shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

CMT Crossroads DVD / Def Leppard

2012-05-29 | Hard Rock
 3年ぐらい前のことだったと思うが、いつものようにネットを見ていてたまたま開いたHMVのトップページに “歌姫テイラー・スイフトとデフ・レパード、夢の共演!” の文字が躍っていた。アマゾンにせよ HMV にせよ、この手のトップ・ニュースはたいていワケの分からん J-POPS 関連の記事ばかりでいつもはスルーしているのだが、 “デフ・レパード” の6文字は見逃さない。
 早速その記事に目を通してみると、そこには “カントリー・ポップス界の歌姫、Taylor SwiftとDef Leppardとの夢のコラボレーション! カナダの人気音楽テレビ番組CMT CROSSROADSによって実現したスペシャルライブの映像が遂にリリース! この番組は2008年11月30日にオンエアされた、Def Leppardの名曲を全米で大人気のシンガー、Taylor Swiftが歌うスペシャル・セッション! とにかく、このライヴはとても素晴らしいジョイント・ライブなのでお互いのファン方は必見です! US ウォールマートのみで販売されています限定アイテムの為、無くなり次第終了となります。” と書かれていた。
 テイラー・スイフト??? “全米で大人気” とのことだが、顔はおろか名前すら知らない(>_<) テイラー・デインやったら知ってるんやけどね...(笑) まぁ誰と共演していようがお目当てはレップスやし、トラックリストを見ると「フォトグラフ」、「ヒステリア」、「ラヴ・アンド・ヘイト」、「シュガー・オン・ミー」といった愛聴曲を演っていて、いやがうえにもテンションが上がってくる。しかも私は “限定アイテム” という殺し文句に滅法弱い。HMV では3,500円を超えるボッタクリ価格だったので、 US アマゾンで新品を10ドルでゲットした。送料込みでもHMVの半値以下だ(^o^)丿 もちろんリージョン・フリーである。
 この DVD は本編8曲、ボートラ3曲の全11曲が収録されており、そのうちデフレパ・ナンバーは6曲。曲と曲の間にはレップス5人とテイラー嬢によるざっくばらんな音楽談義(?)が挿入されているという構成だ。そこで彼女が語ったところによると、彼女の母親が熱狂的なデフ・レパード・ファンで、彼女は幼いころからずっと「パイロメニア」や「ヒステリア」を聴いて育ったのだという。因みにこの DVD のタイトルの CMT とは Country Music Television のことで、その中でカントリー・アーティストとロック・アーティストが共演する企画のコンサート番組の名称が Crossroads というのだそうだが、彼女にこの「クロスロード」出演の話が持ち上がった時に誰と共演したいかと聞かれ、 “デフ・レパード!” と即答。たまたま彼女のツアー・マネージャーがドラマーのリック・アレンのお兄さんだったという凄い偶然から話がトントン拍子に進み、ついに彼女の夢が実現したというわけだ。その辺の経緯を大コーフンしながら語っている姿は実に微笑ましいが、そういえば彼女のドラマー(←ステージ向かって右側のスキンヘッドの人)のバスドラがリック・アレンのユニオン・ジャック・デザインをパロッた星条旗柄になっていて、ロゴのフォントもデフレパ仕様になっているのにもご注目(@_@)
 ステージはレップスとテイラー・スイフト・バンドの共演という形で進行、オープニングの①「フォトグラフ」ではギタリスト4人が横一列に並んでイントロのリフを弾き、ヴォーカルはテイラー嬢が先発。う~ん... 一生懸命歌ってるのは十分伝わってくるのだが決定的に何かが足りない(ー_ー)  この有名なロック・ソングを歌いこなすには彼女の声質は細すぎるのだ。例えるならF1マシンに細いタイヤをつけて鈴鹿の130Rやスパのオー・ルージュを全開で走ろうとするようなもの。極太レーシング・タイヤで走るようにいくはずがない。だからジョーの野太いだみ声ヴォーカルが入ってきた途端に曲が活き活きと躍動し始めるのがよく分かる(←ただし、ジョーはいくら何でもちょっと太り過ぎ。ステージに立ってる姿はまるで特撮映画の“大魔神”みたい...)。 それと、HMV の記事には “テイラー・スイフトの歌唱力も素晴らしいですが、スタイル良し、更にこの美貌...” と書いてあったので期待していたが、何か歌はイマイチやし容姿も私の好みのタイプではないので(←特に目の周りのキラキラ・メイクは生理的に無理!!!)ちょっとガッカリ。バックバンドの赤毛のヴァイオリン弾きのオネーチャンの方がエエな...(^.^)
Def Leppard & Taylor Swift - Photograph (Live at Crossroads)


 テイラー嬢の歌声は①のようなロック・ソングには向かないが、一転④「ヒステリア」のようなミディアム・スロー・バラッドにはドンピシャとハマるようで、中々エエ味を出している。この曲はあのモンスター・セラー・アルバム「ヒステリア」の中でも屈指の美メロ・ナンバーで、赤毛のオネーチャンの奏でるヴァイオリンも曲に絶妙な彩りを添えているし、間奏で彼女のバンドのギタリストがフィルとヴィヴィアンを両脇に従えてめっちゃ嬉しそうにスライド・ギターを弾く姿にも和んでしまう。
Hysteria (Live) Def Leppard & Taylor Swift


