shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

【BN祭り②】J. R. Monterose

2023-07-30 | Jazz

 J.R.モンテローズのテナーはクソカッコ良い。ノリ一発で有無を言わさぬ豪快なアドリブがたまらないソニー・ロリンズや圧倒的なドライヴ感が快感を呼ぶジョニー・グリフィン、温かみのあるスモーキーなトーンで味わい深いプレイを聴かせるハンク・モブレイと、ブルーノート・レーベルはテナー・サックスの名演の宝庫だが、そんな中にあって独特のスタッカートを活かした果敢な突っ込み奏法(?)で異彩を放っているのが J.R.モンテローズだ。
 J.R. はコアなファンの間で根強い人気があるのだがリーダー作は驚くほど少なく、1950年代ではブルーノートに吹き込んだ「J.R. Monterose」(1956)とJARO(←ジャロって何じゃろ?レベルの超マイナー・レーベル)からリリースした「The Message」(1959)の2枚しかない。サイドメンとして参加した作品にしても、彼を一躍有名にしたミンガスの「直立猿人」、それに相性の良いケニー・ドーハムの「ジャズ・プロフェッツ」や「カフェ・ボヘミア」など数えるほどしかないという、ジャズ・ミュージシャンとしては珍しいくらいの寡作家なのだ。
 私はブルーノート盤をRVGリマスターCDで聴いていっぺんに彼のテナーが好きになった。中でもA面2曲目の「The Third」は “曲良し・演奏良し・スイング良し” と3拍子揃った出色の一曲だ。その後アナログ・レコードを買い始めてからは何とかJ.R.のオリジナル盤を手に入れようと頑張ったのだが、片や超人気レーベルのブルーノート、片や超マイナーレーベルのジャロということで大苦戦。結局ジャロ盤の方はなんとか入手出来たが、ブルーノート盤の方は中々買えずじまいで悶々としていた。
The Third - J.R.Monterose


 1950年代半ばに出たブルーノートのレコードは、1stプレスのセンター・レーベル表記が “767 Lexington Ave NYC” で、その後 “47 West 63rd - New York 23”→“47 West 63rd - NYC”→“New York USA”→“A DIVISION OF LIBERTY RECORDS, INC”→“A DIVISION OF UNITED ARTISTS, INC”と変わっていくのがデフォルトだった。私は1stプレス盤が10万円を超えるような激レア人気盤は60年代前半に出た“63rd”や“New York”表記の2nd/3rdプレス盤(→20年前は2~3万円くらいで買えたが、さっき見たらめっちゃ高くなっててビックリ...)を買ってお茶を濁していたので、50年代にリリースされた後、60年代に再発されなかったこの「J.R. Monterose」に関しては、薄っぺらいUA盤で我慢するか、あるいはオリジナル盤に近い高音質のリマスター盤が出るのを辛抱強く待つかの2択を迫られたのだった。
 結局、堪え性の無い私は “RVG刻印はないけど一応モノラルやし、国内盤よりはマシな音してるやろ...” と自分に言い聞かせて UA盤を4,000円で購入。デッドワックス部には RVG の代わりに Eck という 謎の刻印があって、音の方は結構粗削りながらも予想していたよりは遥かに良い音だった。音の傾向としては初期のビートルズのフランス盤に近い感じ。私は “UAって今までバカにしてきたけど、めっちゃコスパええやん!” とそれなりに満足していた。
 しかしその後、Classic Recordsから再発されたリマスター重量盤がヤフオクで安く出ていたのを見て好奇心を抑えられなくなり購入。出てきた音はUA盤を凌ぐ情報量と迫力で、それが名匠バーニー・グランドマンのマスタリングによるものなのか、200g重量盤のせいなのか、Quiex SV-P という高級ビニール材質のおかげなのかはわからないが(←これらすべての相乗効果なのかも...)、この盤以降私はClassic Recordsの再発盤をガンガン買うようになった。
 それから更に何年か経って、今度はディスクユニオン主導の “プレミアム復刻シリーズ” というリイシュー盤が発売された。普段なら国内盤なんぞには目もくれない私だが、“1950年代当時のプレスマシーンを使用した米国プレスの輸入盤”で、“~From The Original Master Tapes~というサブタイトルが示す通り、あえてRVGサウンドに近づけようとはせず、素のマスターテープに記録された音をそのまま円盤に刻み込むことにより、録音現場のそのままの生々しい音の記録をリアルに再生可能になりました。” という煽り文句を見てまたまた好奇心を抑えられなくなり購入。しかしスピーカーから出てきた音は良く言えばフラット、悪く言えば何の面白味もない淡白な音で、ハッキリ言って私の好みとは正反対のサウンドだ。オーディオ・マニアならこっちに軍配を上げるかもしれないが、ラウドカットや轟音爆音が三度のメシよりも好きな私としては、積極的に音を創り込んでジャズらしいサウンドに仕上げたRVGの偉大さを再認識させられる結果となった。ユニオンの企画らしく、溝、アドレス、®無しといった要素がオリジナルに忠実に再現されている拘りっぷりにはさすがと感心させられたが、それでもジャケットが数ミリ程度小さくて中にレコードを入れるとブサイクに膨らんでしまう点は気に入らなかった。
 ということで、聴き比べた結果としては Classic Records盤 > UA盤 >>> プレミアム復刻盤 となり、聴かへんレコードを持っててもしゃあないのでプレミアム復刻盤は即売却... 今ではClassic Records盤をメインにして、たまに気分を変えたい時にUA盤を聴くことにしている。

