shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Osaka Ramones / Shonen Knife

2012-10-30 | Ramones
 私は少年ナイフの大ファンである。10年ぐらい前だったか、カーペンターズ・トリビュート・コンピ盤の中の1曲「トップ・オブ・ザ・ワールド」を聴いてそのケレン味のないストレートなロックンロールに惚れ込んだ私は彼女らのCDをガンガン聴きまくり、更に彼女らを経由してそのルーツであるラモーンズへと辿り着いた。特に2007年にリリースされたアルバム「Fun! Fun! Fun!」に収録されていた「ラモーンズ・フォーエヴァー」という曲は、ラモーンズ最後のジャパン・ツアーのオープニング・アクトを務めた少年ナイフからの愛情とリスペクトに溢れたラモーンズ・トリビュート・ソングとして忘れ難い。
Ramones Forever - Shonen Knife


 そんな少年ナイフが昨年7月に結成30周年を記念してリリースしたアルバムがこの「大阪ラモーンズ」だ。彼女らはこれまで「アイ・ウォナ・ビー・セデイテッド」と「スージー・イズ・ア・ヘッドバンガー」(ライヴ)の2曲をカヴァーしているが、今回はアルバム1枚丸ごとラモーンズ・カヴァーというからこれはもうエライコッチャである。しかもアマゾンで調べてみると日本盤とUS盤でジャケットが違うのだ。日本盤は 1stアルバム「ラモーンズの激情」のパロディー、US盤は3rdアルバム「ロード・トゥ・ルーイン」のパロディーになっており、私はパロジャケとしての完成度が高い後者(←メンバーのバックに描かれた大阪城と通天閣が笑えます...)を購入した。それに音楽利権ヤクザJASRACのマークを見るだけで虫唾が走るので、日本盤は出来るだけ買いたくないし...(笑)
 全13曲、どこを切っても会心のロックンロールが飛び出してくるこのアルバムだが、どれか1曲と言われれば⑧の「サイコ・セラピー」がサイコーだ(笑) ラモーンズ史上屈指のスピード感を誇るこの曲を少年ナイフは難なくカヴァー、文句の付けようがない疾走系ロックンロールになっており、その凄まじいまでのエネルギー・レベルと圧倒的なテンションの高さはもうさすがという他ない。
Psychotherapy - Shonen Knife


 なおこ以外のメンバーが歌っている曲が入ってるのもこのアルバムの大きな特徴だ。ベースのりつこが歌う⑥「シーナ・イズ・ア・パンクロッカー」とドラムスのえみが歌う⑨「KKK・トゥック・マイ・ベイビー・アウェイ」(←バックのコーラス・ワークがこれまた絶品!!)がその2曲なのだが、どちらもその歌声がめちゃくちゃ曲に合っており、なぜこれらの曲を選んだのかという必然性を感じさせるヴォーカルが楽しめる。声質と曲想のマッチングを鋭く見抜いた彼女たちの慧眼はさすがという他ない。
Sheena Is A Punk Rocker - Shonen Knife

Shonen Knife - The KKK Took My Baby Away


 カヴァー・アルバムにとっての成否を決める選曲面での大きな特徴は、①「ブリッツクリーグ・バップ」、②「ロックンロール・ハイスクール」、⑤「ロッカウェイ・ビーチ」といったバリバリのラモーンズ・クラシックスに混じって④「シーズ・ザ・ワン」や⑦「スキャッターガン」、⑪「チャイニーズ・ロック」といった隠れ名曲が選ばれていることで、このあたりにも彼女達の “筋金入りのラモーンズ・マニア” としての拘りが表れている。そんな中で私が特に気に入ったのが③「ウィー・ウォント・ザ・エアウェイヴズ」で、原曲のヘヴィーなグルーヴを飄々としたいつものナイフ節で見事に再現しているところが素晴らしい(^.^)
 ロックンロールの初期衝動を体現したラモーンズの音楽をストレートにカヴァーしたこのアルバムを愉しむのに理屈は要らない。ラモーンズの遺伝子を受け継ぎ、ピュアなロックンロールを聴かせてくれる少年ナイフにとって、まさに “原点回帰” といえる1枚だ。.
Shonen Knife: We Want the Airwaves (Cover)

Navidad Mas Chingona! / Los Ramons

2010-12-23 | Ramones
 時の経つのは早いもので今年も残すところあとわずか、気がつけばもうクリスマスである。この時期になると色んなブログでクリスマス・アルバムが取り上げられるのだが、私に関して言えば毎年毎年そんなにネタがあるわけがない。少なくともアルバム単体では、フィル・スペクター、ベンチャーズ、ビング・クロスビー、そしてファブ・フォーやビートマスといったパロディー盤があればそれで十分。季節限定というか、年に数日しか聴かないのだから、クリスマス・アルバムの愛聴盤なんておのずと限られてしまうというのが正直なところだ。
 しかし今年はそんな数少ないクリスマス・コレクションに面白い盤が1枚加わった。それがこの「Navidad Mas Chingona」(←読み方わかりません...スペイン語???)である。演奏しているのは Los Ramons (ロス・ラモンズ)というロサンゼルスのローカル・バンドで、 myspace の写真を見るとみんなソンブレロをかぶっている。つまりメキシコ系のラモーンズ・トリビュート・バンドということで、「ジングル・ベル」や「赤鼻のトナカイ」、「きよしこの夜」といった超有名クリスマス・ソングの数々をパンキッシュなラモーンズ・スタイルで演奏するという、以前ビーチ・ボーイズ・カヴァーで取り上げたドイツのラモウンズの上をいく筋金入りのオバカ集団である(笑)
 この盤はラモーンズ・カヴァーを色々漁っていた時に CD Baby というアメリカのインディー専門の通販サイトで見つけたもので、試聴してみて面白そうだったので即ゲット。しかし送られてきた盤は貧相な CD-R で、ジャケットもプリンターで印刷して裁断しただけの手作り感溢れる(?)ものだった。
 私はクリスマス・ソングにそれほど詳しいわけではないのでこのアルバムの収録曲で原曲をよく知っていたのは約半分ぐらいだが、全曲これでもかとばかりにマーキー・ラモーン直系のシンプルなドラムのビートに乗ってジョニー・ラモーンが憑依したかのようなダウンストローク一辺倒のギター・サウンドが爆裂しているので、原曲なんかあまり知らなくても十分楽しめてしまうのが嬉しい。
 中でも一番気に入ったのが、クリスマスの鈴の音に被せるような “1-2-3-4!” カウントで始まる③「ジングル・ベルズ」で、何といきなりイントロからバリバリの「KKK」だ!子供の頃から耳に馴染んだ「ジングル・ベルズ」のあのメロディーが絶妙なアレンジでラモーンズ・ナンバーと合体しており、初めてコレを聴いた時はイスから転げ落ちそうになった。これだからパロディー盤の探求はやめられない(^o^)丿
 高速回転させた⑥「サイレント・ナイト」は意外なほどしっくりくるし、原曲を全く聴いたこともない⑧「デック・ザ・ホールズ」は「53rd& 3rd」そのまんまだ。こんなパンキッシュな⑨「ウインター・ワンダーランド」が聴けるのはこの盤だけだろうし、⑩「赤鼻のトナカイ」もハンド・クラッピングがパーティー・ムードを盛り上げてくれる。⑪「フロスティ・ザ・スノウマン」や⑬「ヒア・カムズ・サンタクロース」なんか、原曲のメロディーを崩さずにめちゃくちゃカッコ良いロックンロールに仕上げているのは見事としか言いようがない。ラストの⑭「(リトル)ドラマー・ボーイ」では一旦曲が終わってから「53rd& 3rd」がフェード・インしてきて最後はスペイン語の叫び(?)で終わるという “ヘルター・スケルターな” 構成にニヤリとさせられる。
 このロス・ラモンズ盤はちょっと変わったクリスマス・アルバムはないかとお探しのロック・ファン、それもかなりディープなマニアにオススメの1枚だ。それにしてもラモーンズ・スタイルのクリスマス・ソングって、その発想自体が凄いわ...(≧▽≦)

