shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

【隠れラウドカット】「Tug Of War」ポルトガル盤

2022-10-09 | Paul McCartney
 先日久々にB-SELSに行ってきた。8~9月はお店が休みだったり私が多忙だったりで中々行けなかったのだが、ラッキーなことにたまたま平日の昼からオフが取れたのでB-SELS詣でを決め込んだ。
 私:こんにちわ。
 Sさん:おぉ~、これはこれはshiotchさん。
 私:ホンマにお久しぶりです。コロナはもう大丈夫ですか。
 Sさん:ええ、もうすっかり元気ですよ。
 私:それはよかったです。来れない間もずーっと「日記」見てたんですけど、最近グアテマラとかニカラグアとかバルバドスとか、各国盤がホンマに凄いことになってますね。
 Sさん:ハハハ...
 私:1年前に盛り上がってたウルグアイやペルーやトルコが今ではめっちゃ普通に思えますもん(笑)
 Sさん:でもね、売れるのはほとんどUKオリジナルなんですよ。
 私:まぁそうでしょうね。パナマ盤がガンガン売れたらこわいですもん(笑)
 Sさん:だからUK盤の補充が追い付かなくて... 1枚出品するのにもやっぱりそれなりの時間がかかりますから。
 私:いつも1枚1枚丁寧にクリーニングして試聴してから出してはりますもんね。売れたら売れたでその分の商品の補充が大変なんや...
 Sさん:でも常連のみなさんがこうして来てくださると元気が出ます。
 私:そう言っていただけると嬉しいです。
 Sさん:最近はどうですか?
 私:いやぁ~、円安がヤバすぎてeBay見てもちょっと腰引けますね。DiscogsはDiscogsでβヴァージョンとかいうクソ見にくいレイアウトになったのでこっちは絶縁しましてん。
 Sさん:へぇ~
 私:今はもうすぐ出る「Revolver」のボックスがめっちゃ楽しみです。
 Sさん:なるほど...
 私:で、今日なんですけど、何かこう...魂を揺さぶられるようなラウドカット盤ないですか?
 Sさん:ラウドカットですか...(大笑い)
 私:はい、こちらでいただいたベネズエラの「赤盤」やイスラエルの「Abbey Road」みたいな知る人ぞ知る隠れラウドカット盤があればぜひ聴かせてほしいんですけど...
 Sさん:あぁ、それならエエのがあります!(と言ってエサ箱から1枚レコードを取ってこられて...)これです。
 私:へぇ~、「Tug Of War」のポルトガル盤ですか。
 Sさん:shiotchさん各国盤いっぱい持っておられるからポルトガルも既に制覇済みかもしれませんが...
 私:いえいえ、ポルトガル盤なんて1枚も持ってなかったと思いますよ... 多分。最近年のせいでボケてきてるので確かじゃあないですけど(笑)少なくとも「Tug Of War」は持ってないです。
 Sさん:それはよかった。聴いてみやはります?
 私:もちろん!ぜひお願いします。
 Sさん:(A①「Tug Of War」がかかる)どうですか?
 私:おぉ、これめっちゃエエですやん!(とサムズアップするとSさんニッコリ)
 Sさん:ポルトガルの独自カットなんですよ、これ。
 私:商品説明ポップに「大迫力!!」「スバラシイ音です!!」って書いてありますが、ホンマにこれは凄い音ですね。こんな音の「Tug Of War」、聴いたことないですよ。
 Sさん:(A面が終わってレコードを裏返しながら)B面はもっと凄いですよ!
 私:えぇ~、楽しみ♡
 Sさん:(B①「Ballroom Dancing」がかかる)どうですか?
 私:うわぁ、これはヤバい。各楽器の1音1音が強いですね。
 Sさん:(その後、B面がかかっている間、Sさんは他の常連さんの接客をされていて、私はひたすらその凄い音に集中。やがてBラス「Ebony And Ivory」が終了...)ね、凄いラウドカットでしょ?
 私:いやぁ、参りました。ポルトガル恐るべしですね。これ、いただきます!
 Sさん:よろしいんですか?
 私:もちろんです。こんな凄い音の「Tug Of War」が聴けるなんて思いもしませんでした。今日は来てよかったですわ。
 Sさん:ありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとは。
 私:私の座右の銘は「三度のメシよりラウドカット」ですからね(笑) 早よ帰ってウチのシステムでも聴いてみたいので今日はこれで失礼しますわ。

 久々の収穫にウキウキしながら家に帰って早速聴いてみたのだが、まごうことなきラウドカットの音で大喜び\(^o^)/ 音がクリアーで、尚かつめっちゃ近いのだ。かぶりつきで聴く快感と言うか、これほどキレッキレの「Tug Of War」なんてちょっと他に記憶にない。躍動感に満ちたA②「Take It Away」や疾走感がヤバいB①「Ballroom Dancing」など、手持ちの「Tug Of War」LPの中でも三指に入る超高音質盤である。
 B-SELSは高価なUKオリジナル盤や珍しい各国盤だけでなく、こういう隠れ高音質盤もちゃーんと在庫してるところが凄いなぁと改めて感じ入った次第。ここでB-SELS関連の耳寄りな情報をひとつ:大阪方面から阪奈道路を東進し、奈良県庁を超えて交差点を左折→左折したところにある「奈良登大路自動車駐車場」は平日のみ2時間無料で停めれるので、遠方から車でB-SELSに来店される方には超オススメ。無意味な駐車料金数回分を浮かせてレコードを買うのがビートルマニアの生きる道だ。

P.S. お礼が遅くなりましたが、東京のWWさん、焼き菓子をどうもありがとうございました。おいしくいただきました。お心遣いに感謝感謝です。いつかB-SELSでご一緒できたらいいですね(^.^)

「Band On The Run」ペルー盤

2022-06-18 | Paul McCartney
 昨日6月17日は B-SELS の開店4周年ということで、一言お祝いが言いたくて仕事帰りにお店に行ってきた。爆音の「Jet」が流れる店内に入るとお客さんが一人イスに座って聴いておられ、Sさんは奥に引っ込んでおられるようだったのでいつものようにレコードをチェックし始めたところ、そのお客さんに声をかけられた。驚いてお顔を見ると、GW前に偶然B-SELSで相席して意気投合した常連のKMさんではないか! こちらに背を向けて座って聴いておられたのと、前回とは違ってカジュアルな格好をされていたので全く気付かなかったのだ。
 KMさんとは音の好みや音楽体験が似ているのもあるが、何よりもお人柄が素晴らしく、話していて時間を忘れるほど盛り上がるので再びお会いできてめちゃくちゃ嬉しい。“お久しぶりですぅ~” などとワイワイ話している声を聞きつけて奥からSさんが出てこられたので開店4周年のお祝いを言わせていただき、早速3人で果てしないビートルズ談義へと突入した。
 それにしても、不況でコロナ禍という逆境の中でビートルズ シカ扱わないアナログレコード専門店を4年間も続けてこられただけでも尊敬に値するのに、先細りどころか日本全国からお客さんがこのお店目当てに奈良を訪れるようになり、しかも “スタンパー1G盤” と “各国盤” という二刀流(?)でブイブイいわせておられるのが何よりも凄い。まさに “奈良にB-SELSあり” と言っても過言ではない快進撃である。Sさん、これからも良い音のレコードをいっぱい聴かせて下さいね。B-SELS4歳のお誕生日おめでとうございます。
Birthday - Paul McCartney [Live at Nagoya Dome 2018]