【BN祭り①】The Scene Changes / Bud Powell

2023-07-25 | Jazz
 今日は何と言ってもまずコレでしょう。特に最後のKOシーンはスカッとしまっせ\(^o^)/ 野球の大谷選手といい、この井上選手といい、ホンマに日本の誇りですわ!!!
井上尚弥 vs. スティーブン・フルトン WBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ


 さて、ここからはいつものように音楽の話。ブルーノート祭りのトップバッターはバド・パウエルの「The Scene Changes」だ。ブルーノートというとどうしても2管3管ハードバップ / ファンキー・ジャズのイメージが強いが、このアルバムはそういったことを遥かに超越した次元でブルーノート・レーベルに、いやジャズ界にドーンと屹立しているのだ。
 バド・パウエルは私が最も好きなジャズ・ピアニストで、曲単体でいえば凄まじい疾走感に圧倒される初期の「Tempus Fugit」や哀愁舞い散る名曲名演に涙ちょちょぎれる後期の「Dear Old Stockholm」が真っ先に頭に浮かぶが、アルバム全体の完成度の高さで言えばこの「The Scene Changes」が断トツに素晴らしい。
 そもそもジャズメン・オリジナル曲というのはメロディーが薄っぺらくて心に残らないものが大半で、心を鷲づかみにするような美旋律を持ったキャッチーな曲は1割にも満たないというのが長年の経験に基づく私の考えだが、全9曲すべてをパウエルのオリジナルで固めたこのレコードは奇跡的に駄曲が1曲もない “打率10割” レベルの神アルバムで、一度聴いたら忘れられないようなキャッチーなメロディーに溢れているのだ。
 A①「Cleopatra's Dream」(クレオパトラの夢)は一時期サッポロビールのTVCMソングとして日本全国のお茶の間(←今ではもう死語ですな...)に流れていたくらいの大名曲なのだが、残りの8曲も負けず劣らずエキゾチックなメロディーが出るわ出るわのわんこそば状態で甲乙付け難い。これほどまでにクオリティーの高い楽曲がいくつも生まれた理由としては、人種差別のえげつないアメリカを離れて住みやすいパリへ移住する直前のレコーディングだったことが大きいのではないか。それが証拠にB面の曲名を見ても、海峡を渡って(Crossin' The Channel)ヨーロッパにやって来て(Comin' Up)そこに着く(Gettin' There)と景色が変わる(The Scene Changes)と、海外移住を目前に控えてまさに心ウキウキ状態のパウエルの気持ちが伝わってくるようだ。だからこんなに楽し気なメロディーが次から次へと浮かんできたのだろう。
Cleopatra's Dream
 
