shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Night Snails And Plastic Boogie / The Yellow Monkey (Pt. 1)

2012-01-29 | J-Rock/Pop
 イエロー・モンキーの全てのアルバムの中でどれが一番好きかと訊かれたら選ぶのに困ってしまうが、どのジャケットが一番インパクトが大きいかと問われれば、私は迷わず彼らのメジャー・デビュー・アルバムであるこの「The Night Snails And Plastic Boogie (夜行性のかたつむり達とプラスチックのブギー)」を挙げる。
 とにかく一目見ただけで “これこそまさにグラム・ロック!” と言いたくなるような、お化粧ばっちりの吉井さんがおでこにカタツムリ(←両性具有・雌雄同体のシンボルですね...)を這わせているという実に衝撃的なジャケットなのだが、これはもうデビッド・ボウイの「アラジン・セイン」そのまんま(←もちろんボウイは顔にカタツムリなんか乗せてませんが...)。別にパクリとかそういうんじゃなくって、ボウイが大好きな吉井さんとしてはただ彼のマネがしてみたかっただけなのだろう。もし仮に私がバンドをやっていたとしたら、恐らくメンバー全員で横断歩道を渡ってるジャケット写真を撮りたがると思うし...もちろんベーシストだけは裸足で(^.^)
 長ったらしいアルバム・タイトルも実にヘンチクリンだ。夜行性のかたつむり??? プラスチックのブギー??? メジャー・デビュー作だというのにもう完全に趣味丸出しで、大衆性もヘッタクレもあったモンではない。 “夜行性のかたつむり” は退廃的でネットリした感じの初期ボウイっぽいサウンドを、 “プラスチックのブギー” は猥雑でチープな T.REX もどきのサウンド(plastic には “偽物の” “見せかけの” という裏の意味がある...)を意味しているのだろうか? まぁどちらにしろ、 “時代錯誤のグラム・ロック・バンド” 路線を標榜する初期イエロー・モンキーの姿勢が明確に伝わってくるタイトルではある。
 肝心の音の方はジャケットやタイトルから想像できるように、彼らのルーツともいえる煌びやかでポップなサウンドに歌謡曲を想わせるおセンチで下世話なメロディーが乗っかったコテコテのグラム・ロックで、具体的なイメージとしては “ジュリーや米米クラブのノリでデビッド・ボウイごっこをするマーク・ボラン” という感じ。要するに自分達が影響を受けた音楽のエッセンスを巧く融合させて、彼らにしか作り得ないような和製グラム・ロックを作り上げているのだ。吉井さん流に言えば “ルーツはツール” ということか。
 基本的には前年にリリースされたインディーズ盤の延長線上にあるサウンドだが、メジャー・デビュー作ということで肩に力が入りすぎたのか、やりたい事をあれもこれもと目一杯詰め込んだ感があり、おもちゃ箱をひっくり返したような面白さはあるものの、それらが逆に混沌とした印象を与えてしまうことも事実で、インディーズ盤にあったストレートな “勢い” のようなものは少し後退してしまっているように感じる。
 しかし個々の曲のクオリティー自体は文句なしに高く、その後のライヴで頻繁に演奏されることになる重要なナンバーも数多く含まれており、彼らが本来持っている毒々しさやアルバムとしてのコンセプトに重きを置くのではなく、単なる “名曲集” として聴いてこそ、このアルバムの真価が見えてくるのではないかと思う。何よりもデビュー時にして既にその独創的なスタイルをしっかりと確立しているのはさすがとしか言いようがない。
 全11曲、グラム・ロックの王道を行く妖しげなナンバーあり、フックのあるメロディーを巧くビートに乗せたノリノリのロックンロールあり、メロディーの美しさが際立つバラッドありと、聴いていて飽きがこない作りになっており、ポップス・アルバムとしては非常に秀逸、しかもどの曲にも一筋縄ではいかない凝った仕掛けが施されており、洋楽マニアでもある吉井さんの並々ならぬ拘りが感じられる。
 そんな中でも私が断トツに好きなのがアッパーなポップ・チューンの⑧「Foxy Blue Love」だ。このアルバム中最もイケイケな曲調でドラマチックに盛り上がるこの曲は、ちょうどインディーズ盤の「Sleepless Imagination」から狂気を抜いて裏返しにしたような感じのナンバーで、疾走感溢れる小気味よいロックンロールが楽しめる。ヒーセの絶妙なバック・コーラスはまさに “音楽を知ってる者の仕事” だし、アニーのワイルドなドラミングは得も言われぬ高揚感を生み出している。歌心溢れるエマのギターも最高だ(^o^)丿
 歌詞の方は “アカシアのしずく アカペラの恋心” とか “プラチナの涙 プラトニックのため息” のようにカタカナを多用した言葉遊び的なフレーズが乱発されていてかなり難解だが、 “人格を殺し 仮面をつけて 軽蔑の目を塞いでしまおう” のラインなんて心にグサッとくるし、 “君に会えずにいたんだ 夜も寝れずにいたんだ~♪” と歌うあたりも切ない感じが出ていて良いと思う。
 吉井さんの自伝によると、この曲でニルヴァーナみたいな音作りをしようとしたミキシング・エンジニアにフィンガー5やピンクレディーの CD を聴かせて「70年代のこういうアナログっぽいポテポテのスネアの音にして」と注文をつけたという。わかるなぁ、その気持ち。ドライで粗野でパキパキした90年代洋楽ロックの無粋なサウンド(←ボロクソ言うて悪いけど、グランジ・オルタナ系は嫌いですねん...)が初期イエロー・モンキーの和製グラム・ロックに合うワケがないのだ。とにかくこの曲は、デビュー作にしてサウンド・プロダクションまでも含めた曲の完成形をしっかりとイメージしていた吉井さんの音楽家としてセンスの良さが存分に発揮されたキラー・チューンだと思う。 (つづく)

Foxy Blue Love

Bunched Birth / The Yellow Monkey (Pt. 2)

