shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

21世紀の精神正常者たち / モルゴーア・クァルテット

2018-05-20 | Cover Songs
 最近はどこのサイトを覗いても色んな広告が出てきて鬱陶しいことこの上ない。私は気が短い方なのですぐにイラッときて×をクリックして次々と消していくのだが、先日たまたま画面に出てきたヤフオクの広告には思わず手が止まってしまった。そこに出ていたのは実写顔写真を使ったキング・クリムゾンの「宮殿」パロジャケで、パソコンの画面からすればほんの小さな広告だが、それでもあのグロテスクなジャケット・デザインは吸引力抜群。これを見て “何か面白そうやな...”と思わなければロック・ファンではない。
 とにかく「宮殿」大好き & パロジャケ大好きの私がこのジャケットを目にしてスルーできるワケがない。早速クリックしてみるとそれはモルゴーア・クァルテットというクラシックの弦楽奏者4人組のアルバムで、タイトルは「21世紀の精神正常者たち」となっている。アマゾンのカスタマーレビューには “キング・クリムゾンの不朽の名作を精神の異常な(笑)クラシック奏者が演奏したもの” と書いてあったが、まさに言い得て妙というべきだろう。
 クラシック奏者がロックを演奏するというコンセプトは1966カルテットのビートルズ・カヴァーを始めとして過去に何度も目にしてきたので特に驚かないが、素材にプログレを選んでいるところに興味を引かれ、YouTubeで試聴してみることにした。それがコレ↓だ。
モルゴーア・クァルテット - 21世紀のスキッツォイドマン


 う~ん、コレは中々面白い。コメントを読むとメンバーはみんな日本ではトップクラスの実力を誇る超一流の奏者らしいが、確かに原曲の持つ狂気を孕んだ曲想を実に巧く表現しており、緊張感漲る演奏が展開されている。これはメンバーの腕前ももちろんだが、それ以上に“プログレに対する深~い理解と限りなき愛情” の成せるワザといっていいだろう。運良くメルカリで800円で出ているのを見つけたので買ってみた。
 収録曲は10曲で、「21世紀の精神異常者」「クリムゾン・キングの宮殿」「スターレス」というクリムゾンの3曲を始め、フロイド2曲、ジェネシス2曲、ELP1曲、イエス1曲、そして何故かメタリカ1曲(笑)となっている。私的にはクリムゾン以外ではフロイドの「マネー」とELP、そして意外なことにメタリカのカヴァーが面白かったが、中でも ELPの「悪の教典#9 第1印象 パート1」のスピード感溢れる演奏はピカイチだ。プログレ・アーティストの中でもクラシック音楽との相性抜群なELP作品ならではの名カヴァーと言えるだろう。下のライヴ動画では27:17あたりから始まるので一度ご覧あれ。私のように “クラシックは退屈で眠くなるから嫌い” という人間でも問題なく楽しめるアグレッシヴな演奏に圧倒されるだろう。
 そしてラストの曲はメンバー曰く “私たちモルゴーア・クァルテットが一番得意とするというか、一番イッちゃう曲” である「21世紀の精神異常者」(37:30~)。メンバー全員のプログレ愛がビンビン伝わってくる名演だ。
モルゴーア・クァルテット プログレ名曲選


【おまけ】クリムゾンのカヴァーと言えば以前紹介した女性5人組のストリングス・ユニット、SEASONS による名演も忘れ難い。それにしてもクラシック奏者のクリムゾン好きは異常(笑) 私のようなド素人には計り知れないような高いレベルで、原曲の旋律に潜む何かが彼ら彼女らを惹きつけてやまないのかもしれない。
SEASONS@ 21世紀のスキツォイド・マン

Dedicated To The One I Love / Linda Ronstadt

2015-03-17 | Cover Songs
 このブログの読者のみなさんはよくご存じのように私はオールディーズのカヴァー・ヴァージョンが大好きなのだが、50's~60'sポップ・クラシックスのカヴァーを歌わせたらリンダ・ロンシュタットの右に出る者はいない。エルヴィスの「ラヴ・ミー・テンダー」(←私の友人のサムが “hauntingな歌声” だと絶賛してた...)をはじめ、バディ・ホリーの「イッツ・ソー・イージー」や「ザットル・ビー・ザ・デイ」、チャック・ベリーの「バック・イン・ザ・USA」、ロイ・オービソンの「ブルー・バイユー」、エキサイターズの「テル・ヒム」、マーサ&ザ・ヴァンデラスの「ヒート・ウエイヴ」、ドリス・トロイの「ジャスト・ワン・ルック」など、ノリノリのロックンロールからしっとりとしたスロー・バラッドに至るまで、抜群の選曲センスと絶妙なアレンジ、そして何よりもその卓越した歌唱力と表現力によって楽曲の魅力を余すところなく引き出し、オリジナルに勝るとも劣らない素晴らしい作品に仕上げている。さすがは “カヴァーの女王” リンロン様だ。
 彼女はその長いキャリアにおいてカントリー、ロック、ジャズ、ラテンと様々なジャンルのアルバムを出してきたが、そんな彼女が1996年にリリースしたのがこの「デディケイテッド・トゥ・ザ・ワン・アイ・ラヴ」(邦題:愛の贈りもの)というララバイ・アルバム。 “子守唄集” ということもあってか一般の音楽ファンにはあまり知られていないようだが、私はこのアルバムが大好きだ。
 まずは何と言っても②「ビー・マイ・ベイビー」と⑤「ベイビー・アイ・ラヴ・ユー」というロネッツの名曲カヴァーが2曲も入っているのが嬉しい。大好きなロネッツの曲を、大好きなリンロンのウィスパー・ヴォイスで聴ける幸せを何と表現しよう? ウォール・オブ・サウンドというコーティングを取っ払い、曲の髄を見事に引き出したリンロンのハートウォーミングなヴォーカルと幾重にも織りなす美しいコーラス・ハーモニーが聴く者をやさしく包み込む。こんな「ビー・マイ・ベイビー」が聴けるなんて、さすがのフィル・スペクターも想像すらしなかっただろう。フランク・ミルズの「愛のオルゴール」みたいなイントロが面白い「ベイビー・アイ・ラヴ・ユー」も実にユニークなアレンジで、リンロンとバック・コーラスの絡みがたまらんたまらん...(≧▽≦)  それでは心にポッと灯がともるような癒し系女性ヴォーカルで聴くロネッツ・トリビュート2連発をどーぞ。
Linda Ronstadt - Be My Baby

Baby I Love You / Linda Ronstadt


 ロネッツの2曲以外にもジョン・レノンもカヴァーした⑦「エンジェル・ベイビー」やクイーンの⑧「ウィー・ウィル・ロック・ユー」を見事にララバイ化しているが、私が特に気に入っているのがビーチ・ボーイズの③「イン・マイ・ルーム」とビートルズの⑪「グッド・ナイト」の2曲で、どちらも彼女のウィスパー・ヴォイスを上手く活かした繊細なアレンジによってオリジナルに勝るとも劣らない名カヴァーに仕上がっており、入眠剤がわりに聴けば安らかな眠りに誘われること間違いなし。いや~、これはホンマにたまらんわ(^.^)  やっぱりリンロンはエエですなぁ...
Linda Ronstadt - In My Room (Davey Boy) HQ

Linda Ronstadt - "Good Night" (Beatles Cover)
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It's The Girls / Bette Midler

2015-03-04 | Cover Songs
 Divine Miss M(素敵なミスM)こと、ベット・ミドラーは現役女性シンガーで私が最も好きな一人である。初めて彼女の歌を聴いたのは1979年の「ザ・ローズ」で、当時バリバリのハードロック・ファンだった私でさえも “何ちゅうエエ曲や...” とこうべを垂れて聴き入ったものだった。それから10年ほど経ってちょうど湾岸戦争が激しさを増していた頃、今度は彼女が平和への祈りを込めて切々と歌う「フロム・ア・ディスタンス」に感動し、私の中では“ベット・ミドラー = 素晴らしいバラッド・シンガー” というイメージが出来上がっていった。
 そんな私の固定観念を良い意味で打ち砕いてくれたのが2003年にリリースされた「ベット・ミドラー・シングス・ザ・ローズマリー・クルーニー・ソングブック」で、バリー・マニロウとのデュエット曲「オン・ア・スロー・ボート・トゥ・チャイナ」を聴いてその軽妙洒脱なヴォーカルがめちゃくちゃ気に入り、その次に出た「シングス・ザ・ペギー・リー・ソングブック」と共に “古き良き時代のアメリカン・ポピュラー・ミュージック” をコンテンポラリー感覚で楽しめる粋なアルバムとして愛聴してきたのだ。
 そして去年の12月、ビートルズのUKシングル盤蒐集が一段落して次のターゲットを物色していた時にたまたまネットで見かけたのが彼女の最新アルバム「イッツ・ザ・ガールズ!」のジャケットだった。これってどこをどう見てもベット・ミドラー版 “一人ロネッツ” ではないか! これで面白そうだと思わなければガールグループ・ファンではない。 “おぉこれは...” と色めきたった私は早速 YouTube でチェック、そこで見つけたのがこの↓ trailer(ダイジェスト編集の予告編)だ。
Bette Midler - It's The Girls Album Trailer


