shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ベンチャーズ・カヴァー特集③「パイプライン」

2014-09-28 | エレキ・インスト
①Stevie Ray Vaughan & Dick Dale
 「パイプライン」のカヴァーで真っ先に頭に浮かんだのが、アネットとフランキー・アヴァロン主演の映画「バック・トゥ・ザ・ビーチ」(1987)のサントラ盤に入っていたこの演奏。「ミザルー」で一世を風靡したディック・デイルと我が最愛のギタリスト、スティーヴィー・レイ・ヴォーンが共演しているのだからこれはエライコッチャである。 “キング・オブ・ザ・サーフ・ギター” と “テキサス・ハリケーン” のギター・バトルは何度見ても鳥肌モノで、ピンクのスーツを着てトレードマークであるゴールドのストラトを弾きまくるディック・デイルもカッコイイが(←バッハみたいなバロック・ヘアーにはワロタ...)、偉大なる先輩を立てながらも野太い音で歌心溢れるソロを聴かせるレイ・ヴォーンのプレイに惚れ惚れする。一音一音に魂がこもっているというか、説得力が違うのだ。ギターを弾くために生まれてきた男、スティーヴィー・レイ・ヴォーン会心の名カヴァーだと思う。
Stevie Ray Vaughan & Dick Dale - Pipeline (1987)


②ザ・タイマーズ
 “エレキでテケテケ” の代名詞とも言える「パイプライン」を何とアコギでパンキッシュに演奏しちゃったのが忌野清志郎率いるザ・タイマーズだ。これは彼らが1989年末の年越しライヴ「ロックンロール・バンドスタンド」に出演した時のもので、CDやDVDでオフィシャルにリリースされていない貴重な演奏だ。始末書持参の全共闘スタイルでのライヴというのもインパクト絶大だが(←コレをNHKの衛星放送で生放送してたんやから凄いわ...)、そういった演出が霞んでしまうぐらいメンバー全員ノリノリのプレイで楽しませてくれるところが◎。何よりもアコギでこれだけのグルーヴを生み出せる彼らの演奏技術の高さに唸ってしまう。鉄パイプで武装して「パイプライン」という彼らのユーモアのセンスも大好きだ。因みに pipeline というのは大波が作り出すパイプ状の水のトンネル空間を意味するサーフィン用語なのだそうだ。
ザ・タイマーズ パイプライン 1990


③Johnny Thunders
 パンクな「パイプライン」といえばもちろんこの人、ジョニー・サンダース。ニューヨーク・ドールズ脱退後の1978年にリリースしたソロ・アルバム「ソー・アローン」の1曲目に入っていたのがこのカッコ良い「パイプライン」だ。ファッション重視で音楽的中身のない有象無象のロンドン・パンクとは違い、ニューヨークのパンク・ロッカーの演奏からは50~60年代ロックンロールへの愛情やリスペクトがしっかりと伝わってくるので聴いてるこちらも安心して音楽に浸ることができる。このジョニサン・ヴァージョンもソリッドなギターが唸りを上げる痛快無比なカヴァーに仕上がっていて言うことナシだ。この人は筋金入りのジャンキーで、下に貼り付けたライヴ動画の冒頭でも「パイプライン」を演奏する前にステージ上でつかみ合いの喧嘩をする生々しいシーンが映っていて驚かされるが、ヘロヘロにラリッていながらもアグレッシヴに「パイプライン」を弾き切ってしまうところが凄いと思った。
Johnny Thunders - Pipeline (live)


④Chantays
 カヴァーがオリジナルを凌駕したビートルズの「ツイスト・アンド・シャウト」や「ロックンロール・ミュージック」の場合と同じく、「パイプライン」というとどうしても “ベンチャーズの曲” というイメージが強いが、この曲の元々のオリジナルはシャンテイズというカリフォルニア出身の若者5人組から成るインスト・バンド。デビュー・シングルとして地元のマイナー・レーベルからリリースされローカル・ヒットしていたこの曲に目を付けた大手のドット・レーベルが権利を買い取って全国展開したところ全米4位まで上がる大ヒットとなったということらしい。残念ながら彼らはこの曲以外はヒット曲に恵まれず、いわゆるひとつの “一発屋さん” で終わってしまったが、サーフ・インストの大スタンダード・ナンバーとして様々なミュージシャンにカヴァーされているこの曲のオリジナル・アーティストとして音楽史にしっかりとその名を刻んだだけでも大したものだと思う。
The Chantay's - Pipeline (Lawrence Welk Show 5/18/63)


