shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

恋はみずいろ ~ ヴィッキー・ベスト・セレクション

2009-01-31 | European Pops
 音楽ファンなら「恋はみずいろ」のあの有名なメロディーはどこかで耳にしたことがあるかもしれないが、ヴィッキー・レアンドロスという名前にはピンとこないという人が案外多いかもしれない。私も数年前にフランスやイタリアを中心としたヨーロピアン・ポップスにハマるまで彼女のことは全く知らなかった。時を遡って後追いせねばならないというハンデ、しかも比較的情報の少ないヨーロッパ系ということで、とりあえずどんな歌手かを知るために手頃なベスト盤CDを1枚買って気に入ったらオリジナル・アルバムをどんどん聴いていくようにしていたのだが、彼女のこのベスト盤CDは期待を遥かに上回る素晴らしさで、その後彼女のオリジナル・アルバムを eBay で獲って聴き狂ったものだった。
 彼女はギリシア生まれのドイツ育ちで、64年に15才でデビューしたが、彼女の名を世界的に有名にしたのは67年のユーロヴィジョン・コンテストにルクセンブルグ代表として参加し、「恋はみずいろ」で入賞したことである。この曲は他のアーティスト達もこぞって取り上げ、翌68年にはポール・モーリアのインスト・ヴァージョンが5週連続全米№1という大ヒットを記録するほどの人気だったのでそちらの方をご存知の方も多いだろう。そーいえばB’zのライブで松本さんも「もう1度キスしたかった」のエンディングにこの曲の一節を引用されていた。その哀愁漂うマイナー調のメロディーは日本人の心の琴線を震わせずにおかない必殺の旋律に溢れており、1度聴いたら忘れられない。こういうのを絵に描いたような名曲というのだろう。そんな「恋はみずいろ」も素晴らしいが、水も滴るようなヴォーカルで曲の魅力を見事に引き出した弱冠18才のヴィッキーも素晴らしい。彼女はその美貌からアイドルとして語られることが多く、その歌唱力は過小評価されているように思えるのだが、低域から高域まで気持ち良く伸びる歌声でまるで昭和歌謡のように情感を込めて歌い上げる表現力は特筆モノだ。しかも彼女の場合、フランス語、英語、そして日本語(←めちゃくちゃ上手い!)の3ヶ国語で歌えるのも大きな強みだろう。このベスト盤CDには全19曲が収められているが、どれもこれも甘酸っぱくて懐かしく、そして素晴らしい。彼女の代表曲①「恋はみずいろ」以外では、説得力溢れる歌声でビージーズのオリジナル・ヴァージョンを完全に凌駕した③「星空のマサチューセッツ」、彼女の切々としたヴォーカルが胸に食い込んでくる名唱④「思い出のなかで」、とても外国人が歌っているとは思えないような流暢な日本語で歌うコテコテの昭和歌謡⑦「時の流れのように」、哀愁舞い散る歌声でメリー・ホプキンとタイマンを張れそうな⑧「悲しき天使」、小さなスナックでシャンソンを歌っている女性版ひとりパープル・シャドウズのような⑩「悲しみが去ってしあわせが」、「届けてくれた忘れ物 だけどお礼は言わないの あなたが半分食べちゃった 私の好きなチョコレート~♪」って...何ともシュールな歌詞にモナリザも微笑みそうなザ・タイガース風GS⑪「私の好きなチョコレート」etc、名曲名唱の波状攻撃に圧倒され、時の経つのも忘れるほどだ。そこには洋楽も邦楽もなく、ただただ素晴らしい音楽が存在するのみ。最近の音楽はメロディーが希薄で思わず鼻歌で口ずさめるような良い曲が少ないなぁ...(>_<)とお嘆きのポップス・ファンにオススメな1枚だ。

Vicky Leandros - L'amour est bleu

ザ・ピーナッツ・オン・ステージ

2009-01-30 | 昭和歌謡
 ザ・ピーナッツの音楽性は幅広い。典型的な昭和歌謡からアメリカン・ポップス、ボサ・ノヴァ、スタンダード・ソングに民謡と、ありとあらゆる音楽ジャンルの楽曲にチャレンジし、物の見事に自分達の歌として聴かせてしまう。このライヴ盤でもユーライア・ヒープ、キャロル・キング、アイク&ティナ・ターナー、ゴッドファーザーのテーマ、そして定番のアメリカン・オールディーズ・ヒット・メドレーと、様々なジャンルの楽曲のカヴァーを披露しているのだが、何よりも驚いたのがキング・クリムゾンの「エピタフ」だった。
 昭和歌謡の象徴とでもいうべきザ・ピーナッツがプログレッシヴ・ロックの王者キング・クリムゾンの曲を取り上げたという事実だけでも凄いのに、その出来がまた抜群に素晴らしい。私なんか正直なところ、あのイントロを聴いただけで万感胸に迫るものがあるのだが、このザ・ピーナッツ版エピタフは原曲が湛えていた虚無感を見事なハーモニーで再現し、とても女性デュオ向きとは思えないこの曲をじっくりと歌い上げているのだ。特に後半部の盛り上がりには凄まじいモノがあり、“crying...”を繰り返すパートなんかもう背筋がゾクゾクする。
 感動の「エピタフ」が終わると、間髪をいれず岸部シローのとぼけたMCが入ってくる... 「ヘッヘッヘッヘッ... さて、私達はこれから皆さんを不思議な不思議なぽっぷすたいむとんねるにご案内いたしします... E.プレスリー、P.アンカ、P.ブーン、N.セダカ そしてC.フランシスの時代に遡り、70年代のナウなサウンドの原点を探し出すこと... それは明日のポップスイメージを一層豊かにする試みでもあります。それでは早速まいりましょう... ぽっぷすたいむとんねるぅ~」... 例のシロー節が全開で、それまでの荘厳なムードがぶち壊し(>_<)、まるでカーネギー・ホールからなんば花月へと無理やり瞬間移動させられたかのような落差に唖然とさせられる。まぁ「ベンチャーズ・ライヴ・イン・ジャパン」のビン・コンセプションに匹敵するくらいの変な MC が聴けるという意味でも貴重な CD かもしれない(笑)
 そのオールディーズ・メドレ-では「ダイアナ」の2分40秒あたりからのハモリ方がめちゃくちゃカッコイイ!!! 「レモンのキッス」ではカヴァーがオリジナル・ヴァージョンを超える瞬間を体験できるし、「ビー・マイ・ベイビー」では「二人ロネッツ」と化して追っかけ二重唱を聞かせてくれる。やはり60'sのオールディーズの名曲たちとザ・ピーナッツは相性バツグンだ。オリジナル・コーナーでは東京、サンフランシスコ、リオの「女」シリーズ3部作メドレーに続いて「情熱の花」「ふりむかないで」「ウナ・セラ・ディ東京」「恋のフーガ」と、次から次へと大ヒット曲のアメアラレ攻撃(≧▽≦) 最後は当時の新曲「さよならは突然に」の躍動感溢れる歌唱に続いて岸辺シローの棒読みMC(笑)からデビュー曲「小さな花」のニュー・アレンジ・ヴァージョンでコンサートは幕を閉じる。歌、選曲、アレンジ... そのすべてが素晴らしい、非常に中身の濃いライヴ盤だ。