Gettin' There


 1stプレス盤(1959年)は47 West 63rd - NYC表記で両面溝あり、2ndプレス盤(1962年)ではINC - NEW YORK USA表記になって片溝のみ、3rd~4thプレス盤(1962~66年)では同じINC - NEW YORK USA表記ながら、それまであったデッドワックス部の Plastylite P(←いわゆるひとつの“耳”マーク)や 9M 刻印、そしてDeep Grooveも無くなってしまう。
 このレコードは超の付く人気盤で、状態の良い1stプレス盤は10万円近くするため、最初はピカピカの4thプレス盤を1万円で手に入れて満足していたのだが、やはりどうしても1stプレスの音を聴いてみたくなって、ジャケットがGで 盤質がVG+表記の盤を28,000円でゲット。実際に聴いてみるとほぼノイズレスのNM状態で大ラッキーしたが、何よりも驚いたのはそれまで聴いてきた4thプレス盤との音の違いだ。
 4thプレス盤の方は音像はやや小ぶりながらカチッとまとまっていて平均点が高く、聴き比べなければ十分満足いく音で、車に例えるなら非常に優秀な日本車という感じ。一方、1stプレス盤の方はとにかく音場が雄大で、演奏を包み込む空気感みたいなものまで生々しく伝わってくるのだ。おぉ、これが1stプレスの威力なのか... 車で言うと大排気量のアメ車という感じで、アクセルをガッと踏み込めばドバーッと余裕で加速していくあの圧倒的なスケール感に似ているように思う。
 最初に買った4thプレスの盤質が良かったこともあって正直 “これで十分やろ...” と思っていたが、一度1stプレス盤の音を聴いてしまうとどうしてもそっちばかり聴きたくなってしまう。今回ブログに書くにあたって久々に聴き比べてみたが、ビートルズで言うと「Please Please Me」の “金パロ” と “黄パロ” 以上の開きがある。この違いがプレス時期から来るものなのか、それとも “耳” マークの有無から来るものなのかはわからないが、とにかくこのレコードが好きなら無理してでも1st プレス盤を買う価値は十分にあると思う。いやぁ、パウエルさんホンマにゴキゲンやわ... (≧▽≦)