 今回のコラボレーションの中で断トツに素晴らしいのが⑥「ホェン・ラヴ・アンド・ヘイト・コライド」だ。この曲は「フットルース」や「トップ・ガン」のような80年代のサントラ名盤に入れたらぴったりハマりそうなキラー・バラッドで、当時なら男女デュエットでシングル・カットして全米№1確実といったところ。80年代は音楽が音楽らしかったホンマにエエ時代だったが、それはさておき、敢えてブリティッシュ・ロック色を捨てて本気で売れ線を狙ってきた時のレップスの底力が存分に発揮された大名曲である。そんな原曲に敬意を払いながら歌詞を噛みしめるように歌い上げるテイラー嬢のヴォーカルは心にグッとくるものがあるし、ジョーの説得力溢れる歌声はもう圧巻の一言だ。バックの弦楽団の演奏も曲とのマッチングも完璧で、聴く者の心の琴線をビンビン震わせる。レップス・ファンはこの1曲のためだけにでもこの DVD を買う価値があると思う。
When Love & Hate Collide (Live) Def Leppard & Taylor Swift


 コンサートのエンディング曲⑧「ポァ・サム・シュガー・オン・ミー」のイントロのリフが鳴り響くとオーディエンスは総立ちで大盛り上がり(^o^)丿 この曲もテイラー嬢には少し荷が重いが健気に先発を買って出るその意気やよし。しかしやはり餅は餅屋と言うべきか、絶妙のタイミングで炸裂するジョーの “フゥア!” というドスの効いた掛け声一発(1分14秒あたり)でロック色が一気に急上昇!!! フィルに絡むヴァイオリンのオネーチャンのシャープでトリッキーな動きも見ものだし、デフレパ勢のバック・コーラスも圧倒的に素晴らしい。しかし何と言ってもこの曲の白眉はリック・アレンのパワフルなドラミングだろう。両脚を駆使してあの圧倒的なグルーヴを生み出すそのミラクルなプレイは鳥肌モノだ。やっぱりデフ・レパードはエエなぁ... (≧▽≦)
POUR SOME SUGAR ON ME - Def Leppard & Taylor Swift

Euphoria / Def Leppard

2012-05-24 | Hard Rock
 私は大学生の時に「フォトグラフ」に衝撃を受けてから30年来のレップス・ファンなのだが、そんな私なりに彼らの歴史を総括すると、1979~1982年(「オン・スルー・ザ・ナイト」、「ハイ・アンド・ドライ」)が大ブレイクへの序章ともいうべき “胎動期” 、1983~1991年(「パイロメニア」、「ヒステリア」)がヒット曲を連発して時代を牽引した “絶頂期” 、1992~1995年(「アドレナライズ」、「レトロ・アクティヴ」、「ヴォールト」)が大成功の余韻に浸りながらその収穫を味わった “安定期” 、1996~2005年(「スラング」、「ユーフォリア」、「Ⅹ」)が時代と対峙した “迷走期” 、そして2006年以降(「イエー」、「ソングス・フロム・ザ・スパークル・ラウンジ」、「ミラーボール」)のレップスは過去の呪縛から解き放たれ、迷いを吹っ切った “充実期” と言えるのではないかと思う。
 中でもグランジ/オルタナ・ロックやラップ/ヒップホップなどの非メロディアスな音楽が台頭してミュージック・シーンが大きく歪み、1980年代のキャッチーで陽気なハードロックが廃れていって、頂点を極めた感のあるレップスにさえも逆風が吹いていた1990年代中盤から2000年代初めにかけてリリースされたオリジナル・アルバムは、オルタナを意識しすぎて墓穴を掘った「スラング」やロックな衝動が感じられず心に残るメロディーもない「Ⅹ」(←10作目のこれは “テン” じゃなくて文字通り “バツ” ですな...)といった駄作凡作が目立つが、そんな中で奇跡的に往年の輝きを取り戻したかのようなレップス・サウンドを聴かせてくれるのが1999年にリリースされたこの「ユーフォリア」である。
 まずは何と言ってもアルバム1曲目を飾る超ハイスピード・ナンバー①「デモリッション・マン」のカッコ良さ、コレに尽きる!!! とにかく前作「スラング」がトホホな内容だっただけに、CD をトレイに収めてから音が出てくるまで “またオルタナっぽかったらイヤやなぁ...” と正直かなり不安だったのだが、そんな私の不安を木端微塵に打ち砕くかのようなノリノリのロックンロールが炸裂! サビの疾走感といい、爽快なコーラス・ハーモニーといい、ドライヴ感溢れるアグレッシヴなギター・プレイといい、まさに “レップスここに再生&完全復活!!!” と声を大にして叫びたくなるようなスーパー・ウルトラ・キラー・チューンだ。特に0分33秒の “Destination anywhere~♪” と力強くハモるところがたまらんたまらん(^o^)丿 そういえば車の中でこの曲が鳴った時、一緒に乗ってたウチの母親が満面の笑顔で “エエ曲やなぁ...元気でてくるわ(^.^)” と即座に反応したのにはビックリ(゜o゜) 80才を目前にしてこんな疾走系ハードロック・ナンバーを楽しめるとは、さすがは私の母親である。次はメタリカでも聴かせてみよう(笑) とにかく “メロディアスでありながらバリバリにロックする” というレップスの魅力が存分に発揮されており、このアルバム中の、いや90年代以降のレップスの最高傑作だと言い切ってしまおう。尚、ラストでギターを弾いているのは元F1ワールド・チャンピオンのデイモン・ヒルだ。
Demolition Man - Def Leppard