 で、日が明けて今日6月18日はポールのバースデーである。今年で80歳というのに御大はいたって元気そうで、Got Backツアーの北米レグを2日前に終えたばかり。来年あたりに来日してくれるかもと期待は膨らむばかりなのだが、今日はそんなポールの大名盤「Band On The Run」のペルー盤を取り上げようと思う。
 ビートルズの各国盤ではインド、ウルグアイ、イスラエルと並んで私好みの音を聴かせてくれるペルー盤だが、メンバーのソロ作品に関しては各国盤高音質四天王(?)の中では一番入手が困難だ。だから盤質NMの「Band On The Run」ペルー盤が$45で出品されているのを見つけた時は大コーフンし、速攻でBUY IT NOW したのだった。
 支払いから2週間たってやっと発送するというめちゃくちゃエエ加減なセラーだったので盤質表記も信用できひんなぁとかなり不安だったのだが、届いたレコードは盤もジャケットも特に問題無さそうでまずは一安心。デッドワックスをチェックすると手書きの大きな文字で P 14337 C / P 14338 C と彫ってあるいわゆるひとつの独自マトである。これは大いに期待できそうだ。
 レコードに針を落とすとA①「Band On The Run」のイントロがラウド&クリアーな音でスピーカーから流れてくる。いやぁ~、これはたまりませんわ。コクがあるのにキレがある... とでも言えばいいのか、重心が低くて濃厚でありながらシャープな切れ味も持ち合わせているという、独自カッティングかくあるべしという感じの実に気持ちの良い音なのだ。A②「Jet」なんか思わず一緒に歌いたくなる衝動に駆られるドライヴ感だし、一転してA③「Bluebird」のヴォーカルとコーラスの見事さに心を奪われる。A④「Mrs. Vandebilt」のめくるめくグルーヴは超気持ちイイし、A⑤「Let Me Roll It」の深~い音にはグイグイ引き込まれていく。
 B面も同様の見事な音作りで、B②「No Words」とB④「Picasso's Last Words」の間にB③「Helen Wheels」が入っているのも嬉しい。トドメはB⑤「Nineteen Hundred And Eighty-Five」で、大好きなこの曲をペルー盤ならではの圧倒的高音質で聴けるという贅沢。ポールのソロ最高傑作の誉れも高いこの「Band On The Run」はUK初版ラウドカットを始め、ニンバス盤やらUKマト3盤、ウルグアイ盤など音の良い盤が目白押しだが、このペルー盤も間違いなくそういった高音質盤の仲間入りをする1枚だと思う。
"Happy 80th Birthday Paul" Paul McCartney & Jon Bon Jovi@East Rutherford, NJ 6/16/22

DEF LEPPARD - Joe Elliott Wishes Paul McCartney Happy 80th Birthday - The Stadium Tour

「Red Rose Speedway」イスラエル盤

2022-05-29 | Paul McCartney
 「Red Rose Speedway」のイスラエル盤が届いた。発送は3月の末なのにゴールデンウイークを過ぎても届かず、ひょっとしてロシアのドローンに撃ち落とされたんちゃうかと不安だったのだが、2ヶ月近くかかって何とか無事に到着したのだった。一体どこに寄り道しとったんや?
 イスラエル盤は本家ビートルズとジョンのソロ(←当然ヨーコとのコラボ作品は論外...)に関してはほぼコンプリートを達成し、ポールのソロに関しても残すところ3タイトルだけというところまでまで迫っていたので、その内の1枚である「Red Rose Speedway」シルバー・パーロフォン盤が出品されたのを見つけた時はめっちゃ嬉しくて(→因みに残す2タイトルは「Venus And Mars」と「Wings Over America」なのだが、Discogsにも載ってないし過去10年以上 eBayで出品された形跡もないしで、イスラエル盤が出てるのかどうかすら怪しいが...)、速攻で BUY IT NOW したのだった。
 というのもこの「Red Rose Speedway」というアルバム、ポールのソロ作品の各国盤の中では「Wings Wild Life」に次いで入手困難だからだ。実を言うと半年ほど前 Discogsに「Red Rose Speedway」のペルー盤が出品されたのを見つけた時に “どーせペルー盤なんて狙ってるヤツ他におらんやろ...” と余裕をブッこいてセラーに現物写真を送れとちんたらメールしている隙にライバルにかっさらわれた苦い経験があり、今回その二の舞は何としても避けたかったのだ。イスラエル盤って市場に出て来さえすれば価格自体は安いのだが、絶対数が圧倒的に少ないのでチャンスを逃すと中々手に入らない。
 今回入手した「Red Rose Speedway」は€20で盤質もNMと問題なし。ジャケットは見開きではなく、このアルバムとしては珍しいシングル・タイプだ。いつものように盤面を徹底的にクリーニングしてからレコードに針を落とすとA①「Big Barn Bed」がクリアーかつクリスプな音で鳴り始めた。イスラエル盤のお家芸とでも言うべき太いベースの音に支えられ、この曲独特のグルーヴがめちゃくちゃ心地良く伝わってくる。
 一転してスロー・バラッドのA②「My Love」ではポールの情感豊かなヴォーカルを実に上手く表現しており、最初は音を分析的に聴いているのにいつの間にか音楽そのものに引き込まれてしまっているのだから大したものだ。B-SELSのSさんにも聴いていただいたが、“とてもキレイで繊細な音してますねぇ...” と感心しておられた。続くA③「Get On The Right Thing」の爽快感やA④「One More Kiss」の軽やかさ、そしてA⑤「Little Lamb Dragonfly」の噛めば噛むほど味が出るスルメ感(?)と、このアルバムの魅力を十分すぎるほど引き出した見事な音作りだ。
 「Red Rose Speedway」のB面は後半が巨大メドレーになっているが、私はAB面全体を通して1枚のトータル・アルバム的な聴き方をしている。そもそもこのアルバムに入っている曲は超有名曲「My Love」以外はすべて地味ながら聴くたびに味わいの深まる佳曲が揃っており、しかも曲想に統一感があるので、一気通聴すると大きなうねりの中に身を任せてポールのメロディーに浸れる気持ち良さがあるのだ。つまり「Red Rose Speedway」という大曲が1曲あって、それが12楽章に分けられた組曲のようなアルバムという捉え方である。「My Love」はさしずめガーシュウィンの「Porgy And Bess」における「Summertime」みたいなモンだろう。
 だからこのアルバムは曲単位で単品聴きしたり、小さな音で聴いたりしても面白くない。大音量で1枚通しで聴いてこその「Red Rose Speedway」であり、そういう聴き方をすることによって、ベースが気持ち良く張り出すイスラエル盤の音作りがこのアルバムの魅力を最大限に引き出すのだ。
 ということで、今回もイスラエル盤は大当たりでめでたしめでたし(^.^)  今のところ、70年代前半にプレスされたイスラエルのシルバー・パーロフォン盤にハズレ無しだ。
Medley: Hold Me Tight/Lazy Dynamite/Hands Of Love/Power Cut (2018 Remaster)

ポールの「Got Back Tour 2022」スタート!

2022-05-06 | Paul McCartney
 先週ついにポールの「Got Back Tour 2022」がスタートした。コロナ禍のせいで約3年ぶりのライヴ再開となるわけだが、注目すべきはそのセットリストである。前回の「Freshen Up Tour」とどこがどう変わっているのか大いに気になるところ。setlist.fmというサイトで調べてみたところ、ツアー初日の4/28のスポケーン公演は以下のようなセトリだった。
 1. Can't Buy Me Love
 2. Junior's Farm
 3. Letting Go
 4. Got To Get You Into My Life
 5. Come On To Me
 6. Let Me Roll It
 7. Getting Better
 8. Women And Wives
 9. My Valentine
 10. Nineteen Hundred And Eighty-Five
 11. Maybe I'm Amazed
 12. I've Just Seen A Face
 13. In Spite Of All The Danger
 14. Love Me Do
 15. Dance Tonight
 16. Blackbird
 17. Here Today
 18. Queenie Eye
 19. Lady Madonna
 20. Fuh You
 21. Being For The Benefit Of Mr. Kite
 22. Something
 23. Ob-La-Di, Ob-La-Da
 24. You Never Give Me Your Money
 25. She Came In Through The Bathroom Window
 26. Get Back
 27. Band On The Run
 28. Let It Be
 29. Live And Let Die
 30. Hey Jude
 ~ Encore ~
 31. I've Got A Feeling
 32. Birthday
 33. Helter Skelter
 34. Golden Slumbers ~ Carry That Weight ~ The End

Paul McCartney Live At Spokane Arena, Spokane, WA, USA - 28 April 2022 (Multicam - Full Concert)


 尚、5/2のシアトル公演初日ではQueenie Eye ⇒ NEWに、そして5/3のシアトル公演2日目では Women And Wives ⇒ Let 'Em In、I've Just Seen A Face ⇒ We Can Work It Out、更に前日変更されたばかりのNEWが再びQueenie Eye に戻されているようだが、基本的には前回の「Freshen Up Tour」と大きな違いはない。大好きな「Back In The U.S.S.R.」がセトリ落ちしてしまったのは予想通りというか、ロシアの暴挙を考えればまぁ仕方のないところだが、この名曲をポールが今後封印してしまうかもしれないと思うと(←もう演らんでしょ...)非常に残念だ。ロシアと言えば、アンコールで登場する時にポールがウクライナの国旗を振っていたのがめっちゃ印象的だった。
 このライヴの一番の見どころといえば何と言ってもジョンとのヴァーチャル・デュエットが実現した「I’ve Got A Feeling」、これに尽きるだろう。これはヤフー・ニュースでも「ポール・マッカートニーとジョン・レノンの “デュエット” が約53年ぶりに実現」と大きく取り上げられていたが、曲の中間部のジョンのパートでバックの巨大スクリーンに映画「Get Back」ルーフトップ・ライヴのジョンの映像が映し出され、ジョンが“Everybody had a hard year...♪” と歌うのに合わせてポールがカウンター・メロディーを歌うという、ファンとしては鳥肌モノの演出が用意されているのだ。こんなん、生で観たら絶対に泣いてまうわ(≧▽≦)
In 4KHD - Entire Song - "I've Got a Feeling" Paul McCartney and John Lennon in first encore of 2022!