⑤Ventures
 今回の特集をするにあたってシャンテイズのオリジナル・ヴァージョンとベンチャーズのカヴァー・ヴァージョンをじっくり聴き比べてみたのだが、同じ3分足らずのエレキ・インストでありながら注意深く聴くと両者の微妙な、しかし決定的な違いが見えてくる。チープなノリが魅力のシャンテイズに比べてベンチャーズの方が明らかにギターの音に鋭さがあり(←コレめっちゃ大事!)、巨大な波のうねりを表すトレモロ・グリッサンドの “テケテケテケ” 奏法も太くて粘っこい。メル・テイラーが生み出す圧倒的なグルーヴもシャンテイズとは比べ物にならないくらい凄まじい。こういった違いの一つ一つが積み重なって一方を歴史の巨人になさしめたのだ。
パイプ・ライン Pipeline'65 【Resize-HQ】 The Ventures
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ベンチャーズ・カヴァー特集②「木の葉の子守唄」

2014-09-24 | エレキ・インスト
①Davie Allan & The Arrows
 私は昔、ベンチャーズに狂って “寝ても覚めてもエレキインスト” という時期があったのだが、その頃に手に入れたベンチャーズ・トリビュート盤「スウィンギン・クリーパーズ ~ア・トリビュート・トゥ・ザ・ベンチャーズ」の中で断トツに気に入ったのがこのデイヴィ-・アラン & ジ・アロウズの「木の葉の子守唄」だ。 “キング・ファズ” の異名を取るだけあって、ベンチャーズ・ヴァージョンに潜むガレージ・ロックのDNAをしっかりと受け継いだアグレッシヴな演奏が楽しめる。おバカっぽい美女とこれまたお約束のモズライト・ギターをフィーチャーした遊び心溢れるジャケット・デザインもたまらんたまらん(≧▽≦)
木の葉の子守唄


②Gerry Mulligan
 私のこの曲との最初の出会いはジャズ初心者の頃に買ったジェリー・マリガン・カルテットのパシフィック盤に入っていたこの演奏で、それまで武骨な音しか聴いたことがなかったバリトン・サックスで信じがたいソフトなサウンドを出しながら軽快にスイングするジェリー・マリガンの名人芸と「木の葉」の曲想がピッタリ合っており、幽玄の美とでも言うべきチェット・ベイカーのトランペットと対位法的に絡むインタープレイの妙味に唸らされたものだ。チコ・ハミルトンとボブ・ホイットロックという名手二人が後半部でテンポを上げて瀟洒なリズムを刻むところがたまらなく好きだ(^.^)
Gerry Mulligan '52 - Lullaby Of The Leaves


③Claude Williamson
 世間ではほとんど知られていないけど自分の中では大名演という、いわゆる “自分だけの名曲名演” を持つことはディープな音楽ファンの愉しみの一つだと思うのだが、私にとってそんな1曲がクロード・ウィリアムソンがインタープレイ・レーベルからリリースした「メモリーズ・オブ・ウエスト・コースト」(1990年)のラストに収められていたこの曲だ。ベースによるテーマ部からピアノのサビへと移行する流れが好きでついついヴォリュームを上げてしまうのだが、そこに待ち受けているのがチャック・フローレスの爆裂ドラム(笑)というワケで、アコースティック・ベースの音色を存分に楽しめてしかも軽快にスイングするという、私にとってはまさに理想的なピアノトリオ・ジャズが展開される。若い頃の押し一辺倒のプレイとは一味も二味も違うツボを心得たプレイを聴かせるウィリアムソンが素晴らしい。
クロード・ウィリアムソン


④Mary Hopkin
 私が持っているこの曲の9割以上はジャズのものだったので、メリー・ホプキンの1stアルバム「ポストカード」の中にこの曲を見つけた時は “あのメリー・ホプキンがジャズを歌ってんのか???” と不思議に思ったのだが、「木の葉の子守唄」以外にもフランク・レッサーの「インチワーム」(←ポールが「キス・オン・ザ・ボトム」で取り上げてた曲)やガーシュインの「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーバー・ミー」、アーヴィング・バーリンの「ショウほど素敵な商売はない」といったスタンダード・ナンバーが入っており、それらがみな彼女の清楚な歌声によって瑞々しい輝きを放っていることに驚かされる。この曲の本質である “ララバイ”、つまり子守唄としての魅力をこれほどまでに引き出したヴァージョンを私は他に知らない。単なるポップシンガーにはとても出来ない味わい深い歌唱であり、そんな彼女の資質を見抜いたポールの慧眼に脱帽だ。
Mary Hopkin "Lullaby Of The Leaves" 1969