真夏のブルーノート祭り

2023-07-23 | Jazz

 この土日は久々に映画を一杯観た。前回取り上げた「ジョン・ウィック」シリーズに加えて「ミッション・インポッシブル」の旧作や「トップ・ガン・マーヴェリック」といったお気に入りの映画を一気観したのだ。やっぱりキアヌ・リーブスやトム・クルーズはめちゃくちゃカッコエエのぉ...(≧▽≦) ということでとりあえず映画は十分満喫したので、明日からは又今まで通りの音楽漬けの日常に戻ろう。
 その音楽だが、スピーカーのネットワーク交換によって今まで以上にパワフルな音が聴けるようになったこともあって、ロックではラウド・カット盤、ジャズではRVG、すなわちルディ・ヴァン・ゲルダーが録ったブルーノート盤がターンテーブルに乗る回数がこれまで以上に増えた。ジャズに関しては私はどちらかと言うとスタン・ゲッツやアート・ペッパーのようなレスター・ヤング系の流麗な音が好きなのだが、今の気分はゴリゴリのサックスがスピーカーから迸り出るブルーノートのRVGサウンドなんである。まぁこれにはスピーカー云々以外にも、今の仕事が面白くなくてストレスが溜まっているせいで身体が暴力的なサウンドを欲しているせいもあるかもしれない。そんなこんなで自分のブログで真夏のブルーノート祭りをやろうと思いついたのだ(←“祭り” 好きやなぁwww)。
 ウチのレコード棚のジャズのコーナーはこれまでシンプルに楽器別に並べていたが、先日気分転換のつもりで “ブルーノート・コーナー” を新設、オリジナル1stプレス盤はもちろんのこと、2ndプレス盤や3rdプレス盤、それに名匠バーニー・グランドマンがマスタリングした超高音質&ド迫力の復刻盤であるClassic Records のMONO 200gシリーズに至るまで、手持ちのBN盤をかき集めてレコード番号順に並べてみたところ、結構な枚数があってビックリ...(゜o゜)  今までは楽器別に分散していて気付かなかったのだ。
 とまぁこのように私はブルーノートというレーベルが大好きなのだが、かと言って “ブルーノートなら何でも好き!” という博愛主義者ではない。まず4100番台に入ってからちらほら顔を出す “新主流派”(←結局BNというコップの中の嵐で、“主流” とは程遠い “亜流” のまま終わった...)ミュージシャンによる無味乾燥なモード・ジャズは生理的に受け付けない。初心者の頃に一度アンドリュー・ヒルというキモいピアニストを無理やり聴かされたことがあって、そのあまりのつまらなさにマジで吐きそうになったトラウマがある。ましてや騒音・雑音の類に過ぎないフリージャズなど論ずるにも値しない。私が蛇蝎の如く忌み嫌っているこの手のジャズが増えてくる4100番台半ば以降のレコードはほとんど持っていない。
 私が愛してやまないのは1500番台、そして4000番台にキラ星の如く並んでいるハードバップ/ファンキー・ジャズの名盤たちだ。アート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズを始めとしてソニー・ロリンズやハンク。モブレイ、ソニー・クラークにリー・モーガンと、このあたりはまさにモダン・ジャズの王道とでも言うべき充実ぶりなのだ。
 1500番台、そして4000番台のブルーノート盤が凄いのは、音楽自体の素晴らしさに加えて名エンジニアのRVGによる迫力満点の音作り、そしてセンスの塊と言うべきデザイナー、リード・マイルスが作り上げた超カッコ良いジャケット・アートワークという三位一体攻撃によって、 “商品” として完璧なパッケージに仕上げられているところだ。ジャズの世界におけるブルーノートは、レーベルとグループという違いはあれど、ロック/ポップスの世界におけるビートルズのような、まさに唯一無二の存在なんである。ストーンズやビーチ・ボーイズがいくら頑張ってみたところでビートルズに敵わないように、プレスティッジやリバーサイドが束になってかかってもブルーノートの比ではないのだ。
 これから数回にわたってそんなブルーノートのレコード群の中から選りすぐりの愛聴盤を取り上げて「1stプレス盤 vs 2nd/3rdプレス盤」や「ベスト・オブ・ザ・レスト:リイシュー盤バトルロイヤル」みたいなマニアックな視点から聴き比べをやっていきたいと思っている。
【検証】BlueNote プレミアム復刻盤・USオリジナル盤の聴き比べ

「ジョン・ウィック4」のムビチケ買った(^o^)丿

2023-07-21 | TV, 映画, サントラ etc

 私は映画に関しては超の付くド素人で、自分が興味のあるごく狭いジャンルのモノしか観ない。それも大半は封切り後1年ぐらい経ってから発売されたブルーレイが更に値崩れするのを辛抱強く待ってから(笑)買って観るというセコい人間である。とにかくレコード以外の出費は出来るだけ抑えるというのが家訓であり、信条であり、座右の名であるので、わざわざ映画館にまで足を運んで観たのは過去20年間でも「ゲット・バック」「イエスタデイ」「エイト・デイズ・ア・ウイーク」といったビートルズ関連モノと「ボヘミアン・ラプソディ」、それに「スター・ウォーズ」シリーズぐらいしかない。
 そんな私が人生で初めて“ムビチケ”なるものを買った。昔の言葉で言うと何のことはない “前売り券” だ。映画は「ジョン・ウィック4~コンセクエンス~」... 以前このブログでも取り上げた、キアヌ・リーブス演じる伝説の殺し屋ジョン・ウィックの死闘を描いたアクションもので、前作「ジョン・ウィック3 ~パラべラム~」から4年という長い間首を長~くして待っていてついに日本公開日が決まり、いてもたってもいられなくなってシネマサンシャイン大和郡山まで車を飛ばしたのだ。
【本予告】『ジョン・ウィック:コンセクエンス』9/22公開


 とにかくこの「ジョン・ウィック」シリーズほど私を奮い立たせてくれる映画は他にはない。“血湧き肉躍る” という表現があるが、まさにこの映画にピッタリの表現だ。あぁもう今から9月22日が待ちきれない。スピーカーが直ってからというもの、レコードばかり聴いていて最近全然家で映画を観ていなかったので、この週末は久々にテレビにかじりついて “ジョン・ウィック祭り” でもしようかな...
【閲覧注意】相手の耳にエンピツを突き刺したりとか、かなり過激なシーンの連続なので、そういうのが苦手な人は見ない方がいいと思います↓
ジョン・ウィック - 復讐完了