 テンション上がりまくりの①に続いてこの②「プロミセズ」の甘酸っぱいイントロが流れてきた瞬間に時間の概念が崩壊、あの「ヒステリア」が席巻した1980年代へとタイム・スリップしたかのような錯覚に陥る。「ヒステリア」や「フォトグラフ」、「アニマル」といった過去の名曲を想わせるような珠玉のメロディーが現れては消え、消えては現れるという感じの、どこを切っても哀愁舞い散るデフレパ節が堪能できる王道ナンバーで、お約束の分厚いコーラスも耳に心地良い。やっぱりレップスはこうでなくっちゃ!!! と言いたくなるような、まさに彼ら以外の何者にも創り得ないザ・ワン・アンド・オンリーな世界観を持った音楽として目の前に屹立するのだ。口の悪い連中はセルフ・コピーだとか言うかもしれないが、それがどーしたソー・ホワット? この曲はそんな批評が単なるタワゴトに聞こえるぐらいポジティヴな空気に満ちている。時代がどう変わろうと素晴らしい音楽は永久不変の輝きを放つという最高の見本がこのトラックだ。
Def Leppard - Promises Music Video


 ③「バック・イン・ユア・フェイス」もめっちゃ好き(^o^)丿 “オマエの目の前に戻ってきたぜ!” というタイトルはレップスの復活を信じて待ち続けたファンへの力強いメッセージとして心に響く。ハンド・クラッピングや “ヘイ!” という掛け声が印象的なこの曲はゲイリー・グリッターやスージー・クワトロを彷彿とさせるものがあり、 “ニュー・グラム・ロック” とでも呼びたくなるようなキャッチーなナンバーに仕上がっている。 “ユニオン・ジャック” 、 “シアー・ハート・アタック” 、 “ジャンピン・ジャック・フラッシュ” 、 “リーダー・オブ・ザ・パック” といったフレーズが飛び交う歌詞も楽しい。
Back in your face- Def Leppard


 ⑥「ペイパー・サン」は重厚でシリアスな曲想を持った大作で、めちゃくちゃヘヴィーなリフと一糸乱れぬコーラス・ハーモニーが圧倒的に素晴らしい。サビのメロディーは名曲「フーリン」のリサイクルだが、演奏の重心を下げることによってうねるようなグルーヴを生み出すことに成功している。哀愁を感じさせるエモーショナルなラストのギター・ソロもブリティッシュ・ロックの王道を行くものだし、演奏のスケールのデカさも特筆モノ。とにかくそのドラマチックな展開はめっちゃスリリングで、聴けば聴くほどグイグイ引き込まれていく名曲名演だ。こんな凄い曲を書けるロック・バンドはレップスの他にはちょっと思いつかない。
Def Leppard Paper Sun (fan video)


 T.レックスの「20th センチュリー・ボーイ」をパロッたようなタイトルの⑧「21st センチュリー・シャ・ラ・ラ・ラ・ガール」は思わず一緒に口ずさみたくなるようなキャッチーなメロディーをモダンな感覚でまとめ上げた名曲名演で、ライナーによると、最初のうちは “デフ・レパードの持ち味を最大限に活かしながら、しかもモダンな要素をふんだんに取り入れた曲作り” という難しいテーマの中で試行錯誤を繰り返していたらしいが、この曲の完成によってアルバムの明確な方向性が築かれていったという。イントロでおやっ?と思わせておいてAメロBメロで徐々に盛り上げていくという手法はお見事という他ないし、吸引力抜群のサビのメロディーや押し寄せる波のようなバック・コーラスも圧巻だ。
 他にも「ラヴ・アンド・ヘイト」を裏返しにしたような佳曲④「グッドバイ」や緊張感漲るインスト曲⑩「ディスインテグレイト」、超カッコ良いハードロック絵巻⑬「キングス・オブ・オブリビオン」といった素晴らしい楽曲が一杯詰まったこのアルバム、残念ながら全盛期の売り上げ枚数には遠く及ばなかったが、メロディーの弱い曲を数曲削って10曲ぐらいに絞り、もっと早い時期にリリースしていれば間違いなく大ヒットになっていただろう。発売時期や売り上げ枚数で言えば「アドレナライズ」までが “三部作” ということになるが、20世紀の最後を締めくくる1999年という年に彼らが自信を持って “-ia” で終わるアルバム・タイトルを付けただけあって、「パイロメニア」、「ヒステリア」と並ぶ真の “三部作” の完結に相応しいのは間違いなくこのアルバムだと思う。
Def Leppard - 21st Century Girl.mpg

Rock Of Ages ~The Definitive Collection~ / Def Leppard (Pt. 2)

2012-05-20 | Hard Rock
 この2枚組CD のディスク1が1995年にリリースされたベスト盤「ヴォールト」と選曲・曲順がほぼ同じという “ヒット曲集” なのに対し、ディスク2はさながら “裏ベスト” 的な様相を呈している。選曲に関して言えば、「ナウ」や「ワーク・イット・アウト」を入れるぐらいなら「カミン・アンダー・ファイアー」や「デモリッション・マン」を、カヴァーなら「ノー・マター・ホワット」なんかよりも絶対に「アクション」を入れろよ!とは思うが、こればっかりは個人的な嗜好の問題なので自家製ベストを CD-R に焼いて楽しんでいる。ということで、今日はディスク2からお気に入りのナンバー5曲をピックアップ;

②「レット・イット・ロック」
 彼らの 2ndアルバム「ハイ・アンド・ドライ」からはこのベスト盤に6曲も収録されているのだが、その “隠れ名盤” の1曲目を飾っていたのがこの「レット・イット・ロック」だ。バンドが頂点に向かって駆け上がっていく勢いを感じさせるハイスピード・チューンで、プロデューサーが同じロバート・ジョン・マット・ラングということもあって、ラフで荒々しいヴォーカル、ソリッドなギター、パワフルなドラムスから武骨なバック・コーラスに至るまで、同時期に大ヒットしていた AC/DC の「バック・イン・ブラック」を彷彿とさせるものがある。マット・ラングが徹底的に贅肉を削ぎ落としてガチガチに磨き上げたその硬質なサウンドは実にスリリングだ。
Def Leppard - Let It Go