2012-01-26 | J-Rock/Pop
 ④「Lovers On Backstreet」もオリジナリティーに溢れるイエロー・モンキーらしいナンバーだ。歌詞の内容は真夜中に裏通りに立つ娼婦の哀しさを歌ったもので、吉井さんがイエロー・モンキーのために書いた最初の曲だという。エロい内容を巧みにオブラートに包んで表現する “知的なエロ詩人” 吉井和哉の真骨頂とも言える1曲だが、何と言っても “あなたが醜いブタでもいい 困る事などなにもな~い♪” という一節が衝撃的で、多分吉井さん以外の誰に書けない類の歌詞だと思う。そんな中、 “あなたにもお花をあげましょう” というフレーズをさりげなく入れるあたりがニクイねぇ...
 この曲はFメロまであるという複雑な構成で、初めて聴いた時はあまりピンとこなかった。というか、私が聴いたのはメジャー・デビュー後に4thシングル「熱帯夜」のB面用に再レコーディングされたヴァージョンの方(←「アクトⅡ」や「マザー・オブ・オール・ザ・ベスト」といったベスト盤に入ってるのはすべて再録ヴァージョン)でアレンジが少し違っており、本当のオリジナル・ヴァージョンはこのアルバムでしか聴けない。このアルバムはロックな曲の隠し味としてアコギが実に巧く使われており、ちょうどストーンズの「ブラウン・シュガー」を彷彿とさせるカッコ良さがあるのだが、特にこの曲でその効果が顕著で、ドライな質感を実に上手く表現している。そういう意味で、私はアコギの使い方が絶妙なこっちのオリジナル・ヴァージョンの方が断然好きだ。
 ③「Fairy Land」はアダム&ジ・アンツばりのジャングル・ビートが快感を呼ぶアップテンポなナンバーで、ギラギラした輝きを感じさせる吉井さんのヴォーカルが痛快だ。特に “電気仕掛けのナルシス♪” と繰り返すフレーズはインパクト絶大だし、 “JETS! JETS!” というヒーセの掛け声も効果抜群で、ライヴではコール・アンド・レスポンスで思いっ切り盛り上がりそうな1曲だ。
 ⑥「Sleepless Imagination」も③と同系統のアッパー・チューンで、「フィジカル・グラフィティ」の「カスタード・パイ」をパロッたようなインチキくさいイントロ(笑)から初期のポイズンを想わせる軽快なロックンロールへとなだれ込むあたりで快哉を叫んでしまう。 “手拍子入りの曲に駄作なし” は私の経験に基づく持論なのだが、思わず口ずさんでしまう陽気なメロディーとノリノリのハンド・クラッピング、更に “ランランランラン♪” と唱和するコーラスまで加わってウキウキワクワク感が大きくアップ、リズミカルなタンバリンも効いている。このチープな感覚、タマランなぁ... (≧▽≦) 吉井さんの変幻自在なヴォーカルも絶好調で、特に “I like your lips” の2回目の lips を半音上げて歌うところがツボですな。因みに私はライヴでの「審美眼ブギ」~「Foxy Blue Love」~「Sleepless Imagination」という流れが大好きで、この曲順でドライヴ用の自家製イエロー・モンキー・コンピ CD-R を作って楽しんでいる。
 残りの3曲に関しては取り立ててどうということはない。私は初期ボウイ系の暗くてかったるいサウンドはどうも苦手なのだが、胎動をイメージさせるようなインスト曲①「Bunched Birth」はアルバム全体のイントロ、⑦「Tears Of Chameleon」はアウトロという感じで聞き流しているのであまり気にならない。因みに①はボウイの「Future Legend」、⑦もボウイの「Velvet Goldmine」に雰囲気が似ているように思えるのは気のせいか。又、⑤「Hang Onto Yourself」はミック・ロンソンの「Billy Porter」を低速回転処理したような感じで、メロディー展開そのものも酷似している。吉井さん、ボウイもロンソンも大好きやからこういうのやりたかったんやろな...
 このアルバムを始めとして初期の盤はグラム色が強いので、私のような T.REX 大好き人間は別にして、堅気のイエロー・モンキー初心者は中期のアルバムあたりから彼らに入門する方がベターだとは思うが、彼らのアルバムを聴き込み、何種類も出ている DVD で彼らのライヴを追体験することによって、いつか必ずこの「BUNCHED BIRTH」の良さが分かる時が来るはずだ。私はラッキーにも安く買えたが、いつまた廃盤になるかわからんので、購入を迷ってる人は手に入るうちにゲットしといた方がエエと思います(^.^)

LOVERS ON BACKSTREET(BUNCHED BIRTH Ver.) / THE YELLOW MONKEY


Fairy Land


Sleepless Imagination

Bunched Birth / The Yellow Monkey (Pt. 1)