ジョン・ウィック:チャプター2‐ 美術館での銃撃戦

ジョン・ウィック:チャプター2 ‐ vs暗殺者たち

ジョン・ウィック:チャプター3 ‐ カサブランカでの銃撃戦


 更に海の向こうではもう次作「ジョン・ウィック:チャプター5」のトレイラーが公開されている。うまくすれば2年連続で「ジョン・ウィック」の新作が観れるかもしれないのだからこれはえらいこっちゃである。早よ来年にならんかな...
John Wick: Chapter 5 ‐First Trailer (2024) Keanu Reeves & Ana de Armas Ballerina Movie | Lionsgate

スナッキーで踊ろう / 海道はじめ

2023-07-15 | 昭和歌謡・シングル盤

 私はいわゆる “変なレコード” というやつが大好きで、その曲が自分の好みに合ってさえいればどんな怪しげな盤でも喜び勇んで買ってしまう。そして私の手持ちのレコードの中でも一二を争う珍盤(奇盤? 怪盤?)が今日取り上げる「スナッキーで踊ろう」だ。
 私がこの曲の存在を知ったのはバックで踊っているスナッキー・ガールズの1人、小山ルミつながりで、“小山ルミがソロ・デビュー前に怪しげなレコード(笑)に参加していたらしい... という話をネットで知って、色々調べて辿り着いたのがこの「スナッキーで踊ろう」だった。
 原盤は今でこそ15,000円ぐらいのえげつないプレミア価格で取り引きされているようだが(←1995年に Vivid Sound から出た再発盤ですら6,000円超えしててビックリ...)、私が買ったレコードは盤質表記が良くなかったこともあってか確か3,000円ちょっとで手に入れれたと思う。
 歌謡曲のシングル盤ということで少々音が悪くても “まあエエか...” と気にせずにいたが、先日たまたま思い立って超音波クリーニングを施してみたところ、それまでのノイズがウソのようにキレイさっぱり消え去ってEx+レベルの高音質でこの珍曲が楽しめるようになったのが嬉しくて、早速このブログに書くことにしたのだ。
 この曲は元々プリマハムが若者向けに発売した新商品フランクフルト・ソーセージ「スナッキー」のプロモーションの一環として企画したもので、ある意味では日本初のタイアップ・ソングと言えるが、驚かされるのはそのキャンペーン・ソングの作曲を演歌界の巨匠である船村徹に依頼したことで、その結果として信じられないくらいファンキーな船村作品が誕生したのだから面白い。
 インタビューでは “奈落の底というか地獄へ落ちていく断末魔みたいなサウンドを作りたかった... きまったものをブチ壊したいという破壊衝動に突き動かされて作った...” と、とても演歌界の大御所とは思えないような突飛なことを仰っていたが、ベンチャーズ顔負けのアグレッシヴなガレージサイケ・サウンドに民謡をミックス、フィル・スペクターばりの過剰なエコーをぶっかけて当時の弟子だった民謡歌手の海道はじめに歌わせるという、アヴァンギャルドというか、ブッ飛んだ凄い作品なのだ。
 この曲を初めて聴いた時は “何じゃこりゃ?” だったが、その “何かめっちゃ変やけど妙に気持ち良い” 感じがクセになって脳内リフレインが止まらなくなってしまったのだ。そういう意味では危険な中毒性を持った1曲と言えるが、デッドなドラム・サウンドが生み出す強烈なグルーヴ感がとにかくヤバいので、“昭和歌謡ナイト”のようなパーティーはもちろんのこと、今の時代ならサンプリング・ネタとして使っても十分上手くハマると思う。まぁ時代がやっとこの曲の先進性に追いついたとも言えるが、私にとっては大音量で聴いて日常のストレスを吹き飛ばしてくれる、そんな1曲なのだ。そう、この曲は小さな音で聴いてもその魅力は伝わらないだろう。とにかく可能な限りの大音量で聴く... これに尽きると思っている。
 尚、バックでコーラスと踊りを担当した “スナッキー・ガールズ” はジャケット左からルミ(小山ルミ)、ミミ(吉沢京子)、ハニー(羽太幸得子)の3人で、風吹ジュンが参加していたというのはガセネタのようだ。
スナッキーで踊ろう