 エキサイターズの「テル・ヒム」、シフォンズの「ワン・ファイン・デイ」、ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」、ビートルズもカヴァーしたシュレルズの「ベイビー・イッツ・ユー」、コーデッツの「ミスター・サンドマン」、そしてスプリームズの「ユー・キャント・ハリー・ラヴ」と、まるで私のために選曲されたかのように我が愛聴曲が並んでいる。しかもこれらのガール・グループ・クラシックスが持つウキウキワクワク感をこれ以上ないと思えるぐらい見事に表現しているのだからたまらない(≧▽≦)  私はすぐにこのCDを注文した。
 それにしても何という名曲・名唱の数々だろう! ベット・ミドラーってたしか70歳近かったと思うのだが、年齢的な衰えを全く感じさせない声量で “音楽が最高に楽しかったあの時代” の名曲の数々を現代によみがえらせている.。下に貼り付けたのはアメリカのTVショーに出演してこのアルバムからのリード・シングルである「ビー・マイ・ベイビー」を歌うベットの動画だが、彼女の表情や歌い方からコーラス隊の振り付けに至るまで、どこをとってもオリジナルに対する敬意と愛情に満ち溢れていて嬉しくなってしまう(^o^)丿 何よりもベット自身がまるで10代の頃に戻ったかのように嬉々として歌っているとことがいい。音楽ってこんなに素敵なものだったんだ... と改めて実感させてくれる素晴らしいパフォーマンスだ。曲が終わった後、司会者がロネッツの振り付けをマネしながら “僕にもコレやらせてよ” と言ったのに対して間髪を入れずに “I have been waiting for you!” と歌詞の引用で切り返す彼女の機転にも感心させられる。さすがは超一流のエンターテイナーやね。とにかくこのベット・ミドラー・ヴァージョンこそが私の知る限り最高の「ビー・マイ・ベイビー」カヴァーだと断言したい。
Bette Midler Performs 'Be My Baby' │LIVE On Today Show│


 収録されている全15曲はそれぞれ入念なアレンジが施されており、アルバム1枚聴き通しても全く飽きさせない工夫がなされている。ダーレン・ラヴとのデュエットで聴かせるクリスタルズの⑥「ヒーズ・シュア・ザ・ボーイ・アイ・ラヴ」なんてオリジナルを聴き込んだ人は思わずニヤリとさせられようなアレンジだし、トロピカルな味わいがたまらない⑦「ミスター・サンドマン」も素晴らしい出来ばえだ。ブルーグラス風にアレンジされた⑫「ユー・キャント・ハリー・ラヴ」も “あのモータウン・サウンドがこんな風に化けるのか...” と思わず唸ってしまう逸品だ。
 リンロンもカヴァーしていた⑤「テル・ヒム」なんかもう完璧と言ってもいいぐらい見事なヴォイス・コントロールだし、私の大好きなシャングリラスの⑬「ギヴ・ヒム・ア・グレイト・ビッグ・キス」も理屈抜きの楽しさに溢れている。マーベレッツの隠れ名曲⑨「トゥー・メニー・フィッシュ・イン・ザ・シー」なんかもうノリノリだ(^o^)丿 やっぱりガール・グループ・クラシックスのカヴァーはこうでなくてはいけない。
BETTE MIDLER THE DIVINE MISS M TELL HIM DECEMBER 15 2014

Bette Midler Give Him A Great Big Kiss

Better Midler - Too Many Fish In The Sea │LIVE On Today Show 2014│


 このアルバムは上記のような王道ガール・ポップス・ナンバー以外にもアンドリュース・シスターズの③「素敵なあなた」やボスウェル・シスターズの⑮「イッツ・ザ・ガール」といったいわゆるひとつの “シスターズ系” コーラス・グループのジャジーなナンバーがさりげなく収められているところもいい(^.^)  やっぱり50~60年代前半というのはアメリカのポピュラー・ミュージックの黄金時代やったんやなぁ... と再認識させてくれるこのアルバムを聴いて、私はガール・グループのオリジナルUSシングル盤蒐集という底なし沼へとハマり込んで行った。
Bette Midler - It's The Girl + Lyrics
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レゲエ・ビートで聴くガール・グループ・クラシックス特集

2015-02-17 | Cover Songs
 この前YouTubeで面白いモノを見つけた。数あるガール・グループ・クラシックスの中でも屈指の名曲と万人が認めるロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」をあろうことかレゲエ・アレンジでカヴァーした女性ヴォーカルだ。グループ名はマーベルズという。当然ながら初めて聞く名前だ。
 私はハッキリ言ってレゲエはあまり好きではない。フリージャズや90'sオルタナ系ロックのように忌み嫌っているというワケではないのだが、少なくとも自分から進んで聴こうとは思わない。何がダメなのかと言うと、まず第一にあの単調なリズム... 2、3曲ならまだ何とか耐えられるが、アルバム1枚聴き通せと言われると正直ツライ。それともう一つ、レゲエというとどれもこれも判で押したようにカエルの首を絞めたような気持ち悪い男性ヴォーカルというイメージがあるのだが(←あくまでも私個人の偏見です...)、あの手の声はどうしても生理的に受け付けないのだ。
 そういうわけで、このレゲエ版「ビー・マイ・ベイビー」も聴く前は “せっかくの名曲を台無しにしとるんちゃうやろな...” という先入観を持っていたのだが、実際に聴いてみるとコレが驚いたことにソフト&メロウな癒し系女性ヴォーカルがレゲエ・ビートの持つ脱力感と絶妙なマッチングをみせており、めちゃくちゃ気持ち良いカヴァーになっているのだ。やっぱり音楽の好き嫌いって最終的には歌い手の “声” との相性に尽きると思うのだが、このディンプル・ハインズという女性ヴォーカリストはめっちゃ気に入った。
 私は好きなアーティストは徹底的にいく主義なので早速調べてみると、彼らはジャマイカ出身の3人組で、レゲエにドゥーワップ・アプローチを取り入れたグループとしてその筋では結構有名らしい。60年代から70年代にかけてかなりの数のシングルを色んなレーベルからリリースしているが、マーベルズ単独名義でのCD化はされていないようだ。
 このレゲエ版「ビー・マイ・ベイビー」は彼らが1971年に Pama Supreme というレーベルからリリースしたもので、シングル盤のくせに eBay では$100近い値段がついていてビックリさせられたのだが、GEMMというマイナーな音楽通販サイトに €11.00 で出ているのを発見し即ゲット。スペインのセラーから買ったのだが、説明ではVG表記だったのに実際聴いてみるとほぼノイズ・フリーのNM状態で大ラッキー(^o^)丿  送料がたったの €4.00(←国内ゆうパックより安いやん!)というのもめっちゃ得した気分だ。
The Marvels - Be My Baby - Pama Reggae 45rpm


 すっかり調子に乗った私はネットで彼らのディスコグラフィーを調べ、他にも名曲のカヴァーをやってないか探してみた。すると何と同じフィレス系ガール・グループ、クリスタルズのヒット曲「ゼン・ヒー・キスト・ミー」をやっているではないか!!! この曲は私が中学時代にアルバム「ラヴ・ガン」でキッスがカヴァーしたのを聴いて以来の超愛聴曲で、“この曲のカヴァーは見つけ次第即買い” を自らに課しているぐらい大好きなのだが、シャキシャキしたギターが刻むレゲエ特有のマッタリしたリズムが原曲のメロディーとめちゃくちゃ合っていてもう快感!の一言に尽きるキラー・チューンになっている。音壁とはまったく違うアプローチでこの曲の髄を引き出しているところが凄いと思うのだが、フィル・スペクターがコレを聴いたら何と言うだろう?
 このシングルは1972年に Trojan Records というレーベルからリリースされたもので、eBay には出品されていなかったが「ビー・マイ・ベイビー」の時と同じ GEMM に $9.12 で出ているのを発見! 届いたレコードは Unplayed という説明通りのピカピカ盤で、ディンプル・ハインズのヴォーカルがめっちゃクリアーな音で聴けて大満足だ。
Then he kissed me - The Marvels ( reggae version )