2012-01-24 | J-Rock/Pop
 さあ、今日からいよいよイエロー・モンキーのアルバムを大特集だ。まずは彼らがメジャー・デビュー前に拠点としていたライヴハウス、ラ・ママのインディーズ・レーベルである ENGINE からリリースしたアルバム「Bunched Birth」からいってみよう。
 私は最初このアルバムの購入を迷っていた。見ての通りジャケットはエグいし、デビュー前のインディーズ盤やし、有名曲は入ってないし、7曲しか入ってないのに結構な値段はするしで二の足を踏んでいたのだ。
 しかし、オリジナル・アルバムを全て揃えた後に買ったライヴ盤「SO ALIVE」の最後に隠しトラックとして入っていた「Welcome To My Doghouse」を聴いてそのカッコ良さに痺れた私はその曲のオリジナル・ヴァージョンがこのインディーズ盤に入っていたことを思い出し、慌ててアマゾンでチェック。このアルバムには1991年にリリースされたオリジナル盤と1996年にリリースされた再発盤の2種類があり、オリジナルはプレミアが付いててとてもじゃないが買えないし、再発盤も以前見た時は2,500円ぐらいしていたのだが、たまたまタイミングが良かったのか、送料込みで920円という真っ当な値段で買うことが出来た。
 まず目を引くのが左半身が男性で右半身が女性という両性具有のイラスト・ジャケットだ。シルクハットとファーだけを身につけ、不敵な笑みを浮かべたその表情が何とも不気味。しかもその姿を柵の外からギャング団みたいな男達が見ているという実にシュールなもので、アングラな雰囲気に溢れている。
 アルバム・タイトルの「Bunched Birth」はよく“集中出産”と訳されているが、それでは何のことやらサッパリ分からない。確かインタビューか何かで吉井さんが “性別も善悪も人間の感情も音楽ジャンルも、それら全てを束ね合わせて一つの塊にしたアルバムの誕生” みたいなことを言っていたように思うが、中々意味深なタイトルだ。
 全体の印象としては、アクが強くて下世話、煌びやかで妖しい音世界が繰り広げられるというインディーズ・アルバムのお約束のような感じなのだが、アルバムに漂う独特の空気感は彼らがメジャーになっても基本的には変わっておらず、その “イエロー・モンキーらしさ” を貫き通したまま10年後には東京ドームを満杯にするまでになったのだから凄いとしか言いようがない。
 もちろんこのアルバムの時点ではまだまだ “吉井和哉とそのバックバンド” 的な色合いが濃いが、垢抜けない部分はその卓越した音楽センスで十分カバーされているし、バンドの勢いという点では彼らの全アルバム中でも群を抜いているように思う。それにしても吉井さんの声、めっちゃ若々しいなぁ... この鼻にかかったような艶かしいヴォーカルが、アルバムの変態チックな雰囲気(笑)をより強めている。
 内容は全7曲30分そこそこのミニ・アルバム的なもので、初期デビッド・ボウイ系のディープで耽美的な①⑤⑦、T.REX 系ノリノリ・グラム・ロック③⑥、そして “これぞイエロー・モンキーのロック!” としか言いようのない②④という構成だ。
 で、まずは何はさておきこのアルバムを買うきっかけになった②「Welcome To My Doghouse」である。イエロー・モンキー伝説はまさにこの “犬小屋” から始まったのであり、休止前のドーム公演のラストを飾ったという点でも、彼らにとって “最初で最後の曲” であるこの “犬小屋” は大きな意味を持った1曲と言っていいだろう。
 一聴してわかるように初期イエロー・モンキーの攻撃性が一気に爆発したような実にスリリングな演奏で、 “華やかに見える道化師の 黒い見世物小屋へようこそ~♪” と強烈な毒を撒き散らし、 “空は今 何色なの? ここから早く出たいよ~♪” と犬小屋、つまりアンダーグラウンド・シーンからの脱出を狙って吼えまくる。
 ギターのプレイも一段とアグレッシヴでディストーションも心なしかギラギラしているように聞こえるし、ゴールデン・イヤリング(←オランダのロック・バンドです...)の「トワイライト・ゾーン」みたいなヒーセのベース・ソロも文句なしにカッコイイ(^o^)丿 うねるようなグルーヴを生み出すアニーの剛腕ドラミングは野性味に溢れているし、吉井さんが叫ぶように繰り返す “ベイベー” という声も情感たっぷりで、聴く者の心にグイグイと食い込んでくる。特にライヴでのテンションの高い演奏は必見で、凄まじいまでのパワーに圧倒される。原始的なエネルギーの爆発... まさにロックンロールの原点を思い出させてくれるような、イエロー・モンキー屈指の名演だ。 (つづく)

WELCOME TO MY DOG HOUSE

TILL DAWN / The Yellow Monkey

2012-01-20 | J-Rock/Pop
 さて、 “イエロー・モンキー祭り” も中盤戦にさしかかり、だんだん趣味丸出しな選曲になってきたが、今日は “オリジナル・アルバムには入ってないけど個人的にはめっちゃツボ” シリーズ(←長いっ!)のシメとして、イエロー・モンキーによる T.REX のカヴァー「TILL DAWN」(← dawn は “ドーン” であって “ダウン” ではない...)を取り上げよう。
 この曲はマーク・ボラン没後20年にあたる1997年にリリースされた日本人ミュージシャンによる T.REX トリビュート・アルバム 「ブギー・ウィズ・ザ・ウィザード」に彼らが参加した時のもので、2004年にリリースされた拾遺集的なベスト盤「マザー・オブ・オール・ザ・ベスト」にすら入っていないという貴重な音源だが、これがもう実にエエ味を出していて、聴けば聴くほどハマってしまう “スルメ・チューン” なのだ。吉井さんはこの曲の他にももう1曲ソロで「T.REX トリビュート・メドレー」に参加、先頭バッターとして英語で「20th センチュリー・ボーイ」を歌っているのだが、やはりここは彼のユニークな日本語訳が楽しめる「ティル・ドーン」に尽きるだろう。
 CD のブックレットにあった “「ティル・ドーン」の日本語の詞はこの曲とマークに対する僕なりの思い入れです...” という吉井さんのコメントにもある通り、原曲の歌詞と見比べてみても直訳はおろか意訳にすらなっていないハチャメチャな日本語詞だが、まぁ「ティル・ドーン」の “吉井和哉風替え歌” と考えれば分かり易い。
 まずは冒頭のカウント... “ワン & トゥ & あおえみなっ!” に大笑い。 T.REX に青江三奈って... このセンス、ホンマに最高やわ(^.^)  そしてグルーヴィーなイントロからマーク・ボランそっくりのみゃあみゃあ声で “こんなねぇちゃんは イカさなぁ~い♪” といきなり吉井和哉ワールド全開でリスナーを翻弄、 “月に3回の美少女とレーシングゲーム♪” (←何やそれ???)とたたみかけ、返す刀で “わしの飼ってる猫ミャーオ♪” ときたもんだ。しかしいくらなんでも “わし” はないやろ...(笑) “猫ミャーオ” にもクソワロタ(^o^)丿 エンディングが “ここだけの話、実は...” でフェイドアウトしていくという遊び心も吉井さんらしくていい。
 演奏の方はかなり原曲に忠実なアレンジながら、イエロー・モンキーらしい野太いグルーヴが生み出すグラム・ロック独特の空気感がたまらなく心地良いし、マーク・ボラン色の濃いこの難曲をまるで自分の持ち歌のように自在に歌いこなして T-レクスタシーを感じさせる吉井さんの歌唱も堂に入っている。又、エマが “T.REX をカヴァーするのっていろいろ自分の色を入れることができるから楽しい...” と言っているように、単なるコピーに堕することなく間奏のギター・ソロではブライアン・メイごっこを織り交ぜながらしっかりと自己主張するなど、彼らの持ち味を巧く活かした名演になっている。
 トリビュート・アルバムに参加する時の楽曲というのは参加するアーティスト自身が決める場合が多いと思うのだが、以前取り上げたモット・ザ・フープルの「ホナルチー・ブギー」といい、この「ティル・ドーン」といい、誰もが知っているようなメジャーな曲は敢えて避け、いわゆるマニア好みでありながらもじっくり聴けば味わい深いという “隠れ名曲” を選んでくるあたりがマニアックな吉井さんらしい。
 かく言う私もこれの原曲が入った T.REX のアルバム「ボランズ・ジップ・ガン」は持ってはいたが、恥ずかしながらこの曲はノーマーク(←ダジャレじゃありません...)で、イエロー・モンキーのカヴァーを聴いて初めてその良さが分かったクチなのだ。今では T.REX の原曲を聴いてもついつい頭の中に “青江三奈” やら “こんなねぇちゃん” やら “猫ミャーオ” といった日本語詞が出てきてしまう。困ったものだ(笑)

