爆音を大胆にフィーチャーしたアレンジがめちゃくちゃカッコイイ。へヴィーなリズムを叩き出す無骨なドラムも最高だ。
 Hass というバンドの⑯「エクスポート」はガチガチのドイツ語だがよくよく聴けば「カリフォルニア・サン」だ。ハードコア・パンクっぽいサウンドをバックにがなり立てるようなヴォーカルが炸裂、私にはちょっとハードすぎて体調が良い時でないと聴けません(>_<) ドイツのブギーマンというバンドによる⑳「サーフィン・バード」のカヴァーは1分を過ぎたあたりからスクラッチを多用したハウス・サウンドが乱入、ハチャメチャ一歩手前で何とか踏みとどまるのだが、これではまるで M/A/R/R/S の「パンプ・アップ・ザ・ヴォリューム」だ。いくら何でもちょっと遊びすぎちゃいますか?
 (23)「Siinä On Punk Kari」は “又々登場!” という感じの「シーナ...」だが、何とコレがフィンランド語というからラモーンズの世界的影響力の凄さを改めて痛感させられる。Ne Luumäet というのはフィンランドでは名の知れたラモーンズ直系バンドらしいが、私は読み方すら分からない(ネ・ルーメート???)。言葉は分からなくっても音楽は世界最高の共通語というのが実感できる親しみやすいトラックだ。ザ・アディクツの(25)「アイ・ウォナ・ビー・セデイテッド」はオリジナルの良さを活かしながらもしっかりと自分たちのカラーを出しているところが◎。特に “バァーバァーババァバ~♪” と繰り返すパートのアレンジがめっちゃ気に入っている。
 ジャケットは本物のラモーンズの写真に目隠し加工しただけ(←こんなんでエエんかいな...)というイージーなものだが、中に詰まっている音楽にはエネルギーが漲り、躍動感に溢れている。まさにラモーンズ・スピリットの伝承盤といった感のある痛快な1枚だ。