ジングル・ベル


サイレント・ナイト


ウインター・ワンダーランド

Psycho Therapy / Skid Row

2010-12-14 | Ramones
 私にとっての80年代後半は殆どハードロック一色で、来る日も来る日もデフ・レパード、モトリー・クルー、AC/DC、ヴァン・ヘイレン、ボン・ジョヴィ、シンデレラ、ガンズ・アンド・ローゼズ、エアロスミス、ポイズン、ラットといったバンドのアルバムをガンガン聴きまくっていた。彼らに共通するのは分かりやすいメロディーを持った “良い曲” をノリの良いハードロックという形態で提示したことで、この手の音楽が大好きな私にとってはまさに “我が世の春” という感じだった。そんな中、 “ボン・ジョヴィの弟分” という肩書きでセンセーショナルなデビューを飾ったのがこのスキッド・ロウだった。
 ボン・ジョヴィのリッチー・サンボラは彼らのことを “エアロスミスのロックンロールにジューダス・プリーストのへヴィーさを加えたバンド” と表現したが、まさに言い得て妙である。しかし残念なことに私はジューダス・プリーストやアイアン・メイデンといったいわゆるクラシック・メタル系のサウンドが大の苦手で、ヴォーカリストのセバスチャン・バックの声もイマイチ私の好みには合わなかったし、鼻歌で歌えるような楽しいメロディーの曲(←ロックでもジャズでもコレが私にとって一番大事!)も皆無だったので、彼らのデビュー・アルバムは私の心には響かなかった。
 やがて90年代に入り、映画「レスラー」の主人公が嘆いたようにニルヴァーナの出現で80年代ハードロックのブームが去り、それに取って代わるようにして陰々滅々たるグランジ / オルタナ・ロックが台頭してきた。こんな鬱陶しい音楽聴けるか!と思った私はその時点でコンテンポラリーな洋楽ロックとキッパリ決別してジャズを聴き始めたので、それ以降スキッド・ロウの名前を耳にすることもなくなった。
 それから十数年の月日が流れ、ラモーンズ関係のカヴァーを漁っていた私はその中に偶然スキッド・ロウの名前を発見、しかも何と我が愛聴曲「サイコ・セラピー」をカヴァーしているというのだからコレはもうエライコッチャである。 “あの曲をセバスチャン・バックが一体どう歌うっちゅーねん?” と訝しく思った私が早速 YouTube でチェックしてみると驚いたことに歌っているのはベーシストのレイチェルだ。演奏もバリバリの疾走系ロックンロールでめちゃくちゃカッコ良く、イメージしていたヘヴィメタ・サウンドとは全然違う。私はすぐにこの曲が入っているミニ・アルバム「B-サイド・アワセルヴズ」を購入、ヤフオクで150円だった。
 このCDはメンバーそれぞれがお気に入りの曲を持ち寄ったという5曲入りのカヴァー・アルバムで、ラモーンズ以外はジューダス・プリースト、キッス、ラッシュ、そしてジミヘンの曲を取り上げているが、やはりこの「サイコ・セラピー」が曲も演奏もダントツに素晴らしく、ジャージー・メタルとNYパンクの邂逅が生んだアグレッシヴなヴァージョンに仕上がっている。
 又、この曲のプロモ・ビデオもスピード感に満ちた映像処理が曲想とバッチリ合っており、見ていて思わず引き込まれてしまう。 CJ を思わせる “ロン毛ぐるぐる回し” もあるし、ラモーンズ・ファンにとっては必見やなぁ…と思っていると、何とジョーイ・ラモーンがエレベーター・ボーイ役で出演しているではないか!友情出演みたいなノリで出たらしいが、カヴァー・ヴァージョンのビデオに本家が出てるっていうのが面白い。
 この曲は80年代に入って徐々にパワー・ポップ色を強めつつあったラモーンズがもう一度パンクの原点に返り、彼らより速く演奏する奴らなんていないということをハッキリと示すために作ったものだという。そういう意味で、ヘヴィメタ・バンドのスキッズがリスペクトを込めてパンキッシュにプレイしたこの「サイコ・セラピー」は最高のカヴァーだと思う。

skid row - Psycho Therapy

Rockaway Beach Boys / Ramouns

2010-12-01 | Ramones
 私はパンクルズやビータリカのようにある特定のスタイルで別のバンドの曲をカヴァーするパロディー・バンドが大好きで、このブログでも今まで率先して取り上げてきた。彼らはついつい色物として見られがちだが、高い演奏力はもちろんのこと、抜群のアレンジ能力やユーモアのセンスを持ち合わせているからこそこれらの合体技が可能なのだ。今日紹介するラモウンズ(Rämouns)の「ロッカウェイ・ビーチ・ボーイズ」もそんな楽しい1枚だ。
 “え~、またラモーンズかよ!” という声が聞こえてきそうだが(笑)、グループ名の a の上に点々が付いていることからもわかるように彼らはドイツのバンドで、アルバム全曲ラモーンズ(表記が紛らわしいなぁ...)・スタイルでビーチ・ボーイズ・ナンバーをカヴァーするという筋金入りのオバカ集団だ。ラモーンズの名曲「ロッカウェイ・ビーチ」にビーチ・ボーイズを引っ掛けたアルバム・タイトルも洒落ているが、何と言ってもラモーンズの 4th アルバム「ロード・トゥ・ルーイン」を見事にパロッた遊び心溢れるジャケット(←革ジャンにバミューダ・パンツ・スタイルにはワロタ...)が楽しい。やっぱりパロディーは徹底的に細部にまで拘ったマニアックなものがいい(^.^)
 ラモーンズを一般的な “パンクロック” のイメージで捉えて実際にはあまり聴いたことがない人にとっては “何でビーチ・ボーイズやねん?” ということになるだろうが、彼らは “ライヴはパンキッシュに、スタジオ・レコーディングはポップに” と2つの顔を巧く使い分けており、最もパンク色の濃かった初期のアルバム群にさえ60’sアメリカン・ポップスの薫りが濃厚に立ち込めていたし、彼らのサーフィン&ホット・ロッド・サウンド好きはアルバム「アシッド・イーターズ」に入っている「サーフ・シティ」や「サーフィン・サファリ」といったカヴァーを聴けば明らかだ。そういう意味では “ラモーンズ・スタイルでビーチ・ボーイズをカヴァー” というこのアルバムも彼らのルーツを考えれば理に適っていると言えるだろう。
 アルバムは全12曲で、 “1-2-3-4 !” のカウントからラウドなギターをフィーチャーしたポップパンク・アレンジで次々と連続投下されるビーチ・ボーイズ・ナンバーの数々に大笑い(^o^)丿 ①「サーフィン・サファリ」、②「シャット・ダウン」、③「サーフィンUSA」、④「リトル・ホンダ」、⑤「409」、⑥「イン・マイ・ルーム」、⑦「アイ・ゲット・アラウンド」、⑧「リトル・デュース・クーペ」、⑨「ファン・ファン・ファン」、⑩「ヘルプ・ミー・ロンダ」、⑪「キャッチ・ア・ウエイヴ」、⑫「ドゥ・イット・アゲイン」といった BB5 珠玉の名曲たちが、ギンギンにディストーションの効いたギターによって気合いを入れられ(笑)、カッコ良いロックンロールとしてスピーカーから勢いよく飛び出してくるのだ。
 しかもそれぞれのトラックが “「エンド・オブ・ザ・センチュリー」のレコーディング時にラモーンズとビーチ・ボーイズがフィル・スペクター立会いの下に行った秘密セッション(←もちろんそんなモノ実際にあるワケないが...)のテープ発掘!” とか言われたら信じてしまいそうなぐらいに高い完成度を誇っているのだからバカにはできない。特に本家ビーチ・ボーイズを彷彿とさせるヴォーカルやコーラス・ワークは絶品で、まさに “ガレージ色の強いビーチ・ボーイズ” といった感じだ。
 どちらかというとラモーンズよりもビーチ・ボーイズ色の濃い内容になっているので堅気のポップス・ファンが聴いても何の違和感もなく親しめるキャッチーなアルバムだが、随所にニヤリとさせられるラモーンズ・フレーズがしっかりとちりばめられており、両方のファンである私なんかもう楽しくって仕方がない。特に⑦のイントロのリズム・パターンはもろ「ドゥー・ユー・リメンバー・ロックンロール・レディオ」だし、⑧のエンディングなんか「アイ・ドン・ウォナ・ゴー・ダウン・トゥ・ザ・ベイスメント」そのままだ。こういう遊び心がファンとしてはたまりません(≧▽≦)
 このアルバムはキャッチーなメロディー、美しいコーラス・ハーモニー、そして毒気のあるギター・ロック・サウンドが見事に融合した傑作で、ラモーンズ・ファン、ビーチ・ボーイズ・ファンはもちろんのこと、ビーチ・ボーイズは軽すぎてちょっと...というハードコアなロック・ファンでも結構楽しめそうな1枚だと思う。

Ramouns - I get around - The beach boys version


サーフィンUSA


Ramouns - Fun Fun Fun - Punk version (Beach boys cover)