③「ハイ・アンド・ドライ」
 2nd アルバムのタイトル曲「ハイ・アンド・ドライ」は、そのヘヴィーな曲想といい、シャープな音作りといい、「バック・イン・ブラック」(1980)に続いてマット・ラングがプロデュースした AC/DC の全米№1アルバム「悪魔の招待状」(1981)に入れたらぴったりハマりそうなタテノリ・ロックだ。古い音源ほどリマスターによる音質向上が目覚ましいのは理の当然だが、手持ちの「ハイ・アンド・ドライ」旧規格CDでは情けないぐらいの薄っぺらい音しか聴けなかっただけに、②③と立て続けに聴いてみてまるで違うテイクを聴いているかのような錯覚に陥ってしまった。ホンマにテクノロジーの進化は凄いわ... (≧▽≦)
Def Leppard - High 'N' Dry #Saturday Night# #HQ#


①「ロック・ロック」
 名作「パイロメニア」の1曲目を堂々と飾っていたのがこの「ロック・ロック」という曲。私は一連のビデオ・クリップでレップスを知り、「フォトグラフ」、「ロック・オブ・エイジズ」、「フーリン」といったシングル曲目当てで「パイロメニア」を買ったのだが、いきなり予想もしていなかったこの曲のパワーに圧倒されてブッ飛んだのを今でもよく覚えている。何と言ってもイントロのシンセを切り裂くように炸裂するギラギラしたギターがめちゃくちゃカッコイイし、若き日のジョー・エリオットのハイトーン・シャウトも生々しい。ノリ一発でガンガン攻める姿勢が名演を生んだのだろう。どこを切っても熱いロック・スピリットが迸り出るような、タイトル通りのストレートアヘッドな疾走系ロックンロールだ。
Def Leppard Rock! Rock! Till You Drop Music video


⑧「ウィミン」
 この曲は「パイロメニア」の大ヒットを受けて4年ぶりにリリースされた待望のアルバム「ヒステリア」からの 1st シングルということで期待も大きかったのだが、全米チャートでは全くの不発(←何と80位までしか上がらんかった...)に終わってしまい、そのせいか過小評価されているキライがある。まぁ一般ピープルにとってはサウンドが余りにもヘヴィーすぎるし、 “女、女、女なしでは生きられない~♪” などというこっ恥ずかしい歌詞(笑)もラジオではかかりにくいのでシングルには向かないとは思うが、綿密に練り上げられた重厚でスケールのデカいサウンド・プロダクションといい、ブリティッシュ・ロックらしいエモーショナルなギター・ソロといい、私にとっては「ヒステリア」の中で5指に入る愛聴曲。特に後半部の盛り上がりようは凄まじく、幾重にも重なっていくリフレインのヘヴィーネスは痛快無比だ。
Def Leppard - Women


⑩「スラング」
 1996年にリリースされたアルバム「スラング」は当時の音楽界を席巻していたグランジ/オルタナ・ロックに迎合したかのようなダークな作風や、収録曲のクオリティーが過去の作品群と比べて遥かに落ちるせいもあってあんまり好きになれないが、このタイトル曲だけは別。最初、ファンキーなリズム・カッティングが生み出すモダンなビートに乗ってジョー・エリオットのラップ調ヴォーカルが飛び出してきた時は “何じゃいコレは...(゜o゜)” と思ったが、何度も聴くうちに脳内リフレインを起こし、 “コレはコレでめっちゃオモロイやん!” とすっかり気に入ってしまった。ラップ/ヒップホップは私が生理的に受け付けない音楽ジャンルの一つなのだが、レップスの手にかかると楽しく聴けてしまうのだからあら不思議... 彼らならではのポップなメロディー・センスと美麗コーラス・ワーク、そして息もつかせぬパワー・コードの波状攻撃が、有象無象の凡百ヒップホップ・ロックとは激しく一線を画すカッコ良いダンサブル・ロック・ナンバーに仕上げているのだ。とにかく騙されたと思ってこの曲をリピート再生してみて下さい... 絶対にハマりまっせ(^o^)丿
Def Leppard - Slang Official Music Video 潤・1996

Rock Of Ages ~The Definitive Collection~ / Def Leppard (Pt. 1)

2012-05-17 | Hard Rock
 前回に続いて今日もデフ・レパードだ。実は先月あたりからモット・ザ・フープルやT.レックス、スウィートといった70年代前半のグラム系ブリティッシュ・ロックにどっぷりとハマっており、そこからデフ・レパードによる70'sトリビュート盤「Yeah!」へと繋がっていったのだが、「Yeah!」をヘビロテで聴いているうちに旧作も聴きたくなり、三部作の中でも最高傑作と信ずる「パイロメニア」のCDを久々に取り出して聴いてみるとコレが実に貧弱極まりない音でガッカリ(>_<) よくよく考えてみると私の手持ちの盤はCDがまだ3,200円もした80年代に作られた “CD黎明期” のモノなので音がショボイのも当然だ。
 そこでビートルズやクイーンのように最新の再発盤ならきっとリマスターされて音が良いだろうと考え色々調べてみると、日本盤は例のSHMとかいう “自称” 高音質CD(笑)で3,000円近いボッタクリ価格なので論外、どうやら2005年に北米エリアのみでリリースされた「ロック・オブ・エイジズ ~ザ・デフィニティヴ・コレクション~」という2枚組ベスト盤の音が抜群に良さそうだ。早速ゲットして聴いてみると、コレがもう凄いの一言!!! ギターの鋭い切れ込みやドラムスの強烈なアタック音なんかもう雲泥の差で、それまで小さくまとまっていたサウンドがドーンと目の前に屹立するような感じがする。しかもサウンドはラウドでありながらどこまでもクリアー&クリスプで、そのリマスター効果は歴然だ。
 ということでブログでもこの2枚組ベストをディスク1と2の2回に分けて大特集。今日はまずヒット曲満載のディスク1から、特に思い入れの深い5曲をピックアップしてみた。