Paul McCartney - I've Got A Feeling (PAUL SINGS WITH JOHN) at Spokane Arena 4/28/2022


 映画「Get Back」からの映像は他にも「Back In The U.S.S.R.」の代わりにセットインした「Get Back」でも使われていているのだが、ポールのライヴは毎回このようにファンが求めるものをしっかりと提供してくれるのが嬉しい。個人的希望を言わせてもらえば、多分2~3年以内に実現するであろう来日公演には、2015武道館の “セカイ ハツ コーカイ”「Another Girl」みたいなサプライズか、又は中止になった2014屋外ライヴのリベンジで「Live And Let Die」大花火大会を期待してしまうが、あんまり贅沢を言うとバチが当たるかな...(>_<)  いずれにせよ、ポールと再会できるその日が今から待ちきれない。
Paul McCartney Get Back

「Wings Wild Life」イスラエル盤

2022-03-27 | Paul McCartney
 円安がヤバい。1年ほど前は確か$1=105円台ぐらいだったように記憶しているが、ロシアのウクライナ侵攻のせいで気が付けばアッという間に122円を突破してまだまだ下がりそうな気配だ。 $1=75円という夢のような時代を知っている者としてはとてもじゃないが120円台突入だなんて悪夢としか言いようがない。ガソリンもアホみたいに高騰しとるし、誰でもエエから早よプーチンを抹殺してくれ!!!
 レコード蒐集に関して言えば、去年の秋頃からガンガン買いまくってきたイスラエル盤やペルー盤も何とか目ぼしいところは手に入れることが出来たので間一髪セーフという感じだが、ポンドも160円台を突破してしまったし、為替レートが元の正常な状態に戻るまでは今までみたいに海外から気軽にレコードを買うのが難しくなりそうだ。
 ということで今回はまだ $1が114円だった時に買ったイスラエル盤の「Wings Wild Life」だ。このレコードはポールのソロ作品の中でも五指に入る愛聴盤なので是非ともイスラエル盤ならではのごっつい重低音で聴いてみたいと思っていたのだが、結構レアらしくて中々市場には出てこず、結局ポールのイスラエル盤の中では最後の最後になってようやく手に入れることが出来たという貴重な1枚だ。
 買ったのは前回取り上げた「White Album」と同じ israeli-recordsというレコ屋さんからなのだが、ここの在庫の豊富さは特筆モノで、実際イスラエルの稀少盤を何枚もここから買っているし、盤質表記もコンサバでめっちゃ信頼できるという優良セラーなのだ。ジャケットにはステッカーが貼ってあってミミズが這ったようなヘブライ語で何か書いてあるのでひょっとするとサンプル盤か何かなのかもしれない。このレコードの盤質表記はVG+ だったが、実際に届いた盤はEXレベルのピカピカ盤でラッキーだ。
 もう一つラッキーだったのは届いた盤のA面のマト枝番がこれまたレアな9だったこと。これで UK、スウェーデン、ウルグアイに続いて4枚目の “マト9ワイルドライフ” が手に入ったわけで、それもこれも3年前に私をマト9パラダイスに引き込んで下さったB-SELSのSさんのおかげである。
 今回のイスラエル・マト9盤はレーベルに “Mfd In UK” と記されているにもかかわらずデッドワックスにはマザー・ナンバーもスタンパー・コードも刻まれていないので、UKマト9とはまた別の、輸出用マザーなのかもしれないが、何にせよ楽しみなことに変わりはない。そう言えば以前このマザー/スタンパー無しのマト9盤が “激レア他社プレス!” と称して出品されていたことがあったが、全英チャート最高11位止まりであまり売れなかったこのレコードのプレスを他社にまで依頼したというのはちょっと考えにくい。
 さて、いつものように丹念にレコード・クリーニングを施してからいよいよA面に針を落とす。1曲目は大好きな「Mumbo」だ。う~ん、何というパワフルな低音だろう! 地響きを立てて怒涛の勢いで押し寄せるポールのベースが快感そのもの(≧▽≦) A③「Love Is Strange」も実にメリハリの効いたサウンドでゴムまりのように弾むリズムが耳に心地良い。音の隅々まで力が漲っているというか、そのはち切れんばかりのパワーが一気に解放されてスピーカーからドバーッと迸り出るというか、まさにそんな感じなのだ。A④「Wild Life」でもポールの闊達なベースラインが音楽の根底をしっかりと支えており、イスラエル盤ならではのベース至上主義(?)がこのレコードの特徴であるラフな音作りと見事にマッチしているように思える。
 B面もA面同様の力強いサウンドで、マト云々関係なしにイスラエル盤らしい音作りになっており、重心の低い演奏に思わず聴き入ってしまうB①「Some People Never Know」、デニー・シーウェルの躍動感溢れるドラミングが楽しめるB②「I Am Your Singer」と、決して期待を裏切らない。B④「Dear Friend」も当時四面楚歌状態にあったポールの心情がヒシヒシと伝わってくるような緊張感のあるサウンドで、改めてイスラエル盤のクオリティーの高さを再認識させられた。
 まぁ元々大好きなアルバムなのでマトが何番であろうがどこの国のプレスであろうがそれなりに楽しめてしまうというのが正直なところだが、このイスラエル盤は手持ちの「Wild Life」の中でもかなり私好みのサウンドに仕上がっているお気に入りの1枚なのだ。

「McCartney」イスラエル盤

2021-12-21 | Paul McCartney
 去年の今頃、私は “寝ても覚めてもウルグアイ盤” 状態だったが、今年はイスラエル盤のことで頭が一杯だ。例によってビートルズ本体だけでなく各メンバーのソロ作品に至るまで、各アルバムのイスラエル盤が出ているかどうかを調べ上げてネットで買っているのだが、その存在は確認できても中々市場には出てこない盤が何枚かあって、毎日鵜の目鷹の目でそれらのレコードを探している。
 ポールの1stソロ「McCartney」のイスラエル盤もそんな入手困難盤の1枚だったが、少し前に B-SELS に入荷。ネットでいくら探しても見つからない盤をさりげなく在庫しているこのお店の仕入れルートは一体どうなっているのか興味津々だが、商品説明ポップにはいつものように “激レア!”“スゴイ音!” という煽り文句が並んでいる。これを聴かずにいられようか?