ラモーンズの激情

2010-11-20 | Ramones
 この“ラモーンズ祭り” を始めてから何やかんやで2ヶ月近くが経った。最初は “祭り” ではなく「エンド・オブ・ザ・センチュリー」と2枚組ベストで終わらせるはずが、ミイラ取りがミイラにといういつものパターンに突入。結局10月から11月にかけてはほぼラモーンズ一色で、あまり紹介されることのないマイナー盤やトリビュート盤を中心に10枚を超えるアルバムを取り上げてきたのだが、やはり彼らの最高傑作といえるデビュー・アルバム「ラモーンズの激情」を取り上げないワケにはいかない。
 私のラモーンズ遍歴は、まずフィル・スペクターがプロデュースした 5th「エンド・オブ・ザ・センチュリー」からスタートし、次にベスト盤「ラモーンズ・アンソロジー」で全体像を把握、その後少年ナイフ経由で初期ラモーンズの魅力を再発見し、この 1st 「ラモーンズの激情」から3rd「ロケット・トゥ・ロシア」までの “イケイケ・ポップ・パンク初期三部作” を一気に購入、完全にラモーンズ中毒になったという次第。今は第2次マイブームの真っ最中だ。
 上記三部作の中で純粋に完成度の高さだけで言えば、パンクロックの攻撃性とアメリカン・ポップスの大衆性が高度な次元でバランスされた 3rd「ロケット・トゥ・ロシア」が一番だと思うが、初めて聴いた時の衝撃性という点では誰が何と言おうとロックの持つプリミティヴな初期衝動を真空パックして音溝に封じ込めたスリリングな展開に圧倒されるこの 1st アルバムだろう。
 このアルバムは全14曲でトータル時間が30分以下、つまり1曲平均約2分という短さにまず驚かされる。しかもその殆どが高速ダウンストローク主体のラウドなギターが轟きわたる疾走系ロックンロールなのだからたまらない(≧▽≦)  とにかくそのワイルドで粗削りなガレージ・サウンドは圧巻の一言で、進化の過程で複雑になりすぎたロックへのアンチテーゼとして、徹底的に贅肉を削ぎ落としたシンプルな曲構成が潔い。だからこのアルバムは曲単位でつまみ聴きするのではなく、1枚丸ごと一気聴きすることによって初めてその真価が分かるようになっている。そのハイ・テンションな演奏の波状攻撃はまるで北斗百烈拳のような凄まじさだ。
個々の曲に関して言うと、やはりアルバム1曲目を飾る①「ブリッツクリーグ・バップ」に尽きるだろう。当時流行っていたベイ・シティ・ローラーズの「サタディ・ナイト」の掛け声にインスパイアされてトミー・ラモーンが書いたというアンセム的なナンバーで、 “ヘイホー・レッツゴー” はローラーズの “S-A-T-U-R...”に勝るとも劣らないインパクトを内包している。それにしてもラモーンズとローラーズという一見水と油のような存在が実は見えない所で繋がっていたという事実が面白い。ボビー・フラー・フォーでヒットし、あのクラッシュもカヴァーしていた「アイ・フォート・ザ・ロー」を想わせるAメロも秀逸で、ラモーンズと言えばまずこの曲が頭に浮かぶファンも多いだろう。
 彼らが凡百のパンクロック・バンドと決定的に違う点は伝統的なアメリカン・ポップスへの深~い愛情が随所に感じられるところ。それを如実に表しているのがクリス・モンテス62年のヒット曲⑫「レッツ・ダンス」をカヴァーしていることで、原曲の持っていた “楽しさ” を殺さずに、誰でも口ずさめるキャッチーなロックンロールに仕上げているところが素晴らしい。メロディアスにロックするという、一見誰にでも出来そうで中々出来ないことをサラッとやってのけるラモーンズの音楽的な懐の深さに脱帽だ。
 このアルバムはアグレッシヴなサウンドやキャッチーなメロディーだけでなく、その独特な歌詞世界にも注目だ。曲目を見てまず気づくのが、やたらと「アイ・ウォナ...」(..したい)や「アイ・ドン・ウォナ...」(...したくない)で始まる曲が多いということ。④「アイ・ウォナ・ビー・ユア・ボーイフレンド」、⑥「ナウ・アイ・ウォナ・スニッフ・サム・グルー」(←シンナー吸いたい、ってか?)、⑦「アイ・ドン・ウォナ・ゴー・ダウン・トゥ・ザ・ベイスメント」(←「恐怖の地下室」っていう邦題、ホラー映画じゃあるまいし...)、⑬「アイ・ドン・ウォナ・ウォーク・アラウンド・ウィズ・ユー」(←「まっぴらさ」っていう邦題はもうちょっと何とかならんかったんか...)と、このアルバムだけでも4曲あるし、このアルバム以降も彼らには「アイ・ウォナ...」で始まるタイトルの曲がやたらと多い。まぁそれだけ彼らが自分の感情をストレートに歌にしているということなのだろう。
 それと、彼らの歌詞にはラジオで放送できそうにないくらいヤバいものが多い。上の⑥“シンナー吸いたい” は言うまでもなく、 “ガキをバットでぶん殴れ!” と繰り返す②「ビート・オン・ザ・ブラット」、客を殺してサツに追われる男娼の事を歌った⑪「53rd & 3rd」、“頼むから「ナチ」だけはやめてくれ!” というレコード会社社長の言葉をあざ笑うように “俺はナチ!” と連呼する⑭「トゥデイ・ユア・ラヴ・トゥモロウ・ザ・ワールド」など、ブラック・ユーモア連発だ。この “激ヤバ路線” の極めつけが80年代ラモーンズの最高傑作「サイコ・セラピー」の“誰かをぶっ殺してやる...”(←いくら何でもコレではラジオでかからんわ...)なのだろう。
 マッシュルーム・カットに革ジャン、ジーンズ、スニーカーでビシッとキメたモノクロ・ジャケットは、パッと見ただけで音楽が聞こえてきそうなカッコ良さだ。曲良し、演奏良し、ジャケット良しと三拍子揃ったこのアルバムは、ロックンロールを語る上で避けて通ることの出来ない金字塔的な1枚だと思う。

The Ramones - "Blitzkrieg Bop" (Live) Studio Hamburg


The Ramones - Let's Dance


Ramones I Don't Wanna Go Down To The Basement

All Good Cretins Go To Heaven ! ~a tribute to the RAMONES~

2010-11-08 | Ramones
 ラモーンズのアルバムは中身の音楽はどれも素晴らしいのだが、ジャケットはイマイチ、というものが少なくない。“スポットライトの中に浮かび上がる黒い影” を描いたマンガチックな「プレザント・ドリームズ」なんて全然ロックンロールを感じさせないし、「ブレイン・ドレイン」や「アシッド・イーターズ」、「ウィーアー・アウタ・ヒア」なんかもジャケットを見ただけでパスしたくなるような代物だ。「アニマル・ボーイ」や「ハーフウェイ・トゥ・サニティ」に至ってはすぐに思い出せないぐらい影が薄い。文句なしにカッコイイ!と思えるのは「ラモーンズの激情」、「ロード・トゥ・ルーイン」、そして「トゥー・タフ・トゥ・ダイ」ぐらいだ。音楽パッケージとしてのジャケット・アートワークを重視している私にとってコレは結構大きな問題だ。
 ジャケット軽視(?)の傾向は彼らのトリビュート盤に関しても同じで、奈良美智のイラストがインパクト抜群の「電撃バップ!」や女性のヘソ出しジャケが魅力の「ボッサン・ラモーンズ」を除けば印象に残らない凡庸なものばかりだ。そんなお寒い状況の中、最近 eBay で偶然見つけて思わずジャケ買いしてしまったのがこの「オール・グッド・クリーティンズ・ゴー・トゥ・ヘヴン」だ。 A.J.B.Hangover という人(←二日酔い??? 変わった名前やね...)が描いたこのイラスト、遠近法を用いた抜群の構図センスといい、星条旗をあしらった絶妙な色使いといい、実に見事なアートワークだ。もうジャケットを見ただけで音楽が聞こえてきそうではないか!
 このタイトルは名曲「クリーティン・ホップ」の歌詞から取ったもので “愛すべきバカ者たちはみんな天国へ行く” とでも訳せばいいのか、ジョーイ、ディーディー、そしてジョニーとフロントメン3人が既に亡くなってしまったラモーンズに捧げるアルバムにはピッタリだ。尚、これも前回の「ブリッツクリーグ・オーヴァー・ユー」と同じくドイツ編集のコンピ盤で、全28トラック中何と19組までがドイツのバンドで占められている。そういえばベルリンにはラモーンズ・ミュージアムもあるし、ドイツ人ってラモーンズが大好きなんやね(^.^)
 このアルバムは最初の10曲ぐらいはオリジナルに忠実なアレンジの、いわゆるひとつの “完コピ” に近い演奏が多く、中盤以降は各バンドの個性を生かしたユニークなヴァージョンが目白押しだ。前半の “完コピ” 系では AC/DC みたいなリフがカッコイイ FreeZeeBee の①「アイ・キャント・ギヴ・ユー・エニシング」、オリジナルを更に高速回転させた Gutbucket の②「サムバディ・プット・サムシング・イン・マイ・ドリンク」、ロックの初期衝動爆裂といった感じがたまらない The Commandos の④「コマンド」、ポップスをハードロックでビシッとキメるとこうなるという絶好のお手本のような Oklahoma Bomb Squad の⑤「ドゥー・ユー・ウォナ・ダンス」、メタリカの「エンター・サンドマン」みたいなサウンドがめっちゃカッコ良い Treekillaz の⑨「ガーデン・オブ・セレニティ」あたりが気に入っている。
 しかし何と言っても一番の聴きものは Wax.On Wax.Off というバンドによる⑦「ザ・ナイト・ザット・ジョーイ・ダイド」だろう。これはタイトルが示す通りジョーイへの追悼ソングだが、曲調はラモーンズらしさ丸出しのアップテンポなもので、特に「アイ・ウォナ・ビー・セディテッド」を想わせる “バァー バァー ババァ~♪” フレーズの折り込み方には唸ってしまう。又、ポジティヴな歌詞からも彼らのジョーイへの深い愛情が伝わってきて涙ちょちょぎれる。辛気臭い追悼ソングはラモーンズには似合わない。
 The Popzillas の⑫「ロッカウェイ・ビーチ」は囁くような女性ヴォーカルにハード・エッジなギターが絡んでいくところがたまらないし、ヒューマン・リーグみたいな無機質エレクトロ・ポップ・サウンドで味付けされた Electric Hippie feat. Rebella Jane Doe の⑬「ブリッツクリーグ・バップ」も面白い。このアルバムのためにフィンランドで結成されたプロジェクト・バンド Snails Of Finland の⑯「スラッグ」は60'sポップ・バンド風アレンジが耳に心地良いし、Hens Hensen の⑰「アイ・ウォント・ユー・アラウンド」は “アンプラグド・ラモーンズ” っぽいフォーキーなサウンドが新鮮だ。ロクセットみたいなスウェーデンの男女2人組 Waver が歌う⑱「ダニー・セッズ」は女性ヴォーカルの吸引力がピカイチで中々味わい深いスロー・バラッドに仕上がっている。
 Ya*Hoo の⑲「アイ・ウォナ・ビー・セディテッド」は何とカントリー&ウエスタン・スタイルだ!パッと見は奇を衒ったような大胆なアレンジだが、以前取り上げたロカビリー・アレンジのラモーンズ・カヴァー盤でも明らかだったように、ロックンロールとカントリー / ロカビリーは異母兄弟みたいなモンなので意外なほど相性は良く、このヴァージョンも違和感なく聴けてしまう。
 Senzabenza という風邪薬みたいな名前のイタリアのバンドがカヴァーした⑳「ボンゾ・ゴーズ・トゥ・ビッツバーグ」は小型スポーツカーでワインディングを軽快に駆け抜けていくような爽快感溢れるロックンロール。こーゆーの、大好きです(^.^)  Joe Leila の(22)「サーフィン・バード」も初期ラモーンズが持っていた弾けるようなポップ感覚を見事に再現、1分17秒から炸裂する “ヘイホー・レッツゴー!” がたまらない。
 このアルバムは他のトリビュート盤ではちょっと聞けないようなユニークな選曲も魅力の一つで、中でも「ブレイン・ドレイン」収録の隠れ名曲 (27)「ゼロ・ゼロ・UFO」なんか実にマニアックな選曲だ。コレは Körperwerk というドイツのバンドの演奏だが、この曲のカヴァーなんて他にちょっと思い当たらない。ただ、 “嫁ブサイクでしたぁ~♪” の空耳で有名(?)な Alexisonfire の「Mailbox Arson」みたいなスピード・メタル・サウンドはちょっとしんどいけど...(>_<)
 ラモーンズってレコード・セールスやヒット・チャートの成績だけを見れば全然たいしたことはないのに、トリビュート・アルバムの数で言うと私の知る限りではビートルズに次ぐ多さで、ひょっとするとゼッペリンよりも多いかもしれない。既に解散してから15年近くが経ち、4人のメンバーのうち3人はこの世にいないというのに未だに世界中で愛され、リアルタイムで彼らを知らない新しいファンを次々と生み出している。これこそまさに “記録” よりも “記憶” に残るバンド、ラモーンズらしい現象と言えるだろう。