②「フォトグラフ」
 この「フォトグラフ」こそが私がレップスと出会った運命の1曲で、「ベスト・ヒットUSA」の Star Of The Week のコーナーで初めてこの曲のビデオ・クリップを見た時の衝撃は忘れられない。特にジョー・エリオットが着ていた鮮やかなユニオン・ジャック・シャツのインパクトは強烈だったし、マリリン・モンローを扱ったサイド・ストーリーも印象的だった。エッジの効いたギター・リフ、キャッチーなメロディー、アグレッシヴな演奏の中に不思議なくらいぴったりハマる見事なコーラス・ハーモニーと、レップスの魅力をギュッと凝縮したようなキラー・チューンだ。
Def Leppard - Photograph


⑬「ロック・オブ・エイジズ」
 アルバム「パイロメニア」から「フォトグラフ」に続く 2nd シングルで、ノリの良い「フォトグラフ」とは又違った魅力に溢れたパワフルなメタル・チューン。私が生まれて初めてヘッド・バンギングした記念すべき1曲だ(笑)。この曲の一番の聴き所は何と言ってもリック・アレンの爆裂ドラミングだと思うが、平板な音がトホホな旧規格 CD から大きくパワー・アップしたこのリマスター盤のサウンドは凄まじく、まるでラオウの天将奔烈、北斗剛掌波の直撃を食らったような感じである。ハードロック・ファン冥利に尽きるトラックと言えるだろう。
Def Leppard - Rock of Ages 1983 Video stereo widescreen


①「ポァ・サム・シュガー・オン・ミー」
 アルバム「ヒステリア」は最初のうちは売り上げもスロー・ペースで前作「パイロメニア」にも届かないような情勢だったように記憶しているが、3rd シングルであるこの曲が突如として大ブレイク。それが停滞気味だったアルバム・セールスに火をつけ、結局この曲が全米2位にまで上がった7月にアルバムの方もリリース後1年経って(!)ついに悲願の全米№1に輝いた。「ヒステリア」が “ハードロック界の「スリラー」” 的なモンスター・アルバムになったのは一にも二にもこの曲に負うところが大きいと言えるだろう。クイーンの「ウィー・ウィル・ロック・ユー」を想わせるヘヴィーーなリズムが支配するこの曲は、サビに向かってテンションが上がっていくスリリングな展開がたまらなくカッコイイ(^o^)丿 
Def Leppard - Pour Some Sugar On Me


⑪「アーマゲドン」
 「ヒステリア」からの6枚目のシングルで全米3位まで上がった大ヒット曲で、1分30秒から始まる “海女 下痢で 海に出れねぇ 今朝も下痢で~♪” はタモリの空耳アワー史上屈指の傑作だ。今回のリマスターで音圧が飛躍的にアップ、我が家のアルテック・ヴァレンシアの38cmウーファーから迸り出るリック・アレンのドラミングの迫力はまさに圧巻の一言で、部屋全体が地鳴り鳴動する中でレップスの美麗コーラス・ハーモニーを聴く快感は筆舌に尽くし難い。
Def Leppard - Armageddon It Official Music Video・1988


⑨「ロケット」
 「ヒステリア」からの7枚目のシングルで、アルバム・リリースからすでに1年半以上が経っていたにもかかわらず全米12位まで上がったのだから当時のレップスの勢いが分かろうというモノだ。やや冗長だったアルバム・ヴァージョンを絶妙に編集した Lunar Mix をシングル・ヴァージョンにしたのも功を奏したのだろう。彼らがリスペクトするT.レックスやスウィート、デビッド・ボウイといったブリティッシュ・ロックのスーパースター達が多数フィーチャーされたビデオ・クリップも見所満載で、何度見ても飽きない。尚、ここに収録されている Visualize video edit はシングル・ヴァージョンの間奏を20秒ほどカットしてスッキリさせたものだ。
Def Leppard - Rocket