ザ・ピーナッツ 「エピタフ」 (キング・クリムゾンカバー)

Kiss Alive II

2009-01-29 | Hard Rock
 日本人は「○○御三家」とか「△△3人娘」といった呼称が好きである。ある意味これほどわかりやすい分類・差別化はない。私が洋楽を聴き始めた頃、愛読していたミュージック・ライフ誌や音楽専科誌ではクイーン、キッス、エアロスミスのいわゆる「ロック御三家」が常に話題の中心だった。ちょうどクイーンが「オペラ座の夜」を、エアロスミスが「ロックス」を出した頃で、日本のロック・ジャーナリズムは揃って大絶賛。一応キッスの代表作は「キッス・アライヴ」ということになってはいたが、クイーンとエアロが音楽的な完成度を云々されていたのに対し、キッスはどこを見ても「ライヴの楽しさが伝わってくる...」という評価ばかりで、内容に踏み込んだものはそんなに無かったように思う。しかしこの御三家の中で当時の私が一番熱心に聴いていたのはこのキッスだった。彼らの音楽の特徴は、そのおどろおどろしいペイントやコスチュームとは裏腹に、非常にシンプルで分かりやすいストレートなロックンロールを基調としていたことで、その姿勢はデビュー以降ずーっと変わっていない。私がリアルタイムで聴いてハマりまくってたのはちょうど「アライヴ」でブレイクした直後の「地獄の軍団」、「地獄のロック・ファイアー」、「ラヴ・ガン」あたりの時期で、その第2期キッスの総集編のようなライヴ盤がこの「アライヴⅡ」なのだ。確かにライヴ盤としての迫力・存在感は「アライヴ」に一歩譲るが、やはり馴染みの曲が多い方が楽しい。キッスの代名詞といってもいいくらいの「デトロイト・ロック・シティ」、ノリの良さが身上の「レイディーズ・ルーム」、いかにもキッスらしいストレートなロックンロール「メイキン・ラヴ」、キャッチーなメロディーと流れるようなギター・ソロがたまらない「ラヴ・ガン」、元祖アメリカン・ヘビメタって感じの「コーリン・ドクター・ラヴ」、ヘッド・バンギングにピッタリな「クリスティーン・シックスティーン」、ピーター・クリスの枯れたヴォーカルで大ヒットした「ハードラック・ウーマン」や「ベス」と、ホントに良い曲が多いことに驚かされる。ただ、このレコードで唯一残念なのは前作「アライヴ」との重複を避けるためか2枚組のラストD面がスタジオ録音の新曲になっていること。中にはエース・フレーリー不参加の曲もあったりで、ハッキリ言ってコレは蛇足以外の何物でもない。ダブってもいいから「ロックンロール・オールナイト」や「ファイアーハウス」、「ブラック・ダイアモンド」etcを入れて欲しかったが、それ以外は言うことナシの楽しいライヴ盤だ。
 下に貼り付けたのは2003年のオーストラリア公演でメルボルン・シンフォニー・オーケストラと共演した時の映像で、題して「地獄の交響曲」。キッスとオーケストラの組み合わせというだけでも面白いのに、ここでは何と指揮者も含めてオーケストラのメンバー全員がキッス・メイクをして演奏しているのだ!これは3年ほど前にplincoさんに教えていただいたもので、あのお堅いオーケストラの面々が顔面ペイントを施しながら真剣に楽器をかき鳴らしている姿に大爆笑したものだ。こーゆーシャレのわかる人達、ホンマ好っきゃわぁ(^o^)丿

Detroit Rock City Kiss Symphony Alive IV

ザ・ビートサウンド・クラブ 【赤盤】 さっちゃん

2009-01-28 | Beatles Tribute
 ビートルズ・カヴァーの世界もついに来るとこまで来たか... と実感させられたCDがこの「ザ・ビートサウンド・クラブ【赤盤】/ さっちゃん」という子供向けCDだ。ジャケットは一目で分かる「プリーズ・プリーズ・ミー」のパロディーで、ファブ・フォーの代わりに可愛い動物のイラストが描かれている。レーベルはアップルならぬイチゴ、子供向けCDを謳っているわりには中々細部にも凝っている。中身はというとこれがもう爆笑モノで、ビートルズの楽曲演奏をバックに半ば強引に童謡を歌っているのだ。コード進行とか難しい音楽理論はよく分からないが、コレがとにかくよく出来ている。
 例えば「オブラディ・オブラダ」のピアノのイントロに続いて歌われるのは ”Desmond has a barrow in the market place” ではなく「あるぅ日 森の中~♪」...①「もりのくまさん」...だ(笑) 頭の中でイメージしてみてもらえばわかるが、これがまたコワイくらいピッタリとハマッていて、もう見事というかおバカというか、開いた口がふさがらない。全14曲こんな調子で笑わせてくれるのである。「ホエン・アイム64」そのまんまの②「五匹の子ぶたとチャールストン」はバック・コーラスから鐘の音までしっかりビートルズ・サウンドを模倣していてニヤリとさせられること間違いなし。
 イントロなしで始まる③「大きな栗の木の下で」は「プリーズ・ミスター・ポストマン」、強引にハードロックにしてみましたという感じの④「おはなしゆびさん」は「バースデー」、イントロがしっかりブギウギ・ピアノしてる⑤「ねこふんじゃった」は「レディー・マドンナ」、「さっちゃ~ぁぁぁんはねぇ~♪」で始まる⑥「さっちゃん」は「ミスター・ムーンライト」のパロディーだ。「抱きしめたい」のイントロで始まる⑦「小さな世界(イッツ・ア・スモール・ワールド)」は随所に挿入される手拍子がめっちゃエエ感じ(^o^)丿 巧妙にビートルマニアの秘孔を突いてきまんな。
 「イン・マイ・ライフ」調の⑧「いぬのおまわりさん」は間奏のバロック風ピアノまでご丁寧に再現しているし、⑨「ドレミのうた」ではイントロ部分は童謡そのままなのだが0分31秒からいきなり「涙の乗車券」のリフが乱入してきて笑わせてくれる。ただ、後半部のリフレインがないのが残念。「恋する二人」のハーモニカで始まる⑩「アイアイ」、途中でゾウの泣き声が入る「ルーシー・イン・ザ・スカイ」な⑪「ぞうさん」、「ロール・オーヴァー・ベートーベン」のイントロを使っただけという感じであまり芸のない⑫「とんでったバナナ」、「ジョンとヨーコのバラード」でのポールのバラケたドラムの雰囲気まで上手く再現した⑬「おもちゃのチャチャチャ」と続いていよいよラストの⑭「大きな古時計」だ。
 「レット・イット・ビー」の例のイントロに続いて「おぉ~きな のっぽの古時計~♪」...これは凄い!テンポや旋律が似ているせいもあるのだろうが、めちゃくちゃオモロイッ!!! 目からウロコとはこのことだ。ゴスペル風のバック・コーラスや本物そっくりのギター・ソロも含め、2つの曲がモノの見事に溶け合い、違和感は微塵も感じられない。ぜひポールに聴いてほしい1曲だ。
 尚、この【赤盤】には姉妹編「【青盤】/ ゲゲゲの鬼太郎」があり、そちらではアニソンとビートルズとが見事に合体!「ミッシェル」風のイントロに続いていきなり「ゲッ、ゲッ、ゲゲゲのゲ~♪」とか、「バック・イン・ザ・USSR」のジェット音に乗って飛んでくる鉄腕アトムとか... ビートルズ・ファンならハナシのネタに聴いておいて損はないと思う。