T.Rex/Marc Bolan/'Til Dawn/Japanese Cover


T.Rex / Marc Bolan --- Till Dawn


【おまけ】なんか日本人グラム・ロッカー達による We Are The World みたいな感じやね...笑
T.Rex Tribute Medley-BOLAN'S CHILDREN

MY WINDING ROAD / The Yellow Monkey

2012-01-17 | J-Rock/Pop
 先週たまたまテレビをつけるとミュージック・ステーションで “ジャンル別アーティスト最強ランキング” というのをやっていた。日本のロックバンドってどんなんおったっけ?と興味を引かれた私は “バンド編” の所だけ見たのだが、トップ20の中で私が身銭を切って聴くに値すると思ったのは B'z とサザンだけで、この2組にイエロー・モンキーを加えたのが私にとっての日本3大ロック・バンド(←ミスチルは基本的にフォーク・グループやと思う...)だ。
 この3つのバンドに共通しているのは、洋楽ロックという自らのルーツを鮮明にしていることで、他の有象無象のバンドにはそれが全く感じられない。長年英米のロックを聴いてきた私の耳には単なる “ロックもどきのJ-POP” にしか聞こえないのだ。やはり本物は本物からしか生まれないということか。 B'z も、サザンも、そしてイエロー・モンキーも、先人達からの影響を巧く消化して自らのスタイルを確立し、彼らにしか作り得ないロックの世界を作り上げている。
 もう一つ、これら3大バンドに共通する見逃せないポイントとして “遊び心” が挙げられる。アーティストとしての懐の深さと言ってもいいかもしれないが、ただ反骨精神を前面に押し出してシャウトしているだけのバンドは寒すぎて滑稽にしか映らない。イエロー・モンキーの楽曲はその歌詞、メロディー、音作りから PV 映像に至るまでユーモア精神に溢れており、英米の偉大なるロック・バンド達と同質の匂いが感じられるところに思いっ切り魅かれるのだ。
 で、今日取り上げるこの「マイ・ワインディング・ロード」という曲だが、これこそまさにイエロー・モンキーが仕掛けたユーモア溢れる “一大パロディー絵巻” と言えるのではないか? 肉体的にも精神的にも過酷を極めた年間113本というパンチ・ドランカード・ツアーの最中にレコーディングされたというこの曲は、その反動もあってか、あれこれ考えずに楽しめるようなイケイケ・ノリノリのイエロー・モンキー流ダンス・ナンバーに仕上がっている。ひょっとするとお笑い満載のパロディーをドバァ~ッとぶちかましてスッキリしたかっただけなのかもしれない。
 とにかくこの曲は、そのメロディーといい、バック・コーラスといい、リズム・パターンといい、どこをどう聴いてもキッスの「ラヴィン・ユー・ベイビー」のパロディーだ。メンバーの中でも筋金入りのキッス・ファンを自認するヒーセ兄貴の嬉しそうな顔が目に浮かぶ。又、ポール・マッカートニー登録商標(?)である「ワインディング・ロード」という言葉を堂々と使ったタイトル自体も立派なパロディー(←歌詞の中に “down this long and winding road♪” というフレーズまで登場する...)と言えるだろう。
 吉井さんが “この頃の気分は真っ暗だった...” というぐらい精神的に疲れきっていた時期の作品だけあって、歌詞にいつものような切れ味は無く、 “「耐えられない やりきれない」という名のブティック” だとか、 “夢を殺しかけていた 愛も忘れかけていた...” のようにネガティヴな表現が並んでいる。又、 “「愛されたい 愛されない」という名のワイン飲んで...” のラインには彼のトラウマがストレートに出てしまった感が無きにしもあらずだが、私は “あぁ 真夜中に~♪” から始まるパートが大好きで知らず知らずのうちに “It's my disco♪” と口ずさんでしまっているし(笑)、 “新しい時代にミラーボールは回り始める” という前向きなフレーズも大いに気に入っている。やっぱりイエロー・モンキーは最高だ(^o^)丿
 この曲の PV もファンの間で人気が高く、グラサンにスーツ姿の吉井さんはホストみたいで相変わらずカッコイイし、それ以外にも見所が満載だ。ベースのヒーセはラリパッパ状態のエルトン・ジョンみたいに(笑)ド派手な衣装で身をくねらせながら70年代ディスコ・ブームを体現するハジケッぷりだし、ドラムスのアニー(←エマの実の弟なのにアニーとはこれいかに...)はパンツ一丁でリズム・キープ、エマに至ってはチカチカする電飾ギターを弾いており、後半部ではサタデー・ナイト・フィーヴァーごっこに興じている... エマボルタだ(笑) イエロー・モンキーは各メンバーのキャラが立っていて親しみやすいので、こういうビデオはファンにはたまらない(^o^)丿 因みにメンバーのシルエットを浮かび上がらせる手法はトーキング・ヘッズの PV などで用いられていたものだが、他にも80年代の MTV 全盛期を想わせるような映像処理が随所に施されており、何度見ても飽きない楽しさ溢れるビデオ作品に仕上がっている。高橋栄樹氏の監督した PV に駄作なしだ。
 又、ライヴでは PV 同様に巨大なミラーボールが登場、会場全体が巨大なディスコと化す様はまさに圧巻だ。シングルとしてのリリース時期の関係でオリジナル・アルバムには入っておらず(←アルバム「8」の初回盤のみにボーナス・ディスクという形で収録)、バンドの歴史を語る上で重要な位置を占める曲ではないかもしれないが、小難しいことを考えずに彼らが持っているエンターテインメントの要素を最大限に楽しめるという意味で、日々愛聴している1曲なのだ。