Yeah ! / Def Leppard

2012-05-13 | Hard Rock
 前回の「ロックンロール黄金時代」つながりで、今日は大好きなデフレパさんだ。私は彼らの大ファンで、リアルタイムで聴いて大きな衝撃を受け80年代ハードロックの理想形と確信した「パイロメニア」、1枚のアルバムから7曲ものシングル・ヒットを出して全米だけで1,300万枚を売り上げた “ハードロック界の「スリラー」” 的存在の「ヒステリア」、80'sデフレパ・サウンドの集大成とも言える「アドレナライズ」の3部作は私にとって “超” の付く愛聴盤なんである。
 しかし残念なことに、90年代に入ってB面曲&未発表曲集「レトロ・アクティヴ」とベスト盤「ヴォールト」という2枚の企画物アルバムで過去を総括した後にリリースされた一連の作品からはそれまでのマジックがすっかり消え失せていた。「ユーフォリア」にはまだ随所に “らしさ” が感じられて結構好きなのだが、それとて上記3部作を超えるようなものではなかったし、「スラング」と「Ⅹ」に至っては、収録曲のクオリティーといい、サウンド・プロダクションの方向性といい、私が夢中になったデフ・レパードの面影はそこにはなく、 “やっぱりマット・ラングがプロデュースせなアカンのか...” “スティーヴ・クラークがおらんとエエ曲が書けへんのか...” とガッカリさせられたものだった。
 しかし2006年にリリースされた彼ら初のカヴァー・アルバム「Yeah!」で往年のサウンドが見事に復活! それまで10年間の停滞がウソのように溌剌としたサウンドを聴かせてくれているのだ。メロディーの大切さを忘れたかのような無味乾燥な楽曲が大手を振ってバッコした90年代以降の不毛のロック・シーンの中で自らが進むべき方向性を見失いかけていたデフ・レパードだったが、若い頃に聴いて育ったブリティッシュ・ロックの名曲たちをカヴァーすることによって迷いが吹っ切れ、蘇生したのかもしれない。
 そのせいだろうか、このアルバムには “悩みに悩み、考えに考えた末に作り上げました感” があった最近の3作とは違って音楽を演る悦びがストレートに伝わってくるような名演が目白押しで、そのことは「Yeah!」という肯定的なアルバム・タイトルからも伝わってくる。まぁ「イエーイ!」などというアホ丸出しのカタカナ邦題(←Yeah の正しい発音は「ィエー」か「ィヤー」でしょ?)を平気で付ける日本のレコード会社のバカさ加減には呆れてモノも言えないが、中身の方はレップス会心のカヴァー集に仕上がっている。
 楽曲は1970年代前半のグラム・ロック・ナンバーを中心に幅広く選ばれており、この時代のブリティッシュ・ロックが大好きな私のような人間にとっては言うことナシの選曲だ。しかも「ゲット・イット・オン」ではなく「20thセンチュリー・ボーイ」、「すべての若き野郎ども」ではなく「ロックンロール黄金時代」、「フォックス・オン・ザ・ラン」ではなく「ヘル・レイザー」というように、敢えて№1ヒットや超有名曲を避けながらもロック・スピリットに溢れた隠れ名曲を選んでいるあたりに彼らの拘りとロックへの深い愛情が感じられる。
 ボートラも含めた全16曲中、私が最も気に入っているのがスウィートの⑤「ヘル・レイザー」だ。彼らは筋金入りのスウィート・ファンで、「レトロ・アクティヴ」でも「アクション」をカヴァーしていたが、この「ヘル・レイザー」はそれをも上回るスリリングな展開で、いきなり “Look out!” というジョーのシャウトからパワー全開で一気に突っ走る痛快無比なロック・チューンに仕上がっている。エッジの効いたギター・リフも聴く者をロックな衝動に駆り立てる超カッコ良いトラックだ。
Hellrasier- Def Leppard


 モット・ザ・フープルの⑩「ザ・ゴールデン・エイジ・オブ・ロックンロール」も最高だ。オリジナルの持っていたグルーヴ感を活かしながら、彼らの十八番であるあの重厚で美しいコーラス・ハーモニーで “デフレパ印” の刻印を押す... 何という見事なカヴァーだろう!!! ⑤と同様にエッジの効いたギター・リフがこの名曲に更なるドライヴ感を与えているし、中間部の簡潔にして明瞭なギター・ソロも最高だ。尚、有名なイントロの語りの部分は何とイアン・ハンター本人がやってくれたらしい(゜o゜)
The Golden Age of Rock & Roll


 このアルバムの中で最も意表を突かれた選曲がブロンディーの③「ハンギング・オン・ザ・テレフォン」だ。最初に曲名を見た時は “何でデフレパがブロンディーを?” と不思議に思ったが、聴いてみるとこれがめちゃくちゃエエのだ。もちろんブロンディーはブリティッシュ・ロック・バンドではないが、そんなことはどうでもよくなるぐらいにこのトラックは素晴らしい!!! ポップな原曲をデフレパ流の分厚いサウンド・プロダクションによって切れ味抜群のロックンロールに仕上げているあたりはもうさすがという他ない。ハードロック・バンドでありながら大衆の圧倒的な支持を勝ち取った彼らのポップ・センスが最良の形で活かされたキラー・チューンだ。
Hanging on the Telephone- Def Leppard


 上記が私的トップ3で、コレ以外ではマーク・ボランのグルーヴを21世紀に蘇らせた感のあるT.レックスの①「20thセンチュリー・ボーイ」、グラム色の強い選曲の中で異彩を放つフリーの⑨「リトル・ビット・オブ・ラヴ」、名曲「ロケット」の元ネタとなったジョン・コンゴスの⑫「ヒーズ・ゴナ・ステップ・オン・ユー・アゲイン」、アグレッシヴなギター・リフが唸りを上げるシン・リジィの⑬「ドント・ビリーヴ・ア・ワード」、ノリ一発の快感がたまらないイギー・ポップ&ザ・ストゥージズの⑯「サーチ・アンド・デストロイ」あたりが気に入っている。
 CDブックレットには、リック・サヴェージが「クイーンⅡ」、ヴィヴィアン・キャンベルがT.レックスの「エレクトリック・ウォリアー」、ジョー・エリオットがデビッド・ボウイの「ジギー・スターダスト」の裏ジャケ(!)、リック・アレンがルー・リードの「トランスフォーマー」、フィル・コリンがイギー・ポップ&ストゥージズの「ロー・パワー」というように、70's名盤ジャケットのコスプレで得意げに(?)ポーズをとる各メンバーの写真が載っており、ご丁寧にリング・ウェアー(←アナログ・レコード・ジャケットの円形擦れ)処理まで施してあるという徹底した拘りように唸ってしまうが、このあたりにも彼らのルーツ・ミュージックへの深い愛情とそのユーモアのセンスがよく表れているし、CDを取り出したら現れる三角形のデフレパ・ロゴとプリズム光線がピンフロ「狂気」のパロディーになっているところにも彼らの遊び心が感じられて実に微笑ましい。とにかくメンバー自身が楽しんで作ったというのが手に取るようにわかるこのアルバム、デフ・レパード・ファンだけでなく70年代ロック・ファンにも超オススメの傑作カヴァー集だ。
20th Century Boy Def Leppard with Brian May Queen Live in 2006