大きな古時計

This One's From The Heart / James Darren

2009-01-27 | Jazz Vocal
 ジェームズ・ダーレンといっても「誰?」という反応が返ってくるのが関の山だろう。私だって10年前までは名前すら知らなかった。彼は60年代に活躍した俳優で、数々のテレビドラマや映画に出演しヒット・シングルまで出していた、いわゆるティーン・アイドルというやつである。その後ずーっと表舞台から姿を消していたが、98年になって突然の復活を遂げることになる。人気SFテレビ・シリーズの「スタートレック・ディープ・スペース・ナイン」に「ヴィック・フォンテーン」という名のホログラム歌手の役、それも準レギュラー扱いで出演したのだ。
 彼が出たのは全176話中最後の約30エピソードだけだったが、その存在感はピカイチで、60年代のベガスを再現したステージでアメリカン・スタンダード・ソングを専門に歌ういわゆるクルーナーとして、またある時は宇宙ステーション・クルーの良き相談相手役として、スタトレ・ファンの間で人気が爆発した。かく言う私も熱狂的なトレッキーで、スタトレ・シリーズはすべてDVDで持っており、ヒマを見つけては繰り返し見ているのだが、何度見ても飽きない。そんなSFドラマの中にジャズが、しかも大好きなアメリカン・スタンダード・ソングが頻繁に登場するようになったのである。もう嬉しくてたまらなかった。
 彼が番組中で披露した歌の数々があまりにも素晴らしかったので、「CD出ぇへんかなぁ...」と思っていた矢先、この「ジス・ワンズ・フロム・ザ・ハート」がコンコード・レーベルからリリースされたのだ。コンコードってバリバリのジャズ・レーベルやん!早速 US アマゾンで購入。おぉ、ハロルド・アーレンにサミー・カーンにジミー・ヴァン・ヒューゼン...まさに名曲の宝庫ではないか!彼のヴォーカルは古き良きアメリカン・スタンダード・ソングを軽やかに、そして粋にスイングしながら歌う軽妙酒脱なスタイルで、温かみがあって親しみやすく、「ジャズなんて年寄りの音楽やろ?」とか「ジャズは難しすぎてちょっと...(>_<)」という偏見やステレオタイプを木っ端微塵に打ち砕く懐の深さを持っている。ジャズ・ヴォーカル、しかも男性ヴォーカルとなると日本ではどうしても敬遠されがちだが、こんなに粋で洒落た音楽を聴かず嫌いではもったいないと思う。
 CD 収録曲はドラマの中で歌詞の内容にピッタリの場面で歌われたものばかりで、ヴィックが初登場のシーンでシナトラばりに歌っていた②「カム・フライ・ウィズ・ミー」、戦闘で片足を失い義足となったクルーを元気付ける場面で効果的に使われた⑤「イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン」、クルーが愛を告白するシーンのバックでステージ上からヴィックが遠巻きに歌う姿がめちゃくちゃカッコ良かった⑩「アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン」、最終回にクルー全員の別れの宴で歌われてスタトレ・ファンの感動を呼んだ⑪「ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト」など、どの曲を聴いてもそれぞれの場面が鮮明に甦ってくる。私のような熱狂的なトレッキーにとってはもちろんかけがえのない盤だが、特に思い入れのない一般の音楽ファンが聴いても男性ジャズ・ヴォーカルの逸品として楽しめる1枚だ。

Odo plays "Come fly with me" with Vic Fontaine

Dangerous / Michael Jackson

2009-01-26 | Rock & Pops (80's)
 昨日に続いて今日もマイコーでいこう。「スリラー」、「バッド」の2枚のアルバムで80年代を席巻したスーパースター、マイケル・ジャクソンが91年にリリースしたのがこの「デンジャラス」。ミュージック・ビデオも含め80'sポップスの世界に革命を起こしたマイケルが90年代に入ってどのようなアルバムを出すのか非常に楽しみにしていたのだが、待った甲斐があったというか、期待以上の素晴らしい内容に大興奮したものだ。このアルバムの一番の特徴は長年にわたって良きパートナーとしてやってきたクインシー・ジョーンズ師匠の下から自立したことだが、新たに組んだ相棒が何と90'sニュー・ジャック・スイング・ブームの仕掛け人テディー・ライリーというから恐れ入る。彼はクインシーのゴージャスでポップな音作りとは正反対の、余分な音を削ぎ落としたソリッドでクールなダンス・ビートの構築を得意としており、1曲目から強烈なリズムが躍動するダンス・ナンバーが続く。曲でいうと①~⑥と⑭がテディー・ライリーとマイケルの共同プロデュースになっており、エキセントリックなサンプル音がシャープな切れ味でビシバシたたみかけてくる刺激的なサウンドをバックに、ハイ・テンションの絶叫調で攻撃的なヴォーカルを聴かせてくれるマイケルがめちゃくちゃカッコイイのだ(≧▽≦) 私は車の中で音楽を聴くことが多く、このアルバムなんかはまさにハイスピード・ドライビングBGMにピッタリで、特に①「ジャム」を聴きながらワインディングを高速で駆け抜けていくのは気分爽快だ。⑤「リメンバー・ザ・タイム」でも、最新のデジタル・ファンク・サウンドを大胆に導入し、それを自分本来の持ち味と絶妙にブレンドすることによって新たな世界を切り開いていこうとするマイケルの気迫のようなものが伝わってきて圧倒されてしまう。マイケル単独プロデュースの⑦~⑬ではやはり先行シングルで全米№1になったキャッチーでダンサブルなポップ・チューン⑧「ブラック・オア・ホワイト」にトドメを刺す。ガンズ&ローゼズのギタリスト、スラッシュの参加が「ビート・イット」のエディー・ヴァン・ヘイレン、「ダーティー・ダイアナ」のスティーヴ・スティーヴンスに勝るとも劣らないコーフンを呼び起こす。中間部のラップでストリート感覚を巧みに取り入れながらも実に聴きやすいサウンドに仕上げているのも凄いと思う。歌詞の内容は人種差別を止めようというメッセージ・ソングで、ビデオ・クリップはマイケルが世界中の様々な人種の人達と一緒に踊るシーンで構成されており、特にインド人の女の子と一緒に車の行きかう道路の真ん中で踊ったり(笑)ロシアの民族衣装を纏ったダンサーたちとコサックを踊ったりするシーンが面白い。この曲以外では「ウィー・アー・ザ・ワールド」っぽい壮大なバラッド⑦「ヒール・ザ・ワールド」が絵に描いたような名曲だし、ヘヴイーでありながらメロディアスなファンク・チューンの⑨「フー・イズ・イット」も聴けば聴くほど味が出るスルメみたいなナンバーだ。アルバム・タイトル曲⑭「デンジャラス」もこの名盤のラストを締めくくるにふさわしいカッコ良さで、マイケルとテディー・ライリーのコラボレーションの成果を凝縮したような1曲だ。このアルバムは派手な「スリラー」や「バッド」の陰に隠れがちだが、個人的には最も愛聴しているマイケル・ジャクソン盤だ。