 私:今日はこれ聴かせてもらえますか?
 Sさん:あぁ、それですか...(と何となく歯切れが悪い)
 私:えっ、何か問題でも?
 Sさん:そのレコード、音はすごく良いんですけど、ちょっとビニ焼けしててノイズが出るんですよ。
 私:折角の稀少盤やのにもったいないですね。でも B-SELS の VG++ は他の店ならEXレベルやと思いますよ。まぁとりあえず聴かせてもらっていいですか?
 Sさん:もちろんです。UKマザーの 2U で、ホントに良い音がするんですよ。
 私:(A①「Lovely Linda」がかかる...)おぉ、これめっちゃ良いじゃないですか! ノイズって言ってもこの程度なら全然問題ないですよ。
 Sさん:それはよかったです。
 私:曲間の無音部分も私的には十分許容範囲内ですよ。音圧も高いですし、アコギの音も分厚くて気持ちエエです。
 Sさん:ビニ焼けさえなかったらなぁ... って思うんですよね。
 私:確かに内周に行くにつれちょっとノイズが増えますけど、言うてもまぁAラス曲「Man We Was Lonely」だけですやん。
 Sさん:どうしても内周曲の方がビニ焼けの影響が大きく出ちゃうんです。
 私:ビニ焼けと言えば、昔厚手の半透明のレコードカバーあったでしょ。あれに入れとくと確実に中のレコードやられますよね。私なんかあれ見ただけでブツブツ出ますわ。
 Sさん:はいはい、ありましたねぇ。ジャケットを通り抜けてレコード盤のビニールが化学変化してしまうヤツ...
 私:そうそう、あいつのせいで貴重なレコードを風邪ひき盤にされましてん。でもそれに比べたらこの程度のノイズなんてチョロイもんですわ。
 Sさん:ハハハ... じゃあ次B面行きましょう。
 私:前にも言いましたけど、このB②「Mama Miss America」めっちゃ好きですねん。ホンマにエエ音しとりますねぇ。それとB③「Teddy Boy」は最近「Get Back」セッションばかり聴いてるせいもあって、どうしてもビートルズのヴァージョンと比較してしちゃうんですけど、あれ聴いた後にこのソロ・ヴァージョンを聴くと物足りなく感じますね。
 Sさん:確かに。
 私:やっぱりジョンの合いの手みたいなしゃべりがめっちゃハマってると思うんですよね。それにくらべるとこっちは単調で浅い感じがします。
 Sさん:そうそう、ジョンってああいうアドリブ・フレーズ作らせたら天才ですよね。
 私:やっぱりポールにはジョンが必要って改めて思いました。
 Sさん:ですよね。
 私:B⑤「Maybe I'm Amazed」ってやっぱり曲の格が違いますね。そんな名曲中の名曲をこの深みのある音で聴ける幸せ...
 Sさん:喜んでいただけて良かったです。
 私:これ、買いますわ。
 Sさん:えーっ、ホンマにこれ買わはるんですか???
 私:売りモンとして店に出しといて今更何を言うてはるんですか(笑)
 Sさん:いや、まさかこれが売れるとは...
 私:(大笑いしながら)どこの世界に “ホンマにこれ買わはるんですか?” 言うて物を売る商売人がいてますねん?
 Sさん:ハハハ... でもまさか売れるとは思ってなかったので...
 私:この音聴いたら “買い” ですよ。それにこの程度のサーフェス・ノイズなら全然OKです。まぁウチのシステムでどうなるかはわかりませんが、多分大丈夫やと思います。
 Sさん:ちょっと値段引かせてもらいますね。
 私:ホンマですか。ありがとうございます! エエ買い物できましたわ(^.^)

家に帰って聴いてみると、お店で聴いた時よりもノイズが気にならなかった。ひょっとするとウチの丸針との相性が良かったのかもしれないが、とにかく貴重な1枚を安く手に入れることができて大喜びだ。Sさん、どうもありがとうございましたm(__)m

「Band On The Run」ボリビア盤

2021-11-19 | Paul McCartney
 去年 B-SELSでウルグアイ盤の音の良さを教えていただいて以来、ウルグアイからたくさんレコードを買って楽しんでいるが、何度も取り引きをするうちにあるセラーと親しくなり、色々と便宜を図ってもらえるようになった。送料をかなり安く抑えてくれるのももちろんありがたいが、何よりも嬉しいのは普通なら目視だけで済ます盤質チェックを、実際にレコードに針を落として聴いてもらい、盤の状態を詳細に教えてもらえること。ウルグアイ盤で一番困るのは針飛びなので、彼のおかげで安心してウルグアイからレコードを買えるようになった。
 そして先日、eBayで彼の出品リストをチェックしていて前々から探していた「Led Zeppelin I」と「The Works」(Queen)のウルグアイ盤を発見。ニンマリしながら更にリストを見ていくとウルグアイ盤以外のレコードも色々出品しているようで、その中にポールの「Band On The Run」のボリビア盤があったのだ。ボリビアって... アフリカちゃうんけ??? などと思いながら(←リベリアと間違えてた... 各国盤蒐集って地理の勉強になりますな... )ネットで調べてみると何と南米ではないか!
 最近 B-SELSでペルーやアルゼンチンのレコードを買っていることもあって南米のレコードに興味津々の私は “他のレコードと一緒に送ってもらったら実質送料タダみたいなモンやし、この機会を逃したらクソ高い送料を払って買うハメになるかもしれん...” と考え、このレコードも購入候補としてセラーに盤質チェックをお願いすることにした。
 彼の返事は “私が数ヶ月前に買ったUSリマスター盤より良い音。盤の状態はVG++。” だったが、興味を引かれたのはその続きで、“このレコードに関して興味深いのはレーベルのアップル・デザインが通常の表裏逆になっていること、そしてBラス曲「1985」のエンディングで例の “バ~ン ドォン ザラァ~ン♪” リプリーズが入ってなくて曲がその前に終わってしまうことで、こんなの初めて聴いた...” とのこと。レーベルのアップル表裏逆パターンはウルグアイ盤「Shaved Fish」で経験済みなので別に驚くほどのことではないが、「1985」のリプリーズ無しはさすがにアカンやろ... などと思いながらも “まぁそれならそれで一度聴いてみたいな...” という好奇心にかられ、結局ゼップやクイーンと一緒に購入した。$50だった。
 3枚届いた中で真っ先にターンテーブルに乗せたのはもちろん「Band On The Run」のボリビア盤だ。リプリーズの無い「1985」って一体どんな感じなんやろなぁ? という好奇心で頭が一杯の私は表裏逆なのを忘れて緑リンゴ面を上にして置いてしまい、いきなりB①「Mamunia」がかかってビックリ(笑) やっぱり「1985」は最後に聴かないと「Band On The Run」を聴いた気がしないので(←でしょ?)白リンゴ面を上にしてもう一度針を落とす。
 おぉ、ボリビアの独自カッティング、シャープな音で中々エエ感じやん...(^.^)  A①「Band On The Run」もA②「Jet」もドライヴ感抜群で実に気持ちが良い。圧巻はA④「Mrs. Vandebilt」のアコギの音と例の “ホッ ヘイ ホー!” コーラスで、ボリビア盤の切れ味抜群な音作りが生み出す凄まじいグルーヴは快感そのものだ。B面も絶好調で、“おっ、B④「Helen Wheels」も入っとるやん... (^.^)” とラス前までは上機嫌で聴いていた。
 さて、いよいよ問題のB⑤「1985」である。私はてっきりリプリーズ・パートだけが欠落しているものと思い込んでいたのだが、実際に聴いてみるとメイン・パート後半の一番盛り上がっていくところ(4分20秒あたり)でさっさとフェイドアウトしてしまうという許し難い暴挙... 何じゃこりゃぁ!!!
 何もそこまで怒らんでも... と思われるかもしれないが、野球に例えるなら9回裏2アウト満塁一打サヨナラの場面でテレビ中継が終わってしまう(←ネット配信中継なら例のクルクルが表示されて画面が止まってしまう...)ようなもの。これは「Band On The Run」という天下の大名盤に対する冒涜以外の何物でもない。もしも「天国への階段」や「ボヘミアン・ラプソディ」がエンディングの1分前にフェイドアウトしてしまったらゼップやクイーンのファンは絶対に許さないだろう。
 ということで思わず怒りの展開になってしまったが、よくよく考えてみれば一番怒っていいのはこのようなまがい物の「Band On The Run」を本物と信じ、ずーっと騙され続けてきたボリビアのポール・ファンたちかもしれない。80年代に入って音楽媒体がレコードからCDに移行して、初めてちゃんとした「Band On The Run」を聴いた彼らはさぞかし驚いたことだろう。
 各国盤蒐集は、ピッチがおかしいレコードに出くわしたりとか、フランス盤の「Come Together」、イタリア盤の「I Want You」、トルコ盤の「Morse Moose And Grey Goose」、そしてこの「1985」のように我が耳を疑いたくなるような “やらかし盤” に遭遇したりとか、確かにリスクが無いとは言い切れない。しかし意表を突くラウドカットやオリジナル盤では聴けない真空管カッティングの音に感動するなど、それ以上に得るものが多いのもこれまた事実。そういう意味でもビートルズ関連の各国盤蒐集ではこのような珍盤を広~い心で受け入れる度量が必要なのかもしれない。
Nineteen Hundred And Eighty Five (Remastered 2010)