⑤Ventures
 2005年12月3日は私にとって忘れることのできない記念すべき日だ。この日、コレクター仲間で集まって「木の葉の子守唄」の聴き比べ大会をやったのだが、その時に聴かせてもらったのがこのベンチャーズ・ヴァージョンだった。当然ジャズ一色の選曲になると予想していた私にとっては意表を突かれた形で、 “何でテケテケのベンチャーズがこんなジャズのスタンダート曲をやってるんやろ?” と不思議で仕方なかった。
 ところが実際にLPに針を下ろして曲が始まると、いきなりメル・テイラーのドラム・フィルが炸裂して度肝を抜かれた。パワフルなドラムの連打が生み出すグルーヴに圧倒され言葉も出ない。トレモロを多用したボブ・ボーグルのギターもめっちゃスリリングで、これこそまさにロックンロール!と叫びたい衝動に駆られるカッコ良さである。この瞬間に “「ダイアモンド・ヘッド」や「パイプライン」といったサーフィン・エレキ・インスト専門の懐メロ・バンド” という私のベンチャーズに対する間違った認識は木っ端微塵に吹き飛び、それ以来彼らは私にとって特別なバンドになったのだった。
 とにかくこの凄まじいまでのエネルギーの奔流に身を任せて聴く快感はとても言葉では表現できない。理屈を超えた原始的なロックの初期衝動... ベンチャーズを聴くというのはつまりそういうことなのだ。この曲はCDよりもアナログLPで、それも音が拡散してしまうステレオ盤ではなく、パワーが一極集中して怒涛のように押し寄せるモノラル盤でアンプの音量を思いっ切り上げて聴きたい。
The Ventures - Lullaby Of The Leaves
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ベンチャーズ・カヴァー特集①「キャラバン」

2014-09-18 | エレキ・インスト
 ブライアン・セッツァー・オーケストラの「キャラバン」をきっかけにしてこの前の3連休にベンチャーズ関連のカヴァー曲を色々と引っ張り出して聴いてみたのだが、これが予想以上に面白かったのでこのブログで特集してみることにした。色んなカヴァー・ヴァージョンと本家ベンチャーズを聴き比べてみるのも一興だろう。題して“ベンチャーズ・カヴァー祭り”。第1回は当然「キャラバン」だ。

①Carpenters
 カーペンターズは「イエスタデイ・ワンス・モア」や「トップ・オブ・ザ・ワールド」で70年代を席巻したポップ・グループとして日本でも抜群の人気を誇っているが、彼らのキャリアのスタートがカーペンター兄妹に友人のベーシストを加えたジャズのピアノトリオだったという事実は意外と知られていない。かく言う私もYouTubeでリチャード・カーペンター・トリオの「キャラバン」を偶然見つけて “あのカーペンターズがジャズ???” と不思議に思ったのだが、いざ聴いてみるとゴキゲンにスイングするカッコ良いジャズだったのでビックリ(゜o゜)  王道フレーズを連発するリチャードのスインギーなプレイを聞けば彼のジャズに対する造詣の深さがよくわかるし、弱冠15歳にして堂々たるプレイを聞かせるカレンのドラミングも凄い。後で知ったのだが、彼女の好きなドラマーはリンゴ・スターとジョー・モレロ(←渋っ!!!)とのこと。さすがはカレン、ええ趣味してるわ(≧▽≦)
The Carpenters - Caravan [1965]


②Rosenberg Trio
 「キャラバン」という曲をバリバリにスイングさせるのは至難のワザだと思うのだが、ジプシー・スイング界の巨匠であるローゼンバーグ・トリオの手にかかればこの通り! まるで鎖を解かれた犬のように(?)奮然とスイングし始めるのだから音楽は面白い。“スピード命” の速弾きジプシー・ギタリストはゴマンといるが、ストーケロ・ローゼンバーグのように “歌心溢れるメロディアスな速弾きプレイ” という一見誰にでも出来そうで実は中々出来ないことをサラッとやってのける人はそうそういない。スイングの根底をしっかり支えるリズム・ギターが生み出すグルーヴもたまらんたまらん(^o^)丿
The Rosenberg Trio - Caravan