Michael Jackson - Black Or White Live (Best Performance)

Thriller / Michael Jackson

2009-01-25 | Rock & Pops (80's)
 ロック/ポップスの世界にスーパースターと呼ばれるシンガーやグループは数多いが、「その時代を象徴する真のスーパースター」となると片手で足りる。売り上げ枚数がどうとか、ヒット・チャートの成績がどうとか、そーゆー問題ではない。音楽の世界を飛び越えて、広く世間にその存在を知らしめるくらいの「○○現象」を起こして初めて真のスーパースターといえるのだ。50'sはエルヴィス・プレスリー、60'sはビートルズ、70'sは該当者なしで、80'sは文句なしにマイケル・ジャクソンだろう。「ベスト・ヒットUSA」世代の私はマイケルの「スリラー」が巻き起こした社会現象をリアルタイムで経験した。それはもう凄まじいもので、どのようにして彼が現象となりえたのか、その一部始終を今でもハッキリと覚えている。そもそもこの「スリラー」からの1st シングルはマイケルとポールのデュエット「ザ・ガール・イズ・マイン」だったが、ホール&オーツやメン・アット・ワークらの当時のヒット曲に比べると今一歩インパクトが弱く2位になるのがやっとだった。しかし翌83年2月に「ビリー・ジーン」がシングル・カットされると風向きが一変する。ブラック・ミュージックの魅力を凝縮したようなグルーヴを持ったこの曲はありとあらゆるチャートを席巻し、2月から4月にかけて7週連続1位を独走した。1週間のブランクの後、今度は「ビート・イット」で再び首位を奪回、5月のチャート№1を爆走するのだ。エディー・ヴァン・ヘイレンの素晴らしいギター・ソロが聴けるこの曲はそれまでマイケルとは無縁だったロック・ファンをも取り込むことに成功、この段階でアルバム「スリラー」の売り上げは加速度的に伸びていく。更に同5月には「モータウン25周年コンサート」に出演、「ビリー・ジーン」で初めてムーン・ウォークを披露し全米中に衝撃を与えた。この頃はもう黒人も白人も関係なくアメリカ全体がマイケル・ジャクソンという熱病に浮かされているかのような大フィーバーぶりだった。ちょうどエルヴィスやビートルズが「エド・サリヴァン・ショー」に出演して全米を興奮のルツボにたたき込んでいったように... 歴史は繰り返されたのだ。そして秋が過ぎ、いよいよ年末のクリスマス商戦に向けてあの「スリラー」のビデオ・クリップが登場する。マイケルが狼男に変身し、たくさんのゾンビを引き連れてダンスを繰り広げるシーンは1度見たら忘れられないほど強烈なインパクトがあり、このビデオがアルバム「スリラー」の売り上げに再点火、グラミー賞で8部門を総ナメにしたことは皆さんよーくご存知の通り。このアルバム以降、明らかにブラック・ミュージックの、いや80'sポップスそのものの音作りが変わっていったように思う。大袈裟でなく「歴史を変えた」アルバムであり、私にとって80'sポップスの座右の盤なのだ。
 このYouTubeの映像は2001年に行われたソロ活動30周年記念コンサートからのもので、元ガンズのスラッシュ(憑かれたようにギターを弾きまくる姿がめっちゃカッコエエわぁ!)をゲストに迎えたマイケルの力強いパフォーマンスが見る者の心を激しく揺さぶる。特にあのダンスの切れ味は今も健在で、何度見ても画面に釘付けになってしまう。そこには下らないゴシップや誹謗中傷がつけ入るスキのない完璧な歌とダンスの世界が展開されている。音楽家にとっては音楽こそがすべてなのだ。一つの時代を築いたヒーローに敬意を払わず、整形したとか肌が白くなったとか言って吊し上げ同然に晒し者にするマスゴミの連中には正直言って虫唾が走る思いがする。この圧倒的なパフォーマンスを見て彼らは何を思うのだろうか?

Michael Jackson and Slash Beat it (Live)