「Wings Greatest」ペルー盤

2021-09-25 | Paul McCartney
 前回取り上げた「Abbey Road」の東南アジア盤を B-SELS で買った日の夜のこと、いつものように寝る前に B-SELS の「日記」をチェックしたところ、ほんの数時間前までペルー盤の話で一緒に盛り上がっていたSさんが新たなペルー盤をしれーっと(笑)出品されていた。
 そのレコードというのがウイングスのベスト盤「Wings Greatest」で、例によって例のごとく “期待を裏切らない、ペルー独特の力強い音だ。盤質もなかなか良い。キズらしいキズと言えば、「LET’EM IN」に1か所あるくらいで、それも大きな支障はない。全体を通じて綺麗な盤だ。LPに入っていない「ANOTHER DAY」「LIVE AND LET DIE」「HI HI HI」「MULL OF KINTYRE」など、これで聴くとサイコーだ。” と大絶賛されているのだ。
 シングル盤でしか聴けないウイングス黄金期のきら星のごときヒット曲の数々を、今ハマっているペルー盤の真空管カッティングの濃厚な音で聴けるとあればこれはもう買うシカない。私はすぐに B-SELS へ行き、このレコードを手に入れた。商品説明ポップには “超レア! ペルーオリジナル 独自カッティング すばらしい音!! 全体的にキレイな盤で音はすばらしい!” という煽り文句が並んでいる。超コンサバ・グレーディングを旨とするSさんの言葉に誇張は一切ない。

 私:コレ聴かせて下さい。
 Sさん:もちろん!(A①「Another Day」がかかる...)どうですか?
 私:おぉ、いきなり全開じゃないですか!
 Sさん:良いでしょ?
 私:ポールのよく歌うベースが前面に出てきて実に気持ちいいですし、ベースの音自体にも深みが感じられてこれはもうタマランですよ。
 Sさん:UKシングルではベースが重い感じなんですが、コレは引き締まった音してますね。
 私:ポールの闊達なベースラインがペルーの音作りと絶妙にマッチしてます。
 Sさん:そう思います。
 私:私はこの音めっちゃ好きです。まるでリード・ベースですよ。ポールのファンにはタマラン音作りです。
 Sさん:仰る通りですね。
 私:このA③「Live And Let Die」、花火が上がりそうなくらいのド迫力ですね。ポールの声も瑞々しいです。
 Sさん:コレはホンマに凄いです。
 私:A④「Junior’s Farm」、コレもヤバい...
 Sさん:強烈な音ですね。
 私:この「Wings Greatest」っていうアルバム、“音” だけでこんなにコーフンしたのは生まれて初めてですよ。自分史上最高の「Wings Greatest」です。
 Sさん:この音を聴いたらみんなこのアルバムが好きになりますよ。
 私:いやぁ、ペルー盤蒐集にますます拍車がかかりそうです。
 Sさん:ハハハ...
 私:このA⑥「Band On The Run」、音楽を前へ前へと押し進めていく圧倒的なドライヴ感が気持ち良すぎ... (≧▽≦)
 Sさん:この曲がこの音で聴けるという... まさに理想的ですよね。
 私:ホンマにそうですね。こんな音で聴きたかってん、っていう...
 Sさん:じゃあ次B面いきますね。
 私:B面も絶好調ですね。期待を裏切りません。
 Sさん:B②「Hi Hi Hi」も凄い音...
 私:自然と身体が揺れちゃいますね。これマジでヤバいですよ。
 Sさん:B③「Let ‘Em In」にコキズがあるんですよ。
 私:注意して聴くと確かに数回 “ブッ” といいますが、音のデカさの中に埋没してて殆ど気にならないレベルですよ。キズですら圧倒してしまうペルー盤おそるべし!
 Sさん:B④「My Love」いいですねぇ...
 私:リッチで濃厚な音ですね。それとこのB⑤「Jet」、音の密度が濃いですね。
 Sさん:濃い濃い...(笑)
 私:まさしく真空管効果ですよね。
 Sさん:そうやと思います。
 私:こんなB⑥「Mull Of Kintyre」、初めて聴きました。ゾクッとしますね。とにかくこの音の厚みは言葉に出来ないほど凄いです。
 Sさん:コレは絶対に気に入っていただけると思うてました。
 私:最高ですよ。仕事の疲れも吹き飛びましたわヽ(^o^)丿

「RAM」ペルー盤

2021-09-07 | Paul McCartney
 少し前のことになるが、いつものようにB-SELSの「日記」に目を通すと、Sさんが「RAM」のペルー盤を紹介されていた。ペルー盤??? 私は南米の国で自信を持って識別できるのはブラジルくらいで、ペルーなんて “ブラジルのそばにある細長~い国” というイメージしかなく、チリと全く区別がつかないというのが正直なところ。
 「日記」の内容を読むとSさんはそのペルー盤の音を “他にない音だ。素晴らしい、素晴らしい、素晴らしい音だ。” と “素晴らしい” という形容詞3連発で大絶賛されており、「RAM」を無人島レコードの最右翼として溺愛している私としてはこれはエライコッチャである。
 それともう一つ、私はB-SELSでSさんから色んな種類の各国盤を聴かせていただいて、南米の盤は独自のチューブ・カッティングのせいか私好みの濃厚で力強い音で鳴る確率が高いということを体験的に知っている。つい最近もエイジアの1stアルバムのペルー盤がアホみたいに安かったので試しに買ってみたらめちゃくちゃ凄い音が聴けたので、この「RAM」も多分 “当たり” に違いないと考え、早速B-SELSに聴かせてもらいに行った。
 お店に入って挨拶もそこそこに “「RAM」のペルー盤聴かせて下さいっ!!!” とお願いすると Sさんは嬉しそうに “ぜひ聴いて下さい。” と仰ってレコードをターンテーブルにセットされた。テーブルの上に置かれた商品紹介のポップに目をやると “素晴らしい音! 音に力があります。大変音の良い盤です。真空管と思われる迫真の音をぜひ聴いて下さい。” とべた褒めである。う~ん、これは楽しみだ(^.^)
 アルバム1曲目A①「Too Many People」のイントロが店内に響きわたる。そう、ただ単に音が “鳴っている” のではなく、まさしくスピーカーから “迸り出る” という感じでドバーッと勢いよく音の塊がすっ飛んでくるのだ。うわぁ~、こいつは凄い... いや、凄すぎる!!! 思わずSさんに“凄いっすね!” と言うと我が意を得たりという感じでいつもの満面の笑み(^.^)  A②「3 Legs」、A③「RAM」と、曲が変わってもその豪快な音は変わらずで、特にA③「RAM」のような軽快な曲ですらウクレレのストロークに力感が感じられるのだからこいつはたまらない(≧▽≦) 
 「日記」にも書かれているように両面1曲目に塩ビ焼けがあって少しだけチリパチいうにはいうが、楽曲部分の音圧がエグいので少々のチリパチなど軽く笑い飛ばしてしまう。というか、この程度のノイズが気になる人はレコードを諦めてCDでも聞いてればいいのだ、などと憎まれ口の一つも叩きたくなるくらい私には盤質良好に感じられた。結局二人ともほぼ無言両面を聴き終わり(←だからいつもの会話形式じゃないんです...)、B⑥「Back Seat Of My Car」の余韻に浸る間もなく “これ下さい!!!” と迷わず購入を決めた。
 B-SELSのオーディオ・システムで良い音がした盤は間違いなくウチのシステムで聴いても良い音がする。今回も家に帰ってすぐに2階に直行してこのペルー盤を聴いたのだが、リスニングルーム全体が地鳴り鳴動せんばかりのラウドな音がスピーカーから飛び出してきて大満足!!! 大好きな「RAM」を全身で浴びるように聴く喜びは priceless だ。