謎の歌謡曲「スナッキ―で踊ろう」誕生秘話(3/3)

音楽センスが光るカッコいいパクリ(?)特集

2023-07-09 | J-Rock/Pop

 音楽ファンの中にはちょっと似た曲を見つけるとまるで鬼の首でも取ったかのように “パクリだ!” と糾弾したがる了見の狭い人達がいるが、前回のビートルズ・オマージュ特集の時にも書いたように、私はこういったオマージュ(パクリ?)曲が大好きだ。もっと言うと、既存のリフやメロディーを基にして新しい音楽を創造していくのは大いにアリだと思うし、初めて聴く曲の中に自分の知っている曲のフレーズが出て来て、そこに元ネタに対する愛情やユーモアの精神が垣間見えるとめちゃくちゃ嬉しくなってしまうのだ。今日はそんな私が思わず唸ってしまった “カッコいいパクリ” の代表例として私が大好きな日本の2大グループを取り上げよう。

①Mr.Children「シーソーゲーム」
 私は90年代半ばから後半にかけての、いわゆるアッパーなロックンロールに載せて自己諧謔性に満ちた歌詞を速射砲のように乱射していた “尖った” ミスチルが大好きなのだが、そんな彼らの中でも特に好きな私的3大名曲が「名もなき詩」「Everybody Goes」、そしてこの「シーソーゲーム」だ。この曲はプロモ・ビデオからしてモロにエルヴィス・コステロ「Pump It Up」のパロディーで、これだけでも笑撃のケッ作なのだが、楽曲自体もとても良く出来ていて、一線級のキャッチーなロックンロールに仕上がっている。初めて聴いた時、全体の雰囲気が何となくコステロの「Veronica」(←コステロと桜井さんって声質が似てるよな...)と佐野元春の「アンジェリーナ」を足して2で割ったような感じやなぁと思いながら聴いていたら後半部でいきなり「Born To Run」でのクラレンス・クレモンズそっくりなサックス・ソロが出てきてイスから転げ落ちそうになったのが懐かしい。和製スプリングスティーンの異名を取る佐野元春をベースにし、その種明かしというか伏線回収とばかりにボスの代表曲のサックス・ソロをぶち込んでくるというユーモアのセンスが最高ではないか! このアレンジが誰のアイデアなのかは知らないが、とにかくすべての点においてカッコいい邦楽ロックの大傑作だ。
Mr.Children「シーソーゲーム」

Elvis Costello「Veronica」
佐野元春「アンジェリーナ」

Bruce Springsteen「Born To Run」


②B'z「BURN ~フメツノフェイス~」
 B'zというとアンチの連中はすぐにパクリを連呼するが、ハッキリ言って的外れも甚だしい。作曲を担当している松本さんはロックを中心に色んなジャンルの音楽に造詣が深く、過去の優れた音楽のエッセンスを抽出して新しい楽曲を生み出していくのが得意であり、楽曲としてのクオリティーが上がるのであればむしろそっちの方が良いと考えているふしがある。そしてその創作の過程でユーモアと音楽センスがきらりと光る仕掛けをブッ込んでくるという遊び心に溢れたところがあるのだ。ここでポイントなのは聴く人に “あっ、あの曲だ!” と気付いてもらえるように作ってあることで、コソコソとパクっているのではなく、“わかる人にはわかる...” というノリで “このフレーズをこんな風に使うと面白いでしょ?” みたいな感じが伝わってくるのだ。2008年にリリースされたこの「BURN ~フメツノフェイス~」を聴くと、“ヘビメタとフォーク・ロックと昭和歌謡を組み合わせて新しくカッコ良いロックンロール曲を作ってみたんですけど、どうですか...(^.^)” という松本さんの茶目っ気たっぷりな笑顔が目に浮かぶ。まずはモトリーの「Same Ol' Situation」そっくりなイントロに続いて曲のイメージを決定づけるリフをS&Gの「Hazy Shade Of Winter」(←雰囲気的にはバングルズによるカバー・ヴァージョンの方に近いか...)からアダプト、ヴォーカル・パートはピンク・レディー「サウスポー」を想わせるキャッチーなメロディーから一気呵成に畳み掛け、気が付けばザ・ワン・アンド・オンリーなB'z流ロックンロールになっているというのが何よりも凄い。やっぱりB'zはエエなぁ... (≧▽≦)
B'z「BURN ~フメツノフェイス~」