カブトムシ外伝 / 王様

2009-01-24 | Beatles Tribute
 初めて王様の「深紫伝説~ディープ・パープル日本語直訳メドレー」を聴いたのは今から十数年も前のことで、ちょうど当時の洋楽ロックに見切りをつけた頃だった。右を見ても左を見てもただうるさいだけの騒音みたいなグランジ・オルタナ系ロックに辟易していた私の耳に懐かしい「ハイウェイ・スター」のイントロが突き刺さった時、思わず「おぉ~!!!」と叫びそうになったが、出てきた歌詞は「高速道路の星~♪」... 何なん、これ??? 続いて「速さの王様~♪」「燃えろ~♪」「湖上の煙ィ~♪」「オレの彼女は東京出身~♪」「変わった感じの女~♪」「黒い夜~♪」「宇宙のトラック野郎~♪」と、次々とあのパープルの名曲たちが竹を割ったような直訳の歌詞を伴って登場、もう “可笑しくって涙が出そう” な微笑み返し状態だった。日本語直訳ロックというユニークなスタイルのため、ついついお笑い系の単なるパロディー・ソングとして見てしまいがちだが、なかなかどうして演奏の方はかなりオリジナル・ヴァージョンに近い形で忠実にコピーされており、実に高い完成度を誇るパープル・メドレーだった。その後も「鉛の飛行船伝説」(ゼッペリン)、「転石伝説」(ストーンズ)、「浜っ子伝説」(ビーチ・ボーイズ)、「接吻伝説」(キッス)、「虹伝説」(レインボー)、「いとしのオイラ/白あんこ伝説」(エリック・クラプトン)などのケッサクを連発、とにかくオモロくて楽しい音楽には目がない私は大喜びで聴きまくったものだった。そして王様がデビュー10周年を記念して企画したのが長年の悲願だったビートルズの直訳カヴァー。しかし残念ながらオリジナル曲は訳詩の許可が下りなかったとのことで、それなら初期ビートルズがカヴァーした曲をカヴァーしてやろうじゃないかという、アイデアと執念の勝利のような盤がこの「カブトムシ外伝」なのだ。お約束のパロジャケは言わずもがな、帯は東芝のフォーエヴァー帯を茶化し、レーベルはアップルならぬスイカにちゃーんとカブトムシがくっついているという芸の細かさにニヤリとさせられる。収録曲は①「ひねってワオ!」②「お願い郵便屋さん」③「踊るベートーベン」④「君に首ったけ」⑤「リジーにクラクラ」⑥「月光おじさん」⑦「長身サリー」⑧「男子」⑨「ゼニー」と、もう笑いが止まらない。特に「待って!」で始まる②なんかもう日本語直訳ロックの枠を超越して曲と日本語詞が何の違和感もなく一体化しており、ギャグがアートに昇華する瞬間を味わえる。“Well, I talk about boys”を「あぁ~男子の話♪」にしてしまう⑧や“Now give me money, that’s what I want”が「ゼニくれ!俺は欲しい~♪」と叫び倒す⑨もお見事!初期ビートルズの代名詞とも言うべきハンド・クラッピングの多用も嬉しい。これら9曲をメドレーにした⑫「カブトムシキング・メドレー」(←クリックでメドレーPVが見れて、しかも全曲試聴できます!)も秀逸だ。そして残る2曲が王様のオリジナルで、「カム・トゥゲザー」そっくりの⑩「米とげ、ザ~ッと」はイントロの“Shoot me!”が「しゃりー」、お米の上手な研ぎ方を解説する歌詞もホンマよーやるわ(^_^) ⑪「Hey 柔道一直線」も「ヘイ~ジュー... どぉ一直線♪」という具合で大ボケをかまし、最後はスポ根スピリッツ溢れる大合唱に... 2曲とも演奏は細部まで原曲にソックリだ。好っきゃわぁ、こーゆーの(^o^) 最後っ屁のようなショボいピアノの和音(「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のパロディ)に続いてサーッというノイズと共に「コレシカ ホウホウガ ナカッタ、コレシカ ホウホウガ ナカッタ...」... ペパーズのインナー・グルーヴごっこだ(笑) ホンマに最後の最後までマニアックなコダワリを見せてくれる。このように盤の隅々にまで王様のビートルズへの愛情が満ち溢れているこのCD、シャレのわかるコアなビートルズ・ファンなら絶対に「買い」ですぜ!

Sgt. Pepper's lonely hearts club band 王様 Beatles medley(1/2)

Through The Past Darkly / Rolling Stones

2009-01-23 | Rolling Stones / The Who
 音楽の話をしていてローリング・ストーンズの話題になると私はいつも「どの時代のストーンズが一番好き?」と聞いてしまう。何と言っても約半世紀の間第一線で活躍しているバンドなのだ。昔「ストーンズは変わらへんからどれを聴いても同じ」と誰かが言ってたのを聞いたことがあるが私は全然そうは思わない。確かにミックのヴォーカル・スタイルやキースのギター・サウンドに大きな変化は見られないが、出てくるバンドの音はちゃーんとその時代を反映したものになっている。私が一番好きなのは、古いR&Bやブルースを再生することから脱却し、独自のロックンロール・スタイルを完成させた60's後半(シングルでいうと「黒く塗れ!」~「ホンキー・トンク・ウイメン」あたり)のストーンズで、この時期がストーンズの純粋な熱気という意味では最高だと思う。ミックのヴォーカルは成熟し始め、キースはリズム・ギターでR&Bに不可欠な音の壁を築き上げ、ビル・ワイマンとチャーリー・ワッツのリズム隊は腰の入ったバック・ビートに徹し、そして当時のリーダーであるブライアン・ジョーンズはキーボードからシタールまで様々な楽器をこなし、まさにストーンズ・サウンドの要の役割を果たしていた。そんな最も脂の乗ったストーンズの魅力が凝縮されたベスト盤がこの「スルー・ザ・パスト・ダークリー」。手持ちのCDが薄っぺらい音だったのでUKオリジナル・モノラル盤を eBay で取ったのだが、期待通りの迫力満点な音に大満足。ただ、マニアが喜ぶ八角形の変形ジャケットは実用性ゼロで不便極まりない(>_<) 中身の方は言わずもがなの素晴らしさで、ビートルズの真似をして失敗した「サタニック・マジェスティーズ」の教訓から再び基本に戻って彼ら本来のストレートなロックンロールで勝負した①「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」が実にすがすがしい。やっぱりストーンズはこうでなくちゃね。④「夜をぶっとばせ」はゴキゲンなピアノがサウンド全体を支配、途中ビートルズやビーチ・ボーイズみたいなコーラス・ハーモニーが聴けるところなんかもストーンズとしては異色のナンバーだが、この疾走感溢れるノリはさすがストーンズという他ない。64年録音の⑤「ユー・ベター・ムーヴ・オン」は⑪「シッティン・オン・ア・フェンス」と共にこの盤では初期の録音で、どちらもどこか懐かしいというかホッとさせるサウンドだ。ジョンとポールがコーラスで参加した⑥「ウィー・ラヴ・ユー」は私の大好きな曲で、緊張感溢れるイントロのピアノ、強靭なグルーヴを生み出すリズム隊、混沌としたサウンドの中から顔をのぞかす歪んだギターや咆哮するブラス群と、ムチャクチャ一歩手前で見事なバランスを保ちながら音楽が前へ前へと進んでいく様はめっちゃスリリング!⑧「シーズ・ア・レインボウ」は凛としたピアノの音色が耳に残る実にメロディアスなポップ・ナンバーで、ジョン・ポール・ジョーンズのストリングス・アレンジもお見事。ストーンズらしくないということであまり話題に上らないが、これは名曲だと思う。イントロのギターの入り方がめちゃくちゃカッコイイ⑫「ホンキー・トンク・ウイメン」は粘っこいリズムが生み出すグルーヴ感が最高だ。バック・トゥー・ザ・ルーツ... ストーンズにとってこれ以上のものはない。このようにして激動の60'sを乗り切ったストーンズは更に加速しながら70'sも転がり続けることになる...