③Connie Evingson
 ①②でお分かりのようにジャズの演奏に関して私はアホの一つ覚えのようにひたすら “スイング” を追求しているのだが、この「キャラバン」という曲のオリジナルは砂漠を旅する隊商(←つまりキャラバンですね...)のことを歌ったエキゾチックなムード溢れるナンバーだ。そんな “異国情緒路線” のカヴァーで特に気に入っているのがこのコニー・エヴィンソン・ヴァージョンで、彼女の艶のあるしっとりとしたヴォーカルがこの曲の持つエキゾティシズムと絶妙なマッチングをみせ、曲にさらなる彩りを添えている。 私はそんなコニーたんが大好きだ。
Caravan - Connie Evingson


④Duke Ellington
 この曲のオリジナルであるデューク・エリントンのビッグ・バンド・ジャズは単純明快にスイングするカウント・ベイシーとは違い、私には難しすぎてその良さがイマイチ分からない。しかしスモール・コンボでのエリントンは全くの別モノで、ベースのチャールズ・ミンガス、ドラムスのマックス・ローチというツワモノ2人と組んだピアノトリオで水を得た魚のようにガンガン叩きつける彼の “ジャングル・ピアノ” が楽しめる「マネー・ジャングル」は私の愛聴盤だ。この「キャラバン」でもリズムを重視したパーカッシヴなプレイで聴く者を圧倒、その超ド級の迫力は圧巻の一言に尽きる。澤野商会が乱発している有象無象の軟弱ピアノトリオとは対極に位置する硬派なジャズの最右翼がコレだ。
Duke Ellington - Caravan


⑤Ventures
 誰の演奏だったかは忘れたが、この「キャラバン」という曲を初めて聴いた時の第一印象は “何かしんねりむっつりしてて気持ち良くスイングせぇへん曲やなぁ...” というネガティヴなものだった。それから何年か経ってベンチャーズによるカヴァー・ヴァージョンを聴いてこの曲に対する私の悪印象は木端微塵に吹っ飛んだ。何というノリの良さだろう! 彼らの真骨頂といえるその比類なきグルーヴによって曲が活き活きと躍動しているのが凄い。そういえばこの特集のきっかけとなったブライアン・セッツァーによるカヴァーにも彼らへの深い愛情とリスペクトが感じられた。やっぱりベンチャーズは最高だ(^o^)丿
ベンチャーズ - キャラバン The Ventures - CARAVAN
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Vavoom! / Brian Setzer Orchestra

2014-09-12 | Cover Songs
 最近朝晩かなり涼しくなってきて気候的には快適なのだが、仕事の方がめっちゃ忙しくてちょっと夏バテ気味だ。こんな時はあれこれ考えずにノリの良い音楽を聴くに限る。ということで今日は肉体疲労時の栄養補給盤として愛聴しているブライアン・セッツァー・オーケストラの「ヴァヴーム」にしよう。
 ブライアン・セッツァーは80年代の初め頃にネオロカビリー・ブームを牽引したストレイ・キャッツの中心メンバーとして活躍していたが、ブームが去ってキャッツも活動を停止し、いつしかその名を聞くこともなくなっていた。そんな彼が再びブレイクしたのが90年代に入って結成したブライアン・セッツァー・オーケストラで、 “ロカビリーとビッグバンド・スウィングの融合” という彼の理想とするスタイルで全米にスウィング・ブームを巻き起こしたのだ。
 そのきっかけとなったのは1998年リリースの3rdアルバム「ダーティー・ブギ」だったが、私が愛聴しているのは2000年にリリースされた4thアルバム「ヴァヴーム」の方で、不発に終わった1stと2ndアルバムの試行錯誤を経て「ダーティー・ブギ」で確立した揺るぎないスタイルをベースにしながらも、更にエンターテインメント性に磨きをかけた大傑作アルバムなのだ。
 このアルバム中最大の聴き物は何と言っても⑥「ゲッティング・イン・ザ・ムード」だろう。ゴージャスなビッグバンド・サウンドをバックにブライアンの骨太グレッチが炸裂、清涼感溢れる女性コーラスの大量投入によってサウンドに厚みを持たせ、曲中ブレイク部分ではラップまで挿入するという徹底ぶりで、1939年にグレン・ミラー楽団の演奏で大ヒットしたスウィング・ジャズの古典的名曲「イン・ザ・ムード」に新たな生命を吹き込んで見事に21世紀に蘇らせたその音楽的センスにはもう脱帽するしかない。気分が落ち込んでいようが身体が疲れていようが、コレを聴けばテンションが上がること間違いなし!
 PVのブライアンはいかにもアメリカの “チョイ悪オヤジ” ロッカー という感じで実にカッコイイ(^o^)丿  この人ほどアメ車が似合う人はいませんな。キレイなオネーチャン達はもちろんのこと、白人ブッチャーみたいなラッパーまで登場し、目でも耳でも楽しめるビデオになっており、何度見ても飽きない。ノリノリで一気呵成に駆け抜ける理屈抜きの楽しさを上手く表現しているところがエエのよねぇ(^.^)
Brian Setzer Orchestra - In The Mood