 マーベルズはもう1曲、ガール・グループ・クラシックスをカヴァーしている。絵に描いたような一発屋としてこれ1曲で消えて行ったトイズの「ラヴァーズ・コンチェルト」だ。この曲は私にとってはスプリームズによるカヴァーが断トツのベスト・オブ・ザ・ベストで、他には薬師丸ひろ子の日本語詞カヴァーも大好きだったのだが、その2曲にこのマーベルズ・ヴァージョンを加えて “「ラヴァーズ・コンチェルト」私的3大名演” に認定したいぐらいの名カヴァーだ。絶妙なテンポ設定がディンプル・ハインズの癒し系ヴォーカルの魅力を極限まで引き出しているように思う。
 このシングルは1975年に Gull というレーベルからリリースされたもので(←知らん名前のレーベルばっかりやな...)、eBayには4~5枚出品されてしたのだが、私が買ったのはmp3試聴(←最近のeBayは商品の試聴が出来るアイテムが増えてきているのが嬉しい...)で一番音が良かったUK盤。これは£10.00とちょっと値が張ったが、送料が£3.50というのは超良心的だ。
 私は苦手意識のあったジャンルの音楽を魅力的に聴かせてくれる演奏こそ真の名演だと信じている。そういう意味で、レゲエが苦手な私が何度もリピート再生してしまうこの3枚のシングル盤なんかはその好例と言えるかもしれない。3枚とも曲良し、ヴォーカル良し、アレンジ良しと3拍子揃ったガール・グループ・クラシックス・カヴァーの大傑作だ。
Dimple Hinds & The Marvels - A Lover's Concerto
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Vavoom! / Brian Setzer Orchestra

2014-09-12 | Cover Songs
 最近朝晩かなり涼しくなってきて気候的には快適なのだが、仕事の方がめっちゃ忙しくてちょっと夏バテ気味だ。こんな時はあれこれ考えずにノリの良い音楽を聴くに限る。ということで今日は肉体疲労時の栄養補給盤として愛聴しているブライアン・セッツァー・オーケストラの「ヴァヴーム」にしよう。
 ブライアン・セッツァーは80年代の初め頃にネオロカビリー・ブームを牽引したストレイ・キャッツの中心メンバーとして活躍していたが、ブームが去ってキャッツも活動を停止し、いつしかその名を聞くこともなくなっていた。そんな彼が再びブレイクしたのが90年代に入って結成したブライアン・セッツァー・オーケストラで、 “ロカビリーとビッグバンド・スウィングの融合” という彼の理想とするスタイルで全米にスウィング・ブームを巻き起こしたのだ。
 そのきっかけとなったのは1998年リリースの3rdアルバム「ダーティー・ブギ」だったが、私が愛聴しているのは2000年にリリースされた4thアルバム「ヴァヴーム」の方で、不発に終わった1stと2ndアルバムの試行錯誤を経て「ダーティー・ブギ」で確立した揺るぎないスタイルをベースにしながらも、更にエンターテインメント性に磨きをかけた大傑作アルバムなのだ。
 このアルバム中最大の聴き物は何と言っても⑥「ゲッティング・イン・ザ・ムード」だろう。ゴージャスなビッグバンド・サウンドをバックにブライアンの骨太グレッチが炸裂、清涼感溢れる女性コーラスの大量投入によってサウンドに厚みを持たせ、曲中ブレイク部分ではラップまで挿入するという徹底ぶりで、1939年にグレン・ミラー楽団の演奏で大ヒットしたスウィング・ジャズの古典的名曲「イン・ザ・ムード」に新たな生命を吹き込んで見事に21世紀に蘇らせたその音楽的センスにはもう脱帽するしかない。気分が落ち込んでいようが身体が疲れていようが、コレを聴けばテンションが上がること間違いなし!
 PVのブライアンはいかにもアメリカの “チョイ悪オヤジ” ロッカー という感じで実にカッコイイ(^o^)丿  この人ほどアメ車が似合う人はいませんな。キレイなオネーチャン達はもちろんのこと、白人ブッチャーみたいなラッパーまで登場し、目でも耳でも楽しめるビデオになっており、何度見ても飽きない。ノリノリで一気呵成に駆け抜ける理屈抜きの楽しさを上手く表現しているところがエエのよねぇ(^.^)
Brian Setzer Orchestra - In The Mood


 このアルバムのオープニングを飾るのもグレン・ミラーの「ペンシルヴァニア6-5000」のカヴァーだ。ロカビリーならではの圧倒的なドライヴ感、ホーン隊が大活躍するブ厚いビッグバンド・サウンド、そして古き良きアメリカへと聴き手を誘うキャッチーなメロディーが音楽的に結びつき、最終的にブライアンのヴォーカルでまとめ上げられていく快感を何と表現しよう? ブライアン・セッツァー・オーケストラならではの荒削りでダイナミックなサウンドが楽しめるこのトラックはアンプのヴォリュームを上げて大音量で聴くべしだ(^o^)丿
Brian Setzer Orchestra - Pennsylvania 6-5000


 ②「ジャンピン・イースト・オブ・ジャヴァ」は “ロカビリーとビッグバンド・スウィングの融合” が見事に結実した超ノリノリのアッパー・チューン。ソリッドなウッドベースのスラップとビッグバンドのゴージャスなサウンドの相性は抜群で、ブライアンのグレッチもスピード全開で疾走し、思わず身体が揺れてしまう強烈無比なスイングを生み出している。ジャングル・ドラムのズンドコ・ビートに乗って歌心溢れるフレーズを連発するギターとトランペットの掛け合いも最高で、“楽器を通して歌を歌う” という理想的な演奏に耳が吸い付く。まさにブライアン・セッツァー・オーケストラの魅力がいっぱい詰まったキラー・チューンだ。
Jumpin' East Of Java / Brian Setzer Orchestra


 ⑧「マック・ザ・ナイフ」はジャズ・ファンの間ではソニー・ロリンズの「モリタート」の名演で知られているが、堅気のポップス・ファンにはボビー・ダーリンの「匕首マッキー」として有名だろう。そう言えば私はこの “匕首” の読み方をず~っと “ななくび” だと信じて疑わず、マッキーって七つの首を持ったバケモノの歌かと思い込んでいた。あぁ恥ずかしい(>_<) 漢字は難しいから嫌いだ。まぁそれはそれとして、ブライアンの歌う「マック・ザ・ナイフ」はめっちゃ味があって私はボビー・ダーリン・ヴァージョンよりも断然こっちの方が好きだ。彼は何よりもまずギタリストとして評価されることが多いように思うが、ヴォーカリストとしても超一流だと思う。
Mack The Knife - Brian Setzer Orchestra


 ⑨「キャラバン」はヴォーカルなしのインスト・ヴァージョンで、ブライアンのギターが縦横無尽に大暴れするスリリングな演奏に圧倒される。とにかく彼のギター・ワークはベンチャーズの名演を思い起こさせるカッコ良さで、ウッドベースのスラップがブンブン唸り、ドラムがドコドコと轟音を響かせるというタマラン展開に胸が熱くなる。エレキ・インスト・ファンなら絶対にこのグルーヴが気に入るのではないだろうか? 私的にはベンチャーズ、デューク・エリントンと並ぶ「キャラバン」3大名演の一つに挙げたい必殺ヴァージョンだ。
 ここに挙げた曲以外にもクイーンの「愛という名の欲望」カヴァーやビル・ヘイリーの「ロック・ア・ビーティン・ブギ」カヴァーなど、聴き所満載のこの「ヴァヴーム」は、アメリカが一番アメリカらしかった時代の音楽を現代風に磨き上げて我々に聴かせてくれる “ロカビリー伝道師” ブライアン・セッツァー会心の1枚だと思う。
Caravan Brian Setzer Orchestra
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Ska In The World Hits / Jive Bunny Project