ロックンロール黄金時代 / モット・ザ・フープル

2012-05-08 | Rock & Pops (70's)
 私がモット・ザ・フープルというバンドの存在を初めて知ったのは高校生の時だった。彼らはシングル・ヒット曲を連発するタイプのバンドではなかったので、ヒット・チャート番組が主な情報源だった私はそれまで彼らの曲を聴いたことがなかったのだが、音楽雑誌の「ロック名盤○○」とかいう記事のライヴ名盤特集で彼らの「ライヴ」が取り上げられているのを読んで興味を持ったのだ。当時はもちろん今のようにすぐにネットで試聴できるような恵まれた環境ではなく、ライターの文面からどんな音かを想像して自分の好みに合いそうなら安い中古盤を探して買うようにしていたのだが、 “聴く者をアブナイ衝動に駆り立てる暴力的なロックンロール” という表現や、「華麗なる煽動者」というインパクト抜群の邦題、そしてその風変わりなバンド名が気に入って、すぐに日本橋のワルツ堂へアルバムを買いに行った。
 しかし残念ながらお目当てのライヴ盤は置いておらず、代わりに彼らの代表曲と言われる「オール・ザ・ヤング・デューズ」(邦題:すべての若き野郎ども)を収録した同名のスタジオ録音盤が安かったので買って帰り、 “まぁライヴ盤とはちゃうけど、その暴力的なロックンロールとやらで思いっ切り煽動してもらおうやないか...” との期待に胸を膨らませてレコード盤に針を落とした。しかし聞こえてきたのは暴力的とは程遠い端正なグラム・ロック・サウンドで、事前の期待とのあまりのギャップに愕然とし、しっかりと聴き込みもせずに2・3回聴いて売っ払ってしまった。今の耳で聴くとイントロのギターの泣き加減とかサビの盛り上がりとか中々エエ感じの名曲なのだが、ひたすら “暴力的なロックンロール” を求めていた当時の私(笑)には刺激が足りず平板に聞こえたのだった。
 そしてその後しばらくの間は “モット・ザ・フープル = 期待外れ” と頭の中に刷り込まれてしまっていたのだが、そんな私の誤解を木端微塵に打ち砕いたのがこの「ゴールデン・エイジ・オブ・ロックンロール」(邦題:ロックンロール黄金時代)という曲だった。確かラジオの “ブリティッシュ・ロック特集” みたいな番組で流れてきたのを偶然耳にしたのだが、そのあまりのカッコ良さにブッ飛んだのを今でもよく覚えている。それはワイルド&アグレッシヴなサウンドでグイグイ押してくる痛快無比なロックンロール・ブギーで、 “1曲まるごとノリの塊” といっても過言ではないぐらいの圧倒的なグルーヴが脳の快楽中枢を刺激するのだ。この理屈を超えた生理的な快感こそロックンロールの原点だろう。ボブ・ディランの影響を感じさせるイアン・ハンターのヘタウマ・ヴォーカルがこれ又実にエエ味を出しており、私はこの曲こそが70年代ブリティッシュ・ロックが生んだ偉大なるロックンロール・アンセムだと思う。

MOTT THE HOOPLE - The Golden Age Of Rock And Roll (1974 UK TV Appearance) ~ HIGH QUALITY HQ ~


 そんな大名曲であるにも関わらずカヴァーが少ないのはモット・ザ・フープルによるオリジナル・ヴァージョンがあまりにも完璧すぎて誰も手を出せないからではないだろうか? だからこそデフ・レパードがアルバム「Yeah!」でオリジナルへのリスペクトに溢れたカヴァーを聴かせてくれた時はめちゃくちゃ嬉しかったし、 “イエロー・モンキー祭り” の時に取り上げたフープルへのトリビュート・アルバム「モス・ポエット・ホテル」の中で甲本ヒロト率いるハイロウズがカヴァーしたヴァージョンもロックンロールへの愛情がビンビン伝わってくる名カヴァーだ。
 「最近どう?」
 「レコード買ってるよ」
 「レコードっつーとやっぱ何かね?」
 「やっぱロックンロールしかないね」
 「何つってもロックンロール黄金時代~♪」
というイントロのダイアローグから一気に盛り上がっていき、 “バンバンバン~♪” へとなだれ込む展開なんかもうたまらんたまらん(≧▽≦)  やっぱりロックンロールは最高やね...(^o^)丿

THE HIGH LOWS THE GOLDEN AGE OF ROCK'N ROLL ~ロックンロール黄金時代~

Fly Me To The Moon / Doris Day

2012-05-04 | Jazz Vocal
 断続的に続けてきた “ドリス・デイ祭り” もいよいよ最終回。今日は1961年以降の作品ということで、まずはアルバム・ディスコグラフィー・パート3だ。

【Doris Day Discography Pt.3: 1961- 】
61 Bright And Shiny
   I Have Dreamed
62 Duet
   You'll Never Walk Alone
   Billy Rose's Jumbo [Soundtrack]
63 Annie Get Your Gun [Soundtrack]
   Love Him!
64 The Doris Day Christmas Album
   With A Smile And A Song
65 Latin For Lovers
   Sentimental Journey

1994 The Love Album (1967年にレコーディングされ、その後ずっとお蔵入りしていたもの)
2011 My Heart (1980年代半ばにレコーディングされた未発表音源集)

 1960年代の彼女はまさに歌手としての円熟期と言ってよく、ポピュラーなヒット曲よりもジャズやラテンを歌ったものに傑作が多いように思う。そんな中でも特に気に入っている5曲をピックアップしてみた。