Die Toten Hosen - Blitzkrieg Bob


Motorhead - Ramones


Die rzte - Die Wiking-Jugend hat mein MBdchen entfrt


The Adicts-I Wanna Be Sedated

Pleasant Dreams / Ramones

2010-11-04 | Ramones
 ラモーンズの過小評価アルバムとして前回の「モンド・ビザーロ」と同じくらい、いや、それ以上に無視されているのが、フィル・スペクター・プロデュースの「エンド・オブ・ザ・センチュリー」に続いて1981年にリリースされたこの「プレザント・ドリームズ」である。彼らはセルフ・プロデュースか、或いは後にU2のプロデュースで名を上げることになるスティーヴ・リリィホワイトにプロデュースを任せるか(←実現してたらどんな音になってたかめっちゃ興味あるなぁ...)のどちらかにしたかったらしいが、彼らをコマーシャル路線に乗せてラジオで流れるようなヒット曲を生むことを望んでいたレコード会社は10CCのグレアム・グールドマンを起用した。
 ラモーンズというととにかく “ラウド & ファスト” なパンクロックというイメージが強いが、1st アルバムのあのパンキッシュな音作りを期待して聴くと思いっ切りコケてしまう(>_<) ここで聴けるのは絵に描いたような “パワー・ポップ” そのもので、実に洗練された耳当たりの良いサウンドに仕上がっている。そのせいか非常にジョーイ色の濃いアルバムになっており、逆に 1st アルバムの音を続けたかったジョニーはグールドマンのプロデュースが気に入らず、インタビューで ridiculous だとボロクソにけなしていたのも大いに頷ける。その結果、硬派なファンからは “軟弱” の烙印を押され、又一般の音楽ファンからは “パンク” への偏見で無視されるという、めっちゃ不憫なアルバムなのだ。
 しかし私はこのアルバムが大好き(^o^)丿 1st アルバムがスベッただの、パンクロックがコロンだだのといった能書きはとりあえず横に置いといて、先入観のない真っ白な心で聴けば実に良くできたアメリカン・ロックではないか!不発に終わったのは MTV の登場とそれに伴う第2期ブリティッシュ・インヴェイジョンやダンサブルなポップ・ソングの流行という時代の空気とたまたま合わなかっただけのこと。今の耳で聴けばバンドもグールドマンも当時の状況下で実に良い仕事をしたと思う。
 アルバム冒頭を飾る①「ウィー・ウォント・ジ・エアウェイヴズ」はそれまでの軽快な疾走系ロックンロールとは明らかに違うへヴィーなナンバーで、ミディアム・テンポで重心を下げたグルーヴィーな演奏が新鮮に耳に響く。「ロックンロールでナンバー・ワン」という邦題はもうちょと何とかならんかったんかと思うが(笑)、曲も演奏もめちゃくちゃカッコ良いキラー・チューンだ。
 ①と並んでこのアルバム中で傑出していると思えるのがジョーイの書いた③「ザ・KKK・トゥック・マイ・ベイビー・アウェイ」だ。コレはジョーイの元恋人で彼を捨ててジョニーと結婚したリンダという女性の事を歌ったもので、保守派で極右思想のジョニーを KKK に例えて痛烈に皮肉ったタイトルがすべてを物語っている。ライヴで “KKKがオレから彼女を奪った” と連呼するジョーイの怨念(?)も凄いが、その横で何食わぬ顔で平然とギターを弾きまくるジョニーのプロ根性(←彼はファンが喜ぶことを何よりも優先した...)も見上げたモンだと思う。このアルバムにはもう1曲彼女の事を歌った⑦「シーズ・ア・センセイション」という曲が収められており、ジョーイには気の毒だがコレが又中々の名曲名演ときている。世の中ホンマに皮肉なものだ。
 このアルバムには他にも豊かなハーモニーでコーティングされたキャッチーなナンバーが多い。④「ドント・ゴー」や⑧「7-11」なんてハーマンズ・ハーミッツあたりが歌えばぴったりハマりそうなバブルガム・ミュージック(←もちろん良い意味です!)で、そのウキウキワクワクするような曲想はポップス・ファンなら絶対に気に入ると思うし、⑤「ユー・サウンド・ライク・ユーアー・シック」や⑩「カム・オン・ナウ」は彼らお得意の軽快なロックンロール。60'sの薫りが横溢する⑫「シッティング・イン・マイ・ルーム」のメロディー展開とそれに絡むコーラス・ハーモニーも絶品だ。
 ガチャガチャしたドラムのサウンドがユニークな②「オールズ・クワイエット・イン・ザ・イースタン・フロント」や、歌詞に “フィル・スペクター” や “10CC” といった固有名詞が次々に登場する⑥「イッツ・ノット・マイ・プレイス」も面白い。ボートラでは10年後に「モンド・ビザーロ」に収録されることになる⑬「ツアリング」の “1981年ヴァージョン” があるべきところに収まったという感じで強く自己主張しているし、未発表曲⑭「アイ・キャント・ゲット・ユー・アウト・オブ・マイ・マインド」も①を裏返しにしたような旋律が聴き応え十分だ。
 このアルバムは確かにラモーンズらしいアグレッシヴなパンチ力には欠けるかもしれないが、ますます磨きのかかったジョーイのヴォーカルが楽しめる極上のポップ・ロック・アルバムとして、 “パンクはちょっとどうも...” という堅気の音楽ファンにも安心してオススメできるポップな作品だ。

We Want The Airwaves - The Ramones


Ramones - The KKK Took My Baby Away (Music Video)