2014-09-07 | Cover Songs
 カヴァー曲というのは元歌を知っているとそのヒネリ具合やアレンジの妙が楽しめて面白さが倍増する。逆に知らない曲ばかりのカヴァー盤なんて面白くも何ともない。ジャイヴ・バニー・プロジェクト・シリーズのCDで「スペクトル・サウンズ」のように収録曲の大半を知っている盤は即決で買ったが、その一方で知らない曲が多くて購入をかなり迷った盤もあった。そんな1枚が今日取り上げる「スカ・イン・ザ・ワールド・ヒッツ ~ドライヴィング~」だ。
 タイトルを見れば分かるようにこの盤はヒット曲をスカ・ビートでアレンジしてメドレー化したもので、スカ独特の粘っこいリズム自体は私的には問題なかったが、引っ掛かったのがその選曲だ。ネットで見た商品説明には “90年代の有名な洋楽をそのままスカにカヴァー” とある。うーん、“90年代” か...
 正直言うと “90年代の洋楽” と聞いただけでブツブツが出るくらい激しい拒否反応を起こす私としてはこの時点で購入意欲が失せかけたのだが、曲目リストの中にホイットニー・ヒューストンの「アイ・ウィル・オールウェイズ・ラヴ・ユー」とマイケル・ジャクソンの「ヒール・ザ・ワールド」の2曲を見つけ、あの壮大なバラッドを一体どーやってスカ・ビートでアレンジしてるんやろ?という好奇心がムクムクと湧き上がってきた。他の曲はどーでもエエけど、この2曲のスカ・ヴァージョンだけは是非とも聴いてみたい。
 私の知る限りではジャイヴ・バニー・シリーズは2枚の “歌謡曲モノ” 以外は試聴できるサイトがどこにもないので、どうしても聴きたければリスク覚悟でミズテン買いするしかない。困ったなーと思ってネット検索していたところ、何とネットオフに168円という “もってけドロボー” 価格で出ているのを発見。この値段なら失敗してもショックは少ない。たまたま送料無料キャンペーン中だったこともあって私は迷わず即決した。
 届いたCDをプレーヤーに乗せ、まず選曲ボタンの⑥を押して「アイ・ウィル・オールウェイズ・ラヴ・ユー」を聴いたのだが、スピーカーから飛び出してきたのはこちらの予想に反して何と男性ヴォーカル、それも私が最も忌み嫌うネチコイ歌い方で心底がっかり。この声と歌い方は生理的に無理だ(>_<)
 いきなり「オールウェイズ・ラヴ・ユー」が期待外れで “次もハズレやったらイヤやなー” と一抹の不安を感じながら今度は選曲ボタンの⑩を押す。マイコーの “ひとりウィー・アー・ザ・ワールド” といえる「ヒール・ザ・ワールド」だ。おぉ、コレはめっちゃエエわ(^o^)丿 スロー・バラッドだった原曲を高速回転させた絶妙なテンポ設定が功を奏し、軽快なスカ・ビートとキュートな女性ヴォーカルが絶妙にマッチしてウキウキワクワクするような親しみやすいナンバーへと大変身、CDのサブタイトル通りDRIVINGのお供にピッタリのキラー・チューンになっている。それにしてもマイコーってホンマに綺麗なメロディーの曲を書きますな...(≧▽≦)
 ヴォーカルを担当しているのは名盤「スペクトル・サウンズ・歌謡曲シリーズ」の「A面で恋をして」や「世界中の誰よりきっと」で素敵な歌声を聴かせてくれた ayakooo こと、にへいあやこさんだ。この人の声めっちゃ好き(^o^)丿  しかもこの⑩だけ4分45秒と長尺フル・ヴァージョン楽しめるというのが嬉しい。たとえ残り9曲全滅でも、私としては彼女の歌声で弾むようにスイングするこの「ヒール・ザ・ワールド」が聴けただけで十分このCDを買った甲斐があったと思えるぐらい気に入っているトラックだ。
ヒール・ザ・ワールド

Michael Jackson - Heal The World


 しかしラッキーなことにこのCDは “残り全滅” ではなく、他にも掘り出し物があった。まずは②「リハブ」という曲が気に入った。オリジナルはエイミー・ワインハウスという風変わりな名前の女性ヴォーカリストで、YouTubeで見てみると名前だけでなくその声も唱法も風貌も実にユニークで個性的。このカヴァー・ヴァージョンでは原曲のリズムに潜むスカっぽい要素を巧く抽出&アレンジしてあってヴォーカルの声質もソックリ(←薄黄色の小さい字で書いてあるので読みにくいけど、Saltie っていう名のシンガーらしい...)なのでワインハウス・ファン(?)の人でも違和感なく楽しめると思う。
リハブ

Amy Winehouse - Rehab


 ⑦の「キャント・ゲット・ユー・アウト・オブ・マイ・ヘッド」もめっちゃエエ感じ。オリジナルを調べると何とあのカイリー・ミノーグだ。カイリーって80's後半にストック・エイトキン・ウォーターマンのプロデュースで「ロコモーション」や「アイ・シュッド・ビー・ソー・ラッキー」といった金太郎飴的ダンス・ナンバーを歌っていたアイドル歌手というイメージしかなかったのだが、YouTubeで妖しげなオリジナルPVを見てブッ飛んだ。女ってこうも変わるものなのか... セバスチャン・ベッテルじゃないが、まさに Kinky Kylie だ(笑)
 原曲が元々スカっぽいビートの曲なので、このCDではアレンジをあまりいじらずにストレートにカヴァーされているが、ヴォーカルがエエなぁと思ってクレジットを見ると、何とまたまた ayakooo さんだ。結局このCDで気に入った3曲中の2曲が彼女のヴォーカルだった。やっぱりヴォーカル物は “声” の魅力に尽きますな...(^.^)  わずか1分43秒で終わってしまうのが残念だ。
 この「スカ・イン・ザ・ワールド・ヒッツ」CD、②⑦⑩以外の7トラックは曲そのものがつまらんかったりヴォーカルの声質が好きになれなかったりで私的にはハズレだったが、上記の3曲は最高に気に入ったので他のジャイヴ・バニー盤とMIXしてCD-Rに編集して聴いている。選曲の範囲を “90年代の洋楽” に限定せずに洋邦を問わず幅広い年代の曲から選んでいればもっと素晴らしい内容になったんじゃないかと思うが、とにかく落ち込んだ時なんかに聴くと気分がスカッとするこの3曲、騙されたと思って一度聴いてみてはどうでスカ?
キャント・ゲット・ユー・アウト・オブ・マイ・ヘッド

Kylie Minogue - Can't Get You Out Of My Head
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Jungle Drums / Jive Bunny Project

2014-09-02 | Cover Songs
 「スペクトル・サウンズ」をきっかけに知った “ジャイヴ・バニー・プロジェクト” のシリーズは様々なテーマに基づいて選曲されているので私のような人間にとっては非常に興味深い企画なのだが、そんな中でも一番面白かったメカラウロコ盤が今回取り上げる「ジャングル・ドラムス」だ。
 “スペクター・サウンド” や “モータウン・サウンド” とは違い、“ジャングル・ビート” というのはポップス・ファンにとっては聞きなれない言葉かもしれないが、「スウィング・ガールズ」や「東京ディズニーシー・ビッグバンドビート」でお馴染みの名曲「シング・シング・シング」のイントロで聞けるワイルドなドラム・ビートと言えばあぁアレのことか!とピンときた人もいるかもしれない。
 このドラム奏法は元々1938年にジーン・クルーパというジャズ・ドラマーが編み出したもので、彼が所属していたベニーグッドマン楽団の「シング・シング・シング」という曲で一躍有名になったものだ。私は若い頃はスウィング・ジャズを古臭いだけの年寄り音楽と思い込み完全にスルーしていたのだが、たまたま友人に勧められて聴いたベニーグッドマンのカーネギーホール・ライヴ盤に収録されていた「シング・シング・シング」でバス・タムを多用してバンド全体を根底からスイングさせるクルーパのワイルドなドラミングに大きな衝撃を受け、それ以来1930~40年代の古いジャズも聴くようになった。論より証拠、私のスウィング・ジャズへの偏見を木っ端微塵に打ち砕いたジャングル・ドラムの名演がコレ↓だ。
Gene Krupa- Sing, Sing, Sing


 “ドンドコ、ドコドン♪” と血湧き肉躍るようなリズム・パターンがインパクト絶大なこのジャングル・ビートを使った曲としては「シング・シング・シング」以外には80年代初頭に一世を風靡したアダム・アントぐらいしか知らなかったが、「ジャングル・ドラムス」という盤には12曲も収められており、 “へぇ~、こんなところにもジャングル・ビートが使われとったんや…(・o・)” と瞠目させられっぱなし。洋楽ネタでは大好きなブライアン・セッツァー・オーケストラのナンバーが2曲入っていてロカビリーとジャングル・ビートの相性の良さを再確認させてもらったが、私的に面白かったのはむしろ邦楽ナンバーの方だった。
ジャングルドラム


 曲目リストでまず目を引いたのがザ・ピーナッツの「恋のバカンス」だ。一体あれのどこがジャングルビートやねん?と思いながら聴いてみると、実に巧妙に原曲を換骨奪胎して強烈無比なジャングル・ビート・ナンバーに作りかえてあり、これがまた結構サマになっているから痛快そのもの(^o^)丿 こーゆーのをオルガンバー・サバービアって言うのかな? 私はその手のクラブ音楽には何の興味も無いが、昭和歌謡の名曲を斬新な発想で現代に蘇らせたこの「恋のバカンス」は大いに気に入っている。土屋浩美さんのドスの効いたヴォーカルがエエ味出してます...(-。-)y-゜゜゜
ザ・ピーナッツ 恋のバカンス THE PEANUTS


 70年代半ばから音楽を聴き始めた私にとって石原裕次郎という人は「太陽にほえろ」の “ボス” 役というイメージしかなかったのだが、まだ私が生まれる前の1958年に彼がリリースした「嵐を呼ぶ男」(←オリジナルは何とSP盤!!!)では白木秀雄オールスターズという現役バリバリのジャズメンをバックにゴリも殿下もロッキーも知ったこっちゃないとばかりにゴキゲンな歌声を披露しており、へぇー、ボスも中々やるやん... と認識を新たにさせられた。はせはじむ氏がジャングル・ビートの素材としてこの曲に目を付けたのはまさに慧眼と言ってよく、このカヴァー・ヴァージョンは原曲を上手くアレンジして強烈なジャングル・ビート・ナンバーに仕上げてあり、洋邦混成メドレーの中でも違和感なく聴けるところがいい。選曲を担当したはせ氏は昔を知らない若い世代にコレを聴かせたかったのだろう。
嵐を呼ぶ男