The Yellow Monkey - MY WINDING ROAD

SPARK / The Yellow Monkey

2012-01-14 | J-Rock/Pop
 イエロー・モンキーは1991年にインディーズ・レーベルから自主制作 CD を出し、翌1992年にメジャー・デビュー、2001年に活動を停止するまでの10年間で9枚のオリジナル・アルバムを出している。ライヴを見れば分かるように、バンドのコアな部分での主義主張や価値観といったものはそれほど変わっていないが(←スケベなロック...笑)、楽曲や演奏のスタイルといった表面的な要素は大きく変化しており、初期・中期・後期のアルバムを聴き比べると、コレがホンマに同じバンドかと耳を疑いたくなってくる。
 時系列に沿って整理すると、
 1991 インディーズ 「バンチド・バース」
 1992 コロムビア ①「夜行性のかたつむり達とプラスチックのブギー」
 1993  〃    ②「未公開のエクスペリエンス・ムービー」
 1994  〃    ③「ジャガー・ハード・ペイン 1944-1994」
 1995       ④「スマイル」
 1995  〃    ⑤「フォー・シーズンズ」
 1997 ファンハウス⑥「シックス」
 1998  〃    ⑦「パンチ・ドランカード」
 2000  〃    ⑧「8」
となり、グラム・ロック色全開でアングラ臭をプンプンさせていた初期(インディーズ~③)、ポップにハジけて王道ロックに方向転換した中期(④~⑥)、ヘヴィーなロック色を強めながらバンド・サウンドの方向性を模索していた後期(⑦~⑧)という感じ。彼らがそこそこ売れ始めたのは95年の④⑤あたりからだが、爆発的にブレイクしたのは日本コロムビアのトライアド・レーベルからビクターのファンハウスへとレコード会社を移籍した96年頃からで、その起爆剤になったのが移籍直前にコロムビアからリリースした置き土産的な2枚のシングル、「JAM」と「SPARK」だった。
 それまで15万枚前後だったシングルの売り上げが一気に4倍増(!)の60万枚にまで達したこれら2枚のシングルはオリジナル・アルバムには未収録で、日本コロムビア時代のベスト盤である「シングル・コレクション」か「トライアド・イヤーズ・アクトⅠ」、あるいはオールタイム・ベスト「マザー・オブ・オール・ザ・ベスト」でしか聴けない。イエロー・モンキーの “静” と “動” を象徴するようなこの2曲は共に彼らの歴史を語る上で欠かすことのできない重要なナンバーなので、今日は「JAM」に続いてリリースされて連続ヒットとなった「SPARK」でいこう。
 この曲は聴けば分かるように “コレがロックだ。文句あるか!!!” と啖呵の一つも切りたくなるようなカッコイイ疾走系ロック・チューンで、吉井さんが担当ディレクターに “「JAM」の次はちゃんとまたアッパーな曲出すから...” と約束して、きっちりと “ヒットソングを作るんだ” という思いで作った曲。この時期の吉井さんが “売れる曲を作ろうと思えばすぐに作れる” ほどコンポーザーとして充実していたことを如実に示すエピソードだ。
 いきなりテンションの上がるイントロ、スポーツカーのターボ・ブーストのように曲のスピード感を増幅させるバック・コーラス、思わず口ずさみたくなるサビのメロディー、ロック魂溢れるエマのギター・ソロ、ライヴ感一杯のサウンドと、すべてが完璧にキマッており、聴く者の心にロックな衝動を呼び起こす。まるでスパのオー・ルージュを全開で駆け上がっていくかのようなワクワクドキドキ感に溢れ、正攻法の直球勝負!といった感じが実に痛快だ。
 それと、演奏があまりにもカッコイイのでついついそちらに耳を奪われてしまいがちだが、相変わらず吉井さんの書く詞は切れ味が鋭い。基本的には “目を閉じて” “抱き合って” “獣のように” “君とスパーク” するという、彼お得意のスケベ・ソングなのだが(←“夜はスネーク” と韻を踏ませたセンスは最高!)、“真実を欲しがる俺は 本当の愛で眠りたいのさ 恥ずかしいけどそれが全てさ~♪” というラインに “失われた愛を求めて” 彷徨う吉井和哉という男の本音がチラリとのぞく。
 高橋栄樹氏が監督を務めた PV のカッコ良さもハンパない。動体視力を試されてるような(?)映像処理もめちゃくちゃスリリングで、グングン加速しながら疾走する曲想と見事にシンクロしているのだ。 YouTube にあったのは残念ながら消されてしまったので、目がチカチカする PV を見たい方(笑)は ココ をクリックしてご覧下さい。

TYM Spark ('96 “野生の証明”ツアーより)