THE RAMONES - SHE'S A SENSATION


Ramones - Sitting In My Room

Mondo Bizarro / Ramones

2010-11-01 | Ramones
 ラモーンズは70年代から90年代までの約20年間に14枚のオリジナル・アルバムをリリースした。私がよく聴くのは “ポップなパンク・ロック” に拘った70年代から80年代初頭にかけてのアルバムだが、迷いが吹っ切れたかのように躍動感溢れる演奏を聴かせる90年代の「アシッド・イーターズ」、「モンド・ビザーロ」の2枚も大好きだ。特に1992年にリリースされたこの「モンド・ビザーロ」は彼らのアルバムの中でも「プレザント・ドリームズ」と並んで過小評価されているアルバムの最右翼に挙げられるのではないだろうか?
 アルバム・タイトルの「Mondo Bizarro」とは “狂った世界” という意味を表すイタリア語。長年在籍したサイアーを離れ、クリサリス・レーベルへの移籍第1弾であり、又、初代ベーシストであるディー・ディーが抜けて代わりに若い CJ が入って以降初のスタジオ・アルバムということもあって気合いも十分、エネルギーに満ち溢れたタイトなロックンロール・アルバムになっている。
 私がこのアルバムでダントツに好きなのがドアーズのカヴァー⑦「テイク・イット・アズ・イット・カムズ(邦題「チャンスはつかめ」)」だ。オリジナルの良さを活かしながらもラモーンズならではのハード&ラウドな味付けがピタリとハマり、強力なキラー・チューンに仕上がっている。特に要所要所を引き締めているグルーヴィーなオルガンと CJ の闊達なベース・ワークがめっちゃスリリングで、ジョーイのヴォーカルも鳥肌モノのカッコ良さだ。私的には「スパイダーマン」や「アイ・ドント・ウォナ・グロウ・アップ」、「マイ・バック・ペイジズ」に匹敵する90年代ラモーンズ屈指のスーパーウルトラ大名演だと思うし、この1曲だけでもこのアルバムを買う価値があるのではないだろうか?
 ディー・ディーは脱退後も曲作りという形でバンドに貢献しており、このアルバムでもオリジナル・ナンバーでは最上と思える③「ポイズン・ハート」、⑤「ストレンクス・トゥ・エンデュア」、そして⑧「メイン・マン」の3曲を提供している。③はジョーイの情感豊かなヴォーカルが楽しめるミディアム・テンポのポップ・ロックで、 “パンク” のイメージで聴くと肩透かしを食うだろう。 CJ がヴォーカルを取る⑤はキャッチーなメロディーとハード・エッジなサウンドを見事に両立させた90年代ラモーンズらしいナンバーだが、ライヴではこのスタジオ・ヴァージョンを遥かに凌ぐドライヴ感溢れる演奏が楽しめるのが嬉しい。⑧はどことなく60年代GSの薫り漂う哀愁のメロディーに涙ちょちょぎれるナンバーでファンの間でもあまり話題には上らないが、私は “ラモーンズ隠れ名曲トップ3” に入れたいぐらいに気に入っている。
 ⑬「ツアリング」は約10年前のアルバム「プレザント・ドリームズ」のレコーディング時に書かれた曲で、曲調が「ロックンロール・ハイスクール」に似すぎていたためお蔵入りになっていたもの。もろ “ビーチ・ボーイズ風” なコーラスが笑えます(^o^)丿 彼らはアグレッシヴな “パンク” のイメージが強いが、こういう陽気なアメリカン・ロックを演らせたらピカイチだ。
 このCaptain Oi! レーベル再発盤のボートラ⑭「スパイダーマン」は元々ラスト・アルバム「アディオス・アミーゴス」の隠しトラックだったもので、以前「スパイダーマン」特集で取り上げたものとは別テイクの “1-2-3-4カウント無し” ヴァージョン。抜群の完成度を誇る本テイク(?)に比べると軽く流しているように聞こえるデモ・テイクっぽい演奏で、本テイクとの聴き比べもファンにとっては一興だろう。
①「センサーシット」はアメリカのアホバカ保護者団体 PMRC によるロックへの検閲(未成年に相応しくない、と認定した音楽に “Parental Advisory ステッカー” を貼り付けさせた...)を痛烈に皮肉った歌詞が痛快だ。ミック・ジャガーみたいなジョーイのヴォーカルは説得力抜群だし、ジョニーのモズライト・ギターの咆吼も脳髄をビンビン刺激する。エド・ステイシアムがプロデューサーとして戻ってきたせいか、ギター・サウンドの音採りが全盛期を彷彿とさせるラウドなのものになっているのが嬉しい。
 80年代っぽいサウンド・プロダクションが面白い⑥「イッツ・ゴナ・ビー・オールライト」、ラモーンズお得意の疾走系ロックンロール⑨「トゥモロウ・シー・ゴーズ・アウェイ」、ホリーズみたいな⑩「アイ・ウォウント・レット・イット・ハプン」なんかもメロディーにあと一工夫あれば名曲の仲間入りしたかもしれない佳作だと思う。
 80年代にやや迷走気味だった彼らが90年代に入って心機一転作り上げたこのアルバムは決して大名盤というワケではないが、ファンならずっと手元に置いて聴き続けたくなるような、愛すべき1枚だ。

The Ramones-Take it as it comes


Ramones - Touring


Ramones - Poison Heart


The Ramones -- Main Man
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