アイ・キャント・ギヴ・ユー・エニシング


ザ・ナイト・ザット・ジョーイ・ダイド


ロッカウェイ・ビーチ


senzabenza - bonzo goes to bitburg.wmv

Blitzkrieg Over You ~ A Tribute to the Ramones ~

2010-11-06 | Ramones
 性懲りもなく11月に突入した “ラモーンズ祭り” だが、やればやるほど新発見・再発見があって楽しーなったら楽しーな(^o^)丿 もうパンクしか聴けない身体に...なるワケないか(笑) 冗談はさておき、今日は数多いラモーンズ・トリビュート・コンピレーション・アルバムの中でも一二を争う愛聴盤「ブリッツクリーグ・オーヴァー・ユー」だ。 NASTY VINYL というドイツのレーベルから出ているせいか、全26トラックの半数を超える14組がドイツのバンドということで、怪しいドイツ語が乱舞する面白いコンピ盤になっている。
 アルバムの冒頭を飾る Die Toten Hosen (←読み方わからへん...)の①「ブリッツクリーグ・バップ」は何とフィーチャリング・ジョーイ・ラモーンだ。いきなり本家の登場である。その辺りの経緯も含めてこのバンドのことは全く知らないが、ドライヴ感溢れる弾むような演奏が圧巻で、バンドが一体となって生み出す高揚感がたまらない(≧▽≦) この曲のカヴァーでは間違いなくベスト!と思える痛快なヴァージョンだ。
 この盤で私が知っていた数少ないアーティストが②「R.A.M.O.N.E.S.」のモーターヘッドと⑭「Lass' Mich In Ruhe」のニナ・ハーゲンだ。②は彼らが作ったラモーンズ賛歌で、これぞモーターヘッド!と快哉を叫びたくなるような轟音にシビレてしまう。彼らの持ち味である猥雑なエネルギーに満ち溢れたアグレッシヴなサウンドにアドレナリン大爆発だ。因みに本家のラモーンズもこの曲を逆カヴァー(?)しており、アルバム「グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」のボートラでスタジオ録音ヴァージョンが、ラスト・ライヴの模様を収めた「ウィーアー・アウタ・ヒア」ではゲストのレミーが CJ とヴォーカルを分け合っているライヴ・ヴァージョンが楽しめる。⑭のニナ・ハーゲンはゴリゴリのパンク・ナンバーで彼女とディー・ディーの共作というのが興味深いが、聴けば聴くほどクセになるスルメ・チューンだ。彼女のアクの強いヴォーカルは好き嫌いが分かれそうだが私は結構気に入っている。
 Gigantor feat. Leonard G. Phillips の④「シーズ・ザ・ワン」はドイツ訛りの強いヴォーカルがちょっとアレだが軽快なリズムが耳に心地良いし、Rasta Knast の⑤「ティーンエイジ・ロボトミー」も高速で飛ばしながらも原曲のメロディーを崩さずに演奏しているところがエエ感じ。 Die Arzte の⑦「Die Wikingjugend hat mein Mädchen entführt」はタイトルを見た時は一瞬ドイツ語のオリジナル曲かと思ったが、曲を聴いてビックリ... この親しみやすいメロディは「KKK」だ!歌詞はサッパリわからないが、ゴツゴツしたドイツ語で聴く「KKK」も中々味があって乙なモンだ。
 Scattergun の⑧「アイム・アゲインスト・イット」は曲に入る前の“I don’t like ○○, I hate ××...” という呟きが絶妙なイントロの役割を果たし、ハイハットのカウントから一気呵成に突っ走る流れがカッコイイ(≧▽≦) Sigi Pop の⑨「Seppi War A Punk Rocker / Kumm Danz」は「シーナ...」と「ドゥー・ユー・ウォナ・ダンス」のメドレーをスラッシュ・メタルっぽいサウンドで聴ける面白いトラックだ。この手の演奏は曲がつまらないとタダの騒音になってしまうものだが、さすがは名曲2連発、コレは十分傾聴に値するヴァージョンになっている。唐突に挿入されるヨーデル(?)みたいな雄叫びは意味不明だが...
 ⑪「ロッカウェイ・ビーチ」をカヴァーしているのはイギリスの Action Pact feat. Steve Drewett。底抜けに楽しい曲想のせいか、この曲はラモーンズ・ナンバーの中で「シーナ...」と並んで被カヴァー率が最も高いんじゃないかと思うぐらいよく取り上げられている。ここでも期待を裏切らないノリノリの演奏が楽しめ、まさに “名曲は名演を呼ぶ” の典型のようなヴァージョンに仕上がっている。PATARENI というクロアチアのバンドの⑮「エンドレス・ヴァケイション」はチェーンソーみたいなギターの爆音を大胆にフィーチャーしたアレンジがめちゃくちゃカッコイイ。へヴィーなリズムを叩き出す無骨なドラムも最高だ。
 Hass というバンドの⑯「エクスポート」はガチガチのドイツ語だがよくよく聴けば「カリフォルニア・サン」だ。ハードコア・パンクっぽいサウンドをバックにがなり立てるようなヴォーカルが炸裂、私にはちょっとハードすぎて体調が良い時でないと聴けません(>_<) ドイツのブギーマンというバンドによる⑳「サーフィン・バード」のカヴァーは1分を過ぎたあたりからスクラッチを多用したハウス・サウンドが乱入、ハチャメチャ一歩手前で何とか踏みとどまるのだが、これではまるで M/A/R/R/S の「パンプ・アップ・ザ・ヴォリューム」だ。いくら何でもちょっと遊びすぎちゃいますか?
 (23)「Siinä On Punk Kari」は “又々登場!” という感じの「シーナ...」だが、何とコレがフィンランド語というからラモーンズの世界的影響力の凄さを改めて痛感させられる。Ne Luumäet というのはフィンランドでは名の知れたラモーンズ直系バンドらしいが、私は読み方すら分からない(ネ・ルーメート???)。言葉は分からなくっても音楽は世界最高の共通語というのが実感できる親しみやすいトラックだ。ザ・アディクツの(25)「アイ・ウォナ・ビー・セデイテッド」はオリジナルの良さを活かしながらもしっかりと自分たちのカラーを出しているところが◎。特に “バァーバァーババァバ~♪” と繰り返すパートのアレンジがめっちゃ気に入っている。
 ジャケットは本物のラモーンズの写真に目隠し加工しただけ(←こんなんでエエんかいな...)というイージーなものだが、中に詰まっている音楽にはエネルギーが漲り、躍動感に溢れている。まさにラモーンズ・スピリットの伝承盤といった感のある痛快な1枚だ。