JAM / The Yellow Monkey

2012-01-10 | J-Rock/Pop
 “祭り” 第4回目の今日はロッカ・バラッドの名作「JAM」である。彼らの全シングルの中で「BURN」に次ぐ売り上げを誇るこの曲、私なんかあのイントロを聴いただけでもうこみ上げてくるものがあるのだが、秀逸な歌詞をエモーショナルに歌い上げる吉井さんのヴォーカルはもう魂の叫びといった感じで、何度聴いてもゾクゾクさせられる。
 “暗い部屋で一人 テレビはつけたまま... 外は冷たい雨” という状況で “君は眠りの中 何の夢を見てる~♪” と愛する人のことを想った経験は誰にでも一度はあると思うが、ちょうど暗闇の中に一筋の光を見い出すかのように、様々な苦難や逆境に負けずに大切な人のために頑張っていこうというポジティヴなメッセージが込められている。 “過ちを犯す男の子 涙化粧の女の子~♪” のラインは吉井さん自身の実体験からきているのかもしれないが(笑)、結構身に覚えがあって共感する人も多いのではないだろうか? とにかくこの曲は、一にも二にも歌詞を聴くべき作品なのだ。
 それと、物議を醸した “外国で飛行機が墜ちました ニュースキャスターは嬉しそうに 「乗客に日本人はいませんでした」「いませんでした」「いませんでした」~♪” の部分だが、私にはこの「いませんでした」3連発はその後に続く “僕は何を思えばいいんだろう? 僕は何て言えばいいんだろう?” の単なる前フリにしか聞こえない。むしろ “こんな夜は 逢いたくて 逢いたくて 逢いたくて~♪” の「逢いたくて」3連発の方が遥かにインパクト大で、私の胸を激しく締め付ける。この印象的な “君に逢いたくて~♪” のラインは、ちょうどオウムの地下鉄サリン事件とか阪神淡路大震災とかで不安な世の中だった時に、あまり家にいてやれなかった娘さんに向けて書いたのだという。ロック・スターと言えども人の親... ツアー先のホテルの部屋で娘さんのことを思いながらこの歌詞を書いたのかもしれない。
 そういえば、吉井さんはレコーディング中に最後の “また明日を待ってる~♪” の部分で感極まってしまい、ワンテイクで録った中でココだけ歌い直しを余儀なくされたらしい。分かるわぁ、その気持ち。そして最後のトドメというべきか、まるで “泣け!” と言わんばかりにピアノが鳴り響き(←ホンマにココ最高です!!!)、大団円を迎える。実にツボを心得たニクいアレンジだが、このピアノで涙腺が決壊する人は結構多いのではないだろうか? 私なんか、この曲を大音量で聴いた後は魂抜かれるというか、ほとんど放心状態だ。
 ファンの間では良く知られた話だが、この曲の成功は当時コロムビア・レコードで彼らのプロモーションを担当していた故・中原繁氏の尽力によるところが非常に大きかったらしい。吉井さんが中原氏に寄せた追悼文から抜粋すると;
「ある日自分が抱えている不条理を、全部紙に書いてそれに曲を乗せた7分近いバラッドを作った。社会的なこと、プライベートなこと等、思うことを遠慮なく全部書いた。今ならそのまま世に出せるが、当時はそういうわけにはいかなかった。少しづつ詩を削っていき、5分ちょっとの曲になった。録音したその曲を聴いて彼が言った。『これは代表曲になるよ。会社の上の人間がなんて言おうが、オレが絶対売ってやるよ!』と。JAM という自分の子供が正式に認知されたようで、とてもうれしかった。 《中略》 最近取材なんかで、俺たちに影響を受けたっていう若くて有名なミュージシャン達と話すと、みんな『JAMは最高ですよ』って言ってくれるんだよ。俺たちの夢は大成功したんだよ...」とのこと。う~ん、実に泣かせるエエ話ではないか!
 2001年の東京ドーム・ライヴで、この曲を歌う前に吉井さんは中原氏への思いを語った。「そいつのおかげで JAM は世の中に出たと言っても過言ではない曲です。そいつはこの JAM のイントロで起こる大歓声がとにかく好きなヤツでした... 今日は皆さんに協力していただいて、聴かせてあげたいな、と。そしてツアー中に死んでしまったコンサート・スタッフにも捧げたいと思います。」という MC に続いてドームに響き渡る JAM のイントロ、そして湧き起る大歓声... 天国にいる二人に届けとばかりに熱唱する吉井さんの姿は実に感動的で何度見ても目頭が熱くなる。イエロー・モンキーは “ド派手でエロくてカッコイイ” だけじゃないのだ。
 洋楽ロック界にエアロスミスの「ドリーム・オン」があるように、邦楽にはイエロー・モンキーの「JAM」がある。今やもう日本のロックのスタンダード・ソングと言っても過言ではないこの曲、彼らと同じ時代を生きてて良かったなぁ... と思わせる大傑作だ。(可愛い子供が出てくる PV は ココ で見れます)

JAM

Honaloochie Boogie / The Yellow Monkey

2012-01-07 | J-Rock/Pop
 アーティストのルーツを知るにはカヴァーを聴くに限る。イエロー・モンキーが公式に録音したカヴァー曲は由紀さおりの「夜明けのスキャット」以外に、キッスの「シャウト・イット・アウト・ラウド」や T.REX の「ティル・ドーン」(←渋っ!!!)などがあるが、そんな中でも出色の出来なのが今回取り上げるモット・ザ・フープルの「ホナルチー・ブギー」だ。
 イエロー・モンキーの音楽性はストレートなロックンロールからへヴィー・メタル、はたまたフレンチ・ポップスや昭和歌謡に至るまで、その外見からは想像もつかないぐらい幅が広く、彼らの楽曲には様々なジャンルの音楽のエッセンスが散りばめられているのだが、何と言っても彼らが最も大きな影響を受けたのがデビッド・ボウイや T.REX を始めとするグラム・ロックで、このモット・ザ・フープルも70年代前半のイギリスで “バイオレンス系グラム・ロックの雄” としてブイブイいわしていたくちだ。
 この「ホナルチー・ブギー」は1973年に「すべての若き野郎ども」に続くシングルとしてリリースされたものの UK チャートのトップ10にも入らなかったナンバーなのだが、そんなマイナーな曲に目を付けるあたり、さすがはイエロー・モンキーだ。このカヴァーは元々(←ダジャレじゃありません...)モット・ザ・フープルへのトリビュート・アルバム「モス・ポエット・ホテル」に提供されたもので、イエロー・モンキーのアルバムではトライアド・レーベル時代の全音源を収録した6枚組「コンプリート・ボックス」やベスト盤「アクトⅡ」(←フェイド・アウトで終わらないコンプリート・ヴァージョンが聴けるのはこの盤だけ...)、そしてレーベルの枠を超えたオールタイム・ベスト「マザー・オブ・オール・ザ・ベスト」(初回盤3枚組のみに収録)に入っている。
 タイトルの Honaloochie っていう言葉は辞書を引いても載ってないのでネットで調べてみると、どうやらヴォーカルのイアン・ハンター(←金髪カーリーヘアにギンギラグラサンというバリバリのグラム・ファッションの人)の造語らしく、 “多くの若者達が集まってロックンロール大会を開く場所” を表しているらしい。なるほどね(^.^)
 このカヴァー・ヴァージョンのキモは何と言っても吉井さんの名訳による日本語詞で、原曲にかなり忠実な訳でありながらも要所要所で吉井節が炸裂、コレがまた気怠さ溢れるユル~い曲調とバッチリ合っていて実に良い味を出しているのだ。特に語りのパートなんかいかにも吉井さんらしい展開で、 “お金がないから 仕事に行かなきゃ... でもアイツにこき使われるのは 小さいクツを履くくらいイヤなんだよな... 休んじゃお お腹すいたな...” には思わずニヤリ。 “Wanna tell Chuck Berry my news, I get my kicks outta guitar licks” を “チャック・ベリーって何だ~♪” とやってしまうアッパレなまでの強引さにも大爆笑だ(^o^)丿
 歌詞の大意としては “今はこんなだけど、いつか見てろよ!” という貧しい若者の心の叫びなのだが、 “Get in time, don't worry 'bout the shirt shine” を “ボロは着てても心は錦~♪” と訳した吉井さんのセンスには完全に脱帽だし、 “今日はダメでもいつか神様♪” なんてニートな若者にも希望を与える必殺の名フレーズだろう。自分が売れなかった時代を思い出しながら書いたような “社会のルールよすいません いつかロックンロールで返します♪” のラインは実に微笑ましい限りだし、 “ロックンロール大臣... いいよね~♪” のパートは何度聴いても“エエなぁ...” と心底共感してしまう。
 “クールな歌詞職人” 吉井和哉の天才が如何なく発揮されたこのイエロー・モンキーによるカヴァーはモット・ザ・フープルの原曲が霞んでしまうほどの素晴らしさで、ビートルズじゃないが “カヴァーがオリジナルを超える瞬間” を体験できる。この曲だけでなく「ロックンロール黄金時代」や「メンフィスからの道」といったモット・ザ・フープルの他のヒット曲も吉井さんの訳詞によるイエロー・モンキー・ヴァージョンでもっともっと(笑)聴いてみたい、そんな気にさせる傑作カヴァーだ。