We Love You - The Rolling Stones RARE VIDEO



ジャズ代官 ~演歌がジャズ!~ / 昭和ジャズ兄弟

2009-01-22 | Cover Songs
 私は音楽仲間内で「よぉそんな CD 買うたなぁ...」と言われることがよくある。珍盤・奇盤・怪盤といった、いわゆる「怪しい盤」が大好きなんである。確かに王道を行く音楽ファンの人達から見ると「何じゃいコレは?」というような盤が私の CD・レコード棚にはゴロゴロしているが、「音楽は楽しければ、面白ければそれでエエやん!」と考えているのでまったく気にならない。むしろそんな玉石混交の怪盤群の中から「自分だけの名盤」を見つけ出すのが楽しくて仕方がない。
 この「ジャズ代官 / 昭和ジャズ兄弟」という CD もそんな怪しい1枚だ。サブタイトルが ~演歌がジャズ!よいではないか、よいではないか~... ナメてんのか!しかもこのジャケットである。普通なら手に取るのもアホらしくなるような盤だが、その時は魔がさしたのか、あるいは余程機嫌が良くって心が広くなってたのか、とりあえず試聴サイトで聴いてみることにした。あれ?案外マトモ、っちゅーか結構オモロそうやん!演歌というだけで偏見を持っていた自分を反省し、早速ヤフオクでゲット。600円だ。
 ①「与作」、リリシズム溢れるピアノに枯れたバルネ・ウィランみたいなテナー... めっちゃエエ感じだ。しかし5分過ぎからキモチ悪いモード奏法に突入、すべて台無しである。ウネウネ・テナーはどっか他所でやってくれ(>_<) ②「北酒場」、スイングするピアノやよく歌うベースを聴いていると、とても演歌だとは思えない。これはいい(^o^)丿
 ③「北の宿から」、これはもう完全にマイルスの「枯葉」のパロディーだ。あの「枯葉」の演奏をバックに、メロディーだけが「北の宿から」と考えてもらえば分かりやすいかも。日本人のジャズファンなら絶対に大笑いするはずだ。④「雪国」にもやはりマイルスが降臨、ミュート・トランペットにリリカルなピアノが絡むという、いかにも日本人ウケしそうな典型的な四畳半ジャズだ。
 哀愁舞い散る⑥「石狩挽歌」と、強烈にスイングする⑦「ほんきかしら」は2曲とも元歌を知らなかったのだが、どちらもめちゃくちゃ気に入ってしまった。そして⑧「雨の慕情」、タイトルだけではピンとこなかったが曲を聴いてみると「雨雨降れ降れ もっと降れ~♪」...八代亜紀だ(゜o゜) グラント・グリーンっぽいギターの音色で奏でられる物悲しいメロディーがたまらんなぁ(≧▽≦) この⑥⑦⑧の流れは最高やん!
 美空ひばりの⑩「リンゴ追分」はケニー・バロンや大西順子といったバリバリのジャズメンも取り上げていたが、旋律に何かしら彼らをインスパイアするものがあるのだろう。この曲、個人的にはサザンの桑田さんが歌うヴァージョンが一番好きなのだが... まぁ何やかんやでこれだけ楽しめて600円なんてエエんかいな(^_^) 良い曲、良いアレンジ、良い演奏...3拍子揃った文句なしの掘り出し物だ。

ほんきかしら

Hooked On Classics

2009-01-21 | Rock & Pops (80's)
 ポップスの世界というのは面白い所で、一つ当たるとみんなが一斉に右へならえをし、我も我もと二匹目のドジョウを狙ってくる。スターズ・オンの「ショッキング・ビートルズ45」が81年6月に全米№1を記録した後、案の定というべきか、メドレー・ブームがやってきた。本家ビートルズのムービー・メドレーや以前紹介した初期ビーチ・ボーイズ・メドレー、スターズ・オン系のそっくりさんシリーズではアバ、スプリームズ、ステーヴィー・ワンダー、アンドリュース・シスターズとまるで雨後のタケノコのように様々なメドレー曲が発売された。この「スターズ・オン現象」は約1年間ほど続いたが、そんな中でも斬新な発想でスターズ・オン人気に上手く乗ったのがルイス・クラーク指揮のロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の「フックト・オン・クラシックス」だった。フックとは英語で「かぎ形に曲がったもの」、つまり引っ掛けるための留め金(ホック)を意味する。だから「フックト・オン・クラシックス」とは要するに「クラシックの名曲数珠つなぎ」のことなのだ。指揮のルイス・クラークはあのELOでストリングス・アレンジを担当していたほどの人で、時代も作曲者も異なるクラシックの楽曲群を実にスムーズに1曲のメドレーものにまとめ上げている。選ばれているのはクラシック音痴の私でさえもどっかで聞いたことのあるような超有名曲ばかり(題名とかはサッパリ分からへんけど...)で、それらをフォー・ビートのリズム・ボックス・サウンドで巧妙につなげている。まぁ自分にとって普通のクラシックは冗長すぎてちょっとツライのだが、こんな風にオイシイ部分だけを抜き出して次から次へと聴かされると目からウロコ、美メロのアメアラレ状態で結構楽しい。尚、このCDには全部で9メドレー、トータル106曲がごった煮風に収められているので、曲名当てクイズなんかにはいいかもしれない。
 話は変わって80'sのアメリカのテレビドラマ界のアクション部門で「ナイトライダー」と人気を二分していたのが「エアーウルフ」というハイテク武装攻撃用ヘリコプターが主役のスカイアクション・ドラマだった。シナリオがしっかりしてたのはナイトライダーの方だったが、アクション的にはやはりエアーウルフの方が見応えがあり、特にバイザーが下りてターゲット・ロックオンしてから敵機を撃墜するまでの数秒間がたまらなくスリリングでいつもコーフンして見ていたものだった(笑) 今回YouTubeで「フックト・オン・クラシックス」の映像を検索していたらたまたま「フックト・オン・エアーウルフ」というのを見つけた。クラシックスの音楽はそのままで映像だけを「エアーウルフ」のハイライト・シーンで編集したというスグレモノだ。初めて見るという方も、懐かしいなぁという方も、エアーウルフの活躍を思う存分お楽しみ下さい(^o^)丿

Hooked On Airwolf (Part 1)