Motley Crue「Same Ol' Situation」

Simon & Garfunkel「Hazy Shade Of Winter」

ピンク・レディー「サウスポー」

邦楽 “ビートルズ・オマージュ” 曲特集

2023-07-02 | 昭和歌謡・シングル盤

今日はちょっと趣向を変えて、邦楽曲の中でビートルズを連想させるオマージュ曲をいくつかピックアップしてみた。もちろんこの他にも一杯あると思うが、真っ先に私の頭に浮かんだのが以下の4曲だ。

①原田真二「キャンディ」(1977.11)
 原田真二は吉田拓郎のプロデュースで「てぃーんず・ぶるーす」「キャンディ」「シャドー・ボクサー」と1ヶ月ごとにシングルをリリースするという当時としては前代未聞のデビューを飾った大型新人で、私も結構気に入ってレコードを何枚も買ったものだった。彼のシングルでは「タイム・トラベル」とこの「キャンディ」が断トツに素晴らしいと思う。曲想はモロにビートルズの「Michelle」で、クリシェを用いた作風はもちろんのこと、バック・コーラスの付け方なんかにも彼のビートルズ愛がビンビン伝わってきて嬉しくなってしまう。彼が随所に散りばめたビートリィな要素を “あっ、ここにもある!” と大喜びで味わい尽くすのが由緒正しいビートルズ・ファンというものだ。
原田真二「キャンディ」


②沢田研二「おまえがパラダイス」(1980.12)
③南佳孝「スローなブギにしてくれ」(1981.1)
 私は中学に入った1975年から音楽を聴き始めたので、ちょうどジュリーの全盛期をリアルタイムで経験できた幸せ者なのだが(←ザ・ベストテンとか毎週見てた...)、32枚目(!)のシングルにあたるるこの「おまえがパラダイス」を初めて聴いた時はさすがに目が点になった。ビートルズの「Oh! Darling」そのまんまではないか! イントロからいきなりあの有名な旋律をモロに引用していて “これって盗作とかにならへんのかな?” と不思議に思っていたら、そのすぐ後に南佳孝が今度は曲調までそっくりな「スローなブギにしてくれ」を出したので、またまたビックリ。副題が「I Want You」なので、こっちの方はわざと狙ってやってるフシがある。「Abbey Road」から10年以上経って日本のヒット・チャートに「Oh! Darling」もどきが次々と出現したのには笑えたが、当時は “日本って何でもアリなんやな...” と妙に納得していた。これらの曲をまだ聴いたことのないビートルズ・ファンの方は是非一度聴いてみて、イスから転げ落ちて下さい(笑)
沢田研二「おまえがパラダイス」

南佳孝「スローなブギにしてくれ」


④PUFFY「これが私の生きる道」(1996.10)
 邦楽ビートルズ・オマージュ曲特集のトリは奥田民生のビートルズ愛をシングル曲としてギュッと凝縮したパフィーの2ndシングル「これが私の生きる道」だ。3分少々のこの1曲中に「Day Tripper」を始めとして「Please Please Me」「From Me To You」「Twist And Shout」「She Loves You」(まだまだ他にもいっぱいあるかも...)といった珠玉の名曲のリフやらフラグメンツやらがそこかしこに散りばめられており、ビートルズ・ファンにとっては宝探し感覚で楽しめてしまうナンバーなのだ。何かというとすぐにパクリ云々する悪癖がマニアにはあるが、こういうスマートで洗練されたオマージュの仕方は実にクールでカッコイイと思う。1990年代という時代に敢えてモノラル録音を敢行という徹底した拘りっぷりも最高だ。
PUFFY「これが私の生きる道」