 意表を突く選曲と絶妙なアレンジが満載のこの「ジャングル・ドラムス」だが、スウィング・リズムとは縁もゆかりも無さそうなトシちゃんまで出てきたのにはビックリ(゜o゜)  ハッキリ言って今の今までトシちゃんなんて心底バカにしていてまともに聴いたことすら無かったのだが、この盤でカヴァーされている「チャールストンにはまだ早い」という曲がめちゃくちゃ気に入ってしまい、YouTubeで怖々(笑)オリジナル・ヴァージョンをチェック。トシちゃんの歌はやっぱりアレだったが、それでも曲の素性の良さは十分に伝わってきたし、この盤のカヴァーは土屋さんが歌っているので安心して聴くことができる。彼女の声は低くてハスキーなのでこの曲にピッタリ合っているし、歌唱法もめっちゃクールでカッコエエわ(^o^)丿
田原俊彦 チャールストンにはまだ早い


 山下達郎先生の「アトムの子」はまさにジャングル・ビートの王道といった感じのナンバーで、80年代以降の邦楽に疎い私は曲名を見ただけではピンとこなかったが、カヴァーを聴いて“この曲どっかで聞いたことあるなぁ...”と思っていたら何とキリンビールのCMソングとして90年代初め頃にTVでガンガン流れてた曲だった。YouTubeで探してみると、ちゃーんとありました... この根津甚八のCM、たしかに見覚えあるわ(^.^)  達郎先生は私的には音壁やドゥーワップ志向のイメージが強いのだが、このようにさりげなくジャングル・ビートを取り入れてヒット曲を出すあたりはさすがマニアの鑑ですな。土屋さんによるカヴァーはこれ1曲フル・ヴァージョンでリリースしてもいいんじゃないかと思えるぐらいの名演だ。
キリン ゴールデンビター - 根津甚八 - ♪ 山下達郎 「アトムの子」


 この「ジャングル・ドラムス」はジャケットに赤字で大きく書かれた副題「BUMPPING」のミススペリング(この場合 P は重ねないでしょ...)が玉にキズだが、内容的にはジャイヴ・バニー・プロジェクト・シリーズの中でもトップクラスの1枚だと思う。
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「夢みるシャンソン人形」特集③ 【絶品!知る人ぞ知る隠れ名演編】

2013-11-09 | Cover Songs
 夢シャン大会パート3はみながわ最高顧問のリクエストにお応えして(?)ちょっと変わったカヴァーを大特集。残念ながらヘビメタもボサノバも音頭もありませんが(笑)、その代わりにジプシー・スウィング、ロカビリー、エレキ・インスト、スカといったユニークなヴァージョンをご用意致しました。しかもただ珍しいだけでなくそのどれもが超の付く愛聴盤... 今日は夢シャン・コレクターの私が自信を持ってオススメする “絶品!知る人ぞ知る隠れ名演編” です。

①Django Rhythm
 日本が誇る新進気鋭のジプシー・ジャズ・ユニット、ジャンゴ・リズムのセカンド・アルバム「カヴァー・コレクション」に入っていたのがコレ。大好きな夢シャンをこんなカッコいいジプシー・スウィング・スタイルで聴けるとは...(^o^)丿 2本のマカフェリ・ギターが絡み合いながら持てるテクニックを駆使して原曲の哀愁舞い散るメロディーを変幻自在にスイングさせまくる絶品カヴァーだ。これ以上の名演があったら教えを乞いたい。
Poupee de cire


②Hillbilly Moon Explosion
 フランス・ギャルの夢シャンをあろうことかロカビリー・スタイルで、しかもめちゃくちゃカッコ良くカヴァーしたのがスイスのネオ・ロカビリー・バンド、ヒルビリー・ムーン・エクスプロージョン。ベスト・アルバム「ロー・ディール」のラストを飾っていたのがこの曲で、ストレイ・キャッツを彷彿とさせるダイナミックなロカビリー・サウンドとヴォーカルのエマニュエルの妖艶でありながらキュートな歌声の組み合わせは一度ハマると抜け出せない中毒性を持っている。
Poupee de cire, Poupee de son - The Hillbilly Moon Explosion


③Los Flaps
 スペインのマイナーなエレキ・インスト・バンド、ロス・フラップスが1965年にリリースした4曲入りEPに収録されていたこの夢シャン、ベンチャーズやシャドウズといった英米ロック系ではなくスプートニクスを始めとする北欧系に近い哀愁を帯びたエレキ・サウンドが心の琴線をビンビン震わせる。シンプルなアレンジで聴かせる歌心溢れるプレイがたまらんたまらん(≧▽≦) なぜ他のエレキ・インスト・バンドはこの曲を取り上げないのだろう?
LOS FLAPS - MUNECA DE CERA - RCA 65´


④Die Tornados
 スカといえばまず頭に浮かぶのがホンダCMで一世を風靡したマッドネスだが、まさかあのスカ・ビートで夢シャンをカヴァーするバンドが現れるとは思わなんだ(゜o゜)  ドイツのディ・トルネードス(って読むのかな?)のアルバム「ゴー・アウト・アンド・ダンス」に入っているこの “スカ版” 夢シャンは、リズムに裏から乗っていく独特のスカ・ビートによって躍動感溢れるユニークなヴァージョンに仕上がっていて実に楽しい(^o^)丿 興味のある方は試しに聴いてみたらどうでスカ?
Die Tornados - Das war eine schone party (ska cover)
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「夢みるシャンソン人形」特集② 【ロックバンドによるカヴァー編】

2013-11-04 | Cover Songs
 夢シャン大会パート2はロックバンドによるカヴァーを集めてみました。この曲とロックンロールって結構合うんよねぇ...

①WIZO
 ロックな夢シャンと言えば真っ先に頭に浮かぶのがコレ。ドイツの轟音メロコア・バンド WIZO(ワイゾー? ウィゾー?)がハイスピードで飛ばす、聞いてビックリのメロディック・ハードコア夢シャンだ。清純派のお姫様シンガー、フランス・ギャルの曲でギンギンにロックするという発想が痛快無比そのもの。無駄な贅肉を一切削ぎ落としたシャープでソリッドなサウンドは圧巻だし、後半部で威勢の良い掛け声と共にサビが疾走するところなんかもうノリノリで快感の一言に尽きる。真面目な顔してバリバリのパンク唱法で“私は蝋人形~♪” ってオリジナル通りに歌ってるところがカワイーゾ(^.^)
WIZO - Poupee de cire


②Belle & Sebastian
 ベル・アンド・セバスチャンのCDはこの曲目当てに買った「ブラック・セッションズ」しか持っていないが、いかにもイギリスのバンドらしいクセのあるサウンドとヴォーカルのイザベル嬢のキュートな歌声の組み合わせが◎。歌い終わった直後の “I'm sorry if my French was bad.(私のフランス語が分かりにくかったならゴメンナサイ)” という彼女の舌足らずな MC まで聴いて初めて曲が完結する感じだ。ちょうど「ヘルター・スケルター」におけるリンゴの “I've got blisters on my fingers!” みたいなモンか...
Belle & Sebastian - Poupee De Cire, Poupee De Son


③Arcade Fire
 曲にこだわって音楽を聴く一番のメリットは、その曲をカヴァーしている未知のアーティストと巡り合えることだと思うのだが、②のベルセバと同じくこのアーケード・ファイアーも夢シャン探しの過程でその存在を知ったバンドの一つ。詳しいことは全く知らないが、そのドライヴ感溢れる演奏は一聴の価値アリだ。ヘタウマを地で行くコーラス・ワークも印象に残るし、ポルシェのエンブレムみたいなジャケット・デザインもエエ感じだ。
Arcade Fire - Poupee de Cire, Poupee de Son | Live in Paris, 2007 | Part 7 of 14


④レ・モーヴェ・ギャルソンヌ
 日本のバンドではこのレ・モーヴェ・ギャルソンヌのヴァージョンが一番のお気に入り。キュートでコケティッシュなヴォーカルとけれん味のないストレートなガールズ・ガレージ・ロックという組み合わせが最高だ。縦横無尽に弾きまくるラウドなギターとパワフルなビートを刻みながらガンガンプッシュするドラムスの爆裂サウンドがたまらんたまらん(≧▽≦)
レ・モーヴェ・ギャルソンヌ


【おまけ】CD にはなってないけど結構イケてるヴァージョンをいくつか YouTube で見つけた。この曲がこれほどロッカーたちに好まれるのにもオドロキだが、作者のゲンスブールが曲に封じ込めた何かが彼らのロック魂を刺激するのかもしれない...
⑤Angalys
 フランスのパンクロック・バンド、アンガリス(って読むのかな?)はメンバーの風体は胡散臭さ満点だが(←シマウマかよ... )、そのシャープでエッジの効いたロックンロールは文句ナシ。このサウンド、ハマると結構クセになりまっせ(^.^)
Angalys, le clip : Poupee de Cire, Poupee de Son