Die Toten Hosen - Blitzkrieg Bob


Motorhead - Ramones


Die rzte - Die Wiking-Jugend hat mein MBdchen entfrt


The Adicts-I Wanna Be Sedated

Pleasant Dreams / Ramones

2010-11-04 | Ramones
 ラモーンズの過小評価アルバムとして前回の「モンド・ビザーロ」と同じくらい、いや、それ以上に無視されているのが、フィル・スペクター・プロデュースの「エンド・オブ・ザ・センチュリー」に続いて1981年にリリースされたこの「プレザント・ドリームズ」である。彼らはセルフ・プロデュースか、或いは後にU2のプロデュースで名を上げることになるスティーヴ・リリィホワイトにプロデュースを任せるか(←実現してたらどんな音になってたかめっちゃ興味あるなぁ...)のどちらかにしたかったらしいが、彼らをコマーシャル路線に乗せてラジオで流れるようなヒット曲を生むことを望んでいたレコード会社は10CCのグレアム・グールドマンを起用した。
 ラモーンズというととにかく “ラウド & ファスト” なパンクロックというイメージが強いが、1st アルバムのあのパンキッシュな音作りを期待して聴くと思いっ切りコケてしまう(>_<) ここで聴けるのは絵に描いたような “パワー・ポップ” そのもので、実に洗練された耳当たりの良いサウンドに仕上がっている。そのせいか非常にジョーイ色の濃いアルバムになっており、逆に 1st アルバムの音を続けたかったジョニーはグールドマンのプロデュースが気に入らず、インタビューで ridiculous だとボロクソにけなしていたのも大いに頷ける。その結果、硬派なファンからは “軟弱” の烙印を押され、又一般の音楽ファンからは “パンク” への偏見で無視されるという、めっちゃ不憫なアルバムなのだ。
 しかし私はこのアルバムが大好き(^o^)丿 1st アルバムがスベッただの、パンクロックがコロンだだのといった能書きはとりあえず横に置いといて、先入観のない真っ白な心で聴けば実に良くできたアメリカン・ロックではないか!不発に終わったのは MTV の登場とそれに伴う第2期ブリティッシュ・インヴェイジョンやダンサブルなポップ・ソングの流行という時代の空気とたまたま合わなかっただけのこと。今の耳で聴けばバンドもグールドマンも当時の状況下で実に良い仕事をしたと思う。
 アルバム冒頭を飾る①「ウィー・ウォント・ジ・エアウェイヴズ」はそれまでの軽快な疾走系ロックンロールとは明らかに違うへヴィーなナンバーで、ミディアム・テンポで重心を下げたグルーヴィーな演奏が新鮮に耳に響く。「ロックンロールでナンバー・ワン」という邦題はもうちょと何とかならんかったんかと思うが(笑)、曲も演奏もめちゃくちゃカッコ良いキラー・チューンだ。
 ①と並んでこのアルバム中で傑出していると思えるのがジョーイの書いた③「ザ・KKK・トゥック・マイ・ベイビー・アウェイ」だ。コレはジョーイの元恋人で彼を捨ててジョニーと結婚したリンダという女性の事を歌ったもので、保守派で極右思想のジョニーを KKK に例えて痛烈に皮肉ったタイトルがすべてを物語っている。ライヴで “KKKがオレから彼女を奪った” と連呼するジョーイの怨念(?)も凄いが、その横で何食わぬ顔で平然とギターを弾きまくるジョニーのプロ根性(←彼はファンが喜ぶことを何よりも優先した...)も見上げたモンだと思う。このアルバムにはもう1曲彼女の事を歌った⑦「シーズ・ア・センセイション」という曲が収められており、ジョーイには気の毒だがコレが又中々の名曲名演ときている。世の中ホンマに皮肉なものだ。
 このアルバムには他にも豊かなハーモニーでコーティングされたキャッチーなナンバーが多い。④「ドント・ゴー」や⑧「7-11」なんてハーマンズ・ハーミッツあたりが歌えばぴったりハマりそうなバブルガム・ミュージック(←もちろん良い意味です!)で、そのウキウキワクワクするような曲想はポップス・ファンなら絶対に気に入ると思うし、⑤「ユー・サウンド・ライク・ユーアー・シック」や⑩「カム・オン・ナウ」は彼らお得意の軽快なロックンロール。60'sの薫りが横溢する⑫「シッティング・イン・マイ・ルーム」のメロディー展開とそれに絡むコーラス・ハーモニーも絶品だ。
 ガチャガチャしたドラムのサウンドがユニークな②「オールズ・クワイエット・イン・ザ・イースタン・フロント」や、歌詞に “フィル・スペクター” や “10CC” といった固有名詞が次々に登場する⑥「イッツ・ノット・マイ・プレイス」も面白い。ボートラでは10年後に「モンド・ビザーロ」に収録されることになる⑬「ツアリング」の “1981年ヴァージョン” があるべきところに収まったという感じで強く自己主張しているし、未発表曲⑭「アイ・キャント・ゲット・ユー・アウト・オブ・マイ・マインド」も①を裏返しにしたような旋律が聴き応え十分だ。
 このアルバムは確かにラモーンズらしいアグレッシヴなパンチ力には欠けるかもしれないが、ますます磨きのかかったジョーイのヴォーカルが楽しめる極上のポップ・ロック・アルバムとして、 “パンクはちょっとどうも...” という堅気の音楽ファンにも安心してオススメできるポップな作品だ。

We Want The Airwaves - The Ramones


Ramones - The KKK Took My Baby Away (Music Video)


THE RAMONES - SHE'S A SENSATION


Ramones - Sitting In My Room

Mondo Bizarro / Ramones

2010-11-01 | Ramones
 ラモーンズは70年代から90年代までの約20年間に14枚のオリジナル・アルバムをリリースした。私がよく聴くのは “ポップなパンク・ロック” に拘った70年代から80年代初頭にかけてのアルバムだが、迷いが吹っ切れたかのように躍動感溢れる演奏を聴かせる90年代の「アシッド・イーターズ」、「モンド・ビザーロ」の2枚も大好きだ。特に1992年にリリースされたこの「モンド・ビザーロ」は彼らのアルバムの中でも「プレザント・ドリームズ」と並んで過小評価されているアルバムの最右翼に挙げられるのではないだろうか?
 アルバム・タイトルの「Mondo Bizarro」とは “狂った世界” という意味を表すイタリア語。長年在籍したサイアーを離れ、クリサリス・レーベルへの移籍第1弾であり、又、初代ベーシストであるディー・ディーが抜けて代わりに若い CJ が入って以降初のスタジオ・アルバムということもあって気合いも十分、エネルギーに満ち溢れたタイトなロックンロール・アルバムになっている。
 私がこのアルバムでダントツに好きなのがドアーズのカヴァー⑦「テイク・イット・アズ・イット・カムズ(邦題「チャンスはつかめ」)」だ。オリジナルの良さを活かしながらもラモーンズならではのハード&ラウドな味付けがピタリとハマり、強力なキラー・チューンに仕上がっている。特に要所要所を引き締めているグルーヴィーなオルガンと CJ の闊達なベース・ワークがめっちゃスリリングで、ジョーイのヴォーカルも鳥肌モノのカッコ良さだ。私的には「スパイダーマン」や「アイ・ドント・ウォナ・グロウ・アップ」、「マイ・バック・ペイジズ」に匹敵する90年代ラモーンズ屈指のスーパーウルトラ大名演だと思うし、この1曲だけでもこのアルバムを買う価値があるのではないだろうか?
 ディー・ディーは脱退後も曲作りという形でバンドに貢献しており、このアルバムでもオリジナル・ナンバーでは最上と思える③「ポイズン・ハート」、⑤「ストレンクス・トゥ・エンデュア」、そして⑧「メイン・マン」の3曲を提供している。③はジョーイの情感豊かなヴォーカルが楽しめるミディアム・テンポのポップ・ロックで、 “パンク” のイメージで聴くと肩透かしを食うだろう。 CJ がヴォーカルを取る⑤はキャッチーなメロディーとハード・エッジなサウンドを見事に両立させた90年代ラモーンズらしいナンバーだが、ライヴではこのスタジオ・ヴァージョンを遥かに凌ぐドライヴ感溢れる演奏が楽しめるのが嬉しい。⑧はどことなく60年代GSの薫り漂う哀愁のメロディーに涙ちょちょぎれるナンバーでファンの間でもあまり話題には上らないが、私は “ラモーンズ隠れ名曲トップ3” に入れたいぐらいに気に入っている。
 ⑬「ツアリング」は約10年前のアルバム「プレザント・ドリームズ」のレコーディング時に書かれた曲で、曲調が「ロックンロール・ハイスクール」に似すぎていたためお蔵入りになっていたもの。もろ “ビーチ・ボーイズ風” なコーラスが笑えます(^o^)丿 彼らはアグレッシヴな “パンク” のイメージが強いが、こういう陽気なアメリカン・ロックを演らせたらピカイチだ。
 このCaptain Oi! レーベル再発盤のボートラ⑭「スパイダーマン」は元々ラスト・アルバム「アディオス・アミーゴス」の隠しトラックだったもので、以前「スパイダーマン」特集で取り上げたものとは別テイクの “1-2-3-4カウント無し” ヴァージョン。抜群の完成度を誇る本テイク(?)に比べると軽く流しているように聞こえるデモ・テイクっぽい演奏で、本テイクとの聴き比べもファンにとっては一興だろう。
①「センサーシット」はアメリカのアホバカ保護者団体 PMRC によるロックへの検閲(未成年に相応しくない、と認定した音楽に “Parental Advisory ステッカー” を貼り付けさせた...)を痛烈に皮肉った歌詞が痛快だ。ミック・ジャガーみたいなジョーイのヴォーカルは説得力抜群だし、ジョニーのモズライト・ギターの咆吼も脳髄をビンビン刺激する。エド・ステイシアムがプロデューサーとして戻ってきたせいか、ギター・サウンドの音採りが全盛期を彷彿とさせるラウドなのものになっているのが嬉しい。
 80年代っぽいサウンド・プロダクションが面白い⑥「イッツ・ゴナ・ビー・オールライト」、ラモーンズお得意の疾走系ロックンロール⑨「トゥモロウ・シー・ゴーズ・アウェイ」、ホリーズみたいな⑩「アイ・ウォウント・レット・イット・ハプン」なんかもメロディーにあと一工夫あれば名曲の仲間入りしたかもしれない佳作だと思う。
 80年代にやや迷走気味だった彼らが90年代に入って心機一転作り上げたこのアルバムは決して大名盤というワケではないが、ファンならずっと手元に置いて聴き続けたくなるような、愛すべき1枚だ。

The Ramones-Take it as it comes


Ramones - Touring


Ramones - Poison Heart


The Ramones -- Main Man
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Ramones Greatest Hits Live