Beatles Medley / Stars on 45

2009-01-20 | Beatles Tribute
 私が高校生の頃、有名な演歌のオイシイ部分だけをつなぎ合わせてメドレーにした「演歌チャンチャカチャン」という曲がヒットしており、その一方で巷では「なんちゃってオジサン」なるものが話題になっていた。そこで東芝EMIは気でも狂ったのか、その頃ヨーロッパでカフェ・クリームというグループがヒットさせていた大胆なディスコ・アレンジのビートルズ・メドレーに「ビートルズなーんちゃって!?」というふざけた邦題を付けてリリースしたのだ。アビー・ロードを渡るビートルズに向かっておどけたポーズを取る変なオッサンのイラストが描かれたトホホなジャケットのレコードをレジに持っていくのがめっちゃ恥ずかしかったのを今でも覚えている。
 それから3年経ったある夏のこと、ラジオからとんでもない曲が流れてきた。今度はオランダのあるプロデューサーがジョン、ポール、ジョージに声がそっくりなスタジオ・ミュージシャン達を集めて作ったスターズ・オンというグループのビートルズ・メドレーだ。カフェ・クリームの場合はただ単に、原曲のメロディーを拝借してディスコ調にしてみましたという、いわばビートルズが持つ多くの側面の中の一つを取り出して活用したにすぎなかった。ところがスターズ・オンはビートルズの聖域に真正面から堂々と接近し、ヴォーカルからバックのサウンドの細部に至るまでそっくりに再現して見せたのでシーンは騒然となった。邪道だ、冒涜だと言う人達もいた。しかし私には、ここまでやってくれたらすべてを許せてしまうという最高のキメ方で、ビートルズの楽曲群が持っている魅力をアピールしているように思えた。この曲は当時全米チャート1位を独走していたキム・カーンズの「ベティ・デイヴィスの瞳」を抜いて全米№1に躍り出た。10年以上も前に解散したグループの、しかもコピー・バンドが演奏するメドレー物がである。この曲がどれほどの衝撃性を持っていたかわかろうというものだ。
 ディスコ・ビートにハンド・クラッピングを被せたイントロ部分が一通り終わった後「ワン、トゥー、スリー、フォー!」のカウントから「ディサプンワンスビフォ」とジョンそっくりのヴォーカルが入ってきた瞬間、全身に電流が走る。この曲はこの一瞬のために存在すると言い切ってしまいたいくらいの衝撃だ。ただ、シングル・ヴァージョンはビートルズに関係のない「シュガー・シュガー」で時間を浪費しており曲数も8曲と少ないので×。オススメは30曲入りのロング・ヴァージョンの方で、特に後半部で意表を突いて「マイ・スウィート・ロード」のイントロのアコギ・カッティングが「ジャンジャンジャジャジャン~♪」と入ってくる所がたまらない(≧▽≦) メドレー物というのは選曲も含めて、どの曲の次にどの曲を持ってきてそれらをどう繋ぐかが腕の見せ所なわけだが、メジャーなヒット曲から隠れ名曲に至るまで、巧くテンポを合わせて絶妙のタイミングで繋がれており、16分を超えるロング・ヴァージョンがまるで一つの「ビートルズ組曲」であるかのように一気呵成に聴けてしまう。見事な音楽的センスという他ない。これはビートルマニアなプロデューサーが企画した、ビートルズ・クローンによる、ビートルズ・ファンのための、ビートルズ愛に満ち溢れた1曲だ。

Stars on 45 - Beatles medley (Dutch videoclip)

TIME / ELO

2009-01-19 | Rock & Pops (80's)
 ジェフ・リンはビートルズ・ファンにとって、例えて言うなら大親分であるビートルズの忠実なる舎弟頭、つまりオジキみたいな存在である。だから彼が87年に「クラウド・ナイン」をプロデュースしてジョージの復活に貢献した時も、ビートルズ・アンソロジー・プロジェクトに共同プロデューサーとして参加し、「リアル・ラヴ」のビデオクリップに登場した時も、諸手を上げて歓迎した。彼は堅気の世界で言えば親戚のオッチャン... つまり身内同然なのだ。「ビートルズ解散後のビートルズ」とか「もう一人のポール・マッカートニー」といわれるジェフ・リン... ジョージ・マーティン引退後、ビートルズ関係のプロデュースやリマスターを任せられるのは彼しかいないとさえ思う。80's半ば以降はプロデューサー業が多忙を極めているが、元々はエレクトリック・ライト・オーケストラ、通称ELOのリーダーだった人である。ELOは71年~86年の間に11枚のアルバムを出しており、ストリングスを大胆にフィーチャーしてロックにクラシックの要素を導入した前期、ファンタジックでメロディアスなポップス主体のサウンドでELOが最もELOらしかった時代といわれる中期、ビートを強調した親しみやすいポップ調のロックンロール・スタイルへと移行した後期に分けられる。世評が高いのは中期らしいが、私の耳にはまだ何か中途半端なポップさに思えてイマイチのめり込めない。ストリングスを排し、大巾にギター・サウンドを導入したビートリィな、特に「サージェント・ペパーズ」から「マジカル・ミステリー・ツアー」の頃のビートルズ色が濃厚な後期ELOのサウンドこそが最高なのだ。多分「ターン・トゥ・ストーン」とそれに続く「ドント・ブリング・ミー・ダウン」の大ヒットがきっかけになって彼の中に息づいていたビートルズ魂が覚醒したのだと思う。あとはそれを全開にすればいいだけの話だった。そして出来上がったのが後期ELO3部作の第1弾にあたる「タイム」というわけだ。これぞまさしくジェフ・リンの音楽性の集大成といえそうな入魂の大傑作!1stシングル⑫「ホールド・オン・タイト」を初めて聴いた時は、「ファンタジック・ポップンロール」とでも呼べそうな軽快でノリの良いサウンドにぶっ飛んでしまった。専売特許といえるウキウキするようなコーラス・ハーモニーやベヴ・ベヴァンのパワフルに炸裂するドラミングも必殺にして完璧、ジェフ・リンが目指した究極のELOサウンドがここにある。2ndシングル②「トワイライト」はポップでスペイシーな音世界が眼前に広がるような、デジタル・テクノロジーを駆使した完成度の高さが圧巻だ。機械的なサウンドでありながら人間的な温かみを上手く表現した③「ユアーズ・トゥルーリー 2095」、何となく懐かしい雰囲気を感じさせる⑤「ザ・ウェイ・ライフス・メント・トゥ・ビー」、一切の無駄を削ぎ落としたかのような⑧「フロム・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド」、夢に溢れたサウンド・トリップを感じさせてくれる⑩「ヒア・イズ・ザ・ニューズ」と、これはもう完全無欠のポップ・アルバムという他ない。彼はこの後「シークレット・メッセージ」、「バランス・オブ・パワー」と前人未到のポップス道を突き進んでゆくのだが、それはまた、別の話...