THE YELLOW MONKEY - HONALOOCHIE BOOGIE


Honaloochie boogie mott the hoople

BURN / The Yellow Monkey

2012-01-04 | J-Rock/Pop
 私は歌謡ロックが大好きだ。歌謡ロックとは簡単に言えばアン・ルイスの「六本木心中」や B'z の「孤独のRUNAWAY」のように日本人特有の歌謡曲的なメロディーをビートの効いたロックの形態で演奏したもので、ロックも歌謡曲も両方とも大好きな日本人である私にとっては三度の飯より好きなジャンルなのだ。
 そもそも日本人がロックをやる場合、それはどこまで行っても和製の歌謡ロックにしかなりえない。イエロー・モンキーのフジ・ロック・フェスでの挫折(←洋楽アーティスト達との競演ということで敢えてヒット曲を外した洋楽ロック的なセットリストが裏目に出てしまったのだが、吉井さんは後に自伝の中で「自分たちは歌謡ロックをやってるっていう負い目があったから過去の楽曲の中で一番ロック的なものを用意した...」と激白している)を例に挙げるまでもなく、アメリカやイギリスといったロックの本場で通用するようなロックを日本人が目指す必要など更々ないと思う。和の心、つまり歌謡曲的な要素を内包した日本人としてのアイデンティティーを堂々と前面に押し出しながらロックをやればいいのだ。私の大好きなB'zも、サザンも、そしてもちろんこのイエロー・モンキーも歌謡ロックの最も完成された世界を確立し、その可能性を音楽的にとことん追求することで邦楽史を塗り変えてきたのではなかったか。洋楽ロックの雰囲気を模してただギターをかき鳴らしシャウトするだけでは、それこそ黄色いサルの単なるモノマネに堕してしまう。
 イエロー・モンキーの音楽性を一言で言ってしまえば “70'sロックの危険な匂いを撒き散らしながら昭和歌謡っぽい日本人的なメロディーを80'sロックの親しみやすいサウンドで表現した歌謡ロック” だと思うのだが、そんな “日本人にしか作り得ない歌謡ロック” 路線の最高傑作が「LOVE LOVE SHOW」に続くシングルとして1997年にリリースされて彼ら最大のヒット曲となった「BURN」である。
 この曲を初めて聴いた時はそのあまりのカッコ良さにブッ飛んだ。これがあのチャラい「LOVE LOVE SHOW」を歌ってたのと同じバンドなのかと我が耳を疑うくらいのテンションの高さである。バリバリのロック・サウンドでありながら、圧倒的にして感動的なラテン歌謡メロディーの連続放射によって “ハードボイルドな歌謡ロック” として屹立しているのだ。何よりも感動を覚えるのはイエロー・モンキー特有の “胸をかきむしるような衝動” が怒涛の如く押し寄せるその曲想で、“これぞ日本のロックが到達した金字塔!!!” と小躍りしたものだ。その後も何百回聴いたか分からないが、その初期衝動的確信に変わりはない。
 まずは風雲急を告げるようなイントロにズンドコズンドコと縦横無尽に暴れまわるドラムスが乱入し、そこへ切っ先鋭く切り込んでくるピアノが絡んでくる瞬間のカッコ良さ。このイントロを始め、要所要所をキリリと引き締めるピアノの音色がこの曲の名演指数を劇的にアップさせている。メロディアスなヒーセのベース・ラインには耳が吸い付くし、躍動感に満ちたアニーのドラミングに胸が熱く火照る。ワウを使ったエマのギター・ソロも圧巻だ。終盤でここぞとばかりに飛来する “フッフー♪” コーラスで “悪魔を憐れむストーンズ好きです大会” へとなだれ込んでいくマニアックな展開にもニヤリとさせられる。とまぁ挙げていけばキリがないが、とにかくこの曲には “これぞ最高傑作!” と強く思わせる魔法のような抗いがたい魅力が満載なのだ。
 吉井さんによると、この曲は夫婦喧嘩の後に出来たとのことで、台所で一服してる時に “かぁ~ぎり~なぁい よ~ろ~こびぃは♪” のフレーズが閃き、速攻で自分の部屋に行ってラジカセに録ったという。なるほど伝説誕生とはそういうものか。この “かぁ~ぎり~なぁい よ~ろ~こびぃは♪” のパートでロビンのダブルトラック・ヴォーカルが生み出すハモりの微妙なズレには何度聴いてもゾクゾクさせられるし、 “思い出” を “おもい ディー” とスパニッシュで処理しようという発想も素晴らしい。それにしても “夏の海とか冬の街とか 思い出だけが性感帯~♪” なんて粋なフレーズ、一体どうすれば思いつくのだろう? “飛べないトリは とり残されぇて~♪” のラインは吉井さんお得意のダジャレなんだろうか?
 又、凡百の洋楽ロックを軽く凌駕する PV のカッコ良さも特筆モノ。金髪ロン毛でシャツの前をはだけた吉井さんは全盛期のロバート・プラントにそっくりで妖艶なカリスマ・オーラが全開だ。特に流れるような指先の動きとベルトのトカゲのバックル(笑)にご注目! 髪を振り乱しながらギターを弾きまくるエマはジミー・ペイジが憑依したかのようだし、ワイルドなアニーのドラミングもボンゾを彷彿とさせるカッコ良さ。ハードロッカーそのものといった感じのヒーセはジョーンジーというよりもジーン・シモンズか。
 中期以降のほぼ全てのシングルの PV を担当した鬼才、高橋栄樹氏が監督を務めたこのビデオは山形県の蔵王山頂と古屋敷村で撮影されたもので、人里離れた集落といった佇まいが日本的な曲想とバッチリ合っているし、カラーとモノクロを織り交ぜながらコラージュ的に挿入されるビルや日本舞踊のカット、縁側に置いてある肉から吉井さんの眼がにゅ~っと出てくる合成映像(←この眼ヂカラ凄いです!)とか、もう意味不明ながら実にインパクト抜群で、単なる PV の枠を超えた映像作品として立派に成立しているように思う。私的には全ての邦楽の中で一番好きな PV と言ってもいいかもしれない。
 残念なことに、 YouTube にアップされてた「BURN」のPV動画が “Record Industry Association Of Japan による著作権侵害の申し立てにより削除” されてしまったのでネットで色々と調べてみたところ、何とドイツの動画サイト(!)にアップされてるのを発見、ゲシュタポみたいな日本レコード協会の奴らもドイツのサイトにまでは手出しは出来んやろ...(笑) ということで、ココをクリックして、曲良し、演奏良し、映像良しと三拍子揃ったイエロー・モンキーの最高傑作をとくとご覧下さい。