 このアルバムのオープニングを飾るのもグレン・ミラーの「ペンシルヴァニア6-5000」のカヴァーだ。ロカビリーならではの圧倒的なドライヴ感、ホーン隊が大活躍するブ厚いビッグバンド・サウンド、そして古き良きアメリカへと聴き手を誘うキャッチーなメロディーが音楽的に結びつき、最終的にブライアンのヴォーカルでまとめ上げられていく快感を何と表現しよう? ブライアン・セッツァー・オーケストラならではの荒削りでダイナミックなサウンドが楽しめるこのトラックはアンプのヴォリュームを上げて大音量で聴くべしだ(^o^)丿
Brian Setzer Orchestra - Pennsylvania 6-5000


 ②「ジャンピン・イースト・オブ・ジャヴァ」は “ロカビリーとビッグバンド・スウィングの融合” が見事に結実した超ノリノリのアッパー・チューン。ソリッドなウッドベースのスラップとビッグバンドのゴージャスなサウンドの相性は抜群で、ブライアンのグレッチもスピード全開で疾走し、思わず身体が揺れてしまう強烈無比なスイングを生み出している。ジャングル・ドラムのズンドコ・ビートに乗って歌心溢れるフレーズを連発するギターとトランペットの掛け合いも最高で、“楽器を通して歌を歌う” という理想的な演奏に耳が吸い付く。まさにブライアン・セッツァー・オーケストラの魅力がいっぱい詰まったキラー・チューンだ。
Jumpin' East Of Java / Brian Setzer Orchestra


 ⑧「マック・ザ・ナイフ」はジャズ・ファンの間ではソニー・ロリンズの「モリタート」の名演で知られているが、堅気のポップス・ファンにはボビー・ダーリンの「匕首マッキー」として有名だろう。そう言えば私はこの “匕首” の読み方をず~っと “ななくび” だと信じて疑わず、マッキーって七つの首を持ったバケモノの歌かと思い込んでいた。あぁ恥ずかしい(>_<) 漢字は難しいから嫌いだ。まぁそれはそれとして、ブライアンの歌う「マック・ザ・ナイフ」はめっちゃ味があって私はボビー・ダーリン・ヴァージョンよりも断然こっちの方が好きだ。彼は何よりもまずギタリストとして評価されることが多いように思うが、ヴォーカリストとしても超一流だと思う。
Mack The Knife - Brian Setzer Orchestra


 ⑨「キャラバン」はヴォーカルなしのインスト・ヴァージョンで、ブライアンのギターが縦横無尽に大暴れするスリリングな演奏に圧倒される。とにかく彼のギター・ワークはベンチャーズの名演を思い起こさせるカッコ良さで、ウッドベースのスラップがブンブン唸り、ドラムがドコドコと轟音を響かせるというタマラン展開に胸が熱くなる。エレキ・インスト・ファンなら絶対にこのグルーヴが気に入るのではないだろうか? 私的にはベンチャーズ、デューク・エリントンと並ぶ「キャラバン」3大名演の一つに挙げたい必殺ヴァージョンだ。
 ここに挙げた曲以外にもクイーンの「愛という名の欲望」カヴァーやビル・ヘイリーの「ロック・ア・ビーティン・ブギ」カヴァーなど、聴き所満載のこの「ヴァヴーム」は、アメリカが一番アメリカらしかった時代の音楽を現代風に磨き上げて我々に聴かせてくれる “ロカビリー伝道師” ブライアン・セッツァー会心の1枚だと思う。
Caravan Brian Setzer Orchestra
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Ska In The World Hits / Jive Bunny Project