各国盤頂上決戦①「Give My Regards To Broad Street」

2021-07-11 | Paul McCartney
 私はこれまでで色んな国のレコードを手に入れてその日の気分で取っ替え引っ替え楽しんできたが、おかげでそれぞれの国の音作りの傾向みたいなものが何となくわかってきた。大雑把に言うと、オリジナル盤以外で私の音の好みに一番近いのはウルグアイ盤とトルコ盤で、それに時々インド盤が加わる(インドってホンマに当たり外れが激しいんですわ...)という感じ。ある時ふと、ウルグアイ盤とトルコ盤の頂上対決をやってみたら面白いんじゃないかと思いつき、Sさんに提案してみたところ快諾を得たので早速「Give My Regards To Broad Street」を抱えて土砂降りの雨の中をB-SELSへ直行。インド盤も含めたウルグアイvsトルコvsインドの三つ巴戦をやってみた。

 私:今日はポールの「ブロード・ストリート」をウルグアイ、トルコ、インドの三つ巴戦で聴き比べしましょう。何曲か選んで、曲ごとに比較するんです。
 Sさん:面白そうですね。早速聴きましょう。
 私:じゃあウルグアイからいきますか。A①「No More Lonely Nights」お願いします。
 Sさん:良いですねぇ... さすがはウルグアイです。
 私:これこれ、この音作り... めっちゃ好きな音です。じゃあ次インド...
 Sさん:これは独自カットですかね... (と言いながらお店のUK盤を持ってきてマトを見比べ)やっぱり全然違う...
 私:これは普通かな... 大きな欠点もないけど、かと言って面白みもない平凡な音に思えます。じゃあ最後にトルコお願いします。
 Sさん:おぉ、やっぱりトルコは素晴らしいですね。
 私:3枚の中でトルコが一番音圧高かったですね。ヴォーカルの表現力が素晴らしいですよ、これ。
 Sさん:ウルグアイはちょっと音圧が低かったですが、ヴォリューム上げたらエエ音してましたね。
 私:インドはこの3枚の中では一番普通に聞こえましたね。
 Sさん:よく言えば一番馴染みのある音とも言えますけど...
 私:トルコは最初の音聴いただけで違いが判りましたね。次はどの曲いきますか?
 Sさん: じゃあB②「Not Such A Bad Boy」をウルグアイで。
 私:ヴォリューム上げて聴くウルグアイはやっぱり良いですね。盤質がイマイチなのがちょっと難点ですが... ウルグアイ盤でキレイなの中々無いんですよ。
 Sさん:次、インドいきますね... これ、迫力はそれなりに出てますけど、音の広がりはウルグアイの方が断然良かったですね。
 私:インドは音が平面的なのに対し、ウルグアイは立体的というか、とにかくダイナミックですよね。じゃあ次トルコお願いします。
 Sさん:コレは凄いですねぇ...
 私:さすがの一言に尽きます。圧倒的ですよ。トルコやりよるなぁ... (≧▽≦)
 Sさん:マトのエエ加減な字の書き方もトルコらしい...(笑)
 私:それにしても「ブロード・ストリート」のトルコ盤なんて誰も目もくれんでしょうね... こんなに音が良いのに勿体ない...
 Sさん:しかも良い曲一杯入ってるのにねぇ...
 私:次の曲は?
 Sさん:B⑦「The Long And Winding Road」です。ウルグアイいきますね。
 私:いやぁ、これは立派なモンですね。
 Sさん:良いですねぇ。曲が良いのはもちろんですけど、この音は泣かせますね。
 私:次はインドですね... う~ん、先の2曲と同じで決して悪くはないんだけれど、ウルグアイやトルコに比べると何かが足りない...
 Sさん:音の厚みでウルグアイに負けてますね。
 私:何かこう、心を鷲づかみにするような要素に欠けてるんですよ。
 Sさん:ウルグアイは期待を裏切りませんね。じゃあ最後にトルコ...
 私:うわぁ、凄い! この3枚ではトルコが完全にアタマ一つ抜けてますね。
 Sさん:ウルグアイもすごく良かったですけど、上には上がおるっていうことですね。

とまぁこんなやり取りをしているとお店にお客さんが入ってこられた。その方はしばらくエサ箱を漁っておられたが、私とSさん同様にこのトルコ盤の「ワインディング・ロード」の音にいたく感心されたご様子で(←エサ箱を漁ってる時って何故かお店のスピーカーに耳がいってしまって目の前の盤に集中できないことが多くないですか...)、レコードを探す手を止めて “良い音してますねぇ!” と仰った。良い音というのは人それぞれの好みだが、このトルコ盤の音には万人の胸を打つような何かが宿っているように思えた。

「Tug Of War」トルコ盤

2021-07-04 | Paul McCartney
 3月に “春のトルコ盤祭り” を始めて以来、稀少なトルコ盤のユニークな音について書いてきたが、気がつけばもう7月... さすがにビートルズ関連のトルコ盤もネタが尽きてきたが、今日はそんな残り少ないトルコ盤の中でもかなり気に入っている「Tug Of War」を取り上げようと思う。
 トルコで Discogs に出品しているポップ&ロック系の信頼できるセラーは私の知る限り片手で足りるほどしかいないが、このレコードはその内の一つである shadesrecords というレコ屋から買ったもの。ここは他と比べて2~3割ほど安い値付けをしており、このレコードも€15というめちゃくちゃリーズナブルなお値段で買うことが出来た。盤質表記はVG+で、届いたレコードを最初に見た時は “盤面汚れとるなぁ... ホンマに大丈夫かいな...” と不安になったが、超音波洗浄を施して丁寧にスリーニングしてから実際に針を落としてみるとVG++ 〜 EXレベルの音で鳴ってくれて一安心(^.^)  しかも暖色系で厚みのある私好みのサウンドだったので、いつものようにB-SELSに持って行ってSさんにも聴いてもらうことにした。

 私:この前は空気読まずにポールの誕生日にジョン持って来ちゃいましたが、今日はちゃーんとポール持って来ましたで(笑)
 Sさん:いや、別にジョンでもいいんですけど、面白かったもんで...(笑)
 私:トルコの「Tug Of War」です。
 Sさん:へぇ~、初めて聴きます。(と言ってレコードに針を落とす)
 私:どうですか?
 Sさん:いいですね! 何て言うか、聴かせる音ですね。
 私:そうなんですよ。グイグイくるところがタマランです。
 Sさん:レコードはキレイではないんですけど、キレイな音してますね。
 私:そうそう、まさに神秘の国トルコならではです。
 Sさん:トルコのビニールの感じがすごくよく出てると思います。いや~、いいですねぇ...(^.^)
 私:ヴォリューム上げやはっってから更に良さが引き立ちましたね。
 Sさん:音そのものは若干小さ目なんですけど、少しヴォリュームを上げてそこんところをちゃーんと聴いてあげたらとても良い音なんですよね。そのままやったら “音ちっちゃいなー” で見過ごされてしまうかもしれへんのですけど。
 私:ちょっとヴォリュームを上げただけでガラリと表情が変わりましたね。
 Sさん:もう1回「Take It Away」聴いてもいいですか?
 私:どーぞどーぞ(^.^)
 Sさん:(満面の笑みで)良いなぁ...
 私:アナログの良さがすごく出てますね。
 Sさん:「Tug Of War」ってドラムのアタック音が強いアルバムなんですけど、これはポールの歌とかブラスの音とかがすごく耳に残ります。倍音が出やすいんでしょうね。ヴォリュームを上げても全然うるさくありません。全体的にすごくバランスの良い音作りだと思います。
 私:これってオーディオ的に優等生な音とは対極にあると思うんですよね。クラシックとかには全然向いてないんですけど、ポップ/ロック系にはピッタリの音ですよ。僕は大好きです。やっぱりアナログはこうでなくっちゃ!
 Sさん:「Tug Of War」のウルグアイ盤は音圧が高かったですけど、コレはコレですごく良い。人柄の良さが滲み出ているというか、可愛がってあげたくなる音です。
 私:親しみが湧くというか...
 Sさん:キレイじゃないとか失礼なこと言ってすみません(笑)
 私:ハハハ... 事実ですから...(笑) それに私は音さえ良ければ見た目なんでどーでもエエんです。
 Sさん:トルコの「Tug Of War」、すごく良い音でした(^.^)
 私:喜んでいただけて何よりです。これで前回の汚名返上できたかな(笑)