2010-10-28 | Ramones
 よく言われることだがラモーンズの神髄はライヴにある。スタジオ録音ヴァージョンよりも速いテンポで立て続けに演奏される疾走系ロックンロールの波状攻撃は圧巻の一言だ。クラッシュのジョー・ストラマーが「エンド・オブ・ザ・センチュリー」DVDの中で語っていたように1つの曲が終わると間髪を入れずに次の曲が始まるから、聴いている方は息つく暇もなく、聴感上のスピード感に更に拍車がかかるという案配だ。
 彼らはオフィシャルなライヴ盤を何枚かリリースしている。具体的に言うと、デビューして間もない頃の野放図なエネルギー放射を音盤に刻み込んだロンドン・レインボー・シアターでのライヴ「イッツ・アライヴ」(1977)、CJ 加入直後のスペイン・バルセロナでのコンサートの模様を収めた「ロコ・ライヴ」(1991)、サヨナラ・ツアーのハイライトとも言うべき地元ニューヨーク公演のダイジェスト版「グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」(1996)、そしてロスのザ・パレスで行われた正真正銘のラスト・ライヴ「ウィーアー・アウタ・ヒア」(1996)の4枚だ。
 ジョーイの艶のあるヴォーカルを楽しむなら初期の「イッツ・アライヴ」に限るが、私が愛聴しているのは多分ファンの間で話題に上ることが最も少ないであろうこの「グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」なのだ。確かに他の3枚は30曲前後入っていてショー全体をカヴァーしているのに対し、この盤はその約半分の16曲しか入っていない。ボートラのスタジオ録音2曲を除けば時間にしてわずか34分、これではいくら何でもちょっと短すぎるし、せめてあと数曲入っていればなぁとも思うが、それでもやはり4枚のライヴ盤の中ではCDプレイヤーのトレイに乗る回数が圧倒的に多い。
 一番の理由は抜群の選曲センスとその配列の妙である。この盤はそのタイトルが示すようにライヴ音源で構成したグレイテスト・ヒッツ、つまりベスト盤的な色彩が濃いが、数多く出ている彼らのライヴ盤、ベスト盤の中でもこのアルバムの曲の並べ方は “これしかない!” という感じで、小気味よいスピードで次々と演奏される2分前後の曲の連続が大きなうねりを生み出しているのだ。ラフでアグレッシヴな音録りも他のライヴ盤よりラモーンズらしさが出ているように思えるし、何よりも彼らのライヴ・アルバムの中で一番最初に買った(←大好きな「スパイダーマン」が入ってたもんで...)ということもあって、その演奏はもちろん、MC の一語一語までしっかりと覚えてしまっているというのも大きい。音楽は思い入れで聴くものだ。
 オープニングSEの「夕陽のガンマンのテーマ」から①「デュランゴ'95」を経てジョーイの “Yeah... here we are, home sweet home New York City. This goes out to all of you. Take it, CJ!!!” という MC に被さるように CJ の “1-2-3-4” カウントが炸裂、一気に②「ブリッツクリーグ・バップ」へとなだれ込む一連の流れがめちゃくちゃカッコ良い。しかもこの②から立て続けに③「ドゥー・ユー・リメンバー・ロックンロール・レイディオ」、④「アイ・ウォナ・ビー・セデイテッド」、⑤「スパイダーマン」、⑥「アイ・ドント・ウォナ・グロウ・アップ」、⑦「シーナ・イズ・ア・パンクロッカー」、⑧「ロッカウェイ・ビーチ」と、目も眩まんばかりのスピードで演奏される名曲名演のアメアラレ攻撃が凄まじい(≧▽≦) ジョーイのドスの効いたヴォーカルで聴くラウドでキャッチーでノリノリのハイスピード・ロックンロール... これ以上何が望めるというのだろう?
 ここからは CJ がヴォーカルを取る⑨「ストレンクス・トゥ・エンデュア」、⑩「クリーティン・ファミリー」の2曲が続く。「サイコ・セラピー」の二番煎じみたいな⑩も面白いが、90年代のラモーンズ・スタイルとでも言うべき⑨が何と言っても聞き物だ。そして再びジョーイが登場、 “Hey, are you ready... to DANCE?” からいきなり⑪「ドゥー・ユー・ウォナ・ダンス」を歌い出すカッコ良さ!ホンマにシビレますわ。そして⑫「ウィーアー・ア・ハッピー・ファミリー」、⑬「ザ・クラッシャー」とオーディエンスを煽りまくり、1st アルバムに入ってたラアモーンズ・クラシック⑭「53rd & 3rd」、⑮「ビート・オン・ザ・ブラット」へと続く流れも完璧だ。この⑮のスタジオ録音ヴァージョンは空耳で “beat on the brat♪” が “ヴィトンのブランド♪” と聞こえていたのだが、ここでは “ヴィトンのバッグ♪” に聞こえるぐらい高速化されている。
 ジョーイの “Now, you don't know this, but beneath this building lies the pet sematary!” という MC(←初めて聴いた時 “へぇ~凄い偶然もあるモンやなぁ...” と感心していた私は実におめでたい... 因みに下の YouTube 映像のように他所では beneath your feet って言うことが多いですね)がイントロの一部と化した⑯「ペット・セメタリー」もスタジオ・ヴァージョンを遙かに凌ぐ説得力でグイグイ迫ってくる。やっぱり彼らは最高のライヴ・バンドだ。尚、原題の「Pet Sematary」とは “ペットのお墓” という意味だが正しい綴りは cemetery。「セマタリー」と「セメタリー」を間違えたワケじゃないので責めたりしないで下さいね(笑)

RAMONES - Sheena Is A Punk Rocker - LIVE 03.16.1996


Ramones - Rockaway Beach & Strength to Endure


The Ramones - Pet Sematary The Last Show 1996


Ramones - Beat on the brat Live at The Palace (last concert)



We're A Happy Family ~ A Tribute To Ramones ~

2010-10-26 | Ramones
 トリビュート・アルバムはアーティスト・ステイタスの一つの目安である。大衆から愛され、同業のミュージシャン達からリスペクトされている証だからだ。パンク・ロックの先駆者と言われ、多くのフォロワーを生んだラモーンズに対しても数多くのトリビュート盤が作られてきており、ここでも “キッズのためのラモーンズ”、 “ロカビリー・ラモーンズ”、 “萌え萌えボッサ・ラモーンズ” と、敢えて変化球ネタのトリビュート盤をいくつか紹介してきた。別に面白半分で取り上げたワケではなく実際に好きで聴いているのだが、今日は正攻法と言うか、よくあるタイプの “有名アーティストによるオムニバス・トリビュート盤” でいってみようと思う。
 「ウィーアー・ア・ハッピー・ファミリー」と題されたこのオムニバス盤、まずは何と言ってもジャケットのインパクトが大きい。人によって好き嫌いが分かれそうだが(笑)、CDショップであれネット・オークションであれ、人目を引くことだけは間違いない。次にこの手のオムニバス盤の生命線ともいえる参加アーティストなのだが、アマゾンの解説によると “豪華すぎる顔ぶれ” らしい。参加している16組のアーティストは次の通り;

 ・CD 持ってるアーティスト:④メタリカ、⑤U2、⑥キッス、⑩プリテンダーズ
 ・名前だけは知ってるけど曲は聴いたことないアーティスト:①レッド・ホット・チリ・ペパーズ、⑮トム・ウェイツ
 ・名前すら知らないアーティスト:②ロブ・ゾンビ、③⑯エディ・ヴェダー、⑦マリリン・マンソン、⑧ガービッジ、⑨グリーンデイ、⑪ランシド、⑫ピート・ヨーン、⑬オフスプリング、⑭ルーニー、⑰ジョン・フルシアンテ

 このアルバムは2003年リリースなので、90年代以降の洋楽を聴かない私にとっては “豪華なメンツ” どころか “アンタ誰?” 状態で、参加アーティストの大半を知らないのも当然と言えば当然だが、ネットで試聴して気に入った曲がいくつかあったのと中古で安かったこともあって迷わず購入、ヤフオクで600円だった。
 まずこのアルバムでダントツに気に入ったのがキッスの⑥「ドゥー・ユー・リメンバー・ロックンロール・レイディオ」だ。ウキウキワクワク感に溢れたこの曲を、パーティー・ロックを演らせたら右に出る者はいないキッスが演奏しているのだからコレはもう大当たりなのだ。あれこれ細かいことを気にせずにとにかく “ノリ一発” で楽しいロックンロールを演奏していた70年代の全盛期を彷彿とさせるキッス・サウンドの復活が何よりも嬉しい。YouTube にアップされたビデオがこれまた実によく出来ていて、キッスのライヴ映像の要所要所にラモーンズのサブリミナル映像(?)が挿入されているのが泣けるなぁ...
 メタリカの④「53rd & 3rd」もいかにもメタリカらしいドスの効いたアグレッシヴなサウンドがエエ感じ。ただ、吐き捨てるようにがなり立てるジェームズらしさ丸出しのヴォーカルが楽しめるのはシングル「セント・アンガー」のB面に入っているラモーンズ・カヴァー「クリーティン・ホップ」の方だろう。多分同時期にレコーディングされたものだと思うので、この盤には入ってないけど一緒に貼っときます。
 U2 はラモーンズの大ファンで、MTV ミュージック・アウォーズにおけるボノの “もしラモーンズがいなかったら U2 も存在しなかっただろう” というスピーチは有名だが、ここでは “チビに一発” こと、⑤「ビート・オン・ザ・ブラット」をカヴァーしている。ボノがあの声で身をくねらすように歌い始めると唯一無比の “U2の世界” がパァ~ッと眼前に広がるから不思議だ。これが一流アーティストの存在感と言うヤツだろうか。逆にプリテンダーズの⑩「サムシング・トゥ・ビリーヴ・イン」はグルーミィで陰鬱な感じで、軽快なオリジナルの良さを完全に殺してしまっている。何でもっと明るいアレンジにしなかったのだろう?クリッシー・ハインドは好きなヴォーカリストだけに残念だ。
 初めて聴いたアーティストはハッキリ言って収穫ゼロ。世評は高いらしい①レッチリはどこが良いのかサッパリわからないし、この盤の共同プロデュースも兼ねている②ロブ・ゾンビは名曲「ブリッツクリーグ・バップ」をズタズタに破壊し尽くして反省のかけらもなし。⑦マリリン・マンソンに至っては原曲とは似ても似つかぬアヴァンギャルドな歌と演奏で、二度と聴きたくないキモいヴァージョンになっている。酔っ払いが呻いているような⑮トム・ウェイツもあんまり聴きたいとは思わないし、ゴスペルっぽいアレンジの⑰ジョン・フルシアンテも全然心に響いてこない。
 残りの③⑯エディ・ヴェダー、⑧ガービッジ、⑨グリーンデイ、⑪ランシド、⑫ピート・ヨーン、⑬オフスプリング、⑭ルーニーは原曲に忠実すぎる演奏で、何だか出来の良いコピー・バンドを聴いているようだ。決して悪くはないのだが所詮はエピゴーネン、こんなん聴く暇があったらオリジナルを聴いてヘイホー・レッツゴーしている方がいい。結局キッス、メタリカ、U2 の3曲しか聴かないアルバムだが、1曲200円と考えれば問題ない。いや、キッスの「ロックンロール・レイディオ」1曲のためだけでも買ってよかったと思っている。とにかくキッスといい、ラモーンズといい、ノリノリのロックンロールに勝るモンはありませんわ(^.^)