2014-09-07 | Cover Songs
 カヴァー曲というのは元歌を知っているとそのヒネリ具合やアレンジの妙が楽しめて面白さが倍増する。逆に知らない曲ばかりのカヴァー盤なんて面白くも何ともない。ジャイヴ・バニー・プロジェクト・シリーズのCDで「スペクトル・サウンズ」のように収録曲の大半を知っている盤は即決で買ったが、その一方で知らない曲が多くて購入をかなり迷った盤もあった。そんな1枚が今日取り上げる「スカ・イン・ザ・ワールド・ヒッツ ~ドライヴィング~」だ。
 タイトルを見れば分かるようにこの盤はヒット曲をスカ・ビートでアレンジしてメドレー化したもので、スカ独特の粘っこいリズム自体は私的には問題なかったが、引っ掛かったのがその選曲だ。ネットで見た商品説明には “90年代の有名な洋楽をそのままスカにカヴァー” とある。うーん、“90年代” か...
 正直言うと “90年代の洋楽” と聞いただけでブツブツが出るくらい激しい拒否反応を起こす私としてはこの時点で購入意欲が失せかけたのだが、曲目リストの中にホイットニー・ヒューストンの「アイ・ウィル・オールウェイズ・ラヴ・ユー」とマイケル・ジャクソンの「ヒール・ザ・ワールド」の2曲を見つけ、あの壮大なバラッドを一体どーやってスカ・ビートでアレンジしてるんやろ?という好奇心がムクムクと湧き上がってきた。他の曲はどーでもエエけど、この2曲のスカ・ヴァージョンだけは是非とも聴いてみたい。
 私の知る限りではジャイヴ・バニー・シリーズは2枚の “歌謡曲モノ” 以外は試聴できるサイトがどこにもないので、どうしても聴きたければリスク覚悟でミズテン買いするしかない。困ったなーと思ってネット検索していたところ、何とネットオフに168円という “もってけドロボー” 価格で出ているのを発見。この値段なら失敗してもショックは少ない。たまたま送料無料キャンペーン中だったこともあって私は迷わず即決した。
 届いたCDをプレーヤーに乗せ、まず選曲ボタンの⑥を押して「アイ・ウィル・オールウェイズ・ラヴ・ユー」を聴いたのだが、スピーカーから飛び出してきたのはこちらの予想に反して何と男性ヴォーカル、それも私が最も忌み嫌うネチコイ歌い方で心底がっかり。この声と歌い方は生理的に無理だ(>_<)
 いきなり「オールウェイズ・ラヴ・ユー」が期待外れで “次もハズレやったらイヤやなー” と一抹の不安を感じながら今度は選曲ボタンの⑩を押す。マイコーの “ひとりウィー・アー・ザ・ワールド” といえる「ヒール・ザ・ワールド」だ。おぉ、コレはめっちゃエエわ(^o^)丿 スロー・バラッドだった原曲を高速回転させた絶妙なテンポ設定が功を奏し、軽快なスカ・ビートとキュートな女性ヴォーカルが絶妙にマッチしてウキウキワクワクするような親しみやすいナンバーへと大変身、CDのサブタイトル通りDRIVINGのお供にピッタリのキラー・チューンになっている。それにしてもマイコーってホンマに綺麗なメロディーの曲を書きますな...(≧▽≦)
 ヴォーカルを担当しているのは名盤「スペクトル・サウンズ・歌謡曲シリーズ」の「A面で恋をして」や「世界中の誰よりきっと」で素敵な歌声を聴かせてくれた ayakooo こと、にへいあやこさんだ。この人の声めっちゃ好き(^o^)丿  しかもこの⑩だけ4分45秒と長尺フル・ヴァージョン楽しめるというのが嬉しい。たとえ残り9曲全滅でも、私としては彼女の歌声で弾むようにスイングするこの「ヒール・ザ・ワールド」が聴けただけで十分このCDを買った甲斐があったと思えるぐらい気に入っているトラックだ。
ヒール・ザ・ワールド