私が帰り支度を始めるとSさんは1枚のレコードをターンテーブルに乗せ、針を落とされた。「Abbey Road」のB面1曲目、「Here Comes The Sun」のイントロが勢いよくスピーカーから飛び出してくる。ビートルズのレコード・コレクターならこの曲をチリパチの無いクリアー&クリスプな音で聴けるだけで大喜びなのだが、その盤の音は更に力強さを感じさせるものだったので “どこの盤ですか?” と伺うと“UK盤です。スタンパーは3桁なんですけど、良い音してるでしょ?” とのこと。“3桁でこの音とは、よほど音溝の状態が良いんですね。” と申し上げるととても嬉しそうにしておられた。

「Twin Freaks」/ Paul McCartney

2021-05-30 | Paul McCartney
 前回「London Town」のトルコ盤を取り上げた時にBラスの「Morse Moose And Grey Goose」が中途半端な終わり方をして不満が残ると書いた。あの曲が大好きな私は気持ちをスッキリさせようとUK盤を引っ張り出してきて落とし前をつけたのだが、その時、“そう言えばこの曲には面白いマッシュアップ・ヴァージョンがあったなぁ...” とあるレコードのことを思い出し、懐かしくなってレコード棚から引っ張り出してきて何年振りかで聴いてみた。それがこの「Twin Freaks」である。
 このレコードは2005年にリリースされたもので、フリーランス・ヘルレイザーというDJにポールが依頼して作り上げたリミックス・アルバムだ。内容はポールの昔の楽曲を組み合わせてマッシュアップしたもので、ちょうどポールのライヴ開演前に会場に流れる様々な曲のリミックス・ヴァージョン・メドレーの原型みたいなものと言えば分かりやすいかも。
 このアルバムは限定2枚組LPとデジタル・ダウンロードのみでのリリースでCD化されていないこともあってか今では結構なプレミアが付いているようだが、YouTubeでタダで聴けるので未聴の方はそちらがオススメだ。因みにデジタル・ダウンロードが大嫌いな私は当然LP盤で入手。まだプレミアが付く前だったので中古盤を4,000円ほどで手に入れることが出来てラッキーだった。
 私はいわゆるひとつの “エレクトロニカ” と呼ばれるジャンルの音楽は正直言って苦手なのだが、ポールの曲となると話は別。もちろんポール公認ということで原曲が形をとどめていないようなワケのわからんダブ・ヴァージョンとは激しく一線を画す仕上がりで、「McCartney Ⅱ」を少し派手にしたくらいの穏健なリミックスとして保守的なポール・ファン、ビートルズ・ファンでも十分に楽しめる内容になっている。
 で、問題の「Morse Moose And Grey Goose」に話を移そう。このレコードの曲目を見てもどこにも「モーズ・ムース」の「モ」の字も載っていないのだが、 ちゃーんとD②「Coming Up」に使われているのである。それも効果音とかそういった類の使われ方ではなく、大胆にも「Morse Moose And Grey Goose」のバックの演奏と「Coming Up」のヴォーカルをマッシュアップさせており、それが又実に上手いこと調和しているのだから面白い。初めてこれを聴いた時、「Morse Moose And Grey Goose」の例の大仰なイントロに続いてポールの“You want a love... to last forever...♪” が聞こえてきた時に思わずイスから転げ落ちそうになってしまったのも今となっては懐かしい思い出だ。これは2004年のサマー・ツアー時に会場で流されていたようだが、論より証拠、まずは聴いてみて下さいな。
Paul McCartney - Twin Freaks: Coming Up


 このアルバムは「Coming Up」以外にも面白いトラックが満載だ。例えばB③「Temporary Secretary」、原曲そのものがバリバリのテクノ・ポップ・ナンバーなのでこのようなリミックスとの相性は抜群。同じく「McCartney Ⅱ」が出自のB①「Darkroom」も実に楽しいリミックスに仕上がっており、ついつい何度も聴きたくなる中毒性の高いトラックになっている。
Paul McCartney - Twin Freaks: Temporary Secretary

Paul McCartney - Twin Freaks: Darkroom


 私が個人的に一番気に入っているのがA②「Long Haired Lady (Reprise)」で、1stアルバム「McCartney」のB面1曲目を飾っていた隠れ名曲「Oo You」のリフを効果的に使って「Long Haired Lady」のメロディーに繋げているところがめっちゃ好き(^o^)丿  このあたりにもリミキサーであるフリーランス・ヘルレイザー氏のセンスの良さが窺える。ポール屈指の名曲をリミックスしたD③「Maybe I'm Amazed」も素晴らしい出来で、原曲の良さを壊すことなくリズムを強化した “もうひとつの”「Maybe I'm Amazed」を作り上げるのに成功している。
Paul McCartney - Twin Freaks: Long Haired Lady (Reprise)

Paul McCartney - Twin Freaks: Maybe I'm Amazed


 今回はポールのトルコ盤繋がりで、長いこと埃をかぶっていたこのレコードを棚から引っ張り出してきて聴いたのだが、久々に聴くポールのリミックス盤は実に新鮮で大いに楽しめた。レコード棚にはまだまだこのようなレコードが眠っていると思うので、コロナ禍や雨続きで外に出れないこの時期にこそじっくりとレコード棚の整理をしてお宝盤を発掘するとしよう。

「London Town」トルコ盤

2021-05-23 | Paul McCartney
 トルコでLPとして出ている元ビートルズのソロ・アルバムは、私の調べた限りではジョージとリンゴがゼロで、ジョンも「Double Fantasy」1枚きりだ。ポール1人が6枚と突出しており、例の “鼻ホジ・ジャケ” でえげつないプレミアが付いている「McCartney」以外は首尾よく手に入れることが出来た。今日はその中から「London Town」を取り上げたい。
 前にも書いたように、「London Town」は私がトルコ盤にハマるきっかけとなった思い出深い1枚で、B-SELSで聴かせていただいたその日のうちにDiscogsで VG+ の盤を €15でゲット。一緒に買った「Let It Be」と「Wild Life」はどちらかというと VG 寄りの VG+ だったが、この「London Town」は NM で十分通用するぐらい盤質が素晴らしく、トルコ盤ならではの高音質を安心して楽しめる。ジャケットは下辺の糊が完全に剥がれて全開状態だったので両面テープで丁寧に補修して見映えが良くなった。これで €15なら超お買い得と言えるだろう。
 音の方はB-SELSで聴かせていただいたのと同じ重心の低いサウンドで(←違うかったらえらいこっちゃですわな...)、手持ちのUK盤ともUS盤とも違うトルコ独自の音作りが楽しめる。デッドワックス部分には手書きで“PAS10012/1”“PAS10012/2” と刻まれているいわゆるひとつの独自マト盤なのだが、特筆すべきは盤の重さで、手に持った感触がズシリと重い。試しに量ってみると168gもあってちょっとビックリ。UK盤が120g、US盤が134gなのを考えればこのトルコ盤が桁外れの重量盤であることがよくわかる。Sさんが仰ったように、おそらくクオリティーの高いビニールを使っているのだろう。
 そんなトルコ盤で聴く「London Town」だが、アルバム・タイトル曲のA①「London Town」が醸し出すロンドンのくすんだ空のイメージと独自カットの質実剛健(?)なサウンドが上手くマッチしており思わず聴き入ってしまう。A②「Cafe On The Left Bank」やA⑦「I've Had Enough」(←何故かセンター・レーベルでも裏ジャケでもこの曲だけ記載漏れしてる...)のようなロック色の濃いナンバーがUK盤とは一味違う腰の据わった分厚い音で聴けるのも面白い。UK盤をキレッキレのナイフとすれば、このトルコ盤はごっついナタという感じだ。
 B①「With A Little Luck」がこのレコードならではの低重心サウンドで聴けるのも◎。ウイングスの魅力の一つでもある心地良いコーラス・ワークが実にシックで落ち着いた雰囲気を醸し出しており、その独特のコクと余韻は他の盤では聴けない類のものだ。
 このアルバムの特徴の一つはブリティッシュ・トラッド全振りのアコースティック色の強い曲が何曲か含まれていることだが、B②「Famous Groupies」といい、B③「Deliver Your Children」といい、B⑤「Don't Let It Bring You Down」といい、トルコ盤独特の重厚なサウンド・プロダクションで聴く分厚いアコギの音が実に気持ち良い。「London Town」というアルバムの性格とトルコの独自カッティングの相性は抜群だ。
 ただ一つ残念なのは、B面ラストに置かれた6分を超える大作「Morse Moose And Grey Goose」が3分少々でフェイド・アウトして終わってしまうこと。スケールの大きなアップテンポの長尺曲をアルバムのラストに持ってきて強烈なインパクトを与える手法は「Ram」の「Back Seat Of My Car」や「Band On The Run」の「Nineteen Hundred And Eighty-Five」でも見られたもので、私としてはこのアルバムの中でも非常に重要視している曲なのだが、よりにもよってその曲をこのようにぞんざいに扱って涼しい顔のトルコ人エンジニアの感性には呆れてしまう。
 そもそもこの曲は前半がハードでラウドな“モーズ・ムース”パート、中盤がアコギ全開の“グレイ・グース”パート、そしてエンディングで再び“モーズ・ムース”パートが登場するという三部構成になっているのだが、あろうことか中盤の“グレイ・グース”パートに入ってすぐにフェイド・アウトするのである。これではこの曲の良さが全く伝わってこないばかりか、それまで良い感じで来たアルバム全体の流れをブチ壊して中途半端な後味の悪さを残して終わってしまう。音が良いだけにこの曲のズサンな処理が返す返すも残念だが、それもひっくるめて清濁併せ呑むというか、広~い心で受け入れるところに各国盤蒐集の面白さがあるのかもしれない。