LOVE LOVE SHOW / The Yellow Monkey

2012-01-01 | J-Rock/Pop
 新年あけましておめでとうございます。今年も本能の趣くままに古き良きロック、ポップス、ジャズ、歌謡曲を中心に私的名曲名演を取り上げながらマイペースで更新していこうと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します m(__)m
 ということで当ブログの新年一発目は The Yellow Monkey だ。少し前にも彼らの「夜明けのスキャット」カヴァーを取り上げたばかりだが、それをきっかけに改めて彼らの全アルバムを聴き直してみたらコレがもうめちゃくちゃ良くって年末からずっと “イエモン祭り” 状態だ(←何かいつも同じパターンやね...)。
 私が初めて彼らの曲を耳にしたのは1997年のこと... ちょうど洋楽と絶縁して数年が経ち、新譜として聴くモノがなくて仕方なしに J-Pop を聴き始めた頃だった。80年代を「アメリカン・トップ40」と「ベスト・ヒットUSA」一筋で生きてきた私にとって当時の邦楽シーンというのは全く未知の世界だったので、とりあえず CS 放送のスペースシャワー TV で邦楽のチャート番組を見たりして “お勉強” することにした。
 この頃の邦楽は小室系の金太郎飴ダンス・ミュージックやワケの分からん有象無象のヴィジュアル系バンドが幅を利かせており正直ウンザリさせられることが多かったのだが、そんな中で B'z やミスチル(←今とは違って当時はバリバリにロックしてました...)に出会って “日本のロックも捨てたモンやないわ!!!” と大コーフンしたものだった。
 その頃に TV で目にしたのがイエロー・モンキーのシングル「LOVE LOVE SHOW」の PV だ。第一印象は “カラオケなんかでも歌いやすそうな、親しみやすいメロディーを持った鼻歌ソング” というものだったが、いきなり “おっねぇさーん!” で始まり “SHOW” と “しよう” を引っ掛けたチャラい歌詞といい、真っ赤な衣装をヒラヒラさせながら歌うヴォーカリストといい、ちょうどポイズンの「トーク・ダーティー・トゥ・ミー」の PV を初めて見た時のようなキワモノ的な印象がどうしても拭えず(←因みに遊び心溢れるアニメーションのチープな味わいも含め、この PV は今では大好きな1本になっている...)、じっくりと掘り下げて真剣に聴き込もうとは思わなかった。
 そんな私の印象をガラリと変えたのがこの曲のアルバム・ヴァージョン(「パンチ・ドランカード」に収録)だ。このアルバムは実に骨太なサウンド・プロダクションが特徴で、マージー・ビートっぽいギター・フレーズやビートリーなコーラス・ワークetc ありったけのアイデアを投入して大衆ウケを狙ったシングル・ヴァージョンのマッタリしたテンポを高速化し、軽快なポップンロールを疾走系の王道ロックへと昇華させていて、今ではどちらのヴァージョンもそれぞれ味があって大好きだが、当時はこのアルバム・ヴァージョンに痺れまくり、初めてこの曲の魅力に開眼したと言ってもいい。歌詞にもメロディーにもポジティヴな要素が満ち溢れ、いつ聴いても “頑張っちゃうもんね~♪” モードになれる名曲なのだ。
 中でも感心したのが、表面的なチャラさとは裏腹にさりげなく名フレーズを散りばめたその歌詞だ。特に “「愛とは自分のため」だとか言ったら 嫌がられるけど それもあるんだよね~♪” なんか真実をズバリ突いてて吉井さんにしか書けない類の詞だと思うし、 “「愛には形がないよ」とか言うけど 触れられなければ 淋しいもんだよね~♪” なんて名言をサラリと言ってのけるところも “愛を語る伝道師” 吉井和哉の真骨頂と言えるだろう。まぁ “あなたの馬~♪” のラインなんか注意深く聴けばめちゃくちゃエロい内容で、絶妙な比喩でそれとは気付かせずにあれだけストレートに歌えるあたり、さすがは吉井さんと唸ってしまうが...(笑)
 この曲はライヴでも抜群の人気を誇っているのだが、中でも私が一番好きなのがイエロー・モンキー解散後に吉井さんがソロで出演したロック・イン・ジャパン・フェス2006でのライヴ映像だ。 “ら~ぶ ら~ぶ しょお~!!!” という吉井さんの叫びに会場全体が興奮のるつぼと化し、みんな狂ったように手を突き上げて歌い踊り始めるのだが、見渡す限りに会場を埋め尽くしたオーディエンスが一体となって盛り上がる様はまさに鳥肌モノ!!! 吉井さんもこの数万人の大合唱にコーフンしたのか歌の途中で歌詞が飛んでしまい(2:20~)、“知~らない歌詞は知りません♪” (2:31~)とテキトーなアドリブで切り抜けるあたりはご愛嬌だが(笑)、そんなこんなも含めて、ロックが、いや音楽が持っているパワーをまざまざと見せつける感動的なステージだ。
 細身の黒いスーツに黒ネクタイ姿で切れ味鋭いステージ・パフォーマンスを披露し、ロック・スターのオーラ全開で歌いまくる吉井さんがめちゃくちゃカッコ良いこのライヴは、イエロー・モンキー・ファンだけでなくすべてのロック・ファンにとって永久保存版的な価値のある映像だと思う。

YOSHII - LOVE LOVE SHOW RIJF06


LOVE LOVE SHOW PV
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