Michael Jackson - Heal The World


 しかしラッキーなことにこのCDは “残り全滅” ではなく、他にも掘り出し物があった。まずは②「リハブ」という曲が気に入った。オリジナルはエイミー・ワインハウスという風変わりな名前の女性ヴォーカリストで、YouTubeで見てみると名前だけでなくその声も唱法も風貌も実にユニークで個性的。このカヴァー・ヴァージョンでは原曲のリズムに潜むスカっぽい要素を巧く抽出&アレンジしてあってヴォーカルの声質もソックリ(←薄黄色の小さい字で書いてあるので読みにくいけど、Saltie っていう名のシンガーらしい...)なのでワインハウス・ファン(?)の人でも違和感なく楽しめると思う。
リハブ

Amy Winehouse - Rehab


 ⑦の「キャント・ゲット・ユー・アウト・オブ・マイ・ヘッド」もめっちゃエエ感じ。オリジナルを調べると何とあのカイリー・ミノーグだ。カイリーって80's後半にストック・エイトキン・ウォーターマンのプロデュースで「ロコモーション」や「アイ・シュッド・ビー・ソー・ラッキー」といった金太郎飴的ダンス・ナンバーを歌っていたアイドル歌手というイメージしかなかったのだが、YouTubeで妖しげなオリジナルPVを見てブッ飛んだ。女ってこうも変わるものなのか... セバスチャン・ベッテルじゃないが、まさに Kinky Kylie だ(笑)
 原曲が元々スカっぽいビートの曲なので、このCDではアレンジをあまりいじらずにストレートにカヴァーされているが、ヴォーカルがエエなぁと思ってクレジットを見ると、何とまたまた ayakooo さんだ。結局このCDで気に入った3曲中の2曲が彼女のヴォーカルだった。やっぱりヴォーカル物は “声” の魅力に尽きますな...(^.^)  わずか1分43秒で終わってしまうのが残念だ。
 この「スカ・イン・ザ・ワールド・ヒッツ」CD、②⑦⑩以外の7トラックは曲そのものがつまらんかったりヴォーカルの声質が好きになれなかったりで私的にはハズレだったが、上記の3曲は最高に気に入ったので他のジャイヴ・バニー盤とMIXしてCD-Rに編集して聴いている。選曲の範囲を “90年代の洋楽” に限定せずに洋邦を問わず幅広い年代の曲から選んでいればもっと素晴らしい内容になったんじゃないかと思うが、とにかく落ち込んだ時なんかに聴くと気分がスカッとするこの3曲、騙されたと思って一度聴いてみてはどうでスカ?
キャント・ゲット・ユー・アウト・オブ・マイ・ヘッド

Kylie Minogue - Can't Get You Out Of My Head
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Jungle Drums / Jive Bunny Project

2014-09-02 | Cover Songs
 「スペクトル・サウンズ」をきっかけに知った “ジャイヴ・バニー・プロジェクト” のシリーズは様々なテーマに基づいて選曲されているので私のような人間にとっては非常に興味深い企画なのだが、そんな中でも一番面白かったメカラウロコ盤が今回取り上げる「ジャングル・ドラムス」だ。
 “スペクター・サウンド” や “モータウン・サウンド” とは違い、“ジャングル・ビート” というのはポップス・ファンにとっては聞きなれない言葉かもしれないが、「スウィング・ガールズ」や「東京ディズニーシー・ビッグバンドビート」でお馴染みの名曲「シング・シング・シング」のイントロで聞けるワイルドなドラム・ビートと言えばあぁアレのことか!とピンときた人もいるかもしれない。
 このドラム奏法は元々1938年にジーン・クルーパというジャズ・ドラマーが編み出したもので、彼が所属していたベニーグッドマン楽団の「シング・シング・シング」という曲で一躍有名になったものだ。私は若い頃はスウィング・ジャズを古臭いだけの年寄り音楽と思い込み完全にスルーしていたのだが、たまたま友人に勧められて聴いたベニーグッドマンのカーネギーホール・ライヴ盤に収録されていた「シング・シング・シング」でバス・タムを多用してバンド全体を根底からスイングさせるクルーパのワイルドなドラミングに大きな衝撃を受け、それ以来1930~40年代の古いジャズも聴くようになった。論より証拠、私のスウィング・ジャズへの偏見を木っ端微塵に打ち砕いたジャングル・ドラムの名演がコレ↓だ。
Gene Krupa- Sing, Sing, Sing