⑥The Hellboys
 同じくフランスのパンクロック・バンド、ヘルボーイズの初期ラモーンズを想わせるストレートなロックンロールで聴く夢シャンは聴いててめっちゃ気持ちイイ(^o^)丿 パンクロックといえどもさりげなくバックコーラスを付けるのがおフランス流か。
The Hellboys - Poupee de Cire, Poupee de Son


⑦Nena Daconte
 ネナ・ダコンテというスペインのこの2人組、女性ヴォーカルは声も歌い方も甘ったるくて私の好みではないが、そのマイナス分を補って余りあるのが相棒の男性ギタリストが生み出す重心の低いアグレッシヴなサウンド。フライングVのソリッドな音で夢シャンを聴けるとは思わなんだ。大股開きでリフをガンガン弾きまくる姿がカッコエエわぁ... (≧▽≦)
Nena Daconte - Poupee de cire (Eurovision '09: el retorno)
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「夢みるシャンソン人形」特集① 【王道カヴァー編】

2013-10-30 | Cover Songs
 私はどちらかというとアーティストよりもむしろ曲に固執するタイプの人間で、 “この曲が入ってたら必ず買う” と心に決めている愛聴曲は少なくない。洋楽なら「さすらいのギター」や「デイドリーム・ビリーバー」、邦楽なら「涙の太陽」や「さらばシベリア鉄道」なんかがすぐに思い浮かぶが、私がそんな “曲コレクター” になったきっかけが何を隠そうフランス・ギャルの「夢みるシャンソン人形」で、2004年の夏ぐらいからこの曲のカヴァーを集め始め、9年かかって先日ついに100ヴァージョンを達成したのだ\(^o^)/ オリジナルを含めるとまさに “101匹夢シャン大集合” 状態なので、その中から選りすぐった名演をテーマ別に紹介していこうと思う。第1回の今日はポップで楽しい “王道カヴァー編” です。

①Jenifer
 最近手に入れたこの曲のカヴァーで断トツに気に入っているのがジェニファーというフランス人女性シンガーのヴァージョンだ。彼女は特に歌が上手いというわけではないのだが、歌とバックの演奏とのマッチングが素晴らしく、怪しげな雰囲気横溢のイントロ、ノリの良さに拍車をかけるハンドクラッピング、絶妙な器楽アレンジを施されたストリングス、隠し味的に使われているアコギetc、その作り込みの見事さに唸ってしまう。尚、この曲が入っているアルバム「Ma Declaraion」(←ジャケットの赤が効いている!)ではもう1曲ギャルの「Laisse Tomber Les Filles」(邦題:娘たちにかまわないで)をしっとりとしたスロー・テンポ(!)でカヴァーしており、ギャル・ファンにとってはたまらない1枚だ。
Jenifer - Poupee De Cire Poupee De Son


②Kim'Kay
 ベルギーの不思議キャラ・アイドル(?)、キム・ケイが歌う夢シャンも大好きなヴァージョンだ。シンセ音全開で迫るダンサブルなエレクトロ・ポップ・アレンジが彼女の屈託のない元気な歌声とピッタリ合っており、この曲の魅力を見事に引き出している。彼女の声質は本家のフランス・ギャルと非常に似ており、特にサビの “プペドゥスィ、プッペドゥ ソーン♪” の鼻にかかった声なんかそっくりだ。そういえば数年前にG3で夢シャン・カヴァー特集をやった時にplincoさんが絶賛されてたのがこのキム・ケイだった。さすがエエ趣味してはるわ(≧▽≦)
Kim Kay - Poupee de cire (Super 50) LQ


③松本英子
 J-Popsに疎い私はこの松本英子という人のことは全く知らなかったが、夢シャン・カヴァーを探していて巡り合ったこのヴァージョン(←「君の音」というアルバムの Additional Track として収録)は聴き応え十分の正統派カヴァーだ。鼻から抜けるような(?)高い声もかなりユニークで印象に残るし、ギャルのヒット曲「Laisse Tomber Les Filles」のサビのメロディーをうまく使ったアレンジも秀逸。何よりもすべてフランス語で歌いきってしまうところが凄い(≧▽≦)
松本英子 - 夢見るシャンソン人形 Poupee de cire, poupee de son


④ジューシィ・フルーツ
 ジューシィ・フルーツの4thアルバム「27分の恋」収録のこのカヴァーは「夢見るシェルター人形」というタイトルで、核戦争を皮肉った歌詞が強烈なシニカル・夢シャンだ。特に “星より綺麗な核ミサイル~ はじけて街中が光になったのぉ~♪” とか、“触れたら溶けそうな 危険な雨でも~♪” のラインなんかもう最高! そんなヘヴィーなテーマの歌詞をキャッチーなメロディーに乗せ、ジューシィ・フルーツお得意のポップなオブラートで包んだところがこのヴァージョンの面白さだと思う。イリアの弾けるようなヴォーカルも最高だ(^o^)丿
Juicy Fruits - Poupee de cire, poupee de son
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夢見る般若心経 / 仏ギャル

2013-10-26 | Cover Songs
 YouTube でめっちゃオモロイもんを見つけた。フランス・ギャルの「夢みるシャンソン人形」のメロディーに乗せて般若心経を唱えるという前代未聞の抱腹絶倒カヴァー「夢見る般若心経」である。ご丁寧に「Poupee de cire, Poupee de son & Prajna para mita sutra」という英題まで付けられており、しかもアーティスト名が “仏ギャル” というのだから大笑い。その斬新な発想とユーモアのセンスに脱帽だ。
 “メガヒット曲と般若心経のまさかの異次元コラボ! インディーズながらもメジャーと同等の活躍をみせ、話題を集める新鋭の女性歌手、仏ギャル。56億7千万年後に現れた、煩悩うるおう仏(フレンチ)ポップ!” という煽り文句も秀逸。要所要所でここぞとばかりにチーン♪と鳴り響く鐘の音も大いに笑わせてくれるし、幼稚園児が書いたようなヤル気のないジャケット(?)もそのキワモノ感に拍車をかけている。お香でも焚いて、曲に合わせて木魚を叩きながら聴けば浮かばれること間違いなしだ。
 それにしても般若心経がこんなにオシャレに聞こえるとは...(←何となくフランス語っぽく聞こえるのは気のせいか?) これでヴォーカルと木魚の音をもう少し大きくミキシングしていれば完璧だっただろう。
 ここのところ藤圭子や梶芽衣子といったへヴィーで濃厚な昭和歌謡が続いたので、たまにはこんなお気楽カヴァーを聴いて楽しむのもいいかもしれない。これで中和できたかな?
夢見る般若心経


【おまけ】こっち↓が本物。めっちゃ可愛い... (≧▽≦)
Poupee de cire Poupee de son Video
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東京天使 / エンジェルス

2012-10-03 | Cover Songs
 さいとうみわこの名曲「ロンリー・スターダスト・ダンス」のカヴァーをきっかけにエンジェルスというグループの存在を知り、色々調べていくうちに彼女達が「東京天使」というアルバムを1枚出していることが分かった。全18曲すべてがオールディーズの日本語カヴァーというだけでも実にユニークなアルバムだが、何よりも凄いのがその選曲だ。カヴァーされている原曲は以下の通り;
 ①「The Rain, The Park And Other Things」(The Cowsills)
 ②「The Loco-Motion」(Little Eva)
 ③「Bobby's Girl」(Marcie Blane)
 ④「Crying In A Storm」(Emy Jackson)
 ⑤「I Had A Dream I Was A Beatle」(Donna Lynn)
 ⑥「Good-Bye」(Mary Hopkin)
 ⑦「Holiday」(Bee Gees)
 ⑧「Glad All Over」(Dave Clark Five)
 ⑨「Theme From The Monkees」(Monkees)
 ⑩「Stop The Music」(Hitmakers)
 ⑪「Gimme Some Lovin'」(Spencer Davis Group)
 ⑫「For Your Love」(Yardbirds)
 ⑬「The Legend Of Xanadu」(Dave Dee Group)
 ⑭「In My Room」(Walker Brothers)
 ⑮「Born To Be Wild」(Steppenwolf)
 ⑯「Paint It Black」(Rolling Stones)
 ⑰「Ruby Tuesday」(Rolling Stones)
 ⑱「One」(Three Dog Night)
 とまぁこのように、リトル・エヴァやマーシー・ブレーンのようなアメリカン・ポップスに混じってスペンサー・デイヴィス・グループやヤードバーズといった硬派な曲たちを女性アイドル・グループが日本語で歌っているのだ。怖いもの見たさとでも言えばいいのか、俄然このアルバムを聴いてみたくなった私はいつものようにアマゾンとヤフオクで検索、アマゾンでは3,500円オーバーという廃盤プレミア付きのニンピニン価格だったが(←誰が買うねん!!!)、ヤフオクで善良な一般ピープルが300円という “持ってけドロボー価格” で出品しておられたのを運よくゲットできた。
 そもそもこのエンジェルスというユニットは元ワイルドワンズの渡辺茂樹氏が手掛けた “若い世代へ向けてのオールディーズ啓蒙プロジェクト” みたいなモンで、ライナーノーツにも氏自らがその趣旨の事を書いている。又、曲によって訳詞者は違うがアレンジは全曲渡辺氏が担当しており、彼女らのヘタウマ・ヴォーカルをを巧く活かした絶妙な仕上がりになっている。彼はキャンディーズのバックバンド MMP の中心メンバーとしても活躍した人で、ライヴにおけるキャンディーズの洋楽カヴァー曲のセットリストを考えれば、このアルバムの渋~い選曲にも大いに納得がいく。
 アルバム冒頭を飾るカウシルズの①からもうエンジェルスならではの親しみやすい下町ポップス・ワールドが全開だし、それに続くガール・ポップ・クラシックスの定番②もノリノリで言うことナシ。洋楽に混じってエミー・ジャクソンの④が入っているのも面白い。しかし私にとって一番インパクトが強かったのはデイヴ・クラーク・ファイヴの⑧で、ドカドカとラウドに響き渡るドラミングを再現したイントロといい、サビの “I'm feelin'... glad all over♪” を “Welcome to... Magical Venus Land♪” と変えて歌ってしまうチカラワザといい、痛快無比なカヴァーになっている。これ、ホンマにオモロイわ(^o^)丿
Magical Venus Land