KISS "Do You Remember R'n'R Radio" 2


U2 - Beat On The Brat


53rd & 3rd - Metallica


Metallica - Cretin Hop

Bossa n' Ramones

2010-10-23 | Ramones
 ラモーンズ・トリビュート特集第3弾はおなじみの “ボッサン・シリーズ” である。ストーンズに始まってガンズ&ローゼズ、U2 からボブ・マーリィに至るまで、様々な大物アーティストの作品を超脱力系女性ヴォーカルで次々と “萌えボッサ化” していくという大胆不敵なこのシリーズ、あろうことか正統派パンク・ロックの象徴であるラモーンズまでをもボッサ化してしまおうというのだからコレはもう興味津々だ。
 このシリーズはボッサだけでは飽きたらず、最近では「ジャズ & 70's」「ジャズ & 80's」のように各デケイドのヒット曲をオシャレ・ジャズ化するなどやりたい放題なのだが、これらはすべてアルゼンチンの “ミュージック・ブローカーズ” という、エレクトロ・ボッサ専門レーベルが仕掛けたもの。今回も “ラウド&ファスト” が売りのラモーンズをその対極に位置するユルユル・ボッサに、という発想が凄いが、それもライヴでは数万人規模のスタジアムがソールド・アウトになるなど、南米で異常なまでの人気を誇るラモーンズだからこその企画なのだろう。ジャケットはこのシリーズお約束のセクシー系ながら、これまでの水着から打って変わって革ジャンにデニムの超ショートパンツで、はだけた胸元からのぞいた DEE DEE のプリント柄シャツなど、相変わらず芸が細かい。
 単なる効果音に過ぎない①「イントロ」⑭「アウトロ」を除けば全12曲、他のトリビュート盤では必ずと言っていいほどカヴァーされる「ロックンロール・ハイスクール」、「ドゥー・ユー・リメンバー・ロックンロール・レイディオ」、「サイコ・セラピー」といったバリバリのロックンロールはさすがにボッサ化不可能だったようだが、それでも⑧「アイ・ウォナ・ビー・セデイテッド」、⑨「シーナ・イズ・ア・パンクロッカー」、⑩「ロッカウェイ・ビーチ」といった彼らの代表曲が換骨堕胎され、パンクのパの字も感じさせない萌え萌えボッサに生まれ変わっているのにはビックリ(゜o゜) ⑧の意表を突いたアレンジには唸るしかないし、⑨の脱力のサジ加減なんかもう絶妙、⑩の萌え萌えヴォーカルには腰が砕けそうだ。スロー化された⑥「ポイズン・ハート」もヴォーカルとバック・コーラスの絡み具合いが絶品で、聴けば聴くほど味が出るスルメ・チューンに仕上がっている。知らない人が聴いたら美しいボッサの名曲だと思うだろう。頭の固いラモーンズ・ファンは怒り出すかもしれないが...(笑)
 アルバム「プレザント・ドリームズ」に入っていたジョーイ作のラヴ・ソング⑤「シーズ・ア・センセイション」と⑬「ザ・KKK・トゥック・マイ・ベイビー・アウェイ」の2曲も素晴らしい。⑤は他のトリビュート・アルバムであまり取り上げられないミディアム・テンポのパワー・ポップだが、ボッサ化することによってこの曲が本来持っていた旋律美が浮き彫りになったような感じがするし、要所要所を引き締めるフルートのオブリガートも実に良い味を出している。⑬はバックのシンセが耳障りでオーヴァープロデュース気味なのが玉にキズだが、アンニュイな雰囲気を湛えたヴォーカルが曲の髄を見事に引き出しており、ラモーンズ・ナンバーの楽曲としての素晴らしさを再認識させてくれる。ラモーンズというとついついライヴ・パフォーマーとしての凄さばかりがクローズアップされる傾向があるが、コレを聴けばメロディ・メーカーとしても実に非凡な才能を持っていたことがわかるだろう。
 このように大好きなトラックが満載のこのアルバムだが、⑪「ペット・セメタリー」はいただけない。いくら何でもヴォコーダーを通した YMO みたいなヴォーカルがラモーンズ・ナンバーに合うワケがない。 “エレクトロ・グルーヴ・ヴァージョン” だか何だか知らないが、せっかくの名曲が台無しだ。⑦「ビート・オン・ザ・ブラット」のタンゴ・アレンジもイマイチ曲に合っておらず、ヴォーカリストが頑張ってエエ雰囲気出してるだけに余計に勿体ないと思う。この2曲を除けば実に面白いカヴァー・アルバムだ。
 私のような軟派なロック・ファンにとって目が離せないこのボッサン・シリーズ、次はボッサン・ゼッペリンかボッサン・イーグルス、ボッサン・スプリングスティーンあたりか?ボッサン・キッスやボッサン・Tレックスなんかも面白そうやし... 楽しみに待っとこ(^.^) 

bossa n' ramones -she's a sentation-


United Rhythms Of Brazil - The K.K.K. Took My Baby Away


Bossa n' Ramones - Sheena Is A Punk Rocker

The Rockabilly Tribute To The Ramones

2010-10-20 | Ramones
 ラモーンズ・トリビュート大会第2弾はロカビリー、その名もズバリ「ロカビリー・トリビュート・トゥ・ザ・ラモーンズ」である。パンク・ロックとロカビリーと言うと一見ミスマッチに思えるかもしれないが、コレが中々エエ感じなのだ。そもそも “パンク” というと “安全ピンをアクセサリーに奇抜なファッションで身を包み、ライヴではオーディエンスに向かって唾を吐きながらワケのワカラン曲をムチャクチャに演奏する” というネガティヴなイメージばかりが先行してしまうが、70年代に入って長尺ソロだの変拍子だのと難解になってしまったロックへのアンチテーゼとして、躍動的なリズムとスピーディーなギター・リフで贅肉を削ぎ落としたシンプルで分かりやすいロックンロールを演奏しよう、というのが本来のパンク・ロックの原点なのだから、50年代スタイルのロカビリー・フォーマットでラモーンズをカヴァーするというのは、まさにラモーンズ・ミュージックの本質を鋭く見抜いた素晴らしい企画だと思う。
 ジャケットにアーティスト名が明記されていないのでタイトルから Various Artists によるトリビュート盤だと思っていたら、演奏はすべてフル・ブロウン・チェリーというアメリカのネオ・ロカビリー・バンドだった。彼らはこのアルバムの前に「ロカビリー・トリビュート・トゥ・AC/DC」という盤を出しており、2匹目のドジョウを狙った感がなきにしもあらずだが、出来としてはこっちの方が良い。ただ、ヴォーカルにジョーイのような強烈な吸引力がないので、アレンジがイマイチだと凡演になってしまうキライがある。これがブライアン・セッツァーのようなヤクザなヴォーカルだったら間違いなく名盤になっただろうと思う。
 まずはアルバム1曲目の①「ブリッツクリーグ・バップ」、ヴォーカルもバックのサウンドもエディー・コクランを彷彿とさせるバリバリのロカビリーだ。コレでつかみはOKといったところか。続く②「ロッカウェイ・ビーチ」、③「シーナ・イズ・ア・パンクロッカー」、⑤「シーズ・ザ・ワン」、⑥「ジュディ・イズ・ア・パンク」あたりはやや単調で今一つパンチが足りないように感じるが、④「クリーティン・ホップ」は思わず踊りだしたくなるようなノリノリのロックンロールになっていてめっちゃ気に入っている。
 このアルバムで一番ロカビリー化が成功していると思えるのが、ラモーンズでは異色のパワー・ポップ⑦「ザ・KKK・トゥック・マイ・ベイビー・アウェイ」だ。絶妙なテンポ設定が原曲の魅力を十分引き出していてロカビリーとしても十分楽しめるように思う。⑧「ティーンエイジ・ロボトミー」では重厚なドラムの乱打がインパクト大だし、ラモーンズ屈指の大名曲⑨「アイ・ウォナ・ビー・セデイテッド」もまるでエルヴィスが憑依したかのようなカッコ良いヴァージョンに仕上がっているのが嬉しい。
 シンプルの極み⑩「ドゥー・ユー・リメンバー・ロックンロール・レイディオ」では「エンド・オブ・ザ・センチュリー」のリマスター盤に入っていたデモ・ヴァージョンとの聴き比べも一興だろう。チビに一発...じゃなかった⑪「ビート・オン・ザ・ブラット」はやや平凡なトラックで、可もなし不可もなしといったところか。ラストの⑫「バップ・ティル・ユー・ドロップ」はあまりロカビリーに向いていないような気がするが、どうなんだろう?個人的には「サイコ・セラピー」あたりを火の出るようなロックンロールで聴かせてくれたら最高やったのに、と思うのだが。
 このアルバムはさすがに全曲聴いているとだんだん飽きてくるので、私のように気に入ったトラックを何曲かつまみ聴きするか、あるいはお気楽なパーティーの BGM なんかに使えばぴったりハマるように思う。