 “ドンドコ、ドコドン♪” と血湧き肉躍るようなリズム・パターンがインパクト絶大なこのジャングル・ビートを使った曲としては「シング・シング・シング」以外には80年代初頭に一世を風靡したアダム・アントぐらいしか知らなかったが、「ジャングル・ドラムス」という盤には12曲も収められており、 “へぇ~、こんなところにもジャングル・ビートが使われとったんや…(・o・)” と瞠目させられっぱなし。洋楽ネタでは大好きなブライアン・セッツァー・オーケストラのナンバーが2曲入っていてロカビリーとジャングル・ビートの相性の良さを再確認させてもらったが、私的に面白かったのはむしろ邦楽ナンバーの方だった。
ジャングルドラム


 曲目リストでまず目を引いたのがザ・ピーナッツの「恋のバカンス」だ。一体あれのどこがジャングルビートやねん?と思いながら聴いてみると、実に巧妙に原曲を換骨奪胎して強烈無比なジャングル・ビート・ナンバーに作りかえてあり、これがまた結構サマになっているから痛快そのもの(^o^)丿 こーゆーのをオルガンバー・サバービアって言うのかな? 私はその手のクラブ音楽には何の興味も無いが、昭和歌謡の名曲を斬新な発想で現代に蘇らせたこの「恋のバカンス」は大いに気に入っている。土屋浩美さんのドスの効いたヴォーカルがエエ味出してます...(-。-)y-゜゜゜
ザ・ピーナッツ 恋のバカンス THE PEANUTS


 70年代半ばから音楽を聴き始めた私にとって石原裕次郎という人は「太陽にほえろ」の “ボス” 役というイメージしかなかったのだが、まだ私が生まれる前の1958年に彼がリリースした「嵐を呼ぶ男」(←オリジナルは何とSP盤!!!)では白木秀雄オールスターズという現役バリバリのジャズメンをバックにゴリも殿下もロッキーも知ったこっちゃないとばかりにゴキゲンな歌声を披露しており、へぇー、ボスも中々やるやん... と認識を新たにさせられた。はせはじむ氏がジャングル・ビートの素材としてこの曲に目を付けたのはまさに慧眼と言ってよく、このカヴァー・ヴァージョンは原曲を上手くアレンジして強烈なジャングル・ビート・ナンバーに仕上げてあり、洋邦混成メドレーの中でも違和感なく聴けるところがいい。選曲を担当したはせ氏は昔を知らない若い世代にコレを聴かせたかったのだろう。
嵐を呼ぶ男


 意表を突く選曲と絶妙なアレンジが満載のこの「ジャングル・ドラムス」だが、スウィング・リズムとは縁もゆかりも無さそうなトシちゃんまで出てきたのにはビックリ(゜o゜)  ハッキリ言って今の今までトシちゃんなんて心底バカにしていてまともに聴いたことすら無かったのだが、この盤でカヴァーされている「チャールストンにはまだ早い」という曲がめちゃくちゃ気に入ってしまい、YouTubeで怖々(笑)オリジナル・ヴァージョンをチェック。トシちゃんの歌はやっぱりアレだったが、それでも曲の素性の良さは十分に伝わってきたし、この盤のカヴァーは土屋さんが歌っているので安心して聴くことができる。彼女の声は低くてハスキーなのでこの曲にピッタリ合っているし、歌唱法もめっちゃクールでカッコエエわ(^o^)丿
田原俊彦 チャールストンにはまだ早い


 山下達郎先生の「アトムの子」はまさにジャングル・ビートの王道といった感じのナンバーで、80年代以降の邦楽に疎い私は曲名を見ただけではピンとこなかったが、カヴァーを聴いて“この曲どっかで聞いたことあるなぁ...”と思っていたら何とキリンビールのCMソングとして90年代初め頃にTVでガンガン流れてた曲だった。YouTubeで探してみると、ちゃーんとありました... この根津甚八のCM、たしかに見覚えあるわ(^.^)  達郎先生は私的には音壁やドゥーワップ志向のイメージが強いのだが、このようにさりげなくジャングル・ビートを取り入れてヒット曲を出すあたりはさすがマニアの鑑ですな。土屋さんによるカヴァーはこれ1曲フル・ヴァージョンでリリースしてもいいんじゃないかと思えるぐらいの名演だ。
キリン ゴールデンビター - 根津甚八 - ♪ 山下達郎 「アトムの子」


 この「ジャングル・ドラムス」はジャケットに赤字で大きく書かれた副題「BUMPPING」のミススペリング(この場合 P は重ねないでしょ...)が玉にキズだが、内容的にはジャイヴ・バニー・プロジェクト・シリーズの中でもトップクラスの1枚だと思う。
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