Electric Light Orchestra - Hold on Tight

ドゥー・ユー・リメンバー・ミー / 岡崎友紀

2009-01-18 | Wall Of Sound
 私の高校~大学時代にはまだ CD なんてものは存在せず、丹念にラジオのヒット番組をエアチェックし、気に入ったものだけをレコードで買うようにしていた。ある時 YUKI というシンガーの「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」という曲がかかった。それはキュートな歌声、キャッチーなメロディー、60'sの古き良きオールディーズを想わせるドリーミーなサウンド... その完全無欠といえるポップ・チューンに私はすっかりハマッてしまい、そのテープをヘビー・ローテーションで聴きまくった。しかし何故かその時はレコードを買いそびれてしまい、音楽環境もCD時代へと移り変わっていった。
 それから約20年後、ある時この曲のカヴァーを耳にしてめちゃくちゃ懐かしさがこみ上げてきた。それはキタキマユという歌手がテレビドラマの主題歌としてリリースしたもので、YUKIヴァージョンに近い歌い方とアレンジが気に入り即購入した。う~ん、やっぱり素晴らしい!透明感のある歌声もこの曲にピッタリだ。そーなると今度は当然オリジナル・ヴァージョンを聴きたくなるのが人情というものだ。早速ネットで調べてみると既に廃盤ということで超高値のプレミアが付いていた。CD は1万円近かったので LP に狙いを絞り、何とか4,800円で落札した。
 YUKI の正体は「おくさまは18才」の岡崎友紀で、彼女のLPが届いていよいよ念願の①「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」を聴く。「そんな気がぁしてぇたぁ~♪」と語尾の母音を伸ばす囁きヴォーカルがめちゃくちゃ可愛い。ん?このエコーのかかった奥行きのあるサウンドは私の大好きなウォール・オブ・サウンドやん!彼女のふんわりした歌声が醸し出す甘酸っぱい雰囲気といい、まるで80'sの「ビー・マイ・ベイビー」だ(≧▽≦) プロデューサーは何とあの加藤和彦... 60'sのフォーク・クルセダーズから70'sのサディスティック・ミカ・バンドと、日本のポップス界をリードしてきた鬼才である。これはもう期待に胸が膨らむ。
 ②「ウォッカ・ツイスト」は①とは打って変わってロカビリー調のナンバーで、イメージとしては加山雄三&ランチャーズの「夜空の星」にザ・ヴィーナスの「キッスは目にして」をふりかけ、それをYUKI のヴォーカルでかき混ぜたような、オールディーズ・ファンにはたまらない曲。思わず「ザ・ガードマンかよ!」とツッコミを入れたくなるような間奏部のギターのエレキな歌心に涙ちょちょぎれる。身をよじるように語尾を上げてアップテンポで歌う YUKI は私の知っていたアイドル・岡崎友紀とは別人のようだ。③「YOU MAKE ME HAPPY」は60'sと80'sが交差したようなどこか懐かしいサウンドで、YUKI のダブル・トラッキングを駆使した囁きヴォーカルがたまらない。
 ④「アイドルを探せ」は言わずと知れたシルヴィ・バルタンのカヴァーで、めちゃくちゃ深いリバーブをかけて加工処理された YUKI のヴォーカルが夢見心地へと誘う。ドタバタさせたドラムのビートも良いアクセントになっており、この辺りにも「フィル・スペクターごっこ楽しいです感」が横溢している。⑤「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」は何とあのローリング・ストーンズのカヴァー。意表を突いた選曲だが、YUKI のヴォーカルは曲の髄を見事に引き出しており、絶妙なサウンド・プロダクションも含め、私の知る限りこのベスト・カヴァー・ヴァージョンだと思う。⑥「メランコリー・キャフェ」はまるでヨーロッパのオシャレな映画を見ているようで、当時の加藤のサウンド志向を色濃く反映した仕上がりになっている。
 モダンでありながらどこかノスタルジックな雰囲気を味わえるこのアルバム、隠れた名盤の筆頭に挙げられてしかるべき大傑作だ。
YUKI  『ドゥー・ユー・リメンバー・ミー』

キタキマユ - Do You Remember Me

岡崎友紀 アイドルを探せ

I Am Sam

2009-01-17 | Beatles Tribute
 私は音楽は三度のメシよりも好きなのだが、映画はあまり見る方ではない。この「アイ・アム・サム」も様々なアーティストのビートルズ・カヴァーが随所に流れる映画だからというだけの理由でレンタルした。しかし見始めてすぐにそんなことはすっかり忘れてしまうほど画面に引き込まれていき、父娘の心温まるやり取りのシーンの数々に柄にもなく(笑)感動してしまった。父親サム役のショーン・ペンの鬼気迫る演技、娘ルーシー役のダコタ・ファニングのもう言葉に出来ないくらいの愛らしさ、そしてここぞ!という所で流れてくるビートルズの楽曲がこの作品を一層見応えのある素晴らしいものにしていた。
 これはそんな「アイ・アム・サム」のサントラ盤である。だからもちろんCD単体で一つのビートルズ・トリビュート・アルバムとして楽しむことも可能である。しかしそれではこのアルバムの素晴らしさを100%体験したことにはならない。この盤はぜひとも映画を見た後で聴いてほしい。そうすることによって、その曲が流れてきたシーンが心に浮かんできて映画の感動がよみがえる。例えば①「トゥー・オブ・アス」(エイミー・マンとマイケル・ペンの夫唱婦随デュエット)は映画の最初と最後に流れるのだが、1回目はサムが赤ん坊のルーシーを抱っこしてスタバで働くシーン、2回目はルーシーを取り戻したサムが彼女のサッカーの試合で審判をしながら一緒に芝生の上を走り回るシーンで、どちらも歌詞の「これから二人で...」にピッタリ合っている。新しい保護者に引き取られていったルーシーに花束片手に会いに行ったサムが陰からじっと彼女を見つめ、結局会わずに引き返してくる切ないシーンで流れる⑤「悲しみはぶっ飛ばせ」(エディ・ヴェダー)なんかもうたまらない。父親と引き離されるのを恐れて施設を逃げ出したルーシーとサムが夜の公園で遊ぶシーンで流れる⑥「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」(ベン・ハーパー)、サムが仲間たちと共に風船を持ってアビー・ロードさながらに横断歩道を渡るシーンに流れる③「アクロス・ザ・ユニヴァース」(ルーファス・ウェインライト)... 歌詞の内容とそれぞれのシーンとが密接に結びついており、ビートルズ好きにはたまらない映画になっている。カヴァー・ソングとしての出来から言うと、ルーシーが赤い紙ヒコーキを拾うシーンで流れた②「ブラックバード」(サラ・マクラクラン)とエンド・ロールのバックで流れた⑦「マザー・ネイチャーズ・サン」(シェリル・クロウ)の2曲がダントツに素晴らしい。90年代以降の洋楽に疎いのでサラ・マクラクランという人は恥ずかしながらこの盤で初めて知ったのだが、もうクラクラするほど(笑)見事なヴォーカルを聴かせてくれる。彼女に歌われて曲が喜んでいるような、心に染みわたる名唱だ。映画に無関係な⑫~⑳に関してはハッキリ言ってオマケみたいなモンで、ヘザー・ノヴァの⑬「恋を抱きしめよう」とエイミー・マンの⑱「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」の2曲以外はクオリティー・ダウンの感が否めない。尚、⑳に日本盤とUK盤で違う曲が入っていたりとかUS盤は17曲しか入ってないとか色々とややこしいのでこれから買おうという人は注意が必要だ(←大した問題じゃないけど...)。 それにしてもルーシー、ホンマに可愛いかったなぁ... (≧▽≦)

Sarah McLachlan - Blackbird
コメント (4)