①Fly Me To The Moon
 数多いドリス・デイのアルバムの中で私が最高傑作と信じて疑わないのが1965年にリリースされた「ラテン・フォー・ラヴァーズ」。ラテン曲集という企画自体は当時の世界的なボサノバ・ブームに便乗したような安直なものだが、ボッサの美しいメロディーと彼女のナチュラルな歌声がベストのマッチングを見せ、ドリス・デイの、いや、星の数ほど存在する女性ヴォーカル・アルバムの中でも屈指の大名盤に仕上がっている。
 A面1曲目の「コルコヴァード」からもう彼女の他のアルバムとは違う一種独特なムードに支配されていて驚かされるが、それに続くこの「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」を初めて聴いた時の衝撃は今でも忘れられない。必殺のテンポ設定でこれ以上ないというぐらい物憂い雰囲気をバッチリと表現したドリス・デイのヴォーカル、絶妙なタイミングで絡んでくるピアノのオブリガート、哀愁舞い散るフルート・ソロ、バックでしっかりとボッサ・リズムを刻むギター... そのすべてが音楽的・必然的・有機的に結びつき、一体となって響いてくるこの快感は筆舌に尽くし難い(^o^)丿
 ノスタルジックな「センチメンタル・ジャーニー」やスインギーな「ブロードウェイの子守唄」とは又違ったドリス・デイのヴォーカルの奥深さを私に教えてくれたのが、他でもないこの曲なのだ。
Doris Day - Fly me to the moon


②How Insensitive
 アルバム「ラテン・フォー・ラヴァーズ」は全12曲、どれを取っても捨て曲ナシの愛聴盤なのだが、そんな中で上記の「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」と並ぶキラー・チューンがこの「ハウ・インセンシティヴ」だ。まるで身をよじるかのような情緒纏綿たる歌い方ながら決してベトつかないというか、官能的でありながらあくまでもナチュラルな彼女の歌声は聴いていてとても気持ち良く、女性ヴォーカル・ファンにとってはまさに悦楽の世界である。緑の草原をバックに、彼女のブロンドの髪とナチュラルな風合いの白シャツのコントラストが目に眩しいジャケットもエエ感じだ。
 たまたま先々月のG3でこの曲を取り上げた時、plincoさんが “昔、よみうりテレビの深夜番組の映画紹介のバックでこの曲がかかってた...” とおっしゃったので早速ネットで調べてみたら、「CINAMA だいすき!」という番組のBGMとして使われていたらしく、しかも多くの方がブログで取り上げておられたのにはビックリ(゜o゜) 今とは違ってテレビ番組のクオリティーも格段に高かったということだろう。YouTube にもアップされてたので貼っときます↓
CINEMAだいすき!OP(第7集 第1夜『アトミックカフェ』) 【←冒頭の高砂殿のCMに時代を感じますね】


③Close Your Eyes
 以前「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」特集の時にも取り上げたアルバム「デュエット」は、アンドレ・プレビン・トリオの伴奏でドリス・デイのヴォーカルが楽しめるジャジーな1枚。ピアノとのデュオでスローな曲を淡々と歌うトラックはハッキリ言って苦手だが、アルバム冒頭を飾るこの「クローズ・ユア・アイズ」はピアノ・トリオがスイング全開で彼女をサポート! いきなりレッド・ミッチェルのベースがドスドスと切り込んできて、そこにドリス・デイのヴォーカルが寄り添い、やがてブラッシュがスルスルと滑り込んでくるのを待ちかねたかのようにアンドレ・プレビンのピアノが演奏に絡んでいくイントロ部分がめちゃくちゃカッコイイ(^o^)丿 絶妙なタイミングで楽器が一つずつ加わっていくこのスリリングな瞬間こそがジャズを聴く醍醐味だ。ただ、CDは左右泣き別れの不自然なステレオ・ミックスなので、このアルバムはモノラルのオリジナル盤で聴くことにしている。
Doris Day Photos, "Close Your Eyes"


④You're Good For Me
 この「ユアー・グッド・フォー・ミー」は上記のアルバム「デュエット」でのプレビン・トリオとの一連のセッションでレコーディングされたアウトテイクで、再発CDのボーナス・トラックの1曲として初めて陽の目を見たのだが、コレがもう何でアルバムに収録されなかったのか不思議なぐらいの逸品なのだ。多分スロー主体の他の曲とのバランスを考えてのことだろうが、奮然とスイングするプレビン・トリオをバックにドリス・デイのヴォーカルが冴えわたるスリリングな歌と演奏で、この路線でアルバム1枚まるごとやってくれていたらとんでもなく凄いことになっていただろう。とにかく彼女の事をノスタルジックなイージー・リスニング歌手と勘違いしている人はコレを聴いたら驚倒すること間違いなし(^.^)  「デュエット」のCDを買うなら12曲入りの正規盤よりもこの曲を含めた5曲のボートラを含むCollectablesレーベルの再発盤(2001年)の方が断然お買い得だ。
Doris Day sings You're Good For Me


⑤My Romance
 最近 YouTube でドリス・デイ関係の映像を色々漁っていて偶然見つけたのがコレ。彼女が私の大好きな「マイ・ロマンス」を歌っていたとは知らなんだ... shiotch7一世一代の不覚である(←そんな大袈裟な...)。調べてみると1962年に公開された「ビリー・ローズのジャンボ」というミュージカル映画にドリス・デイが出演していてそのサントラ盤の中に入っていたものらしいが、これがもう蕩けるような歌声で心に沁みる名唱なのだ。たかがサントラ盤と侮って無視していた自分の不明を恥じ、慌ててアマゾンで購入した次第。ジャンルを問わずもう新譜を聴く気はサラサラないが、古い音源の中にまだまだこういう新発見があるから音楽ファンはやめられませんな。
Doris Day and Stepehn Boyd - My Romance-Billy Rose's Jumbo Movie-1962