 「愛を下さい」という竹を割ったような直訳邦題(←アンタは菅野美穂か!)が笑える⑪や後半部の転調にのけぞる⑫、ハードボイルドな味付けがエエ感じの⑮(←これを聴くと空耳の “いつものラーメン♪”を思い出してしまう...)など、アルバム後半に進むにつれてますますロック色が強くなっていくが、やはり何と言ってもストーンズの⑯が出色の出来。ジェフリー・ダウンズ降臨!と言わんばかりに初期エイジアを想わせるようなバックの演奏は意外にもエンジェルスの素朴な歌声と相性抜群で、この渡辺アレンジにはもう唸るしかない(≧▽≦)
黒く塗れ


 バブルガム・ポップ・チューンでは⑨が最高だ。私はこれを聴くとどうしても「タイガースのテーマ」を思い出してしまうのだが、かつてモンキーズやタイガースが “アイドルのアンセム” としてファンを魅了したこの名曲のエンジェルス・ヴァージョンも彼らに勝るとも劣らないハジケっぷりで、ウキウキワクワクするようなカヴァーに仕上がっている。
 80年代の終わりにアダ花のように咲いて散っていったB級アイドル・グループ、エンジェルスの「東京天使」というこのアルバムはシリアスな音楽ファンからは見向きもされないかもしれないが、漣健児の流れを汲むクオリティーの高いカヴァー・ポップス集として気楽に楽しめる1枚だと思う。
エンジェルスのテーマ

【おまけ】ジュリー、男の私が見てもめちゃくちゃカッコエエわ...(^.^)
最後のウエスタンカーニバル タイガース

Tokyo Jukebox 2 / Marty Friedman

2012-09-09 | Cover Songs
 冬ミン、アッキーナと数少ない演歌ネタも尽きてしまったので、今日は彼女らのヒット曲をメタル化カヴァーしたマーティ・フリードマンの「Tokyo Jukebox 2」にしよう。このアルバムはタイトルからも明らかなように、 2009年に出した J-POP ・カヴァー・アルバム「Tokyo Jukebox」の続編であり、彼がこよなく愛する J-POP の素晴らしさを世界に向けて発信していきたいという彼のライフ・ワークの一環といえる1枚だ。このブログで「Tokyo Jukebox」を取り上げた時にも書いたが、私は今時の J-POP には何の興味関心も無い人間なので、マーティがそんな J-POP をどんな風に料理するかが最大の聴き所である。
 収録曲は①「Yeah! めっちゃホリディ」(松浦亜弥)、②「涙そうそう」(夏川りみ)、③「会いたかった」(AKB48)、④「雨の慕情~舟歌」(八代亜紀)、⑤「トイレの神様」(植村花菜)、⑥「Canon a la Koto」(ヨハン・バッヘルベル)、⑦「I LOVE YOU」(尾崎豊)、⑧「素直になれたら」(JUJU feat. Spontania)、⑨「Butterfly」(木村カエラ)、⑩「Beautiful Days」(嵐)、⑪「Little Braver」(Girls Dead Monster)、⑫「また君に恋してる」(坂本冬美)、⑬「上を向いて歩こう」(坂本九)の全13曲で、原曲を知っていたのは④⑫⑬の3曲のみ。それ以外の10曲はオリジナルを耳にしたこともないし、松浦、夏川、植村、ヨハン、木村、Girls... に至ってはその名前すら全く知らなかったというお寒い状況だ。
 選曲面では石川さゆりやサザン、竹内まりやにSMAPといった大物アーティスト達の名曲をメタル化した前作の方がクオリティーは上だと思うし私の好みにも合っているが、まぁその辺はリスナーそれぞれの嗜好の問題で、実際に聴いてみた印象として基本的な作風は前作とほとんど変わっていない。
 私がこのアルバム中で一番気に入ったのは八代亜紀の2大名曲をメドレーにした④「雨の慕情~舟歌」。前半の「雨の慕情」はマーティのアグレッシヴなプレイが炸裂するゴリゴリメタル・ヴァージョン、一転して後半の「舟歌」は重厚な泣きのギターが堪能できるという感じで、テレビ東京の「ヘビメタさん」でアッキーナと共演した時のアレンジをベースにしており、彼女のヴォーカル・ラインを鋼鉄のようなギター・サウンドで見事に表現したその歌心溢れるプレイはまさに鳥肌モノ(≧▽≦)  これをキラー・チューンと呼ばずして何と呼べばいいのだろう?
Ameno Bojo - Funauta


 ④に負けず劣らず素晴らしいのが冬ミンの⑫「また君に恋してる」だ。この曲は一聴しただけで “コレはもうメタルですよ! バリバリメタルですよ!” とマーティが力説する声が聞こえてきそうな(笑)ナンバーだが、まるでギターで歌っているかのようなそのエモーショナルなプレイはまさに圧巻の一言で、メガデス脱退後日本にやってきてひたすら “ヴォーカルの存在感をギターで表現する” プレイを追求してきたマーティのメタル魂が本懐を遂げたと言っても過言ではない大名演だ。
Matakimini Koisiteru


 未知の曲では②の「涙そうそう」と⑨の「Butterfly」が良かったが、私的にはやはり耳に馴染んだ古い歌謡曲の方がしっくりくる。そういう意味でもラストに置かれた⑬「上を向いて歩こう」は必聴だ。これは彼の友人である TOTOのスティーヴ・ルカサーとの短いジャム・セッションを収録したもので、ビブラートを始めとしてそれぞれの個性が際立つプレイにはもう唸るしかないし、二人が奏でるギターの優しい音色にも涙ちょちょぎれる。目も眩むような速弾きを楽々とこなす一方でこのように聴く者の魂を揺さぶるような歌心溢れるプレイも出来るところにこそ彼の真骨頂があるのだろう。やはりマーティには昨今の軽薄 J-POPではなく、情緒纏綿たる “オール演歌&昭和歌謡” のメタル化カヴァー・アルバムを作ってほしいものだ。
Sukiyaki

メチター / Arahis

2012-08-06 | Cover Songs
 「夢逢え」祭りの最終回は “ロシアのザ・ピーナッツ” といわれる双子姉妹ユニット、アラヒスが日本語とロシア語を織り交ぜて歌う珍しいヴァージョンだ。日本に来るロシアの女性二人組といえばドタキャンやら何やらでお騒がせのタトゥーが真っ先に思い浮かぶが、このアラヒスはあんな話題先行のキワモノ・ユニットとはモノが違う。モスクワの音楽一家で生まれ育ったせいか音感も良く、しっかりした歌唱力を身につけており声もキレイだ。「恋のバカンス」や「恋のフーガ」といった懐かしいザ・ピーナッツの名曲ばかりを現代風アレンジでカヴァーしたデビュー・アルバム「ARAHIS」(2006年)を私は結構気に入り、次はどんな選曲でくるのか大いに楽しみにしていた。
 そんな彼女らのセカンド・アルバムが2007年にリリースされたこの「МЕЧТА(メチター)」で、今度は70年代~80年代初めの日本の女性アーティスト達の名曲をカヴァーしているのだが、その選曲が私の嗜好にピッタリ(^o^)丿  ①「六本木心中」(アン・ルイス)、②「真夏の出来事」(平山三紀)、③「夢で逢えたら」(シリア・ポール)、④「思秋期」(岩崎宏美)、⑤「飛んでイスタンブール」(庄野真代)、⑥「恋人よ」(五輪真弓)という珠玉の6曲が収録されており、昭和歌謡の王道メロディーをその美しいハーモニーで見事に歌い上げているのだ。
 前作同様にこのアルバムでも、歌詞は最初日本語でスタートして途中からロシア語で歌われており、その “日本語からロシア語へと切り替わる瞬間” が一番の聴きどころ。まさに ARAHIS ならではのユニークな世界が展開されており、耳慣れたメロディーと未知の言語との融合によって “懐かしいけど、どことなく新鮮...” という不思議な感覚が楽しめる。
 全6曲の中で一番気に入っているのが③「夢で逢えたら」で、流暢な日本語で歌われる前半部からごく自然な形でロシア語にチェンジ、例の語りの部分もロシア語というのがユニークで面白いし、この曲のお約束とでも言うべきカスタネットのアメアラレ攻撃も嬉しい。
夢で逢えたら