「Wings Wild Life」トルコ盤

2021-04-21 | Paul McCartney
 コロナの第4波到来で私の住んでいる奈良もついに100人の大台を突破してしまい、何と千葉県と並んで全国ワースト10位の感染者数になってしまった。アホの荒井知事は相変わらず何の対策も打たないので(奈良 / 荒井でググってみるとオートコンプリートで「無能」が出てきてワロタ...)安心して買い物にも行けないが、こんな時こそ家にこもってレコードを聴きまくるに限る。
 以前ここで取り上げたトルコ盤の「Let It Be」を買った時、同じセラーから同時購入した「Wild Life」だが、いきなりA①「Mumbo」で盛大に針飛びしてビックリ(゜o゜)  VG+ でしかもご丁寧に “Very nice copy” と書いてあったためについつい油断して大音量で鳴らしていたのでいきなりボン!という音と共に針が飛んだ時はホンマにビックリした(>_<)  “あ~、またかよ...(*_*)” と思いながら “苦しい時の神頼み” ならぬ “困った時のB-SELS頼み” でSさんに診てもらうことに。レコードを預けて1週間ほど経ってお店に行くとちゃんと直して下さっていた。

 Sさん:「Wild Life」何とか直しましたよ。
 私:え~っ、あれが直ったんですか! 音溝に平行についたかなり悪質なキズやったのに...
 Sさん:はい、とりあえず聴いてみて下さい。
 私:(曲が流れ、針飛び箇所を無事通過...)おぉ、直ってる! 何とお礼を言ったらいいのか...
 Sさん:喜んでいただけてよかったです。A①だけで20ヶ所ぐらいキズがあったんで苦労しました。
 私:えーっ! セラーは自分とこの装置でかけたら針飛びはなかったとかほざいとりましてんで。
 Sさん:それは絶対にないです。あれだけのキズでそれはない。
 私:トルコ人は信用できませんわ。
 Sさん:因みにA②「Bip Bop」は2ヶ所ですね。それ以降は怖くて聴けませんでした(笑)
 私:音そのものはホンマにエエんで、直していただいて万々歳です。針が飛ぶレコードなんかどんなに音が良くても絶対に聴きませんもん。
 Sさん:確かに。
 私:それにしても「RAM」と同じで腰の据わったダイナミックなサウンドですよね。
 Sさん:これも材質の違いを感じますね。安定してるんですよ、どっしりと。
 私:それを考えるとアナログってホンマに面白いですね。A③「Love Is Strange」なんてリズムや楽器の音色など聴き比べにピッタリやと思うんですけど、言うことナシの素晴らしい音で鳴ってますもんね。
 Sさん: 良い音してますねー。ギターの高音域が素晴らしいですよ。B①「Some People Never Know」も良いですね。音の鮮度が高いです。
 私:この音の良さにハマってもうて最近トルコ盤ばかり買ってるんですよ。
 Sさん:トルコのとりこですね(笑)
 私:うまい!(笑) 
 Sさん:いやぁ、「Wild Life」良かったです。トルコにはA面マト11が行ったんですね。トルコ盤の「Wild Life」のプレス数なんてエエとこ何百枚じゃないですか。そう考えるとUKマザーで材質も良くてプレス数が極端に少ないというのも大きいでしょうね。
 私:「RAM」もそうでしたけど、他の国でプレスされた盤に比べて、何て言うか “抜群の安定感” みたいなものを感じますね。
 Sさん:shiotchさんのお好きなサウンドやとは思いましたけど、まさかこれほどハマられるとは思いませんでした。
 私:自分でもこんなにハマるとは思いませんでしたわ。4月はもうトルコ盤一色ですよ。

(自分史上)最高の「RAM」【トルコ盤】

2021-04-15 | Paul McCartney
 今月に入ってトルコ盤ばかりガンガン買いまくっている。B-SELSで聴かせていただいた「London Town」をきっかけに、前回取り上げた「Let It Be」を始めビートルズ以外のアーティストのレコードも買っているのだが、今のところトルコ盤にハズレ無しなんである。そんな高音質トルコ盤の中でも群を抜いて素晴らしかったのが、我が無人島レコード候補の最右翼に位置する「RAM」だった。この「RAM」のトルコ盤というのはeBayでは過去18年間で5枚しか出ていない超の付くレア盤なのだが、ラッキーなことにDiscogsに1枚だけ出品されており、盤質VG+で$100ということで即決。届いた盤のあまりの音の良さにブッ飛んだ私は同じ「RAM」マニアのSさんとこのコーフンを分かち合おうと早速B-SELSへ持って行った。

 私:今日のも凄いですよ。何やと思います?
 Sさん:トルコ!
 私:正解!(笑)
 Sさん:ハハハハーッ!!!(と大笑い) すっかりトルコのとりこですね。
 私:何ダジャレ言うてますねん。さてトルコの何でしょう?
 Sさん:うーん...(としばらく考え込む)
 私:「RAM」です。
 Sさん:いやぁ、これ聴きたかったんですよ(と大コーフン)。
 私:じゃあ早速お願いします。
 Sさん:(A①「Too Many People」を聴いて開口一番)うわぁ、凄い音しますねぇ... 凄い凄い...(と大喜び)
 私:エグイでしょ?
 Sさん:音の塊ですね。(A②「3 Legs」を聴きながら)凄いなぁ... 凄いなぁ...
 私:A③「Ram」のコーラスもめちゃくちゃ分厚いですね。
 Sさん:何というド迫力! これはちょっと言葉を失いますね。
 私:これ、UKの1Gスタンパー盤の音って言っても通用しますよ。
 Sさん:私も全く同じこと言おうと思ってたところです。これ、マザーが消えてるんじゃなくって元々無いヤツやと思うんです。UKで使い回したヤツじゃなく、トルコへの輸出に使ったヤツの最初のスタンパーでしょうね。音の傾向は前聴いた「Let It Be」と似てますが、そこにスタンパーの若さとかトルコ盤の材質の良さとかが加わってこんな素晴らしい音になるんちゃうかと思いますね。
 私:なるほど。
 Sさん:それに、運良くトルコ盤を入手したとしてもこれだけ盤質の良いのにあたる確率は非常に低いと思いますよ。
 私:(B⑥「Back Seat Of My Car」の怒涛のエンディングを聴きながら)ブラボー!!!(と2人で拍手)
 Sさん:いいなぁ... トルコ。
 私:今まで聴いてきた「RAM」の中で文句なしに最高の音ですわ。
 Sさん:UKの元々の音圧の高さに加えて、やっぱり材質なんかなぁと思いますよ、この凄い音の秘密は。ビニールがエエんでしょうね。何ちゅーても原油生産国ですから。エエ石油使うとるということでしょう。
 私:なるほど... 確かにそうかもしれませんね。原油生産国という視点は僕には無かったですわ。また一つ勉強になりました。ますますトルコ盤にハマりそうです(^o^)丿