Rockabilly - Blitzkrieg Bop - Full blown cherry


Rockabilly - I Wanna Be Sedated - Full Blown Cherry


Rockabilly - The KKK Took My Baby Away - Full Blown Cherry

Brats On The Beat ~ Ramones For Kids ~

2010-10-17 | Ramones
 ラモーンズの最高傑作と言われる 1st アルバム「ラモーンズの激情」で、彼らの代表曲「ブリッツクリーグ・バップ」に続くA面2曲目に「ビート・オン・ザ・ブラット」という曲が入っている。カタカナで書くと何のこっちゃ?なのだが、brat とは “行儀の悪い子供、ガキ” という意味で beat は “叩く” だから、このタイトルを日本語に訳すと “ガキをぶん殴れ” となる(←昔の邦題「チビに一発」にはワロタ...)。このアルバムには他にも “俺はナチ” とか “人殺しの男娼” とか、物凄い歌詞が満載なのだが、“ガキをバットでぶん殴れ、オーイェー、オーイェー♪” と歌うこの曲のインパクトは特に強烈だ。
 今日取り上げるアルバムはサブタイトルが「ラモーンズ・フォー・キッズ(子供のためのラモーンズ・カヴァー集)」で、タイトルは「ブラッツ・オン・ザ・ビート(ビートに乗った子供達)」と言う。「ビート・オン・ザ・ブラット」を一捻りしたワケだが、この遊び心溢れるユーモアのセンス、めっちゃ洒落てると思いません?私なんかこのタイトルだけで星3つあげたいぐらいだ(←ミシュランかよ!)。
 まぁそうは言いながらも実際に金を出して買うとなると話は別。いくらラモーンズが大好きといっても所詮は “子供のための” カヴァー集だし、ジャケットを見てもエエ歳したオッサンがスピーカーに対峙して聴くような代物とはとても思えない。一旦はパスしようかとも思ったが、話のネタにちょっとだけ試聴してみようと思い、USアマゾンのミュージック・サンプラーをクリックしてみると、原曲に忠実なアレンジのロックンロール・サウンドに乗って元気溌剌とした子供達のコーラスが聞こえてきた。音楽的にどうこう言う以前に何かめっちゃ新鮮な感じがしてすっかりこの盤が気に入った私は、迷うことなく “オーダー” をクリックしていた。
 届いたCDを聴いてまず感じたのはラモーンズ・ナンバーの楽曲としての素晴らしさである。ジョーイのあのくぐもったような深みのある歌声、ジョニーの鬼神の如きダウンストローク、そしてディー・ディー&トミー(or マーキー)のタテノリ・リズムが一体となって生まれるあの唯一無比のサウンドでなくても、そして子供達たちの可愛らしいコーラスが入っていても、少なくとも私にとっては十分楽しめるだけの吸引力をそれぞれの曲が備えているのだ。私はいかに彼らの曲が優れているかを改めて再認識させられた。
 バックの演奏はすべてガバ・ガバ・ヘイズというラモーンズ・コピー・バンド(←それにしても単純明快なバンド名やね!)が担当し、曲ごとに有名なパンクロック・バンドのシンガーをリード・ヴォーカルに迎え、子供たちがバック・コーラスをつけている。曲目とリード・ヴォーカリストは以下の通り;
  ①「ブリッツクリーグ・バップ」by ジム・リンドバーグ(ペニーワイズ)
  ②「ロックンロール・ハイスクール」by マット・スキバ(アルカライン・トリオ)
  ③「カリフォルニア・サン」by ブレット・アンダーソン(ザ・ドナス)
  ④「ロックンロール・レイディオ」by グレッグ・アットニト(バウンシング・ソウルズ)
  ⑤「スージー・イズ・ア・ヘッドバンガー」by ニック・オリヴェリ(クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ)
  ⑥「ロッカウェイ・ビーチ」by ブラグ・ダリア(ドゥワーヴズ)
  ⑦「アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・ハヴ・サムシング・トゥ・ドゥ」by エミリー・ウィン・ヒューズ(ゴー・ベティ・ゴー)
  ⑧「スパイダーマン」by アッシュ・ガフ(ガフ)
  ⑨「ウィー・ウォント・ジ・エアウェイヴズ」by スプーニー
  ⑩「シーナ・イズ・ア・パンクロッカー」by ジョシー・コットン
  ⑪「クリーティン・ホップ」by トニー・リフレックス(アズ・アンド・アドレッセンツ)
  ⑫「バップ・ティル・ユー・ドロップ」by ジャック・グリシャム(TSOL)
 私は90年代以降の洋楽は聴いてないので上記のシンガーもバンドも全く知らないのだが、そんな予備知識なんかなくても十分楽しめる内容だ。全12曲、わずか30分弱のこのアルバムは個々の曲について云々するよりも1枚丸ごとパーティー感覚で一気呵成に聴くのが正しい。あえて選ぶとすれば子供たちのコーラスで原曲の持っていたウキウキワクワク感が更にパワーアップされた⑩が一番気に入っているが、シンプルなロックンロールに子供たちのコーラスがぴったりハマった①②③⑤あたりも捨てがたいし、イントロの子供DJのキュートな声に思わず頬が緩む④も楽しさ一杯だ。ロック色の濃い⑦⑨⑫なんかもそれなりにカッコ良く仕上がっており、見た目以上に聴き応え十分だ。逆に期待していた⑧はアッシュ・ガフとかいうリード・ヴォーカリストがプロとは思えないぐらい下手くそで、折角の名曲が台無しだった。
 この盤はサブタイトルにあるように表面的には確かにキュートなコーラス満載の子供向けアルバムだが、演奏もしっかりしていて個々のリード・ヴォーカリストの個性も楽しめるし、どのトラックもパワー全開でロックしているので、 “ちょっと変わったラモーンズ・トリビュート・アルバム” として大人が聴いても結構楽しめる1枚だと思う。

シーナはパンクロッカー


Brett Anderson of The Donnas - California Sun


Matt Skiba (Alkaline trio)- rock n' roll High School

Acid Eaters / Ramones

2010-10-11 | Ramones
 ラモーンズというと “1-2-3-4のカウントで始まるラウド&ファストなパンク・ロック” というイメージが先行してしまい、その音楽性についてはあまり語られていないように思うのだが、彼らはセックス・ピストルズやストラングラーズ、ダムドのように偉大なる先人達を “オールド・ウエイヴ” として否定した身の程知らずの UK パンクとは激しく一線を画する正統派ロックンロール・バンドである。
 ラモーンズの音楽の中には彼らが敬愛する60年代のロック・ポップスの伝統が脈々と息づいており、それはパンキッシュな色合いが最も濃かった初期の3枚のアルバムを聴いても一聴瞭然だ。乱暴な言い方をすれば “ガレージ色の強いビーチ・ボーイズ” であり、表面的なサウンドはアグレッシヴだが、細かいアレンジやコーラス・ワークなんかにはパンクどころか私がこよなく愛する古き良き60年代の薫りが濃厚に漂っているのだ。
 それは彼らが初期にカヴァーしていた曲目を見ても明らかで、クリス・モンテスの「レッツ・ダンス」、ボビー・フリーマンの(というよりもビーチ・ボーイズがカヴァーしたヴァージョンが下敷きになっていると思われる...)「ドゥー・ユー・ウォナ・ダンス」、リヴィエラズの「カリフォルニア・サン」、トラッシュメンの「サーフィン・バード」など、どれもこれもパンク・ロックのイメージとは程遠いキャッチーなポップスやサーフィン・サウンドばかりであり、それらを換骨堕胎して “ラモーンズのロックンロール” として見事に再生しているのだから凄いとしか言いようがない。
 フィル・スペクター・プロデュースの「エンド・オブ・ザ・センチュリー」以降、バンドはサウンド面でもマネージメント面でも暗中模索を繰り返しながら混迷期に入ってしまい、70年代に比べてオリジナル曲の名曲率が下がってしまったように思えるのだが、カヴァー曲には相変わらず名演が多い。ドアーズの「テイク・イット・アズ・イット・カムズ」なんか鳥肌モノのカッコ良さだし、トム・ウェイツの「アイ・ドント・ウォナ・グロウ・アップ」もラモーンズのオリジナルと間違うぐらいにハマッており、カヴァーがオリジナルを超える瞬間を体験できる。そんな彼らが1993年にリリースしたオール・カヴァー・アルバムがこの「アシッド・イーターズ」だ。
 初期のカヴァーは60年代前半までのポップ曲ばかりだったが、ここでは60年代後半以降の本格的な “ロックの時代” のナンバーを中心に選ばれているのが一番の注目ポイントで、まずは何と言っても①「ジャーニー・トゥ・ザ・センター・オブ・ユア・マインド」のカッコ良さ、コレに尽きるだろう。テッド・ニュージエント率いるアンボイ・デュークスの隠れ名曲を1曲目に持ってきて、いきなりエンジン全開で一気呵成に突っ走るところがたまらない(^o^)丿
 ストーンズの③「アウト・オブ・タイム」ではミック・ジャガーばりの深みのあるヴォーカルを聴かせるジョーイが堪能できるし、ジェファーソン・エアプレインの⑤「サムバディ・トゥ・ラヴ」も聴きごたえ十分だ。しかし聴く前から一番興味があったのは我が愛聴曲⑩「ハヴ・ユー・エヴァー・シーン・ザ・レイン(雨を見たかい?)」で、CCR の原曲があまりにも素晴らしいので期待半分・不安半分で聴いたのだが、やはりラモーンズはラモーンズ(笑)、竹を割ったようなケレン味のない真っ向勝負のラモーンズ・スタイルでこの名曲を見事に料理しており、 “偉大なるワン・パターン” はここでも健在だった。
 ボブ・ディランの⑧「マイ・バック・ペイジズ」も素晴らしい。私は昔からディランの酔っ払いみたいなヴォーカルに馴染めず、レコードも持っていないせいもあって、この曲の存在を知ったのはキース・ジャレットによるカヴァーが最初だった。ジャズ・ピアニストがディランの曲を取り上げたという話題性もあってか(?)名演扱いされることが多いのだが、私的には別にどうってことのない凡演に思えたし、その後に聴いたバーズやホリーズによるカヴァーもイマイチだったこともあって、このアルバムを買った時も完全にノーマークだった。しかしさすがはラモーンズ! 曲の髄を見事に引き出した “ハード&スピーディー” なノリが圧巻で、血湧き肉躍るスリリングなヴァージョンになっている。又、ボートラとして追加されたビーチ・ボーイズの⑬「サーフィン・サファリ」もジャン&ディーンの「サーフ・シティ」共々実に楽しいカヴァーに仕上がっており、改めて彼らのルーツの一端を垣間見たような気がする。
 この「アシッド・イーターズ」はジャケもエグイし、解散間際の、しかもカヴァー・アルバムということであまり話題に上ることのない盤だが、ラモーンズ・ファンはもちろん、すべてのロック・ファンに自信を持ってオススメできる1枚なのだ。

Have you ever seen the rain The Ramones


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Ramones - Surfin Safari