 ③以外では筒美京平先生の②⑤がお気に入り。②はその独特のリズムといいテンポ設定といい、日本人でも歌うのは中々難しいのではないかと思うが、それを20歳そこそこのロシア姉妹が見事に歌いこなしているところが凄い。⑤も同様で、起伏の大きい筒美メロディーをしっかりと捉えて歌っているし、ロシア語のパートなんかもう何の違和感も感じさせないぐらい流麗に歌い切っている。③に続いて在庫一掃セールのようにバックで打ち鳴らされるカスタネットも効果的だ。
真夏の出来事

飛んでイスタンブール


 ①はユーロビートっぽいチープなシンセのイントロが好きになれないが、アン・ルイスが歌謡ロックを極めたこの曲と彼女らとの相性は抜群で、水を得た魚のように日本語とロシア語を駆使してノリノリの歌声を聴かせてくれる。特にたたみ掛けるようなサビの盛り上がりは圧巻だ。これでバリバリのハードロック・アレンジやったら最高やのに...
 スロー・バラッド④⑥は共にかなりの歌唱力を要する楽曲で、所々日本語がぎこちなく響くところはご愛嬌だが、④のユニゾンでハモるパートなんかゾクゾクしてしまうし、情感豊かに歌うロシア語のパートにも耳を奪われる。切々と歌い上げる⑥も心に訴えかけてくるものがあり、言葉は分からなくてもその説得力溢れる歌声には唸ってしまう。
 このアラヒスは今のところ2枚のミニ・アルバムしか出ていないようだが、これだけクオリティーの高い作品を作れるのだから、次はぜひともフル・アルバムを期待したい。「ロシア姉妹、筒美京平を唄う」とか「鈴木邦彦作品集 ~モスクワのハーモニー~」(←パルナスかよ...)みたいなコンポーザー・シリーズなんか面白いと思うねんけど...
思秋期
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Reimaginator / Rock Sugar

2012-07-19 | Cover Songs
 この1ヶ月ほど YouTube で見つけた色んな面白マッシュアップ作品を紹介してきたが、私はこの手のネタが昔から人一倍大好きで、当ブログでもオリジナル音源を使用した純正マッシュアップだけでなく、ビータリカやメタル・エルヴィス、演歌メタルといった “マッシュアップ・カヴァー” 作品を率先して紹介してきたものだ。そこでついでと言っては何だが、折角の機会なのでマッシュアップ祭りのスピンオフ的な1枚として、ロック・シュガーというバンドの「リイマジネイター」(←中々意味深なタイトルやね...)を取り上げようと思う。
 2010年にリリースされたこのアルバムは一言で言ってしまえばメタル・エルヴィスや演歌メタルの “80's洋楽版”。全13曲すべて有名なヘビメタ・スタンダード曲と80年代のトップ40ヒットを融合させてあるのだから、私のような “メタル好きの80's洋楽ファン” にとってはどの曲を聴いてもニヤリとさせられる仕掛けが満載の、実に楽しい1枚なのだ。逆に80's にもメタルにも全く興味が無いという人にとっては一体何が面白いのかさっぱりワカランということになるのだが...(>_<)
 たとえば①の「ドント・ストップ・ザ・ビリーヴィン」、イントロで炸裂するゴリゴリのギター・リフはまごうことなきメタリカの「エンター・サンドマン」なのだが、それに続いて聞こえてくるヴォーカルはジェイムズ・ヘッドフィールドの低音ダミ声ではなくスティーヴ・ペリーそっくりの高音シャウト...(゜o゜) ヴォーカル・パートに入る前に確信犯的に “Oh yeah!” とジェイムズばりの雄叫びを上げるところが笑えるし、ジャーニーから再びメタリカへと移行するところなんかも実に自然な感じになっており、“おぉそうきたか...” と思わず唸ってしまうような遊び心溢れるアレンジが80's 好きには楽しくってしようがない。⑫でもジャーニーの曲を取り上げているところを見るとヴォーカルのジェス・ハーネルはスティーヴ・ペリー・ネタが得意なのだろう。
ROCK SUGAR-Don't Stop The Sandman


 他のトラックも大体こんな感じなのだが、曲のタイトルを見ただけで80's洋楽ファンなら元ネタが何なのか大体分かる仕掛けになっているのが楽しい(^o^)丿
①Don't Stop The Sandman
 【Metallica「Enter Sadman」+Journey「Don't Stop Believin'」】
②We Will Kickstart Your Rhapsody
 【Queen「Bohemian Rhapsody」+Queen「We Will Rock You」+Motley Crue「Kickstart My Heart」】
③Crazy Girl
 【Ozzy Osbourne「Crazy Train」+Rick Springfield「Jessie's Girl」】
④Voices In The Jungle
 【Guns 'n' Roses「Welcome To The Jungle」+Til Tuesday「Voices Carry」】
⑤Here Comes The Fool You Wanted
 【Bon Jovi「Wanted Dead Or Alive」+Cinderella「Nobody's Fool」+Eurythmics「Here Comes The Rain Again」】
⑥Shook Me Like A Prayer
 【AC/DC「You Shook Me All Night Long」+Madonna「Like A Prayer」】
⑦Straight To Rock City
 【Kiss「Detroit Rock City」+Paula Abdul「Straight Up」】
⑧Prayin' For A Sweet Weekend
 【Bon Jovi「Livin' On A Prayer」+Loverboy「Working For The Weekend」+Guns 'n' Roses「Sweet Child O' Mine」】
⑨Heaven And Heaven
 【Bryan Adams「Heaven」+Warrant「Heaven」】
⑩Breakin' The Love
 【Judas Priest「Breakin' The Law」+10CC「I'm Not In Love」】
⑪I Love Sugar On Me
 【Def Leppard「Pour Some Sugar On Me」+Joan Jett & The Blackhearts「I Love Rock 'n' Roll」】
⑫Round And Separated
 【Ratt「Round And Round」+Journey「Separate Ways」】
⑬Dreaming Of A Whole Lotta Breakfast
 【Aerosmith「Dream On」+Supertramp「Breakfast In America」+Led Zeppelin「Whole Lotta Love」+Led Zeppelin「Stairway To Heaven」】

 これを見れば分かるように、マドンナ、ポーラ・アブドゥル、ユーリズミックス、ティル・チューズデイ(←懐かしい!!!)から何とスーパートランプに至るまで、メタルだけに限定しない幅広い選曲も実にユニークで、そういったポップ・ソングが絶妙なアレンジと極上のサウンド・プロダクションによってバリバリのロックに生まれ変わっているところがこのアルバムの大きな魅力になっている。
Rock Sugar - Straight to Rock City

Rock Sugar - Shook Me Like A Prayer


 このようにどの曲もツッコミどころ満載で大いに楽しめるのだが、個人的に特にツボだったのが③で、ランディー・ローズの名リフに続いて「ジェシーズ・ガール」が飛び出してくるところがたまらない(≧▽≦) そしてアルバム中で一番気に入っているのが⑩。パワフルなジューダス・プリーストとメロディアスな10CCを融合することによって両者の長所が巧く引き出され、その相乗効果で実にカッコ良いキラー・チューンに仕上がっているのだ。このトラックは正直言って聴く前にはあんまり期待してなかっただけにその衝撃性も大きかった。
Crazy Girl - Rock Sugar

Rock Sugar - Breakin' The Love


 他にもクイーンの万華鏡のようなコーラス・ワークを見事に再現した②とか、入魂のハードロック絵巻⑬とか、単なる “ネタ・バンドによるお遊び的アルバム” というレベルを遥かに超越した完成度の高さを誇るこのCD、残念ながら版権の問題で現在は廃盤になっており、米アマゾンやイーベイではプレミアが付いて $60以上で取り引きされているようだが、YouTube にほぼ全曲がアップされているので、興味のある方は消される前にチェックしてみて下さいな(^.^)
Rock Sugar - We Will Kickstart Your Rhapsody

Rock Sugar - Dreaming of a Whole Lotta Breakfast